(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】布基礎とその施工方法
(51)【国際特許分類】
E02D 27/01 20060101AFI20240416BHJP
E02D 27/08 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
E02D27/01 Z
E02D27/08
(21)【出願番号】P 2020161653
(22)【出願日】2020-09-28
【審査請求日】2023-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 浩徳
(72)【発明者】
【氏名】前田 珠希
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-155051(JP,A)
【文献】特開平5-295737(JP,A)
【文献】特開平7-310329(JP,A)
【文献】実開平2-11844(JP,U)
【文献】特開2005-48391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/00-17/20
E02D 27/00-27/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一フーチングと第一立ち上がり部とを備え、深基礎である第一基礎と、
第二フーチングと第二立ち上がり部とを備え、前記第一基礎に連続する一般基礎である第二基礎と、を有する布基礎であって、
対向する二つの広幅面と、四つの小口面とを備える板状六面体の軽量ブロックが、一つの該小口面を前記第一フーチングの上面に載置されるようにして配設され、複数の該軽量ブロックが該第一フーチングの上面に並べられており、
前記軽量ブロックの前記広幅面と前記第二基礎の間に埋め戻し土が設けられ、複数の前記軽量ブロックの前記小口面の上方と前記埋め戻し土の上方に土間コンクリートが設けられていることを特徴とする、布基礎。
【請求項2】
平面視において、並べられた複数の前記軽量ブロックの内部には、配管用及び/又はコンクリート束用の隙間が設けられており、
前記軽量ブロックには、小口面の長さの異なる複数種の軽量ブロックが含まれ、複数種の該軽量ブロックが離して並べられることにより、前記隙間が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の布基礎。
【請求項3】
第一フーチングと第一立ち上がり部とを備え、深基礎である第一基礎と、
第二フーチングと第二立ち上がり部とを備え、前記第一基礎に連続する一般基礎である第二基礎と、を施工する基礎施工工程と、
対向する二つの広幅面と、四つの小口面とを備える板状六面体の軽量ブロックを、一つの該小口面が前記第一フーチングの上面に載置されるようにして配設し、複数の該軽量ブロックを該第一フーチングの上面に並べる、軽量ブロック設置工程と、
前記軽量ブロックの前記広幅面と前記第二基礎の間に土砂を埋め戻し、転圧して埋め戻し土を施工する、埋め戻し土施工工程と、
複数の前記軽量ブロックの前記小口面の上方と前記埋め戻し土の上方に、土間コンクリートを施工する、土間コンクリート施工工程とを有することを特徴とする、布基礎の施工方法。
【請求項4】
前記軽量ブロックには、小口面の長さの異なる複数種の軽量ブロックが含まれており、
前記軽量ブロック設置工程では、複数種の前記軽量ブロックを離して並べることによって隙間を形成し、
前記土間コンクリート施工工程では、土間コンクリートの施工と同時に前記隙間に充填されたコンクリートにより、コンクリート束を施工することを特徴とする、請求項3に記載の布基礎の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布基礎とその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の布基礎の一部において左右の地盤に高低差があり、基礎が擁壁を兼用する場合などにおいては、深基礎と一般基礎が連続した布基礎が適用される。ところで、例えば地耐力が30kN/m2程度かそれ以下の軟弱な地盤において深基礎を施工する場合、深基礎の内側(建物の内側)に埋戻す埋め戻し土の高さは、深基礎ゆえに600mm程度以上になり得る。しかしながら、上記地耐力程度の軟弱な地盤に対して600mm程度以上の高さの埋め戻し土を施工する場合、直接基礎では設計が困難になることから、深基礎のフーチング上には、埋め戻し土に代わって発泡プラスチック等の軽量ブロックが適用される場合がある。
