(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】係合構造
(51)【国際特許分類】
F16C 1/26 20060101AFI20240416BHJP
F16C 1/14 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
F16C1/26 A
F16C1/14
(21)【出願番号】P 2020179711
(22)【出願日】2020-10-27
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 博稔
(72)【発明者】
【氏名】水野 翔太
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-009708(JP,A)
【文献】特開平04-029609(JP,A)
【文献】実開昭59-024522(JP,U)
【文献】特開平06-033385(JP,A)
【文献】国際公開第2018/051560(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 1/14、1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルエンドおよびケーブル本体を有するケーブルと、前記ケーブルが接続される接続対象と、前記接続対象が設けられるケーシングとを備えた係合構造であって、
前記接続対象は、
前記ケーブル本体が前記ケーブルの軸方向で挿通可能な挿通部と、
前記ケーブルエンドの後端と対向して、前記ケーブルエンドの後端と前記ケーブルの軸方向に係合する係合部と
を備え、
前記係合構造は、前記ケーブルエンドを前記接続対象に対して前記ケーブルの軸方向に移動させて、前記ケーブルエンドが前記挿通部を前記ケーブルの軸方向で越えることにより、前記ケーブルエンドの後端と前記係合部とが係合可能となるように構成され、
前記係合構造がさらに、
前記ケーブルエンドが前記接続対象の前記係合部に係合された状態となる前に、前記ケーブルエンドが前記挿通部を前記ケーブルの軸方向で越える通過位置において、前記ケーブルエンドの後端を押圧する押圧部材を備えている、係合構造。
【請求項2】
前記ケーシングまたは前記接続対象が、
前記ケーブルエンドが前記挿通部を前記ケーブルの軸方向で越える際に、前記ケーブルエンドが前記係合部と係合している係合状態のときの前記ケーブルの軸から離れる方向に、前記ケーブルエンドを案内する案内部を有し、
前記押圧部材は、前記案内部によって、前記係合状態のケーブルの軸から所定の距離離れている前記通過位置に案内された前記ケーブルエンドの後端に、前記ケーブルの軸方向で対向する位置に配置されている、請求項1に記載の係合構造。
【請求項3】
前記押圧部材は、前記ケーシングに取り付けられ、
前記押圧部材の一部は、前記ケーブルエンドの後端を押圧した後、前記係合状態のケーブルの軸から所定の距離離れている前記通過位置に位置している、請求項2に記載の係合構造。
【請求項4】
前記押圧部材が、前記ケーブル本体が挿通される筒状部と、前記ケーブルエンドの後端を押圧する押圧部とを備え、
前記ケーシングが、前記押圧部材の前記筒状部を前記ケーシングの外部から挿入可能な挿入開口部を有し、
前記押圧部は、前記筒状部の周方向の一部から、前記ケーブルの軸方向に延びている、請求項1~3のいずれか1項に記載の係合構造。
【請求項5】
前記挿入開口部は、前記筒状部の形状に対応した筒状部収容部と、前記筒状部収容部に対して、前記ケーブルの軸から離れる方向に突出し、前記押圧部の形状に対応した押圧部収容部とを備えた鍵型構造を有し、
前記鍵型構造の前記挿入開口部に前記押圧部材が挿入されたときに、前記押圧部の先端が前記ケーブルエンドの後端を押圧可能な位置に位置付けられる、請求項4に記載の係合構造。
【請求項6】
前記接続対象が、前記ケーシング内で前記ケーブルの軸方向に移動可能なスライダであり、
前記スライダが、前記ケーブルの軸方向で、前記ケーブルエンドが前記挿通部を越えるときの移動方向とは反対方向に付勢部材によって付勢されており、
前記ケーブルエンドが前記押圧部材によって押圧されたときに、前記ケーブルエンドの先端が、前記付勢部材の付勢力に抗して、前記付勢部材によって付勢された前記スライダまたは前記付勢部材を前記移動方向に押圧する、請求項1~5のいずれか1項に記載の係合構造。
【請求項7】
前記押圧部材が、前記ケーブルエンドが前記通過位置に到達するまで、前記ケーブル本体を仮保持する仮保持部を有し、
前記ケーブルエンドは、
前記ケーブルエンドの後端が前記押圧部材によって押圧され、前記ケーブルエンドの先端側が前記ケーシング内に設けられた接触部と接触することにより、前記係合部と係合可能となる係合位置へ向かう方向の力を受けるように構成され、
前記ケーブルエンドが係合位置へ向かう方向の力を受けたときに、前記ケーブル本体は前記仮保持部から外れて前記挿通部に挿通される、請求項1~6のいずれか1項に記載の係合構造。
【請求項8】
前記接続対象が、前記ケーシング内で前記ケーブルの軸方向に移動可能なスライダであり、
前記スライダが、前記ケーブルの軸方向で、前記ケーブルエンドが前記挿通部を越えるときの移動方向とは反対方向に付勢部材によって付勢されており、
前記接触部は、前記付勢部材の端部である、請求項7に記載の係合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は係合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ケーブル式で駆動されるアクチュエータにおいて、ケーシング内において、ケーブルの端部(ケーブルエンド)がスライダ等の接続対象に接続されている(例えば特許文献1参照)。この場合、ケーブルエンドを、ケーブルの軸方向に略垂直な方向に延びる、接続対象の壁部に係合させる。具体的には、ケーブルを接続対象に接続する場合、ケーシングを開放した状態で、接続対象の壁部の上方にケーブルのケーブルエンドを位置させて、ケーブルエンドと接続対象の壁部の内面とが係合できるようにケーブルを下方に移動させる。この際、ケーブルは壁部に形成されたケーブル挿通溝に通される。ケーブルが接続対象に接続された後、ケーシングを閉鎖して、ケーブルの組み付けが完了する。
【0003】
一方、例えば、アクチュエータとケーブルとを別々に搬送して、ケーブルのみをアクチュエータに後付けして、完成品とするなど、アクチュエータのケーシングを開放することなく、ケーブルを組み付けることが可能なアクチュエータへの要望がある。
【0004】
ケーブルを接続対象に後付け可能な構造として、特許文献2には、ケーブルのケーブルエンドを、ケーブルの軸方向に移動させることにより、ケーブルエンドが案内面に沿って移動して、接続対象の係合部をケーブルの軸方向で乗り越えて係合部に係合させることができる構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-183994号公報
【文献】国際公開第2012/147949号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2のような構造を有していたとしても、ケーブルは可撓性を有しているので、ケーブルエンドを係合箇所まで安定して移動させることが困難である。また、ケーブルエンドが案内面を乗り越えた先に、バネなどの他部材が設けられている場合には、他部材が障害物となって、ケーブルエンドをそれ以上押し込むことがより困難となることもある。
【0007】
