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特許7473358合成樹脂製容器蓋及びこれを製造する方法並びにこの方法を遂行するための後加工装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】合成樹脂製容器蓋及びこれを製造する方法並びにこの方法を遂行するための後加工装置
(51)【国際特許分類】
   B65D 41/34 20060101AFI20240416BHJP
   B26D 3/08 20060101ALI20240416BHJP
   B26D 3/00 20060101ALI20240416BHJP
   B26D 1/03 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
B65D41/34 110
B26D3/08 Z
B26D3/00 601D
B26D1/03
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020029028
(22)【出願日】2020-02-25
(65)【公開番号】P2021133932
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100194629
【弁理士】
【氏名又は名称】小嶋 俊之
(72)【発明者】
【氏名】中村 真
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-111193(JP,A)
【文献】特表2018-510825(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1830730(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 41/34
B26D 3/08
B26D 3/00
B26D 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口頚部の外周面には雄螺条及び該雄螺条の下方に位置する係止あご部が形成されている容器に適用される合成樹脂製容器蓋であって、天面壁及び該天面壁の周縁から垂下する筒状スカート壁を有し、該スカート壁の内周面には該雄螺条に螺合せしめられる雌螺条が形成されている本体と、周方向に延在する破断可能ラインを介して該スカート壁に接続され且つ内周面には該係止あご部に係止せしめられる係止手段が配設されている筒状タンパーエビデント裾部とを含む合成樹脂製容器蓋にして、
該破断可能ラインは、周方向に延在する特定領域を除いて、周方向に間隔をおいて周方向に延びる複数個の第一のスコアを形成することによって或いは周方向に連続して溝を形成して残留厚さを低減することによって規定され、
該特定領域においては、該スカート壁の下部を周方向に間隔をおいて周方向に延在する一対の第二のスコアと、該タンパーエビデント裾部の上部を周方向に間隔をおいて周方向に延びる一対の第三のスコアと、該第三のスコアよりも軸線方向下方において該タンパーエビデント裾部を周方向に間隔をおいて周方向に延びる一対の第四のスコアと、該第三のスコアよりも軸線方向下方において該タンパーエビデント裾部を周方向に延びる一個の第五のスコアとが形成されており、該第三のスコアの各々の内側端は該第二のスコアの各々の内側端よりも周方向外側に位置し、該第三のスコアの各々の外側端は該第二のスコアの各々の外側端よりも周方向外側に位置し、該第四のスコアの各々の内側端は該第三のスコアの各々の該内側端よりも周方向内側に位置し、該第五のスコアの両端の各々は該第二のスコアの各々の該内側端及び該第四のスコアの各々の該内側端と整合して位置し又は周方向外側に位置し、
該特定領域においては、更に、該第二のスコアの各々の内側端部、該第四のスコアの内側端部及び該第五のスコアの両端部の各々を接続する、軸線方向に延びる一対の第六のスコアが形成されている、
ことを特徴とする合成樹脂製容器蓋。
【請求項2】
該破断可能ラインは、該特定領域を除いて、周方向に間隔をおいて周方向に延びる複数個の該第一のスコアを形成することによって規定されている、請求項1記載の合成樹脂製容器蓋。
【請求項3】
該第五のスコアは該第四のスコアよりも軸線方向下方に位置する、請求項1又は2に記載の合成樹脂製容器蓋。
【請求項4】
該第二のスコアの各々の該内側端と該第四のスコアの各々の該内側端とは整合して位置し、該第五のスコアの各々該両端の各々は該第二のスコアの各々の該内側端及び該第四のスコアの各々の該内側端よりも周方向外側に位置する、請求項3記載の合成樹脂製容器蓋。
