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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】波形測定器及びデータの取得方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 13/30 20060101AFI20240416BHJP
   G08C 15/06 20060101ALI20240416BHJP
   G01R 13/20 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
G01R13/30 D
G08C15/06 H
G01R13/20 S
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020199178
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2022086903
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596157780
【氏名又は名称】横河計測株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100188307
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌宏
(74)【代理人】
【識別番号】100203264
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 未久
(72)【発明者】
【氏名】中山 悦郎
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-087156(JP,A)
【文献】特開2019-159951(JP,A)
【文献】特開2008-097521(JP,A)
【文献】特開2010-203968(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0286359(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 13/30
G08C 15/06
G01R 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリアル信号においてパケットの通信開始を検出すると、前記パケットの通信開始を示す信号を出力し、前記パケットの通信終了を検出すると、前記パケットの通信終了を示す信号を出力する解析回路と、
前記パケットの通信開始を示す信号を取得したタイミングと前記パケットの通信終了を示す信号を取得したタイミングとに基づいて、前記パケットの通信時間を計測する計測回路と、
前記計測回路から前記パケットの通信時間の情報を取得した取得時刻から前記パケットの通信時間を差し引くことにより、前記パケットの通信が開始された通信開始時刻の情報を取得する演算回路と、
前記通信開始時刻の情報と前記パケットのデータとを対応付けてメモリに記憶させるメモリコントローラと、を備える、波形測定器。
【請求項2】
請求項1に記載の波形測定器において、
前記メモリコントローラは、アナログ波形のデータを取得して前記メモリに記憶させる、波形測定器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の波形測定器において、
サンプリングタイミングを示すサンプリング信号を発生させるタイミング発生器及び現在時刻を発生させる時刻発生器をさらに備え、
前記計測回路は、前記パケットの通信開始を示す信号を取得したタイミングから前記パケットの通信終了を示す信号を取得したタイミング以降の最初の前記サンプリングタイミングまでの時間を前記パケットの通信時間として計測し、
前記演算回路は、前記計測回路から前記パケットの通信時間の情報を取得すると、前記時刻発生器から現在時刻の情報を、前記取得時刻の情報として取得し、
前記時刻発生器が現在時刻を発生させる発生頻度は、前記サンプリングタイミングのサンプリングレート以上であり、
前記計測回路は、前記サンプリングタイミングの時間間隔よりも短い時間間隔で前記通信時間を計測する、波形測定器。
【請求項4】
シリアル信号においてパケットの通信開始を検出すると、前記パケットの通信開始を示す信号を出力し、前記パケットの通信終了を検出すると、前記パケットの通信終了を示す信号を出力することと、
シリアル通信のパケットの通信開始を示す信号を取得したタイミングと前記パケットの通信終了を示す信号を取得したタイミングとに基づいて、前記パケットの通信時間を計測することと、
前記パケットの通信時間の情報を取得した取得時刻から前記パケットの通信時間を差し引くことにより、前記パケットの通信が開始された通信開始時刻の情報を取得することと、
前記通信開始時刻の情報と前記パケットのデータとを対応付けて記憶することと、
