(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】可搬式ガス製造設備
(51)【国際特許分類】
F17C 13/02 20060101AFI20240416BHJP
F17C 13/00 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
F17C13/02 301A
F17C13/00 302F
(21)【出願番号】P 2020053855
(22)【出願日】2020-03-25
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000126115
【氏名又は名称】エア・ウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109472
【氏名又は名称】森本 直之
(72)【発明者】
【氏名】河原 伸哉
(72)【発明者】
【氏名】和田 彩香
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-155717(JP,A)
【文献】中国実用新案第201339811(CN,Y)
【文献】特開2015-230053(JP,A)
【文献】特開2007-332989(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0145279(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 13/02
F17C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクローリーから充填される液化ガスを貯留する貯留タンクと、
上記貯留タンクに貯留された上記液化ガスの蒸発器を少なくとも含むガス製造機器と、
上記貯留タンクと上記ガス製造機器を搭載するためのユニット化構造体とを備え、
上記貯留タンクは、長手方向を軸とする筒型タンクであり、上記ユニット化構造体において、横置き状に搭載された状態で、上記タンクローリーから上記貯留タンクに充填される上記液化ガスの充填重量を検出するための重量検出器を上記ユニット化構造体とのあいだに介在させた状態で存在し、
上記ユニット化構造体が長方形
板状の基台であり、上記基台の上において上記横置き状となる上記貯留タンクには、上記長手方向の両端側にそれぞれ幅方向に延びる脚部が設けられ、上記両脚部の幅方向の端部にそれぞれ上記重量検出器が配置されており、
上記ユニット化構造体は、平面仕上げされた基礎上に設置されるものである
ことを特徴とする可搬式ガス製造設備。
【請求項2】
上記貯留タンクは、上記液化ガスの最大貯留量が
3トン未満である
請求項1記載の可搬式ガス製造設備。
【請求項3】
上記ガス製造機器は、ガスの製造能力が100kg/Hr未満である
請求項1または2記載の可搬式ガス製造設備。
【請求項4】
上記ガス製造機器としてさらに、上記蒸発器から移送された製品ガスを一時的に貯留し、必要に応じてガス使用設備に対して供給するバッファタンクを含む
請求項1~3のいずれか一項に記載の可搬式ガス製造設備。
【請求項5】
上記ガス製造機器が、電気制御機器を含み、
上記電気制御機器は、防爆ケース内に収容された状態で上記ユニット化構造体に搭載されている
請求項1~4のいずれか一項に記載の可搬式ガス製造設備。
【請求項6】
上記ユニット化構造体は、トレーラーまたはトラックによる搬送が可能なサイズである
請求項1~5のいずれか一項に記載の可搬式ガス製造設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクローリーによって配送される液化ガスの供給を受けて貯留し、上記液化ガスを蒸発気化させて製品ガスを製造してガス利用設備に供するための可搬式ガス製造設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
産業用の燃料は、従来から主として重油等の石油系燃料が用いられてきた。このような石油系燃料について、二酸化炭素の排出量を削減したり、石油の価格変動リスクを回避したり、といった目的をもって、液化天然ガス(以下「LNG」という)への転換が図られている。LNGの年間消費量がおおむね2000トン以上となる大規模事業所や、同500~2000トン程度の中規模事業所については、石油系燃料からLNGへの転換が進みつつある。
【0003】
一方、年間消費量200~500トン程度の小規模事業所では、LNGへの転換が進んでいない。ボトルネックになっている問題は、LNGのサテライト設備における設備コストと充填量管理である。
【0004】
