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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】車両用バンパー
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/04 20060101AFI20240416BHJP
   B60R 19/34 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
B60R19/04 M
B60R19/04 N
B60R19/34
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020089291
(22)【出願日】2020-05-22
(65)【公開番号】P2021183445
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-02-06
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(72)【発明者】
【氏名】竹本 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】三原 真弥
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0203740(US,A1)
【文献】特表2007-533545(JP,A)
【文献】米国特許第04569865(US,A)
【文献】独国特許出願公開第102005017956(DE,A1)
【文献】実開平04-072057(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/00-19/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製のバンパービーム部の左右両端側に、車体への固定部位である金属製のビームエクステンション部を一体的に備えた車両用バンパーであって、
前記バンパービーム部及び前記ビームエクステンション部は、
車体側に対向する竪壁部と、前記竪壁部の上端及び下端から車体側に延出する上壁部及び下壁部とを夫々有すると共に、前記竪壁部、前記上壁部及び前記下壁部が形成する空処の内面に、樹脂製の補強リブが接合してあり、
前記ビームエクステンション部における前記上壁部及び前記下壁部の延出寸法が、前記バンパービーム部における前記上壁部及び前記下壁部の延出寸法よりも大きいと共に、前記ビームエクステンション部の車体横側の端部に、金属製の横壁部を備え、
前記ビームエクステンション部における前記補強リブが、前記横壁部から離間して配置してあり、
前記ビームエクステンション部における前記補強リブが、破壊促進用の溝を有することを特徴とする車両用バンパー。
【請求項2】
前記ビームエクステンション部における前記補強リブが、前記ビームエクステンション部の前記竪壁部、前記上壁部及び前記下壁部の夫々に接合してあることを特徴とする請求項に記載の車両用バンパー。
【請求項3】
前記ビームエクステンション部が、前記竪壁部、前記上壁部及び前記下壁部を車体側方に延出させた延長部を有し、
前記延長部に、前記補強リブ及び前記横壁部を配置したことを特徴とする請求項に記載の車両用バンパー。
【請求項4】
前記バンパービーム部及び前記ビームエクステンション部において、前記上壁部と前記下壁部との間に、前記空処を塞ぐ内壁部を備えたことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の車両用バンパー。
【請求項5】
前記横壁部が、上下方向における中間に、前記空処内に突出する棚状の張出部を有することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の車両用バンパー。
【請求項6】
前記補強リブが、車体中心側の面に、前記溝を有することを特徴とする請求項に記載の車両用バンパー。
【請求項7】
