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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】自動制御装置
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20240416BHJP
   A01C 11/02 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
A01B69/00 303M
A01C11/02 331D
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020032283
(22)【出願日】2020-02-27
(65)【公開番号】P2021132590
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 将太郎
(72)【発明者】
【氏名】那須 和洋
(72)【発明者】
【氏名】都田 洋三
(72)【発明者】
【氏名】秦 啓二
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-004816(JP,A)
【文献】特開2019-115299(JP,A)
【文献】特開2019-201667(JP,A)
【文献】特開2017-173986(JP,A)
【文献】特表2011-517400(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0022273(US,A1)
【文献】特開2018-117566(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0086378(US,A1)
【文献】特開2018-055179(JP,A)
【文献】特開2019-101932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
A01C 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場において第1作業を行うトラクタの第1作業経路と、前記圃場において前記第1作業とは異なる時期に第2作業を行う田植機の第2作業経路とを作成する着脱可能な自動制御装置であって、
前記第1作業経路は、所定方向に延びる複数の第1直線経路を有し、
前記第2作業経路は、前記複数の第1直線経路に交差する複数の第2直線経路を有し、
(i)前記第2作業において前記田植機が苗の補給を行う補給エリアを前記所定方向に延びる連続した位置情報として前記圃場の畦際に設定し、(ii)前記補給エリアの位置に基づいて前記補給エリアの長手方向である前記所定方向と交差するように設定される前記第2作業の前記第2作業経路を基準に前記第1作業経路及び前記第2作業経路を前記第2作業経路に沿った前記田植機の自動走行の前に一括して作成する制御部と、
前記第1作業経路及び前記第2作業経路を記憶する記憶部と、を備え、
前記制御部は、前記自動制御装置が前記トラクタに装着された状態で、前記トラクタを前記第1作業経路に沿って自動走行させると共に、前記自動制御装置が前記田植機に装着された状態で、前記田植機を前記第2作業経路に沿って自動走行させる、
ことを特徴とする自動制御装置。
【請求項2】
前記自動制御装置は、表示部を有するタブレット端末である、
請求項1記載の自動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタや田植機等の作業車両を所定の作業経路に沿って自動走行させる自動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば一つの圃場において、田植機により苗の植え付け作業を行う場合、事前にトラクタによる代掻き(耕耘)作業等が行われていると、トラクタの走行経路に沿って生じる轍により、その後に行われる田植機の作業時に走行機体の直進走行性が影響を受けることがある。
【0003】