上記サテライト設備は、LNGの使用場所ちかくに設置されるもので、タンカーから一次基地に陸揚げされたLNGが、タンクローリーによって配送され、それを受け入れて貯留する設備である。上記サテライト設備は、LNGの貯蔵機能と供給機能を有し、LNG貯槽、蒸発器、バッファタンク、電気制御設備などを備えて構成される。
【0005】
このようなLNGのサテライト設備に関する先行技術文献として、出願人は下記の特許文献1および2を把握している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5854479号公報
【文献】特開2005-48794号公報
【0007】
上記特許文献1は、LNGモバイルサテライトシステムとその搬送、運用方法に関するもので、つぎの記載がある。なお、以下は誤記と思われる部分もそのまま引用した。
〔0023〕
LNG貯槽1が、長手方向横置きとされ、LNG貯槽1、およびLNG蒸発器2およびその附属部品の長手方向の長さおよび横断面がコンテナ専用輸送車両200のコンテナサイズのフレームに収納可能な長さ内および横断面内とされ、フレーム4にLNG貯槽1、およびLNG蒸発器2およびその附属部品が収納されてユニットパッケージ10が構成される。
〔0024〕
ユニットパッケージ10は、コンテナ専用輸送車両20で搬送可能とされ、コンテナ専用輸送車両でけん引される時のコンテナとしてのユニットパッケージとLNGモバイルサテライトの土台ベースに固定されて消費者にLNGを供給する時のタンクパッケージとしてのユニットパッケージの二つの機能を有しており、これらの機能が発揮されるように構成される。このように、ユニットパッケージは、コンテナとしてのパッケージ機能およびLNG供給設備のLNGタンクしてのパッケージ機能を有する。
〔0025〕
LNG貯槽1、およびLNG蒸発器2およびその附属部品を金属製のフレーム4に収納そのままの状態で、フレーム4を介してLNGモバイルサテライトの土台ベースに固定されて、LNGモバイルサテライト100を構成し、LNGモバイルサテライ100としての使用がなさることになる。
【0008】
上記特許文献2は、バルク容器を用いたLNGの供給方法に関するもので、つぎの記載がある。
〔0011〕
前記サテライト基地(4)において一時設置されたバルク容器(3)内のLNGの貯残量を検出し、所定量以下になったときに、別にLNGが充填されたバルク容器(3)に交換する。
〔0025〕
サテライト基地4のバルク容器3内のLNGについて、各需要家9や生産設備10が消費してバルク容器3内のLNGの貯残量が極端に低くなったときは、その情報を出荷基地1へ連絡し、LNGを充填した新たなバルク容器3をトレーラー6で搬送し、交換する。サテライト基地4に到着したトレーラー6は、バルク容器3を切り離し、上述したLNG気化器8等に接続して、新たなLNGの交換作業を完了する。このトレーラー6は空になったバルク容器3を牽引して出荷基地1へ搬送し、新たにLNGを充填して別のサテライト基地4へ搬送するときに用いる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のようなサテライト設備は、上述したように設備コストと充填量管理がボトルネックとなり、年間消費量200~500トン程度の小規模事業所への普及が進まない。
【0010】
設備コスト面では、つぎのような問題がある。すなわち、サテライト設備の設置工事は、配管や機器の位置合わせに高精度が要求され、大変な手間がかかって設備コストを押し上げている。上記配管には、液状のLNGを貯槽から気化器に移送する配管、気化器で気化したガス状の天然ガスを供給するものがある。これらの配管には、圧力計や流量計などの機器を介在させる。上記配管や機器は、ガス漏れを起こしてはならず、高さ方向や水平方向における位置合わせの精度が要求される。一方、設置工事は、一般に屋外での作業となる。したがって溶接作業も天候の影響を受け、精度を確保しながらの作業が困難である。組立後の耐圧検査や気密検査なども同様である。
【0011】
また、LNGの年間消費量が少ない小規模事業所では、LNGの貯蔵量やガスの製造量を少なくしたサテライト設備が求められる。具体的には、LNGの貯蔵量で10トン未満、ガスの製造量で100kg/Hr未満である。この規模のサテライト設備であれば、高圧ガス保安法による事業所の分類が、第二種貯蔵所、第二種製造者となり、保安検査や人員等にかかるコストが少なくて済むからである。さらに、貯蔵量を3トン未満とすれば、設備には耐震設計の義務が免除される。したがって、基礎部分や各パーツに耐震設計を採用する義務がなくなり、コスト面で有利となる。
【0012】
