IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ TDK株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-コイル装置 図1
  • 特許-コイル装置 図2
  • 特許-コイル装置 図3
  • 特許-コイル装置 図4
  • 特許-コイル装置 図5
  • 特許-コイル装置 図6
  • 特許-コイル装置 図7
  • 特許-コイル装置 図8
  • 特許-コイル装置 図9A
  • 特許-コイル装置 図9B
  • 特許-コイル装置 図9C
  • 特許-コイル装置 図10A
  • 特許-コイル装置 図10B
  • 特許-コイル装置 図11
  • 特許-コイル装置 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】コイル装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 30/10 20060101AFI20240416BHJP
   H01F 41/12 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
H01F30/10 G
H01F41/12 F
H01F41/12 A
H01F30/10 J
H01F30/10 E
H01F30/10 S
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020089715
(22)【出願日】2020-05-22
(65)【公開番号】P2021184437
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】堀川 俊之
(72)【発明者】
【氏名】岩倉 正明
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 勝一
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-267089(JP,A)
【文献】特開2019-047105(JP,A)
【文献】特開2014-229659(JP,A)
【文献】実開昭61-013916(JP,U)
【文献】特開2014-170824(JP,A)
【文献】特開昭61-063008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 30/10
H01F 41/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤが巻回されるボビンと、
前記ボビンを覆うコアカバーと、を有するコイル装置であって、
前記ボビンは、前記ワイヤの巻軸方向に直交する第1軸に沿って一方の側に、樹脂の流入を許容する入口の一部を形成するためのボビン枠体を有し、
前記コアカバーは、コアカバー本体の先端側の端部に設けられた側脚ガイド片を有し、
前記入口が前記側脚ガイド片から前記第1軸に沿って突出するように、前記側脚ガイド片から突出する枠体と、前記ボビン枠体と、が組み合わされて、前記入口を形成するための入口形成部材が形成され、
少なくとも前記入口とは反対の他方の側には、前記樹脂の流出を抑制する漏れ抑制部を有するコイル装置。
【請求項2】
前記コアカバーが、前記入口から前記ボビンを覆い、前記ボビンとの間に樹脂貯留部を形成し、
前記漏れ抑制部が、前記入口から注入された前記樹脂を、前記樹脂貯留部内に留めるように構成してある請求項1に記載のコイル装置。
【請求項3】
前記入口形成部材は、前記コアカバーの端部に配置されコアの移動を制限するガイド片から前記第1軸に沿って突出している枠体を含む請求項1または2に記載のコイル装置。
【請求項4】
前記コアカバーは、相互に連結してある複数の分割片を有する請求項1~3のいずれかに記載のコイル装置。
【請求項5】
前記コアカバーは、前記分割片の端部が重なり合っている連結部を有する請求項4に記載のコイル装置。
【請求項6】
複数の前記分割片が、前記ボビンの周囲に沿って配列してある請求項4または5に記載のコイル装置。
【請求項7】
複数の前記分割片が、前記漏れ抑制部で連結されている請求項6に記載のコイル装置。
【請求項8】
複数の前記分割片が、前記巻軸方向に沿って配列してある請求項4または5に記載のコイル装置。
【請求項9】
前記コイル装置は、ケースの内部に収容される請求項1~8のいずれかに記載のコイル装置。
【請求項10】
前記ボビンを覆うコアカバーの内部に前記樹脂が流入された状態で前記コアカバーがケースの内部に収容され、
前記ケースは、前記第1軸に直交する方向に開口しており、前記ケースの内部には、前記樹脂と同じまたは異なる樹脂が充填してある請求項1に記載のコイル装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえばトランスなどとして好適に用いられるコイル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、コアとケースとの間に樹脂を充填し、放熱性を高めるコイル装置が提
案されている。
【0003】
しかしながら、近年、電気自動車の普及に伴い、大電流を通電可能なコイル装置の需要
がますます高まってきている。また、コイル装置の小型化とともに、コイル装置に発生す
る熱、特にワイヤ近傍の熱を十分に放熱しにくくなってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-36194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、小型化が可能であり、しかも
放熱性に優れたコイル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、放熱性に優れたコイル装置について鋭意検討した結果、コアカバーに樹
脂の入口と出口を設けるのではなく、樹脂の入口と漏れ抑制部を設けることで、放熱性が
向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明に係るコイル装置は、
ワイヤが巻回されるボビンと、
前記ボビンを覆うコアカバーと、を有するコイル装置であって、
前記コアカバーは、前記ワイヤの巻軸方向に直交する第1軸に沿って一方の側に、前記ボ
ビンの一部とともに樹脂の流入を許容する入口を形成するための入口形成部材を有し、少
なくとも前記入口とは反対の他方の側には、前記樹脂の流出を抑制する漏れ抑制部を有す
る。
【0008】
本発明に係るコイル装置では、コアカバーは、ボビンを覆っており、ボビンの一部とと
もに樹脂の流入を許容する入口とは反対の他方の側には、樹脂の流出を抑制する漏れ抑制
部を有している。すなわち、コアカバー付のボビンをケースなどに収納する前に、入口を
上に向けてポッティング樹脂などの熱伝導率の高い樹脂をワイヤの近傍に充填しておくこ
とができる。樹脂は、重力に従って注入されるため、ワイヤとワイヤの隙間、ワイヤとボ
ビンの隙間、ワイヤとコアカバーの隙間など、狭い部分にも入り込みやすい。入口を上に
向けて入口から樹脂を流し込むと、重力に従って樹脂が入口の反対側に至るが、漏れ抑制
部で樹脂が堰き止められ、入口の反対側から漏れ出ることが抑制される。
【0009】
そのため、樹脂は、ボビンに巻回されているワイヤの大部分と接触することになる。そ
して、樹脂が硬化した後に、ボビンとコアカバーの向きを元に戻し、入口を水平方向に向
けて、たとえばポッティング樹脂などが充填してあるケースに入れれば、ワイヤから発生
する熱は、樹脂を通じてボビンやコアまたはコアカバーからコアの外部へと良好に発散さ
れることになる。さらに、ケース内の樹脂に熱が伝わり、熱はケースを通して外部に発散
されることになる。したがって、効率的にコイル装置から発生する熱を発散させることが
できる。
【0010】
好ましくは、前記コイル装置は、ケースの内部に収容される。ケースの内部には、熱伝
導性に優れた樹脂が充填してあってもよい。
【0011】
好ましくは、前記コアカバーが、前記入口から前記ボビンを覆い、前記ボビンとの間に
樹脂貯留部を形成し、
前記漏れ抑制部が、前記入口から注入された前記樹脂を、前記樹脂貯留部内に留めるよう
に構成してある。
【0012】
前記入口形成部材は、前記コアカバーの端片のみで構成されてもよいが、ボビンと一体
