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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】走行システム及び走行装置
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/242 20240101AFI20240416BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20240416BHJP
   G05D 1/69 20240101ALI20240416BHJP
【FI】
G05D1/242
G05D1/43
G05D1/69
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024012272
(22)【出願日】2024-01-30
【審査請求日】2024-01-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501041894
【氏名又は名称】チームラボ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】恩智 英治
(72)【発明者】
【氏名】周 暁航
(72)【発明者】
【氏名】小山 嘉
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-187498(JP,A)
【文献】特開2019-096103(JP,A)
【文献】特開2022-154171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/242
G05D 1/43
G05D 1/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の走行装置に既定の経路上を走行させるためのシステムであって、
前記経路上には複数の停車エリアが設けられており、
前記走行装置のそれぞれは、
前記経路上の指定点までの距離を測定するための測距部と、
前方の別の走行装置に近接していることを検知する検知部と、
所定のアルゴリズムに基づいて自己の走行装置の発進と停止を制御する制御部を有し、
前記制御部は、
自己の走行装置が前記指定点に到達したか又は前方の別の走行装置に近接したことを検知したときに自己の走行装置を一時停止させ、
一時停止中に自己の走行装置から前記指定点までの距離を算出し、
前記指定点までの距離に基づいて自己の走行装置が属するグループを推定し、
前記グループの情報に基づいて自己の走行装置が前記停車エリアで停止するための停止情報を求め、
前記停止情報に基づいて自己の走行装置を前記停車エリアで停止させる
システム。
【請求項2】
前記制御部は、
前方の別の走行装置に近接したことを検知したことによって自己の走行装置を一時停止させた場合に、
自己の走行装置を前方の別の走行装置から所定の車間距離を保持して停止させ、
前記指定点までの距離、前記車間距離、及び走行装置の全長に基づいて前記指定点まで続く走行装置の列における自己の走行装置の順位を推定することによって、自己の走行装置が属するグループの番号を推定し、
前記グループの番号に基づいて自己の走行装置が前記停車エリアを通過する通過数を求め、当該通過数を過ぎた後に自己の走行装置を前記停車エリアで停止させる
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記システムは、前記指定点の近傍に設置された基地局を備え、
前記基地局は、電波信号、音波信号、又は光信号の無線信号を発信しており、
前記走行装置の前記制御部は、前記測距部により受信した前記無線信号に基づいて自己の走行装置から前記指定点までの距離を算出する
請求項1又は請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記停車エリアは、前記走行装置に搭載されているバッテリを充電するための充電器を含む
請求項1又は請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記走行装置の数は、前記停車エリアの数よりも多く、
前記停車エリアの数は、前記グループの数と同じか又は前記グループの数よりも多い
請求項1又は請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
前記走行装置は、外部のコンピュータからの制御を受けず、前記アルゴリズムのみに基づいて発進と停止の制御が行われる
請求項1又は請求項2に記載のシステム。
【請求項7】
複数の停車エリアが設けられてる既定の経路上を走行可能な走行装置であって、
前記経路上の指定点までの距離を測定するための測距部と、
前方の別の走行装置に近接していることを検知する検知部と、
所定のアルゴリズムに基づいて自己の走行装置の発進と停止を制御する制御部を有し、
前記制御部は、
自己の走行装置が前記指定点に到達したか又は前方の別の走行装置に近接したことを検知したときに自己の走行装置を一時停止させ、
一時停止中に自己の走行装置から前記指定点までの距離を算出し、
前記指定点までの距離に基づいて自己の走行装置が属するグループを推定し、
前記グループの情報に基づいて自己の走行装置が前記停車エリアで停止するための停止情報を求め、
前記停止情報に基づいて自己の走行装置を前記停車エリアで停止させる
走行装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律走行可能な複数の走行装置を規定の経路上に沿って走行させるためのシステムに関する。また、本発明は、自律走行可能な走行装置それ自体にも関する。
