(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタの制御方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/015 20060101AFI20240416BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240416BHJP
B41J 2/045 20060101ALN20240416BHJP
【FI】
B41J2/015 101
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J2/01 301
B41J2/045
(21)【出願番号】P 2020047919
(22)【出願日】2020-03-18
【審査請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【氏名又は名称】小平 晋
(72)【発明者】
【氏名】岸田 雄太郎
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-123883(JP,A)
【文献】特開2009-178996(JP,A)
【文献】特開2020-001368(JP,A)
【文献】特開2017-177758(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0126616(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出して印刷を行うインクジェットプリンタにおいて、
インクを吐出するインクジェットヘッドと、前記インクジェットプリンタを制御する制御部とを備え、
前記インクジェットヘッドには、一定方向に配列される複数のノズルによって構成されるノズル列が形成され、
前記インクジェットヘッドは、複数の前記ノズルのそれぞれからインクを吐出させる複数の吐出エネルギー発生素子を備え、
前記ノズル列を構成する複数の前記ノズルの配列方向を第1方向とすると、
前記制御部は、前記インクジェットヘッドに流入するインクの流量であるインク流量と、前記インクジェットヘッドに流入するインクの温度であるインク流入温度とに基づいて、前記インクジェットヘッドの内部の第1方向の各位置におけるインクの温度を推定するとともに、推定結果に基づいて、複数の前記吐出エネルギー発生素子に印加される駆動電圧を制御することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記インクジェットプリンタの外部温度を検知する外部温度センサを備え、
前記制御部は、前記制御部に入力された印刷データに基づいて前記インク流量を特定するとともに、特定された前記インク流量と前記外部温度センサで検知された前記外部温度とに基づいて前記インク流入温度を特定することを特徴とする請求項1記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
様々な前記インク流量および前記インク流入温度に応じた、前記インクジェットヘッドの内部の第1方向の各位置におけるインクの温度が予め測定されるとともに、測定結果が前記制御部に予め記憶され、
前記制御部は、前記制御部に記憶された測定結果と、前記インク流量および前記インク流入温度とに基づいて、前記インクジェットヘッドの内部の第1方向の各位置におけるインクの温度を推定することを特徴とする請求項1または2記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記インクジェットヘッドは、前記インクジェットヘッドの内部のインクを加温するヘッド内ヒータを備え、
前記ヘッド内ヒータによって加温されるインクの目標加温温度と、様々な前記インク流量および前記インク流入温度とに応じた、前記インクジェットヘッドの内部の第1方向の各位置におけるインクの温度が予め測定されるとともに、測定結果が前記制御部に予め記憶されていることを特徴とする請求項3記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
インクを吐出して印刷を行うインクジェットプリンタにおいて、
インクを吐出するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドの内部のインクの温度を検知するための複数のヘッド内温度センサと、前記インクジェットプリンタを制御する制御部とを備え、
前記インクジェットヘッドには、一定方向に配列される複数のノズルによって構成されるノズル列が形成され、
前記インクジェットヘッドは、複数の前記ノズルのそれぞれからインクを吐出させる複数の吐出エネルギー発生素子を備え、
前記吐出エネルギー発生素子は、
前記インクジェットヘッド内に配置されるとともに紫外線硬化型のインクを吐出させる圧電素子であり、
前記ノズル列を構成する複数の前記ノズルの配列方向を第1方向とすると、
複数の前記ヘッド内温度センサは、第1方向において間隔をあけた状態で配置され、
前記制御部は、複数の前記ヘッド内温度センサの検知結果に基づいて、
前記ヘッド内温度センサによって検知された各領域の温度から前記各領域におけるインクの粘度を推定し、複数の前記吐出エネルギー発生素子に印加される駆動電圧を制御することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記ノズル列は、第1方向において予めグループ分けされた複数の前記ノズルからなる複数のノズルグループによって構成され、
第1方向において、複数の前記ノズルグループが配置される位置のそれぞれには、前記ヘッド内温度センサが配置され、
前記制御部は、同じ前記ノズルグループに属する前記ノズルからインクを吐出させる複数の前記吐出エネルギー発生素子に同じ駆動電圧を印加することを特徴とする請求項5記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記制御部は、複数の前記吐出エネルギー発生素子のそれぞれに印加される駆動電圧を個別に制御可能となっていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項8】
インクを吐出して印刷を行うインクジェットプリンタにおいて、
インクを吐出するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドの内部のインクの温度を検知するための複数のヘッド内温度センサと、前記インクジェットプリンタを制御する制御部とを備え、
前記インクジェットヘッドには、一定方向に配列される複数のノズルによって構成されるノズル列が形成され、
前記インクジェットヘッドは、
複数の前記ノズルのそれぞれからインクを吐出させる複数の吐出エネルギー発生素子と、前記インクジェットヘッドの内部のインクを加温するヘッド内ヒータ
とを備え、
前記ノズル列を構成する複数の前記ノズルの配列方向を第1方向とすると、
複数の前記ヘッド内温度センサは、第1方向において間隔をあけた状態で配置され、
前記インクジェットヘッドの第1方向の一端側には、前記インクジェットヘッドに向かってインクが流入するインク流入口が形成され、
前記インクジェットヘッドの内部の第1方向の一端側のインクの温度は、前記インクジェットヘッドの内部の第1方向の他端側のインクの温度よりも低くなっており、
前記インクジェットヘッドの内部の第1方向の一端側部分におけるインクの温度の変化は、前記インクジェットヘッドの内部の第1方向の他端側部分におけるインクの温度の変化よりも大きくなっており、
前記インクジェットヘッドの第1方向の一端側部分では、前記インクジェットヘッドの第1方向の他端側部分よりも、前記ノズル列を構成する複数の前記ノズルが第1方向において細かくグループ分けされ、
前記制御部は、
複数の前記ヘッド内温度センサの検知結果に基づいて、複数の前記吐出エネルギー発生素子に印加される駆動電圧を制御し、かつ、第1方向の一端側に配置される前記ノズルからインクを吐出させる前記吐出エネルギー発生素子の駆動電圧を、第1方向の他端側に配置される前記ノズルからインクを吐出させる前記吐出エネルギー発生素子の駆動電圧よりも高くする
とともに、同じグループに属する前記ノズルからインクを吐出させる複数の前記吐出エネルギー発生素子に同じ駆動電圧を印加することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項9】
前記インクジェットヘッドは、前記インクジェットヘッドの内部のインクを加温するヘッド内ヒータを備え、
