(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
B62J 6/026 20200101AFI20240416BHJP
B62J 41/00 20200101ALI20240416BHJP
B62J 23/00 20060101ALI20240416BHJP
B62H 1/02 20060101ALI20240416BHJP
B62J 40/10 20200101ALI20240416BHJP
B62J 37/00 20060101ALI20240416BHJP
B62J 6/01 20200101ALI20240416BHJP
B62J 6/025 20200101ALI20240416BHJP
【FI】
B62J6/026
B62J41/00
B62J23/00 F
B62H1/02 E
B62J40/10
B62J37/00 B
B62J6/01
B62J6/025
(21)【出願番号】P 2020178479
(22)【出願日】2020-10-23
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】山本 智
(72)【発明者】
【氏名】西山 隆史
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-067339(JP,A)
【文献】特開2016-005942(JP,A)
【文献】特開2017-202711(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 6/026
B62J 41/00
B62J 23/00
B62H 1/02
B62J 40/10
B62J 37/00
B62J 6/01
B62J 6/025
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
ヘッドランプ本体と、
前記ヘッドランプ本体を駆動するドライバ回路と、
を備え、
前記車体は、インナーカウルと、サイドカウルと、を備え、
前記ヘッドランプ本体は、発光部材を収容するハウジングを備え、
前記ドライバ回路が、前記ハウジングの外部に配置される
とともに、前記ヘッドランプ本体から離れて、前記インナーカウルと前記サイドカウルとの間の空間に配置されることを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項2】
請求項1に記載の鞍乗型車両であって、
前記ドライバ回路は、前記ヘッドランプ本体よりも後方かつ下方に離れて配置されることを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の鞍乗型車両であって、
駆動源を冷却するためのラジエータを備え、
前記ドライバ回路は、前記車体の車幅方向において、前記ラジエータの外側部分の近傍に配置されることを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項4】
請求項3に記載の鞍乗型車両であって、
前記ドライバ回路よりも後方の位置に、遮断部材が配置されていることを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の鞍乗型車両であって、
使用時に前記車体を車幅方向の何れか一側に傾斜した傾斜状態で支持するサイドスタンドを備え、
前記ドライバ回路は、
前記サイドスタンドを用いて停車した状態において、前記ラジエータよりも高さが低くなることを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の鞍乗型車両であって、
前記サイドカウルと前記インナーカウルとの間の空間が左右それぞれに構成され、
前記車体の車幅方向の何れか一側に、ラジエータのリザーバタンクを備え、
前記ドライバ回路は、車幅方向で前記リザーバタンクが配置されている側と反対側に配置されることを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載の鞍乗型車両であって、
前記サイドカウルと前記インナーカウルとの間の空間が左右それぞれに構成され、
前記車体の車幅方向の何れか一側に、キャニスタを備え、
前記ドライバ回路は、車幅方向で前記キャニスタが配置されている側と反対側に配置されていることを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか一項に記載の鞍乗型車両であって、
前記ドライバ回路は、サイドカウルの前縁の傾斜に沿うように、側面視で傾けて配置されることを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項9】