前記補強リブが、前記上壁部から前記下壁部に至る方向に強化繊維を配向した繊維強化樹脂製であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の車両用バンパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に用いられる車両用バンパーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用バンパーとしては、例えば、特許文献1に記載されたものがある。特許文献1に記載の車両用バンパーは、繊維強化樹脂製のバンパービームと繊維強化樹脂製のバンパーエクステンションとを一体に成形したものである。バンパービームは、強化繊維を一方向に引き揃えた一方向材と、強化繊維を織り込んだクロス材を有する部材から成り、Θ形状の断面を有している。この車両用バンパーは、軽量な構成でありながら望ましい強度や剛性を有しつつ、衝突等の大きな外力に対するエネルギー吸収性能を発現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6265889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記のような車両用バンパーは、繊維強化樹脂の一体成形構造であるから、軽量化には有利であるが、衝突等の大きな外力を受けた際、ビームエクステンションが大きな塊で割れて、衝撃エネルギーの吸収性能が不充分になる可能性があると共に、破片が飛散して近傍の別部品に損傷を与える虞があるという問題点があり、このような問題点を解決することが課題であった。
【0005】
本発明は、上記従来の課題に着目して成されたものであって、金属製部材と繊維強化樹脂製部材との複合体にすることで、金属単体よりも軽量化が可能であり、衝突等の大きな外力に対する衝撃エネルギーの吸収性能が充分に得られると共に、破片の飛散を抑制することができる車両用バンパーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係わる車両用バンパーは、金属製のバンパービーム部の左右両端側に、車体への固定部位である金属製のビームエクステンション部を一体的に備えている。バンパービーム部及びビームエクステンション部は、車体側に対向する竪壁部と、竪壁部の上端及び下端から車体側に延出する上壁部及び下壁部とを夫々有すると共に、竪壁部、上壁部及び下壁部が形成する空処の内面に、樹脂製の補強リブが接合してある。そして、車両用バンパーは、ビームエクステンション部における上壁部及び下壁部の延出寸法が、バンパービーム部における上壁部及び下壁部の延出寸法よりも大きいと共に、ビームエクステンション部の車体横側の端部に、金属製の横壁部を備え、ビームエクステンション部における補強リブが、横壁部から離間して配置してあり、前記ビームエクステンション部における前記補強リブが、破壊促進用の溝を有することを特徴とする車両用バンパー。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係わる車両用バンパーは、バンパービーム部及びビームエクステンション部が、いずれも金属製であり、竪壁部、上壁部及び下壁部を有すると共に、各壁部の内側に空処を形成し、その空処の内面に樹脂製の補強リブを接合した構造である。車両用バンパーは、上記構造にすることで、金属単体よりも軽量化を実現しつつバンパー自体の所定の剛性を確保している。
【0008】
上記の車両用バンパーは、延び特性を有する金属に硬い樹脂(補強リブ)を接合した構造であるから、衝突等の大きな外力が加わった場合、単に補強リブが破壊されるのではなく、金属が座屈変形しながら補強リブが破壊される。これにより、車両用バンパーは、金属の変形に伴って補強リブが大きく割れることなく細かく破壊される。また、補強リブの破片は、とくに車体側方に飛散し易い。そこで、車両用バンパーは、ビームエクステンション部の端部に金属製の横壁部を備え、横壁部と補強リブとを離間させることで、横壁部が伴割れすることなく残存して補強リブの破片の飛散を抑制する。
【0009】
このようにして、本発明に係る車両用バンパーは、金属単体よりも軽量化が可能であり、衝突等の大きな外力に対する衝撃エネルギーの吸収性能が充分に得られると共に、破片の飛散を抑制することができる。また、車両用バンパーは、ビームエクステンション部における補強リブが、破壊促進用の溝を有するので、衝撃エネルギーが加わった際、補強リブをより確実に細かく破壊することができ、細かく破壊することで、不可抗力により金属製の横壁部を損傷するような事態を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係わる車両用バンパーの第1実施形態を説明する車体内側から見た斜視図である。
