(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】光源装置、発光の制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H05B 45/12 20200101AFI20240416BHJP
H05B 45/18 20200101ALI20240416BHJP
H05B 45/325 20200101ALI20240416BHJP
H05B 45/3725 20200101ALI20240416BHJP
H05B 45/395 20200101ALI20240416BHJP
H05B 47/105 20200101ALI20240416BHJP
H05B 47/19 20200101ALI20240416BHJP
H05B 47/175 20200101ALI20240416BHJP
G09G 3/34 20060101ALI20240416BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20240416BHJP
G09G 3/36 20060101ALI20240416BHJP
G02F 1/133 20060101ALI20240416BHJP
G02F 1/13357 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
H05B45/12
H05B45/18
H05B45/325
H05B45/3725
H05B45/395
H05B47/105
H05B47/19
H05B47/175
G09G3/34 J
G09G3/20 642P
G09G3/20 612J
G09G3/20 642E
G09G3/20 611H
G09G3/20 670L
G09G3/20 680B
G09G3/20 611E
G09G3/36
G09G3/20 642A
G09G3/20 611C
G02F1/133 535
G02F1/13357
G02F1/133 580
(21)【出願番号】P 2020120289
(22)【出願日】2020-07-14
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】笹岡 孝至
(72)【発明者】
【氏名】小沼 修
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 勝利
(72)【発明者】
【氏名】ミン テホン
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/140299(WO,A1)
【文献】特開2006-064980(JP,A)
【文献】特開2014-126733(JP,A)
【文献】特開2013-140780(JP,A)
【文献】特開2011-150127(JP,A)
【文献】特開2012-185478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 45/12
H05B 45/18
H05B 45/325
H05B 45/3725
H05B 45/395
H05B 47/105
H05B 47/19
H05B 47/175
G09G 3/34
G09G 3/20
G09G 3/36
G02F 1/133
G02F 1/13357
B60K 35/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光源と、
前記複数の光源を個別に制御して発光させる発光制御部を備え、
前記発光制御部は、前記複数の光源
を、サンプルとなる所定の経過時間内において各光源の発光間隔に異なる期間が存在し、かつ、前記複数の光源の発光タイミングが重ならないように制御することで、経時的にランダムに発光させるように制御する、
光源装置。
【請求項2】
前記発光制御部は、前記複数の光源のうち少なくとも1つを所定の閾値以下の発光量で発光させる場合に、前記所定の閾値以下の発光量で発光させる光源の発光制御に用いられる発光パルスのうち一部をマスクする制御を実行し、前記制御においてマスクするタイミングを経時的にランダムなものとすることで、前記光源を経時的にランダムに発光させる、
請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記発光制御部は、前記複数の光源のうち少なくとも1つを所定の閾値以下の発光量で発光させる場合に、前記所定の閾値以下の発光量で発光させる光源の発光制御に用いられる発光パルスを、その間隔が経時的にランダムなものとなるように生成することで、前記光源を経時的にランダムに発光させる、
請求項1又は2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記複数の光源のそれぞれの発光を検出する光検出部をさらに備え、
前記発光制御部は、前記光検出部の検出結果に基づいて、前記複数の光源を個別に制御して発光させる、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項5】
前記発光制御部は、前記光検出部が検出した前記複数の光源の発光ピーク値と、前記光検出部と前記複数の光源との距離と、前記複数の光源の1回の発光における発光時間を用いて、前記複数の光源の輝度値を個別に算出する、
請求項
4に記載の光源装置。
【請求項6】
前記発光制御部は、算出した前記複数の光源の輝度値に基づいて、前記複数の光源の輝度値を個別に制御する、
請求項
5に記載の光源装置。
【請求項7】
前記光検出部は、前記複数の光源のうち、少なくとも特定の光源の発光を検出する第1の光検出器及び第2の光検出器を有し、
前記発光制御部は、前記第1の光検出器における前記特定の光源の発光の検出結果と、前記第2の光検出器における前記特定の光源の発光の検出結果に基づいて、前記第1の光検出器と前記第2の光検出器の間の感度のばらつきを補正する、
請求項4ないし
6のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項8】
前記第1の光検出器と前記特定の光源との距離と、前記第2の光検出器と前記特定の光源との距離とが略等しい、
請求項
7に記載の光源装置。
【請求項9】
前記光検出部は、前記複数の光源のうち、少なくとも第1の光源と第2の光源の発光を検出し、
前記第1の光源と前記光検出部との距離は、前記第2の光源と前記光検出部との距離よりも遠く、
前記発光制御部は、前記第1の光源を、前記第2の光源よりも高輝度で発光させるように制御する、
請求項4ないし
8のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項10】
前記光源装置は、前記光検出部の温度を測定する温度センサをさらに備え、
前記発光制御部は、前記温度センサの測定した温度に基づいて、前記光検出部の検出結果を補正する、
請求項4ないし
9のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項11】
