(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】樹脂構造体、及び、組み付け状態の検知方法
(51)【国際特許分類】
H02G 3/14 20060101AFI20240416BHJP
H02G 3/16 20060101ALI20240416BHJP
H02G 3/08 20060101ALI20240416BHJP
H05K 5/03 20060101ALI20240416BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
H02G3/14
H02G3/16
H02G3/08 010
H05K5/03 A
B60R16/02 610A
(21)【出願番号】P 2020141115
(22)【出願日】2020-08-24
【審査請求日】2023-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】荘司 和輝
(72)【発明者】
【氏名】和田 正弘
(72)【発明者】
【氏名】垣見 孝明
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-241988(JP,A)
【文献】特開2011-234484(JP,A)
【文献】国際公開第2017/033262(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/14
H02G 3/16
H02G 3/08
H05K 5/03
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する箱状の第1樹脂体と、前記開口部を覆うように前記第1樹脂体に組み付けられる第2樹脂体と、を備えた樹脂構造体であって、
前記第1樹脂体は、
前記第2樹脂体と係合される第1係合部を有し、
前記第2樹脂体は、
前記第1係合部と係合する係合突起と、前記第1樹脂体と前記第2樹脂体との組み付け状態を確認できる検知リブと、から構成される第2係合部を有し、
該樹脂構造体は、
前記第1係合部と前記第2係合部とが係合されている組付完了状態では、組付方向において前記第1係合部と前記検知リブとが隣接し、
前記第1係合部と前記第2係合部とが係合されていない組付途中状態では、前記組付方向において前記第1係合部と前記検知リブとが隣接しない、ように構成され
、
前記第1係合部は、
前記組付方向に減厚された減厚部を有し、
前記組付方向において、前記係合突起と前記検知リブとが軸ずれして位置し、
該樹脂構造体は、
前記組付完了状態にて、前記検知リブと前記減厚部とが前記組付方向に隣接する、
樹脂構造体。
【請求項2】
開口部を有する箱状の第1樹脂体と、前記開口部を覆うように前記第1樹脂体に組み付けられる第2樹脂体と、を備えた樹脂構造体における組み付け状態の検知方法であって、
前記第1樹脂体は、
前記第2樹脂体と係合される第1係合部を有し、
前記第2樹脂体は、
前記第1係合部と係合する係合突起と、前記第1樹脂体と前記第2樹脂体との組み付け状態を確認できる検知リブと、から構成される第2係合部を有し、
該検知方法は、
前記第1係合部に向かって組付方向に所定量の移動可能な検知ピンを更に備え、
組付方向において前記第1係合部と前記検知リブとが隣接している場合、前記第1係合部と前記第2係合部とが係合された組付完了状態であると検知し、前記組付方向において前記第1係合部と前記検知リブとが隣接していない場合、前記第1係合部と前記第2係合部とが係合されていない組付途中状態であると検知する工程、及び、
前記検知ピンが前記所定量未満移動されて前記検知リブに当接している場合、前記組付完了状態であると検知し、前記検知ピンが前記所定量移動されて前記検知リブに当接していない場合、前記組付途中状態であると検知する工程、の少なくとも一方を含
み、
前記第1係合部は、
前記組付方向に減厚された減厚部を有し、
前記組付方向において、前記係合突起と前記検知リブとが軸ずれして位置し、
該樹脂構造体は、
前記組付完了状態にて、前記検知リブと前記減厚部とが前記組付方向に隣接する、
