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  • 特許-骨伝導デバイス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】骨伝導デバイス
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/00 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
H04R1/00 317
H04R1/00 327
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022500881
(86)(22)【出願日】2021-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2021048648
(87)【国際公開番号】W WO2022153860
(87)【国際公開日】2022-07-21
【審査請求日】2022-01-07
(31)【優先権主張番号】P 2021005557
(32)【優先日】2021-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516040866
【氏名又は名称】BoCo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】謝 端明
(72)【発明者】
【氏名】中島 敏夫
【審査官】佐久 聖子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/103087(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/212884(WO,A1)
【文献】特開2009-296197(JP,A)
【文献】特表2017-502615(JP,A)
【文献】特開2002-199480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00- 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨伝導デバイスであって、
振動デバイスと、
前記振動デバイスを収容する外部ケースと、
を具備し、
前記振動デバイスは、内部ケースと、前記内部ケースに収容されるコイル及び磁石と、前記内部ケースに対して振動可能な振動板と、を具備し、
骨伝導デバイスの外部に振動が取り出される前記振動デバイスの振動面に対して、前記振動デバイスの振動面とは逆側において、前記振動デバイスの後方への逃げを抑制するために、前記振動デバイスと前記外部ケースの間に、振動を吸収可能な緩衝部材が配置され、
前記振動デバイスの周囲の少なくとも一部には、前記緩衝部材が配置されずに前記外部ケースとの間に空間が形成され、
前記緩衝部材には前記振動デバイスが配置される凹部が形成されていて、
前記外部ケースの一方の面に、前記振動デバイスの振動面の全体を覆うようにクッション材が配置され、前記クッション材が、前記振動デバイスを前記振動面側から支え、前記クッション材と前記緩衝部材との間に前記空間が形成されることを特徴とする骨伝導デバイス。
【請求項2】
骨伝導デバイスであって、
振動デバイスと、
前記振動デバイスを収容する外部ケースと、
を具備し、
前記振動デバイスは、内部ケースと、前記内部ケースに収容されるコイル及び磁石と、前記内部ケースに対して振動可能な振動板と、を具備し、
骨伝導デバイスの外部に振動が取り出される前記振動デバイスの振動面に対して、前記振動デバイスの振動面とは逆側において、前記振動デバイスの後方への逃げを抑制するために、前記振動デバイスと前記外部ケースの間に、振動を吸収可能な緩衝部材が配置され、
前記振動デバイスの周囲の少なくとも一部には、前記緩衝部材が配置されずに前記外部ケースとの間に空間が形成され、
前記緩衝部材に対して前記振動デバイスが押し込まれた状態であり、前記緩衝部材が圧縮した状態であり、
前記外部ケースの一方の面に、前記振動デバイスの振動面の全体を覆うようにクッション材が配置され、前記クッション材が、前記振動デバイスを前記振動面側から支え、前記クッション材と前記緩衝部材との間に前記空間が形成されることを特徴とする骨伝導デバイス。
【請求項3】
前記振動デバイスを覆っている全ての部位の前記クッション材の厚みに対して、前記振動デバイスと前記外部ケースとの間における前記クッション材の厚みが薄いことを特徴とする請求項1または請求項2記載の骨伝導デバイス。
【請求項4】
前記緩衝部材は、前記クッション材よりも硬いことを特徴とする請求項1または請求項2記載の骨伝導デバイス。
【請求項5】
前記クッション材は、前記緩衝部材よりも硬く、
前記コイルが固定された前記内部ケース側と、前記磁石が接続された側とが相対的に振動し、前記磁石が接続された側が、前記コイルが固定された前記内部ケース側と比較して質量が大きいことを特徴とする請求項1または請求項2記載の骨伝導デバイス。
【請求項6】
