(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E06B 7/28 20060101AFI20240416BHJP
E06B 3/46 20060101ALI20240416BHJP
E05D 15/06 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
E06B7/28 Z
E06B3/46
E06B7/28 B
E05D15/06 125Z
(21)【出願番号】P 2020186075
(22)【出願日】2020-11-06
【審査請求日】2023-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110319
【氏名又は名称】根本 恵司
(72)【発明者】
【氏名】木村 聡志
(72)【発明者】
【氏名】渡部 朋世
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-232543(JP,A)
【文献】特開2005-240272(JP,A)
【文献】特開2000-257352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/00- 7/36
E06B 3/46
E05D 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方に向かって開放された溝部を有する上枠と、上端部が前記溝部内に配置されて前記上枠の長手方向に移動する扉体と、を備えた建具であって、
前記扉体の上端部に設けられて前記溝部内に配置され、仕切り部材により、前記溝部の内部空間を仕切る営巣阻止具を備え、
前記溝部は、前記扉体の上端部の上方に位置する溝底部と、互いに対向する第1溝壁部及び第2溝壁部と、を有し、
前記仕切り部材は、前記第1溝壁部との間に隙間をあけて前記第1溝壁部と対向する第1仕切り部と、前記第1仕切り部から前記第2溝壁部に向かって突出し、前記溝底部との間に隙間をあけて前記溝底部と対向する第2仕切り部と、前記上枠の長手方向に互いに離隔して前記第1仕切り部から前記第2溝壁部に向かって突出し、前記第2仕切り部と前記扉体の上端部の間に配置される一対の第3仕切り部と、を有
し、
前記扉体は、前記上端部に配置される配線を有し、
前記第3仕切り部は、前記扉体の上端部との間に、前記配線が配置可能な隙間をあけて配置される建具。
【請求項2】
請求項1に記載された建具において、
前記第2仕切り部の前記第2溝壁部側の先端部及び前記第3仕切り部の前記第2溝壁部側の先端部は、前記第2溝壁部との間に隙間をあけて前記第2溝壁部と対向する建具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された建具において、
前記上枠は、前記溝部内で前記第2溝壁部から前記第1溝壁部に向かって突出して、前記上枠の長手方向に延びるレールを有し、
前記扉体は、前記上端部に取り付けられて、前記レールにより、前記上枠の長手方向に移動可能に支持された吊り車を有し、
前記第1仕切り部は、前記レールと前記第1溝壁部の間に配置され、
前記第2仕切り部は、前記レールと前記溝底部の間に配置され、
前記第3仕切り部は、前記レールが配置される空所部を有する建具。
【請求項4】
請求項3に記載された建具において、
前記営巣阻止具は、前記上枠の長手方向に互いに離隔する2つの前記吊り車の間に設けられた建具。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載された建具において、
前記営巣阻止具は、前記扉体の上端部に取り付けられて、前記溝部内に配置されるベース部材を有し、
前記仕切り部材は、前記ベース部材に取り付けられて、前記ベース部材により前記扉体の上端部に連結される建具。
【請求項6】
請求項5に記載された建具において、