従来、このような問題に対応するために、作業車両の走行機体が事前に走行した過去走行経路を取得し、この過去走行経路に基づいて設定した走行経路に沿って、別の作業車両又は同じ作業車両を自動走行させるようにした自動操舵装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-4816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、同じ圃場で行われる作業として、トラクタの代掻き作業や田植機の苗付け作業あるいはコンバインの刈り取り作業等があり、走行経路を設定する際の元となる過去走行経路には種々のものが存在する。このため、特許文献1に記載の自動操舵装置は、過去走行経路を特定したり管理したりする作業が煩雑になるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、同一の圃場で異なる作業の作業経路を容易に設定することができる自動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、圃場において第1作業を行うトラクタ(1)の第1作業経路と、前記圃場において前記第1作業とは異なる時期に第2作業を行う田植機(30)の第2作業経路とを作成する着脱可能な自動制御装置(40)であって、
前記第1作業経路(L1)は、所定方向に延びる複数の第1直線経路(L1a)を有し、
前記第2作業経路(L2)は、前記複数の第1直線経路(L1a)に交差する複数の第2直線経路(L2a)を有し、
(i)前記第2作業において前記田植機(30)が苗の補給を行う補給エリアを前記所定方向に延びる連続した位置情報として前記圃場の畦際に設定し、(ii)前記補給エリアの位置に基づいて前記補給エリアの長手方向である前記所定方向と交差するように設定される前記第2作業の前記第2作業経路(L2)を基準に前記第1作業経路(L1)及び前記第2作業経路(L2)を前記第2作業経路に沿った前記田植機(30)の自動走行の前に一括して作成する制御部(42)と、
前記第1作業経路(L1)及び前記第2作業経路(L2)を記憶する記憶部(43)と、を備え、
前記制御部(42)は、前記自動制御装置(40)が前記トラクタ(1)に装着された状態で、前記トラクタ(1)を前記第1作業経路(L1)に沿って自動走行させると共に、前記自動制御装置(40)が前記田植機(30)に装着された状態で、前記田植機(30)を前記第2作業経路(L2)に沿って自動走行させる、
ことを特徴とする自動制御装置にある。
【0010】
また、例えば図1図2を参照して、前記自動制御装置(40)は、表示部(41)を有するタブレット端末である。
【0011】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲の記載に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によると、自動制御装置が、異なる作業の作業経路を一括して作成するため、過去の走行経路を特定したり管理したりする作業が不要となり、同一圃場で前後して行われる異なる作業の作業経路を容易に設定することができる。そして、この自動制御装置は異なる作業車両に対して着脱可能であり、これらの作業車両間で使いまわすことができるので、コストダウンできる。
【0013】
また、請求項に係る発明によると、第1直線経路と第2直線経路とが互いに交差するように設定されるため、後から作業を行う作業車両は轍を横切る方向に走行することとなり、走行車輪が轍に嵌まって直進走行性が低下してしまうことを抑制できる。
【0014】
また、請求項に係る発明によると、トラクタが代掻き作業等を行う際に生じた轍の影響を受けることなく、田植機による優先順位が高い苗の植え付け作業等を効率良く行うことができる。
【0015】
請求項に係る発明によると、上記自動制御装置が表示部を有するタブレット端末であるため、利便性を高めることができると共に、コストの低減化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の自動制御装置が適用されるトラクタの側面図。
図2】本発明の自動制御装置が適用される田植機の側面図。
図3】トラクタと田植機に備えられる自動操舵装置及びタブレット端末のブロック図。
図4】タブレット端末により作成された第1作業経路と第2作業経路の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態について説明する。図1は第1の作業車両としてのトラクタ1の側面図、図2は第2の作業車両としての田植機30の側面図であり、これらトラクタ1と田植機30に対して本発明に係る自動制御装置としてのタブレット端末40が着脱可能となっている。