図2図1に示す車両用バンパーの平面図(A)、図A中のI-I線に基づく断面図(B)、及び図A中のII-II線に基づく側面図(C)である。
図3】本発明に係わる車両用バンパーの第2実施形態を説明する車体外側から見た斜視図(A)、及び車体内側から見た斜視図(B)である。
図4】本発明に係わる車両用バンパーの第3実施形態を説明する車体外側から見た分解斜視図である。
図5図4に示す車両用バンパーの車体内側から見た斜視図である。
図6】第4実施形態を説明する要部の正面図(A)、第5実施形態を説明する要部の正面図(B)、第6実施形態を説明する要部の正面図(C)、及び第7実施形態を説明する要部の正面図(D)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〈第1実施形態〉
図1及び図2は、本発明に係わる車両用バンパーの一実施形態を説明する図である。
図示の車両用バンパーAは、金属製のバンパービーム部Bの左右両端側に、車体(図2に一部を点線で示す)Mへの固定部位である金属製のビームエクステンション部Eを一体的に備えている。なお、車両用バンパーAは、車体Mの前部又は後部に用いられるが、いずれも同等の基本構成を有するので、本実施形態ではとくに区別しない。また、本実施形態では、車体Mに固定した姿勢を基準にして、内外及び上下左右の方向や各構成部位の位置関係を説明する。
【0012】
バンパービーム部B及びビームエクステンション部Eは、溶接などのつなぎ目の無い金属製の一体構造物であって、材料がとくに限定されるものではないが、望ましくは高張力鋼などの鉄鋼材料が用いられ、その他、アルミニウム合金などを用いても良い。バンパービーム部B及びビームエクステンション部Eの一体構造物は、例えば、プレス加工やダイキャスト加工等により成形することができ、とくに深絞りで成形した場合には、加工硬化による強度も備えたものになる。
【0013】
バンパービーム部B及びビームエクステンション部Eは、車体M側に対向する竪壁部B1,E1と、竪壁部B1,E1の上端及び下端から車体側に延出する上壁部B2,E2及び下壁部B3,E3を夫々有する。そして、バンパービーム部B及びビームエクステンション部Eは、各壁部B1,E1,B2,E2,B3,E3により車体M側に開放された空処Bk,Ekを形成し、夫々の空処Bk,Ekの内面に、樹脂製の補強リブBr,Erが接合してある。
【0014】
補強リブBr,Erは、材料がとくに限定されるものではないが、望ましくは繊維強化樹脂であって、例えば、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を母材とする炭繊維強化樹脂(CFRP)やガラス繊維強化樹脂(GFRP)であり、その他、エンジニアリングプラスチックなどを用いることもできる。補強リブBr,Erは、樹脂の射出成形や圧縮成形によりバンパービーム部B及びビームエクステンション部Eに直接接合することができる。
【0015】
上記の車両用バンパーAは、とくに図2に示すように、ビームエクステンション部Eにおける上壁部E2及び下壁部E2の延出寸法Eαが、バンパービーム部Bにおける上壁部B2及び下壁部B3の延出寸法Bαよりも大きい(Eα>Bα)。このため、車両用バンパーAは、バンパービーム部Bから各ビームエクステンション部Eに至る間に、バンパービーム部Bの上壁部B2及び下壁部B3の延出寸法Bαが漸次増大する連続領域Cを有し、図2(A)に示す如く全体として平面視でアーチ形状を成している。図示例の連続領域Cは、平面視でR形状を有している。車両用バンパーAは、上記の如くアーチ形状にすることによっても衝突に対する強度を確保し得る。
【0016】
上記の車両用バンパーAは、ビームエクステンション部Eの車体横側の端部(当該バンパーAの左右両端部)に、金属製の横壁部SWを備え、ビームエクステンション部Eにおける補強リブErが、横壁部SWから離間して配置してある。また、ビームエクステンション部Eにおける補強リブErは、平板状を成し、ビームエクステンション部Eの竪壁部E1、上壁部E2及び下壁部E3の三辺に接合してある。
