(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】パック電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/48 20060101AFI20240416BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240416BHJP
H02H 7/18 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
H01M10/48 301
H02J7/00 S
H02H7/18
H01M10/48 P
(21)【出願番号】P 2020057999
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】草茅 佑亮
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-239989(JP,A)
【文献】特開2015-173568(JP,A)
【文献】特開2015-154606(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/48
H02J 7/00
H02H 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電器に接続されることで充電され、負荷に接続されることにより放電するパック電池であって、
一対の電源端子、及び温度端子からなる充放電端子と、
前記一対の電源端子を介して充放電を行う二次電池と、
前記二次電池の充放電電流を測定する電流計測部と、
前記温度端子に接続されると共に前記二次電池の電池温度を測定するサーミスタと、
前記サーミスタを動作させる印加電圧を間欠的に前記温度端子に出力する電圧切替部と、
前記印加電圧のON期間及びOFF期間における前記温度端子の電圧、並びに前記充放電電流に基づいて、前記充放電端子の接続状態を認識する制御部と、を備えるパック電池。
【請求項2】
前記制御部は、前記印加電圧がOFF期間のときの前記温度端子の電圧から前記電池温度が算出可能であることを条件として、前記充電器の接続を認識する、請求項1に記載のパック電池。
【請求項3】
前記制御部は、前記充電器の接続を認識した場合において、前記充放電電流の向きが充電方向であることを条件として、前記充電器が充電制御状態であることを認識する、請求項2に記載のパック電池。
【請求項4】
前記制御部は、前記充電器の接続を認識した場合において、前記充放電電流の向きが放電方向であることを条件として、前記充電器がリフレッシュ放電制御状態であることを認識する、請求項2に記載のパック電池。
【請求項5】
前記制御部は、前記印加電圧がOFF期間のときの前記温度端子の電圧から前記二次電池の温度を算出不可能で且つ前記充放電電流が測定されたことを条件として、前記負荷の接続を認識する、請求項1乃至4のいずれかに記載のパック電池。
【請求項6】
前記制御部は、前記負荷の接続を認識した場合において、前記充放電電流の向きが放電方向であることを条件として、前記負荷が電力消費状態であることを認識する、請求項5に記載のパック電池。
【請求項7】
前記制御部は、前記負荷の接続を認識した場合において、前記充放電電流の向きが充電方向であることを条件として、前記負荷が回生制御状態であることを認識する、請求項5に記載のパック電池。
【請求項8】
前記制御部は、前記印加電圧がOFF期間のときの前記温度端子の電圧から前記電池温度を算出不可能で且つ前記充放電電流が測定されないことを条件として、前記充放電端子の接続がないことを認識する、請求項1乃至7のいずれかに記載のパック電池。
【請求項9】
前記制御部は、前記印加電圧がON期間のときの前記温度端子の電圧から前記電池温度を算出不可能であることを条件として、前記サーミスタの測定異常を認識する、請求項1乃至8のいずれかに記載のパック電池。
【請求項10】
前記制御部は、前記印加電圧がON期間のときの前記温度端子の電圧から算出される前記電池温度が所定の正常温度範囲にないことを条件として、前記二次電池の充放電を禁止する、請求項1乃至9のいずれかに記載のパック電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パック電池に関する。
【背景技術】
【0002】