このような貯蔵量や製造量が少ないサテライト設備には、充填量の管理においてつぎのような問題が生じる。すなわち、サテライト設備にLNGを配送するタンクローリーは、一般に14トン積みまたは8トン積みである。大規模や中規模のサテライト設備であれば、1台のタンクローリーに積載されたLNGを、1か所のサテライト設備ですべて荷下ろしすることができる。このため、サテライト設備に対するLNGの充填量は、ローリー1台分のLNG重量で管理できる。つまり、計量法に則った重量による管理が可能である。
【0013】
一方、小規模のサテライト設備では、タンクローリーの積載量よりも設備の貯蔵量のほうが少なくなる。したがって、1台のタンクローリーに積載されたLNGを、複数箇所のサテライト設備を巡回しながら小分けに荷下ろしすることになる。この場合、タンクローリーには液面計があるので、荷下ろし前後の液面変化によってサテライト設備に対するLNGの充填量を計ることができる。ところが、計量法に則った重量による管理は行えないという問題があった。
【0014】
〔特許文献1の問題〕
上記特許文献1に記載された技術は、コンテナ専用輸送車両20で搬送可能としたユニットパッケージ10により、LNG貯槽1、LNG蒸発器2およびその附属部品を土台ベースに固定したLNGモバイルサテライト100を構成するものである。しかしながら、この技術は、本願が課題とする、1台のタンクローリーを複数箇所のサテライト設備で小分けにLNGを荷下ろしするときに重量管理できないという問題を解決しうるものではない。
【0015】
〔特許文献2の問題〕
上記特許文献2には、サテライト基地(4)に設置されたバルク容器(3)内のLNGの貯残量を検出することが記載されている。しかしながら、この技術は、各需要家9や生産設備10がLNGを消費してバルク容器3内の残量が少なくなったときに、空のバルク容器3を満タンのバルク容器3に交換するものである。つまり、LNGの供給を絶やさないようにするためのものであり、本願が課題とする、1台のタンクローリーを複数箇所のサテライト設備で小分けにLNGを荷下ろしするときに重量管理できないという問題を解決しうるものではない。
【0016】
〔目的〕
本発明は、上記の課題を解決するためつぎの目的をもってなされたものである。
設置工事の手間を簡略化するとともに、液化ガスの小分け配送に対応してその充填量を重量管理できる可搬式ガス製造設備を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1記載の可搬式ガス製造設備は、上記目的を達成するため、つぎの構成を採用した。
タンクローリーから充填される液化ガスを貯留する貯留タンクと、
上記貯留タンクに貯留された上記液化ガスの蒸発器を少なくとも含むガス製造機器と、
上記貯留タンクと上記ガス製造機器を搭載するためのユニット化構造体とを備え、
上記貯留タンクは、長手方向を軸とする筒型タンクであり、上記ユニット化構造体において、横置き状に搭載された状態で、上記タンクローリーから上記貯留タンクに充填される上記液化ガスの充填重量を検出するための重量検出器を上記ユニット化構造体とのあいだに介在させた状態で存在し、
上記ユニット化構造体が長方形板状の基台であり、上記基台の上において上記横置き状となる上記貯留タンクには、上記長手方向の両端側にそれぞれ幅方向に延びる脚部が設けられ、上記両脚部の幅方向の端部にそれぞれ上記重量検出器が配置されており、
上記ユニット化構造体は、平面仕上げされた基礎上に設置されるものである。
【0018】
請求項2記載の可搬式ガス製造設備は、請求項1記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記貯留タンクは、上記液化ガスの最大貯留量が3トン未満である。
【0020】
請求項3記載の可搬式ガス製造設備は、請求項1または2記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記ガス製造機器は、ガスの製造能力が100kg/Hr未満である。
【0021】
請求項4記載の可搬式ガス製造設備は、請求項1~3のいずれか一項に記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記ガス製造機器としてさらに、上記蒸発器から移送された製品ガスを一時的に貯留し、必要に応じてガス使用設備に対して供給するバッファタンクを含む。
【0023】
請求項5記載の可搬式ガス製造設備は、請求項1~4のいずれか一項に記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記ガス製造機器が、電気制御機器を含み、
上記電気制御機器は、防爆ケース内に収容された状態で上記ユニット化構造体に搭載されている。
【0024】