そこで、本発明は、ケーブルをケーシング内の接続対象に組み付ける際に、ケーシングを開放する必要がなく、ケーブルエンドをケーブルの軸方向に移動させて、ケーブルエンドを接続対象の係合部に到達させることが容易な、係合構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の係合構造は、ケーブルエンドおよびケーブル本体を有するケーブルと、前記ケーブルが接続される接続対象と、前記接続対象が設けられるケーシングとを備えた係合構造であって、前記接続対象は、前記ケーブル本体が前記ケーブルの軸方向で挿通可能な挿通部と、前記ケーブルエンドの後端と対向して、前記ケーブルエンドの後端と前記ケーブルの軸方向に係合する係合部とを備え、前記係合構造は、前記ケーブルエンドを前記接続対象に対して前記ケーブルの軸方向に移動させて、前記ケーブルエンドが前記挿通部を前記ケーブルの軸方向で越えることにより、前記ケーブルエンドの後端と前記係合部とが係合可能となるように構成され、前記係合構造がさらに、前記ケーブルエンドが前記挿通部を前記ケーブルの軸方向で越える通過位置において、前記ケーブルエンドの後端を押圧する押圧部材を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の係合構造によれば、ケーブルをケーシング内の接続対象に組み付ける際に、ケーシングを開放する必要がなく、ケーブルエンドをケーブルの軸方向に移動させて、ケーブルエンドを接続対象の係合部に到達させることが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態の係合構造が設けられた駆動装置の初期状態を示す上面図である。
【
図2】
図1のA-A線に沿って、スライダ、押圧部材、ケーシングを切断した部分断面図である。
【
図3】
図2に示される状態から駆動部が駆動されてスライダが移動した状態を示す図である。
【
図4】
図2のB-B線に沿ってスライダおよびケーシングが切断された部分断面図である。
【
図5】
図1の駆動装置に用いられるスライダの斜視図である。
【
図6】
図1の駆動装置のケーシングに設けられた案内部および挿入開口部を示す斜視図である。
【
図7】
図1の駆動装置のケーシングの挿入開口部を示す図である。
【
図8】ケーブルが挿通された押圧部材の斜視図である。
【
図11】ケーシングの挿入開口部からケーブルエンドがわずかに挿入された状態を示す概略図である。
【
図12】
図11に示される状態からさらにケーブルエンドが軸方向に移動して、ケーブルエンドが案内部の傾斜面に接触した状態を示す概略図である。
【
図13】
図12に示される状態からさらにケーブルエンドが軸方向に移動して、ケーブルエンドが通過位置である通過開口部内に位置した状態を示す概略図である。
【
図14】
図13に示される状態から、押圧部材が挿入開口部に挿入されて、ケーブルエンドの後端に当接した状態を示す概略図である。
【
図15】
図14に示される状態から、押圧部材によってケーブルエンドの後端が押圧され、ケーブルエンドの先端によってコイルバネが押圧された状態を示す概略図である。
【
図16】
図15に示される状態から、押圧部材によってケーブルエンドの後端がさらに押圧され、ケーブルエンドの後端の一部が係合部に係合された状態を示す概略図である。
【
図17】本発明の第2実施形態の係合構造において、押圧部材によってケーブル本体が仮保持されて、ケーシングに挿入される状態を示す概略図である。
【
図19】
図17に示される状態から、ケーブルエンドがケーシング内に挿入され、ケーブルエンドが接触部に接触した状態を示す概略図である。
【
図20】
図19に示される状態から、ケーブルエンドの後端が押圧部材によって押圧されることにより、ケーブル本体が仮保持部から外れて、ケーブルエンドが係合部に係合した状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態の係合構造を説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまで一例であり、本発明の係合構造は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
<第1実施形態>
図1に示されるように、本実施形態の係合構造1は、ケーブルエンド2aおよびケーブル本体2cを有するケーブル2と、ケーブル2が接続される接続対象3と、接続対象3が設けられるケーシング4とを備えている。
【0013】
係合構造1は、ケーブル2と、ケーシング4に設けられた接続対象3とを接続する構造である。具体的には、係合構造1は、後述するように、ケーブルエンド2aをケーブル2の軸X(
図1参照)方向に移動させることにより、ケーブルエンド2aをケーシング4内の接続対象3に接続する構造である。本実施形態では、ケーブル2と接続対象3とが接続されることにより、ケーブル2と接続対象3との間で、操作力の伝達が可能となる。係合構造1の用途および構造は、ケーブル2と、ケーシング4に設けられた接続対象3とを接続する用途および構造であれば、特に限定されない。本実施形態では、係合構造1は、接続対象3の動作によってケーブル2を操作する駆動装置Dに適用されている。以下、係合構造1が設けられた駆動装置Dを例にあげて、本発明の係合構造を説明する。しかし、係合構造および係合構造が設けられた駆動装置の構造は、以下の例に限定されるものではない。
【0014】
係合構造1を含む駆動装置Dは、本実施形態では、
図1に示されるように、ケーブル2と、ケーブル2が接続され、ケーシング4内でケーブル2の軸X方向に移動可能なスライダである接続対象3(以下、スライダ3とも呼ぶ)と、接続対象であるスライダ3を駆動する駆動部5とを備えている。本実施形態では、駆動装置Dは、スライダ3を所定の移動方向に付勢する付勢部材6を備えている。
【0015】
なお、本明細書において、ケーブル2の軸Xは、ケーシング4に設けられた接続対象3にケーブル2が接続された状態(
図1および
図2に示される状態)での、ケーブルエンド2aの近傍のケーブル2(例えば、ケーシング4内に延びる部分)の軸をいい、軸X方向はその軸Xが延びる方向をいう。また、本明細書において、接続対象(スライダ)3が移動する方向を移動方向D1と呼ぶ。本実施形態では、移動方向D1は軸X方向と同方向となり、接続対象(スライダ)3の移動方向D1は軸X方向と言い替えることができ、軸X方向は接続対象(スライダ)3の移動方向D1と言い替えることができる。また、移動方向D1のうち、一方の移動方向を第1移動方向D11、他方の移動方向を第2移動方向D12という。本実施形態では、第1移動方向D11は、ケーブル2を接続対象3に取り付けるときにケーブル2を移動させる方向と一致する。また、本明細書において、移動方向D1に垂直な一の方向、特に、接続対象(スライダ)3が摺動するケーシング4の底面(摺動面)41a(
図2参照)に対して垂直な方向を高さ方向D2と呼び、移動方向D1および高さ方向D2の両方に垂直な方向を幅方向D3(
図4参照)と呼ぶ。なお、本明細書において、「垂直」という場合、基準となる方向、線、面などに完全に垂直な状態だけでなく、垂直に近い略垂直な状態も含む。
【0016】
駆動装置Dは、駆動部5の駆動力によってスライダ3を移動方向D1に移動させて、スライダ3に接続されたケーブル2を移動させる。本実施形態では、駆動装置Dは、
図1に示されるように、ケーブル2に接続された作動対象OPを作動させるように構成されている。より具体的には、後述するように、駆動部5の駆動力によってスライダ3が移動方向D1で一方の方向となる第1移動方向D11に移動して、ケーブル2が第1移動方向D11に引き操作された場合(
図3参照)には、ケーブル2によって作動対象OPが操作される。一方、駆動部5の駆動力が解除されると、スライダ3は、付勢部材6の付勢力によって、第1移動方向D11と反対の方向となる第2移動方向D12に移動して、スライダ3が
図1に示される初期位置に戻される。なお、本実施形態では、駆動装置Dは、単一のケーブル2のみを有しているが、駆動装置Dは、2本以上のケーブルを有していてもよい。
【0017】