【0017】
上記の車両用バンパーAは、例えば、1枚のブランク材に深絞りを施してバンパービーム部B及びビームエクステンション部Eを一体成形する。その際、車両用バンパーAは、図1中に仮想線で示すように、ビームエクステンション部Eの竪壁部E1の端部に、横壁部SWを同一面状に連続して有している。図示の横壁部SWは、その上下に溶接用の固定片を有する。そして、車両用バンパーAは、最終的に、図中矢印で示す如く横壁部SWを折り曲げて、ビームエクステンション部Eの上壁部B2及び下壁部B3に、横壁部SWの固定片を接合する。この接合には、溶接、ボルト類及び接着剤等の適宜の固定手段が採用可能である。
【0018】
図示例のバンパービーム部Bには、複数の補強リブBrが複数方向に配列してある。具体的には、竪方向の補強リブBrを車両左右方向に所定間隔で配置し、中央の3枚の補強リブBr間に、斜め方向の補強リブBrを交差させて配置し、竪壁部B1の中央に、ビームエクステンション部Eを含む長手方向全体に渡る補強リブBrを配置している。
【0019】
図示例のビームエクステンション部Eには、複数(3枚)の補強リブErが車両左右方向に所定間隔で配列してある。複数の補強リブErは、互いに平行に配置してあり、先述したように、最外側の補強リブErと横壁部SWとが離間している。
【0020】
また、車両用バンパーAは、バンパービーム部Bが、上壁部B2及び下壁部B3の延出方向の先端に、外向きのフランジBf,Bfを夫々有し、図2(B)に示す如く車両横方向に渡って断面ハット形状を成している。バンパービーム部BのフランジBf,Bfは、連続領域Cにも形成してある。
【0021】
さらに、車両用バンパーAは、ビームエクステンション部Eが、上壁部E2及び下壁部E3の延出方向の先端に外向きのフランジEf,Efを夫々有し、図2(C)に示す如く車両横方向に渡って断面ハット形状を成している。ビームエクステンション部EのフランジEf,Efは、バンパービーム部BのフランジBfよりも大きく、車体Mへの固定部として用いられる。車両用バンパーAは、上記の如くバンパービーム部B及びビームエクステンション部Eを断面ハット形状にすることによっても強度を確保し得る。
【0022】
さらに、車両用バンパーAは、先述したように繊維強化樹脂製の補強リブBr、Erを採用することができ、この場合、各補強リブBr,Erは、上壁部B2,E2から下壁部B3,E3に至る方向に強化繊維を配向した状態に形成することが望ましい。
【0023】
なお、図示例の車両用バンパーAは、バンパービーム部Bの竪壁部B1に、表裏反転の凹凸形状を有しており、このような構造によっても剛性のさらなる向上し得る。
【0024】
上記構成を備えた車両用バンパーAは、バンパービーム部B及びビームエクステンション部Eが、いずれも金属製であり、竪壁部B1,E1、上壁部B2,E2及び下壁部B3,E3を有すると共に、これらの内側に空処Bk,Ekを形成し、その空処Bk,Ekの内面に樹脂製の補強リブBr,Erを接合した構造である。車両用バンパーAは、この構造により、金属単体よりも軽量化を実現しつつバンパー自体の所定の剛性を確保している。
【0025】
上記の車両用バンパーAは、延び特性を有する金属に硬い樹脂(補強リブBr,Er)を接合した構造であるから、衝突等の大きな外力が加わった場合、単に補強リブBr,Erが破壊されるのではなく、金属が座屈変形しつつ補強リブBr,Erが破壊される。
【0026】
上記の車両用バンパーAは、金属の変形に伴って補強リブBr,Erが大きく割れることなく細かく破壊されるので、抵抗力が急激に低下することがなく、衝撃エネルギーを効果的に吸収する。ここで、車両用バンパーは、例えば、横壁部SWと補強リブErとが接している場合、端部の剛性が高くなりすぎて補強リブErの破壊時に横壁部SWが割れる可能性を完全に否定できない。また、補強リブErの破片は、とくに車体側方に飛散し易い。これに対して、車両用バンパーAは、ビームエクステンション部Eの端部に横壁部SWを備え、横壁部SWと補強リブErとが離間しているので、横壁部SWが伴割れすることなく残存し、この横壁部SWにより補強リブErの破片の飛散を抑制する。
【0027】