請求項1から8までの何れか一項に記載の鞍乗型車両であって、
前記ドライバ回路は、ステアリングハンドルの下方に配置されることを特徴とする鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、前方に光を照射するヘッドランプを備える鞍乗型車両が知られている。特許文献1は、この種の鞍乗型車両を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鞍乗型車両に備えられたヘッドランプには、ヘッドランプ本体と、このヘッドランプ本体を駆動させるためのドライバ回路と、を有するものがある。このようなヘッドランプにおいては、ヘッドランプ本体の内部にドライバ回路が収容されていたので、ヘッドランプ本体が大型化する傾向があった。よって、ヘッドランプ本体の周囲のレイアウトが制限される場合があった。
【0005】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、ヘッドランプ本体の周囲のレイアウトの自由度を増大させることができる鞍乗型車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本発明の観点によれば、以下の構成の鞍乗型車両が提供される。即ち、この鞍乗型車両は、車体と、ヘッドランプ本体と、ドライバ回路と、を備える。前記ドライバ回路は、前記ヘッドランプ本体を駆動させる。前記車体は、インナーカウルと、サイドカウルと、を備える。前記ヘッドランプ本体は、発光素子を収容するハウジングを備える。前記ドライバ回路は、前記ハウジングの外部に配置されるとともに、前記ヘッドランプ本体から離れて、前記インナーカウルと前記サイドカウルとの間の空間に配置されている。
【0008】
これにより、ドライバ回路がハウジングの外部に配置されるので、ヘッドランプ本体を小型化できる。従って、ヘッドランプ本体の内部にドライバ回路が収容される場合と比較して、ヘッドランプ本体の周囲のレイアウト自由度を増大させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ヘッドランプ本体の周囲のレイアウトの自由度を増大させることができる鞍乗型車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両の全体的な構成を示す左側面図。
【
図3】鞍乗型車両の車体の前部の構成を示す正面図。
【
図4】鞍乗型車両の車体の前部の構成を示す平面図。
【
図5】ヘッドランプにおける左のヘッドランプ本体の構成を示す側面断面図。
【
図8】鞍乗型車両の車体の前部を左後方から見た斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。初めに、
図1及び
図2を参照して、本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両1の概要について説明する。
図1は、鞍乗型車両1の全体的な構成を示す左側面図である。
図2は、鞍乗型車両1の車体3の前部の右側面図である。
【0012】
本実施形態の鞍乗型車両1は、自動二輪車である。運転者は、車体3に跨がった状態で鞍乗型車両1に乗車して、当該鞍乗型車両1の運転を行う。なお、本発明は、自動二輪車以外の車両に適用することもできる。
図1に示すように、鞍乗型車両1は、車体3と、前輪4と、後輪5と、を備える。
【0013】
以下の説明では、特別な記載がない限り、前、後、左、右、上及び下とは、鞍乗型車両1に乗車した運転者から見た前、後、左、右、上及び下を意味する。言い換えると、左右方向は、鞍乗型車両1(車体3)の車幅方向であって、駆動輪の車軸が伸びる方向に一致する。前後方向は、鞍乗型車両1の車長方向に一致する。
【0014】
車体3は、鞍乗型車両1を走行させる駆動源であるエンジン8を支持する。エンジン8は、駆動輪となる後輪5を駆動するパワーユニットとして機能し、例えばガソリンエンジンとして構成される。エンジン以外の構成、例えば電動モータが、駆動源として用いられても良い。エンジン8で発生する駆動力は、図略の変速装置によって変速され、車体3の後部に設けられた後輪5に伝達される。後輪5は、車体3のフレーム本体に対して揺動可能に設けられるスイングアーム9に支持されている。
【0015】
前輪4は、車体3の前部に設けられる。エンジン8は、前後方向において、前輪4と後輪5の間に配置されている。詳細には、エンジン8は、スイングアーム9よりも前方の車体3のフレーム部分に支持されている。エンジン8は、内燃機関によって実現される。内燃機関は、燃料の燃焼時に生じるガス膨張によって動力を発生する。
