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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/21 20060101AFI20240416BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
B41J2/21
B41J2/01 129
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020209258
(22)【出願日】2020-12-17
(65)【公開番号】P2022096254
(43)【公開日】2022-06-29
【審査請求日】2023-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(72)【発明者】
【氏名】西尾 圭太
【審査官】山本 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-205916(JP,A)
【文献】特開2008-149685(JP,A)
【文献】特開2018-187936(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0220132(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数のインク層によって構成されるとともに表面に凹凸のある凹凸部をインクジェットプリンタによって印刷媒体に印刷する印刷方法であって、
前記凹凸部の中の、前記凹凸部に厚さを持たせる部分を厚盛部とし、前記厚盛部の中の最も厚い部分の前記インク層の積層数をNとし、N以下の自然数をMとすると、
前記凹凸部を含む画像データであって、前記厚盛部の厚さを所定階調のグレースケールで表した画像データであるグレースケール画像データを作成する画像データ作成工程と、
前記画像データ作成工程で作成された前記グレースケール画像データの輝度値のヒストグラムを作成するヒストグラム作成工程と、
前記ヒストグラム作成工程で作成された前記ヒストグラムの前記所定階調の輝度値をN分割して、N個の輝度値の範囲を設定する輝度値範囲設定工程と、
前記輝度値範囲設定工程で設定された輝度値の範囲である輝度値範囲に基づいて前記印刷媒体に印刷を行う印刷工程と、を備え、
前記印刷工程では、前記厚盛部を形成する際に前記インク層の印刷をN回行い、
前記グレースケール画像データの中の最も暗い部分の輝度値が最大になっており、
前記所定階調の輝度値の中の最大値である最大輝度値を含む前記輝度値範囲を最大輝度値範囲とし、輝度値0は含まないが輝度値1を含む前記輝度値範囲を最小輝度値範囲とすると、
前記グレースケール画像データの中の最も暗い部分の輝度値は、前記最大輝度値範囲に含まれており、
前記印刷工程で前記厚盛部を形成する際には、前記グレースケール画像データの、前記最大輝度値範囲から前記最小輝度値範囲に向かってM番目の前記輝度値範囲に輝度値が含まれる部分では、M回目の前記インク層の印刷からN回目の前記インク層の印刷まで(N-M+1)層の前記インク層の印刷が行われ、かつ、前記グレースケール画像データの、輝度値が0となる部分では、前記インク層の印刷が行われず、
前記輝度値範囲設定工程では、所定の表示部に表示される前記ヒストグラムを確認しながら、前記所定階調の輝度値の分割位置を調整することを特徴とする印刷方法。
【請求項2】
積層された複数のインク層によって構成されるとともに表面に凹凸のある凹凸部をインクジェットプリンタによって印刷媒体に印刷する印刷方法であって、
前記凹凸部の中の、前記凹凸部に厚さを持たせる部分を厚盛部とし、前記厚盛部の中の最も厚い部分の前記インク層の積層数をNとし、N以下の自然数をMとすると、
前記凹凸部を含む画像データであって、前記厚盛部の厚さを所定階調のグレースケールで表した画像データであるグレースケール画像データを作成する画像データ作成工程と、
前記画像データ作成工程で作成された前記グレースケール画像データの輝度値のヒストグラムを作成するヒストグラム作成工程と、