検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂構造体、及び、組み付け状態の検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に搭載される電気接続箱(例えば、リレーボックス)等のように、複数の樹脂体を互いに組み付けて構成される樹脂構造体が提案されている。電子部品等を保持する本体ケースと、本体ケースの下部(又は上部)に組み付けられるロアカバー(又はアッパーカバー)と、を有している。この電気接続箱では、本体ケース及びロアカバーの互いの係合部を係合させることで、本体ケースにロアカバーを固定するようになっている(例えば、特許文献1-3を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-182965号公報
【文献】特許第6057178号公報
【文献】特許第6191093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、従来の電気接続箱のように、複数の樹脂体が組み付けられる電気接続箱では、複数の樹脂体が適切に組み付けられる必要がある。そして、複数の樹脂体が適正に組み付けられているのか確認する必要がある。例えば、複数の樹脂体を本体ケース及びロアカバーとする。このとき、本体ケース及びロアカバーの係合箇所によっては、係合箇所を目視することのみによって組み付け状態を確認することがある。
【0005】
ところで、従来の電気接続箱は、例えば、車両の狭い空間において他の部品に囲まれて載置されたり、ワイヤーハーネスに接続されたりする。このように、電気接続箱を載置する作業やワイヤーハーネスに接続する作業を行うことで、電気接続箱の係合(組み付け状態)が解除される可能性がある。しかし、上述したような環境下では、本体ケースとロアカバーとの係合箇所を十分に目視できない。つまり、複数の樹脂体の組み付け時には、係合箇所が目視によって確認できたとしても、上述した環境下では係合箇所の組み付け状態が確認できないことがあった。したがって、電気接続箱は、このような環境下においても、複数の樹脂体の組み付け状態が確認できる構造を有していることが望ましい。
【0006】
本発明は上述した状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、樹脂構造体を構成する複数の樹脂体の組み付け状態を容易に検知できる樹脂構造体、及び、組み付け状態の検知方法、の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係る樹脂構造体、及び、組み付け状態の検知方法は、下記[1]~[2]を特徴としている。
[1]
開口部を有する箱状の第1樹脂体と、前記開口部を覆うように前記第1樹脂体に組み付けられる第2樹脂体と、を備えた樹脂構造体であって、
前記第1樹脂体は、
前記第2樹脂体と係合される第1係合部を有し、
前記第2樹脂体は、
前記第1係合部と係合する係合突起と、前記第1樹脂体と前記第2樹脂体との組み付け状態を確認できる検知リブと、から構成される第2係合部を有し、
該樹脂構造体は、
前記第1係合部と前記第2係合部とが係合されている組付完了状態では、組付方向において前記第1係合部と前記検知リブとが隣接し、
前記第1係合部と前記第2係合部とが係合されていない組付途中状態では、前記組付方向において前記第1係合部と前記検知リブとが隣接しない、ように構成され、
前記第1係合部は、
前記組付方向に減厚された減厚部を有し、
前記組付方向において、前記係合突起と前記検知リブとが軸ずれして位置し、
該樹脂構造体は、
前記組付完了状態にて、前記検知リブと前記減厚部とが前記組付方向に隣接する、
樹脂構造体であること。
[2]
開口部を有する箱状の第1樹脂体と、前記開口部を覆うように前記第1樹脂体に組み付けられる第2樹脂体と、を備えた樹脂構造体における組み付け状態の検知方法であって、
前記第1樹脂体は、
前記第2樹脂体と係合される第1係合部を有し、
前記第2樹脂体は、
前記第1係合部と係合する係合突起と、前記第1樹脂体と前記第2樹脂体との組み付け状態を確認できる検知リブと、から構成される第2係合部を有し、
該検知方法は、