前記複数の光源はLEDである、
請求項1ないし1
0のいずれか1項に記載の光源装置を備えたヘッドアップディスプレイ。
【請求項12】
複数の光源
を、サンプルとなる所定の経過時間内において各光源の発光間隔に異なる期間が存在し、かつ、前記複数の光源の発光タイミングが重ならないように制御することで、経時的にランダムに発光させるよう
に制御するステップと、
前記複数の光源を個別に制御して発光させるステップと、
を備える発光の制御方法。
【請求項13】
光源の制御方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記光源の制御方法は、
複数の光源
を、サンプルとなる所定の経過時間内において各光源の発光間隔に異なる期間が存在し、かつ、前記複数の光源の発光タイミングが重ならないように制御することで、経時的にランダムに発光させるよう
に制御するステップと、
前記複数の光源を個別に制御して発光させるステップと、
を備えるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光源装置、発光の制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイの分野においては、その発光状態(例えば輝度)を適切に制御することで、表示画像をより精細にすることが求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、液晶表示装置の発光素子の発光輝度を補正する技術が記載されている。具体的には、液晶表示装置において、ある領域内の所定のブロックの発光輝度を補正する場合に、その補正対象のブロックのみを領域内で点灯させ、それ以外のブロックについては全て消灯させた状態で、受光素子に受光させる方法が開示されている。これにより、補正対象のブロックに関する輝度を高精度に測定することを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ディスプレイ、特にLED(Light Emitting Diode)を用いたディスプレイのダイナミックレンジを拡大するにあたっては、微小な発光量で発光させる場合の制御が特に問題となる。具体的には、微小な発光量におけるLEDの発光パルスの幅が狭く、発光間隔が広くなるため、微小な発光量におけるLEDの発光を見た人がちらつき現象を認識してしまうという課題があった。特許文献1に記載の技術は、このような課題を考慮していない。
【0006】
本開示の目的は、このような問題点を解決するためのものであり、ちらつき現象を抑制することが可能な光源装置、発光の制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様にかかる光源装置は、複数の光源と、前記複数の光源を個別に制御して発光させる発光制御部を備え、前記発光制御部は、前記複数の光源のうち少なくとも1つを経時的にランダムに発光させるように制御する。
【0008】
本開示の一態様にかかる発光の制御方法は、複数の光源のうち少なくとも1つを経時的にランダムに発光させるように、前記複数の光源を発光させるよう制御するステップと、前記複数の光源を個別に制御して発光させるステップと、を備える。
【0009】
本開示の一態様にかかるプログラムは、光源の制御方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、前記光源の制御方法は、複数の光源のうち少なくとも1つを経時的にランダムに発光させるように、前記複数の光源を発光させるよう制御するステップと、前記複数の光源を個別に制御して発光させるステップと、を備える。
【0010】
以上に記載の光源装置、発光の制御方法及びプログラムにおいては、複数の光源のうち少なくとも1つがランダムに発光されるため、光源が周期的に発光される場合と比較して、ユーザが認識するちらつき現象を抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
本開示により、ちらつき現象を抑制することが可能な光源装置、発光の制御方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】関連技術にかかるディスプレイ90の断面図である。
【
図2】関連技術にかかるLED基板91の上面図である。
【
図3】関連技術にかかるLED素子92の制御方法を示すグラフである。
【
図4】実施の形態1にかかる光源装置10のブロック図である。
【
図5】実施の形態1にかかる発光部14の配置例を示す上面図である。
【
図6】実施の形態1にかかる発光制御例を示すグラフである。
【
図7】実施の形態1にかかる発光部14の他の配置例を示す上面図である。
【
図8】実施の形態1にかかる発光部14の他の配置例を示す上面図である。
【
図9】実施の形態2にかかる光源装置20のブロック図である。
【
図10】実施の形態2にかかるLED基板24の上面図である。
【
図11】実施の形態2にかかる発光制御の第一の例を示すグラフである。
【
図12】実施の形態2にかかる超低輝度状態での発光制御の例を示すグラフである。
【
図13】実施の形態2にかかるLED基板24の上面図である。
【
図14】実施の形態2にかかる発光制御の第二の例を示すグラフである。
【
図15】実施の形態4にかかる発光制御例を示すグラフである。
【
図16】実施の形態4にかかる受光素子のモニター波形例を示すグラフである。
【
図17】実施の形態4にかかる(i)の領域での発光パターン例を示すグラフである。
【
図18】実施の形態5にかかるLED基板24のバリエーションを示す図である。
【
図19】実施の形態5にかかるLED基板24のバリエーションを示す図である。
【
図20】実施の形態5にかかるディスプレイ50の断面図である。
【
図21】実施の形態6にかかる光源装置の内部回路60を示すブロック図である。
【
図22】コンピュータのハードウェア構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(関連技術)
本開示の実施の形態を説明する前に、関連技術について説明する。
図1は、関連技術に係るディスプレイ90の断面図である。ディスプレイ90は、LED基板91、レンズL、輝度上昇フィルムF及び液晶パネルPを備える。
【0014】
LED基板91は、その基板上に設けられた複数のLED素子92から光を照射する。照射された光はレンズLに入射され、屈折されて輝度上昇フィルムFに到達する。輝度上昇フィルムFは、入射光のうち、所定の方向に偏光された(コヒーレントな)光だけを液晶パネルPに通し、その他の入射光は反射してレンズL側に戻す。輝度上昇フィルムFは、例えばDBEF(Dual Brightness Enhancement Film)を適用することができる。
【0015】
レンズ側に戻された入射光は、レンズ、LED基板91に順番に到達した後、LED基板91により反射され、輝度上昇フィルムFに再度到達する。このとき、輝度上昇フィルムFに再度到達した入射光の中で所定の方向に偏光されたものは、液晶パネルPに通され、その他の光は反射してレンズ側に戻される。このメカニズムにより、所定の方向に偏光された光が無駄なく液晶パネルPに入射される。ユーザが液晶パネルPを視認することで、ユーザは画像を見ることができる。
