(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】学習支援システムおよび学習支援方法
(51)【国際特許分類】
G09B 5/06 20060101AFI20240416BHJP
G06Q 50/20 20120101ALI20240416BHJP
【FI】
G09B5/06
G06Q50/20
(21)【出願番号】P 2023204250
(22)【出願日】2023-12-01
【審査請求日】2023-12-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503128216
【氏名又は名称】株式会社フォーサイト
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 浩司
【審査官】鈴木 崇雅
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3244670(JP,U)
【文献】特開2020-134753(JP,A)
【文献】特開2023-089080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/06-9/56
G09B 17/00-19/26
G06Q 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
講師を模した仮想的な人物であるアバター講師により、受講者に、映像および音声で構成された講義を提供する学習支援システムであって、
第1レベルの講義の台本として予め作成されたテキストデータである第1レベル台本データを記憶する記憶部と、
前記第1レベル台本データに基づいて、前記第1レベルと異なる第2レベルの講義の台本のテキストデータである第2レベル台本データを作成する台本生成部と、
前記第2レベル台本データのテキストデータを発声する音声と、前記アバター講師の映像とを含む講義を出力する講義出力部と、
を有し、
前記第1レベル台本データは、講義すべき内容を他の事柄に置き換えて説明するたとえ話および/または講義すべき内容を具体的に示す具体例を含み、講義すべき内容を複数回繰り返して説明する部分を含み、
前記台本生成部は、テキストを生成する生成人工知能にプロンプトと前記第1レベル台本データとを与えて、前記第1レベル台本データから前記たとえ話または前記具体例を省き、前記複数回繰り返して説明する部分を1回だけ説明するようにすることにより、前記第2レベル台本データを生成する、
学習支援システム。
【請求項2】
前記受講者が前記講義を受けている画像または前記受講者から取得される入力情報に基づいて、前記受講者の状態を判定する状態判定部を更に有し、
前記講義出力部は、前記受講者の状態に基づいて、前記受講者に提供する講義に用いる台本データおよび前記台本データを読み上げる速度を決定する、
請求項1に記載の学習支援システム。
【請求項3】
講師を模した仮想的な人物であるアバター講師により、受講者に、映像および音声で構成された講義を提供する学習支援システムであって、
第1レベルの講義の台本として予め作成されたテキストデータである第1レベル台本データを記憶する記憶部と、
前記第1レベル台本データに基づいて、前記第1レベルと異なる第2レベルの講義の台本のテキストデータである第2レベル台本データを作成する台本生成部と、
前記第2レベル台本データのテキストデータを発声する音声と、前記アバター講師の映像とを含む講義を出力する講義出力部と、
を有し、
講義のレベルとして高い方から順にレベルA、レベルB、レベルC、およびレベルDがあり、
前記記憶部は、前記レベルDの講義の台本であって、講義すべき内容を他の事柄に置き換えて説明するたとえ話または講義すべき内容を具体的に示す具体例を含み、講義すべき内容を複数回繰り返して説明する部分を含むテキストデータを、前記第1レベル台本データとして記憶し、
前記台本生成部は、前記第1レベル台本データから前記たとえ話または前記具体例を省き、前記複数回繰り返して説明する部分を1回だけ説明するようにすることにより、前記第2レベル台本データを生成し、
前記講義出力部は、前記レベルDの講義において前記第1レベル台本データを第1読み上げ速度で発声し、前記レベルCの講義において前記第1レベル台本データを前記第1読み上げ速度よりも早い第2読み上げ速度で発声し、前記レベルBの講義において前記第2レベル台本データを前記第2読み上げ速度で発声し、前記レベルAの講義において前記第2レベル台本データを前記第2読み上げ速度よりも早い第3読み上げ速度で発声する
