(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】光拡散板及び立体成形品
(51)【国際特許分類】
G02B 5/02 20060101AFI20240416BHJP
F21V 3/06 20180101ALI20240416BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20240416BHJP
【FI】
G02B5/02 B
F21V3/06 130
F21Y115:30
(21)【出願番号】P 2018056368
(22)【出願日】2018-03-23
【審査請求日】2021-02-26
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2017252469
(32)【優先日】2017-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000165088
【氏名又は名称】恵和株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【氏名又は名称】池田 義典
(72)【発明者】
【氏名】鋤柄 正幸
(72)【発明者】
【氏名】岡部 元彦
(72)【発明者】
【氏名】蔡 承亨
【合議体】
【審判長】里村 利光
【審判官】井口 猶二
【審判官】関根 洋之
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-111713(JP,A)
【文献】国際公開第2016/063792(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面が鏡面、他方の面がマット面で形成されている光拡散板であって、
樹脂マトリックスと、この樹脂マトリックス中に分散する拡散剤と
からなり、
上記樹脂マトリックスが芳香族ポリカーボネートであり、
上記拡散剤がシリコーン系拡散剤であり、
上記樹脂マトリックス100質量部に対する上記シリコーン系拡散剤の含有量が1.
7質量部以上
3.9質量部以下であり、
上記シリコーン系拡散剤の平均粒子径が0.
9μm以上
4.9μm以下であり、
上記一方の面から波長450nmのレーザー光を入射する場合における出射光の輝度分布の半値全幅が
1.0mm
超であり、
上記一方の面における算術平均粗さRaが0.029μm以下で
、上記他方の面における算術平均粗さRaが3.6μm以下であり、
平均厚さが0.7mm以上2.0mm以下である光拡散板。
【請求項2】
一方の面が鏡面、他方の面がマット面で形成されている光拡散板であって、
樹脂マトリックスと、この樹脂マトリックス中に分散する拡散剤及び酸化チタンとからなり、
上記樹脂マトリックスが芳香族ポリカーボネートであり、
上記拡散剤がシリコーン系拡散剤であり、
上記樹脂マトリックス100質量部に対する上記シリコーン系拡散剤の含有量が1.7質量部以上3.9質量部以下であり、
上記シリコーン系拡散剤の平均粒子径が0.9μm以上4.9μm以下であり、
上記一方の面から波長450nmのレーザー光を入射する場合における出射光の輝度分布の半値全幅が1.0mm超であり、
上記一方の面における算術平均粗さRaが0.029μm以下で、上記他方の面における算術平均粗さRaが3.6μm以下であり、
平均厚さが0.7mm以上2.0mm以下であり、
上記樹脂マトリックス100質量部に対する上記酸化チタンの含有量が0質量部超0.050質量部以下であ
る光拡散板。
【請求項3】
上記樹脂マトリックス100質量部に対する上記酸化チタンの含有量が0.010質量部以上0.0
35質量部以下である請求項2に記載の光拡散板。
【請求項4】
上記酸化チタンの平均粒子径が0.10μm以上0.30μm以下である請求項2又は請求項3に記載の光拡散板。
【請求項5】