充電器に接続されることにより充電され、負荷装置に接続されることにより放電するパック電池が知られている。例えば特許文献1には、充放電を担うプラス端子及びマイナス端子に加え、温度端子を含む3つの電極端子を備えるパック電池が開示されている。このような3端子のパック電池は、内部の二次電池の電池温度を測定するためのサーミスタと電極端子とが接続されるように設けられている。このため、充電器は、パック電池の電極端子が接続された場合に、電極端子に所定の電圧を印加し、サーミスタの抵抗値の変化に基づいて二次電池の電池温度を測定することができ、当該電池温度に応じた充電制御を行うことができる。
【0003】
ここで、3端子のパック電池を充電するための一般的な充電器は、充電を制御するための制御部を有しないパック電池に対しても、上記のような温度端子を用いた充電器側のみの充電制御を行うことができるため、端子同士が接続可能である限り汎用充電器として使用することができる。
【0004】
また、特許文献1に開示されたパック電池は、電池電圧及び電池温度により充電状態を制御するための制御回路が設けられ、個々の電池セルの電池電圧に応じてパック電池側においても充電制御を管理できるよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような充電器は、パック電池に接続されている場合に必ずしも充電制御状態であるとは限らず、例えばリフレッシュ放電が可能なタイプである場合には二次電池を放電させる制御状態である可能性もある。上記のパック電池では、このような場合であっても接続先の状態を認識することができないため、例えば充電器の制御状態に応じて二次電池の保護を行うことができない虞が生じる。また、パック電池は、上記のように電極端子に対して充電器だけでなく負荷が接続される可能性があるものの、上記の従来技術では負荷の接続状態と未接続状態とを識別することができず、更には負荷の制御状態を認識することもできないため、これらの状況に応じて二次電池の保護を行うことができない虞が生じる。
【0007】
ここで、充電器とパック電池とを接続する電極端子が上記の3端子に加えて更に通信用の端子を備える場合には、双方の制御部同士が状態認識を共有することができる。しかしながら、このような4端子の電極端子を有するパック電池は、通信形式が共通の専用充電器でしか充電できないため、上記のような汎用充電器を使用して充電することができなくなってしまう。
【0008】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電極端子が3端子であっても接続先の状態を認識することができるパック電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
<本発明の第1の態様>
本発明の第1の態様は、充電器に接続されることで充電され、負荷に接続されることにより放電するパック電池であって、一対の電源端子、及び温度端子からなる充放電端子と、前記一対の電源端子を介して充放電を行う二次電池と、前記二次電池の充放電電流を測定する電流計測部と、前記温度端子に接続されると共に前記二次電池の電池温度を測定するサーミスタと、前記サーミスタを動作させる印加電圧を間欠的に前記温度端子に出力する電圧切替部と、前記印加電圧のON期間及びOFF期間における前記温度端子の電圧、並びに前記充放電電流に基づいて、前記充放電端子の接続状態を認識する制御部と、を備えるパック電池である。
【0010】
<本発明の第2の態様>
本発明の第2の態様は、上記した本発明の第1の態様において、前記制御部は、前記印加電圧がOFF期間のときの前記温度端子の電圧から前記電池温度が算出可能であることを条件として、前記充電器の接続を認識する、パック電池である。
【0011】
<本発明の第3の態様>
本発明の第3の態様は、上記した本発明の第2の態様において、前記制御部は、前記充電器の接続を認識した場合において、前記充放電電流の向きが充電方向であることを条件として、前記充電器が充電制御状態であることを認識する、パック電池である。
【0012】
<本発明の第4の態様>
本発明の第4の態様は、上記した本発明の第2の態様において、前記制御部は、前記充電器の接続を認識した場合において、前記充放電電流の向きが放電方向であることを条件として、前記充電器がリフレッシュ放電制御状態であることを認識する、パック電池である。
【0013】
<本発明の第5の態様>
本発明の第5の態様は、上記した本発明の第1乃至4のいずれかの態様において、前記制御部は、前記印加電圧がOFF期間のときの前記温度端子の電圧から前記二次電池の温度を算出不可能で且つ前記充放電電流が測定されたことを条件として、前記負荷の接続を認識する、パック電池である。
【0014】
<本発明の第6の態様>