駆動装置Dの用途は、駆動部5の駆動力によってスライダ3を移動させて、スライダ3に接続されたケーブル2を移動させることができれば、特に限定されない。具体的には、駆動装置Dは、例えば、作動対象OPが車両のシートのリクライニング機構のロック装置や、フューエルリッドのロック装置である場合など、ロック装置のロックを解除するロック解除用の駆動装置とすることができる。
【0018】
ケーブル2は、接続対象3に接続される。ケーブル2は、接続対象3によって操作される従動ケーブルであってもよいし、ケーブル2の操作によって、接続対象3を操作する駆動ケーブルであってもよい。本実施形態では、ケーブル2は、接続対象であるスライダ3に接続され、スライダ3の移動によって操作される。ケーブル2は、本実施形態では、
図1に示されるように、ケーブル2の一端側に設けられたケーブルエンド2aと、ケーブル2の他端側に設けられたケーブルエンド2bと、ケーブル本体2cとを有している。本実施形態では、ケーブル2のケーブルエンド2aはスライダ3に接続され、ケーブル2の他端側のケーブルエンド2bは作動対象OPに接続されている。なお、ケーブル2が接続対象3を操作する駆動ケーブルである場合、ケーブルエンド2bは、接続対象3を操作するためにケーブル2を操作する操作部(図示せず)に接続される。
【0019】
ケーブル2は、本実施形態では、コントロールケーブルのインナーケーブルであり、
図1に示されるように、コントロールケーブルのアウターケーシングOCに挿通されている。ケーブル2は、アウターケーシングOCによって、車体等の取付対象において、所定の配索経路で配索される。本実施形態では、後述する押圧部材7がアウターケーシングOCの端部に設けられ、アウターケーシングOCは、押圧部材7を介してケーシング4に取り付けられている。ケーブル2のケーブル本体2cは、アウターケーシングOCおよび押圧部材7に挿通されて、ケーシング4の外側からケーシング4の内側へと導入されている。
【0020】
ケーブルエンド2aは、接続対象3に係合して接続される。具体的には、ケーブルエンド2aは、
図2に示されるように、ケーブルエンド2aの後端Rが接続対象3に係合するように構成されている。ケーブルエンド2aの形状および構造は、接続対象3に係合して接続可能であれば特に限定されない。本実施形態では、ケーブルエンド2aの後端Rは、
図2に示されるように、ケーブル2の軸Xに垂直な平坦面によって構成されている。ケーブルエンド2aの先端Tは、本実施形態では、
図8に示されるように、先細となるように構成されている。なお、ケーブルエンド2bは、ケーブルエンド2aと同様の形状および構造を有していてもよいし、異なる形状および構造を有していてもよい。
【0021】
ケーシング4は、接続対象3が設けられる容器である。ケーシング4は、本実施形態では、
図1に示されるように、接続対象であるスライダ3の他、駆動装置Dの構成部品の一部を収容する。具体的には、ケーシング4は、
図1に示されるように、駆動部5、スライダ3および付勢部材6を収容している。ケーシング4は、本実施形態では、
図1に示されるように、接続対象であるスライダ3を摺動可能に収容する接続対象収容部41(以下、スライダ収容部41と呼ぶ)と、駆動部5を収容する駆動部収容部42とを備えている。また、ケーシング4は、軸X方向でスライダ収容部41の一方側(第2移動方向D12側)に、ケーブル2をケーシング4の内部へと導入するケーブル導入部43を備えている。また、本実施形態では、ケーシング4は、軸X方向でケーブル導入部43とスライダ収容部41との間に、後述するように、ケーブルエンド2aを所定の方向に案内する案内部44を有している。なお、本実施形態では、ケーシング4は、互いに対して開閉可能な第1ケーシング部材4Aと第2ケーシング部材4B(
図2等参照)とを有しており、第1ケーシング部材4Aに対して第2ケーシング部材4Bを閉鎖することによって、各部材を内部に収容するように構成されている。しかし、ケーシング4の全体形状や構造は特に限定されない。
【0022】
本実施形態では、ケーシング4は、
図2および
図3に示されるように、スライダ3が摺動する摺動面41aを有している。また、ケーシング4(スライダ収容部41)は、
図4に示されるように、摺動面41aに対して略垂直かつスライダ3の移動方向D1に沿って延びる一対の案内壁41c、41dを備えている。本実施形態では、摺動面41aおよび一対の案内壁41c、41dは、スライダ収容部41に設けられている。スライダ収容部41は、スライダ3が移動方向D1に所定のストロークで摺動可能となる内部空間を有している。本実施形態では、スライダ収容部41の内部空間は、略直方体状の空間であり、スライダ4の摺動面41aとなる底面(以下、底面41aとも呼ぶ)と、底面41aに対向する上面41b(
図2参照)と、スライダ3の幅方向D3で両側に設けられた、一対の案内壁41c、41dとなる側壁(
図4参照。以下、側壁41c、41dとも呼ぶ)と、スライダ3の移動方向D1で両側に設けられた端壁41e、41f(
図1参照)によって画定されている。本実施形態では、底面41aは平坦面として形成されているが、底面41aはスライダ3が摺動可能であれば、平坦面である必要はない。また、側壁41c、41dは、幅方向D3でスライダ3の幅に対応した幅で離間している。これにより、側壁41c、41dは、スライダ3を移動方向D1に沿って安定して移動させるガイド部として機能する。なお、本実施形態では、摺動面は、ケーシング4の底面41a以外に、側壁41c、41dから段差状に設けられた摺動面41gを有しており、後述する摺動部34が摺動可能となっている。
【0023】
ケーブル導入部43は、ケーブル2のケーブルエンド2aをスライダ3に接続できるように、ケーブル2をケーシング4の外部からケーシング4の内部へと導入する部位である。具体的には、ケーブル導入部43は、
図1に示されるように、軸X方向でケーシング4の一方側(第2移動方向D12側)に設けられている。ケーブル導入部43は、ケーシング4の外部と内部とを連通させる挿入開口部431(
図6および
図7参照)を有している。
【0024】
挿入開口部431は、ケーブル2のケーブルエンド2aをスライダ3に接続できるように、ケーブル2をケーシング4の外部からケーシング4の内部へと挿入可能な開口である。挿入開口部431は、
図6および
図7に示されるように、ケーシング4の軸X方向の一端(第2移動方向D12側)に設けられたケーシング4の側壁43aに設けられている。挿入開口部431は、本実施形態では、後述する押圧部材7が挿入されるように構成されている。具体的には、挿入開口部431は、後述する押圧部材7の筒状部71(
図8参照)をケーシング4の外部から挿入可能である。挿入開口部431の形状および構造は、ケーブル2をケーシング4の外部からケーシング4の内部へと挿入可能であれば、特に限定されないが、本実施形態では、後述するように、鍵型構造(
図6および
図7参照)を有している。
【0025】
駆動部収容部42は、
図1に示されるように、駆動部5を収容する。具体的には、駆動部収容部42は、スライダ収容部41に幅方向D3で隣接した位置に設けられ、スライダ収容部41と連通している。本実施形態では、駆動部収容部42は、後述するように、駆動部5のモータ51と複数の伝動部材52a、52b、52c、52dを収容できるように構成されている。
【0026】
駆動部5は、スライダ3を移動させる駆動力を発生させる。本実施形態では、駆動部5は、
図1に示されるように、モータ51と、1または複数の伝動部材52a、52b、52c、52dとを有している。モータ51は、モータ51の回転力によって、伝動部材52a、52b、52c、52dを介して、スライダ3を移動方向D1に移動させる。伝動部材52a、52b、52c、52dは、本実施形態では、モータ51により生じる回転力をスライダ3へ向かって伝達可能に構成されたギヤである。具体的には、駆動部5は、