を含む、データの取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、波形測定器及びデータの取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アナログ信号とイベント信号とを同時に波形として記録表示するように構成された波形測定器が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-203968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の波形測定器には、改善の余地がある。例えば、データとともにそのデータが測定された時刻を波形測定器に表示させる場合がある。この場合、そのデータが測定された時刻を波形測定器によって精度良く取得できることは、有用である。
【0005】
本開示は、上述の点に鑑みてなされたものであり、改善された波形測定器及びデータの取得方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
幾つかの実施形態に係る波形測定器は、シリアル信号においてパケットの通信開始を検出すると、前記パケットの通信開始を示す信号を出力し、前記パケットの通信終了を検出すると、前記パケットの通信終了を示す信号を出力する解析回路と、前記パケットの通信開始を示す信号を取得したタイミングと前記パケットの通信終了を示す信号を取得したタイミングとに基づいて、前記パケットの通信時間を計測する計測回路と、前記計測回路から前記パケットの通信時間の情報を取得した取得時刻から前記パケットの通信時間を差し引くことにより、前記パケットの通信が開始された通信開始時刻の情報を取得する演算回路と、前記通信開始時刻の情報と前記パケットのデータとを対応付けてメモリに記憶させるメモリコントローラと、を備える。パケットの通信開始時刻は、そのパケットのデータが測定された時刻に近い時刻である。パケットの通信開始時刻を、そのパケットのデータが測定された時刻とみなすことができる。このような構成により、パケットのデータが測定された時刻が精度良く取得される。よって、改善された波形測定器が提供される。
【0007】
一実施形態に係る波形測定器において、前記メモリコントローラは、アナログ波形のデータを取得して前記メモリに記憶させてよい。パケットのデータが測定された時刻を精度良く取得することができるため、ユーザは、アナログ波形とパケットのデータとを正しく比較することができる。
【0008】
一実施形態に係る波形測定器は、サンプリングタイミングを示すサンプリング信号を発生させるタイミング発生器及び現在時刻を発生させる時刻発生器をさらに備え、前記計測回路は、前記パケットの通信開始を示す信号を取得したタイミングから前記パケットの通信終了を示す信号を取得したタイミング以降の最初の前記サンプリングタイミングまでの時間を前記パケットの通信時間として計測し、前記演算回路は、前記計測回路から前記パケットの通信時間の情報を取得すると、前記時刻発生器から現在時刻の情報を、前記取得時刻の情報として取得し、前記時刻発生器が現在時刻を発生させる発生頻度は、前記サンプリングタイミングのサンプリングレート以上であり、前記計測回路は、前記サンプリングタイミングの時間間隔よりも短い時間間隔で前記通信時間を計測してよい。このような構成により、演算回路によって取得されるパケットの通信開始時刻は、サンプリングタイミングの時間間隔よりも短い時間間隔で刻まれたものとなる。よって、パケットPの通信開始時刻をより精度良く取得することができる。
【0009】
幾つかの実施形態に係るデータの取得方法は、シリアル信号においてパケットの通信開始を検出すると、前記パケットの通信開始を示す信号を出力し、前記パケットの通信終了を検出すると、前記パケットの通信終了を示す信号を出力することと、シリアル通信のパケットの通信開始を示す信号を取得したタイミングと前記パケットの通信終了を示す信号を取得したタイミングとに基づいて、前記パケットの通信時間を計測することと、前記パケットの通信時間の情報を取得した取得時刻から前記パケットの通信時間を差し引くことにより、前記パケットの通信が開始された通信開始時刻の情報を取得することと、前記通信開始時刻の情報と前記パケットのデータとを対応付けて記憶することと、を含む。パケットの通信開始時刻は、そのパケットのデータが測定された時刻に近い時刻であることにより、パケットのデータが測定された時刻とみなすことができる。このような構成により、パケットのデータが測定された時刻を精度良く取得することができる。よって、改善されたデータの取得方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、改善された波形測定器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係る波形測定システムのブロック図である。
図2図1に示す波形測定器のブロック図である。
図3図2に示す波形測定器の動作を示すタイミングチャートである。
図4図2に示す波形測定器のデータの取得方法を示すフローチャートである。
図5】比較例に係る波形測定器のブロック図である。