【背景技術】
【0002】
本願出願人は、以前より、予め敷設されたレーンを走行するモータ駆動の走行装置を提案している(特許文献1)。この特許文献1に記載の走行装置は、レーンの左右に設けられた側壁に接触しながら走行することが想定されている。
【0003】
その他にも、従来から、走行面に描かれた軌道に沿って自律走行する走行玩具が知られている(例えば特許文献2)。特許文献2に記載の走行玩具は、走行面に描かれた軌道を検知するためのフォトセンサ(光学センサ)を備えており、このフォトセンサによって走行面からの反射光に基づいて軌道を光学的に検出するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第7365084号公報
【文献】特開2006-181241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1や特許文献2に示された走行装置を、既定の経路上で複数台連続的に走行させ続けることを考える。その場合は、例えば、経路上の各所に充電エリアを設けておき、走行装置を定期的に充電エリアで停止させ、ワイヤレス方式の充電器で走行装置に搭載されたバッテリを充電して、走行を再開させることが有効である。このように充電のための停止と発進とを自動的に繰り返すことで、各走行装置は経路上を走行し続けることが可能となる。
【0006】
このように走行装置を自律走行させる場合には、コントロールセンターのような上位の制御局を設けておき、この制御局から全ての走行装置に対して停止と発進に関わる制御指令を送信し、この指令に基づいて走行装置の走行状態を制御することが一般的であると考えられる。しかしながら、上位の制御局によって全ての走行装置の走行状態を制御する場合、例えば各走行装置が自己の位置や充電残量などの報告を上位の制御局に行ったり、制御局が各走行装置に対して充電エリアを指定する命令を送信したりするなど、走行装置と制御局との間で情報の送受信を頻繁に行う必要がある。その結果、システム全体の通信データ量が自ずと増えてしまい、通信スピードが非常に早い環境でないと、走行装置の制御処理が追いつかないという問題が発生する。特に走行装置の数が多いと通信の負担が膨大になるため、そのようなシステムの実現はより困難となる。例えば通信環境の悪い室内において走行装置を密集して走行させるような場合には、全ての走行装置を上位の制御局によって中央管理することは現実的ではない。
【0007】
一方で、上記のような通信データ量の問題から、上位の制御局により走行装置を制御することを断念し、各走行装置をそれぞれ独自に走行させることも検討される。しかしながら、その場合には、各走行装置は他の走行装置の状況を把握することができなくなるため、どの充電エリアで停止すればよいのかを独自に判断することが難しいという問題が発生する。特に、既定の経路上に充電エリアを設けた場合、それぞれの走行装置が勝手に充電エリアで停止すると、その後続の走行装置の障害となってしまい、後続の走行装置と衝突したり、後続の走行装置が停止中の走行装置を超えて前に進めなくなる。また、多数の走行装置が重複して1つの充電エリアで停止しようとすると、充電エリアに一度に停止できる走行装置の許容値を超えることも懸念される。なお、走行装置を充電エリアで停止させる場合に限らず、走行装置を経路上の所定の停車エリアで適宜停止させて、経路上にて走行装置を適度に分散して走行させるといったような場合にも同様の問題が発生し得る。
【0008】
そこで、本発明は、既定の経路上で複数の走行装置を走行させる場合に、上位の制御局からの制御に依らずに、各走行装置を適切に停車エリアにて停止させることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発明者は、上記の問題を解決する手段について鋭意検討した結果、複数の走行装置を複数の停車エリアに分散して停止させることのできるアルゴリズムを開発し、このアルゴリズムを走行装置のそれぞれに搭載しておくことで、上位の制御局からの制御に依らずに、各走行装置を適切に停車エリアに停止させることができるようになるという知見を得た。そして、本発明者は、このような知見に基づけば上記の問題を解決できることに想到し、本発明を完成させた。
【0010】
本発明の第1の側面は、複数の走行装置20に既定の経路10上を走行させるためのシステム100に関する。この経路10上には、複数の停車エリアARが設けられている。なお、この経路10は、経路10の左右両側に側壁を設けておき、走行装置20をこの側壁に接触させながら走行させるものであってもよいし、それに代えて、経路10上に誘導線を引いておき、この誘導線に沿って走行装置20を走行させるものであってもよい。複数の走行装置20は、それぞれは測距部、検知部、及び制御部を有する。測距部は、経路10上の指定点Pまでの距離を測定するための要素である。測距部としては、例えば電波信号を受信する無線モジュールや、音波信号を受信するマイクロフォン、光信号を受信する光センサを利用できる。検知部は、前方の別の走行装置に近接していることを検知する。制御部は、所定のアルゴリズムに基づいて自己の走行装置の発進と停止を制御する。具体的には、制御部は、自己の走行装置20が指定点Pに到達したか又は前方の別の走行装置20に近接したことを検知したときに自己の走行装置20を一時停止させる。次に、制御部は、一時停止中に自己の走行装置20から指定点Pまでの距離を算出する。次に、制御部は、自己の走行装置20から指定点Pまでの距離に基づいて自己の走行装置20が属するグループを推定する。次に、制御部は、ここで推定したグループの情報に基づいて自己の走行装置が停車エリアARで停止するための停止情報を求める。そして、制御部は、この停止情報に基づいて自己の走行装置を停車エリアARで停止させる。このように、走行装置20のそれぞれに発進と停止を制御するためのアルゴリズムを実装することで、各走行装置は、上位の制御局と通信しなくても適切に停車エリアARに停止できるようになる。
