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特許7473250バッテリー装置およびバッテリー状態推定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】バッテリー装置およびバッテリー状態推定方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/367 20190101AFI20240416BHJP
   G01R 31/389 20190101ALI20240416BHJP
   G01R 31/382 20190101ALI20240416BHJP
   G01R 31/385 20190101ALI20240416BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240416BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
G01R31/367
G01R31/389
G01R31/382
G01R31/385
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H01M10/44 P
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022567847
(86)(22)【出願日】2021-06-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-19
(86)【国際出願番号】 KR2021008095
(87)【国際公開番号】W WO2022065635
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2022-11-11
(31)【優先権主張番号】10-2020-0122153
(32)【優先日】2020-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スン、ヨン チュル
(72)【発明者】
【氏名】キム、チョルテク
(72)【発明者】
【氏名】ヨム、インチョル
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-062191(JP,A)
【文献】特許第6409272(JP,B2)
【文献】特開2008-241246(JP,A)
【文献】特開2014-147222(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0052228(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/367
G01R 31/389
G01R 31/382
G01R 31/385
H01M 10/48
H01M 10/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリー、および
前記バッテリーの測定電流を受信し、前記測定電流に基づいて決定される第1パラメータおよび前記バッテリーの充電状態(state of charge、SOC)に基づいて決定される第2パラメータを含む複数のパラメータに基づいて前記バッテリーの電極表面での電位を示す表面SOCを推定するプロセッサー
を含み、
前記プロセッサーは、前記SOCと以前時点で推定した前記表面SOCの差に基づいて前記第2パラメータを決定する
バッテリー装置。
【請求項2】
バッテリー、および
前記バッテリーの測定電流を受信し、前記測定電流に基づいて決定される第1パラメータおよび前記バッテリーの充電状態(state of charge、SOC)に基づいて決定される第2パラメータを含む複数のパラメータに基づいて前記バッテリーの電極表面での電位を示す表面SOCを推定するプロセッサー
を含み、
前記プロセッサーは、以前時点で推定した前記表面SOC、前記第1パラメータおよび前記第2パラメータに基づいて現在時点での前記表面SOCを推定する
バッテリー装置。
【請求項3】
バッテリー、および
前記バッテリーの測定電流を受信し、前記測定電流に基づいて決定される第1パラメータおよび前記バッテリーの充電状態(state of charge、SOC)に基づいて決定される第2パラメータを含む複数のパラメータに基づいて前記バッテリーの電極表面での電位を示す表面SOCを推定するプロセッサー
を含み、
前記プロセッサーは、
前記表面SOCに基づいて前記バッテリーの開回路電圧を推定し、
前記SOCと前記表面SOCに基づいて前記バッテリーの過電圧を推定し、
前記バッテリーの電流に基づいて前記バッテリーの内部抵抗による電圧を推定し、
前記開回路電圧、前記過電圧、および前記内部抵抗による電圧に基づいて前記バッテリーの端子電圧を推定する
バッテリー装置。
【請求項4】
前記プロセッサーは、
前記バッテリーの温度、前記SOCおよび前記表面SOCのうちの少なくとも一つに基づいて係数を決定し、
前記測定電流に係数を反映して前記第1パラメータを決定する、請求項1から3のいずれか一項に記載のバッテリー装置。
【請求項5】
前記バッテリーの温度、前記SOCおよび前記表面SOCのうちの少なくとも一つと前記係数の間の相関関係を保存するメモリをさらに含み、
前記プロセッサーは前記相関関係に基づいて前記係数を決定する、請求項に記載のバッテリー装置。
【請求項6】
前記プロセッサーは、
前記バッテリーの温度、前記SOCおよび前記表面SOCのうちの少なくとも一つに基づいて係数を決定し、
前記SOCと前記表面SOCの差に前記係数を反映して前記第2パラメータを決定する、請求項に記載のバッテリー装置。
【請求項7】
