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特許7473272小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置、チップ、およびLIDARシステム用光源
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置、チップ、およびLIDARシステム用光源
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/183 20060101AFI20240416BHJP
   H01S 5/42 20060101ALI20240416BHJP
   H01S 5/026 20060101ALI20240416BHJP
   G01S 7/481 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
H01S5/183
H01S5/42
H01S5/026 610
G01S7/481 A
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2023511679
(86)(22)【出願日】2022-03-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-09
(86)【国際出願番号】 CN2022083262
(87)【国際公開番号】W WO2023050739
(87)【国際公開日】2023-04-06
【審査請求日】2023-02-14
(31)【優先権主張番号】63/249,976
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】202111333713.6
(32)【優先日】2021-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519028014
【氏名又は名称】常州縦慧芯光半導体科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】VERTILITE CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】NO.7 FengXiang Road, WuJin High-tech Industrial Zone, Changzhou, Jiangsu, China
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梁 棟
(72)【発明者】
【氏名】張 成
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0403376(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107732656(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0057888(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102255240(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102651536(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0057883(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0281049(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110429473(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 - 5/50
G01S 7/481
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部ブラッグ反射層(20)と、
前記下部ブラッグ反射層(20)の一方側に位置する活性層(30)と、
前記活性層(30)の前記下部ブラッグ反射層(20)から離れる一方側に位置する上部ブラッグ反射層(40)と、含む、小さい広がり角を有する垂直共振器面発光型(VCSEL)レーザー装置であって、
前記活性層(30)の内部または前記活性層(30)の外側に、発光領域を定義するための電流狭窄層(70)が設けられ、
前記下部ブラッグ反射層(20)と前記活性層(30)との間、および前記上部ブラッグ反射層(40)と前記活性層(30)との間の少なくとも一方に、ライトフィールドエネルギーを貯蔵するための貯蔵層(50)が設けられ、
前記貯蔵層(50)と前記活性層(30)との間に、反射防止インターフェースを有する、前記貯蔵層(50)のライトフィールド強度の最大値を活性層(30)のライトフィールド強度の最大値よりも高くするための反射防止層(60)が設けられ、
前記小さい広がり角とは、20度よりも小さい広がり角であり、
前記反射防止層(60)および前記貯蔵層(50)の材料は、誘電体材料または半導体材料であり、前記活性層(30)に垂直な方向に沿って、前記貯蔵層(50)の屈折率が均一に分布し、或いは、前記活性層(30)に垂直な方向に沿って、前記貯蔵層(50)の屈折率が高低交互に分布している、
小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置。
【請求項2】
前記電流狭窄層(70)の数は少なくとも1つであり、
前記電流狭窄層(70)は、活性層(30)に垂直な方向における中心と、定在波ライトフィールドの最も近い節との光路距離が1/10発振波長よりも小さく、
前記電流狭窄層(70)は、前記活性層(30)の外側にある場合、前記活性層(30)に垂直な方向に沿って前記活性層(30)の一方側から2つの波長範囲内にある、
請求項1に記載の小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置。
【請求項3】
前記電流狭窄層(70)の数量は少なくとも1つであり、電流狭窄層(70)の活性層(30)に垂直する方向に沿った中心が、定在波ライトフィールドの節と整列している、
請求項1に記載の小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置。
【請求項4】
前記電流狭窄層(70)には、酸化層が含まれ、
前記酸化層は、エピタキシャル成長する高Al成分のAlGaAsであり、前記酸化層における外側被酸化領域に絶縁したアルミナ膜層が形成され、前記酸化層における未酸化領域に電流注入が効果的である発光領域が形成されている、
請求項1に記載の小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置。
【請求項5】
前記活性層(30)から前記貯蔵層(50)に向かう方向に沿って、前記反射防止インターフェースには、貯蔵層(50)と活性層(30)との間の、低屈折率から高屈折率に進入するインターフェースにおける第1反射防止インターフェース(61)、および貯蔵層(50)と活性層(30)との間の、高屈折率から低屈折率に進入するインターフェースにおける第2反射防止インターフェース(62)のうちの少なくとも一方が含まれ、
前記第1反射防止インターフェース(61)と定在波ライトフィールドの最も近い腹との光路距離が1/10発振波長よりも小さく、前記第2反射防止インターフェース(62)と定在波ライトフィールドの最も近い節との光路距離が1/10発振波長よりも小さい、
請求項1に記載の小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置。
【請求項6】
前記第1反射防止インターフェース(61)が、定在波ライトフィールドの腹にあり、
前記第2反射防止インターフェース(62)が、定在波ライトフィールドの節にある、
請求項5に記載の小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置。
【請求項7】
活性層(30)から貯蔵層(50)に向かう方向に沿って、前記反射防止層(60)における第1反射防止インターフェース(61)と、上部ブラッグ反射層(40)や下部ブラッグ反射層(20)のうち活性層(30)に対して貯蔵層(50)の異なる一方側に位置するブラッグ反射層におけるいずれかの低屈折率から高屈折率に進入するインターフェースとの間の光学的ピッチが、半波長の整数倍であり、上部ブラッグ反射層(40)や下部ブラッグ反射層(20)のうち活性層(30)に対して貯蔵層(50)の同一側に位置するブラッグ反射層におけるいずれかの低屈折率から高屈折率に進入するインターフェースとの間の光学的ピッチが、1/4発振波長の奇数倍であり、
反射防止層(60)における第2反射防止インターフェース(62)と、上部ブラッグ反射層(40)や下部ブラッグ反射層(20)のうち活性層(30)に対して貯蔵層(50)の異なる一方側に位置するブラッグ反射層におけるいずれかの高屈折率から低屈折率に進入するインターフェースとの間の光学的ピッチが半波長の整数倍であり、上部ブラッグ反射層(40)や下部ブラッグ反射層(20)のうち活性層(30)に対して貯蔵層(50)の同一側に位置するブラッグ反射層におけるいずれかの高屈折率から低屈折率に進入するインターフェースとの間の光学的ピッチが1/4発振波長の奇数倍である、
請求項5に記載の小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置。
【請求項8】
前記反射防止層(60)には、第1反射防止インターフェース(61)または第2反射防止インターフェース(62)である反射防止インターフェースが1つ含まれ、
前記反射防止インターフェースは、前記貯蔵層(50)と前記活性層(30)との接触インターフェース、または前記貯蔵層(50)と前記活性層(30)との間の屈折率次第変化層の屈折率の中点が所在するインターフェースである、
請求項5に記載の小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置。
【請求項9】
前記反射防止層(60)には、2つの反射防止インターフェースが含まれ、
前記2つの反射防止インターフェースのうちの1つの反射防止インターフェースは、前記貯蔵層(50)と前記反射防止層(60)との接触インターフェース、または前記貯蔵層(50)と前記反射防止層(60)との間の屈折率次第変化層の屈折率の中点が所在するインターフェースであり、