、
学習支援システム。
【請求項4】
前記受講者から取得される入力情報に基づいて、前記受講者のレベルを判定するレベル判定部を更に有し、
前記講義出力部は、前記受講者の学力がレベルDであれば前記第1レベル台本データを第1読み上げ速度で発声し、前記受講者の学力がレベルCであれば前記第1レベル台本データを前記第1読み上げ速度よりも早い第2読み上げ速度で発声し、前記受講者の学力がレベルBであれば前記第2レベル台本データを前記第2読み上げ速度で発声し、前記受講者の学力がレベルAであれば前記第2レベル台本データを前記第2読み上げ速度よりも早い第3読み上げ速度で発声する、
請求項
3に記載の学習支援システム。
【請求項5】
講師を模した仮想的な人物であるアバター講師により、受講者に、映像および音声で構成された講義を提供するための学習支援方法であって、
コンピュータが、
第1レベルの講義の台本として予め作成されたテキストデータである第1レベル台本データを記憶し、
前記第1レベル台本データに基づいて、前記第1レベルと異なる第2レベルの講義の台本のテキストデータである第2レベル台本データを作成し、
前記第2レベル台本データのテキストデータを発声する音声と、前記アバター講師の映像とを含む講義を出力する、
学習支援方法において、
前記第1レベル台本データは、講義すべき内容を他の事柄に置き換えて説明するたとえ話および/または講義すべき内容を具体的に示す具体例を含み、講義すべき内容を複数回繰り返して説明する部分を含み、
前記コンピュータが、テキストを生成する生成人工知能にプロンプトと前記第1レベル台本データとを与えて、前記第1レベル台本データから前記たとえ話または前記具体例を省き、前記複数回繰り返して説明する部分を1回だけ説明するようにすることにより、前記第2レベル台本データを生成する、
学習支援方法。
【請求項6】
講師を模した仮想的な人物であるアバター講師により、受講者に、映像および音声で構成された講義を提供するための学習支援方法であって、
コンピュータが、
第1レベルの講義の台本として予め作成されたテキストデータである第1レベル台本データを記憶し、
前記第1レベル台本データに基づいて、前記第1レベルと異なる第2レベルの講義の台本のテキストデータである第2レベル台本データを作成し、
前記第2レベル台本データのテキストデータを発声する音声と、前記アバター講師の映像とを含む講義を出力する、学習支援方法において、
講義のレベルとして高い方から順にレベルA、レベルB、レベルC、およびレベルDがあり、
前記コンピュータが、
前記レベルDの講義の台本であって、講義すべき内容を他の事柄に置き換えて説明するたとえ話または講義すべき内容を具体的に示す具体例を含み、講義すべき内容を複数回繰り返して説明する部分を含むテキストデータを、前記第1レベル台本データとして記憶し、
前記第1レベル台本データから前記たとえ話または前記具体例を省き、前記複数回繰り返して説明する部分を1回だけ説明するようにすることにより、前記第2レベル台本データを生成し、
前記レベルDの講義において前記第1レベル台本データを第1読み上げ速度で発声し、前記レベルCの講義において前記第1レベル台本データを前記第1読み上げ速度よりも早い第2読み上げ速度で発声し、前記レベルBの講義において前記第2レベル台本データを前記第2読み上げ速度で発声し、前記レベルAの講義において前記第2レベル台本データを前記第2読み上げ速度よりも早い第3読み上げ速度で発声する、
学習支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計算機システムを利用して学習を支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、映像と音声を含む講義を提供する学習システムが開示されている。学習システムは、講義を受講する受講者を撮影するために取得された画像に基づいて、受講者が講義に集中しているか否かに関する判定を行い、その判定の結果に基づく集中判定結果情報を記録し、画像と集中判定結果情報とに基づいて、受講者が講義の内容を理解しているか否かに関する判定を行い、その判定の結果に基づく理解判定結果情報を記録し、集中判定結果情報および理解判定結果情報に基づいて講義を制御する。その際、学習システムは、補習が有効な受講者に対して、補習処理として、予め用意されていた補習講義を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
