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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】印刷システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/12 20060101AFI20240416BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240416BHJP
   B41J 5/30 20060101ALI20240416BHJP
   B41J 29/00 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
G06F3/12 347
G06F3/12 314
G06F3/12 324
G06F3/12 378
B41J2/01 303
B41J2/01 129
B41J5/30 Z
B41J29/00 H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020148134
(22)【出願日】2020-09-03
(65)【公開番号】P2022042650
(43)【公開日】2022-03-15
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】上林 和雅
【審査官】豊田 真弓
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-003734(JP,A)
【文献】特開2016-159530(JP,A)
【文献】特開2009-286128(JP,A)
【文献】特開2020-121490(JP,A)
【文献】特開2016-120603(JP,A)
【文献】特開2020-023053(JP,A)
【文献】特開2013-230599(JP,A)
【文献】特開2001-228988(JP,A)
【文献】特開2019-093559(JP,A)
【文献】特開2016-196111(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/12
B41J 2/01
B41J 5/30
B41J 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体の上に画像を形成して複数の印刷物を順に作成する印刷システムであって、
前記記録媒体に向かって光硬化性インクを吐出する吐出装置と、
前記記録媒体の上の前記光硬化性インクに対して光を照射する光照射装置と、
前記記録媒体に印刷する画像を表す画像データを取得する取得部と、
前記画像データをラスタライズ処理して印刷データに変換するラスタライズ処理部と、
前記印刷データに基づいて前記吐出装置と前記光照射装置とを制御し、前記記録媒体の上に前記画像を印刷する印刷処理を実行する印刷制御部と、
前記印刷処理の後、前記光照射装置を制御し、前記記録媒体の上の前記光硬化性インクに対して光を照射するポストキュア処理を実行するポストキュア制御部と、
前記ポストキュア処理の所要時間を算出するポストキュア時間算出部と、
前記ラスタライズ処理に要する時間を見積もるラスタライズ時間算出部と、
を備え、
前記ラスタライズ処理部は、第2の前記印刷物に対応する前記画像データの前記ラスタライズ処理に要する時間が、第1の前記印刷物の前記ポストキュア処理の所要時間以下である場合、前記ポストキュア制御部が第1の前記印刷物の前記ポストキュア処理を実行しているときに、第2の前記印刷物に対応する前記画像データを前記ラスタライズ処理するように構成されている、
印刷システム。
【請求項2】
前記画像データの設定条件と、前記ラスタライズ処理に要する時間と、の対応関係を示す対応表を記憶する記憶部をさらに備え、
前記ラスタライズ時間算出部は、前記画像データの設定条件に基づいて、前記対応表から前記ラスタライズ処理に要する時間を取得する、
請求項に記載の印刷システム。
【請求項3】
前記記録媒体を載置するテーブルと、
前記テーブルよりも上方において、所定の方向に延びたガイドレールと、
前記ガイドレールに係合し、前記吐出装置と前記光照射装置とを搭載するキャリッジと、をさらに備える、
請求項1または2に記載の印刷システム。
【請求項4】
前記ポストキュア処理における前記キャリッジの移動速度は、前記印刷処理における前記キャリッジの移動速度よりも遅い、
請求項に記載の印刷システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、記録媒体に光硬化性インクを吐出する吐出装置と、記録媒体上の光硬化性インクに光を照射する光照射装置と、吐出装置と光照射装置とを制御して印刷処理を実行する印刷制御部と、を備えた光硬化型のプリンタが知られている。かかるプリンタに関連して、例えば特許文献1には、印刷処理で光硬化性インクが完全に固まらないときに、光照射装置を制御して、吐出装置からはインクを吐出させずに記録媒体上の光硬化性インクに追加で光を照射するポストキュア(アフタースキャン)処理を実行することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-121490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、このような光硬化型のプリンタでは、まずユーザが、プリンタと接続されたコンピュータ等の外部機器に、印刷したい画像のファイル(画像データ)を入力する。上記外部機器では、画像データがラスタライズ処理され、プリンタが解釈可能な形式のデータ(印刷データ)に変換される。プリンタは、上記外部機器から印刷データを受信し、印刷データに基づいて印刷処理を実行する。