【0018】
まず、図1に基づいてトラクタ1について説明すると、このトラクタ1は、左右一対の前輪2及び後輪3を有する走行機体4と、この走行機体4の後方に昇降リンク5を介して昇降可能に連結された作業機6とを備えている。走行機体4は、前輪2及び後輪3に支持された機体フレーム7と、該機体フレーム7の前側に設置されたエンジン(図示せず)の上面側をカバーするボンネット8と、該ボンネット8の後方に設置され、作業者(オペレータ)が乗込んで操縦等を行う運転席9が設けられたキャビン10とを備えた構成になっている。エンジンは、変速機構(図示せず)を介して前輪2及び後輪3を駆動すると共に、PTO軸(図示せず)を介して作業機6に駆動力を供給している。
【0019】
図示省略されているが、キャビン10内における運転席9の前方には、ステアリングハンドルや前後進切換えレバー、作業機6の昇降作動を操作する昇降レバー等が配設されており、作業者が手動操作によってステアリングハンドルを回すと、ステアリングシャフトが全油圧式パワーステアリングユニットを介して前輪2を操舵するようになっている。
【0020】
キャビン10の天面には、位置情報取得装置であるGNSSアンテナユニット11が取り付けられている。このGNSSアンテナユニット11は、受信アンテナで一定時間毎にGNSS(Global Navigation Satellite System)座標を取得することにより、地球上での位置情報を所定間隔で取得することができる。詳細については後述するが、トラクタ1は、作業者がステアリングハンドルを回して走行する手動操舵だけでなく、目標となる作業経路に沿って自動走行させる自動操舵装置(図3参照)を備えている。
【0021】
次に、図2に基づいて田植機30について説明すると、この田植機30は、左右一対の前輪12及び後輪13を有する走行機体14と、この走行機体14の後方に昇降リンク15を介して昇降可能に連結された作業機16とを備えている。走行機体14は、前輪12及び後輪13に支持された機体フレーム17と、該機体フレーム17の前側に設置されたエンジン(図示せず)の上面側をカバーするボンネット18と、作業者が乗込んで操縦等を行う運転席19とを備えた構成になっている。エンジンは、変速機構(図示せず)を介して前輪12及び後輪13を駆動すると共に、PTO軸(図示せず)を介して作業機16に駆動力を供給している。
【0022】
運転席19の前方にはステアリングハンドル20が配設されており、作業者が手動操作によってステアリングハンドル20を回すと、ステアリングシャフトが全油圧式パワーステアリングユニットを介して前輪12を操舵するようになっている。また、ステアリングハンドル20の近傍に変速レバー21が配設されており、この変速レバー21によって、変速装置を中立位置から前進側および後進側に操作することができるようになっている。
【0023】
走行機体14の前部には、支持フレーム22が設けられており、この支持フレーム22に予備苗の載置台23が支持されている。また、支持フレーム22の上端中央部にGNSSアンテナユニット24が取り付けられており、トラクタ1に備えられるGNSSアンテナユニット11と同様に、このGNSSアンテナユニット24は、受信アンテナで一定時間毎にGNSS座標を取得することにより、地球上での位置情報を所定間隔で取得することができる。田植機30は、作業者がステアリングハンドル20を回して走行する手動操舵だけでなく、目標となる作業経路に沿って自動走行させる自動操舵装置(後述する)を備えている。
【0024】
このように構成されたトラクタ1と田植機30に対して、本発明に係る自動制御装置としてのタブレット端末40が着脱可能となっている。このタブレット端末40は、液晶や有機EL等からなるタッチパネル式の表示部41を備えており、トラクタ1と田植機30の自動操舵制御を実行するプログラムがインストールされている。
【0025】
図3は、トラクタ1と田植機30に備えられる自動操舵装置50,60及びタブレット端末40を示すブロック図である。図3に示すように、トラクタ1の自動操舵装置50は、GNSS側制御部51と操舵部側制御部52を備えており、これらGNSS側制御部51と操舵部側制御部52はコントローラエリアネットワーク(CAN)で情報のやり取りを行い、また、GNSS側制御部51と操舵部側制御部52には、タブレット端末40との間で情報を交換する通信部53がそれぞれ接続されている。
