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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】ガイドレール組付装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/02 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
B25J9/02 D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020019782
(22)【出願日】2020-02-07
(65)【公開番号】P2021122916
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002103
【氏名又は名称】弁理士法人にじいろ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】向 大志
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-277076(JP,A)
【文献】特開2017-227456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準側ガイドレールに対する平行度を調整しながら少なくとも一の調整側ガイドレールを台座にボルトにより組み付けるガイドレール組付装置において、
前記基準側ガイドレールと前記調整側ガイドレールとを横切るとともに、前記基準側ガイドレールの短軸方向に関して前記基準側ガイドレールの規制を受けながら前記基準側ガイドレールの長軸方向に沿って移動自在に設けられる本体部と、
前記本体部を前記長軸方向に沿って移動する第1移動部と、
前記本体部に前記短軸方向に沿って移動自在に設けられ、前記調整側ガイドレールを把持する把持部と、
前記把持部を前記短軸方向に沿って移動する第2移動部と、
前記把持部とともに前記短軸方向に沿って移動自在であって、前記長軸方向と前記短軸方向とに対して垂直な垂直方向に沿って移動自在に設けられるナット自動締結部と、
前記ナット自動締結部を前記垂直方向に沿って移動する第3移動部と、
前記本体部に取り付けられ、前記把持部の位置における前記基準側ガイドレールと前記調整側ガイドレールとの軸間距離又は前記軸間距離を導出可能な距離を計測する計測部と、
前記第1移動部、前記第2移動部、前記第3移動部、前記ナット自動締結部及び前記計測部を制御する制御部とを具備する、ガイドレール組付装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第2移動部を制御して、前記計測された軸間距離の所定の設定値に対する差がゼロ又は所定の閾値未満になるように前記把持部を移動させる、請求項1記載のガイドレール組付装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記本体部を断続的に移動させるために前記第1移動部を制御し、前記本体部が停止するごとに前記計測された距離に基づいて前記把持部を移動させるために前記第2移動部を制御する、請求項1又は2記載のガイドレール組付装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記本体部を前記ボルトの間隔を単位距離として断続的に移動させるために前記第1移動部を制御する、請求項3記載のガイドレール組付装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記本体部の停止ごとに前記ナット自動締結部を前記垂直方向に沿って移動させ、前記ナット自動締結部により前記ボルトを締めさせるために前記第3移動部と前記ナット自動締結部とを制御する、請求項3又は4記載のガイドレール組付装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記本体部を往復移動させるために前記第1移動部を制御する、請求項1乃至5のいずれか一項記載のガイドレール組付装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記本体部の往路において前記ボルトを所定のトルク未満で仮締めし、前記本体部の復路において前記所定のトルクで前記ボルトを本締めするために前記ナット自動締結部を制御する、請求項6記載のガイドレール組付装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記本体部の往路において前記計測された軸間距離の所定の設定値に対する差が第1の閾値未満になるように前記把持部を移動させ、前記本体部の復路において前記差が前記第1の閾値よりも低い第2の閾値未満になるように前記把持部を移動させるために前記第2移動部を制御する、請求項6又は7記載のガイドレール組付装置。