前記インクジェットヘッドの内部の第1方向の両端側のインクの温度は、前記インクジェットヘッドの内部の第1方向の中心側のインクの温度よりも低くなっており、
前記制御部は、第1方向の両端側に配置される前記ノズルからインクを吐出させる前記吐出エネルギー発生素子の駆動電圧を、第1方向の中心側に配置される前記ノズルからインクを吐出させる前記吐出エネルギー発生素子の駆動電圧よりも高くすることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項10】
インクを吐出するインクジェットヘッドを備え、前記インクジェットヘッドには、一定方向に配列される複数のノズルによって構成されるノズル列が形成され、前記インクジェットヘッドは、複数の前記ノズルのそれぞれからインクを吐出させる複数の吐出エネルギー発生素子を備えるインクジェットプリンタの制御方法であって、
前記ノズル列を構成する複数の前記ノズルの配列方向を第1方向とすると、前記インクジェットヘッドに流入するインクの流量であるインク流量と、前記インクジェットヘッドに流入するインクの温度であるインク流入温度とに基づいて、前記インクジェットヘッドの内部の第1方向の各位置におけるインクの温度を推定するとともに、推定結果に基づいて、複数の前記吐出エネルギー発生素子に印加される駆動電圧を制御することを特徴とするインクジェットプリンタの制御方法。
【請求項11】
インクを吐出するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドの内部のインクの温度を検知するための複数のヘッド内温度センサとを備え、前記インクジェットヘッドには、一定方向に配列される複数のノズルによって構成されるノズル列が形成され、前記インクジェットヘッドは、複数の前記ノズルのそれぞれからインクを吐出させる複数の吐出エネルギー発生素子を備え、前記吐出エネルギー発生素子は、
前記インクジェットヘッド内に配置されるとともに紫外線硬化型のインクを吐出させる圧電素子であり、前記ノズル列を構成する複数の前記ノズルの配列方向を第1方向とすると、複数の前記ヘッド内温度センサは、第1方向において間隔をあけた状態で配置されているインクジェットプリンタの制御方法であって、
複数の前記ヘッド内温度センサの検知結果に基づいて、
前記ヘッド内温度センサによって検知された各領域の温度から前記各領域におけるインクの粘度を推定し、複数の前記吐出エネルギー発生素子に印加される駆動電圧を制御することを特徴とするインクジェットプリンタの制御方法。
【請求項12】
インクを吐出するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドの内部のインクの温度を検知するための複数のヘッド内温度センサとを備え、前記インクジェットヘッドには、一定方向に配列される複数のノズルによって構成されるノズル列が形成され、前記インクジェットヘッドは、複数の前記ノズルのそれぞれからインクを吐出させる複数の吐出エネルギー発生素子
と、前記インクジェットヘッドの内部のインクを加温するヘッド内ヒータとを備え、前記ノズル列を構成する複数の前記ノズルの配列方向を第1方向とすると、複数の前記ヘッド内温度センサは、第1方向において間隔をあけた状態で配置され
、前記インクジェットヘッドの第1方向の一端側には、前記インクジェットヘッドに向かってインクが流入するインク流入口が形成され、前記インクジェットヘッドの内部の第1方向の一端側のインクの温度は、前記インクジェットヘッドの内部の第1方向の他端側のインクの温度よりも低くなっており、前記インクジェットヘッドの内部の第1方向の一端側部分におけるインクの温度の変化は、前記インクジェットヘッドの内部の第1方向の他端側部分におけるインクの温度の変化よりも大きくなっており、前記インクジェットヘッドの第1方向の一端側部分では、前記インクジェットヘッドの第1方向の他端側部分よりも、前記ノズル列を構成する複数の前記ノズルが第1方向において細かくグループ分けされているインクジェットプリンタの制御方法であって、
複数の前記ヘッド内温度センサの検知結果に基づいて、複数の前記吐出エネルギー発生素子に印加される駆動電圧を制御
し、かつ、第1方向の一端側に配置される前記ノズルからインクを吐出させる前記吐出エネルギー発生素子の駆動電圧を、第1方向の他端側に配置される前記ノズルからインクを吐出させる前記吐出エネルギー発生素子の駆動電圧よりも高くするとともに、同じグループに属する前記ノズルからインクを吐出させる複数の前記吐出エネルギー発生素子に同じ駆動電圧を印加することを特徴とするインクジェットプリンタの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出して印刷を行うインクジェットプリンタに関する。また、本発明は、かかるインクジェットプリンタの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクを吐出するインクジェットヘッドを備えるインクジェットプリンタ(インクジェット式記録装置)が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のインクジェットプリンタでは、一定方向に配列される複数のノズルがインクジェットヘッドに形成されている。インクジェットヘッドは、複数のノズルのそれぞれからインクを吐出させる複数の圧電素子を備えている。複数のノズルは、ノズルの配列方向において、ノズルの数よりも少ない複数のグループに分けられており、複数の圧電素子は、ノズルのグループ分けに対応して複数のグループに分けられている。
【0003】
特許文献1に記載のインクジェットプリンタでは、同一のグループに属する圧電素子には、同一の駆動電圧が印加されるようになっており、圧電素子のグループごとに、駆動電圧の調整が可能となっている。各グループの圧電素子には、複数種類の駆動電圧の中から選択された駆動電圧が印加される。各グループの圧電素子に印加される駆動電圧は、予め測定されたインクジェットヘッドの各ノズルからのインクの吐出量のデータに基づいて設定される。
【0004】
特許文献1に記載のインクジェットプリンタでは、インクの供給口に近いノズルからのインクの吐出量が少なく、かつ、インクの供給口から遠いインクジェットヘッドの両端付近のノズルからのインクの吐出量が多くなる傾向がある。そのため、このインクジェットプリンタでは、インクの供給口に近いノズルのグループに対応する圧電素子のグループに印加される駆動電圧は、インクの供給口から遠いノズルのグループに対応する圧電素子のグループに印加される駆動電圧よりも高くなっている。
【0005】
また、従来、紫外線硬化型のインクであるUVインクを吐出するインクジェットヘッドを備えるインクジェットプリンタが知られている(たとえば、特許文献2参照)。特許文献2に記載のインクジェットプリンタは、インクジェットヘッドに供給されるインクをインクジェットヘッドの外部で温めるヘッド外インク加温装置を備えている。インクジェットヘッドには、UVインクを吐出する複数のノズルと、複数のノズルが繋がるインク流路とが形成されている。
【0006】
特許文献2に記載のインクジェットプリンタでは、複数のノズルから吐出されるUVインクを温めてインクの粘度を低下させるためのフィルム状のヒータがインクジェットヘッドの外周に巻き付けられている。インクジェットヘッドは、インク流路の中のインクの温度を検知するための温度センサを備えている。温度センサは、インクジェットヘッドの内部に配置されている。ヒータは、温度センサで検知される温度に基づいて制御されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-196127号公報
【文献】特開2015-168243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載のインクジェットプリンタでは、ノズルの配列方向において、複数のノズルおよび圧電素子がグループ分けされている。また、このインクジェットプリンタでは、圧電素子のグループごとに、駆動電圧の調整が可能となっており、各グループの圧電素子に印加される駆動電圧は、予め測定されたインクジェットヘッドの各ノズルからのインクの吐出量のデータに基づいて設定されている。そのため、このインクジェットプリンタでは、ノズルの配列方向において、複数のノズルからのインクの吐出量のばらつきを抑制することが可能であり、その結果、印刷品質の低下を抑制することが可能になっている。
【0009】