【請求項5】
該第三のスコアの各々は該破断可能ラインと軸線方向において整合して位置し、該第三のスコアの各々の該外側端は該破断可能ラインに直接的に接続されている、請求項1から4までのいずれかに記載の合成樹脂製容器蓋。
【請求項6】
該特定領域には、更に、該第三のスコアの各々の外側端部を該破断可能ラインに接続する、軸線方向に延びる第七のスコアが形成されている、請求項1から5までのいずれかに記載の合成樹脂製容器蓋。
【請求項7】
請求項1から5までのいずれに記載の合成樹脂製容器蓋を製造する方法にして、
該破断可能ライン、該第二のスコア、該第三のスコア、該第四のスコア、該第五のスコア及び該第六のスコアが形成されていない形態の未完成容器蓋を圧縮成形又は射出成形する未完成容器蓋成形工程と、
該未完成容器蓋成形工程の後に、該未完成容器に切断刃を作用せしめて該破断可能ライン、該第二のスコア、該第三のスコア、該第四のスコア、該第五のスコア及び該第六のスコアを形成する後加工工程と、
を含む方法。
【請求項8】
該後加工工程においては、外周端縁又は内周端縁に切断刃が配設されている弧状切断工具の該外周端縁又は該内周端縁に沿って該未完成容器蓋を自転及び公転せしめる、請求項7記載の方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の方法における該後加工工程を遂行するための後加工装置にして、
該破断可能ラインを形成するための弧状板形状の第一の切断刃、該第二のスコアを形成するための弧状板形状の第二の切断刃、該第三のスコアを形成するための弧状板形状の第三の切断刃、該第四のスコアを形成するための弧状板形状の第四の切断刃、及び該第五のスコアを形成するための弧状板形状の第五の切断刃が積層された第一の切断工具と、
該第六のスコアを形成するための第六の切断刃が配設された第二の切断工具とを含み、
該第一の切断工具と該第二の切断工具とは周方向に連接されている後加工装置。
【請求項10】
請求項6を引用する請求項7記載の方法における該後加工工程を遂行する請求項9の後加工装置にして、
該第二の切断工具には、該第七のスコアを形成するための第七の切断刃も配設されている、後加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口頸部の外周面には雄螺条及びこの雄螺条の下方に位置する係止あご部が形成されている容器に適用され、容器の口頸部を開封した後においても容器蓋の全体が容器の口頸部から分離されることがない、タンパーエビデント特性を備えた合成樹脂製容器蓋及びこれを製造する方法並びにこの方法を遂行するための後加工措置に関する。
【背景技術】
【0002】
口頸部の外周面には雄螺条及びこの雄螺条の下方に位置する係止あご部が形成されている容器に適用される合成樹脂製容器蓋として、下記特許文献1には、天面壁及びこの天面壁の周縁から垂下する筒状スカート壁を有し、スカート壁の内周面には口頸部の雄螺条に螺合せしめられる雌螺条が形成されている本体と、周方向に間隔をおいて配設された複数個の破断橋絡部を介して本体のスカート壁に接続され、内周面には係止あご部に係止せしめられる係止手段が配設されている筒状タンパーエビデント裾部と、を含む形態の合成樹脂製容器蓋が開示されている。本体のスカート壁には下方に突出する突出片が配設されており、突出片の周方向両側には、本体のスカート壁とタンパーエビデント裾部とを接続し且つタンパーエビデント裾部に対する本体の上方への移動を許容する非破断接続片が配設されている。
【0003】
上記のとおりの容器蓋を容器の口頸部に装着して口頸部を密封する際には、口頸部に容器蓋を被嵌して閉方向に回転し、容器蓋の雌螺条を口頸部の雄螺条に螺合せしめる。螺合の進行に応じて口頸部に対して容器蓋が下降され、タンパーエビデント裾部に形成されている係止手段は口頸部の係止あご部を弾性的に乗り越えてその下方に位置せしめられる。口頸部を開封する際には、容器蓋を開方向に回転せしめて口頸部の雄螺条と容器蓋の雌螺条との螺合を解除する。螺合の解除に応じて容器蓋の本体は口頸部に対して上昇されるが、タンパーエビデント裾部は係止手段が口頸部の係止あご部に係止することによって上昇が阻止され、従って破断橋絡部に応力が生成され破断橋絡部が破断される。破断橋絡部が破断された後に本体が上昇を続け、タンパーエビデント裾部から本体が上方に離隔されると、これに応じて非破断接続片が変形せしめられるが、非破断接続片が破断されることはなくタンパーエビデント裾部は口頸部に装着され続け、本体が口頸部から離脱された後においても本体は非破断接続片を介してタンパーエビデント裾部に接続させ続け、従って容器の口頸部から分離されることはない。