となって入口を形成してもよい。また、好ましくは、前記入口形成部材は、前記コアカバ
ーの端部に配置されコアの移動を制限するガイド片から前記第1軸に沿って突出している
枠体を含む。このように構成することにより、ボビンの筒部にコアを挿入してもコアが、
ガイド片に当接して第1軸に沿った移動が制限され、ボビンに対するコアの位置決めを容
易に行うことができる。
【0013】
また、枠体が、樹脂の入口を形成する入口形成部材であることによって、樹脂の入口が
ガイド片から第1軸に沿って突出するようになり、入口を上に向けて入口から樹脂を流し
込みやすくなるとともに、流し込んだときに入口から樹脂が溢れ出ることを抑制して、高
価な樹脂をほとんど漏らさず、ワイヤの近傍に樹脂を行き渡らせることができる。
【0014】
好ましくは、前記コアカバーは、相互に連結してある複数の分割片を有する。このよう
に構成することにより、コアカバーによって、ボビンを覆うことが容易になる。また、ボ
ビンの形に合わせて樹脂貯留部を容易に形成できる。さらに、入口の大きさを変更するこ
とも容易になる。
【0015】
好ましくは、前記コアカバーは、前記分割片の端部が重なり合っている連結部を有する
。このように構成することにより、各分割片が連結している連結部から、樹脂がコアカバ
ーの外に漏れ出ることを有効に防止することができる。
【0016】
複数の前記分割片が、前記ボビンの周囲に沿って配列してある。このように構成するこ
とにより、ボビンの周方向に沿って少なくとも1か所の連結部でコアカバーを組み立てる
ことができる。また、複数の前記分割片は、前記巻軸方向に沿って配列してあってもよい
【0017】
複数の前記分割片が、前記漏れ抑制部で連結されていてもよい。このような構成であっ
ても、連結部によって、樹脂貯蔵部から樹脂が漏れることが抑制される。入口と反対側に
連結部を設けることでコアカバーを組み立てやすくなる。漏れ抑制部は、コアカバー自体
でもよく、コアカバーの分割片同士の連結部であってもよく、あるいは、コアカバーとボ
ビンとの連結部であってもよく、さらには、コアカバーやボビンとは別部材により漏れ抑
制部を構成してもよい。
【0018】
たとえばカバーテープなどの別の部材(閉塞部材)により、コアカバーの分割片同士の
連結部の隙間や、コアカバーとボビンとの間の隙間を塞ぐことなどで、漏れ防止部を構成
してもよい。しかも、このような別部材にて構成してあるカバーテープなどの閉塞部材は
、コアカバー内の樹脂が硬化した後で、コイル装置をケースに入れる前に、取り除いてか
らケースの内部に入れてもよい。
【0019】
本発明に係るコイル装置の製造方法は、
ボビンにワイヤを巻回する工程と、
前記ボビンをコアカバーで覆う工程と、を有し、
前記コアカバーをボビンに取り付ける際に、前記ワイヤの巻軸方向に直交する第1軸に沿
って一方の側に、前記ボビンの一部とともに樹脂の流入を許容する入口を形成し、少なく
とも前記入口とは反対の他方の側には、前記樹脂の流出を抑制する漏れ抑制部を形成する
ことを特徴とする。
【0020】
前記入口が鉛直方向の上を向くようにコアカバーが取り付けられたボビンを傾けて、入
口から樹脂を、ボビンとコアカバーとの間の樹脂貯留部内に充填し、その後に樹脂を硬化
させ、その後に、コアカバーが取り付けられたボビンをケースの内部に入れてもよい。カ
バーテープなどのように、コアカバーとは別部材である閉塞部材で漏れ防止部が構成して
ある場合には、閉塞部材は、コアカバーまたはボビンに取り付けられた状態でケースに収
容してもよいし、閉塞部材を取り除いてからコイル装置をケースに入れてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は本発明の一実施形態に係るコイル装置の構成を示す概略断面図である。
図2図2図1に示すコイル装置の分解斜視図である。
図3図2図1に示すコイル装置が有する第1コイル部および第2コイル部の斜視図である。
図4図4図1に示すコイル装置が有するボビンの斜視図である。
図5図5図1に示すコイル装置が有する端子台およびリード案内部の斜視図である。
図6図6図1に示すコイル装置が有する端子の斜視図である。
図7図7図1に示すコイル装置からコアを取り外したときの斜視図である。
図8図8図1に示すコイル装置のコアカバーの斜視図である。
図9A図9A図2に示すコアカバーの分解斜視図である。
図9B図9Bは本発明の他の実施形態に係るコイル装置に用いるコアカバーの分解斜視図である。
図9C図9Cは本発明の他の実施形態に係るコイル装置に用いるコアカバーの分解斜視図である。
図10A図10A図8のコアカバーのVII-VII線に沿う断面図である。
図10B図10B図10Aの変形例に係る断面図である。
図11図11は組み付け前のコイル装置のコアカバーに樹脂を入口から樹脂貯瑠部に充填する状態を示す斜視図である。
図12図12図1に示すコイル装置をケースに収納する状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0023】
第1実施形態
図1に示す本実施形態に係るコイル装置としてのトランス10は、たとえばEV(Elec
tric Vehicle:電動輸送機器)、PHV(Plug-in Hybrid Vehicle:プラグインハイブリ
ッド自動車)、あるいはコミュータ(車両)用の車載用充電器、あるいは家庭用または産
業用電気機器の電源回路、あるいはコンピュータ機器の電源回路などに用いられる。図2
に示すように、トランス10は、ボビン20と、磁性コア(分割コア)40a,40bと
、端子台80と、リード案内部110とを有する。
【0024】
図2に示すように、本実施形態では、磁性コア40a,40bは、それぞれ同じ形状を
持つ2つの分割コア42a,42aおよび42b,42bに分離可能である。本実施形態
では、各分割コア42a,42aおよび42b,42bは、全て同じ形状であり、Z-Y
断面で断面E字形状を有し、いわゆるE型コアを構成する。Z軸方向の下部に配置される
他の一対の分割コア42b,42bも、Z-Y断面で断面E字形状を有し、いわゆるE型
コアを構成する。
【0025】
なお、図面において、X軸、Y軸およびZ軸は、相互に垂直であり、X軸は、図3に示
すワイヤ37,38の巻軸(Z軸)方向に垂直な方向であり第1軸に対応し、Y軸は第2
軸に対応し、Z軸は第3軸に対応する。なお、本実施形態では、Y軸は、図2に示す一対
の分割コア42a,42aまたは一対の分割コア42b,42bが分割される分割線の方
向に略一致するが、それらの分割線は、X軸に沿ってもよい。また、本実施形態では、Z
軸は、トランス10の高さ(厚み)方向に対応する。
【0026】
図2に示すように、Z軸方向の上側に配置される各分割コア42aは、Y軸方向に延び
るベース部44aと、ベース部44aのY軸方向の両端からZ軸方向に突出している一対
の中脚部46aおよび側脚部48aとを有する。Z軸方向の下側に配置される各分割コア
42bは、Y軸方向に延びるベース部44bと、ベース部44bのY軸方向の両端からZ
軸方向に突出している一対の中脚部46bおよび側脚部48bとを有する。
【0027】
一対の中脚部46aは、ボビン20のコア脚用貫通孔26の内部にZ軸方向の上方から
挿入されるようになっている。同様に、一対の中脚部46bは、ボビン20のコア脚用貫
通孔26の内部にZ軸方向の下方から挿入され、貫通孔26の内部において、それらの先
端は、中脚部46aの先端に接触または所定のギャップで向き合うように構成してある。
【0028】
貫通孔26を構成する巻回筒部28の内周面でY軸方向の対向位置には、分離用凸部2
7(図2参照)がZ軸方向に沿って形成してある。分離用凸部27は、中脚部46a,4
6aの間に介在されると共に、中脚部46b,46bの間に介在され、これらの中脚部4
6a,46aまたは中脚部46b,46bの相互が、貫通孔26の内部において、所定の
隙間で向き合い、接触しないように構成してある。所定の隙間は、分離用凸部27のY軸
方向の厚みにより調整することができる。
【0029】
中脚部46a,46aまたは中脚部46b,46bは、それぞれ組み合わされた状態で
、貫通孔26の内周面形状に一致するように、X軸方向に長い楕円柱形状を有しているが
、その形状は、特に限定されず、貫通孔26の形状に合わせて変化させても良い。また、
側脚部48a,48bは、コアカバー(コイルカバー)50におけるコアカバー本体52の
外周面形状に合わせた内側凹曲面形状を有し、その外面は、X-Z平面に平行な平面を有