【0016】
図2は、LED基板91の上面図である。LED基板91は、LEDチップ93をそれぞれ有する複数のLED素子92と、基板本体94を備える。複数のLED素子92は、正方格子状にLED基板91に配置されている。LED素子92は、制御部(不図示)により、PWM(Pulse Width Modulation)調光によって、個別にその発光が制御される。具体的には、LED素子92を大きな発光量で発光させる場合には、発光制御に用いられる発光パルス幅を長くし、小さな発光量で発光させる場合には発光パルス幅を短くする制御がなされる。
【0017】
なお、以降の説明において、「輝度」は発光パルスにおけるピーク値を意味し、「発光量」は、発光パルスが継続することによる所定時間内での発光量を意味する。「発光量」は、輝度値に、パルス幅である発光パルスの継続時間を乗算した値で表すこともできる。
【0018】
図3は、LED素子92の制御方法を示す。LED素子92は、
図3の(1)~(3)に示されるとおり、同期信号Syncのパルスに基づく周期的な発光パルスに基づいて発光する。同期信号Syncのパルスは、t1、t2、t3において発生しており、そのパルスによって(1)~(3)の発光パルスが生成される。
【0019】
(1)~(3)におけるそれぞれの発光パルスのパルス幅Twは可変であり、表示する画像に応じて変化する。しかしながら、(1)~(3)における発光パルスは、全て同じタイミングで生成される。
【0020】
全てのLED素子92の発光タイミングが同じであるため、受光素子においては、個別のLED素子92の輝度値を検出することができない。そのため、LED素子92同士の輝度差が調整できず、ディスプレイ90の映像におけるユニフォーミティ(均一性)が悪くなってしまう。また、同じタイミングで全てのLED素子92に電流が供給されるため、消費電流の変化が大きくなる。電源回路をこれに対応させようとすると、コストアップにつながってしまう。
【0021】
さらに、発光量が小さい状態になるほど、発光パルスの発光時間幅が狭くなり、発光パルスの間隔(発光ONから次の発光ONまでのタイミング)も長くなる。この発光のON-OFFが、ユーザにとって、ちらつき現象として認識されてしまう。特に、発光が周期的な場合には、ちらつき現象として認識されやすい。
【0022】
また、LED素子92を発光させることにより、LED素子92が発熱するため、LED素子92の輝度に変化が生じ、輝度ムラが発生する可能性がある。特に、低輝度での発光においては、LED素子92が発光するか否かが不安定な状態であるから、温度による輝度の変化が大きくなる。この輝度ムラは、LED素子92に流れる電流量を制御するだけでは解消するのに限界があり、発光状態を実際に検出することがその解消に必要と考えられる。
【0023】
本開示は、以上の記載に鑑み、ユーザがちらつき現象を認識しないように、LEDの発光を制御する技術に関する。以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に記載の実施の形態、及びそこに記載された個別の技術的特徴は、任意に組み合わせて用いることができることは言うまでもない。
【0024】
(実施の形態1)
実施の形態1では、本開示の技術の概略について記載する。
図4は、実施の形態1に係る光源装置10のブロック図である。光源装置10は、光源11a、11b、光検出器12及び発光制御部13を備える。光源11a、11b及び光検出器12は、発光部14に含まれる。
【0025】
光源11a(第1の光源)及び光源11b(第2の光源)は、例えばLED等の発光素子であり、発光制御部13によってそれらの発光が制御される。
【0026】
光検出器12(光検出部)は、光源11a、11bのそれぞれの発光を検出するものであり、例えば光電効果を利用したフォトダイオード、フォトトランジスタ(照度センサ)、フォトレジスタといった受光素子であっても良い。光検出器12は、検出した発光に応じた信号を発光制御部13に出力する。
【0027】
発光制御部13は、光検出器12からの信号(発光の検出結果)に基づいて、光源11a、11bに制御信号を出力することで、光源11a、11bを個別に制御して発光させる。例えば、発光制御部13は、光源11a、11bの輝度(発光パルスの高さ)、幅又は間隔(Duty比)の少なくともいずれかを変更することにより、光源11a、11bの発光量を変更しても良い。
【0028】
発光制御部13は、光源11a、11bの少なくともいずれかを経時的にランダムに発光させ、かつ、光検出器12が光源11a、11bの発光を検出するタイミングが重ならないように、光源11a、11bを発光させるよう制御する。
【0029】
ここで、「光源を経時的にランダムに発光させる」(以降、単に「ランダムに発光させる」と記載する)とは、光源の発光が周期的になされず、サンプルとなる所定の経過時間内において、発光間隔に(誤差ではなく)有意に異なる期間があることをいう。これにより、光源が周期的に発光される場合と比較して、ユーザが認識するちらつき現象を抑制することができる。発光制御部13は、光源11a、11bのいずれかのみをランダムに発光させても良いし、その両方をランダムに発光させても良い。ただし、両方をランダムに発光させることで、ユーザが認識するちらつき現象をより効果的に抑制することができる。
【0030】
さらに、付加的な特徴として、光源装置10に光検出器12を設け、光検出器12が光源11a、11bの発光を個別に検出し、発光制御部13が、光検出器12の検出結果に基づいて、光源11a、11bを個別に制御して発光させることが挙げられる。これにより、光源11a、11bの温度変化により光源に輝度変化が生じても、光検出器12がその輝度変化を検出して発光制御部13にフィードバックすることで、発光制御部13は光源の輝度変化を抑制することができる。
【0031】
また、光源11a、11bの発光を光検出器12が検出するタイミングが重ならないように制御することにより、光検出器12は、光源11aの発光と、光源11bの発光とを区別して(切り分けて)検出できる。そのため、発光制御部13は、検出された光源11aの発光状態に基づいて、光源11aの発光を制御し、検出された光源11bの発光状態に基づいて、光源11bの発光を制御することで、光源11a、11bの発光を個別に制御することができる。
【0032】
光検出器12が光源11a、11bの発光を検出するタイミングが重ならないように、発光制御部13が光源11a、11bを発光させるタイミングの具体例について説明する。
【0033】
図5は、発光部14における光源11a、11b及び光検出器12の配置例を示す。
図5において、光検出器12は、光源11a、光源11bとそれぞれ略等距離に位置している。
【0034】
図6は、
図5に示した発光部14において、発光制御部13が実行する光源11a、11bの発光タイミングの制御を示す。