しかしながら、本願発明者の検討によると、特許文献1に記載のインクジェットプリンタのように、複数の圧電素子をグループ分けして圧電素子に印加される駆動電圧を上述のように設定しても、印刷時の条件によっては、印刷品質の低下を抑制することができない場合があることが明らかになった。
【0010】
そこで、本発明の課題は、一定方向に配列される複数のノズルからインクを吐出して印刷を行うインクジェットプリンタにおいて、印刷時の条件にかかわらず、印刷品質の低下を抑制することが可能なインクジェットプリンタを提供することにある。また、本発明の課題は、一定方向に配列される複数のノズルからインクを吐出して印刷を行うインクジェットプリンタにおいて、印刷時の条件にかかわらず、印刷品質の低下を抑制することが可能となるインクジェットプリンタの制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本願発明者は、種々の検討を行った。その結果、本願発明者は、まず、特許文献1に記載のインクジェットプリンタのように圧電素子に印加される駆動電圧を設定しても、印刷時の条件によっては、ノズルの配列方向において、複数のノズルからのインクの吐出量および吐出速度にばらつきが生じて、印刷品質が低下する場合があることを知見するに至った。また、本願発明者は、特にUVインクのように、常温での粘度が高く、かつ、温度変動に伴う粘度の変動が大きいインクを用いて印刷を行う場合に、印刷時の条件によっては、ノズルの配列方向において、複数のノズルからのインクの吐出量および吐出速度にばらつきが生じやすくなり、その結果、印刷品質が低下しやすくなることを知見するに至った。
【0012】
また、UVインクのように、常温での粘度が高く、かつ、温度変動に伴う粘度の変動が大きいインクを用いて印刷を行うインクジェットプリンタは、一般に、特許文献2に記載のインクジェットプリンタのように、ヘッド外インク加温装置およびインクジェットヘッドを加温するヒータを備えていることが多いが、本願発明者は、このようなインクジェットプリンタにおいて、インクジェットヘッドに供給されるインクを十分に加温することができなかった場合に、ノズルの配列方向において、複数のノズルからのインクの吐出量および吐出速度にばらつきがより生じやすくなり、その結果、印刷品質がより低下しやすくなることを知見するに至った。
【0013】
また、本願発明者は、さらなる検討によって、インクジェットヘッドの中のインクの温度がノズルの配列方向においてばらつく場合に、複数のノズルから吐出されるインクの粘度がノズルの配列方向においてばらつくため、特許文献1に記載のインクジェットプリンタのように圧電素子に印加される駆動電圧を設定しても、ノズルの配列方向において、複数のノズルからのインクの吐出量および吐出速度にばらつきが生じて、印刷品質が低下することを知見するに至った。
【0014】
本発明のインクジェットプリンタは、かかる新たな知見に基づくものであり、インクを吐出して印刷を行うインクジェットプリンタにおいて、インクを吐出するインクジェットヘッドと、インクジェットプリンタを制御する制御部とを備え、インクジェットヘッドには、一定方向に配列される複数のノズルによって構成されるノズル列が形成され、インクジェットヘッドは、複数のノズルのそれぞれからインクを吐出させる複数の吐出エネルギー発生素子を備え、ノズル列を構成する複数のノズルの配列方向を第1方向とすると、制御部は、インクジェットヘッドに流入するインクの流量であるインク流量と、インクジェットヘッドに流入するインクの温度であるインク流入温度とに基づいて、インクジェットヘッドの内部の第1方向の各位置におけるインクの温度を推定するとともに、推定結果に基づいて、複数の吐出エネルギー発生素子に印加される駆動電圧を制御することを特徴とする。
【0015】
また、本発明のインクジェットプリンタの制御方法は、上述の新たな知見に基づくものであり、インクを吐出するインクジェットヘッドを備え、インクジェットヘッドには、一定方向に配列される複数のノズルによって構成されるノズル列が形成され、インクジェットヘッドは、複数のノズルのそれぞれからインクを吐出させる複数の吐出エネルギー発生素子を備えるインクジェットプリンタの制御方法であって、ノズル列を構成する複数のノズルの配列方向を第1方向とすると、インクジェットヘッドに流入するインクの流量であるインク流量と、インクジェットヘッドに流入するインクの温度であるインク流入温度とに基づいて、インクジェットヘッドの内部の第1方向の各位置におけるインクの温度を推定するとともに、推定結果に基づいて、複数の吐出エネルギー発生素子に印加される駆動電圧を制御することを特徴とする。
【0016】
本発明では、ノズル列を構成する複数のノズルの配列方向を第1方向とすると、インク流量とインク流入温度とに基づいて、インクジェットヘッドの内部の第1方向の各位置におけるインクの温度を推定するとともに、推定結果に基づいて、複数の吐出エネルギー発生素子に印加される駆動電圧を制御している。そのため、本発明では、インクジェットヘッドの中のインクの温度が第1方向においてばらついて、その結果、複数のノズルから吐出されるインクの粘度が第1方向においてばらついても、インクジェットヘッドの内部の第1方向の各位置におけるインクの温度の推定結果に基づいて、複数のノズルからのインクの吐出量および吐出速度の第1方向におけるばらつきが抑制されるように、複数の吐出エネルギー発生素子に印加される駆動電圧を制御することが可能になる。したがって、本発明では、印刷時の条件にかかわらず、印刷品質の低下を抑制することが可能になる。
【0017】
なお、本明細書における「駆動電圧」には、吐出エネルギー発生素子が電圧制御される場合の駆動電圧の他に、吐出エネルギー発生素子がPWM(Pulse Width Modulation)制御される場合の実効電圧も含まれている。
【0018】
本発明において、インクジェットプリンタは、インクジェットプリンタの外部温度を検知する外部温度センサを備え、制御部は、制御部に入力された印刷データに基づいてインク流量を特定するとともに、特定されたインク流量と外部温度センサで検知された外部温度とに基づいてインク流入温度を特定することが好ましい。このように構成すると、インクジェットプリンタの機械的な構成を簡素化しつつ、比較的容易にインク流量およびインク流入温度を求めることが可能になる。
【0019】
本発明では、たとえば、様々なインク流量およびインク流入温度に応じた、インクジェットヘッドの内部の第1方向の各位置におけるインクの温度が予め測定されるとともに、測定結果が制御部に予め記憶され、制御部は、制御部に記憶された測定結果と、インク流量およびインク流入温度とに基づいて、インクジェットヘッドの内部の第1方向の各位置におけるインクの温度を推定する。この場合には、インクジェットヘッドの内部の第1方向の各位置におけるインクの温度を推定する際の制御部の処理を簡素化することが可能になる。
【0020】
本発明において、たとえば、インクジェットヘッドは、インクジェットヘッドの内部のインクを加温するヘッド内ヒータを備え、ヘッド内ヒータによって加温されるインクの目標加温温度と、様々なインク流量およびインク流入温度とに応じた、インクジェットヘッドの内部の第1方向の各位置におけるインクの温度が予め測定されるとともに、測定結果が制御部に予め記憶されている。
【0021】
また、本発明のインクジェットプリンタは、上述の新たな知見に基づくものであり、インクを吐出して印刷を行うインクジェットプリンタにおいて、インクを吐出するインクジェットヘッドと、インクジェットヘッドの内部のインクの温度を検知するための複数のヘッド内温度センサと、インクジェットプリンタを制御する制御部とを備え、インクジェットヘッドには、一定方向に配列される複数のノズルによって構成されるノズル列が形成され、インクジェットヘッドは、複数のノズルのそれぞれからインクを吐出させる複数の吐出エネルギー発生素子を備え、吐出エネルギー発生素子は、インクジェットヘッド内に配置されるとともに紫外線硬化型のインクを吐出させる圧電素子であり、ノズル列を構成する複数のノズルの配列方向を第1方向とすると、複数のヘッド内温度センサは、第1方向において間隔をあけた状態で配置され、制御部は、複数のヘッド内温度センサの検知結果に基づいて、ヘッド内温度センサによって検知された各領域の温度から各領域におけるインクの粘度を推定し、複数の吐出エネルギー発生素子に印加される駆動電圧を制御することを特徴とする。
【0022】
