(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】医用画像処理装置、医用画像処理方法、及び医用画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/46 20240101AFI20240416BHJP
A61B 5/055 20060101ALI20240416BHJP
G01T 1/161 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
A61B6/46 536M
A61B5/055 380
G01T1/161 D
(21)【出願番号】P 2019173040
(22)【出願日】2019-09-24
【審査請求日】2022-07-19
(31)【優先権主張番号】P 2018189848
(32)【優先日】2018-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 真樹
(72)【発明者】
【氏名】米澤 慎
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 和代
(72)【発明者】
【氏名】氏家 弘貴
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-165787(JP,A)
【文献】特開平08-180181(JP,A)
【文献】特開2012-020115(JP,A)
【文献】特開2006-034548(JP,A)
【文献】特開平08-166995(JP,A)
【文献】国際公開第2015/019556(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/58
A61B 5/055
G01T 1/161
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の医用画像を取得する画像取得部と、
前記複数の医用画像に基づいて、単位操作量に応じた表示画像の更新枚数又は更新速度を表す感度パラメータを取得するパラメータ取得部と、
前記感度パラメータと入力された操作量とに基づいて前記複数の医用画像のうち表示される医用画像の更新枚数又は更新速度を制御することで、表示される医用画像を更新する表示制御部と、
を有する医用画像処理装置。
【請求項2】
注目部位からの距離に応じて、前記
複数の医用画像の各医用画像
について、他の医用画像と比較した場合の表示の優先度を示す値である評価値を算出する評価値算出部、
を更に有
し、
前記パラメータ取得部は、前記各医用画像の前記評価値に基づいて前記感度パラメータを取得する、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記評価値算出部は、ヘリカルスキャンに係るヘリカルピッチと、X線管の管電流と、X線の曝射量と、前記複数の医用画像の少なくとも1つの医用画像内に設定されたROIと、検査オーダ又は電子カルテの記載内容と、解析アルゴリズムによる結果値と、過去画像との差分値と、過去画像の観察時間と、医用画像の画素値のうち少なくとも1つに基づいて、前記注目部位を推定する、
請求項2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記
複数の医用画像の各医用画像の再構成の条件に応じて、前記各医用画像
について他の医用画像と比較した場合の表示の優先度を示す値である評価値を算出する評価値算出部、
を更に有
し、
前記パラメータ取得部は、前記各医用画像の前記評価値に基づいて前記感度パラメータを取得する、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
部分的な撮り直しが必要な状態を推定し、その状態に応じて、前記
複数の医用画像の各医用画像
について他の医用画像と比較した場合の表示の優先度を示す値である評価値を算出する評価値算出部、
を更に有
し、
前記パラメータ取得部は、前記各医用画像の前記評価値に基づいて前記感度パラメータを取得する、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記評価値算出部は、前記複数の医用画像が収集されたスキャン時における被検体の状態に応じて、前記各医用画像の前記評価値を算出する、
請求項5に記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記評価値算出部は、前記各医用画像について複数の評価値要素を算出する場合、前記複数の評価値要素に基づいて前記評価値を算出する、
請求項2乃至6のいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
前記評価値算出部は、前記複数の評価値要素のうちいずれか1つを前記評価値とする、
請求項7に記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
前記評価値算出部は、前記複数の評価値要素のうち2以上の評価値要素を単純平均、単純加算、重み付け平均、重み付け加算することで、前記評価値を算出する、
請求項7に記載の医用画像処理装置。
【請求項10】
前記画像取得部は、
他の医用画像と比較した場合の表示の優先度を示す値である評価値を求めるための複数の算出用の医用画像を取得する算出用画像取得部と、
表示のための複数の表示用の医用画像を取得する表示用画像取得部と、
を有し、
前記複数の表示用の医用画像は、前記複数の算出用の医用画像と同一のものであるか、又は、前記複数の算出用の医用画像の中から抽出されたものである、
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項11】
前記画像取得部は、
他の医用画像と比較した場合の表示の優先度を示す値である評価値を求めるための複数の算出用の医用画像を取得する算出用画像取得部と、
表示のための複数の表示用の医用画像を取得する表示用画像取得部と、
を有し、
前記複数の算出用の医用画像と前記複数の表示用の医用画像とは種別が異なる、
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項12】
前記画像取得部は、
他の医用画像と比較した場合の表示の優先度を示す値である評価値を求めるための複数の算出用の医用画像を取得する算出用画像取得部と、
表示のための複数の表示用の医用画像を取得する表示用画像取得部と、
を有し、
前記複数の算出用の医用画像と前記複数の表示用の医用画像とは、断面方向が異なる、
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項13】
前記画像取得部は、
他の医用画像と比較した場合の表示の優先度を示す値である評価値を求めるための算出用の医用画像を取得する算出用画像取得部と、
表示のための複数の表示用の医用画像を取得する表示用画像取得部と、
を有し、
前記算出用の医用画像は、スキャノ画像データである、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項14】
前記複数の医用画像は、位置が異なる複数の画像であるか、又は、少なくとも撮像時間が異なる複数の画像である、
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項15】
前記表示制御部は、前記感度パラメータが適用されている理由を示す文字情報をさらに表示させる、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項16】
他の医用画像と比較した場合の表示の優先度を示す値である評価値に基づいて前記複数の医用画像の保存間隔を算出し、前記保存間隔に応じて前記複数の医用画像を記憶部に記憶させる記憶制御部、
を更に有する請求項1乃至15のいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項17】
複数の医用画像を取得し、
前記複数の医用画像に基づいて、単位操作量に応じた表示画像の更新枚数又は更新速度を表す感度パラメータを取得し、
前記感度パラメータと入力された操作量とに基づいて、前記複数の医用画像のうち表示される医用画像の更新枚数又は更新速度を制御することで、表示される医用画像を更新する、
医用画像処理方法。
【請求項18】
コンピュータに、
複数の医用画像を取得する機能と、
前記複数の医用画像に基づいて、単位操作量に応じた表示画像の更新枚数又は更新速度を表す感度パラメータを取得する機能と、
前記感度パラメータと入力された操作量とに基づいて、前記複数の医用画像のうち表示される医用画像の更新枚数又は更新速度を制御することで、表示される医用画像を更新する機能と、
を実現させる医用画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用画像処理装置、医用画像処理方法、及び医用画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療分野において、X線等の放射線や、超音波、核磁気共鳴等を用いて被検体内を画像化する医用画像診断装置が利用されている。医用画像診断装置は、撮像により収集された被検体内を表す医用画像を医用画像処理装置等に提供する。
【0003】