【請求項9】
前記計測部は、前記調整側ガイドレールまでの距離を計測する距離センサを有する、請求項1乃至8のいずれか一項記載のガイドレール組付装置。
【請求項10】
基準側ガイドレールに対する調整側ガイドレールの平行度を調整しながら前記調整側ガイドレールを台座にボルトにより組み付けるガイドレール組付装置において、
前記基準側ガイドレールと前記調整側ガイドレールとの間の距離を計測するための計測部と、
前記調整側ガイドレールを把持する把持部と、
前記把持部を前記基準側ガイドレールの短軸方向に沿って移動するための移動部と、
前記ボルトを締めるためのナット自動締結部と、
前記基準側ガイドレールの長軸方向に沿った複数の位置において、前記距離の計測と、前記計測された距離に応じた前記調整側ガイドレールの移動と、前記ナット自動締結部による前記ボルトの締め込みとを繰り返すために前記計測部と前記移動部と前記ナット自動締結部とを制御する制御部とを具備する、ガイドレール組付装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ガイドレール組付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボット等を水平方向に移動させる装置、例えば走行軸やロボットハンドの直動駆動部等にはリニアガイド機構と呼ばれる直動システムが多く使用されている。リニアガイド(以下ガイドレールという)を連結することにより、走行軸やロボットハンド直動の可動ストロークの延長に柔軟に対応することができる。リニアガイド機構はその性質上、一対のガイドレールの平行度等の設置誤差をゼロ又は微小化することが望ましい。
【0003】
従来、ガイドレールを台座に組み付ける作業(据え付け作業)は作業者が手作業により行っていた。作業者は、一方のガイドレールを台座にボルトで締結した後、他方のガイドレールにダイヤルゲージ等を当てて、両者の平行度を精細に計りながら他方のガイドレールの位置を微調整し、ボルトにより台座に締結していく。
【0004】
この組み付け作業は非常に工数を要するので作業者に多大な負担を強いるものであった。またその平行度の精度は作業者の経験や技能に依存していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガイドレールの平行度を担保しながらガイドレールの台座への組み付け作業の自動化を図ることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るガイドレール組付装置は、基準側ガイドレールに対する平行度を調整しながら少なくとも一の調整側ガイドレールを台座にボルトにより組み付ける。本体部は、基準側ガイドレールと調整側ガイドレールとを横切る。本体部は、基準側ガイドレールの短軸方向に関して基準側ガイドレールの規制を受けながら基準側ガイドレールの長軸方向に沿って移動自在に設けられる。第1移動部は本体部を移動する。把持部は、短軸方向に沿って移動自在に本体部に設けられ、調整側ガイドレールを把持する。第2移動部は把持部を移動する。ナット自動締結部は、短軸方向に沿って把持部とともに移動自在であって、長軸方向と短軸方向とに対して垂直な垂直方向に沿って移動自在に設けられる。第3移動部は垂直方向に沿ってナット自動締結部を移動する。計測部は、把持部の位置又はその近傍位置における基準側ガイドレールと調整側ガイドレールとの軸間距離又は軸間距離を導出可能な距離を計測する。制御部は、基準側ガイドレールに対する平行度を調整しながら調整側ガイドレールを台座に組み付けるために、第1移動部、第2移動部、第3移動部、ナット自動締結部及び計測部を制御する。
【発明の効果】
【0007】
本態様によれば、ガイドレールの台座への組み付け作業を自動化することができ、またガイドレールの平行度を担保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は一実施形態に係るガイドレール組付装置の斜視図である。
図2図2図1のガイドレール組付装置の正面図である。
図3図3図1のガイドレール組付装置の制御ユニットの構成図である。
図4図4図3のシステム制御部による調整側ガイドレールの組み付け処理手順を示すフローチャートである。
図5図5図4の組み付け処理手順を補足するための平面図である。
図6図6は変形例に係るガイドレール組付装置の斜視図である。