【0005】
しかしながら、本発明者の検討によれば、例えば画像データのサイズが大きい場合等には、ラスタライズ処理に比較的長い時間(例えば5分以上)を要することがある。ラスタライズ処理の時間が長くなると、ユーザが外部機器に画像データを入力してから実際にプリンタで印刷処理が開始されるまでのタイムラグが大きくなる。特に複数の印刷物を作成する場合には、タイムラグの累積がプリンタの稼働効率にも大きく影響する。そのため、ユーザからはラスタライズ処理の待ち時間を低減して印刷効率を高めたい要望があった。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の印刷物を作成する場合に印刷効率を高めることができる印刷システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明より、記録媒体の上に画像を形成して複数の印刷物を順に作成する印刷システムが提供される。かかる印刷システムは、前記記録媒体に向かって光硬化性インクを吐出する吐出装置と、前記記録媒体の上の前記光硬化性インクに対して光を照射する光照射装置と、前記記録媒体に印刷する画像を表す画像データを取得する取得部と、前記画像データをラスタライズ処理して印刷データに変換するラスタライズ処理部と、前記印刷データに基づいて前記吐出装置と前記光照射装置とを制御し、前記記録媒体の上に前記画像を印刷する印刷処理を実行する印刷制御部と、前記印刷処理の後、前記光照射装置を制御し、前記記録媒体の上の前記光硬化性インクに対して光を照射するポストキュア処理を実行するポストキュア制御部と、を備える。前記ラスタライズ処理部は、前記ポストキュア制御部が第1の前記印刷物の前記ポストキュア処理を実行しているときに、第2の前記印刷物に対応する前記画像データを前記ラスタライズ処理するように構成されている。
【0008】
上記印刷システムでは、第1の印刷物についてポストキュア処理を実行している最中に、並行して第2の印刷物の画像データに対するラスタライズ処理が行われ、第2の印刷データの生成が開始される。このことにより、第1の印刷物の後に第2の印刷物を作成する場合には、タイムラグを減らして迅速に印刷を開始することができる。したがって、上記印刷システムでは、プリンタの稼働効率を高めることができ、円滑かつ効率的に印刷を行うことができる。また、ユーザにとって退屈なラスタライズ処理の待ち時間を低減することができ、ユーザの満足度を向上することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の印刷物を作成する場合に印刷効率を高めることができる印刷システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る印刷システムを示す模式図である。
図2図1のプリンタの正面図である。
図3図1のプリンタの平面図である。
図4図1の印刷システムの機能ブロック図である。
図5】印刷処理およびポストキュア処理の制御手順の一例を時系列で示す模式図である。
図6】ポストキュア処理の際の印刷管理装置の制御手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、適宜図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0012】
図1は、印刷システム1の模式図である。印刷システム1は、複数の印刷物、例えば第1の印刷物と第2の印刷物とを順に作成するように構成されている。図1に示すように、印刷システム1は、プリンタ10と、印刷管理装置70と、を備えている。プリンタ10と印刷管理装置70とは、有線または無線で通信可能に接続されている。詳しくは後述するが、印刷管理装置70は、プリンタ10の動作を制御するための情報(制御情報)を、プリンタ10に対して送信する。プリンタ10は、印刷管理装置70から送信された制御情報に基づいて印刷物を作成する。なお、以下の図面において、符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ、前、後、左、右、上、下を表し、符号X、Y、Zは、それぞれ、前後方向(副走査方向)、左右方向(主走査方向)、上下方向を表すものとする。ただし、これは説明の便宜上の方向に過ぎず、印刷システム1の設置形態を何ら限定するものではない。
【0013】
まず、プリンタ10について説明する。プリンタ10は、インクジェットプリンタである。なお、本明細書において「インクジェットプリンタ」とは、従来公知のインクジェット技術による印刷方法、例えば、二値偏向方式あるいは連続偏向方式等の連続方式や、サーマル方式、あるいは圧電素子方式等の各種のオンデマンド方式を利用したプリンタ全般をいう。また、「プリンタ」には、二次元の画像を形成する2Dプリンタと、三次元の造形物を造形する3Dプリンタ(三次元造形装置)と、が包含される。
【0014】
