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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】タイヤ加硫金型
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/02 20060101AFI20240416BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20240416BHJP
   B29L 30/00 20060101ALN20240416BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C35/02
B29L30:00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020153698
(22)【出願日】2020-09-14
(65)【公開番号】P2022047750
(43)【公開日】2022-03-25
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小原 将明
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】実開平4-126838(JP,U)
【文献】特開2017-154282(JP,A)
【文献】特開2014-133402(JP,A)
【文献】特開2017-109441(JP,A)
【文献】特開2011-031519(JP,A)
【文献】実開昭61-105115(JP,U)
【文献】特開2014-172360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00-33/76
B29C 35/00-35/18
B29L 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの外表面に標識又は模様を転写形成するための薄板と、
前記薄板が装着される装着溝と、
前記薄板と前記装着溝の底面との間に配置される嵩上げ部材と、
前記薄板と前記嵩上げ部材を前記装着溝へ固定するための締結部材と、を備え、
前記薄板は、前記装着溝の底面へ向かって突出する凸状膨出部を有し、
前記嵩上げ部材は、前記薄板の縁に沿って配置され、前記凸状膨出部を取り巻く中空領域を有する、タイヤ加硫金型。
【請求項2】
前記装着溝は、タイヤ周方向の長さがタイヤ径方向の長さよりも大きい長手形状をなし、
前記嵩上げ部材は、ばね性を有するように形成され、前記装着溝の長手方向に延びる一対の長手方向側壁へ加圧接触されて前記装着溝へ装着される、請求項1に記載のタイヤ硫金型。
【請求項3】
前記装着溝の短手方向の幅は、前記長手方向に一定であり、
前記嵩上げ部材は、前記装着溝の長手方向側壁に接触する一対の長手方向部材と、前記一対の長手方向部材の端部同士を接続する一対の短手方向部材と、を有し、
前記長手方向部材の幅は一定であり、前記長手方向部材の長さは前記中空領域の前記長手方向の長さを超える、請求項2に記載のタイヤ加硫金型。
【請求項4】
前記短手方向部材の幅は、前記長手方向部材の幅の2倍以上である、請求項3に記載のタイヤ加硫金型。
【請求項5】
前記短手方向部材の前記短手方向の中央部には、前記短手方向部材の内縁から外縁へ向かって前記長手方向に延びる切込みが形成される、請求項3又は4に記載のタイヤ加硫金型。
【請求項6】
前記切込みと前記短手方向部材の外縁により形成される幅狭領域の幅は、前記長手方向部材の幅より小さい、請求項5に記載のタイヤ加硫金型。
【請求項7】
前記一対の長手方向部材及び前記一対の長手方向側壁は、タイヤ径方向外側に凸となる円弧状をなし、
前記一対の長手方向部材のうちタイヤ径方向外側の長手方向部材の曲率半径は、前記一対の長手方向側壁のうちタイヤ径方向外側の長手方向側壁の曲率半径よりも小さく、かつ前記一対の長手方向部材のうちタイヤ径方向内側の長手方向部材の曲率半径は、前記一対の長手方向側壁のうちタイヤ径方向内側の長手方向側壁の曲率半径よりも大きい、請求項3~6の何れか1項に記載のタイヤ加硫金型。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイヤ加硫金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、タイヤ成型面の装着溝にステンシルプレート(「セリアルプレート」ともいう)を固定したタイヤ加硫金型を使用してタイヤを加硫成型し、タイヤの外表面に凹凸状の標識を形成する方法が知られている。ここで、ステンシルプレートを装着溝に固定する方法として、ねじを使用する方法が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