【0011】
なお、本発明に係る走行装置20は、指定点検出部をさらに備えていてもよい。指定点検出部は、経路10を走行中に走行装置20が指定点Pに到達したことを検出する。指定点の検出方法は特に制限されないが、例えば光学式(可視光、紫外線、赤外線を含む)のセンサによって経路10に付与された指定点Pを示すマーカを読み取ったり、集音装置(マイク)によって指定点P付近から放出されている音(超音波を含む)と取得したり、磁気センサによって指定点Pから発生している磁気を検出したりする方法が挙げられる。その他にも、バーコードや、QRコード(登録商標)、近距離無線通信(NFC)、Bluetooth(登録商標)、Quuppa(登録商標)などの無線位置特定技術を利用して、走行装置20は経路10上の指定点Pを特定することができる。
【0012】
本発明に係るシステム100において、走行装置20の制御部が、前方の別の走行装置20に近接したことを検知したことによって自己の走行装置20を一時停止させた場合について考える。この場合、制御部は、自己の走行装置20を前方の別の走行装置20から所定の車間距離を保持して停止させる。そして、制御部は、指定点Pまでの距離、車間距離、及び走行装置20の全長に基づいて、指定点Pまで続く走行装置20の列における自己の走行装置20の順位を推定することによって、自己の走行装置20が属するグループの番号を推定することが好ましい。また、制御部は、このグループの番号に基づいて自己の走行装置20が停車エリアARを通過する通過数(n)を求め、当該通過数(n)を過ぎた後に自己の走行装置を停車エリアARで停止させると良い。これにより、各走行装置20をそれぞれ重複させずに、適切な停車エリアARに停止させることができる。
【0013】
本発明に係るシステム100は、指定点Pの近傍に設置された基地局30をさらに備えることが好ましい。この基地局30は、電波信号、音波信号、又は光信号といった無線信号を発信している。この場合、走行装置20の前記制御部は、測距部により受信した無線信号に基づいて自己の走行装置20から指定点Pまでの距離を算出することが好ましい。これにより、簡単な構成で走行装置20から指定点Pまでの距離を効率良く算出できる。
【0014】
本発明に係るシステム100において、停車エリアARは、走行装置20に搭載されているバッテリ25を充電するための充電器40を含むことが好ましい。充電器40は、有線又は無線のどちらでもよいが、走行装置20に充電用のケーブルを差し込む手間を省略するために、無線充電方式のものを採用することが好ましい。これにより、停車エリアARに停車中の走行装置20を充電することができる。
【0015】
本発明に係るシステム100において、走行装置20の数は、停車エリアARの数よりも多いことが好ましい。また、停車エリアARの数は、グループの数と同じか又はグループの数よりも多いことが好ましい。本発明に係るシステム100は、このような条件下であっても、各走行装置20を効率良く停車エリアARにて分散して停止させることができる。
【0016】
本発明に係るシステム100において、走行装置20は、外部のコンピュータ(上位の制御局)からの制御を受けず、所定のアルゴリズムのみに基づいて発進と停止の制御が行われることが好ましい。これにより、例えば室内などの通信状態の悪い環境下においても、各走行装置20を適切に停車エリアARにて停止させることができる。
【0017】
本発明の第2の側面は、走行装置20そのものに関する。走行装置20は、複数の停車エリアARが設けられてる既定の経路10上を走行可能である。走行装置20は、経路10上の指定点Pまでの距離を測定するための測距部と、前方の別の走行装置20に近接していることを検知する検知部と、所定のアルゴリズムに基づいて自己の走行装置20の発進と停止を制御する制御部を有する。制御部は、自己の走行装置20が指定点Pに到達したか又は前方の別の走行装置20に近接したことを検知したときに自己の走行装置20を一時停止させる。制御部は、一時停止中に自己の走行装置20から指定点Pまでの距離を算出する。制御部は、指定点Pまでの距離に基づいて自己の走行装置20が属するグループを推定する。制御部は、グループの情報に基づいて自己の走行装置20が停車エリアARで停止するための停止情報を求める。制御部は、停止情報に基づいて自己の走行装置20を停車エリアARで停止させる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、既定の経路上で複数の走行装置を走行させる場合に、上位の制御局からの制御に依らずに、各走行装置を適切に停車エリアにて停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、所定の経路上を自律走行する走行装置の例を示した模式図である。
図2図2は、経路の構成要素を示した分解斜視図である。
図3図3は、走行装置の構成要素の例を示したブロック図である。
図4図4は、走行装置に実装されたアルゴリズムの例を示したフロー図である。
図5図5は、自由走行ステップ(S1)と算出ステップ(S2)を模式的に示している。