している。本実施形態では、各分割コア42a,42bの材質は、金属、フェライト等の
軟磁性材料が挙げられるが、特に限定されない。
【0030】
図2に示すように、ボビン20は、ボビン本体24と、ボビン本体24のX軸方向の一
端上部に形成してある接続部22を有する。なお、ボビン20は、たとえばPPS、PE
T、PBT、LCPなどのプラスチックで構成してあるが、その他の絶縁部材で構成され
ても良い。好ましくは、ボビン20は、耐熱性を有する材料で構成される。強度や熱伝導
性を向上させるために、これらの絶縁部材にガラス等のフィラーを充填させてもよい。
【0031】
図2に示すボビン本体24には、図3に示すように、第1コイル部35を構成する第1
ワイヤ37と、第2コイル部36を構成する第2ワイヤ38とが巻回される。
【0032】
図4に示すように、本実施形態のトランス10におけるボビン20の巻回筒部28のZ
軸方向の両端には、端部隔壁鍔31および32が半径方向の外方に延びるように、X-Y
平面に略平行に一体成形してある。Z軸方向の下側に位置する端部隔壁鍔31のX軸に沿
っての先端側(図4においてX軸に沿って手前側)には、枠体31aが一体に成形してあ
る。枠体31aに関しては、図11などを用いて後で説明する。
【0033】
図4に示す端部隔壁鍔31および32のZ軸方向の間に位置する巻回筒部28には、図
3に示す第1コイル部35と第2コイル部36とが、Z軸方向(巻回軸の方向)に異なる
位置に配置してある。第1コイル部35では、一次コイルまたは二次コイルの内のいずれ
か一方を構成する第1ワイヤ37が巻回してあり、第2コイル部36では、一次コイルま
たは二次コイルの内のいずれか他方を構成する第2ワイヤ38が巻回してある。
【0034】
本実施形態では、第1コイル部35と第2コイル部36との間に位置する図4に示す巻
回筒部28の外周には、X-Y平面に略平行な絶縁隔壁鍔30が形成してある。図3に示
す第1コイル部35には、第1ワイヤ37の巻回軸(Z軸)に沿って相互に隣り合うワイ
ヤ巻回部分相互を各区画毎に分離する巻回隔壁鍔33(図4参照)が形成してある。
【0035】
また、本実施形態では、図3に示す第2コイル部36にも、第1コイル部35と同様に
、第2ワイヤ38の巻回軸(Z軸)に沿って相互に隣り合うワイヤ巻回部分相互を各区画
毎に分離する図4に示す巻回隔壁鍔34が形成してある。各巻回隔壁鍔33および34に
は、隣接する各区画S1,S2相互またはS1a,S2a相互を連絡する少なくとも1の
連絡溝が形成してある。
【0036】
詳細な図示は省略するが、巻回隔壁鍔33,34において、X軸方向の接続部22が配
置してある側とはX軸に沿って反対側には、それぞれ連絡溝が形成してある。これらの連
絡溝は、それぞれ各隔壁鍔33および34の周方向の一部において、巻回筒部28の外周
壁まで到達する深さで形成してある。
【0037】
隔壁鍔30,33,31によりZ軸方向に仕切られた区画S1,S2には、図3に示す
第1ワイヤ37が巻回され、各区画S1,S2毎に、ワイヤ巻回部分相互を分離可能にな
っている。本実施形態では、各区画S1,S2におけるZ軸に沿っての区画幅は、1本の
みのワイヤ37が入り込める幅に設定してある。ただし、本実施形態では、区画幅を、二
本以上のワイヤ37が入り込める幅に設定してもよい。また、本実施形態では、区画幅は
、全て同じであることが好ましいが、多少異なっていても良い。
【0038】
図3に示す第2コイル部36においても、第1コイル部35と同様に、図4に示す隔壁
鍔30,34,32によりZ軸方向に仕切られた区画S1a,S2aには、図3に示す第
2ワイヤ38が巻回され、各区画S1a,S2a毎に、ワイヤ巻回部分相互を分離可能に
なっている。本実施形態では、各区画S1a,S2aにおけるZ軸に沿っての区画幅は、
1本のみのワイヤ38が入り込める幅に設定してある。なお、区画幅を、ワイヤ38の線
径に合わせて、区画幅と同じにしても良い。
【0039】
また、図4に示す隔壁鍔30~34の径方向幅は、1本(1層以上)以上のワイヤ37
または38が入り込める高さに設定してあり、本実施形態では、好ましくは2~10層の
ワイヤが巻回できる径方向幅に設定してある。各隔壁鍔30~34の径方向幅は、全て同
じであることが好ましいが、異なっていても良い。
【0040】
図2に示すように、ボビン20のX軸方向の手前側には、接続部22が具備してあり、
接続部22には、ボビン20とは別体で構成してあるリード案内部110が取り付けられ
る。リード案内部110は、ボビン20と着脱自在に連結し、図3に示すリード部37a
,37b,38a,38bを案内する役割を果たす。リード案内部110には、図3に示
す第1ワイヤ37の第1リード部37a,37bと、第2ワイヤ38の第2リード部38
a,38bとが引き出されて固定される。接続部22のY軸方向幅およびX軸方向幅は、
リード案内部110の底面のY軸方向幅およびX軸方向幅などに応じて決定される。
【0041】
図4に示すように、ボビン20に一体成形してある接続部22は、Y軸方向に延びるベ
ース部22aと、そのベース部22aに対して略垂直にZ軸の上方向に向けて立ち上げら
れている絶縁壁22bとを有する。絶縁壁22bは、Z-Y平面に平行に形成され、図2
に示す端子60a~60dと、図1に示す磁性コア40aとの絶縁を確保するための部材
である。また、図4に示すベース部22aは、X-Y平面に平行に形成され、図5に示す
リード案内部110を取り付けられるために用いられる。
【0042】
また、ベース部22aには、図3に示すワイヤ37,38のリード部37a,37b,
38a,38bを、図2に示す端子台80の端子60a~60dに導くために、図4に示
すように、Y軸に沿って断続的に4つのボビン側切り欠き23a~23dがそれぞれX軸
方向に凹んで形成してある。ボビン側切り欠き23a,23b,23c,23dには、図
3に示すリード部37a,37b,38b,38aがそれぞれ通される。
【0043】
図4に示すベース部22aのY軸に沿っての両端には、Z軸方向の肉厚が中央よりも薄
くなっている係合片22cが形成してある。各係合片22cは、図5に示すリード案内部
110の裏側でY軸方向の両端下方に形成してある係合溝114c,116cに挿入され
て嵌合可能になっている。
【0044】
本実施形態では、図4に示す巻回隔壁鍔34のX軸他方側に形成してある連絡溝(図示
略)を利用して、図3に示す第2ワイヤ38が図4に示す巻回筒部28にα巻きされてい
る。また、図4に示す巻回隔壁鍔33のX軸他方側に形成してある連絡溝(図示略)を利
用して、図3に示す第1ワイヤ37が巻回筒部28にα巻きされている。なお、第1ワイ
ヤ37および第2ワイヤ38の巻回方法は、α巻きに限定されるものではなく、通常巻き
でもよい。
【0045】
図4に示す接続部22および絶縁隔壁鍔30には絶縁アダプタ70がこれらに跨るよう
に取り付けられる。絶縁アダプタ70は、湾曲している側面部71と、側面部71のZ軸
方向の上部に形成してある上面部72と、側面部71のZ軸方向の下部に形成してある底
面部73とを有する。側面部71の湾曲外面の一部に、Z軸方向に延びている案内溝76
が形成してある。案内溝76には、図3に示す第1ワイヤ37の他方のリード部37bが
Z軸方向に通される。
【0046】
案内溝76の外側にはスライド挿入片74が形成されており、スライド挿入片74が接
続部22の第1スライド挿入孔22eに挿入され、さらに上面部72が第2スライド挿入
孔22fに挿入されることにより、絶縁アダプタ70は、接続部22に取り付けられる。
絶縁アダプタ70の底面部73は、絶縁隔壁鍔30のZ軸方向の下面に接触するように取
り付けられる。
【0047】
図7に示すように、絶縁壁22bには、Y軸に沿って断続的に6つのボビン側係合部2
6a~26fがそれぞれX軸方向に突出して形成されている。ボビン側係合部26a~2
6fは、それぞれX軸方向に沿って突出する突起状の凸部からなる。これらのボビン側係
合部26a~26c,26fは、案内部側係合部113a~113dに係合可能になって
おり、ボビン側係合部26d,26eは対向切り欠き112c,112dに挿入されて嵌
合可能になっている。
【0048】
図5に示すように、リード案内部110は、Y軸方向に延びるロッド部材112を有し
、ロッド部材112のY軸方向の両端には、端ブロック114および116がそれぞれ一
体化してある。端ブロック114には一対の係合フック114b,114bが形成されて