あるレベルの受講者に合わせて作成された講義は、それより高いレベルの受講者にはつまらないと感じられ、受講者はやる気を失う。また、その講義は、それより低いレベルの受講者には理解できず、やはり受講者はやる気を失う。受講者の講義に対する理解のレベルは、受講者の過去の学習歴や理解力によってそれぞれに異なる。したがって、各受講者のレベルにあった補習講義を提供するためには、同じ分野に対してレベルの異なる多数の講義コンテンツを予め用意しておくことが必要となり、多大な費用、時間、労力を要する。
【0005】
この課題は、バーチャルな講義コンテンツを受講者に提供する学習システムだけでなく、現実の人間の講師が受講者に対して講義を行う学校、予備校、塾などにも同様の課題が存在する。ひとりの講師があらゆる受講者の理解のレベルに応じて講義の説明を使い分けるのは容易でない。現実の講師には得意不得意があり、理解のレベルの高い受講者に向けた簡潔にポイントを押さえた講義を得意とする講師がいる一方で、理解のレベルの低い受講者にその興味を惹きつつ分かりやすく説明する講義を得意とする講師がいる。
【0006】
本開示に含まれるひとつの目的は、受講者のレベルに応じた講義の提供を実現する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のひとつの実施態様による学習支援システムは、講師を模した仮想的な人物であるアバター講師により、受講者に、映像および音声で構成された講義を提供する学習支援システムであって、第1レベルの講義の台本として予め作成されたテキストデータである第1レベル台本データを記憶する記憶部と、前記第1レベル台本データに基づいて、前記第1レベルと異なる第2レベルの講義の台本のテキストデータである第2レベル台本データを作成する台本生成部と、前記第2レベル台本データのテキストデータを発声する音声と、前記アバター講師の映像とを含む講義を出力する講義出力部と、を有している。
【発明の効果】
【0008】
本開示のひとつの態様のよれば、受講者のレベルに応じた講義の提供を実現する技術を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】学力レベル講義レベル対応表を示す図である。
【
図3】第1の実施形態による学習支援システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図4】学習支援システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図6】基本レベル台本データの概略を示す図である。
【
図7】学習支援システムが行う全体処理をフローチャートである。
【
図8】法律系資格試験のための講座における初期レベル特定処理の判定ロジックを示す図である。
【
図9】上位レベル台本データの概略を示す図である。
【
図10】受講者状態判定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0011】
本実施形態の学習支援システムは、講師を模した姿を有する仮想的な人物(以下「アバター講師」ともいう)により、受講者に、映像および音声で構成された講義コンテンツを提供する計算機システムである。講義コンテンツは、一例として法律系の資格試験の受験対策の講義のコンテンツである。学習支援システムは、受講者に好適なレベルの講義コンテンツを提供し、受講者の資格試験合格に向けた効果的な学習を支援する。
【0012】
義務教育などの基本的な学習、高校受験や大学受験のための学習、資格試験に合格するための学習などにおいて、学習するとは、知識を積み重ねていくことであると言える。例えば、九九について正しい理解がなければ、九九を使うような算数を理解することができない。したがって、例えば、小学校4年生で勉強ができない子供に対しては、まず、3年生の学習に戻り、それでもできなければ、2年生、1年生と戻って学習を行い、学習の積み重ねができる状態となるように指導することが求められる。
【0013】
個々の受講者に対する学習支援においては、受講者が既に知っている知識を前提として、講義によって新しい知識を加えていくのが効果的である。ある知識を前提として新しい知識を加えていく講義を、その新しい知識を既にほとんど知っている受講者が受けると、その受講者は、つまらない講義と感じ、学習の効果が上がらない。また、ある知識を前提として新しい知識を加えていく講義を、前提の知識が足りない受講者が受けると、その受講者は、さっぱり分からないと感じ、学習の効果が上がらない。