図7図7図6のガイドレール組付装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本実施形態について説明する。本実施形態に係るガイドレール組付装置は、ロボット等の典型的には直線的な移動を案内するためのリニアガイド機構を構成する例えば一対のリニアガイド(以下ガイドレールという)をそれらの平行度を調整しながら台座に自動的に組み付ける(据え付ける)ための装置である。ガイドレールの自動組付作業としては具体的には作業者が台座に事前に締結した一方のガイドレール(基準側ガイドレールという)を基準として、この基準側ガイドレールに対する平行度を自動的に調整しながら台座に他方のガイドレール(調整側ガイドレールという)を台座にボルトにより自動的に締結する。なお、ガイドレールとしては典型的には直線レールであるが、それに限定されることはなく、曲線レールであってもよい。ここでは直線レールとして説明する。また以下では、本実施形態に係るガイドレール組付装置が一対を構成する2本のガイドレールの平行度を調整しながらガイドレールを組み付ける例を説明するが、3本以上の複数のガイドレールに対しても本実施形態に係るガイドレール組付装置を適用させることができる。
【0010】
まず、ガイドレールについて簡単に説明する。図1図2に示すように床面上に設置された基準側ガイドレール13は柱状の台座11上に載置され、ボルト15により締結される。基準側ガイドレール13としては1本であっても、複数本が一列に連結されていてもよい。台座11にほぼ平行に設置された台座12には、基準側ガイドレール13と対をなす調整側ガイドレール14が載置される。調整側ガイドレール14には一定間隔(Δd)でボルト16の軸径よりも少し大きな内径を有するボルトスルーホール(図示せず)が開けられている。ボルト16は一般的な構造であり、その頭部とネジ(雄ネジ)が切られている軸部とからなる。台座12には一定間隔(Δd)で内周に雌ネジが形成されたネジ穴(図示せず)が形成されている。ボルト16は調整側ガイドレール14のスルーホールを通して台座12のネジ穴にねじ込まれる。
【0011】
ここで、「本締め」とはボルト16を規定トルクで締め付けることとして定義されるものとし、この本締により、調整側ガイドレール14は台座12に強く締め込まれ、締結される。また「仮締め」とはボルト16を規定トルク未満の低いトルクで緩く締めることとして定義される。この仮締めの状態では、ボルト16の軸部と調整側ガイドレール14のスルーホールとの間には間隙があるので、調整側ガイドレール14を台座12に対して若干移動させることが可能である。なお、組み付け作業に際してはその事前準備として調整側ガイドレール14を台座12上に載置し、スルーホールと台座12のネジ穴とを位置合わせし、ボルト16をスルーホールを通してネジ穴にほぼトルクをかけることなく緩くねじ込まれている。
【0012】
本実施形態に係るガイドレール組付装置1は、本体部(ベース部)21を有する。本体部21は、典型的には柱状体であり、基準側ガイドレール13と調整側ガイドレール14との全幅を超える長さを有している。もちろん本体部21は柱状体に限定されることはなく矩形板状体等他の形状であってもよい。本体部21は、基準側ガイドレール13の外側から調整側ガイドレール14の反対側に渡ってそれらを横切るように基準側ガイドレール13の長軸方向(X軸方向)に垂直な方向(Y軸方向)に平行に配置される。基準側ガイドレール13にはスライダブロック23が挿入されており、スライダブロック23上に本体部21がネジ等により取り付けられる。このスライダブロック23は当該ガイドレール組付装置を構成する構成部品としてリニアガイド機構の構成部品と別体に設けてもよいし、リニアガイド機構の構成部品としてのスライダブロックをそのまま活用してもよい。スライダブロック23により本体部21は基準側ガイドレール13の長軸方向(X軸方向)に沿って移動自在に設けられ、一方、基準側ガイドレール13の短軸方向(Y軸方向)に関しては基準側ガイドレール13の規制を受けて、移動することができない。
【0013】
基準側ガイドレール13及びスライダブロック23の定格許容モーメント以下であれば、本体部21を片持ち支持の状態で基準側ガイドレール13の長軸方向に垂直且つ水平な姿勢を維持したまま移動(並進)させることができる。調整側ガイドレール14は本体部21に対して構造上結合せず分離されているので、調整側ガイドレール14を本体部21に対して短軸方向に沿って移動又は変位させることができる。なお、定格許容モーメントを超過している場合には、例えば調整側ガイドレール14に挿入された図示しないスライダブロック上に本体部21の他端側を、調整側ガイドレール14を本体部21に対して移動可能な状態で載置させる。
【0014】
本体部21を基準側ガイドレール13の長軸方向に沿って移動駆動するために直線駆動機構30が基準側ガイドレール13に併設される。直線駆動機構30として典型的には、基準側ガイドレール13に対して平行に軸受36に軸支されるネジ軸31、ネジ軸31にねじ込まれ、ネジ軸31の順逆回転により前後に移動するナット32、ネジ軸31を回転駆動するサーボモータ33から構成されるボールネジ機構であるが、ラックピニオン機構等他の機構であってもよい。ナット32には本体部21が接続片34を介して接続される。接続片34として本体部21の急激な加減速を抑えるよう好ましくはゴム等の弾性材からなるフローティング部材である。
