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  • 特許-設備基礎構造 図1
  • 特許-設備基礎構造 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】設備基礎構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/44 20060101AFI20240416BHJP
   E02D 27/42 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
E02D27/44 Z
E02D27/42 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020209043
(22)【出願日】2020-12-17
(65)【公開番号】P2022096117
(43)【公開日】2022-06-29
【審査請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】中曽根 義之
(72)【発明者】
【氏名】山下 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】奥野 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】森下 泰成
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特許第5576207(JP,B2)
【文献】特開平08-284415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/44
E02D 27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラブ上に設置される設備基礎構造であって、
上下に貫通する貫通孔を中央部に有する筒状に形成されて、前記スラブから上方に突出された定着用部材を前記貫通孔に挿通させた状態で前記スラブ上に設置されるプレキャストコンクリート製の設備基礎本体と、
前記定着用部材が挿通された前記設備基礎本体の貫通孔に充填材を充填して硬化させてなる充填材硬化部と、を備え、
設備を固定するための複数のアンカー部材が、前記設備基礎本体における複数の基礎柱主筋の内側に配置されている設備基礎構造。
【請求項2】
前記スラブの下部に鉄骨梁が配置されており、
前記定着用部材の下端が、前記鉄骨梁に固定されている請求項1に記載の設備基礎構造。
【請求項3】
前記鉄骨梁における前記定着用部材の固定箇所が複数の前記鉄骨梁の交差部とされている請求項2に記載の設備基礎構造。
【請求項4】
前記定着用部材が上下方向に延在する複数の定着用鉄筋を分散配置してなる定着用鉄筋群である請求項1~3の何れか1項に記載の設備基礎構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋上などのスラブ上に設置される設備基礎構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、屋上などのスラブ上に設置される設備基礎構造が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
特許文献1記載の設備基礎構造は、屋上などのスラブ(下地コンクリート表面14)上に設置される設備基礎構造であり、プレキャストコンクリート製の設備基礎本体(プレコンクリート部材12)と、コンクリートやグラウトなどの充填材を充填して硬化させてなる充填材硬化部(充填材料部26)と、を備える。設備基礎本体(12)は、上下に貫通する貫通孔(空洞部13)を中央部に有する筒状に形成されており、スラブ(14)から上方に突出された定着用部材(数本の鉄筋22)を貫通孔(13)に挿通させた状態でスラブ(14)上に設置される。充填材硬化部(26)は、定着用部材(22)が挿通された設備基礎本体(12)の貫通孔(13)にコンクリートやグラウトなどの充填材を充填して硬化させたものとして構成される。
更に、この特許文献1記載の設備基礎構造は、定着用部材が挿通された設備基礎本体の貫通孔に設備を固定するための架台の脚部を予め配置しておき、当該貫通孔への充填材の充填時にそれを同時に埋め込むことで、設備架台の脚部を充填材硬化部に固定するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5576207号公報(図2等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、充填材が充填される前の設備基礎本体の貫通孔に設備架台の脚部を仮支持しておく必要があるので、作業の煩雑化が問題となる。更に、設備基礎本体の貫通孔の幅を設備架台の脚部が配置可能な程度に大きなものとする必要があるため、設備基礎構造全体の大型化が問題となる。また、貫通孔に充填材を充填して硬化させてなる充填材硬化部に設備架台の脚部自身を埋設させるのではなく、それよりも小型なアンカー部材を埋設させた場合であっても、貫通孔における定着用部材とアンカー部材との干渉が問題となるために、貫通孔の幅を十分に小さくして設備基礎構造全体の小型化を図るには限度がある。
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、屋上などのスラブ上に設置される設備基礎構造において、施工効率を向上しながら構造全体の小型化を図ることができる技術を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1特徴構成は、スラブ上に設置される設備基礎構造であって、