【0014】
以上のことから、講義の内容における既に知っている知識と新しい知識の割合によって受講者の学力レベルを表すことができる。そして、受講者の学力レベルを適切に分類することにより、分類毎に適切な講義を構成することにより、多くの個々の受講者に対して適切なレベルの講義を提供することが可能となる。
【0015】
図1は、学力レベル分類表を示す図である。学力レベル分類表は、受講者の学力レベルの分類の一例を示している。
【0016】
学力レベル分類表D01を参照すると、受講者の学力レベルはA、B、C、Dという4つのレベルに分類される。レベルAは、学力評価が高い分類であり、講義全体に対する「新しい知識」の割合が0~20%である。レベルBは、学力評価がやや高い分類であり、講義全体に対する「新しい知識」の割合が21~40%である。レベルCは、学力評価が普通の分類であり、講義全体に対する「新しい知識」の割合が41~60%である。レベルDは、学力評価が低い類であり、講義全体に対する「新しい知識」の割合が61%以上である。
【0017】
次に、それぞれの学力レベルの受講者に対して適切なレベルの講義を提供するためには、学力レベルに対して講義のレベルを合わせることが求められる。
【0018】
講義の内容を理解する前提となる知識を既に十分に持っている受講者であれば、新しい知識の部分を抽象的に説明されてもそれを既知の知識と結びつけることによって理解することができる。しかし、前提となる知識を既に十分に持っていない受講者は、新しい知識の部分を抽象的に説明されると、それを既知の知識と結びつけることができず理解できないということが起こる。その場合には、新しい知識の部分について、具体例、たとえ話、比喩などを用いた付加説明することによって理解を促進することができる。
【0019】
また、講義の内容を理解する前提となる知識を既に十分に持っている受講者は、新しい知識の部分について、既に十分に理解しているので、説明が繰り返されると、退屈や無駄な時間と感じる。その一方で、前提となる知識を既に十分に持っていない受講者は、新しい知識を理解するのにある程度の時間を要するので、説明を繰り返さないと、ついていけないということが起こる。その場合、新しい知識の部分を繰り返し説明することによって理解が促進される。
【0020】
また、講義の内容を理解する前提となる知識を既に十分に持っている受講者は、新しい知識の部分について、既に十分に理解しているので、ゆっくり説明されると、退屈や無駄な時間と感じる。その一方で、前提となる知識を既に十分に持っていない受講者は、新しい知識を理解するのにある程度の時間を要し、かつ、その新しく理解すべき知識の部分が多いので、講義の説明が速いと、ついていけないということが起こる。その場合、ゆっくりした説明によって理解が促進される。
【0021】
以上のことから、それぞれの学力レベルの受講者に対して適切なレベルの講義を提供するためには、学力レベルに合わせて、具体例やたとえ話などによる付加説明、繰り返し、および講義スピードを調整することが有効であると言える。
【0022】
図2は、学力レベル講義レベル対応表を示す図である。学力レベル講義レベル対応表は、受講者の学力レベルに対応する好適な講義レベルおよびその講義の態様を例示する。
【0023】
学力レベル講義レベル対応表D02には、各学力レベルA~Dに対する好適な講義レベルの態様が示されている。学力レベルAに対応する講義レベルは、具体例やたとえ話などの付加解説が不要であり、重要部分の繰り返し説明が不要であり、速い講義スピードが好適である。学力レベルBに対応する講義レベルは、付加解説が不要であり、重要部分の繰り返し説明が不要であり、普通の講義スピードが好適である。学力レベルCに対応する講義レベルは、付加解説が必要であり、重要部分の繰り返し説明が必要であり、普通の講義スピードが好適である。学力レベルDに対応する講義レベルは、付加解説が必要であり、重要部分の繰り返し説明が必要であり、遅い講義スピードが好適である。
【0024】
本実施形態による学習支援システムは、
図2に示す態様によって、アバター講師が受講者に対して、受講者の学習レベルに応じて適切なレベルの講義を提供するコンピュータシステムである。
【0025】
図3は、第1の実施形態による学習支援システムの機能構成を示すブロック図である。
【0026】