図6図6は、通過ステップ(S3)と停車ステップ(S4)を模式的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は、以下に説明する形態に限定されるものではなく、以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
【0021】
図1は、本発明に係る走行システム100において、所定の経路10(レーン)の上を走行装置20が走行する様子を示している。走行装置20は、車体の駆動機構から推進力を得て経路10に沿って走行する。この経路10は、走行面の左右両側に側壁が設けられており、走行装置20の車体はこのレーンの側壁に接触しながら進行する。これにより、走行装置20はレーンの形状に沿って直進したりカーブしたりしながら前進することとなる。また、走行装置20には発光機構が備わっている。また、走行装置20は、車体の上部に取り付けられたドーム状のカバー29を備える。このカバー29は透明又は半透明であることから、カバー29内に設けられた発光機構が発光すると、その光はカバー29を透過して外部から視認される。
【0022】
次に、図2及び図3を参照して、走行装置20の構成例について説明する。図2に示されるように、走行装置20は、制御装置21と2つのモータ22を備える。各モータ22は、この電子基板等を介して制御装置21に電気的に接続されており、この制御装置21による制御を受ける。各モータ22には、それぞれ独立して駆動輪23が取り付けられている。バッテリ25から電力を供給して各モータ22を駆動させることで駆動輪23が回転し、これらの駆動輪23が経路10の路面に接することで走行装置20は推進力を得る。本実施形態において、走行装置20は、後輪駆動方式を採用しているため、各モータ22は走行装置20のシャーシの後方に搭載されている。図示した例では、走行装置20の進行方向を基準として、第1のモータ22(R)が右側の第1の駆動輪23(R)を回転させるものとなり、第2のモータ22(L)が左側の第2駆動輪23(L)を回転させるものとなる。なお、走行装置20は後輪駆動方式に限らず、前輪駆動方式としてもよい。
【0023】
各モータ22としては、公知のものを採用することができる。具体的には、各モータ22は、ステータ及びロータを含む回転部と、この回転部で得られた回転力を外部に出力するための出力軸(シャフト)を備える。また、各駆動輪23も、公知のものを採用することができる。具体的には、各駆動輪23は、金属製又はプラスチック製のホイール部材と、このホイール部材の外周に取り付けられた摩擦力の高いゴム製のタイヤ部材を備える。なお、タイヤ部材は、消耗品であることから、ホイール部材から取り外して適宜交換することが可能である。本実施形態では、各駆動輪23のホイール部材が、各モータ22の出力軸に直接固定されている。なお、ホイール部材と出力軸は、両者の間に生じる摩擦力で固定されていてもよいし、接着剤や溶接等の公知の固定手法を採用することとしてもよい。ただし、モータ22の出力軸と車輪のホイール部材は、ギアやシャフト等の中間部品を介在させることによって連動させることも可能である。
【0024】
また、走行装置20は、図2に示されるように、上記した各モータ22に固定された各駆動輪23に加えて、経路10の路面に接触する一又は複数の従動輪24を備える。この従動輪24は、モータ22等の駆動源には接続されておらず、走行装置20の走行を補助するための車輪である。本実施形態において、従動輪24は、走行装置20のシャーシの前方の左右二箇所に配置されている。なお、走行装置20の大きさ等に応じて従動輪24の数を増減することもできる。
【0025】
また、走行装置20は、バッテリ25を備える。バッテリ25は、一次電池であってもよいし、二次電池であってもよい。ただし、繰り返し充電可能とした方が運用効率が高いことから、バッテリ25としては二次電池を採用することが好ましい。特に、本実施形態では、バッテリ25を繰り返し自動的に充電することで、走行装置20を連続的に走行させることを想定している。バッテリ25の電力は、例えば制御装置21や、各モータ22や、センサ27、及び発光素子28に供給される。また、バッテリ25の充電残量は、プロセッサ21aにより監視することとしてもよい。
【0026】
また、走行装置20は、バッテリ25を充電するための受電用コイル26を備える。受電用コイル26は、外部からの電磁誘導によって電力を受け取ることができる。例えば、走行装置20が停車エリアARに停止したときに、この停車エリアARに設置された充電器40が備える送電用コイルから、電磁誘導によって受電用コイル26に電力が供給される。この受電用コイル26で受け取った電力は、整流回路などを経由してバッテリ25へと供給され、バッテリ25は非接触式で充電される。このように、受電用コイル26によって外部機器からワイヤレスで電力を受け取ることができ、バッテリ25の充電が可能となる。
【0027】
また、走行装置20は、図2に示されるように、センサ27として、例えば経路上に描かれた指定点のマーカを読み取るための投光部27aと受光部27bを備える。これらの投光部27aと受光部27bは、制御装置21に接続されており、検知情報を制御装置21に伝達する。経路上の指定点を示すマーカは、例えば特定波長の光を反射するものである。このため、投光部27aと受光部27bとしては、特定波長の光を誘導線13に対して投光し、その反射光を受光することでマーカを検知することのできる光電センサを用いればよい。例えば指定点を示すマーカとして蛍光顔料が用いられている場合、投光部27aは、経路10の走行面に対して紫外光(ブラックライト)を照射し、受光部27bは、紫外光を受けてマーカの蛍光顔料から放射された可視光を受光する。受光部27bは、マーカの蛍光顔料から可視光を受光すると、受光部27bに対するマーカの相対位置などに関する情報を電気信号に変換して制御装置21に伝達する。なお、本実施形態では、上記のように投光部27aと受光部27bを指定点検出部として利用しているが、指定点Pを検出する手法はこれに限定されない。