このようにして、車両用バンパーAは、金属単体よりも軽量化が可能であり、衝突等の大きな外力に対する衝撃エネルギーの吸収性能が充分に得られると共に、破片の飛散を抑制することができる。これにより、車両用バンパーAは、飛散した破片によりバンパフェイシアなどの近傍の別部品に損傷を与えるような事態を未然に阻止し得る。したがって、修理費の節約にも貢献できる。
【0028】
ここで、車両用バンパーAでは、仮に、ビームエクステンション部Eにおける補強リブErが、ビームエクステンション部Eの竪壁部E1、上壁部E2及び下壁部E3のいずれかと離間した構造や、車両Mの前後方向に対して傾斜した構造であると、ビームエクステンション部Eに外力が加わった際、金属の座屈だけが先行して抵抗力が急激に低下したり、補強リブErに大きな割れが生じて抵抗力が急激に低下したりすることがある。
【0029】
これに対して、上記の車両用バンパーAは、ビームエクステンション部Eにおける補強リブErを、ビームエクステンション部Eの竪壁部E1、上壁部E2及び下壁部E3の三辺に接合した構造である。これにより、車両用バンパーAは、から、金属の座屈変形に伴う補強リブBr,Erの破壊がより確実に行われ、衝撃エネルギーの吸収機能のさらなる向上に貢献し得る。
【0030】
図3図6は、本発明に係わる車両用バンパーの第2~第7の実施形態を説明する図である。以下の各実施形態では、第1実施形態と同一の構成部位に同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0031】
〈第2実施形態〉
図3に示す車両用バンパーAは、左右のビームエクステンション部E,Eが、竪壁部E1、上壁部E2及び下壁部E3を車体側方に延出させた延長部EEを有し、延長部EEに、補強リブEr及び横壁部SWを配置した構造である。
【0032】
図示例の延長部EEは、ビームエクステンション部EのフランジEfよりも車体外側に延出すると共に、ビームエクステンション部Eの竪壁部E1に対して曲面を介して連続しており、この曲面に連続して車体側面に現れる部分が横壁部SWである。また、延長部EEは、その内部において、ビームエクステンション部Eの補強リブErと横壁部SWとの間に、双方から離間した補強リブErが設けてある。
【0033】
上記構成を備えた車両用バンパーAは、第1実施形態と同様に、金属単体よりも軽量化が可能であり、衝突等の大きな外力に対する衝撃エネルギーの吸収性能が充分に得られると共に、補強リブErの破片の飛散を抑制することができ、さらに、スモール・オーバーラップ衝突に対する強度を確保することができる。
【0034】
スモール・オーバーラップ衝突は、要するに、車両前面における片側半分以下の狭い範囲の衝突である。自動車の製造では、スモール・オーバーラップ衝突に鑑み、オフセット前面衝突試験の一種として、オフセット率が25%程度の微小ラップ衝突試験が行われていることが周知である。
【0035】
また、上記の車両用バンパーAは、例えば、1枚のブランク材に深絞りを施すことにより、延長部EEを含む金属製部分の全体を一体成形することが可能である。さらに、車両用バンパーAは、図3(A)中に仮想線で示すように、端部の角度を任意に変えることができるので、車体外形状のデザインにも対応することが可能である。
【0036】
〈第3実施形態〉
図4及び図5に示す車両用バンパーAは、バンパービーム部B及びビームエクステンション部Eにおいて、上壁部B2,E2と下壁部B3,E3との間に、空処Bk.Ekを塞ぐ内壁部IWを備えた構造である。つまり、車両用バンパーAは、竪壁部B1,E1、上壁部B2,E2、下壁部B3,E3、横壁部SW及び内壁部IWにより、閉空間を形成している。
【0037】
上記の車両用バンパーAは、その製造方法が限定されるものではないが、例えば、1枚のブランク材に深絞りを施すことにより、図4に示すように、竪壁部B1,E1以外の金属製部分を一体化した成形体Fを成形する。次に、成形体Fの内部に、所定の補強リブBr,Erを形成した後、その成形体Fに、バンパービーム部Bの竪壁部B1とビームエクステンション部Eの竪壁部E1とを一体化したパネル体Pを固定する。
【0038】
また、上記の車両用バンパーAは、図5に示すように、左右のビームエクステンション部Eの車体側の面にプレートQ,Qを固定し、このプレートQ,Qを介して車体に取り付けられる。
【0039】