図6の実線は、発光制御部13が生成する光源11a、11bの発光パルスを示す。
【0035】
発光制御部13は、光源11bの発光タイミングを光源11aの発光タイミングからtxだけ後にずらすことで、光源11aと11bの発光検出タイミングを重ならないようにしている。なお、txを光源11aの1回の発光パルスの発光期間tpよりも大きくすることが、光源11a、11bの発光検出タイミングを確実に重ならなくするという点で好ましい。
【0036】
なお、光検出器12は、光源11a、光源11bとそれぞれ略等距離に位置していなくても良い。例えば、
図7に示すように、光源11aが光源11bに比較して光検出器12の近くに配置されていても良いし、
図8に示すように、光源11bが光源11aに比較して光検出器12の近くに配置されていても良い。このようにしても、各光源から光検出器12までの距離差に応じて生ずる検出タイミングの差はわずかであるから、
図6に示した制御と同様の制御が可能である。
【0037】
以上の記載では、光源11bの発光タイミングを光源11aの発光タイミングよりも後にずらす方法について説明したが、光源11aの発光タイミングを光源11bの発光タイミングよりも後にずらす場合でも、同様の制御が実行できる。
【0038】
また、発光部14に含まれる光源は、光源11a、11b以外のものがあっても良い。例えば、発光部14には、複数の光源が格子状に並んでいてもよく、光源11a、11bはその中の隣接した(最近接の)光源であっても良いし、離れた光源であっても良い。
【0039】
また、光検出部として、光源11aに対応した第1の光検出器と、光源11bに対応した第2の光検出器を個別に設け、それぞれの光検出器が光源11a、11bのそれぞれの発光を検出する構成を採用しても良い。この場合、光源11a、11bの発光タイミングが重なった(同時)としても、光源11a、11bの発光を光検出器12は個別に取得できる。そのため、光源11a、11bの発光を個別に制御することができる。なお、この場合でも、光源11a、11bの少なくともいずれかをランダムに発光させることで、ちらつき現象を抑制することができる。
【0040】
このように光検出器12を個別に設けることで、制御で実行する処理をより容易にすることができる。ただし、
図5に記載された構成においては、光検出器12の個数を削減できるという利点がある。
【0041】
なお、光源装置10において光検出器12は必須ではなく、発光制御部13は光検出器12の検出結果を用いずに、予め設定された光源の輝度と制御信号の対応関係に基づいて、光源11a、11bが所望の輝度となるように制御することができる。このような構成であっても、光源11a、11bの少なくともいずれかをランダムに発光させることで、ちらつき現象を抑制させることができる。
【0042】
以上に記載された光源装置は、ヘッドアップディスプレイ(以降、HUDと記載)のバックライト光源に適用することができる。適用されるHUDは、例えばTFT(Thin Film Transistor)方式によって実現される。例えば、HUDは、本実施の形態に記載の光源装置10のほか、
図1に記載のような、レンズL、輝度上昇フィルムF及び液晶パネルPを備える。
【0043】
HUDは、飛行機の操縦、自動車の運転、医療、コンピュータゲーム等の多様な分野に用いられる。例えば、自動車の分野では、HUDは、車のスピードや進行方向を示す矢印等を表示して、車の安全運転を支援するために用いられる。近年では、実走行の風景に表示をマッチングして投影する拡張現実(AR:Augmented Reality)HUDの技術も注目されている。
【0044】
HUDは、視野角の拡大、高輝度化及び高精細化によって、表示コンテンツの視認性を向上させることや、画像の表示形態及び表示位置をユーザーフレンドリーなものにすることが求められている。さらに、HUDには、ポストカードエフェクトの抑制、画面の明るさの均一性、さらには高コントラスト化といった課題もある。
【0045】
さらに、HUDの映し出す映像の輝度は、自動車の走行シチュエーションに合わせる必要がある。例えば、晴天の雪道における走行中には、HUDの表示に高い明るさ(例えば1万nit以上)が要求される。この状態で、HUDの表示が暗くなると、運転者はHUDの表示を認識できない可能性がある。一方、暗闇下の走行中には、HUDの表示にかなり低い明るさ(例えば数nit程度)が要求される。この状態で、HUDが高い明るさで表示をすると、運転者はHUDの表示は認識できるものの、運転時に車外の景色を十分に認識できなくなる可能性がある。以上から、HUDに使う光源には広いダイナミックレンジが必要とされる。
【0046】
このような課題を解決するための手段として、複数のLED素子の輝度又は発光量を個別に制御する光源のローカルディミング技術が想定される。特に、多数のLED素子を高精度に制御することができれば、上述の課題の解決に多大な貢献をすることになる。
【0047】
HUDが用いるLED素子の特性上、広いダイナミックレンジで安定したLED素子の発光制御を行うためには、大きな発光量を実現するためのLED素子への印可電圧を制御するDC調光だけでなく、微小な発光量を実現するためのPWM調光も必要である。しかしながら、上述のとおり、微小な発光状態では、発光パルスの発光時間幅が狭くなり、また発光パルスの間隔も長くなるため、ちらつき現象が発生しやすい。そのため、運転者が暗闇下を走行中に、HUDの表示をちらつき現象として認識することで、表示を正確に認識できない可能性や、疲労が蓄積する可能性があった。
【0048】
上述のとおり、実施の形態1に記載の光源装置10は、光源をランダムに発光させることにより、ユーザが認識するちらつき現象を抑制することができる。したがって、微小な発光状態においてもちらつき現象が抑制されたHUDの表示が可能である。そのため、自動車において最大の課題である、安全な運転をより確実に実現できる。これは、テレビ等に用いられる一般的なディスプレイからは、想到できない効果といえる。
【0049】
また、複数の光源(例えばLED素子)の発光を区別して検出可能とすることで、各光源の発光を的確に制御することができる。そして、光源装置内部で温度変化が生じ、光源の輝度に変化が生じた場合でも、発光制御部は、光源の輝度を、車外の景色等の状況に応じて制御することができる。これにより、温度変化に耐性があり、かつ高精度なローカルディミングと、コントラスト向上(広いダイナミックレンジ)という効果を奏する。
【0050】
ただし、実施の形態1に記載の光源装置10は、一般的なディスプレイの光源装置としても、搭載可能である。
【0051】
(実施の形態2)
実施の形態2では、本開示の技術のより詳細な例について記載する。
図9は、実施の形態2に係る光源装置20のブロック図である。光源装置20は、ディスプレイのバックライト光源として機能するものであり、光源としてのLED素子21、光検出器としての受光素子22及び発光制御部23を備える。LED素子21及び受光素子22は、LED基板24に含まれる。
【0052】