ステンシルプレートは、その両端がねじによって装着溝に固定されるが、ステンシルプレートと装着溝との間に隙間があると、その隙間からゴムが流れ込み、加硫成型後のタイヤにピンチやバリが形成される。バリは、タイヤ表面に余分な被膜が形成されたものであり、標識の識別性を低下させる原因となる。ピンチは、タイヤの表面に生じる意図しない段差であり、タイヤの外観不良の原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-172360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的は、加硫成型後のタイヤにおける標識の識別性を確保し、外観不良を抑制できるタイヤ加硫金型を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のタイヤ加硫金型は、タイヤの外表面に標識又は模様を転写形成するための薄板と、
前記薄板が装着される装着溝と、
前記薄板と前記装着溝の底面との間に配置される嵩上げ部材と、
前記薄板と前記嵩上げ部材を前記装着溝へ固定するための締結部材と、を備え、
前記薄板は、前記装着溝の底面へ向かって突出する凸状膨出部を有し、
前記嵩上げ部材は、前記薄板の縁に沿って配置され、前記凸状膨出部を取り巻く中空領域を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】タイヤ子午線断面に沿ったタイヤ加硫金型の断面図
図2図1のX矢視平面図
図3図2における線C1上での断面図
図4図2の薄板が装着溝に装着される前の状態を模式的に示す断面図
図5】嵩上げ部材の一例を示す平面図
図6図5(a)に示す嵩上げ部材のVI領域拡大図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、タイヤ加硫金型における一実施形態について、図1図6を参照しながら説明する。なお、各図において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0009】
図1を参照しながら、タイヤの加硫成型に用いられるタイヤ加硫金型について説明する。図1は、タイヤ子午線断面に沿ったタイヤ加硫金型10(以降、金型10という)の断面を示す。この金型10は型閉め状態にある。タイヤTは、タイヤ幅方向を上下に向けてセットされる。図1において、左方向はタイヤ径方向外側、右方向はタイヤ径方向内側である。
【0010】
金型10は、タイヤTのトレッドを成型するトレッド型部11と、タイヤTのサイドウォールを成型する一対のサイド型部12,13と、タイヤTのビードが嵌合される一対のビードリング14,15とを備える。金型10は、キャビティ16にセットされたタイヤTの外表面に接するタイヤ成型面1を備える。タイヤ成型面1は、トレッド型部11の内面、サイド型部12,13の内面、及び、ビードリング14,15の内面を含む。図示を省略しているが、トレッド型部11の内面には、タイヤTのトレッドにトレッドパターンを形成するための凹凸部が設けられている。
【0011】
トレッド型部11の内面の材料としては、アルミニウム材が例示される。このアルミニウム材は、純アルミ系の材料のみならずアルミニウム合金を含む概念であり、例えばAl-Cu系、Al-Mg系、Al-Mg-Si系、Al-Zn-Mg系、Al-Mn系、Al-Si系が挙げられる。サイド型部12,13の内面及びビードリング14,15の内面の材料としては、一般構造用圧延鋼材(例えばSS400)などの鋼材が例示される。
【0012】
金型10は、キャビティ16にセットされたタイヤTの外表面に接するタイヤ成型面1と、タイヤ成型面1に設けられた装着溝2と、タイヤTの外表面に凹凸を形成する凹凸形成部を有し、装着溝2に装着される薄板3(「ステンシルプレート」ともいう)とを備える。装着溝2は、タイヤ成型面1の一部を局所的に窪ませることにより設けられている。本実施形態において、装着溝2は、タイヤ成型面1であるサイド型部12の内面に設けられている。
【0013】
図2は、図1のX矢視平面図であり、図1の下側に位置するサイド型部12の内面における、装着溝2に嵌め込まれた薄板3が示されている。図2では、左右方向がタイヤ周方向に相当し、上方向がタイヤ径方向外側、下方向がタイヤ径方向内側である。
【0014】
装着溝2及び薄板3は、タイヤ周方向の長さがタイヤ径方向の長さよりも長い長手形状を有する。本実施形態において、装着溝2及び薄板3の長手方向LDはタイヤ周方向に沿う方向であり、短手方向WDはタイヤ径方向に沿う方向である。本実施形態において、装着溝2及び薄板3は、タイヤ周方向に沿って円弧状に湾曲した形状であるが、これに限られず、長手方向LDが直線的に延びた形状でもよい。
【0015】
図3は、図2における線C1上の断面図を示している。図4は、図2における線C1上の断面において、薄板3を装着溝2に装着する前の状態を示している。なお、線C1は、装着溝2又は薄板3の短手方向WDにおける中心を通る線である。図3及び図4において、左右方向が装着溝2及び薄板3の長手方向LDに相当する。