図1に示されるように、後述するようにラック部(動力伝達部)35を有するスライダ3と係合するピニオンギヤPを有しており、駆動部5の駆動力をスライダ3に伝達する。より具体的には、モータ51の出力軸および各伝動部材52a、52b、52c、52dは、幅方向D3に延びる回転軸を中心に回転するように構成されており、伝動部材52dのピニオンギヤPがスライダ3のラック部35に係合して、スライダ3を移動させるように構成されている。なお、駆動部5の構造は、スライダ3を移動させる駆動力を発生させることができれば、図示する構造に限定されない。例えば、本実施形態では、駆動部5はスライダ3に回転駆動力を伝達するように構成されているが、駆動部5はスライダ3に直線駆動力を伝達するように構成されていてもよい。
【0027】
接続対象3は、ケーシング4内に設けられたケーブル2が接続される対象である。接続対象3は、
図1および
図2に示されるように、ケーブルエンド2aに隣接するケーブル本体2cのケーブル部分(以下、単にケーブル本体2cと呼ぶ)がケーブル2の軸X方向で挿通可能な挿通部31と、ケーブルエンド2aの後端Rと対向して、ケーブルエンド2aの後端Rとケーブル2の軸X方向に係合する係合部32とを備えている。
【0028】
接続対象3の構造は、ケーブル2を接続可能であり、挿通部31および係合部32を有していれば特に限定されない。本実施形態では、接続対象3は、上述したように、ケーシング4内でケーブル2の軸X方向に移動可能なスライダである。
【0029】
本実施形態では、接続対象であるスライダ3は、駆動部5の駆動力によって移動方向D1(第1移動方向D11)に移動可能であり、スライダ3に連結されたケーブル2を操作する。本実施形態では、スライダ3は、
図1および
図2に示されるように、付勢部材(コイルバネ)6の一部を収容する、移動方向D1に沿って延びる付勢部材収容部33を備えている。また、本実施形態では、スライダ3は、ケーシング4の摺動面41a、41gに沿って摺動する摺動部34(
図2および
図4参照)と、駆動部5と接続され、駆動部5の駆動力が伝達される動力伝達部35とを有している。より具体的には、スライダ3は、
図1および
図4に示されるように、一対の案内壁41c、41dに対向して延びる板状の一対の被案内面36a、36bと、一対の被案内面36a、36bを繋ぎ、ピニオンギヤPと係合する、動力伝達部であるラック部35とを有している。
【0030】
スライダ3の形状および構造は、駆動部5の駆動力によってスライダ3が移動方向D1に移動可能であり、スライダ3に連結されたケーブル2を操作することができれば、特に限定されない。本実施形態では、スライダ3は、
図1、
図2および
図5に示されるように、移動方向D1に所定の長さを有し、移動方向D1に垂直な断面が略U字状(
図4参照)となる形状を有している。より具体的には、スライダ3は、
図4に示されるように、幅方向D3に離間し、被案内面36a、36bを有する一対の側壁W1、W2と、一対の側壁W1、W2を幅方向D3に繋ぎ、ラック部35を有する上壁W3とを有している。一対の側壁W1、W2は、互いに平行に移動方向D1に沿って延びている。
図1に示されるように、スライダ3の移動方向D1の一端側(第2移動方向D12側)には係合部32が設けられている。係合部32に係合したケーブル2のケーブル本体2cは、
図1および
図2に示されるように、挿通部31に挿通されている。また、軸X方向でスライダ3の一端側(第2移動方向D12側)には、後述するように、ケーブルエンド2aが係合部32に係合する前に、挿通部31を軸X方向に通過する通過開口部37(
図2および
図5参照)を有している。
図5に示されるように、通過開口部37は挿通部31と高さ方向D2で連通している。また、軸X方向でスライダ3の他端側(第1移動方向D11側)は、付勢部材6を移動方向D1でスライダ3の付勢部材収容部33に挿入できるように開口している。
【0031】
挿通部31は、ケーブルエンド2aが係合部32に係合しているときに(
図1および
図2参照)、ケーブルエンド2aに隣接するケーブル本体2cがケーブル2の軸X方向で挿通可能な部分である。本実施形態では、挿通部31は、
図1および
図2に示されるように、軸X方向で接続対象であるスライダ3の一端(第2移動方向D12側)に設けられた壁部W4に形成されている。挿通部31は、ケーブル本体2cが挿通可能な大きさに形成されていればよい。本実施形態では、挿通部31は、ケーブル本体2cの外径よりもわずかに大きく、ケーブルエンド2aは入ることができない幅を有する、高さ方向D2に延びるスリットとして示されている。
【0032】
本実施形態では、接続対象であるスライダ3は、
図3および
図5に示されるように、ケーブル本体2cが挿通部31を通り、ケーブルエンド2aが係合部32に係合された状態となる前に、ケーブルエンド2aが挿通部31を軸X方向で通過する通過位置に、通過開口部37を有している。本実施形態では、通過開口部37は、
図2および
図5に示されるように、軸X方向でスライダ3の一端(第2移動方向D12側)に設けられた壁部W4に形成されている。なお、「通過位置」は、ケーブルエンド2aが接続対象3の係合部32に係合された状態となる前に、ケーブルエンド2aが挿通部31をケーブル2の軸X方向で越えて通過する位置である。通過位置は、挿通部31をケーブル2の軸X方向で越えて通過する位置であれば特に限定されない。本実施形態では、通過位置は、挿通部31に対して軸X方向に垂直な方向にずれた位置であり、より具体的には、挿通部31に対して高さ方向D2で上側の通過開口部37が形成された位置である。
【0033】
本実施形態では、通過開口部37は、通過位置において、ケーブルエンド2aが軸X方向に通過できる大きさに形成されている。通過開口部37は、ケーブルエンド2aが通過開口部37を通過した後、ケーブル本体2cが挿通部31に入ることができるように、挿通部31と連通している。なお、通過開口部37は、本実施形態では略矩形状であるが、通過開口部37の形状は、ケーブルエンド2aが通過できるように構成されていれば、特に限定されない。
【0034】
係合部32は、ケーブルエンド2aの後端Rと対向して、ケーブルエンド2aの後端Rがケーブル2の軸X方向に係合する部位である。係合部32とケーブルエンド2aの後端Rとが係合することにより、ケーブル2とスライダ3との間で、操作力の伝達が可能となる。係合部32の形状および構造は、ケーブルエンド2aの後端Rがケーブル2の軸X方向に係合することができれば、特に限定されない。また、係合部32が設けられる位置は特に限定されないが、本実施形態では、係合部32は、
図1および
図2に示されるように、軸X方向でスライダ3の一端(第2移動方向D12側)に、軸Xに対して垂直に延びる壁部W4に設けられている。
【0035】
動力伝達部35は、駆動部5の駆動力をスライダ3に伝達可能に構成された部位である。本実施形態では、駆動部5の回転運動がスライダ3の動力伝達部(ラック部)35に伝達されて、スライダ3の直線運動に変換されている。しかし、駆動部5が直線運動をするように構成されて、駆動部5の直線運動が動力伝達部に伝達されて、スライダ3が直線運動をするように構成されていてもよい。本実施形態では、動力伝達部35は、
図1および
図2に示されるように、駆動部5の伝動部材52dのピニオンギヤPが係合するラック部(以下、ラック部35と呼ぶ)である。具体的には、ラック部35は、スライダ3のうち、高さ方向D2で、摺動面41aと対向する摺動部34とは反対側となる面に設けられている。ラック部35は、高さ方向D2に凹凸を形成する歯と溝とが、移動方向D1に交互に形成された歯列を有している。伝動部材52dのピニオンギヤPが回転することにより、ピニオンギヤPの歯とラック部35の歯列とが噛み合って、スライダ3が移動方向D1に移動する。なお、動力伝達部は、必ずしもラック部である必要はなく、駆動部5の構造に応じて変更可能である。