前記バッテリーの温度、前記SOCおよび前記表面SOCのうちの少なくとも一つと前記係数の間の相関関係を保存するメモリをさらに含み、
前記プロセッサーは前記相関関係に基づいて前記係数を決定する、請求項に記載のバッテリー装置。
【請求項8】
前記プロセッサーは、前記第1パラメータと前記第2パラメータにそれぞれ前記以前時点と前記現在時点の間の時間変化を反映する、請求項に記載のバッテリー装置。
【請求項9】
前記プロセッサーは、前記表面SOC、前記SOC、および前記バッテリーの電流に基づいて前記バッテリーの端子電圧を推定する、請求項1または2に記載のバッテリー装置。
【請求項10】
入力としての前記SOCと出力としての前記開回路電圧の間の相関関係を保存するメモリをさらに含み、
前記プロセッサーは前記相関関係で前記入力として前記表面SOCを使用して前記開回路電圧を推定する、請求項に記載のバッテリー装置。
【請求項11】
前記プロセッサーは、前記SOCと前記表面SOCの比または差に基づいて前記過電圧を推定する、請求項または10に記載のバッテリー装置。
【請求項12】
バッテリーの状態推定方法であって、
前記バッテリーの測定電流に基づいて第1パラメータを決定する段階、
前記バッテリーの充電状態(state of charge、SOC)に基づいて第2パラメータを決定する段階、および
前記第1パラメータと前記第2パラメータを含む複数のパラメータに基づいて前記バッテリーの電極表面での電位を示す表面SOCを推定する段階
を含み、
前記第2パラメータを決定する段階は、
前記バッテリーの温度、前記SOC、および前記表面SOCのうちの少なくとも一つに基づいて係数を決定する段階、および
以前時点での前記SOCと前記表面SOCの差に前記係数を反映して前記第2パラメータを決定する段階
を含む
状態推定方法。
【請求項13】
バッテリーの状態推定方法であって、
前記バッテリーの測定電流に基づいて第1パラメータを決定する段階、
前記バッテリーの充電状態(state of charge、SOC)に基づいて第2パラメータを決定する段階、および
前記第1パラメータと前記第2パラメータを含む複数のパラメータに基づいて前記バッテリーの電極表面での電位を示す表面SOCを推定する段階
を含み、
前記表面SOCを推定する段階は、以前時点で推定した前記表面SOC、前記第1パラメータ、および前記第2パラメータに基づいて現在時点での前記表面SOCを推定する段階を含む
状態推定方法。
【請求項14】
バッテリーの状態推定方法であって、
前記バッテリーの測定電流に基づいて第1パラメータを決定する段階、
前記バッテリーの充電状態(state of charge、SOC)に基づいて第2パラメータを決定する段階、
前記第1パラメータと前記第2パラメータを含む複数のパラメータに基づいて前記バッテリーの電極表面での電位を示す表面SOCを推定する段階、
前記表面SOCに基づいて第1電圧を推定する段階、
前記SOCと前記表面SOCに基づいて第2電圧を推定する段階、
前記バッテリーの電流に基づいて第3電圧を推定する段階、および
前記第1電圧、前記第2電圧、および前記第3電圧に基づいて前記バッテリーの端子電圧を推定する段階
を含む状態推定方法。
【請求項15】
前記第1パラメータを決定する段階は、
前記バッテリーの温度、前記SOC、および前記表面SOCのうちの少なくとも一つに基づいて係数を決定する段階、および
前記測定電流に前記係数を反映して前記第1パラメータを決定する段階
を含む、請求項12から14のいずれか一項に記載の状態推定方法。
【請求項16】
バッテリー装置のプロセッサーによって実行され、記録媒体に保存されているプログラムであって、
前記プログラムは前記プロセッサーに、
前記バッテリー装置のバッテリーの測定電流に基づいて第1パラメータを決定する段階、
前記バッテリーの充電状態(state of charge、SOC)に基づいて第2パラメータを決定する段階、および
前記第1パラメータと前記第2パラメータを含む複数のパラメータに基づいて前記バッテリーの電極表面での電位を示す表面SOCを推定する段階
を実行させ
前記第2パラメータを決定する段階は、
前記バッテリーの温度、前記SOC、および前記表面SOCのうちの少なくとも一つに基づいて係数を決定する段階、および
以前時点での前記SOCと前記表面SOCの差に前記係数を反映して前記第2パラメータを決定する段階
を含む
プログラム。
【請求項17】
バッテリー装置のプロセッサーによって実行され、記録媒体に保存されているプログラムであって、
前記プログラムは前記プロセッサーに、
前記バッテリー装置のバッテリーの測定電流に基づいて第1パラメータを決定する段階、
前記バッテリーの充電状態(state of charge、SOC)に基づいて第2パラメータを決定する段階、および
前記第1パラメータと前記第2パラメータを含む複数のパラメータに基づいて前記バッテリーの電極表面での電位を示す表面SOCを推定する段階
を実行させ、
前記表面SOCを推定する段階は、以前時点で推定した前記表面SOC、前記第1パラメータ、および前記第2パラメータに基づいて現在時点での前記表面SOCを推定する段階を含む
プログラム。
【請求項18】
バッテリー装置のプロセッサーによって実行され、記録媒体に保存されているプログラムであって、
前記プログラムは前記プロセッサーに、
前記バッテリー装置のバッテリーの測定電流に基づいて第1パラメータを決定する段階、
前記バッテリーの充電状態(state of charge、SOC)に基づいて第2パラメータを決定する段階、
前記第1パラメータと前記第2パラメータを含む複数のパラメータに基づいて前記バッテリーの電極表面での電位を示す表面SOCを推定する段階、
前記表面SOCに基づいて第1電圧を推定する段階、
前記SOCと前記表面SOCに基づいて第2電圧を推定する段階、
前記バッテリーの電流に基づいて第3電圧を推定する段階、および