【0016】
エンジン8の前方には、当該エンジン8を冷却するためのラジエータ10が配置されている。ラジエータ10は、図略のラジエータコアと、
図1に示す上流側タンク84と、
図2に示す下流側タンク85と、を備える。
【0017】
ラジエータコアは、車幅方向中央部に配置される。ラジエータコアに対して車幅方向一側(左側)に隣接するように上流側タンク84が配置され、ラジエータコアに対して車幅方向他側(右側)に隣接するように下流側タンク85が配置される。
【0018】
エンジン8を冷却して高温になった冷却水は、
図1に示すパイプ83及び上流側タンク84を介して、ラジエータコアに導かれる。ラジエータコアでは、冷却水に対する熱交換が行われる。冷却された冷却水は、
図2に示す下流側タンク85及びパイプ87を介して、エンジン8に戻される。
【0019】
車体3の前部には、フロントフォーク11が取り付けられている。フロントフォーク11は、ラジエータ10よりも前方に位置し、正面視で前輪4を挟むように左右1対で配置されている。フロントフォーク11の下部に、前輪4が回転可能に取り付けられている。フロントフォーク11には、前輪4を上方から覆う泥除け部材となるフロントフェンダ13が設けられている。
【0020】
図1に示すように、車体3の上部には、運転者が座るシート15が設けられている。シート15の前方に、エンジン8に供給する燃料を蓄える燃料タンク16が設けられている。車体3の前上部に、運転者が操作可能なステアリングハンドル17が設けられている。ステアリングハンドル17は、シート15及び燃料タンク16の前方であって、フロントフォーク11の上方に配置されている。
【0021】
ステアリングハンドル17の前方に、ヘッドランプ19が配置されている。ヘッドランプ19は、電力の供給を受けて、鞍乗型車両1の前方に光を照射する。ヘッドランプ19は、上下方向(高さ方向)において前輪4よりも高い位置であって、車体3の前部に設けられている。ヘッドランプ19は、後述するように左右のヘッドランプ本体47L,47Rを備える。
【0022】
シート15の下方であって、車体3の車幅方向一側(左側)には、サイドスタンド21が設けられている。サイドスタンド21は、車体3の左側面部に回転可能に支持されている。鞍乗型車両1の走行時には、サイドスタンド21は、
図1のように先端を地面から離した収容状態とされる。鞍乗型車両1の停車時は、サイドスタンド21は、下方へ延びる支持状態となるように切り換えられる。サイドスタンド21を支持状態とすることによって、サイドスタンド21の配置側である左側に車体3をやや傾けた姿勢で、鞍乗型車両1を倒れないように支持することができる。
【0023】
鞍乗型車両1は、カウル23を備える。カウル23は、鞍乗型車両1の外表面を構成する合成樹脂製の部材である。本実施形態において、カウル23は、ヘッドランプ19(左右のヘッドランプ本体47L,47R)の周囲、及び、ステアリングハンドル17の下方(車体側面)等を覆うように配置されている。なお、カウル23が配置される範囲及びカウル23の形状は一例であり、本実施形態とは異なっていても良い。
【0024】
カウル23は、フロントカウル25と、2つのサイドカウル27,29と、を有する。フロントカウル25は、主に車体3の前部、例えばヘッドランプ19の周囲に配置されている。フロントカウル25は、車体3の前部の上下左右を取り囲むように設けられる。2つのサイドカウル27,29は、それぞれ、車体3の側面部であって、ステアリングハンドル17の下方に配置されている。一方のサイドカウル27は、主に車体3の左側面部に配置され、他方のサイドカウル29は、主に車体3の右側面部に配置されている。
【0025】
次に、
図3から
図5を参照して、ヘッドランプ19の周囲の構成について説明する。
図3は、鞍乗型車両1の車体3の前部の構成を示す正面図である。
図4は、鞍乗型車両1の車体3の前部の構成を示す平面図である。
図5は、ヘッドランプ19における左のヘッドランプ本体47Lの構成を示す側面断面図である。
【0026】
フロントカウル25は、車体3の正面側に露出する外装部材である。フロントカウル25は、1つの部材によって形成されても良いし、複数の部材が連結されて形成されても良い。フロントカウル25には、外装部材としてのサイドカウル27,29が連続的に設けられている。サイドカウル27,29は、フロントカウル25と同様に、1つの部材によって形成されても良いし、複数の部材によって形成されても良い。
【0027】
図3及び
図4に示すように、フロントカウル25は、前後方向に垂直な面で切った断面の形状が、前端部から後方に近づくにつれて大きくなるように構成されている。具体的には、フロントカウル25の前端部は、車幅方向中央位置及びその近傍に配置されている。そして、フロントカウル25は、前端部から後方に近づくに連れて車幅方向及び上下方向に徐々に広がるように形成されている。