容器蓋の本体が口頸部から離脱された後においては、非破断接続片の所定部位を旋回中心として容器蓋の本体が口頸部から離隔する方向に旋回される。そして、容器蓋の本体が所定角度を超えて旋回されると、スカート壁に形成されている突出片の先端部が口頸部の係止あご部を弾性的に乗り越えて係止あご部の上面側に位置し、これによって本体が口頸部に接近する方向に戻ることが阻止され、本体は口頸部から離隔した位置に保持され、口頸部が開封された状態に維持させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-31202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような本体とタンパーエビデント裾部とが非破断接続片を介して接続される合成樹脂製容器蓋は、その形態が比較的複雑であることから、通常、複数個の割型を使用した射出成形によって形成される。このような複雑な形状の容器蓋を複数個の割型を使用して射出成型する場合、複数個の割型によって規定される流路が複雑となりかかる流路中での溶融樹脂の流動性が低下し、成形に相当の時間を要する。また、射出成形をするための成形型も複雑なものとなり、製造コストが増大する。
【0006】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、容器の口頸部を開封した後においても容器蓋の全体が容器の口頸部から分離されることがない、タンパーエビデント特性を備えた合成樹脂製容器蓋を迅速且つ低コストで製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、何らのスコアも形成されていない未完成容器蓋に、後加工として複数のスコアを夫々所定位置に形成することで、上記主たる技術的課題を解決できることを見出した。
【0008】
即ち、本発明によれば、上記主たる技術的課題を達成する容器蓋として、口頚部の外周面には雄螺条及び該雄螺条の下方に位置する係止あご部が形成されている容器に適用される合成樹脂製容器蓋であって、天面壁及び該天面壁の周縁から垂下する筒状スカート壁を有し、該スカート壁の内周面には該雄螺条に螺合せしめられる雌螺条が形成されている本体と、周方向に延在する破断可能ラインを介して該スカート壁に接続され且つ内周面には該係止あご部に係止せしめられる係止手段が配設されている筒状タンパーエビデント裾部とを含む合成樹脂製容器蓋にして、
該破断可能ラインは、周方向に延在する特定領域を除いて、周方向に間隔をおいて周方向に延びる複数個の第一のスコアを形成することによって或いは周方向に連続して溝を形成して残留厚さを低減することによって規定され、
該特定領域においては、該スカート壁の下部を周方向に間隔をおいて周方向に延在する一対の第二のスコアと、該タンパーエビデント裾部の上部を周方向に間隔をおいて周方向に延びる一対の第三のスコアと、該第三のスコアよりも軸線方向下方において該タンパーエビデント裾部を周方向に間隔をおいて周方向に延びる一対の第四のスコアと、該第三のスコアよりも軸線方向下方において該タンパーエビデント裾部を周方向に延びる一個の第五のスコアとが形成されており、該第三のスコアの各々の内側端は該第二のスコアの各々の内側端よりも周方向外側に位置し、該第三のスコアの各々の外側端は該第二のスコアの各々の外側端よりも周方向外側に位置し、該第四のスコアの各々の内側端は該第三のスコアの各々の該内側端よりも周方向内側に位置し、該第五のスコアの両端の各々は該第二のスコアの各々の該内側端及び該第四のスコアの各々の該内側端と整合して位置し又は周方向外側に位置し、
該特定領域においては、更に、該第二のスコアの各々の内側端部、該第四のスコアの内側端部及び該第五のスコアの両端部の各々を接続する、軸線方向に延びる一対の第六のスコアが形成されている、
ことを特徴とする合成樹脂製容器蓋が提供される。
【0009】
好ましくは、該破断可能ラインは、該特定領域を除いて、周方向に間隔をおいて周方向に延びる複数個の該第一のスコアを形成することによって規定されている。好適には、該第五のスコアは該第四のスコアよりも軸線方向下方に位置する。この場合には、該第二のスコアの各々の該内側端と該第四のスコアの各々の該内側端とは整合して位置し、該第五のスコアの各々該両端の各々は該第二のスコアの各々の該内側端及び該第四のスコアの各々の該内側端よりも周方向外側に位置するのがよい。好ましくは、該第三のスコアの各々は該破断可能ラインと軸線方向において整合して位置し、該第三のスコアの各々の該外側端は該破断可能ラインに直接的に接続されている。該特定領域には、更に、該第三のスコアの各々の外側端部を該破断可能ラインに接続する、軸線方向に延びる第七のスコアが形成されているのが好適である。