図10は、LED基板24の上面図である。LED基板24の基板本体25上には、18個のLED素子21と、10個の受光素子22が、それぞれ正方格子状に配置されている。各LED素子21は、LEDチップ26を有する。ここで、正方格子状に配置された4個のLED素子21の中央に、1個の受光素子22が配置されている。したがって、この1個の受光素子22と、4個のLED素子21との距離は略等距離である。なお、LED基板24の上方には、
図1に記載したようなレンズL、輝度上昇フィルムF及び液晶パネルPが設けられる。光源装置20、レンズL、輝度上昇フィルムF及び液晶パネルPは、ディスプレイ(表示装置)を構成する。
【0053】
発光制御部23は、各受光素子22からの信号(発光の検出結果)に基づいて、各LED素子21にDC(Direct Current)調光又はPWM調光による制御信号を出力することで、各LED素子21を個別に制御して発光させる。ここで、発光制御部23は、各LED素子21をそれぞれランダムに発光させ、かつ、各受光素子22がLED素子21の発光を検出するタイミングが重ならないように、各LED素子21を発光させるよう制御する。以下、具体的な制御例について説明する。
【0054】
(第一の例)
図11は、LED素子21の発光タイミングの制御を示す第一の例である。
図11では、18個あるLED素子21の一部である、
図10における(a)~(d)の4個分の発光タイミングが図示されている。
図11に示した(a)~(d)の発光タイミングは、周期的ではなくランダムである。
【0055】
また、互いに最近接である(隣接する)(a)と(b)については、それぞれのLED素子21の発光タイミングをずらして、オーバーラップしないように、順次発光している。したがって、
図10において、(a)と(b)から略等距離に位置する受光素子22(e)は、(a)の発光と(b)の発光を区別して検出できる。互いに隣接する(b)と(c)、(c)と(d)についても、同様に、オーバーラップしないように発光タイミングをずらしている。したがって、
図10において、(b)と(c)から略等距離に位置する受光素子22(f)は、(b)の発光と(c)の発光を区別して検出できるし、(c)と(d)から略等距離に位置する受光素子22(g)は、(c)の発光と(d)の発光を区別して検出できる。
【0056】
上述のとおり、発光量が微小になるほど、発光パルスの発光時間幅が狭くなり、また発光パルスの間隔(発光ONから次の発光ONまでのタイミング)も長くなる。この発光のON-OFFが、ユーザにとって、ちらつき現象として認識されてしまう。しかしながら、
図11に示したとおり、発光制御部23が、各LED素子21の発光パルスの周期性をなくし、発光パルスの間隔を経時的にランダムにするように生成することで、ユーザにとってちらつき現象が視認しにくくなる。
【0057】
図12は、
図11に示した発光タイミングの制御例から、さらに発光量を小さくする場合(所定の閾値以下の発光量である、いわゆる超低輝度の場合)の発光タイミングの制御例を示す。
図12における(a)~(d)において、複数の発光タイミングのうちの一部がマスクされて(間引きされて)発光が抑えられることにより、全体の発光量が下げられている。なお、
図12では、各(a)~(d)において、マスクを行うタイミングを経時的にランダムとしている。この方が、マスクを周期的に行うよりも、ちらつき現象をより抑制することができる。なお、マスク制御をするLED素子21は、(a)~(d)のうちいずれか1個以上のLED素子21であっても良い。
【0058】
以上の例では、
図10におけるLED素子21の(a)~(d)の発光制御を例示したが、(a)~(d)以外の14個のLED素子21についても、同様の発光制御が可能である。また、LED素子21においては、発光タイミングを周期的ではなく経時的にランダムとなるように生成するか、又は、発光タイミングをマスクするタイミングを経時的にランダムなものとするか、いずれか片方のみの制御がなされても良い。さらに、その制御対象となるのは、1個以上の任意の個数のLED素子21であって良い。このような制御を実行することで、ちらつき現象を一層抑制することができる。
【0059】
(第二の例)
図13は、第二の例を説明するためのLED基板24の上面図である。LED基板24上に配置された18個のLED素子21は、(p)~(s)の4つの区分に分けられる。(p)~(s)は、次に記載のとおり、発光タイミングを制御するための区分である。
【0060】
図14は、LED素子21の発光タイミングの制御を示す第二の例である。
図14では、(p)~(s)の4パターン分の発光タイミングが図示されている。ここで、(p)~(s)は、発光タイミングが互いにオーバーラップしないように制御されている。具体的には、(p)は同期信号SYNCの立ち上がりに同期して、時刻t1、t2、t3で発光パルスが生成されており、(q)、(r)、(s)となるにつれて発光タイミングが遅くなるようにずれる。これは、(p)~(s)の4個のLED素子21からそれぞれ略等距離に位置する1個の受光素子22が、その4個のLED素子21を個別に順次受光するためである。以上の制御により、LED基板24全体において、1個の受光素子22で4個のLED素子21の発光を個別に検出できるため、全てのLED素子21の発光している輝度をモニターできる。
【0061】
また、
図14に示した各(p)~(s)の4パターン分の発光タイミングは、元々周期的なタイミングである。しかしながら、(p)~(s)において、それぞれランダムなタイミングでマスクを行うことにより、(p)~(s)はランダムに発光されるよう制御される。このマスク制御により、ちらつき現象を抑制することができる。この制御は、所定の閾値以下の発光量の場合に実行することができる。
【0062】
以上に記載した第二の例では、発光タイミング、マスク制御ともに、(p)~(s)に示した4通りのパターンで十分であるため、第一の例に比較して、発光制御部23が発光制御のために生成するパターン数を少なくすることができる。
【0063】
そして、第一、第二の例においては、各受光素子22が受光した検出値(発光ピーク値)と、既知である発光パルスの発光時間と、各受光素子22とその受光素子22に最近接する4個のLED素子21との距離を用いて、各LED素子21の輝度値を個別に算出できる。その算出した輝度値を各LED素子21の目標輝度値に合わせる制御をすることで、各LED素子21の個別の輝度制御が可能になる。また、この輝度制御で、光源装置20全体の表示輝度を均一にし、かつ、温度変化による輝度変化を抑制することもできる。なお、この輝度制御において、受光素子22は、その受光素子22に最近接していないLED素子21の発光も検出する可能性がある。しかしながら、その検出値を無視できるレベルとなるように発光輝度を設定すること、又は予めその検出値を混入ノイズとして補正することは、当業者にとって非常に容易である。
【0064】
(第三の例)