【0003】
一般の軽量ブロックは、対向する二つの広幅面と、四つの小口面とを備える六面体を呈しており、軽量ブロックは深基礎のフーチング上や地盤上にその広幅面を載置され、複数の軽量ブロックが積み重ねられることにより深基礎の領域における軽量化が図られている。積み重ねられた複数の軽量ブロックと、布基礎を構成する深基礎以外の一般基礎の間には埋め戻し土が施工され、転圧処理される。
【0004】
ここで、特許文献1にも、上記する深基礎と一般基礎が連続した布基礎(ここでは基礎構造)が提案されている。この基礎構造は、周囲が基礎によって包囲され、基礎として互いに離間する第1基礎のベース部(フーチングに相当)よりも第2基礎のベース部が地中の深い位置に設けられており、基礎で包囲される箇所に土間コンクリートが打設された基礎構造であり、第2基礎のベース部の土間コンクリート側に張り出す張出部の上に、土よりも軽い軽量材が設けられるとともに、土間コンクリートを支持する束材を備えている。特許文献1に記載の基礎構造においても、六面体の軽量材(軽量ブロックに相当)の広幅面が深基礎のベース部の上に載置されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、軽量ブロックの広幅面を深基礎のフーチング上に載置し、複数の軽量ブロックが積み重ねられ、これら複数の軽量ブロックの側方に土砂が埋め戻されて締め固められる際に、上下に隣接する軽量ブロックの間に埋め戻し土の一部が浸入することが懸念される。このように上下に隣接する軽量ブロックの間に埋め戻し土が浸入することにより、上方にある軽量ブロックが持ち上げられてしまい、複数の軽量ブロックを所定の設計高さに積み上げることができず、また、積み上げられた軽量ブロックの平坦性が損なわれることになる。そのため、軽量ブロックの間に埋め戻し土が浸入しないように、軽量ブロック同士を相互に緊結する施工が必要になるが、この軽量ブロック同士を緊結する施工が布基礎の施工における工程増加の一因となる。
【0007】
また、深基礎を構成するフーチングの上面に不陸がある場合、軽量ブロックの広幅面が不陸を備えるフーチングの上面に載置されることから、軽量ブロックを安定的に載置することが困難になり、積み重ねられた複数の軽量ブロックの安定姿勢が確保し難いといった課題もある。
【0008】
さらに、複数の広幅面を順次積み重ねながら各軽量ブロックが施工されることから、軽量ブロックの広幅面の途中に配管等を設置するための隙間を設けるべく、軽量ブロックの広幅面の途中位置に切り欠きを加工する必要が生じ、その際には軽量ブロックを刳り抜いて切り欠きを形成する複雑な切断加工が必要になるといった課題もある。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、軽量ブロック同士の緊結施工と、隙間の形成を目的とした軽量ブロックの切断加工の双方を不要にでき、複数の軽量ブロックを深基礎のフーチング上に安定的に載置することのできる、布基礎とその施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成すべく、本発明による布基礎の一態様は、
第一フーチングと第一立ち上がり部とを備え、深基礎である第一基礎と、
第二フーチングと第二立ち上がり部とを備え、前記第一基礎に連続する一般基礎である第二基礎と、を有する布基礎であって、
対向する二つの広幅面と、四つの小口面とを備える板状六面体の軽量ブロックが、一つの該小口面を前記第一フーチングの上面に載置されるようにして配設され、複数の該軽量ブロックが該第一フーチングの上面に並べられており、
前記軽量ブロックの前記広幅面と前記第二基礎の間に埋め戻し土が設けられ、複数の前記軽量ブロックの前記小口面の上方と前記埋め戻し土の上方に土間コンクリートが設けられていることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、深基礎のフーチング(第一フーチング)の上面に板状六面体の軽量ブロックの小口面が載置され(軽量ブロックが一つの小口面を下にして立設された姿勢で載置される)、複数の軽量ブロックが第一フーチングの上面に並べられていることにより、軽量ブロックの側方に設けられている埋め戻し土が浸入する恐れのある、埋め戻し土に面した軽量ブロック同士の当接箇所数を低減もしくは解消することができる。このことにより、軽量ブロックの間に埋め戻し土が浸入することが抑制され、埋め戻し土の浸入を防止するために軽量ブロック同士を相互に緊結する施工を不要にできる。