【0028】
また、走行装置20のセンサ27は、図2に示されるように、近接センサ27cをさらに含む。この近接センサ27cは、自己の走行装置20が、その前方の走行装置20に対して所定距離以下まで近接したことを検知する。近接センサ27cとしては、公知のものを用いることができる。近接センサ27cは、例えば、赤外線センサやミリ波レーダー、超音波センサ等を用いることができる。これらのセンサは、自己の走行装置20の前方に他の走行装置20が存在する場合、その距離を計測することが可能である。具体的には、赤外線センサは赤外線を送信してその反射光を計測する。ミリ波レーダーは電波を送信してその反射波を計測する。超音波センサは音波を送信してその反射音を計測する。このような遠隔計測センサを近接センサ27cとして用いて、前方の走行装置20との距離が所定距離以下に近づいたことを検知した場合、走行装置20間の衝突を防止するために、走行装置20は、前方の走行装置20に対して所定の車間距離を確保して自動的に停止する。
【0029】
また、走行装置20は、図2に示されるように、一又は複数の発光素子28をさらに備えていてもよい。複数の発光素子28は、電子基板等を介して制御装置21に電気的に接続されており、この制御装置21による制御を受ける。また、走行装置20のカバー29は、透明又は半透明であることから、発光素子28が発光すると、その光はカバー29を透過して外部から視認される。カバー29としては、例えば公知のポリカーボネート素材やシリコン素材を用いることができる。さらに、カバー29は、ハーフミラーによって構成されていてもよい。ハーフミラーは、その内部から外部へ向かう光を透過し、外部から内部へ向かう光は反射する。この場合、例えばシリコン部材からなるカバー29の内面にハーフミラーのフィルムを貼付すればよい。
【0030】
図3は、制御装置21を中心とした制御系を示したブロック図である。図6に示した例において、制御装置21は、プロセッサ21a、メモリ21b、無線モジュール21c、駆動制御回路21d、センサ制御回路21e、及び発光制御回路21fを含む。プロセッサ21aの例は、公知のCPUやその他の制御回路である。プロセッサ21aは、メモリ21bに記憶されている所定のアルゴリズム(プログラム)やデータに従って所定の演算処理を行い、その演算結果をメモリ21bの作業空間に書き出しながら各種の制御処理を実行する。メモリ21bは、例えばRAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリや、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリから構成され、上記したプロセッサ21aによる演算処理に利用される。本実施形態において、プロセッサ21aは、メモリ21bに記憶されたプログラムを読み出し、このプログラムに従って、各モータ22を駆動させたり、各発光素子28を発光させるための処理を行う。
【0031】
無線モジュール21cは、経路10上の指定点Pの直ぐ傍に設置された基地局30(図5図6参照)から発信されている無線信号を受信する。プロセッサ21aは、無線モジュール21cが受信した無線信号の強度に基づいて、自己の走行装置20から指定点P(厳密には基地局30)までの距離を算出できる。具体的には、指定点Pの位置での基地局30の受信電波強度を予め測定しておき、その強度を参照値として走行装置20のメモリ21bに記憶しておく。次に、実際に走行装置20の無線モジュール21cが基地局30から受信した電波強度を測定する。そして、メモリ21bに保存してある電波強度(参照値)と実際に測定した電波強度との差分を算出する。この差分は、基地局30からの距離に反比例することから、予めこの差分と距離の関係を実験的に求めておくことで、算出した差分に基づいて走行装置20から指定点Pまでの実際の距離を特定できる。基地局30が発信する電波は、2.4GHz、5GHz、又はSub1Ghzなどの公知の無線規格に準じたものとすればよい。
【0032】
駆動制御回路21dは、プロセッサ21aの制御命令に基づいて、モータ22(R,L)が所定の回転条件(回転速度、回転方向等)で駆動するように、バッテリ25から電力を各モータ22に供給する回路である。なお、各モータ22の回転方向を切り替えることで、走行装置20の前進と後退を切り替えることもできる。また、この駆動制御回路21dは、第1のモータ22(R)及び第2のモータ22(R)をそれぞれ独立して制御することが可能である。
【0033】
センサ制御回路21eは、プロセッサ21aの制御命令に基づいて、バッテリ25から電力をセンサ27に供給してそのオンオフを制御したり、受光部27bや近接センサ27cにより得られた情報(電気信号)をプロセッサ21aに伝達する回路である。プロセッサ21aは、例えば、受光部27bによって検知された経路10上の指定点を示すマーカの位置情報に基づいて、モータ22を停止するための制御命令を生成し、駆動制御回路21dに出力する。また、プロセッサ21aは、例えば、近接センサ27cによって前方の走行装置20の近接状態が検知されたときに、モータ22を停止するための制御命令を生成し、駆動制御回路21dに出力する。また、プロセッサ21aは、近接センサ27cによって前方の走行装置20の離脱が検知されたときに、モータ22を再度駆動するための制御命令を生成し、駆動制御回路21dに出力する。
【0034】