前記2つの反射防止インターフェースのうちの他の1つの反射防止インターフェースは、前記活性層(30)と前記反射防止層(60)との接触インターフェース、または前記活性層(30)と前記反射防止層(60)との間の屈折率次第変化層の屈折率の中点が所在するインターフェースである、
請求項5に記載の小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置。
【請求項10】
2つの反射防止インターフェースは、それぞれ第1反射防止インターフェース(61)および第2反射防止インターフェース(62)であり、前記活性層(30)に垂直な方向に沿って、2つの反射防止インターフェース間の光学的厚さが1/4発振波長の奇数倍であり、
或いは、2つの反射防止インターフェースは、第1反射防止インターフェース(61)であり、前記活性層(30)に垂直な方向に沿って、2つの反射防止インターフェース間の光学的厚さが1/2発振波長の整数倍であり、
或いは、2つの反射防止インターフェースは、第2反射防止インターフェース(62)であり、前記活性層(30)に垂直な方向に沿って、2つの反射防止インターフェース間の光学的厚さが1/2発振波長の整数倍である、
請求項9に記載の小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置。
【請求項11】
前記反射防止層(60)に含まれた反射防止インターフェースの数が3以上であり、
前記反射防止層(60)には、m個の第1反射防止インターフェース(61)、およびn個の第2反射防止インターフェース(62)が含まれ、mが1以上の整数であり、nが1以上の整数であり、
第1番目の反射防止インターフェースおよび第m+n番目の反射防止インターフェースのうちの一方が第1反射防止インターフェース(61)であり、第1番目の反射防止インターフェースおよび第m+n番目の反射防止インターフェースのうちの他の一方が第2反射防止インターフェース(62)であり、前記反射防止層(60)の光学的厚さが1/4発振波長の奇数倍であり、
前記活性層(30)から前記貯蔵層(50)に向かう方向に沿って、第1番目の反射防止インターフェースは、前記活性層(30)と前記反射防止層(60)との接触インターフェース、または前記活性層(30)と前記反射防止層(60)との間の屈折率次第変化層の屈折率の中点が所在するインターフェースであり、第2~m+n-1番目の反射防止インターフェースは、反射防止層(60)における隣り合う2つの高低屈折率のサブ層の接触インターフェースまたは高低屈折率のサブ層間の屈折率次第変化層の屈折率の中点が所在するインターフェースであり、第m+n番目の反射防止インターフェースは、前記貯蔵層(50)と前記反射防止層(60)との接触インターフェース、または前記貯蔵層(50)と前記反射防止層(60)との間の屈折率次第変化層の屈折率の中点が所在するインターフェースである、
請求項5に記載の小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置。
【請求項12】
前記反射防止層(60)に含まれた反射防止インターフェースの数が3以上であり、
前記反射防止層(60)には、m個の第1反射防止インターフェース(61)、およびn個の第2反射防止インターフェース(62)が含まれ、mが0以上の整数であり、nが0以上の整数であり、
第1番目の反射防止インターフェースおよび第m+n番目の反射防止インターフェースは、いずれも第1反射防止インターフェース(61)、またはいずれも第2反射防止インターフェース(62)であり、前記反射防止層(60)の光学的厚さが1/2発振波長の整数倍であり、
前記活性層(30)から前記貯蔵層(50)に向かう方向に沿って、第1番目の反射防止インターフェースは、前記活性層(30)と前記反射防止層(60)との接触インターフェース、または前記活性層(30)と前記反射防止層(60)との間の屈折率次第変化層の屈折率の中点が所在するインターフェースであり、第2~m+n-1番目の反射防止インターフェースは、反射防止層(60)における隣り合う2つの高低屈折率のサブ層の接触インターフェースまたは高低屈折率のサブ層間の屈折率次第変化層の屈折率の中点が所在するインターフェースであり、第m+n番目の反射防止インターフェースは、前記貯蔵層(50)と前記反射防止層(60)との接触インターフェース、または前記貯蔵層(50)と前記反射防止層(60)との間の屈折率次第変化層の屈折率の中点が所在するインターフェースである、
請求項5に記載の小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置。
【請求項13】
いずれか2つの第1反射防止インターフェース(61)間、またはいずれか2つの第2反射防止インターフェース(62)間のピッチが、1/2発振波長の整数倍であり、
いずれかの第1反射防止インターフェース(61)と、いずれかの第2反射防止インターフェース(62)との間のピッチが、1/4発振波長の奇数倍であり、
請求項11または12に記載の小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置。
【請求項14】
前記第1反射防止インターフェース(61)と前記第2反射防止インターフェース(62)とが交互に設けられ、隣り合う2つの反射防止インターフェース間の光学的厚さが1/4発振波長である、
請求項13に記載の小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置。
【請求項15】
前記活性層(30)の光学的厚さが1/4発振波長の奇数倍である、
請求項1に記載の小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置。
【請求項16】
前記上部ブラッグ反射層(40)、下部ブラッグ反射層(20)、反射防止層(60)および貯蔵層(50)のうちの少なくとも一方の材料が、誘電体材料である、
請求項1に記載の小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置。
【請求項17】
前記上部ブラッグ反射層(40)、下部ブラッグ反射層(20)、反射防止層(60)および貯蔵層(50)のうちの少なくとも一方の材料が、半導体材料である、
請求項1に記載の小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置。
【請求項18】
前記活性層(30)には、少なくとも1つの量子井戸が含まれ、
各々の前記量子井戸は、活性層(30)に垂直な中心と、定在波ライトフィールドの最も近い腹との光路距離が1/5発振波長よりも小さく、
前記活性層(30)には1つ以上の量子井戸が含まれる場合、1組の量子井戸全体の中心位置と定在波ライトフィールドの最も近い腹との光路距離が1/10発振波長よりも小さい、
請求項1に記載の小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置。
【請求項19】
前記活性層(30)には、少なくとも2つのサブ活性層が含まれ、
各々の前記サブ活性層は、少なくとも1つの前記量子井戸を含み、隣り合う2つのサブ活性層同士がトンネル結合(80)で連結され、
前記トンネル結合(80)と定在波ライトフィールドの最も近い節との光路距離が1/10発振波長よりも小さい、
請求項18に記載の小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置。
【請求項20】
各々の前記サブ活性層の少なくとも一方側に、反射防止層(60)および貯蔵層(50)があり、
各々のサブ活性層に、最も多く1つの電流狭窄層(70)が存在し、
前記トンネル結合(80)が定在波ライトフィールドの節に位置する、
請求項19に記載の小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置。
【請求項21】
前記活性層(30)に垂直な方向に沿って、前記貯蔵層(50)の屈折率が均一に分布している、
請求項1に記載の小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置。
【請求項22】
前記活性層(30)に垂直な方向に沿って、前記貯蔵層(50)の屈折率が高低交互に分布している、
請求項1に記載の小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置。
【請求項23】
前記貯蔵層(50)には、中部ブラッグ反射層が含まれ、
前記中部ブラッグ反射層は、複数の光学的厚さが1/4発振波長のリフレクタを含み、
複数のリフレクタが高低屈折率に応じて交互に設けられている、
請求項22に記載の小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置。
【請求項24】
前記中部ブラッグ反射層は、半波長周期毎の屈折率コントラストが下部ブラッグ反射層(20)および/または上部ブラッグ反射層(40)の対応する半波長毎の屈折率コントラストよりも低い、
請求項23に記載の小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置。
【請求項25】
前記下部ブラッグ反射層(20)の活性層(30)から離れる一方側に位置する基板(10)をさらに含み、
前記基板(10)の材料は、GaAsまたはSiを含む、
請求項1に記載の小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置。
【請求項26】
前記上部ブラッグ反射層(40)の活性層(30)から離れる一方側に位置する透明頂板(10’)をさらに含み、
前記透明頂板(10’)の材料は、サファイア、石英、ガラスまたは透明重合体を含む、
請求項1に記載の小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置。
【請求項27】
レーザーの光出射面または主光出射面は、前記下部ブラッグ反射層(20)の前記活性層(30)から離れる一方側に位置し、前記上部ブラッグ反射層(40)の反射率が下部ブラッグ反射層(20)の反射率よりも大きく、
或いは、レーザーの光出射面または主光出射面は、上部ブラッグ反射層(40)の前記活性層(30)から離れる一方側に位置し、前記下部ブラッグ反射層(20)の反射率が上部ブラッグ反射層(40)の反射率よりも大きい、