【0028】
フロントカウル25は、鞍乗型車両1の車幅を2等分する平面(
図3及び
図4に仮想線31で示す平面)に関して、略左右対称に構成されている。フロントカウル25の上部には、後方に向かうにつれて高くなるように傾斜するウインドシールド33が設けられている。フロントカウル25の左右両側のそれぞれに、左右のサイドミラー35,37が設けられている。
【0029】
正面視で、フロントカウル25の上下中途部には、
図3に示すように複数の開口が形成されている。複数の開口は、車幅方向に並べて配置されている。複数の開口は、導風孔41と左右のランプ孔43,45である。左右のランプ孔43,45は、導風孔41を車幅方向で挟むように配置されている。
【0030】
導風孔41は、エンジン8に供給するための走行風を取り込むための孔である。本実施形態では、導風孔41は、フロントカウル25の車幅方向中央部に配置され、車体3の前方を開放させている。導風孔41には、車体3に設けられた図略の導風ダクトが接続されている。この導風ダクトは、導風孔41から導入された走行風をエアクリーナ等を介してエンジン8へ供給する経路を構成する。走行風を導風孔41に導入することによって、エンジン8の吸気圧を上昇させることができる。
【0031】
左のランプ孔43には、左のヘッドランプ本体47Lが設けられている。左のヘッドランプ本体47Lは、導風孔41の左側に配置されている。
【0032】
右のランプ孔45には、右のヘッドランプ本体47Rが設けられている。右のヘッドランプ本体47Rは、導風孔41の右側に配置されている。
【0033】
このように、左右のヘッドランプ本体47L,47Rは、車幅方向で対をなすように配置されている。左右のヘッドランプ本体47L,47Rは、仮想線31で示す平面に関して、略左右対称(車幅方向で対称)に構成されている。そして、鞍乗型車両1の正面視で、左右のヘッドランプ本体47L,47Rの間に、導風孔41が配置されている。これにより、左右のヘッドランプ本体47L,47Rと導風孔41とを、全体としてコンパクトなスペースに配置することができる。
【0034】
以下では、略左右対称である構成に関しては、左側の構成には符号の末尾にLを付し、右側の構成には符号の末尾にRを付し、主として左側の構成についてのみ説明する。
【0035】
図5に示すように、左のヘッドランプ本体47Lは、ハウジング53、発光部材55、及びレンズ57等を備える。発光部材55は、ハウジング53に収容されている。発光部材55は、発光素子、具体的には発光ダイオード(LED)である。従って、ヘッドランプ本体47LはLED型である。レンズ57により、発光部材55からの光が透過する照射面が形成されている。ただし、発光部材は発光ダイオードに限らない。
【0036】
次に、
図1、
図2、
図6から
図8までを参照して、ヘッドランプ19(左右のヘッドランプ本体47L,47Rとドライバ回路61)に関する構成について説明する。
図6は、ヘッドランプ19の構成を示す平面図である。
図7は、ヘッドランプ19の構成を示す背面図である。
図8は、車体3の前部を左後方から見た斜視図である。
【0037】
図6及び
図7に示すように、ヘッドランプ19は、左右のヘッドランプ本体47L,47Rと、ドライバ回路61と、を備える。ドライバ回路61は、左のヘッドランプ本体47Rと第1ケーブル63を介して電気的に接続されるとともに、右のヘッドランプ本体47Rと第2ケーブル65を介して電気的に接続されている。ドライバ回路61は、左右のヘッドランプ本体47L,47Rを駆動させることができるように構成されている。本実施形態では、共通で1つのドライバ回路61によって左右のヘッドランプ本体47L,47Rを駆動しているので、コンパクトな構成を実現できる。ドライバ回路61は、例えば、左右のヘッドランプ本体47L,47Rのそれぞれの発光部材55への電力を調整することができる。具体的には、ドライバ回路61は、供給電力をLED動作可能な電圧に電圧変換する調整を行うことができる。また、ドライバ回路61は、車体3に搭載されているバッテリーから一定の電流を発光部材55に供給することができる。
【0038】
左右のヘッドランプ本体47L,47Rのそれぞれは、ハウジング53を備える。ドライバ回路61は、左右の何れのハウジング53にも収容されず、何れのハウジング53からも離れた位置に設けられる。この結果、ドライバ回路61は、ヘッドランプ19における左右のヘッドランプ本体47L,47Rの外部に配置される。ドライバ回路61は、左右のヘッドランプ本体47L,47Rに対して後方に配置されている。本実施形態において、ドライバ回路61は、
