(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】両面研磨装置及び両面研磨方法
(51)【国際特許分類】
B24B 37/08 20120101AFI20240416BHJP
B24B 37/013 20120101ALI20240416BHJP
B24B 37/005 20120101ALI20240416BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20240416BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
B24B37/08
B24B37/013
B24B37/005 A
B24B49/12
H01L21/304 621A
H01L21/304 622R
(21)【出願番号】P 2023204053
(22)【出願日】2023-12-01
【審査請求日】2023-12-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000107745
【氏名又は名称】スピードファム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田山 遊
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-189524(JP,A)
【文献】特開2023-119528(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/08
B24B 37/013
B24B 37/005
B24B 49/12
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下定盤と前記下定盤に対向して配置される上定盤との間に円板状のワークを挟持し、前記ワークに荷重を付与した状態で前記下定盤及び前記上定盤と前記ワークとを相対的に移動させて前記ワークの表面及び裏面を研磨する研磨機と、
前記研磨機による前記ワークの研磨中に前記ワークの厚みを測定する厚み測定器と、
前記厚み測定器の測定結果に基づいて前記研磨機を制御する制御部と、を備えた両面研磨装置であって、
前記ワークには、外周端から径方向内側に向かった所定範囲の外周領域と、前記外周領域からワーク中心までの範囲の面内領域と、が設定され、
前記制御部は、
前記荷重を目標荷重に維持しながら前記ワークを研磨する主研磨の研磨条件と、前記外周領域の平坦度である外周平坦度と、前記面内領域の平坦度である面内平坦度との相関関係を学習させた第1学習器と、
前記荷重を次第に低減させながら前記ワークを研磨する終点研磨の研磨条件と、前記主研磨の停止時点の前記面内平坦度の変化度合と、前記主研磨の停止時点の前記外周平坦度の変化度合と、前記終点研磨中の前記外周平坦度の変化量との相関関係を学習させた第2学習器と、
補正時点で設定されている前記主研磨の研磨条件と、補正時点の前記外周平坦度を前記第1学習器に入力して得られた前記面内平坦度の推定値に基づいて前記面内平坦度の補正目標値を求め、前記面内平坦度の補正目標値と、前記外周平坦度の目標値と、を前記第1学習器に入力して得られた前記主研磨の研磨条件によって、補正時点で設定されている前記主研磨の研磨条件を補正する主研磨条件補正部と、
前記終点研磨の研磨条件と、演算時点の前記面内平坦度の変化度合と、演算時点の前記外周平坦度の変化度合を前記第2学習器に入力して前記終点研磨中の前記外周平坦度の変化量を取得し、前記外周平坦度の変化量と、前記外周平坦度の目標値とに基づいて、前記主研磨の停止条件を設定する主研磨停止条件設定部と、
を有することを特徴とする両面研磨装置。
【請求項2】
請求項1に記載された両面研磨装置において、
前記面内平坦度は、前記面内領域の厚みデータ群に対して設定された近似直線の傾き値であり、前記外周平坦度は、前記面内平坦度を基準とした前記外周領域の厚みデータ群に対して設定された近似直線の傾き値の連続化処理を行って求められる
ことを特徴とする両面研磨装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された両面研磨装置において、
前記外周領域は、前記ワークの径方向に沿って複数の区画に分割され、前記外周平坦度は、分割された前記外周領域の各区画ごとに算出される
ことを特徴とする両面研磨装置。
【請求項4】
請求項3に記載された両面研磨装置において、
前記面内領域に隣接した区画を最内区画とし、前記最内区画よりも径方向外側の区画を外側区画としたとき、
前記最内区画の平坦度は、前記面内平坦度を基準とした前記最内区画の厚みデータ群に対して設定された近似直線の傾き値の連続化処理を行って求められ、
前記外側区画の平坦度は、前記外側区画の径方向内側に隣接する区画の平坦度を基準とした前記外側区画の厚みデータ群に対して設定された近似直線の傾き値の連続化処理を行って求められる
ことを特徴とする両面研磨装置。
【請求項5】
下定盤と前記下定盤に対向して配置される上定盤との間に円板状のワークを挟持させ、前記ワークに荷重を付与した状態で前記下定盤及び前記上定盤と前記ワークとを相対的に移動させて前記ワークの表面及び裏面を研磨する両面研磨方法において、
前記荷重を目標荷重に維持しながら前記ワークを研磨する主研磨の研磨条件と、前記ワークの外周端から径方向内側に向かった所定範囲に設定された外周領域の平坦度である外周平坦度と、前記ワークの前記外周領域からワーク中心までの範囲の面内領域の平坦度である面内平坦度と、の相関関係を学習させた第1学習器と、
前記荷重を次第に低減させながら前記ワークを研磨する終点研磨の研磨条件と、前記主研磨の停止時点の前記面内平坦度の変化度合と、前記主研磨の停止時点の前記外周平坦度の変化度合と、前記終点研磨中の前記外周平坦度の変化量との相関関係を学習させた第2学習器と、を用い、
前記外周平坦度の目標値と、前記面内平坦度の目標値とを設定するステップと、
前記外周平坦度及び前記面内平坦度の目標値を設定した後、前記荷重を次第に増大させながら前記ワークを研磨する初期研磨を行うステップと、
前記初期研磨が終了した後、前記主研磨を開始するステップと、
前記主研磨の実行中、補正時点で設定されている前記主研磨の研磨条件と、補正時点の前記外周平坦度を前記第1学習器に入力して得られた前記面内平坦度の推定値に基づいて前記面内平坦度の補正目標値を求め、前記面内平坦度の補正目標値と、前記外周平坦度の目標値と、を前記第1学習器に入力して得られた前記主研磨の研磨条件によって、補正時点で設定されている前記主研磨の研磨条件を補正するステップと、
前記主研磨の実行中、前記終点研磨の研磨条件と、演算時点の前記面内平坦度の変化度合と、演算時点の前記外周平坦度の変化度合を前記第2学習器に入力して前記終点研磨中の前記外周平坦度の変化量を取得し、前記外周平坦度の変化量と、前記外周平坦度の目標値とに基づいて、前記主研磨の停止条件を設定するステップと、
前記主研磨の停止条件が成立した後、前記終点研磨を実行するステップと、
を備えることを特徴とする両面研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円板状のワークの表面及び裏面を研磨する両面研磨装置及び両面研磨方法に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコンウェーハ等の円板状のワークの表面及び裏面を上下の定盤によって研磨する際、定盤間距離とワーク平坦度との関係を学習させた人工知能モデルに、例えば所望のワーク平坦度を入力して得られた最適な定盤間距離に基づいて制御する両面研磨装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、ワーク全体の形状指標が、ワーク全体の形状指標の設定値になるタイミングでワークの両面研磨を停止する両面研磨装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2022-189524号公報
【文献】WO2022/254856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、両面研磨装置においてワークを研磨するには、まず、ワークに付与する荷重を次第に増大させ、荷重が所定荷重に達する等の条件が成立したら、ワークに付与する荷重を目標荷重に維持しながらワークを所定時間研磨する主研磨を行う。そして、主研磨の開始から所定時間が経過したら主研磨を停止する。その後、ワークに付与する荷重を次第に低減させ、ワークの研磨が完了する。ここで、主研磨後にワークに付与する荷重を次第に低減させるときにもワークの形状変化は生じ、しかもその形状変化量は、研磨条件や副資材の状態等によって異なるため一定ではない。そのため、主研磨後のワークの形状変化量を研磨装置のオペレータが推定し、オペレータが手作業で主研磨を停止するタイミング等を調整している。しかしながら、オペレータの感覚に依存して主研磨の停止タイミング等が調整されるため、ワークの仕上がり品質にばらつきが生じるという問題が生じる。
【0005】