【0016】
装着溝2は、長手方向LDに延びる一対の第1長手方向側壁21及び第2長手方向側壁22を有する。第1長手方向側壁21及び第2長手方向側壁22は、何れもタイヤ径方向外側に凸となる円弧状を呈する。第1長手方向側壁21及び第2長手方向側壁22は、平面視で何れも長手方向LDに沿って湾曲した形状である。また、装着溝2は、一対の第1長手方向側壁21及び第2長手方向側壁22の端部同士を接続する一対の第1短手方向側壁23及び第2短手方向側壁24を有する。第1短手方向側壁23及び第2短手方向側壁24は、平面視で半円弧状を呈する。また、装着溝2は、平坦な底面20を有する。
【0017】
装着溝2の短手方向WDの幅W2は、長手方向LDに一定である。本開示において、「一定」とは、厳密な意味での一定に限るものではなく、厳密に一定である場合だけでなく、±5%以下の変動がある場合も含む(以下も同様)。
【0018】
薄板3は、タイヤの外表面に凹凸を形成可能な領域である凹凸形成部5を有する。タイヤの外表面に形成される凹凸は、例えば、タイヤサイズやロードインデックス、メーカー名、製造年週などを表示した文字や記号等からなる標識、又は、模様やデザインを示す。未加硫のタイヤが、金型10におけるタイヤ成型面1の装着溝2に装着された薄板3に押し当てられ、凹凸形成部5の凹凸が加硫成型後のタイヤ表面に転写される。図2では、「TT」という文字列からなる標識が凹部34で形成される例を示す。凹部34の詳細は後で説明する。
【0019】
薄板3は、装着溝2にねじ4(締結部材に相当する)を介して着脱自在に装着される。薄板3が製造年週を表す標識である場合などには、定期的に薄板3が取り換えられる。
【0020】
本開示において、ねじ4とは、螺旋状の溝が設けられた棒と当該棒の一端に設けられた頭部とを有する締結要素全般を指し、ボルトやビスを含むものである。本実施形態では、ねじ4の頂面41bには、プラスドライバの先端を挿入するための十字の窪みを有するが、これに限られない。例えば、ねじ4の頂面41bに、マイナスドライバの先端を挿入するためのすり割り状の窪みや、六角レンチの先端を挿入するための六角形状の窪みを有していても、構わない。また、係る窪みを有していなくてもよく、例えば、ねじ頭部側から見たときのねじ頭部を六角形状に形成し、該六角形状のねじ頭部を回すようにしてもよい。
【0021】
本実施形態のねじ4は、平頭ねじである。図3及び図4に示すように、平頭ねじは、頭部41の底面41aがねじ軸方向に対して垂直の平坦面をなす。ねじ4の頭部41の厚みは、0.5~1.5mmが好ましい。締結時において、頭部41の底面41aは、タイヤ成型面1よりも装着溝2の底面20に近い側に位置する。また、ねじ4の頭部41は、タイヤ成型面1よりもキャビティ16側へ突出し、頭部41の頂面41bは、タイヤ成型面1よりもキャビティ16側に位置する。頭部41のタイヤ成型面1からの突出量T41(図3参照)は、1mm以下が好ましい。突出量T41が大きくなると、加硫成型時にサイドウォールの表層ゴムが局所的に薄くなり、オゾンに起因するクラック発生などタイヤ耐久性に影響を及ぼすおそれがある。
【0022】
ねじ4の頂面41bに設けられた窪みによって形成されるゴム隆起部の高さは、薄板3の凹部34によって形成される標識の高さ以下が好ましい。これにより、形成される標識の視認性を向上できる。
【0023】
また、ねじ4の頭部41の直径は、薄板3の短手方向WDの幅W3の50~100%であるのが好ましい。頭部41の直径が小さいと薄板3を保持する力が弱くなり、頭部41の直径が大きいと、装着溝2内に頭部41が収まらず、薄板3とねじ4の接触性悪化により薄板3を保持する力が損なわれる。
【0024】
薄板3の長手方向LDの長さL3は、装着溝2の長手方向LDの長さL2より僅かに小さい程度である。なお、薄板3の長さL3及び装着溝2の長さL2は、線C1上での長さである。
【0025】
薄板3の短手方向WDの幅W3は、装着溝2の短手方向WDの幅W2より僅かに小さい程度である。そのため、装着溝2と薄板3との隙間からゴムが入り込みにくい。なお、装着溝2の長手方向LDの長さL2は、装着溝2の短手方向WDの幅W2の5倍以上とするのが好ましい。
【0026】
薄板3は、長手方向LDの両端部に、ねじ4を取り付けるための貫通孔39を有している。貫通孔39は丸穴である。ねじ4は、貫通孔39を介して、装着溝2の底面20にあるねじ穴25に螺着される。貫通孔39の穴径は、ねじ4の直径に対し0.5~1.0mm程度大きい。装着溝2の溝深さD2は、例えば、1.2mmに設定される。
【0027】
薄板3は、キャビティ16に対向する正面31と、装着溝2の底面20に対向する背面32と、を有する。加硫成型時には、薄板3の正面31にタイヤTの外表面が押し当てられ、凹凸形成部5によって標識等がタイヤTの外表面に転写形成される。正面31及び背面32は、凹凸形成部5の凹凸を除いて平面状である。正面31は、タイヤ成型面1よりも装着溝2の底面20に近い。