請求項1に記載の小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置。
【請求項28】
前記光出射面の一方側に集積され、ファーフィールドの広がり角を低減させるためのマイクロレンズをさらに含む、請求項27に記載の小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置。
【請求項29】
複数の請求項1~28のいずれか一項に記載の小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置を含む小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置チップであって、
複数の前記小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置により平面アレイ配列が構成され、
前記平面アレイ配列は、規則的な配列、またはランダムな配列、またはアドレッシングのための複数のサブアレイである、小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置チップ。
【請求項30】
少なくとも1つの請求項1~28のいずれか一項に記載の小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置、または少なくとも1つの請求項29に記載の小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置チップを含む、レーザーレーダLIDARシステム用光源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2021年09月29日に提出された仮特許出願シリアル番号63/249,976の米国仮出願の優先権を主張し、2021年11月11日に中国特許局へ提出された出願番号202111333713.6の中国特許出願の優先権を主張し、上記出願のすべての内容は、援用により本願に組み込まれる。
相互援用および優先権説明
【0002】
本願は、2021年09月29日に提出された仮特許出願シリアル番号63/249,976の米国仮出願「Small divergence angle VCSEL with anti-reflection interface、anti-reflection layer or anti-reflection region」の優先権を主張し、上記米国仮出願のすべての内容は、援用により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本願の実施例は、レーザー装置の技術分野に関し、たとえば、小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置、チップおよびLIDARシステム用光源に関する。
【背景技術】
【0004】
小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置(vertical cavity surface emitting laser:垂直共振器面発光型レーザー装置)は、発光ダイオード(light-emitting diode、LED)または他の非干渉性光源よりも、広がり角が小さいビームを生成することができるため、三次元センサー、レーザーレーダ、光通信および照明などの適用に広く用いられ、各種の適用に対して、小型、コンパクト、ハイパワーのレーザー光源を提供することができる。
【0005】
従来のVCSELにおける広がり角は、通常、約20~30度である。このような広がり角は、一部の従来の適用を満たすことはできるが、新たな適用シーンに対して依然として相対的に大きく、三次元センサーおよびレーザーレーダの探知距離、解像度および信号対雑音比を制限する可能性がある。VCSELにおけるビーム広がり角をさらに圧縮することは、実際の適用において非常に差し迫ったニーズがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願の実施例は、小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置、チップおよびLIDARシステム用光源を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の実施例は、
下部ブラッグ反射層と、
前記下部ブラッグ反射層の一方側に位置する活性層と、
前記活性層の前記下部ブラッグ反射層から離れる一方側に位置する上部ブラッグ反射層と、含む、小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置であって、
前記活性層の内部または前記活性層の外側に、発光領域を定義するための電流狭窄層が設けられ、
前記下部ブラッグ反射層と前記活性層との間、および前記上部ブラッグ反射層と前記活性層との間の少なくとも一方に、ライトフィールドエネルギーを貯蔵するための貯蔵層が設けられ、
前記貯蔵層と前記活性層との間に、反射防止インターフェースを有する、前記貯蔵層のライトフィールド強度の最大値を活性層のライトフィールド強度の最大値よりも高くするための反射防止層が設けられている、小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置を提供する。
【0008】
第2態様として、本願の実施例は、複数の第1態様のいずれかに記載の小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置を含む、小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置チップであって、複数の前記小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置により平面アレイ配列が構成され、前記平面アレイ配列は、規則的な配列、またはランダムな配列、またはアドレッシングのための複数のサブアレイである、小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置チップを開示する。
【0009】
第3態様として、本願の実施例は、少なくとも1つの第1態様のいずれかに記載の小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置、または少なくとも1つの第2態様に記載の小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置チップを含む、LIDARシステム用光源を開示する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】関連技術に係るVCSELレーザー装置の構造模式図である。
図2】本願の実施例に係る小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置の構造模式図である。
図3】本願の実施例に係る他の小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置の構造模式図である。
図4】本願の実施例に係る他の小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置の構造模式図である。
図5】本願の実施例に係る他の小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置の構造模式図である。
図6】本願の実施例に係る他の小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置の構造模式図である。
図7】本願の実施例に係る単層の反射防止インターフェースによるライトフィールド強度分布図および対応する屈折率分布図である。
図8】本願の実施例に係る他の単層の反射防止インターフェースによるライトフィールド強度分布図および対応する屈折率分布図である。
図9】本願の実施例に係る両層の反射防止インターフェースによるライトフィールド強度分布図および対応する屈折率分布図である。
図10】本願の実施例に係る他の両層の反射防止インターフェースによるライトフィールド強度分布図および対応する屈折率分布図である。
図11】本願の実施例に係る多層の反射防止インターフェースによるライトフィールド強度分布図および対応する屈折率分布図である。
図12】本願の実施例に係る他の多層の反射防止インターフェースによるライトフィールド強度分布図および対応する屈折率分布図である。
図13】本願の実施例に係る他の多層の反射防止インターフェースによるライトフィールド強度分布図および対応する屈折率分布図である。
図14】本願の実施例に係るライトフィールド強度分布図および屈折率分布図である。
図15】本願の実施例に係る他の小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置の構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面及び実施例を結び付けて本願について更に詳細に説明する。ここで記載される具体的な実施例は、本願を説明するためのものに過ぎず、本願を限定するものではないことを理解すべきである。なお、説明を容易にするために、図面に示しているのは本発明に関連する一部だけであり、すべての構造ではない。
【0012】
関連技術において、VCSELにおけるビーム広がり角を圧縮するために、慣用手段は、キャビティ長を向上させる方法により、VCSELの発光孔内外の有効屈折率の差分を低下させ、さらに高次モードの発生を抑制する。高次モードにおけるビームがより大きな広がり角を有するため、高次モードにおけるビームが抑制された後、残りの低次モードにおけるビームは、より小さな広がり角を実現することができる。図1は、関連技術に係るVCSELレーザー装置の構造模式図である。図1に示すように、基板1の同一側に、下部ブラッグ反射層2、活性層4および上部ブラッグ反射層6が設けられている。そのうち、上部ブラッグ反射層6または活性層4は、アルミニウム含有成分が高いAlGaAs(そのうち、Alの成分は、一般的に97%以上、ひいては100%であってもよい、すなわち純AlAsであってもよい)を含み、AlGaAsを酸化することにより電流狭窄層を形成してもよい。当該層は、高温水蒸気環境下でアルミナ材料を生成する可能性がある。柱状プラットフォーム構造にエッチングすることにより、側面から酸化されて絶縁したアルミナを形成し、酸化されていない部分は、依然として導電可能なAlGaAsである。このような構造は、電流が中間の導電部分を通過するしかないように拘束することができる。このように形成された電流狭窄層5は、一般的に、酸化層と呼ばれてもよい。開口位置は、酸化孔と呼ばれており、レーザー装置の発光孔である。酸化孔の中間のAlGaAsと外側のアルミナの屈折率が異なる。これにより、VCSELの発光孔内外の有効屈折率が差分を発生する。