【0010】
また、本発明に従って構成される合成樹脂製容器蓋を製造する方法として、該破断可能ライン、該第二のスコア、該第三のスコア、該第四のスコア、該第五のスコア及び該第六のスコアが形成されていない形態の未完成容器蓋を圧縮成形又は射出成形する未完成容器蓋成形工程と、
該未完成容器蓋成形工程の後に、該未完成容器に切断刃を作用せしめて該破断可能ライン、該第二のスコア、該第三のスコア、該第四のスコア、該第五のスコア及び該第六のスコアを形成する後加工工程と、
を含む方法が提供される。
【0011】
この場合には、該後加工工程においては、外周端縁又は内周端縁に切断刃が配設されている弧状切断工具の該外周端縁又は該内周端縁に沿って該未完成容器蓋を自転及び公転せしめるのが好ましい。
【0012】
さらに、上記の方法を遂行する加工装置として、該破断可能ラインを形成するための弧状板形状の第一の切断刃、該第二のスコアを形成するための弧状板形状の第二の切断刃、該第三のスコアを形成するための弧状板形状の第三の切断刃、該第四のスコアを形成するための弧状板形状の第四の切断刃、及び該第五のスコアを形成するための弧状板形状の第五の切断刃が積層された第一の切断工具と、
該第六のスコアを形成するための第六の切断刃が配設された第二の切断工具とを含み、
該第一の切断工具と該第二の切断工具とは周方向に連接されている後加工装置が提供される。
【0013】
この場合には、該第二の切断工具には、該第七のスコアを形成するための第七の切断刃も配設されているようにすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の合成樹脂製容器蓋には、破断可能ライン、第二のスコア、第三のスコア、第四のスコア、第五のスコア及び第六のスコアが所定位置に夫々形成されており、これにより、容器の口頸部を開封した後においても容器蓋の全体が容器の口頸部から分離されることはなく、本体とタンパーエビデント裾部との接続が維持される。そして、かような本発明の合成樹脂製容器蓋は、最初に比較的単純な形態の未完成容器蓋を成形し、次いで後加工として未完成容器蓋の所要位置に破断可能ライン、第二のスコア、第三のスコア、第四のスコア、第五のスコア及び第六のスコアを形成するようにすることで製造することができる。上記未完成容器蓋は、その形態が比較的単純であることから、射出成形のみならず圧縮成形によっても成形することができる。圧縮成形は射出成形に比べて迅速に成形することが可能であることから、上記未完成容器蓋を圧縮成形によって成形した場合には、本発明の合成樹脂製容器蓋は極めて迅速に製造される。上記未完成容器蓋を射出成形によって成形した場合であっても、未完成容器蓋の構造そのものが比較的単純であるため、溶融樹脂の流動性が低下することはなく、本発明の合成樹脂製容器蓋は比較的迅速に製造される。更に、いずれの成形方法で未完成容器蓋を成形した場合であっても、成形型は比較的簡単な形状となることから、成形型の製造コストが抑制され、結果的に容器蓋の製造コストは低減される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に従って構成された容器蓋の好適実施形態を示す正面図。
図2図1に示す容器蓋の背面図。
図3図1に示す容器蓋の一部を断面で示す正面図。
図4図1の容器蓋の本体を容器の口頸部から離脱せしめるために本体を開方向に回転せしめて上昇せしめた開封操作の中間状態を示す正面図。
図5図1の容器蓋の本体を容器の口頸部から離脱した後に口頸部から離隔する方向に所定開位置まで旋回した状態を、一部を断面で示す側面図。
図6図1に示す容器蓋を製造するための後加工装置を示す斜視図。
図7図6に示す後加工装置を展開して示す正面図。
図8図1に示す容器蓋を製造するための後加工装置の変形例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明に従って構成された合成樹脂製容器蓋及びこれを製造する方法並びにこの方法を遂行するための加工装置の好適実施形態について、更に詳述する。
【0017】