図6】比較例に係る波形測定器の動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照して説明する。以下の図面に示す構成要素において、同じ構成要素には、同じ符号を付す。
【0013】
図1に示すように、波形測定システム1は、センサ2と、センサ3と、コントローラ4と、波形測定器5とを備える。図1に示すような波形測定システム1は、2つのセンサすなわちセンサ2及びセンサ3を備える。ただし、波形測定システム1は、任意の数のセンサを備えてよい。
【0014】
センサ2と、センサ3と、コントローラ4とは、シリアル通信線6を介して互いにシリアル通信を実行する。シリアル通信の通信プロトコルは、CAN(Controller Area Network)又はLIN(Local Interconnect Network)等の任意の通信プロトコルであってよい。
【0015】
波形測定システム1は、任意の装置等において構成されてよい。波形測定システム1は、例えば、自動車において構成される。
【0016】
センサ2は、例えば自動車のエンジン温度を、電気信号のデータD1として測定する。センサ2は、データD1を測定すると、シリアル通信の通信プロトコルに従ってパケットP1を生成する。例えば、センサ2は、データD1にヘッダ及びフッタ等を付加し、パケットP1を生成する。パケットP1のヘッダは、例えば、送信元であるセンサ2の識別子を示す識別子ID1の情報を含む。パケットP1のフッタは、例えば、CRC(Cyclic Redundancy Code)符号又はパリティ符号等の誤り検出符号の情報を含む。センサ2は、シリアル通信線6を介してパケットP1をコントローラ4に出力する。
【0017】
センサ3は、例えば自動車のエンジン回転数を、電気信号のデータD2として測定する。センサ3は、データD2を測定すると、センサ2と同様に、シリアル通信の通信プロトコルに従ってパケットP2を生成する。パケットP2のヘッダは、例えば、送信元であるセンサ3の識別子を示す識別子ID2の情報を含む。パケットP2のフッタは、誤り検出符号の情報を含む。センサ3は、シリアル通信線6を介してパケットP2をコントローラ4に出力する。
【0018】
コントローラ4は、例えば、自動車のECU(Electronic Control Unit)である。コントローラ4は、シリアル通信線6を介してセンサ2及びセンサ3の各々から、パケットP1及びパケットP2を取得する。コントローラ4は、取得したパケットP1及びパケットP2から、データD1及びデータD2を取得する。コントローラ4は、データD1及びデータD2に基づいて、自動車のエンジン等を制御する。
【0019】
波形測定器5は、センサ2及びセンサ3とコントローラ4との間のシリアル通信をモニターするために用いられる。波形測定器5は、シリアル通信線6に電気的に接続される。波形測定器5には、シリアル信号SとしてパケットP1,P2が入力される。
【0020】
図2に示すように、波形測定器5は、タイミング発生器10と、アンプ11と、AD(Analog to Digital)変換器12と、解析回路13と、計測回路14と、比較回路15と、保持回路16と、出力コントローラ17と、時刻発生器18と、演算回路19と、メモリコントローラ20と、メモリ21と、生成回路22と、表示器23とを備える。
【0021】
波形測定器5には、図1に示すようなシリアル通信線6を介してシリアル信号Sが入力される。シリアル信号Sは、パケットPを含む。パケットPは、例えば、パケットP1又はパケットP2等である。
【0022】
タイミング発生器10は、サンプリング信号を発生させる。サンプリング信号は、所定周期のサンプリングタイミングを示す。タイミング発生器10は、サンプリング信号を、AD変換器12、計測回路14、出力コントローラ17及び時刻発生器18に出力する。
【0023】
アンプ11には、波形測定器5によってアナログ波形としてモニターしたい任意のアナログ信号が入力される。このアナログ信号は、例えば、電流センサによって測定される電流信号又は電圧センサによって測定される電圧信号等である。アンプ11は、アナログ信号をAD変換器12の入力電圧範囲に応じて正規化する。例えば、アンプ11は、アナログ信号の電圧幅がAD変換器12の入力電圧範囲内になるようにアナログ信号の電圧幅を正規化(調整)する。アンプ11は、正規化後のアナログ信号をAD変換器12に出力する。
【0024】
AD変換器12には、アンプ11から、正規化後のアナログ信号が入力される。また、AD変換器12には、タイミング発生器10から、サンプリング信号が入力される。AD変換器12は、サンプリング信号が示すサンプリングタイミングに従って、正規化後のアナログ信号をデジタルデータに変換する。この変換後のデジタルデータは、表示器23に表示されるアナログ波形のデータに相当する。以下、この変換後のデジタルデータは、「アナログ波形のデータ」とも記載される。AD変換器12は、アナログ波形のデータを、サンプリングタイミングに従って、メモリコントローラ20に出力する。
【0025】