おり、端ブロック116には一対の係合フック116b,116bが形成されている。一
対の係合フック114b,114bの間には端子台80の連結片87aが挟み込まれて連
結(係合)可能になっており、一対の係合フック116b,116bの間には端子台80
の連結片87bが挟み込まれて連結(係合)可能になっている。これにより、端子台80
のZ軸方向への移動を規制することが可能となっている。
【0049】
端ブロック114には一対の係合フック114b,114bに挟まれるように係合凸部
114aが形成されており、端ブロック116には一対の係合フック116b,116b
に挟まれるように係合凸部116aが形成されている。係合凸部114aには端子台80
の連結穴870aが係合可能となっており、係合凸部116aには端子台80の連結穴8
70bが係合可能となっている。
【0050】
ロッド部材112のX軸方向の裏面には、図4に示すボビン側切り欠き23a,23b
,23c,23dのY軸方向の位置に対応して、図5に示すように、それらの切り欠きと
向き合う対向切り欠き112a,112b,112c,112dがY軸方向に沿って断続
的にX軸方向に延在するように形成してある。対向切り欠き112c,112dは、対向
切り欠き112a,112bよりもX軸方向に沿う長さが長くなるように形成されている
【0051】
対向切り欠き112a,112b,112c,112dには、図3に示すリード部37
a,37b,38b,38aが図7に示すような態様で挿通される。図5に示すロッド部
材112のX軸方向の裏面には、位置決め凹部がそれぞれY軸方向の一方側および他方側
に形成されている。位置決め凹部118a,118bには、端子台80の位置決め凸部8
8a,88bが挿入されて嵌合可能になっている。なお、本実施形態では、端子台80と
リード案内部110とを別部材で構成して係合させているが、これらは一体的に成形して
あってもよい。
【0052】
図5に示すロッド部材112のX軸方向の表面には、ワイヤ挿通路117a~117d
が形成されている。ワイヤ挿通路117a,117bはZ軸方向の上方に向けて斜めに延
在しており、対応する切り欠き112a,112bと連通している。ワイヤ挿通路117
c,117dはZ軸方向の上方に向けてまっすぐに延在しており、対応する切り欠き11
2c,112dと連通している。ワイヤ挿通路117a,117bには、図3に示すリー
ド部37a,37bが引き出され、図5に示すワイヤ挿通路117c,117dには、図
3に示すリード部38b,38aが引き出される。
【0053】
図5に示すロッド部材112のX軸方向の表面には、図7に示すボビン側係合部26a
,26b,26c,26fのY軸方向の位置に対応して、図5に示すように、案内部側係
合部113a,113b,113c,113dがY軸方向に沿ってX軸方向に凹んで(段
差状に)断続的に形成されている。案内部側係合部113a~113dには、図7に示す
ように、ボビン側係合部26a~26c,26fが係合される。
【0054】
図6に示すように、端子60a(端子60b~60dについても同様)は、ワイヤ接続
部61と、外部接続部62と、連結部63とを有する。連結部63はXY平面に平行な略
平板形状からなり、ワイヤ接続部61と外部接続部62とを連結(接続)している。ワイ
ヤ係止部63は、図5に示すベース部81に対して略平行に配置される。
【0055】
ワイヤ接続部61には、図3に示すリード部37a,37b,38a,38bが挟み込
まれて接続される。図6に示すワイヤ接続部61は、突出片610と挟込片611とを有
する。突出片610は、XY平面に平行な略平板形状からなる。突出片610はワイヤ係
止部63のY軸方向の一端に一体的に接続されており、Y軸方向の外側に向かって突出し
ている。
【0056】
挟込片611は、XY平面に平行な略平板形状からなる。挟込片611は、突出片61
0のY軸方向の先端に接続されており、突出片610をY軸方向の内側(突出片610の
突出方向とは反対側)に向けて折り曲げ成形することにより形成される。挟込片611に
よって、図7に示すように、リード部37a,37b,38a,38bを挟み込むことが
可能となっている。端子60a~60dでは、突出片610と挟込片611とにより、リ
ード部37a,37b,38a,38bを挟み込み、熱圧着等により固定することが可能
となっている。
【0057】
外部接続部62はXZ平面に平行な略平板形状からなる。外部接続部62は、ワイヤ係
止部63のX軸方向の一端にワイヤ係止部63に対して略直交するように一体的に接続さ
れており、X軸方向の外側に向かって突出している。外部接続部62は、図5に示す端子
台80の位置決め溝部84a~84dに挿入され、外部基板等に接続される。
【0058】
図5に示すように、本実施形態では、端子台80はリード案内部110に着脱自在に取
り付けることが可能となっているが、一体に成形されていてもよい。端子台80には、図
2に示す端子60a~60dが取り付けられる。端子台80は、ベース部81を有する。
【0059】
ベース部81のX軸に沿って先端と反対側(図5においてX軸に沿って右側)には、隔
壁部85a~85eがY軸に沿って形成してある。隔壁部85aはベース部81のY軸方
向の一端側に形成してあり、隔壁部85eはベース部81のY軸方向の他端側に形成して
ある。隔壁部85b~85dは、隔壁部85aと隔壁部85eとの間に形成されている。
隔壁部85cは、ベース部81のY軸に沿って略中央部に位置する。
【0060】
隔壁部85aと隔壁部85bとで囲まれた領域には、端子配置部83aが形成してあり
図6に示す第1端側端子60aのワイヤ係止部63を配置することが可能となっている
図5に示す隔壁部85bと隔壁部85cとで囲まれた領域には、端子配置部83bが形
成されており、図6に示す第1内側端子60bのワイヤ係止部63を配置することが可能
となっている。
図5に示す隔壁部85cと隔壁部85dとで囲まれた領域には、端子配置部83cが形
成されており、図6に示す第2内側端子60cのワイヤ係止部63を配置することが可能
となっている。図5に示す隔壁部85dと隔壁部85eとで囲まれた領域には、端子配置
部83dが形成されており、図6に示す第2端側端子60dのワイヤ係止部63を配置す
ることが可能となっている。
【0061】
図5に示すように、ベース部81のZ軸方向の裏面(底面)には、ケース係合溝82が
形成されている。ケース係合溝82は、たとえば図12に示すケース120の上端縁に係
合可能に形成されており、ケース係合溝82を介して端子台80をケース120に固定す
ることが可能となっている。
【0062】
図5に示すように、ベース部81のX軸に沿って先端側前方(図5においてX軸に沿っ
て左側)には、位置決め溝部84a~84dがY軸方向に所定間隔で形成してある。位置
決め溝部84a~84dには、図3に示すリード部37a,37b,38b,38aが接
続された図6に示す端子60a~60dの外部接続部62が挿入される。
【0063】
図5に示すように、位置決め溝部84a~84dは、ベース部81をZ軸方向に貫通す
る溝からなり、ベース部81のX軸方向に沿って延在している。位置決め溝部84a~8
4dは、ベース部81の平面に対して直交する方向(Z軸の上方および下方)に開口して
おり、閉塞されてはいない。そのため、図7に示すように、位置決め溝部84a~84d
の内部には、リード部37a,37b,38b,38aが接続された端子60a~60d
の外部接続部62がZ軸方向(鉛直方向)の上方から下方に向けてスライドして挿入可能
となっている。
【0064】
図2に示すボビン20に近接する側に位置する図5に示す位置決め溝部84a~84d
の一端には、図6に示す外部接続部62をそれぞれ挿入するための挿入口840a~84
0dが形成されている。挿入口840a~840dは、端子配置部83a~83dが配置
されている側に向けて開口しており、挿入口840a~840dを介して、位置決め溝部
84a~84dと端子配置部83a~83dとは連通している。なお、図示の例では、端
子配置部83a~83dにも位置決め溝部84a~84dに連続する溝が形成されている
【0065】
図5に示すように、連結片87aはベース部81のY軸方向の一端に形成されており、
連結片87bはベース部81のY軸方向の他端に形成されている。連結片87a,87b
には連結穴870a,870bが形成されている。連結穴870a,870bには係合凸