上記一方の面から波長532nmのレーザー光を入射する場合における出射光の輝度分布の中心から半径1mm以内の領域を内領域とし、上記中心から半径4mm以上10mm以下の領域を外領域とした際の上記内領域の平均輝度(A2)に対する上記外領域の平均輝度(A1)の輝度比(A1/A2)が0.25以上であ
る請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の光拡散板。
【請求項6】
請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の光拡散板で構成される立体成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光拡散板及び立体成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
照明器具、液晶表示装置等には、光源からの光を均一に拡散させるために光拡散板が用いられる。このような光拡散板としては、形成材料としてポリカーボネートを用いた光拡散板が提案されている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1の光拡散板は、ポリカーボネート100質量部に対して粒子径が0.1μm以上10μm以下のシリコーンゴム粒子を0.01質量部以上10質量部以下含有させた光拡散板であり、耐衝撃性を損なわずに変色を少なくできるとされている。しかしながら、光拡散性能についてはさらなる検討が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、高い光拡散性能を示す光拡散板及び立体成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた発明の光拡散板は、樹脂マトリックスと、この樹脂マトリックス中に分散する拡散剤とを有し、上記樹脂マトリックスが芳香族ポリカーボネートであり、上記拡散剤がシリコーン系拡散剤であり、上記樹脂マトリックス100質量部に対する上記シリコーン系拡散剤の含有量が1.6質量部以上5.0質量部以下であり、上記シリコーン系拡散剤の平均粒子径が0.8μm以上10μm以下であり、波長450nmのレーザー光を入射する場合における出射光の輝度分布の半値全幅が0.9mm以上である。
【0007】
当該光拡散板は、芳香族ポリカーボネートとシリコーン系拡散剤とを混合した光拡散板である。当該光拡散板は、芳香族ポリカーボネート100質量部に対するシリコーン系拡散剤の含有量が上記範囲内であり、このシリコーン系拡散剤の平均粒子径が上記範囲内であるので、光学特性が良好である。そして、当該光拡散板は、波長450nmのレーザー光を入射する場合における出射光の輝度分布の半値全幅が上記下限以上であるので、高い光拡散性能を示す。
【0008】
当該光拡散板は、上記樹脂マトリックス中に分散する酸化チタンをさらに有し、上記樹脂マトリックス100質量部に対する上記酸化チタンの含有量が0質量部超0.050質量部以下であるとよい。これにより、当該光拡散板は、より高い光拡散性能を示す。
【0009】
当該光拡散板は、上記樹脂マトリックス100質量部に対する上記酸化チタンの含有量が0.010質量部以上0.035質量部以下であるとよい。これにより、当該光拡散板は、さらに高い光拡散性能を示す。
【0010】
当該光拡散板は、上記樹脂マトリックス100質量部に対する上記シリコーン系拡散剤の含有量が1.7質量部以上3.9質量部以下であり、上記シリコーン系拡散剤の平均粒子径が0.9μm以上4.9μm以下であるとよい。これにより、当該光拡散板は、さらに高い光拡散性能を示す。
【0011】
当該光拡散板は、平均厚さが0.5mm以上2.0mm以下であるとよい。これにより、当該光拡散板は、薄さと高い光拡散性能とを両立できる。
【0012】
上記課題を解決するためになされた別の発明の立体成形品は、上記光拡散板で構成される。
【0013】