【0026】
GNSS側制御部51の入力側には、GNSSアンテナユニット11とIMUユニット(慣性計測装置)54が接続されており、GNSS側制御部51の出力側には表示装置55が接続されている。IMUユニット54は3軸のジャイロと3方向の加速度計からなり、GNSS側制御部51はIMUユニット54からトラクタ1の姿勢情報を取得する。また、操舵部側制御部52の入力側には、操作スイッチ56が接続されており、操舵部側制御部52の出力側にはステッピングモータ57が接続されている。
【0027】
タブレット端末40は、前述した表示部41に加えて、CPU等を有する経路管理制御部42と、ROMやRAM等の記憶部43と、通信部44とを備えている。経路管理制御部42は、後述するようにトラクタ1の作業経路である第1作業経路L1(図4(b)参照)と田植機30の作業経路である第2作業経路L2(図4(a)参照)とを一括して作成し、作成した2つの作業経路を記憶部43に記憶する。
【0028】
タブレット端末40がトラクタ1に装着された状態で、トラクタ1の自動操舵制御が開始されると、タブレット端末40の経路管理制御部42は、GNSSアンテナユニット11とIMUユニット54から求められるトラクタ1の位置情報と姿勢情報を取得する。そして、経路管理制御部42は、記憶部43に記憶された第1作業経路L1と、取得したトラクタ1の位置情報及び姿勢情報に基づいて、目標となる第1作業経路L1に沿ってトラクタ1が走行するように前輪2の操舵量を演算し、この演算した操舵量を操舵部側制御部52に伝える。操舵部側制御部52は、前輪2の操舵量が指示された操舵量になるようにステッピングモータ57を正逆回転させ、ステッピングモータ57の回転によりステアリングシャフトが回転することで、前輪2は最終的に全油圧式パワーステアリングユニットを介して指示された操舵量に操舵される。
【0029】
一方、田植機30の自動操舵装置60は、GNSS側制御部61と操舵部側制御部62を備えており、これらGNSS側制御部61と操舵部側制御部62はCANで情報のやり取りを行い、また、GNSS側制御部61と操舵部側制御部62には、タブレット端末40との間で情報を交換する通信部63がそれぞれ接続されている。
【0030】
GNSS側制御部61の入力側には、GNSSアンテナユニット24とIMUユニット64が接続されており、GNSS側制御部61の出力側には表示装置65が接続されている。GNSS側制御部61は、GNSSアンテナユニット24から田植機30の位置情報を取得し、IMUユニット64から田植機30の姿勢情報を取得する。また、操舵部側制御部62の入力側には、操作スイッチ66が接続されており、操舵部側制御部62の出力側にはステッピングモータ67が接続されている。
【0031】
タブレット端末40が田植機30に装着された状態で、田植機30の自動操舵制御が開始されると、タブレット端末40の経路管理制御部42は、GNSSアンテナユニット24とIMUユニット64から求められる田植機30の位置情報と姿勢情報を取得する。そして、経路管理制御部42は、記憶部43に記憶された第2作業経路L2と、取得した田植機30の位置情報及び姿勢情報に基づいて、目標となる第2作業経路L2に沿って田植機30が走行するように前輪12の操舵量を演算し、この演算した操舵量を操舵部側制御部62に伝える。操舵部側制御部62は、前輪12の操舵量が指示された操舵量になるようにステッピングモータ67を正逆回転させ、ステッピングモータ67の回転によりステアリングシャフトが回転することで、前輪12は最終的に全油圧式パワーステアリングユニットを介して指示された操舵量に操舵される。
【0032】
ここで、経路管理制御部42は、トラクタ1と田植機30のうち、優先順位が低い第1作業を行う方を第1の作業車両とし、第1作業よりも優先順位が高い第2作業を行う方を第2の作業車両としたとき、優先順位が高い第2作業を基準に第1の作業車両の第1作業経路と第2の作業車両の第2作業経路を一括して作成する。例えば、トラクタ1で代掻き作業を行った後に田植機30で苗の植え付け作業を行う場合、苗の植え付け作業では圃場における所定の畔際に苗の追加や肥料の供給を行う補給エリアを設定する必要があるため、そのような補給エリアを必要としないトラクタ1の代掻き作業に比べて、田植機30による苗の植え付け作業が優先順位の高い作業となる。したがって、この場合は、トラクタ1が優先順位の低い第1作業を行う第1の作業車両で、田植機30が優先順位の高い第2作業を行う第2の作業車両となり、経路管理制御部42は、田植機30の第2作業を基準にトラクタ1の第1作業経路と田植機30の第2作業経路とを一括して作成する。経路管理制御部42は、これら第1作業経路及び第2作業経路を一括して作成するので、過去の走行経路を特定したり管理したりする作業が不要となり、2つの作業車両の作業経路を容易に設定することができる。