【0013】
有効屈折率は、下記数式から決定される。
【数1】
ただし、neffは、有効屈折率であり、n(z)は、z軸方向における屈折率であり、E(z)は、z軸方向(すなわち光出射方向)におけるライトフィールド強度である。積分範囲は、レーザー装置においてライトフィールドが存在する範囲である。
【0014】
VCSELの発光孔内外の有効屈折率の差分は、下記数式から決定される。
【数2】
ただし、Δneffは、発光孔内外の有効屈折率の差分であり、n1_effは、発光孔の所在領域における有効屈折率であり、n2_effは、発光孔外の有効屈折率であり、nは、アルミニウム含有成分が高い材料(たとえばAl0.98Ga0.02As)の屈折率であり、nは、アルミナの屈折率である。Γoxは、酸化層の光閉じ込め係数であり、下記数式から確定される。
【数3】
ただし、lは、z軸方向における電流狭窄層の厚さであり、pは、z軸方向におけるライトフィールド全体の厚さであり、n(z)は、z軸方向におけるアルミナの屈折率であり、一定の値、たとえばn(z)は、nであると考えられてもよい。
【0015】
VCSELビーム広がり角を圧縮するために、中部ブラッグ反射層3を増設してキャビティ長を向上させることにより、pの値が大きくなり、Γoxの値が小さくなり、発光孔内外の有効屈折率の差分が低減し、更に、高次モードの発生を抑制することができる。高次モードにおけるビームがより大きな広がり角を有するため、高次モードにおけるビームが抑制された後、残りの低次モードにおけるビームは、より小さな広がり角を実現することができる。しかしながら、キャビティ長を向上させる方法は、新たな問題を引き起こす恐れがある。キャビティ長が向上した後、レーザーの縦モードのピッチが低減し、VCSELの発光スペクトルにおいて複数の縦モード、すなわち複数のスペクトルピークが現れる。これらの複数のスペクトルピークのうち、設計された発振波長以外、他の意図しないスペクトルピークが設計された発振波長の一方側または両側に現れる。これらの意図しないスペクトルピークは、通常、縦モードと呼ばれる。
【0016】
また、縦モードの出現は、一部の潜在的な問題を引き起こす。たとえば、光源の温度ドリフト係数が向上し、温度安定性が低下する。また、たとえば、三次元センサーおよびレーザーレーダの受信端はこれらの縦モードによる効率の低下およびクロストークなどを識別することができない。
【0017】
これに鑑み、本願の実施例は、小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置を提供する。図2は、本願の実施例に係る小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置の構造模式図である。図3は、本願の実施例に係る他の小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置の構造模式図である。図4は、本願の実施例に係る他の小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置の構造模式図である。図5は、本願の実施例に係る他の小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置の構造模式図である。図6は、本願の実施例に係る他の小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置の構造模式図である。図2図6に示すように、小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置は、
下部ブラッグ反射層20と、
下部ブラッグ反射層20の一方側に位置する活性層30と、
活性層30の下部ブラッグ反射層20から離れる一方側に位置する上部ブラッグ反射層40と、を含み、
そのうち、活性層30の内部または外側の近傍に、発光領域を定義するための電流狭窄層70が設けられ、下部ブラッグ反射層20と活性層30との間、および上部ブラッグ反射層40と活性層30との間の少なくとも一方に、活性層30に平行な、ライトフィールドエネルギーを貯蔵するための貯蔵層50が設けられ、貯蔵層50と活性層30との間に、反射防止インターフェースを有する、貯蔵層50のライトフィールド強度の最大値を活性層30のライトフィールド強度の最大値よりも高くするための反射防止層60が設けられている。このような貯蔵層50は、ライトフィールドエネルギーを効果的に貯蔵する作用を果たして、より短いキャビティを使用してより小さな光閉じ込め係数を実現することができる。
【0018】
たとえば、下部ブラッグ反射層20には、複数の光学的厚さが1/4発振波長のリフレクタが含まれ、複数のリフレクタが高低屈折率に応じて交互に設けられている。上部ブラッグ反射層40には、複数の光学的厚さが1/4発振波長のリフレクタが含まれ、複数のリフレクタが高低屈折率に応じて交互に設けられている。そのうち、上部ブラッグ反射層40および下部ブラッグ反射層20の材料は、誘電体材料であり、電気絶縁性を有し、たとえば、窒化ケイ素、酸化ケイ素、アルミナまたは酸化チタンなどを含んでもよい。上部ブラッグ反射層40および下部ブラッグ反射層20の材料は、半導体材料、たとえばGaAsおよびAlGaAsであってもよい。図3図5または図6に示すように、小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置には、基板10がさらに含まれてもよい。基板10は、下部ブラッグ反射層20の活性層30から離れる一方側に位置する。当該基板10は、レーザー装置を形成することに適するいずれかの材料である。基板10の材料は、GaAsまたはSiなどの材料であってもよい。図4に示すように、当該小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置には、透明頂板10’がさらに設けられてもよい。透明頂板10’が形成されながら基板10が取り外される。透明頂板10’は、上部ブラッグ反射層40の活性層30から離れる一方側に位置する。透明頂板10’の材料は、サファイア、石英、ガラスまたは透明重合体を含んでもよい。
【0019】
活性層30に近づく一方側における層の辺縁に、電流狭窄層70が含まれるか、或いは活性層30の内部に電流狭窄層70が設けられている。一定の温度条件下で、ハイアルミニウム(High aluminum)をウエット酸化することにより、電流狭窄層70が所在する半導体層(たとえば材料がアルミニウムガリウムヒ素材料である)の側壁を酸化して酸化層を形成することで、電流狭窄層70を形成することができる。電流狭窄層70には、酸化されていない半導体層であり、レーザー装置の発光領域を定義するための開口を有する。酸化されたアルミナの抵抗は高く、電流狭窄層70の開口箇所が依然としてハイアルミニウムのアルミニウムガリウムヒ素材料であるので、電流を流した後、電流が電流狭窄層70における開口を介して活性層30へ流れる。活性層30には、少なくとも1つの量子井戸が含まれている。それは、積層された量子井戸複合構造を含んでもよく、GaAsおよびAlGaAs、InGaAsおよびGaAsP、或いはInGaAsおよびAlGaAs材料から積層配列されるように構成され、電気エネルギーを光エネルギーに変換して、レーザーを生成するために用いられる。たとえば、量子井戸組には、2~5個の量子井戸があり、量子井戸間に障壁が存在し、量子井戸組の外側にも障壁が存在する。そのうち、各々の量子井戸の活性層30に垂直な方向における中心と定在波ライトフィールドの最も近い腹(antinode)との光路距離は、1/5発振波長よりも小さい。量子井戸が1以上である場合、1組の量子井戸全体の中心位置と、定在波ライトフィールドの最も近い腹との光路距離は、1/10発振波長よりも小さい。たとえば、量子井戸の中心位置と電界のピーク値とが整列している。その為、量子井戸は、レーザー利得増幅を発生するために用いられ、量子井戸の中心位置と、ライトフィールドが最も強い位置とが整列し、より大きな増幅効果を達成することができる。そのうち、下部ブラッグ反射層20と活性層30との間、および上部ブラッグ反射層40と活性層30との間の少なくとも一方に、活性層30に平行な貯蔵層50が設けられている。図2図4には、下部ブラッグ反射層20と活性層30との間に活性層30に平行な貯蔵層50が設けられていることが例示されている。図5には、上部ブラッグ反射層40と活性層30との間に活性層30に平行な貯蔵層50が設けられていることが例示されている。図6には、下部ブラッグ反射層20と活性層30との間、および上部ブラッグ反射層40と活性層30との間に、いずれも活性層30に平行な貯蔵層50が設けられていることが例示されている。貯蔵層50と活性層30との間に反射防止インターフェースを有する反射防止層60が設けられている。反射防止層60は、貯蔵層50のライトフィールド強度の最大値を、活性層30のライトフィールド強度の最大値よりも高くするために用いられる。そのうち、反射防止層60および貯蔵層50の材料は、誘電体材料であってもよいし、反射防止層60および貯蔵層50の材料は、半導体材料であってもよい。
【0020】
上記数式から分かるように、係数Γoxの値を低減させることにより、VCSELの発光孔内外の有効屈折率の差分を低減させることができる。係数Γoxの値の低減は、分子の低減、および分母の向上の少なくとも1種の形態により実現することができる。電流狭窄層70の厚さが小さいので、分母におけるキャビティ長pの向上により縦モードを引き起こす。本願の実施例は、分母における電界強度Eを向上させる、すなわち貯蔵層50におけるライトフィールド強度を向上させることにより、VCSELの発光孔内外の有効屈折率の差分の低下を実現し、さらに高次モードの発生を抑制し、広がり角を低下させる。それと同時に、貯蔵層50の内部のライトフィールド強度を向上させることにより、関連技術に対して、キャビティ長の向上幅を低減させることができる。そのため、VCSELの発光スペクトルに複数の縦モードが現れるという問題を改善することができることで、広がり角を極めて大きく低下させながら、単一縦モード発振を維持することもできる。光源の温度ドリフト係数が向上し、温度安定性が低下し、三次元センサーおよびレーザーレーダの受信端がこれらの多波長による効率の降下およびクロストークを識別できないなどの問題を回避することができる。