前記ヒストグラム作成工程で作成された前記ヒストグラムの前記所定階調の輝度値をN分割して、N個の輝度値の範囲を設定する輝度値範囲設定工程と、
前記輝度値範囲設定工程で設定された輝度値の範囲である輝度値範囲に基づいて前記印刷媒体に印刷を行う印刷工程と、を備え、
前記印刷工程では、前記厚盛部を形成する際に前記インク層の印刷をN回行い、
前記グレースケール画像データの中の最も暗い部分の輝度値が最小になっており、
前記所定階調の輝度値の中の最大値である最大輝度値は含まないが前記最大輝度値の次に大きい輝度値を含む前記輝度値範囲を最大輝度値範囲とし、輝度値0を含む前記輝度値範囲を最小輝度値範囲とすると、
前記グレースケール画像データの中の最も暗い部分の輝度値は、前記最小輝度値範囲に含まれており、
前記印刷工程で前記厚盛部を形成する際には、前記グレースケール画像データの、前記最小輝度値範囲から前記最大輝度値範囲に向かってM番目の前記輝度値範囲に輝度値が含まれる部分では、M回目の前記インク層の印刷からN回目の前記インク層の印刷まで(N-M+1)層の前記インク層の印刷が行われ、かつ、前記グレースケール画像データの、輝度値が前記最大輝度値となる部分では、前記インク層の印刷が行われず、
前記輝度値範囲設定工程では、所定の表示部に表示される前記ヒストグラムを確認しながら、前記所定階調の輝度値の分割位置を調整することを特徴とする印刷方法。
【請求項3】
前記輝度値範囲設定工程では、前記ヒストグラムの特定の範囲の度数が多くなる場合、この特定の範囲における前記所定階調の輝度値の分割数を増やすことを特徴とする請求項1または2記載の印刷方法。
【請求項4】
前記輝度値範囲設定工程では、前記所定階調の輝度値の分割位置を任意の位置に設定可能になっていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の印刷方法。
【請求項5】
前記輝度値範囲設定工程では、前記厚盛部の、M回目に印刷が行われる前記インク層に対応する画像を前記表示部に表示可能になっていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の印刷方法。
【請求項6】
前記厚盛部は、硬化したクリアインクからなるインク層が積層されることで形成され、
前記凹凸部は、硬化したカラーインクからなるカラーインク層と前記厚盛部とから構成され、
前記カラーインク層の上に前記厚盛部が形成されているか、または、前記厚盛部の上に前記カラーインク層が形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の印刷方法。
【請求項7】
前記厚盛部は、硬化したカラーインクからなるインク層が積層されることで形成され、
前記凹凸部は、硬化したカラーインクからなるカラーインク層と硬化したホワイトインクからなるホワイトインク層と前記厚盛部とから構成され、
前記厚盛部の上に前記ホワイトインク層が形成され、前記ホワイトインク層の上に前記カラーインク層が形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に凹凸のある凹凸部を印刷媒体に印刷するための印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2次元の画像の印刷と3次元の立体物の造形との間にある2.5次元の動作を行って、表面に凹凸のある凹凸形状を印刷媒体に印刷する印刷造形システムが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の印刷造形システムは、紫外線硬化型のインクを吐出するインクジェットヘッドと、印刷媒体に吐出されたインクに紫外線を照射する紫外線光源とを備えている。この印刷造形システムでは、インクジェットヘッドから吐出されるとともに紫外線光源から照射される紫外線で硬化したインクによって形成されるインク層が印刷媒体に順次積層されて、印刷媒体に凹凸形状が印刷される。
【0003】