一方、特許文献1や特許文献2に記載された従来の両面研磨装置では、主研磨時の研磨条件を設定しているだけである。すなわち、従来の両面研磨装置では、主研磨時に、定盤間距離を制御したり、ワーク全体の形状指標が設定値になるタイミングでワークの主研磨を停止したりする。しかしながら、主研磨後にワークに付与する荷重を次第に低減させていくときにもワークの形状が変化することが考慮されていない。そのため、最終的な研磨終了時のワーク形状が目標形状に一致せず、目標形状から外れて所望のワーク形状を得ることができないことがある。
【0006】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、最終的な研磨終了時のワーク形状が目標形状から逸脱することを抑制でき、所望のワーク形状を得ることを可能にする両面研磨装置及び両面研磨方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の両面研磨装置は、下定盤と前記下定盤に対向して配置される上定盤との間に円板状のワークを挟持し、前記ワークに荷重を付与した状態で前記下定盤及び前記上定盤と前記ワークとを相対的に移動させて前記ワークの表面及び裏面を研磨する研磨機と、前記研磨機による前記ワークの研磨中に前記ワークの厚みを測定する厚み測定器と、前記厚み測定器の測定結果に基づいて前記研磨機を制御する制御部と、を備えた両面研磨装置であって、前記ワークには、外周端から径方向内側に向かった所定範囲の外周領域と、前記外周領域からワーク中心までの範囲の面内領域と、が設定され、前記制御部は、前記荷重を目標荷重に維持しながら前記ワークを研磨する主研磨の研磨条件と、前記外周領域の平坦度である外周平坦度と、前記面内領域の平坦度である面内平坦度との相関関係を学習させた第1学習器と、前記荷重を次第に低減させながら前記ワークを研磨する終点研磨の研磨条件と、前記主研磨の停止時点の前記面内平坦度の変化度合と、前記主研磨の停止時点の前記外周平坦度の変化度合と、前記終点研磨中の前記外周平坦度の変化量との相関関係を学習させた第2学習器と、補正時点で設定されている前記主研磨の研磨条件と、補正時点の前記外周平坦度を前記第1学習器に入力して得られた前記面内平坦度の推定値に基づいて前記面内平坦度の補正目標値を求め、前記面内平坦度の補正目標値と、前記外周平坦度の目標値と、を前記第1学習器に入力して得られた前記主研磨の研磨条件によって、補正時点で設定されている前記主研磨の研磨条件を補正する主研磨条件補正部と、前記終点研磨の研磨条件と、演算時点の前記面内平坦度の変化度合と、演算時点の前記外周平坦度の変化度合を前記第2学習器に入力して前記終点研磨中の前記外周平坦度の変化量を取得し、前記外周平坦度の変化量と、前記外周平坦度の目標値とに基づいて、前記主研磨の停止条件を設定する主研磨停止条件設定部と、を有することを特徴とする。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の両面研磨方法は、下定盤と前記下定盤に対向して配置される上定盤との間に円板状のワークを挟持させ、前記ワークに荷重を付与した状態で前記下定盤及び前記上定盤と前記ワークとを相対的に移動させて前記ワークの表面及び裏面を研磨する両面研磨方法において、前記荷重を目標荷重に維持しながら前記ワークを研磨する主研磨の研磨条件と、前記ワークの外周端から径方向内側に向かった所定範囲に設定された外周領域の平坦度である外周平坦度と、前記ワークの前記外周領域からワーク中心までの範囲の面内領域の平坦度である面内平坦度と、の相関関係を学習させた第1学習器と、前記荷重を次第に低減させながら前記ワークを研磨する終点研磨の研磨条件と、前記主研磨の停止時点の前記面内平坦度の変化度合と、前記主研磨の停止時点の前記外周平坦度の変化度合と、前記終点研磨中の前記外周平坦度の変化量との相関関係を学習させた第2学習器と、を用い、前記外周平坦度の目標値と、前記面内平坦度の目標値とを設定するステップと、前記外周平坦度及び前記面内平坦度の目標値を設定した後、前記荷重を次第に増大させながら前記ワークを研磨する初期研磨を行うステップと、前記初期研磨が終了した後、前記主研磨を開始するステップと、前記主研磨の実行中、補正時点で設定されている前記主研磨の研磨条件と、補正時点の前記外周平坦度を前記第1学習器に入力して得られた前記面内平坦度の推定値に基づいて前記面内平坦度の補正目標値を求め、前記面内平坦度の補正目標値と、前記外周平坦度の目標値と、を前記第1学習器に入力して得られた前記主研磨の研磨条件によって、補正時点で設定されている前記主研磨の研磨条件を補正するステップと、前記主研磨の実行中、前記終点研磨の研磨条件と、演算時点の前記面内平坦度の変化度合と、演算時点の前記外周平坦度の変化度合を前記第2学習器に入力して前記終点研磨中の前記外周平坦度の変化量を取得し、前記外周平坦度の変化量と、前記外周平坦度の目標値とに基づいて、前記主研磨の停止条件を設定するステップと、前記主研磨の停止条件が成立した後、前記終点研磨を実行するステップと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の両面研磨装置及び両面研磨方法では、最終的な研磨終了時のワーク形状が目標形状から逸脱することを抑制でき、所望のワーク形状を得ることを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1の両面研磨装置の全体構成を概略的に示す説明図である。
【
図2】実施例1のサンギヤとインターナルギヤとキャリアプレートの位置関係を示す説明図である。
【
図3A】実施例1の両面研磨装置において、測定孔がワーク上を通過した際の通過軌跡を示す説明図である。
【
図3B】実施例1の両面研磨装置によって研磨されたワークの厚さを測定した厚みデータ群と、ワークに設定される外周領域及び面内領域を示す説明図である。
【
図4A】外周領域がロールアップ形状のワークの厚みデータ群に対して設定された近似直線を示す説明図である。
【
図4B】外周領域がフラット形状のワークの厚みデータ群に対して設定された近似直線を示す説明図である。
【
図5】外周領域を複数の区画に分割する場合の最内区画と外側区画を示す説明図である。
【
図6】面内平坦度及び外周平坦度の時間ごとの演算値と、変化度合を示す説明図である。
【
図7】実施例1の第1学習器に学習させるデータセットを示す説明図である。
【
図8】実施例1の第2学習器に学習させるデータセットを示す説明図である。
【
図9】実施例1の制御部にて実行される研磨処理制御の流れを示すフローチャートである。
【
図10】例示ワークにおける主研磨条件とそのときの外周平坦度及び面内平坦度を示す表である。
【
図11】比較例の学習器に学習させるデータセットを示す表である。
【
図12】実施例1の両面研磨装置において、外周平坦度の目標値をゼロ(nm)に設定してワークを研磨したときの最終的な研磨終了時のワーク形状を示す研磨結果である。
【
図13】実施例1の両面研磨装置において、最終的な研磨終了時のワーク形状を示す研磨結果である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の両面研磨装置及び両面研磨方法を実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【0012】
実施例1の両面研磨装置1は、半導体ウェーハ、水晶ウェーハ、サファイアウェーハ、ガラスウェーハ或いはセラミックウェーハといった、薄板円板状のワークWの表裏両面を研磨する両面研磨装置である。両面研磨装置1は、
図1に示すように、研磨機10と、厚み測定器20と、制御部30と、を備えている。
【0013】
研磨機10は、下定盤11と、下定盤11に対向して配置された上定盤12との間にワークWを挟持し、ワークWに荷重を付与した状態で下定盤11及び上定盤12とワークWとを相対的に移動させて、ワークWの表面及び裏面を同時に研磨する。研磨機10は、軸線L1を中央とする同心に配置されたドーナツ円板状の下定盤11及び上定盤12と、下定盤11の中央部に回転自在に配置されたサンギヤ13と、下定盤11の外周側に配置されたインターナルギヤ14と、下定盤11及び上定盤12の間に配置され且つワーク保持穴15a(
図2参照)が形成されたキャリアプレート15と、を有している。また、下定盤11の上面には研磨パッド11aが貼付され、上定盤12の下面には研磨パッド12aが貼付されている。さらに、上定盤12には、研磨スラリー(以下、「スラリー」という)を供給するための複数の供給孔(図示せず)が設けられている。なお、供給孔毎又は供給孔群毎にスラリー供給の有無について選択可能な場合もある。
【0014】
ここで、キャリアプレート15は、
図2に示すように、サンギヤ13及びインターナルギヤ14に噛み合う。そして、キャリアプレート15は、サンギヤ13及びインターナルギヤ14が回転することで自転しながら軸線L1の周囲を回転(公転)する。
【0015】