前記ベース部材は、前記扉体の上端部に取り付けられる基部と、前記基部から上方に突出して前記仕切り部材が取り付けられる取付部と、前記基部及び前記取付部に接続して前記取付部を補強する補強部と、を有する建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上枠の長手方向に移動する扉体を備えた建具に関する。
【背景技術】
【0002】
建具である上吊り式の引戸では、扉体の吊り車が上枠のレールに沿って移動して、扉体が上枠の長手方向に移動する。レールは、上枠の下方に向かって開放された溝部内に位置しており、扉体の上端部は、上枠の溝部内に配置される。このような上枠の溝部の内部空間では、動物(例えば、スズメ等の鳥)が扉体の上方の箇所に侵入して内部(例えば、レール)に営巣することがある。
【0003】
建具における営巣の防止に関し、特許文献1には、上部収納ケースの開口部に取り付けた目隠し板により、開口部とシャッターとの間の間隙を隠蔽して、間隙への小鳥の侵入を排除した窓シャッターの開口部目隠し装置が記載されている。ところが、特許文献1に記載された開口部目隠し装置は、シャッターを収納する上部収納ケース内への小鳥等の侵入を排除する装置であり、上枠の溝部内への動物の侵入を抑制することはできない。また、開口部とシャッターとの間の間隙以外の箇所から上部収納ケース内に動物が侵入した場合に、上部収納ケースの内部空間における営巣を妨害することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来の問題に鑑みなされたもので、その目的は、上枠の長手方向に移動する扉体を備えた建具において、上枠の下方に向かって開放された溝部内への動物の侵入を抑制し、溝部の内部空間における営巣を妨害することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下方に向かって開放された溝部を有する上枠と、上端部が前記溝部内に配置されて前記上枠の長手方向に移動する扉体と、を備えた建具であって、
前記扉体の上端部に設けられて前記溝部内に配置され、仕切り部材により、前記溝部の内部空間を仕切る営巣阻止具を備え、
前記溝部は、前記扉体の上端部の上方に位置する溝底部と、互いに対向する第1溝壁部及び第2溝壁部と、を有し、
前記仕切り部材は、前記第1溝壁部との間に隙間をあけて前記第1溝壁部と対向する第1仕切り部と、前記第1仕切り部から前記第2溝壁部に向かって突出し、前記溝底部との間に隙間をあけて前記溝底部と対向する第2仕切り部と、前記上枠の長手方向に互いに離隔して前記第1仕切り部から前記第2溝壁部に向かって突出し、前記第2仕切り部と前記扉体の上端部の間に配置される一対の第3仕切り部と、を有し、
前記扉体は、前記上端部に配置される配線を有し、
前記第3仕切り部は、前記扉体の上端部との間に、前記配線が配置可能な隙間をあけて配置される建具である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、上枠の長手方向に移動する扉体を備えた建具において、上枠の下方に向かって開放された溝部内への動物の侵入を抑制でき、溝部の内部空間における営巣を妨害することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】
図1に示す建具の一部を拡大した正面図である。
【
図3】
図1のX-X線で切断した建具の縦断面図である。
【
図4】本実施形態の営巣阻止具を屋内側からみた正面図である。
【
図5】本実施形態の営巣阻止具を分解して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の建具の一実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態の建具は、上吊り式の引戸であり、建物の開口部に取り付けられて、建物の屋内(室内)と屋外(室外)の間に設置される。以下では、建具が玄関に設置される片引戸である場合を例にとり、本実施形態の建具について説明する。
【0010】
