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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 7/00 20060101AFI20240416BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
B23Q7/00 E
B23Q17/00 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020184405
(22)【出願日】2020-11-04
(65)【公開番号】P2022074402
(43)【公開日】2022-05-18
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000191180
【氏名又は名称】新日本工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100178582
【弁理士】
【氏名又は名称】行武 孝
(72)【発明者】
【氏名】堀江 利治
(72)【発明者】
【氏名】片岡 奈緒也
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-249243(JP,A)
【文献】実開昭61-005552(JP,U)
【文献】特開平02-100856(JP,A)
【文献】特開平07-040163(JP,A)
【文献】米国特許第05054175(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 1/00-1/76,7/00-7/18,
17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方向を向く支持面を有するベッドと、
前記支持面の上方に配置され、ワークを加工することが可能な加工部と、
上方向を向く載置面を有し、前記加工部の下方において前後方向に沿って移動可能なように前記ベッドの前記支持面に支持されたテーブルと、
前記テーブルと一体で前後方向に移動可能なように前記テーブルの前記載置面に着脱可能に載置され、ワークを保持するパレットと、
前記加工部が前記ワークを加工することが可能な領域である加工領域において前記テーブルを前後方向に移動させることが可能であるとともに、前記加工領域よりも更に前方の位置であって前記テーブルに対して前記パレットを着脱することが可能な位置であるパレット交換位置と前記加工領域との間で前記テーブルを前後方向に移動させることが可能なテーブル駆動部と、
前後方向に延びるように前記テーブルに装着され、前後方向に等間隔に配置された目盛部を有するスケールと、
前記テーブルの前後方向への移動に伴って前記スケールの前記目盛部を検出し当該目盛部に対応する情報を出力することが可能なように前記ベッドに装着される検出ユニットと、
を備え、
前記検出ユニットは、加工側検出位置および当該加工側検出位置よりも前方の交換側検出位置のそれぞれにおいて前記目盛部を検出することが可能であり、前記加工側検出位置は、前記検出ユニットが前記スケールの前記目盛部を検出することで前記テーブルが前記加工領域に配置されていることを検出可能な位置であって、前記交換側検出位置は、前記検出ユニットが前記スケールの前記目盛部を検出することで前記テーブルが前記パレット交換位置に配置されていることを検出可能な位置であり、前後方向における前記加工側検出位置から前記交換側検出位置までの距離が、前後方向における前記スケールの長さよりも短く設定されている、工作機械。
【請求項2】
前記加工領域は、当該加工領域の後端部である加工後端領域と前記加工領域の前端部である加工前端領域とを含み、
前記スケールの前記目盛部は、当該目盛部の後端部に配置される後端目盛部と前記後端目盛部とは反対側で前記目盛部の前端部に配置される前端目盛部とを含み、
前記検出ユニットが前記加工側検出位置において前記スケールの前記前端目盛部を検出することで前記テーブルが前記加工後端領域に配置されていることを検出可能であるとともに前記スケールの前記後端目盛部を検出することで前記テーブルが前記加工前端領域に配置されていることを検出可能であって、前記検出ユニットが前記交換側検出位置において前記スケールの前記後端目盛部を検出することで前記テーブルが前記パレット交換位置に配置されていることを検出可能なように、前記検出ユニットが前記ベッドに装着されている、請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記検出ユニットは、
前記目盛部を検出することが可能な一つの検出部と、
前記一つの検出部を前記加工側検出位置から前記交換側検出位置に及び前記交換側検出位置から前記加工側検出位置に移動させることが可能な検出部移動機構と、
を有する、請求項1または2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記検出ユニットは、
前記ベッドにおいて前記加工側検出位置に固定される第1検出部と、
前記ベッドにおいて前記交換側検出位置に固定される第2検出部と、
を有する、請求項1または2に記載の工作機械。
【請求項5】
前後方向と直交する方向において前記テーブルと前記スケールとを互いに接続し、前記テーブルと前記スケールとの間での熱伝達を促進する熱伝達促進部材を更に備える、請求項1乃至4の何れか1項に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パレットを交換することが可能な工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ベッドと、当該ベッド上に配置されワークを支持するテーブルと、加工領域において前記ワークを加工することが可能な工具を含む主軸と、前記ワークが前記工具の下方を通過するように前記テーブルを前記ベッドに対して前後方向に相対移動させるテーブル駆動部と、を有する工作機械が知られている。
【0003】
特許文献1には、前後方向において前記テーブルと同等の長さ寸法を有し前記テーブルに固定されたスケールと、前記ベッド(特許文献1のサドル)に装着され前記スケールの目盛部を検出可能な検出部とを更に有する工作機械が開示されている。前記テーブル駆動部が前記テーブルを前記ベッドに対して前後方向に移動させると、前記検出部が前記スケールの目盛部を検出することで前記ベッドに対する前記テーブルの相対位置が検出される。当該工作機械では、ワークおよびスケールが共にテーブルに配置されているため、工具がワークを加工する際の発熱などによって機械内部の温度が上昇してもワークおよびスケールの熱変位量が近似していることによって、スケールの各目盛部とワークとの相対位置が変化しにくくワークの加工精度が低下することを抑止することができる。
【0004】
また、特許文献2および3には、パレット交換機能を有する工作機械がそれぞれ開示されている。当該技術では、前記テーブル上にワークを保持するパレットが載置され、テーブル駆動部が前記テーブルを前記加工領域から離れたパレット交換位置まで移動させることが可能とされている。テーブルがパレット交換位置まで移動されると、テーブル上のパレットが新しいワークを保持するパレットに交換される。その後、テーブルが再び加工領域に移動されると、新しいワークに対する加工が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平2-100856号公報
【文献】特開昭61-249243号公報