前記第1係合部に向かって組付方向に所定量の移動可能な検知ピンを更に備え、
組付方向において前記第1係合部と前記検知リブとが隣接している場合、前記第1係合部と前記第2係合部とが係合された組付完了状態であると検知し、前記組付方向において前記第1係合部と前記検知リブとが隣接していない場合、前記第1係合部と前記第2係合部とが係合されていない組付途中状態であると検知する工程、及び、
前記検知ピンが前記所定量未満移動されて前記検知リブに当接している場合、前記組付完了状態であると検知し、前記検知ピンが前記所定量移動されて前記検知リブに当接していない場合、前記組付途中状態であると検知する工程、の少なくとも一方を含み、
前記第1係合部は、
前記組付方向に減厚された減厚部を有し、
前記組付方向において、前記係合突起と前記検知リブとが軸ずれして位置し、
該樹脂構造体は、
前記組付完了状態にて、前記検知リブと前記減厚部とが前記組付方向に隣接する、
検知方法であること。
【0008】
上記[1]の構成の樹脂構造体によれば、第1樹脂体の第1係合部と、第2樹脂体の係合突起とが係合されることで、両者の組み付け状態にて組付方向への分離が抑制される。組付完了状態では、組付方向において第1係合部と、第2樹脂体の検知リブと、が隣接している。一方、第1係合部と係合突起とが係合されていない組付途中状態(即ち、組付完了状態とは異なる状態)では、第1係合部と、検知リブと、が隣接しない、ように構成されている。このため、樹脂構造体の組み付け作業者は、検知リブを視認することで、第1樹脂体と第2樹脂体との組み付け状態が容易に確認できる。よって、本構成の樹脂構造体によれば、樹脂構造体を構成する第1樹脂体と第2樹脂体(即ち、複数の樹脂体)の組み付け状態を容易に検知できる。
【0009】
更に、上記[1]の構成の樹脂構造体によれば、第1係合部が、組付完了状態にて検知リブと組付方向に隣接する減厚部を有することで、樹脂構造体の外方から検知リブを視認しやすくなる。よって、本構成の樹脂構造体によれば、樹脂構造体を構成する第1樹脂体と第2樹脂体(即ち、複数の樹脂体)の組み付け状態をより容易に確認できる。また、組付方向において、係合突起と検知リブとが軸ずれしていることで、第1樹脂体と第2樹脂体との組付完了状態を解除するときに検知リブが邪魔にならない。
【0010】
上記[2]の構成の検知方法によれば、第1樹脂体の第1係合部と、第2樹脂体の係合突起とが係合されることで、両者の組み付け状態にて組付方向への分離が抑制される。組付完了状態では、組付方向において第1係合部と、第2樹脂体の検知リブと、が隣接している。一方、第1係合部と係合突起とが係合されていない組付途中状態(即ち、組付完了状態とは異なる状態)では、第1係合部と、検知リブと、が隣接していない。このため、樹脂構造体の組み付け作業者は、検知リブを視認することで、第1樹脂体と第2樹脂体との組み付け状態が容易に確認できる。更に、本構成の検知方法は、第1係合部に向かって組付方向に所定量の移動可能な検知ピンが備えられる。検知ピンは、例えば、組み付け状態を確認するため作業者が操作する。本構成の検知方法では、操作された検知ピンが所定量未満移動されて検知リブに当接した場合、組付完了状態であると検知し、所定量移動されて検知リブに当接しない場合、組付途中状態であると検知する。つまり、作業者は、検知ピンを操作することで、検知ピンの当接相手、及び、移動量等によって第1樹脂体と第2樹脂体との組み付け状態が容易に確認できる。仮に、一方の検知方法が機能しないときでも、他方の検知方法が機能することで、確実に組み付け状態を検知できる。よって、本構成の検知方法によれば、樹脂構造体を構成する第1樹脂体と第2樹脂体(即ち、複数の樹脂体)の組み付け状態を容易に検知できる。
更に、第1係合部が、組付完了状態にて検知リブと組付方向に隣接する減厚部を有することで、樹脂構造体の外方から検知リブを視認しやすくなる。よって、本構成の検知方法によれば、樹脂構造体を構成する第1樹脂体と第2樹脂体(即ち、複数の樹脂体)の組み付け状態をより容易に確認できる。また、組付方向において、係合突起と検知リブとが軸ずれしていることで、第1樹脂体と第2樹脂体との組付完了状態を解除するときに検知リブが邪魔にならない。
【発明の効果】