また、従来、エンボス加工された壁紙や皮革等の面材表面の凹凸形状をシミュレーションするエンボス加工シミュレーション装置が知られている(たとえば、特許文献2参照)。特許文献2に記載のシミュレーション装置では、記憶部に記憶されるシミュレーション情報テーブルにおいて、壁紙や皮革等の面材表面の凹凸形状の高さを8ビット(256階調)のグレースケールで表している。さらに、従来、カラー画像データをグレースケール化して白黒画像データに変換する画像データ変換装置が知られている(たとえば、特許文献3参照)。特許文献3に記載の画像データ変換装置では、カラー画像データをグレースケール化し、グレースケール化した画像データについて輝度値のヒストグラムを作成するとともに、作成したヒストグラムに基づいて所定の処理を実行している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-43618号公報
【文献】特開2019-12378号公報
【文献】特許第6338194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者は、積層された複数のインク層によって構成されるとともに表面に凹凸のある凹凸部をインクジェットプリンタによって印刷媒体に印刷するための方法を検討している。たとえば、本願発明者は、印刷媒体の全体に木目調の凹凸部を印刷したり(図4参照)、印刷媒体の一部にトラの絵からなる凹凸部を印刷したり(図5参照)する方法として、以下の印刷方法を検討している。
【0006】
すなわち、凹凸部3の中の、凹凸部3に厚さを持たせる部分を厚盛部3aとし、厚盛部3aの中の最も厚い部分を、たとえば、積層された10層のインク層によって構成するとした場合(図8(B)、図18(B)参照)、まず、印刷媒体2に印刷される凹凸部3を含む画像データであって、厚盛部3aの厚さを、たとえば、256階調(8ビット)のグレースケールで表した画像データであるグレースケール画像データを作成する。たとえば、図4に示すグレースケール画像データや図5に示すグレースケール画像データを作成する。この場合には、たとえば、画像作成ソフトがインストールされたPC(パーソナルコンピュータ)を使用してオペレータがグレースケール画像データを作成する。図4図5に示すグレースケール画像データでは、厚盛部3aの厚さが厚くなるにしたがって、画像の濃度が濃くなっている。
【0007】
その後、作成されたグレースケール画像データの輝度値のヒストグラムをPC上で自動作成する。すなわち、256階調の輝度値(0~255)を横軸とし、画素数(ピクセル数)を縦軸とするグレースケール画像データの輝度値のヒストグラムをPC上で作成する。図6に示すヒストグラムは、図4に示すグレースケール画像データの輝度値のヒストグラムであり、図17に示すヒストグラムは、図5に示すグレースケール画像データの輝度値のヒストグラムである。図6図17に示すヒストグラムでは、画像の濃度が濃くなるにしたがって輝度値が高くなっている。
【0008】
その後、作成されたヒストグラムの256階調の輝度値を均等に10分割して、10個の輝度値の範囲(輝度値範囲)を設定する。すなわち、ヒストグラムの256階調の輝度値を、厚盛部3aの中の最も厚い部分のインク層の積層数と同じ数である10個に均等に分割して、10個の輝度値範囲を設定する。具体的には、ヒストグラムの256階調の輝度値を均等に10分割して、図6図17に示すように、輝度値が255以下229.5以上となる第1輝度値範囲R1と、輝度値が229.5未満204以上となる第2輝度値範囲R2と、輝度値が204未満178.5以上となる第3輝度値範囲R3と、輝度値が178.5未満153以上となる第4輝度値範囲R4と、輝度値が153未満127.5以上となる第5輝度値範囲R5と、輝度値が127.5未満102以上となる第6輝度値範囲R6と、輝度値が102未満76.5以上となる第7輝度値範囲R7と、輝度値が76.5未満51以上となる第8輝度値範囲R8と、輝度値が51未満25.5以上となる第9輝度値範囲R9と、輝度値が25.5未満でかつ0を超える値となる第10輝度値範囲R10とを設定する。
【0009】