【文献】実開昭61-005552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された工作機械のようにスケールがテーブルに装着されている構成において、パレット交換位置までテーブルを移動させパレットを交換する場合、テーブルの移動に伴ってスケールが工作機械の周辺機器と干渉する問題や工作機械のサイズが大型化するという問題がある。具体的に、特許文献1に記載された工作機械において、テーブルの位置を管理しながら当該テーブルをパレット交換位置まで移動させるためには、前記スケールがテーブルからパレット交換位置とは反対側に向かって突出するように前記スケールを延長することが想定される。この場合、スケールのうちテーブルから突出した部分がテーブルの移動に伴って工作機械の周辺機器と干渉する、または、当該干渉を回避するために加工領域の周辺に余分な空間を設ける必要が生じ工作機械のサイズが大型化する。
【0007】
本発明は、テーブルが加工領域内のみを移動する場合と比較してスケールの長さを延長することなく加工領域から離れたパレット交換位置においてパレットを交換することが可能な工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の局面に係る工作機械は、上方向を向く支持面を有するベッドと、前記支持面の上方に配置され、ワークを加工することが可能な加工部と、上方向を向く載置面を有し、前記加工部の下方において前後方向に沿って移動可能なように前記ベッドの前記支持面に支持されたテーブルと、前記テーブルと一体で前後方向に移動可能なように前記テーブルの前記載置面に着脱可能に載置され、ワークを保持するパレットと、前記加工部が前記ワークを加工することが可能な領域である加工領域において前記テーブルを前後方向に移動させることが可能であるとともに、前記加工領域よりも更に前方の位置であって前記テーブルに対して前記パレットを着脱することが可能な位置であるパレット交換位置と前記加工領域との間で前記テーブルを前後方向に移動させることが可能なテーブル駆動部と、前後方向に延びるように前記テーブルに装着され、前後方向に等間隔に配置された目盛部を有するスケールと、前記テーブルの前後方向への移動に伴って前記スケールの前記目盛部を検出し当該目盛部に対応する情報を出力することが可能なように前記ベッドに装着される検出ユニットを備え、前記検出ユニットは、加工側検出位置および当該加工側検出位置よりも前方の交換側検出位置のそれぞれにおいて前記目盛部を検出することが可能であり、前記加工側検出位置は、前記検出ユニットが前記スケールの前記目盛部を検出することで前記テーブルが前記加工領域に配置されていることを検出可能な位置であって、前記交換側検出位置は、前記検出ユニットが前記スケールの前記目盛部を検出することで前記テーブルが前記パレット交換位置に配置されていることを検出可能な位置であり、前後方向における前記加工側検出位置から前記交換側検出位置までの距離が、前後方向における前記スケールの長さよりも短く設定されている。
【0009】
本構成によれば、検出ユニットが前記加工側検出位置に加え当該加工側検出位置よりも前方の交換側検出位置においてもスケールの目盛部を検出することが可能であるため、テーブルが加工領域内のみを移動する場合と比較してスケールを延長せずとも、テーブルの位置を管理しながらテーブルを加工領域とパレット交換位置との間で移動させパレット交換位置においてテーブル上のパレットを他のパレットに交換することができる。また、前後方向における加工側検出位置から交換側検出位置までの距離が、前後方向におけるスケールの長さよりも短く設定されており、常に加工側検出位置および交換側検出位置のうちの少なくとも一方において検出ユニットがスケールの目盛部を検出可能であるため、前記検出部がテーブルの位置を見失うことなく、その位置を精度良く把握することができる。この結果、パレットの交換前後においてテーブルの位置を安定して管理し、パレット上のワークに対する加工精度を高く維持することが可能となる。
【0010】
上記の構成において、前記加工領域は、当該加工領域の後端部である加工後端領域と前記加工領域の前端部である加工前端領域とを含み、前記スケールの前記目盛部は、当該目盛部の後端部に配置される後端目盛部と前記後端目盛部とは反対側で前記目盛部の前端部に配置される前端目盛部とを含み、前記検出ユニットが前記加工側検出位置において前記スケールの前記前端目盛部を検出することで前記テーブルが前記加工後端領域に配置されていることを検出可能であるとともに前記スケールの前記後端目盛部を検出することで前記テーブルが前記加工前端領域に配置されていることを検出可能であって、前記検出ユニットが前記交換側検出位置において前記スケールの前記後端目盛部を検出することで前記テーブルが前記パレット交換位置に配置されていることを検出可能なように、前記検出ユニットが前記ベッドに装着されていることが望ましい。
【0011】
本構成によれば、加工領域の加工前端領域および加工後端領域のそれぞれに対応してスケールに後端目盛部および前端目盛部が設定されているため、加工側検出位置において加工領域におけるテーブルの最大ストローク分の移動を安定して検出することができる一方、テーブルが加工領域を離れパレット交換位置に至るまでの間は、交換側検出位置においてテーブルの移動を安定して検出することができる。更に、加工側検出位置と交換側検出位置との間の距離を最大限に利用して、その距離に対応してパレット交換位置を加工領域から離れた位置に設けることができる。
【0012】
上記の構成において、前記検出ユニットは前記目盛部を検出することが可能な一つの検出部と、前記一つの検出部を前記加工側検出位置から前記交換側検出位置に及び前記交換側検出位置から前記加工側検出位置に移動させることが可能な検出部移動機構とを有することが望ましい。
【0013】
本構成によれば、一つの検出部を加工側検出位置と交換側検出位置との間で移動させることで、テーブルの位置を管理しながらテーブルを加工領域とパレット交換位置との間で移動させることができる。このため、加工側検出位置および交換側検出位置のそれぞれに検出部を配置する場合と比較して、検出部の数を抑えることが可能となり、当該検出部の損傷や故障頻度を低減することができる。
【0014】
上記の構成において、前記検出ユニットは、前記ベッドにおいて前記加工側検出位置に固定される第1検出部と、前記ベッドにおいて前記交換側検出位置に固定される第2検出部とを有することが望ましい。
【0015】
本構成によれば、第1検出部および第2検出部を加工側検出位置および交換側検出位置のそれぞれに固定することで、テーブルの位置を管理しながらテーブルを加工領域とパレット交換位置との間で移動させることができる。このため、検出部を移動させる移動機構を有する場合と比較して、簡易な構造でテーブルの位置を管理することができる。
【0016】
上記の構成において、前後方向と直交する方向において前記テーブルと前記スケールとを互いに接続し、前記テーブルと前記スケールとの間での熱伝達を促進する熱伝達促進部材を更に備えることが望ましい。
【0017】