【0011】
このように、本発明によれば、樹脂構造体を構成する複数の樹脂体の組み付け状態を検知できる樹脂構造体、及び、組み付け状態の検知方法、を提供できる。
【0012】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る樹脂構造体の斜視図である。
【
図3】
図3(a)は、第1係合部を外方且つ下方から見た斜視図であり、
図3(b)は、第1係合部を内方且つ下方から見た斜視図である。
【
図4】
図4(a)は、樹脂構造体の半嵌合状態での係合箇所を下方から見た斜視図であり、
図4(b)は、樹脂構造体の嵌合状態での係合箇所を下方から見た斜視図である。
【
図5】
図5(a)は、樹脂構造体の半嵌合状態でのA-A断面図であり、
図5(b)は、樹脂構造体の嵌合状態でのA-A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、
図1に示す本発明の実施形態に係る樹脂構造体1について説明する。樹脂構造体1は、典型的には、車両に搭載され、リレー等の電子部品を収容するリレーボックス(電気接続箱)である。
【0015】
図1及び
図2に示すように、樹脂構造体1は、本体ケース10と、ロアカバー20と、を含んで構成される。本体ケース10は、リレー等の電子部品(及び、その他の部品、図示省略)が収容されることになり、ロアカバー20は、本体ケース10の下端開口部を塞ぐように本体ケース10の下端部に組み付けられる。本体ケース10及びロアカバー20の各々は、樹脂構造体である。本体ケース10は、本発明の「第1樹脂体」に対応し、ロアカバー20は、本発明の「第2樹脂体」に対応している。
【0016】
以下、説明の便宜上、
図1~5に示すように、「上下方向」、「周方向」、「内外方向」、「上」、「下」、「内」及び「外」を定義する。「上下方向」、「周方向」及び「内外方向」は、互いに直交している。本体ケース10とロアカバー20との組み付け時において、「上下方向」は、樹脂構造体1の組付方向に対応している。「周方向」は、本体ケース10の後述する周壁11及びロアカバー20の後述する周壁21における周方向に対応し、「内外方向」は、周壁11及び周壁21における厚み方向に対応している。以下、樹脂構造体1を構成する各部材について順に説明する。
【0017】
まず、本体ケース10について説明する。本体ケース10は、
図2に示すように、上下方向に延びる略矩形筒状の周壁11を有する。周壁11の略矩形枠上の下端縁部の外面には、周方向の複数個所(本例では、4箇所)にて、第1係合部12がそれぞれ設けられている。本体ケース10とロアカバー20との組付完了状態(
図1参照)にて、複数の第1係合部12は、ロアカバー20に設けられた後述する複数の第2係合部とそれぞれ係合することになる(
図4~5参照)。
【0018】
各第1係合部12は、
図3(a)に示すように、側壁部13と、外壁部14と、を含んで構成される。具体的には、側壁部13は、周方向に所定距離だけ離れて周壁11の下端縁部の外面から外方に突出し且つ上下方向に平行に延びる一対の矩形平板上であり、外壁部14は、一対の側壁部13の外側端縁同士を周方向に連結して周方向に延びる略矩形平板状である。
【0019】
外壁部14の中央箇所には、内方に窪み且つ外方及び下方に開口する略矩形状の窪み部15が形成されている。窪み部15の周方向に延びる壁部は、補強部16を構成している。補強部16は、上下方向に厚みを有することで後述する段差部を補強している。また、補強部16の一部は、上方に窪む減厚部17が形成されている。減厚部17は、組付完了状態にて、下方に検知リブが位置する。
【0020】
図3(b)に示すように、第1係合部12の内面には、外方に窪み且つ内方に開口する略矩形状の凹部19が形成されている。凹部19の周方向に延びる下端縁部は、段差部18を構成している。段差部18は、本体ケース10とロアカバー20との組付完了状態(
図1参照)にて、後述する第2係合部22の係合突起26と係合することになる(
図5参照)。
【0021】
次いで、ロアカバー20について説明する。ロアカバー20は、
図2に示すように、上下方向に延びる略矩形筒状の周壁21と、周壁21の下端開口部を塞ぐ略矩形平板状の底壁部21aと、を一体に有する。