前記緩衝部材は、スポンジ状であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の骨伝導デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨伝導を利用した骨伝導スピーカ及び骨伝導ピックアップ等の骨伝導デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、音楽や会話を聴く手段として、ヘッドホンやイヤホンなどのような装置(以下、聴音装置という。)が広く使用されてきている。このような聴音装置としては、空気伝導を利用したものと骨伝導を利用したものとがある。空気伝導を利用したものは、電気信号として入力された音源を空気の振動に変換して鼓膜に伝えて振動させ、鼓膜の振動が耳の奥の中耳を通って、脳に音の情報が伝達され認識される仕組みを利用している。
【0003】
一方、骨伝導を利用した聴音装置は、電気信号として入力された音響信号を機械的な振動に変換し、その振動を適切な位置から骨に与えて骨に振動を伝え、その振動により伝わる骨伝導音で音を認識させるものである。この骨伝導を利用した聴音装置は、ヘッドホンやイヤホンのように耳孔に挿入して使用する必要がなく、耳には周囲の音が遮蔽されることなく入ってくるので、装着していても安全である。また、鼓膜の振動を利用しないことから、難聴の人でも音を認識することができ、補聴器等への利用も進められている。
【0004】
骨伝導スピーカは、ケースに対して振動板とマグネットとが振動する振動デバイスが実装されている。図3は、従来の振動デバイス103の断面を示す図である。図3に示すように、一般的な振動デバイス103は、ケース105と、ケース105に収容されるコイル107及び磁石109と、ケース105に対して振動可能な振動部材111とを備えており、コイル107はケース105に固定され、磁石109は振動部材111に接続されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
振動デバイス103では、コイル107に信号電流が印加されると、コイル107の周囲の磁石109から発生する磁界によりフレミングの左手の法則に従ってコイル107の軸方向に力が発生し、コイル107等が固定されたケース105と磁石109等が接続された振動部材111とが相対的に振動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6601973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
骨伝導スピーカでは、外部ケースに振動デバイス103を組み込む場合がある。しかしながら、図3に破線で示すように骨伝導スピーカの外部ケース113aにケース105が当接すると、振動デバイス103の振動が外部ケース113aに伝わってしまう。このため、振動部材111から取り出される振動が弱くなる恐れがある。
【0008】
一方、点線で示すように外部ケース113bとケース105との間に隙間を設けると、振動デバイス103が外部ケース113bの中で自由に振動することになる。このため、振動部材111を振動伝導対象部に所定の圧力で押圧した状態を維持することができず、却って、振動デバイス103に発生した振動を振動部材111側から振動伝導対象部へ伝達することができない。
【0009】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とすることは、振動を適切に入出力できる骨伝導デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するために、第1の発明は、骨伝導デバイスであって、振動デバイスと、前記振動デバイスを収容する外部ケースと、を具備し、前記振動デバイスは、内部ケースと、前記内部ケースに収容されるコイル及び磁石と、前記内部ケースに対して振動可能な振動板と、を具備し、骨伝導デバイスの外部に振動が取り出される前記振動デバイスの振動面に対して、前記振動デバイスの振動面とは逆側において、前記振動デバイスの後方への逃げを抑制するために、前記振動デバイスと前記外部ケースの間に、振動を吸収可能な緩衝部材が配置され、前記振動デバイスの周囲の少なくとも一部には、前記緩衝部材が配置されずに前記外部ケースとの間に空間が形成され、前記緩衝部材には前記振動デバイスが配置される凹部が形成されていて、前記外部ケースの一方の面に、前記振動デバイスの振動面の全体を覆うようにクッション材が配置され、前記クッション材が、前記振動デバイスを前記振動面側から支え、前記クッション材と前記緩衝部材との間に前記空間が形成されることを特徴とする骨伝導デバイスである。