プリンタ10は、光硬化性インクを用いて記録媒体2(図2参照)に画像を形成するように構成された光硬化型のプリンタである。なお、本明細書において「光硬化型のプリンタ」とは、光源から、紫外線、X線、可視光線、赤外線等を含む電磁波(広義の光)を照射することにより、記録媒体2上の光硬化性インクを硬化させて、画像を形成する印刷装置全般をいう。また、本明細書において「画像」とは、記録媒体2上に形成される像のことであり、その内容は特に限定されない。画像には、文字、数字、記号、図形、絵柄、模様、写真等が含まれる。また、記録媒体2は、画像が印刷される対象物であり、その形状や材質は特に限定されない。記録媒体2は、例えば、普通紙、インクジェット用印刷紙等の紙類であってもよいし、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル等の樹脂製のシート、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼、木材、ガラス、ゴム等の各種の材料からなる板材、織布や不織布等の布帛、皮革、その他の媒体であってもよい。
【0015】
図2は、プリンタ10の正面図である。図3は、プリンタ10の平面図である。プリンタ10は、所謂、フラットベッドタイプのプリンタである。図2および図3に示すように、プリンタ10は、左右方向Yに延びた箱状に形成されている。プリンタ10は、開口11を有するケーシング12と、開口11を開閉自在に覆うフロントカバー13と、を備えている。なお、図2には、フロントカバー13が開いた状態を表し、図3には、フロントカバー13を取り外した状態を表している。図3に示すように、プリンタ10の上面には、操作パネル14が設けられている。操作パネル14は、プリンタ10のステータス情報等を表示する表示部15と、ユーザによって操作される入力キー16と、を備えている。表示部15は、表示画面の一例である。
【0016】
図2に示すように、プリンタ10は、テーブル20と、テーブル移動機構21と、キャリッジ30と、キャリッジ移動機構31と、吐出装置40と、インクタンク41と、光照射装置50と、制御装置60(図4も参照)と、を備えている。テーブル移動機構21と、キャリッジ移動機構31とは、記録媒体2および吐出装置40のいずれか一方を他方に対して相対的に移動させる移動機構の一例である。
【0017】
テーブル20は、ケーシング12の内部空間に配置されている。テーブル20は、記録媒体2が載置される台である。図2に示すように、テーブル20は、キャリッジ30よりも下方に設けられている。図3に示すように、テーブル20は、ここでは矩形状の部材である。テーブル20は、後述するテーブル移動機構21によって、前後方向Xに移動可能に構成されている。
【0018】
テーブル移動機構21は、テーブル20を前後方向Xに移動させる機構である。図2に示すように、テーブル移動機構21は、スライドレール21a、21bと、搬送部材21cと、前後移動用モータ21d(図4参照)と、を備えている。図3に示すように、スライドレール21a、21bは、前後方向Xに延びている。搬送部材21cは、スライドレール21a、21bに対して摺動自在に設けられている。搬送部材21cの上方には、テーブル20が支持されている。前後移動用モータ21dは、制御装置60と電気的に接続されており、制御装置60によって制御される。前後移動用モータ21dが駆動すると、スライドレール21a、21bに沿って搬送部材21cが前後方向Xに移動する。これにより、テーブル20およびテーブル20上の記録媒体2が前後方向Xに移動する。
【0019】
キャリッジ30は、ケーシング12の内部空間に配置されている。図2に示すように、キャリッジ30は、テーブル20よりも上方に設けられている。キャリッジ30は、後述するキャリッジ移動機構31によって左右方向Yに移動可能に構成されている。キャリッジ30には、吐出装置40と光照射装置50とが搭載されている。吐出装置40と光照射装置50とは、キャリッジ30と一体になって左右方向Yに移動する。
【0020】
キャリッジ移動機構31は、キャリッジ30を左右方向Yに移動させる機構である。図2に示すように、キャリッジ移動機構31は、ガイドレール32と、図示しないベルトと、図示しない左右のプーリと、左右移動用モータ33(図4参照)と、を備えている。ガイドレール32は、ケーシング12に固定され、左右方向Yに延びている。ガイドレール32は、テーブル20よりも上方に設けられている。図2および図3に示すように、キャリッジ30は、待機時、すなわち、記録媒体2への印刷処理等が行われていないときには、ガイドレール32の右端部分(ホームポジション)に位置している。
【0021】
ガイドレール32には、キャリッジ30が摺動自在に係合している。キャリッジ30には、無端状のベルトが固定されている。ベルトは、ガイドレール32の左右に配置されたプーリに巻き掛けられている。一方のプーリには、左右移動用モータ33が取り付けられている。左右移動用モータ33は制御装置60と電気的に接続されており、制御装置60によって制御される。左右移動用モータ33が駆動するとプーリが回転し、ベルトが走行する。これにより、キャリッジ30がガイドレール32に沿って左右方向Yに移動する。
【0022】
吐出装置40は、記録媒体2に向かって光硬化性インクを吐出するものである。吐出装置40はキャリッジ30に設けられている。吐出装置40の数は、ここでは6つである。吐出装置40は、記録媒体2と対向する側の面(ここでは下面)に、光硬化性インクを吐出するノズル(図示せず)を備えている。吐出装置40は、制御装置60と電気的に接続されている。吐出装置40のノズルからのインクの吐出は、制御装置60によって制御される。吐出装置40は、可撓性を有するインクチューブ(図示せず)によって、インクタンク41とそれぞれ連通されている。
【0023】
インクタンク41は、光硬化性インクを貯留する容器である。インクタンク41は、キャリッジ30には搭載されず、ケーシング12の内部空間に静置されている。インクタンク41は、例えばインクカートリッジである。インクタンク41には、それぞれ、紫外線(波長:10~400nm)が照射されると硬化する性質を有する紫外線硬化インク(UVインク)が貯留されている。インクタンク41は、ここでは6つである。インクタンク41には、それぞれ成分(例えば着色剤の種類)の異なるインクが貯留されている。ただし、インクタンク41の数は一例に過ぎず、特に限定されない。