【0022】
図2に示すように、周壁21の上方の所定位置には、周方向に亘って延びる略矩形環状の突条である環状部28が形成されている。環状部28は、本体ケース10と上下方向に互いに突き合わせ可能な形状を有している。
【0023】
周壁21の略矩形枠上の上端縁部の外面には、本体ケース10の複数の第1係合部12に対応して、周方向の複数個所(本例では、4箇所)にて、第2係合部22がそれぞれ設けられている。
【0024】
第2係合部22は、周壁21の上端縁側から上方に延びる略矩形平板状の延出部23と、延出部23の上端縁部から外方に向かって略垂直に延びる略矩形平板状の連結部24と、連結部の外方側端部から下方に向かって延びる弾性変形可能な弾性部25と、を有する。
【0025】
弾性部25は、外面に外方に向かって突出する係合突起26を有する。係合突起26は、上述した段差部18と係合することになる。弾性部25の下端縁部には、外方に向かって短く突出する検知リブ27が設けられている。
【0026】
延出部23と弾性部25とは、略平行であり、連結部24によって連結されている。つまり、第2係合部は、連結部24によって延出部23と弾性部25とが内外方向に離間されている。
【0027】
別の言い方をすると、延出部23、連結部24、及び、弾性部25によって下方に開口する撓み許容空間Sが画成される。これにより、弾性部25は、組付途中状態にて、段差部18と係合突起26とが接触すると、延出部23(即ち、内方)に向かって押圧される。つまり、撓み許容空間Sは、組付途中状態にて弾性部25の撓み(即ち、弾性変形)を許容する。
【0028】
次いで、本体ケース10とロアカバー20との組み付けについて説明する。本体ケース10とロアカバー20とを組み付けるためには、まず、
図2に示すように、本体ケース10がロアカバー20の上方に位置するように、本体ケース10及びロアカバー20を配置する。
【0029】
そして、本体ケース10及びロアカバー20を上下方向に近付けて、本体ケース10の周壁11の下端縁部と、ロアカバー20の周壁21の上端縁部との嵌合を開始させる。この嵌合は、本体ケース10の周壁の下端縁部がロアカバー20の周壁21の上端縁部の外側に位置するように、且つ、複数の第1係合部12と複数の第2係合部22とが対応する位置にあるように、進行していく。この嵌合は、本体ケース10の周壁11の下端縁部と、ロアカバー20の環状部28と、が上下方向に互いに突き合わされるまで継続される。
【0030】
周壁11の下端縁部と環状部28とが互いに突き合わされる直前にて、各第2係合部22にて、係合突起26が段差部18と当接することで、弾性部25が段差部18に延出部23(即ち、内方)に向かって押圧される。この押圧による弾性部25の一時的な内方への弾性変形を経て、段差部18と係合突起26とが互いに相手の頂部を乗り越える。そして、周壁11の下端縁部と環状部28とが互いに突き合わされると、係合突起26が段差部18の上方に隣接して、段差部18及び係合突起26が互いに係合すると共に、本体ケース10とロアカバー20の組み付けが完了する。これにより、
図1に示す樹脂構造体1が得られる。
【0031】
本体ケース10とロアカバー20との組付完了状態(
図1参酌)では、複数の段差部18と複数の係合突起26とが互いに係合していることで、本体ケース10とロアカバー20との上下方向の分離が防止される。
【0032】
次いで、組み付け状態の検知方法について説明する。樹脂構造体1は、
図5(a)に示すように、組付途中状態では、上下方向(即ち、組付方向)において、第1係合部12の減厚部17と、第2係合部22の検知リブ27と、が隣接していない。これに対し、組付完了状態では、
図5(b)に示すように、上下方向において、減厚部17と、検知リブ27と、が隣接している。
【0033】
具体的には、
図4に示すように、樹脂構造体1の係合箇所を下方から視認したとき、組付途中状態では検知リブ27が段差部18よりも内方に位置し、組付完了状態では検知リブ27が段差部18と上下方向において同軸上に位置する。
【0034】