【0028】
本実施形態では、正面31に、タイヤの外表面に凸状の標識を形成するための凹部34が設けられている。凹部34は、例えば、正面31側からのエンボス加工(浮き出し工法)により陥没形成される。背面32には、凹部34に対応した凸部36(凸状膨出部に相当する)がある。凸部36は、凹部34を陥没形成したことに伴って形成される。したがって、凸部36は、薄板3の背面32側から凹部34を見たものとなる。
【0029】
本実施形態における薄板3は、タイヤの外表面に凸状の標識を形成するためのものであるが、タイヤの外表面に凹状の標識や模様を形成するための凹凸部をさらに備えてもよい。
【0030】
薄板3は、軟鋼若しくは極軟鋼の板材で形成するとよい。軟鋼若しくは極軟鋼としては、JIS G3141に規定の冷間圧延鋼板及び鋼帯が例示される。薄板3の厚みT3(図4参照)は、加工の容易性等の観点から、例えば、1mm以下が好ましく、0.6mm以下がより好ましい。厚みT3は、薄板3に適度な強度を付与するなどの観点から、0.3mm以上が好ましい。
【0031】
装着溝2の底面20と、薄板3の凹凸形成部5を除く背面32との間に、嵩上げ部材6が位置する。嵩上げ部材6は、薄板3の縁に沿って配置され、凸部36を取り巻く中空領域60を有する。嵩上げ部材6は、薄板3を載置する底面20を部分的に高くするために使用される。嵩上げ部材6の厚みT6(図4参照)は、装着溝2の溝深さD2よりも小さい。また、嵩上げ部材6の厚みT6は、薄板3の厚みT3よりも大きい。
【0032】
嵩上げ部材6の厚みT6と凸部36の突出量T36(図4参照)は、同程度に設定される。嵩上げ部材6の厚みT6と凸部36の突出量T36が同程度であれば、タイヤ加硫成型時、嵩上げ部材6及び凸部36の先端36aのみがタイヤ加硫成型時に付与される成型圧力によって装着溝2の底面20に当接する。嵩上げ部材6の厚みT6が凸部36の突出量T36より僅かに小さい場合、加硫成型前は薄板3の背面32が嵩上げ部材6から僅かに離れているが、加硫成型時の成型圧力により薄板3が変形することで、薄板3の背面32と嵩上げ部材6との接触が実現される。一方、嵩上げ部材6の厚みT6が凸部36の突出量T36より僅かに大きい場合、加硫成型前は凸部36の先端36aが装着溝2の底面20から僅かに離れているが、加硫成型時の成型圧力により薄板3が変形することで、凸部36の先端36aと装着溝2の底面20との接触が実現される。一方、薄板3が加硫成型時の成型圧力によって大きく撓んで、凸部36の先端36a以外の箇所が装着溝2の底面20に接触することはない。このように嵩上げ部材6及び凸部36の先端36aのみがタイヤ加硫成型時に付与される成型圧力によって装着溝2の底面20に当接するように構成することで、嵩上げ部材6と薄板3の接触圧力を高めて、両者の界面からのゴム流入を抑制することができる。その結果、加硫成型後のタイヤにおける標識の識別性を確保し、外観不良を抑制できる。
【0033】
嵩上げ部材6の厚みT6は、凸部36の突出量T36の85%~125%であるのが好ましい。嵩上げ部材6の厚みT6がこの範囲であれば、加硫成型時に凸部36の先端36aと装着溝2の底面20との接触によって嵩上げ部材6と薄板3の接触が損なわれることを防止できる。なお、加硫成型時の成型圧力により薄板3が変形するため、嵩上げ部材6の厚みT6が凸部36の突出量T36の100%未満であっても加硫成型時に嵩上げ部材6と薄板3の接触は実現できるが、嵩上げ部材6の厚みT6は、凸部36の突出量T36の100%以上であるのがより好ましい。厚みT6は、例えば、0.6mm以上であるとよく、0.9mm以下であるとよい。本実施形態の嵩上げ部材6の厚みT6は、0.8mmである。
【0034】
また、凸部36の先端36aと装着溝2の底面20との間隔は、0.1mm以下が好ましく、0.05mm以下がより好ましい。凸部36の先端36aと装着溝2の底面20との間に0.1mmを越える隙間がある場合、加硫成型時の成型圧力により薄板3が過度に装着溝2に陥没することとなり、薄板3の外縁が浮き上がり、嵩上げ部材6との接触性が悪化する。
【0035】
嵩上げ部材6は、硬さHV300以上、及び引っ張り強さ900N/mm以上の特性を持つように処理された鉄系金属、例えばステンレスで形成されるのが好ましい。ここで、硬さは、JIS Z2244に準拠した硬さ試験により測定されるものを意味する。また、引っ張り強さは、JIS Z2241に準拠した引張試験により測定されるものを意味する。嵩上げ部材6がばね性を有するようにするため、嵩上げ部材6は弾性に富む材料で形成される。
【0036】
嵩上げ部材6は、装着溝2に装着される際に装着溝2の底面20に対向する面が凹又は凸となるように長手方向LDに湾曲しているのが好ましい。装着溝2の溝深さD2をタイヤ成型面1に対して同一深さとした場合、タイヤ赤道を通る平面からの距離は、装着溝2の長手方向LDの両端部と、装着溝2の長手方向LDの中央部とにおいて同一とはならない。よって、装着溝2の底面20に嵩上げ部材6を添わせるため、装着溝2を長手方向LDに湾曲させるのが好ましい。