請求項6記載の可搬式ガス製造設備は、請求項1~5のいずれか一項に記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記ユニット化構造体は、トレーラーまたはトラックによる搬送が可能なサイズである。
【発明の効果】
【0026】
請求項1記載の発明は、貯留タンクとガス製造機器とユニット化構造体とを備えている。上記貯留タンクは、タンクローリーから充填される液化ガスを貯留する。上記ガス製造機器は、上記貯留タンクに貯留された上記液化ガスの蒸発器を含み、上記液化ガスから製品ガスを製造する。上記ユニット化構造体は、上記貯留タンクと上記ガス製造機器を、たとえば搬送可能なユニットとなるように、搭載するためのものである。このように、ガス製造設備をひとつのユニットにすることで、配管や機器の取り付けといった作業を環境のよい屋内で行なってユニットを作りあげ、それをユニットごと設置現場まで搬送して設置できる。屋外の設置現場では、べた基礎のうえにユニットを設置すればほとんど済んでしまい、天候などに左右されない。したがって、設置工事の手間を大幅に簡略化することができる。
【0027】
さらに、本発明は、上記貯留タンクが、長手方向を軸とする筒型タンクであり、上記ユニット化構造体において、横置き状に搭載された状態で、上記タンクローリーから上記貯留タンクに充填される上記液化ガスの充填重量を検出するための重量検出器を上記ユニット化構造体とのあいだに介在させた状態で存在している。このようにしたことにより、たとえば液化ガスの貯蔵量やガスの製造量が少ない設備においても、計量法に則った重量による充填量管理が可能となる。つまり、1台のタンクローリーを複数箇所の設備で小分けに液化ガスを荷下ろしするときにも、確実に重量による充填量管理ができる。
さらに本発明は、上記ユニット化構造体が長方形板状の基台であり、上記基台の上において上記横置き状となる上記貯留タンクには、上記長手方向の両端側にそれぞれ幅方向に延びる脚部が設けられ、上記両脚部の幅方向の端部にそれぞれ上記重量検出器が配置されている。このようにすることにより、重量検出器上の貯留タンクを安定して存在させ、設備の信頼性が向上する。つまり、重量検出器を介在させた状態で存在させた貯留タンクは、荷重を支えて重量を検出する検出体の上に載っていて、いわば床面から浮き上がった状態で存在する。したがって、上記貯留タンクを縦置き状でなく横置き状に搭載することにより、安定して存在させることができる。このため、ユニットを搬送する際の振動が加わったときの信頼性が格段に向上する。また、長手方向の両端側に配置された重量検出器上に、上記貯留タンクを横置き状に存在させることとなり、上記貯留タンクがより安定し、ユニットを搬送する際の振動が加わったときの信頼性が格段に向上する。
さらに本発明は、貯留タンクと蒸発器を少なくとも含むガス製造機器を、オールインワンのユニットとして構成し、このユニットを工場などの屋内で作製し、完成したユニットをそのままガスを利用する事業所の敷地まで搬送して設置することができる。上記ユニット化構造体は、平面仕上げされた基礎上に設置されるものである。このようにすることにより、基礎が簡略なものですむうえ設置作業も容易であり、設置工事の手間を大幅に簡略化することができる。
【0028】
請求項2記載の発明は、上記貯留タンクは、上記液化ガスの最大貯留量が3トン未満である。
したがって、設備に耐震設計の義務が免除され、基礎部分や各パーツに耐震設計を採用する義務がなくなり、コスト面で有利となる。また、タンクローリーの積載量よりも設備の貯蔵量のほうが少ない小規模のガス製造設備であり、そのような設備において、確実に重量による充填量管理ができる。したがって、1台のタンクローリーに積載された液化ガスを、複数箇所のガス製造設備を巡回しながら小分けに荷下ろしする場合に、タンクローリーの液面計に頼ることなく、上記貯留タンクに充填される上記液化ガスの充填重量を検出できるのである。
【0030】
請求項3記載の発明は、上記ガス製造機器は、ガスの製造能力が100kg/Hr未満である。
このようにすることにより、高圧ガス保安法による事業所の分類が第二種製造者となり、保安検査や人員等にかかるコストが少なくて済む。
【0031】
請求項4記載の発明は、上記ガス製造機器としてさらに、上記蒸発器から移送された製品ガスを一時的に貯留し、必要に応じてガス使用設備に対して供給するバッファタンクを含む。このようにすることにより、上述したように平面仕上げされた基礎上に設置したユニットにおいて、上記蒸発器から移送された製品ガスを一時的に貯留し、必要に応じてガス使用設備に対して供給することができる。
【0033】
請求項5記載の発明は、上記ガス製造機器が電気制御機器を含み、上記電気制御機器が、防爆ケース内に収容された状態で上記ユニット化構造体に搭載されている。