発光制御回路21fは、プロセッサ21aの制御命令に基づいて、各発光素子28が所定の発光条件(発光色、明度等)で発光するように、バッテリ25から電力を各発光素子28に供給する回路である。この発光制御回路21fは、各発光素子28をそれぞれ独立して制御することが可能である。
【0035】
続いて、図4から図6を参照して、経路10上を走行する複数の走行装置20がそれぞれ独自にバッテリ充電用の停車エリアARで停止する判断を行うためのアルゴリズムについて説明する。図5及び図6に示されるように、経路10上に設けられた指定点Pの近傍には基地局30が設置されており、この基地局30からは前述したとおり電波による無線信号が発せられている。ただし、この基地局30は、単純に無線信号(電波)を発信しているだけであり、走行装置20に対しては停車や発進等に関わる制御命令は何ら提供していない。複数の走行装置20は、それぞれに実装されたアルゴリズムに基づいて自身が停止すべき停車エリアARを独自に判断する。それにも関わらず、本実施形態では、一つの停車エリアARの収容台数以上の走行装置20が集中して停止したり、走行装置20同士が経路10で衝突したりすることなく、すべての走行装置20を円滑に複数の停車エリアAR(バッテリ充電用)に分散して停止させることができる。図3は、これを実現するために各走行装置20に実装されたアルゴリズムの例を示している。図3に示されるように、走行装置20によって実行される処理のフローは、大きく分けて自由走行ステップ(S1)、算出ステップ(S2)、通過ステップ(S3)、及び停車ステップ(S4)を含む。自由走行ステップ(S1)の概要は図5(a)に、算出ステップ(S2)の概要は図5(b)に、通過ステップ(S3)の概要は図6(c)に、停車ステップ(S4)の概要は図6(d)に、それぞれ示されている。
【0036】
まず、自由走行ステップ(S1)は、次の算出ステップ(S2)に入るまでの間、複数の走行装置20が経路10に沿って自由に走行するステップである。自由走行ステップでは、まず、複数の走行装置20がそれぞれ発進する(S1-1)。各走行装置20は、所定の停止条件を満たすまで経路10に沿って走行し続けることとなる。
【0037】
本実施形態において、走行装置20が一時停止する条件は2つである。第1の停止条件としては、走行装置20が経路10に設けられた指定点Pに到達したとき、その走行装置20はその指定点Pで一時停止する(S1-2,S2-1)。指定点Pには、例えばそこが指定点Pであることを示すマーカ(図5等において▲で示している)が経路10に設けられている。走行装置20は、例えばセンサ27(投光部27aと受光部27b)によってこのマーカを検知すると、その場で一時停止する。第2の停止条件としては、ある走行装置20が近接センサ27cによって前方の走行装置20に所定距離以下まで近接していることを検知したときに、その走行装置20はその場で一時停止する(S1-3,S2-1)。図6(b)に示した例では、複数の走行装置20は列をなして一時停止しているが、その列の先頭の走行装置20(0番)は、指定点Pに到達したことより第1の停止条件によって一時停止している。一方、先頭よりも後方に続く複数の走行装置20は、前方の走行装置20に所定距離以下まで近接したことを検知したことにより第2の停止条件によって一時停止していることとなる。このようにして一時停止した走行装置20は、次の算出ステップ(S2)へと移行する。
【0038】
なお、先頭の走行装置20が指定点Pに到達したこと以外にも、何らかの原因によって2つの走行装置20の車間距離が所定距離以下となり、走行装置20が第2の停止条件によって一時停止することもあるが、その場合も一時停止した走行装置20は算出ステップ(S2)へと移行する。ただし、算出ステップ(S2)へと移行した後、前方の車両が後方の車両から離脱し、2つの走行装置20の車間距離が所定距離以上となったときには、算出ステップ(S2)は中止され、再び自由走行ステップ(S1)へと戻ることになる。なお、その際に走行装置20は計算結果を破棄する。このようにすれば、2つの走行装置20が経路10で衝突することを回避できる。
【0039】
なお、指定点Pに到達した走行装置20は、必ずしも無条件に一時停止させる必要はなく、例えば走行装置20に搭載されているバッテリ25の充電残量が所定値以下となっている状態で指定点Pに到達した場合に限り、走行装置20を指定点Pで一時停止させることとしてもよい。走行用の経路10が短い場合など、走行装置20が短期間の間に繰り返し指定点Pを通過する場合も考えられるが、その度に指定点P上で走行装置20を停止させることは非効率である。このため、第1の停止条件の付加条件として、バッテリ25の充電残量が所定値以下となっていることを加えることとしてもよい。
【0040】
続いて、算出ステップ(S2)は、走行装置20がそれぞれ自己の一時停止している位置に基づいて停車エリアARを通過する数を求めるステップである。前述の通り、走行装置20は、第1の停止条件又は第2の停止条件を満たしたときにその場で一時停止して、算出ステップに移行する(S2-1)。算出ステップ(S2)では、まず、走行装置20は、それぞれ指定点Pまでの距離を算出する(S2-2)。指定点Pの近傍に設置された基地局30からは無線信号が発信されており、各走行装置20はこの無線信号を受信して、その信号強度を測定することにより指定点Pまでの距離を算出することができる。なお、図5(b)に示されるように、第1の停止条件により指定点Pで一時停止している先頭の走行装置20は、指定点Pまでの距離はゼロとなる。それ以降の走行装置20もそれぞれ指定点Pまでの距離を算出する。
【0041】