図3を参照すると、学習支援システム10は、受講者レベル判定部11、台本生成部12、講義出力部13、受講者状態判定部15、および記憶部14を有している。記憶部14には、サービスを実行するのに必要な予め準備されたデータが記録されている。記憶部14に記録されているデータの詳細は後述する。受講者レベル判定部11、台本生成部12、講義出力部13、および受講者状態判定部15は、その処理がソフトウェアプログラムにより規定され、プロセッサがそのソフトウェアプログラムを実行することにより実現される。その処理の詳細は後述する。
【0027】
図4は、学習支援システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
【0028】
図4を参照すると、学習支援システム10は、サーバ20と、インターネット等の通信ネットワーク経由でサーバ20に接続可能なパーソナルコンピュータやスマートホン等の情報端末30とで構成されている。受講者90は、情報端末30上のブラウザ33を用いてサーバ20に接続し、サーバ20から提供されるサービスを利用する。サービスは、学習に関連するコンテンツを提供するサービスである。サービスは
図1に示した各部により実現される。また、情報端末30のカメラ31で取得される受講者90の映像およびマイク32で取得される受講者90の音声はサーバ20へ送信され、サーバ20による処理に利用される。
【0029】
図4に示すように、サーバ20は、ハードウェアとして、処理装置21、メインメモリ22、記憶装置23、通信装置24、入力装置25、および表示装置26を有し、それらがバス27に接続されている。
【0030】
記憶装置23は、書込みおよび読み出しが可能にデータを記憶するものである。
図3に示した記憶部14はこの記憶装置23によって実現される。処理装置21は、記憶装置23に記憶されたデータをメインメモリ22に読み出し、メインメモリ22を利用してソフトウェアプログラムの処理を実行するプロセッサである。処理装置21によって、
図3に示した受講者レベル判定部11、台本生成部12、講義出力部13、および受講者状態判定部15が実現される。通信装置24は、処理装置21にて処理された情報を有線または無線あるいはそれら両方を含む通信ネットワークを介して送信し、また通信ネットワークを介して受信した情報を処理装置21に伝達する。受信した情報は処理装置21にてソフトウェアの処理に利用される。入力装置25は、キーボードやマウスなどオペレータによる操作入力による情報を受け付ける装置であり、入力された情報は処理装置21にてソフトウェア処理に利用される。表示装置26は、処理装置21によるソフトウェア処理に伴って画像やテキストの情報をディスプレイ画面に表示する装置である。入力装置25および表示装置26は、主には、受講者90ではなく管理者(不図示)が利用するために設けられている。
【0031】
図3に戻り、記憶部14には受講者情報D01と基本レベル台本データD02とが記憶されている。受講者情報D01は、本学習支援システム10により講義を受ける各受講者90に関する情報である。基本レベル台本データD02は、基本レベルの講義の台本として予め作成されたテキストデータである。
【0032】
【0033】
受講者情報D03には、各受講者90のそれぞれの受講者番号(No.)、氏名、受験歴、出身学部、および基本講義の希望の有無が登録されている。氏名は当該受講者90の氏名を示す。受験歴は、当該受講者90が受験しようとしている試験を過去に受験した回数を示す。例えば、No.=001の受講者は、受験無しなので、これまで試験を受けたことがなく、今回が初回の受験である。出身学部は、当該受講者90の出身学部を示す。例えば、例えば、No.=001の受講者は、法学部の出身である。基本講義の希望の有無は、基本的な内容の講義を受講することを希望しているか否かを示す。例えば、No.=001の受講者は、基本的な内容の講義の受講することを希望している。No.=004の受講者は、基本的な内容の講義の受講することを希望していない。
【0034】
図6は、基本レベル台本データの概略を示す図である。
【0035】
基本レベル台本データD04は、基本レベルの講義の台本として予め作成されたテキストデータである。基本レベルの講義は、初学者を対象とした詳しい講義であり、その台本は、重要な講義内容を繰り返したり、重要な講義内容についてたとえ話や具体例を挙げた付加的な解説を行ったりするものとなっている。
図6の例では、基本レベルの講義の台本は、まず講義内容Aの解説を行い、続いて講義内容Bの解説を2回繰り返し、次に講義内容Cの解説とそれを補足する付加解説を行うものとして作成されている。基本レベルの講義の台本は、例えば、経験豊かな現実の講師が行った講義の音声データから音声認識処理によって生成したものであってもよい。あるいは、現実の講師がテキストデータとして作成したものであってもよい。