さらに、本発明のインクジェットプリンタの制御方法は、上述の新たな知見に基づくものであり、インクを吐出するインクジェットヘッドと、インクジェットヘッドの内部のインクの温度を検知するための複数のヘッド内温度センサとを備え、インクジェットヘッドには、一定方向に配列される複数のノズルによって構成されるノズル列が形成され、インクジェットヘッドは、複数のノズルのそれぞれからインクを吐出させる複数の吐出エネルギー発生素子を備え、吐出エネルギー発生素子は、インクジェットヘッド内に配置されるとともに紫外線硬化型のインクを吐出させる圧電素子であり、ノズル列を構成する複数のノズルの配列方向を第1方向とすると、複数のヘッド内温度センサは、第1方向において間隔をあけた状態で配置されているインクジェットプリンタの制御方法であって、複数のヘッド内温度センサの検知結果に基づいて、ヘッド内温度センサによって検知された各領域の温度から各領域におけるインクの粘度を推定し、複数の吐出エネルギー発生素子に印加される駆動電圧を制御することを特徴とする。
【0023】
本発明では、ノズル列を構成する複数のノズルの配列方向を第1方向とすると、第1方向において間隔をあけた状態で配置される複数のヘッド内温度センサの検知結果に基づいて、複数の吐出エネルギー発生素子に印加される駆動電圧を制御している。そのため、本発明では、インクジェットヘッドの中のインクの温度が第1方向においてばらついて、その結果、複数のノズルから吐出されるインクの粘度が第1方向においてばらついても、複数のヘッド内温度センサの検知結果に基づいて、複数のノズルからのインクの吐出量および吐出速度の第1方向におけるばらつきが抑制されるように、複数の吐出エネルギー発生素子に印加される駆動電圧を制御することが可能になる。したがって、本発明では、印刷時の条件にかかわらず、印刷品質の低下を抑制することが可能になる。
【0024】
本発明において、ノズル列は、第1方向において予めグループ分けされた複数のノズルからなる複数のノズルグループによって構成され、第1方向において、複数のノズルグループが配置される位置のそれぞれには、ヘッド内温度センサが配置され、制御部は、同じノズルグループに属するノズルからインクを吐出させる複数の吐出エネルギー発生素子に同じ駆動電圧を印加することが好ましい。このように構成すると、複数のノズルからのインクの吐出量および吐出速度の第1方向におけるばらつきがより抑制されるように、複数のヘッド内温度センサの検知結果に基づいて、同じノズルグループに属するノズルからインクを吐出させる複数の吐出エネルギー発生素子ごとに、印加される駆動電圧を制御することが可能になる。
【0025】
本発明において、制御部は、複数の吐出エネルギー発生素子のそれぞれに印加される駆動電圧を個別に制御可能となっていることが好ましい。このように構成すると、インクジェットヘッドの内部の第1方向の各位置におけるインクの温度の推定結果や、複数のヘッド内温度センサの検知結果に基づいて、ノズル列を構成する複数のノズルを第1方向において任意の位置で区切ってグループ分けすることが可能になる。したがって、複数のノズルからのインクの吐出量および吐出速度の第1方向におけるばらつきがより抑制されるように、複数の吐出エネルギー発生素子に印加される駆動電圧をより柔軟に制御することが可能になる。
【0026】
また、本発明のインクジェットプリンタは、上述の新たな知見に基づくものであり、インクを吐出して印刷を行うインクジェットプリンタにおいて、インクを吐出するインクジェットヘッドと、インクジェットヘッドの内部のインクの温度を検知するための複数のヘッド内温度センサと、インクジェットプリンタを制御する制御部とを備え、インクジェットヘッドには、一定方向に配列される複数のノズルによって構成されるノズル列が形成され、インクジェットヘッドは、複数のノズルのそれぞれからインクを吐出させる複数の吐出エネルギー発生素子と、インクジェットヘッドの内部のインクを加温するヘッド内ヒータとを備え、ノズル列を構成する複数のノズルの配列方向を第1方向とすると、複数のヘッド内温度センサは、第1方向において間隔をあけた状態で配置され、インクジェットヘッドの第1方向の一端側には、インクジェットヘッドに向かってインクが流入するインク流入口が形成され、インクジェットヘッドの内部の第1方向の一端側のインクの温度は、インクジェットヘッドの内部の第1方向の他端側のインクの温度よりも低くなっており、インクジェットヘッドの内部の第1方向の一端側部分におけるインクの温度の変化は、インクジェットヘッドの内部の第1方向の他端側部分におけるインクの温度の変化よりも大きくなっており、インクジェットヘッドの第1方向の一端側部分では、インクジェットヘッドの第1方向の他端側部分よりも、ノズル列を構成する複数のノズルが第1方向において細かくグループ分けされ、制御部は、複数のヘッド内温度センサの検知結果に基づいて、複数の吐出エネルギー発生素子に印加される駆動電圧を制御し、かつ、第1方向の一端側に配置されるノズルからインクを吐出させる吐出エネルギー発生素子の駆動電圧を、第1方向の他端側に配置されるノズルからインクを吐出させる吐出エネルギー発生素子の駆動電圧よりも高くするとともに、同じグループに属するノズルからインクを吐出させる複数の吐出エネルギー発生素子に同じ駆動電圧を印加することを特徴とする。
さらに、本発明のインクジェットプリンタの制御方法は、上述の新たな知見に基づくものであり、インクを吐出するインクジェットヘッドと、インクジェットヘッドの内部のインクの温度を検知するための複数のヘッド内温度センサとを備え、インクジェットヘッドには、一定方向に配列される複数のノズルによって構成されるノズル列が形成され、インクジェットヘッドは、複数のノズルのそれぞれからインクを吐出させる複数の吐出エネルギー発生素子と、インクジェットヘッドの内部のインクを加温するヘッド内ヒータとを備え、ノズル列を構成する複数のノズルの配列方向を第1方向とすると、複数のヘッド内温度センサは、第1方向において間隔をあけた状態で配置され、インクジェットヘッドの第1方向の一端側には、インクジェットヘッドに向かってインクが流入するインク流入口が形成され、インクジェットヘッドの内部の第1方向の一端側のインクの温度は、インクジェットヘッドの内部の第1方向の他端側のインクの温度よりも低くなっており、インクジェットヘッドの内部の第1方向の一端側部分におけるインクの温度の変化は、インクジェットヘッドの内部の第1方向の他端側部分におけるインクの温度の変化よりも大きくなっており、インクジェットヘッドの第1方向の一端側部分では、インクジェットヘッドの第1方向の他端側部分よりも、ノズル列を構成する複数のノズルが第1方向において細かくグループ分けされているインクジェットプリンタの制御方法であって、複数のヘッド内温度センサの検知結果に基づいて、複数の吐出エネルギー発生素子に印加される駆動電圧を制御し、かつ、第1方向の一端側に配置されるノズルからインクを吐出させる吐出エネルギー発生素子の駆動電圧を、第1方向の他端側に配置されるノズルからインクを吐出させる吐出エネルギー発生素子の駆動電圧よりも高くするとともに、同じグループに属するノズルからインクを吐出させる複数の吐出エネルギー発生素子に同じ駆動電圧を印加することを特徴とする。
【0027】
本発明では、ノズル列を構成する複数のノズルの配列方向を第1方向とすると、第1方向において間隔をあけた状態で配置される複数のヘッド内温度センサの検知結果に基づいて、複数の吐出エネルギー発生素子に印加される駆動電圧を制御している。そのため、本発明では、インクジェットヘッドの中のインクの温度が第1方向においてばらついて、その結果、複数のノズルから吐出されるインクの粘度が第1方向においてばらついても、複数のヘッド内温度センサの検知結果に基づいて、複数のノズルからのインクの吐出量および吐出速度の第1方向におけるばらつきが抑制されるように、複数の吐出エネルギー発生素子に印加される駆動電圧を制御することが可能になる。したがって、本発明では、印刷時の条件にかかわらず、印刷品質の低下を抑制することが可能になる。
また、本発明では、インクジェットヘッドの中の第1方向の一端側のインクの温度が低くなっていても、複数のノズルからのインクの吐出量および吐出速度の第1方向におけるばらつきを抑制することが可能になる。さらに、本発明では、インクジェットヘッドの内部の第1方向の一端側部分におけるインクの温度の変化が大きくなっていても、複数のノズルからのインクの吐出量および吐出速度の第1方向におけるばらつきを効果的に抑制することが可能になる。
【0028】