第2の発明は、骨伝導デバイスであって、振動デバイスと、前記振動デバイスを収容する外部ケースと、を具備し、前記振動デバイスは、内部ケースと、前記内部ケースに収容されるコイル及び磁石と、前記内部ケースに対して振動可能な振動板と、を具備し、骨伝導デバイスの外部に振動が取り出される前記振動デバイスの振動面に対して、前記振動デバイスの振動面とは逆側において、前記振動デバイスの後方への逃げを抑制するために、前記振動デバイスと前記外部ケースの間に、振動を吸収可能な緩衝部材が配置され、前記振動デバイスの周囲の少なくとも一部には、前記緩衝部材が配置されずに前記外部ケースとの間に空間が形成され、前記緩衝部材に対して前記振動デバイスが押し込まれた状態であり、前記緩衝部材が圧縮した状態であり、前記外部ケースの一方の面に、前記振動デバイスの振動面の全体を覆うようにクッション材が配置され、前記クッション材が、前記振動デバイスを前記振動面側から支え、前記クッション材と前記緩衝部材との間に前記空間が形成されることを特徴とする骨伝導デバイスである。
【0011】
第1または第2の発明の骨伝導デバイスでは、振動デバイスの振動面とは逆側において、振動デバイスと外部ケースの間に、振動を吸収可能な緩衝部材が配置される。これにより、緩衝部材で内部ケースから外部ケースへの振動の伝達を抑制することができる。また、振動部材13を振動伝導対象部に対して、所定の圧力で押圧した状態を維持することができる。このため、振動デバイスに発生した振動を適切に振動伝導対象部に伝達することができる。
また、前記振動デバイスの周囲の少なくとも一部には、前記外部ケースとの間に空間が形成されることにより、振動デバイスの周面から外部ケースへの振動の伝達が抑制される。
また、前記外部ケースの一方の面に配置され、前記振動デバイスの振動面の全体を覆うようにクッション材が配置され、前記クッション材が、前記振動デバイスを前記振動面側から支え、前記クッション材と前記緩衝部材との間に前記空間が形成されることにより、クッション材で振動デバイスを支えると同時に、外部ケース内への塵や埃や水滴の侵入を防止することができる。
【0014】
前記振動デバイスを覆っている全ての部位の前記クッション材の厚みに対して、前記振動デバイスと前記外部ケースとの間における前記クッション材の厚みが薄いことが望ましい。
【0015】
前記緩衝部材は、前記クッション材よりも硬くてもよい。また、前記クッション材は、前記緩衝部材よりも硬く、前記コイルが固定された前記内部ケース側と、前記磁石が接続された側とが相対的に振動し、前記磁石が接続された側が、前記コイルが固定された前記内部ケース側と比較して質量が大きくてもよい。また、前記緩衝部材は、スポンジ状であることが望ましい。
【0016】
緩衝部材がクッション材より硬ければ、緩衝部材を介して、外部ケースに振動デバイスの振動の一部を伝達することができる。この際、緩衝部材の硬度によって、振動の伝達量を制御することができる。
【0017】
例えば、骨伝導デバイスを耳介近傍に配置する場合には、振動部材側のみではなく、外部ケースの一部も振動伝導対象部に接触する。このため、外部ケースにも多少の振動をあえて伝達することで、振動デバイスの振動を、主に振動部材側から振動伝導対象部へ伝達させるとともに、外部ケースからも振動の一部を振動伝導対象部へ伝達することができる。すなわち、複数個所(複数方向)から振動を振動伝導対象部へ伝達することができる。
【0018】
また、クッション材が緩衝部材より硬ければ、クッション部材に対して効率よく振動デバイスの振動を伝達することができる。このように、緩衝部材とクッション材の硬さは、骨伝導デバイスの耳に対する装着位置などに応じて適宜設定される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、振動を適切に入出力できる骨伝導デバイスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】骨伝導デバイス1の断面を示す図。
図2】振動デバイス3の断面を示す図。
図3】振動デバイス103の断面を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では骨伝導デバイスとして骨伝導スピーカとして使用する場合を説明するが、本発明では、骨伝導デバイスを骨伝導ピックアップ(マイク)としても使用することが可能である。
【0022】
図1は骨伝導デバイス1の断面を示す図、図2は振動デバイス3の断面を示す図である。骨伝導デバイス1は、振動デバイス3、振動デバイス3を収容する外部ケース5、緩衝部材7、クッション材9等からなる。
【0023】
図1に示すように、外部ケース5は、一方の面が開放されており、内部に振動デバイス3が収容される。外部ケース5と、振動デバイス3の内部ケース11との間には空間31が形成される。空間31は、内部ケース11の外側面の全周にわたって形成される。より詳細には、少なくとも、振動部材13の周囲を含む、振動デバイス3の振動部材13側から所定の範囲(例えば、振動デバイス3の高さの半分以上の範囲)において空間31が形成される。
【0024】