【0036】
図7は、学習支援システムが行う全体処理をフローチャートである。
【0037】
まず、受講者レベル判定部11が、まずステップS101にて初期レベル特定処理を実行する。初期レベル特定処理は、受講者90に最初に提供する講義のレベル(初期レベル)を決定する処理である。
【0038】
図8は、法律系資格試験のための講座における初期レベル特定処理の判定ロジックを示す図である。
【0039】
初期レベルは受講者情報D03に基づいて決定される。当該試験の受験歴がなく初回受験であり、かつ、法学部出身でない受講者90の初期レベルはレベルDとなる。当該試験の1回以上の受験歴があるまたは法学部出身であり、かつ、基本講座の希望がある受講者90の初期レベルはレベルCとなる。当該試験の1回以上の受験歴があるまたは法学部出身であり、かつ、基本講座の希望がない受講者90の初期レベルはレベルBとなる。この判定ロジックは一例であり、これに限らず他のロジックで初期レベルを決めてもよい。また、全ての受講者90の初期レベルを例えばレベルCといった1つのレベルに統一することにしてもよい。
【0040】
図7に戻り、ステップS102にて、受講者レベル判定部11が講義レベルを設定する。ステップS101にて初期レベルを決定した直後であれば、受講者レベル判定部11は、その初期レベルを講義レベルとして設定する。
【0041】
次に、ステップS103にて、台本生成部12が、講義に用いる台本を生成する。このとき台本生成部12は、講義レベルに適合する講義の台本のテキストデータを取得する。講義レベルがレベルCまたはレベルDであれば、台本生成部12は、記憶部14に記録されている基本レベル台本データD02をそのまま取得する。あるいは、アバター講師の話し方に、方言や動物ことばなどのような特定の言語体系の特徴を持たせる場合には、この段階で、基本レベル台本データD02の内容をそのままで所望の言語体系に変換してもよい。その際、例えば、台本生成部12は、テキストを生成する生成人工知能(生成AI)を有しており、その生成AIに、所定の指示を示すプロンプトと基本レベル台本データD04とを与えることにより、言語体系を変換させてもよい。
【0042】
講義レベルがレベルAまたはレベルBであれば、台本生成部12は、記憶部14に記録されている基本レベル台本データD02から上位レベル台本データを生成する。その際、例えば、台本生成部12は、生成AIを有しており、その生成AIに、所定の指示を示すプロンプトと基本レベル台本データD04とを与えることにより、上位レベル台本データD05を生成させてもよい。その際、更に台本生成部12は生成AIに言語体系を変換させてもよい。
【0043】
図9は、上位レベル台本データの概略を示す図である。
【0044】
上位レベル台本データD05は、上位レベルの講義の台本となるテキストデータである。上位レベルはここではレベルAまたはレベルBを指す。上位レベルの講義は、受験歴のある受講者や法学部出身の受講者を対象とした講義であり、その台本は、説明の繰り返し、たとえ話や具体例を挙げた付加的な解説を含まないものとなっている。
図9の例では、上位レベルの講義の台本は、まず講義内容Aの解説を行い、続いて講義内容Bの解説を1回行い、次に講義内容Cの解説を行うものとなっている。
【0045】
図7に戻り、ステップS104にて、講義出力部13は、ステップS103にて取得した台本データのテキストデータをアバター講師が解説する講義の映像および音声を出力する。その際、テキストデータは、アバター講師が発声するのみでもよいし、更に画面上に字幕として表示してもよい。
【0046】
次に、ステップS105にて、受講者状態判定部15は、受講者状態判定処理を実行する。受講者状態判定処理は、受講者90がどのような状態で講義を受講しているかを判定する処理である。受講者の状態には、受講者90の学力レベルに対して講義のレベルが高いか低いか適切かが表される。受講者状態の判定は、情報端末30のカメラ31およびマイク32で取得される、講義を受ける受講者90の画像および音声を基に行われる。更に生体センサによって取得される脳波心拍数などのバイタルデータが利用されてもよい。
【0047】