本発明において、たとえば、インクジェットヘッドは、インクジェットヘッドの内部のインクを加温するヘッド内ヒータを備え、インクジェットヘッドの内部の第1方向の両端側のインクの温度は、インクジェットヘッドの内部の第1方向の中心側のインクの温度よりも低くなっており、制御部は、第1方向の両端側に配置されるノズルからインクを吐出させる吐出エネルギー発生素子の駆動電圧を、第1方向の中心側に配置されるノズルからインクを吐出させる吐出エネルギー発生素子の駆動電圧よりも高くする。この場合には、インクジェットヘッドの中の第1方向の両端側のインクの温度が低くなっていても、複数のノズルからのインクの吐出量および吐出速度の第1方向におけるばらつきを抑制することが可能になる。
【発明の効果】
【0029】
以上のように、本発明では、一定方向に配列される複数のノズルからインクを吐出して印刷を行うインクジェットプリンタにおいて、印刷時の条件にかかわらず、印刷品質の低下を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施の形態にかかるインクジェットプリンタの斜視図である。
【
図2】
図1に示すインクジェットプリンタの構成を説明するための概略図である。
【
図3】
図2に示すキャリッジの周辺部分の一部の斜視図である。
【
図4】
図1に示すインクジェットプリンタの構成を説明するためのブロック図である。
【
図5】
図2に示すインクジェットヘッドの概略構成を説明するための断面図である。
【
図6】
図2に示すインクジェットヘッドの概略構成を説明するための底面図である。
【
図7】
図4に示す制御部に記憶される、インクジェットヘッドの内部の前後方向の各位置におけるインクの温度の測定結果の例を説明するための図である。
【
図8】
図4に示す制御部に記憶される、インクジェットヘッドの内部の前後方向の各位置におけるインクの温度の測定結果の例を説明するための図である。
【
図9】
図4に示す制御部に記憶されるテーブルの一例を説明するための図である。
【
図10】本発明の他の実施の形態にかかるインクジェットヘッドの概略構成を説明するための底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0032】
(インクジェットプリンタの構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるインクジェットプリンタ1の斜視図である。
図2は、
図1に示すインクジェットプリンタ1の構成を説明するための概略図である。
図3は、
図2に示すキャリッジ4の周辺部分の一部の斜視図である。
図4は、
図1に示すインクジェットプリンタ1の構成を説明するためのブロック図である。
図5は、
図2に示すインクジェットヘッド3の概略構成を説明するための断面図である。
図6は、
図2に示すインクジェットヘッド3の概略構成を説明するための底面図である。
【0033】
本形態のインクジェットプリンタ1(以下、「プリンタ1」とする。)は、たとえば、業務用のインクジェットプリンタであり、インクを吐出して印刷媒体2に印刷を行う。プリンタ1では、常温での粘度が高く、かつ、温度変動に伴う粘度の変動が大きいインクが使用される。本形態では、紫外線硬化型のインクであるUVインクがプリンタ1で使用される。印刷媒体2は、たとえば、印刷用紙、布帛または樹脂製のフィルム等である。
【0034】
プリンタ1は、印刷媒体2に向かってインクを吐出するインクジェットヘッド3(以下、「ヘッド3」とする。)と、ヘッド3が搭載されるキャリッジ4と、キャリッジ4を主走査方向(
図1等のY方向)へ移動させるキャリッジ駆動機構5と、キャリッジ4を主走査方向へ案内するためのガイドレール6と、ヘッド3に供給されるインクが収容される複数のインクタンク7とを備えている。以下の説明では、主走査方向(Y方向)を「左右方向」とし、上下方向(
図1等のZ方向)と主走査方向とに直交する副走査方向(
図1等のX方向)を「前後方向」とする。また、前後方向の一方側である
図1等のX1方向側を「前」側とし、前後方向の他方側である
図1等のX2方向側を「後ろ」側とする。
【0035】
また、プリンタ1は、ヘッド3の内部圧力を調整するための圧力調整機構11と、ヘッド3に供給されるインクを温めるためのインク加温機構12と、ヘッド3の内部のインクの温度を検知するためのヘッド内温度センサ13と、プリンタ1の外部の温度(外部温度)を検知するための外部温度センサ14とを備えている。さらに、プリンタ1は、プリンタ1を制御する制御部9を備えている。制御部9には、PC(パーソナルコンピュータ)等のプリンタ1の上位装置10が電気的に接続されている。
【0036】
ヘッド3の下面には、インクを吐出する複数のノズル3aが形成されている。複数のノズル3aは、前後方向に一定のピッチで配列されており、前後方向に配列される複数のノズル3aによって、ノズル列3bが構成されている。すなわち、ヘッド3には、一定方向に配列される複数のノズル3aによって構成されるノズル列3bが形成されている。本形態の前後方向(X方向)は、ノズル列3bを構成する複数のノズル3aの配列方向である第1方向となっている。
【0037】
ノズル列3bは、前後方向において予めグループ分けされた複数のノズル3aからなる複数のノズルグループ3A~3Hによって構成されている。本形態では、たとえば、ノズル列3bを構成する全てのノズル3aが前後方向において8個に均等にグループ分けされている。すなわち、
図6に示すように、ノズル列3bは、8個のノズルグループ3A~3Hによって構成されており、ノズルグループ3A~3Hのそれぞれが有するノズル3aの数は等しくなっている。ノズルグループ3A~3Hは、ヘッド3の前端から後端に向かってこの順番で配置されている。
【0038】
また、ヘッド3の内部には、複数のノズル3aが繋がるインク流路3cが形成されている。インク流路3cの一端は、ヘッド3に向かってインクが流入するインク流入口3dとなっている。インク流入口3dは、ヘッド3の前端側に形成されている。なお、
図6に示す例では、ヘッド3の下面に1個のノズル列3bが形成されているが、左右方向に間隔をあけた状態で配置される複数のノズル列3bがヘッド3の下面に形成されていても良い。
【0039】
ヘッド3の下側には、プラテン8が配置されている。プラテン8には、印刷時の印刷媒体2が載置される。プラテン8に載置される印刷媒体2は、図示を省略する媒体送り機構によって前後方向に搬送される。キャリッジ駆動機構5は、たとえば、2個のプーリと、2個のプーリに架け渡されるとともに一部がキャリッジ4に固定されるベルトと、プーリを回転させるモータとを備えている。なお、キャリッジ4には、ヘッド3から吐出されたインクに紫外線を照射してインクを硬化させる紫外線照射器(図示省略)が搭載されている。
【0040】
ヘッド3は、複数のノズル3aのそれぞれからインクを吐出させる複数の圧電素子16を備えている。また、ヘッド3は、圧電素子16に駆動電圧を印加して圧電素子16を駆動するドライバIC(Integrated Circuit)17と、ヘッド3の内部のインクを加温するヘッド内ヒータ18とを備えている。圧電素子16、ドライバIC17およびヘッド内ヒータ18は、ヘッド3の内部に配置されている。圧電素子16は、制御部9に電気的に接続されている。本形態の圧電素子16は、吐出エネルギー発生素子である。なお、ドライバIC17は、ヘッド3の内部に配置されていなくても良い。この場合には、たとえば、キャリッジ4に搭載される回路基板にドライバIC17が実装されている。
【0041】
ヘッド内温度センサ13は、ヘッド3の内部に配置されている。ヘッド内温度センサ13は、たとえば、
図5に示すように、インク流路3cの後端部の上側に配置されている。また、ヘッド内温度センサ13は、インク流路3cの外側に配置されている。ヘッド内温度センサ13は、ヘッド3の本体フレームの温度を検知することで、ヘッド3の内部のインク(具体的には、インク流路3cの中のインク)の温度を間接的に検知する。ヘッド内温度センサ13は、制御部9に電気的に接続されている。なお、ヘッド内温度センサ13は、インク流路3cの中のインクに接触する位置に配置されていて、インク流路3cの中のインクの温度を直接、検知しても良い。
【0042】
ヘッド内ヒータ18は、ヘッド3の本体フレームを加熱することでヘッド3の内部のインク(具体的には、インク流路3cの中のインク)を温めて、ヘッド3の内部のインクの粘度を低下させる機能を果たしている。ヘッド内ヒータ18は、インク流路3cの上側に配置されている。また、ヘッド内ヒータ18は、ヘッド3の内部の中心部分に配置されている。ヘッド内ヒータ18は、制御部9に電気的に接続されている。
【0043】