図1は、本実施形態の建具1の正面図であり、建物2に設置された建具1を屋外側からみて示している。
図1では、屋外側からみえない建具1の内部構造を破線で示している。
図示のように、建具1は、開閉可能な扉体3と、開口部4Aを形成する枠体4を備えている。枠体4が建物2に設置されて、扉体3が枠体4に移動可能(スライド可能)に連結されている。
【0011】
なお、建物2に設けた建具1を正面からみたときに、上下となる方向が上下方向であり、左右となる方向が左右方向である。
図1では、上下方向は鉛直方向であり、左右方向は水平方向である。屋内外方向は、建物2に設けた建具1における屋内外方向(室内外方向)である。このように、建具1に関する方向は、建具1を建物2に設けた状態での方向で特定する。また、建具1に関して屋内側、屋外側とは、建具1を建物2に設けた状態での屋内側、屋外側である。
【0012】
扉体3は、スライドにより移動する方形状のパネル体であり、左右方向にスライドして移動する。扉体3が枠体4の開口部4Aを閉鎖する位置と枠体4の開口部4Aを開放する位置とに移動(スライド)して、扉体3により、枠体4の開口部4Aが開閉される。扉体3は、左右方向に延びる上端部3A及び下端部3Bと、上下方向に延びる戸先部3C及び戸尻部3Dを有している。上端部3Aは、扉体3の上側の端部(上縁部)であり、下端部3Bは、扉体3の下側の端部(下縁部)である。戸先部3Cは、扉体3の戸先側の端部(戸先縁部)であり、戸尻部3Dは、扉体3の戸尻側の端部(戸尻縁部)である。
【0013】
枠体4は、方形状の開口枠であり、互いに組み合わされた4つの枠5~8(上枠5、下枠6、一対の縦枠7、8)を有し、枠5~8により、方形状の開口部4Aを形成している。枠5~8は、枠体4を構成する枠材であり、例えば、押出成形により形成された形材からなる。上枠5と下枠6は、枠体4の上下の横枠であり、左右方向(横方向)に沿って延びる。一方の縦枠7は、扉体3の戸先側に位置する戸先側縦枠であり、他方の縦枠8は、扉体3の戸尻側に位置する戸尻側縦枠である。一対の縦枠7、8は、上下方向(縦方向)に沿って延びる。上枠5、下枠6、及び、左右の縦枠7、8は、枠組みされて、互いに接続されている。
【0014】
図2は、
図1に示す建具1の一部を拡大した正面図であり、
図3は、
図1のX-X線で切断した建具1の縦断面図である。
図示のように、建具1の方向に関し、上枠5の長手方向R(
図2参照)は、左右方向であり、上枠5の見込み方向S(
図3参照)は、屋内外方向、及び、扉体3の厚み方向である。また、上枠5の見付け方向は、上下方向である。ここでは、上枠5の見込み方向Sの一方側は、屋外側であり、上枠5の見込み方向Sの他方側は、屋内側である。
【0015】
扉体3は、上吊り式の扉体であり、枠体4の上枠5に移動可能に支持されて、上枠5の長手方向R(左右方向)に移動する。また、扉体3は、上端部3Aに取り付けられた2つの吊り車10と、配線11を有している。配線11は、扉体3に設けられた電気部品(例えば、電気錠)に接続し、扉体3の内部から扉体3の外部まで延びる。吊り車10は、上枠5の長手方向Rに互いに離隔して設けられて、扉体3の上端部3Aから上方に突出する。吊り車10により、扉体3が上枠5に連結される。
【0016】
上枠5は、着脱可能な板状のカバー20と、上枠5の長手方向Rに延びるレール21と、凹状に形成された下向きの溝部30を有している。カバー20は、上枠5の屋外側の見付け部であり、下方に向かって突出して、上下方向に沿って配置される。また、カバー20は、レール21の屋外側に配置されて、レール21を屋外側から覆い、建具1を屋外側からみたときに、レール21を遮蔽する。レール21は、上枠5の溝部30内に位置し、上枠5の見込み方向S(屋内外方向)に沿って配置される。
【0017】
扉体3の2つの吊り車10は、上枠5のレール21に上方から載置されて、レール21に引っ掛けられる。その状態で、吊り車10は、レール21により、上枠5の長手方向Rに移動可能に支持される。扉体3は、吊り車10により、レール21に連結される。吊り車10及び扉体3は、レール21により、上枠5の長手方向Rにガイドされて、レール21に沿って上枠5の長手方向Rに移動する。