本発明の第6の態様は、上記した本発明の第5の態様において、前記制御部は、前記負荷の接続を認識した場合において、前記充放電電流の向きが放電方向であることを条件として、前記負荷が電力消費状態であることを認識する、パック電池である。
【0015】
<本発明の第7の態様>
本発明の第7の態様は、上記した本発明の第5の態様において、前記制御部は、前記負荷の接続を認識した場合において、前記充放電電流の向きが充電方向であることを条件として、前記負荷が回生制御状態であることを認識する、パック電池である。
【0016】
<本発明の第8の態様>
本発明の第8の態様は、上記した本発明の第1乃至7のいずれかの態様において、前記制御部は、前記印加電圧がOFF期間のときの前記温度端子の電圧から前記電池温度を算出不可能で且つ前記充放電電流が測定されないことを条件として、前記充放電端子の接続がないことを認識する、パック電池である。
【0017】
<本発明の第9の態様>
本発明の第9の態様は、上記した本発明の第1乃至8のいずれかの態様において、前記制御部は、前記印加電圧がON期間のときの前記温度端子の電圧から前記電池温度を算出不可能であることを条件として、前記サーミスタの測定異常を認識する、パック電池である。
【0018】
<本発明の第10の態様>
本発明の第10の態様は、上記した本発明の第1乃至9のいずれかの態様において、前記制御部は、前記印加電圧がON期間のときの前記温度端子の電圧から算出される前記電池温度が所定の正常温度範囲にないことを条件として、前記二次電池の充放電を禁止する、パック電池である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電極端子が3端子であっても接続先の状態を認識することができるパック電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】温度測定ラインの電圧範囲を模式的に表す図である。
【
図3】測定用スイッチのON/OFF期間に対する温度測定ラインの電圧、及び温度測定期間の関係を模式的に表すタイミングチャートである。
【
図4】パック電池及び負荷の接続形態を示す模式図である。
【
図5】パック電池の制御部が実行する状態認識の制御手順を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照し、発明の実施形態について詳細に説明する。なお、発明は以下に説明する内容に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において任意に変更して実施することが可能である。また、実施の形態の説明に用いる図面は、いずれも構成部材を模式的に示すものであって、理解を深めるべく部分的な強調、拡大、縮小、または省略などを行っており、構成部材の縮尺や形状等を正確に表すものとはなっていない場合がある。
【0022】
図1は、パック電池1の概略構成を表す構成図である。パック電池1は、主要構成として充放電端子1a、二次電池10、電流計測部11、サーミスタ12、レギュレータ13、電圧切替部14、及び制御部15を備える。そして、パック電池1は、汎用充電器としての充電器2に接続されることで充電され、後述する負荷3に接続されることにより放電して負荷3に電力を供給する。
【0023】
充放電端子1aは、正極端子B+、負極端子B-、及び温度端子THから構成され、正極端子B+及び負極端子B-からなる一対の電源端子を介してパック電池1の充放電が行われる。また、温度端子THは、後述するサーミスタ12に接続され、充電器2から所定の印加電圧Va(一般的には5V)が入力されることにより二次電池10の電池温度Tbatに応じた電圧となることで、充電器2に当該電池温度Tbatを認識させる。
【0024】
ここで、充電器2は、充放電端子1aに接続可能な充電ポート2aを有する汎用充電器である。充電ポート2aは、パック電池1と同様に正極端子B+、負極端子B-、及び温度端子THから構成される。充電器2は、内部の充電制御部2bによる制御に基づいて、内部電源Vregを充電器内抵抗器Rcで降圧することにより形成した印加電圧Vaを温度端子THから出力し、パック電池1の内部における二次電池10の電池温度Tbatを測定する。これにより、充電器2は、電池温度Tbatを監視しながら正極端子B+及び負極端子B-を介して二次電池10を充電することができる。
【0025】
二次電池10は、例えばニッケル水素電池やリチウムイオン電池からなり、本実施形態においては複数の電池セルが直列に接続されてなる組電池として構成されている。二次電池10は、正極及び負極が充放電端子1aの正極端子B+及び負極端子B-にそれぞれ導通するよう構成されている。