最初に、本発明に従って構成された合成樹脂製容器蓋について説明する。図1乃至図3を参照して説明すると、ポリエチレン又はポリプロピレンの如き適宜の合成樹脂から射出成形又は圧縮成形によって好都合に一体成形することができる、全体を番号2で示す容器蓋は、本体4とタンパーエビデント裾部6とを含んでいる。本体4は円形天面壁8とこの天面壁8の周縁から垂下する円筒形状のスカート壁10を有する。天面壁8の内面には2つのシール片、即ち外側環状シール片12及び内側環状シール片14が形成されている。外側環状シール片12及び内側環状シール片14の間には、天面壁8の内面から下方に突出する円環形状の微小突条16も形成されている。スカート壁10の外周面にはそこに掛けられる指の滑りを防止するための凹凸18が繰り返し形成されている。スカート壁10の内周面には雌螺条20が形成されている。タンパーエビデント裾部6は全体として円筒形状であり、周方向に延在する破断可能ライン22を介して本体4のスカート壁10に接続されている。破断可能ライン22は、周方向に延在する特定領域24を除いて、周方向に間隔をおいて周方向に延びる複数個の第一のスコア26を形成することによって規定されている。破断ライン22中の、第一のスコア26が形成されていない部分は残留部として番号27で示される。所望ならば、破断可能ライン22は、周方向に連続して溝を形成して残留厚さを低減することによって規定してもよい。タンパーエビデント裾部6の内周面には係止手段が配設されている。図示の実施形態において、係止手段は周方向に間隔をおいて形成された複数個の弧状係止片28から構成されている。複数個の弧状係止片28の各々は、タンパーエビデント裾部6の内周面に接続された基端から軸線方向上方及び半径方向内方に延出せしめられている。図示の実施形態において係止手段は周方向に間隔を置いて配設された複数個の弧状係止片28から構成されているが、所望ならば周方向に連続して延在しタンパーエビデント裾部6の内周面に接続された基端から軸線方向上方及び半径方向内方に延出する環状の係止片から係止手段を構成することもできる。
【0018】
図1を参照して説明すると、特定領域24においては、スカート壁10の下部を周方向に間隔をおいて周方向に延在する一対の第二のスコア30と、タンパーエビデント裾部6の上部を周方向に間隔をおいて周方向に延びる一対の第三のスコア32と、第三のスコア32よりも軸線方向下方においてタンパーエビデント裾部6を周方向に間隔をおいて周方向に延びる一対の第四のスコア34と、第三のスコア32よりも軸線方向下方においてタンパーエビデント裾部6を周方向に延びる一個の第五のスコア36とが形成されている。図示の実施形態においては、第五のスコア36は第四のスコア34よりも軸線方向下方に位置しているが、これに替えて、第五のスコア36を軸線方向に見て第三のスコア32と第四のスコア34との間に配置し、一対の第四のスコア34の各々の内側端を相互に接続するようにしてもよい。第二のスコア30、第三のスコア32、第四のスコア34、及び第五のスコア36はいずれも周方向に直線状に実質上水平に延在している。一対の第二のスコア30の一方は他方よりも周方向長さが長く、一対の第四のスコア34の他方は一方よりも周方向長さが長く、一対の第三のスコア32の各々の周方向長さは同一である。この理由については後に言及する。また、第三のスコア32の各々の内側端は第二のスコア30の各々の内側端よりも周方向外側に位置し、第三のスコア32の各々の外側端は第二のスコア30の各々の外側端よりも周方向外側に位置し、第四のスコア34の各々の内側端は第三のスコア32の各々の内側端よりも周方向内側に位置し、第五のスコア36の両端の各々は第二のスコア30の各々の内側端及び第四のスコア34の各々の内側端よりも周方向外側に位置している。所望ならば、第五のスコア36の両端の各々は第二のスコア30の各々の内側端及び第四のスコア34の各々の内側端と整合して位置してもよい。
【0019】
特定領域24においては、更に、第二のスコア30の各々の内側端部、第四のスコア34の内側端部及び第五のスコア36の両端部の各々を接続する、軸線方向に延びる一対の第六のスコア38が形成されている。図示の実施形態においては、第二のスコア30の各々の内側端と第四のスコア34の各々の内側端とは整合して位置し、第五のスコア36の両端の各々は第二のスコア30の各々の内側端及び第四のスコア34の各々の内側端よりも周方向外側に位置しており、第六のスコア38は軸線方向に直線状に延びている。
【0020】