当該立体成形品は、上記光拡散板で構成されるので、光学特性が良好であり、高い光拡散性能を示す。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明の光拡散板及び立体成形品は、高い光拡散性能を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の光拡散板及び立体成形品の実施形態について詳説する。
【0016】
[光拡散板]
当該光拡散板は、例えば照明カバー等の光源を有する家電製品や照明看板等の光源を有する業務用製品に用いられる光拡散板である。当該光拡散板は、厚みが略均一の板状であるが、片面又は両面が緩やかな凸レンズ形状に形成されてもよいし、片面又は両面が緩やかな凹レンズ形状に形成されてもよい。当該光拡散板は、樹脂マトリックスと、この樹脂マトリックス中に分散する拡散剤とを有している。また、当該光拡散板は、樹脂マトリックス中に分散する酸化チタンをさらに有している。
【0017】
当該光拡散板は、一方の面からの入射光を他方の面へ透過させる際に、この透過光を樹脂マトリックス中の拡散剤により拡散させることで出射光の均一化を図るものである。当該光拡散板は、特に限定されないが、押出成形品であるとよい。
【0018】
当該光拡散板の平均厚さの下限としては、0.5mmが好ましく、0.7mmがより好ましく、0.8mmがさらに好ましい。一方、当該光拡散板の平均厚さの上限としては、2.0mmが好ましく、1.5mmがより好ましく、1.2mmがさらに好ましい。当該光拡散板の平均厚さが上記下限に満たないと、当該光拡散板の拡散性能及び機械的強度が不足することにより十分な光拡散性が得られないおそれや、加工時、使用時等において割れが発生するおそれがある。逆に、当該光拡散板の平均厚さが上記上限を超えると、当該光拡散板を採用する機器が大型化するおそれがある。
【0019】
〔全光線透過率〕
当該光拡散板の全光線透過率の下限としては、60%が好ましく、61%がより好ましい。当該光拡散板の全光線透過率が上記下限に満たないと、当該光拡散板の光の透過量が低下して、出光量のロスが大きくなるおそれがある。なお、全光線透過率とは、JIS-K7105:1981に準拠して測定した値を意味する。
【0020】
〔表面粗さ〕
当該光拡散板の表面粗さ(Ra)の下限としては、0.01が好ましく、0.012がより好ましく、0.015がさらに好ましい。当該光拡散板の表面粗さ(Ra)が上記下限に満たないと、当該光拡散板の拡散性能不足することにより十分な光拡散性が得られないおそれがある。なお、「算術平均粗さRa」とは、JIS-B0601:2001に準じ、カットオフ(λc)2.5mm、評価長さ(l)12.5mmで測定される値を意味する。
【0021】
〔ヘイズ値〕
当該光拡散板のヘイズ値の下限としては、90%が好ましく、93.5%がより好ましく、94%がさらに好ましい。当該光拡散板のヘイズ値が上記下限に満たないと、当該光拡散板の拡散性能不足することにより十分な光拡散性が得られないおそれがある。なお、「ヘイズ値」とは、JIS-K7361:2000に準じて測定される値を意味する。
【0022】
当該光拡散板は、高い光拡散性能を示すように構成される。当該光拡散板は、光拡散性能を示す指標として、波長450nmのレーザー光を入射する場合における出射光の輝度分布の半値全幅を採用する。この半値全幅は、大きければ光拡散性能が高いことを示す。輝度分布の半値全幅を評価する具体的な方法としては、以下の手順が採用される。まず、ビーム径1mm、波長450nmのレーザーダイオードから発せられるレーザー光を平均厚さ1mmの光拡散板の使用時に光源側となる一方の面に対して垂直に入射させる。光拡散板を挟んでレーザーダイオードと対向するように配設された輝度測定カメラを用いて光拡散板の他方の面からの出射光の輝度分布を二次元で測定する。そして、測定された二次元の輝度分布から最大輝度を示す中央位置を含む一次元の断面輝度分布を取得し、取得した一次元の断面輝度分布から半値全幅を算出する。
【0023】
波長450nmのレーザー光を入射する場合における出射光の輝度分布の半値全幅は、上述の通り、大きければ大きい程好ましい。一方、上記半値全幅の下限は、0.9mmであり、1.0mmが好ましく、1.1mmがより好ましい。上記半値全幅が上記下限に満たないと、光拡散性能が不足するおそれがある。