【0012】
また、第一フーチングの上面に不陸がある場合であっても、軽量ブロックの小口面が第一フーチングに載置されることから、不陸に影響されることなく、複数の軽量ブロックを第一フーチングの上面に安定的に載置することができる。
【0013】
本態様の布基礎は、深基礎と一般基礎の連続体であり、その平面視形状としては、矩形枠状や、矩形枠状の一部が切り欠かれている形状などがある。ここで、「一般基礎」とは、立ち上がり部の左右に高低差のない基礎を意味しており、立ち上がり部の左右に高低差のある深基礎と異なるものである。
【0014】
ここで、軽量ブロックは、板状六面体を呈しており、その平面視形状は矩形(長方形や正方形)であり、その平面寸法は、通常の1P幅×1P幅(Pはモジュールを示し、800mm乃至1100mmの間で、例えば910mm幅等、モジュール設計仕様により任意に設定可能)や、1P幅×2P幅等に設定できる。また、その小口面の幅(厚み)は、30mm、60mm、100mm等を適用できる。一般に市販されている軽量ブロックとして、上記する1P幅×2P幅×100mm(厚み)等の軽量ブロックを挙げることができ、入手容易な市販の軽量ブロックを適用するのが好ましい。この軽量ブロックは、例えば発泡プラスチック等により形成されている。
【0015】
また、本発明による布基礎の他の態様は、平面視において、並べられた複数の前記軽量ブロックの内部には、配管用及び/又はコンクリート束用の隙間が設けられており、
前記軽量ブロックには、小口面の長さの異なる複数種の軽量ブロックが含まれ、複数種の該軽量ブロックが離して並べられることにより、前記隙間が形成されていることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、小口面の長さの異なる複数種の軽量ブロックが用いられ、複数種の軽量ブロックが離して並べられることにより、配管用及び/又はコンクリート束用の隙間が容易に形成される。すなわち、複数の軽量ブロックがそれらの広幅面を順次積み重ねられている場合は、軽量ブロックの広幅面の途中に配管等の設置位置がくることが往々にしてあるため、この配管等を設置するための隙間を設けるべく、軽量ブロックの広幅面の途中位置を刳り抜いて切り欠きを形成する複雑な切断加工が必要になる。これに対して、本態様では、小口面の長さの異なる複数種の軽量ブロックが相互に離して並べられることにより、切断加工等をすることなく、容易に配管等を設置するための隙間が形成される。
【0017】
また、隙間にコンクリート束が設けられることにより、布基礎の立ち上がり部の上部と、並べられた複数の軽量ブロックの小口面と、埋め戻し土の上面と、コンクリート束とにより、土間コンクリートを支持することができる。この際、発泡プラスチック等により形成される軽量ブロックは、白蟻による食害により、当初の体積が低減する可能性があるが、深基礎の領域においてコンクリート束が土間コンクリートを支持していることにより、軽量ブロックによる支持が無くなった場合でも、土間コンクリートの安定的な支持が維持できる。ここで、コンクリート束は、土間コンクリート施工時に隙間に流れ込んだコンクリートの硬化体であってもよいし、別途製作されたコンクリート束が隙間に挿入される形態であってもよい。
【0018】
また、本発明による布基礎の施工方法の一態様は、
第一フーチングと第一立ち上がり部とを備え、深基礎である第一基礎と、
第二フーチングと第二立ち上がり部とを備え、前記第一基礎に連続する一般基礎である第二基礎と、を施工する基礎施工工程と、
対向する二つの広幅面と、四つの小口面とを備える板状六面体の軽量ブロックを、一つの該小口面が前記第一フーチングの上面に載置されるようにして配設し、複数の該軽量ブロックを該第一フーチングの上面に並べる、軽量ブロック設置工程と、
前記軽量ブロックの前記広幅面と前記第二基礎の間に土砂を埋め戻し、転圧して埋め戻し土を施工する、埋め戻し土施工工程と、