【0036】
被案内面36a、36bは、
図4に示されるように、一対の案内壁41c、41dに対向して延びている。被案内面36a、36bは、ケーシング4内で一対の案内壁41c、41dに案内されて、スライダ3をケーシング4内で安定して移動させる。一対の被案内面36a、36bおよび一対の案内壁41c、41dの形状および構造は、スライダ3をケーシング4内で安定して移動方向D1に移動させることができれば、特に限定されない。本実施形態では、被案内面36a、36bは、スライダ3の幅方向D3に互いに平行かつ対向して設けられている。一対の被案内面36a、36bは、本実施形態では、平坦面として形成された案内壁41c、41dに対してそれぞれ面接触する平坦面として形成されている。しかし、一対の被案内面は、例えば一対の案内壁が湾曲面である場合、その湾曲面に沿って移動方向D1に案内可能な湾曲面であってもよい。また、被案内面は、スライダ3が移動方向D1に安定して移動するようにガイドされていれば、案内壁41c、41dに設けられたガイド突起またはガイド溝に係合する、ガイド溝またはガイド突起などを有していてもよい。
【0037】
摺動部34は、スライダ4が移動方向D1に移動する際に、ケーシング4の摺動面41a、41gに対して摺動する。摺動部34は、スライダ3が移動方向D1に円滑に移動することができれば、平坦面であってもよいし、摺動面41a、41gに設けられたガイド突起やガイド溝に係合して移動方向D1に案内されるように構成されていてもよい。
【0038】
付勢部材収容部33は、付勢部材(コイルバネ)6の一部を収容する内部空間を有する接続対象(スライダ)3の部位である。付勢部材収容部33は、本実施形態では、
図1および
図2に示されるように、スライダ3において移動方向D1に沿って延びている。付勢部材収容部33の形状は、移動方向D1に沿って延び、付勢部材6の一部を収容可能であれば、特に限定されない。本実施形態では、付勢部材収容部33は、
図4に示されるように、側壁W1、W2および上壁W3によって内部空間が画定されている。付勢部材収容部33は、
図1に示されるように、スライダ3の係合部32が設けられている端部とは反対側の端部から、係合部32が設けられた部位の近傍まで移動方向D1に延びている。
【0039】
本実施形態では、スライダ3は、付勢部材6によって、ケーブル2の軸X方向で、ケーブルエンド2aが挿通部31を越えるときの移動方向(本実施形態では、第1移動方向D11)とは反対方向(本実施形態では、第2移動方向D12)に付勢されている。付勢部材6は、ケーブル2の軸X方向で、ケーブルエンド2aがスライダ3への接続時に挿通部31を越えるときの移動方向とは反対方向に付勢するものであれば特に限定されない。本実施形態では、付勢部材6は、軸X方向(移動方向D1)に伸縮軸を有する圧縮コイルバネ(以下、付勢部材をコイルバネ6と呼ぶ)である。
図1に示されるように、駆動装置Dの初期状態において、軸X方向でコイルバネ6の一部は、上述したように付勢部材収容部33に収容され、他の部位は軸X方向でスライダ3の外部に位置している。コイルバネ6の一端は、付勢部材収容部33に設けられたバネ座SSに支持され、コイルバネ6の他端は、ケーシング4の端壁41e側で、バネケースSCの端部に支持されている。スライダ3が第1移動方向D11に移動するときに、コイルバネ6は収縮し(
図3参照)、スライダ3が第2移動方向D12に移動するときに、コイルバネ6は伸長する。なお、本実施形態では、コイルバネ6は、
図1および
図2に示されるように、円筒状のバネケースSCに収容されているが、バネケースSCを用いずにコイルバネ6が露出した状態で用いられてもよい。
【0040】
係合構造1は、本実施形態では、ケーブルエンド2aを接続対象3に対してケーブル2の軸X方向に移動させて、ケーブルエンド2aが接続対象3の挿通部31をケーブル2の軸X方向で越えることにより、ケーブルエンド2aの後端Rと係合部32とが係合可能となるように構成されている。これにより、接続対象3が設けられたケーシング4を開放することなく、ケーブル2をケーシング4の外側から接続対象3の係合部32に係合させることができる。本実施形態では、ケーシング4の挿入開口部431からケーブル2を軸X方向に移動させることで、ケーシング4を開放することなくスライダ3の係合部32にケーブルエンド2aを係合させることができる(
図11~
図16参照)。これにより、例えば、スライダ3や駆動部5が収容されたケーシング4とケーブル2とを別々に搬送して、搬送先でケーシング4とケーブル2とを組み立てるようにすることができる。この場合、ケーブル2とケーシング4とを組み立てた状態の大きなケーブルアッシーの状態で搬送せずに済み、搬送効率が向上する。なお、係合構造1は、ケーシング4を開放することなくケーブル2を接続対象3に接続することが可能であればよく、ケーシング4を開放した状態でケーブル2を係合部32に係合しても構わない。
【0041】
ケーブルエンド2aが挿通部31をケーブル2の軸X方向で越える際に、ケーブルエンド2aが移動する経路は特に限定されない。本実施形態では、
図2および
図6に示されるように、ケーシング4が案内部44を有し、案内部44によって、ケーブルエンド2aが挿通部31をケーブル2の軸X方向で越える際に、ケーブルエンド2aが係合部32と係合している係合状態のときのケーブル2の軸Xから離れる方向に、ケーブルエンド2aが案内される(
図11~
図13参照)。
【0042】
案内部44は、
図11~
図13に示されるように、ケーブル2を軸X方向に案内部44に向かって移動させたときに、ケーブルエンド2aが案内部44に当接した後、ケーブルエンド2aが係合状態のときのケーブル2の軸Xから離れる方向(軸Xに垂直な成分を含む方向)にケーブルエンド2aを案内する。これにより、ケーブル2を軸X方向に移動させることにより、挿通部31を乗り越えて、ケーブルエンド2aを係合部32に到達させて係合させることができる。したがって、例えば、ケーシング4を開放して、ケーブルエンド2aを高さ方向D2で係合部32の上方から下方へと(
図2において、上から下へ)移動させて係合部32に係合させる必要がない。
【0043】
案内部44の形状および構造は、ケーブル2を軸X方向に移動させたときに、ケーブルエンド2aがケーブル2の軸Xから離れる方向にケーブルエンド2aを案内することができれば、特に限定されない。本実施形態では、案内部44は、
図2、
図6、
図11等に示されるように、ケーブル2を取り付ける際にケーブル2を軸X方向に移動させる方向(第1移動方向D11)に進むにつれて、ケーシング4の底面41aからの高さ方向D2での高さが高くなるように構成された傾斜面44aを有している。案内部44の傾斜面44aは、係合状態のときのケーブル本体2cの高さ方向D2での位置(軸X)よりも、高さ方向D2で高くなる通過位置までケーブルエンド2aを案内するように構成されている。これにより、ケーブルエンド2aは、挿通部31を軸X方向に越える際に、挿通部31の位置に対してケーブル2の軸Xに垂直な方向(高さ方向D2で上側)へとシフトする(
図11~
図13参照)。その後、ケーブルエンド2aは通過開口部37を軸X方向に通って挿通部31の上側を通過した後、ケーブルエンド2aが高さ方向D2で下側へと移動して、ケーブルエンド2aが係合部32に係合し、ケーブル本体2cが挿通部31へと入る(
図16および
図2参照)。
【0044】
また、案内部44は、
図1に示されるように、ケーブル2を取り付ける際にケーブル2を軸X方向に移動させる方向(第1移動方向D11)に進むにつれて、幅方向D3の間隔が狭くなるように設けられた一対の誘導壁部44b、44cを有している。一対の誘導壁部44b、44cは、ケーブル2の軸X方向(第1移動方向D11)に移動するケーブルエンド2aが、通過開口部37に向けて誘導されるように、幅方向D3の間隔が狭くなっている。具体的には、ケーブルエンド2aは、案内部44の傾斜面44aによって、高さ方向D2で通過開口部37に誘導され、一対の誘導壁部44b、44cによって、幅方向D3で通過開口部37に誘導される。これにより、ケーブルエンド2aが通過開口部37を通って、挿通部31を軸X方向で乗り越えることを確実にする。