その後、設定された輝度値範囲に基づいて印刷媒体2に印刷を行う。印刷媒体2に印刷を行うときには、たとえば、まず、硬化したカラーインクからなるカラーインク層3bを形成し、その上に硬化したクリアインクからなる厚盛部3aを形成する(図8(B)、図18(B)参照)。カラーインク層3bは、1層のインク層によって構成されているため、カラーインク層3bを形成する際には、インク層の印刷を1回行う。また、上述のように、厚盛部3aの中の最も厚い部分は10層のインク層によって構成されているため、厚盛部3aを形成する際には、インク層の印刷を10回行う。
【0010】
厚盛部3aを形成する際には、グレースケール画像データの、第1輝度値範囲R1に輝度値が含まれる部分では、1回目のインク層の印刷から10回目のインク層の印刷まで10層のインク層が印刷されて、印刷された10層のインク層が順次積層される(図8図18のハッチング部参照)。また、厚盛部3aを形成する際には、グレースケール画像データの、第2輝度値範囲R2に輝度値が含まれる部分では、2回目のインク層の印刷から10回目のインク層の印刷まで9層のインク層が印刷されて、印刷された9層のインク層が順次積層され、グレースケール画像データの、第3輝度値範囲R3に輝度値が含まれる部分では、3回目のインク層の印刷から10回目のインク層の印刷まで8層のインク層が印刷されて、印刷された8層のインク層が順次積層され、グレースケール画像データの、第4輝度値範囲R4に輝度値が含まれる部分では、4回目のインク層の印刷から10回目のインク層の印刷まで7層のインク層が印刷されて、印刷された7層のインク層が順次積層される(図8図18のハッチング部参照)。
【0011】
また、厚盛部3aを形成する際には、グレースケール画像データの、第5輝度値範囲R5に輝度値が含まれる部分では、5回目のインク層の印刷から10回目のインク層の印刷まで6層のインク層が印刷されて、印刷された6層のインク層が順次積層され、グレースケール画像データの、第6輝度値範囲R6に輝度値が含まれる部分では、6回目のインク層の印刷から10回目のインク層の印刷まで5層のインク層が印刷されて、印刷された5層のインク層が順次積層され、グレースケール画像データの、第7輝度値範囲R7に輝度値が含まれる部分では、7回目のインク層の印刷から10回目のインク層の印刷まで4層のインク層が印刷されて、印刷された4層のインク層が順次積層され、グレースケール画像データの、第8輝度値範囲R8に輝度値が含まれる部分では、8回目のインク層の印刷から10回目のインク層の印刷まで3層のインク層が印刷されて、印刷された3層のインク層が順次積層され、グレースケール画像データの、第9輝度値範囲R9に輝度値が含まれる部分では、9回目のインク層の印刷と10回目のインク層の印刷とで2層のインク層が印刷されて、印刷された2層のインク層が積層され、グレースケール画像データの、第10輝度値範囲R10に輝度値が含まれる部分では、10回目のインク層の印刷で1層のインク層が印刷され、グレースケール画像データの、輝度値が0となる部分では、インク層が印刷されない(図8図18のハッチング部参照)。
【0012】
図8(A)は、図6に示す輝度値範囲に基づいて印刷される厚盛部3aの所定の縦断面における、1回目のインク層の印刷から10回目のインク層の印刷までの各回の印刷データを説明するための図であり、たとえば、グレースケール画像データの輝度値が250となる部分では、1回目のインク層の印刷から10回目のインク層の印刷まで10層のインク層が印刷され、グレースケール画像データの輝度値が140となる部分では、5回目のインク層の印刷から10回目のインク層の印刷まで6層のインク層が印刷され、グレースケール画像データの輝度値が30となる部分では、9回目のインク層の印刷と10回目のインク層の印刷とによって2層のインク層が印刷される。図8(B)は、図8(A)に示す印刷データによって厚盛部3aが印刷された場合の凹凸部3の表面の凹凸状態を説明するための図である。
【0013】
また、図18(A)は、図17に示す輝度値範囲に基づいて印刷される厚盛部3aの所定の縦断面における、1回目のインク層の印刷から10回目のインク層の印刷までの各回の印刷データを説明するための図であり、たとえば、グレースケール画像データの輝度値が250となる部分では、1回目のインク層の印刷から10回目のインク層の印刷まで10層のインク層が印刷され、グレースケール画像データの輝度値が228となる部分では、2回目のインク層の印刷から10回目のインク層の印刷まで9層のインク層が印刷される。図18(B)は、図18(A)に示す印刷データによって厚盛部3aが印刷された場合の凹凸部3の表面の凹凸状態を説明するための図である。