【0037】
図5は、図4で示された嵩上げ部材6を平面図で示している。図5(a)は、装着溝2に非装着の状態(以下、非装着状態ともいう)の嵩上げ部材6の平面図であり、図5(b)は装着溝2に装着された状態(以下、装着状態ともいう)の嵩上げ部材6の平面図である。図6は、図5(a)に示す嵩上げ部材6のVI領域拡大図である。
【0038】
嵩上げ部材6は、中央に中空領域60を有する枠形状を呈する。嵩上げ部材6は、長手方向LDに延びる一対の第1長手方向部材61及び第2長手方向部材62と、一対の第1長手方向部材61及び第2長手方向部材62の端部同士を接続する一対の第1短手方向部材63及び第2短手方向部材64と、を有する。第1長手方向部材61及び第2長手方向部材62は、何れもタイヤ径方向外側に凸となる円弧状を呈する。第1長手方向部材61及び第2長手方向部材62は、平面視で何れも長手方向LDに沿って湾曲した形状である。
【0039】
図5(b)に示す装着状態の嵩上げ部材6において、第1長手方向部材61は、装着溝2の一対の第1長手方向側壁21及び第2長手方向側壁22のうちタイヤ径方向外側の第1長手方向側壁21に接触され、第2長手方向部材62は、装着溝2の一対の第1長手方向側壁21及び第2長手方向側壁22のうちタイヤ径方向内側の第2長手方向側壁22に接触される。なお、第1長手方向部材61が第1長手方向側壁21に接触するとは、第1長手方向側壁21の長手方向LDの全体に接触する形態のみならず、第1長手方向側壁21の長手方向LDの一部に接触する形態も含む。例えば、第1長手方向部材61の長手方向LDの両端が第1長手方向側壁21から僅かに離れていてもよい。同様に、第2長手方向部材62が第2長手方向側壁22に接触するとは、第2長手方向側壁22の長手方向LDの全体に接触する形態のみならず、第2長手方向側壁22の一部に接触する形態も含む。
【0040】
装着状態において、嵩上げ部材6の長手方向LDの長さL6は、装着溝2の長手方向LDの長さL2よりも僅かに小さくなるように形成される。すなわち、第1短手方向部材63と第1短手方向側壁23との間、又は第2短手方向部材64と第2短手方向側壁24との間には僅かな隙間がある。なお、嵩上げ部材6の長手方向LDの長さL6は、薄板3の長手方向LDの長さL3(図2参照)よりも僅かに小さい。
【0041】
図5(a)に示す非装着状態の嵩上げ部材6において、タイヤ径方向外側の第1長手方向部材61の曲率半径R61は、タイヤ径方向内側の第2長手方向部材62の曲率半径R62より小さい。ここで、曲率半径R61は、第1長手方向部材61の短手方向WD外側の外縁の曲率半径であり、曲率半径R62は、第2長手方向部材62の短手方向WD外側の外縁の曲率半径である。
【0042】
図5(a)には装着溝2の第1長手方向側壁21及び第2長手方向側壁22が2点鎖線で示されている。このように、非装着状態において、第1長手方向部材61の曲率半径R61は、装着溝2の第1長手方向側壁21の曲率半径R21よりも小さく、かつ第2長手方向部材62の曲率半径R62は、第2長手方向側壁22の曲率半径R22よりも大きい。そのため、非装着状態において、第1長手方向部材61の外縁と第2長手方向部材62の外縁との短手方向WDにおける距離は、装着溝2の幅W2よりも大きい。
【0043】
嵩上げ部材6は、ばね性を有しており、装着溝2に装着される際、装着溝2の幅W2より小さい幅となるように第1長手方向部材61と第2長手方向部材62を互いに近付ける向きに圧縮された状態にて装着溝2に挿入される。すなわち、嵩上げ部材6は、装着溝2の一対の長手方向側壁21,22に作用する圧縮応力が発生するように装着溝2へ装着される。これにより、嵩上げ部材6の装着溝2への装着及び固定が容易となり、また嵩上げ部材6の脱落を抑制できる。さらに、装着状態において、嵩上げ部材6の第1長手方向部材61と第2長手方向部材62が装着溝2の第1長手方向側壁21と第2長手方向側壁22にそれぞれ加圧接触されるため、第1長手方向部材61と第1長手方向側壁21との間、及び第2長手方向部材62と第2長手方向側壁22との間からのゴム流入を抑制することができる。
【0044】
第1長手方向部材61の曲率半径R61と第1長手方向側壁21の曲率半径R21の差は、20~100mmが好ましい。曲率半径R61と曲率半径R21の差がこの範囲であれば、第1長手方向部材61と第1長手方向側壁21が全体に亘って均一な接触圧で互いに接触する。また、第2長手方向部材62の曲率半径R62と第2長手方向側壁22の曲率半径R22の差は、例えば50~300mmが好ましい。曲率半径R62と曲率半径R22の差がこの範囲であれば、第2長手方向部材62と第2長手方向側壁22が全体に亘って均一な接触圧で互いに接触する。
【0045】