図13において、LED基板24の4隅に設けられたLED素子21を除く任意のLED素子21から略等距離(かつ最近接距離)には、2つの受光素子22(第1及び第2の光検出器)が存在する。LED素子21が発光したとき、これらの2個の受光素子22は同時に検出値を検出する。これらの2個の受光素子22の感度が同じであれば、2個の受光素子22の検出値は同じ値となるが、感度がばらついている場合にはこの限りではない。その場合には、各受光素子22が検出した検出値に基づいて、この2個の受光素子22の感度ばらつきに対するキャリブレーションを容易に行うことができる。なお、LED基板24の4隅に設けられたLED素子21は、発光を検出可能な受光素子22が1個であるため、このキャリブレーションにおいて発光させる必要はない。
【0065】
また、キャリブレーションの対象となる2個の受光素子22は、発光対象となる特定のLED素子21から略等距離にあるものでなくても良い。ただし、略等距離にある方が、2つの検出値の比較をより容易に実行できるという利点がある。
【0066】
以上に示した光源装置20の制御によって、微小発光状態においてもちらつき現象を抑制し、視認性良くディスプレイに映像を表示することができる。さらに、各LED素子21の輝度を正確に検出した制御(高精度なローカルディミング)ができる。そのため、LED素子21やその他の部品の駆動に伴う温度変化があっても、LED素子21の輝度ムラを抑制すること、又は映像のコントラストを向上させることができる。
【0067】
特に、実施の形態2では、以下の効果を奏する。
(1)隣接するLED素子21の発光パルスが重ならない(オーバーラップしない)ように発光するため、LED素子21と1対1対応で受光素子22を設ける必要がなく、より少ない数の受光素子22で各LED素子21の輝度値を周期的に把握することができる。そのため、映像のユニフォーミティ(均一性)を向上させることができる。
(2)受光素子22間の感度ばらつきを補正できるので、ユニフォーミティをさらに向上させることができる。
(3)LED素子21に異なるタイミングで電流を供給することにより、消費電流の変化を少なくすることができる。したがって、LED駆動電源の負荷を軽減させることができるほか、光源装置20が発する電磁波を抑制できるため、EMC(Electromagnetic Compatibility)の観点からも効果を生ずる。
【0068】
また、実施の形態2に記載された光源装置20も、実施の形態1に記載された光源装置10と同様、ディスプレイ全般の光源装置として搭載可能であるが、HUDのバックライト光源に適用することで、一層の効果を奏する。さらに、実施の形態2に記載の光源装置20を用いることで、受光素子22間の感度差をキャリブレーションできるため、画面全体の均一性をさらに向上することができる。
【0069】
(実施の形態3)
実施の形態3では、実施の形態2記載の光源装置20において、受光素子22の発光量の分解能を下げても、受光素子22がLED素子21の発光量を精度よく検知できる方法を記載する。
【0070】
ディスプレイに適用される光源装置において、映像のダイナミックレンジを向上させることは重要な課題である。例えば、HUDの表示する映像における輝度比率は約1:3000~4000である。この大きいダイナミックレンジの光を受光素子で正確に検知するためには、12bit(4096step)の分解能では不足であり、13~14bitの分解能をもつ回路が必要である。
【0071】
実施の形態3は、この課題に鑑み、回路の簡素化又はコストダウンを図るためのものである。
図15は、HUDで表示させる輝度に合わせたLED素子の発光制御方法例を示したグラフである。
図15の縦軸は発光量、横軸はLED素子に流れるDC電流値である。
【0072】
図15において、DC電流値がI1以上であって発光量がN1以上の領域を(i)、DC電流値がI1未満I2以上であって発光量がN1以上未満N2以上の領域を(ii)、DC電流値がI2未満であって発光量がN2の領域を(iii)と定義している。なお、DC電流値と輝度値とは線形の関係であり、I1>I2、N1>N2である。また、上述のとおり、発光量は、輝度値に、パルス幅である発光パルスの継続時間を乗算した値で表される値である。
【0073】
(i)の領域では、DC調光による制御、(ii)の領域では、PWM調光による制御、(iii)の領域では、PWM調光及び発光パルスにマスクをする制御がなされている。発光パルスにマスクをする技術については、実施の形態2に記載したとおりである。
【0074】
なお、発光制御において、(i)の領域におけるHUDの発光量(輝度値)とDC電流値の関係、(ii)の領域におけるHUDの発光量とPWM調光時のDuty比の関係、及び(iii)の領域におけるHUDの発光量と発光パルスをマスクする量との関係は既知である。また、(i)の領域において、DC調光時の受光素子で検知される輝度値と、実際のLEDの輝度値との関係も既知である。
【0075】
図16は、(i)~(iii)に示した各制御方式を実行した場合における、受光素子のモニター波形の一例である。
図16を参照すると、発光量がN1以上の大きな発光量である(i)の領域で発光した場合には、DC調光により、LED素子に流す電流が可変となることで、LED素子の輝度のピーク値(
図16のグラフにおける高さ)が可変となる。このピーク値は、最大輝度に対応したピーク値まで上げることができる。
【0076】
図16において、発光量がN1未満の小さな発光量である(ii)、(iii)の領域では、いずれの場合においても、LED素子の1回の発光パルスにおけるピーク値は変わらない。そのため、受光素子がモニターする波形ピーク値も、(ii)、(iii)の領域で変化しない。
【0077】
(ii)の領域においては、PWM調光により、1回の発光パルスのパルス幅(発光時間)が可変となる。つまり、Duty比が変化する。これにより、受光素子がモニターする発光量も変化する。
【0078】
一方、(iii)の領域においては、1回の発光パルスのパルス幅が最小となっており、パルス幅をこれ以上狭めることはできない。そのため、一部の発光パルスをマスクすることにより、所定時間内の発光パルスの回数を変化させて、発光量を変化させている。
【0079】
以上から、(ii)、(iii)の領域においては、受光素子で検知した発光パルスのピーク値に発光期間を乗算し、単位時間あたりの換算をすることで、発光量が計算できる。従って、以下に示すとおり、受光素子の検出ダイナミックレンジを下げることができる。
【0080】
例えば、DC調光における最大輝度をA(nit)、その最大輝度における最大電流値をB(mA)、DC調光における発光制御の限界となる電流値を1(mA)とする。このとき、DC調光における電流値1(mA)での輝度はA/B(nit)となる。したがって、輝度A~A/B(nit)までは、DC調光における制御がなされる。そして、輝度A/B(nit)未満では、(ii)又は(iii)による制御がなされる。
【0081】
このため、最大輝度と制御の閾値となる輝度との比率はA:A/B=B:1となる。例えばBが数十~数百程度であれば、上述の発光制御を実現するために受光素子に必要な分解能は8~9bit(256~512Step)程度であり、13~14bitもの分解能は不要である。つまり、受光素子に必要な検出ダイナミックレンジが小さくなる。そのため、受光素子の回路を相当に安価なものとすることができる。