前記第1電圧、前記第2電圧、および前記第3電圧に基づいて前記バッテリーの端子電圧を推定する段階
を実行させる
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は2020年9月22日付大韓民国特許出願第10-2020-0122153に基づいた優先権の利益を主張し、当該大韓民国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
以下記載された技術は、バッテリー装置およびバッテリー状態推定方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
電気自動車またはハイブリッド自動車は主にバッテリーを電源として用いてモータを駆動することによって動力を得る自動車であって、内燃自動車の公害およびエネルギー問題を解決することができる代案という点から研究が活発に行われている。また、充電の可能なバッテリーは電気自動車以外に多様な外部装置で使用されている。
【0004】
バッテリーを管理する時に使用する重要な状態のうちの一つは充電状態(state of charge、SOC)である。充電状態は、バッテリーに貯蔵可能な最大電荷量を示す満充電容量(full charge capacity)に対する現在残っている容量の相対的比率を示すファクターである。このようなSOCはバッテリー内部の活物質の平均濃度を示す。
【0005】
バッテリーの端子電圧を推定するためにバッテリーのSOCを使用する等価回路モデルが主に使用されている。等価回路モデルでのSOCは開回路のように静的状態でバッテリー状態を推定するには適するが、バッテリーが持続的に充電または放電されるかバッテリーが装着された車両が走行中である場合のようにバッテリーが動的に使用される状況では電流効果を反映することができなくて状態推定の誤差が増加することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一実施形態は、バッテリーの状態を正確に推定することができるバッテリー管理システムおよびバッテリー状態推定方法を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態によれば、バッテリーとプロセッサーを含むバッテリー装置が提供される。前記プロセッサーは、前記バッテリーの測定電流を受信し、前記測定電流に基づいて決定される第1パラメータおよび前記バッテリーのSOCに基づいて決定される第2パラメータを含む複数のパラメータに基づいて前記バッテリーの電極表面での電位を示す表面SOCを推定する。
【0008】
一実施形態で、前記プロセッサーは、前記バッテリーの温度、前記SOCおよび前記表面SOCのうちの少なくとも一つに基づいて係数を決定し、前記測定電流に前記係数を反映して前記第1パラメータを決定することができる。
【0009】
一実施形態で、前記バッテリー装置は、前記バッテリーの温度、前記SOC、および前記表面SOCのうちの少なくとも一つと前記係数の間の相関関係を保存するメモリをさらに含むことができる。この場合、前記プロセッサーは、前記相関関係に基づいて前記係数を決定することができる。
【0010】
一実施形態で、前記プロセッサーは、前記SOCと以前時点で推定した前記表面SOCの差に基づいて前記第2パラメータを決定することができる。
【0011】
一実施形態で、前記プロセッサーは、前記バッテリーの温度、前記SOC、および前記表面SOCのうちの少なくとも一つに基づいて係数を決定し、前記SOCと前記表面SOCの差に前記係数を反映して前記第2パラメータを決定することができる。
【0012】
一実施形態で、前記バッテリー装置は、前記バッテリーの温度、前記SOC、および前記表面SOCのうちの少なくとも一つと前記係数の間の相関関係を保存するメモリをさらに含むことができる。前記プロセッサーは、前記相関関係に基づいて前記係数を決定することができる。
【0013】
一実施形態で、前記プロセッサーは、以前時点で推定した前記表面SOC、前記第1パラメータ、および前記第2パラメータに基づいて現在時点での前記表面SOCを推定することができる。
【0014】
一実施形態で、前記プロセッサーは、前記第1パラメータと前記第2パラメータにそれぞれ前記以前時点と前記現在時点の間の時間変化を反映することができる。
【0015】
一実施形態で、前記プロセッサーは、前記表面SOC、前記SOC、および前記バッテリーの電流に基づいて前記バッテリーの端子電圧を推定することができる。
【0016】
一実施形態で、前記プロセッサーは、前記表面SOCに基づいて前記バッテリーの開回路電圧を推定し、前記SOCと前記表面SOCに基づいて前記バッテリーの過電圧を推定し、前記バッテリーの電流に基づいて前記バッテリーの内部抵抗による電圧を推定し、前記開回路電圧、前記過電圧、および前記内部抵抗による電圧に基づいて前記端子電圧を推定することができる。
【0017】
一実施形態で、前記バッテリー装置は、入力としての前記SOCと出力としての前記開回路電圧の間の相関関係を保存するメモリをさらに含むことができる。この場合、前記プロセッサーは、前記相関関係で前記入力として前記表面SOCを使用して前記開回路電圧を推定することができる。
【0018】
一実施形態で、前記プロセッサーは、前記SOCと前記表面SOCの比または差に基づいて前記過電圧を推定することができる。
【0019】
他の実施形態によれば、バッテリーの状態推定方法が提供される。前記状態推定方法は、前記バッテリーの測定電流に基づいて第1パラメータを決定する段階、前記バッテリーのSOCに基づいて第2パラメータを決定する段階、および前記第1パラメータと前記第2パラメータを含む複数のパラメータに基づいて前記バッテリーの電極表面での電位を示す表面SOCを推定する段階を含む。