本構成によれば、熱伝達促進部材が、ワークを支持するテーブルとスケールとの間での熱伝達を促進することができるため、加工中に生じる発熱や周辺の温度変化などによって機内の温度が変化した場合でもスケールとワークとの熱変位量を近似させることが可能となり、スケールの各目盛部とワークとの相対的な位置関係が崩れにくく、ワークに対して更に高い精度で加工することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、テーブルが加工領域内のみを移動する場合と比較してスケールの長さを延長することなく加工領域から離れたパレット交換位置においてパレットを交換することが可能な工作機械が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態に係る工作機械の斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る工作機械のテーブルの移動範囲を説明するための平面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る工作機械のテーブル位置検出部の斜視図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る工作機械の検出ユニットの側面図である。
図5図4の領域Vの拡大側面図である。
図6図5の矢印VI-VI位置における正断面図である。
図7】本発明の第1実施形態に係る工作機械の固定部の側断面図である。
図8】本発明の第1実施形態に係る工作機械の固定部の側断面図である。
図9】本発明の第1実施形態に係る工作機械の固定部の側断面図である。
図10】本発明の第1実施形態に係る工作機械のブロック図である。
図11】本発明の第1実施形態に係る工作機械においてテーブルが加工領域とパレット交換位置との間で移動する様子を示す工程図である。
図12】本発明の第1実施形態に係る工作機械においてテーブルが加工領域とパレット交換位置との間で移動する様子を示す工程図である。
図13】本発明の第1実施形態に係る工作機械においてテーブルが加工領域とパレット交換位置との間で移動する様子を示す工程図である。
図14】本発明の第1実施形態に係る工作機械においてテーブルが加工領域とパレット交換位置との間で移動する様子を示す工程図である。
図15】本発明の第1実施形態に係る工作機械においてテーブルが加工領域とパレット交換位置との間で移動する様子を示す工程図である。
図16】本発明の第1実施形態に係る工作機械においてテーブルが加工領域とパレット交換位置との間で移動する様子を示す工程図である。
図17】本発明の第1実施形態に係る工作機械においてテーブルが加工領域とパレット交換位置との間で移動する様子を示す工程図である。
図18】本発明の第1実施形態に係る工作機械においてテーブルが加工領域とパレット交換位置との間で移動する様子を示す工程図である。
図19】本発明の第2実施形態に係る工作機械においてテーブルが加工領域とパレット交換位置との間で移動する様子を示す工程図である。
図20】本発明の第2実施形態に係る工作機械においてテーブルが加工領域とパレット交換位置との間で移動する様子を示す工程図である。
図21】本発明の第2実施形態に係る工作機械においてテーブルが加工領域とパレット交換位置との間で移動する様子を示す工程図である。
図22】本発明の第2実施形態に係る工作機械においてテーブルが加工領域とパレット交換位置との間で移動する様子を示す工程図である。
図23】本発明の第2実施形態に係る工作機械においてテーブルが加工領域とパレット交換位置との間で移動する様子を示す工程図である。
図24】本発明の第2実施形態に係る工作機械においてテーブルが加工領域とパレット交換位置との間で移動する様子を示す工程図である。
図25】本発明の第2実施形態に係る工作機械のブロック図である。
図26】本発明の一実施形態に係る工作機械のスケールおよびスケールヘッドの配置を示す模式図である。
図27】ピッチずれを測定する一対のセンサの配置を示す模式的な平面図である。
図28】本発明の一実施形態に係る工作機械におけるピッチずれの測定結果である。
図29】本発明の一実施形態に係る工作機械におけるテーブルとスケールとの相対的な長さ関係を示す模式的な側面図である。
図30】本発明の一実施形態に係る工作機械と比較される他の工作機械のスケールおよびスケールヘッドの配置を示す模式図である。
図31】本発明の一実施形態に係る工作機械と比較される他の工作機械におけるピッチずれの測定結果である。
図32】本発明の一実施形態に係る工作機械と比較される他の工作機械におけるテーブルとスケールとの相対的な長さ関係を示す模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の各実施形態について詳述する。図1は、本発明の第1実施形態に係る工作機械1の斜視図である。工作機械1は、ワークW(加工対象物)(図6)に所定の加工を施すものであって、一例として自動パレット交換機能付き門型工作機械である。図1を参照して、工作機械1は、ベッド10と、左右一対の受け台11と、テーブル20と、テーブル駆動部21と、パレット30と、フレーム40と、加工部41と、サドル42とを備える。なお、図1では、テーブル20の移動方向を基準として前後方向が定義され、当該前後方向と直交する水平な方向が左右方向と定義される。更に、前後方向および左右方向とそれぞれ直交する方向が上下方向と定義される。これらの方向の定義は、工作機械1の構造、機能および使用態様を説明するためのものであり、本発明に係る工作機械を限定するものではない。また、図1に示すように、工作機械1の前側部分には、パレット交換部100が配置されている。
【0021】
ベッド10は、左右方向に所定の幅を有するとともに前後方向に長く延びる矩形形状を有しており、工作機械1のベース部分を構成する。ベッド10は、工作機械1の作業現場に設置(固定)される。ベッド10は上方向を向く上面部(支持面)を有する。
【0022】
加工部41は、ベッド10の上面部の上方に配置され、ワークWを加工することが可能とされている。なお、本実施形態のような門型工作機械では、加工部41は、フレーム40によって支持される。加工部41は、上下方向に延びる主軸(図1では不図示)を有する。当該主軸には不図示の加工アタッチメントが着脱可能に装着される。
【0023】
テーブル20は、前後方向および左右方向に延びる板状部材である。テーブル20は、上方向を向く載置面を有し、加工部41の下方において前後方向に沿って移動可能なようにベッド10の前記上面部に支持されている。テーブル20は、鉄などの金属材料から構成される。
【0024】
テーブル駆動部21は、テーブル20を前後方向に沿って移動させる。テーブル駆動部21は、モータ22と、ボールねじ23とを有する。ボールねじ23は、前後方向に延びるようにベッド10に装着されており、モータ22の回転駆動力を受けて回転するとともに、テーブル20を前後方向に沿って移動させる。このため、テーブル20は、ボールねじ23のねじ部と係合する不図示のナット部を有する。
【0025】
パレット30は、テーブル20と一体で前後方向に移動可能なようにテーブル20の前記載置面に着脱可能に載置され、ワークWを保持する。
【0026】
フレーム40は、図1に示すように門型形状を有しており、加工部41が上下方向および左右方向を含む移動面上で移動可能なように加工部41を支持する。フレーム40は、左右一対のコラム40Aと、当該左右一対のコラム40A同士を左右方向に沿って互いに接続するクロスレール40Bとを有する。
【0027】
サドル42は、フレーム40のクロスレール40Bに左右方向に移動可能に支持されており、前述の加工部41を支持している。
【0028】
更に、工作機械1は、左右一対のモータ451およびボールねじ452と、モータ461およびボールねじ462と、モータ471およびボールねじ472と、操作部48、AAC(Auto Attachment Changer)装置55とを有する。
【0029】