ワークWは、キャリアプレート15のワーク保持穴15a内に配置される。そして、回転する下定盤11に貼付された研磨パッド11aと回転する上定盤12に貼付された研磨パッド12aにワークWが挟まれた状態でキャリアプレート15が自転及び公転することで、下定盤11及び上定盤12とワークWとが相対的に移動し、ワークWは研磨パッド11a及び研磨パッド12aにより研磨加工される。すなわち、研磨パッド11a及び研磨パッド12aの表面がワークWを研磨する研磨面になる。
【0016】
上定盤12は、上面に取り付けられた支持スタッド16a及び取付部材16bを介して、ロッド16に固定されている。ロッド16は、第5駆動装置M5によって上下方向に伸縮され、上定盤12は、ロッド16が伸縮することで上下動する。そして、ロッド16の伸縮長さに応じてワークWには上定盤12から所定の荷重が付与される。すなわち、ワークWに付与される荷重は、第5駆動装置M5を制御することで調整される。
【0017】
また、研磨機10の中央には、軸線L1に沿って起立した第1駆動軸17aが配置されている。第1駆動軸17aは、第1駆動装置M1によって回転させられるシャフトである。この第1駆動軸17aの上端部には、ドライバ18が固定されている。これにより、ドライバ18は、第1駆動軸17aと一体的に回転する。一方、ドライバ18には、上定盤12に設けたフック12bが係合する溝部(不図示)が外周面に形成されている。そして、ロッド16が伸長して上定盤12が下方に移動し、フック12bがドライバ18の溝部に係合することで、ドライバ18と上定盤12とが一体になって回転する。すなわち、上定盤12は、第1駆動装置M1によって回転させられる第1駆動軸17aと一体的に回転するため、上定盤12の回転数は、第1駆動装置M1を制御することで調整される。
【0018】
サンギヤ13の中央部の穴13aには、第2駆動軸17bが貫通状態で固定されている。第2駆動軸17bは、両端が開放した中空管であり、第1駆動軸17aが回転自在に貫通している。また、第2駆動軸17bは、第2駆動装置M2によって回転させられる。すなわち、サンギヤ13は、第2駆動装置M2によって回転させられる第2駆動軸17bと一体的に回転するため、サンギヤ13の回転数は、第2駆動装置M2を制御することで調整される。
【0019】
下定盤11の中央部の下部には、第3駆動軸17cが形成されている。第3駆動軸17cは、両端が開放した中空管であり、第1駆動軸17a及び第2駆動軸17bが回転自在に貫通している。また、第3駆動軸17cは、第3駆動装置M3によって回転させられる。すなわち、下定盤11は、第3駆動装置M3によって回転させる第3駆動軸17cと一体的に回転するため、下定盤11の回転数は、第3駆動装置M3を制御することで調整される。
【0020】
また、インターナルギヤ14には、第4駆動軸17dが形成されている。第4駆動軸17dは、両端が開放した中空管であり、第1駆動軸17a、第2駆動軸17b、第3駆動軸17cが回転自在に貫通している。また、第4駆動軸17dは、第4駆動装置M4によって回転させられる。すなわち、インターナルギヤ14は、第4駆動装置M4によって回転させられる第4駆動軸17dと一体的に回転するため、インターナルギヤ14の回転数は、第4駆動装置M4を制御することで調整される。
【0021】
そして、実施例1の両面研磨装置1は、所定の研磨条件に基づいて、ロッド16を伸縮させてワークWに付与する荷重を制御しながら、下定盤11、上定盤12、サンギヤ13、インターナルギヤ14の各回転数を制御してワークWの研磨を行う。ここで、ロッド16の伸縮及び下定盤11等の回転数の調整(増減)には時間を要するため、ワークWの研磨工程は、初期研磨と、主研磨と、終点研磨に区分される。
【0022】
なお、「初期研磨」とは、研磨開始後、ワークWに付与する荷重を次第に増大させながらワークWを研磨する工程である。初期研磨では、下定盤11、上定盤12、サンギヤ13、インターナルギヤ14の各回転数についても、それぞれ次第に増大させていく。そして、初期研磨における研磨時間や終了条件等を含む初期研磨の研磨条件(初期研磨条件)は、前提研磨条件によって規定される。なお、「前提研磨条件」は、ワークWの最終的な加工目標(研磨目標)やワークWの種類等に応じて予め決められた研磨条件である。
【0023】
また、「主研磨」とは、初期研磨が終了した後、ワークWに付与する荷重を目標荷重に維持しながら、所定の研磨条件にてワークWを研磨する工程である。主研磨では、下定盤11、上定盤12、サンギヤ13、インターナルギヤ14の各回転数についても、それぞれ目標回転数に維持される。そして、主研磨における目標荷重や各種回転数の目標回転数を含む主研磨の研磨条件(主研磨条件)は、主研磨開始時点では前提研磨条件によって規定され、主研磨の実行中に繰り返し補正され続ける。さらに、主研磨を停止するタイミングを規定する主研磨の停止条件(主研磨停止条件)が主研磨の実行中に繰り返し規定され、主研磨停止条件が成立したときに主研磨が停止される。なお、主研磨は複数区分(複数ステップ)から構成されていてもよく、主研磨条件には、ワークWの形状の変化傾向のモニタリング結果に応じてスラリーの温度、流量、供給先等を適宜調整することを含めてもよい。
【0024】
そして、「終点研磨」とは、主研磨が停止された後、ワークWに付与する荷重を次第に低減させながらワークWを研磨する工程である。終点研磨では、下定盤11、上定盤12、サンギヤ13、インターナルギヤ14の各回転数についても、それぞれ次第に低減させていく。なお、終点研磨における研磨時間を含む終点研磨の研磨条件(終点研磨条件)は、前提研磨条件によって規定される。なお、終点研磨条件には、ワークWの形状の変化傾向のモニタリング結果に応じてスラリーの温度、流量、供給先等を適宜調整することを含めてもよい。
【0025】
そして、上定盤12には、中心から径方向に沿って所定距離離れた位置に測定孔19が形成されている。測定孔19は、上定盤12及び研磨パッド12aを貫通し、測定光であるレーザ光を透過する窓部材19aが装着されている。
【0026】
厚み測定器20は、ワークWに向けて測定光を照射し、ワークWで反射した測定光を受光して研磨中のワークWの厚み(ワークWの表面と裏面との距離)を測定する。また、実施例1の厚み測定器20は、測定したワークWの厚みデータ群からワークWの形状を数値化する。厚み測定器20は、測定ユニット21と、厚み測定部22と、形状演算部23と、を有している。
【0027】
測定ユニット21は、上定盤12に取り付けられており、上定盤12と一体になって回転する。また、測定ユニット21は、上定盤12の測定孔19に装着された窓部材19aを介してワークWに向けて測定光であるレーザ光を照射するレーザ光源(図示せず)と、ワークWの表面及び裏面でそれぞれ反射した反射光を受光信号として受光する受光部(図示せず)とを有する。受光部が受光した受光信号は送信部21aにより、厚み測定部22へ送信される。
【0028】
厚み測定部22は、例えば光反射干渉法でワークWの厚みを測定するものである。この厚み測定部22は、測定ユニット21から送信された受光信号を受信する受信部22aを有し、受信部22aが受信した受光信号に基づいてワークWの厚みデータを取得する。
【0029】
ここで、上定盤12の回転により、
図3Aに示すように、測定孔19がワークWの面上を通過している期間中、測定ユニット21からのレーザ光がワークWの面上に連続的に照射される。そのため、厚み測定部22は、測定孔19の通過軌跡Na~Nc上のワークWの各面内位置の厚みを連続的に測定する。そして、厚み測定部22は、測定孔19が各通過軌跡Na~Ncを通過している間(ワークWの一端W1a~W3aから他端W1b~W3bまでの測定孔19の通過期間中)、連続した多数の厚みデータからなる厚みデータ群を、その通過ごとに出力する。これにより、厚み測定部22は、測定孔19がワークWの面上を通過するごとに、ワークWの各面内位置の厚みを測定した複数の連続したデータからなる厚みデータ群を出力する(
図3B参照)。なお、厚み測定部22から出力された厚みデータ群は、形状演算部23に入力される。
【0030】
また、厚みデータ群の入力の際には、ワークWの厚み(形状)を測定可能な外部の測定器(外部測定器)で測定した測定データ(例えば、GBIR、ESFQD等)と厚みデータ群との相関を別途求め、当該相関から得られた補正値等を加味して入力してもよい。なお、「GBIR(Global Backside Ideal Range)」は、厚さ分布の最大値と最小値の差を示す値である。また、「ESFQD(Edge Site Front Least Square)」は、ウェーハ外周部での基準面からの距離の最大値、最小値のうち、絶対値の大きい方を出力する値である。
【0031】
さらに、厚みデータ群や、後述する面内平坦度及び外周平坦度の数値は、外部測定器の測定データとの相関が高いとは限らない。このため、厚みデータ群等と外部測定器の測定データとの差分をデータベース化した差分データベースより得られた値、若しくはその得られた値を換算式に入力して得られた値、又は外部の測定器で測定した測定データを換算式に入力して得られた値等に基づき、厚みデータ群や面内平坦度及び外周平坦度に対して随時又は所望のタイミングで厚みデータ群を補正してもよい。
【0032】