【0033】
かかる作業経路の作成手順の一例について図4を参照しつつ説明すると、まず、作業者は、タブレット端末40を田植機30に装着した状態で、田植機30を手動操舵してティーチング走行を行わせる。このティーチング走行において、タブレット端末40の表示部41に田植機30の現在位置、方角を表示するコンパス、作業距離と面積等を表示画面として表示させた上で、田植機30が圃場の出入口や補給エリアに至った時に作業者がボタン又はスイッチを入力操作することにより、作業の開始点と終了点及び補給エリアの位置情報等を取得する。この入力操作は、タブレット端末40の表示部41側と田植機30の自動操舵装置60側とのいずれでも行うことができるようになっている。
【0034】
このようにして田植機30のティーチング走行が終了すると、経路管理制御部42は、上記した作業の開始点と終了点及び補給エリアの位置情報等に基づいて、優先順位が高い第2作業を行う田植機30の第2作業経路L2と、優先順位が低い第1作業を行うトラクタ1の第1作業経路L1とを一括して作成(演算)し、作成した第2作業経路L2と第1作業経路L1を記憶部43に記憶する。ここで、第1作業経路L1の直線経路の方向は、第2作業経路L2の直線経路の方向を90度回転して設定されるようになっている。なお、第1作業経路L1の直線経路の方向及び第2作業経路L2の直線経路の方向は、互いに交差するように設定されれば任意に設定してよい。図4(a)に示すように、第2作業経路L2は、所定間隔を置いて互いに平行となるように設定された複数の第2直線経路L2aを有している。図4(b)に示すように、第1作業経路L1は、第2作業経路L2の第2直線経路L2aと直交方向に延びる複数の第1直線経路L1aを有している。複数の第1直線経路L1aは、所定間隔を置いて互いに平行となるように設定される。
【0035】
なお、田植機30の記憶部43に上記した第2作業経路L2と同じ作業経路が過去作業経路として記憶されている場合は、この過去作業経路を呼び出して第2作業経路L2として特定した上で、当該第2作業経路L2と第1作業経路L1とを一括して作成するようにしても良い。
【0036】
このように第1作業経路L1と第2作業経路L2を一括して作成した後、タブレット端末40を田植機30から取り外してトラクタ1に装着し、この状態でトラクタ1を第1作業経路L1に沿って自動走行させて代掻き作業等の第1作業を行う。この場合、タブレット端末40をトラクタ1に装着して通信部44,53を接続した状態で、操作スイッチ56を投入して自動操舵制御を開始すると、タブレット端末40の経路管理制御部42が、GNSSアンテナユニット11とIMUユニット54から求められるトラクタ1の位置情報と姿勢情報に基づいて、第1作業経路L1に沿って前輪2が走行するように操舵量を演算し、操舵部側制御部52がステッピングモータ57を正逆回転して前輪2の操舵量が指示された操舵量になるように制御するため、トラクタ1を第1作業経路L1に沿って自動走行させることができる。
【0037】
そして、トラクタ1による第1作業(代掻き作業等)が終了した後、タブレット端末40をトラクタ1から取り外して田植機30に装着した状態で、田植機30を第2作業経路L2に沿って自動走行させて優先順位が高い苗の植え付け作業の第2作業を行う。この場合、タブレット端末40を田植機30に装着して通信部44,63を接続した状態で、操作スイッチ66を投入して自動操舵制御を開始すると、タブレット端末40の経路管理制御部42が、GNSSアンテナユニット24とIMUユニット64から求められる田植機30の位置情報と姿勢情報に基づいて、第2作業経路L2に沿って前輪12が走行するように操舵量を演算し、操舵部側制御部62がステッピングモータ67を正逆回転して前輪12の操舵量が指示された操舵量になるように制御するため、田植機30を第2作業経路L2に沿って自動走行させることができる。