医師等の操作者は、医用画像処理装置を用いて、複数の医用画像を閲覧する場合がある。例えば、複数の医用画像は、異なる撮像時間に係るものである。また、例えば、複数の医用画像は、異なるスライスに係るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、複数の医用画像の中から効率よく所望の医用画像を取得し操作者に提示することで、診断効率を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る医用画像処理装置は、画像取得部と、表示制御部とを備える。画像取得部は、複数の医用画像を取得する。表示制御部は、複数の医用画像の各医用画像に対応する評価値に基づいて、複数の医用画像を制御して、操作量に対する表示画像の更新枚数又は更新速度を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置を含むX線CT装置の構成を示す概略図。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置を含むX線CT装置の構成及び機能を示すブロック図。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置を含むX線CT装置において、ヘリカルピッチと評価値との関係を示す図。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置を含むX線CT装置において、評価値と感度パラメータとの関係を示す図。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置を含むX線CT装置において、評価値と感度パラメータを示すカラーバーとの関係を示す図。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置を含むX線CT装置において、感度パラメータを説明するための図。
【
図7】
図7は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置を含むX線CT装置において、複数の算出用CT画像データと複数の表示用CT画像データとの関係を示す図。
【
図8】
図8は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置を含むX線CT装置において、評価値と保存間隔との関係を示す図。
【
図9】
図9は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置を含むX線CT装置の動作をフローチャートとして示す図。
【
図10】
図10は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置を含むX線CT装置の動作をフローチャートとして示す図。
【
図11】
図11は、第2の実施形態に係る医用画像処理装置の構成及び機能を示すブロック図。
【
図12】
図12は、本実施形態に係る医用画像処理装置において、感度パラメータの調整を説明するための図。
【
図13】
図13は、本実施形態に係る医用画像処理装置において、位置及び撮像時間が異なる複数の3次元画像データに対する感度パラメータを説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、医用画像処理装置、医用画像処理方法、及び医用画像処理プログラムの実施形態について詳細に説明する。
【0009】
1.第1の実施形態に係る医用画像処理装置
第1の実施形態に係る医用画像処理装置は、X線CT(Computed Tomography)装置、PET(Positron Emission Tomography)装置等の核医学診断装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置等の医用画像診断装置に備えられる。即ち、第1の実施形態に係る医用画像処理装置は、医用画像を収集するコンソール装置として機能する。以下、第1の実施形態に係る医用画像処理装置が、医用画像診断装置としてのX線CT装置に備えられる場合を例にとって説明する。
【0010】
なお、X線CT装置によるデータ収集方式には、X線源とX線検出器とが1体として被検体の周囲を回転する回転/回転(R-R:Rotate/Rotate)方式や、リング状に多数の検出素子がアレイされ、X線管のみが被検体の周囲を回転する固定/回転(S-R:Stationary/Rotate)方式等の様々な方式がある。いずれの方式でも本発明を適用可能である。以下、実施形態に係るX線CT装置では、現在、主流を占めている第3世代の回転/回転方式を採用する場合を例にとって説明する。
【0011】
図1は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置を含むX線CT装置の構成を示す概略図である。
図2は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置を含むX線CT装置の構成及び機能を示すブロック図である。
【0012】
図1は、X線CT装置1を示す。X線CT装置1は、架台装置10と、寝台装置30と、第1の実施形態に係る医用画像処理装置、つまり、コンソール装置40とを備える。架台装置10及び寝台装置30は、検査室に設置される。架台装置10は、寝台装置30に載置された被検体(例えば、患者)Pに関するX線の検出データ(「純生データ」とも呼ばれる)を取得する。コンソール装置40は、複数ビュー分の検出データに対して前処理を施すことで生データを生成し、生データに対して再構成処理を施すことでCT画像データを再構成して表示する。
【0013】
なお、
図1において、説明の便宜上、架台装置10を左側の上下に複数描画しているが、実際の構成としては、架台装置10は1つである。
【0014】
架台装置10は、X線源(例えば、X線管)11、X線検出器12、回転部(例えば、回転フレーム)13、X線高電圧装置14、制御装置15、ウェッジ16、コリメータ17、データ収集回路(DAS:Data Acquisition System)18を備える。なお、架台装置10は、架台部の一例である。
【0015】
X線管11は、回転フレーム13に備えられる。X線管11は、X線高電圧装置14からの高電圧の印加により、陰極(フィラメント)から陽極(ターゲット)に向けて熱電子を照射することでX線を発生する真空管である。例えば、X線管11には、回転する陽極に熱電子を照射することでX線を発生させる回転陽極型のX線管がある。
【0016】
なお、実施形態においては、一管球型のX線CT装置にも、X線管とX線検出器との複数のペアを回転リングに搭載したいわゆる多管球型のX線CT装置にも適用可能である。また、X線を発生させるX線源は、X線管11に限定されるものではない。例えば、X線管11に替えて、電子銃から発生した電子ビームを収束させるフォーカスコイル、電磁偏向させる偏向コイル、患者Pの半周を囲い偏向した電子ビームが衝突することによってX線を発生させるターゲットリングを含む第5世代方式によりX線を発生させてもよい。なお、X線管11は、X線照射部の一例である。
【0017】
X線検出器12は、X線管11に対向するように回転フレーム13に備えられる。X線検出器12は、X線管11から照射されたX線を検出し、当該X線量に対応した検出データを電気信号としてDAS18に出力する。X線検出器12は、例えば、X線管の焦点を中心として1つの円弧に沿ってチャネル方向に複数のX線検出素子が配列された複数のX線検出素子列を有する。X線検出器12は、例えば、チャネル方向に複数のX線検出素子が配列されたX線検出素子列がスライス方向(列方向、row方向)に複数配列された構造を有する。
【0018】
また、X線検出器12は、例えば、グリッドと、シンチレータアレイと、光センサアレイとを有する間接変換型の検出器である。シンチレータアレイは、複数のシンチレータを有し、シンチレータは入射X線量に応じた光子量の光を出力するシンチレータ結晶を有する。グリッドは、シンチレータアレイのX線入射側の面に配置され、散乱X線を吸収する機能を有するX線遮蔽板を有する。なお、グリッドはコリメータ(1次元コリメータ又は2次元コリメータ)と呼ばれる場合もある。光センサアレイは、シンチレータからの光量に応じた電気信号に変換する機能を有し、例えば、光電子増倍管(フォトマルチプライヤー:PMT)等の光センサを有する。
【0019】
なお、X線検出器12は、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であっても構わない。また、X線検出器12は、X線検出部の一例である。
【0020】
回転フレーム13は、X線管11及びX線検出器12を対向支持する。回転フレーム13は、後述する制御装置15による制御の下、X線管11及びX線検出器12を一体として回転させる円環状のフレームである。なお、回転フレーム13は、X線管11及びX線検出器12に加えて、X線高電圧装置14やDAS18を更に備えて支持する場合もある。また、回転フレーム13は、回転部の一例である。
【0021】
このように、X線CT装置1は、X線管11とX線検出器12とを対向させて支持する回転フレーム13を患者Pの周りに回転させることで、複数ビュー、即ち、患者Pの360°分の検出データを収集する。なお、CT画像データの再構成方式は、360°分の検出データを用いるフルスキャン再構成方式には限定されない。例えば、X線CT装置1は、半周(180°)+ファン角度分の検出データに基づいてCT画像データを再構成するハーフ再構成方式を採ってもよい。
【0022】