図7に示すように、右のヘッドランプ本体47L,47Rの外部であって、カウル23の内部、詳細にはカウル23に備えられたインナーカウル30と左側のサイドカウル27との間の空間に配置されている。また、ドライバ回路61は、
図1に示すように、車体3の車幅方向一側の左側面部に支持され、ステアリングハンドル17の下方に配置されている。
【0039】
このように、ヘッドランプ19において、ドライバ回路61を左右のヘッドランプ本体47L,47Rから分離し、異なる場所に配置することで、左右のヘッドランプ本体47L,47Rを小型化することができる。従って、左右のヘッドランプ本体47L,47Rの周囲のレイアウト自由度を増大させることができる。従って、例えば、フロントカウル25において、ヘッドランプ本体47L,47Rの周囲の形状を流線形状として、空気抵抗の低減を実現し易くなる。また、例えば、走行風によるダウンフォースを得るための斜面をヘッドランプ本体47L,47Rの周囲に設けることも容易になる。
【0040】
ドライバ回路61は、支持ケース71と、基板73と、を備える。支持ケース71は、車体3の左側面部に支持されている。基板73は、支持ケース71に収容されている。
図6の平面視で、基板73の厚み方向(矢印75が示す方向)は、ほぼ車幅方向と一致している。言い換えれば、基板73の厚み方向が車体3の前後方向となす角度よりも、当該厚み方向が車幅方向となす角度の方が小さい。
【0041】
支持ケース71の車幅方向での長さは、車長方向での長さに比べて小さい。支持ケース71は、左側のサイドカウル27の内面に概ね沿うように配置されている。よって、ドライバ回路61を、特に車幅方向でコンパクトに配置することができる。
【0042】
図1に示すように、側面視で、ドライバ回路61は、ラジエータ10よりも前方に配置されている。詳細には、ドライバ回路61は、車体3の車幅方向一側(左側)において、ラジエータ10の上流側タンク84よりも前方に配置されている。これにより、鞍乗型車両1の走行時にラジエータ10を通過して高温となった空気がドライバ回路61に当たることを回避できる。従って、ドライバ回路61に熱の影響が生じることを防止することができる。
【0043】
しかも、本実施形態では、ドライバ回路61は、車体3の前部、具体的には車体重心よりも前方に配置されている。そのため、左右のヘッドランプ本体47L,47Rのそれぞれとドライバ回路61とは前後方向であまり離れ過ぎない位置に配置されるようになっている。よって、左右のヘッドランプ本体47L,47Rのそれぞれをドライバ回路61に電気的に接続する第1ケーブル63及び第2ケーブル65のそれぞれを短くすることが容易である。
【0044】
図1に示すように、ドライバ回路61は側面視で矩形状に形成されている。そして、ドライバ回路61は、この矩形の1辺がサイドカウル27の前縁の傾斜に沿うように、側面視で傾けて配置されている。これにより、サイドカウル27の内面付近のスペースを効率的に活用しながらドライバ回路61を配置することができる。
【0045】
図1に示すように、ドライバ回路61よりも後方の位置に、上下方向に細長い遮断部材77が配置されている。遮断部材77は、本実施形態では、ラジエータ10の車幅方向一側の端部(具体的には、上流側タンク84)の近傍に配置されている。遮断部材77は、前後方向において、ドライバ回路61よりも後方であって、ラジエータ10に対して略同じ位置又は前方に配置されている。本実施形態では、遮断部材77は、ラジエータ10の上流側タンク84と、サイドカウル27の内面と、の間の隙間を遮るように設けられている。遮断部材77は、ラジエータ10の上下方向の長さ全体にわたって、前述の隙間を遮断している。
【0046】
これにより、ラジエータ10のラジエータコアを通過して高温となった空気が、当該ラジエータ10の前方に回り込み、ドライバ回路61に当たるのを、遮断部材77により防止することができる。従って、ドライバ回路61に熱の影響が生じることを抑制することができる。
【0047】
ここで、ドライバ回路61は、車体3の車幅方向一側(左側)において、ラジエータ10の車幅方向外側の部分の近傍に配置されている。また、車体3がリーンしない中立姿勢で走行しているときは、ドライバ回路61の高さは、ラジエータ10の高さと略同じである。そして、鞍乗型車両1がサイドスタンド21を使用して停車した状態では、車体3が左側へ傾くことに伴って、ドライバ回路61がラジエータ10の高さよりもやや低くなる。停車した状態では、ラジエータ10の熱気は上昇するが、ラジエータ10より下方にあるドライバ回路61には熱気は当たりにくい。よって、停車時において、ラジエータ10の熱気の影響がドライバ回路61に及びにくくなるので、ドライバ回路61の温度上昇を抑えることができる。