【0038】
その際、第1作業経路L1の第1直線経路L1aに対して第2作業経路L2の第2直線経路L2aが交差(直交)するように設定されているため、先にトラクタ1が第1作業を行った時に生じた轍に対し、同じ圃場で後から第2作業を行う田植機30の前輪12及び後輪13は轍を横切る方向に走行することになる。したがって、田植機30の前輪12及び後輪13が轍に嵌まり難くなり、田植機30を自動操舵する際の直進走行性を向上することができる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態に係るタブレット端末(自動制御装置)40は、優先順位が低い第1作業と優先順位が高い第2作業のうち、第2作業を基準に第1作業を行うトラクタ(第1の作業車両)1の第1作業経路L1と、第2作業を行う田植機(第2の作業車両)30の第2作業経路L2とを一括して作成するため、同一圃場で前後して行われる異なる作業の作業経路L1,L2を容易に設定することができる。そして、このタブレット端末40は、第1作業を行うトラクタ1と第2作業を行う田植機30に対して着脱可能であり、タブレット端末40がトラクタ1に装着された状態で、トラクタ1をタブレット端末40で設定された第1作業経路L1に沿って自動走行させると共に、タブレット端末40が田植機30に装着された状態で、田植機30をタブレット端末40で設定された第2作業経路L2に沿って自動走行させるため、同じ圃場で先に行われるトラクタ1の走行によって生じる轍等の影響を低減し、後から行われる田植機30の第2作業を効率良く行うことができる。
【0040】
また、タブレット端末40が、複数の第1直線経路L1aを有する第1作業経路L1と、第1直線経路L1aに交差する複数の第2直線経路L2aを有する第2作業経路L2とを一括して作成するため、優先順位の高い第2作業の第2作業経路L2が有する複数の第2直線経路L2aを所定角度(例えば90度)回転することにより、優先順位の低い第1作業の第1作業経路L1が有する複数の第1直線経路L1aを容易に作成することができる。これにより、先に行われるトラクタ1の作業方向に対して田植機30が直交方向に作業を行うことになり、後から作業を行う田植機30は轍を横切る方向に走行するため、田植機30の前輪12及び後輪13が轍に嵌まって直進走行性が低下してしまうことを抑制できる。
【0041】
また、優先順位が低い第1作業を行う第1の作業車両がトラクタ1であると共に、優先順位が高い第2作業を行う第2の作業車両が田植機30であるため、トラクタ1が代掻き作業等を行う際に生じた轍の影響を受けることなく、田植機30による苗の植え付け作業等を効率良く行うことができる。
【0042】
また、自動制御装置が可搬式のタブレット端末40であるため、トラクタ1と田植機30に対するタブレット端末40の着脱が容易になり、利便性を高めることができると共に、1つのタブレット端末40を2つの作業車(トラクタ1及び田植機30)間で使い回しするのでコストの低減化を図ることができる。
【0043】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されないことは勿論であり、特許請求の範囲を逸脱しない限り任意の変更・追加が可能であることは言うまでもない。例えば、上記実施形態では、トラクタ1が第1の作業車両であると共に田植機30が第2の作業車両である場合について説明したが、これに限らず、異なる作業を行う2つの作業車両のうち、優先順位の低い第1作業を行う方が第1の作業車両、優先順位の高い第2作業を行う方が第2の作業車両であれば良く、例えば、第1の作業車両がコンバインで第2の作業車両が田植機であっても良い。
【0044】
また、上記実施形態では、第1作業経路L1が有する複数の第1直線経路L1aと第2作業経路L2が有する複数の第2直線経路L2aとが交差する場合について説明したが、第1作業経路L1と第2作業経路L2の各直線経路L1a,L2aが同じ方向に延びるものであっても良い。
【符号の説明】
【0045】
1 トラクタ(第1の作業車両)
30 田植機(第2の作業車両)
40 タブレット端末(自動制御装置)
41 表示部
42 経路管理制御部(制御部)
43 記憶部
L1 第1作業経路
L1a 第1直線経路
L2 第2作業経路
L2a 第2直線経路
図1
図2
図3
図4