【0024】
光照射装置50は、記録媒体2上に吐出された光硬化性インクに光を照射して、当該光硬化性インクを硬化させる装置である。光照射装置50はキャリッジ30に設けられている。光照射装置50の数は、ここでは2つである。2つの光照射装置50は、ここでは6つの吐出装置40を左右両端から挟み込むように配置されている。ただし、光照射装置50の数や配置は一例に過ぎず、特に限定されない。光照射装置50は、ここでは紫外線を照射する紫外線ランプ(UVランプ)である。光照射装置50は、例えばLED(Light Emitting Diode)ランプである。光照射装置50は、制御装置60と電気的に接続されている。光照射装置50の点灯(ON)・消灯(OFF)および照射強度は、制御装置60によって制御される。
【0025】
制御装置60は、プリンタ10の各部の動作を制御するものである。図1に示すように、本実施形態において、制御装置60はケーシング12の内部に配置されたプリンタ10専用のコンピュータである。制御装置60は、例えばマイクロコンピュータである。ただし、制御装置60の機能の一部または全部は、ケーシング12の外部に配置され、有線または無線を介してプリンタ10と通信可能に接続された汎用のパーソナルコンピュータ(例えば、後述する印刷管理装置70)等で実行されてもよい。
【0026】
制御装置60のハードウェア構成は特に限定されないが、例えば、印刷管理装置70から制御情報を受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリ等の記憶装置と、を備えている。
【0027】
図4は、印刷システム1の機能ブロック図である。図4に示すように、制御装置60は、テーブル移動機構21の前後移動用モータ21dと、キャリッジ移動機構31の左右移動用モータ33と、吐出装置40と、光照射装置50とに、それぞれ通信可能に接続されており、これらを制御するように構成されている。制御装置60は、受信部61と、印刷処理を実行する印刷制御部62と、ポストキュア処理を実行するポストキュア制御部63と、を備えている。制御装置60の各部は、相互に通信可能に構成されている。
【0028】
受信部61は、印刷管理装置70から制御情報を受信する制御部である。制御情報は、印刷処理用の印刷制御情報と、ポストキュア処理用のポストキュア制御情報と、を含んでいる。印刷制御情報は、印刷処理の開始を指定する印刷開始コマンドと、印刷設定情報と、記録媒体2上に画像を形成するための印刷データと、を含んでいる。印刷設定情報は、例えば、使用する光硬化性インクの種類、印刷処理時のテーブル20の移動幅(ライン幅)、印刷処理時のキャリッジ30の移動速度、印刷処理時の光照射装置50の照射強度等の情報を含んでいる。印刷データは、後述する印刷管理装置70で画像データに基づいて作成される。印刷データは、印刷時のキャリッジ30の移動(言い換えると、吐出装置40および光照射装置50の移動)と、吐出装置40からの光硬化性インクの吐出と、光照射装置50からの光の照射と、を規定するものである。印刷データは、座標等の値で指定されたキャリッジ30の移動経路の情報(パス情報)を含んでいる。
【0029】
ポストキュア制御情報は、印刷処理の後、ポストキュア処理の開始を指定するポストキュア開始コマンドと、ポストキュア設定情報と、記録媒体2上の光硬化性インクに追加で光を照射するためのポストキュアデータと、を含んでいる。ポストキュア設定情報は、例えば、ポストキュア処理時のテーブル20の移動幅(ライン幅)、ポストキュア処理時のキャリッジ30の移動速度、ポストキュア処理時の光照射装置50の照射強度等の情報を含んでいる。ポストキュア処理におけるキャリッジ30の移動速度は、印刷処理におけるキャリッジ30の移動速度よりも遅く設定されていてもよい。これにより、印刷処理よりも時間は長くかかるが、記録媒体2上の光硬化性インクに十分に光を照射することができ、硬化不良を低減することができる。ポストキュア処理における光照射装置50の照射強度は、印刷処理における光照射装置50の照射強度よりも高く設定されていてもよい。これにより、記録媒体2上の光硬化性インクに十分に光を照射することができ、硬化不良を低減することができる。ポストキュアデータは、典型的には後述する印刷管理装置70で画像データに基づいて作成される。ポストキュアデータは、ポストキュア処理時のキャリッジ30の移動(言い換えると、光照射装置50の移動)と、光照射装置50からの光の照射と、を規定するものである。ポストキュアデータは、座標等の値で指定されたキャリッジ30の移動経路の情報(パス情報)を含んでいる。ポストキュアデータのパス情報は、印刷データのパス情報と同じであってもよい。
【0030】
印刷制御部62は、受信部61が受信した印刷制御情報に基づいて、テーブル20上の記録媒体2に画像を印刷する印刷処理を実行する制御部である。印刷処理では、例えば吐出装置40から光硬化性インクが吐出され、かつ、光照射装置50から光が照射される。印刷制御部62は、テーブル移動機構21とキャリッジ移動機構31とを制御して、テーブル20に載置された記録媒体2と、キャリッジ30に搭載された吐出装置40および光照射装置50と、の相対的な位置関係を変化させる。詳しくは、印刷制御部62は、テーブル移動機構21の前後移動用モータ21dを制御して、テーブル20を前後方向Xに移動させる。印刷制御部62は、キャリッジ移動機構31の左右移動用モータ33を制御して、キャリッジ30を左右方向Yに移動させる。印刷制御部62は、吐出装置40を制御して、記録媒体2に向かって光硬化性インクを吐出させる。印刷制御部62は、光照射装置50を制御して、記録媒体2上の光硬化性インクに向かって光を照射する。