左右一対のモータ451およびボールねじ452は、クロスレール40Bを左右一対のコラム40Aに対して上下に移動させる。また、モータ461およびボールねじ462は、クロスレール40B上においてサドル42を左右方向に移動させる。更に、モータ471およびボールねじ472は、サドル42に対して加工部41を上下方向に移動させる。なお、本実施形態では、上記の各モータは公知のサーボモータから構成される。また、各モータが駆動させる駆動対象には、前述のテーブル20と同様に各ボールねじと係合する不図示のナット部が配置されている。
【0030】
操作部48は、工作機械1にNCプログラムによる加工指令や各種の手動操作を行うために、作業者(機械オペレータ)によって操作される。操作部48は、作業者の移動とともに移動可能なように、フレーム40に揺動可能に支持されている。
【0031】
AAC装置55は、図1に示すように、左側のコラム40Aの前方に配置されている。AAC装置55は、加工部41の主軸に加工アタッチメントを自動着脱することが可能であり、複数の加工アタッチメントを格納している。
【0032】
図2は、本実施形態に係る工作機械1のテーブル20の移動範囲を説明するための平面図である。前述のように、テーブル駆動部21がテーブル20を前後方向に移動させる。テーブル駆動部21は、加工部41がワークWを加工することが可能な領域である加工領域においてテーブル20を前後方向に移動させることが可能である。加工領域は、当該加工領域の後端部である加工後端領域P1と加工領域の前端部である加工前端領域P2とを含む。図2では、加工後端領域P1に配置されたテーブル20が破線で示され、加工前端領域P2に配置されたテーブル20が二点鎖線で示されている。すなわち、テーブル20上にパレット30が載置され、テーブル20が図2の加工前端領域P2から加工後端領域P1まで移動する間、加工部41がパレット30上のワークWに対して加工することができる。この際、ワークWの形状に応じて前述のように加工部41が上下および左右方向にも移動される。
【0033】
更に、テーブル駆動部21は、加工領域よりも更に前方の位置であってテーブル20に対してパレット30を着脱することが可能な位置であるパレット交換位置P3と加工領域との間でテーブル20を前後方向に移動させることが可能である。図2では、パレット交換位置P3に配置されたテーブル20が実線で示されている。本実施形態では、テーブル20がパレット交換位置P3に配置されると、テーブル20に対して左右方向に沿ってパレット30を交換することができる。パレット交換位置P3の左右両側には、パレット30を支持可能な左右一対の受け台11が配置されている(図1)。なお、図2のS1はテーブル20が加工前端領域P2と加工後端領域P1との間で移動するための加工用移動ストロークを示しており、S2はテーブル20が加工領域とパレット交換位置P3との間で移動するための交換用移動ストローク(交換用移動距離)を示している。
【0034】
一例として、図2に示すようにテーブル20上にパレット30が載置されている場合、当該パレット30が図1の左側(図1の方向指示を参照)の受け台11に受け渡されると、図2の右側のパレット30Bをテーブル20に載置することができる。同様に、パレット30が図1の右側の受け台11に受け渡されると、図2の左側のパレット30Aをテーブル20に載置することができる。また、図2に示す状態において、テーブル20上のパレット30が前方に脱離されると、パレット30Aおよびパレット30Bのいずれのパレットがテーブル20上に載置されてもよい。本実施形態では、工作機械1がパレット移動部35を有している。パレット移動部35は、左右一対の受け台11間でパレット30(30A、30B)を移動させる(受け渡す)ことが可能なコンベア構造を有している。また、図2に示すように、テーブル20が加工前端領域P2に配置された状態では、AAC装置55が左右方向においてテーブル20に対向して配置される。換言すれば、AAC装置55が邪魔であるため、テーブル20に対してパレット30を左右方向に沿って交換することができない。一方、テーブル20がパレット交換位置P3に配置されると、テーブル20の左右両側が開放されるため、上記のように左右方向に沿ってパレット30を交換することが可能である。
【0035】
なお、本実施形態では、加工後端領域P1が、テーブル20の前後移動における原点に相当する(前後方向における機械原点)。なお、ワークWに対する加工時には、上記の機械原点を含む機械座標系ではなく、ワークWに基準面、加工原点を設定するワーク座標系に基づいて加工が行われる。
【0036】
図3および図4は、本実施形態に係る工作機械1のテーブル位置検出部2の斜視図および側面図である。図5は、図4の領域Vの拡大側面図である。図6は、図5の矢印VI-VI位置における正断面図である。なお、図3に示されるテーブル位置検出部2は、図1において矢印IIIで示す方向から見たものであり、ベッド10の右側面に配置されている。工作機械1は、更にテーブル位置検出部2(検出ユニット)と、左右一対のリニアガイド110と、スケール250(図5)と、スケール防塵ケース251と、スケール支持部252と、を備える。テーブル位置検出部2は、前後に移動するテーブル位置検出部2の位置を検出する機能を有する。
【0037】
左右一対のリニアガイド110は、図3に示すように、ベッド10の上面部において左右方向に間隔をおいて配置され、それぞれ前後方向に延びている。左右一対のリニアガイド110は、テーブル20を前後方向に沿って案内する。
【0038】
スケール250(図5)は、前後方向に延びるようにテーブル20に装着され、前後方向に等間隔に配置された目盛部(複数の目盛)を有する。当該目盛部は、テーブルの位置を検出するための分解能に応じて、例えば1ミリ間隔で形成されている。スケール250は、スチールなどの金属材料等から構成される。本実施形態では、スケール250は、スケール支持部252(図6)に支持されている。なお、スケール250および後記のスケールヘッド111は、公知のリニアスケール(リニアエンコーダ)から構成される。スケール250の目盛部は、スケール250に実際に描かれた目盛部をスケールヘッド111が光学的に読み取るもの(光学式)に限定されるものではない。スケール250に配置された導体目盛部をスケールヘッド111が電磁誘導によって読み取るもの(電磁誘導式)またはスケール250に着磁された磁気目盛部を磁性素子で読み取るもの(磁気式)など、その他の方式を採用することができる。
【0039】
なお、スケール250に形成された目盛部は、当該目盛部の後端部に配置される後端目盛部250R(図12)と、前記後端目盛部250Rとは反対側で前記目盛部の前端部に配置される前端目盛部250F(図11)とを含む。なお、後端目盛部250Rおよび前端目盛部250Fは、それぞれ更に複数の目盛(補助目盛部)を含んでもよい。
【0040】
スケール防塵ケース251は、スケール250を覆うようにスケール支持部252に装着されており、スケール250に塵や埃が付着することを防止する。スケール防塵ケース251は、アルミニウムなどの金属部材から構成される。また、複数のスケールヘッド61、62を設置する場合は、スケール防塵ケースの側面をのれん式カーテンやエアカーテンなどの防塵効果を有しながら、スケールヘッド61、62を通過できる構造にしてもよい。
【0041】
スケール支持部252は、上記のようにスケール250およびスケール防塵ケース251を支持する。スケール支持部252は、スチールなどの金属材料から構成される。図6に示すように、スケール支持部252の右側面にスケール250およびスケール防塵ケース251が支持されている。スケール支持部252の上面部は他の部材を介してテーブル20の下面部に固定されている。この結果、スケール支持部252は、前記方向と直交する方向においてテーブル20とスケール250とを互いに接続し、テーブル20とスケール250との間での熱伝達を促進する熱伝達促進部材として機能する。このように、本実施形態では、スケール250はテーブル20に固定されており、テーブル20とともに前後方向に移動する。