【0021】
要するに、本願の実施例に係る小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置は、貯蔵層と活性層との間に、反射防止インターフェースを有する、貯蔵層のライトフィールド強度の最大値を活性層のライトフィールド強度の最大値よりも高くするための反射防止層が設けられることにより、貯蔵層の内部のライトフィールド強度を向上させ、VCSELの発光孔内外の有効屈折率の差分を低下させ、さらに高次モードの発生を抑制し、広がり角を低下させることができる。それと同時に、貯蔵層の内部のライトフィールド強度を向上させることにより、レーザー装置の有効キャビティ長を効果的に低減させることができることで、隣り合う縦モード間の波長差分を向上させ、単一縦モード発振を実現し、多波長の出力を回避することができる。
【0022】
たとえば、貯蔵層は、キャビティ長を向上させるために用いられる。
【0023】
たとえば、小さい広がり角とは、広がり角が20度よりも小さいことを示す。
【0024】
一実施例において、下部ブラッグ反射層20は、N型半導体層であり、上部ブラッグ反射層40は、P型半導体層であってもよい。或いは、下部ブラッグ反射層20は、P型半導体層であり、上部ブラッグ反射層40は、N型半導体層であってもよい。上部ブラッグ反射層40が活性層30に直接接触すると、電流狭窄層70は、上部ブラッグ反射層40の内部に位置してもよい。活性層30と上部ブラッグ反射層40とが貯蔵層50を介して隔てられると、電流狭窄層70は、貯蔵層50の内部に位置してもよい。或いは、下部ブラッグ反射層20が活性層30に直接接触すると、電流狭窄層70は下部ブラッグ反射層20の内部に位置してもよい。活性層30と下部ブラッグ反射層20とが貯蔵層50を介して隔てられると、電流狭窄層70は、貯蔵層50の内部に位置してもよい。図2図4には、例示的に電流狭窄層70が活性層30の外側に位置することが例示されている。よりよく発光領域を限定するために、電流狭窄層70は、活性層30に垂直な方向に沿って、活性層30の一方側から2つの波長範囲内に位置する。図3に示すように、電流狭窄層70が活性層30の外部に位置するとともに、活性層30の一方側のみに貯蔵層50がある場合、たとえば、電流狭窄層70および貯蔵層50が活性層30の対向する両側に位置するため、電流狭窄層70の光閉じ込め係数をさらに低下させることができる。
【0025】
電流狭窄層70は、さらに、活性層30の内部に位置してもよい。そのうち、電流狭窄層70は、活性層に垂直な方向(たとえば、z軸方向)における中心と定在波ライトフィールドの最も近い節(node)との光路距離が1/10発振波長よりも小さく、発光領域に対する限定効果を確保しながら、電流狭窄層70の所在位置におけるライトフィールド強度が小さいことを確保することができ、電流狭窄層70の光閉じ込め係数をさらに低下させることで、ファーフィールドの広がり角の低減を実現することができる。なお、電流狭窄層70の数は、少なくとも1つである。異なる電流狭窄層70の開口のサイズは、同一または異なってもよい。開口が最も小さい電流狭窄層70により限定された発光領域がレーザー装置の発光領域とされる。図5~6、および図15には、いずれも、電流狭窄層70が活性層30の内部に位置することが例示されている。よりよく発光領域を限定するために、電流狭窄層70の活性層30に垂直な方向における中心と定在波ライトフィールドの最も近い節との光路距離は、1/10発振波長よりも小さい。
【0026】
一実施例において、活性層30から貯蔵層50に向かう方向に沿って、反射防止インターフェースは、貯蔵層50と活性層30との間の、低屈折率から高屈折率に進入するインターフェースにおける第1反射防止インターフェース61、および/または貯蔵層50と活性層30との間の、高屈折率から低屈折率に進入するインターフェースにおける第2反射防止インターフェースを含み、
第1反射防止インターフェースと定在波ライトフィールドの最も近い腹との光路距離が1/10発振波長よりも小さく、第2反射防止インターフェースと定在波ライトフィールドの最も近い節との光路距離が1/10発振波長よりも小さい。
【0027】
たとえば、下部ブラッグ反射層20と活性層30との間に活性層30に平行な貯蔵層50が設けられている構造を例として、図7は、本願の実施例に係る単層の反射防止インターフェースによるライトフィールド強度分布図および対応する屈折率分布図であり、図8は、本願の実施例に係る他の単層の反射防止インターフェースによるライトフィールド強度分布図および対応する屈折率分布図であり、図9は、本願の実施例に係る両層の反射防止インターフェースによるライトフィールド強度分布図および対応する屈折率分布図であり、図10は、本願の実施例に係る他の両層の反射防止インターフェースによるライトフィールド強度分布図および対応する屈折率分布図であり、図11は、本願の実施例に係る多層の反射防止インターフェースによるライトフィールド強度分布図および対応する屈折率分布図である。図7図11に示すように、ライトフィールドが強くなる方向Yは、活性層30から貯蔵層50に向かう方向である。この方向に沿って、反射防止層60における低屈折率層から高屈折率層に進入するインターフェース(第1反射防止インターフェース61)が、定在波ライトフィールドの最も近い腹との光路距離が1/10発振波長よりも小さいように配置され、反射防止層60における高屈折率層から低屈折率層に進入するインターフェース(第2反射防止インターフェース62)が、定在波電界の最も近い節との光路距離が1/10発振波長よりも小さいように配置されている。上記配置規律にしたがって、高低屈折率層の厚さおよびインターフェースの位置を調整することにより、反射防止層60のライトフィールドが強くなる方向が活性層30から貯蔵層50に向かうものとなることを確保することができる。
【0028】
一実施例において、反射防止層60における低屈折率層から高屈折率層に進入するインターフェースを定在波ライトフィールド強度の腹に配置し、反射防止層60における高屈折率層から低屈折率層に進入するインターフェースを定在波ライトフィールド強度の節に配置することにより、反射防止層60の透過率をさらに向上させ、貯蔵層50の内部のライトフィールド強度を向上させることができる。さらに、VCSELの発光孔内外の有効屈折率の差分を低下させ、高次モードの発生を抑制し、レーザーの広がり角を低下させる。
【0029】
一実施例において、活性層の光学的厚さは、1/4発振波長の奇数倍である。
【0030】
たとえば、図7に示すように、反射防止インターフェースと利得量子井戸との距離は、半波長の整数倍であり、活性層30も半波長の整数倍である。図8に示すように、反射防止インターフェースと利得量子井戸との距離は、1/4波長の奇数倍であり、活性層30も1/4波長の奇数倍である。図7および図8における直線Lとピークの位置関係を比較すると分かるように、活性層30の光学的厚さが1/4発振波長の奇数倍である場合における反射防止インターフェースの反射防止効果は、活性層30の光学的厚さが半波長の整数倍である場合における反射防止インターフェースの反射防止効果よりも高い。また、活性層30の光学的厚さを1/4波長の奇数倍とすると、活性層30におけるライトフィールド強度が関連技術における活性層30のライトフィールド強度に対して小さいので、活性層30に近づく一方側における電流狭窄層70の電界強度を低減させ、係数Γoxの値をさらに低減させ、VCSELの発光孔内外の有効屈折率の差分の低減を実現し、レーザーの広がり角を低下させることができる。
【0031】
図7において、波線、および上方における横線がそれぞれ示す物理量は、ライトフィールド強度および屈折率である。
【0032】
一実施例において、図7および図8に示すように、反射防止層60には、第1反射防止インターフェース61または第2反射防止インターフェース62である反射防止インターフェースが含まれ、
反射防止インターフェースは、貯蔵層50と活性層30との接触インターフェース、または貯蔵層50と活性層30との間の屈折率次第変化層の屈折率の中点が所在するインターフェースである。
【0033】
たとえば、反射防止インターフェースは、貯蔵層50と活性層30との接触インターフェースである。1つだけの反射防止インターフェースを含む反射防止層60に対して、貯蔵層50と活性層30との接触インターフェースを反射防止層60として用い、この場合の反射防止層60の厚さが0であると理解できる。反射防止インターフェースは、貯蔵層50と活性層30との間の屈折率次第変化層の屈折率の中点が所在するインターフェースであってもよい。ここでは、理解すべきことに、屈折率次第変化層は、活性層30から貯蔵層50に向かう方向に沿って、屈折率が活性層30の最も辺縁箇所から貯蔵層50における活性層30に最も近づく箇所に向かって次第に変化する膜層である。屈折率次第変化層を配置することにより、ヘテロ結合による抵抗を低減させることができる。たとえば、屈折率次第変化層は、厚さが10~20nm、材料がAl 0.1 Ga 0.9 AsAl 0.8 Ga 0.2 Asの次第変化層として構成されてもよく、対応する屈折率も次第に変化して分布している。理解すべきことに、屈折率次第変化層の屈折率の中点が所在するインターフェースを反射防止層60として用い、この場合の反射防止層60の厚さは0である。反射防止インターフェースが第1反射防止インターフェース61である場合、反射防止インターフェースの一方側における活性層30の屈折率は反射防止インターフェースの他方側における貯蔵層50の屈折率よりも小さく、反射防止インターフェースが第2反射防止インターフェース62である場合、反射防止インターフェースの一方側における活性層30の屈折率は反射防止インターフェースの他方側における貯蔵層50の屈折率よりも大きい。
【0034】