なお、差分データベースは、随時学習更新されるものであってもよい。これにより、厚み測定部22によって測定した厚みデータ群と、外部測定器の測定データとの相関が把握でき、例えば、制御部30に入力するワーク形状の目標値を外部測定器の測定規格での入力が可能になる。
【0033】
形状演算部23は、厚み測定部22によって測定されたワークWの厚みデータ群に基づいて、ワークWの形状(以下「ワーク形状」という)を数値情報に変換する。実施例1では、ワーク形状は、面内平坦度と、外周平坦度と、によって示される。なお、形状演算部23から出力された面内平坦度及び外周平坦度の情報は、制御部30に入力される。
【0034】
ここで、「面内平坦度」とは、ワークWに設定された面内領域Gの平坦度であり、面内領域Gにおける厚みデータ群に対して例えば最小二乗法で設定された近似直線(
図4A及び
図4BにおいてAで示す近似直線)の傾き値とする。なお、
図4A及び
図4BにおいてA´で示す近似直線についても、面内領域Gにおける厚みデータ群に対して設定された近似直線である。しかしながら、形状演算部23においてワーク形状を数値情報に変換する際、ワーク中心Woを通る直線で破断したワークWの断面で見たとき、ワーク中心Woよりも右側の領域(面内領域G´、外周領域E´)は無視する。
【0035】
また、近似直線は、下記式(1)によって示され、近似直線の傾き値は、下記式(1)における「a」である。
近似直線: Y=aX+b ・・・(1)
a:傾き値
b:切片
【0036】
ワーク形状は、面内平坦度がプラスの値の場合、面内領域Gの中央が突出した凸形状になる。また、面内平坦度がマイナスの値の場合、面内領域Gの中央がへこんだ凹形状になる。
【0037】
また、「外周平坦度」とは、ワークWに設定された外周領域Eの平坦度である。外周平坦度は、面内平坦度を基準とした外周領域Eの厚みデータ群に対して設定された近似直線の傾き値の連続化処理を行って求められる。ここで、「面内平坦度を基準とした外周領域Eの厚みデータ群に対して設定された近似直線の傾き値の連続化処理」とは、面内平坦度に対して、外周領域Eにおける厚みデータ群に対して設定された近似直線の傾き値を加算或いは減算する処理である。つまり「連続化処理」は、面内平坦度と外周領域Eの厚みデータ群に設定された近似直線の傾き値とを加算する処理(和の値を算出する処理)や、面内平坦度と外周領域Eの厚みデータ群に設定された近似直線の傾き値との差分を算出する処理(差の値を算出する処理)を含む。
【0038】
実施例1の外周平坦度は、面内平坦度に、外周領域Eにおける厚みデータ群に対して設定された近似直線(
図4A及び
図4BにおいてBで示す直線)の傾き値を加算して求められ、面内平坦度と外周領域Eの近似直線の傾き値の和の値とする。
【0039】
そして、ワーク形状は、外周平坦度がプラスの値の場合、外周領域Eが面内領域Gに対して跳ね上ったロールアップ形状になる。また、外周平坦度がマイナスの値の場合、ワーク形状は、外周領域Eが面内領域Gに対してダレたロールオフ形状になる。
【0040】
なお、「外周領域E」は、
図3A及び
図3Bに示されたように、ワークWの外周端Weから径方向内側に向かった所定範囲の領域である。「面内領域G」は、
図3A及び
図3Bに示されたように、外周領域Eの径方向内側の縁部からワーク中心Woまでの範囲の領域である。すなわち、
図3Aに示されたように、外周領域Eは、ワークWの外周端WeとワークW内に設定された破線で示す円との間の円環状の領域であり、ワークWの周縁部に設定される。また、面内領域Gは、ワークW内に設定された破線で示す円で囲まれた円形の領域であり、ワークWの中心部に設定される。そして、
図3Bに示されたように、ワーク中心Woを通る直線で破断したワークWの断面で見たとき、面内領域Gと外周領域Eは、ワーク中心Woを挟んで対称に設定される。また、外周領域Eの設定範囲は任意に決められる。
【0041】
そして、
図4Aには、第1例のワークWの厚みデータ群をもとに作成された近似直線が示されている。
図4Aに示された場合では、面内領域Gにおける近似直線Aの傾き値が+50(nm:ナノメートル)であり、外周領域Eにおける近似直線Bの傾き値がゼロ(nm)である。そのため、第1例のワークWの面内平坦度は+50(nm)になり、外周平坦度が+50(=+50+ゼロ)(nm)になる。
【0042】
また、
図4Bには、第2例のワークWの厚みデータ群をもとに作成された近似直線が示されている。
図4Bに示された場合では、面内領域Gにおける近似直線Aの傾き値が+30(nm)であり、外周領域Eにおける近似直線Bの傾き値が-30(nm)である。そのため、第2例のワークWの面内平坦度は+30(nm)になり、外周平坦度がゼロ(=+30+(-30))(nm)になる。
【0043】
また、外周領域Eは、
図5に示されたように、ワークWの径方向に沿って複数(
図5に示された例では三つ)の区画に分割されてもよい。この場合、外周平坦度は、外周領域Eの各区画Ei、Eo1、Eo2ごとに算出される。
【0044】
すなわち、
図5に示された例では、外周領域Eのうち、面内領域Gに隣接した所定の区画を最内区画Eiとする。また、最内区画Eiに隣接すると共に、最内区画Eiよりも径方向外側の区画を第1外側区画Eo1とする。さらに、第1外側区画Eo1に隣接すると共に、第1外側区画Eo1よりも径方向外側の区画を第2外側区画Eo2とする。
【0045】
そして、最内区画Eiの平坦度は、面内平坦度を基準とした最内区画Eiの厚みデータ群に対して設定された近似直線の傾き値の連続化処理を行って求められる。最内区画Eiの平坦度は、ここでは、面内平坦度に、最内区画Eiの厚みデータ群に対して設定された近似直線の傾き値を加算して求められる。つまり、実施例1の最内区画Eiの平坦度は、面内平坦度と、最内区画Eiの近似直線の傾き値と、の和の値とする。
【0046】
また、第1外側区画Eo1の平坦度は、第1外側区画Eo1の径方向内側に隣接する区画(最内区画Ei)の平坦度を基準とした第1外側区画Eo1の厚みデータ群に対して設定された近似直線の傾き値の連続化処理を行って求められる。第1外側区画Eo1の平坦度は、ここでは、最内区画Eiの平坦度に、第1外側区画Eo1の厚みデータ群に対して設定された近似直線の傾き値を加算して求められる。つまり、実施例1の第1外側区画Eo1の平坦度は、最内区画Eiの平坦度と、第1外側区画Eo1の近似直線の傾き値と、の和の値とする。
【0047】
また、第2外側区画Eo2の平坦度は、第2外側区画Eo2の径方向内側に隣接する区画(第1外側区画Eo1)の平坦度を基準とした第2外側区画Eo2の厚みデータ群に対して設定された近似直線の傾き値の連続化処理を行って求められる。第2外側区画Eo2の平坦度は、ここでは、第1外側区画Eo1の平坦度に、第2外側区画Eo2の厚みデータ群に対して設定された近似直線の傾き値を加算して求められる。つまり、実施例1の第2外側区画Eo2の平坦度は、第1外側区画Eo1の平坦度と、第2外側区画Eo2の近似直線の傾き値と、の和の値とする。
【0048】
さらに、形状演算部23は、ワーク形状を示す数値情報(面内平坦度及び外周平坦度)を、ワークWの研磨中に、任意の間隔(例えば10秒から15秒ごと)で継続して算出する。これにより、制御部30は、研磨中の面内平坦度の変化度合と外周平坦度の変化度合をそれぞれ取得することができる。
【0049】
ここで、面内平坦度の変化度合は、
図6において○で示された面内平坦度のデータ群に対して例えば最小二乗法で設定された近似直線の傾き値、つまり、所定の時間幅での面内平坦度の変化の割合で示される。また、外周平坦度の変化度合は、
図6において●で示された外周平坦度のデータ群に対して例えば最小二乗法で設定された近似直線の傾き値、つまり、所定の時間幅での外周平坦度の割合で示される。そして、制御部30は、面内平坦度の変化度合及び外周平坦度の変化度合から、ワーク形状の変化傾向を判定する。
【0050】
すなわち、制御部30は、面内平坦度の変化度合がプラスの値の場合、面内領域Gの変化傾向が凸型方向へ変化する傾向であると判定する。また、面内平坦度の変化度合がマイナスの値の場合、面内領域Gの変化傾向が凹型方向へ変化する傾向であると判定する。例えば、
図6に示された例では、時刻t0時点の面内平坦度の変化度合(時刻t0を基準として含む微少な時間幅での面内平坦度のデータ群に設定した近似直線の傾き値)は、一点鎖線で示されたようにマイナスの値になる。そのため、時刻t0以降の面内領域Gの変化傾向は、凹型方向に変化する変化傾向であると判定される。
【0051】
また、制御部30は、外周平坦度の変化度合がプラスの値の場合、外周領域Eの変化傾向がロールアップ(跳ね上げ)方向へ変化する傾向であると判定する。また、外周平坦度の変化度合がマイナスの値の場合、外周領域Eの変化傾向がロールオフ(ダレ)方向へ変化する傾向であると判定する。例えば、
図6に示された例では、時刻t0時点の外周平坦度の変化度合(時刻t0を基準として含む微少な時間幅での外周平坦度のデータ群に設定した近似直線の傾き値)は、二点鎖線で示されたようにプラスの値になる。そのため、時刻t0以降の外周領域Eの変化傾向は、ロールアップ方向に変化する変化傾向であると判定される。