X線高電圧装置14は、回転フレーム13、又は、回転フレーム13を回転可能に支持する非回転部分(例えば図示しない固定フレーム)に備えられる。X線高電圧装置14は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有する。X線高電圧装置14は、後述する制御装置15による制御の下、X線管11に印加する高電圧を発生する機能を有する高電圧発生装置(図示省略)と、後述する制御装置15による制御の下、X線管11が照射するX線に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置(図示省略)を有する。高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であっても構わない。なお、
図1において、説明の便宜上、X線高電圧装置14が、X線管11に対してx軸の正方向の位置に配置されているが、X線管11に対してx軸の負方向の位置に配置されてもよい。
【0023】
制御装置15は、処理回路及びメモリと、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構とを有する。処理回路及びメモリの構成については、後述するコンソール装置40の処理回路44及びメモリ41と同等であるので説明を省略する。
【0024】
制御装置15は、コンソール装置40に取り付けられた、後述する入力インターフェース43又は架台装置10に取り付けられた入力インターフェース(図示省略)からの入力信号を受けて、架台装置10及び寝台装置30の動作制御を行う機能を有する。例えば、制御装置15は、入力信号を受けて回転フレーム13を回転させる制御や、架台装置10をチルトさせる制御や、寝台装置30及び天板33を動作させる制御を行う。なお、架台装置10をチルトさせる制御は、架台装置10に取り付けられた入力インターフェースによって入力される傾斜角度(チルト角度)情報により、制御装置15がX軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム13を回転させることによって実現される。なお、制御装置15は架台装置10に設けられてもよいし、コンソール装置40に設けられてもよい。なお、制御装置15は、制御部の一例である。
【0025】
また、制御装置15は、コンソール装置40に取り付けられた、後述する入力インターフェース43又は架台装置10に取り付けられた入力インターフェース(図示省略)から入力された撮像条件に基づいて、X線管11の回転角度や、後述するウェッジ16及びコリメータ17の動作を制御する。
【0026】
ウェッジ16は、X線管11のX線出射側に配置されるように回転フレーム13に備えられる。ウェッジ16は、制御装置15による制御の下、X線管11から照射されたX線量を調節するためのフィルタである。具体的には、ウェッジ16は、X線管11から患者Pに照射されるX線が予め定められた分布になるように、X線管11から照射されたX線を透過して減衰させるフィルタである。例えば、ウェッジ16(ウェッジフィルタ(Wedge Filter)、ボウタイフィルタ(bow-tie filter)は、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウムを加工したフィルタである。
【0027】
コリメータ17は、X線絞り又はスリットとも呼ばれ、X線管11のX線出射側に配置されるように回転フレーム13に備えられる。コリメータ17は、制御装置15による制御の下、ウェッジ16を透過したX線の照射範囲を絞り込むための鉛板等であり、複数の鉛板等の組合せによってX線の照射開口を形成する。
【0028】
DAS18は、回転フレーム13に備えられる。DAS18は、制御装置15による制御の下、X線検出器12の各X線検出素子から出力される電気信号に対して増幅処理を行う増幅器と、制御装置15による制御の下、電気信号をデジタル信号に変換するA/D(Analog to Digital)変換器とを有し、増幅及びデジタル変換後の検出データを生成する。DAS18によって生成された、複数ビュー分の検出データは、コンソール装置40に転送される。
【0029】
ここで、DAS18によって生成された検出データは、回転フレーム13に設けられた発光ダイオード(LED)を有する送信機から光通信によって架台装置10の固定フレームに設けられたフォトダイオードを有する受信機に送信され、コンソール装置40に転送される。なお、回転フレーム13から架台装置10の固定フレームへの検出データの送信方法は、前述の光通信に限らず、非接触型のデータ伝送であれば如何なる方式を採用しても構わない。
【0030】
寝台装置30は、基台31、寝台駆動装置32、天板33及び支持フレーム34を備える。寝台装置30は、スキャン対象の患者Pを載置し、制御装置15による制御の下、患者Pを移動させる装置である。
【0031】
基台31は、支持フレーム34を鉛直方向(y軸方向)に移動可能に支持する筐体である。寝台駆動装置32は、患者Pが載置された天板33を天板33の長軸方向(z軸方向)に移動するモータ又はアクチュエータである。支持フレーム34の上面に設けられた天板33は、患者Pを載置可能な形状を有する板である。
【0032】
なお、寝台駆動装置32は、天板33に加え、支持フレーム34を天板33の長軸方向(z軸方向)に移動させてもよい。また、寝台駆動装置32は、寝台装置30の基台31ごと移動させてもよい。本発明を立位CTに応用する場合、天板33に相当する患者移動機構を移動する方式であってもよい。また、ヘリカルスキャンや位置決め等のためのスキャノ撮像等、架台装置10の撮像系と天板33の位置関係の相対的な変更を伴う撮像を実行する場合は、当該位置関係の相対的な変更は天板33の駆動によって行われてもよいし、架台装置10の固定部の走行によって行われてもよく、またそれらの複合によって行われてもよい。
【0033】
なお、実施形態では、非チルト状態での回転フレーム13の回転軸又は寝台装置30の天板33の長手方向をz軸方向、z軸方向に直交し、床面に対し水平である軸方向をx軸方向、z軸方向に直交し、床面に対し垂直である軸方向をy軸方向とそれぞれ定義するものとする。
【0034】
コンソール装置40は、メモリ41、ディスプレイ42、入力インターフェース43、及び処理回路44を備える。なお、コンソール装置40は架台装置10とは別体として説明するが、架台装置10にコンソール装置40又はコンソール装置40の各構成要素の一部が含まれてもよい。また、以下の説明では、コンソール装置40が単一のコンソールで全ての機能を実行するものとするが、これらの機能は、複数のコンソールが実行してもよい。なお、コンソール装置40は、医用画像処理装置の一例である。
【0035】
メモリ41は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等によって構成される。メモリ41は、USB(Universal Serial Bus)メモリ及びDVD(Digital Video Disk)等の可搬型メディアによって構成されてもよい。メモリ41は、処理回路44において用いられる各種処理プログラム(アプリケーションプログラムの他、OS(Operating System)等も含まれる)や、プログラムの実行に必要なデータを記憶する。また、OSに、操作者に対するディスプレイ42への情報の表示にグラフィックを多用し、基礎的な操作を入力インターフェース43によって行うことができるGUI(Graphic User Interface)を含めることもできる。
【0036】
メモリ41は、例えば、前処理前の検出データや、前処理後かつ再構成前の生データや、生データに基づく再構成後のCT画像データを記憶する。前処理は、検出データに対する、対数変換処理、オフセット補正処理、チャンネル間の感度補正処理、ビームハードニング処理等のうち少なくとも1つを意味する。また、インターネット等の通信ネットワークを介してX線CT装置1と接続可能なクラウドサーバがX線CT装置1からの保存要求を受けて検出データ、生データ、又はCT画像データを記憶するように構成されてもよい。
【0037】
また、メモリ41は、医用画像データとしてのCT画像データを記憶させるための画像記憶領域と、後述する評価値を記憶させるための評価値記憶領域と、後述する感度パラメータを記憶させるための感度パラメータ記憶領域(
図2に図示)とを少なくとも有する。なお、メモリ41は、記憶部の一例である。
【0038】
ディスプレイ42は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ42は、処理回路44によって生成されたCT画像データや、ユーザからの各種操作を受け付けるためのGUI等を出力する。例えば、ディスプレイ42は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、OLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイ等である。また、ディスプレイ42は、架台装置10に設けられてもよい。また、ディスプレイ42は、デスクトップ型でもよいし、コンソール装置40本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしてもよい。なお、ディスプレイ42は、表示部の一例である。
【0039】