【0042】
テーブル位置検出部2(図3)(検出ユニット)は、スケールヘッド111(一つの検出部)と、移動体112と、エアシリンダ113(検出部移動機構)と、シリンダ供給ライン114と、後側固定部121と、前側固定部122とを有する。
【0043】
スケールヘッド111は、上下方向においてスケール250に対向して配置されるようにベッド10に装着されている。スケールヘッド111は、テーブル20の前後方向への移動に伴ってスケール250の前記目盛部を検出し当該目盛部に対応する情報を出力することが可能とされている。
【0044】
移動体112は、スケールヘッド111を支持するとともに、前後方向に沿って移動可能なようにベッド10に支持されている。移動体112は、ベッド10に固定された移動体ガイド112S(図3)に沿って前後方向に沿って移動する。図6に示すように、移動体112の上面部にスケールヘッド111が固定されている。移動体112の前後方向における位置は、後側固定部121および前側固定部122によって拘束される。後側固定部121が移動体112を固定(ロック)すると、スケールヘッド111が加工側検出位置Q1(図11)に配置される。一方、前側固定部122が移動体112を固定すると、スケールヘッド111が前記加工側検出位置Q1よりも前方の交換側検出位置Q2(図13)に配置される。このように、本実施形態では、スケールヘッド111は移動体112を介して前後方向に沿って移動可能なようにベッド10に支持(装着)されている。
【0045】
前記加工側検出位置Q1は、スケールヘッド111がスケール250の前記目盛部を検出することでテーブル20が加工領域(図2)に配置されていることを検出可能な位置であって、前記交換側検出位置Q2は、スケールヘッド111がスケール250の前記目盛部を検出することでテーブル20がパレット交換位置P3(図2)に配置されていることを検出可能な位置である。
【0046】
より詳しくは、前記加工側検出位置Q1は、テーブル位置検出部2のスケールヘッド111がスケール250の前端目盛部250Fを検出することでテーブル20が加工後端領域P1に配置されていることを検出可能であるとともに、スケールヘッド111がスケール250の後端目盛部250Rを検出することでテーブル20が加工前端領域P2に配置されていることを検出可能な位置である。また、前記交換側検出位置Q2は、テーブル位置検出部2のスケールヘッド111がスケール250の後端目盛部250Rを検出することでテーブル20がパレット交換位置P3に配置されていることを検出可能な位置である。また、本実施形態では、前後方向における前記加工側検出位置Q1から前記交換側検出位置Q2までの距離は、前後方向におけるスケール250の長さよりも短く設定されている。
【0047】
エアシリンダ113は、空気圧によって伸縮するシリンダであって、スケールヘッド111(移動体112)を、上記の前記加工側検出位置Q1から前記交換側検出位置Q2に及び前記交換側検出位置Q2から前記加工側検出位置Q1に移動させる。このために、エアシリンダ113は、不図示のシリンダ本体と、当該シリンダ本体に対して伸縮可能なシリンダロッドとを有し、前記シリンダロッドの先端部に移動体112が固定されている。
【0048】
シリンダ供給ライン114は、エアシリンダ113に対してエアを給排するための管路などを含み、移動体112の移動に追従してエアシリンダ113とともに前後方向に移動可能なようにベッド10に支持されている。
【0049】
図7乃至図9は、本実施形態に係る工作機械1の固定部(後側固定部121)の側断面図である。なお、図3図4に示される後側固定部121および前側固定部122の構造は同じであるため、以下では後側固定部121を例にして説明する。前側固定部122は、後側固定部121の構造を前後方向において反転させたものに相当する。
【0050】
後側固定部121(図7)は、ピストン130と、テーパコーン131と、複数の鋼球132と、締結用油路135と、開放用油路136とを有する。また、テーブル位置検出部2は、油圧源150と、コントロールバルブ151とを更に有する。
【0051】
また、移動体112は、ロケートリング115を有する。ロケートリング115は、前後方向に延びる中心線を有する円筒形状を備えており、図7に示すように複数のボルトによって移動体112に固定されている。
【0052】
ピストン130は、後側固定部121の内部、より詳しくは、ベッド10に形成された断面凹部状のピストン装着部105(図7)に囲まれるように配置されている。ピストン130は、ピストンロッド130Aと、ピストンフランジ130Bとを有する。ピストンロッド130Aは、ピストン130の先端側部分であり、前後方向に延びる中心線を有する円柱形状を備えている。ピストンロッド130Aの先端部には、リング状の溝部130Cが形成されている。溝部130Cの断面は、鋼球132の外径に対応する内径を有する半円形状からなる。ピストンフランジ130Bは、ピストンロッド130Aの基端部に配置されており、ピストンフランジ130Bの外径はピストンロッド130Aの外径よりも大きく設定されている。
【0053】
テーパコーン131は、ピストンフランジ130Bを挟んでピストン装着部105の凹部部分を覆うように当該ピストン装着部105に固定されている。テーパコーン131の中心には、ピストン130のピストンロッド130Aが挿通されることを許容する貫通孔131Sが前後方向に沿って形成されている。図7に示すように、ピストンロッド130Aの先端部は、テーパコーン131の外側(図7の前側)に露出している。
【0054】
一方、ピストン装着部105の内部では、当該ピストン装着部105とテーパコーン131との間の空間をピストンフランジ130Bが2つの油室に仕切っている。具体的に、ピストンフランジ130Bとピストン装着部105の内壁とによってヘッド側油室130Hが画定され、ピストンフランジ130Bとテーパコーン131とによってロッド側油室130Rが画定される。
【0055】
複数の鋼球132は、ピストン130のピストンロッド130Aの先端部周辺に保持されており、ピストン130の前後移動に伴って溝部130Cに嵌合または溝部130Cから脱離する。
【0056】
油圧源150は、ピストン装着部105内に供給される作動油を吐出する。一例として油圧源150は油圧ポンプからなる。コントロールバルブ151は、油圧源150から吐出される作動油の供給先を上記のヘッド側油室130Hとロッド側油室130Rとの間で切り換えるとともに、当該作動油の供給を受けない油室を不図示のタンクに連通させる。
【0057】
締結用油路135は、コントロールバルブ151とロッド側油室130Rとを互いに連通する油路であり、開放用油路136はコントロールバルブ151とヘッド側油室130Hとを互いに連通する油路である。
【0058】
図7に示す状態では、ピストン130の溝部130Cから脱離した複数の鋼球132がテーパコーン131の先端部よりも前方に配置されている。この際、各鋼球132の外周面がロケートリング115の係合面115Sに係合することで、スケールヘッド111を支持した移動体112の前方向への移動が規制されている(移動体112がロックされている)。すなわち、スケールヘッド111が前述の加工側検出位置Q1に拘束される。
【0059】