一実施例において、図9および図10に示すように、反射防止層60には、2つの反射防止インターフェースが含まれ、2つの反射防止インターフェースは、それぞれ第1反射防止インターフェース61および第2反射防止インターフェース62であり、
1つの反射防止インターフェースは、貯蔵層50と反射防止層60との接触インターフェース、または貯蔵層50と反射防止層60との間の屈折率次第変化層の屈折率の中点が所在するインターフェースであり、他の1つの反射防止インターフェースは、活性層30と反射防止層60との接触インターフェース、または活性層30と反射防止層60との間の屈折率次第変化層の屈折率の中点が所在するインターフェースである。
【0035】
たとえば、1つの反射防止インターフェースは、貯蔵層50と反射防止層60との接触インターフェースである。他の1つの反射防止インターフェースは、活性層30と反射防止層60との接触インターフェースである。その際に、理解すべきことに、2つの反射防止インターフェース間の領域は、反射防止層60の所在領域であり、すなわち反射防止層60の2つのインターフェースが反射防止インターフェースであり、反射防止層60の厚さが0よりも大きい。或いは、1つの反射防止インターフェースは、貯蔵層50と反射防止層60との間の屈折率次第変化層の屈折率の中点が所在するインターフェースであり、他の1つの反射防止インターフェースは、活性層30と反射防止層60との間の屈折率次第変化層の屈折率の中点が所在するインターフェースである。貯蔵層50と反射防止層60との間の屈折率次第変化層は、貯蔵層50と反射防止層60との間のヘテロ結合による抵抗を低減させるために用いられる。活性層30と反射防止層60との間の屈折率次第変化層は、活性層30と反射防止層60との間のヘテロ結合による抵抗を低減させるために用いられる。その際に、2つの反射防止インターフェース間の領域は、反射防止層60の所在領域を含む以外に、一部の屈折率次第変化層をさらに含む。反射防止層60の2つのインターフェースは、反射防止インターフェースではない。理解を容易にするために、本願の実施例および以下の実施例において、2つの反射防止インターフェース間の膜層が反射防止層60として用いられる。
【0036】
たとえば、貯蔵層50と反射防止層60との間の屈折率次第変化層は、貯蔵層50および反射防止層60から独立して存在する層であってもよいし、貯蔵層50および反射防止層60に属する層であってもよい(たとえば、屈折率次第変化層の半分が貯蔵層50に属し、屈折率次第変化層の他の半分が反射防止層60に属する)が、これに限定されない。
【0037】
たとえば、活性層30と反射防止層60との間の屈折率次第変化層は、活性層30および反射防止層60から独立して存在する層であってもよいし、活性層30および反射防止層60に属する層であってもよい。たとえば、屈折率次第変化層の半分が活性層30に属し、屈折率次第変化層の他の半分が反射防止層60に属するが、これに限定されない。
【0038】
そのうち、2つの反射防止インターフェースは、それぞれ第1反射防止インターフェース61および第2反射防止インターフェース62である。活性層30から貯蔵層50に向かう方向に沿って、第1反射防止インターフェース61は、貯蔵層50と活性層30との間の低屈折率から高屈折率に進入するインターフェースであり、第2反射防止インターフェース62は、貯蔵層50と活性層30との間の高屈折率から低屈折率に進入するインターフェースであるため、反射防止層60の屈折率は、貯蔵層50および活性層30が反射防止層60に接触する箇所と区別される(たとえば、活性層30は、複数の異なる層により構成され、活性層30が反射防止層60に接触する箇所とは、活性層30における反射防止層60に接触する箇所を指す)。反射防止層60は、単層膜であり、反射防止層60の屈折率が、いずれも貯蔵層50および活性層が反射防止層60に接触する箇所における屈折率よりも大きくてもよいし、いずれも貯蔵層50および活性層が反射防止層60に接触する箇所における屈折率より小さくてもよい。反射防止層60の屈折率がいずれも貯蔵層50および活性層30が反射防止層60に接触する箇所における屈折率より大きい場合、活性層30に近づく一方側における反射防止インターフェースが、第1反射防止インターフェース61であり、貯蔵層50に近づく一方側における反射防止インターフェースが、第2反射防止インターフェース62である。反射防止層60の屈折率がいずれも貯蔵層50および活性層30が反射防止層60に接触する箇所における屈折率より小さいと、活性層30に近づく一方側における反射防止インターフェースが、第2反射防止インターフェース62であり、貯蔵層50に近づく一方側における反射防止インターフェースが、第1反射防止インターフェース61である。本願の実施例における反射防止層60は、2つの反射防止インターフェースを含み、反射防止層60の透過率をさらに向上させ、貯蔵層50の内部のライトフィールド強度を向上させることができる。さらに、VCSELの発光孔内外の有効屈折率の差分を低下させ、高次モードの発生を抑制し、レーザーの広がり角を低下させることができる。
【0039】
また、活性層30に垂直な方向に沿って、第1反射防止インターフェース61と第2反射防止インターフェース62との間の光学的厚さが1/4発振波長の奇数倍とされる。定在波とは、周波数が同じ、伝送方向が反対する2種の波が伝送経路に沿って形成する分布状態を指す。そのうちの1つの波は、他の1つの波の反射波である。両者が加算された点において波の腹が現れ、両者が減算された点において波の節が形成される。定在波の波形上では、波の節および波の腹の位置は終始変化しないが、その瞬時値は時間に従って変化する。この2種の波の幅値が同じである場合、波の節の幅値は0である。本願の実施例において、レーザー装置における光は、波の節の幅値が0の定在波である。定在波のフィールドは一定であるため、同一な膜層がいずれかの方向に向かって1/4波長の奇数倍移動すれば、反対する効果を発生することで、反射補強を実現できるか、或いは、反射防止を実現できる。関連技術において活性層30に向かって反射する情況に対して、1/4発振波長の奇数倍の光学的厚さの反射防止層60を配置し、1/4波長の奇数倍移動することに相当することにより、活性層30に向かって反射する情況を反射防止の効果に変換し、すなわち、貯蔵層50に向かって反射する効果を実現することに相当する。本願の実施例において、反射防止層60に対しては、貯蔵層50に向かって反射するリフレクタに相当し、活性層30に対しては、ライトフィールドエネルギーを抽出して、活性層30のライトフィールドエネルギーを活性層30以外の貯蔵層50に押し込むことに相当する。一実施例において、第1反射防止インターフェース61と第2反射防止インターフェース62との間の光学的厚さを1/4発振波長とすることにより、反射防止効果を確保しながら、レーザー装置のコストおよび厚さを低減させることができる。
【0040】
一実施例において、反射防止層60に、2つの反射防止インターフェースが含まれる場合、2つの反射防止インターフェースは、いずれも第1反射防止インターフェース61であるか、或いはいずれも第2反射防止インターフェース62であってもよい。同様に、そのうちの1つの反射防止インターフェースは、貯蔵層50と反射防止層60との接触インターフェース、または貯蔵層50と反射防止層60との間の屈折率次第変化層の屈折率の中点が所在するインターフェースであり、他の1つの反射防止インターフェースは、活性層30と反射防止層60との接触インターフェース、または活性層30と反射防止層60との間の屈折率次第変化層の屈折率の中点が所在するインターフェースである。反射防止層60は、単層膜であり、反射防止層60の屈折率が、貯蔵層50および活性層がそれに接触する箇所における屈折率の間にある。なお、2つの反射防止インターフェースは、いずれも第1反射防止インターフェース61であり、活性層30に垂直な方向に沿って、2つの反射防止インターフェース間の光学的厚さが1/2発振波長の整数倍である。或いは、2つの反射防止インターフェースは、いずれも第2反射防止インターフェース62であり、活性層30に垂直な方向に沿って、2つの反射防止インターフェース間の光学的厚さが1/2発振波長の整数倍である。その際の反射防止層60の光学的厚さは1/2発振波長の整数倍であることが理解できる。
【0041】
一実施例において、図11に示すように、反射防止層60に含まれた反射防止インターフェースの数は3以上であり、反射防止層60には、m個の第1反射防止インターフェース61、およびn個の第2反射防止インターフェース62が含まれ、mが1以上の整数であり、nが1以上の整数であり、第1番目の反射防止インターフェースおよび第m+n番目の反射防止インターフェースのうちの1つは、第1反射防止インターフェース61であり、他の1つは第2反射防止インターフェース62であり、反射防止層60の光学的厚さが1/4発振波長の奇数倍であり、
活性層30から貯蔵層50に向かう方向に沿って、第1番目の反射防止インターフェースは、活性層30と前記反射防止層60との接触インターフェース、または活性層30と反射防止層60との間の屈折率次第変化層の屈折率の中点が所在するインターフェースであり、第2~m+n-1番目の反射防止インターフェースは、反射防止層60における隣り合う2つの高低屈折率のサブ層の接触インターフェース、または高低屈折率のサブ層間の屈折率次第変化層の屈折率の中点が所在するインターフェースであり、第m+n番目の反射防止インターフェースは、前記貯蔵層50と反射防止層60との接触インターフェース、または貯蔵層50と反射防止層60との間の屈折率次第変化層の屈折率の中点が所在するインターフェースである。
【0042】
たとえば、反射防止層60には、屈折率が異なる複数のサブ層が含まれてもよい。隣り合う2つのサブ層間に1つの反射防止インターフェースを有する。第1反射防止インターフェース61がm個、第2反射防止インターフェース62がn個であり、mが1以上の整数であり、nが1以上の整数である。mおよびnは、同一または異なってもよい。第1番目の反射防止インターフェースおよび第m+n番目の反射防止インターフェースは、それぞれ反射防止層60の両側の最も外側における反射防止インターフェースである。第1番目の反射防止インターフェースは、活性層30と反射防止層60との接触インターフェース、または活性層30と反射防止層60との間の屈折率次第変化層の屈折率の中点が所在するインターフェースであってもよい。第m+n番目の反射防止インターフェースは、貯蔵層50と反射防止層60との接触インターフェース、または貯蔵層50と反射防止層60との間の屈折率次第変化層の屈折率の中点が所在するインターフェースである。第1番目の反射防止インターフェースおよび第m+n番目の反射防止インターフェースのうち、1つは、第1反射防止インターフェース61であり、他の1つは、第2反射防止インターフェース62であり、第1番目の反射防止インターフェースと第m+n番目の反射防止インターフェースとの間の光学的厚さが1/4発振波長の奇数倍であり、すなわち反射防止層60の光学的厚さが1/4発振波長の奇数倍である。図11において、第1反射防止インターフェース61が2つであり、第2反射防止インターフェース62が2つであり、第1番目の反射防止インターフェースが第2反射防止インターフェース62であり、第4番目の反射防止インターフェースが第1反射防止インターフェース61であることが例示されている。