第1長手方向部材61の幅W61及び第2長手方向部材62の幅W62は、長手方向LDに一定である。第1長手方向部材61の幅W61及び第2長手方向部材62の幅W62を一定とすることで、第1長手方向部材61と第1長手方向側壁21の接触圧、及び第2長手方向部材62と第2長手方向側壁22の接触圧を均一にすることができる。なお、第1長手方向部材61の幅W61と第2長手方向部材62の幅W62は等しいのが好ましい。第1長手方向部材61の幅W61及び第2長手方向部材62の幅W62は、2mm以下が好ましく、1.5mm以下がより好ましく、本実施形態では例えば1.2mmである。第1長手方向部材61の幅W61及び第2長手方向部材62の幅W62が2mmを超えると、装着溝2へ装着する際に嵩上げ部材6を圧縮する力が大きくなり、装着性が劣る。
【0046】
また、装着状態において、中空領域60の短手方向WDの幅W60、すなわち第1長手方向部材61と第2長手方向部材62の短手方向WDにおける間隔は、長手方向LDに一定であるのが好ましい。
【0047】
第1短手方向部材63及び第2短手方向部材64は、何れも半円弧状である。第1短手方向部材63の外縁63a及び第2短手方向部材64の外縁64aの形状は、装着溝2の第1短手方向側壁23及び第2短手方向側壁24の形状と同様の形状を有するとよい。
【0048】
第1短手方向部材63及び第2短手方向部材64の内縁63b,64bは、長手方向LDの内側へ向かって突出する一対の突起65,65を有する。また、嵩上げ部材6には長手方向LDに延びる切欠き69が形成されており、一対の突起65,65は、第1長手方向部材61及び第2長手方向部材62から離れている。図6に示すように、一対の突起65,65は、突起65の突出端に、互いに近付く向きに延びる屈曲部65aをそれぞれ有する。これにより、突起65は、全体として略L字状を呈する。対向する屈曲部65aの間には隙間W65が設けられている。また、第1短手方向部材63又は第2短手方向部材64と一対の突起65,65とは、全体としてC字状を呈する。
【0049】
第1短手方向部材63及び第2短手方向部材64の内縁63b,64bと一対の突起65,65で形成される長孔66は、ねじ4を取り付けるための取付孔となる。嵩上げ部材6の装着時の位置ずれ、及び装着溝2のねじ穴25の加工精度を考慮し、長孔66は、長辺寸法が短辺寸法に対し0.5~2.0mm拡大した形状とするのが好ましい。長孔66の短辺寸法は、ねじ4の直径に対し0.5~1.0mm程度大きい。
【0050】
第1短手方向部材63に設けられた一対の突起65,65と第2短手方向部材64に設けられた一対の突起65,65とに挟まれた領域が、上記の中空領域60である。図5(a)に示すように、第1長手方向部材61の長さL61及び第2長手方向部材62の長さL62は、何れも中空領域60の長さL60を超える。これにより、第1長手方向部材61の長さL61及び第2長手方向部材62の長さL62を確保して、嵩上げ部材6の装着溝2への固定力を強化することができる。
【0051】
第1短手方向部材63の幅W63及び第2短手方向部材64の幅W64は、例えば2.5~4.0mmである。また、第1短手方向部材63の幅W63及び第2短手方向部材64の幅W64は、第1長手方向部材61の幅W61及び第2長手方向部材62の幅W62の2倍以上であるのが好ましい。これにより、第1長手方向部材61及び第2長手方向部材62に生ずるばね効果を第1短手方向部材63及び第2短手方向部材64に比べ大きくすることができ、装着溝2に対する固定保持効果を得やすくなる。
【0052】
第1短手方向部材63及び第2短手方向部材64の短手方向WDの中央部には、第1短手方向部材63及び第2短手方向部材64の内縁63b,64bから外縁63a,64aへ向かって長手方向LDに延びる切込み67が形成されている。切込み67を形成することで、切込み67と第1短手方向部材63及び第2短手方向部材64の外縁63a,64aとの間に幅狭領域68が形成される。これにより、第1短手方向部材63及び第2短手方向部材64が幅狭領域68を支点として弾性変形しやすくなり、第1長手方向部材61及び第2長手方向部材62のばね性を高めることができる。
【0053】
切込み67は、一定幅で延びるスリットである。ただし、切込み67の形状は一定幅のスリットに限定されず、不等幅のスリット、先割れ状のスリット等でもよい。また、本実施形態の切込み67の幅W67は、屈曲部65aの隙間W65と同じとなっているが、これに限定されない。切込み67の幅W67を屈曲部65aの隙間W65よりも大きくしてもよい。切込み67の幅W67を大きくすることで、第1短手方向部材63及び第2短手方向部材64が幅狭領域68を支点としてさらに弾性変形しやすくなる。
【0054】
幅狭領域68の幅W68は、第1長手方向部材61の幅W61及び第2長手方向部材62の幅W62より小さいのが好ましい。これにより、第1長手方向部材61及び第2長手方向部材62に効果的にばね性を付与することができる。
【0055】