【0045】
なお、案内部44は、
図2および
図6に示されるように、軸X方向で挿通部31と連通する案内部側挿通部44dを有している。案内部側挿通部44dには、係合状態のときのケーブル本体2cが挿通される。案内部側挿通部44dは、ケーブル本体2cの外径よりも幅広で、ケーブルエンド2aの幅よりも幅が狭い、案内部44を軸X方向に貫通して形成された貫通路である。
【0046】
なお、本実施形態では、案内部44はケーシング4に設けられているが、案内部44は接続対象(スライダ)3に設けられていてもよい。例えば、スライダ3の第2移動方向D12側の端部に上述したような傾斜面を有する案内部が設けられていてもよい。この場合も、同様に、ケーブル2を軸X方向に移動させることにより、ケーブルエンド2aを係合部32に係合させることができる。
【0047】
本実施形態では、係合構造1は、
図1、
図2、
図14~
図16に示されるように、ケーブルエンド2aが挿通部31をケーブル2の軸X方向で越える通過位置において、ケーブルエンド2aの後端Rを押圧する押圧部材7を備えている。押圧部材7は、ケーブルエンド2aの後端Rを押圧することによって、ケーブルエンド2aを挿通部31の通過位置において軸X方向に移動させて、係合部32と係合可能な位置まで押し込む。ケーブル2のケーブル本体2cは可撓性を有しているため、ケーブルエンド2aを軸X方向に移動させて係合部32と係合する係合位置まで到達させることが困難であるが、押圧部材7によってケーブルエンド2aの後端Rが軸X方向に押圧されることにより、ケーブル2を軸X方向に安定して移動させることができる。これにより、ケーブル2をケーシング4内の接続対象3に組み付ける際に、ケーシング4を開放する必要がなく、ケーブルエンド2aをケーブルの軸X方向に移動させて、ケーブルエンド2aを接続対象3の係合部32に到達させることが容易となる。
【0048】
本実施形態では、押圧部材7は、
図13~
図15に示されるように、案内部44によって、係合状態のケーブル2の軸X(
図2参照)から所定の距離離れている通過位置に案内されたケーブルエンド2aの後端Rに、ケーブル2の軸X方向で対向する位置に配置される。この場合、案内部44によって通過位置に案内されたケーブルエンド2aを押圧部材7によって軸X方向に確実に押し込むことが可能となる。したがって、ケーブルエンド2aを係合部32に係合可能な係合位置まで移動させることが容易になる。
【0049】
本実施形態では、
図15に示されるように、ケーブルエンド2aが押圧部材7によって押圧されたときに、ケーブルエンド2aの先端Tが、付勢部材6の付勢力に抗して、挿通部31を越えるときの移動方向(第1移動方向D11)に、付勢部材6を押圧するように構成されている。このように、ケーブルエンド2aが軸X方向で通過位置を越えた位置に、コイルバネ等の付勢部材6が設けられている場合、ケーブル2を単に軸X方向に押し込むだけではケーブルエンド2aを係合位置まで移動させることが困難となる(ケーブル本体2cが腰折れして、ケーブル2がそれ以上軸X方向に進まない)。しかし、押圧部材7によってケーブルエンド2aの後端Rを押圧することにより、
図15に示されるように、ケーブルエンド2aは付勢部材6を弾性変形させながら軸X方向に移動することができる。これにより、ケーブルエンド2aを係合部32に容易に係合させることができる。なお、本実施形態では、ケーブルエンド2aの先端Tが直接付勢部材6を押圧するように構成されているが、ケーブルエンド2aの先端Tは、付勢部材6によって付勢されたスライダ3を押圧するように構成されていてもよい。
【0050】
押圧部材7の形状および構造は、ケーブルエンド2aが挿通部31をケーブル2の軸X方向で越える通過位置において、ケーブルエンド2aの後端Rを押圧することができれば、特に限定されない。本実施形態では、押圧部材7は、
図8~
図10に示されるように、ケーブル本体2cが挿通される筒状部71と、ケーブルエンド2aの後端Rを押圧する押圧部72とを備えている。また、本実施形態では、押圧部材7は、アウターケーシングOCの端部に取り付けられ、ケーシング4にアウターケーシングOCを接続するケーシングキャップである。本実施形態では、
図9および
図10に示されるように、押圧部材7は、アウターケーシング接続部73と、板バネ部74とを有している。
【0051】
筒状部71は、ケーブル本体2cが挿通される筒状の部分である。筒状部71の形状および構造は、ケーブル本体2cを挿通可能な内部空間を有する筒状の部分を有していれば、特に限定されず、筒状部71は円筒形状であってもよいし、角筒形状であってもよい。また、筒状部71は、軸X方向で外径や外形が異なる複数の部分を有していてもよい。本実施形態では、筒状部71は、
図10に示されるように、アウターケーシング接続部73と軸X方向で連続して設けられている。押圧部材7がケーシング4に取り付けられた状態において、筒状部71はケーシング4の内部に位置し、アウターケーシング接続部73はケーシング4の外部に位置している(
図16参照)。なお、ケーシング4に取り付けられる前の状態の押圧部材7においては、
図8および
図11に示されるように、アウターケーシング接続部73および筒状部71の内部空間を通ったケーブル本体2cは、筒状部71の軸X方向の一端に設けられた開口から導出されている。
【0052】
押圧部72は、通過位置にあるケーブルエンド2aの後端Rを押圧する部分である。押圧部72の形状および構造は、通過位置にあるケーブルエンド2aの後端Rを押圧することができれば、特に限定されない。本実施形態では、押圧部72は、
図8~
図10に示されるように、筒状部71の周方向の一部から、ケーブル2の軸X方向に延びている。より具体的には、押圧部72は、押圧部材7がケーシング4に接続された状態で、筒状部71の周方向のうち、高さ方向D2で上端部分から軸X方向に延びている。押圧部72は、本実施形態では、筒状部71の軸X方向の一端(第1移動方向D11側の端部)を越えて軸X方向に延びる細長い板状に形成されている。
【0053】
アウターケーシング接続部73は、アウターケーシングOCが接続される部分である。アウターケーシング接続部73は、本実施形態では、アウターケーシングOCの端部がカシメ等、公知の固定方法によって固定される筒状の部分である。
【0054】
板バネ部74は、本実施形態では、
図9に示されるように、筒状部71の外周から突出する一対の板バネによって構成されている。板バネ部74は挿入開口部431に挿入される際には、内側に畳まれるように撓んで、挿入開口部431に挿入された後は外側に開くように弾性変形する。これにより、押圧部材7がケーシング4に取り付けられると、
図1に示されるように、板バネ部74の端部がケーシング4の側壁43aの内面と係合して、押圧部材7がケーシング4から離脱することが抑制される。なお、板バネ部74の形状および構造は、押圧部材7がケーシング4から離脱することを抑制することができれば、特に限定されない。
【0055】
本実施形態では、上述したように、押圧部材7は、ケーシング4に取り付けられている。押圧部材7がケーシング4に取り付けられた状態で、押圧部材7の一部(押圧部72)は、ケーブルエンド2aの後端Rを押圧した後、係合状態のケーブル2の軸Xから所定の距離離れている通過位置に位置している。このように、押圧部材7の一部(本実施形態では押圧部72の先端)が通過位置に位置することで、ケーブルエンド2aが係合部32から通過位置を通って離脱することが抑制される。より具体的には、押圧部材7がケーシング4に取り付けられたときに、押圧部72の先端は、通過位置となる通過開口部37に入り込んで、通過開口部37をケーブルエンド2aが軸X方向に移動できないように封鎖している(