【0052】
制御部30は、CPU(Central Proces sing Unit)等からなり、第1学習器31と、第2学習器32と、主研磨条件補正部33と、主研磨停止条件設定部34と、制御演算部35と、メモリ36と、等を備えている。また、制御部30には、両面研磨装置1のオペレータによって操作可能な入力装置41と、オペレータが目視可能な表示器42と、が接続されている。
【0053】
制御部30は、厚み測定器20によるワークWの測定結果(別途外部測定器でワークWの形状を測定した測定データとの相関を求めておくことにより得られた補正値を含んでもよい)や、ワークWの加工目標、前提研磨条件、副資材等の条件、研磨機10の装置状態に関する情報、メモリ36に記憶されたプログラム、主研磨条件補正部33によって再設定された主研磨条件、主研磨停止条件設定部34によって設定された主研磨停止条件等に基づき、制御演算部35から第1駆動装置M1~第5駆動装置M5等に制御指令を出力し、研磨機10の動作を制御する。なお、ワークWの加工目標、前提研磨条件、副資材等の条件、研磨機10の装置状態に関する情報は、入力装置41を介してオペレータによって入力されてもよいし、メモリ36に予め記憶されていてもよい。また、制御部30は、研磨機10の動作を制御中、必要な情報を適宜表示器42に表示させる。
【0054】
第1学習器31は、主研磨中の任意のタイミングにおける主研磨条件と、当該タイミングで取得された外周平坦度と、当該タイミングで取得された面内平坦度との相関関係を学習させた学習器である。すなわち、制御部30は、実施例1の第1学習器31に、例えば
図7に示されたように、主研磨中の任意のタイミングにおける主研磨条件と、主研磨条件に含まれる外周平坦度と、外乱要素と、同じタイミングで取得された面内平坦度とをデータセットとして学習させる。ここで、主研磨条件には、例えば下定盤11の回転数、上定盤12の回転数、サンギヤ13の回転数、インターナルギヤ14の回転数、キャリアプレート15の公転数、キャリアプレート15の自転数、ワークWに付与する荷重、スラリーの流量、スラリーの品種等が含まれる。また、外乱要素には、例えば副資材の状態としてキャリアプレート15の使用期間(キャリアライフ)、研磨パッド11a、12aの使用期間(パッドライフ)、ドレッシング条件等が含まれ、装置状態として各駆動装置の負荷率、各駆動装置を配置したエリア(駆動室)の温度、研磨パッド11a、12aの温度、スラリーの温度、ワークWに付与した荷重の変動値等が含まれる。主研磨条件や外乱要素は、入力装置41を介してオペレータによって入力されてもよいし、センサ等によって検出してもよい。
【0055】
第2学習器32は、終点研磨条件と、主研磨停止時の面内平坦度の変化度合と、主研磨停止時の外周平坦度の変化度合と、終点研磨中の外周平坦度の変化量との相関関係を学習させた学習器である。すなわち、制御部30は、実施例1の第2学習器32に、例えば
図8に示されたように、所定の終点研磨条件と、主研磨停止時の面内平坦度の変化度合と、主研磨停止時の面内平坦度の変化度合と、当該変化度合を前提として当該終点研磨条件下で行った終点研磨中の外周平坦度の変化量とをデータセットとして学習させる。ここで、終点研磨条件には、例えば、下定盤11の回転数、上定盤12の回転数、サンギヤ13の回転数、インターナルギヤ14の回転数、キャリアプレート15の公転数、キャリアプレート15の自転数、ワークWに付与する荷重、スラリーの流量、スラリーの品種、終点研磨時間(減速時間)等が含まれる。終点研磨条件は、入力装置41を介してオペレータによって入力されてもよいし、センサ等によって検出してもよい。
【0056】
また、「主研磨停止時の面内平坦度の変化度合」は、主研磨停止時点(主研磨を停止するタイミング)を基準として含む微少な時間幅での面内平坦度のデータ群に対して設定された近似直線の傾き値である。「主研磨停止時の外周平坦度の変化度合」は、主研磨停止時点を基準として含む微少な時間幅での外周平坦度のデータ群に対して設定された近似直線の傾き値である。そして、「終点研磨中の外周平坦度の変化量」は、主研磨停止時点の外周平坦度と、終点研磨終了時点の外周平坦度との差分である。
【0057】
主研磨条件補正部33は、主研磨中に、補正時点で設定されている主研磨条件と、補正時点の外周平坦度の演算値とを、第1学習器31に入力して得られた面内平坦度の推定値に基づいて、面内平坦度の演算値を目標値に近づけるための面内平坦度の補正目標値を求める。そして、主研磨条件補正部33は、面内平坦度の補正目標値と、研摩終了時点の最終的な外周平坦度の目標値を第1学習器31に入力して得られた主研磨条件によって、補正時点で設定されている主研磨条件を補正する。つまり、主研磨条件補正部33は、第1学習器31を用いて、外周平坦度の目標値及び補正目標値を満足する主研磨条件を取得し、取得された当該主研磨条件を、補正時点で設定されている主研磨条件に換えて、新たな主研磨条件として再設定する。なお、新たに再設定する主研磨条件では、例えば下定盤11の回転数、上定盤12の回転数、サンギヤ13の回転数、インターナルギヤ14の回転数、キャリアプレート15の公転数、キャリアプレート15の自転数、ワークWに付与する荷重、スラリーの流量、品種、供給先等の少なくともいずれかが変更される。
【0058】
ここで、「面内平坦度の演算値を目標値に近づけるための面内平坦度の補正目標値」は、以下の手順によって求められる。すなわち、主研磨条件補正部33は、まず、補正時点の主研磨条件と補正時点の外周平坦度の演算値を第1学習器31に入力して、面内平坦度の推定値を取得する。次に、主研磨条件補正部33は、補正時点の面内平坦度の演算値と面内平坦度の推定値との差分値を算出する。そして、主研磨条件補正部33は、研摩終了時点の最終的な面内平坦度の目標値から、面内平坦度の差分値を差し引いて算出された値を「補正目標値」とする。
【0059】
主研磨停止条件設定部34は、主研磨中に、終点研磨条件と、演算時点の面内平坦度の変化度合と、演算時点の面内平坦度の変化度合とを第2学習器32に入力し、終点研磨中の外周平坦度の変化量を取得する。そして、取得した外周平坦度の変化量と、研摩終了時点の最終的な外周平坦度の目標値と、に基づいて、主研磨の停止条件(主研磨停止条件)を設定する。ここで、主研磨停止条件は、主研磨の停止時点の外周平坦度によって規定される。
【0060】
すなわち、主研磨停止条件設定部34は、終点研磨条件と、演算時点の面内平坦度の変化度合(演算時点を基準として含む微少な時間幅での面内平坦度のデータ群に設定された近似直線の傾き値)と、演算時点の外周平坦度の変化度合(演算時点を基準として含む微少な時間幅での外周平坦度のデータ群に設定された近似直線の傾き値)と、を第2学習器32に入力し、変化度合を踏まえた上での終点研磨中の外周平坦度の変化量を取得する。次に、主研磨停止条件設定部34は、取得した外周平坦度の変化量と、研磨終了時点の最終的な外周平坦度の目標値と、終点研磨時間から逆算して、主研磨停止時点の外周平坦度の目標値を算出する。そして、算出された外周平坦度の目標値を主研磨停止条件として規定する。
【0061】
そして、制御部30は、初期研磨の実行中、制御演算部35から第1駆動装置M1~第5駆動装置M5に対して、予め前提研磨条件にて設定された初期研磨条件に応じた制御指令を出力する。
【0062】
また、制御部30は、主研磨の開始時、制御演算部35から第1駆動装置M1~第5駆動装置M5に対して、前提研磨条件にて予め設定された主研磨条件に応じた制御指令を出力する。
【0063】
そして、制御部30は、主研磨の実行中、第1学習器31と主研磨条件補正部33によって主研磨条件を補正する。制御部30は、主研磨条件が補正されたとき、制御演算部35から第1駆動装置M1~第5駆動装置M5に対し、補正された主研磨条件(再設定された新たな主研磨条件)に応じた制御指令を出力する。
【0064】
さらに、制御部30は、主研磨の実行中、第2学習器32と主研磨停止条件設定部34によって主研磨停止条件を設定する。制御部30は、主研磨停止条件が成立したとき、制御演算部35から第1駆動装置M1~第5駆動装置M5に対し、主研磨を停止して終点研磨を実行させる制御指令を出力する。
【0065】
また、制御部30は、終点研磨の実行中、制御演算部35から第1駆動装置M1~第5駆動装置M5に対して、予め前提研磨条件にて設定された終点研磨条件に応じた制御指令を出力する。
【0066】
図9は、実施例1の両面研磨装置1の制御部30にて実行される研磨処理の流れを示すフローチャートである。以下、
図9に基づいて、実施例1の研磨処理の流れを説明する。なお、研磨処理は、研磨機10にキャリアプレート15及びワークWがセットされた状態で実行される。また、研磨処理中(初期研磨の実行開始から終点研磨の終了までの間)、厚み測定器20はワークWの形状情報(面内平坦度及び外周平坦度の情報)を制御部30に継続的に入力する。
【0067】