【0014】
図4に示すグレースケール画像データの場合、図6に示すように、256階調の輝度値の全域に亘って度数の分布に偏りがないため(すなわち、ヒストグラムの偏りがないため)、上述のように256階調の輝度値を均等に10分割して10個の輝度値範囲を設定し、上述のように印刷を行っても、図8(B)に示すように、厚盛部3aを構成する部分のインク層の積層数がばらつく。したがって、図4に示すグレースケール画像データの場合には、上述のように印刷を行っても、図8(B)に示すように、凹凸部3の表面の凹凸がはっきりして、凹凸部3の表面に凹凸感が現れる。
【0015】
一方で、図5に示すグレースケール画像データの場合、図17に示すように、輝度値が255から150までの範囲の度数と、輝度値が0のときの度数とが多くなっており、度数の分布に偏りがあるため(すなわち、ヒストグラムの偏りがあるため)、上述のように256階調の輝度値を均等に10分割して10個の輝度値範囲を設定し、上述のように印刷を行うと、図18(B)に示すように、厚盛部3aを構成する部分のインク層の積層数にばらつきが生じにくい。したがって、図5に示すグレースケール画像データの場合、上述のように印刷を行うと、図18(B)に示すように、凹凸部3の表面の凹凸がはっきりしなくなり(すなわち、凹凸部3の表面がのっぺりとして)、凹凸部3の表面に凹凸感が現れにくくなる。
【0016】
そこで、本発明の課題は、表面に凹凸のある凹凸部を印刷媒体に印刷するための印刷方法において、凹凸部に厚さを持たせる部分である厚盛部の厚さを所定階調のグレースケールで表したグレースケール画像データの輝度値のヒストグラムに偏りがあってもなくても、凹凸部の表面の凹凸をはっきりさせて、凹凸部の表面の凹凸感を表すことが可能となる印刷方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の課題を解決するため、本発明の印刷方法は、積層された複数のインク層によって構成されるとともに表面に凹凸のある凹凸部をインクジェットプリンタによって印刷媒体に印刷する印刷方法であって、凹凸部の中の、凹凸部に厚さを持たせる部分を厚盛部とし、厚盛部の中の最も厚い部分のインク層の積層数をNとし、N以下の自然数をMとすると、凹凸部を含む画像データであって、厚盛部の厚さを所定階調のグレースケールで表した画像データであるグレースケール画像データを作成する画像データ作成工程と、画像データ作成工程で作成されたグレースケール画像データの輝度値のヒストグラムを作成するヒストグラム作成工程と、ヒストグラム作成工程で作成されたヒストグラムの所定階調の輝度値をN分割して、N個の輝度値の範囲を設定する輝度値範囲設定工程と、輝度値範囲設定工程で設定された輝度値の範囲である輝度値範囲に基づいて印刷媒体に印刷を行う印刷工程と、を備え、印刷工程では、厚盛部を形成する際にインク層の印刷をN回行い、グレースケール画像データの中の最も暗い部分の輝度値が最大になっており、所定階調の輝度値の中の最大値である最大輝度値を含む輝度値範囲を最大輝度値範囲とし、輝度値0は含まないが輝度値1を含む輝度値範囲を最小輝度値範囲とすると、グレースケール画像データの中の最も暗い部分の輝度値は、最大輝度値範囲に含まれており、印刷工程で厚盛部を形成する際には、グレースケール画像データの、最大輝度値範囲から最小輝度値範囲に向かってM番目の輝度値範囲に輝度値が含まれる部分では、M回目のインク層の印刷からN回目のインク層の印刷まで(N-M+1)層のインク層の印刷が行われ、かつ、グレースケール画像データの、輝度値が0となる部分では、インク層の印刷が行われず、輝度値範囲設定工程では、所定の表示部に表示されるヒストグラムを確認しながら、所定階調の輝度値の分割位置を調整することを特徴とする。
【0018】