図2および
図16参照)。したがって、ケーブルエンド2aが通過開口部37を通って離脱することが抑制される。なお、本実施形態では、押圧部材7がケーシング4に取り付けられた状態で、押圧部72の先端が、スライダ3の通過開口部37の内部空間に入り込むように押圧部72の軸X方向の長さが設定されている。また、押圧部72の高さ方向D2および幅方向D3の寸法は、押圧部72の先端が、スライダ3の通過開口部37の内部空間に入り込めるように設定されている。
【0056】
また、本実施形態では、
図6および
図7に示されるように、挿入開口部431は、筒状部71の形状に対応した筒状部収容部431aと、筒状部収容部431aに対して、ケーブル2の軸Xから離れる方向に突出し、押圧部72の形状に対応した押圧部収容部431bとを備えた鍵型構造を有している。このように、挿入開口部431が筒状部収容部431aと押圧部収容部431bとを備えた鍵型構造を有していることにより、押圧部材7をケーシング4に取り付ける際に、押圧部材7の軸X周り方向の向き、すなわち、押圧部72の先端の位置が定まる。したがって、鍵型構造の挿入開口部431に押圧部材7が挿入されたときに、押圧部72の先端がケーブルエンド2aの後端Rを押圧可能な位置に位置付けられる。これにより、押圧部材7がケーシング4に取り付けられたときに、押圧部72の先端の位置と、ケーブルエンド2aの後端Rの位置とがずれることが抑制され、より確実にケーブルエンド2aの後端Rを押圧することができる。
【0057】
なお、「鍵型構造」という場合、押圧部材7を所定の向きに配向しなければ、押圧部材7を挿入開口部431に入れることができない構造をいう。また、「筒状部71の形状に対応した筒状部収容部431a」とは、筒状部収容部431aが、鍵型構造を実現できるように筒状部71を収容することができる対応した形状を有していることをいい、本実施形態のように、筒状部収容部431aが筒状部71の外形とほぼ同じ形状であってもよいし、筒状部71とは部分的に異なる形状や寸法を有していてもよい。同様に、「押圧部72の形状に対応した押圧部収容部431b」とは、押圧部収容部431bが、鍵型構造を実現できるように押圧部72を収容することができる対応した形状を有していることをいい、本実施形態のように、押圧部収容部431bが押圧部72の外形とほぼ同じ形状であってもよいし、押圧部72とは部分的に異なる形状や寸法を有していてもよい。筒状部収容部431aおよび押圧部収容部431bの形状は、押圧部材7を挿入開口部431から挿入するときに、押圧部材7の取り付け方向が定まるように構成されていれば、特に限定されない。本実施形態では、
図7に示されるように、筒状部収容部431aは円形の開口を有しており、押圧部収容部431bは、筒状部収容部431aの開口に連続して、円形の開口の周方向の一部から、径方向外側に延びる略矩形状の開口を有している。
【0058】
次に、
図2、
図11~
図16を参照し、本実施形態の係合構造1において、ケーブルエンド2aをスライダ3の係合部32に係合させる方法の一例を説明する。なお、以下の説明はあくまで一例であり、以下の説明により、本発明の係合構造が限定されるものではない。
【0059】
まず、
図11に示されるように、ケーシング4が閉じた状態で、スライダ3が収容されたケーシング4の挿入開口部431からケーブル2のケーブルエンド2aを挿入する。例えば、作業者がケーブル本体2cを手で軸X方向に送り込みながら、ケーブルエンド2aが挿入開口部431に挿入される。なお、
図11に示される状態において、スライダ3は、ケーシング4のスライダ収容部41において、コイルバネ6により第2移動方向D12に付勢されて、スライダ収容部41の端壁41fに当接した状態となっている。
【0060】
ケーブルエンド2aがスライダ3に向けて軸X方向に移動されると、
図12に示されるように、ケーブルエンド2aが案内部44の傾斜面44aに接触する。そのままケーブル2を軸X方向に移動させると、
図13に示されるように、ケーブルエンド2aは傾斜面44aに沿って通過位置となる通過開口部37に向かって移動する。このとき、案内部44は、幅方向D3の幅が徐々に狭くなる一対の誘導壁部44b、44c(
図1参照)を有しているため、ケーブルエンド2aは、より確実に通過開口部37に向かって導かれる。なお、案内部44の傾斜面44aの上側は、ケーシング4の上面41bによって閉鎖されており、ケーブルエンド2aが通過開口部37の上側に逸れることも抑制されている。
【0061】
ケーブルエンド2aが、
図13に示されるように、挿通部31に対して高さ方向D2で上側となる通過開口部37内に位置したとき、ケーブルエンド2aの先端はコイルバネ6の端部に当接する。この状態で、ケーブル本体2cを軸X方向に送り込んでも、ケーブルエンド2aはコイルバネ6の付勢力によってさらに軸X方向に移動することができない(ケーブル本体2cが腰折れしてしまう)。
【0062】
このケーブルエンド2aが通過開口部37に入り、ケーブルエンド2aの先端Tがコイルバネ6の端部に当接した状態となると、
図14に示されるように、押圧部材7をケーシング4の挿入開口部431に挿入する。本実施形態では、挿入開口部431は、
図6および
図7に示されるように、押圧部材7の筒状部71の形状に対応した筒状部収容部431aと、押圧部72の形状に対応した押圧部収容部431bとを備えた鍵型構造を有している。したがって、押圧部72の先端の軸X周り方向での位置が定まった状態で、押圧部材7が挿入される。また、傾斜面44aおよび一対の誘導壁部44b、44cによってケーブルエンド2aは、通過開口部37に案内される。したがって、通過開口部37に案内されたケーブルエンド2aと、挿入開口部431の鍵型構造とによって、インナーケーブル2aの後端Rと、押圧部72の先端とは共に挿通開口部37内に位置付けられる。これにより、押圧部材7の押圧部72によって、ケーブルエンド2aの後端Rが確実に押圧される。
【0063】
押圧部材7の押圧部72によって、ケーブルエンド2aの後端Rが押圧されると、
図15に示されるように、ケーブルエンド2aの先端Tがコイルバネ6の付勢力に抗して、コイルバネ6をわずかに縮めながら、ケーブルエンド2aが軸X方向で第1移動方向D11に移動する。ケーブルエンド2aが
図15に示される状態からコイルバネ6を縮めながら移動することにより、ケーブルエンド2aは、通過開口部37および挿通部31を軸X方向で越える(
図16の実線参照)。ケーブルエンド2aの後端Rが通過開口部37および挿通部31を軸X方向で越えると、
図16に示されるように、ケーブルエンド2aは高さ方向D2で下方向に移動して、ケーブルエンド2aの後端Rが係合部32に係合可能となる。その後、ケーブル本体2cが、
図2に示されるように、下方に移動して挿通部31および案内部側挿通部44dに入り、ケーブル2のスライダ3への組み付けが完了する。この状態において、押圧部材7の筒状部71はケーシング4の挿入開口部431に差し込まれて、押圧部材7の板バネ部74がケーシング4の側壁43aの内面と係合して(
図1参照)、押圧部材7のケーシング4からの離脱が抑制される。
【0064】
なお、本実施形態では、
図15および
図16に示されるように、ケーブルエンド2aの先端Tは先細となるように構成されている。これにより、ケーブルエンド2aの先端Tのテーパー面の上側がコイルバネ6の端部と当接してコイルバネ6の内側へと誘い込まれやすくなっている。したがって、ケーブルエンド2aが押圧部材7によって押し込まれたときに、
図16に二点鎖線で示される状態から、実線で示される状態のように、ケーブルエンド2aが軸X方向に移動するのに伴い、ケーブルエンド2aはコイルバネ6の内側(