よって、組み付け作業が行われた後に、樹脂構造体1の係合箇所(即ち、検知リブ27)を視認することで、組付途中状態、又は、組付完了状態を検知できる。
【0035】
更に、作業者は、組み付け作業が行われた後に、上下方向に所定量移動する検知ピン2を操作することで、組付途中状態、又は、組付完了状態を検知できる。なお、検知ピン2は、ボタン(不図示)等による制御で操作される。
【0036】
具体的には、操作された検知ピン2は、下方から上方に向かって移動する。このとき、樹脂構造体1が組付途中状態であれば、検知ピン2は所定量移動されて、減厚部17に当接する(
図5(b)参照)。即ち、検知ピン2は、検知リブ27と当接しない。一方、樹脂構造体1が組付完了状態であれば、検知ピン2は所定量未満移動されて、検知リブ27と当接する。
【0037】
よって、検知ピン2の当接相手、及び、移動量等から、組付途中状態、又は、組付完了状態を検知できる。つまり、検知ピン2を操作することで、組み付け状態をより確実に検知できる。
【0038】
<作用・効果>
本実施形態に係る樹脂構造体1によれば、本体ケース10の段差部18と、ロアカバー20の係合突起26とが係合されることで、両者の組み付け状態にて組付方向への分離が抑制される。組付完了状態では、組付方向において第1係合部12(即ち、減厚部17)と、検知リブ27と、が隣接している(
図5(b)参照)。一方、段差部18と係合突起26とが係合されていない組付途中状態(即ち、組付完了状態とは異なる状態)では、減厚部17と、検知リブ27と、が隣接しない、ように構成されている(
図5(a)参照)。このため、樹脂構造体1の組み付け作業者は、検知リブ27を視認することで、本体ケース10とロアカバー20との組み付け状態が容易に確認できる。よって、本実施形態に係る樹脂構造体1によれば、樹脂構造体1を構成する本体ケース10とロアカバー20(即ち、複数の樹脂体)の組み付け状態を容易に検知できる。
【0039】
本実施形態に係る樹脂構造体1によれば、第1係合部12が、組付完了状態にて検知リブ27と組付方向に隣接する減厚部17を有することで、樹脂構造体1の外方から検知リブ27を視認しやすくなる。よって、本実施形態に係る樹脂構造体1によれば、樹脂構造体1を構成する本体ケース10とロアカバー20(即ち、複数の樹脂体)の組み付け状態をより容易に確認できる。また、上下方向(即ち、組付方向)において、係合突起26と検知リブ27とが軸ずれしていることで、本体ケース10とロアカバー20との組付完了状態を解除するときに検知リブ27が邪魔にならない。
【0040】
本実施形態に係る検知方法によれば、本体ケース10の段差部18と、ロアカバー20の係合突起26とが係合されることで、両者の組み付け状態にて組付方向への分離が抑制される。組付完了状態では、組付方向において第1係合部12(即ち、減厚部17)と、ロアカバー20の検知リブ27と、が隣接している(
図5(b)参照)。一方、段差部18と係合突起26とが係合されていない組付途中状態(即ち、組付完了状態とは異なる状態)では、減厚部17と、検知リブ27と、が隣接していない(
図5(a)参照)。このため、樹脂構造体1の組み付け作業者は、検知リブ27を視認することで、本体ケース10とロアカバー20との組み付け状態が容易に確認できる。更に、本実施形態に係る検知方法は、本体ケース10に向かって組付方向に所定量の移動可能な検知ピン2が備えられる。検知ピン2は、例えば、組み付け状態を確認するため作業者が操作する。本実施形態に係る検知方法では、操作された検知ピン2が所定量未満移動されて検知リブ27に当接した場合、組付完了状態であると検知し(
図5(b)参照)、所定量移動されて検知リブ27に当接しない場合、組付途中状態であると検知する(
図5(a)参照)。つまり、作業者は、検知ピン2を操作することで、検知ピン2の当接相手、及び、移動量等によって本体ケース10とロアカバー20との組み付け状態が容易に確認できる。仮に、一方の検知方法が機能しないときでも、他方の検知方法が機能することで、確実に組み付け状態を検知できる。よって、本実施形態に係る検知方法によれば、樹脂構造体1を構成する本体ケース10とロアカバー20(即ち、複数の樹脂体)の組み付け状態を容易に検知できる。
【0041】
<他の形態>