緩衝部材7は、振動デバイス3の振動面13aとは逆側において振動デバイス3と外部ケース5の間に配置される。なお、緩衝部材7は、振動デバイス3の外側面側に多少はみ出していてもよい。すなわち、緩衝部材7の振動デバイス3との対向面側に凹部を形成し、凹部に振動デバイス3を嵌合させてもよい。このようにすることで、振動デバイス3のブレを抑制することができる。また、緩衝部材7に凹部を形成するのではなく、緩衝部材7に対して、振動デバイス3が押し込まれた状態(緩衝部材7の中央部が圧縮した状態)で振動デバイス3を保持しても、同様の効果を得ることができる。なお、緩衝部材7は、例えばスポンジ状の樹脂などの弾性部材であり、圧縮変形によって振動を吸収可能である。
【0025】
図2に示すように、振動デバイス3は、内部ケース11、内部ケース11に収容されるコイル19及び磁石21、内部ケース11に対して振動可能な振動板15(振動部材13)等からなる。内部ケース11は例えば円筒形である。内部ケース11の底部付近(振動部材13とは逆側)に固定された円盤状のコイルプレート23には、コイル19が接合される。
【0026】
振動部材13は振動板15とカバー17とからなり、内部ケース11の上部付近(コイルプレート23とは逆側)に取り付けられる。磁石21、磁石21の下端側に配置されたヨーク25、及び磁石21の上端側に配置されたヨーク27は、それぞれの中心を軸方向に貫通するシャフト29により、弾性変形可能な振動板15に接続される。すなわち、一方が塞がれ、他方が開口する略円筒形状のヨーク27と、ヨーク27の開口部側に配置されたヨーク25によって磁石21が挟まれるように配置される。
【0027】
すなわち、ヨーク27は、磁石21及びヨーク25の外周を覆うように配置される。ヨーク25とヨーク27の間には、空間を介してコイル19が配置され、ヨーク25とヨーク27との間に形成される磁束が、コイル19を貫通するように配置される。
【0028】
一体化されたヨーク25、磁石21及びヨーク27が、振動板15を介して、一体化された内部ケース11及びコイル19に連結される。振動板15は、弾性変形可能である。このため、振動板15の変形によって、ヨーク27等と内部ケース11等が相対的に振動可能である。相対的な両者の振動が、内部ケース11に固定されたカバー17を介して、外部に取り出される。
【0029】
外部ケース5の開放面には、振動デバイス3の振動面13aを覆うようにクッション材9が配置される。クッション材9は、振動デバイス3を振動面13a側から支え、外部ケース5内への塵や埃や水滴の侵入を防止する。クッション材9は、例えばシリコン樹脂などの柔軟性を有する樹脂などの弾性部材である。
【0030】
クッション材9の周縁部は、外部ケース5と接合される。この際、外部ケース5の開放近傍の側面には、周方向に溝が形成され、クッション材9の外周縁部は、当該溝に嵌合して接合される。クッション材9によって、外部ケース5が水密に保たれる。
【0031】
クッション材9は、振動デバイス3を覆う部位の厚み9aに対して、振動デバイス3と外部ケース5との間における厚み9bが薄い。すなわち、クッション材9は、振動デバイス3を覆う部位が厚肉部となり、振動デバイス3と外部ケース5との間には、全周にわたって薄肉部が形成される。
【0032】
このように、振動面13aを覆う部位のクッション材9は、装着性を高めるために厚くすることが望ましい。一方、振動デバイス3と外部ケース5との間においては、外部ケース5に対して、クッション材9及び振動デバイス3の振動の妨げとならないように、厚みを薄くして剛性を低くすることが望ましい。なお、適切な柔軟性の材料を用いることにより、クッション材の厚み9a、9bは、同じ厚さにすることも可能である。
【0033】
振動デバイス3では、従来の振動デバイス103と同様に、コイル19に信号電流を印加することによりコイル19の軸方向に力が発生する。このため、前述したように、コイルプレート23を介してコイル19が固定された内部ケース11(以下、内部ケース11側とする)と、シャフト29を介してヨーク27と磁石21とヨーク25とが接続された側(以下、ヨーク27側)とが相対的に振動する。
【0034】
このとき、振動板15を介して接続される内部ケース11側とヨーク27側のどちらがより大きく振動するかは、それぞれの合計質量による。例えば、磁石21を有するヨーク27側は、内部ケース11側と比較して質量が大きくなる傾向がある。このように、ヨーク27側の合計質量が内部ケース11側の合計質量よりも大きい場合、ヨーク27側の慣性モーメントが大きいため、ヨーク27側と比較して、内部ケース11側がより大きく振動する。
【0035】
ここで、クッション材9の硬さ(例えばデュロメータ硬さ)は、緩衝部材7の硬さよりも硬い。このようにすることで、内部ケース11と外部ケース5との間の振動の伝達をより効率よく抑制することができる。例えば、クッション材9の表面を使用者に接触させてある程度の圧力で押圧すると、振動デバイス3の振動は、クッション材9を介して使用者へ伝わるとともに、緩衝部材7を介して外部ケース5に伝わる。この際、クッション材9の方が硬いため、より効率よく振動を使用者に伝達することができる。
【0036】
なお、緩衝部材7がないと、クッション材9を使用者に接触させた際に、振動デバイス3が後方に逃げてしまうため、クッション材9を使用者に所定の押圧力で押圧することが困難となる。一方、緩衝部材7が硬くなりすぎると、振動デバイス3の振動が外部ケース5に多く伝達される結果、クッション材9側から効率よく振動を使用者に伝達することができなくなる。