【0082】
上述のとおり、HUDでは、多数のLED素子を用いた広いダイナミックレンジの輝度制御が望まれている。そのため、受光素子に必要な検出ダイナミックレンジを小さくすることは、HUDの分野において特に大きな効果を奏する。
【0083】
図17は、発光パターン例を示すグラフである。(p)~(s)は、
図13に示したとおり、複数のLED素子の発光パターンを示す。
図17において、時刻t1以前の区間は、発光パルスのピーク値、パルス幅及び間隔(Duty比)を一定とした発光パルスにより各LED素子を発光させて、各LED素子の発光輝度をモニターする区間(輝度値検出区間)である。輝度値検出区間では、基準となる発光パルスのピーク値及びDuty比を決定し、その発光パルスにより得られると予測される輝度値と、実際に検出した輝度値を比較することで、所望の輝度値を得るための輝度値-発光パルスの関係を取得する。
【0084】
図17に示したとおり、輝度値検出区間においては、(a)~(d)の発光タイミングは重なっておらず、互いにずれている。輝度値検出区間では、実施の形態1、2で説明した制御が可能であるため、受光素子が個別にLED素子の発光輝度を検出することによって、LED素子の発光輝度を個別に制御することができる。
【0085】
時刻t1~t2の区間は、調光による発光量制御をする区間(調光区間)である。この調光区間では、上述の輝度値検出区間で調整した輝度値-発光パルスの関係を用いて、所望の発光量で発光させる調光がなされる。調光区間においては、
図15の(i)~(iii)のいずれの領域における調光制御がなされても良い。また、調光区間においては、受光素子はLED素子の発光を検出しない。
【0086】
時刻t2以降は、再び輝度値検出区間となっており、時刻t1~t2の調光区間において温度変化等により輝度値-発光パルスの関係に変化が生じた場合でも、正しい輝度値-発光パルスの関係を算出することができる。このように、調光区間中に輝度値検出区間(キャリブレーション区間)を周期的に設け、輝度値検出区間においてLED素子の輝度値-発光パルスの関係を取得することで、LED素子の輝度値をより精度良く制御できる。
【0087】
(実施の形態4)
(バリエーション1)
実施の形態4では、実施の形態2記載のLED基板24のバリエーションを示す。
図18は、LED基板34の中心付近に受光素子32を1個配置した場合の実施例になる。この場合、
図18に示したLED素子21の発光を個別かつ順番に行うことで、受光素子32は各LED素子21の発光パルスを個別に検出することができる。なお、LED素子21が順番に発光する期間は、例えば、
図17に示した輝度値検出区間である。
【0088】
また、受光素子32からの距離が遠いLED素子21ほど、輝度値が高くなるように発光させても良い。例えば、
図18においては、LED素子21(t)が受光素子32に最近接しており、LED素子21(u)、LED素子21(v)、LED素子21(w)の順に、受光素子32に近い位置に設けられている。このとき、発光制御における輝度値は、LED素子21(w)、LED素子21(v)、LED素子21(u)、LED素子21(t)の順に高くすることができる。これにより、受光素子32は、遠いLED素子21であっても、近いLED素子21と変わらない精度で発光を検出することができる。
【0089】
(バリエーション2)
次に、実施の形態2記載のLED基板24の別のバリエーションを示す。
図19は、LED基板44において、各LED素子21の近傍に、そのLED素子21の発光輝度を測定する受光素子42を1個ずつ配置した場合の実施例になる。LED素子21は、正方格子状に配置されている。このバリエーションでは、LED素子21間の間隔が広く、受光素子42にとって、検出対象となる近傍のLED素子21以外のLED素子からの発光が、受光素子42の輝度測定に特段の影響を及ぼさない場合を想定している。
【0090】
また、受光素子42にとって、検出対象となるLED素子21からの戻り光(直接受光素子42に入射せず、他の部品表面で反射して受光素子42に入射する光)も、受光素子42の輝度測定に特段の影響を及ぼさない。
図20は、LED基板24を含めたディスプレイ50の断面図である。ディスプレイ50は、LED基板24、レンズL及び液晶パネルPを備える。レンズL及び液晶パネルPは、
図1に記載したものと同様であり、説明を省略する。受光素子42は、その受光面が、検出対象となるLED素子21側に向けられることにより、LED素子21からの直接入射光をより強く検出することができる。
【0091】
図20では、LED素子21からの光が液晶パネルPで反射され、受光素子42への入射光(
図20における破線)となることが示されている。しかしながら、この入射光は、受光素子42に直接入射する光と比べて強度がかなり低いため、受光素子42の輝度測定に特段の影響を及ぼさない。
【0092】
なお、検出対象となるLED素子21からの直接入射光以外の成分は、上述のように、その検出値を、検出対象の直接入射光の検出値に比較して無視できるレベルとなるように発光輝度を設定すること、又はノイズとして補正することが可能である。
【0093】
このバリエーション2において、各LED素子21は、その発光タイミングを同じタイミングとすることができる。この点が、各LED素子21の発光タイミングを変える必要があるバリエーション1と異なる点である。これにより、光源装置におけるLED素子21用の制御信号数を削減する(すなわち、LED用の制御回路規模を削減する)ことができる。さらに、検出対象となるLED素子21以外のLED素子からの発光が、受光素子42の輝度測定に特段の影響を及ぼさないため、PWM制御による調光時のDuty幅に制限がなくなる。つまり、バリエーション1に比較して発光時の発光量を大きくできるため、発光の検出及び制御がより容易となる。
【0094】
ただし、
図19の構成において、LED素子21全ての発光タイミングを同じタイミングにしなくとも良い。例えば、
図19において、最近接のLED素子21同士の発光タイミングを異なるタイミングとし、2番目に近接するLED素子21同士の発光タイミングを同じとするような発光制御をしても良い。
【0095】
なお、バリエーション1、2ともに、各LED素子21をランダムに発光させることで、ちらつき現象を抑制することができる。
【0096】
(実施の形態5)
実施の形態2の例示では、(a)~(d)又は(p)~(s)の4種類の発光分類に合わせた、受光素子22が検出値をモニターするためのサンプリング信号が必要である。実施の形態5では、生成するサンプリング信号を削減するための手段を示す。
【0097】
図21は、光源装置における内部回路60を示すブロック図である。内部回路60は、受光素子61、電流-電圧変換アンプ62(以下、アンプ62と記載)、LPF(Low-Pass Filter)63及びA/Dコンバータ64(以下、コンバータ64と記載)を備える。