部114a,116aが係合し、連結片87a,87bを介して、端子台80をリード案
内部110に着脱自在に連結することが可能となっている。
【0066】
位置決め凸部88a,88bは、リード案内部110と向かい合うベース部81のX軸
方向の裏側面に形成されている。位置決め凸部88aはY軸方向の一方側に位置し、位置
決め凸部88bはY軸方向の他方側に位置している。位置決め凸部88a,88bは位置
決め凹部118a,118bに係合し、端子台80をリード案内部110に位置決めさせ
ることが可能となっている。
【0067】
本実施形態では、図2に示すように、コアカバー50は、ボビン本体24の外周を覆う
ような形状を有する。コアカバー50は、2つの分割片50a,50bを有している。分
割片50aおよび分割片50bは、それぞれ、コアカバー本体52を有し、それぞれのZ
軸方向の両端には、コアカバー本体52からボビン本体24に向けて略垂直方向に折り曲
げられている一対の係止片54が一体成形してある。
【0068】
コアカバー本体52のZ軸方向の両側に形成してある一対の係止片54は、係止突出片
540を有する。係止突出片540の略中心部には、孔540aが形成してある。係止突
出片540は、ボビン20のZ軸に沿って両側表面に形成してある段差部25の段差幅広
部250に固定される。より詳細には、係止突出片540を段差幅広部250に固定する
と、段差幅広部250に形成してある突起250aが、係止突出片540の孔540aに
嵌合する。これにより、一対の係止片54が、ボビン本体24のZ軸方向の上下面を挟み
込むように取り付けられ、ボビン本体24の上面に形成してある段差部25に配置される
【0069】
図7および図8に示すように、コアカバー50は、X軸に沿って先端側(図7に示すX
軸に沿って左側)に形成してある樹脂注入用の入口57を除き、ボビン20の全周を囲む
ように構成してあり、少なくとも入口57とはX軸に沿って反対側には、漏れ抑制部58
が形成してある。本実施形態では、コアカバー50を構成する一対の分割片50a,50
bのX軸方向の後端側に、連結部55が形成してあり、これらの分割片50a,50bの
後端が連結部55にて連結されることで、漏れ抑制部58が形成してある。また、各分割
片50a,50bがボビン20に対して連結されることでも、漏れ抑制部58が形成され
る。
【0070】
図9Aに示すように、一方の分割片50aのX軸方向の後端には、コアカバー本体52
の延長部として、上側重ね部550aが一体に成形してあり、各係止片54の延長部とし
て、上側重ね部550b,550cが一体に成形してある。また、他方の分割片50bの
X軸方向の後端には、コアカバー本体52の延長部として、下側重ね部551aが一体に
成形してあり、各係止片54の延長部として、下側重ね部551b,551cが一体に成
形してある。
【0071】
コアカバー50の連結部55では、分割片50aの上側重ね部550a,550b,5
50cが、分割片50bの下側重ね部551a,551b,551cに上から重なり、図
8に示す連結部55となり、漏れ抑制部58を構成している。なお、図9Aに示す上側重
ね部550a,550b,550cは、下側重ね部551b,551b,551cに重な
っても、これらの内周面が連続して面一になるように、段差が設けられていてもよい。分
割片50aの上側重ね部550b,550cが、分割片50bの下側重ね部551b,5
51cに上から重なっている状態を図10Aに示す。
【0072】
各分割片50a,50bのコアカバー本体52および係止片54のX軸に沿って先端側
の端部(図9AのX軸に沿って手前側)には、それぞれ側脚ガイド片56が一体に成形し
てある。側脚ガイド片56は、図2に示す分割コア42a,42bのX軸に沿って先端側
の外面に当接している。各コアカバー本体52のX軸方向の途中に位置する外周面には、
中間ガイド片56aがZ軸方向に沿ってY軸方向の外側に突出するように形成してあって
もよい。中間ガイド片56aには、側脚部48a,48bの内面が接触し、側脚部48a
,48bのX軸方向の移動が制限されるようになっている。
【0073】
側脚ガイド片56は、中間ガイド片56aよりも大きく成形してあり、コアカバー50
をボビン20に取り付けたときに、第1ワイヤ37の一方の第1リード部37aとコア4
0a,40bとの間の絶縁距離(空間距離および沿面距離)を確保する。なお、コアカバ
ー50を構成する分割片50a,50bは、それぞれボビン20と同様なプラスチックな
どの絶縁部材で構成してある。
【0074】
図8に示すように、一方の分割片50aのX軸に沿って先端側には、コアカバー本体5
2の延長部として、側脚ガイド片56からX軸に沿って先端外側に突出している枠体57
aが一体に成形してある。また、一方の分割片50aのX軸に沿って先端側には、Z軸に
沿って下側に配置してある係止片54の延長部として、側脚ガイド片56からX軸に沿っ
て先端外側に突出している枠体57bが枠体57aと一体に成形してある。
【0075】
また、他方の分割片50bのX軸に沿って先端側には、コアカバー本体52の延長部と
して、側脚ガイド片56からX軸に沿って先端外側に突出している枠体57cが一体に成
形してある。また、他方の分割片50bのX軸に沿って先端側には、Z軸に沿って下側に
配置してある係止片54の延長部として、側脚ガイド片56からX軸に沿って先端外側に
突出している枠体57dが枠体57cと一体に成形してある。図11に示すように、側脚
ガイド片56の枠体57a~57dは、ボビン20の枠体31aとともに、樹脂注入用の
入口57を形成するための入口形成部材を構成している。
【0076】
すなわち、コアカバー50に形成された枠体57b,57dは、ボビン20の端部隔壁
鍔31のX軸に沿っての先端(図11ではX軸に沿っての上側)に形成してある枠体31
aのY軸に沿っての両側薄肉部に重なっている。コアカバー50の枠体57a~57dは
、ボビン20の枠体31aおよびベース部22aと共に、樹脂を注入するための入口57
の四方を囲っている。なお、リード案内部110または端子台80の一部も、樹脂を注入
するための入口57を構成するための入口形成部材の一部を構成してもよい。
【0077】
図7および図11に示すように、ボビン20にコアカバー50の分割片50a,50b
が取り付けられた状態では、ボビン20とコアカバー50との間には、液体状の樹脂が充
填可能な空間である樹脂貯留部(図8参照)59が形成される。樹脂貯留部59は、入口
57のみでコアカバー50の外部空間に開放され、その他の部分は、ボビン20とコアカ
バー50とが連結されることで、密閉され、コアカバー50の連結部55でも、樹脂が漏
れないようになっている。
【0078】
トランス10の製造では、まず、ボビン20と、第1ワイヤ37と、第2ワイヤ38と
、コアカバー50と、磁性コア(分割コア)40a,40bと、ボビン20とは別体に構
成されたリード案内部110と、ボビン20およびリード案内部110とは別体に構成さ
れた端子台80とポッティング樹脂を準備する。
【0079】
次に、図4に示すボビン20の外周に、図3に示す第1コイル部35と第2コイル部3
6とを形成する。なお、図3に示す第1コイル部35および第2コイル部36の形成は、
自動巻機を用いて行っても良い。また、ワイヤ37および38は、単線で構成されても良
く、あるいは撚り線で構成されても良く、絶縁被覆導線で構成されることが好ましい。第
2ワイヤ38は、第1ワイヤ37と同じであっても良いが、異なっていても良い。本実施
形態では、第1ワイヤ37の外径は、第2ワイヤ38の外径よりも大きく、たとえばφ1
.0~φ3.0mmであることが好ましい。
【0080】
次に、図4に示すスライド挿入溝22eにスライド挿入片74をスライドして挿入する
とともに、スライド挿入溝22fに上面部72をスライドして挿入し、さらに底面部73
を絶縁隔壁鍔30の下面に固定することにより、絶縁アダプタ70を接続部22に取り付
ける。
【0081】
次に、リード部37a,37b,38b,38aを接続部22のボビン側切り欠き23
a~23dの内部に挿通させ、Z軸方向の上方に向けて引き出す。このとき、第2リード
部37bについては、絶縁アダプタ70の案内溝76の内部を挿通させる。
【0082】
次に、端子60a~60dの各々の突出片610および挟込片611でリード部37a
,37b,38b,38aの各々を挟み込み、リード部37a,37b,38b,38a