ステップS1では、制御部30は、ワークWの最終的な加工目標になる終点研磨終了時点の最終的な面内平坦度の目標値と、終点研磨終了時点の最終的な外周平坦度の目標値を設定し、ステップS2へ進む。ここで、面内平坦度の目標値及び外周平坦度の目標値は、オペレータによって入力装置41を介して入力される。なお、ワークWの加工目標は、例えばワークWの種類ごとに予め設定され、メモリ36に記憶されていてもよい。この場合、制御部30は、オペレータによって入力されたワークWの種類に基づいて、メモリ36からワークWの加工目標を読み出して設定する。
【0068】
ステップS2では、ステップS1でのワーク加工目標の設定に続き、制御部30は、前提研磨条件を設定し、ステップS3へ進む。ここで、前提研磨条件とは、ワークWの加工目標やワークWの種類ごとに予め設定されたワークWを研磨する際の前提になる各種の条件である。前提研磨条件には、例えば、初期研磨における研磨時間や研磨終了条件等を含む初期研磨条件、主研磨開始時点の主研磨条件、終点研磨における研磨時間や研磨終了条件等を含む終点研磨条件、スラリー流量やスラリー品種、スラリー供給先等のスラリーに関する情報、キャリアライフ等の消耗副資材の状態に関する情報等が含まれている。前提研磨条件は、オペレータによって入力装置41を介して入力されたり、メモリ36から読み出されたりする。
【0069】
ステップS3では、ステップS2での前提研磨条件の設定、又は、ステップS4での初期研磨未終了との判断に続き、制御部30は、制御演算部35から第1駆動装置M1~第5駆動装置M5に対し、前提研磨条件によって規定された初期研磨条件に応じた制御指令を出力し、初期研磨を実行してステップS4へ進む。なお、初期研磨の実行中、研磨機10では、ワークWに付与する荷重を次第に増大させると共に、下定盤11及び上定盤12の回転数、サンギヤ13の回転数、インターナルギヤ14の回転数も次第に増大させながらワークWを研磨する。
【0070】
ステップS4では、ステップS3での初期研磨の実行に続き、制御部30は、初期研磨が終了したか否かを判断する。そして、制御部30は、YES(初期研磨終了)と判断した場合はステップS5へ進み、NO(初期研磨未終了)と判断した場合はステップS3へ戻る。ここで、制御部30は、ワークWに付与する荷重が所定の荷重に達した場合、下定盤11等の回転数が所定の回転数に達した場合等、前提研磨条件にて規定された初期研磨の終了条件が成立したことで初期研磨終了と判断する。
【0071】
ステップS5では、ステップS4での初期研磨終了との判断に続き、制御部30は、制御演算部35から第1駆動装置M1~第5駆動装置M5に対し、前提研磨条件によって規定された主研磨条件に応じた制御指令を出力し、主研磨の実行を開始してステップS6及びステップS7へ進む。なお、主研磨の実行中、研磨機10では、ワークWに付与する荷重を主研磨条件で規定された目標荷重に調整すると共に、下定盤11及び上定盤12の回転数、サンギヤ13の回転数、インターナルギヤ14の回転数をそれぞれ目標回転数に調整しながらワークWを研磨する。
【0072】
ステップS6では、ステップS5での主研磨の実行開始に続き、制御部30は、主研磨条件補正部33によって主研磨条件を補正する。なお、主研磨条件の補正は、後述するステップS7での主研磨停止条件の設定と並行して実行され、後述するステップS8にて主研磨停止と判断されるまで、一定の間隔(例えば300秒程度の間隔)で繰り返し実行される。
【0073】
ここで、主研磨条件補正部33は、以下の手順で主研磨条件を補正する。
(1) 補正時点の主研磨条件と、補正時点の外周平坦度の演算値と、を第1学習器31に入力し、当該主研磨条件下での補正時点の面内平坦度の推定値を取得する。
(2) 補正時点の面内平坦度の演算値から(1)にて取得した面内平坦度の推定値を差し引いて、面内平坦度の差分値(面内平坦度の推定値と現在値との差)を算出する。
(3) ステップS1にて設定された面内平坦度の目標値から、(2)にて算出した面内平坦度の差分値を差し引いた値を算出し、「補正目標値」として設定する。
(4) (3)にて設定した「補正目標値」と、ステップS1にて設定された外周平坦度の目標値と、を第1学習器31に入力し、主研磨条件を取得する。
(5) (4)にて取得した主研磨条件を補正時点で設定されている主研磨条件に換えて新たな主研磨条件として再設定し、主研磨条件を補正する。
【0074】
ステップS7では、ステップS5での主研磨の実行開始に続き、制御部30は、主研磨停止条件設定部34によって主研磨停止条件を設定する。なお、主研磨停止条件の設定は、上述のようにステップS6での主研磨条件の補正と並行して実行され、後述するステップS8にて主研磨停止と判断されるまで、一定の間隔(例えば1秒程度の間隔)で繰り返し実行される。
【0075】
ここで、主研磨停止条件設定部34は、以下の手順で主研磨停止条件を設定する。
(1)ステップS2にて設定された前提研磨条件で決められた終点研磨条件と、演算時点の面内平坦度の変化度合と、演算時点の外周平坦度の変化度合と、を第2学習器32に入力し、終点研磨中の外周平坦度の変化量を取得する(なお、ここでの「演算時点」とは、主研磨停止条件の設定時点である)。
(3)ステップS1にて取得された終点研磨中の外周平坦度の変化量と、ステップS1にて設定された外周平坦度の目標値と、終点研磨の研磨時間とから逆算して、研磨終了時点で外周平坦度が、最終目標値を満足するために必要な主研磨停止時点の外周平坦度(主研磨停止時点の外周平坦度の目標値)を求める。
(4) (3)にて求められた外周平坦度を主研磨停止条件として設定する。なお、(3)での外周平坦度の算出は、一定の間隔で継続して行われる。そのため、主研磨停止条件は、外周平坦度が算出されるたびに更新される。
【0076】
ステップS8では、ステップS7での主研磨停止条件の設定に続き、制御部30は、主研磨を停止するか否かを判断する。そして、制御部30は、YES(主研磨停止)と判断した場合はステップS9へ進み、NO(主研磨継続)と判断した場合はステップS7へ戻る。ここで、主研磨停止条件は、外周平坦度の演算値が、ステップS7において主研磨停止条件として設定された外周平坦度に達したことである。そのため、ステップS8では、現在の外周平坦度が、ステップS7にて求められた外周平坦度に一致するか否かが判断される。
【0077】
ステップS9では、ステップS8での主研磨停止との判断に続き、制御部30は、主研磨を停止し、制御演算部35から第1駆動装置M1~第5駆動装置M5に対し、前提研磨条件によって規定された終点研磨条件に応じた制御指令を出力し、終点研磨の実行を開始してステップS10へ進む。なお、終点研磨の実行中、研磨機10では、ワークWに付与する荷重を次第に低減していくと共に、下定盤11及び上定盤12の回転数、サンギヤ13の回転数、インターナルギヤ14の回転数をそれぞれ低減しながらワークWを研磨する。
【0078】
ステップS10では、ステップS9での終点研磨の実行開始に続き、制御部30は、終点研磨が終了したか否かを判断する。そして、制御部30は、YES(終点研磨終了)と判断した場合はステップS11へ進み、NO(終点研磨未終了)と判断した場合はステップS9へ戻る。ここで、制御部30は、終点研磨時間が経過した場合、ワークWに付与する荷重が所定以下になった場合等、前提研磨条件にて規定された終点研磨の終了条件が成立したことで終点研磨終了と判断する。
【0079】
ステップS11では、ステップS10での終点研磨終了との判断に続き、制御部30は、研磨機10によるワークWの研磨を終了し、各種の研磨データをメモリ36に記録してエンドへ進む。
【0080】
以下、実施例1の両面研磨装置1の作用を「主研磨条件の補正制御作用」、「主研磨停止条件の制御作用」、「その他の制御作用」に分けて説明する。
【0081】
[主研磨条件の補正制御作用]
実施例1の両面研磨装置1において、主研磨中、面内平坦度と外周平坦度とがそれぞれ変化する。そのため、面内平坦度と外周平坦度の相関を考慮して主研磨条件を設定しなければ、面内平坦度と外周平坦度との双方を精度よく制御することが難しい。
【0082】
すなわち、外周平坦度がゼロ(nm)のときの面内平坦度と、その場合の主研磨条件との相関関係のみを学習器(以下、「比較例の学習器」という)に学習させ、当該比較例の学習器に面内平坦度の目標値を入力して主研磨条件を取得する両面研磨装置(以下、「比較例の両面研磨装置」という)では、外周平坦度の状態が考慮されない。このため、適切なワーク形状とすることができない。
【0083】
具体的に説明すると、例えば、主研磨条件ごとのワークの形状変化が
図10に示されたようになるワークW(以下、「例示ワークW´」という)が存在したと仮定する。すなわち、例示ワークW´は、主研磨条件Aで主研磨を実行した場合、外周平坦度がゼロ(nm)のとき面内平坦度が+80(nm)になり、外周平坦度が-20(nm)のとき面内平坦度が+90(nm)になり、外周平坦度が-50(nm)のとき面内平坦度が+100(nm)になる。また、主研磨条件Bで主研磨を実行した場合、外周平坦度がゼロ(nm)のとき面内平坦度がゼロ(nm)になり、外周平坦度が-20(nm)のとき面内平坦度が+10(nm)になり、外周平坦度が-50(nm)のとき面内平坦度が+20(nm)になる。また、主研磨条件Cで主研磨を実行した場合、外周平坦度がゼロ(nm)のとき面内平坦度が-20(nm)になり、外周平坦度が-20(nm)のとき面内平坦度がゼロ(nm)になり、外周平坦度が-50(nm)のとき面内平坦度が+10(nm)になる。