入力インターフェース43は、技師等の操作者によって操作が可能な入力デバイスと、入力デバイスからの信号を入力する入力回路とを含む。入力デバイスは、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、操作面に触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等によって実現される。入力デバイスが操作者から入力操作を受け付けると、入力回路は当該入力操作に応じた電気信号を生成して処理回路44に出力する。また、入力インターフェース43は、架台装置10に設けられてもよい。また、入力インターフェース43は、コンソール装置40本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されてもよい。なお、入力インターフェース43は、入力部の一例である。
【0040】
なお、コンソール装置40は、ネットワークインターフェース(図示省略)を備える場合もある。ネットワークインターフェースは、パラレル接続仕様やシリアル接続仕様に合わせたコネクタによって構成される。X線CT装置1が医用画像システム上に設けられる場合、ネットワークインターフェースは、ネットワーク上の外部装置と情報の送受信を行なう。例えば、ネットワークインターフェースは、処理回路44の制御の下、外部装置からCT検査に係る検査オーダを受信し、また、X線CT装置1によって取得された検出データや、生成された生データ又はCT画像データを外部装置に送信する。
【0041】
処理回路44は、X線CT装置1の全体の動作を制御する。処理回路44は、専用又は汎用のCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processor Unit)、又はGPU(Graphics Processing Unit)の他、ASIC、及び、プログラマブル論理デバイス等を意味する。プログラマブル論理デバイスとしては、例えば、単純プログラマブル論理デバイス(SPLD:Simple Programmable Logic Device)、複合プログラマブル論理デバイス(CPLD:Complex Programmable Logic Device)、及び、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:Field Programmable Gate Array)等が挙げられる。
【0042】
また、処理回路44は、単一の回路によって構成されてもよいし、複数の独立した処理回路要素の組み合わせによって構成されてもよい。後者の場合、メモリは処理回路要素ごとに個別に設けられてもよいし、単一のメモリが複数の処理回路要素の機能に対応するプログラムを記憶するものであってもよい。なお、処理回路44は、処理部の一例である。
【0043】
処理回路44は、メモリ41、又は、処理回路44内のメモリ等の非一過性の記録媒体に記憶されたコンピュータプログラムを実行することで、
図2に示すように、画像生成機能441、算出用画像取得機能442、評価値算出機能443、パラメータ算出機能444、表示用画像取得機能445、パラメータ取得機能446、表示制御機能447、及び記憶制御機能448を実現する。なお、機能441~448の全部又は一部は、コンソール装置40のコンピュータプログラムの実行により実現される場合に限定されるものではなく、コンソール装置40にASIC等の回路として備えられる場合であってもよい。また、機能441~448の全部又は一部は、コンソール装置40のみならず、制御装置15によって実現される場合もある。
【0044】
画像生成機能441は、予め設定されたスキャン条件に従って制御装置15を介してX線管11及びX線検出器12等を制御することでCTスキャンを実行させ、制御装置15から複数ビュー分の検出データを収集する機能を含む。例えば、スキャン条件は、照射X線に関する、管電流mA、管電圧kV、X線強度制御条件(X線モジュレーション条件)、X線管11(又は、回転フレーム13)の回転速度等を含む。
【0045】
また、画像生成機能441は、収集された複数ビュー分の検出データに対して前処理を施すことで、複数ビュー分の生データを収集する機能と、前処理後の複数ビュー分の生データに基づいて、画像再構成処理により医用画像データとしてのCT画像データを生成する機能とを含む。また、画像生成機能441は、CT画像データをメモリ41に記憶させる機能や、CT画像データをCT画像としてディスプレイ42に表示させる機能や、CT画像データをネットワークインターフェース(図示省略)を介して外部装置に送信する機能を含む場合もある。なお、画像生成機能441は、画像生成部の一例である。
【0046】
算出用画像取得機能442は、メモリ41に記憶された複数のCT画像データの中から、後述する評価値及び感度パラメータを算出するための複数のCT画像データ(以下、「算出用CT画像データ」と呼ぶ)を取得する機能を含む。算出用画像取得機能442は、メモリ41に記憶された複数のCT画像データの全てを算出用CT画像データとして取得してもよいし、メモリ41に記憶された複数のCT画像データの一部を算出用CT画像データとして取得してもよい。なお、算出用画像取得機能442は、画像取得部又は算出用画像取得部の一例である。
【0047】
評価値算出機能443は、算出用画像取得機能442によって取得された複数の算出用CT画像データの評価値を算出する機能と、各算出用CT画像データに、対応する評価値を関連付けてメモリ41に記憶させる機能とを含む。評価値とは、各算出用CT画像データを他の算出用CT画像データと比較した場合の表示の優先度を示す値である。評価値を各算出用CT画像データに関連付ける場合、評価値を各算出用CT画像データに関連付けたテーブルを作成して保有することもできるし、各算出用CT画像データに係るDICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)ファイルに評価値を付帯させることもできる。なお、評価値算出機能443は、評価値算出部の一例である。
【0048】
第1に、評価値算出機能443は、注目部位(例えば、臨床上重要な部位や、病巣部位等)を推定し、その注目部位からの距離に応じて各算出用CT画像データの評価値を算出する。その場合、評価値算出機能443は、注目部位の推定と評価値の算出を、次の評価項目[1]~[7]により行う。第2に、評価値算出機能443は、部分的な撮り直しが必要な状態を推定し、その状態に応じて各算出用CT画像データの評価値を算出する。その場合、評価値算出機能443は、再撮像位置の推定と評価値の算出を、次の評価項目[8],[9]により行う。例えば、評価値算出機能443は、スキャン時における患者Pの状態を推定し、その状態に応じて各算出用CT画像データの評価値を算出する。その場合、評価値算出機能443は、患者Pの状態の推定と評価値の算出を、次の評価項目[8]により行う。
【0049】
[1]撮像条件(ヘリカルピッチ、管電流、曝射量等)
評価値算出機能443は、撮像条件の変化に基づいて病巣部位等の注目部位が存在するz位置を推定し、そのz位置からのz軸方向の距離に応じて評価値を算出する。例えば、撮像条件としてのヘリカルピッチがz軸方向に沿って変化するヘリカルスキャンが実行された場合、ヘリカルピッチが短いz位置に対応する算出用CT画像データについては評価値を高く設定する一方で、ヘリカルピッチが長いz位置に対応する算出用CT画像データについては評価値を低く設定する。というのも、ヘリカルピッチが短いz位置ほど、注目部位に近いと推定できるからである。
【0050】
図3は、ヘリカルピッチと評価値との関係を示す図である。
【0051】
図3に示すように、ヘリカルピッチがz軸方向に沿って変化するヘリカルスキャンが実行され、また、腹部付近にヘリカルピッチが短いz位置が存在するものとする。この場合、評価値算出機能443は、ヘリカルピッチが短いz位置付近に注目部位が存在する可能性が高いものとして、当該z位置付近の評価値を他のz位置の評価値と比較して高く設定する。
【0052】
さらに、例えば、撮像条件としての管電流がz軸方向に沿って変化するスキャンが実行された場合、評価値算出機能443は、管電流が大きいz位置付近の評価値を他のz位置の評価値と比較して高く設定する。また、例えば、撮像条件としての曝射量がz軸方向に沿って変化するスキャンが実行された場合、評価値算出機能443は、曝射量が大きいz位置付近の評価値を他のz位置の評価値と比較して高く設定する。というのも、複数の算出用CT画像データのうち、ヘリカルピッチが短いz位置や、管電流が大きいz位置や、曝射量が大きいz位置付近の算出用CT画像データについては、技師等の操作者が、被曝量等に見合った画質を得られたかを視認する場合が想定されるからである。
【0053】
また、例えば、撮像条件としての管電流がz軸方向に沿って変化するスキャンが実行された場合、評価値算出機能443は、管電流が小さいz位置付近の評価値を他のz位置の評価値と比較して高く設定する。というのも、被曝低減のために管電流が小さく設定されたが、管電流が小さいz位置付近の算出用CT画像データで十分な画質が得られたかを操作者が確認する場合が想定されるからである。さらに、例えば、撮像条件としての管電流がz軸方向に沿って変化するスキャンが実行された場合、評価値算出機能443は、z軸方向に沿って変化しないスキャンが実行される場合の管電流との差が閾値より大きいz位置付近の評価値を他のz位置の評価値と比較して高く設定する。というのも、管電流が大きく又は小さく設定されたが、管電流が大きすぎ又は小さすぎのz位置付近の算出用CT画像データで管電流に見合った画質を得られたか又は十分な画質が得られたかを操作者が確認する場合が想定されるからである。