【0020】
一実施形態で、前記第1パラメータを決定する段階は、前記バッテリーの温度、前記SOC、および前記表面SOCのうちの少なくとも一つに基づいて係数を決定する段階、および前記測定電流に前記係数を反映して前記第1パラメータを決定する段階を含むことができる。
【0021】
一実施形態で、前記第2パラメータを決定する段階は、前記バッテリーの温度、前記SOC、および前記表面SOCのうちの少なくとも一つに基づいて係数を決定する段階、および前記プロセッサーが以前時点での前記SOCと前記表面SOCの差に前記係数を反映して前記第2パラメータを決定する段階を含むことができる。
【0022】
一実施形態で、前記表面SOCを推定する段階は、以前時点で推定した前記表面SOC、前記第1パラメータ、および前記第2パラメータに基づいて現在時点での前記表面SOCを推定する段階を含むことができる。
【0023】
一実施形態で、前記状態推定方法は、前記表面SOCに基づいて第1電圧を推定する段階、前記SOCと前記表面SOCに基づいて第2電圧を推定する段階、前記バッテリーの電流に基づいて第3電圧を推定する段階、および前記第1電圧、前記第2電圧、および前記第3電圧に基づいて前記バッテリーの端子電圧を推定する段階をさらに含むことができる。
【0024】
他の実施形態によれば、バッテリー装置のプロセッサーによって実行され、記録媒体に保存されているプログラムが提供される。前記プログラムは、前記プロセッサーが、前記バッテリーの測定電流に基づいて第1パラメータを決定する段階、前記バッテリーのSOCに基づいて第2パラメータを決定する段階、前記第1パラメータと前記第2パラメータを含む複数のパラメータに基づいて前記バッテリーの電極表面での電位を示す表面SOCを推定する段階を実行するようにする。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一実施形態によれば、バッテリーの静的状態だけでなく充電または放電が繰り返される動的状態でもバッテリーの状態を正確に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】一実施形態によるバッテリー装置を示す図である。
【0027】
図2】一実施形態によるバッテリーの構造を示す図である。
【0028】
図3】バッテリーの状態変化の一例を示す図である。
【0029】
図4】一実施形態によるバッテリー管理システムでの表面SOC推定を説明する図である。
【0030】
図5】一実施形態によるバッテリーで温度およびSOCと反応速度係数の間の相関関係の一例を示す図である。
【0031】
図6】一実施形態によるバッテリーで温度およびSOCと拡散係数の間の相関関係の一例を示す図である。
【0032】
図7】一実施形態によるバッテリー管理システムでの表面SOC推定方法を示すフローチャートである。
【0033】
図8】一実施形態によるバッテリー管理システムでのバッテリー端子電圧推定を説明する図である。
【0034】
図9】一実施形態によるバッテリー管理システムでのバッテリー端子電圧推定方法を示すフローチャートである。
【0035】
図10】一実施形態によるバッテリーでSOCと開回路電圧の間の相関関係の一例を示す図である。
【0036】
図11】一実施形態によるバッテリー端子電圧推定方法によって推定された端子電圧と実際端子電圧の間の関係を示す図である。
【0037】
図12】一実施形態によるバッテリー端子電圧推定方法によって推定された端子電圧と実際端子電圧の間の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施形態について本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように詳しく説明する。しかし、本発明は様々な異なる形態に実現することができ、ここで説明する実施形態に限定されない。そして図面で本発明を明確に説明するために説明上不必要な部分は省略し、明細書全体にわたって類似の部分については類似の図面符号を付けた。
【0039】
ある構成要素が他の構成要素に"連結されて"いると言及された時には、その他の構成要素に直接的に連結されていることもあるが、中間に他の構成要素が存在することもあると理解されなければならないはずである。反面、ある構成要素が他の構成要素に"直接連結されて"いると言及された時には、中間に他の構成要素が存在しないと理解されなければならないはずである。
【0040】
以下の説明で単数で記載された表現は"一つ"または"単一"などの明示的な表現を使用しない限り、単数または複数に解釈することができる。
【0041】
図面を参照して説明したフローチャートで、動作順序は変更でき、様々の動作が併合されるか、ある動作が分割され、特定動作は行われないことがある。
【0042】
図1は一実施形態によるバッテリー装置を示す図であり、図2は一実施形態によるバッテリーの構造を示す図であり、図3はバッテリーの状態変化の一例を示す図である。
【0043】
図1を参照すれば、バッテリー装置100は、外部装置に電気的に連結することができる構造を有する。外部装置が負荷である場合、バッテリー装置100は負荷に電力を供給する電源として動作して放電される。外部装置が充電器である場合、バッテリー装置100は充電器を通じて外部電力の供給を受けて充電される。負荷として動作する外部装置は例えば、電子装置、移動手段またはエネルギー貯蔵システム(energy storage system、ESS)であってもよく、移動手段は例えば、電気自動車、ハイブリッド自動車またはスマートモビリティー(smart mobility)などの車両であってもよい。
【0044】
バッテリー装置100は、バッテリー110、電圧測定回路120、温度センサー130、電流センサー140、およびプロセッサー150を含む。