【0043】
第2~m+n-1番目の反射防止インターフェースは、反射防止層60における隣り合う2つの高低屈折率のサブ層の接触インターフェースまたは高低屈折率のサブ層間の屈折率次第変化層の屈折率の中点が所在するインターフェースである。そのうち、いずれか2つの第1反射防止インターフェース61またはいずれか2つの第2反射防止インターフェース62間のピッチは、1/2発振波長の整数倍である。そのうち、いずれかの第1反射防止インターフェース61といずれかの第2反射防止インターフェース62との間のピッチは、1/4発振波長の奇数倍である。第1反射防止インターフェース61および第2反射防止インターフェース62は、交互に配置されてもよいし、連続して配置されてもよい。隣り合う2つの反射防止インターフェースのうち、1つは、第1反射防止インターフェース61であり、他の1つは、第2反射防止インターフェース62であってもよく、その際に、当該隣り合う2つの反射防止インターフェースからなるサブ層の厚さは、1/4発振波長の奇数倍であるとともに、屈折率は、いずれもその両側におけるサブ層の屈折率よりも小さい、またはそれよりも大きいことが理解できる。隣り合う2つの反射防止インターフェースは、いずれも第1反射防止インターフェース61であってもよいし、いずれも第2反射防止インターフェース62であってもよく、その際に、当該隣り合う2つの反射防止インターフェースからなるサブ層の厚さは、1/2発振波長の整数倍であるとともに、屈折率がその両側におけるサブ層の屈折率の間にある。本願の実施例における反射防止層60には、少なくとも3つの反射防止インターフェースが含まれ、反射防止層60の透過率をさらに向上させ、貯蔵層50の内部のライトフィールド強度を向上させることができる。さらに、VCSELの発光孔内外の有効屈折率の差分を低下させ、高次モードの発生を抑制し、レーザーの広がり角を低下させることができる。
【0044】
一実施例において、図12は、本願の実施例に係る他の多層の反射防止インターフェースによるライトフィールド強度分布図および対応する屈折率分布図であり、図13は、本願の実施例に係る他の多層の反射防止インターフェースによるライトフィールド強度分布図および対応する屈折率分布図である。図12図13に示すように、前記反射防止層60に含まれた反射防止インターフェースの数が3以上であり、反射防止層60には、m個の第1反射防止インターフェース61、およびn個の第2反射防止インターフェース62が含まれる場合、第1番目の反射防止インターフェースおよび第m+n番目の反射防止インターフェースは、いずれも第1反射防止インターフェース61であり、或いはいずれも第2反射防止インターフェース62である。その際に、反射防止層60の光学的厚さは、1/2発振波長の整数倍である。第2~m+n-1番目の反射防止インターフェースの配置形態については、上記実施例を参照してもよく、ここでは繰り返し説明しない。そのうち、図13には、中間の隣り合う2つの反射防止インターフェースがいずれも第1反射防止インターフェース61であることが例示されている。なお、その際、mが0以上の整数であり、nが0以上の整数である。つまり、反射防止層60に含まれた反射防止インターフェースは、いずれも第1反射防止インターフェース61であってもよいし、またはいずれも第2反射防止インターフェース62であってもよい。
【0045】
一実施例において、続いて図11を参照し、反射防止層60には、m個の第1反射防止インターフェース61およびn個の第2反射防止インターフェース62が含まれる。第1反射防止インターフェース61および第2反射防止インターフェース62は、交互に配置され、隣り合う2つの反射防止インターフェース間の光学的厚さが1/4発振波長である。図11には、nおよびmがいずれも2である情況が例示されている。
【0046】
たとえば、反射防止層60には、屈折率が異なる複数のサブ層が含まれてもよい。隣り合う2つのサブ層間に1つの反射防止インターフェースを有する。隣り合う2つの反射防止インターフェース間の光学的厚さは、1/4発振波長の奇数倍である。一実施例において、隣り合う2つの反射防止インターフェース間の光学的厚さは1/4発振波長とされる。以下のことが理解できる。反射防止層60は、1組の厚さが1/4波長の高低反射率のサブ層が交互に配置されたブラッグ反射層である。この1組のブラッグ反射層の位相が1/4波長移動され、貯蔵層50からの光を反射することに相当し、活性層30に対して反射防止の効果を達成することができる。第1反射防止インターフェース61および第2反射防止インターフェース62が交互に配置されるとともに、隣り合う2つの反射防止インターフェースの厚さが1/4発振波長となることにより、厚さが同様な反射防止層60に対して、反射防止層60に含まれた反射防止インターフェースの数の最大化を実現し、反射防止層60の透過率をさらに向上させ、貯蔵層50の内部のライトフィールド強度を向上させることができる。さらに、VCSELの発光孔内外の有効屈折率の差分を低下させ、高次モードの発生を抑制し、レーザーの広がり角を低下させることができる。
【0047】
一実施例において、活性層30から貯蔵層50に向かう方向に沿って、反射防止層60の第1反射防止インターフェース61と、上部・下部ブラッグ反射層(20、40)のうち活性層30に対して貯蔵層50の異なる一方側に位置するブラッグ反射層におけるいずれかの低屈折率から高屈折率に進入するインターフェースとの間の光学的ピッチが半波長の整数倍であり、上部・下部ブラッグ反射層(20、40)のうち活性層30に対して貯蔵層50の同一側に位置するブラッグ反射層におけるいずれかの低屈折率から高屈折率に進入するインターフェースとの間の光学的ピッチが1/4発振波長の奇数倍であり、
反射防止層60の第2反射防止インターフェース62と、上部・下部ブラッグ反射層(20、40)のうち活性層30に対して貯蔵層50の異なる一方側に位置するブラッグ反射層におけるいずれかの高屈折率から低屈折率に進入するインターフェースとの間の光学的ピッチが半波長の整数倍であり、上部・下部ブラッグ反射層(20、40)のうち活性層30に対して貯蔵層50の同一側に位置するブラッグ反射層におけるいずれかの高屈折率から低屈折率に進入するインターフェースとの間の光学的ピッチが1/4発振波長の奇数倍である。
【0048】
たとえば、活性層30から貯蔵層50に向かう方向に沿って、反射防止層60におけるいずれかの低屈折率から高屈折率に進入するインターフェースと、上部・下部ブラッグ反射層(20、40)のうち活性層30に対して貯蔵層50の異なる一方側に位置するブラッグ反射層におけるいずれかの低屈折率から高屈折率に進入するインターフェースとの間の光学的ピッチは、半波長の整数倍であり、上部・下部ブラッグ反射層(20、40)のうち活性層30に対して貯蔵層50の同一側に位置するブラッグ反射層におけるいずれかの低屈折率から高屈折率に進入するインターフェースとの間の光学的ピッチは、1/4発振波長の奇数倍である。活性層30から貯蔵層50に向かう方向に沿って、反射防止層60におけるいずれかの高屈折率から低屈折率に進入するインターフェースと、上部・下部ブラッグ反射層(20、40)のうち活性層30に対して貯蔵層50の異なる一方側に位置するブラッグ反射層におけるいずれかの高屈折率から低屈折率に進入するインターフェースとの間の光学的ピッチは、半波長の整数倍であり、上部・下部ブラッグ反射層(20、40)のうち活性層30に対して貯蔵層50の同一側に位置するブラッグ反射層におけるいずれかの高屈折率から低屈折率に進入するインターフェースとの間の光学的ピッチは、1/4波長の奇数倍である。このような配置関係下では、貯蔵層50の光学的厚さが半波長の整数倍、活性層30の光学的厚さが1/4波長の奇数倍とされる。
【0049】
例示的に、図14は、本願の実施例に係るライトフィールド強度分布図および屈折率分布図である。図14に示すように、貯蔵層50が下部ブラッグ反射層20と活性層30との間に配置され、反射防止層60が単層膜であり、反射防止層60の屈折率がいずれも2層の貯蔵層50および活性層30よりも小さい構造であることを例とすると、反射防止層60の第1反射防止インターフェース61と、活性層30に対して貯蔵層50の異なる一方側に位置する上部ブラッグ反射層40におけるいずれかの低屈折率から高屈折率に進入するインターフェースとの間の光学的ピッチD2は、半波長の整数倍、すなわち1/4発振波長の偶数倍であり、反射防止層60の第1反射防止インターフェース61と、活性層30に対して貯蔵層50の同一側に位置する下部ブラッグ反射層におけるいずれかの低屈折率から高屈折率に進入するインターフェースとの間の光学的ピッチD1は、1/4発振波長の奇数倍である。反射防止層60の第2反射防止インターフェース62と、活性層30に対して貯蔵層50の異なる一方側に位置する上部ブラッグ反射層40におけるいずれかの高屈折率から低屈折率に進入するインターフェースとの間の光学的ピッチD4は、半波長の整数倍、すなわち1/4発振波長の偶数倍であり、反射防止層60の第2反射防止インターフェース62と、活性層30に対して貯蔵層50の同一側に位置する下部ブラッグ反射層20におけるいずれかの高屈折率から低屈折率に進入するインターフェースとの間の光学的ピッチD3は、1/4発振波長の奇数倍である。なお、インターフェース同士の位置関係を示すために、図14には、貯蔵層50の光学的厚さが半波長であり、活性層30の光学的厚さが5倍の1/4発振波長であることが例示されている。
【0050】