【0054】
[2]CT画像データに設定された関心領域(ROI:Region Of Interest)
評価値算出機能443は、複数のCT画像データのうち少なくとも1つに設定されたROIのz位置に基づいて病巣部位等の注目部位が存在するz位置を推定し、そのz位置からのz軸方向の距離に応じて評価値を算出する。というのも、ROI(アノテーションROIを含む)は注目部位周囲に設定されるはずであるので、ROIを含むz位置の算出用CT画像データを使って、操作者が、その周辺を視認する場合が想定されるからである。
【0055】
なお、ROIは、後述する表示用CT画像データに設定されたROIでもよいし、表示用CT画像データとz位置が関連付けられた他の画像データ(例えば、スキャノ画像データ)に設定されたROIであってもよい。
【0056】
[3]検査オーダ又は電子カルテの記載内容
評価値算出機能443は、電子カルテ等に記載された部位に基づいて病巣部位等の注目部位が存在するz位置を推定し、そのz位置からのz軸方向の距離に応じて評価値を算出する。というのも、電子カルテ等に記載された注目部位を含むz位置の算出用CT画像データを使って、操作者が、その周囲を視認する場合が想定されるからである。なお、注目部位の例としては、次の注目部位[a]~[e]が挙げられる。
【0057】
[a]検査オーダに含まれる撮像対象部位
[b]電子カルテのコメント欄の内容から推定される部位(例えば、コメント「肝硬変の疑い」から推定される部位「肝臓」)
[c]過去の撮像部位や読影部位
[d]病気ごとに設定される診断部位(診断ガイドライン等から判断可能)
[e]上記注目部位[a]~[d]に基づいて決定される部位に関連する関連部位
【0058】
なお、上記注目部位[a]~[d]は、操作者が入力インターフェース43を用いて、表示されたCT画像上で直接指定される位置及び範囲によるものであってもよいし、解剖学的位置及び範囲を自動抽出する既存のアルゴリズムを用いて抽出されてもよい。上記注目部位[e]、つまり、関連部位としては、上記注目部位[a]~[d]から転移する可能性が高い部位や組成の変化が大きい部位等、病気の影響が生じる可能性が高い部位等が挙げられる。関連部位は、上記注目部位[a]~[d]との関係で、予め登録しておけばよい。
【0059】
[4]解析アルゴリズムによる結果値
評価値算出機能443は、解析アルゴリズムによる結果値に基づいて病巣部位等の注目部位が存在するz位置を推定し、そのz位置からのz軸方向の距離に応じて評価値を算出する。というのも、解析アルゴリズムにより注目部位の可能性がある箇所のz位置の算出用CT画像データを使って、操作者が、異常の有無を視認する場合が想定されるからである。なお、当該解析アルゴリズムによる結果値の例としては、次の結果値[f],[g]が挙げられる。
【0060】
[f]病巣部位抽出アルゴリズムによる病巣の可能性の大きさを示す解析値
[g]解剖学的位置及び範囲を抽出するアルゴリズムにおいて、該当領域の確からしさを示す解析値
【0061】
[5]過去画像、典型画像、前後画像との差分値
評価値算出機能443は、過去画像との差分値に基づいて病巣部位等の注目部位が存在するz位置を推定し、そのz位置からのz軸方向の距離に応じて評価値を算出する。というのも、経過観察等において、過去画像との差分が大きい部位のz位置の算出用CT画像データについて、操作者が視認する場合が想定されるからである。
【0062】
評価値算出機能443は、典型画像との差分値に基づいて病巣部位等の注目部位が存在するz位置を推定し、そのz位置からのz軸方向の距離に応じて評価値を算出する。というのも、経過観察等において、典型画像との差分が大きい部位のz位置の算出用CT画像データについて、操作者が視認する場合が想定されるからである。典型画像は、人体全体の内部構造又は各部位の構造を示す、アトラス(Atlas)等の典型的なモデルを意味する。典型的なモデルは、各病院固有に所有する場合もある。なお、評価値算出機能443は、典型画像との差分値に基づいて病巣部位等の注目部位が存在するz位置を推定する際、解析アルゴリズムによる結果値に基づいてもよい。
【0063】
評価値算出機能443は、前後画像との差分値に基づいて病巣部位等の注目部位が存在するz位置を推定し、そのz位置からのz軸方向の距離に応じて評価値を算出する。というのも、経過観察等において、前後画像との差分が大きい部位のz位置の算出用CT画像データについて、操作者が視認する場合が想定されるからである。前後画像は、各画像の、z軸方向に沿った前画像及び/又は後画像を意味する。
【0064】
なお、過去画像、典型画像、前後画像との差分処理は、画像全体で行われてもよいし、部分的に行われてもよい。
【0065】
[6]過去の観察時間
評価値算出機能443は、過去の観察時間に基づいて病巣部位等の注目部位が存在するz位置を推定し、そのz位置からのz軸方向の距離に応じて評価値を算出する。というのも、過去に同様の画像を診断した際に、より注意深く時間をかけて観察したz位置と同一位置の算出用CT画像データについては、操作者が、同様の画像に対する診断でも同じように注意深く視認する場合が想定されるからである。
【0066】
[7]再構成の条件
評価値算出機能443は、再構成の条件、例えば再構成された複数のCT画像のスライス間隔に基づいて病巣部位等の注目部位が存在するz位置を推定し、そのz位置からのz軸方向の距離に応じて評価値を算出する。というのも、注目部位周囲では複数のCT画像のスライス間隔が小さいはずであるので、再構成された複数のCT画像のスライス間隔が小さいz位置の算出用CT画像データを使って、操作者が、その周辺を視認する場合が想定されるからである。なお、再構成の条件は、複数のCT画像のスライス間隔に限定されるものではなく、例えば、各CT画像の解像度、DFOV(Display Field of View)等であってもよい。DFOVは、画像サイズを表し、画像が矩形の場合は画像の1辺の長さであり、画像が円形の場合は画像の径である。
【0067】
[8]患者の体動、不整脈の程度
評価値算出機能443は、患者Pの体動又は不整脈の程度を推定し、患者Pの体動又は不整脈が異常値を示すz位置からのz軸方向の距離に応じて評価値を算出する。というのも、スキャン中に患者Pの体動や不整脈が発生した場合には、CT画像データにモーションアーティファクトが発生するため、そのz位置の算出用CT画像データについて、操作者が、部分的な撮り直しをするものとして視認する場合が想定されるからある。
【0068】
[9]データ不足、アーチファクト
評価値算出機能443は、スキャン中のX線管11の放電等によるデータの抜けがあるz位置を推定し、そのz位置からのz軸方向の距離に応じて評価値を算出する。というのも、スキャン中のX線管11の放電等が発生した場合には、データの抜けが発生するため、そのz位置の算出用CT画像データについて、操作者が、部分的な撮り直しをするものとして視認する場合が想定されるからある。
【0069】
また、評価値算出機能443は、アーチファクトがある部位又はノイズがのりやすい部位が存在するz位置を推定し、そのz位置からのz軸方向の距離に応じて評価値を算出する。というのも、アーチファクトがある部位又はノイズがのりやすい部位のz位置の算出用CT画像データについて、操作者が、部分的な撮り直しをするものとして視認する場合が想定されるからある。なお、当該部位は、予め設定された位置であってもよいし、各算出用CT画像データから求められたノイズ量によって求められてもよい。
【0070】
なお、評価値算出機能443は、上記評価項目[1]~[9]のいずれか1つを用いて評価値を算出してもよいし、上記評価項目[1]~[9]のいくつかを評価値要素として算出し、それらを組み合わせて1つの評価値を算出してもよい。後者の場合、評価値算出機能443は、複数の評価値要素を単純平均、又は、単純加算して1つの評価値を算出してもよいし、当該複数の評価値要素のうち操作者がより重要視すると推定される評価値要素の重みを他の評価値要素より重くする等、当該複数の評価値要素を重み付け平均、又は、重み付け加算して1つの評価値を算出してもよい。
【0071】
パラメータ算出機能444は、評価値算出機能443によって算出された評価値に基づいて、表示対象である複数のCT画像データ(以下、「表示用CT画像データ」と呼ぶ)の操作量に対する表示画像の更新枚数を表す感度パラメータを算出する機能と、各表示用CT画像データの感度パラメータを、対応する算出用CT画像データに関連付けてメモリ41に記憶させる機能とを含む。更新枚数は、位置(例えば、z位置)に沿って配列される複数の画像データの中で、表示画像を、特定位置の画像データから別の位置の画像データに進める/戻すための枚数を意味する。又は、更新枚数は、撮像時間に沿って配列される複数の画像データの中で、表示画像を、特定撮像時間の画像データから別の撮像時間の画像データに進める/戻すための枚数を意味する。なお、パラメータ算出機能444は、パラメータ算出部の一例である。
【0072】
図4は、評価値と感度パラメータとの関係を示す図である。
【0073】
図4に示すように、腹部付近に評価値が高く設定される評価値曲線が存在するものとする。この場合、パラメータ算出機能444は、他のz位置と比べて、腹部付近の感度パラメータを低く(鈍く)設定するように感度パラメータを感度パラメータ曲線として算出する。評価値が高く設定されるz位置付近には注目部位が含まれている可能性が高い。
【0074】
なお、パラメータ算出機能444は、