このように、電気制御機器を防爆ケース内に収容することにより、貯留タンクとガス製造機器との距離を接近させることができる。つまり、防爆の対策をしない設備であれば、貯留タンクとガス製造機器を8m以上離さねばならず、搬送を前提としたユニットにはできない。そこで、上記の構成とすることにより、搬送可能なユニット化を実現したのである。
【0034】
請求項6記載の発明は、上記ユニット化構造体は、トレーラーまたはトラックによる搬送が可能なサイズである。
汎用の搬送手段を用いた搬送が可能であり、搬送コストにおいて有利である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の第1実施形態の可搬式ガス製造設備の主として外観構造を説明する図である。
【
図2】上記第1実施形態の主として配管構造を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
つぎに、本発明を実施するための形態を説明する。
図1および
図2は、本発明が適用された可搬式ガス製造設備を示す第1実施形態である。
図1は主として外観構造を示し、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)は正面図である。
図2は主として配管構造を示す。
【0038】
〔全体構成〕
本実施形態は、貯留タンク10と、ガス製造機器20と、ユニット化構造体50とを備えて構成されている。
【0039】
〔貯留タンク10〕
上記貯留タンク10は、タンクローリー1から充填される液化ガス(この例ではLNGである)を貯留する。上記貯留タンク10は、低温液化ガスを貯留する真空断熱タイプのものを使うことができる。
【0040】
上記貯留タンク10には、LNGを充填する充填口つきの充填路12が設けられている。上記充填路12は上記貯留タンク10の底部に接続される。上記充填路12には分岐路14が設けられている。上記分岐路14は、上記貯留タンク10の上部に設けられたシャワー装置14Aに接続されている。上記シャワー装置14Aは、上記充填路12から貯留タンク10内にLNGが充填されるあいだ、貯留タンク10の上部空間にLNGをシャワー噴射して、上記上部空間内のボイルオフガスを冷却して液化し、上部空間内の昇圧を防止する。
【0041】
この例では、上記貯留タンク10は、長手方向を軸とする筒型タンクである。上記貯留タンク10は、上記LNGの最大貯留量が、上記タンクローリー1における上記液化ガスの最大積載量より少ない規模のものである。たとえば、直径が2474mm、軸方向の長さが2760mm、容量は7000Lのものを用いることができる。このサイズの貯留タンク10は、上記液化ガスの最大貯留量が3トン未満であり、具体的には90%の充填量が約2.9トンである。
【0042】
上記貯留タンク1を横型とすることにより、ユニット2を輸送するときの高さ制限をクリアできる。上記ユニット化構造体50によってユニット化することにより、全体にコンパクトに収まる。最大貯留量を3t未満とすることにより、耐震設計が義務づけられず、ユニット化構造体50によるユニット化が行いやすいからである。また、設置現場へのユニット2の設置も行いやすい。
【0043】
上記貯留タンク10にLNGを充填するときは、たとえばタンクローリー1から充填口にフレキシブルホース13を接続し、タンクローリー1から貯留タンク10にLNGを圧送する。圧送の方法としては、たとえば、タンクローリー1に低温ポンプ(図示せず)を搭載し、それを用いて圧送する方法を採用することができる。また、低温ポンプを搭載しないタンクローリー1内をあらかじめ高圧にしておき、圧力差で圧送する方法も採用できる。タンクローリー1に搭載した低温ポンプを用いる方法によれば、小分け配送・小分け充填したときにロスするガスが少なくなる。
【0044】
〔ガス製造機器20〕
上記ガス製造機器20は、上記貯留タンク10に貯留された上記液化ガスの蒸発器21を含み、上記液化から製品ガスを製造する。この例では上記液化ガスが液化天然ガス(LNG)なので、上記製品ガスは天然ガスである。
【0045】
上記ガス製造機器20は、この例では、上記蒸発器21に加えてさらに、防爆ケース22に収容された電気制御機器、バッファタンク23、窒素ボンベ24を備えている。
【0046】
〔蒸発器21〕
上記蒸発器21は、上記貯留タンク10から取り出された上記液化天然ガスを気化して製品ガスである天然ガスを得る。
【0047】
本実施形態では、上記蒸発器21は、容器内に満たした温水によってLNGを加温して気化させる。したがって、上記蒸発器21は、LNGを加温するための温水を導入する温水導入路21Aと、熱交換によって冷却された水を排出する排水路21Bが接続されている。
【0048】