【0018】
上枠5の溝部30は、上方に向かって窪む溝状の凹部であり、下方及び枠体4の開口部4Aに向かって開放されている。溝部30の開口31は、溝部30の下方及び枠体4の開口部4Aに向かって開口する。扉体3の上端部3Aは、溝部30内に配置されて、溝部30の開口31に沿って延びる。溝部30は、上枠5の長手方向Rに延び、扉体3の上端部3Aは、溝部30内で、溝部30の長手方向(上枠5の長手方向R)に移動する。
【0019】
上枠5の溝部30は、扉体3の上端部3Aの上方に位置する溝底部32と、上枠5の見込み方向Sにおいて互いに対向する一対の溝壁部33、34(第1溝壁部33、第2溝壁部34)を有している。上枠5の長手方向Rに延びる溝底部32と溝壁部33、34により、溝部30が上枠5の屋外側の部分に形成されている。溝底部32は、溝部30の底部(上部)に位置する部分であり、段部を有する屈曲形状に形成され、屈曲しつつ上枠5の見込み方向Sに沿って延びる。
【0020】
溝壁部33、34は、溝底部32から下方に向かって突出しており、溝部30の開口31は、一対の溝壁部33、34の下端部の間に形成されている。第1溝壁部33は、一対の溝壁部33、34のうち、上枠5の見込み方向Sの一方側(屋外側)に位置する一方側溝壁部(屋外側溝壁部)であり、上下方向に沿って延びる。第2溝壁部34は、一対の溝壁部33、34のうち、上枠5の見込み方向Sの他方側(屋内側)に位置する他方側溝壁部(屋内側溝壁部)である。第2溝壁部34は、段部を有する屈曲形状に形成され、屈曲しつつ上下方向に沿って延びる。
【0021】
上枠5のレール21は、溝部30内で、第2溝壁部34から第1溝壁部33に向かって突出して、扉体3の上端部3Aと溝底部32の間に配置される。第1溝壁部33とレール21の間には、隙間が設けられている。レール21の第1溝壁部33側(屋外側)の先端部は、第1溝壁部33から屋内側に離隔し、上枠5の見込み方向Sにおいて、第1溝壁部33と対向している。溝部30の内部空間35は、溝底部32と一対の溝壁部33、34により区画された溝部30内の空間である。内部空間35は、溝部30内で、溝底部32、一対の溝壁部33、34、及び、扉体3の上端部3Aに囲まれて、扉体3の上端部3Aよりも上方に位置する。
【0022】
建具1は、溝部30の内部空間35での動物の営巣を阻止する営巣阻止具9を備えている。動物は、建具1に設けられる上枠5の溝部30内に侵入可能な大きさの動物(いわゆる小動物)であり、例えば、スズメ等の鳥である。営巣阻止具9は、扉体3の上端部3Aに設けられて、溝部30内に配置される。ここでは、1つの営巣阻止具9が扉体3の上端部3Aに着脱可能に取り付けられている。営巣阻止具9は、扉体3の上端部3Aから溝部30の内部空間35に向かって上方に突出し、溝部30の内部空間35に配置される。
【0023】
溝部30において、溝底部32は、営巣阻止具9に対して上方に位置する。また、第1溝壁部33は、扉体3の上端部3A及び営巣阻止具9に対して屋外側に位置し、第2溝壁部34は、扉体3の上端部3A及び営巣阻止具9に対して屋内側に位置する。吊り車10は、営巣阻止具9に対して上枠5の長手方向Rの外側(戸先部3C側、戸尻部3D側)に位置する。第1溝壁部33は、上枠5のカバー20であり、営巣阻止具9、吊り車10、レール21、及び、扉体3の上端部3Aの屋外側に位置し、建具1を屋外側からみたときに、営巣阻止具9、吊り車10、レール21、及び、扉体3の上端部3Aを遮蔽する。
【0024】
営巣阻止具9は、溝部30内で、上枠5(溝底部32、溝壁部33、34、レール21)から離隔して配置されて、扉体3と一体に移動する。また、営巣阻止具9は、上枠5に接触することなく、レール21に沿って上枠5の長手方向Rに移動する。営巣阻止具9は、上枠5の長手方向Rに互いに離隔する2つの吊り車10の間に設けられて、溝部30の内部空間35における2つの吊り車10の間の箇所で営巣を阻止する。