【0045】
バッテリー110は、充電可能な二次電池である。バッテリー110は、例えばリチウムイオン電池またはリチウムイオンポリマー電池のようなリチウム電池またはニッケル-カドミウム(NiCd)電池またはニッケル水素(NiMH)電池のようなニッケル電池であってもよい。一実施形態で、バッテリー110は、単一バッテリーセル、複数のバッテリーセルのアセンブリーまたは複数のアセンブリーが直列または並列に連結されたバッテリーモジュール、複数のバッテリーモジュールが直列または並列に連結されたバッテリーパック、または複数のバッテリーパックが直列または並列に連結されたシステムであってもよい。
【0046】
電圧測定回路120は、バッテリー110の電圧を測定する。一実施形態で、電圧測定回路120は、各バッテリーセルの電圧を測定することができる。
【0047】
温度センサー130は、バッテリー110の温度を測定する。一実施形態で、温度センサー130は、バッテリー110の所定位置の温度を測定することができる。一実施形態で、バッテリー110で複数の位置の温度を測定するために複数の温度センサー130を提供することができる。
【0048】
電流センサー140はバッテリー110の正極出力端子または負極出力端子に連結されており、バッテリー110の電流、即ち、充電電流または放電電流を測定する。
【0049】
プロセッサー150は、電圧測定回路120で測定されたバッテリー110の電圧、温度センサー130で測定されたバッテリー110の温度または電流センサー140で測定されたバッテリー110の電流に基づいてバッテリー110の状態を推定する。一実施形態で、バッテリー装置100はプロセッサー150での状態推定のために必要なデータを保存するメモリ160をさらに含むことができる。
【0050】
一実施形態で、プロセッサー150はバッテリー管理システムを形成することができる。一実施形態で、バッテリー管理システムは、電圧測定回路120、温度センサー130または電流センサー140のうちの少なくとも一つをさらに含むことができる。
【0051】
図2を参照すれば、バッテリー110は、正極111、負極112、および電解質113を含む。図2に示したバッテリー110の構造は説明の便宜のために概略的に示された例であり、バッテリー110の構造はこれに限定されない。図2では説明の便宜上、バッテリー110内部で化学反応を起こす活物質(active material)をリチウムと仮定する。
【0052】
バッテリー110から外部装置に電力を供給するためにバッテリー110が放電される場合、図2に示したように、負極112の表面でリチウムイオン(Li)が負極112から放出される化学反応(酸化反応)が起こることになる。放出されたリチウムイオン(Li)は電解質113を通過して正極111の表面に移動することになる。これにより、正極111の表面ではリチウムイオン(Li)が正極111に吸収される化学反応(還元反応)が発生することになる。
【0053】
バッテリー110を充電する場合、正極111と電解質113の間の境界面では、リチウムイオン(Li)が正極111から放出される化学反応(酸化反応)が起こることになる。放出されたリチウムイオン(Li)は電解質113を通過して負極112の表面に移動することになる。これにより、負極112の表面ではリチウムイオン(Li)が負極112に吸収される化学反応(還元反応)が発生することになる。
【0054】
バッテリー110の端子電圧は、正極111と負極112に該当するバッテリー電極表面での電位(potential)、電解質113などによって形成される内部抵抗によって発生する電圧降下および電気化学反応による過電圧(over-potential)が合わされた形態に見えることがある。過電圧はバッテリーの各電極での分極(polarization)による平衡電位からの離脱による電圧降下を示すことができる。過電圧は分極電圧ともいう。
【0055】
図3に示したように、バッテリー110が放電を開始すれば、バッテリー110の端子電圧(Vt)は内部抵抗(Rohmic)による電圧降下(Vohmic)によって瞬間的に低下した後、過電圧の過渡期的な変化(V1)によって漸進的に減少する。一般に、過電圧の過渡期的な変化(V1)は抵抗とキャパシタの並列回路で定義される時定数による変化で示すことができる。この時、実際バッテリー110の端子電圧(Vt)は過電圧の過渡期的な変化(V1)と共に一定の傾きを有して低下する。即ち、図3に示したように、一定の傾きによる減少(Vk)と過電圧の過渡期的な変化による減少(V1)が共に発生する。このような傾きは、バッテリー110に流れる電流の強さによって決定される。このようにバッテリー110の端子電圧(Vt)が一定の傾きを有して低下する現象は活物質の酸化/還元反応による電極表面での活物質の濃度が平均濃度に比べて低下するため発生する。即ち、一定の傾きによる電圧変化(Vk)は、酸化/還元の反応速度による電圧変化(放電または充電による変化)と電流が無くなった以後の緩和(relaxation)区間で拡散抵抗(濃度差)による電圧変化によって発生することになる。
【0056】
一般にバッテリー110の状態は、バッテリー110全体の平均濃度を示す充電状態(state of charge、SOC)で決定され、バッテリー110の端子電圧(Vt)はバッテリー110の開回路(open circuit)電圧、内部抵抗(Rohmic)による電圧降下(Vohmic)および過電圧によって推定される。この時、開回路電圧はバッテリー110のSOCに基づいて推定される。しかし、SOCはバッテリー電極表面での濃度でなくバッテリー110内部の平均濃度(例えば、電極での平均濃度)を示すものであって、図3に示したようにバッテリー110の放電時になだらかに減少する。したがって、SOCによってバッテリー110の開回路電圧を推定する場合、バッテリー110の端子電圧を正確に推定することができないという問題点がある。これにより、一実施形態ではバッテリー110の電極表面での電位を決定することができる表面充電状態(state of charge、SOC)を提案する。このような表面SOCは、バッテリー110の電極表面での活物質の濃度を示すことができる。