【0031】
ポストキュア制御部63は、印刷制御部62が印刷処理を実行した後に、受信部61が受信したポストキュア制御情報に基づいて、記録媒体2上の光硬化性インクに追加で光を照射するポストキュア処理を実行する制御部である。ポストキュア処理では、光照射装置50から光が照射されるが、吐出装置40から光硬化性インクは吐出されない。ポストキュア制御部63は、印刷制御部62と同様に、テーブル20に載置された記録媒体2と、キャリッジ30に搭載された光照射装置50と、の相対的な位置関係を変化させる。ポストキュア制御部63は、光照射装置50を制御して、記録媒体2上の光硬化性インクに向かって光を照射する。
【0032】
次に、印刷管理装置70について説明する。印刷管理装置70は、プリンタ10に制御情報を送信するものである。印刷管理装置70は、典型的にはコンピュータであり、例えば制御装置60と同様に、I/FとCPUとROMとRAMと記憶装置とを備えている。図1に示すように、本実施形態において、印刷管理装置70は、プリンタ10に接続された外部装置である。ただし、印刷管理装置70は、プリンタ10の内部に設けられていてもよい。また、印刷管理装置70は、コンピュータのCPUを印刷管理装置70として動作させるコンピュータプログラムであってもよい。かかるコンピュータプログラムは、印刷管理装置70の動作が書き込まれ、コンピュータで読み取り可能な不揮発性の記録媒体であっていてもよい。
【0033】
図1に示すように、印刷管理装置70は、操作部70aと、表示画面70bと、を備えている。操作部70aは、ユーザーインターフェイスである。操作部70aは、ユーザが、画像データ、印刷設定情報、ポストキュア設定情報等を、入力または指定するためのものである。操作部70aは、例えば、カーソルキーや数字入力キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスと、を備えている。ただし、操作部70aは、ホストコンピュータ等の外部機器や、有線または無線で接続されたネットワークから、必要な情報等を取り込み可能なように構成されていてもよい。ユーザが入力した情報等は、記憶部77(図4参照)に記憶される。表示画面70bには、画像データ、印刷制御情報、ポストキュア制御情報等が表示される。表示画面70bは、例えば液晶ディスプレイである。
【0034】
図4に示すように、印刷管理装置70は、取得部71と、ラスタライズ処理部72と、ポストキュア時間算出部73と、ラスタライズ時間算出部74と、画像データ選択部75と、通知部76と、記憶部77と、送信部78と、を備えている。送信部78は、上記した印刷制御情報とポストキュア制御情報とを含む制御情報を、プリンタ10の制御装置60に送信する制御部である。印刷管理装置70の各部は、相互に通信可能に構成されている。印刷管理装置70の各部は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。例えば上述した各部は、1つまたは複数のプロセッサによって実現されるものであってもよいし、回路に組み込まれるものであってもよい。印刷管理装置70の各部は、ここではネイティブアプリケーションで構成されている。ただし、印刷管理装置70の一部または全部は、ウェブアプリケーションで構成されていてもよい。
【0035】
取得部71は、記録媒体2に印刷される画像のデータ(画像データ)を取得する制御部である。画像データは、例えばホストコンピュータ等の外部機器において、画像データ作成用のコンピュータプログラム(所謂、画像作成ソフトウェア)で作成された画像ファイルである。画像データは、例えば、ページ記述言語のPost Scriptで記述されたEPS(Encapsulated PostScript)ファイルや、PDF(Portable Document Format)ファイルである。プリンタ10で複数の印刷物を連続して作成する場合、典型的には複数の画像データがまとめて取得される。取得された画像データは、例えば取得された順番に印刷優先順位が付与され、記憶部77に記憶される。記憶部77には、第1の印刷物に対応する(言い換えれば、第1の記録媒体2に印刷する)画像を表す第1の画像データと、第2の印刷物に対応する(言い換えれば、第2の記録媒体2に印刷する)画像を表す第2の画像データと、がストックされる。後述するように、記憶部77にストックされた画像データは、適宜にラスタライズ処理部72に送られる。
【0036】
ラスタライズ処理部72は、取得部71で取得した様々な形式の画像データを、プリンタ10が読み込み可能な形式に変換(ラスタライズ処理)して、印刷データを作成する制御部である。ラスタライズ処理部72は、ポストキュアデータを作成する制御部でもありうる。ラスタライズ処理部72は、例えば、印刷管理装置70にインストールされたラスタイメージプロセッサ(RIP:Raster Image Processor)等のコンピュータプログラムで構成されている。印刷データおよびポストキュアデータは、例えばラスター形式のデータである。
【0037】