複数の前記軽量ブロックの前記小口面の上方と前記埋め戻し土の上方に、土間コンクリートを施工する、土間コンクリート施工工程とを有することを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、基礎施工工程において施工された深基礎の第一フーチングの上面に対して、軽量ブロック設置工程において、板状六面体の軽量ブロックの小口面を載置するようにして複数の軽量ブロックを第一フーチングの上面に並べることにより、埋め戻し土施工工程において軽量ブロックの側方に施工する埋め戻し土が、軽量ブロック同士の当接箇所を介して浸入することを低減もしくは解消することができる。さらに、深基礎の第一フーチングの上面に不陸がある場合であっても、軽量ブロックの小口面を第一フーチングに載置することから、不陸に影響されることなく、複数の軽量ブロックを第一フーチングの上面に安定的に載置することができる。
【0020】
また、埋め戻し土施工工程においては、第一フーチングの上面に立設姿勢で並べられた複数の軽量ブロックに対して、それらの側方に施工される埋め戻し土による土圧が作用することにより、軽量ブロック同士が相互に押圧され、相互に密着して隙間のない態様で複数の軽量ブロックを並べることができる。特に、埋め戻し土施工工程では、例えば土砂を所定高さまで埋め戻す施工と、次いで埋め戻し土を転圧する施工を順次繰り返すことから、転圧の際に軽量ブロックに対して側方から押圧力が付与されることになり、この押圧力によっても軽量ブロック同士が相互に密着される。
【0021】
また、本発明による布基礎の施工方法の他の態様において、前記軽量ブロックには、小口面の長さの異なる複数種の軽量ブロックが含まれており、
前記軽量ブロック設置工程では、複数種の前記軽量ブロックを離して並べることによって隙間を形成し、
前記土間コンクリート施工工程では、土間コンクリートの施工と同時に前記隙間に充填されたコンクリートにより、コンクリート束を施工することを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、軽量ブロック設置工程において、小口面の長さの異なる複数種の軽量ブロックを相互に離して並べることにより、配管用及び/又はコンクリート束用の隙間を容易に形成することができる。また、土間コンクリート施工工程では、土間コンクリートの施工と同時に隙間に充填されたコンクリートにより、コンクリート束が施工されることから、土間コンクリートとコンクリート束を一度に施工することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上の説明から理解できるように、本発明の布基礎とその施工方法によれば、軽量ブロック同士の緊結施工と、隙間の形成を目的とした軽量ブロックの切断加工の双方を不要にでき、複数の軽量ブロックを深基礎のフーチング上に安定的に載置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施形態に係る布基礎の一例の縦断面図である。
【
図3】
図1のIII-III矢視図であって、実施形態に係る布基礎の一例の横断面図である。
【
図4】実施形態に係る布基礎の施工方法の一例を説明する工程図である。
【
図5】
図4に続いて、布基礎の施工方法の一例を説明する工程図である。
【
図6】
図5に続いて、布基礎の施工方法の一例を説明する工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、実施形態に係る布基礎とその施工方法の一例について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0026】
[実施形態に係る布基礎]
はじめに、
図1乃至
図3を参照して、実施形態に係る布基礎の一例について説明する。ここで、
図1は、実施形態に係る布基礎の一例の縦断面図であり、
図2は、軽量ブロックの一例の斜視図である。また、
図3は、
図1のIII-III矢視図であって、実施形態に係る布基礎の一例の横断面図である。
【0027】
布基礎70は、第一基礎10と第二基礎20とが連続する基礎であり、
図3に示すように、その平面視形状は、例えば矩形枠状であり、
図3においては、その上下の辺の途中位置において第一基礎10と第二基礎20の接続界面が存在している。
【0028】
第一基礎10は、第一フーチング11と第一立ち上がり部12とを備え、鉄筋コンクリートにより形成されており、
図1に示すように、第一立ち上がり部12の左右に高低差のある深基礎である。
【0029】
一方、第二基礎20は、第二フーチング21と第二立ち上がり部22とを備え、鉄筋コンクリートにより形成されている一般基礎である。ここで、一般基礎とは、深基礎のように立ち上がり部の左右における高低差のない基礎のことであり、深基礎に対して高さが一般に低い基礎である。例えば、地表面下方の根入れ深さと地表面上の立ち上がり長さ(立ち上がり部の一部の長さ)の合計に関し、深基礎の場合は1000mm以上となるが、一般基礎の場合は例えば500mm乃至700mm程度の規模の基礎となる。