解析回路13は、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つの専用回路又はこれらの組み合わせを含む。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)若しくはGPU(Graphics Processing Unit)等の汎用プロセッサ又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。専用回路は、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)である。
【0026】
解析回路13には、シリアル信号Sが入力される。解析回路13は、例えばスタートビットを検出することにより、パケットPの通信開始を検出する。解析回路13は、パケットPの通信開始を検出すると、パケットPの通信開始を示す信号を計測回路14に出力する。また、解析回路13は、例えばストップビットを検出することにより、パケットPの通信終了を検出する。解析回路13は、パケットPの通信終了を検出すると、パケットPの通信終了を示す信号を計測回路14及び出力コントローラ17に出力する。
【0027】
例えば、図3に示すように、時刻taでパケットP1の通信が開始し、時刻tbでパケットP1の通信が終了する。解析回路13は、時刻taで、パケットP1の通信開始を示す信号を計測回路14に出力する。解析回路13は、時刻tbで、パケットP1の通信終了を示す信号を計測回路14及び出力コントローラ17に出力する。
【0028】
例えば、図3に示すように、時刻tcでパケットP2の通信が開始し、時刻tdでパケットP2の通信が終了する。解析回路13は、時刻tcで、パケットP2の通信開始を示す信号を計測回路14に出力する。解析回路13は、時刻tdで、パケットP2の通信終了を示す信号を計測回路14及び出力コントローラ17に出力する。
【0029】
解析回路13は、シリアル通信の通信プロトコルに従って、パケットPを解析する。
【0030】
解析回路13は、例えば、パケットPのヘッダから、パケットPの送信元の識別子を示す識別子IDを取得する。解析回路13は、取得した識別子IDを比較回路15に出力する。例えば、解析回路13は、図3に示すようなパケットP1の識別子ID1及びパケットP2の識別子ID2を、比較回路15に出力する。
【0031】
解析回路13は、例えば、パケットPから、データDを取得する。解析回路13は、取得したデータDを保持回路16に出力する。例えば、解析回路13は、図3に示すようなパケットP1のデータD1及びパケットP2のデータD2を、保持回路16に出力する。
【0032】
計測回路14は、時間を計測する回路である。計測回路14は、サンプリング信号のサンプリングタイミングの時間間隔よりも短い時間間隔で、時間を計測してよい。計測回路14は、解析回路13から、パケットPの通信開始を示す信号及びパケットPの通信終了を示す信号を取得する。計測回路14は、パケットPの通信開始を示す信号を取得したタイミングからパケットPの通信終了を示す信号を取得したタイミングまでの時間をパケットPの通信時間として計測する。パケットPの通信時間は、パケット長に依拠する。
【0033】
本実施形態では、計測回路14には、タイミング発生器10から、サンプリング信号が入力される。本実施形態では、計測回路14は、パケットPの通信開始を示す信号を取得したタイミングからパケットPの通信終了を示す信号を取得したタイミング以降の最初のサンプリングタイミングまでの時間をパケットPの通信時間として計測する。計測回路14は、計測した通信時間の情報を、出力コントローラ17に出力する。
【0034】
計測回路14は、サンプリング信号のサンプリングタイミングの時間間隔よりも短い時間間隔で、パケットPの通信時間を計測してよい。計測回路14は、例えば、サンプリング信号のサンプリングタイミングの時間間隔が1[ms]である場合、10[μs]の時間間隔でパケットPの通信時間を計測する。
【0035】
例えば、図3に示すような時刻t1~t13は、サンプリング信号のサンプリングタイミングに対応する時刻である。時刻taで、計測回路14は、パケットP1の通信開始を示す信号を取得する。つまり、時刻taは、計測回路14がパケットP1の通信開始を示す信号を取得したタイミングに対応する。また、時刻tbで、計測回路14は、パケットP1の通信終了を示す信号を取得する。つまり、時刻tbは、計測回路14がパケットP1の通信終了を示す信号を取得したタイミングに対応する。時刻t7は、時刻tb以降の最初のサンプリングタイミングに対応する。計測回路14は、パケットP1の通信時間T1として、時刻taから時刻t7までの時間を計測する。計測回路14は、時刻t7で、パケットP1の通信時間T1の情報を、出力コントローラ17に出力する。同様に、計測回路14は、パケットP2の通信時間T2として時刻tcから時刻t13までの時間を計測する。計測回路14は、時刻t13で、パケットP2の通信時間T2の情報を、出力コントローラ17に出力する。
【0036】
比較回路15は、「コンパレータ」とも称される。比較回路15には、解析回路13から、パケットPの識別子IDの情報が入力される。比較回路15は、パケットPの識別子IDが予め設定された識別子IDRと一致するか否か比較する。識別子IDRは、ユーザによって予め設定される。ユーザは、波形測定器5によってモニターしたいセンサの識別子IDを、識別子IDRとして設定する。