印刷データおよびポストキュアデータは、従来と同様の手順で作成することができる。例えば、まず画像データをラスタライズ処理して印刷データのファイルを作成し、記憶部77に記憶させる。印刷データでは、画像データに基づいて、記録媒体2の印刷領域上を吐出装置40および光照射装置50が通過するように、キャリッジ30の移動が規定されている。次に、作成した印刷データのファイルをコピーし、吐出装置40の制御をOFFに設定したうえで、ポストキュアデータとして別名でファイルを保存する。ポストキュアデータでは、画像データに基づいて、記録媒体2の光硬化性インクが吐出された光照射領域上を光照射装置50が通過するように、キャリッジ30の移動が規定されている。なお、印刷データをコピーしてポストキュアデータを作成する場合は、印刷領域と光照射領域とが一致している。印刷データおよびポストキュアデータは、送信部78を介してプリンタ10の制御装置60に送信される。印刷データおよび/またはポストキュアデータは、記憶部77に記憶されてもよい。
【0038】
ポストキュア時間算出部73は、ポストキュア処理の所要時間(ポストキュア時間)Tpを算出する制御部である。ポストキュア時間算出部73は、プリンタ10が第1の印刷物のポストキュア処理を行う前、あるいは、プリンタ10が第1の印刷物のポストキュア処理を行っている時、例えば、送信部78からプリンタ10に対して第1の印刷物のポストキュア処理の開始を指定するポストキュア開始コマンドが送信された後のタイミングで、第1の印刷物のポストキュア時間Tpの算出を行う。ポストキュア時間Tpは、画像データ選択部75に送られる。ポストキュア時間Tpは、記憶部77に記憶されてもよい。
【0039】
ポストキュア時間Tpは、例えば、ラスタライズ処理部72で作成された第1の画像データのポストキュアデータに基づいて、下記式(1)から算出することができる。すなわち、まず、キャリッジ30の1ラインあたりの所要時間(単位所要時間)を算出し、これに全ての光照射領域に光を照射するのにかかるラインの数を掛けることによって求めることができる。
ポストキュア時間Tp= W ÷ V × H ÷ H_ramp ・・・式(1)
ただし、Wは、光照射領域の左右方向Yの長さ[mm]であり、
Vは、光照射装置50の左右方向Yの移動速度[mm/sec]であり、
Hは、光照射領域の前後方向Xの長さ[mm]であり、
H_rampは、光照射装置50の前後方向Xの長さ(照射幅)[mm]である。
【0040】
ラスタライズ時間算出部74は、記憶部77に記憶された画像データのうち、ラスタライズ処理されていない(未ラスタライズの)画像データについて、ラスタライズ処理に要する時間(ラスタライズ時間)Trを見積もる制御部である。ラスタライズ時間算出部74は、プリンタ10が第1の印刷物のポストキュア処理を行う前、あるいは、プリンタ10が第1の印刷物のポストキュア処理を行っている時、例えば、送信部78からプリンタ10に対して第1の印刷物のポストキュア処理の開始を指定するポストキュア開始コマンドが送信された後のタイミングで、第2の印刷物に対応する未ラスタライズの画像データについてラスタライズ時間Trの見積もりを行う。ラスタライズ時間算出部74は、記憶部77に未ラスタライズの画像データが複数の記憶されている場合、それぞれの画像データに対してラスタライズ時間Trの見積もりを行ってもよい。ラスタライズ時間Trは、画像データと紐づけされて画像データ選択部75に送られる。ラスタライズ時間Trは、記憶部77に記憶されてもよい。
【0041】
本発明者の検討によれば、ラスタライズ時間Trは、例えば、画像データのファイル形式、画像解像度、画像オブジェクト数、等の設定条件によって大きく左右されうる。そのため、ポストキュア時間Tpのように一律の式によって算出することは困難であり、例えば以下のような方法で見積もることができる。特に限定されるものではないが、第1の態様では、記憶部77に、例えば下記の表1、表2のような対応表が予め記憶されている。この対応表では、上記した画像データの各種設定条件とラスタライズ時間Trとが対応づけられている。なお、表1、表2の対応表に記載されるラスタライズ時間Trは、あくまで一例であり、例えば処理を行うコンピュータの性能や環境等によっても変動しうる値である。このような対応表から画像データの設定条件に基づいて、自動でラスタライズ時間Trを取得することができる。
【0042】
【表1】
【表2】
【0043】
また、第2の態様では、ラスタライズ時間算出部74は、まず、画像データから一部分の画像をトリミングしてラスタライズ処理を実行し、一部分の画像のラスタライズ時間(単位ラスタライズ時間)を算出する。ラスタライズ時間算出部74は、次に、算出した単位ラスタライズ時間を、画像データが元のサイズとなるように換算する。これにより、画像データ全体のラスタライズ時間Trを見積もることができる。
【0044】
また、第3の態様では、ラスタライズ時間算出部74は、まず、画像データを所定の倍率に縮小してラスタライズ処理を実行し、縮小画像のラスタライズ時間(単位ラスタライズ時間)を算出する。ラスタライズ時間算出部74は、次に、算出した単位ラスタライズ時間を、画像データが元のサイズとなるように換算する。これにより、画像データ全体のラスタライズ時間Trを見積もることができる。
【0045】
画像データ選択部75は、未ラスタライズの画像データのなかから、第1の印刷物のポストキュア処理の最中にラスタライズ処理を行う画像データを選択する制御部である。好ましくは、画像データ選択部75は、第1の印刷物のポストキュア処理が終わるまでにラスタライズ処理が完了するような画像データを選択する制御部である。例えば、画像データ選択部75は、まず、ポストキュア時間算出部73で算出された(第1の印刷物の)ポストキュア時間Tpと、ラスタライズ時間算出部74で見積もられた(第2の印刷物に対応する画像データの)ラスタライズ時間Trとを対比する。そして、次の関係式:ラスタライズ時間Tr≦ポストキュア時間Tp;を満たす画像データを選択する。これにより、プリンタ10の稼働効率を下げずに、ラスタライズ処理の効率を上げることができ、印刷効率をより良く向上することができる。