【0024】
<樹脂マトリックス>
当該光拡散板を形成している樹脂マトリックスは、芳香族ポリカーボネートである。すなわち、樹脂マトリックスに対するポリカーボネート系樹脂の含有量は100質量%である。当該光拡散板は、樹脂マトリックスとして芳香族ポリカーボネートを採用するので、透明性、耐衝撃性、難燃性、寸法安定性に優れる。
【0025】
<拡散剤>
樹脂マトリックス中に分散する拡散剤は、透明又は半透明の略球状の粒子であり、樹脂マトリックス中の透過光を拡散させる機能を有している。当該光拡散板の拡散剤は、シリコーン系拡散剤である。シリコーン系拡散剤としては、例えばシリコーンリジン、シリコーンゴム又はこれらの組み合わせ等が用いられる。当該光拡散板は、拡散剤としてシリコーン系拡散剤を採用するので、透明性、光拡散性に優れる。
【0026】
樹脂マトリックス100質量部に対するシリコーン系拡散剤の含有量の下限は、1.6質量部であり、1.7質量部が好ましく、2.0質量部がより好ましい。一方、上記含有量の上限は、5.0質量部であり、3.9質量部が好ましく、3.0質量部がより好ましい。上記含有量が上記下限に満たないと、十分な光拡散性が得られないおそれがある。逆に、上記含有量が上記上限を超えると、当該光拡散板の透明性が低下するおそれや当該光拡散板の機械的強度が不足するおそれがある。
【0027】
シリコーン系拡散剤の平均粒子径の下限は、0.8μmであり、0.9μmが好ましく、1.0μmがより好ましい。一方、シリコーン系拡散剤の平均粒子径の上限は、10μmであり、4.9μmが好ましく、3.0μmがより好ましい。シリコーン系拡散剤の平均粒子径が上記下限に満たないと、十分な光拡散性が得られないおそれがある。逆に、シリコーン系拡散剤の平均粒子径が上記上限を超えると、当該光拡散板の透明性が低下するおそれや樹脂マトリックス中の透過光が均一に拡散されないおそれがある。
【0028】
<酸化チタン>
酸化チタンは、略球状の粒子であり、当該光拡散板の光拡散性能及び白色度を高める機能を有している。
【0029】
樹脂マトリックス100質量部に対する酸化チタンの含有量は0質量部超であり、上記含有量の下限としては、0.005質量部が好ましく、0.008質量部がより好ましく、0.010質量部がさらに好ましい。一方、上記含有量の上限としては、0.050質量部が好ましく、0.040質量部がより好ましく、0.035質量部がさらに好ましい。上記含有量が上記下限に満たないと、光拡散性能及び白色度が十分に向上しないおそれがある。逆に、上記含有量が上記上限を超えると、当該光拡散板の透明性が低下し、当該光拡散板の光拡散性能が低下するおそれがある。
【0030】
酸化チタンの平均粒子径の下限としては、0.05μmが好ましく、0.08μmがより好ましく、0.10μmがさらに好ましい。一方、酸化チタンの平均粒子径の上限としては、0.50μmが好ましく、0.40μmがより好ましく、0.30μmがさらに好ましい。酸化チタンの平均粒子径が上記下限に満たないと、十分な拡散性が得られないおそれがある。逆に、酸化チタンの平均粒子径が上記上限を超えると、樹脂マトリックス中の透過光が均一に拡散されないおそれがある。
【0031】
[光拡散板の製造方法]
当該光拡散板の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、樹脂材料、拡散剤及び酸化チタンを混合する工程と、押出成形装置を用いて混合工程後の混合物を押出成形する工程とを備える製造方法が採用できる。
【0032】
(利点)
当該光拡散板は、芳香族ポリカーボネート100質量部に対するシリコーン系拡散剤の含有量が上記範囲内であり、このシリコーン系拡散剤の平均粒子径が上記範囲内であるので、光学特性が良好である。そして、当該光拡散板は、波長450nmのレーザー光を入射する場合における出射光の輝度分布の半値全幅が上記下限以上であるので、高い光拡散性能を示す。また、当該光拡散板は、薄さと光拡散性能とを両立できる。