例えば、受講者90の画像から受講者の表情および動作を検出することができる。顔の細かな変化、視線および瞳孔の大きさならびにそれらの変化、更に動作から受講者90の感情を推測することができる。また、受講者90の音声から、受講者90が発した言葉および受講者90の声のトーンを検出することができる。例えば、アバター講師に対して受講者90が発した言葉の内容、声の大きさおよび抑揚から、受講者90の講義に対する理解の度合いや感情を推測することができる。
【0048】
図10は、受講者状態判定処理のフローチャートである。
【0049】
受講者状態判定処理において、受講者状態判定部15は、まずステップS201にて、受講者90が講義を理解しているか否か判定する。受講者90が講義を理解しているならば、受講者状態判定部15は、ステップS202にて、受講者90が退屈しているか否か判定する。受講者90が退屈しているならば、受講者状態判定部15は、ステップS203にて、受講者90の学力レベルが講義レベルよりも高いと判断する。ステップS202にて、受講者90が退屈していないと判定すると、受講者状態判定部15は、ステップS204にて、受講者90の学力レベルと講義レベルとが適切に整合していると判断する。ステップS201にて、受講者90が講義を理解していないと判定すると、受講者状態判定部15は、受講者90の学力レベルが講義レベルよりも低いと判断する。
【0050】
図7に戻り、ステップS106にて、受講者状態判定部15は、受講者状態判定処理の結果を基に講義レベルを変更する必要があるか否か判定する。このとき、受講者状態判定部15は、受講者90の学力レベルが講義レベルより高いあるいは低い場合には講義レベルを変更する必要があると判断する。また、受講者状態判定部15は、受講者90の学力レベルと講義レベルが適正に整合している場合には講義レベルを変更する必要がないと判断する。
【0051】
講義レベルを変更する必要がない場合にはステップS104に戻り、講義の出力を継続する。講義レベルを変更する必要がある場合にはステップS102に戻り、ステップS102からS104の処理により講義レベルを変更して講義を出力を続ける。受講者90の学力レベルが講義レベルより高い場合には講義レベルを1段階上げればよく、受講者90の学力レベルが講義レベルより低い場合には、講義レベルを1段階下げればよい。
【0052】
<付記>
以上、本発明の実施形態について述べてきたが、本発明は、これらの実施形態だけに限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内において、これらの実施形態を組み合わせて使用したり、一部の構成を変更したりしてもよい。
【0053】
また、上述した実施形態には以下に示す事項が含まれている。ただし、上述した実施形態に含まれる事項が以下に示すものだけに限定されることはない。
【0054】
(事項1)
講師を模した仮想的な人物であるアバター講師により、受講者に、映像および音声で構成された講義を提供する学習支援システムであって、第1レベルの講義の台本として予め作成されたテキストデータである第1レベル台本データを記憶する記憶部と、前記第1レベル台本データに基づいて、前記第1レベルと異なる第2レベルの講義の台本のテキストデータである第2レベル台本データを作成する台本生成部と、前記第2レベル台本データのテキストデータを発声する音声と、前記アバター講師の映像とを含む講義を出力する講義出力部と、を有している。これによれば、複数レベルの講義の台本を生成して出力するので、個々の受講者のレベルに応じた講義の提供を容易に実現することができる。
【0055】
(事項2)
事項1に記載の学習支援システムにおいて、前記台本生成部は、テキストを生成する生成人工知能を含む。これによれば、予め作成した台本から生成人工知能によってレベルの異なる講義の台本を生成するので、受講者のレベルに応じた講義の提供が容易になる。
【0056】
(事項3)
事項2に記載の学習支援システムにおいて、前記台本生成部は、前記生成人工知能に、所定の指示を示すプロンプトと前記第1レベル台本データとを与えることにより、前記第2レベル台本データを生成する。
【0057】
(事項4)
事項3に記載の学習支援システムにおいて、前記第1レベル台本データは、講義すべき内容を他の事柄に置き換えて説明するたとえ話および/または講義すべき内容を具体的に示す具体例を含み、
前記台本生成部は、前記第1レベル台本データから、前記たとえ話および/または前記具体例を省くことにより、前記第2レベル台本データを生成する。これにより、予め作成した台本からたとえ話や具体例を省くことにより、レベルの高い講義の台本を容易に作成することができる。
【0058】