【0048】
図2に示すように、車体3の車幅方向他側(右側)に、ラジエータ10のリザーバタンク81が備えられている。リザーバタンク81は、ラジエータ10とエンジン8との間で循環する冷却水の経路に接続される。リザーバタンク81の内部には適宜の量の冷却水が貯留される。エンジン8の冷却によって冷却水の温度が変化した場合でも、冷却水の体積の変化を、リザーバタンク81内の冷却水量が変化することで吸収することができる。ラジエータ10のリザーバタンク81は、車幅方向で下流側タンク85と同じ側に配置されている。
【0049】
ドライバ回路61は、車体3において左側に配置されている。リザーバタンク81は、車体3において右側に配置されている。従って、ドライバ回路61が配置される側は、車幅方向でリザーバタンク81が配置されている側と反対側である。リザーバタンク81は、ラジエータ10の車幅方向右側の部分(下流側タンク85)の近傍に配置されている。これにより、全体としてコンパクトなスペースに、リザーバタンク81とドライバ回路61を配置することができる。
【0050】
図2に示すように、車体3の右側には、キャニスタ89が備えられている。キャニスタ89は、燃料タンク16内で蒸散した燃料ガスを吸着する燃料蒸発ガス排出抑止装置である。
【0051】
キャニスタ89は、車体3において右側に配置されている。従って、ドライバ回路61が配置される側は、車幅方向でキャニスタ89が配置されている側と反対側である。キャニスタ89は、車体3の前部の右側において、リザーバタンク81の上方であってステアリングハンドル17の下方に配置されている。これにより、全体としてコンパクトなスペースに、キャニスタ89とドライバ回路61を配置することができる。
【0052】
ラジエータ10の下流側タンク85は、車体3において右側に配置されている。従って、ドライバ回路61が配置される側は、車幅方向で下流側タンク85が配置されている側と反対側である。ラジエータ10の下流側タンク85は、車体3の前部の右側において、パイプ87を介してエンジン8と接続された状態でリザーバタンク81の近傍に配置されている。
【0053】
次に、ヘッドランプ19を背面側から見た図である
図7を参照して、発光部材55の光軸調整のための構成について説明する。
図7に示すヘッドランプ本体47Lは、車体3のフレーム等に固定される。左のヘッドランプ本体47Lは、角度調整ベース54を備える。角度調整ベース54は、ハウジング53に対して、第1点91、第2点92及び第3点93の3箇所で取り付けられている。ハウジング53と角度調整ベース54の間に、光軸調整機構が配置されている。
図5に示すように、発光部材55は、角度調整ベース54に取り付けられた状態でハウジング53に収容されている。
【0054】
図7に示すように、第1点91は、ハウジング53の下部、かつ、車幅方向中央に近い側に配置されている。第2点92は、ハウジング53の上部、かつ、車幅方向中央に近い側に配置されている。第3点93は、ハウジング53の上部、かつ、車幅方向外側に配置されている。
【0055】
第1点91、第2点92、及び第3点93のうち、第2点92では、ハウジング53に対する角度調整ベース54の位置を前後方向に変更することができない。一方、第1点91及び第3点93では、それぞれ、ハウジング53に対する角度調整ベース54の取付位置を、ネジ機構95,97によって前後方向に変更することができる。これにより、第1点91、第2点92、及び第3点93からなる3角形を含む面の向きを、3次元的に変更することができる。このとき、第2点92は実質的に球面軸受のように機能する。この向きの変更により、角度調整ベース54の取付向き、言い換えれば、左のヘッドランプ本体47Lにおける発光部材55の光軸の向きを、3次元的に調整することができる。
【0056】
図7に示すように、第1点91及び第3点93のそれぞれに対応する位置に、ネジ機構95,97が設けられている。このネジ機構95,97が、前述の光軸調整機構を構成している。ネジ機構95,97は、何れも、ネジ軸が概ね前後方向を向いた調節ボルトにより構成されている。
【0057】