【0025】
図4は、本実施形態の営巣阻止具9を屋内側からみた正面図であり、
図5は、本実施形態の営巣阻止具9を分解して示す斜視図である。
図3~
図5に示すように、営巣阻止具9は、溝部30内に配置されるベース部材40及び仕切り部材50を有し、2つの吊り車10の間において、仕切り部材50により、溝部30の内部空間35を仕切る。ベース部材40は、扉体3の上端部3Aに取り付けられて、扉体3の上端部3Aから溝部30の内部空間35に向かって上方に突出する。仕切り部材50は、ベース部材40に取り付けられて、ベース部材40により扉体3の上端部3Aに連結される。
【0026】
仕切り部材50がベース部材40により支持されて、ベース部材40及び仕切り部材50が溝部30の内部空間35に配置される。ベース部材40は、それぞれ板状の基部41、取付部42、及び、補強部43を有している。また、基部41は、上枠5の長手方向Rに互いに離隔して設けられた2つの固定部41Aと、2つの固定部41Aの間に位置する載置部41Bを有している。基部41の固定部41Aと載置部41Bが扉体3の上端部3Aに載置されて、固定具(例えば、ねじ)により、固定部41Aが扉体3の上端部3Aに固定される。固定部41Aの固定により、基部41及びベース部材40が扉体3の上端部3Aに取り付けられる。取付部42は、基部41、及び、扉体3の上端部3Aから溝部30の内部空間35に向かって上方に突出し、溝部30の内部空間35に配置される。
【0027】
仕切り部材50は、取付具(例えば、ねじ)により、ベース部材40の取付部42に取り付けられる。取付部42は、基部41(ここでは、固定部41A)及び取付部42に接続する補強部43により補強される。補強部43は、基部41及び取付部42に交差する立ち上がり部(リブ)であり、基部41から上方に立ち上がるとともに、取付部42から屋内側に向かって突出する。2つの補強部43が上枠5の長手方向Rに離隔して取付部42に接続し、取付部42が2つの補強部43により補強される。
【0028】
仕切り部材50は、それぞれ板状の複数の仕切り部51~53(第1仕切り部51、第2仕切り部52、一対の第3仕切り部53)を有している。第1仕切り部51と第2仕切り部52は、上枠5の長手方向Rに延び、第3仕切り部53は、上枠5の長手方向Rにおける仕切り部材50の両端部に位置する。仕切り部材50は、溝部30内における扉体3の上端部3Aよりも上方の箇所で、上枠5(溝底部32、溝壁部33、34、レール21)に接触することなく、仕切り壁である仕切り部51~53により、溝部30の内部空間35を仕切る。
【0029】
第1仕切り部51は、仕切り部材50の屋外側の正面部(正面仕切り部)であり、ベース部材40の取付部42に取り付けられて、溝部30の溝底部32に向かって突出する。また、第1仕切り部51は、扉体3の上端部3Aから溝部30の内部空間35に向かって上方に突出して、溝部30の第1溝壁部33に沿って配置される。第1仕切り部51は、第1溝壁部33との間に隙間(ここでは、動物が侵入不能な寸法の隙間)をあけて配置されて、上枠5の見込み方向Sにおいて、第1溝壁部33と対向する。第1仕切り部51は、溝部30内で第1溝壁部33と第2溝壁部34の間に位置し、溝部30の内部空間35を上枠5の見込み方向Sに仕切る。
【0030】
第2仕切り部52は、仕切り部材50の上面部(上面仕切り部)であり、第1仕切り部51から溝部30の第2溝壁部34に向かって突出する。また、第2仕切り部52は、第1仕切り部51の上端部から屋内側に突出し、溝部30の溝底部32に沿って配置される。第2仕切り部52は、溝底部32との間に隙間(ここでは、動物が侵入不能な寸法の隙間)をあけて配置されて、上下方向において、溝底部32と対向する。第2仕切り部52は、扉体3の上端部3Aと溝底部32の間に位置し、溝部30の内部空間35を上下方向に仕切る。
【0031】