【0037】
比較回路15は、パケットPの識別子IDが識別子IDRと一致する場合、識別子IDと識別子IDRとの一致を示す一致信号を出力コントローラ17に出力する。一方、比較回路15は、パケットPの識別子IDが識別子IDRと一致しない場合、識別子IDと識別子IDRとの不一致を示す不一致信号を出力コントローラ17に出力する。
【0038】
保持回路16は、記憶素子を含んで構成される。保持回路16には、解析回路13から、データDが入力される。保持回路16は、データDを保持する。
【0039】
出力コントローラ17は、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つの専用回路又はこれらの組み合わせを含む。プロセッサは、CPU若しくはGPU等の汎用プロセッサ又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。専用回路は、例えば、FPGA又はASICである。
【0040】
出力コントローラ17には、タイミング発生器10からサンプリング信号が入力される。また、出力コントローラ17は、計測回路14からパケットPの通信時間の情報を取得する。また、出力コントローラ17は、比較回路15から、一致信号又は不一致信号を取得する。
【0041】
出力コントローラ17は、比較回路15から一致信号又は不一致信号を取得した後、解析回路13からパケットPの通信終了を示す信号を取得する。出力コントローラ17は、一致信号を取得した場合、パケットPの通信終了を示す信号を取得したタイミング以降の最初のサンプリングタイミングで、保持回路16が保持したデータDをメモリコントローラ20に出力する。出力コントローラ17は、当該最初のサンプリングタイミングで、データDをメモリコントローラ20に出力するとともに、計測回路14から取得したパケットPの通信時間の情報を演算回路19に出力する。
【0042】
例えば、出力コントローラ17は、図3に示すような時刻tbで、パケットP1の通信終了を示す信号を取得する。なお、出力コントローラ17は、時刻tbよりも前の時刻で、パケットP1について一致信号を取得している。時刻t7は、出力コントローラ17がパケットP1の通信終了を示す信号を取得したタイミング以降の最初のサンプリングタイミングに対応する。出力コントローラ17は、時刻t7で、保持回路16が保持したデータD1をメモリコントローラ20に出力するとともに、計測回路14から取得した通信時間T1の情報を演算回路19に出力する。同様に、時刻t13で、出力コントローラ17は、保持回路16が保持したデータD2をメモリコントローラ20に出力するとともに、計測回路14から取得した通信時間T2の情報を演算回路19に出力する。
【0043】
時刻発生器18は、現在時刻を発生させる。時刻発生器18には、サンプリング信号が入力される。時刻発生器18が現在時刻を発生させる発生頻度は、タイミング発生器10が発生させるサンプリング信号のサンプリングタイミングのサンプリングレート以上であってもよいし、又はサンプリングレートと同じであってもよい。時刻発生器18は、サンプリング信号のサンプリングタイミングに同期したタイミングで、現在時刻を発生させる。時刻発生器18は、時刻発生器18が現在時刻を発生させる発生頻度とサンプリング信号のサンプリングタイミングのサンプリングレートとが同じである場合、サンプリング信号のサンプリングタイミングと同じタイミングで、現在時刻を発生させてよい。
【0044】
演算回路19は、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つの専用回路又はこれらの組み合わせを含む。プロセッサは、CPU若しくはGPU等の汎用プロセッサ又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。専用回路は、例えば、FPGA又はASICである。
【0045】
演算回路19は、出力コントローラ17から、パケットPの通信時間の情報を取得する。演算回路19は、出力コントローラ17からパケットPの通信時間の情報を取得すると、時刻発生器18から現在時刻の情報を、パケットPの通信時間の情報を取得した取得時刻として取得する。演算回路19は、取得時刻からパケットPの通信時刻を差し引くことにより、パケットPの通信開始時刻の情報を取得する。演算回路19は、パケットPの通信開始時刻の情報をメモリコントローラ20に出力する。
【0046】