【0015】
本体部21の側面であって、調整側ガイドレール14を含む範囲に、スライドガイド42が短軸方向(Y軸方向)と平行に取り付けられる。スライドガイド42にはスライダブロック44が移動自在に挿入される。スライダブロック44には把持部(係合部)41が取り付けられる。調整側ガイドレール14が把持部41の移動に追従して移動するように、把持部41は調整側ガイドレール14に対して係合する。典型的には、把持部41はその下端部分が二股に分かれ、この二股の間に調整側ガイドレール14が差し込まれている。調整側ガイドレール14に対して把持部41が係合する構造は二股形状に限定されることはなく、例えば調整側ガイドレール14にスリットが長軸方向に沿って形成され、スリットにピンが挿入される構造であってもよい。
【0016】
把持部41の二股が調整側ガイドレール14に差し込まれているだけで、把持部41と調整側ガイドレール14との間は構造上結合されていないので、長軸方向(X軸方向)に沿って移動する本体部21に伴って把持部41は調整側ガイドレール14に沿って摺動することができる。サーボモータ43は図示しない減速機構及び回転直動変換機構とともに把持部41を移動駆動するために設けられる。サーボモータ43の駆動により、把持部41は調整側ガイドレール14を伴って短軸方向(Y軸方向)に沿って前後に移動する。それにより基準側ガイドレール13に対する調整側ガイドレール14の相対的な位置を変更し、平行度を調整することができる。
【0017】
スライダブロック44には、例えばL字形のアーム54が取り付けられる。L字形アーム54の先端には、ボルト16を締め付けるためのトルク制御可能な電動式のナット自動締結部(ナットランナとも呼ばれる)51が移動支持機構52を介してZ軸に沿って移動自在に支持されている。サーボモータ53は図示しない減速機構及び回転直動変換機構とともにナット自動締結部51を移動駆動するために設けられる。ナット自動締結部51が降下すると、その先端のビットがボルト16の頭部の十字溝に嵌合するように、ナット自動締結部51は調整側ガイドレール14を把持する把持部41に対して位置合わせされている。
【0018】
本体部21の把持部41と同じ側には、把持部41又はその近傍の位置における調整側ガイドレール14の内壁までの距離を測定するための距離センサ61が取り付けられる。距離センサ61としては例えば投光部と受光部とを装備した光学式センサであり、投光信号と受光信号との間の位相差から距離を計測することができる。距離センサ61は本体部21に固定され、距離センサ61から基準側ガイドレール13までの距離は固定値であるので、距離センサ61から調整側ガイドレール14の内壁までの距離から、基準側ガイドレール13と調整側ガイドレール14との軸間距離を導出することができる。
【0019】
図3に示すように、本実施形態に係るガイドレール組付装置の制御ユニット70は、システム制御部71に対して制御/データバス72を介してキーボード、ポインティングデバイス等の各種データやコマンドを操作者が入力するための入力部73と、調整側ガイドレール14の組み付け処理をシステム制御部71に実現させるためのプログラム及び入力データ等の各種データを記憶するための記憶部74と、システム制御部71からの指令値に従ってサーボモータ33,43,53を制御するサーボ制御部75,76,77とが接続されてなる。またシステム制御部71には距離センサ61と、ナット自動締結部51とが接続される。
【0020】
図4図3のシステム制御部71による調整側ガイドレール14の組み付け処理手順を示すフローチャートである。図5図4の組み付け処理手順を補足するための平面図である。準備作業として工程S11において、入力部73を介して、始点位置P0、折返位置Pn、単位距離Δd、軸間距離設定値Dset、閾値Dth1,Dth2が入力される。組み付け作業では本体部21を始点位置P0と折返位置Pnとの間を往復移動させながら平行度の精度を高めて最終的に調整側ガイドレール14を台座12に締結する(固定する)。なお、始点位置P0、折返位置Pnとはそれぞれ、それらの位置に本体部21が配置されたときに本体部21に連結されたナット自動締結部51のビットがボルト16の頭部上に降下するように決定されている。また本体部21は移動と停止とを繰り返し、配列されたボルト16各々を順番に仮締めし、また本締めする。この移動単位がボルト16の軸間距離に等価又はその整数倍の距離が単位距離Δdとして事前に設定される。軸間距離設定値Dsetは、ガイドレール13,14の軸間の設計距離(理想的軸間距離)に設定される。閾値Dth1,Dth2は、平行度確認の基準として設定される。閾値Dth2は、「本締め」の際に平行度を担保するための基準値として用いられ、ゼロ値又はリニアガイド機構に要求される平行度に関する仕様に従って平行度のずれの許容上限に設定される。閾値Dth1は「仮締め」の基準値として用いられ、閾値Dth2と同値に設定しても良いが、好ましくは閾値Dth2より若干大きい値に設定される。