制御部9は、ヘッド内温度センサ13の検知結果に基づいてヘッド内ヒータ18を制御する。具体的には、制御部9は、ヘッド内温度センサ13で検知される温度が所定の設定温度未満である場合に、ヘッド内ヒータ18を駆動し、ヘッド内温度センサ13で検知される温度が設定温度以上になると、ヘッド内ヒータ18を停止させる。なお、ヘッド内ヒータ18は、ヘッド内ヒータ18の過熱状態を検知するための温度センサ(図示省略)を備えている。この温度センサは、たとえば、サーミスタであり、ヘッド内ヒータ18に取り付けられている。
【0044】
圧力調整機構11には、インクタンク7からインクが供給される。具体的には、インクタンク7は、圧力調整機構11よりも上側に配置されており、水頭差によってインクタンク7から圧力調整機構11にインクが供給される。インク加温機構12は、ヘッド3へのインクの供給経路において圧力調整機構11とヘッド3との間に配置されている。インク加温機構12には、圧力調整機構11からインクが供給され、ヘッド3には、インク加温機構12からインクが供給される。圧力調整機構11およびインク加温機構12は、キャリッジ4に搭載されている。
【0045】
インク加温機構12は、ヘッド3の外部に配置されるヘッド外インク加温装置である。インク加温機構12は、ヘッド3に供給されるインクを温めることで、ヘッド3に供給されるインクの粘度を低下させる機能を果たしている。インク加温機構12は、ヘッド3の上側に配置されている。インク加温機構12は、ブロック状に形成される加温部本体20と、加温部本体20に取り付けられるヘッド外ヒータ21と、加温部本体20に取り付けられるヘッド外温度センサ22とを備えている。
【0046】
加温部本体20の内部には、インクが流れるインク流路が形成されている。ヘッド外ヒータ21は、シート状に形成されたシートヒータである。ヘッド外ヒータ21は加温部本体20の側面に貼り付けられている。ヘッド外ヒータ21およびヘッド外温度センサ22は、制御部9に電気的に接続されている。制御部9は、ヘッド外温度センサ22の検知結果に基づいてヘッド外ヒータ21を制御する。
【0047】
圧力調整機構11は、インク加温機構12に取り付けられている。圧力調整機構11の下側部分は、加温部本体20に収容されている。圧力調整機構11は、たとえば、特開2011-46070号公報に記載された調圧ダンパと同様に構成される機械式の圧力ダンパであり、圧力調整用のポンプを用いることなく、ヘッド3の内部圧力を機械的に調整する。また、圧力調整機構11は、ヘッド3の内部圧力(インク流路3cの内部圧力)を負圧に調整する。
【0048】
外部温度センサ14は、たとえば、キャリッジ4に搭載されている。あるいは、外部温度センサ14は、プリンタ1の操作パネル上または本体フレームに取り付けられている。外部温度センサ14は、制御部9に電気的に接続されている。
【0049】
(インクジェットプリンタの制御方法)
図7、
図8は、
図4に示す制御部9に記憶される、ヘッド3の内部の前後方向の各位置におけるインクの温度の測定結果の例を説明するための図である。
図9は、
図4に示す制御部9に記憶されるテーブルの一例を説明するための図である。
【0050】
プリンタ1で印刷媒体2の印刷を行うときには、制御部9は、ヘッド3に流入するインクの流量(すなわち、インク加温機構12からヘッド3に流入するインクの単位時間当たりの流量)であるインク流量と、ヘッド3に流入するインクの温度(すなわち、インク流入口3dにおけるインクの温度)であるインク流入温度とに基づいて、ヘッド3の内部の前後方向の各位置におけるインクの温度を推定するとともに、この推定結果に基づいて、複数の圧電素子16に印加される駆動電圧を制御する。具体的には、制御部9は、以下のように、複数の圧電素子16に印加される駆動電圧を制御する。
【0051】
なお、以下の説明では、ノズルグループ3A~3Hのそれぞれを構成するノズル3aからインクを吐出させる圧電素子16を区別して表す場合には、ノズルグループ3Aを構成するノズル3aからインクを吐出させる複数の圧電素子16のそれぞれを「圧電素子16A」とし、ノズルグループ3Bを構成するノズル3aからインクを吐出させる複数の圧電素子16のそれぞれを「圧電素子16B」とし、ノズルグループ3Cを構成するノズル3aからインクを吐出させる複数の圧電素子16のそれぞれを「圧電素子16C」とし、ノズルグループ3Dを構成するノズル3aからインクを吐出させる複数の圧電素子16のそれぞれを「圧電素子16D」とし、ノズルグループ3Eを構成するノズル3aからインクを吐出させる複数の圧電素子16のそれぞれを「圧電素子16E」とし、ノズルグループ3Fを構成するノズル3aからインクを吐出させる複数の圧電素子16のそれぞれを「圧電素子16F」とし、ノズルグループ3Gを構成するノズル3aからインクを吐出させる複数の圧電素子16のそれぞれを「圧電素子16G」とし、ノズルグループ3Hを構成するノズル3aからインクを吐出させる複数の圧電素子16のそれぞれを「圧電素子16H」とする。
【0052】
また、本形態では、制御部9は、圧電素子16Aと圧電素子16Bと圧電素子16Cと圧電素子16Dと圧電素子16Eと圧電素子16Fと圧電素子16Gと圧電素子16Hとを個別に制御することが可能となっている。一方で、制御部9は、複数の圧電素子16Aのそれぞれを個別に制御することはできない。すなわち、複数の圧電素子16Aには、同じ駆動電圧が印加される。同様に、複数の圧電素子16Bには、同じ駆動電圧が印加され、複数の圧電素子16Cには、同じ駆動電圧が印加され、複数の圧電素子16Dには、同じ駆動電圧が印加され、複数の圧電素子16Eには、同じ駆動電圧が印加され、複数の圧電素子16Fには、同じ駆動電圧が印加され、複数の圧電素子16Gには、同じ駆動電圧が印加され、複数の圧電素子16Hには、同じ駆動電圧が印加される。すなわち、制御部9は、同じグループに属するノズル3aからインクを吐出させる複数の圧電素子16に同じ駆動電圧を印加する。
【0053】
印刷媒体2の印刷前には、様々なインク流量およびインク流入温度に応じた、ヘッド3の内部の前後方向の各位置におけるインクの温度が予め測定されており、この測定結果が制御部9に予め記憶されている。具体的には、ヘッド内ヒータ18によって加温されるインクの目標加温温度(インクの加温温度の目標値)と、様々なインク流量およびインク流入温度とに応じた、ヘッド3の内部の前後方向の各位置におけるインクの温度が予め測定されており、この測定結果が制御部9に予め記憶されている。本形態では、ヘッド3から吐出されるインクの最適温度が45℃となっており、目標加温温度は45℃となっている。
【0054】
たとえば、インク流量がQ1でインク流入温度が41℃の場合の、ヘッド3の内部の前後方向の各位置におけるインクの温度(
図7(A)参照)、インク流量がQ1でインク流入温度が42℃の場合の、ヘッド3の内部の前後方向の各位置におけるインクの温度(
図7(B)参照)、インク流量がQ1でインク流入温度が40℃の場合の、ヘッド3の内部の前後方向の各位置におけるインクの温度(
図8(A)参照)、および、インク流量がQ1よりも少ないQ2でインク流入温度が41℃の場合の、ヘッド3の内部の前後方向の各位置におけるインクの温度(
図8(B)参照)等が、印刷媒体2の印刷前に予め測定されており、この測定結果が制御部9に予め記憶されている。
【0055】
なお、インク流入温度が目標加温温度である45℃未満の場合には、ヘッド3の内部のインクは、インクの温度が45℃になるまでヘッド内ヒータ18によって温められる。そのため、インク流入温度が45℃未満の場合には、ヘッド3の内部の前端部のインクの温度が最も低くなる。また、インク流入温度が低くなるにしたがって、ヘッド3の内部の、インクの温度が45℃に達する位置は、後ろ側に移動する。また、インク流量が多くなるにしたがって、ヘッド3の内部の、インクの温度が45℃に達する位置は、後ろ側に移動する。
【0056】
印刷媒体2の印刷時には、まず、印刷媒体2に印刷を行うための印刷データが上位装置10から制御部9に入力される。制御部9は、制御部9に入力された印刷データに基づいてインク流量を特定する。たとえば、制御部9は、制御部9に入力された印刷データに基づく所定の演算を行ってインク流量を算出する。
【0057】