【0026】
ここで、二次電池10の正極は、本実施形態においては、正極端子B+から充電用スイッチSWc、第1ダイオードD1、及び第1ヒューズF1を介して充電電流Icが供給される充電経路と、第1ヒューズF1、第2ダイオードD2、及び放電用スイッチSWdを介して正極端子B+へ放電電流Idを供給する放電経路が構成されている。充電用スイッチSWc及び放電用スイッチSWdは、例えばNチャネル型のMOSFET(Metal-Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)であり、ゲートが後述する制御部15により制御されることで、必要に応じて充電及び放電をそれぞれ停止させることができる。
【0027】
また、二次電池10の負極は、本実施形態においては、電流計測部11を介して負極端子B-に接続されている。電流計測部11は、第1抵抗器R1及びオペアンプOPからなり、二次電池10の充放電電流Iに伴う第1抵抗器R1における電圧降下に基づいて、オペアンプOPにより充放電電流Iが測定される。尚、充放電電流Iは、電流の向きにより測定値の符号が異なるため、充電方向であるか放電方向であるかによって充電電流Ic及び放電電流Idが判別される。
【0028】
サーミスタ12は、一端部が温度端子THに接続されると共に他端部が接地され、二次電池10に隣接して設けられる。サーミスタ12は、一端部に所定の印加電圧Vaが入力された場合に、二次電池10の電池温度Tbatに応じて抵抗値が変化するため、そのときの一端部の電圧により二次電池10の電池温度Tbatを表すことができる。本実施形態においては、温度端子TH及びサーミスタ12に接続されることにより電圧が共通となる導電路を、温度測定ラインLTとして表すこととする。
【0029】
レギュレータ13は、パック電池1の制御動作に必要な電力を形成する内部電源である。より具体的には、レギュレータ13は、充電器2又は二次電池10から第3ダイオードD3及び第2ヒューズF2を介して入力される入力電圧Vinを降圧し、パック電池1において電力が必要な部分に所定の出力電圧Voutを出力する。本実施形態においては、レギュレータ13は、電圧切替部14及び制御部15に出力電圧Voutを供給する。ここで、レギュレータ13は、いわゆるリニアレギュレータであってもよく、又はスイッチングレギュレータであってもよい。
【0030】
電圧切替部14は、第2抵抗器R2及び測定用スイッチSWmの直列接続体からなり、レギュレータ13の出力電圧Voutから形成される電圧を上記した温度測定ラインLTに出力する。測定用スイッチSWmは、例えばNチャネル型のMOSFETであり、ドレインが第2抵抗器R2を介してレギュレータ13に接続され、ソースが温度測定ラインLTに接続されると共に、ゲートが後述する制御部15に接続されている。
【0031】
ここで、電圧切替部14は、サーミスタ12を動作させるための上記した印加電圧Vaと同じ電圧を温度測定ラインLTに出力できるよう第2抵抗器R2の抵抗値が設定され、制御部15からのON/OFF制御に基づいて当該印加電圧Vaを間欠的にサーミスタ12に出力する。
【0032】
制御部15は、例えば公知のマイコン制御回路からなり、電池温度Tbatや充電状態(SOC:State Of Charge)等の二次電池10の状態を把握すると共に、詳細を後述するように充放電端子1aの接続有無等を認識し、状況に応じて二次電池10の充放電制御を実行するなど、パック電池1の全体を統括管理する。
【0033】
また、制御部15は、電源入力端子Vcc、パルス出力端子POUT、温度測定端子THIN、電流測定端子IIN、及び接地端子を備える。これにより制御部15は、電源入力端子Vccにレギュレータ13の出力電圧Voutが供給されることで動作し、パルス出力端子POUTにより測定用スイッチSWmのゲートを制御すると共に、温度測定端子THIN及び電流測定端子IINから入力される電圧に基づいて電池温度Tbat及び充放電電流Iを算出する。
【0034】
図2は、温度測定ラインL
Tの電圧範囲を模式的に表す図である。制御部15は、温度測定端子TH
INに入力される電圧に対応する二次電池10の電池温度Tbatを算出する。ただし、制御部15は、マイコン制御回路のビット数等の制約から、例えば
図2における電圧V1よりも低い電圧、又は電圧V6よりも高い電圧が温度測定端子TH
INに入力されたとしても認識できず、それぞれ電圧V1及び電圧V6のそのままの電圧として測定されることになる。つまり、制御部15は、温度測定ラインL