上記構成を備えた車両用バンパーAは、第1実施形態と同様に、金属単体よりも軽量化が可能であり、衝突等の大きな外力に対する衝撃エネルギーの吸収性能が充分に得られると共に、補強リブBr,Erの破片の飛散を抑制することができる。また、上記の車両用バンパーAは、金属製の構成部位で閉空間を形成し、その閉空間内に補強リブBr,Erを配置しているので、補強リブBr,Erの破片の飛散をより確実に防止する。しかも、上記の車両用バンパーAは、閉空間に残存する補強リブBr,Erの細かい破片が、クッション材として機能し、衝撃エネルギーの吸収機能のさらなる向上を実現する。
【0040】
〈第4実施形態〉
図6(A)に一部を示す車両用バンパーAは、ビームエクステンション部Eにおける横壁部SWが、上下方向における中間に、空処Ek内に突出する棚状の張出部Ehを有する構造である。張出部Ehは、横壁部SWの中間が片側に突出するように折り曲げ加工することにより形成してある。
【0041】
上記構成を備えた車両用バンパーAは、先の実施形態と同様の作用及び効果をもたらすと共に、補強リブErが破壊された際、図中の矢印で示すように、その破片が張出部Ehに引っ掛かったり、張出部Eh上に残存したりする。補強リブErの破片は、先述したようにクッション材としても機能する。そこで、図示例の車両用バンパーAは、空処Ekの下部に破片を堆積させるだけでなく、張出部Ehの上部を含む空処Ekの中間部に破片を残存させることで、衝撃エネルギーの吸収機能をより向上させることができる。
【0042】
〈第5実施形態〉
図6(B)に一部を示す車両用バンパーAは、ビームエクステンション部Eにおける補強リブErが、破壊促進用の溝Gを有する構造である。この溝Gは、平板状を成す補強リブErの主面において、縦横方向や斜め方向に複数形成することができ、図示例の断面矩形状だけでなく、例えば断面V形状なども採用し得る。
【0043】
上記構成を備えた車両用バンパーAは、先の実施形態と同様の作用及び効果をもたらすと共に、衝撃エネルギーが加わった際、図中の矢印で示すように、補強リブErをより確実に細かく破壊することができ、細かく破壊することで、不可抗力により金属製の横壁部SWが損傷するような事態を防止する。
【0044】
〈第6実施形態〉
図6(C)に一部を示す車両用バンパーAは、ビームエクステンション部Eにおける補強リブErが破壊促進用の溝Gを有し、とくに、補強リブErの車体中心側の主面に溝Gを有する構造である。図示例の溝Gは、補強リブErの上下方向における中間部に配置され、水平方向に連続するものであるが、複数本を所定間隔で配置しても良い。
【0045】
上記構成を備えた車両用バンパーAは、先の実施形態と同様の作用及び効果をもたらすと共に、衝撃エネルギーが加わった際、図中の矢印で示すように、補強リブErを車体内側、すなわち横壁部SWの反対側に向けて破壊することができ、外部への破片の飛散をより充分に抑制すると共に、不可抗力により金属製の横壁部SWが損傷するような事態を防止する。
【0046】
〈第7実施形態〉
図6(D)に一部を示す車両用バンパーAは、ビームエクステンション部Eにおける補強リブErが、上壁部E2から下壁部E3に至る方向に強化繊維を配向した繊維強化樹脂製である。つまり、上記の補強リブErは、上下方向の引張荷重に対する強度がより高いものとなる。
【0047】
上記構成を備えた車両用バンパーAは、先の実施形態と同様の作用及び効果をもたらすと共に、衝撃エネルギーが加わった際、上壁部E2と下壁部E3が上下に開くように容易に変形するのを防止する。これにより、上記の車両用バンパーAは、薄い金属の容易な座屈変形を抑制して、大きな外力による衝撃エネルギーの吸収性能をより高めることができる。
【0048】
なお、本発明に係る車両用バンパーは、その構成が上記実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であり、各実施形態の構成を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0049】
A 車両用バンパー
B バンパービーム部
B1,E2 竪壁部
B2,E2 上壁部
B3,E3 下壁部
Bk,Ek 空処
Br,Er 補強リブ
E ビームエクステンション部
EE 延長部
Eh 張出部
G 溝
IW 内壁部
SW 横壁部
M 車体
図1
図2
図3
図4
図5
図6