図7の状態において、油圧源150から作動油が吐出されコントロールバルブ151が当該作動油の供給先をヘッド側油室130Hに切り換えると、油圧によってピストン130が図8の矢印のように前方に移動する。そして、ピストン130のピストンロッド130Aの先端部がテーパコーン131の貫通孔131Sから更に前方に突出し、複数の鋼球132が溝部130Cにそれぞれ嵌まり込む。この結果、鋼球132の外周面がロケートリング115の係合面115Sの径方向内側に移動する。この状態で、エアシリンダ113が伸長されると、図9の矢印に示すようにスケールヘッド111およびロケートリング115を含む移動体112の前方への移動が許容される。すなわち、移動体112に対するロックが解除される。
【0060】
上記とは逆に、スケールヘッド111を支持する移動体112が前方から後側固定部121に近づいてきた場合には、図9図8の順に、ロケートリング115とテーパコーン131とが互いに嵌合する。そして、油圧源150から作動油が吐出されコントロールバルブ151が当該作動油の供給先をロッド側油室130Rに切り換えると、油圧によってピストン130が図8の矢印とは反対の後方に移動する。この結果、図7に示すように、ピストン130のピストンロッド130Aの先端部がテーパコーン131の貫通孔131Sに沿って後方に移動し、複数の鋼球132が溝部130Cからそれぞれ前方に脱離する。この結果、前述のように、各鋼球132の外周面がロケートリング115の係合面115Sに係合することで、スケールヘッド111を支持した移動体112の前方向への移動が再び規制される(移動体112が再びロックされる)。なお、前側固定部122における移動体112のロック、すなわち、スケールヘッド111の交換側検出位置Q2における拘束についても上記と同様である。
【0061】
図10は、本実施形態に係る工作機械1のブロック図である。工作機械1は、更に、制御部50を備える。制御部50は、CPU(Central Processing Unit)、NCプログラムを記憶するメモリ、CPUの作業領域として使用されるメモリ等から構成されている。制御部50は、前記CPUがNCプログラムを実行することにより、駆動制御部501、数値制御部502および記憶部503を備えるように機能する。また、図10に示すように、制御部50には、前述のスケールヘッド111と、テーブル駆動部21と、エアシリンダ113と、各固定部(後側固定部121、前側固定部122)とが接続されている。
【0062】
駆動制御部501は、テーブル駆動部21、エアシリンダ113、後側固定部121および前側固定部122に対してそれぞれ指令信号を入力し、これらの駆動機構の作動を制御する。具体的に、駆動制御部501は、テーブル駆動部21のモータ22に指令信号を入力して、テーブル20を前後方向に移動させる。なお、図10には現れていないが、駆動制御部501は、前述のモータ451、461、471のそれぞれのモータに対して指令信号を入力し、加工部41を上下および左右方向に移動させる。また、駆動制御部501は、エアシリンダ113に接続された電磁弁(不図示)にパイロット信号を入力し、スケールヘッド111を含む移動体112を前記加工側検出位置Q1と前記交換側検出位置Q2との間で行き来させる(移動させる)。更に、駆動制御部501は、後側固定部121および前側固定部122にそれぞれ接続される油圧源150およびコントロールバルブ151を制御することで、後側固定部121(加工側検出位置Q1)および前側固定部122(交換側検出位置Q2)における移動体112のロックおよびロック解除をそれぞれ切り換える。
【0063】
数値制御部502は、テーブル20の前後移動動作における各種の判定動作を実行する。一例として、数値制御部502は、スケールヘッド111が加工側検出位置Q1に配置された状態で、スケールヘッド111がスケール250の前端目盛部250Fを検出すると、テーブル20が加工後端領域P1に至ったと判定し、スケールヘッド111がスケール250の後端目盛部250Rを検出すると、テーブル20が加工前端領域P2に至ったと判定する。また、数値制御部502は、スケールヘッド111が交換側検出位置Q2に配置された状態で、スケールヘッド111がスケール250の後端目盛部250Rを検出すると、テーブル20がパレット交換位置P3に至ったと判定する。
【0064】
記憶部503は、テーブル20の前後移動、移動体112のロック動作、エアシリンダ113の伸縮動作などに関連して、駆動制御部501および数値制御部502が参照する各種の閾値、パラメータなどを予め記憶している。
【0065】
図11乃至図18は、本実施形態に係る工作機械1においてテーブル20が加工領域(P1~P2)とパレット交換位置P3との間で移動する様子を示す工程図である。
【0066】
図11に示すように、テーブル20上にパレット30が載置された状態で、パレット30上の不図示のワークWに対する加工が終了した場合、パレット30は前述の加工領域の任意の位置(図2)に配置されている。この時、NCプログラムや作業者からパレット交換信号が発せられると、テーブル20上のパレット30を他のパレット(図2のパレット30Aまたはパレット30B)に交換するために、テーブル駆動部21を制御して、テーブル20を図11の矢印D11で示すように前方に移動させる。やがて、スケールヘッド111が後端目盛部250Rを検出し、対応する情報を含む信号を制御部50に入力すると、駆動制御部501はテーブル駆動部21を制御してテーブル20の移動を停止させる。この結果、図12に示すように、テーブル20が加工前端領域P2に配置される。
【0067】
次に、駆動制御部501は、後側固定部121を制御して移動体112のロックを解除するとともに、エアシリンダ113を制御して、図12の矢印D12で示すように移動体112を交換側検出位置Q2に移動させる。そして、前側固定部122を制御してスケールヘッド111を含む移動体112を交換側検出位置Q2にロックする(図13)。
【0068】
次に、駆動制御部501は、テーブル駆動部21を制御して、図13の矢印D13で示すようにテーブル20を更に前方に移動させる。やがて、スケールヘッド111が後端目盛部250Rを検出し、対応する情報を含む信号を制御部50に入力すると、駆動制御部501はテーブル駆動部21を制御してテーブル20の移動を停止させる。この結果、図14に示すように、テーブル20がパレット交換位置P3に配置される。なお、記憶部503は、図13から図14に示す状態までの間のテーブル20の移動量(リニアスケールによる移動量)を記憶する。その後、図14の矢印D14で示すようにパレット交換部100においてテーブル20上のパレット30が取り外されるとともに、図15の矢印D15Aで示すように新たなパレット30Aがテーブル20上に載置される(図15)。
【0069】
次に、駆動制御部501は、テーブル駆動部21を制御して、図15の矢印D15Bで示すようにテーブル20を後方に移動させる。やがて、テーブル20の移動量が前述のように記憶部503に格納された移動量と一致したと数値制御部502が判定すると、駆動制御部501はテーブル駆動部21を制御してテーブル20の移動を停止させる。この結果、図16に示すように、テーブル20が加工前端領域P2に配置される。なお、上記とは異なり、スケールヘッド111がスケール250の特定の目盛部を読み取ることに伴って、テーブル20の移動が停止されてもよい。
【0070】
次に、駆動制御部501は、前側固定部122を制御して移動体112のロックを解除するとともに、エアシリンダ113を制御して、図16の矢印D16で示すように移動体112を交換側検出位置Q2から加工側検出位置Q1に移動させる(図17)。そして、駆動制御部501は、後側固定部121を制御してスケールヘッド111を含む移動体112を加工側検出位置Q1にロックする。
【0071】