【0033】
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0034】
上記実施形態では、光拡散板が樹脂マトリックス中に分散する酸化チタンをさらに有しているものについて説明したが、光拡散板は酸化チタンを有していなくてもよい。すなわち、樹脂マトリックス100質量部に対する酸化チタンの含有量の下限は、0質量部であってもよい。しかしながら、光拡散板の光拡散性能及び白色度を高める観点から、上述の通り、光拡散板が酸化チタンをさらに有している方が好ましい。
【0035】
また、上記実施形態では、光拡散板のみについて説明したが、三次元形状を有する立体成形品の実施形態が検討されてもよい。すなわち、光拡散板で構成される立体成形品の形態が採用されてもよい。三次元形状を有する立体成形品としては、例えば照明用カバー、光源を内蔵するアクセサリー等が挙げられる。この立体成形品は、上述の光拡散板で構成されるので、光学特性が良好であり、高い光拡散性能を示す。なお、立体成形品の製造方法としては、例えば射出成形法が用いられる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0037】
[No.1~No.50の光拡散板]
以下の材料を用いてNo.1~No.50の光拡散板を作成した。光拡散板の作成手順は、次の通りである。まず、芳香族ポリカーボネート100質量部に対し、シリコーン系拡散剤を表1、表2又は表3に示す含有量添加した混合物をスクリュー径60mmのベント付単軸押出機に投入した。ベント付単軸押出機において、投入された混合物を250℃で溶融しつつ混錬した後、この温度でT-ダイ法により押出した。押出された板状の混錬物を130℃に調整されたマット面ロール及び鏡面ロールで挟んで冷却した後、さらに鏡面ロールで搬送しつつ冷却した。得られた光拡散板の平均厚さは1.0mmであった。なお、酸化チタンを含む光拡散板については、芳香族ポリカーボネートに対してシリコーン系拡散剤を添加する際に同時に酸化チタンを添加した。
【0038】
(芳香族ポリカーボネート)
三菱ガス化学株式会社の「ユーピロンS-3000」(メルトマスフローレート:15g/10分)
(シリコーン系拡散剤)
信越化学工業株式会社の「KMP-605」(シリコーン複合パウダー、平均粒子径:2.0μm)
信越化学工業株式会社の「KMP-590」(シリコーンレジンパウダー、平均粒子径:2.0μm)
信越化学工業株式会社の「KMP-701」(シリコーンレジンパウダー、平均粒子径:3.5μm)
信越化学工業株式会社の「X-52-7030」(シリコーン複合パウダー、平均粒子径:0.8μm)
信越化学工業株式会社の「KMP-600」(シリコーン複合パウダー、平均粒子径:5.0μm)
信越化学工業株式会社の「X-52-854」(シリコーン複合パウダー、平均粒子径:0.7μm)
信越化学工業株式会社の「KMP-601」(シリコーン複合パウダー、平均粒子径:12.0μm)
(酸化チタン)
石原産業株式会社の「CR-60」(平均粒子径:0.21μm)
【0039】
[光拡散板の評価]
作成したNo.1~No.50の光拡散板について、以下の測定機器を用いて光学評価及び輝度比評価を行った。
【0040】
(レーザーダイオード)
ソーラボジャパン株式会社の半導体レーザーモジュール「CPS450」(波長:450nm、出力:4.5mW、楕円ビームサイズ:3.2mm×1.0mm)
(レーザー光源)
サンワサプライ株式会社のグリーンレーザーポインター「LPG350」(波長:532nm、出力:1.0mW、ビーム径:1.0mm)
(輝度測定カメラ)
有限会社ハイランドの「RISA-COLOR/ONE」
【0041】