図16において下側)へ移動する。これにより、ケーブルエンド2aが軸X方向に移動する際に、係合部32と係合する方向(
図16において下側)へ移動して、ケーブルエンド2aがより係合部32と係合しやすくなり、ケーブルエンド2aが係合部32と不完全な係合状態となることが抑制される。
【0065】
また、本実施形態では、押圧部材7がケーシング4に取り付けられた状態で、
図2および
図16に示されるように、押圧部72の先端は、通過開口部37内に入った状態となっている。したがって、一旦押圧部材7がケーシング4に取り付けられると、ケーブルエンド2aは通過開口部37を通ることができず、ケーブル2がスライダ3またはケーシング4から離脱することが抑制される。
【0066】
<第2実施形態>
つぎに、第2実施形態の係合構造について、
図17~
図20を用いて説明する。なお、以下の説明において、上述した実施形態と共通する事項についての説明は省略し、相違点を中心に説明する。なお、本実施形態の構成と、第1実施形態で説明した内容とは互いに組み合わせて用いることができる。
【0067】
本実施形態では、
図17および
図18に示されるように、押圧部材7が仮保持部75を有している。仮保持部75は、ケーブルエンド2aが通過位置に到達するまで、ケーブル本体2cを仮保持する。後述するように、仮保持部75を有している場合、第1実施形態で説明した案内部44によらずに、ケーブルエンド2aを通過位置に到達させることができる。したがって、例えば、ケーブル本体2cが細い場合など、ケーブルエンド2aを案内部44によって通過位置まで案内させることが困難な場合であっても、容易にケーブルエンド2aを通過位置まで到達させることができる。なお、第2実施形態では、ケーシング4に案内部は設けられていないが、仮保持部75を有する押圧部材7を用いる場合であっても、ケーシング4に案内部が設けられていても構わない。
【0068】
なお、本実施形態では、
図17に示されるように、ケーシング4にはケーシング壁部45が設けられている。ケーシング壁部45は、本実施形態では、付勢部材6によって第2移動方向D12に付勢されたスライダ3の端部が当接する。ケーシング壁部45は、ケーブルエンド2aが係合部32に係合したときに、ケーブル本体2cが挿通されるケーシング側挿通部45aを有している。なお、ケーシング壁部45は、ケーブル2がスライダ(接続対象)3に接続されるときに、移動方向D1で所定の位置に保持されるように構成されていれば、設けられる必要はない。
【0069】
また、本実施形態では、
図19および
図20に示されるように、ケーブルエンド2aは、ケーブルエンド2aの後端Rが押圧部材7によって押圧され、ケーブルエンド2aの先端T側がケーシング4内に設けられた接触部CTと接触することにより、係合部32と係合可能となる係合位置へ向かう方向(
図20において下方向)の力を受けるように構成されている。このケーブルエンド2aが係合位置へ向かう方向の力を受けたときに、ケーブル本体2cは仮保持部75から外れて、接続対象であるスライダ3の挿通部31に挿通される(
図20の実線参照)。
【0070】
このように、本実施形態では、ケーブルエンド2aを通過位置まで移動させる際に、仮保持部75によってケーブル本体2cを仮保持することにより、ケーブル本体2cが細い場合などであっても、ケーブルエンド2aを通過位置まで容易に到達させることができる(
図17および
図19参照)。さらに、
図19および
図20に示されるように、ケーブル2を第1移動方向D11に移動させることにより、ケーブルエンド2aが係合位置に向かう方向の力、すなわち、
図20において下向きの力を受けるように、接触部CT(本実施形態では、付勢部材6の端部の内縁)に接触する。これにより、ケーブルエンド2aが係合位置に向かう方向に(
図20における二点鎖線の状態から実線の状態へと)移動する。ケーブルエンド2aが係合位置に向かって移動すると、仮保持部75に保持されたケーブル本体2cにも係合位置に向かう方向(
図20において下方向)の力が加わる。これにより、通過位置までは仮保持部75によって仮保持されていたケーブル本体2cは、仮保持状態を解除される(仮保持部75から外れる)。これにより、ケーブルエンド2aは係合部32に係合する係合位置に到達するとともに、ケーブル本体2cは、挿通部31(およびケーシング側挿通部45a)に挿通され、ケーブル2と接続対象であるスライダ3との接続が完了する。
【0071】
なお、本実施形態では、コイルバネである付勢部材6の端部(接触部CT)に、ケーブルエンド2aの先端Tのテーパー面の上側が当接することで、係合位置に向かう下向きの力が生じている(
図19および
図20参照)。しかし、接触部CTは、ケーブルエンド2aが押圧部材7に押圧されて第1移動方向D11に移動したときに、ケーブルエンド2aが係合位置に向かう方向の力が生じるように、ケーブルエンド2aと当接することができれば、付勢部材6の端部でなくてもよい。例えば、接触部は、ケーブルエンド2aが係合位置に向かう方向の力が生じる、スライダ3またはケーシング4に設けられた傾斜面であってもよい。また、ケーブルエンド2aは、接触部CTと接触したときに、ケーブルエンド2aが係合位置に向かう方向の力が生じるのであれば、先端Tにテーパー面が設けられていなくてもよい。
【0072】
仮保持部75の形状および構造は、通過位置まではケーブル本体2cを仮保持することができ、かつ、ケーブルエンド2aが係合位置へ向かう方向の力を受けたときに、ケーブル本体は仮保持部から外れる程度の保持力を有していれば、特に限定されない。本実施形態では、ケーブルエンド2aに加わった力がケーブル本体2cに伝わりやすいように、仮保持部75は、押圧部72の先端側に設けられている。また、仮保持部75は、ケーブルエンド2aが係合位置へ向かう方向の力を受けたときに、ケーブル本体2cが仮保持部75から外れやすいように、
図18に示されるように、ケーブル本体2cと幅方向D3でわずかに係合してケーブル本体2cを部分的に支持する。より具体的には、仮保持部75は、押圧部72から高さ方向D2で下側(ケーシング4の底面41aに向かう方向)に延びる一対のアーム部72a、72bから、幅方向D3で内側に突出する突起PRによって構成され、ケーブル本体2cを軽い力で支持している。なお、突起PRを設けずに、アーム部72a、72bによってケーブル本体2cを弾性的に挟持して、ケーブル本体2cを仮保持しても構わない。
【符号の説明】
【0073】
1 係合構造
2 ケーブル
2a、2b ケーブルエンド
2c ケーブル本体
3 接続対象(スライダ)
31 挿通部
32 係合部
33 付勢部材収容部
34 摺動部
35 動力伝達部(ラック部)
36a、36b 被案内面
37 通過開口部
4 ケーシング
4A 第1ケーシング部材
4B 第2ケーシング部材
41 接続対象収容部(スライダ収容部)
41a 摺動面(底面)
41b 上面
41c、41d 案内壁(側壁)
41e、41f 端壁
41g 摺動面
42 駆動部収容部
43 ケーブル導入部
43a 側壁
431 挿入開口部
431a 筒状部収容部
431b 押圧部収容部
44 案内部
44a 傾斜面
44b、44c 誘導壁部
44d 案内部側挿通部
45 ケーシング壁部
45a ケーシング側挿通部
5 駆動部
51 モータ
52a、52b、52c、52d 伝動部材
6 付勢部材(コイルバネ)
7 押圧部材
71 筒状部
72 押圧部
72a、72b アーム部
73 アウターケーシング接続部
74 板バネ部
75 仮保持部
CT 接触部
D 駆動装置
D1 移動方向
D11 第1移動方向
D12 第2移動方向
D2 高さ方向
D3 幅方向
OC アウターケーシング
OP 作動対象
P ピニオンギヤ
PR 突起
R ケーブルエンドの後端
SC バネケース
SS バネ座
T ケーブルエンドの先端
W1、W2 側壁
W3 上壁
W4 壁部
X ケーブルの軸