次に、各走行装置20は、指定点Pまでの距離を利用して、指定点P上で停止している走行装置20を先頭とする列における自己の順位を推定する(S2-3)。具体的には、各走行装置20は、以下の式1により自己の順位を推定できる。
[式1]順位=指定点Pまでの距離/(車間距離+走行装置の全長)
なお、上記式1より算出された解の小数点以下は切り捨てればよい。
【0042】
上記式1において、「指定点Pまでの距離」は変数であり、S2-2で算出した距離を代入する。なお、「車間距離」とは2つの走行装置20の間の1つ分の車間距離であり、「走行装置の全長」とは1台分の走行装置20の進行方向の長さである。車間距離と走行装置の全長は定数であり、走行装置20のメモリ21bに予め保存されている固定値を読み出せばよい。これにより、走行装置20は自己の順位を推定できる。図5(b)に示した例では、先頭から合計10台の走行装置20が列をなしているが、先頭の走行装置20の順位は「0」となる。それ以降の残り9台の走行装置20の順位は、それぞれ「1」、「3」、「4」、「5」、「6」、「8」、「9」、「10」、「11」となっている。この例では、「2」と「7」の順位が抜けているが、各走行装置20から指定点Pまでの距離にバラツキがあるため、順位の推定に誤差が生じる場合がある。ただし、本実施形態のアルゴリズムの優れた点として、このような誤差を許容することができる。
【0043】
次に、各走行装置20は、S2-3で求めた順位を利用して、自己が属するグループの番号を推定する(S2-4)。例えば、図5(b)に示した例では、10台の走行装置20が列をなして一時停止しているが、1つのグループに最大3台の走行装置20が属することができ、またこのようなグループを最大5つ作成することができるようになっている。具体的には、順位0~2番の走行装置20はグループG0に属し、順位3~5番の走行装置20はグループG1に属し、順位6~8番の走行装置20はグループG2に属し、順位9~11番の走行装置20はグループG3に属し、順位12~14番の走行装置20はグループG4に属することが予め定められている。このように、この例では、1つのグループに属することのできる最大の台数が3台となっているが、この最大台数は経路10の1つの停車エリアARに停止させることのできる収容台数と一致させるか、この収容台数よりも少なくするとよい。また、この例では、最大のグループ数は5であるが、最大グループ数は経路10上の停車エリアARの数と一致させるか、停車エリアARの数よりも少なくするとよい。なお、図5(b)に示した例では走行装置20の台数は10台に限られているため、グループG4は作成されない。
【0044】
各走行装置20は、S2-3で求めた順位が決まると、以下の[式2]により自己が属するグループの番号を推定できる。
[式2]グループ番号=順位/1つのグループに属する台数
なお、上記式2より算出された解の小数点以下は切り捨てればよい。
例えば、1つのグループに属する台数は3台であるため、順位11番の走行装置20の場合は、11/3=3.66となり、グループ番号は「3」(G3)となる。
【0045】
次に、各走行装置20は、S2-3で求めたグループ番号を利用して、再発進した後に通過する停車エリアの数(通過数)を算出する(S2-5)。通過数は、例えば以下の式3により求めることができる。
[式3]通過数=最大グループ数-自己のグループ番号
例えば、図5に示した例では最大グループ数は5であるため、グループ番号「0」(G0)の通過数は5となり、グループ番号「4」(G4)の通過数は1となる。なお、通過数は上記式3により計算で求めるのではなく、予め各グループに対して通過数を対応付けおき、その対応データを走行装置20のメモリ21b等に記憶しておくこととしてもよい。このようにして通過数の算出が終わると、各走行装置20は次の通過ステップ(S3)へと移行する。
【0046】
続いて、通過ステップ(S3)は、走行装置20が再発進して、算出ステップ(S2)で求めた通過数分の停車エリアARを通過するステップである。通過ステップ(S3)では、まず、通過数の算出を終えた走行装置20がそれぞれ再発進する(S3-1)。再発進後にそれぞれの走行装置20は、指定点Pを通過する。
【0047】
その後、各走行装置20は、経路10上を進行しながら、通過した停車エリアARの数をカウントし(S3-2)、通過した停車エリアARの数が自己の通過数に達したか否かを判断する(S3-3)。走行装置20が停車エリアARの数をカウントする方法としては、例えば、各停車エリアARに走行装置20のセンサ27(投光部27a,受光部27b)によって読み取り可能なマーカを設けておき、センサ27がこのマーカを読み取ったときに、走行装置20は停車エリアARに到達したものとしてカウントしてもよい。また、例えば、停車エリアARに設けられた充電器40から走行装置20に電力が供給されたときに、走行装置20は停車エリアARに到達したものとしてカウントしてもよい。このようにして、停車エリアARを通過した数が自己の通過数分に達するまで、各走行装置20は経路10上を走行し続ける。通過数分のカウントが終了すると、各走行装置20は次の停車ステップ(S4)へと移行する。
【0048】
停車ステップ(S4)は、各走行装置20が停車エリアARにて再停止するステップである。このとき、停車エリアARに充電器40が設けられている場合には、その充電器40から走行装置20に対して電力が供給され、走行装置20に搭載されたバッテリ25が充電される。まず、各走行装置20は、通過ステップ(S3)において停車エリアARを通過した数が自己の通過数分に達すると、その次の停車エリアARで停止する(S4-1)。例えば、グループG0に属する走行装置20の通過数は5であるため、このグループG0の走行装置20は5箇所の停車エリアARを通過し終えると、その次の6箇所目の停車エリアARにて停止する。他のグループに属する走行装置20も同様である。