【0098】
アンプ62は、受光素子61が出力した電流を電圧に変換して出力する。また、アンプ62は、受光素子61の検知するダイナミックレンジを緩和するために、ゲインを切り替える回路を有する。例えば、アンプ62の出力端子と抵抗Rとがスイッチを介して接続されており、そのスイッチのオンオフを切り替えることにより、ゲインの制御ができる。このような構成としては、一般的なフォトダイオード用I/Vアンプが適用できる。
【0099】
例えば、実施の形態3に示した例では、DC調光を行う領域(i)でゲインAを使用し、PWM調光、又はPWM調光及び発光パルスにマスクをする制御がなされる領域(ii)、(iii)でゲインAと異なるゲインBを使用することができる。ただし、使用可能なゲインはこの2つのパターンにとどまらず、さらにゲインパターンを追加可能であることは言うまでもない。ゲインパターンを増やすことで、発光の検出精度向上、及びA/Dコンバータの低分解能化を図ることができる。
【0100】
例えば、上述のゲインA及びゲインBのそれぞれにおけるI-Vamp出力が以下のとおりであるとする。
ゲインA;X1(nit)-Y1(mV)~X2(nit)-Y2(mV)
ゲインB;X1(nit)-Y1(mV)~X3(nit)-Y3(mV)
ただしX2>X1>X3、Y2>Y1>Y3である。
【0101】
このとき、A/Dコンバータ64に必要とされる分解能は、比率X2/X1(又はY2/Y1)及びX1/X3(又はY1/Y3)の両方を識別できるもので良い。仮にゲインが1つしかない場合、必要とされる分解能は比率X2/X3(又はY2/Y3)を識別できなくてはならず、分解能を高くする必要があるが、2種類のゲインを用いる場合には、分解能を高くする必要はない。例えば、X2/X1及びX1/X3の値によっては、A/Dコンバータ64は、12bit程度の分解能能力を有していれば良い。
【0102】
図21に戻り、説明を続ける。LPF63は、PWM調光時に、アンプ62で電圧に変換されたパルス状の検出値を平滑化することで、コンバータ64での読み取り精度を向上させる。なお、LPF63の次数及びカットオフ周波数といったパラメータは、任意の特性を有するシステムに適用可能とするため、自由に調整可能できる。
【0103】
コンバータ64は、マイクロコントローラで構成されており、LPF63からの出力値をA/D変換する。変換に必要な分解能は、上述のとおり、アンプ62のゲインを切り替えることで、高い値にする必要がなくなる。
【0104】
以上のような回路構成によって、受光素子の検出値をモニターするためのサンプリング信号を生成しなくても、分解能を高くすることなく、A/D変換が可能となる。そのため、光源装置における内部回路構成を単純化できる。また、HUDにおいてダイナミックレンジを拡大した場合にも、ダイナミックレンジに合わせて分解能を高くする必要がなくなる。
【0105】
(実施の形態6)
実施の形態1、2において、光源装置に温度センサを搭載することも可能である。発光制御部は、温度センサが測定した温度に基づいて、受光素子(光検出器)の温度特性に従い、受光素子の検出値を補正する。受光素子は、その周辺温度によって検出値に影響が生ずることがあるため、検出値に補正処理をすることで、さらに正確な輝度を検知することができる。この補正処理については、公知の技術を適宜用いることができる。
【0106】
なお、温度センサが受光素子の近傍に設けられていれば、温度センサの検出した温度が受光素子の周辺温度であると見做しても良い。また、温度センサが受光素子から所定の距離だけ離れていれば、温度センサが検出した温度に所定の補正を加えた温度を、受光素子の周辺温度であると見做しても良い。
【0107】
(その他の実施の形態)
実施の形態2では、光源装置において、正方格子状に、基板に複数のLED素子を配置した。しかしながら、LED素子を配置する方法はこれに限られず、正方格子以外の四角格子、又はその他の種類の多角形格子に沿った配置等でも良い。
【0108】
また、上記の各実施の形態に記載した発光制御の処理は、コンピュータが実行することができる。例えば、光源装置がHUDに搭載される場合には、自動車のコンピュータが制御処理を実行することができる。
図22は、そのようなコンピュータのハードウェア構成例を示すブロック図である。
図22を参照すると、このコンピュータ100は、プロセッサ101及びメモリ102を含む。
【0109】
プロセッサ101は、メモリ102からソフトウェア(コンピュータプログラム)を読み出して実行することで、上述の実施形態において説明された発光制御の処理を行う。なお、プロセッサ101として、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Microprocessor)、MCU(Micro-Control Unit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、DSP(Demand-Side Platform)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のうち一つを用いても良いし、複数を並列で用いても良い。
【0110】
メモリ102は、揮発性メモリ若しくは不揮発性メモリ、又はこれらの組み合わせによって構成される。メモリ102は、プロセッサ101から離れて配置されたストレージを含んでも良い。この場合、プロセッサ101は、図示されていないI/O(Input / Output)インタフェースを介してメモリ102にアクセスしても良い。
【0111】
図22の例では、メモリ102は、ソフトウェアモジュール群を格納するために使用される。プロセッサ101は、これらのソフトウェアモジュール群をメモリ102から読み出して実行することで、上述の実施形態において説明された処理を行うことができる。
【0112】
以上に説明したように、コンピュータが有する1又は複数のプロセッサは、図面を用いて説明されたアルゴリズムをコンピュータに行わせるための命令群を含む1又は複数のプログラムを実行する。この処理により、上述の実施の形態に記載された発光制御の処理(ステップ)が実現できる。
【0113】
プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されても良い。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0114】
以上、実施の形態を参照してこの開示を説明したが、この開示は上記によって限定されるものではない。この開示の構成や詳細には、開示のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0115】
10 光源装置
11a、11b 光源
12 光検出器
13 発光制御部
20 光源装置
21 LED素子
22、32、42 受光素子
23 発光制御部
24、34、44 LED基板
25 基板本体
26 LEDチップ
60 内部回路
61 受光素子
62 電流-電圧変換アンプ
63 LPF
64 A/Dコンバータ