上記蒸発器21は、LNGを温水で加温して製品ガスを得るための第1熱交換器21Cを備えている。上記第1熱交換器21Cには、上記貯留タンク10から取り出したLNGを当該第1熱交換器21Cに導入するための導入路15が接続されている。また、上記第1熱交換器21Cには、当該第1熱交換器21Cにおいて気化されて得られた製品ガスを上記バッファタンク23に移送する移送路23Aが接続されている。上記第1熱交換器21Cで発生させる製品ガスの発生圧力は、例えば0.3MPa程度である。
【0049】
上記蒸発器21は、上記貯留タンク10を加圧するためにLNGを温水で加温して気化させる第2熱交換器21Dを備えている。上記第2熱交換器21Dには、上記貯留タンク10から取り出したLNGを当該第2熱交換器21Dに導入する取出路16が接続されている。また、上記第2熱交換器21Dには、当該第2熱交換器21Dにおいて気化されて得られたガスを上記貯留タンク10の上部空間に戻し、上記貯留タンク10内を加圧するための加圧路17が接続されている。このようにしてLNGを取り出すときの圧力を上記貯留タンク10に対して付与する。上記第2熱交換器21Dで発生させる貯留タンク10の加圧ガスの発生圧力は、例えば0.3MPa程度である。また、上述した加圧により、上記貯留タンク1の内部圧力を例えば0.3~0.4MPaに設定することができる。
【0050】
本実施形態では、上記蒸発器21が、貯留タンク10の加圧機能を兼ね備えたものであるため、機器の点数や配管を減らし、省スペースでコスト面でも有利である。
【0051】
〔バッファタンク23〕
上記バッファタンク23は、上記蒸発器21から移送された製品ガスを一時的に貯留し、必要に応じてガス使用設備に対して供給する。上記バッファタンク23には、上記移送路23Aと、ガス使用設備に対して製品ガスを供給する供給路23Bが接続されている。
【0052】
上記ガス製造機器20は、上記製品ガスをガス使用設備に対して供給するときの所定の供給圧力(たとえば0.1MPa)に減圧する減圧手段(図示せず)を備えることもできる。
【0053】
〔電気制御機器〕
上記ガス製造機器20は、防爆ケース22に収容された電気制御機器を含む。上記電気制御機器は、LNG、製品ガス、後述する窒素ガス、蒸発器21の温水と排水等の各流路に設けられた弁(図示していない)の開閉制御、蒸発器21内の温水の温度制御、製品ガスおよび加圧ガス等のガスの圧力制御等の各種の制御を電気的に行う。上記電気制御機器は、防爆ケース22内に収容された状態で上記ユニット化構造体50に搭載される。
【0054】
上記防爆ケース22は、爆発を遮って防爆するためのものであり、耐火性と剛性を備えた板材等から構成される。具体的には、所定厚みの鋼板を使用することができる。上記所定厚みとは、具体的には、たとえば6mm厚以上の厚みとすることができる。このように、上記電気制御機器を防爆ケース22に収容することにより、貯留タンク10やバッファタンク23等とのあいだに、一定以上の安全距離(たとえば最低8m)を確保する必要がない。
【0055】
〔窒素ボンベ24〕
上記ガス製造機器20は、パージガスとして窒素ガスを供給するための窒素ボンベ24を含んで構成されている。上記パージガスは、上記充填路12およびフレキシブルホース13内をパージするためのガスである。上記窒素ガスの一部は、弁の開閉動作などの計装用としても用いられる。
【0056】
上記ガス製造機器20は、製品ガスの製造能力が100kg/Hr未満であることが好ましい。上記製造能力は、上記第1熱交換器21Cの熱交換能力や製品ガスの供給圧力等によって決定される。
【0057】
〔ユニット化構造体50〕
上記ユニット化構造体50は、上記貯留タンク10と上記ガス製造機器20を、搬送可能なユニット2となるように搭載するためのものである。
【0058】
上記ユニット化構造体50は、この例では、上記貯留タンク10、上記蒸発器21、バッファタンク23、防爆ケース22、窒素ボンベ24が搭載され固定される長方形板状の基台である。この状態で必要な配管や計器機器が接続される。
【0059】
上記ユニット化構造体50は、平面仕上げされた基礎52上に接着系アンカー51によって固定される。上記接着系アンカー51は、基礎52に孔を空けて接着剤を詰め、そこにアンカー筋を差し込んで、基礎52とアンカー筋を一体にするアンカーである。上記接着剤として、カプセルタイプや注入タイプのものを用いることができる。上記カプセルタイプは、基礎52にあけた孔に樹脂カプセルを埋め込み、打撃・回転でアンカー筋をカプセルごと埋め込んだときに、カプセル内の樹脂を孔に溢れさせてアンカー筋と一体にするものである。上記注入タイプは、基礎52にあけた孔に接着剤を注入し、アンカー筋を差し込んで、基礎52とアンカー筋を一体にするものである。