一対の第3仕切り部53は、仕切り部材50の一対の側面部(側面仕切り部)であり、第1仕切り部51から溝部30の第2溝壁部34に向かって突出する。また、第3仕切り部53は、上枠5の長手方向Rに互いに離隔して、第1仕切り部51から屋内側に突出し、第2仕切り部52と扉体3の上端部3Aの間に配置される。第3仕切り部53は、仕切り部材50の両端部において、第1仕切り部51の屋内側(第2溝壁部34側)、及び、第2仕切り部52の下側(扉体の上端部3A側)に位置し、溝部30の内部空間35を上枠5の長手方向Rに仕切る。
【0032】
第2仕切り部52の屋内側(第2溝壁部34側)の先端部は、下方に向けて屈曲しており、第2仕切り部52は、先端部に形成された垂下部54を有している。垂下部54は、第2仕切り部52の先端部において下方に突出して垂下している。一対の第3仕切り部53の屋内側の先端部は、第2溝壁部34の屈曲形状に対応して、段部を有する屈曲形状に形成されている。第2仕切り部52の先端部、垂下部54、及び、第3仕切り部53の先端部は、それぞれ第2溝壁部34との間に隙間(ここでは、動物が侵入不能な寸法の隙間)をあけて配置されて、上枠5の見込み方向Sにおいて、第2溝壁部34と対向する。
【0033】
仕切り部材50は、仕切り部51~53により、第2溝壁部34との間に仕切り空間55を区画する。仕切り空間55は、溝部30の内部空間35の一部であり、仕切り部材50の仕切り部51~53と第2溝壁部34の間に形成されて、仕切り部51~53と第2溝壁部34に囲まれる。ベース部材40は、仕切り空間55に配置されており、第1仕切り部51の屋内側及び第2仕切り部52の下方に位置する。また、ベース部材40は、一対の第3仕切り部53の間に位置する。ベース部材40の補強部43は、一対の第3仕切り部53から離隔して、レール21の下方に配置される。
【0034】
仕切り部材50が位置する箇所で、レール21は、仕切り空間55に配置される。第1仕切り部51は、仕切り空間55及びレール21の屋外側(第1溝壁部33側)に配置されて、レール21を屋外側から覆う。第2仕切り部52は、仕切り空間55及びレール21の上方に配置されて、レール21を上方から覆う。第1仕切り部51は、溝部30の第1溝壁部33とレール21の間に配置され、第2仕切り部52は、溝部30の溝底部32とレール21の間に配置される。
【0035】
レール21は、溝部30の第2溝壁部34から屋外側に突出して、第1仕切り部51の屋内側に配置される。レール21の屋外側の先端部は、第1仕切り部51との間に隙間(ここでは、動物が侵入不能な寸法の隙間)をあけて配置されて、上枠5の見込み方向Sにおいて、第1仕切り部51と対向する。レール21は、第2仕切り部52の下方に位置し、第2仕切り部52と扉体3の上端部3Aの間に配置される。
【0036】
一対の第3仕切り部53は、レール21が配置されるレール21用の空所部56を有している。空所部56は、第3仕切り部53の上下方向における中間部に形成されており、第3仕切り部53は、空所部56の箇所で上下に分割されている。レール21は、第3仕切り部53の空所部56を上枠5の長手方向Rに貫通して、上枠5の長手方向Rに延びる。第3仕切り部53は、空所部56内のレール21との間に隙間(ここでは、動物が侵入不能な寸法の隙間)をあけて配置される。
【0037】
第3仕切り部53は、レール21の上方及び下方に位置し、レール21と第2仕切り部52の間、及び、レール21と扉体3の上端部3Aの間に配置される。扉体3の移動時に、第3仕切り部53は、レール21と接触せずに、上枠5の長手方向Rに移動する。また、一対の第3仕切り部53は、扉体3の上端部3Aとの間に、扉体3の配線11が配置可能な配線11用の隙間57をあけて配置される。第3仕切り部53が位置する箇所で、扉体3の上端部3Aに配線11が配置されるときに、配線11は、隙間57に配置される。隙間57は、配線11の配置経路に位置して、配線11を通過させる。第3仕切り部53は、隙間57内の配線11と接触せず、配線11との間に隙間を形成する。
【0038】