例えば、図3に示すような時刻t7で、演算回路19は、出力コントローラ17からパケットP1の通信時間T1を取得する。演算回路19は、出力コントローラ17からパケットP1の通信時間T1を取得すると、現在時刻である時刻t7の情報を、時刻発生器18から、パケットP1の通信時間の情報を取得した取得時刻として取得する。なお、図3に示す構成では、時刻発生器18は、サンプリングタイミングと同じタイミングですなわち時刻t1~t13で、現在時刻を発生させる。演算回路19は、取得時刻としての時刻t7から通信時間T1を差し引くことにより、パケットP1の通信開始時刻としての時刻taの情報を取得する。演算回路19は、P1の通信開始時刻としての時刻taの情報を、メモリコントローラ20に出力する。同様に、演算回路19は、時刻t13から通信時間T2を差し引くことにより、パケットP2の通信開始時刻として時刻tcの情報を取得する。演算回路19は、パケットP2の通信開始時刻として時刻tcの情報を、メモリコントローラ20に出力する。
【0047】
このように演算回路19によってパケットPの通信開始時刻の情報が取得される。ここで、上述のように、計測回路14は、サンプリング信号のサンプリングタイミングの時間間隔よりも短い時間間隔で、パケットPの通信時間を計測してよい。このような構成により、演算回路19によって取得されるパケットPの通信開始時刻は、サンプリング信号のサンプリングタイミングの時間間隔よりも短い時間間隔で刻まれたものとなる。よって、パケットPの通信開始時刻をより精度良く取得することができる。
【0048】
メモリコントローラ20は、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つの専用回路又はこれらの組み合わせを含む。プロセッサは、CPU若しくはGPU等の汎用プロセッサ又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。専用回路は、例えば、FPGA又はASICである。
【0049】
メモリコントローラ20は、AD変換器12から、アナログ波形のデータを取得する。メモリコントローラ20は、アナログ波形のデータをメモリ21に記憶させる。
【0050】
メモリコントローラ20は、出力コントローラ17から、データDを取得する。また、メモリコントローラ20は、演算回路19から、パケットPの通信開始時刻の情報を取得する。メモリコントローラ20は、データDにパケットPの通信開始時刻の情報を対応付けて、メモリ21に記憶させる。
【0051】
例えば、図3に示す構成では、メモリコントローラ20は、データD1にパケットP1の通信開始時刻としての時刻taの情報を対応付けて、メモリ21に記憶させる。また、メモリコントローラ20は、データD2にパケットP2の通信開始時刻としての時刻tcの情報を対応付けて、メモリ21に記憶させる。
【0052】
メモリ21は、少なくとも1つの半導体メモリ、少なくとも1つの磁気メモリ、少なくとも1つの光メモリ又はこれらの任意の組合せを含む。半導体メモリは、例えば、RAM(random access memory)又はROM(read only memory)である。RAMは、例えば、SRAM(static random access memory)又はDRAM(dynamic random access memory)である。ROMは、例えば、EEPROM(electrically erasable programmable read only memory)である。
【0053】
メモリ21には、アナログ波形のデータが記憶される。また、メモリ21には、パケットPのデータDとパケットPの通信開始時刻の情報とが対応付けて記憶される。
【0054】
生成回路22は、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つの専用回路又はこれらの組み合わせを含む。プロセッサは、CPU若しくはGPU等の汎用プロセッサ又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。専用回路は、例えば、FPGA又はASICである。
【0055】
生成回路22は、波形測定器5の波形表示時、メモリ21からアナログ波形のデータを読み出す。また、生成回路22は、波形測定器5の波形表示時、メモリ21から、パケットPの通信開始時刻の情報が対応付けられたデータDを読み出す。生成回路22は、アナログ波形のデータと、パケットPの通信開始時刻の情報が対応付けられたデータDとに基づいて、波形表示データを生成する。波形表示データは、表示器23に表示させるデータである。
【0056】
表示器23は、少なくとも1つの表示出力用インタフェースを含む。表示出力用インタフェースは、例えば、ディスプレイである。ディスプレイは、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)又は有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイである。
【0057】
表示器23は、生成回路22の制御に基づいて、波形表示データを表示する。表示器23は、図3に示すような波形表示データを表示する。図3には、データDと、パケットPの通信開始時刻の情報とによって生成された波形表示データを示す。
【0058】
図3では、時刻taで波形がデータD1に遷移し、時刻tcで波形がデータD2に遷移する。時刻ta及び時刻tbの各々は、上述のように、パケットP1及びパケットP2の各々の通信開始時刻である。
【0059】