【0021】
操作者による組み付け作業の開始指示をトリガとして、本体部21は開始位置P0に移動され、停止される(工程S12)。停止した状態で、基準側ガイドレール13と調整側ガイドレール14との軸間距離Dmesが計測される(工程S13)。具体的には、距離センサ61により、距離センサ61から調整側ガイドレール14の内壁までの距離が測定され、この距離に、距離センサ61から基準側ガイドレール13の中心軸までの距離(固定値)と調整側ガイドレール14の内壁とその中心軸までの距離(固定値)とを加算することにより、距離センサ61により測定された距離センサ61から調整側ガイドレール14の内壁までの距離を、基準側ガイドレール13と調整側ガイドレール14との軸間距離Dmesに換算することができる。勿論、処理上は、距離センサ61により測定された距離センサ61から調整側ガイドレール14の内壁までの距離を扱うものとしてもよい。
【0022】
軸間距離設定値Dsetに対する計測された軸間距離Dmesの差Ddeff.が計算され(工程S14)、その絶対値が閾値Dth1に対して比較される(工程S15)。差Ddeff.の絶対値が閾値Dth1以上であるとき、つまり軸間距離設定値Dsetに対する計測距離Dmesのずれが比較的大きいとき(工程S15;NO)、その差Ddeff.の極性と絶対値とに従って、その差Ddeff.をゼロ値にする又は少なくともゼロ値に近似させるための指令値が特定され、サーボ制御部76に供給される。指令値に応じてサーボ制御部76によりサーボモータ43が制御され、把持部41が移動する(工程S16)。把持部41の移動とともに調整側ガイドレール14が短軸方向(Y軸方向)と平行に移動される。把持部41の移動後、工程S13にリターンする。工程S13乃至S15の処理は、軸間距離設定値Dsetに対する計測距離Dmesの差Ddeff.の絶対値が閾値Dth1未満になるまで(工程S15;YES)、繰り返される。
【0023】
差Ddeff.の絶対値が閾値Dth1未満になったとき(工程S15;YES)、サーボ制御部77に所定の指令値が供給される。当該指令値に応じてサーボ制御部77はサーボモータ53を制御する。それによりナット自動締結部51のビットがボルト16の頭部に当設するまで降下する。そしてボルト16を「仮締め」するためにナット自動締結部51が制御される(工程S17)。なお、ある位置で調整側ガイドレール14を多少移動しても、既に仮締めが終了した位置では、その仮締めによりある程度の締結力が発揮されており、また調整側ガイドレール14にはある程度の撓む性質を有していることから、再度の位置ずれは生じ難いものである。
【0024】
本体部21の現在位置が折返位置Pnであるか否かが、サーボモータ33の積算値又は図示しない位置センサの出力に基づいて判定される(工程S18)。本体部21の現在位置が折返位置Pnに一致していないとき(工程S18;NO)、サーボ制御部75に折返位置Pnに向かう方向と単位距離Δdとに応じた指令値が供給される。それにより本体部21が折返位置Pnに向かって、単位距離Δdだけ移動し、停止する。そして工程S13にリターンする。
【0025】
工程S13乃至S19の処理ループは、本体部21の現在位置が折返位置Pnに到達するまで繰り返される。それにより調整側ガイドレール14の全体にわたって、基準側ガイドレール13に対する調整側ガイドレール14の軸間距離が閾値Dth1未満の平行度に調整される。
【0026】
本体部21の現在位置が折返位置Pnに一致するとき(工程S18;YES)、折返位置Pnから開始位置P0に向かって復路を本体部21が移動しながら、閾値Dth1より低い閾値Dth2を基準として、より精度の高い平行度の調整と「本締め」との作業に移行する。
【0027】
基準側ガイドレール13と調整側ガイドレール14との軸間距離Dmesが計測され(工程S20)、軸間距離設定値Dsetに対する計測された軸間距離Dmesの差Ddeff.が計算され(工程S21)、その絶対値が閾値Dth2に対して比較される(工程S22)。差Ddeff.の絶対値が閾値Dth2以上であるとき(工程S22;NO)、その差Ddeff.をゼロ値又はゼロ値に近似するように把持部41の移動が制御され(工程S23)、工程S20にリターンする。工程S20乃至S23の処理は、軸間距離設定値Dsetに対する計測距離Dmesの差Ddeff.の絶対値が閾値Dth2未満になるまで(工程S22;YES)、繰り返される。
【0028】
差Ddeff.の絶対値が閾値Dth2未満になったとき(工程S22;YES)、ナット自動締結部51のビットがボルト16の頭部に当設するまで降下し、ボルト16が「本締め」される(工程S24)。