扉体3を建具1に設置するときには、上枠5からカバー20を取り外して、上枠5の溝部30を屋外側に向かって開放する。また、予め、営巣阻止具9のベース部材40を扉体3の上端部3Aに取り付ける。その状態で、扉体3を屋外側から枠体4に向かって移動させて、扉体3の吊り車10をレール21に載置して連結する。続いて、営巣阻止具9の仕切り部材50をベース部材40に屋外側から取り付け、カバー20を上枠5に取り付ける。これにより、営巣阻止具9は、溝部30の内部空間35に配置される。
【0039】
以上説明した建具1では、上枠5の溝部30内で、仕切り部材50の仕切り部51~53により、上枠5と仕切り部材50の間への動物の侵入を抑制することができる。また、仕切り部51~53により、仕切り空間55への動物の侵入を抑制することができる。これにより、上枠5の溝部30内への動物の侵入を抑制でき、溝部30の内部空間35における動物の営巣を妨害することができる。
【0040】
扉体3の移動に伴い、仕切り部材50は、溝部30の内部空間35で上枠5の長手方向Rに移動する。そのため、仕切り部材50が移動する箇所で、溝部30の内部空間35における営巣を妨害することができる。仕切り部51~53と上枠5との間に隙間を設けることで、扉体3の移動に支障が生じるのを防止することができる。営巣阻止具9は、既設の建具1の扉体3に後付け可能であり、既設の建具1に容易に設けることができる。
【0041】
第2仕切り部52の先端部及び第3仕切り部53の先端部は、溝部30の第2溝壁部34との間に隙間をあけて、第2溝壁部34と対向する。そのため、第2溝壁部34と仕切り部材50の間への動物の侵入、及び、仕切り空間55への動物の侵入を妨げて、溝部30の内部空間35での営巣を抑制することができる。
【0042】
上枠5のレール21を第3仕切り部53の空所部56に配置することで、扉体3の移動に支障が生じることなく、レール21への営巣を妨害することができる。2つの吊り車10の間に設けられた営巣阻止具9により、吊り車10のレール21に沿う移動に影響が生じるのを防止しつつ、2つの吊り車10の間の箇所で、溝部30の内部空間35における営巣を阻止することができる。
【0043】
営巣阻止具9のベース部材40により、仕切り部材50を扉体3の上端部3Aに容易に設けることができる。ベース部材40に取り付ける仕切り部材50を上枠5の溝部30の形状と寸法に合わせて変更することができる。これにより、様々な形状と寸法の溝部30に対して、営巣阻止具9を容易に設けることができる。
【0044】
扉体3の移動時に、ベース部材40の補強部43により、ベース部材40の取付部42及び仕切り部材50の揺れを抑制して、仕切り部材50を安定させることができる。その結果、営巣阻止具9が扉体3の移動に影響を及ぼすのを防止することができる。第3仕切り部53と扉体3の上端部3Aの間の隙間57に配線11を配置することで、扉体3の上端部3Aに配線11を容易に配置でき、配線11の破損を抑制することもできる。
【0045】
なお、第2仕切り部52の先端部に垂下部54を設けずに、第2仕切り部52の先端部を第2溝壁部34と対向させてもよい。また、営巣阻止具9を2つの吊り車10の間の箇所以外の箇所に設けるようにしてもよい。例えば、営巣阻止具9は、2つの吊り車10の間の箇所に加えて、又は、2つの吊り車10の間の箇所に替えて、吊り車10よりも上枠5の長手方向Rの外側(戸先部3C側、戸尻部3D側)に設けてもよい。
【0046】
本実施形態では、上枠5の見込み方向Sの一方側が屋外側であり、上枠5の見込み方向Sの他方側が屋内側である。これに対し、上枠5の見込み方向Sの一方側が屋内側であり、上枠5の見込み方向Sの他方側が屋外側であってもよい。また、本発明は、玄関に設置される片引戸に限定されず、上枠の長手方向に移動する扉体を備えた種々の建具に適用することができる。
【0047】
以上のとおり、建具は、下方に向かって開放された溝部を有する上枠と、上端部が前記溝部内に配置されて前記上枠の長手方向に移動する扉体と、を備えた建具であって、