の各々をワイヤ接続部61でカシメる。なお、この工程は、リード案内部110を接続部
22に取り付けた後に行ってもよい。次に、その状態で、治具を用いて、リード部37a
,37b,38b,38aの各々がカシメられたワイヤ接続部61を熱圧着する。
【0083】
次に、ボビン側係合部26a~26c,26fを端子台側係合部113a~113dに
係合させるとともに、ボビン側係合部26d,26eを対向切り欠き112c,112d
の内部に嵌め込んで係合させる。また、各係合片22cを、図5に示す係合溝114c,
116cに挿入し、嵌合させる。これにより、リード案内部110を接続部22に取り付
ける。
【0084】
次に、図5に示すように、係合凸部114a,116aを連結穴870a,870bに
係合させ、連結片87a,87bを介して端子台80をリード案内部110に連結する。
なお、予め端子台80が取り付けられたリード案内部110を接続部22に取り付けても
よい。
【0085】
次に、リード部37a,37b,38b,38aをそれぞれ対向切り欠き112a~1
12dに挿通させるとともに、リード部37a,37b,38b,38aがそれぞれ接続
された端子60a~60dの各外部接続部62を、位置決め溝部84a~84dの各々の
内部に上方から挿入する。端子60a~60dの各外部接続部62の先端については、位
置決め溝部84a~84dのX軸負方向側の端部に当接させ固定する。また、端子60a
~60dの各ワイヤ係止部63については、端子配置部83a~83dに配置(固定)し
ておく。必要に応じて、端子60a~60dを接着剤等で端子台80に固定してもよい。
【0086】
その後、図9Aに示すコアカバー50の一対の分割片50a,50bを、図4に示すボ
ビン20に取り付ける。その際には、図4に示す端部隔壁鍔31,32をZ軸方向から、
図9Aに示す係止片54で挟み込むように、Y軸に沿って両側から分割片50a,50b
を取り付ける。そして、図2に示す段差幅広部250の突起250aを、分割片50a,
50bの孔540aに嵌合して固定する。また、分割片50a,50bのX軸に沿って後
端側の端部同士も連結される。このようにして、分割片50a,50bは、ボビン20の
周囲に沿って配列される。
【0087】
図11に示すように、コアカバー50をボビン20に取り付けると、分割片50a,5
0bの側脚ガイド片56から突出している枠体57b,57dが、ボビン20に形成して
ある枠体31aに重なる。
【0088】
このように、コアカバー50をボビン20に取り付けると、側脚ガイド片56の枠体5
7a~57dと、ボビン20の枠体31aとを含む入口形成部材によって、樹脂を注入す
る入口57が形成される。そして、X軸方向の入口57とは反対側には、分割片50aと
分割片50bとの連結部55を含む漏れ抑制部58が形成される。また、コアカバー50
が、ボビン20を覆うことで、ボビン20とコアカバー50との間には、樹脂貯留部59
が形成される。
【0089】
次に、図11に示すように、コイル装置10の巻軸に一致するZ軸を水平に傾けて、コ
イル装置10のX軸に沿って先端側を鉛直方向の上に向けて、入口57から、液状の樹脂
をコアカバー50の内部に注入する。液状の樹脂は、図12に示すケース120の内部に
充填されるポッティング樹脂と同様に、熱伝導性に優れた樹脂で構成されるが、必ずしも
同一の樹脂である必要はない。
【0090】
注入される樹脂としては、特に限定されないが、たとえば熱伝導率が0.5~5、好ま
しくは1~3W/m・Kである放熱性に優れた樹脂が好ましい。放熱性に優れた樹脂とし
ては、たとえばシリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂などがあるが、中で
も、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂が好ましい。また、放熱性を高めるために、樹脂中に
は、熱伝導性の高いフィラーを充填させてもよい。注入される樹脂は、ショアA硬度が1
00以下、好ましくは60以下であることが好ましい。コア12が熱により変形したとし
ても、その変形を吸収し、コア12に過大な応力を発生させないようにするためである。
このような樹脂としては、ポッティング樹脂が例示される。
【0091】
注入された樹脂は、ボビン20とコアカバー50との間の樹脂貯留部(図8参照)59
に溜まっていき、図3に示すワイヤ37,38とワイヤ37,38の隙間、図3に示すワ
イヤ37,38と図2に示すボビン20の隙間、図3に示すワイヤ37,38と図8に示
すコアカバー50の隙間なども樹脂で満たされる。樹脂の液面が、入口57まで達したと
ころで注入を止め、樹脂貯留部59に溜まった樹脂を固化させる。
【0092】
その後に、X軸方向に分離された一対の分割コア42a,42aの中脚部46aと、X
軸方向に分離された一対の分割コア42b,42bの中脚部46bを、コア脚用貫通孔2
6のX軸方向の両側から挿入する。
【0093】
次に、図12に示すように、トランス10をケース120に収納して、ポッティング脂
材をポッティングする。なお、ケース120には、予めポッティング樹脂を入れておき、
その上から、トランス10を収納してもよい。ポッティング樹脂としては、コアカバー5
0の内部に注入した樹脂と同様な熱伝導性に優れた樹脂が好ましく、同じでも異なってい
てもよい。ポッティング樹脂としては、たとえば注入後も軟質なシリコーン樹脂、ウレタ
ン樹脂、エポキシ樹脂などで構成され、ポッティング樹脂の縦弾性率は、好ましくは0.
1~100MPaである。
【0094】
その前後に、放熱シート130で分割コア42a,42aの上部と側部を覆ってもよい
。放熱シート130は、たとえば放熱性に優れたアルミニウム、銅などの金属板、あるい
は、熱伝導率が良いPPS、PBTなどの樹脂板、あるいは熱伝導に優れたセラミック板
、シリコンシートなどのその他の板で構成される。放熱シート130の材質は、分割コア
42a,42aを構成する材質の熱伝導性よりも高い熱伝導性を持つ材質であれば、特に
限定されない。
【0095】
また、必要に応じて、端子カバー100で、ボビン20に取り付けられたリード案内部
110および端子台80の周囲を覆ってもよい。
【0096】
本実施形態におけるトランス10では、端子台80が、リード部37a,37b,38
b,38aが接続された端子60a~60dが挿入される位置決め溝部84a~84dを
有し、ボビン20と間接的に(リード案内部110を介して)着脱自在に連結する。その
ため、ボビン20から端子台80を取り外した状態で、リード部37a,37b,38b
,38aに端子60a~60dを接続することが可能であり、端子60a~60dにリー
ド部37a,37b,38b,38aを接続するにあたって十分な作業エリアを確保する
ことができる。
【0097】
また、ボビン20に端子台80を間接的に連結した後、リード部37a,37b,38
b,38aが接続された端子60a~60dを位置決め溝部84a~84dに挿入するの
みで、当該端子60a~60dを端子台80に対して精度良く位置決めすることが可能で
あり、端子60a~60dの先端が位置ずれする問題を防止することができる。したがっ
て、本実施形態におけるトランス10によれば、位置決め精度が高く、製造が容易なトラ
ンスを提供することができる。
【0098】
また、本実施形態では、端子台80はベース部81を有し、位置決め溝部84a~84
dは、ベース部81の平面に対して直交する方向に開口している。そのため、リード部3
7a,37b,38b,38aが接続された端子60a~60dを、ベース部81の平面
に対して直交する方向(位置決め溝部84a~84dの上方)からスライドさせて挿入す
ることが可能となり、端子60a~60dの位置決めを容易に行うことができる。
【0099】
また、本実施形態では、ボビン20から離間した側に位置する位置決め溝部84a~8
4dの他端は、ベース部81によって塞がれている。そのため、位置決め溝部84a~8
4dに挿入した端子60a~60dの先端を位置決め溝部84a~84dの他端に固定す
ることが可能となり、端子60a~60dの先端が位置ずれすることを効果的に防止する
ことができる。
【0100】
また、本実施形態におけるトランス10はリード案内部110を有し、端子台80はリ
ード案内部110と着脱自在に連結する。この場合、端子台80はリード案内部110と
は別体で構成されるため、リード37a,37b,38b,38aの引き出し方向に変更