図4の感度パラメータ曲線をディスプレイ42に表示させてもよい。また、パラメータ算出機能444は、
図4の感度パラメータを色(色相、明度、彩度)で示したカラーバーをディスプレイ42に表示させてもよい(
図5に図示)。また、パラメータ算出機能444は、感度パラメータ曲線をスキャノ画像上に表示してもよい。さらに、一旦算出された評価値又は評価値曲線を必要に応じて操作者が手動で調整できるように構成されてもよい。
【0075】
【0076】
感度パラメータは、入力インターフェース43の単位操作量に対する表示画像の更新枚数を意味する。例えば、「感度パラメータが大きい」とは、トラックボールの単位操作量に対する表示画像の更新枚数が多いことを意味し、「感度パラメータが小さい」とは、トラックボールの単位移動量に対する表示画像の更新枚数が少ないことを意味する。
【0077】
パラメータ算出機能444は、入力インターフェース43の単位操作量に対して、評価値が低いz位置においては大きい感度パラメータにより更新枚数を多くする。つまり、評価値が低いz位置においては、単位時間当たりの表示画像の更新枚数が多くなり、表示画像の更新速度が速くなる。一方で、パラメータ算出機能444は、入力インターフェース43の単位操作量に対して、評価値が高いz位置においては小さい感度パラメータにより更新枚数を少なくする。つまり、評価値が高いz位置においては、単位時間当たりの表示画像の更新枚数が少なくなり、表示画像の更新速度が遅くなる。
【0078】
図2の説明に戻って、表示用画像取得機能445は、メモリ41から、複数の表示用CT画像データを取得する機能を含む。ここで、複数の表示用CT画像データは、前述の複数の算出用CT画像データと同一のものであってもよく(
図7(A)に図示)、また、複数の算出用CT画像データの中から抽出されたものであってもよい(
図7(B)に図示)。なお、表示用画像取得機能445は、表示用画像取得部の一例である。
【0079】
パラメータ取得機能446は、パラメータ算出機能444によって算出された、複数の表示用CT画像データの感度パラメータをメモリ41から取得する機能を含む。なお、パラメータ取得機能446は、パラメータ取得部の一例である。
【0080】
表示制御機能447は、算出用画像取得機能442によって取得された複数の算出用のCT画像データの各CT画像データに対応する評価値に基づいて、表示用画像取得機能445によって取得された複数の表示用のCT画像データを制御して、操作量に対する表示画像の更新枚数又は更新速度を制御する機能を含む。具体的には、表示制御機能447は、評価値に基づく、パラメータ取得機能446によって取得された感度パラメータに基づいて、複数の表示用CT画像データを複数のCT画像としてディスプレイ42に表示させる機能を含む。なお、表示制御機能447は、表示制御部の一例である。
【0081】
記憶制御機能448は、評価値算出機能743によって算出された評価値に基づいて、複数の表示用CT画像データの保存間隔を算出し、保存間隔に応じて複数の表示用CT画像データの一部をメモリ41に記憶させる機能を含む。なお、記憶制御機能448は、記憶制御部の一例である。
【0082】
【0083】
腹部付近に評価値が高く設定される評価値曲線が存在するものとする。この場合、記憶制御機能448は、評価値が高く設定されるz位置付近には注目部位が含まれている可能性が高いものとして、他のz位置と比べて保存間隔を小さく設定する。
【0084】
一般的な画像保存ツールでは、z軸方向における特定範囲内の複数のCT画像データが保存可能である。これにより、指定された間隔ごとのスライス画像データの保存が可能である。このような画像保存ツールに対して、記憶制御機能448は、評価値に基づいて、操作者にとって重要度の高いスライス近傍ほど、保存するスライスの間隔を細かくして保存することができる。これにより、あまり重要でないスライスの保存枚数を少なくする一方で、重要なスライスの保存枚数を多くすることができ、画像の観察がしやすく、かつ不要な画像の保存を避けることができる。
【0085】
なお、機能441~447の動作について、
図9及び
図10を用いて後述する。
【0086】
図9及び
図10は、X線CT装置1の動作をフローチャートとして示す図である。
図9及び
図10において、「ST」に数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。
【0087】
まず、
図9において、CTスキャンの実行予定の患者Pを天板33に載置させた状態で、操作者は入力インターフェース43を操作する。これにより、画像生成機能441は、予め設定されたスキャン条件に従って制御装置15を介してX線管11及びX線検出器12等を制御することで、ボリュームスキャン(「コンベンショナルスキャン」とも呼ばれる)又はヘリカルスキャン等のCTスキャンを実行させる(ステップST1)。画像生成機能441は、CTスキャンにより、制御装置15から複数ビュー分の検出データを収集する。なお、ステップST1によるCTスキャンの実行に先立って行われるプリスキャン(「スキャノ撮像」又は「スカウト撮像」とも呼ばれる)については、説明を省略する。
【0088】
ここで、ボリュームスキャンとは、非ヘリカルスキャンを意味し、架台装置10と寝台装置30との相対位置を変えずに実行されるスキャンを意味する。また、ヘリカルスキャンとは、架台装置10に対して寝台装置30の天板33をz軸方向に移動させながら実行されるスキャン、又は、寝台装置30に対して架台装置10をz軸方向に移動させながら実行されるスキャンを意味する。
【0089】
画像生成機能441は、ステップST1のCTスキャンによって収集された複数ビュー分の検出データに対して前処理を施すことで、複数ビュー分の生データを収集する(ステップST2)。
【0090】
画像生成機能441は、ステップST2により前処理後の複数ビュー分の生データに基づいて、画像再構成処理により、医用画像データとして、複数のCT画像データを生成する(ステップST3)。画像生成機能441は、ステップST3によって生成された各CT画像データをメモリ41に記憶させる(ステップST4)。また、画像生成機能441は、各CT画像データをCT画像としてディスプレイ42に表示させたり、各CT画像データをネットワークインターフェース(図示省略)を介して外部装置に送信したりすることもできる。
【0091】
算出用画像取得機能442は、ステップST3によって生成されメモリ41に記憶された複数のCT画像データの中から、複数の算出用CT画像データを取得する(ステップST5)。ステップST5において、算出用画像取得機能442は、メモリ41に記憶された複数のCT画像データの全てを複数の算出用CT画像データとして取得してもよいし、複数のCT画像データの一部を複数の算出用CT画像データとして取得してもよい。
【0092】
評価値算出機能443は、ステップST5によって取得された各算出用CT画像データの評価値を算出する(ステップST6)。評価値算出機能443は、ステップST5によって算出された各算出用CT画像データの評価値を、対応する算出用CT画像データに関連付けてメモリ41に記憶させる(ステップST7)。
【0093】
パラメータ算出機能444は、ステップST6によって算出された評価値に基づいて、複数の表示用CT画像データの感度パラメータを算出する(ステップST8)。パラメータ算出機能444は、ステップST8によって算出された各表示用CT画像データの感度パラメータを、対応する算出用CT画像データに関連付けてメモリ41に記憶させる(ステップST9)。
【0094】
図9に示すステップST1~ST9の動作により、コンソール装置40は、複数の算出用CT画像データと共に、各算出用CT画像データに対応する感度パラメータを算出して記憶させることができる。
【0095】
図10の説明に移って、表示用画像取得機能445は、メモリ41から、ステップST4によって記憶された複数のCT画像データの中から複数の表示用CT画像データを取得する(ステップST11)。パラメータ取得機能446は、メモリ41から、ステップST9によって記憶された、各算出用CT画像データに対応する感度パラメータを取得する(ステップST12)。
【0096】
表示制御機能447は、ステップST11によって取得された複数の表示用CT画像データの中のうち第nの表示用CT画像データを表示画像としてディスプレイ42に表示させる(ステップST13)。表示制御機能447は、ステップST13によって表示された第nの表示用CT画像データの操作を受け付ける(ステップST14)。表示制御機能447は、ステップST14による操作量と、ステップST12によって取得された感度パラメータとに従って、表示画像を、第nの表示用CT画像データから、複数の表示用CT画像データの中のうち第mの表示用CT画像データまで進める(又は戻す)。それにより、表示制御機能447は、表示画像を更新する(ステップST15)。
【0097】
以上のように、X線CT装置1のコンソール装置40によると、複数の表示用CT画像データの中から効率よく所望の表示用CT画像データを取得し操作者に提示することができるので、診断効率を向上させることができる。
【0098】
2.第2の実施形態に係る医用画像処理装置
第2の実施形態に係る医用画像処理装置は、医用画像診断装置とは別体のものとして構成される場合である。
【0099】
図11は、第2の実施形態に係る医用画像処理装置の構成及び機能を示すブロック図である。
【0100】