【0084】
これに対し、上述のように比較例の両面研磨装置では、外周平坦度がゼロ(nm)のときの面内平坦度と、主研磨条件との相関関係のみを比較例の学習器に学習させる。このため、
図11に示されたように、比較例の学習器に学習させるデータセットは、主研磨条件Aに対しては面内平坦度+80(nm)、主研磨条件Bに対しては面内平坦度ゼロ(nm)、主研磨条件Cに対しては面内平坦度-20(nm)になる。
【0085】
ここで、主研磨中に、例示ワークW´を外周平坦度が-20(nm)のときに、面内平坦度がゼロ(nm)になるように研磨する場合を考える。このとき、比較例の両面研磨装置では、外周平坦度を考慮することができないことから、外周平坦度については無視した上で、比較例の学習器に面内平坦度の目標値(ここではゼロ(nm))を入力した結果、「主研磨条件B」との結果を得ることになる。しかしながら、主研磨条件Bに設定して例示ワークW´の主研磨を実行すると、比較例の両面研磨装置では、主研磨中、外周平坦度が-20(nm)のタイミングで、面内平坦度が+10(nm)になると想定される。また、面内平坦度をゼロ(nm)にすれば、外周平坦度がゼロ(nm)になると想定される。つまり、比較例の両面研磨装置では、面内平坦度と、外周平坦度との双方を精度よく目標値に一致させることができない。
【0086】
これに対し、実施例1の両面研磨装置1では、第1学習器31と、主研磨条件補正部33と、を備えている。ここで、第1学習器31は、主研磨条件と、外周平坦度と、面内平坦度との相関関係を学習させた学習器である。すなわち、実施例1の第1学習器31に学習させるデータセットは、
図10に示されたように、各種の主研磨条件と、その条件下での外周平坦度及び面内平坦度になる。また、主研磨条件補正部33は、補正時点で設定されている主研磨条件と、補正時点の外周平坦度の演算値とを、第1学習器31に入力して得られた面内平坦度の推定値に基づいて求めた補正目標値と、最終的な外周平坦度の目標値を第1学習器31に入力して得られた主研磨条件によって、主研磨中に主研磨条件を補正する。
【0087】
すなわち、実施例1の両面研磨装置1では、主研磨の実行中、補正時点の主研磨条件と、補正時点の外周平坦度の演算値を第1学習器31に入力する。次に、実施例1の両面研磨装置1は、第1学習器31への入力情報と第1学習器31の学習結果から、補正時点の面内平坦度の推定値を取得し、補正時点の実際の面内平坦度との差分値を算出する。そして、実施例1の両面研磨装置1は、面内平坦度の目標値から、差分値を差し引いて「補正目標値」を求める。そして、面内平坦度の「補正目標値」と、外周平坦度の目標値を第1学習器31に入力して新たな主研磨条件を取得し、補正時点で設定されている主研磨条件を補正する(ステップS6)。
【0088】
以下、第1学習器31に学習させるデータセットが
図10に示された内容であると仮定して、実施例1の両面研磨装置1において、最終的な研磨終了時点で、面内平坦度ゼロ(nm)、外周平坦度ゼロ(nm)になることを目標として所定のワークWを主研磨することを例に具体的に説明する。
【0089】
この場合、最終的な研磨終了時点での目標値が、面内平坦度がゼロ(nm)、外周平坦度がゼロ(nm)であることから、主研磨条件Bに設定して主研磨を開始する。そして、主研磨条件Bでの主研磨中に、外周平坦度の演算値が-20(nm)になったタイミングで主研磨条件を補正する場合では、補正時点の主研磨条件である「主研磨条件B」と、補正時点の外周平坦度の演算値である「-20(nm)」を第1学習器31(
図10参照)に入力し、その結果得られる面内平坦度の推定値が「+10(nm)」になる。
【0090】
これに対し、外乱等の要因によって、面内平坦度の演算値(実際の面内平坦度)が+30(nm)であったと仮定する。
【0091】
この場合、面内平坦度の推定値が「+10(nm)」であるのに対し、面内平坦度の演算値が「+30(nm)」であることから、主研磨中の実際の面内平坦度が、第1学習器31の学習結果よりも+20(nm)大きい値になってしまう、ということが推察できる。
【0092】
そこで、実施例1の両面研磨装置1では、面内平坦度の推定値「+10(nm)」と面内平坦度の演算値「+30(nm)」との差分値(+20(nm))を算出する。そして、面内平坦度の目標値(ゼロ(nm))から、差分値(+20(nm))を差し引いて「補正目標値(-20(nm))」を求める。そして、実施例1の両面研磨装置1は、第1学習器31(
図10参照)に、面内平坦度の補正目標値(-20(nm))と、外周平坦度の目標値(ゼロ(nm))を入力する。この結果、新たな主研磨条件である「主研磨条件C」を取得することになる。そして、補正時点で設定されている主研磨条件(主研磨条件B)に換えて、新たな主研磨条件として「主研磨条件C」を設定する。
【0093】
そして、主研磨条件を主研磨条件Cに補正して主研磨を実行すれば、第1学習器31の学習結果では外周平坦度がゼロ(nm)のとき、面内平坦度が-20(nm)になると推定されるものの、上述のように、主研磨中の実際の面内平坦度が、第1学習器31の学習結果よりも+20(nm)大きい値になると推察されることから、両面研磨装置1は、外周平坦度がゼロ(nm)のとき、面内平坦度をゼロ(nm)にすることが可能になる。このように、実施例1の両面研磨装置1では、主研磨の実行中に、面内平坦度と外周平坦度の相関を考慮して主研磨条件を補正することができ、面内平坦度と外周平坦度との双方を精度よく制御することができる。
【0094】
「主研磨停止条件の制御作用」
実施例1の両面研磨装置1において、終点研磨によってワーク形状、特に外周平坦度が変化することが分かっている。そのため、主研磨の停止時点でワーク形状が目標形状に達していても、終点研磨によって外周平坦度が変化してしまい、最終的なワーク形状が目標形状から外れることがある。しかも、主研磨停止時点でのワークの変化度合が異なっていると、同じ終点研磨条件で終点研磨を行ったとしても、終点研磨中の外周平坦度の変化量が異なる。その結果、最終的なワーク形状が主研磨停止時点のワーク形状とは異なったものになり、目標形状から大きく外れることが想定される。そのため、ワーク形状の変化度合を踏まえた上で、外周平坦度の変化量を考慮して主研磨を停止させる必要がある。
【0095】
これに対し、実施例1の両面研磨装置1では、第2学習器32と、主研磨停止条件設定部34と、を備えている。ここで、第2学習器32は、終点研磨条件と、主研磨停止時の面内平坦度の変化度合と、主研磨停止時の外周平坦度の変化度合と、終点研磨中の外周平坦度の変化量と、の相関関係を学習させた学習器である。また、主研磨停止条件設定部34は、ワークWの外周平坦度が、終点研磨条件と、演算時点の面内平坦度の変化度合と、演算時点の外周平坦度の変化度合とを第2学習器32に入力して得られた終点研磨中の外周平坦度の変化量と、終点研磨終了時点の外周平坦度の目標値と、に基づいて算出された目標外周平坦度になることを、主研磨の停止条件(主研磨停止条件)として設定する。
【0096】
すなわち、実施例1の両面研磨装置1では、主研磨停止条件を設定する際、終点研磨条件と、演算時点の面内平坦度の変化度合と、演算時点の外周平坦度の変化度合を第2学習器32に入力する。そして、実施例1の両面研磨装置1は、第2学習器32への入力情報と第2学習器32の学習結果から、終点研磨中の外周平坦度の変化量を得る。そして、終点研磨中の外周平坦度の変化量と、最終的な外周平坦度の目標値と、終点研磨時間から逆算して、外周平坦度の目標値を満足させるために必要な主研磨停止時点の外周平坦度の目標値(目標外周平坦度)を求める。そして、目標外周平坦度によって主研磨停止条件を規定する(ステップS7)。
【0097】
このように、実施例1の両面研磨装置1では、主研磨の停止時点の外周平坦度が、面内平坦度及び外周平坦度の変化度合を踏まえた上での終点研磨による外周平坦度の変化量を考慮した必要形状になるように、主研磨を停止することができる。そのため、実施例1の両面研磨装置1は、終点研磨によってワークWの形状変化が生じても、終点研磨終了時点(最終的な研磨終了時点)でワーク形状が目標形状から大きく外れることを防止できる。
【0098】
なお、
図12は、実施例1の両面研磨装置1において、研磨終了時の外周平坦度の目標値をゼロ(nm)に設定し、終点研磨を実施した後のワークWの形状をまとめた結果である。
図12に示されたように、第1のサンプルワークでは、面内平坦度が+34(nm)、外周平坦度が-2(nm)になった。また、第2のサンプルワークでは、面内平坦度が-4(nm)、外周平坦度が-5(nm)になった。また、第3のサンプルワークでは、面内平坦度が+40(nm)、外周平坦度が-3(nm)になった。また、第4のサンプルワークでは、面内平坦度が+62(nm)、外周平坦度が-3(nm)になった。
【0099】