Tの電圧が電圧V1から電圧V6までの範囲で読取可能となる。
【0035】
また、制御部15は、温度測定ラインL
Tの電圧が読取可能範囲に含まれる場合に、当該電圧に対応する温度を算出するが、
図2における電圧V1から電圧V2までの範囲、又は電圧V5から電圧V6までの範囲のように、算出された温度が二次電池10の温度として想定し得ない範囲である場合には、電池温度Tbatが算出不可能な範囲であると判断する。つまり、制御部15は、温度測定ラインL
Tの電圧が電圧V2から電圧V5までの範囲で電池温度Tbatの温度算出が可能となる。尚、本実施形態における制御部15は、仮に電池温度Tbatが異常に発熱した場合であっても、二次電池10の実際の温度が測定されている限り、温度算出可能範囲であると判断することとしている。
【0036】
更に、制御部15は、温度測定ラインLTの電圧が温度算出範囲に含まれる場合に、算出された温度が二次電池10の動作温度として適正である場合には正常温度範囲であると判断する。
【0037】
尚、温度測定ラインLTの電圧と電池温度Tbatとの対応関係によっては、上記の読取可能範囲と温度算出可能範囲とが一致してもよい(V1=V2、V5=V6)。この場合には、温度測定ラインLTの電圧が温度算出可能範囲になければ、下限値である電圧V2(=V1)、又は上限値である電圧V5(=V6)が温度測定端子THINに入力されることになる。
【0038】
次に、制御部15が実行する温度測定のタイミングについて説明する。
図3は、測定用スイッチSWmのON/OFF期間に対する温度測定ラインL
Tの電圧、及び温度測定期間の関係を模式的に表すタイミングチャートである。ここでは、繰り返しON/OFF制御される測定用スイッチSWmについて、第1期間term1及び第3期間term3がON期間であり、第2期間term2及び第4期間term4がOFF期間である。また、温度測定ラインL
Tの電圧は、少なくとも温度算出可能範囲に含まれているものとする。
【0039】
尚、
図3においては、制御部15は、測定用スイッチSWmのON期間及びOFF期間が等間隔で、それぞれの期間において3回ずつ電池温度Tbatを算出することとしている。しかし、測定用スイッチSWmの制御間隔、及び電池温度Tbatを算出するタイミングは、
図3の形態に限定されるものではない。例えば、測定用スイッチSWmについてはON期間を50msとし、OFF期間を950msとしてもよく、また、電池温度Tbatの測定についてはON期間を50msとし、OFF期間を225msとする動作周期に設定してもよい。
【0040】
パック電池1の充放電端子1aと充電器2の充電ポート2aとが接続されている場合、温度測定ラインL
Tは、温度端子THを介して印加電圧Vaが定常的に入力されることにより、
図3(A)に示すように電池温度Tbatに応じた電圧Vbatで安定することになる。
【0041】
このため、制御部15は、
図3(B)に示すように、測定用スイッチSWmがON期間であるかOFF期間であるかを問わず、温度測定ラインL
Tの電圧に基づいて電池温度Tbatを測定することができる。
【0042】
一方、充電器2がパック電池1に接続されていない場合、温度測定ラインL
Tの電圧は、
図3(C)に示すように、測定用スイッチSWmのON期間である第1期間term1及び第3期間term3において電圧Vbatを示し、OFF期間である第2期間term2及び第4期間term4において0V、すなわち温度算出可能範囲から外れた電圧値を示すことになる。
【0043】
このため、制御部15は、
図3(D)に示すように、測定用スイッチSWmのOFF期間においては、温度測定ラインL
Tの電圧に基づいて電池温度Tbatを測定することができないことなる。
【0044】
つまり、制御部15は、測定用スイッチSWmがOFF期間のときの温度測定ラインLTの電圧に基づいて電池温度Tbatが算出できるか否かによって、充電器2がパック電池1に接続されているか否かを認識することができる。
【0045】
また、制御部15は、測定用スイッチSWmがON期間のときの温度測定ラインLTの電圧に基づいて電池温度Tbatが算出できるか否かを確認し、算出された電池温度Tbatが温度算出可能範囲から外れている場合には、サーミスタ12における測定異常であると認識することができる。これは例えば、サーミスタ12自体が故障した場合や、二次電池10からサーミスタ12が外れた場合等に生じ得る。
【0046】
続いて、パック電池1に負荷3が接続された場合について説明する。
図4は、パック電池1及び負荷3の接続形態を示す模式図である。パック電池1の構成については