以上のように、本実施形態に係るタイヤ加硫金型10は、タイヤの外表面に標識又は模様を転写形成するための薄板3と、薄板3が装着される装着溝2と、薄板3と装着溝2の底面20との間に配置される嵩上げ部材6と、薄板3と嵩上げ部材6を装着溝2へ固定するための締結部材4と、を備え、薄板3は、装着溝2の底面20へ向かって突出する凸状膨出部36を有し、嵩上げ部材6は、薄板3の縁に沿って配置され、凸状膨出部36を取り巻く中空領域60を有する。
【0056】
この構成によれば、嵩上げ部材6と薄板3の接触圧力を高めて、両者の界面からのゴム流入を抑制することができる。その結果、加硫成型後のタイヤにおける標識の識別性を確保し、外観不良を抑制できる。
【0057】
また、本実施形態に係るタイヤ加硫金型10においては、装着溝2は、タイヤ周方向の長さがタイヤ径方向の長さよりも大きい長手形状をなし、嵩上げ部材6は、ばね性を有するように形成され、装着溝2の長手方向LDに延びる一対の長手方向側壁21,22へ加圧接触されて装着溝2へ装着される、という構成である。
【0058】
この構成によれば、嵩上げ部材6の装着溝2への装着及び固定が容易となり、また嵩上げ部材6の脱落を抑制できる。さらに、嵩上げ部材6と一対の長手方向側壁21,22の間からのゴム流入を抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態に係るタイヤ加硫金型10においては、装着溝2の短手方向WDの幅W2は、長手方向LDに一定であり、嵩上げ部材6は、装着溝2の長手方向側壁21,22に接触する一対の長手方向部材61,62と、一対の長手方向部材61,62の端部同士を接続する一対の短手方向部材63,64と、を有し、長手方向部材61,62の幅W61,W62は一定であり、長手方向部材61,62の長さL61,L62は中空領域60の長さL60を超える、という構成である。
【0060】
この構成によれば、一対の長手方向部材61,62と一対の長手方向側壁21,22の接触圧を均一にすることができる。さらに、この構成よれば、一対の長手方向部材61,62の長さL61,L62を確保して、嵩上げ部材6の装着溝2への固定力を強化することができる。
【0061】
また、本実施形態に係るタイヤ加硫金型10においては、短手方向部材63,64の幅W63,W64は、長手方向部材61,62の幅W61,W62の2倍以上である、という構成である。
【0062】
この構成によれば、長手方向部材61,62に生ずるばね効果を短手方向部材63,64に比べ大きくすることができ、装着溝2に対する固定保持効果を得やすくなる。
【0063】
また、本実施形態に係るタイヤ加硫金型10においては、短手方向部材63,64の短手方向WDの中央部には、短手方向部材63,64の内縁63b,64bから外縁63a,64aへ向かって長手方向LDに延びる切込み67が形成される、という構成である。
【0064】
切込み67を形成することで、切込み67と一対の短手方向部材63,64の外縁63a,64aとの間に幅狭領域68が形成される。これにより、短手方向部材63,64が幅狭領域68を支点として弾性変形しやすくなり、長手方向部材61,62のばね性を高めることができる。
【0065】
また、本実施形態に係るタイヤ加硫金型10においては、切込み67と短手方向部材63,64の外縁63a,64aにより形成される幅狭領域68の幅W68は、長手方向部材61,62の幅W61,W62より小さい、という構成である。
【0066】
この構成によれば、長手方向部材61,62に効果的にばね性を付与することができる。
【0067】
また、本実施形態に係るタイヤ加硫金型10においては、一対の長手方向部材61,62及び一対の長手方向側壁21,22は、タイヤ径方向外側に凸となる円弧状をなし、一対の長手方向部材61,62のうちタイヤ径方向外側の長手方向部材61の曲率半径R61は、一対の長手方向側壁21,22のうちタイヤ径方向外側の長手方向側壁21の曲率半径R21よりも小さく、かつ一対の長手方向部材61,62のうちタイヤ径方向内側の長手方向部材62の曲率半径R62は、一対の長手方向側壁21,22のうちタイヤ径方向内側の長手方向側壁22の曲率半径R22よりも大きい、という構成である。
【0068】
この構成によれば、嵩上げ部材6は、装着溝2に装着される際、装着溝2の幅W2より小さい幅となるように長手方向部材61と長手方向部材62を互いに近付ける向きに圧縮された状態にて装着溝2に挿入される。すなわち、嵩上げ部材6は、装着溝2の一対の長手方向側壁21,22に加圧接触されて装着溝2へ装着される。
【0069】
なお、タイヤ加硫金型10は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、タイヤ加硫金型10は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記した複数の実施形態の各構成や各方法等を任意に採用して組み合わせてもよく、さらに、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0070】