光学評価は、波長450nmのレーザー光を光拡散板の一方の面から入射させ、光拡散板の他方の面からの出射光の輝度分布を測定することにより行った。具体的には、レーザーダイオード及び輝度測定カメラを用い、レーザーダイオードから光拡散板の一方の面までの距離を10mmとし、光拡散板の他方の面から輝度測定カメラまでの距離を50mmとして出射光の輝度分布を二次元で測定した。そして、測定された輝度分布から最大輝度を示す中央位置を含み、かつレーザー光の楕円短径方向に一次元の断面輝度分布を取得し、取得した一次元の断面輝度分布から半値全幅を算出した。表1、表2又は表3には、算出された半値全幅を示している。
【0042】
輝度比評価は、波長532nmのレーザー光を光拡散板の一方の面から入射させ、光拡散板の他方の面からの出射光の輝度分布を測定することにより行った。具体的には、レーザー光源及び輝度測定カメラを用い、レーザー光源から光拡散板の一方の面までの距離を10mmとし、光拡散板の他方の面から輝度測定カメラまでの距離を50mmとして出射光の輝度分布を二次元で測定した。そして、測定された輝度分布について、中心から半径1mm以内の領域を内領域とし、中心から半径4mm以上10mm以下の領域を外領域とした場合の外領域の平均輝度と内領域の平均輝度との輝度比を算出した。表1、表2又は表3には、算出された輝度比を示している。
【0043】
【0044】
No.1~No.5の光拡散板は、樹脂マトリックス100質量部に対するシリコーン系拡散剤の含有量が1.7質量部以上3.9質量部以下の範囲内であり、シリコーン系拡散剤の平均粒子径が0.9μm以上4.9μm以下の範囲内である。No.1~No.5の光拡散板は、半値全幅が1.0mm超であり、輝度比が0.3以上であることが確認された。つまり、No.1~No.5の光拡散板は、十分な光拡散性能を示すといえる。
【0045】
No.6~No.10の光拡散板は、樹脂マトリックス100質量部に対するシリコーン系拡散剤の含有量が1.6質量部以上1.7質量部未満の範囲内又は3.9質量部超5.0質量部以下の範囲内である。No.6~No.10の光拡散板は、半値全幅が0.9mm以上1.0mm以下であり、輝度比が0.25以上0.3未満であることが確認された。つまり、No.6~No.10の光拡散板は、シリコーン系拡散剤の含有量が適切な範囲内にあるため、高い光拡散性能を示すといえる。
【0046】
No.11~No.14の光拡散板は、樹脂マトリックス100質量部に対するシリコーン系拡散剤の含有量が1.6質量部未満又は5.0質量部超である。No.11~No.14の光拡散板は、半値全幅が0.9mm未満であり、輝度比が0.25未満であることが確認された。つまり、No.11~No.14の光拡散板は、シリコーン系拡散剤の含有量が適切な範囲外にあるため、光拡散性能が不十分であるといえる。
【0047】
【0048】
No.15の光拡散板は、シリコーン系拡散剤の平均粒子径が3.5μmであり、0.9μm以上4.9μm以下の範囲内である。No.15の光拡散板は、半値全幅が1.0mm超であり、輝度比が0.3以上であることが確認された。つまり、No.1~No.5の光拡散板は、シリコーン系拡散剤の平均粒子径が0.9μm以上4.9μm以下の範囲内であるため、十分な光拡散性能を示すといえる。
【0049】
No.16の光拡散板は、シリコーン系拡散剤の平均粒子径が0.8μmであり、No.17の光拡散板は、シリコーン系拡散剤の平均粒子径が5.0μmであるため、No.16~No.17の光拡散板は、シリコーン系拡散剤の平均粒子径が0.8μm以上0.9μm未満の範囲内又は4.9μm超10μm以下の範囲内である。No.16~No.17の光拡散板は、半値全幅が0.9mm以上1.0mm以下であり、輝度比が0.25以上0.3未満であることが確認された。つまり、No.16~No.17の光拡散板は、シリコーン系拡散剤の平均粒子径が適切な範囲内にあるため、高い光拡散性能を示すといえる。
【0050】
No.18の光拡散板は、シリコーン系拡散剤の平均粒子径が0.7μmであり、No.19の光拡散板は、シリコーン系拡散剤の平均粒子径が12.0μmである。No.18~No.19の光拡散板は、半値全幅が0.9mm未満であり、輝度比が0.25未満であることが確認された。つまり、No.18~No.19の光拡散板は、シリコーン系拡散剤の平均粒子径が適切な範囲外にあるため、光拡散性能が不十分であるといえる。