第1点91のネジ機構95に関して、調節ボルトの頭部にはフランジが形成され、このフランジに、フェースギアのような形状の歯部が形成されている。ただし、この歯部は図示されていない。角度調整ベース54には、第1点91における調節ボルトの取付孔から真下へ延びる細長い差込溝56が形成されている。この差込溝56に適宜の工具を下から差し込むことで、調節ボルトの歯部に工具の先端を噛み合わせ、この状態で工具を回転することで、ネジ機構95の調節ボルトを回転させることができる。第1点91は車幅方向中央に近いので、その後方にはフロントフォーク11等が位置しており、後側から工具を差し込むスペースを確保することが難しい。この点、上記の構成とすることで、第1点91のネジ機構95に対しては、フロントカウル25の前部の下から工具を差し込んでアクセスすることができる。
【0058】
第3点93のネジ機構97に関して、調節ボルトの後端に形成された頭部には、例えばプラス溝が形成される。このプラス溝に工具の先端の刃部を後側から差し込んで回転することで、ネジ機構97の調節ボルトを回転することができる。
【0059】
図8に示すように、左のヘッドランプ本体47Lの後上方を覆うカバー101が、フロントカウル25に接続するように設けられている。カバー101よりも車幅方向中央に近い側には、開口103が形成されている。
図8の鎖線に示すように、この開口103から工具を差し込んで、第3点93のネジ機構97の調整ボルトを回転させることができる。
【0060】
カバー101には、複数のスリット105が貫通状に形成されている。それぞれのスリット105は、光を概ね上下方向に通過させることができる。このスリット105により、カバー101の下方の空間の明るさを確保することができる。仮にスリット105がない場合、ヘッドランプ本体47Lの周辺の空間が暗いため、開口103に後方から差し込んだ工具の先端及び第3点93の視認性が悪い。このため、ネジ機構97の調節ボルトの十字溝に、工具の先端を差し込むことが困難である。本実施形態では、スリット105から差し込む光によって第3点93の周辺を明るくできる。従って、ヘッドランプ本体47Lの光軸調整作業を容易かつ確実に行うことができる。
【0061】
図7に示すように、第1点91及び第2点92は、何れも車幅方向中央に近い側に配置され、互いに高さが異なる。第3点93は、第1点91及び第2点92の何れよりも車体3の車幅方向中央から遠い側に配置される。第3点93の高さは、第1点91と第2点92の中間位置94の高さよりも高い。第3点93は、第2点92と概ね同じ高さである。
【0062】
これにより、光軸調整のための3点が、車幅方向中央から外側へ近づくにつれて高くなり、かつ、車幅方向中央から外側へ近づくにつれて細くなるような3角形をなす。従って、この3点のレイアウトは、
図3に示すような吊り目形状のヘッドランプ本体47L,47Rに対する適合性が高く、小型化等を容易に実現できる。また、ヘッドランプ本体47L,47Rの下方かつ車幅方向外側に光軸調整のための調節ボルト等が配置されないので、その部分のレイアウト自由度を大きく確保することができる。
【0063】
以上に説明したように、本実施形態の鞍乗型車両1は、車体3と、左右のヘッドランプ本体47L,47Rと、ドライバ回路61と、を備える。ドライバ回路61は、左右のヘッドランプ本体47L,47Rを駆動させる。左右のヘッドランプ本体47L,47Rは、それぞれ、対応する発光部材55を収容するハウジング53を備える。ドライバ回路61は、ハウジング53の外部に配置される。
【0064】
これにより、ドライバ回路61が左右のヘッドランプ本体47L,47Rのそれぞれのハウジング53の外部に配置されるので、左右のヘッドランプ本体47L,47Rのそれぞれを小型化することができる。従って、左右のヘッドランプ本体47L,47Rの周囲のレイアウト自由度を増大させることができる。また、左右のヘッドランプ本体47L,47Rのデザインの自由度を向上させることができ、例えば、空気抵抗の低減を図ることができるデザインを実現することができる。
【0065】
また、本実施形態の鞍乗型車両1において、ドライバ回路61は基板73を備える。基板73の厚み方向(
図5の矢印75が示す方向)が車体3の前後方向となす角度よりも、当該基板73の厚み方向が車幅方向となす角度の方が小さい。
【0066】
これにより、ドライバ回路61を、特に車幅方向でコンパクトに配置することができる。また、鞍乗型車両1の走行時の空気抵抗の増加を抑制することができる。
【0067】
また、本実施形態の鞍乗型車両1は、エンジン8を冷却するためのラジエータ10を備える。ドライバ回路61は、ラジエータ10よりも前方に配置される。
【0068】
これにより、鞍乗型車両1の走行時に、ラジエータ10を通過して高温となった空気がドライバ回路61に当たることを回避することができる。従って、ドライバ回路61に熱の影響が生じることを防止することができる。
【0069】
また、本実施形態の鞍乗型車両1において、ドライバ回路61よりも後方の位置に、遮断部材77が配置される。
【0070】