【0057】
図4は一実施形態によるバッテリー管理システムでの表面SOC推定を説明する図であり、図5は一実施形態によるバッテリーで温度およびSOCと反応速度係数の間の相関関係の一例を示す図であり、図6は一実施形態によるバッテリーで温度およびSOCと拡散係数の間の相関関係の一例を示す図である。
【0058】
図4を参照すれば、バッテリー管理システムのプロセッサー(例えば、図1の150)は表面SOC推定モデル410を使用してバッテリー110の電流を含むバッテリーの測定情報からバッテリー(例えば、図1の110)の表面SOCを推定することができる。一実施形態で、表面SOCは百分率で推定することができる。一実施形態で、プロセッサー150は、表面SOC推定モデル410を使用してバッテリー110の電流を含むバッテリーの測定情報から平均濃度を示すバッテリー110のSOCを推定することができる。
【0059】
図3を参照して説明したように、バッテリー110の放電時にバッテリー110の端子電圧は一定の傾きによって低下することがある。バッテリー110の端子電圧が一定の傾きを有して低下する現象は活物質の酸化/還元反応による電極表面での活物質の濃度が低下して発生するので、一定の傾きはバッテリー110の電流に比例する。したがって、表面SOC推定モデル410は、バッテリー110の電流によって決定される反応速度に基づいて表面SOCを推定することができる。一実施形態で、反応速度は、バッテリー110の電流に特定係数を反映した値に基づいて決定することができる。以下、このような特定ファクターを"反応速度(kinetics)係数"という。一実施形態で、反応速度は、バッテリー110の電流と反応速度係数の積に基づいて決定することができる。
【0060】
酸化/還元反応の反応速度は、バッテリー110の温度およびバッテリー110内部の平均濃度によって決定することができる。したがって、一実施形態で、反応速度係数はバッテリー110の温度とバッテリー110のSOCによって変わることになる。一実施形態で、バッテリー110のSOCは、平均濃度を示すバッテリー110のSOCを含むことができる。他の実施形態で、バッテリー110のSOCはバッテリー110の表面SOCを含むことができる。また他の実施形態で、バッテリー110のSOCは平均濃度を示すバッテリー110のSOCとバッテリー110の表面SOCを含むことができる。即ち、表面SOC推定モデル410は、バッテリー110の温度とバッテリー110のSOCに基づいて反応速度係数を決定することができる。一実施形態で、図5に示したように、実験を通じてバッテリー110の温度およびバッテリー110のSOCと反応速度係数の間の対応関係を予め定義しておくことができる。一実施形態で、バッテリー管理システムのメモリがこのような対応関係を例えばルックアップテーブル形態に保存していてもよい。一実施形態で、表面SOC推定モデル410はバッテリー110の温度とバッテリー110のSOCのうちのいずれか一つに基づいて反応速度係数を決定することもできる。
【0061】
電極表面での酸化/還元反応によって電極表面の濃度が平均濃度より低下すれば、電極表面の濃度と平均濃度の間の濃度差による拡散(diffusion)速度によって電極表面での反応が低下される抵抗成分が発生することがある。このような拡散による抵抗(以下、"拡散抵抗"という)は逆方向に酸化/還元反応を抑制する力として発生することがある。したがって、表面SOC推定モデル410は表面SOCを推定する時、拡散抵抗を追加的に反映する。一実施形態で、拡散抵抗は、平均濃度を示すSOCと電極表面の濃度を示す表面SOCの差によって決定することができる。一実施形態で、表面SOC推定モデル410は、SOCと表面SOCの差に特定係数を反映した値に基づいて表面SOCを推定することができる。以下、このような特定係数を"拡散係数"という。一実施形態で、表面SOC推定モデル410は、SOCと表面SOCの差と拡散係数の積に基づいて表面SOCを推定することができる。
【0062】
酸化/還元反応の反応速度は、バッテリー110の温度およびバッテリー110内部の平均濃度によって決定することができる。したがって、一実施形態で、酸化/還元反応を抑制する拡散係数はバッテリー110の温度とバッテリー110のSOCによって変わることになる。一実施形態で、バッテリー110のSOCは平均濃度を示すバッテリー110のSOCを含むことができる。他の実施形態で、バッテリー110のSOCはバッテリー110の表面SOCを含むことができる。また他の実施形態で、バッテリー110のSOCは平均濃度を示すバッテリー110のSOCとバッテリー110の表面SOCを含むことができる。即ち、表面SOC推定モデル410は、バッテリー110の温度とバッテリー110のSOCに基づいて拡散係数を決定することができる。一実施形態で、図6に示したように、実験を通じてバッテリー110の温度およびバッテリー110のSOCと拡散係数の間の対応関係を予め定義しておくことができる。一実施形態で、バッテリー管理システムのメモリがこのような対応関係を例えばルックアップテーブル形態に保存していてもよい。一実施形態で、表面SOC推定モデル410は、バッテリー110の温度とバッテリー110のSOCのうちのいずれか一つに基づいて拡散係数を決定することもできる。
【0063】