特定領域24には、更に、第三のスコア32の各々の外側端部を破断可能ライン22に接続する、軸線方向に延びる第七のスコア40が形成されている。図示の実施形態においては、第三のスコア32の各々の外側端は破断可能ライン22の両端の各々よりも周方向外側に位置しており、第七のスコア40は軸線方向に直線状に延びている。所望ならば、第三のスコア32の各々の外側端は破断可能ライン22の両端の各々と整合して位置してもよい。さらに、第三のスコア32の各々を破断可能ライン22と軸線方向において整合して位置させ、第三のスコア32の各々の外側端が破断可能ライン22に直接的に接続されるようにすることもできる。換言すれば、第三のスコア32の各々を破断可能ライン22と軸線方向において整合して位置させることで、第七のスコア40を介することなく、第三のスコア32の両端を破断可能ライン22に直接的に接続することもできる。
【0021】
図1を参照して説明を続けると、特定領域24に上述したとおりのスコアを夫々形成したことで、特定領域24には突出片42と、一対の非破断接続片44a及び44bとが規定される。突出片42は第五のスコア36と第六のスコア38とによって規定され、スカート壁10の下端から下方に直線状に突出する。
【0022】
一対の非破断接続片44a及び44bの各々は第二のスコア30、第三のスコア32、第四のスコア34、及び第六のスコア38によって規定され、上記突出片42の周方向両側に夫々隣接して位置する。図示の実施形態における非破断接続片44aは、スカート壁10の下端縁に接続されて周方向片側(図1において右側)に実質上水平に延びる第一の傾動部46a、中間部48a、中間部48aに続いて第一の傾動部46aの下方を周方向他側(図1において左側)に実質上水平に延びてタンパーエビデント裾部6に接続されている第二の傾動部50aから構成されている。図1に示す状態において、第一の傾動部46aの上辺は第二のスコア30によって、下辺は第三のスコア32によって夫々規定される。中間部48aは第二のスコア30及び第四のスコア34の周方向片端部(同図において右側端部)と第六のスコア38とによって規定され、上部は第一の傾動部46aの、下部は第二の傾動部46aの夫々周方向片端に接続されている。第二の傾動部50aの上辺は第三のスコア32によって、下辺は第四のスコア34によって夫々規定される。非破断接続片44bも、スカート壁10の下端縁に接続されて周方向片側(図1において左側)に実質上水平に延びる第一の傾動部46b、中間部48b、中間部48bに続いて第一の傾動部46bの下方を周方向他側(図1において右側)に実質上水平に延びてタンパーエビデント裾部6に接続されている第二の傾動部50bから構成されている。図1に示す状態において、第一の傾動部46bの上辺は第二のスコア30によって、下辺は第三のスコア32によって夫々規定される。中間部48bは第二のスコア30及び第四のスコア34の周方向他端部(同図において左側端部)と第六のスコア38とによって規定され、上部は第一の傾動部46bの、下部は第二の傾動部46bの夫々周方向他端に接続されている。第二の傾動部50bの上辺は第三のスコア32によって、下辺は第四のスコア34によって夫々規定される。図1を参照することによって明確に理解される如く、非破断接続片44aと非破断接続片44bとは線対称ではなく構成要素の周方向寸法が幾分相違せしめられている(この理由については、本願の出願人によって先に特許出願された特開2012-76771号公報の記載を参照されたい)。
【0023】
上述したとおりの容器蓋2は以下のようにして製造される。即ち、最初に、破断可能ライン22、第二のスコア30、第三のスコア32、第四のスコア34、第五のスコア36及び第六のスコア38が形成されていない形態の未完成容器蓋(図示せず)を圧縮成形又は射出成形し(未完成容器蓋成形工程)、その後に、未完成容器に切断刃を作用せしめて破断可能ライン22、第二のスコア30、第三のスコア32、第四のスコア34、第五のスコア36及び第六のスコア38を形成する(後加工工程)。図示の実施形態においては、容器蓋2には第七のスコア40も形成されており、この第七のスコア40も未完成容器成形工程では形成されておらず、後加工工程において形成される。後加工工程においては、外周端縁又は内周端縁に切断刃が配設されている弧状切断工具の外周端縁又は内周端縁に沿って未完成容器蓋を自転及び公転せしめることで、上記のスコアが夫々形成される。上述した切断刃及びこれが配設された弧状切断工具については後に更に言及する。
【0024】
図3には、容器蓋2と共に容器の口頸部52も図示されている。ポリエチレンテレフタレートの如き適宜の合成樹脂或いはガラスから形成することができる容器の口頸部52は全体として円筒形状であり、その上面は開口されている。口頸部52の外周面には、雄螺条54とこの雄螺条54の下方に位置する係止あご部56が形成されている。係止あご部56の下方には、既知のサポートリング58も形成されている。
【0025】