前記扉体の上端部に設けられて前記溝部内に配置され、仕切り部材により、前記溝部の内部空間を仕切る営巣阻止具を備え、
前記溝部は、前記扉体の上端部の上方に位置する溝底部と、互いに対向する第1溝壁部及び第2溝壁部と、を有し、
前記仕切り部材は、前記第1溝壁部との間に隙間をあけて前記第1溝壁部と対向する第1仕切り部と、前記第1仕切り部から前記第2溝壁部に向かって突出し、前記溝底部との間に隙間をあけて前記溝底部と対向する第2仕切り部と、前記上枠の長手方向に互いに離隔して前記第1仕切り部から前記第2溝壁部に向かって突出し、前記第2仕切り部と前記扉体の上端部の間に配置される一対の第3仕切り部と、を有する建具である。
従って、上枠の長手方向に移動する扉体を備えた建具において、上枠の下方に向かって開放された溝部内への動物の侵入を抑制でき、溝部の内部空間における営巣を妨害することができる。
【0048】
前記第2仕切り部の前記第2溝壁部側の先端部及び前記第3仕切り部の前記第2溝壁部側の先端部は、前記第2溝壁部との間に隙間をあけて前記第2溝壁部と対向する。
従って、第2溝壁部と仕切り部材の間への動物の侵入を妨げて、溝部の内部空間での営巣を抑制することができる。
【0049】
前記上枠は、前記溝部内で前記第2溝壁部から前記第1溝壁部に向かって突出して、前記上枠の長手方向に延びるレールを有し、
前記扉体は、前記上端部に取り付けられて、前記レールにより、前記上枠の長手方向に移動可能に支持された吊り車を有し、
前記第1仕切り部は、前記レールと前記第1溝壁部の間に配置され、
前記第2仕切り部は、前記レールと前記溝底部の間に配置され、
前記第3仕切り部は、前記レールが配置される空所部を有する。
従って、扉体の移動に支障が生じることなく、レールへの営巣を妨害することができる。
【0050】
前記営巣阻止具は、前記上枠の長手方向に互いに離隔する2つの前記吊り車の間に設けられる。
従って、吊り車のレールに沿う移動に影響が生じるのを防止しつつ、2つの吊り車の間の箇所で、溝部の内部空間における営巣を阻止することができる。
【0051】
前記営巣阻止具は、前記扉体の上端部に取り付けられて、前記溝部内に配置されるベース部材を有し、
前記仕切り部材は、前記ベース部材に取り付けられて、前記ベース部材により前記扉体の上端部に連結される。
従って、ベース部材により、仕切り部材を扉体の上端部に容易に設けることができる。
【0052】
前記ベース部材は、前記扉体の上端部に取り付けられる基部と、前記基部から上方に突出して前記仕切り部材が取り付けられる取付部と、前記基部及び前記取付部に接続して前記取付部を補強する補強部と、を有する。
従って、扉体の移動時に、補強部により、取付部及び仕切り部材の揺れを抑制して、仕切り部材を安定させることができる。その結果、営巣阻止具が扉体の移動に影響を及ぼすのを防止することができる。
【0053】
前記扉体は、前記上端部に配置される配線を有し、
前記第3仕切り部は、前記扉体の上端部との間に、前記配線が配置可能な隙間をあけて配置される。
従って、第3仕切り部と扉体の上端部の間の隙間に配線を配置することで、扉体の上端部に配線を容易に配置でき、配線の破損を抑制することもできる。
【符号の説明】
【0054】
1・・・建具、2・・・建物、3・・・扉体、3A・・・上端部、3B・・・下端部、3C・・・戸先部、3D・・・戸尻部、4・・・枠体、4A・・・開口部、5・・・上枠、6・・・下枠、7・・・縦枠、8・・・縦枠、9・・・営巣阻止具、10・・・吊り車、11・・・配線、20・・・カバー、21・・・レール、30・・・溝部、31・・・開口、32・・・溝底部、33・・・第1溝壁部、34・・・第2溝壁部、35・・・内部空間、40・・・ベース部材、41・・・基部、41A・・・固定部、41B・・・載置部、42・・・取付部、43・・・補強部、50・・・仕切り部材、51・・・第1仕切り部、52・・・第2仕切り部、53・・・第3仕切り部、54・・・垂下部、55・・・仕切り空間、56・・・空所部、57・・・隙間、R・・・長手方向、S・・・見込み方向。