一実施形態で、表面SOC推定モデル410は以前時点で推定された表面SOCに少なくとも以前時点から現在時点までの反応速度による変化および以前時点から現在時点までの拡散抵抗による変化を反映して現在時点での表面SOCを推定することができる。一実施形態で、プロセッサー150は、表面SOCの推定のために表面SOCの初期値(SSOC[0])を定めておくことができる。
【0064】
図7は、一実施形態によるバッテリー管理システムでの表面SOC推定方法を示すフローチャートである。
【0065】
図7を参照すれば、プロセッサー(例えば、図1の150)はバッテリー(例えば、図1の110)の測定情報を表面SOC推定モデルに入力する(S710)。バッテリー110の測定情報はバッテリー110の電流を含むことができる。一実施形態で、バッテリー110の電流は電流センサー(例えば、図1の140)によって測定されたバッテリー110の充電または放電電流であってもよい。一実施形態で、バッテリー110の測定情報はバッテリー110の測定電圧をさらに含むことができる。一実施形態で、バッテリー110の測定電圧は平均セル電圧であってもよく、平均セル電圧は複数のバッテリーセルの電圧の平均値であってもよい。一実施形態で、バッテリー110の測定電圧は複数のバッテリーセルの電圧の和であってもよい。一実施形態で、バッテリー110の測定情報はバッテリー110の温度をさらに含むことができる。一実施形態で、バッテリー110の温度は温度センサー(例えば、図1の130)によって測定された温度であってもよい。
【0066】
プロセッサー150は表面SOC推定モデルを通じてt時点での複数のパラメータを決定する(S720、S730)。複数のパラメータは反応速度に該当するパラメータおよび拡散抵抗に該当するパラメータを含むことができる。
【0067】
プロセッサー150は表面SOC推定モデルを通じてt時点でのバッテリー110の反応速度(K[t])を決定する(S720)。プロセッサー150は反応速度係数(Kc)とt時点でのバッテリー110の温度の積(Kc*I[t])で反応速度(K[t])を計算することができる。一実施形態で、プロセッサー150はメモリからバッテリー110の温度とバッテリー110のSOCに対応する反応速度係数(Kc)を抽出することができる。一実施形態で、メモリはバッテリー管理システムのメモリ(例えば、図1の160)であってもよい。一実施形態で、プロセッサー150はバッテリー110の測定情報に基づいてバッテリー110のSOCを推定することができる。一実施形態で、プロセッサー150はすでに知られた多様な方法のうちのいずれか一つの方法を使用してSOCを推定することができ、本発明はSOCの推定方法に限定されない。
【0068】
また、プロセッサー150は表面SOC推定モデルを通じてt時点でのバッテリー110の拡散抵抗(D[t])を決定する(S730)。プロセッサー150はt時点でのSOCと表面SOCの差(ΔSOC[t])と拡散係数(Dc)の積(Dc*ΔSOC[t])で拡散抵抗(D[t])を計算することができる。一実施形態で、プロセッサー150はメモリからバッテリー110の温度とバッテリー110のSOCに対応する拡散係数(Dc)を抽出することができる。一実施形態で、メモリはバッテリー管理システムのメモリ160であってもよい。
【0069】
その次に、プロセッサー150は表面SOC推定モデルを通じてt時点で推定した表面SOC(SSOC[t])、反応速度(K[t])および拡散抵抗(D[t])に基づいて(t+1)時点での表面SOC(SSOC[t+1])を推定する(S740)。一実施形態で、プロセッサー150は数式1または2のように表面SOC(SSOC[t+1])を推定することができる。
【0070】
数式1
【数1】
【0071】
数式2
【数2】
【0072】
数式1および2では、Δtは(t+1)時点とt時点の間の時間変化(即ち、時間差)である。
【0073】
一実施形態で、表面SOC推定モデルは、表面SOCの推定を反復的に行うことによって表面SOCを正確に推定することができる。一実施形態で、表面SOC推定モデルとして適応フィルターを使用することができる。
【0074】
前述の実施形態によれば、バッテリー110の電極表面の電位を正確に示すことができる表面SOCを使用することによってバッテリー110の状態を正確に推定することができる。
【0075】
以下、表面SOCを使用してバッテリー110の端子電圧を推定する実施形態について図8図9および図10を参照して説明する。
【0076】
図8は一実施形態によるバッテリー管理システムでのバッテリー端子電圧推定を説明する図であり、図9は一実施形態によるバッテリー管理システムでのバッテリー端子電圧推定方法を示すフローチャートであり、図10は一実施形態によるバッテリーでSOCと開回路電圧の間の相関関係の一例を示す図である。
【0077】
図8および図9を参照すれば、プロセッサー(例えば、図1の150)は表面SOC推定モデル(例えば図4の410)を使用して表面SOCを推定する。即ち、図7を参照して説明したように、プロセッサーは、バッテリー(図1の110)の測定情報を表面SOC推定モデル410に入力し(S910)、バッテリー110の反応速度(K[t])および拡散抵抗(D[t])を計算し(S920、S930)、反応速度(K[t])および拡散抵抗(D[t])に基づいて表面SOC(SSOC[t+1])を推定する(S940)。
【0078】
その次に、プロセッサー150は、SOC、表面SOCおよびバッテリー110の電流を端子電圧推定モデル810に入力し、端子電圧推定モデル810を使用してバッテリー110の端子電圧を推定する。
【0079】