【0030】
図1に示すように、原地盤Gに対して施工された床付け面T1の上に、砕石41による層と捨てコン42が設けられ、捨てコン42の上に深基礎10が形成されている。一方、原地盤Gに対して施工された床付け面T2(床付け面T1よりも上方に位置する)の上に、砕石41による層と捨てコン42が設けられ、捨てコン42の上に一般基礎20が形成されている。また、高さレベルの相違する床付け面T1、T2は、法面T3を介して連続しており、深基礎10と一般基礎20とその間の床付け面T1,T2と法面T3の上に、埋め戻し土50が設けられている。
【0031】
図1に示すように、深基礎10を構成する第一フーチング11は、布基礎70の内側に張り出しており、その上面13には、複数枚の軽量ブロック30が並べられている。
【0032】
ここで、
図2に示すように、軽量ブロック30Aは、対向する二つの広幅面31と、四つの小口面32,33とを備える板状六面体を呈しており、広幅面31の平面視形状は矩形(図示例は長方形)である。四つの小口面は、相対的に長い長さt1を有する一対の小口面32と、相対的に短い長さt2を有する一対の小口面33とを有し、厚みt3を有している。
【0033】
軽量ブロック30Aは、一般に市販されている発泡プラスチック製の定型ブロックであり、長さt1は2P幅(1820mm)、長さt2は1P幅(910mm)、厚みt3は100mm(30mm、60mm等もある)の規格品である。
【0034】
ここで、発泡プラスチックとは、原料合成樹脂を所定の発砲倍率で発砲させた材料であり、原料合成樹脂には、ポリウレタン (PUR)、ポリスチレン (PS)、ポリオレフィン(主にポリエチレン (PE)やポリプロピレン (PP))、フェノール樹脂 (PF)、ポリ塩化ビニル (PVC)、ユリア樹脂 (UF)、シリコーン (SI)、ポリイミド (PI)、メラミン樹脂 (MF)などが含まれる。ポリウレタンフォーム(スポンジで、発砲倍率は10乃至60倍程度)、ポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム(PEフォームで、PE には、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、リニアポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)やエチレン-プロピレン共重合体が含まれる)などが例示できる。また、軽量ブロック30Aは様々な成形方法により成形でき、ビーズ法発泡スチロール(EPS: Expanded Polystyrene)、発泡スチレンシート(PSP: Polystyrene Paper)、押出法発泡ポリスチレン(XPS: Extruded Polystyrene)などが適用できる。
【0035】
図1及び
図3に示すように、布基礎70を構成する深基礎10においては、複数の軽量ブロック30の小口面32が第一フーチング11の上面13に載置されるようにして配設されている。より詳細には、
図2に示す寸法を備えた規格品の軽量ブロック30Aが、
図3に示すように複数枚(図示例は九枚)並べられ、左側の第一立ち上がり部12の側方には、軽量ブロック30Aがその途中で切断された寸法調整品である軽量ブロック30Dが、隙間35を置いて並べられている。
【0036】
この隙間35はコンクリート束用の隙間であり、
図1に示す土間コンクリート60を施工した際に流れ込んで硬化したコンクリート束65が、隙間35の内部に形成される。
【0037】
図3において、複数枚の軽量ブロック30Aが並べられた際に、下方の残り領域(第一フーチング11の上面13における残り領域)には、軽量ブロック30Aがその途中で切断された別途の寸法調整品である複数枚(図示例は七枚)の軽量ブロック30Bが並べられている。軽量ブロック30Bにおいても、それらの小口面32が第一フーチング11の上面13に載置されるようにして配設されている。そして、左側の第一立ち上がり部12の側方には、軽量ブロック30Bよりもさらに長さの短い別途の寸法調整品である複数枚(図示例は三枚)の軽量ブロック30Cが並べられ、隙間36が設けられている。
【0038】
この隙間36は配管用の隙間であり、配管の寸法に応じてその大きさは変化し、設定された隙間36の大きさに応じて軽量ブロック30Cの長さも適宜調整される。