図11は、第2の実施形態に係る医用画像処理装置70を示す。医用画像処理装置70は、医用画像管理装置(画像サーバ)や、ワークステーションや、読影端末等であり、ネットワークを介して接続された医用画像システム上に設けられる。その場合、医用画像処理装置70は、ネットワークインターフェース(図示省略)を備える。ネットワークインターフェースは、パラレル接続仕様やシリアル接続仕様に合わせたコネクタによって構成される。医用画像処理装置70が医用画像システム上に設けられる場合、ネットワークインターフェースは、ネットワーク上の外部装置と情報の送受信を行なう。例えば、ネットワークインターフェースは、処理回路74の制御の下、外部装置から、CT画像データ等の医用画像データを受信する。なお、医用画像処理装置70は、オフラインの装置であってもよい。
【0101】
医用画像処理装置70は、メモリ71、ディスプレイ72、入力インターフェース73、及び処理回路74を備える。メモリ71、ディスプレイ72、入力インターフェース73、処理回路74は、
図1及び
図2に示すメモリ41、ディスプレイ42、入力インターフェース43、及び処理回路44と同等の構成を有するものとして説明を省略する。
【0102】
処理回路74は、メモリ71、又は、処理回路74内のメモリ等の非一過性の記録媒体に記憶されたコンピュータプログラムを実行することで、算出用画像取得機能742、評価値算出機能743、パラメータ算出機能744、表示用画像取得機能745、パラメータ取得機能746、表示制御機能747、及び記憶制御機能748を実現する。なお、機能742~748の全部又は一部は、医用画像処理装置70のコンピュータプログラムの実行により実現される場合に限定されるものではなく、医用画像処理装置70にASIC等の回路として備えられる場合であってもよい。また、感度パラメータの算出処理については、医用画像データを生成する医用画像診断装置や医用画像管理装置等によって予め算出される場合もあるので、機能742~744は、必須の構成ではない。
【0103】
算出用画像取得機能742は、
図2に示す算出用画像取得機能442と同等の機能を含む。加えて、算出用画像取得機能742は、複数の算出用CT画像データのみならず、後述する評価値及び感度パラメータを算出するための複数の医用画像データ(以下、「算出用画像データ」と呼ぶ)を取得する機能を含む。
【0104】
また、算出用画像取得機能742は、複数の算出用画像データを、複数の表示用画像データとは異なる種別の複数の医用画像データとして取得してもよい。その場合、複数の算出用画像データは、異なる複数の医用画像データとの間で位置合わせ等の対応付けがされているものとする。例えば、異なる複数の医用画像データは、同一部位を撮像して得られた過去の複数の医用画像データの場合もあるし、パフュージョン画像データ等の場合のように、異なる種別の複数の機能画像データの場合もある。また、表示用画像データを生成する医用画像診断装置とは異なる医用画像診断装置で撮像して得られた複数の画像データであってもよい。なお、算出用画像取得機能742は、画像取得部又は算出用画像取得部の一例である。
【0105】
評価値算出機能743は、
図2に示す評価値算出機能443と同等の機能を含む。なお、評価値算出機能743は、評価値算出部の一例である。
【0106】
また、評価値算出機能743は、注目部位の推定と評価値の算出を、上記評価項目[1]~[9]に加え、次の評価項目[10]により行う。
【0107】
[10]画像の画素値
評価値算出機能743は、医用画像データの画素値に基づいて推定される病巣部位のz位置からの距離を評価値として算出する。というのも、PET画像に代表される機能画像等は、画像によっては画素値の大小によって操作者にとっての重要度が変化する場合があるからである。例えば、PET画像において画素値、つまり、SUV(Standardized Uptake Value)値を高く示す箇所は該当組織が活発に物質を取り込んでいることを意味し、SUV値が周囲と比べて異常に高い場合は悪性腫瘍の存在が疑われる。また、逆に周囲と比べて低い場合はその組織が機能していない可能性がある。このような機能画像から得られる値に基づいて、評価値が算出されてもよい。
【0108】
なお、評価値算出機能743は、上記評価項目[1]~[10]のいずれか1つを用いて評価値を算出してもよいし、上記評価項目[1]~[10]のいくつかを評価値要素として算出し、それらを組み合わせて1つの評価値を算出してもよい。後者の場合、評価値算出機能743は、複数の評価値要素を単純平均、又は、単純加算して1つの評価値を算出してもよいし、当該複数の評価値要素のうち操作者がより重要視すると推定される評価値要素の重みを他の評価値要素より重くする等、当該複数の評価値要素を重み付け平均、又は、重み付け加算して1つの評価値を算出してもよい。
【0109】
パラメータ算出機能744は、
図2に示すパラメータ算出機能444と同等の機能を含む。なお、パラメータ算出機能744は、パラメータ算出部の一例である。
【0110】
表示用画像取得機能745は、
図2に示す表示用画像取得機能445と同等の機能を含む。なお、表示用画像取得機能745は、表示用画像取得部の一例である。
【0111】
パラメータ取得機能746は、
図2に示すパラメータ取得機能446と同等の機能を含む。なお、パラメータ取得機能746は、パラメータ取得部の一例である。
【0112】
表示制御機能747は、
図2に示す表示制御機能447と同等の機能を含む。なお、表示制御機能747は、表示制御部の一例である。
【0113】
記憶制御機能748は、
図2に示す記憶制御機能448と同等の機能を含む。なお、記憶制御機能748は、記憶制御部の一例である。
【0114】
なお、医用画像処理装置70の動作については、
図9及び
図10に示すコンソール装置40の動作と同等であるので、説明を省略する。
【0115】
以上のように、医用画像処理装置70によると、倹像(image inspection)、スクリーニング検査等の日常の画像確認作業において、画像観察時における表示画像の微調整操作等における操作者の負荷を軽減しながら、操作者は、注目部位を含むz位置付近の画像が観察しやすくなる。倹像とは、診断を容易にするための画像のチェックや編集の作業を意味する。また、医用画像処理装置70によると、注目部位を含むz位置付近の表示画像が1操作によりゆっくりと更新されることになるため、操作者が複数の画像の端から端まで一息に操作をした後で更新を止めて特定の表示画像をじっくりと観察をしなくても、注目部位を含むz位置付近の表示画像が意識に残りやすくなる。このように、医用画像処理装置70によると、複数の表示用画像データの中から効率よく所望の表示用画像データを操作者に提示することができるので、診断効率を向上させることができる。
【0116】
3.第1の変形例
表示制御機能747(又は表示制御機能447)は、算出された感度パラメータを、第1の複数の表示用画像データにおけるz軸方向のスライス間隔と、第2の複数の表示用画像データにおけるz軸方向のスライス間隔との差に応じて調整することもできる。
【0117】
図12は、感度パラメータの調整を説明するための図である。
【0118】
例えば、表示制御機能747が第2の複数の表示用画像データを第1の複数の表示用画像データと並列表示して両方を操作する場合、操作者は、第1の複数の表示用画像データのうち表示画像のz位置が、第2の複数の表示用画像データのうち表示画像のz位置と同一となるように表示したいはずである。そこで、表示制御機能747は、複数の表示画像が同一のz位置を表示できるようにスライス間隔の差に応じて、両方又は一方の感度パラメータを調整する。
【0119】
このように、第1の変形例によれば、感度パラメータの調整を行うことで、診断効率をより向上させることができる。
【0120】
4.第2の変形例
各医用画像データとして、アキシャル断面のスライス画像データを例にとって説明したが、その場合に限定されるものではない。例えば、X線CT装置は、チルト状態でアキシャル断面から一定の角度をもつ複数のスライス画像データを生成することができる。その場合、評価値算出機能443は、上述した注目部位からのz軸方向の距離等に応じて評価値を算出する。また、MRI装置は、アキシャル断面の他に、サジタル断面又はコロナル断面の複数のスライス画像データを生成することができる。その場合、評価値算出機能443は、上述した注目部位からのx軸方向(サジタル断面に直交する方向)、又は、y軸方向(コロナル断面に直交する方向)の距離等に応じて評価値を算出する。また、MRI装置は、オブリーク断面の複数のスライス画像データを生成することもでき、その場合、評価値算出機能443は、スライスに直交する方向における注目部位からの距離等に応じて、評価値を算出する。
【0121】
さらに、医用画像診断装置において生成された複数のスライス画像データからボリュームデータが生成される場合がある。その場合、評価値算出機能443は、MPR(Multi-Planar Reconstruction)断面に直交する方向における注目部位からの距離等に応じて、評価値を算出することもできる。例えば、医用画像診断装置がX線CT装置である場合、ボリュームデータは、CTスキャンに基づくCTボリュームデータであってもよいし、CTスキャンの実行に先立って行われるプリスキャンである3次元スキャノ撮影に基づくスキャノデータであってもよい。
【0122】
3次元スキャノ撮影は、患者が載置された天板を架台装置に対して(又は、架台装置を天板に対して)移動させながらX線管及びX線検出器を患者の周りに回転させて行われるスキャンを意味し、ヘリカルスキャノとも呼ばれる。例えば、3次元スキャノ撮影は、後のCTスキャン時のX線モジュレーション条件を決定するために行われるものである。