【0046】
なお、上記関係式を満たす画像データが複数ある場合は、さらに次の関係式:(第1の未ラスタライズの画像データのラスタライズ時間Tr1+第2の未ラスタライズの画像データのラスタライズ時間Tr2)≦ポストキュア時間Tp;を満たすように、複数の画像データを選択してもよい。この場合、ラスタライズ処理を行う順番は、特に限定されない。例えば、記憶部77に記憶された印刷優先順位の高いものから順に、ラスタライズ処理を行ってもよい。あるいは、ラスタライズ時間Trの短いものから順に、ラスタライズ処理を行ってもよい。選択された1つまたは複数の画像データは、ラスタライズ処理部72に送られる。
【0047】
通知部76は、画像データ選択部75で画像データが選択されなかった場合、例えば、上記関係式を満たす画像データがなかった場合に、プリンタ10の表示部15あるいは印刷管理装置70の表示画面70bに、メッセージを表示する制御部である。通知部76は、例えば、上記関係式を満たす画像データがないため、ポストキュア処理の最中にラスタライズ処理を実行しない旨のメッセージを表示してもよい。通知部76は、例えば、「ポストキュア処理の最中にラスタライズ処理が終了しない可能性がありますが、ラスタライズ処理を実行しますか?」等のように、ユーザの判断を促すようなメッセージを表示してもよい。
【0048】
次に、印刷システム1を用いて印刷処理およびポストキュア処理を行い、第1の印刷物を作成する制御手順を説明する。図5は、制御手順の一例を時系列で示す模式図である。複数の印刷物を続けて作成する場合、ユーザはまず、例えば図示しない外部機器等から、取得部71を介して、第1の印刷物に印刷するための第1の画像データと、第2の印刷物に印刷するための第2の画像データとを印刷管理装置70に入力する。入力された画像データは、記憶部77にストックされる。また、ユーザは、印刷管理装置70の操作部70aから、印刷設定情報とポストキュア設定情報とを入力または指定する。これらの情報は、記憶部77に記憶される。
【0049】
図5に示すように、本実施形態では、まず、印刷管理装置70のラスタライズ処理部72で、第1の画像データのラスタライズ処理が実行される(手順a)。これにより、第1の印刷物を作成するための印刷データとポストキュアデータとが作成される。次に、送信部78から、第1の印刷物を作成するための印刷開始コマンドと印刷設定情報とがプリンタ10に送信される(手順b)。送信された情報は、受信部61を介してプリンタ10に受信される。続けて、送信部78から、印刷データがプリンタ10に連続的に送られる(手順c)。プリンタ10では、印刷制御情報と印刷データとに基づいて、印刷処理が実行される(手順d)。これにより、第1の記録媒体2上の印刷領域に、第1の印刷データに基づく画像が印刷され、印刷処理が終了する。
【0050】
次に、印刷管理装置70の送信部78から、第1の印刷物を作成するためのポストキュア開始コマンドとポストキュア設定情報とがプリンタ10に送信される(手順e)。続けて、送信部78から、ポストキュアデータがプリンタ10に送られる。なお、ポストキュアデータが、印刷データのファイルをコピーして作成されたものである場合、ポストキュアデータの送信は省略又は簡略化することができる。このため、図5では、ポストキュアデータの送信の手順について図示を省略している。プリンタ10では、ポストキュア設定情報とポストキュアデータとに基づいて、ポストキュア処理が実行される(手順f)。これにより、第1の記録媒体2上の光照射領域に、追加で光が照射される。本実施形態では、プリンタ10でポストキュア処理が行われている最中に、これと並行して印刷管理装置70のラスタライズ処理部72で第2の画像データのラスタライズ処理が実行される(手順g)。これについて詳しく説明する。
【0051】
図6は、ポストキュア処理の際の印刷管理装置70の制御手順の一例を示すフローチャートである。この制御手順は、ポストキュア時間の算出処理(ステップS1)と、ラスタライズ時間の見積もり処理(ステップS2)と、画像データの選択処理(ステップS3)と、画像データのラスタライズ処理(ステップS4)と、を包含する。上述の通り、プリンタ10では、ポストキュア開始コマンドを受信するとポストキュア処理が開始される。ポストキュア制御部63は、記録媒体2の光照射領域でキャリッジ30を移動させると共に、光照射装置50から記録媒体2に向かって光を照射させる。
【0052】
ステップS1では、ポストキュア処理の所要時間(ポストキュア時間)Tpの算出処理が実行される。ポストキュア時間算出部73は、ポストキュア時間Tpの算出処理を実行するように構成またはプログラムされている。ポストキュア時間Tpは、ポストキュアデータに基づいて、例えば上記した式(1)から自動で算出される。そして、ステップS2に進む。
【0053】
ステップS2では、ラスタライズ処理されていない(未ラスタライズの)画像データについて、ラスタライズ処理に要する時間(ラスタライズ時間)Trの見積もり処理が実行される。ラスタライズ時間算出部74は、ラスタライズ時間Trの見積もり処理を実行するように構成またはプログラムされている。ラスタライズ時間算出部74は、例えば上記した第1の態様、第2の態様および第3の態様のいずれかの方法で、ラスタライズ時間Trを自動で見積もる。そして、ステップS3に進む。
【0054】