【0029】
本体部21の現在位置が開始位置P0に帰還しているか否かが判定され(工程S25)、本体部21の現在位置が開始位置P0に一致していないとき(工程S25;NO)、本体部21が開始位置P0に向かって、単位距離Δdだけ移動し、停止する。そして工程S20にリターンする。
【0030】
工程S20乃至S26の処理ループは、本体部21の現在位置が開始位置P0に帰還するまで繰り返される。それにより調整側ガイドレール14の全体にわたって、基準側ガイドレール13に対する調整側ガイドレール14の軸間距離が閾値Dth2未満の平行度に調整される。
【0031】
以上のように本実施形態によれば、ガイドレールの台座への組み付け作業を自動化することができ、それにより作業者の作業負担を軽減することができる。また、本体部21を断続的に移動させながら、各位置で軸間距離を計測し、そのずれを修正していくことにより、基準側ガイドレール13に対する調整側ガイドレール14の平行度のずれを精度良く修正することができる。さらにある位置で基準側ガイドレール13に対する調整側ガイドレール14の平行度のずれを大きく修正すると、一度平行度を調整した他の位置で平行度が再度ずれてしまうこと、さらにそのずれが拡大してしまうことがあるが、本実施形態のように、往路では比較的精度の低い閾値を用いて平行度を少し高めておき、復路ではより精度の高い閾値を用いてより平行度をさらに高めていき、このように本体部21を往復移動させながら、少しずつ平行度を高めていくことにより、そのような平行度が再度ずれてしまう事態やそのずれが拡大してしまうような事態の発生を抑えて、より効率的に、より高精度で平行度を確保することができる。
【0032】
上述の説明では、1往復で平行度の調整及び仮締めから本締めまで完了させるものであるが、1往復に限定されるものではなく、複数回往復移動をさせながら平行度をさらに段階的に少しずつ高めていくようにてもよい。
【0033】
また上述では、直線的なガイドレールへの適用を一例に説明したが、本実施形態は曲線レールにも適用することができる。曲線部分では、内側の半径と外側の半径とが相違し、円弧軌道上の移動距離も相違するものであるが、この移動距離の相違に対しては、内側と外側それぞれに移動機構を装備させ、ガイドレールの曲率に応じて内側の移動距離と外側の移動距離とを連動制御することにより対応することができる。
【0034】
また上述では、基準側ガイドレール13と調整側ガイドレール14との軸間距離を光学式等の距離センサの出力に基づいて計測したが、基準側ガイドレール13と調整側ガイドレール14の全体を画角に収めるよう俯瞰カメラを設置し、その画像から基準側ガイドレール領域、調整側ガイドレール領域、把持部領域を抽出し、把持部を通る短軸(Y軸)上の基準側ガイドレールと調整側ガイドレールとの軸間距離を演算するようにしてもよい。
【0035】
また上述では、ガイドレール組付装置が2本のガイドレールの平行度を調整しながら自動的に組み付ける例について説明したが、3本以上のガイドレールの平行度を調整しながら自動的に組み付けるように構成を拡張することができる。図6図7には、4本のガイドレール13,14,113,114の平行度を調整しながら自動的に組み付けるガイドレール組付装置の構成例を示している。4本のガイドレール13,14,113,114のうち、1本のガイドレール13を基準として、この基準側ガイドレール13に対して他の3本のガイドレール14,113,114を調整側ガイドレールとしてそれぞれの平行度を調整しながら、3本のガイドレール14,113,114をそれぞれ対応する台座12,111,212に組み付ける。本体部121は4本のガイドレール13,14,113,114を横切るよう構成される。ガイドレール14,113,114に対して、把持部41,141,241、スライドガイド42,142,242、ナット自動締結部51,151,251等を個々に装備させる。基準側ガイドレール13に対する調整側ガイドレール14の軸間距離は距離センサ61の出力に基づいて計測されるものとし、基準側ガイドレール13に対する調整側ガイドレール114,214各々の軸間距離は俯瞰カメラの画像処理により演算されることが好ましい。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0037】
1…ガイドレール組付装置、11,12…台座、13…基準側ガイドレール、14…調整側ガイドレール、15、16…ボルト、21…本体部(ベース部)、23…スライダブロック、30…直線駆動機構、42…スライドガイド、41…把持部、51…ナット自動締結部(ナットランナ)、52…移動支持機構、33,43,53…サーボモータ、61…距離センサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7