図1と同一であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0047】
負荷3は、パック電池1の充放電端子1aに接続可能な電源ポート3aを有し、電源ポート3aに備えられる正極端子B+及び負極端子B-が充放電端子1aの正極端子B+及び負極端子B-にそれぞれ接続されることにより、パック電池1から電力供給を受けることができる。尚、電源ポート3aは、負荷3が二次電池10の電池温度Tbatを認識することがないため、温度端子THが設けられていない。
【0048】
負荷3は、より具体的には、電源ポート3aが充放電端子1aに接続された場合に、パック電池1の二次電池10から上記した放電経路を介して供給される電力により駆動する。また、負荷3は、回生駆動が可能である場合には、正極端子B+及び負極端子B-の間に回生電力を出力することで、上記した充電経路を介して当該回生電力をパック電池1に供給し、二次電池10を充電することができる。
【0049】
すなわち、パック電池1は、充電器2が接続される状態、負荷3が接続される状態、及び何も接続されない状態があり、充電器2又は負荷3が接続される場合には、更に充電電流Icが供給される状態及び放電電流Idを供給する状態があるため、これらの状態を認識して状態ごとの適切な制御を行う必要が生じる。以下では、パック電池1の状態認識を行う制御手順について説明する。
【0050】
図5は、パック電池1の制御部15が実行する状態認識の制御手順を表すフローチャートである。制御部15は、電源入力端子Vccに電力が供給されることにより起動し、二次電池10に標準的な充放電制御を行うと共に、
図5に示す制御手順を開始することにより充放電端子1aに係る状態認識を行い、認識される状態に応じて適切な充放電制御を行う。尚、制御部15は、制御手順の実行中において、二次電池10の電池温度Tbatが例えば正常温度範囲外で且つ温度算出可能範囲内である場合など、各種動作異常が確認された場合には、二次電池10の充放電を禁止すると共に当該制御手順を終了し、例えばユーザにエラー状態を通知してもよい。
【0051】
制御部15は、まず、パルス出力端子POUTからの制御信号により測定用スイッチSWmの連続的なON/OFF制御を開始する(ステップS1)。これにより、温度測定ラインLTには、5Vの印加電圧Vaが電圧切替部14から間欠的に出力される。
【0052】
また、制御部15は、温度測定端子TH
INにより、
図3で説明したような温度測定ラインL
Tの電圧測定を開始する(ステップS2)。すなわち制御部15は、ステップS2において電圧測定が開始されることにより、起動中における以降の処理では常に二次電池10の電池温度Tbatの算出を試みることになる。
【0053】
そして、制御部15は、電圧切替部14から温度測定ラインL
Tへ出力する印加電圧VaがON期間であるときの温度端子THの電圧、すなわち温度測定ラインL
Tの電圧により電池温度Tbatの算出が可能であるか否かを判定する(ステップS3、
図3における第1期間term1及び第3期間term3)。
【0054】
このとき、制御部15は、温度測定ラインLTへ印加電圧Vaが出力されているON期間であるにも拘らず電池温度Tbatの算出が不可能である場合には(ステップS3でNo)、サーミスタ12に異常があるものと判断し(ステップS4)、充放電制御を停止すると共に当該制御手順を終了する。一方、制御部15は、印加電圧VaのON期間に電池温度Tbatの算出が可能である場合には(ステップS3でYes)、サーミスタ12における温度測定には異常ないものとして当該制御手順を継続する。
【0055】
次に、制御部15は、電圧切替部14からの印加電圧VaがOFF期間であるときの温度端子THの電圧、すなわち温度測定ラインL
Tの電圧により電池温度Tbatの算出が可能であるか否かを判定する(ステップS5、
図3における第2期間term2及び第4期間term4)。
【0056】
このとき、制御部15は、電池温度Tbatの算出が可能である場合には(ステップS5でYes)、充電器2から温度端子THを介して温度測定ラインLTに印加電圧Vaが印加されているものと判断することができる。すなわち、制御部15は、電圧切替部14からの印加電圧VaがOFF期間のときの温度端子THの電圧から電池温度Tbatの算出が可能であることを条件として、充電器2の接続状態を認識する。
【0057】
そして、制御部15は、電流測定端子IINから入力される電圧に基づいて充放電電流Iの向きを判定し(ステップS6)、充放電電流Iが充電電流Icである場合には(ステップS6でYes)、充電器2の接続状態で且つ充電器2が充電制御状態であることを認識することができる(ステップS7)。