(事項5)
事項3に記載の学習支援システムにおいて、前記第1レベル台本データは、講義すべき内容を複数回繰り返して説明する部分を含み、前記台本生成部は、前記第1レベル台本データにおける前記複数回繰り返して説明する部分を1回だけ説明するようにすることにより、前記第2レベル台本データを生成する。これにより、予め作成した台本から繰り返し説明している部分を省くことにより、レベルの高い講義の台本を容易に作成することができる。
【0059】
(事項6)
事項3に記載の学習支援システムにおいて、前記第1レベル台本データは、内容を最も詳しく解説する講義の台本のテキストデータであり、前記台本生成部は、前記第1レベル台本データを、前記第1レベル台本データよりも少ないの文字数、単語数、または形態素数で要約することにより、前記第2レベル台本データを生成する。これによれば、予め作成した台本を要約することにより、レベルの高い講義の台本を容易に作成することができる。
【0060】
(事項7)
事項1に記載の学習支援システムにおいて、前記受講者が前記講義を受けている画像または前記受講者から取得される入力情報に基づいて、前記受講者の状態を判定する状態判定部を更に有し、
前記講義出力部は、前記受講者の状態に基づいて、前記受講者に提供する講義に用いる台本データおよび前記台本データを読み上げる速度を決定する。これによれば、受講者の状態に応じて受講者個別にレベルを合わせた講義を提供することができる。
【0061】
(事項8)
事項1に記載の学習支援システムにおいて、講義のレベルとして高い方から順にレベルA、レベルB、レベルC、およびレベルDがあり、前記記憶部は、前記レベルDの講義の台本であって、講義すべき内容を他の事柄に置き換えて説明するたとえ話または講義すべき内容を具体的に示す具体例を含み、講義すべき内容を複数回繰り返して説明する部分を含むテキストデータを、前記第1レベル台本データとして記憶し、前記台本生成部は、前記第1レベル台本データから前記たとえ話または前記具体例を省き、前記複数回繰り返して説明する部分を1回だけ説明するようにすることにより、前記第2レベル台本データを生成し、前記講義出力部は、前記レベルDの講義において前記第1レベル台本データを第1読み上げ速度で発声し、前記レベルCの講義において前記第1レベル台本データを前記第1読み上げ速度よりも早い第2読み上げ速度で発声し、前記レベルBの講義において前記第2レベル台本データを前記第2読み上げ速度で発声し、前記レベルAの講義において前記第2レベル台本データを前記第2読み上げ速度よりも早い第3読み上げ速度で発声する。これによれば、レベルAからDとして講義の内容および速度を適切に選択することにより、様々な受講者の個々のレベルに好適な講義を提供することが可能となる。
【0062】
(事項9)
事項8に記載の学習支援システムにおいて、前記受講者から取得される入力情報に基づいて、前記受講者のレベルを判定するレベル判定部を更に有し、前記講義出力部は、前記受講者の学力がレベルDであれば前記第1レベル台本データを第1読み上げ速度で発声し、前記受講者の学力がレベルCであれば前記第1レベル台本データを前記第1読み上げ速度よりも早い第2読み上げ速度で発声し、前記受講者の学力がレベルBであれば前記第2レベル台本データを前記第2読み上げ速度で発声し、前記受講者の学力がレベルAであれば前記第2レベル台本データを前記第2読み上げ速度よりも早い第3読み上げ速度で発声する。
【符号の説明】
【0063】
10…学習支援システム、11…受講者レベル判定部、12…台本生成部、13…講義出力部、14…記憶部、15…受講者状態判定部、20…サーバ、21…処理装置、22…メインメモリ、23…記憶装置
24…通信装置、25…入力装置、26…表示装置、27…バス、30…情報端末、31…カメラ、32…マイク、33…ブラウザ、90…受講者
【要約】
【課題】受講者のレベルに応じた講義の提供を実現する技術を提供する。
【解決手段】講師を模した仮想的な人物であるアバター講師により、受講者に、映像および音声で構成された講義を提供する学習支援システムは、第1レベルの講義の台本として予め作成されたテキストデータである第1レベル台本データを記憶する記憶部と、前記第1レベル台本データに基づいて、前記第1レベルと異なる第2レベルの講義の台本のテキストデータである第2レベル台本データを作成する台本生成部と、前記第2レベル台本データのテキストデータを発声する音声と、前記アバター講師の映像とを含む講義を出力する講義出力部と、を有している。
【選択図】
図3