また、制御部9は、特定されたインク流量と外部温度センサ14で検知されたプリンタ1の外部温度とに基づいてインク流入温度を特定する。たとえば、制御部9には、インク流量およびプリンタ1の外部温度と、インク流入温度とが予め対応付けられたテーブルが記憶されており、制御部9は、このテーブルを参照して、インク流入温度を特定する。あるいは、制御部9は、特定されたインク流量と外部温度センサ14で検知されたプリンタ1の外部温度とに基づく所定の演算を行ってインク流入温度を算出する。制御部9が所定の演算を行ってインク流入温度を算出する場合には、インク加温機構12の性能等が考慮される。
【0058】
その後、制御部9は、特定されたインク流量およびインク流入温度と、制御部9に記憶された測定結果とに基づいて、ヘッド3の内部の前後方向の各位置におけるインクの温度を推定する。また、制御部9には、圧電素子16の駆動電圧とインクの温度とが予め対応付けられたテーブル(
図9参照)が記憶されており、制御部9は、推定結果に基づいて、テーブルを参照して、複数の圧電素子16に印加される駆動電圧を制御する。なお、
図9に示すテーブルでは、インクの温度にかかわらず、ノズル3aからのインクの吐出量および吐出速度が一定となるように、インクの温度のそれぞれに応じた圧電素子16の駆動電圧が設定されている。
【0059】
たとえば、特定されたインク流量がQ1で、かつ、特定されたインク流入温度41℃の場合(
図7(A)参照)には、ノズルグループ3Aとノズルグループ3Bとの境界位置のインクの温度が42℃と推定され、ノズルグループ3Bとノズルグループ3Cとの境界位置のインクの温度が43℃と推定され、ノズルグループ3Cとノズルグループ3Dとの境界位置のインクの温度が44℃と推定され、ノズルグループ3Dとノズルグループ3Eとの境界位置から後ろ側のインクの温度が45℃と推定される。
【0060】
そのため、この場合には、制御部9は、たとえば、41℃に対応付けられる駆動電圧V1+1.104(V)を圧電素子16Aに印加し、42℃に対応付けられる駆動電圧V1+0.828(V)を圧電素子16Bに印加し、43℃に対応付けられる駆動電圧V1+0.552(V)を圧電素子16Cに印加し、44℃に対応付けられる駆動電圧V1+0.276(V)を圧電素子16Dに印加し、45℃に対応付けられる駆動電圧V1(V)を圧電素子16E~16Hに印加する。なお、インクの温度が低くなるにしたがってインクの粘度が低下してノズル3aからインクが吐出されにくくなるため、
図9に示すように、インクの温度が低くなるにしたがって圧電素子16に印加される駆動電圧が高くなる。
【0061】
また、たとえば、特定されたインク流量がQ1で、かつ、特定されたインク流入温度42℃の場合(
図7(B)参照)には、制御部9は、42℃に対応付けられる駆動電圧V1+0.828(V)を圧電素子16Aに印加し、43℃に対応付けられる駆動電圧V1+0.552(V)を圧電素子16Bに印加し、44℃に対応付けられる駆動電圧V1+0.276(V)を圧電素子16Cに印加し、45℃に対応付けられる駆動電圧V1(V)を圧電素子16D~16Hに印加する。
【0062】
同様に、たとえば、特定されたインク流量がQ1で、かつ、特定されたインク流入温度40℃の場合(
図8(A)参照)には、制御部9は、圧電素子16Aに駆動電圧V1+1.380(V)を印加し、圧電素子16Bに駆動電圧V1+1.104(V)を印加し、圧電素子16Cに駆動電圧V1+0.828(V)を印加し、圧電素子16Dに駆動電圧V1+0.552(V)を印加し、圧電素子16Eに駆動電圧V1+0.276(V)を印加し、圧電素子16F~16Hに駆動電圧V1(V)を印加する。
【0063】
また、たとえば、特定されたインク流量がQ2で、かつ、特定されたインク流入温度41℃の場合(
図8(B)参照)には、制御部9は、圧電素子16Aに駆動電圧V1+1.104(V)を印加し、圧電素子16Bに駆動電圧V1+0.552(V)を印加し、圧電素子16C~16Hに駆動電圧V1(V)を印加する。
【0064】
このように、インク流入温度が45℃未満の場合には、ヘッド3の内部の前端側のインクの温度がヘッド3の内部の後端側のインクの温度よりも低くなるため、制御部9は、ヘッド3の前端側に配置されるノズル3aからインクを吐出させる圧電素子16の駆動電圧を、ヘッド3の後端側に配置されるノズル3aからインクを吐出させる圧電素子16の駆動電圧よりも高くする。すなわち、制御部9は、ノズルグループ3Aを構成するノズル3aからインクを吐出させる圧電素子16Aの駆動電圧を、ノズルグループ3Hを構成するノズル3aからインクを吐出させる圧電素子16Hの駆動電圧よりも高くする。
【0065】
制御部9は、1枚の印刷媒体2の印刷が行われるごとに、インク流量とインク流入温度とに基づいて、ヘッド3の内部の前後方向の各位置におけるインクの温度を推定し、この推定結果に基づいて、複数の圧電素子16に印加される駆動電圧を更新して設定する。または、制御部9は、印刷媒体2の印刷中にキャリッジ4の主走査方向へ走査動作が1回行われるごとに、インク流量とインク流入温度とに基づいて、ヘッド3の内部の前後方向の各位置におけるインクの温度を推定し、この推定結果に基づいて、複数の圧電素子16に印加される駆動電圧を更新して設定する。
【0066】
あるいは、制御部9は、リアルタイムで、インク流量とインク流入温度とに基づいて、ヘッド3の内部の前後方向の各位置におけるインクの温度を推定し、この推定結果に基づいて、複数の圧電素子16に印加される駆動電圧を更新して設定する。すなわち、制御部9は、印刷媒体2の印刷中にキャリッジ4が主走査方向へ走査動作を行っている途中でも、インク流量とインク流入温度とに基づいて、ヘッド3の内部の前後方向の各位置におけるインクの温度を推定し、この推定結果に基づいて、複数の圧電素子16に印加される駆動電圧を更新して設定する。
【0067】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、制御部9は、インク流量とインク流入温度とに基づいて、ヘッド3の内部の前後方向の各位置におけるインクの温度を推定するとともに、推定結果に基づいて、複数の圧電素子16に印加される駆動電圧を制御している。そのため、本形態では、ヘッド3の中のインクの温度が前後方向でばらついて、その結果、複数のノズル3aから吐出されるインクの粘度が前後方向でばらついても、ヘッド3の内部の前後方向の各位置におけるインクの温度の推定結果に基づいて、複数のノズル3aからのインクの吐出量および吐出速度の前後方向におけるばらつきが抑制されるように、複数の圧電素子16に印加される駆動電圧を制御することが可能になる。したがって、本形態では、印刷時の条件にかかわらず、印刷品質の低下を抑制することが可能になる。
【0068】
本形態では、制御部9は、制御部9に入力された印刷データに基づいてインク流量を特定するとともに、特定されたインク流量と外部温度センサ14で検知された外部温度とに基づいてインク流入温度を特定している。そのため、本形態では、プリンタ1の機械的な構成を簡素化しつつ、比較的容易にインク流量およびインク流入温度を求めることが可能になる。
【0069】
本形態では、様々なインク流量およびインク流入温度に応じた、ヘッド3の内部の前後方向の各位置におけるインクの温度が予め測定されており、この測定結果が制御部9に予め記憶されている。また、本形態では、制御部9は、特定されたインク流量およびインク流入温度と、制御部9に記憶された測定結果とに基づいて、ヘッド3の内部の前後方向の各位置におけるインクの温度を推定している。そのため、本形態では、ヘッド3の内部の前後方向の各位置におけるインクの温度を推定する際の制御部9の処理を簡素化することが可能になる。
【0070】
本形態では、インク流入温度が45℃未満の場合に、ヘッド3の内部の前端側のインクの温度がヘッド3の内部の後端側のインクの温度よりも低くなるが、制御部9は、この場合に、ヘッド3の前端側に配置されるノズル3aからインクを吐出させる圧電素子16の駆動電圧を、ヘッド3の後端側に配置されるノズル3aからインクを吐出させる圧電素子16の駆動電圧よりも高くしている。そのため、本形態では、ヘッド3の中の前端側のインクの温度が低くなっていても、複数のノズル3aからのインクの吐出量および吐出速度の前後方向におけるばらつきを抑制することが可能になる。
【0071】
(インクジェットプリンタの制御方法の変形例)
上述した形態において、プリンタ1は、複数のヘッド内温度センサ13を備えていても良い。たとえば、プリンタ1は、
図6の二点鎖線で示すように、3個のヘッド内温度センサ13を備えていても良い。この場合には、3個のヘッド内温度センサ13は、前後方向において間隔をあけた状態で配置されている。たとえば、前後方向において、ノズルグループ3Aが配置される位置と、ノズルグループ3Cが配置される位置と、ノズルグループ3Eが配置される位置との3箇所に、ヘッド内温度センサ13が配置されている。