【0058】
また、制御部15は、充放電電流Iが放電電流Idである場合には(ステップS6でNo)、充電器2の接続状態で且つ充電器2がリフレッシュ放電制御状態であることを認識することができる(ステップS8)。すなわち、制御部15は、充電器2にリフレッシュ放電の機能が備わっている場合であっても、当該リフレッシュ放電制御状態を認識することができる。
【0059】
一方、ステップS5においてNoと判定された場合には、制御部15は、少なくとも充電器2が接続されていないこと判断し、次に電流測定端子IINから入力される電圧に基づいて充放電電流Iが放電電流Idであるか否かを判定する(ステップS9)。
【0060】
そして、制御部15は、充放電電流Iが放電電流Idであると判定された場合には(ステップS9でYes)、負荷3の接続状態で且つ負荷3が電力消費状態であることを認識することができる(ステップS10)。
【0061】
これに対し、制御部15は、充放電電流Iが放電電流Idでないと判定された場合には(ステップS9でNo)、充放電電流Iが充電電流Icであるか否かを判定する(ステップS11)。このとき、充放電電流Iが充電電流Icであると判定された場合には(ステップS11でYes)、制御部15は、負荷3の接続状態で且つ負荷3が回生制御状態であることを認識することができる(ステップS12)。
【0062】
また、ステップS11においてNoと判定された場合には、制御部15は、充放電電流Iが測定されていないことから、充電器2及び負荷3がいずれも接続されていない状態であることを認識することができる(ステップS13)。すなわち、制御部15は、電圧切替部14からの印加電圧VaがOFF期間のときの温度端子THの電圧から電池温度Tbatの算出が不可能で且つ充放電電流Iが測定されたことを条件として、充電器2の接続状態を認識することができる。
【0063】
更に制御部15は、それぞれの接続状態及び接続先の制御状態を認識した後ステップS3に戻り、上記のルーチンを繰り返すことにより、起動中において異常停止しない限り状態認識を継続的に行うことができる。
【0064】
そのため、制御部15は、充電器2による充電制御、又は負荷3からの電力要求などの接続先の制御状態のみに任せるのではなく、二次電池10の状態をより詳細に把握できるパック電池1側においても二次電池10の充放電を管理することができる。
【0065】
より具体的には、制御部15は、例えば充電器2の接続状態で且つ充電器2が充電制御状態である状況下において(ステップS7)、充電電流Icを監視し、充電電流Icが規定の充電電流上限値よりも上昇した場合に充電用スイッチSWcをOFFに制御する。
【0066】
また、制御部15は、例えば充電器2の接続状態で且つ充電器2がリフレッシュ放電制御状態である状況下において(ステップS8)、二次電池10の電池電圧を監視し、電池電圧が規定の過放電閾値よりも低下した場合に、放電用スイッチSWdをOFFに制御する。
【0067】
更に、制御部15は、例えば負荷3の接続状態で且つ負荷3が電力消費状態である状況下において(ステップS10)、放電電流Idを監視し、放電電流Idが規定の放電電流上限値よりも上昇した場合に、放電用スイッチSWdをOFFに制御する。
【0068】
そして、制御部15は、例えば負荷3の接続状態で且つ負荷3が回生制御状態である状況下において(ステップS12)、二次電池10の電池電圧を監視し、電池電圧が規定の過充電閾値よりも上昇した場合に、充電用スイッチSWcをOFFに制御する。
【0069】
また、制御部15は、例えば充電器2及び負荷3のいずれも接続されていない状況下において(ステップS13)、充放電電流Iが0の状態が所定期間だけ継続した場合に、スリープ状態に移行して待機電力を抑制することができる。
【0070】
以上のように、パック電池1は、サーミスタ12を動作させる印加電圧Vaを間欠的に温度端子THに出力すると共に、印加電圧VaのON期間及びOFF期間における温度端子THの電圧、並びに充放電電流Iに基づいて、充放電端子1aの接続状態を認識する。従って、パック電池1は、充放電端子1aが3端子であっても接続先の状態を認識することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 パック電池
2 充電器
3 負荷
10 二次電池
11 電流計測部
12 サーミスタ
13 レギュレータ
14 電圧切替部
15 制御部
1a 充放電端子
B+ 正極端子
B- 負極端子
TH 温度端子
LT 温度測定ライン