上下に貫通する貫通孔を中央部に有する筒状に形成されて、前記スラブから上方に突出された定着用部材を前記貫通孔に挿通させた状態で前記スラブ上に設置されるプレキャストコンクリート製の設備基礎本体と、
前記定着用部材が挿通された前記設備基礎本体の貫通孔に充填材を充填して硬化させてなる充填材硬化部と、を備え、
設備を固定するための複数のアンカー部材が、前記設備基礎本体における複数の基礎柱主筋の内側に配置されている点にある。
【0006】
本構成によれば、設備を固定するための複数のアンカー部材が、中央部の充填材硬化部ではなく、それを外囲する外側の設備基礎本体に配置されているので、充填材が充填される前の設備基礎本体の貫通孔へのアンカー部材の仮支持が不要となる上に、定着用部材のみが挿通されることになる貫通孔の幅を小さくすることができる。
一方、設備基礎本体では、幅を小さくした場合であっても、設備基礎本体の外表面に対する基礎柱主筋のかぶり厚さを十分に確保しながら、当該複数の基礎柱主筋と中央部の貫通孔に臨む壁面との間に複数のアンカー部材の配置スペースを確保することができる。
従って、本発明により、屋上などのスラブ上に設置される設備基礎構造において、施工効率を向上しながら構造全体の小型化を図ることができる技術を提供することができる。
【0007】
本発明の第2特徴構成は、前記スラブの下部に鉄骨梁が配置されており、
前記定着用部材の下端が、前記鉄骨梁に固定されている点にある。
【0008】
本構成によれば、定着用部材の下端が、スラブに埋め込むだけでなく、その下部に配置された鉄骨梁に対して溶接等により固定されているので、当該定着用部材の固定が強固となる。よって、設備基礎構造に作用する曲げモーメントが定着部用部材を通じてスラブの下部の鉄骨梁に直接伝達されるので、効率良く高い耐力を実現することができる。
【0009】
本発明の第3特徴構成は、前記鉄骨梁における前記定着用部材の固定箇所が複数の前記鉄骨梁の交差部とされている点にある。
【0010】
本構成によれば、設備基礎構造に作用する曲げモーメントにより圧縮側となる設備基礎本体の外周端部の4か所が、互いに交差する夫々の鉄骨梁により強固に支持されるので、複数の鉄骨梁の夫々の長手方向に沿って作用する曲げモーメントに対して効率良く高い耐力を実現することができる。
【0011】
本発明の第4特徴構成は、前記定着用部材が上下方向に延在する複数の定着用鉄筋を分散配置してなる定着用鉄筋群である点にある。
【0012】
本構成によれば、設備基礎本体の貫通孔に充填材を充填して硬化させてなる充填材硬化部に埋設される定着用部材が、上下方向に延在する複数の定着用鉄筋を適度な間隔を隔てた状態で分散配置してなる定着用鉄筋群とされているので、定着用鉄筋群を構成する夫々の定着用鉄筋同士の隙間に適度に充填材を介在させることができる。このことで、定着用鉄筋群の充填材に対する付着面積を十分にとって、定着用鉄筋群を充填材硬化部に強固に定着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の設備基礎構造の構成を示す縦断面図
図2図1におけるA-A断面図
図3図1におけるB-B断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る設備基礎構造の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1に示す設備基礎構造100は、屋上や工場施設内などのスラブ5上に設置される基礎構造であって、その上に設備(図示省略)の脚部1が載置されて固定される。
尚、本実施形態において、スラブ5は、コンクリート造であり、その下部には互いに交差する第1鉄骨梁6A及び第2鉄骨梁6Bを含む鉄骨梁6が敷設されている。また、設備の脚部1は、角鋼管で構成されており、その下端には設備基礎構造100の上面に無収縮モルタル層3を介して載置されるベースプレート1Aが設けられている。そして、設備基礎構造100の上面から突出するアンカーボルト15(アンカー部材の一例)に対し、ベースプレート1Aに形成されたボルト穴に挿通させてナット2を螺合する形態で、設備の脚部1の下端に設けられたベースプレート1Aが設備基礎構造100の上面に固定される。
【0015】
設備基礎構造100は、施工効率を向上しながら構造全体の小型化を図るための構成を有しており、その詳細について以下に説明する。
図1及び図3に示すように、設備基礎構造100には、設備基礎本体10と充填材硬化部20とを備えて構成されている。
【0016】
設備基礎本体10は、上下に貫通する貫通孔10Aを中央部に有する角筒状に形成されており、スラブ5から上方に突出された定着用部材30を貫通孔10Aに挿通させた状態でスラブ5上に無収縮モルタル層4を介して設置されるプレキャストコンクリート製の部材として構成されている。
【0017】
尚、この設備基礎本体10のコンクリート部分には、上下方向に延在する複数の基礎柱主筋11が平面視で周方向に分散配置されており、これら基礎柱主筋11を取り囲む状態で水平方向に延在する複数のあばら筋12が配置されている。また、プレキャストコンクリート製の設備基礎本体10の中央部に貫通孔10Aを形成する方法としては、当該設備基礎本体10の製作時においてコンクリート打設前に予めシース菅を設置し、その外側にコンクリートを打設することで当該シース菅の内側を貫通孔10Aとして形成することができる。
【0018】