【0037】
このため、緩衝部材7を振動デバイス3の後方(振動デバイス3の振動面13aとは逆側)に配置することで、振動デバイス3の後方への逃げを抑制することができる。また、緩衝部材7の硬さをクッション材9よりも柔らかくし、振動デバイス3の周囲を空間とすることで、振動デバイス3から外部ケース5へ伝わることを抑制することができる。
【0038】
特に、内部ケース11側がより大きく振動する振動デバイス3を骨伝導デバイス1に組み込む場合は、クッション材9を緩衝部材7よりも硬くして内部ケース11側をできるだけ固定せずに可動しやすい構造にすることで、印加した信号電流により発生した振動をクッション材9から適切に出力できるようになる。高音領域の振動は合計質量が小さい側の振動が特に優勢となるため、内部ケース11側をより振動しやすい構造にすることで高音領域でも良好な出力を確保できる。
【0039】
このように、本実施形態の骨伝導デバイス1では、振動デバイス3の振動面13aとは逆側において振動デバイス3と外部ケース5の間に緩衝部材7が配置され、振動デバイス3の内部ケース11と外部ケース5との間に空間31が形成される。そのため、緩衝部材7や空間31で内部ケース11から外部ケース5への振動の伝達量を制御することができ、振動デバイス3に発生した振動を適切に出力することができる。
【0040】
また、骨伝導デバイス1では、振動デバイス3を覆う部位のクッション材9の厚み9aに対して振動デバイス3と外部ケース5との間におけるクッション材9の厚み9bを薄くすることにより、クッション材9が内部ケース11側の振動を阻害することが防止される。また振動デバイス3の振動面13aを覆うように緩衝部材7より硬いクッション材9を配置することにより、内部ケース11側が可動しやすい構成になる。そのため、内部ケース11側がより大きく振動する振動デバイス3を骨伝導デバイス1に組み込む場合にも振動デバイス3に発生した振動を適切に出力することができる。
【0041】
なお、本実施形態ではクッション材9が緩衝部材7より硬いものとしたが、緩衝部材7がクッション材9よりも硬くてもよい。骨伝導デバイスの耳介近傍に対する装着位置によっては、骨伝導デバイスと使用者の接触位置が、一方の面だけでなく複数方向になる場合がある。すなわち、クッション材9と外部ケース5の両方から音が伝わる場合がある。
【0042】
このような場合には、緩衝部材7をクッション材9より硬くすることにより、緩衝部材7を介して外部ケース5に振動デバイス3の振動の一部を伝達して出力することができる。すなわち、振動部を複数方向に形成するためには、振動をクッション材9のみに伝達するのではなく、あえてわずかに外部ケース5にも振動を伝達することで、より効率よく使用者に振動を伝えることも可能となる場合がある。
【0043】
また、振動デバイスの構成は図2に示したものに限らない。磁石により発生させた磁界中にコイルを配置し、そのコイルに電気信号を印加して、コイルに流れる電流によるローレンツ力により機械振動を生じさせる機構を有する振動デバイスであれば、本発明は、他のあらゆる振動デバイスを用いた骨伝導デバイスにも適用可能である。例えば、内部ケース11は円筒形でなく他の形状の筒形でもよい。また、ヨーク27側の合計質量よりも内部ケース11側の合計質量を大きくし、信号電流を印加したときにヨーク27側が内部ケース11側よりも大きく振動するものであってもよい。
【0044】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0045】
例えば、前述したように、本発明の骨伝導デバイスは、骨伝導ピックアップ(マイク)として使用することが可能である。一般的な骨伝導デバイスのスピーカ用途としての動作原理は、磁石から発生する磁界中にコイルを配置し、コイルに電流を流すことにより発生するローレンツ力でコイルを振動させ、その振動を骨を介して聴覚神経に伝え音として認識するものである。
【0046】
一方、骨伝導デバイスのピックアップ(マイク)用途としての動作原理は、磁石から発生する磁界中にコイルを配置し、コイルまたは磁石を振動させ、コイルに加わる磁界が変化することで電磁誘導による起電力を発生させるものである。本発明による骨伝導デバイスに振動を加えた結果、20Hz~20KHzの振動に対して十分な起電力が得られることを発見した。この結果、本発明による骨伝導デバイスはスピーカ機能にとどまらずピックアップ機能(マイク機能)としても使用可能である。
【符号の説明】
【0047】
1………骨伝導デバイス
3、103………振動デバイス
5、113a、113b………外部ケース
7………緩衝部材
9………クッション材
9a、9b………厚み
11………内部ケース
13、111………振動部材
13a………振動面
15………振動板
17………カバー
19、107………コイル
21、109………磁石
23………コイルプレート
25、27………ヨーク
29………シャフト
31………空間
105………ケース
図1
図2
図3