一実施例において、図8図10または図11に示すように、活性層30に垂直な方向に沿って、貯蔵層50の屈折率が均一に分布している。貯蔵層50の光学的厚さが半波長の整数倍とされる場合、貯蔵層50は、半波共振キャビティに等価であってもよいため、両側における下部ブラッグ反射層20と反射防止層60の反射方向が反対し、いずれも貯蔵層50に向かって反射することができる。そのため、共振キャビティ内のライトフィールドがレーザー装置において最も強くなることを実現し、さらに、VCSELの発光孔内外の有効屈折率の差分を低下させ、高次モードの発生を抑制し、レーザーの広がり角を低下させることができる。
【0051】
たとえば、均一な分布とは、当該領域における屈折率が1つの一定の数値であることが理解できる。たとえば、貯蔵層50は、屈折率が一定の材料を1層しか含まない。
【0052】
一実施例において、図7または図9に示すように、活性層30に垂直な方向に沿って、貯蔵層50の屈折率が高低交互に分布している。理解すべきことに、貯蔵層50は、中部ブラッグ反射層である。中部ブラッグ反射層には、複数の光学的厚さが1/4発振波長のリフレクタが含まれ、複数のリフレクタが高低屈折率に応じて交互に配置されている。貯蔵層50の屈折率が高低交互に分布するように配置され、貯蔵層50における低屈折率層から高屈折率層に進入するインターフェースが定在波ライトフィールド強度の腹に配置されるとともに、貯蔵層50における高屈折率層から低屈折率層に進入するインターフェースが定在波ライトフィールド強度の節に配置されることにより、貯蔵層50自身内部のライトフィールド強度を向上させることができる。さらに、VCSELの発光孔内外の有効屈折率の差分を低下させ、高次モードの発生を抑制し、レーザーの広がり角を低下させることができる。
【0053】
一実施例において、中部ブラッグ反射層における半波長周期ごとの屈折率コントラストは、下部ブラッグ反射層20および/または上部ブラッグ反射層40における対応する半波長周期ごとの屈折率コントラストよりも低い。
【0054】
たとえば、中部ブラッグ反射層における半波長周期ごとの屈折率コントラストは、上部・下部ブラッグ反射層(20、40)における対応する半波長周期ごとの屈折率コントラストよりも低い。以下のことが理解できる。中部ブラッグ反射層における半波長周期ごとの高屈折率と低屈折率との差または比は、下部(上部)ブラッグ反射層における半波長周期ごとの高屈折率と低屈折率との差または比よりも小さい。中部ブラッグ反射層における半波長周期ごとの屈折率コントラストが低いので、コントラストが高すぎることにより、対数が少ないリフレクタで貯蔵層50内のライトフィールドを強くすることができるという問題を回避することができる。すなわち、中部ブラッグ反射層における半波長周期ごとの屈折率コントラストが低いことにより、中部ブラッグ反射層がより多くの対数のリフレクタを含むことができ、さらに、中部ブラッグ反射層の厚さが単一縦モード発振を実現できることを満たすように確保しながら、広がり角を極めて大きく低下させる要求を実現することができる。
【0055】
一実施例において、レーザーの光出射面または主光出射面は、下部ブラッグ反射層20の活性層30から離れる一方側に位置し、上部ブラッグ反射層40の反射率が下部ブラッグ反射層20の反射率よりも大きく、
或いは、レーザーの光出射面または主光出射面は、上部ブラッグ反射層40の活性層30から離れる一方側に位置し、下部ブラッグ反射層20の反射率が上部ブラッグ反射層40の反射率よりも大きい。
【0056】
たとえば、レーザーの光出射面または主光出射面が下部ブラッグ反射層20の活性層30から離れる一方側に位置すると、上部ブラッグ反射層40に含まれたリフレクタの合計反射率が下部ブラッグ反射層20に含まれたリフレクタの合計反射率よりも大きい。これにより、上部ブラッグ反射層40は、全反射を実現することができ、下部ブラッグ反射層20は、光を透過することができる。レーザー装置の光出射方向は、活性層30から下部ブラッグ反射層20に向かう方向であり、すなわちレーザー装置は、バックライトである。レーザーの光出射面または主光出射面が上部ブラッグ反射層40の活性層30から離れる一方側に位置する場合、下部ブラッグ反射層20に含まれたリフレクタの合計反射率は上部ブラッグ反射層40に含まれたリフレクタの合計反射率よりも大きい。これにより、下部ブラッグ反射層は、全反射を実現することができ、上部ブラッグ反射層40は、光を透過することができ、レーザー装置の光出射方向は、活性層30から上部ブラッグ反射層40に向かう方向であり、すなわちレーザー装置は、トップライトである。上部ブラッグ反射層40および下部ブラッグ反射層20のうち、各対のリフレクタ(たとえば、各対のリフレクタは、上部リフレクタおよび下部リフレクタを含む)の屈折率コントラスト(たとえば、屈折率コントラストは、上部リフレクタの屈折率と下部リフレクタの屈折率との差の絶対値であってもよい)が同様で、レーザーの光出射面が下部ブラッグ反射層20の前記活性層30から離れる一方側に位置する場合、上部ブラッグ反射層40に含まれたリフレクタの対数が下部ブラッグ反射層20に含まれるリフレクタの対数よりも大きいように配置され、レーザーの光出射面が上部ブラッグ反射層40の前記活性層30から離れる一方側に位置する場合、下部ブラッグ反射層20に含まれるリフレクタの対数が上部ブラッグ反射層40に含まれるリフレクタの対数よりも大きいように配置されている。一実施例において、前記光出射面の一方側に集積されたマイクロレンズがさらに配置されてもよく、ファーフィールドの広がり角を更に低減させるために用いられる。
【0057】
一実施例において、図15は、本願の実施例に係る他の小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置の構造模式図である。図15に示すように、活性層30は、少なくとも2つのサブ活性層を含み(図15には、3組が例示されており、それぞれ31、32、33であり)、隣り合う2つのサブ活性層がトンネル結合80で連結されている。各々のサブ活性層の少なくとも一方側に反射防止層60および貯蔵層50があり、各々の活性層サブ層に最も多く1つの電流狭窄層70が存在する。そのうち、トンネル結合80と定在波ライトフィールドの最も近い節との光路距離は、1/10発振波長よりも小さい。たとえば、トンネル結合80は、定在波ライトフィールドの節にある。トンネル結合80には、非常に多くの不純物を有する。これらの不純物は、光吸収損失を引き起こし、発光効率を低下させるため、それをライトフィールドが最も小さい箇所に置くことにより、光損失を最小化させることができる。
【0058】
各々のサブ活性層には、量子井戸(312/322/332)が設けられている。そして、サブ活性層において、量子井戸の両側に、それぞれN型半導体層(313/323/333)およびP型半導体層(311/321/331)が設けられている。基板10の活性層30から離れる一方側に第1電極層90が設けられ、上部ブラッグ反射層40の活性層30から離れる一方側に第2電極層100が設けられている。第1電極層90および第2電極層100により、外部からの電気信号を受信して電圧差を生成することで、活性層に電流を提供することを実現することができる。サブ活性層が複数ある構造において電流狭窄層70が1つのみ設けられてもよい。当該電流狭窄層70は、上部ブラッグ反射層40に最も近づくサブ活性層(31)に位置する。一実施例において、電流狭窄層70が1つのみ設けられることにより、発光領域を定義することを満たしながら、素子における電流狭窄層70の有効屈折率を低減させることができる。なお、各々のサブ活性層には、複数の量子井戸が含まれてもよい。
【0059】
本願の実施例は、複数の上記実施例のいずれかに記載の小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置を有する小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置チップであって、複数の小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置は、アレイ配列或いはランダムな配列である、小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置チップをさらに提供する。これは同様な技術効果を有するため、ここでは繰り返し説明しない。
【0060】
本願の実施例は、少なくとも1つの上記実施例のいずれかに記載の小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置、または少なくとも1つの上記実施例のいずれかに記載の小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置チップを含むLIDAR(Light Detection And Ranging、レーザーレーダ)システム用光源をさらに提供する。これは同様な技術効果を有するため、ここでは繰り返し説明しない。
【0061】
一実施例において、複数の小さい広がり角を有するVCSELレーザー装置は、平面アレイ配列を構成することができる。
【0062】
一実施例において、平面アレイ配列は、アドレッシングのための複数のサブアレイであってもよい。アドレッシングとは、そのうちの1つまたは複数のサブアレイを独立して点灯させることができることを指す。
【0063】
たとえば、VCSELレーザー装置は、600個の発光点を有し、20×30の発光点アレイを形成してもよい。当該VCSELレーザー装置は、さらに、20×30の発光点アレイを、異なるサブアレイ、たとえば2×3のサブアレイに区画することができ、各々のサブアレイに10×10の発光点を有する。各々のサブアレイは、独立して制御されてもよい。
【0064】
なお、上記説明は本願の好適な実施例及び使用された技術原理に過ぎない。当業者は、本願がここに記載された特定の実施例に限定されず、当業者として、本願の保護範囲を逸脱しない範囲で、各種の明らかな変更、再調整及び置換を行うことができることを理解すべきである。従って、上記実施例により本願を詳細に説明したが、本願は上記実施例に限定されず、本願の構想を逸脱しない限り、他の均等な実施例をより多く含んでもよく、本願の保護範囲は添付された特許請求の範囲によって決定される。















図1
図2
図3
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図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15