【0060】
上記ユニット2は、トレーラーまたはトラックによる搬送が可能なサイズである。具体的には、上記ユニット化構造体50を、長手方向で9000mmもしくはそれ以内、幅方向で2400mmもしくはそれ以内のサイズとすることができる。
【0061】
〔重量検出器40〕
本実施形態では、上記貯留タンク10を、上記ユニット化構造体50において、上記タンクローリー1から上記貯留タンク10に充填される上記液化ガスの充填重量を検出するための重量検出器40上に存在させている。
【0062】
上記重量検出器40には、たとえば、応力に比例してひずむ起歪体とひずみゲージを検出体として使用したロードセルを用いることができる。
【0063】
この例では、上述したように、上記貯留タンク10が上記ユニット化構造体50上において横置き状に搭載された状態で、上記重量検出器40が上記ユニット化構造体とのあいだに介在されて存在している。また、上記重量検出器40は、上記横置き状に搭載された上記貯留タンク10における、少なくとも上記長手方向の両端側に、それぞれ配置されている。
【0064】
具体的には、上記横置き状の貯留タンク10には、上記長手方向の両端側にそれぞれ幅方向に延びる脚部11が設けられており、上記両脚部11の幅方向の端部に、それぞれ重量検出器40が配置されている。つまり、上記ユニット化構造体50上に重量検出器40が配置され、その上に貯留タンク10が搭載されている。したがって、この例では2つの重量検出器40で1つの脚部11を支え、4つの重量検出器40で1つの貯留タンク10を支えている。
【0065】
本実施形態では、上記複数(この例では4つ)の重量検出器40により、1つの貯留タンク10におけるLNGの充填重量を検出する。つまり、各重量検出器40の検出値を図示しない演算装置に合算することにより、上記貯留タンク10におけるLNGの充填重量を検出することができる。このようにして検出された充填重量は、図示しない通信手段により、取引量を管理するコンピュータ装置に送信され、当該コンピュータ装置の記憶装置に格納され、集計や管理が行われる。
【0066】
〔運用〕
本実施形態の可搬式ガス製造設備は、LNGの貯留量が3t以下の中小規模の事業所向けLNGサテライト設備として、貯留タンク10と蒸発器21を少なくとも含むガス製造機器20を、オールインワンのユニット2として構成している。このユニット2を工場などの屋内で作製し、完成したユニット2をそのままガスを利用する事業所の敷地まで搬送して設置する。
【0067】
本実施形態の可搬式ガス製造設備では、たとえばつぎのようにして貯留タンク10にLNGを補充することができる。
一次基地でタンクローリー1にLNGを積載し、このタンクローリー1を走らせて、積載したLNGを各地の可搬式ガス製造設備まで陸上輸送する。可搬式ガス製造設備では、タンクローリー1と充填路12をフレキシブルホース13で接続し、タンクローリー1に搭載された低温ポンプにより、LNGを貯留タンク10に圧送する。このとき、可搬式ガス製造設備では、重量検出器40によりLNGの充填重量を検出する。一方、貯留タンク10に対して必要量のLNGを充填しおわったタンクローリー1を、つぎの可搬式ガス製造設備まで走らせて積載したLNGを輸送する。
【0068】
〔実施形態の効果〕
本実施形態は、つぎの効果を奏する。
【0069】
本実施形態は、貯留タンク10とガス製造機器20とユニット化構造体50とを備えている。上記貯留タンク10は、タンクローリー1から充填される液化ガスを貯留する。上記ガス製造機器20は、上記貯留タンク10に貯留された上記液化ガスの蒸発器21を含み、上記液化ガスから製品ガスを製造する。上記ユニット化構造体50は、上記貯留タンク10と上記ガス製造機器20を、搬送可能なユニット2となるように搭載するためのものである。このように、ガス製造設備をひとつのユニット2にすることで、配管や機器の取り付けといった作業を環境のよい屋内で行なってユニット2を作りあげ、それをユニット2ごと設置現場まで搬送して設置できる。屋外の設置現場では、べた基礎52のうえにユニット2を設置すればほとんど済んでしまい、天候などに左右されない。したがって、設置工事の手間を大幅に簡略化することができる。
【0070】
さらに、本実施形態は、上記貯留タンク10を、上記ユニット化構造体50において、上記タンクローリー1から上記貯留タンク10に充填される上記液化ガスの充填重量を検出するための重量検出器40を介在させた状態で存在させている。このようにしたことにより、たとえば液化ガスの貯蔵量やガスの製造量が少ない設備においても、計量法に則った重量による充填量管理が可能となる。つまり、1台のタンクローリー1を複数箇所の設備で小分けに液化ガスを荷下ろしするときにも、確実に重量による充填量管理ができる。