充填材硬化部20は、上記設備基礎本体10をスラブ5上に設置した状態において、定着用部材30が挿通された設備基礎本体10の貫通孔10Aにグラウトやコンクリートなどの充填材を充填して硬化させた部分として構成されている。即ち、スラブ5から上方に突出された定着用部材30が充填材硬化部20に埋設されて定着されることになる。
【0019】
更に、定着用部材30は、上下方向に延在する複数(例えば6本)の定着用鉄筋31を適度な間隔を隔てた状態で分散配置してなる定着用鉄筋群とされている。よって、定着用部材30を構成する夫々の定着用鉄筋31同士の隙間に適度に充填材が介在することになって、定着用部材30の充填材に対する付着面積が十分に確保されることで、定着用部材30が充填材硬化部20に強固に定着されることになる。
【0020】
図1及び図2に示すように、設備基礎構造100には、設備の脚部1を固定するための複数(例えば4本)のアンカーボルト15が平面視(図2参照)における夫々の隅部に分散配置されている。これら複数のアンカーボルト15は、図1及び図3に示すように、設備基礎本体10のプレキャストコンクリート部分に下部を埋設させた状態で上部を上面から突出させた姿勢で、設備基礎本体10に予め設けられている。
【0021】
そして、設備基礎本体10において、これら複数のアンカーボルト15は、複数の基礎柱主筋11の内側に配置されている。即ち、設備を固定するための複数のアンカーボルト15が、中央部の充填材硬化部20ではなく、それを外囲する外側の設備基礎本体10に配置されている。このことで、充填材が充填される前の設備基礎本体10の貫通孔10Aにおけるアンカーボルト15の仮支持が不要となる。更に、貫通孔10Aには、定着用部材30のみが挿通されることになるので、その幅をできるだけ小さくすることができる。また、設備基礎本体10の幅をできるだけ小さくした場合であっても、上記貫通孔10Aの幅が小さいことから、設備基礎本体10の外表面に対する基礎柱主筋11のかぶり厚さが十分に確保された状態で、複数の基礎柱主筋11と中央部の貫通孔10Aに臨む壁面との間に複数のアンカーボルト15の配置スペースが十分に確保されている。
【0022】
設備基礎本体10に埋め込まれた夫々のアンカーボルト15の下端部は、U字状に折り返された折り返し部15aが設けられている。この折り返し部15aは、図1及び図3に示すように、ナット2(図2参照)が螺号される上端部側の軸心に対して側方に突出した状態となる。
【0023】
そして、その折り返し部15aの突出方向は、図3に示す平面視において、隣に位置する別のアンカーボルト15の軸心に向かう方向とされており、中央部にある貫通孔10Aの中心とアンカーボルト15の軸心とを結ぶ直線に対して角度を有する方向とされている。このことで、貫通孔10Aの壁面を構成するシース菅とアンカーボルト15の折り返し部15aとの干渉を回避しながら、貫通孔10Aの直径をできるだけ大きくして、当該貫通孔10Aにおいて複数の定着用鉄筋31を一層広い間隔で分散配置することができる。尚、本実施形態では、アンカーボルト15の折り返し部15aの突出方向を、隣に位置するアンカーボルト15の軸心に向かう方向としたが、貫通孔10Aの外壁を構成するシース菅との干渉が問題とならない範囲において、当該突出方向を例えば貫通孔10Aの中心に向かう方向などに変更しても構わない。
【0024】
図1及び図3に示すように、スラブ5の下部には、鉄骨梁6が配置されており、定着用部材30を構成する複数の定着用鉄筋31の下端が、スラブ5の下部に配置された鉄骨梁6の上フランジに溶接により固定されているので、当該複数の定着用鉄筋31のスラブ5側への固定が強固となる。よって、設備基礎構造100に作用する曲げモーメントが複数の定着用鉄筋31を通じてスラブ5の下部の鉄骨梁6に直接伝達されるので、効率良く高い耐力が実現されることになる。
【0025】
更に、これら複数の定着用鉄筋31で構成された定着用部材30の鉄骨梁6に対する固定箇所が、互いに交差する複数の第1鉄骨梁6A及び第2鉄骨梁6Bの交差部6aとされている。この構成により、設備基礎構造100に作用する曲げモーメントにより圧縮側となる設備基礎構造100の外周端部の4か所(図3における設備基礎本体10の上下左右4か所の端部)が、互いに交差する夫々の鉄骨梁6A,6Bにより強固に支持されることになる。よって、互いに交差する複数の6A,6Bの夫々の長手方向に沿って作用する曲げモーメントに対して、一層効率良く高い耐力が実現されることになる。
【0026】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0027】
(1)上記実施形態では、定着用部材30の下端をスラブ5の下部に配置された鉄骨梁6に直接固定したが、定着用部材30の下端を鉄骨梁6に固定することなくスラブ5のみに定着させて固定するように構成しても構わない。
【0028】
(2)上記実施形態では、鉄骨梁6において、定着用部材30の固定部箇所を第1鉄骨梁6Aと第2鉄骨梁6Bとの交差部6aとしたが、定着用部材30の固定部箇所を交差部6a以外の鉄骨梁6の部分としても構わない。
【0029】
(3)上記実施形態では、定着用部材30を、6本の定着用鉄筋31を分散配置させてなる定着用鉄筋群としたが、この定着用鉄筋31の本数や配置状態については適宜変更可能である。また、鉄筋以外の例えばアンカーボルト等を定着用部材30として利用することもできる。
【符号の説明】
【0030】
5 スラブ
6,6A,6B 鉄骨梁
6a 交差部
10 設備基礎本体
10A 貫通孔
11 基礎柱主筋
15 アンカーボルト(アンカー部材)
20 充填材硬化部
30 定着用部材
31 定着用鉄筋
100 設備基礎構造

図1
図2
図3