このために、プロセッサー150は表面SOCに基づいてバッテリー110の開回路電圧を推定する(S950)。プロセッサー150は表面SOC(SSOC)と開回路電圧(Voc)の間の非線形的な関数関係(Voc=f(SSOC))に基づいて開回路電圧(Voc)を推定することができる。一般に、バッテリー管理システムのメモリ(例えば、図1の160)はバッテリー110の開回路電圧(Voc)とバッテリー110のSOCの間の相関関係を予め保存している。例えば、開回路電圧(Voc)とSOCの間の相関関係10が図10に示したように定義されていてもよい。この場合、プロセッサー150はSOCの代わりに表面SOCを入力して開回路電圧(Voc)を決定する。例えば、表面SOCが70%である場合、プロセッサー150は70%のSOCに対応する開回路電圧をメモリから抽出することができる。一実施形態で、開回路電圧とSOCの間の相関関係が温度別に保存されていてもよい。この場合、プロセッサー150は多様な相関関係のうちのバッテリー110の温度に対応する開回路電圧とSOCの間の相関関係に基づいて開回路電圧を決定することができる。
【0080】
また、プロセッサー150は分極による過電圧を推定する(S960)。過電圧は電極表面の電位が平衡電位からの離脱によって発生するので、プロセッサー150は電極表面の電位を示す表面SOCと平衡電位を示すSOCに基づいて過電圧を推定する。一実施形態で、プロセッサー150はSOCと表面SOCを比較した値に基づいて過電圧を推定することができる。一実施形態で、SOCと表面SOCを比較した値はSOCと表面SOCの比であってもよい。他の実施形態で、SOCと表面SOCを比較した値はSOCと表面SOCの差であってもよい。一実施形態で、プロセッサー150は端子電圧推定モデル810を通じてt時点での過電圧(V1[t])、SOC(SOC[t])および表面SOC(SSOC[t])に基づいて(t+1)時点での過電圧(V1[t+1])を推定することができる。一実施形態で、プロセッサー150は例えば数式3のように過電圧(V1[t+1])を推定することができる。
【0081】
数式3
【数3】
【0082】
数式3で、αは過電圧係数である。
【0083】
一実施形態で、過電圧係数(α)は実験によって決定することができる。一実施形態で、過電圧係数(α)は、適応フィルターを使用して過電圧推定を反復的に行うことによって決定することができる。一実施形態で、プロセッサー150は過電圧の推定のために過電圧の初期値(V1[0])を定めておくことができる。
【0084】
また、プロセッサー150はバッテリー110の内部抵抗による電圧を推定する(S970)。プロセッサー150はバッテリー110の内部抵抗とバッテリー110の電流の積で内部抵抗による電圧(Vohmic)を推定する。一実施形態で、プロセッサー150はすでに知られた多様な方法のうちのいずれか一つの方法を使用して内部抵抗を推定することができ、本発明は内部抵抗の推定方法に限定されない。
【0085】
その次に、プロセッサー150は開回路電圧(Voc)、過電圧(V1)および内部抵抗による電圧(Vohmic)に基づいてバッテリー110の端子電圧を決定する(S980)。一実施形態で、数式4のようにプロセッサー150は開回路電圧(Voc)、過電圧(V1)および内部抵抗による電圧(Vohmic)の和をバッテリー110の端子電圧(Vt)に決定することができる。
【0086】
数式4
【数4】
【0087】
以上でバッテリーの放電観点で表面SOC推定方法または端子電圧推定方法について説明したが、前述の実施形態による表面SOC推定方法または端子電圧推定方法はバッテリーの充電にも同一に適用することができる。図3に示したように、放電では表面濃度を示す表面SOCが平均濃度を示すSOCより低く示されるが、充電では表面SOCがSOCより高く示されることになる。
【0088】
図11および図12は、一実施形態によるバッテリー端子電圧推定方法によって推定された端子電圧と実際端子電圧の間の関係を示す図である。図11および図12では表面SOCが5%、60%および100%である場合の推定された端子電圧と実際端子電圧が示されており、図11はバッテリーの充電時の端子電圧を示し、図12はバッテリーの放電時の端子電圧を示す。
【0089】
図11および図12に示したように、一実施形態によるバッテリー端子電圧推定方法によって推定された端子電圧(実線)は実際端子電圧(点線)と同様に変わることが分かる。
【0090】
前述の実施形態によれば、バッテリーの電流および活物質の酸化/還元反応に基づいて電極表面での電位を示す表面SOCを推定することによって、バッテリーの静的状態だけでなく充電または放電が繰り返される動的状態でもバッテリーの状態を正確に推定することができる。
【0091】
一実施形態で、プロセッサー(例えば、図1の150)は、前述の表面SOC推定方法または端子電圧推定方法を実行するためのプログラムに対する演算を行うことができる。表面SOC推定方法または端子電圧推定方法を実行するためのプログラムをメモリにロードすることができる。このようなメモリは、テーブルを保存するメモリ(例えば、図1の160)と同一のメモリであるか別途のメモリであってもよい。プログラムは、メモリにロードされる時、プロセッサー150が表面SOC推定方法または端子電圧推定方法を行うようにする命令語を含むことができる。即ち、プロセッサーは、プログラムの命令語を実行することによって表面SOC推定方法または端子電圧推定方法のための動作を行うことができる。
【0092】
以上で多様な実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるのではなく、次の特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を用いた当業者の様々な変形および改良形態も本発明の権利範囲に属するのである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12