また、上記の課題を解決するため、本発明の印刷方法は、積層された複数のインク層によって構成されるとともに表面に凹凸のある凹凸部をインクジェットプリンタによって印刷媒体に印刷する印刷方法であって、凹凸部の中の、凹凸部に厚さを持たせる部分を厚盛部とし、厚盛部の中の最も厚い部分のインク層の積層数をNとし、N以下の自然数をMとすると、凹凸部を含む画像データであって、厚盛部の厚さを所定階調のグレースケールで表した画像データであるグレースケール画像データを作成する画像データ作成工程と、画像データ作成工程で作成されたグレースケール画像データの輝度値のヒストグラムを作成するヒストグラム作成工程と、ヒストグラム作成工程で作成されたヒストグラムの所定階調の輝度値をN分割して、N個の輝度値の範囲を設定する輝度値範囲設定工程と、輝度値範囲設定工程で設定された輝度値の範囲である輝度値範囲に基づいて印刷媒体に印刷を行う印刷工程と、を備え、印刷工程では、厚盛部を形成する際にインク層の印刷をN回行い、グレースケール画像データの中の最も暗い部分の輝度値が最小になっており、所定階調の輝度値の中の最大値である最大輝度値は含まないが最大輝度値の次に大きい輝度値を含む輝度値範囲を最大輝度値範囲とし、輝度値0を含む輝度値範囲を最小輝度値範囲とすると、グレースケール画像データの中の最も暗い部分の輝度値は、最小輝度値範囲に含まれており、印刷工程で厚盛部を形成する際には、グレースケール画像データの、最小輝度値範囲から最大輝度値範囲に向かってM番目の輝度値範囲に輝度値が含まれる部分では、M回目のインク層の印刷からN回目のインク層の印刷まで(N-M+1)層のインク層の印刷が行われ、かつ、グレースケール画像データの、輝度値が最大輝度値となる部分では、インク層の印刷が行われず、輝度値範囲設定工程では、所定の表示部に表示されるヒストグラムを確認しながら、所定階調の輝度値の分割位置を調整することを特徴とする。
【0019】
本発明の印刷方法では、輝度値範囲設定工程において、所定の表示部に表示されるヒストグラムを確認しながら、所定階調の輝度値の分割位置を調整している。そのため、本発明では、厚盛部の厚さを所定階調のグレースケールで表したグレースケール画像データの輝度値のヒストグラムに偏りがあってもなくても、凹凸部の表面の凹凸をはっきりさせることができるように、N分割される所定階調の輝度値の分割位置を設定することが可能になる。したがって、本発明の印刷方法で印刷を行えば、グレースケール画像データの輝度値のヒストグラムに偏りがあってもなくても、凹凸部の表面の凹凸をはっきりさせて、凹凸部の表面の凹凸感を表すことが可能になる。
【0020】
本発明において、輝度値範囲設定工程では、たとえば、ヒストグラムの特定の範囲の度数が多くなる場合、この特定の範囲における所定階調の輝度値の分割数を増やしている。
【0021】
本発明において、輝度値範囲設定工程では、所定階調の輝度値の分割位置を任意の位置に設定可能になっていることが好ましい。このように構成すると、凹凸部の表面の凹凸をよりはっきりさせることができるように、N分割される所定階調の輝度値の分割位置を設定することが可能になる。
【0022】
本発明において、輝度値範囲設定工程では、厚盛部の、M回目に印刷が行われるインク層に対応する画像を表示部に表示可能になっていることが好ましい。このように構成すると、輝度値範囲設定工程において、厚盛部の、各インク層に対応する画像を表示部で確認しながら、所定階調の輝度値の分割位置を調整することが可能になる。したがって、凹凸部の表面の凹凸をよりはっきりさせることができるように、N分割される所定階調の輝度値の分割位置を設定することが可能になる。
【0023】
本発明において、たとえば、厚盛部は、硬化したクリアインクからなるインク層が積層されることで形成され、凹凸部は、硬化したカラーインクからなるカラーインク層と厚盛部とから構成され、カラーインク層の上に厚盛部が形成されているか、または、厚盛部の上にカラーインク層が形成されている。また、本発明において、厚盛部は、硬化したカラーインクからなるインク層が積層されることで形成され、凹凸部は、硬化したカラーインクからなるカラーインク層と硬化したホワイトインクからなるホワイトインク層と厚盛部とから構成され、厚盛部の上にホワイトインク層が形成され、ホワイトインク層の上にカラーインク層が形成されていても良い。