【0072】
この場合には、制御部9は、3個のヘッド内温度センサ13の検知結果に基づいて、複数の圧電素子16に印加される駆動電圧を制御する。すなわち、制御部9は、3個のヘッド内温度センサ13の検知結果に基づいて、ヘッド3の内部の前後方向の各位置におけるインクの温度を推定するとともに、この推定結果に基づいて、複数の圧電素子16に印加される駆動電圧を制御する。
【0073】
この変形例でも、上述した形態と同様に、ヘッド3の中のインクの温度が前後方向においてばらついて、その結果、複数のノズル3aから吐出されるインクの粘度が前後方向においてばらついても、3個のヘッド内温度センサ13の検知結果に基づいて、複数のノズル3aからのインクの吐出量および吐出速度の前後方向におけるばらつきが抑制されるように、複数の圧電素子16に印加される駆動電圧を制御することが可能になる。したがって、この変形例でも、印刷時の条件にかかわらず、印刷品質の低下を抑制することが可能になる。なお、この変形例では、制御部9は、インク流量およびインク流入温度を特定する必要はない。また、この変形例では、様々なインク流量およびインク流入温度に応じた、ヘッド3の内部の前後方向の各位置におけるインクの温度を予め測定する必要はない。
【0074】
この変形例において、プリンタ1が備えるヘッド内温度センサ13は、2個であっても良いし、4個以上であっても良いが、プリンタ1が8個のヘッド内温度センサ13を備えていて、前後方向において、8個のノズルグループ3A~3Hが配置される位置のそれぞれにヘッド内温度センサ13が配置されていることが好ましい。この場合には、8個のヘッド内温度センサ13の検知結果に基づいて、8個のノズルグループ3A~3Hが配置される位置のそれぞれにおけるインクの温度を推定することが可能になるため、この推定結果に基づいて、複数のノズル3aからのインクの吐出量および吐出速度の前後方向におけるばらつきがより抑制されるように、圧電素子16A~16Hのそれぞれに印加される駆動電圧を制御することが可能になる。
【0075】
なお、この変形例のように、複数のヘッド内温度センサ13が前後方向において間隔をあけた状態で配置されている場合には、8個のノズルグループ3A~3Hが配置される位置のそれぞれにヘッド内ヒータ18を1個ずつ配置して、複数のヘッド内温度センサ13の検知結果に基づいて8個のヘッド内ヒータ18を個別に制御することで、ヘッド3の中のインクの温度の前後方向におけるばらつきを抑制することも考えられるが、本願発明者の検討によると、複数のヘッド内温度センサ13の検知結果に基づいて8個のヘッド内ヒータ18を個別に制御しても、ヘッド内ヒータ18の温度変動に伴ってヘッド3の中のインクの温度がすぐに変動するわけではないため、ヘッド3の中のインクの温度の前後方向におけるばらつきを抑制することは困難である。
【0076】
(他の実施の形態)
上述した形態および変形例は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0077】
上述した形態において、プリンタ1は、ヘッド3に流入するインクの流量であるインク流量を検知するための流量計を備えていても良い。この場合には、制御部9は、流量計の検知結果に基づいてインク流量を特定する。また、上述した形態において、制御部9は、加温部本体20のインク流路に流入するインクの影響による加温部本体20の単位時間当たりの温度低下量をヘッド外温度センサ22の検知結果に基づいて算出するとともに、算出された加温部本体20の単位時間当たりの温度低下量に基づいて、インク流量を算出しても良い。
【0078】
上述した形態において、プリンタ1は、ヘッド3に流入するインクの温度であるインク流入温度を検知するための温度センサを備えていても良い。この温度センサは、ヘッド3の、インク流入口3dの近傍に取り付けられている。また、この場合には、制御部9は、この温度センサの検知結果に基づいてインク流入温度を特定する。
【0079】
上述した形態および変形例において、ノズル列3bは、2~7個のノズルグループにグループ分けされていても良いし、9個以上のノズルグループにグループ分けされていても良い。また、上述した形態および変形例では、
図6に示すように、ノズル列3bを構成する複数のノズル3aが前後方向において均等にグループ分けされているが、インク流入温度が45℃未満であって、ヘッド3の内部の前端側部分におけるインクの温度の変化が、ヘッド3の内部の後端側部分におけるインクの温度の変化よりも大きくなっている場合(
図7、
図8参照)には、ヘッド3の前端側部分において、ヘッド3の後端側部分よりも、ノズル列3bを構成する複数のノズル3aが前後方向において細かくグループ分けされていても良い。
【0080】
たとえば、
図10に示すように、ノズル列3bを構成する複数のノズル3aが8個のノズルグループ3A~3Hにグループ分けされていても良い。この場合には、ヘッド3の内部の前端側部分におけるインクの温度の変化が、ヘッド3の内部の後端側部分におけるインクの温度の変化よりも大きくなっていても、複数のノズル3aからのインクの吐出量および吐出速度の前後方向におけるばらつきを効果的に抑制することが可能になる。
【0081】
上述した形態および変形例において、ノズル列3bを構成する複数のノズル3aは、前後方向において予めグループ分けされていなくても良い。この場合には、たとえば、制御部9は、複数の圧電素子16のそれぞれを個別に制御することが可能となっている。この場合には、ヘッド3の内部の前後方向の各位置におけるインクの温度の推定結果に基づいて、ノズル列3bを構成する複数のノズル3aを前後方向において任意の位置で区切ってグループ分けするとともに、各グループのノズル3aに対応する圧電素子16に印加される駆動電圧をより柔軟に制御することが可能になる。
【0082】
上述した形態および変形例において、ヘッド3の内部の前後方向の両端側におけるインクの温度が、ヘッド3の内部の前後方向の中心側におけるインクの温度よりも低くなる場合には、制御部9は、前後方向の両端側に配置されるノズル3aからインクを吐出させる圧電素子16の駆動電圧を、前後方向の中心側に配置されるノズル3aからインクを吐出させる圧電素子16の駆動電圧より高くしても良い。たとえば、制御部9は、圧電素子16A、16Hの駆動電圧を、圧電素子16B~16Gの駆動電圧より高くしても良い。この場合には、ヘッド3の中の前後方向の両端側のインクの温度が低くなっていても、複数のノズル3aからのインクの吐出量および吐出速度の前後方向におけるばらつきを抑制することが可能になる。
【0083】
上述した形態および変形例において、ヘッド3は、ヘッド内ヒータ18を備えていなくても良い。この場合には、ヘッド3の内部の後端側におけるインクの温度が、ヘッド3の内部の前端側におけるインクの温度よりも低くなる。また、上述した形態および変形例において、圧電素子16の駆動電圧とインクの温度とが予め対応付けられたテーブルが制御部9に記憶されていなくても良い。この場合には、制御部9は、インクの温度に基づく所定の演算を行って圧電素子16に印加する駆動電圧を算出する。
【0084】
上述した形態および変形例では、ノズル3aからインクを吐出させるための吐出エネルギー発生素子は、圧電素子16であるが、ノズル3aからインクを吐出させるための吐出エネルギー発生素子は、ヒータ(発熱素子)であっても良い。すなわち、上述した形態および変形例では、プリンタ1は、ピエゾ方式によってノズル3aからインクを吐出させているが、プリンタ1は、サーマル方式によってノズル3aからインクを吐出させても良い。
【0085】
上述した形態および変形例において、プリンタ1で使用されるインクは、UVインク以外の、常温での粘度が高く、かつ、温度変動に伴う粘度の変動が大きいインクであっても良いし、このような特性を有しないインクであっても良い。また、上述した形態および変形例において、プリンタ1は、プラテン8に代えて、印刷媒体2が載置されるテーブルと、テーブルを前後方向に移動させるテーブル駆動機構とを備えていても良い。さらに、上述した形態および変形例において、プリンタ1は、三次元造形物を造形する3Dプリンタであっても良い。
【符号の説明】
【0086】
1 プリンタ(インクジェットプリンタ)
3 ヘッド(インクジェットヘッド)
3a ノズル
3b ノズル列
3d インク流入口
3A~3H ノズルグループ
9 制御部
13 ヘッド内温度センサ
14 外部温度センサ
16 圧電素子(吐出エネルギー発生素子)
18 ヘッド内ヒータ
X 第1方向