口頸部52に容器蓋2を装着して口頸部52を密封する際には、口頸部52に容器蓋2を被嵌して閉方向(図3において上方から見て時計方向)に回転せしめ、口頸部52の雄螺条54に容器蓋2の雌螺条20を螺合せしめる。雄螺条54に対する雌螺条20の螺合の進行に応じて容器蓋2は口頸部52に対して漸次下降する。図3に図示する状態まで口頸部52に対して容器蓋2が下降せしめられると、容器蓋2の本体4における天面壁8の内面に形成されている内側環状突条12及び外側環状突条14が夫々口頸部52の内周面及び外周面に密接せしめられると共に微小突条16が口頸部52の頂面に当接して、口頸部52が密封される。容器蓋2のタンパーエビデント裾部6の内周面に配設されている複数個の弧状係止片28の各々は、弾性的に変形して口頸部52の係止あご部56よりも下方に位置する。
【0026】
口頸部52を開封する際には、容器蓋2を開方向(図3において上方から見て反時計方向)に回転せしめ、口頸部52の雄螺条54に対する容器蓋2の雌螺条20の螺合を漸次解除する。螺合を漸次解除すると容器蓋2の本体4は開方向に回転せしめられると共に上昇せしめられるが、タンパーエビデント裾部6は弧状係止片28の上面が口頸部52の係止あご部56の下面に係止して上昇が阻止され、これに起因して破断可能ライン22中の残留部27に相当な応力が生成され、残留部27が破断される。しかる後においては、容器蓋2の本体4は開方向への回転と共に上昇し、タンパーエビデント裾部6から上方に漸次離間せしめられる。図1及び図3と共に図4を参照することによって理解されるとおり、タンパーエビデント裾部6から本体4が漸次上方に離間せしめられると、非破断接続片44aの第一の傾動部46a及び非破断接続片44bの第二の傾動部50bは夫々の中間部48a及び第二の傾動部50bの下端を中心として図3及び図4において時計方向に旋回、即ち時計方向に傾動され、一方非破断接続片44aの第二の傾動片50a及び非破断接続片44bの第一の傾動部46bは夫々の下端及び上端を中心として図3及び図4において反時計方向に旋回、即ち反時計方向に傾動され、これに応じて非破断接続片44a及び44bにおける第一の傾動部46a及び46b並びに第二の傾動部50a及び50bの鉛直線に対する傾斜角度が漸次低減される。そして、口頸部52の雄螺条54に対する容器蓋2の雌螺条20の螺合が完全に解除されると、容器蓋2の本体4は口頸部52から離脱される。しかしながら、本体4は非破断接続片44a及び44bを介して、口頸部52に装着され続けているタンパーエビデント裾部6に接続され続けている故に、容器の口頸部52から離間されることはない。
【0027】
容器蓋2の本体4が口頸部52から離脱された後においては、非破断接続片44a及び44bの中間部48a及び48bを旋回支点として本体4を口頸部52から遠ざかる方向に、図5に図示する状態まで旋回せしめる。かくすると、本体4に形成されている突出片42の下端部(先端部)外側面が口頸部52の係止あご部56の上面に当接し、本体4のスカート壁10の下端がタンパーエビデント裾部6の外周面に当接又は近接し、これによって本体4は図5に図示する位置に解除自在に保持される。従って、消費者は本体4の存在によって阻害されることなく、容器内に存在する清涼飲料の如き内容物を飲食することができる。
【0028】
内容物の飲食を途中で中断した場合には、図5に図示する位置に保持されている本体4を口頸部52に接近する方向(図5において反時計方向)に強制的に旋回せしめて再び口頸部52に被嵌し、そして容器蓋2を閉方向に回転せしめて口頸部52の雄螺条54に容器蓋2の雌螺条20を螺合せしめ、かくして容器蓋2を再び図3に図示する状態に位置せしめ、口頸部52を仮密封することができる。
【0029】
続いて、容器蓋2を製造するための装置であって、上述した後加工工程を遂行するための後加工装置について説明する。
図6及び図7を参照して説明すると、全体を番号60で示す後加工装置は第一の切断工具62及び第二の切断工具64を含んでいる。第一の切断工具62は弧状板形状の第一の支持部材66を備えており、この第一の支持部材66の上面に、破断可能ライン22を形成するための弧状板形状の第一の切断刃68、第二のスコア30を形成するための弧状板形状の第二の切断刃70、第三のスコア32を形成するための弧状板形状の第三の切断刃72、第四のスコア34を形成するための弧状板形状の第四の切断刃74、及び第五のスコア36を形成するための弧状板形状の第五の切断刃76が積層して適宜の固定方法によって固定されている。第一の切断刃68乃至第五の切断刃76の夫々の周方向所要領域には、径方向外側に突出してその先端が鋭利な作用部(各切断刃の符号の末尾に「a」を付して示す)が周方向に連続して形成されている。第一の切断工具62は更に、第一の切断刃68乃至第五の切断刃76が軸方向の所要位置に配置されるようにするための弧状板形状の補助板79を含んでいる(図7を参照されたい)。補助板79は第一の切断刃68乃至第五の切断刃76と共に積層されている。