【0051】
【0052】
No.20~No.21の光拡散板は、樹脂マトリックス100質量部に対する酸化チタンの含有量が0.010質量部以上0.035質量部以下の範囲内である。No.20~No.21の光拡散板は、半値全幅が1.0mm超であり、輝度比が0.3以上であることが確認された。つまり、No.20~No.21の光拡散板は、十分な光拡散性能を示すといえる。
【0053】
No.22の光拡散板は、樹脂マトリックス100質量部に対する酸化チタンの含有量が0.035質量部超0.050質量部以下の範囲内である。No.22の光拡散板は、半値全幅が0.9mm以上1.0mm以下であり、輝度比が0.25以上0.3未満であることが確認された。つまり、No.22の光拡散板は、酸化チタンの含有量が適切な範囲内にあるため、高い光拡散性能を示すといえる。
【0054】
No.23~No.24の光拡散板は、樹脂マトリックス100質量部に対する酸化チタンの含有量が0.050質量部超である。No.23~No.24の光拡散板は、半値全幅が0.9mm未満であり、輝度比が0.25未満であることが確認された。つまり、No.23~No.24の光拡散板は、酸化チタンの含有量が適切な範囲外にあるため、光拡散性能が不十分であるといえる。
【0055】
No.25~No.50の光拡散板を用いて、全光線透過率、表面粗さ(Ra)、及びヘイズ値の測定を行った。No.25~No.40、及びNo.43~No.50の光拡散板は、表面側を鏡面、裏面側をマット面として形成し、No.41は表裏面共にマット面、No.42は表裏面共に鏡面として形成した。シリコーン系拡散材の種類、含有量、酸化チタンの含有量、及び全光線透過率、表面粗さ(Ra)、ヘイズ値、半値全幅値、輝度比の測定結果、並びに評価を表4及び表5に示す。
【0056】
<全光線透過率及びヘイズ>
全光線透過率及びヘイズは、全光線透過率は日本分光株式会社製のV-670を用いて、ヘイズはスガ試験機株式会社製のHZ-2を用いて測定した。
<表面粗さ(Ra)>
表面粗さ(Ra)は、株式会社ミツトヨ製のSJ-210を用いて測定した。
【0057】
[評価]
<輝度比>
光拡散板の輝度比の評価は、輝度比が0.3以上を「A」、輝度比が0.25以上0.3未満を「B」、輝度比が0.25未満を「C」とした。
<半値全幅>
光拡散板の半値全幅の評価は、半値全幅が1.0mm超を「A」、半値全幅が0.9mm以上1.0mm未満を「B」、半値全幅が0.9mm未満を「C」とした。
【0058】
<総合評価>
光拡散板の総合評価は、輝度比及び半値全幅の両方の評価がAであるものを「A」、輝度比及び半値全幅のいずれか一方がAで他方がB、又は両方ともBであるものを「B」、輝度比及び半値全幅の、少なくともいずれか一方がCであるものを「C」とした。
【0059】
【0060】
【0061】
No.43の光拡散板は、シリコーン系拡散剤の平均粒子径が0.8μm未満であり、No.44の光拡散板は、シリコーン系拡散剤の平均粒子径が10.0μm超であるため、輝度比、半値全幅共にCであり、総合評価がCとなった。No.45~No.48の光拡散板は、樹脂マトリックス100質量部に対するシリコーン系拡散剤の含有量が1.6質量部未満又は5.0質量部超であるため、輝度比、半値全幅共にCであり、総合評価がCとなった。No.49,50の光拡散板は、樹脂マトリックス100質量部に対する酸化チタンの含有量が0.050質量部超であるため、輝度比、半値全幅共にCであり、総合評価がCとなった。
【0062】
No.25~No.50の光拡散板は、全光線透過率、表面粗さ(Ra)、及びヘイズ値に差異があるが、大きな差異ではない。従って、シリコーン系拡散材の平均粒子径、含有量、及び酸化チタンの含有量で半値全幅値及び輝度比を制御できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の光拡散板及び立体成形品は、高い光拡散性能を示す。