ステップS3では、未ラスタライズの画像データのなかから、ポストキュア処理の最中にラスタライズ処理を行う画像データを選択する、画像データの選択処理が実行される。画像データ選択部75は、画像データの選択処理を実行するように構成またはプログラムされている。画像データ選択部75は、上記したように、例えばステップS1で算出されたポストキュア時間Tpと、ステップS2で見積もられたラスタライズ時間Trと、を対比して、1つまたは複数の画像データを選択する。そして、ステップS4に進む。
【0055】
ステップS4では、ステップS3で選択された1つまたは複数の画像データについて、ラスタライズ処理が実行される。ラスタライズ処理部72は、ラスタライズ処理を実行するように構成またはプログラムされている。このラスタライズ処理は、好適にはプリンタ10でポストキュア処理が終了するのと略同時かそれよりも早く終了する。そして、印刷管理装置70の制御が終了する。
【0056】
以上のように、本実施形態の印刷システム1では、第1の印刷物についてポストキュア処理を実行している最中に、並行して第2の印刷物の画像データに対してラスタライズ処理が行われ、第2の印刷データの生成が開始される。好ましくは、第2の印刷データの生成が完了される。このことにより、印刷管理装置70のアイドルタイムを低減して、印刷管理装置70の稼働効率を向上することができる。また、第1の印刷物の後に第2の印刷物を作成したい場合には、タイムラグを減らして迅速に印刷を開始することができる。好ましくは、すでに第2の印刷データが生成されているので、タイムラグなしで印刷をすぐに開始することができる。したがって、印刷システム1では、プリンタ10の稼働効率を高めることができ、円滑かつ効率的に印刷を行うことができる。また、ユーザにとって退屈なラスタライズ処理の待ち時間を低減することができ、ユーザの満足度を向上することができる。
【0057】
本実施形態において、印刷管理装置70は、ポストキュア処理の所要時間を算出するポストキュア時間算出部73と、ラスタライズ処理に要する時間を見積もるラスタライズ時間算出部74と、をさらに備える。ラスタライズ処理部72は、第2の印刷物に対応する画像データのラスタライズ処理に要する時間(ラスタライズ時間)Trが、第1の印刷物のポストキュア処理の所要時間(ポストキュア時間)Tp以下である場合、ポストキュア制御部63が第1の印刷物のポストキュア処理を実行しているときに、第2の印刷物に対応する画像データをラスタライズ処理するように構成されている。これにより、プリンタ10の稼働効率を下げずに、ラスタライズ処理の効率を上げることができ、印刷効率をより良く向上することができる。
【0058】
本実施形態において、印刷管理装置70は、画像データの設定条件と、ラスタライズ処理に要する時間(ラスタライズ時間)と、の対応関係を示す対応表を記憶する記憶部をさらに備える。ラスタライズ時間算出部74は、画像データの設定条件に基づいて、対応表からラスタライズ処理に要する時間を取得する。これにより、ラスタライズ時間の計算が不要となり、ラスタライズ時間算出部の制御の負荷を軽減することができる。
【0059】
本実施形態において、プリンタ10は、記録媒体2を載置するテーブル20と、テーブル20よりも上方において、左右方向Yに延びたガイドレール32と、ガイドレール32に係合し、吐出装置40と光照射装置50とを搭載するキャリッジ30と、をさらに備える。これにより、キャリッジ30を左右方向Yに移動させることで、吐出装置40および光照射装置50を一体的に左右方向Yに移動させることができる。よって、印刷処理のときもポストキュア処理のときも、キャリッジ30の移動を同じように制御すればよく、印刷処理およびポストキュア処理の制御が容易となる。
【0060】
本実施形態において、ポストキュア処理におけるキャリッジ30の移動速度は、印刷処理におけるキャリッジ30の移動速度よりも遅い。これにより、光硬化性インクに十分に光を照射することができ、硬化不良を低減することができる。
【0061】
以上、本発明を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、本発明はその主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
【0062】
上述した実施形態では、吐出装置40と光照射装置50とがキャリッジ30に搭載され、左右方向Yに往復移動(シャトル移動)しながら印刷動作が行われる、所謂シャトルタイプ(シリアルタイプ)のプリンタ10について説明したが、これには限定されない。ここに開示される技術は、ラインヘッドを備え、ラインヘッドが固定された状態で印刷動作が行われる、所謂ラインタイプのプリンタにも同様に適用することができる。
【0063】
上述した実施形態では、記録媒体2を載置するテーブル20が前後方向Xに移動し、キャリッジ30が左右方向Yに移動するように構成されていたが、これには限定されない。キャリッジ30と記録媒体2との移動は相対的なものであり、そのどちらが前後方向Xまたは左右方向Yに移動してもよい。また、例えばキャリッジ30は移動不能に配置され、記録媒体2を載置するテーブル20が前後方向Xおよび左右方向Yの両方向に移動可能なように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 印刷システム
10 プリンタ
40 吐出装置
50 光照射装置
62 印刷制御部
63 ポストキュア制御部
70 印刷管理装置
71 取得部
72 ラスタライズ処理部
73 ポストキュア時間算出部
74 ラスタライズ時間算出部
75 画像データ選択部
図1
図2
図3
図4
図5
図6