図17は、テーブル20上のパレット30Aに支持されたワークWに対する加工部41による加工が開始される状態である。駆動制御部501は、テーブル駆動部21を制御して、図17の矢印D17で示すようにテーブル20を加工領域内で前後に移動させるとともに、モータ451、461、471(図1)を制御して加工部41を上下左右に移動させることで、ワークWに所定の加工を施す。やがて、図18に示すように、ワークWに対する加工が終了し、再び図11以降の工程が繰り返される。
【0072】
次に、本発明の第2実施形態に係る工作機械1について説明する。なお、本実施形態では、先の第1実施形態との相違点を中心に説明し、共通する点の説明を省略する。図19乃至図24は、本実施形態に係る工作機械1においてテーブル20が加工領域(P1~P2)とパレット交換位置P3との間で移動する様子を示す工程図である。また、図25は、本実施形態に係る工作機械1のブロック図である。
【0073】
本実施形態では、工作機械1は、検出ユニットとして、第1スケールヘッド61(第1検出部)および第2スケールヘッド62(第2検出部)を有する。第1スケールヘッド61は、ベッド10における前述の加工側検出位置Q1に固定されており、第2スケールヘッド62は、ベッド10における前述の交換側検出位置Q2に固定されている。第1スケールヘッド61および第2スケールヘッド62は、テーブル20に装着されたスケール250の目盛部を検出するとともに、当該目盛部に対応する情報を含む信号を出力し制御部50に入力する。なお、本実施形態では、先の第1実施形態の移動体112、エアシリンダ113などのように検出部を移動させる構造は備えられていない。
【0074】
また、図25に示すように、第1スケールヘッド61および第2スケールヘッド62は、制御部50に接続されており、上記の信号を制御部50に入力する。また、制御部50の駆動制御部501は、先の第1実施形態と同様にテーブル駆動部21の作動を制御する。
【0075】
ワークWに対する加工処理中、制御部50は第1スケールヘッド61から出力される信号を受け取るとともに、第2スケールヘッド62から出力される信号の受け取りを遮断するように機能する。そして、加工領域においてワークWに対する加工が終了しテーブル20が加工領域内の任意の位置に配置されると、NCプログラムや作業者からパレット交換信号が発せられ、先の第1実施形態と同様に、駆動制御部501がテーブル駆動部21を制御して、図19に示すようにテーブル20を加工前端領域P2に移動させる。この時、スケール250の後端目盛部250Rを第1スケールヘッド61が検出することで、テーブル20の移動が停止する。
【0076】
次に、制御部50は、第1スケールヘッド61から出力される信号を遮断するとともに、第2スケールヘッド62から出力される信号を受け取るように機能する。すなわち、制御部50は、テーブル20の位置を検出するためのスケールヘッドを第1スケールヘッド61から第2スケールヘッド62に切り換える。
【0077】
次に、駆動制御部501がテーブル駆動部21を制御して図20の矢印D20で示すようにテーブル20を前方に移動させる。やがて、図21に示すように、第2スケールヘッド62がスケール250の後端目盛部250Rを検出し、テーブル20の移動が停止される。この結果、テーブル20がパレット交換位置P3に配置され、テーブル20上のパレット30が交換される。
【0078】
次に、制御部50は、第1スケールヘッド61から出力される信号を受け取るとともに、第2スケールヘッド62から出力される信号を遮断する。すなわち、制御部50は、テーブル20の位置を検出するためのスケールヘッドを第2スケールヘッド62から第1スケールヘッド61に切り換える。更に、駆動制御部501はテーブル駆動部21を制御して図21の矢印D21で示すようにテーブル20を後方に移動させる。やがて、図22に示すように、第1スケールヘッド61がスケール250の後端目盛部250Rを検出することで、テーブル20の移動が停止され、テーブル20が加工前端領域P2に配置される。
【0079】
次に、駆動制御部501がテーブル駆動部21を制御して図23の矢印23で示すようにテーブル20を加工領域内で前後に移動させ、ワークWに対する加工を開始する(図24)。やがて、ワークWに対する加工が終了する。以後は、図19以降の動作が繰り返される。
【0080】
以上のように、本発明の第1実施形態および第2実施形態のそれぞれに係る工作機械1では、検出ユニットが加工側検出位置Q1よりも前方の交換側検出位置Q2においてスケール250の目盛部を検出することが可能であるため、テーブル20が加工領域内のみを移動する場合と比較してスケール250を延長せずとも、テーブル20の位置を把握しながらテーブル20を加工領域とパレット交換位置P3との間で移動させることができる。この結果、テーブル20をパレット交換位置P3に配置しテーブル20上のパレット30を他のパレット30Aなどに交換することができる。また、前後方向における加工側検出位置Q1から交換側検出位置Q2までの距離は、前後方向におけるスケール250の長さよりも短く設定されているため、常に加工側検出位置Q1または交換側検出位置Q2において検出ユニットがスケール250の目盛部を検出可能であるため、検出ユニットがテーブル20の位置を見失うことなく、その位置を精度良く把握することができる。この結果、パレット30の交換前後においても、テーブル20の位置を安定して管理しながら、パレット30上のワークWに対する加工精度を高く維持することが可能となる。したがって、パレット30の交換機能を備えるためにスケール250を延長する必要がないため、当該延長部分がテーブルの移動に伴って工作機械の周辺機器と干渉することがなく、また、当該干渉を回避するために加工領域の周辺に余分な空間を設ける必要が生じず、工作機械のサイズが大型化することが抑止される。
【0081】
また、加工領域の加工前端領域P2および加工後端領域P1のそれぞれに対応してスケール250に後端目盛部250Rおよび前端目盛部250Fが設定されているため、検出ユニットが加工側検出位置Q1において加工領域におけるテーブル20の移動を安定して検出することができるとともに、加工側検出位置Q1から交換側検出位置Q2までの距離分だけ、パレット交換位置P3を加工領域から離れた位置に設けることができる。
【0082】
また、上記の第1実施形態に係る工作機械1では、スケールヘッド111を加工側検出位置Q1と交換側検出位置Q2との間で移動させることで、テーブル20の位置を把握しながらテーブル20を加工領域とパレット交換位置P3との間で移動させることができる。このため、スケールヘッドの数を抑えることが可能となり、当該スケールヘッドの損傷や故障頻度を低減することができる。
【0083】
また、上記の第2実施に係る工作機械1では、第1スケールヘッド61および第2スケールヘッド62を加工側検出位置Q1および交換側検出位置Q2のそれぞれに固定することで、テーブル20の位置を把握しながらテーブル20を加工領域とパレット交換位置P3との間で移動させることができる。このため、スケールヘッド111を移動させる移動機構を有する場合と比較して、当該移動機構の故障などによって工作機械1の使用が制限されることを抑止することができる。
【0084】
更に、上記の各実施形態では、スケール支持部252が、ワークWを支持するテーブル20とスケール250との間での熱伝達を促進することができるため、加工中に生じる発熱や周辺の環境温度などによって機内の温度が変化した場合でも、スケール250の目盛部とワークWの長さとの相関が崩れにくく、ワークWに対して更に高い精度で加工することが可能となる。
【0085】
<ピッチずれの比較について>