が生じた場合には、リード案内部110の構成を変更するのみで対応することが可能であ
り、端子台80については一から作り直す必要がない。そのため、リード案内部110の
仕様変更に対して柔軟に対応することが可能となり、設計の自由度の高いトランス10を
提供することができる。
【0101】
また、本実施形態では、リード案内部110は、ボビン20と着脱自在に連結する。こ
の場合、リード案内部110はボビン20とは別体で構成されるため、ボビン20の仕様
に変更が生じた場合には、ボビン20の構成を変更するのみで対応することが可能であり
、リード案内部110については一から作り直す必要がない。そのため、ボビン20の仕
様変更に対して柔軟に対応することが可能となり、設計の自由度の高いトランス10を提
供することができる。
【0102】
また、本実施形態では、端子60a~60dは、外部接続部62と、ワイヤ接続部61
とを有する。そのため、外部接続部62を位置決め溝部84a~84dに精度良く位置決
めすることができるとともに、リード部37a,37b,38b,38aをワイヤ接続部
61に挟み込むのみで、リード部37a,37b,38b,38aを端子60a~60d
に接続することが可能であり、製造が容易である。
【0103】
また、本実施形態では、ワイヤ接続部61は挟込片611を有し、挟込片611は、ベ
ース部81に対して略平行に配置される。そのため、挟込片611でリード部37a,3
7b,38b,38aを挟み込んだ後、挟込片611をベース部81に対して略平行に配
置した状態でワイヤ接続部61に対して熱圧着を行うとともに、端子60a~60dの向
きを変えることなく、そのまま外部接続部62を位置決め溝部84a~84dに挿入する
ことが可能となり、端子60a~60dの位置決めを容易に行うことができる。
【0104】
特に本実施形態では、図12に示すように、トランス10をケース120などに収納す
る前に、図11に示すように、入口57を上に向けてポッティング樹脂などの熱伝導率の
高い樹脂を、図3に示すワイヤ37,38の近傍に充填しておくことができる。樹脂は、
重力に従って注入されるため、ワイヤとワイヤの隙間、ワイヤとボビンの隙間、ワイヤと
コアカバーの隙間など、狭い部分にも入り込みやすい。
入口57を上に向けて入口から樹脂を流し込むと、重力に従って、図3に示すワイヤ3
7,38とワイヤ37,38の隙間、図3に示すワイヤ37,38と図4に示すボビン2
0の隙間、図3に示すワイヤ37,38と図8に示すコアカバー50の隙間など、狭い部
分にも入り込みながら、図11に示す漏れ抑制部58で漏れが抑制される。
【0105】
そのため、樹脂は、ボビン20に巻回されているワイヤ37,38の大部分と接触する
ことになる。そして、樹脂が硬化した後に、ボビン20とコアカバー50の向きを元に戻
し、図12に示すように、入口57を水平方向に向けて、たとえばポッティング樹脂など
が充填してあるケース120に入れれば、図3に示すワイヤ37,38から発生する熱は
、樹脂を通じてボビン20やコア40a,40bまたはコアカバー50からコア40a,
40bの外部へと良好に発散されることになる。さらに、図12に示すケース120内の
樹脂に熱が伝わり、熱はケース120を通して外部に発散されることになる。したがって
、効率的にトランス10から発生する熱を発散させることができる。
【0106】
なお、入口形成部材は、図8に示すコアカバー50の端片のみで構成されてもよいが、
本実施形態では、図11に示すように、ボビン20の枠体31aなどと一体となって入口
57を形成してある。また、入口57を形成するための部材は、コアカバー50の端部に
配置されコア40a,40bの移動を制限するガイド片56に形成してある枠体57a~
57dを含んでいる。このように構成することにより、図2に示すボビン20の筒部28
にコア40a,40bの中脚部46a,46bを挿入してもコア40a,40bが、ガイ
ド片56に当接してX軸に沿った移動が制限され、ボビン20に対するコア40a,40
bの位置決めを容易に行うことができる。
【0107】
また、図11に示すように、枠体57a~57dが、樹脂の入口57を形成する入口形
成部材であることによって、樹脂の入口57がガイド片56からX軸に沿って突出するよ
うになり、入口57を上に向けて入口から樹脂を流し込みやすくなるとともに、流し込ん
だときに入口57から樹脂が溢れ出ることを抑制して、高価な樹脂をほとんど漏らさず、
ボビン20に巻回してあるワイヤの近傍に樹脂を行き渡らせることができる。
【0108】
図2に示すように、コアカバー50は、相互に連結してある複数の分割片50a,50
bを有する。このように構成することにより、コアカバー50によって、ボビン20を覆
うことが容易になる。また、ボビン20の形に合わせて樹脂貯留部69(図8参照)を容
易に形成できる。さらに、図11に示す入口57の大きさを変更することも容易になる。
【0109】
本実施形態では、コアカバー50は、各分割片50a,50bの端部が重なり合ってい
る連結部55を有する。このように構成することにより、各分割片50a、50bが連結
している連結部55から、樹脂がコアカバー50の外に漏れ出ることを有効に防止するこ
とができる。また、複数の分割片50a、50bが、ボビン20の周囲に沿って配列して
あることから、ボビン20の周方向に沿って少なくとも1か所の連結部55でコアカバー
50を組み立てることができる。
【0110】
なお、本実施形態において、図10Bに示すように、分割片50aの端部に、上側重ね
部552b,552cと、下側重ね部554b,554cを形成し、これらの隙間に、分
割片50bの端部に形成してある中間重ね部553b,553cを挿入して、連結部55
を形成していてもよい。
【0111】
また、本実施形態では、ボビン20の巻回筒部28や端部隔壁鍔31,32は、平面視
で楕円形状であるが、円形や矩形などであってもよい。さらに、コアカバー50は、上記
のようにボビン20の端部隔壁鍔31,32を覆うことができればよいため、ボビン20
の形状に合わせて、楕円形状であるが、円形や矩形などその他の形状であってもよい。
【0112】
第2実施形態
本実施形態に係るトランスは、図9Bに示すようにコアカバー50が分割片50c~5
0eにより構成される以外は、第1実施形態に係るトランス10と同様である。以下の説
明では、第1実施形態と共通する部分の説明は省略する。
【0113】
図9Bに示すように、コアカバー50は、周方向に3つに分割されている分割片50c
~50eを有している。分割片50cは、Z軸方向から見た平面視でU字形状を有し、分
割片50cの一端は、分割片50dと連結し、他端は分割片50eと連結し、それぞれ連
結部55を構成している。
【0114】
各連結部55では、上側重ね部550a~550cが、下側重ね部551a~551c
に重なっている。分割片50dは、側脚ガイド片56と枠体57a,57bを有しており
、分割片50eは、側脚ガイド片56と枠体57c,57dを有している。
【0115】
ボビン20にコアカバー50を連結させるには、図4に示す端部隔壁鍔31,32をZ
軸方向から係止片54で挟み込むように、X軸方向に沿って、図9Bに示す分割片50c
を取り付ける。次に、図4に示す端部隔壁鍔31,32をZ軸方向から係止片54で挟み
込むように、Y軸方向に沿って、図9Bに示す分割片50d,50eを取り付ける。
【0116】
上側重ね部550b,550cが、下側重ね部551b,551cとZ軸方向に重なり
、上側重ね部550aが、下側重ね部551aとX軸方向に重なるように分割片50cと
分割片50dの端部を嵌合する。このようにして、分割片50c~50dは、ボビン20
の周囲に沿って配列される。
【0117】
このように、コアカバー50をボビン20に取り付けると、第1実施形態と同様に、図
11に示す入口57が形成される。また、X軸方向の入口57とは反対側には、分割片5
0cによる漏れ抑制部58が形成される。そして、コアカバー50が、入口57からボビ
ン20を覆うことで、ボビン20とコアカバー50との間に、樹脂貯留部59を形成する
【0118】
本実施形態では、係止突出片540および孔540aは、分割片50cに形成してある
。そのため、入口57を上に向けても、分割片50cがボビン20から外れて落下するこ
とが防がれる。なお、分割片50d,50eの係止片54にも係止突出片540および孔