これにより、ラジエータ10を通過して高温となった空気が前方に回り込むのを遮断部材77により防止することができる。従って、ドライバ回路61に熱の影響が生じることを確実に防止することができる。
【0071】
また、本実施形態の鞍乗型車両1は、サイドスタンド21を備える。サイドスタンド21の使用時に、当該サイドスタンド21は車体3を、左側に傾斜した傾斜状態で支持する。ドライバ回路61は、ラジエータ10に対して、車幅方向で、サイドスタンド21の使用時に車体3が傾斜する側(即ち、左側)に配置される。
【0072】
これにより、サイドスタンド21の使用時(鞍乗型車両1の停車時)に、ラジエータ10よりも下方にドライバ回路61を位置させることが可能となる。よって、このとき、ドライバ回路61をラジエータ10よりも下方に位置させることで、ラジエータ10の熱によるドライバ回路61の温度上昇を抑えることができる。
【0073】
また、本実施形態の鞍乗型車両1は、車幅方向の右側に、ラジエータ10のリザーバタンク81を備える。ドライバ回路61は、車幅方向でリザーバタンク81が配置されている側と反対側である左側に配置される。
【0074】
これにより、全体としてコンパクトなスペースに、リザーバタンク81とドライバ回路61を配置することができる。
【0075】
また、本実施形態の鞍乗型車両1は、車幅方向の右側に、キャニスタ89を備える。ドライバ回路61は、車幅方向でキャニスタ89が配置されている側と反対側である左側に配置される。
【0076】
これにより、全体としてコンパクトなスペースに、キャニスタ89とドライバ回路61を配置することができる。
【0077】
また、本実施形態の鞍乗型車両1において、ヘッドランプ本体47L,47Rは、左右で(車幅方向で)対をなすように配置される。それぞれのヘッドランプ本体47L(47R)は、第1点91、第2点92、及び第3点93のうち、第1点91及び第3点93の位置を変更することにより、光軸調整可能に構成される。第1点91と第2点92とは、互いに高さが異なる。第3点93は、第1点91及び第2点92の何れよりも車体3の車幅方向中央から遠い側に配置される。第3点93の高さは、第1点91と第2点92の中間位置94の高さよりも高い。
【0078】
これにより、特に、左右のヘッドランプ本体47L,47Rの下部周囲のスペースのレイアウト自由度を増大させることができる。
【0079】
また、本実施形態の鞍乗型車両1において、ヘッドランプ本体47L,47Rは、左右で(車幅方向で)対をなすように配置される。左右のヘッドランプ本体47L,47Rの間に、導風孔41が配置される。
【0080】
これにより、左右のヘッドランプ本体47L,47Rと導風孔41とを、全体としてコンパクトなスペースに配置することができる。
【0081】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0082】
上記の実施形態では、ヘッドランプは、LED型のヘッドランプ本体を備えるものとしたが、他の種類のヘッドランプ本体を備えるものであっても良い。例えば、ハロゲンランプが考えられる。
【0083】
ドライバ回路61を、左右のヘッドランプ本体47L,47Rに対応して、左右1対で配置しても良い。
【0084】
ドライバ回路61の基板73が車体前後方向となす角度、及び、基板73の厚み方向が車幅方向となす角度は任意に設定可能である。
【0085】
遮断部材77は、その設置位置及び形状を特に限定されるものではなく、ラジエータ10を通過して高温となった空気が前方に回り込むのを防止することができるものであれば良い。
【0086】
ラジエータ10のリザーバタンク81及びキャニスタ89を左側に配置し、ドライバ回路61を右側に配置しても良い。
【0087】
第1点91、第2点92及び第3点93の配置は、適宜変更することができる。3つの点のうち、ハウジング53に対する角度調整ベース54の取付位置を変更可能な点を何れにするかは、適宜変更することができる。例えば、第2点92において角度調整ベース54の位置を変更可能に構成することもできる。
【0088】
上述の教示を考慮すれば、本発明が多くの変更形態及び変形形態をとり得ることは明らかである。従って、本発明が、添付の特許請求の範囲内において、本明細書に記載された以外の方法で実施され得ることを理解されたい。
【符号の説明】
【0089】
1 鞍乗型車両
3 車体
8 エンジン(駆動源)
10 ラジエータ
21 サイドスタンド
41 導風孔
47L 左のヘッドランプ本体
47R 右のヘッドランプ本体
53 ハウジング
55 発光部材
61 ドライバ回路
73 基板
77 遮断部材
81 リザーバタンク
89 キャニスタ
91 第1点
92 第2点
93 第3点