【0039】
図1及び
図3に示すように、軽量ブロック30の広幅面31と一般基礎20の間には埋め戻し土50が設けられており、各軽量ブロック30の小口面32の上面と埋め戻し土50の上面が面一とされ、これらの上面に例えば厚みが150mm乃至200mm程度の土間コンクリート60が設けられている。
【0040】
ここで、軽量ブロック30の小口面32の上面には、不図示の防蟻・防湿シートが設けられているのが好ましく、当該シートを介して土間コンクリート60が形成されるのがよい。
【0041】
埋め戻し土の一部を軽量ブロックに代替する従来の布基礎においては、軽量ブロックの広幅面がフーチングの上面や地盤上に載置され、複数の軽量ブロックが積み重ねられている。しかしながら、このような軽量ブロックの積層体では、埋め戻し土に対向した軽量ブロック同士の当接箇所数(小口面同士の当接箇所数)が多くなり、この当接箇所から埋め戻し土の一部が浸入し易くなる。そして、このように軽量ブロック同士の当接箇所から埋め戻し土が浸入することにより、上方にある軽量ブロックが持ち上げられてしまい、複数の軽量ブロックを所定の設計高さに積み上げることができず、また、積み上げられた軽量ブロックの平坦性が損なわれることになる。さらに、第一フーチング11の上面13には往々にして不陸が存在し得るが、軽量ブロックの広幅面が不陸を備えるフーチングの上面に載置されることによって、軽量ブロックが安定的に載置されなくなり、このような状態で積み重ねられた複数の軽量ブロックの安定姿勢は一般に確保し難い。
【0042】
これに対して、図示する布基礎70によれば、特に
図1からも明らかなように、各軽量ブロック30が小口面32を第一フーチング11の上面13に載置された立設姿勢で並べられていることから、軽量ブロック30同士の当接箇所が側方の埋め戻し土50に対向することが解消され、埋め戻し土50の一部が隣接する軽量ブロック30の当接箇所の内部に浸入することが解消される。尤も、厳密には、
図3に示すように、軽量ブロック30A、30Cの当接面が埋め戻し土50に対向しているが、仮にこの当接面に埋め戻し土50の一部が浸入しても、相互に並べられた軽量ブロック30の上方の小口面32の平坦性が損なわれることはない。
【0043】
また、第一フーチング11の上面13に不陸が存在している場合であっても、軽量ブロック30の小口面32が第一フーチング11の上面13に載置されることから、不陸に影響されることなく、複数の軽量ブロック30を第一フーチング11の上面13に安定的に載置することができる。
【0044】
また、軽量ブロック30に対しては、埋め戻し土50からの側方土圧P1が作用することになり、軽量ブロック30同士が相互に押圧され、相互に密着して隙間のない態様で複数の軽量ブロック30が並べられる。
【0045】
また、上記するように軽量ブロックの広幅面がフーチングの上面や地盤上に載置される従来の布基礎においては、軽量ブロックの広幅面の途中に配管等の設置位置がくることが往々にしてあるため、この配管やコンクリート束を設置するための隙間を設けるべく、軽量ブロックの広幅面の途中位置を刳り抜いて切り欠きを形成する複雑な切断加工が必要になる。これに対して、図示する布基礎70によれば、小口面32の長さの異なる複数種の軽量ブロック30A乃至30Dが相互に離して並べられることにより、軽量ブロック30を切断加工等をすることなく、コンクリート束用の隙間35や配管用の隙間36を容易に設けることができる。
【0046】
[実施形態に係る布基礎の施工方法]
次に、
図4乃至
図6と、
図1とを参照して、実施形態に係る布基礎の施工方法の一例について説明する。ここで、
図4乃至
図6は順に、実施形態に係る布基礎の施工方法の一例を説明する工程図である。また、
図1は、この施工方法により施工された布基礎を示しており、従って、
図4乃至
図6と
図1が順に、布基礎の施工方法を説明する工程図となる。
【0047】
布基礎の施工方法では、まず、
図4に示すように、原地盤Gを掘削施工して、深基礎10用の床付け面T1と、一般基礎20用の床付け面T2と、これらを繋ぐ法面T3を施工する。次いで、床付け面T1の上に砕石41を敷き均し、砕石41の上に捨てコン42を施工し、捨てコン42の上に鉄筋コンクリート製の深基礎10を施工する。
【0048】
一方、床付け面T2の上に砕石41を敷き均し、砕石41の上に捨てコン42を施工し、捨てコン42の上に鉄筋コンクリート製の一般基礎20を施工する。尚、