540aを設け、ボビン20に、それに対応する突起250aを設けてもよい。このよう
にすれば、分割片50d,50eが、ボビン20から外れて落下することが防がれる。
【0119】
第3実施形態
本実施形態に係るトランス10は、図9Cに示すようにコアカバー50が分割片50f
,50gにより構成される以外は、第1または第2実施形態に係るトランス10と同様で
ある。以下の説明では、上述の実施形態と共通する部分の説明は省略する。
【0120】
図9Cに示すように、コアカバー50は、Z軸に沿って分割された2つの分割片50f
および50gを有している。分割片50fと分割片50gは、Z軸方向から見た平面視で
は、同じ形状を有し、Z軸に沿って配列され、周方向に沿って連結部55を形成している
【0121】
連結部55では、分割片50fの上側重ね部550d~550fが、分割片50gの下
側重ね部551d~551fに重なっている。本実施形態では、上側重ね部550d~5
50fが、下側重ね部551d~551fに重なっても、連結部の内周面が面一となるよ
うに、分割片50fの上側重ね部550d~550fには、外側に膨らむ段差が設けられ
ている。しかしながら、上側重ね部550d~550fが、下側重ね部551d~551
fに重なっても、連結部の外周面が面一となるように、分割片50gの下側重ね部551
d~551fに、内側に窪む段差が設けられていてもよい。
【0122】
図9Cに示すように、分割片50fのコアカバー本体52および係止片54の両端外面
には、それぞれZ軸およびY軸に沿って外側に突出する側脚ガイド片56が一体に成形し
てある。また、分割片50gのコアカバー本体52および係止片54の両端外面にも、そ
れぞれZ軸方向およびY軸に沿って外側に突出する側脚ガイド片56が一体に成形してあ
る。
【0123】
分割片50fのコアカバー本体52の一端には、側脚ガイド片56からX軸方向に突出
している枠体57eと、コアカバー本体52の他端には、側脚ガイド片56からX軸方向
に突出している枠体57hが形成してある。また、分割片50gのコアカバー本体52の
一端には、側脚ガイド片56からX軸方向に突出している枠体57fと、コアカバー本体
52の他端には、側脚ガイド片56からX軸方向に突出している枠体57iが形成してあ
る。また、分割片50gの係止片54には、側脚ガイド片56からX軸方向に突出してい
る枠体57g、57jが形成してある。側脚ガイド片56と枠体57e~57jは、図1
1に示す枠体31aとともに入口形成部材を構成している。
【0124】
図4に示すボビン20に図9Cに示すコアカバー50を連結させるために、分割片50
fをZ軸の上方向から、ボビン20を覆い、分割片50fの係止片54を端部隔壁鍔31
に重ねる。そして、段差幅広部250の突起250aを、分割片50aの孔540aに嵌
合して固定する。また、分割片50gをZ軸の下方向から、ボビン20を覆い、分割片5
0gの係止片54を端部隔壁鍔32に重ねる。そして、段差幅広部250の突起250a
を、分割片50aの孔540aに嵌合して固定する。このようにすると、上側重ね部55
0d~550fが、下側重ね部551d~551fとが重なり、分割片50fと分割片5
0gが嵌合する。このようにして、分割片50f,50gは、Z軸方向に沿って配列する
【0125】
コアカバー50をボビン20に取り付けると、分割片50gの側脚ガイド片56から突
出している枠体57g,57jが、ボビン20に形成されている枠体31aに重なる。枠
体57fは枠体57gとつながっており、枠体57iは枠体57jとつながっている。こ
のように、コアカバー50をボビン20に取り付けると、側脚ガイド片56、枠体57e
~57jが、ボビン20と共に、図11に示す入口57を形成する。
【0126】
本実施形態では、係止片54の内側の端部が、図4に示すコア脚用貫通孔26の内側に
折れ曲がっていてもよい。このようにすると、樹脂貯留部59から、より樹脂が漏れにく
くなる。
【0127】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々
に改変することができる。
【0128】
たとえば、コアカバーを構成する分割片の連結部55では、接着剤を用いて、分割片の
重複端片同士を連結してもよく、連結部55では、重複部を設けることなく、突き合わせ
端部同士を接着して、連結部としてもよい。さらに、上述した実施形態では、連結部55
が漏れ抑制部58となり、樹脂の漏れを防止しているが、本発明において、漏れ抑制部と
は、樹脂の漏れを完全に防止する必要はなく、多少漏れてもよい趣旨で用いられる。
たとえば図11に示す状態で、入口57から樹脂をコアカバー50の内部に充填する場
合に、コアカバー50の漏れ抑制部58に位置する連結部55において、連結部の隙間か
ら多少樹脂が漏れながら、樹脂をコアカバー50の内部に充填してもよい。漏れる樹脂は
、無駄になるため、漏れる量は、入口57から充填する樹脂の量に比べて少ない方が好ま
しい。
【0129】
また、上述した実施形態では、コアカバーの分割片の端部同士を連結して連結部を構成
してあるが、コアカバーの分割片以外の部材を用いて分割片の端部を連結して連結部を構
成してもよい。たとえばコアカバーの分割片の端部同士の隙間をカバーテープ(閉塞部材
)などで連結して連結部を構成し、漏れ抑制部としてもよい。
【0130】
また、コアカバー内の樹脂が硬化した後には、カバーテープなどを取り外してもよく、
その後に、図12に示すケース120の内部にコイル装置10を収容してもよい。本発明
の漏れ抑制部とは、コアカバーの分割片の端部同士の隙間であって、その隙間を覆う部材
(たとえばカバーテープ)を除去して形成された樹脂の硬化表面も連結部として漏れ防止
部に含まれる。また、本発明の漏れ抑制部には、コアカバーとボビンとの連結部同士の隙
間であって、その隙間を覆う部材(たとえばカバーテープ)を除去して形成された樹脂の
硬化表面も連結部として漏れ防止部に含まれる。
【符号の説明】
【0131】
10…トランス
20…ボビン
22…接続部
22a…ベース部
22b…絶縁壁
22c…係合片
22d…係合溝
22e,22f…スライド挿入孔
22g,22h…ボビン側固定部
22i,22j…スライド係合部
23a~23d…ボビン側切り欠き
24…ボビン本体
25…段差部
26a~26f…ボビン側係合部
250…段差幅広部
250a…突起
26…コア脚用貫通孔
27…分離用凸部
28…巻回筒部
30…絶縁隔壁鍔
31,32…端部隔壁鍔
31a…枠体(入口形成部材)
33,34…巻回隔壁鍔
35…第1コイル部
36…第2コイル部
37…第1ワイヤ
37a,37b…第1リード部
38…第2ワイヤ
38a,38b…第2リード部
40a,40b…磁性コア
42a,42b…分割コア
44a,44b…ベース部
46a,46b…中脚部
48a,48b…側脚部
50…コアカバー
50a~50g…分割片
52…コアカバー本体
54…係止片
540…係止突出片
540a…孔
55…連結部
550a~550f,552b,552c…上側重ね部
551a~551f,554b,554c…下側重ね部
553b,553c…中間重ね部
56…側脚ガイド片(入口形成部材)
56a…中間ガイド片
57…入口
57a~57j…枠体(入口形成部材)
58…漏れ抑制部
59…樹脂貯留部
60a~60d…端子
61…ワイヤ接続部
610…突出片
611…挟込片
62…外部接続部
63…ワイヤ係止部
70…絶縁アダプタ
71…側面部
72…上面部
73…底面部
74…スライド挿入片
76…案内溝
80…端子台
81…ベース部
82…ケース係合溝
83a~83d…端子配置部
84a~84d…位置決め溝部
840a~840d…挿入口
85a~85e…隔壁部
850a~850d…段差隔壁部
86a~86c…下方隔壁部
87a,87b…連結片
870a,870b…連結穴
88a,88b…位置決め凸部
88c,88d…位置決め凹部
110…リード案内部
112…ロッド部材
112a,112b,112c,112d…対向切り欠き
113a~113d…端子台側係合部
114,116…端ブロック
114a,116a…係合凸部
114b,116b…係合フック
114c,116c…係合溝
117a,117b,117c,117d…ワイヤ挿通路
100…端子カバー
ケース…120
放熱シート…130
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図11
図12