【0123】
このように、第2の変形例によれば、注目部位からのz軸方向の距離に限らず、他の方向の距離に応じて評価値を算出することができる。
【0124】
5.第3の変形例
算出用画像取得機能442によって取得される各算出用画像データと、表示用画像取得機能445によって取得される各表示用画像データとは、断面方向が異なっていてもよい。例えば、各算出用画像データがアキシャル断面の画像データである一方、各表示用画像データがサジタル断面やMPR断面の画像データであってもよい。
【0125】
その場合、評価値算出機能443は、算出用のアキシャル断面の画像データを生成する際、表示用のサジタル断面やMPR断面に直交する方向における注目部位からの距離等に応じて、評価値を算出することができる。例えば、上述したように、算出用のアキシャル断面の画像データに基づいてボリュームデータが生成される場合に、評価値算出機能443は、ボリュームデータに基づいて、表示用のサジタル断面やMPR断面に直交する方向における注目部位からの距離等に応じて、評価値を算出する。
【0126】
6.第4の変形例
算出用画像取得機能442によって算出用画像データが複数取得されると共に、取得される各算出用画像データが、アキシャル断面等を含む任意断面のスライス画像データである場合を例にとって説明したが、その場合に限定されるものではない。例えば、算出用画像取得機能442によって算出用画像データが1つ取得されると共に、1つの算出用画像データがスキャノ画像データ(2次元又は3次元スキャノ画像データ)であってもよい。X線CT装置は、z-y平面、又は、z-x平面に投影された2次元スキャノ撮影を行うことで、2次元スキャノ画像データを生成することができるし、上述したように3次元スキャノ撮影を行うこともできる。なお、スキャノ画像データは、位置決め画像データ、又は、スカウト画像データ等とも呼ばれる。続いて、算出用画像データが、スキャノ画像データである場合の評価値の算出方法について説明する。
【0127】
第1に、X線CT装置は、スキャノ画像上でスキャン範囲を設定し、該当スキャン範囲ごとにヘリカルピッチを設定する。そこで、評価値算出機能443は、上記[1]のヘリカルピッチを用いて評価値を算出する場合、スキャノ画像データのz軸方向に対して割り当てられるヘリカルピッチ(評価値)を利用することで、z軸方向の各評価値を求めることができる。
【0128】
第2に、X線CT装置は、一定の画質を得るのに必要と思われる管電流を、スキャノ画像の、z軸に直交する断面又は線上の画素値を基に算出し、実際に撮影する際の管電流を調整する。また、X線CT装置は、調整された管電流の値を、z軸方向の各位置で設定する。つまり、スキャノ画像データのz軸に対して管電流(評価値)が割り当てられることになるので、評価値算出機能443は、上記[1]の管電流を用いて、z軸方向の各評価値を算出することができる。
【0129】
第3に、X線CT装置は、スキャノ画像データから注目部位を自動的に検出することができるし、又は、操作者の指定により注目部位を手動的に設定することができるので、z軸方向における注目部位の位置を認識することができる。そこで、評価値算出機能443は、上記[2]のROIを用いて評価値を算出する場合、スキャノ画像上のROIからのz軸方向の距離に基づいて、z軸方向の各評価値を求めることができる。
【0130】
7.第5の変形例
複数の医用画像データとして、位置が異なる複数のスライス画像データが採用される場合について説明したが、その場合に限定されるものではない。例えば、複数の医用画像データは、撮像時間が異なる複数のスライス画像データであってもよいし、位置及び撮像時間が異なる複数のスライス画像データであってもよいし、位置及び撮像時間が異なる複数の3次元画像データであってもよい。3次元画像データは、MPR画像データや、視点及び投影方向によりボリュームデータが投影処理された投影画像データ等を含む。
【0131】
図13は、位置及び撮像時間が異なる複数の3次元画像データに対する感度パラメータを説明するための図である。
図13は、医用画像データとして、管腔体内の観察が可能な仮想内視鏡(VE:Virtual Endoscopy)画像データを利用する場合を示す。
【0132】
VE画像の表示方法としては、管腔体の芯線に沿って視点を移動することで、VE画像を動画表示するフライスルー(Flythrough)表示がある。例えば、超音波診断装置を用いて、乳腺のフライスルー表示を行なう場合、操作者は、3次元走査が可能な超音波プローブ(メカニカルスキャンプローブ等)を患者の乳房に当接して「乳腺を含むボリュームデータ」を収集する。管腔体の輝度値に対応する輝度値を有する画素(ボクセル)が抽出されることで、ボリュームデータから管腔体の領域Bが抽出される。次いで、抽出された管腔体の領域Bが細線化処理されることで、管腔体の芯線Cが抽出される。次いで、透視投影法により、芯線C上の視点VからのVE画像データが生成される。なお、管腔体の芯線Cに沿って視点が移動されることで(
図13(A)に図示)、フライスルー表示用の複数のVE画像データが生成される。
【0133】
算出用画像取得機能742は、複数のVE画像データを取得する(
図13(B)に図示)。そして、評価値算出機能743は、算出用画像取得機能742によって取得された複数のVE画像データの評価値を算出する。また、パラメータ算出機能744は、評価値算出機能743によって算出された評価値に基づいて、表示対象である複数のVE画像データの操作量に対する表示画像の更新枚数を表す感度パラメータを算出する。
【0134】
このように、第5の変形例によれば、位置のみが異なる複数のスライス画像データのみならず、位置及び撮像時間が異なる複数の3次元画像データについても、複数の医用画像の中から効率よく所望の医用画像を取得し操作者に提示することで、診断効率を向上させることができる。
【0135】
8.その他の変形例
複数の表示用画像データに対する感度パラメータの適用の有無は、操作者が操作するスイッチ等の入力インターフェース73(又は入力インターフェース43)等により切り替えられるように構成されてもよい。
【0136】
また、表示制御機能747(又は、表示制御機能447)は、複数の表示用画像データに対して感度パラメータを適用しない状態で、操作者が複数の医用画像データを観察した後で再度観察を行う場合に、評価値の高いz位置のうち、1度目の観察時間が短かったz位置周辺のみ感度パラメータを適用してもよい。又は、見逃し防止のため、表示制御機能747(又は、表示制御機能447)は、1度目の観察時間が短かったz位置を「見逃した領域」として別途画面に表示させてもよい。
【0137】
さらに、表示制御機能747(又は、表示制御機能447)は、感度パラメータの調整方法の1つとして、特定の閾値範囲内の評価値に対応するz位置のみに感度パラメータを適用してもよい。
【0138】
また、表示制御機能747(又は、表示制御機能447)は、特定の閾値範囲内の評価値に対応する医用画像データを表示する際に、ズーム率や解像度、WW(Window Level)/WL(Window Width)、厚み等のように、感度パラメータ以外の要素を変更した画像をInset画像として画面に表示してもよい。Inset画像ではなく、元画像側の表示を変更してもよいことは言うまでもない。
【0139】
さらに、表示制御機能747(又は、表示制御機能447)は、「注目部位の強調表示中」等のように、感度パラメータが適用されている理由を示す文字情報を表示画面上に表示させてもよい。
【0140】
また、CT画像データと、MRI装置やPET装置等の他の医用画像診断装置によって収集された画像データとの連携も有り得る。例えば、複数の算出用CT画像データのうち、出血があった部位に対応する算出用CT画像データに対してROIが設定されると、医用画像処理装置70は、複数のMRI画像データのうち、ROIが設定された算出用CT画像データにz位置が対応するMR画像データの評価値を高く設定する。
【0141】
なお、画像生成機能441は、画像生成部の一例である。算出用画像取得機能442,742は、画像取得部又は算出用画像取得部の一例である。評価値算出機能443,743は、評価値算出部の一例である。パラメータ算出機能444,744は、パラメータ算出部の一例である。表示用画像取得機能445,745は、画像取得部又は表示用画像取得部の一例である。パラメータ取得機能446,746は、パラメータ取得部の一例である。表示制御機能447,747は、表示制御部の一例である。記憶制御機能448,748は、記憶制御部の一例である。
【0142】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、複数の医用画像の中から効率よく所望の医用画像を取得し操作者に提示することで、診断効率を向上させることができる。
【0143】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0144】
1 X線CT装置
40 コンソール装置(医用画像処理装置)
44 処理回路
70 医用画像処理装置
74 処理回路
441 画像生成機能
442,742 算出用画像取得機能
443,743 評価値算出機能
444,744 パラメータ算出機能
445,745 表示用画像取得機能
446,746 パラメータ取得機能
447,747 表示制御機能
448,748 記憶制御機能