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0042】
本実施形態では、説明の都合上、上下方向について定義したが、これに限らない。例えば、組み付け状態の検知をするとき、樹脂構造体1の上下を入れ替えてもよい。つまり、検知ピン2は、上方から下方に向かって移動されてもよい。
【0043】
本実施形態では、第1係合部12に段差部18が設けられ、第2係合部22に係合突起26が設けられたが、逆でもよい。また、係合方法は、樹脂構造体1の上下方向の分離が防止されれば、これに限らない。
【0044】
ここで、上述した本発明に係る樹脂成形体、及び、組み付け状態の検知方法の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[3]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
開口部を有する箱状の第1樹脂体(本体ケース10)と、前記開口部を覆うように前記第1樹脂体に組み付けられる第2樹脂体(ロアカバー20)と、を備えた樹脂構造体(1)であって、
前記第1樹脂体(本体ケース10)は、
前記第2樹脂体と係合される第1係合部(12)を有し、
前記第2樹脂体(ロアカバー20)は、
前記第1係合部と係合する係合突起(26)と、前記第1樹脂体と前記第2樹脂体との組み付け状態を確認できる検知リブ(27)と、から構成される第2係合部(22)を有し、
該樹脂構造体(1)は、
前記第1係合部(段差部18)と前記第2係合部(係合突起26)とが係合されている組付完了状態(
図5(b))では、組付方向において前記第1係合部(減厚部17)と前記検知リブ(27)とが隣接し、
前記第1係合部と前記第2係合部とが係合されていない組付途中状態(
図5(a))では、前記組付方向において前記第1係合部(減厚部17)と前記検知リブ(27)とが隣接しない、ように構成される、
樹脂構造体(1)。
[2]
上記[1]に記載の樹脂構造体において、
前記第1係合部(12)は、
前記組付方向に減厚された減厚部(17)を有し、
前記組付方向において、前記係合突起(26)と前記検知リブ(27)とが軸ずれして位置し、
該樹脂構造体(1)は、
前記組付完了状態(
図5(b))にて、前記検知リブ(27)と前記減厚部(17)とが前記組付方向に隣接する、
樹脂構造体(1)。
[3]
開口部を有する箱状の第1樹脂体(本体ケース10)と、前記開口部を覆うように前記第1樹脂体に組み付けられる第2樹脂体(ロアカバー20)と、を備えた樹脂構造体(1)における組み付け状態の検知方法であって、
前記第1樹脂体(本体ケース10)は、
前記第2樹脂体と係合される第1係合部(12)を有し、
前記第2樹脂体(ロアカバー20)は、
前記第1係合部と係合する係合突起(26)と、前記第1樹脂体と前記第2樹脂体との組み付け状態を確認できる検知リブ(27)と、から構成される第2係合部(22)を有し、
該検知方法は、
前記第1係合部(12)に向かって組付方向に所定量の移動可能な検知ピン(2)を更に備え、
組付方向において前記第1係合部(減厚部17)と前記検知リブ(27)とが隣接している場合、前記第1係合部(段差部18)と前記第2係合部(係合突起26)とが係合された組付完了状態(
図5(b))であると検知し、前記組付方向において前記第1係合部(減厚部17)と前記検知リブ(27)とが隣接していない場合、前記第1係合部(段差部18)と前記第2係合部(係合突起26)とが係合されていない組付途中状態(
図5(a))であると検知する工程、及び、
前記検知ピン(2)が前記所定量未満移動されて前記検知リブ(27)に当接している場合、前記組付完了状態(
図5(b))であると検知し、前記検知ピン(2)が前記所定量移動されて前記検知リブ(27)に当接していない場合、前記組付途中状態(
図5(a))であると検知する工程、の少なくとも一方を含む、
検知方法。
【符号の説明】
【0045】
1 樹脂構造体
2 検知ピン
10 本体ケース(第1樹脂体)
11 周壁
12 第1係合部
17 減厚部
18 段差部
19 凹部
20 ロアカバー(第2樹脂体)
22 第2係合部
26 係合突起
27 検知リブ