【0030】
第二の切断工具64は弧状板形状の第二の支持部材78を備えている。この第二の支持部材78の外周面の周方向所要位置には軸線方向に直線状に延びる複数個の溝80(図示の実施形態においては4個)が形成されており、複数個の溝80には夫々、第六のスコア38を形成するための第六の切断刃82、及び第七のスコア40を形成するための第七の切断刃84が嵌入されて適宜の方法によって固定されている。従って、第六の切断刃82及び第七の切断刃84は周方向に並列して配置されている。第六の切断刃82及び第七の切断刃84の夫々の軸線方向所要領域には、径方向外側に突出してその先端が鋭利な作用部(各刃の符号の末尾に「a」を付して示す)が軸線方向に連続して形成されている。
【0031】
このような第一の切断工具62と第二の切断工具64とは周方向に連接されており、上述した図示しない未完成容器蓋が第一の切断工具62及び第二の切断工具64の外周面に沿って自転及び公転することで、未完成容器蓋に第一のスコア26(破断可能ライン22)乃至第七のスコア40が所要通りに形成される。未完成容器蓋を第一の切断工具62及び第二の切断工具64の外周面に沿って自転及び公転させる装置としては、例えば、本願の出願人が本願に先立って特許出願をして既に特許された特公平2-23313号公報に開示されたものがある。なお、上述した特公平2-23313号公報では、電動モーターの如き別途の駆動手段を使用して未完成容器蓋を能動的に自転させていたが、これに替えて、図8に示すとおり、第一の切断工具62及び第二の切断工具64の上面に夫々弧状板形状の補助部材86を配設すると共にかかる補助部材86の外周面に凹凸88を形成し、未完成容器蓋が図示しない適宜の公転手段によって公転せしめられる際に、未完成容器蓋に既に形成されている凹凸18と補助部材84の外周面に形成されている凹凸88との噛み合いによって未完成容器蓋が受動的に自転されるようにすることもできる。また、上述した加工装置にあっては、第一の切断工具62及び第二の切断工具64の外周端縁に沿って未完成容器蓋は自転及び公転して、これに適宜のスリットが形成されたが、これに替えて、各切断刃を夫々の切断工具の径方向内側に突出させて、未完成容器蓋は第一の切断工具及び第二の切断工具の内周端縁に沿って自転及び公転するようにしてもよい。
【0032】
本発明の合成樹脂製容器蓋には、破断可能ライン、第二のスコア、第三のスコア、第四のスコア、第五のスコア及び第六のスコアが所定位置に夫々形成されており、これにより、容器の口頸部を開封した後においても容器蓋の全体が容器の口頸部から分離されることはなく、本体とタンパーエビデント裾部との接続が維持される。そして、かような本発明の合成樹脂製容器蓋は、最初に比較的単純な形態の未完成容器蓋を成形し、次いで後加工として未完成容器蓋の所要位置に破断可能ライン、第二のスコア、第三のスコア、第四のスコア、第五のスコア及び第六のスコアを形成するようにすることで製造することができる。上記未完成容器蓋は、その形態が比較的単純であることから、射出成形のみならず圧縮成形によっても成形することができる。圧縮成形は射出成形に比べて迅速に成形することが可能であることから、上記未完成容器蓋を圧縮成形によって成形した場合には、本発明の合成樹脂製容器蓋は極めて迅速に製造される。上記未完成容器蓋を射出成形によって成形した場合であっても、未完成容器蓋の構造そのものが比較的単純であるため、溶融樹脂の流動性が低下することはなく、本発明の合成樹脂製容器蓋は比較的迅速に製造される。更に、いずれの成形方法で未完成容器蓋を成形した場合であっても、成形型は比較的簡単な形状となることから、成形型の製造コストが抑制され、結果的に容器蓋の製造コストは低減される。
【符号の説明】
【0033】
2:容器蓋
4:本体:
6:タンパーエビデント裾部6
8:天面壁
10:スカート壁
20:雌螺条
22:破断可能ライン
24:特定領域
26:第一のスコア
30:第二のスコア
32:第三のスコア
34:第四のスコア
36:第五のスコア
38:第六のスコア
40:第七のスコア
60:後加工装置
62:第一の切断工具
64:第二の切断工具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8