次に、上記の各実施形態およびこれらと比較される他の工作機械におけるピッチずれについて説明する。図26は、本発明の一実施形態に係る工作機械1のスケール250およびスケールヘッド111の配置を示す模式図である。図27は、ピッチずれを測定する一対のセンサの配置を示す模式的な平面図である。図28は、本発明の一実施形態に係る工作機械1におけるピッチずれの測定結果である。図29は、本発明の一実施形態に係る工作機械におけるテーブル20とスケール250との相対的な長さ関係を示す模式的な側面図である。図30は、本発明の一実施形態に係る工作機械1と比較される他の工作機械のスケール250およびスケールヘッド111の配置を示す模式図である。図31は、本発明の一実施形態に係る工作機械1と比較される他の工作機械におけるピッチずれの測定結果である。図32は、本発明の一実施形態に係る工作機械1と比較される他の工作機械におけるテーブル20とスケール250との相対的な長さ関係を示す模式的な側面図である。
【0086】
図26に示すように、先の第1実施形態および第2実施形態に係る工作機械1では、スケール250がテーブル20に固定され、スケールヘッド111がテーブル20に装着されている。一方、図30に示される他の工作機械では、スケール250がベッド10に装着されており、スケールヘッド111がテーブル20に装着されている。
【0087】
上記の本発明の各実施形態に係る工作機械1および他の工作機械のそれぞれにおいて、ワークWに対する加工処理を実施することで機械内部、特に加工領域の環境温度が変化する状態で、図27に示すようにテーブル20を前後方向に移動させ、加工部41(主軸)に装着されたプローブと第1センサ81および第2センサ82を順に接触させることで、各センサの前後方向における座標値をプローブで読み取り、2つのセンサ間のピッチ(距離)を測定した。なお、L1はテーブル20の前後方向の長さを示し、L2はテーブル20の左右方向の幅を示している。各センサは、テーブル20(パレット30)上のワークWが載置可能な領域において、前後左右の斜めの角部にそれぞれ配置されている。上記の測定の結果、本発明の各実施形態に係る工作機械1では、図28に示すように、センサ間のピッチずれがほとんど検出されなかったが、上記の他の工作機械では、図31に示すように、センサ間のピッチずれが発生する結果となった。
【0088】
上記の他の工作機械のようにベッド10にスケール250が固定されテーブル20にスケールヘッド111が装着されている場合、加工部41の工具がワークWを加工する際の発熱や動力部、摺動部の発熱など、更には、周辺の環境温度の変化などによって機械内部の温度が変化すると、ワークWおよびスケールヘッド111を支持するテーブル20と、スケール250が固定されたベッド10との間の熱変位量が異なることに起因して、上記のようなピッチずれが発生しやすくなる。この場合、スケール250とテーブル20上のワークWとの相対的な寸法関係が変化してしまい、ワークWの加工精度が低下するという問題がある。
【0089】
一方、本発明の各実施形態に係る工作機械1では、ワークWおよびスケール250がテーブル20に集約されているため、たとえ機械内部の温度が変化した場合でも、それぞれの熱変位量が近似するため、スケール250とテーブル20上のワークWとの相対的な寸法関係が変化しにくく、ワークWに対する高い加工精度が維持される。
【0090】
また、本発明の各実施形態に係る工作機械1とは異なり加工側検出位置Q1のみにスケールヘッド111(第1スケールヘッド61)が配置され、当該スケールヘッド111によってテーブル20の位置を検出しながら、テーブル20を加工領域とパレット交換位置P3との間で移動させることを想定する。この場合、スケールヘッド111がテーブル20の位置を常に検出するためには、図32に示すように、テーブル20の前後に設けられたスケール支持部252を更に後方に延長し、延長部252Mを設けるとともに、スケール250も、延長部252Mに応じて後方に延長する必要がある。この結果、テーブル20が加工領域を超えて更に前方のパレット交換位置P3まで移動した場合でも、スケールヘッド111がスケール250の延長部分を検出することで、テーブル20の位置を検出し続けることができる。しかしながら、上記のように、テーブル20の一部およびスケール250を後方に大きく延長した場合、テーブル20の移動に伴ってスケール250が工作機械の周辺機器と干渉する問題や当該干渉を回避するために加工領域の周辺に空間(空きスペース)を設けることによって工作機械のサイズが大型化するという問題がある。
【0091】
一方、本発明の第1実施形態に係る工作機械1では、一つのスケールヘッド111が加工側検出位置Q1および交換側検出位置Q2間を移動可能であり、第2実施形態に係る工作機械1では、第1スケールヘッド61が加工側検出位置Q1に固定される一方、第2スケールヘッド62が交換側検出位置Q2に固定されている。この結果、上記のように想定される他の工作機械のようにスケール250を後方に大きく延長することなく、テーブル20と同等の長さのスケール250でもテーブル20を加工領域とパレット交換位置P3との間で移動させながら、その位置を精度よく検出し続けることができる。この結果、テーブル20上のパレット30の交換前後においても、テーブル20の位置を安定して管理しながら、テーブル20(パレット30)上のワークWに対する加工精度を高く維持することが可能となる。
【0092】
以上、本発明に係る工作機械について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、下記のような変形例が可能である。
【0093】
(1)上記の実施形態では、工作機械1が門型の工作機械である場合に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の構造からなる工作機械でもよい。
【0094】
(2)また、上記の実施形態では、テーブル20を加工領域(加工後端領域P1、加工前端領域P2)とパレット交換位置P3との間を移動させるテーブル駆動部21がモータ22およびボールねじ23から構成される態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。テーブル駆動部は、複数のモータやボールねじなどを含むもので良いし、ボールねじ構造とは異なる他の駆動伝達構造を有するものでもよい。また、パレット交換装置が後側加工領域に設置されてもよい。
【符号の説明】
【0095】
1 工作機械
10 ベッド
100 パレット交換部
110 リニアガイド
111 スケールヘッド(検出部、検出ユニット)
112 移動体
113 エアシリンダ(検出部移動機構、検出ユニット)
121 後側固定部
122 前側固定部
2 テーブル位置検出部
20 テーブル
21 テーブル駆動部
22 モータ
23 ボールねじ
250 スケール
250F 前端目盛部
250R 後端目盛部
251 スケール防塵ケース
252 スケール支持部(熱伝達促進部材)
30、30A、30B パレット
40 フレーム
40A コラム
40B クロスレール
41 加工部
42 サドル
48 操作部
50 制御部
501 駆動制御部
502 数値制御部
503 記憶部
61 第1スケールヘッド(検出ユニット、第1検出部)
62 第2スケールヘッド(検出ユニット、第2検出部)
P1 加工後端領域
P2 加工前端領域
P3 パレット交換位置
S1 加工用移動ストローク
S2 交換用移動ストローク
W ワーク
図1
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