ここで、パケットPの通信開始時刻は、そのパケットPのデータDがセンサによって測定された時刻に近い時刻である。パケットPの通信開始時刻をそのデータDが測定された時刻とみなすことができる。つまり、パケットP1の通信開始時刻である時刻taをデータD1がセンサ2によって測定された時刻とみなすことができる。また、パケットP2の通信開始時刻である時刻tcをデータD2がセンサ3によって測定された時刻とみなすことができる。従って、本実施形態によれば、データDがセンサによって測定された時刻とともにデータDを表示器23に表示させることができる。
【0060】
図4は、図2に示す波形測定器5のデータDの取得方法を示すフローチャートである。波形測定器5は、解析回路13によってパケットPの通信開始を検出すると、図4に示すような処理を開始する。データDの取得方法は、波形測定器5のプロセッサに実行させる取得プログラムとして実現されてもよい。取得プログラムは、非一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体に格納されてよい。
【0061】
解析回路13は、パケットPの通信開始を検出すると、パケットPの通信開始を示す信号を計測回路14に出力する(ステップS10)。計測回路14は、解析回路13から、パケットPの通信開始を示す信号を取得する(ステップS11)。
【0062】
解析回路13は、パケットPの通信終了を検出すると、パケットPの通信終了を示す信号を計測回路14に出力する(ステップS12)。計測回路14は、解析回路13から、パケットPの通信終了を示す信号を取得する(ステップS13)。
【0063】
計測回路14は、パケットPの通信開始を示す信号を取得したタイミングからパケットPの通信終了を示す信号を取得したタイミング以降の最初のサンプリングタイミングまでの時間をパケットPの通信時間として計測する(ステップS14)。
【0064】
演算回路19は、パケットPの通信時間の情報に基づいて、パケットPの通信が開始された通信開始時刻の情報を取得する(ステップS15)。
【0065】
メモリコントローラ20は、パケットPのデータDにパケットPの通信開始時刻の情報を対応付けて、メモリ21に記憶させる(ステップS16)。
【0066】
以下、本実施形態に係る波形測定器5の効果を比較例と対比しながら説明する。
【0067】
(比較例)
図5に示すように、比較例に係る波形測定器105は、タイミング発生器10と、アンプ11と、AD変換器12と、解析回路13と、比較回路15と、保持回路16と、出力コントローラ17と、時刻発生器18と、メモリコントローラ20と、メモリ21と、生成回路22と、表示器23とを備える。
【0068】
比較例に係る波形測定器105は、図2に示すような波形測定器5とは異なり、計測回路14及び演算回路19を備えない。比較例では、計測回路14によってパケットPの通信時間が計測されない。比較例では、演算回路19によってパケットPの通信開始時刻が取得されない。
【0069】
比較例では、メモリコントローラ20は、出力コントローラ17からデータDを取得すると、時刻発生器18から現在時刻の情報を、データDを取得した取得時刻の情報として取得する。メモリコントローラ20は、データDに取得時刻の情報を対応付けて、メモリ21に記憶させる。
【0070】
例えば、図6に示すような時刻t7で、出力コントローラ17は、データD1をメモリコントローラ20に出力する。メモリコントローラ20は、データD1の取得時刻としての時刻t7の情報を時刻発生器18から取得する。メモリコントローラ20は、データD1の取得時刻としての時刻t7の情報をデータD1に対応付けてメモリ21に記憶させる。同様に、メモリコントローラ20は、データD2の取得時刻としての時刻t13の情報をデータD2に対応付けてメモリ21に記憶させる。
【0071】
比較例では、生成回路22は、波形測定器105の波形表示時、メモリ21から、取得時刻の情報が対応付けられたデータDを読み出す。生成回路22は、取得時刻の情報が対応付けられたデータDに基づいて、波形表示データを生成する。
【0072】
比較例では、表示器23は、図6に示すような波形表示データを表示する。図6には、データDと、データDの取得時刻の情報とによって生成された波形表示データを示す。
【0073】
図6では、時刻t7で波形がデータD1に遷移し、時刻t13で波形がデータD2に遷移する。時刻t7は、データD1が測定された時刻taよりも、通信時間T1だけ遅い時刻である。時刻t13は、データD2が測定された時刻tcよりも、通信時間T2だけ遅い時刻である。
【0074】
このように比較例では、データD1,D2は、各々、データD1,D2が測定された時刻ta,tcよりも遅い時刻t7,t13とともに表示されてしまう。換言すると、データDは、データDが測定された時刻よりも、パケット長に依拠するパケットPの通信時間だけ遅い時刻とともに表示されてしまう。このような構成により、ユーザは、波形測定器105によって正しくデータDをモニターすることができない。例えば、データD1が自動車のエンジン温度の300度とのデータである場合、エンジン温度が300度であるのは、データD1が測定された時刻taの時点である。さらに、時刻t7では、自動車のエンジン温度が300度から変化している可能性がある。しかしながら、比較例に係る波形測定器105では、図6に示すように波形が時刻t7でデータD1に遷移するため、ユーザは、時刻t7でエンジン温度が300度であると誤って認識してしまう。