【0071】
本実施形態は、上記貯留タンク10は、上記液化ガスの最大貯留量が、上記タンクローリー1における上記液化ガスの最大積載量より少ない規模のものである。
したがって、タンクローリー1の積載量よりも設備の貯蔵量のほうが少ない小規模のガス製造設備において、確実に重量による充填量管理ができる。したがって、1台のタンクローリー1に積載された液化ガスを、複数箇所のガス製造設備を巡回しながら小分けに荷下ろしする場合に、タンクローリー1の液面計に頼ることなく、上記貯留タンク10に充填される上記液化ガスの充填重量を検出できるのである。
【0072】
本実施形態は、上記貯留タンク10は、上記液化ガスの最大貯留量が3トン未満である。
このようにすることにより、設備に耐震設計の義務が免除され、基礎部分や各パーツに耐震設計を採用する義務がなくなり、コスト面で有利となる。
【0073】
本実施形態は、上記ガス製造機器20は、ガスの製造能力が100kg/Hr未満である。
このようにすることにより、高圧ガス保安法による事業所の分類が第二種製造者となり、保安検査や人員等にかかるコストが少なくて済む。
【0074】
本実施形態は、上記貯留タンク10は、長手方向を軸とする筒型タンクであり、上記ユニット化構造体50において、横置き状に搭載された状態で、上記重量検出器40が介在されて存在している。
このようにすることにより、重量検出器40上の貯留タンク10を安定して存在させ、設備の信頼性が向上する。つまり、重量検出器40を介在させた状態で存在させた貯留タンク10は、荷重を支えて重量を検出する検出体の上に載っていて、いわば床面から浮き上がった状態で存在する。したがって、上記貯留タンク10を縦置き状でなく横置き状に搭載することにより、安定して存在させることができる。このため、ユニット2を搬送する際の振動が加わったときの信頼性が格段に向上する。
【0075】
本実施形態は、上記重量検出器40は、上記横置き状に搭載された上記貯留タンク10における、少なくとも上記長手方向の両端側に、それぞれ配置されている。
このように長手方向の両端側に配置された重量検出器40上に、上記貯留タンク10を横置き状に存在させることにより上記貯留タンク10がより安定し、ユニット2を搬送する際の振動が加わったときの信頼性が格段に向上する。
【0076】
本実施形態は、上記ガス製造機器20が電気制御機器を含み、上記電気制御機器が、防爆ケース22内に収容された状態で上記ユニット化構造体50に搭載されている。
このように、電気制御機器を防爆ケース22内に収容することにより、貯留タンク10とガス製造機器20との距離を接近させることができる。つまり、防爆の対策をしない設備であれば、貯留タンク10とガス製造機器20を8m以上離さねばならず、搬送を前提としたユニット2にはできない。そこで、上記の構成とすることにより、搬送可能なユニット化を実現したのである。
【0077】
本実施形態は、上記ユニット2は、トレーラーまたはトラックによる搬送が可能なサイズである。
汎用の搬送手段を用いた搬送が可能であり、搬送コストにおいて有利である。
【0078】
本実施形態は、上記ユニット化構造体50は、平面仕上げされた基礎52上に接着系アンカー51によって固定される。
このようにすることにより、基礎52が簡略なものですむうえ設置作業も容易であり、設置工事の手間を大幅に簡略化することができる。
【0079】
〔変形例〕
以上は本発明の特に好ましい実施形態について説明したが、本発明は図示した実施形態に限定する趣旨ではなく、各種の態様に変形して実施することができ、本発明は各種の変形例を包含する趣旨である。
【0080】
たとえば上記実施形態では、上記液化ガスとしてLNGを使用する例を説明したが、本発明はLNGに限定するものではなく、液化酸素、液化窒素、液化アルゴン、液化炭酸ガス等、各種の液化ガスを適用しうる趣旨である。
【0081】
また上記実施形態では、上記ユニット化構造体50を長方形の基台としたが、骨組み状のフレームに、上記貯留タンク10、上記蒸発器21、バッファタンク23、防爆ケース22、窒素ボンベ24を搭載し、上記骨組み状のフレームをユニット化構造体50とすることもできる。
【符号の説明】
【0082】
1:タンクローリー
2:ユニット
10:貯留タンク
11:脚部
12:充填路
13:フレキシブルホース
14:分岐路
14A:シャワー装置
15:導入路
16:取出路
17:加圧路
20:ガス製造機器
21:蒸発器
21A:温水導入路
21B:排水路
21C:第1熱交換器
21D:第2熱交換器
22:防爆ケース
23:バッファタンク
23A:移送路
23B:供給路
24:窒素ボンベ
40:重量検出器
50:ユニット化構造体
51:接着系アンカー
52:基礎