(1)上記実施形態に係るタイヤ加硫金型10においては、装着溝2は、タイヤ周方向の長さがタイヤ径方向の長さよりも大きい長手形状をなし、嵩上げ部材6は、ばね性を有するように形成され、装着溝2の長手方向LDに延びる一対の長手方向側壁21,22へ加圧接触されて装着溝2へ装着される、という構成である。しかしながら、タイヤ加硫金型10は、かかる構成に限られない。例えば、嵩上げ部材6は、一対の長手方向側壁21,22へ加圧接触されることなく装着溝2へ装着され、ねじ4で固定されてもよい。
【0071】
(2)また、上記実施形態に係るタイヤ加硫金型10においては、装着溝2の短手方向WDの幅W2は、長手方向LDに一定であり、嵩上げ部材6は、装着溝2の長手方向側壁21,22に接触する一対の長手方向部材61,62と、一対の長手方向部材61,62の端部同士を接続する一対の短手方向部材63,64と、を有し、長手方向部材61,62の幅W61,W62は一定であり、長手方向部材61,62の長さL61,L62は中空領域60の長さL60を超える、という構成である。しかしながら、タイヤ加硫金型10は、かかる構成に限られない。例えば、上記実施形態の切欠き69を形成せず、長手方向部材61,62の長さL61,L62を中空領域60の長さL60と同じとしてもよい。
【0072】
(3)また、上記実施形態に係るタイヤ加硫金型10においては、短手方向部材63,64の幅W63,W64は、長手方向部材61,62の幅W61,W62の2倍以上である、という構成である。しかしながら、タイヤ加硫金型10は、かかる構成に限られない。例えば、短手方向部材63,64の幅W63,W64は、長手方向部材61,62の幅W61,W62と同じであってもよい。
【0073】
(4)また、上記本実施形態に係るタイヤ加硫金型10においては、短手方向部材63,64の短手方向WDの中央部には、短手方向部材63,64の内縁63b,64bから外縁63a,64aへ向かって長手方向LDに延びる切込み67が形成される、という構成である。しかしながら、タイヤ加硫金型10は、かかる構成に限られない。例えば、切込み67を設けることなく、短手方向部材63,64の幅W63,W64自体を狭くしてもよい。
【0074】
(5)また、上記実施形態に係るタイヤ加硫金型10においては、切込み67と短手方向部材63,64の外縁63a,64aにより形成される幅狭領域68の幅W68は、長手方向部材61,62の幅W61,W62より小さい、という構成である。しかしながら、タイヤ加硫金型10は、かかる構成に限られない。例えば、幅狭領域68の幅W68が、長手方向部材61,62の幅W61,W62と同じであってもよい。
【0075】
(6)また、上記本実施形態に係るタイヤ加硫金型10においては、一対の長手方向部材61,62及び一対の長手方向側壁21,22は、タイヤ径方向外側に凸となる円弧状をなし、一対の長手方向部材61,62のうちタイヤ径方向外側の長手方向部材61の曲率半径R61は、一対の長手方向側壁21,22のうちタイヤ径方向外側の長手方向側壁21の曲率半径R21よりも小さく、かつ一対の長手方向部材61,62のうちタイヤ径方向内側の長手方向部材62の曲率半径R62は、一対の長手方向側壁21,22のうちタイヤ径方向内側の長手方向側壁22の曲率半径R22よりも大きい、という構成である。しかしながら、タイヤ加硫金型10は、かかる構成に限られない。例えば、平面視において、装着溝2の一対の長手方向側壁21,22を直線状とし、嵩上げ部材6の一対の長手方向部材61,62をタイヤ径方向外側に凸となるように湾曲させてもよい。さらに、平面視において、装着溝2の一対の長手方向側壁21,22を直線状とし、嵩上げ部材6の一対の長手方向部材61,62を互いにタイヤ径方向(短手方向WD)の反対側に凸となるように湾曲させてもよい。これらの形態であっても、嵩上げ部材6の一対の長手方向部材61,62が、装着溝2の一対の長手方向側壁21,22へ加圧接触された状態で、嵩上げ部材6を装着溝2へ装着することができる。
【符号の説明】
【0076】
1…タイヤ成型面、2…装着溝、3…薄板、4…ねじ(締結部材)、5…凹凸形成部、6…嵩上げ部材、10…タイヤ加硫金型、20…底面、21…第1長手方向側壁、22…第2長手方向側壁、23…第1短手方向側壁、24…第2短手方向側壁、36…凸部(凸状膨出部)、36a…先端、60…中空領域、61…第1長手方向部材、62…第2長手方向部材、63…第1短手方向部材、63a…外縁、63b…内縁、64…第2短手方向部材、64a…外縁、64b…内縁、67…切込み、68…幅狭領域、69…切欠き、R21…第1長手方向側壁の曲率半径、R22…第2長手方向側壁の曲率半径、R61…第1長手方向部材の曲率半径、R62…第2長手方向部材の曲率半径、LD…長手方向、WD…短手方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6