【0075】
また、ユーザは、波形測定器105によって、電流信号等のアナログ波形とデータDとを比較したい場合がある。ここで、アナログ波形では、パケットPとは異なり、パケット長に依拠するパケットPの通信時間だけ遅い時刻とともに表示されてしまうといった問題が生じない。その結果、電流信号等のアナログ波形とともにデータDを表示すると、アナログ波形の時刻とデータDの時刻との間でずれが生じてしまう。このような構成により、ユーザは、電流信号等のアナログ波形とデータDとを正しく比較することができない。
【0076】
このような比較例に対し、本実施形態に係る波形測定器5では、上述のように、データDがセンサによって測定された時刻とともにデータDを表示器23に表示させることができる。このような構成により、ユーザは、波形測定器5によって正しくデータDをモニターすることができる。また、ユーザは、電流信号等のアナログ波形とデータDとを正しく比較することができる。
【0077】
また、パケット長がパケットPに応じて異なることにより、パケットPに応じてパケットPの通信時間が異なる。比較例に係る波形測定器105では、上述のように、データDは、データDが測定された時刻よりもパケットPの通信時間だけ遅い時刻とともに表示されてしまう。その結果、比較例では、データDが測定された時刻と、データDとともに表示される時刻との間の遅延時間にバラツキが生じる。
【0078】
このような比較例に対し、本実施形態に係る波形測定器5では、上述のように、データDがセンサによって測定された時刻とともにデータDを表示器23に表示させることができる。このような構成により、データDが測定された時刻とデータDとともに表示される時刻との間に遅延時間が生じることを抑制することができる。
【0079】
ここで、データDがセンサによって測定された時刻とともにデータDを表示器23に表示させるために、パケットPの通信が終了する前に、パケットPからデータDを取得した時点のデータDを使用することが考えられる。しかしながら、パケットPのフッタに誤り検出符号の情報が含まれるため、パケットPの通信が終了する前では、データDの信頼性を確保することができない。
【0080】
これに対し、本実施形態に係る波形測定器5では、計測回路14は、パケットPの通信開始を示す信号を取得したタイミングとパケットPの通信終了を示す信号を取得したタイミングとに基づいて、パケットPの通信時間を計測する。さらに、演算回路19は、パケットPの通信時間に基づいてパケットPの通信開始時刻を取得する。このような構成により、パケットPの通信が終了した後でも、データDがセンサによって測定された時刻とともにデータDを表示器23に表示させることができる。その結果、データDの信頼性を確保することができる。
【0081】
本開示に係る実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は改変を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形又は改変は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部又は各ステップに含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0082】
例えば、上記実施形態では、波形測定器5は、アンプ11及びAD変換器12を備えるものとして説明した。ただし、波形測定器5は、アンプ11及びAD変換器12を備えなくてもよい。
【0083】
例えば、上記実施形態では、波形測定器5が図1に示すような複数のセンサを備える波形測定システム1に採用されるものとして説明した。ただし、波形測定器5は、任意のシステムに採用されてよい。例えば、波形測定器5は、1つのセンサとコントローラ4とによって1対1のシリアル通信が実行されるようなシステムにも採用される。この場合、波形測定器5は、比較回路15によってパケットPの識別子IDが識別子IDRと一致するか否か比較しなくてもよい。
【0084】
例えば、上記実施形態では、時刻発生器18には、タイミング発生器10からサンプリング信号が入力されるものとして説明した。ただし、時刻発生器18には、タイミング発生器10からサンプリング信号が入力されなくてもよい。この場合、時刻発生器18は、サンプリング信号のサンプリングタイミングに非同期で現在時刻を発生させる。
【符号の説明】
【0085】
1 波形測定システム
2,3 センサ
4 コントローラ
5,105 波形測定器
6 シリアル通信線
10 タイミング発生器
11 アンプ
12 AD変換器
13 解析回路
14 計測回路
15 比較回路
16 保持回路
17 出力コントローラ
18 時刻発生器
19 演算回路
20 メモリコントローラ
21 メモリ
22 生成回路
23 表示器
図1
図2
図3
図4
図5
図6