これらの結果から、実施例1の両面研磨装置1は、面内平坦度の大きさに拘らず、実際の外周平坦度と目標値(ゼロ(nm))との差を小さくできる。そのため、実施例1の両面研磨装置1は、終点研磨終了時点(最終的な研磨終了時点)でワーク形状が目標形状から大きく外れることを防止できることがわかる。
【0100】
また、
図13には、実施例1の両面研磨装置1を用いてワークWを研磨した際の最終的な研磨終了時点のワークWの研磨結果が示されている。
図13に示されたように、第5のサンプルワークでは、面内平坦度の目標値をゼロ(nm)、外周平坦度の目標値をゼロ(nm)に設定したところ、実際に研磨した結果、面内平坦度が-1(nm)、外周平坦度が+3(nm)になった。また、第6のサンプルワークでは、面内平坦度の目標値をゼロ(nm)、外周平坦度の目標値を-20(nm)に設定したところ、実際に研磨した結果、面内平坦度が-4(nm)、外周平坦度が-20(nm)になった。また、第7のサンプルワークでは、面内平坦度の目標値を-30(nm)、外周平坦度の目標値をゼロ(nm)に設定したところ、実際に研磨した結果、面内平坦度が-30(nm)、外周平坦度が+2(nm)になった。また、第8のサンプルワークでは、面内平坦度の目標値を+30(nm)、外周平坦度の目標値をゼロ(nm)に設定したところ、実際に研磨した結果、面内平坦度が+30(nm)、外周平坦度が+3(nm)になった。また、第9のサンプルワークでは、面内平坦度の目標値をゼロ(nm)、外周平坦度の目標値をゼロ(nm)に設定したところ、実際に研磨した結果、面内平坦度が-5(nm)、外周平坦度が-4(nm)になった。
【0101】
図13に示された結果から、実施例1の両面研磨装置1は、面内平坦度及び外周平坦度の双方ともに目標値から大きく外れることがなく、最終的な研磨終了時のワーク形状が目標形状から逸脱することを抑制できることが明らかになった。
【0102】
[その他の制御作用]
実施例1の両面研磨装置1では、ワークWに面内領域Gと外周領域Eとを設定し、面内平坦度及び外周平坦度によってワーク形状を数値化して示している。つまり、実施例1では、ワーク形状を複数の領域に区分けして制御している。一方、実施例1の両面研磨装置1によって研磨されるワークWは、表面に微細な電子回路が形成された半導体素子の基板として使用されることがある。ここで、ワークWの表面に形成される電子回路は、面内領域Gと外周領域Eの境界にまたがって形成されることがある。そのため、ワーク形状は、面内領域Gと外周領域Eの境界において変曲点が形成されないよう、境界が平滑面であることが望ましい。そして、面内領域Gと外周領域Eの境界に変曲点が形成されないようにワーク形状を制御するには、面内領域Gと外周領域Eといった異なる領域の境界上の平坦性(ワーク形状のなめらかさ)、つまり面内領域Gと外周領域Eとの境界でのワーク形状の傾きの変化を数値で表現する必要がある。
【0103】
これに対し、実施例1の両面研磨装置1では、面内平坦度を、面内領域Gの厚みデータ群に対して設定された近似直線の傾き値としている。また、外周平坦度は、面内平坦度を基準とした外周領域Eの厚みデータ群に対して設定された近似直線の傾き値の連続化処理を行って求められる。つまり、実施例1の両面研磨装置1では、外周平坦度を、外周領域Eの厚みデータ群に対して設定された近似直線の傾き値と面内平坦度との和の値としている。
【0104】
このように、実施例1の両面研磨装置1は、面内平坦度と外周平坦度を個別に算出するが、外周平坦度を、面内平坦度を基準とした外周領域Eの厚みデータ群に対して設定された近似直線の傾き値の連続化処理を行って求めることで、面内領域Gのデータ群に設定した近似曲線の傾き値を基準線とし、当該基準線に対する外周領域Eのデータ群に設定した近似曲線の傾き値を、外周平坦度として数値化することができる。このため、外周平坦度を、面内平坦度に対するロールオフの度合いを表現する指標として示すことができ、面内領域Gと外周領域Eといった異なる領域の境界上の平坦性(ワーク形状のなめらかさ)を、数値で表現することができる。また、実施例1の両面研磨装置1は、ワークWの形状を数値で示すことができ、ワーク形状をオペレータ等に把握させやすくできる。
【0105】
なお、外周平坦度は、面内平坦度から、外周領域Eの厚みデータ群に対して設定された近似直線の傾き値を減算して求められてもよい。つまり、外周平坦度は、面内平坦度と、外周領域Eの厚みデータ群に対して設定された近似直線の傾き値との差の値であってもよい。
【0106】
さらに、実施例1の両面研磨装置1は、外周領域EをワークWの径方向に沿って複数の区画に分割し、分割された外周領域(最内区画Ei、外側区画Eo)ごとに外周平坦度を算出してもよい。外周領域Eを複数の区画に分割することで、実施例1の両面研磨装置1は、各区画ごとの形状変化に応じて主研磨条件を補正したり、主研磨停止条件を設定したりすることができる。これにより、最終的な研磨終了時のワーク形状をさらに精度よく目標形状に一致させることができる。
【0107】
また、実施例1の両面研磨装置1では、外周領域Eを複数の区画に分割する場合、面内領域Gに隣接した区画を最内区画Eiとし、最内区画Eiよりも径方向外側の区画を外側区画Eoとする。
【0108】
そして、最内区画Eiの平坦度は、面内平坦度を基準とした最内区画Eiの厚みデータ群に対して設定された近似直線の傾き値の連続化処理を行って求められる。実施例1の最内区画Eiの平坦度は、最内区画Eiの厚みデータ群に対して設定された近似直線の傾き値と面内平坦度との和の値とする。また、外側区画Eoの平坦度は、外側区画Eoの径方向内側に隣接する区画(例えば最内区画Ei)の平坦度を基準とした外側区画Eoの厚みデータ群に対して設定された近似直線の傾き値の連続化処理を行って求められる。実施例1の外側区画Eoの平坦度は、外側区画Eoの厚みデータ群に対して設定された近似直線の傾き値と外側区画Eoの径方向内側に隣接する区画(例えば最内区画Ei)の平坦度との和の値とする。
【0109】
これにより、実施例1の両面研磨装置1では、外周領域Eを複数の区画に分割した場合であっても、外周領域Eの平坦性(ワーク形状のなめらかさ)を、適切に表現することができ、ワーク形状を精度よく制御することができる。
【0110】
なお、最内区画Eiの平坦度は、面内平坦度から、最内区画Eiの厚みデータ群に対して設定された近似直線の傾き値を減算して求められてもよい。つまり、最内区画Eiの平坦度は、面内平坦度と、最内区画Eiの厚みデータ群に対して設定された近似直線の傾き値との差の値であってもよい。
【0111】
また、外側区画Eoの平坦度は、外側区画Eoの径方向内側に隣接する区画(例えば最内区画Ei)の平坦度から、外側区画Eoの厚みデータ群に対して設定された近似直線の傾き値を減算して求められてもよい。つまり、外側区画Eoの平坦度は、外側区画Eoの径方向内側に隣接する区画(例えば最内区画Ei)の平坦度と、外側区画Eoの厚みデータ群に対して設定された近似直線の傾き値との差の値であってもよい。
【0112】
また、実施例1の外側区画Eoは、第1外側区画Eo1と第2外側区画Eo2との二つの区画に分割されている。しかしながら、外側区画Eoは、分割されていなくてもよいし、三区画以上に分割されてもよい。
【0113】
以上、本発明の両面研磨装置を実施例1に基づいて説明してきたが、具体的な構成については、この実施例に限られるものではなく、各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加は許容される。
【0114】
実施例1の両面研磨装置1では、
図9に示された研磨処理制御のステップS1において、面内平坦度の目標値及び外周平坦度の目標値を設定する際、ワークWの最終的な加工目標になる終点研磨終了時点の最終的な面内平坦度の目標値と、終点研磨終了時点の最終的な外周平坦度の目標値を設定する例が示された。しかしながら、面内平坦度の目標値及び外周平坦度の目標値は、これに限らない。例えば、ワークWの研磨状況等に応じた目標値を複数設定し、主研磨条件を補正するときと、主研磨停止条件を設定するときで適宜目標値を異ならせてもよい。
【符号の説明】
【0115】
1 両面研磨装置
10 研磨機
11 下定盤
12 上定盤
20 厚み測定器
30 制御部
31 第1学習器
32 第2学習器
33 主研磨条件補正部
34 主研磨停止条件設定部
G 面内領域
E 外周領域
W ワーク
【要約】
【課題】最終的な研磨終了時のワーク形状が目標形状から逸脱することを抑制でき、所望のワーク形状を得ることを可能にする両面研磨装置を提供すること。
【解決手段】厚み測定器20の測定結果に基づいて研磨機10を制御する制御部30が、主研磨条件と外周平坦度と面内平坦度との相関関係を学習させた第1学習器31と、終点研磨条件と、主研磨停止時の面内平坦度の変化度合と、主研磨停止時の外周平坦度の変化度合と、終点研磨中の外周平坦度の変化量との相関関係を学習させた第2学習器32と、第1学習器31の学習結果から得られた面内平坦度の補正目標値と、外周平坦度の目標値を第1学習器31に入力し得た主研磨条件で、補正時点の主研磨条件を補正する主研磨条件補正部33と、第2学習器32の学習結果から得た外周平坦度の変化量を用いて主研磨停止条件を設定する主研磨停止条件設定部34と、を有する。
【選択図】
図1