【0049】
図6(d)では、すべての走行装置20が停車エリアARに停止した状態を示している。この図に示されるように、複数の走行装置20の複数の停車エリアARに分散して停止しているため、一つの停車エリアARの収容台数を超えて走行装置20が集中することはない。また、停車エリアAR上に停止している走行装置20が、その後続の走行装置20の走行の妨げになることもない。
【0050】
その後、停車エリアARにて停止した走行装置20は、それぞれ所定時間が経過するまでその停車エリアARで待機する(ステップS4-2)。図5及び図6に示した例において、各停車エリアARには充電器40が設けられており、この充電器40は電磁誘導によって電力を供給するための送電用コイル(図示省略)を備える。停車エリアARで停止した走行装置20は、その待機時間中、各停車エリアARの充電器40の送電用コイルから供給された電力を受電用コイル26によって受け取り、その電力を整流回路などを経由してバッテリ25へと供給する。これにより、走行装置20が停車エリアARにて待機している間、バッテリ25が非接触で充電される。走行装置20を停車エリアARで待機させる時間は適宜調整可能であるが、例えば30秒~5分程度とするとよい。
【0051】
停車エリアARでの所定時間の待機を終えると、各走行装置20は発進し、再び自由走行ステップ(S1)に移行する。停車ステップ(S4)から自由走行ステップ(S1)に移行する際に、各走行装置20これまでの計算結果を破棄する。このようにして、各走行装置20は、すべて自己判断及び自己計算にて自由走行ステップ(S1)から停車ステップ(S4)を繰り返す。これにより、各走行装置20は、適時バッテリ25の充電を行いながら、経路10上で走行し続けることが可能となる。各走行装置20は、自己に実装されたアルゴリズムに従って走行と停止を行うものの、このアルゴリズムによれば、停車エリアARの収容台数を超えて走行装置20が集中することや、停止中の走行装置20が後続の走行装置20の走行を妨げることなどを回避することができる。また、このアルゴリズムは、各走行装置20による距離の測定や計算に多少の誤差があったとしても、それを許容することができるため、システム全体の走行装置20の流れを適切に維持することができる。
【0052】
以上、本願明細書では、本発明の内容を表現するために、図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。
【0053】
例えば、前述した実施形態では、走行装置20の走行制御手段として、2つのモータ22を独立して制御することにより走行装置20の進行方向を調整するという手段を採用した。ただし、走行装置20の走行制御手段はこれに限られない。例えば、駆動輪23(後輪)を回転させるモータ22の他に、一又は複数の従動輪24(前輪)の向き(ヨー角)を回動させるための操舵用モータを設け、この操舵用モータで従動輪の向きを制御することにより、走行装置20全体の進行方向を調整することも可能である。走行装置20の進行方向は従動輪24の向きによって決まることとなる。なお、この場合、駆動輪23(後輪)を回転させる2つのモータ22を独立制御する必要はなく、単純に同じ回転数かつ同じ回転方向とすればよい。その他、走行装置20の走行制御手段は公知のものを採用することが可能である。
【0054】
また、例えば、前述した実施例では、各停車エリアARに充電器40を設けることとしているが、必ずしも停車エリアARに充電器40を設ける必要はない。例えば、複数の走行装置20が経路10上を連続的走行していると、各走行装置20の速度差などによって部分的に走行装置20が密集したり、反対に走行装置20の間が離れすぎたりすることがある。このとき、本発明により、各走行装置20を一時停止させた後、経路10上に設けられた停車エリアARに分散させてそこで一時的に待機させることで、経路10上において走行装置20が走行する間隔を適度に調整することができる。
【符号の説明】
【0055】
10…経路 11…鏡面
12…フィルム 13…誘導線
20…走行装置 21…制御装置
21a…プロセッサ 21b…メモリ
21c…無線モジュール 21d…駆動制御回路
21e…センサ制御回路 21f…発光制御回路
22…モータ 23…駆動輪
24…従動輪 25…バッテリ
26…受電用コイル 27…センサ
27a…投光部 27b…受光部
27c…近接センサ 28…発光素子
29…カバー 30…基地局
40…充電器 100…走行システム
AR…停車エリア P…指定点
【要約】
【課題】上位の制御局からの制御に依らずに複数の走行装置を適切に既定経路上の複数の停車エリアにて停止させる。
【解決手段】複数の走行装置20は、それぞれ、既定の経路10上の指定点Pまでの距離を測定するための測距部と、前方の別の走行装置20に近接していることを検知する検知部と、所定のアルゴリズムに基づいて発進と停止を制御する制御部を有する。制御部は、自己の走行装置20が指定点Pに到達したか又は前方の別の走行装置20に近接したことを検知したときに自己の走行装置20を一時停止させ、一時停止中に指定点Pまでの距離を算出し、指定点Pまでの距離に基づいて自己の走行装置20が属するグループを推定し、グループの情報に基づいて停車エリアARで停止するための停止情報を求め、停止情報に基づいて自己の走行装置20を停車エリアARで停止させる。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6