図4では、平面視矩形枠状の布基礎70を構成する深基礎10と一般基礎20の対向する部位のみを示しているが、深基礎10と一般基礎20は矩形枠状の途中位置で連続しており、
図4における一点鎖線のように施工される。
図4において、A1は深基礎の領域を示しており、A2は一般基礎の領域を示している(以上、基礎施工工程)。
【0049】
次に、
図5に示すように、対向する二つの広幅面31と、四つの小口面32,33とを備える板状六面体の複数の軽量ブロック30を用いて、各軽量ブロック30の小口面32を第一フーチング11の上面13に載置するようにして並べる。この際、既に説明したように、軽量ブロック30には、規格品である軽量ブロック30Aと、軽量ブロック30Aがその途中で切断された寸法調整品である軽量ブロック30B、30C,30Dが含まれている。まず、規格品である軽量ブロック30Aを所定枚数並べた後、残った領域に軽量ブロック30B、30C,30Dを並べていく。この際、各軽量ブロック30B、30C,30Dを、コンクリート束用の隙間35や配管用の隙間36を形成するようにして並べる(以上、軽量ブロック設置工程)。
【0050】
次に、
図6に示すように、深基礎10の第一フーチング11の上面13に立設姿勢で並べられた複数の軽量ブロック30の広幅面31と、一般基礎20との間に、土砂の埋め戻しと転圧を1セットとして、これを複数セット繰り返す。
【0051】
図示例では、上記セットを3セット行う例を示しており、土砂の埋め戻しと、上方からの転圧(付与する圧力Q)により、第一の埋め戻し土51を施工する。この転圧により、軽量ブロック30の広幅面31には側方から押圧力P2が作用し、この押圧力P2によって軽量ブロック30同士を相互に押圧して密着させることができる。
【0052】
第一の埋め戻し土51の施工に続き、第二の埋め戻し土52,第三の埋め戻し土53の施工を順次行い、各埋め戻し土の施工の際の転圧により、軽量ブロック30の広幅面31の全域においてその側方から押圧力P2を付与する。このことにより、軽量ブロック30同士がそれらの全域において相互に押圧され、密着する。
【0053】
第三の埋め戻し土53の上面を、軽量ブロック30の上面と面一となるように施工することにより、埋め戻し土50が施工される(以上、埋め戻し土施工工程)。
【0054】
埋め戻し土施工工程の後、
図1に示すように、各軽量ブロック30の上方の小口面32と埋め戻し土50の上面に土間コンクリート60を施工する。この際、土間コンクリート用のコンクリートが隙間35に充填され、コンクリート束65が同時に施工される(以上、土間コンクリート施工工程)。
【0055】
図示する布基礎の施工方法によれば、軽量ブロック設置工程において、各軽量ブロック30をその小口面32が第一フーチング11の上面13に載置された立設姿勢で並べることにより、軽量ブロック30同士の当接箇所が側方の埋め戻し土50に対向することが解消され、埋め戻し土50の一部が隣接する軽量ブロック30の当接箇所の内部に浸入することを解消できる。また、小口面の長さの異なる複数種の軽量ブロック30A乃至30Dを相互に離して並べることにより、配管用の隙間36やコンクリート束用の隙間35を容易に形成することができる。
【0056】
また、埋め戻し土施工工程では、埋め戻された土砂の上方から圧力Qを付与する転圧を行うことにより、軽量ブロック30の広幅面31に側方から押圧力P2を作用させ、第一フーチング11の上面13に立設姿勢で並ぶ軽量ブロック30同士を相互に押圧して密着させることができる。
【0057】
さらに、土間コンクリート施工工程では、土間コンクリート60の施工と同時に隙間35に充填されたコンクリートにより、土間コンクリート60と同時にコンクリート束65を施工することができる。
【0058】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0059】
10:第一基礎(深基礎)
11:第一フーチング
12:第一立ち上がり部
20:第二基礎(一般基礎)
21:第二フーチング
22:第二立ち上がり部
30:軽量ブロック
30A:軽量ブロック(規格品)
30B,30C,30D:軽量ブロック(寸法調整品)
35:隙間(コンクリート束用の隙間)
36:隙間(配管用の隙間)
41:砕石
42:捨てコン
50,51,52,53:埋め戻し土
60:土間コンクリート
65:コンクリート束
70:布基礎
G:原地盤
T1,T2,床付け面
T3:法面