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明では、表面に凹凸のある凹凸部を印刷媒体に印刷するための印刷方法において、凹凸部に厚さを持たせる部分である厚盛部の厚さを所定階調のグレースケールで表したグレースケール画像データの輝度値のヒストグラムに偏りがあってもなくても、凹凸部の表面の凹凸をはっきりさせて、凹凸部の表面の凹凸感を表すことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施の形態にかかる印刷方法で使用される印刷システムの構成を説明するためのブロック図である。
図2図1に示すインクジェットプリンタの概略平面図である。
図3】本発明の実施の形態にかかる印刷方法を説明するための工程図である。
図4図3に示す画像データ作成工程で作成されるグレースケール画像データの例を示す図である。
図5図3に示す画像データ作成工程で作成されるグレースケール画像データの例を示す図である。
図6図4に示すグレースケール画像データの輝度値のヒストグラムである。
図7図5に示すグレースケール画像データの輝度値のヒストグラムである。
図8】(A)は、図6に示す輝度値範囲に基づいて印刷される厚盛部の所定の縦断面における、1回目のインク層の印刷から10回目のインク層の印刷までの各回の印刷データを説明するための図であり、(B)は、(A)に示す印刷データによって厚盛部が印刷された場合の凹凸部の表面の凹凸状態を説明するための図である。
図9】(A)は、図7に示す輝度値範囲に基づいて印刷される厚盛部の所定の縦断面における、1回目のインク層の印刷から10回目のインク層の印刷までの各回の印刷データを説明するための図であり、(B)は、(A)に示す印刷データによって厚盛部が印刷された場合の凹凸部の表面の凹凸状態を説明するための図である。
図10図4に示すグレースケール画像データの場合に画像表示工程で表示部に表示される画像を示す図である。
図11図4に示すグレースケール画像データの場合に画像表示工程で表示部に表示される画像を示す図である。
図12図5に示すグレースケール画像データの場合に画像表示工程で表示部に表示される画像を示す図である。
図13図5に示すグレースケール画像データの場合に画像表示工程で表示部に表示される画像を示す図である。
図14】本発明の他の実施の形態にかかる凹凸部の構成を説明するための図である。
図15】本発明の他の実施の形態にかかる凹凸部の構成を説明するための図である。
図16】本発明の他の実施の形態にかかるグレースケール画像データの輝度値のヒストグラムである。
図17】本発明の解決課題を説明するための図である。
図18】本発明の解決課題を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0027】
(印刷システムの構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる印刷方法で使用される印刷システム1の構成を説明するためのブロック図である。図2は、図1に示すインクジェットプリンタ4の概略平面図である。
【0028】
本形態の印刷方法では、積層された複数のインク層によって構成されるとともに表面に凹凸のある凹凸部3(図8(B)等参照)を、印刷システム1を使用して印刷媒体2に印刷する。また、本形態の印刷方法では、インクジェットプリンタ4(以下、「プリンタ4」とする。)によって印刷媒体2に印刷を行う。印刷媒体2は、たとえば、印刷用紙または薄い樹脂板等である。本形態の印刷媒体2は、白色の印刷用紙または薄い樹脂板である。印刷システム1は、プリンタ4と、プリンタ4を制御するための上位装置5とを備えている。本形態の上位装置5は、パーソナルコンピュータ(PC)である。したがって、以下では、上位装置5を「PC5」とする。
【0029】
プリンタ4は、印刷媒体2が載置されるテーブル6と、テーブル6に載置される印刷媒体2に向かってインクを吐出するインクジェットヘッドと、インクジェットヘッドが搭載されるキャリッジ7と、主走査方向への移動が可能となるようにキャリッジ7を保持するYバー8と、キャリッジ7を主走査方向に移動させるキャリッジ駆動機構と、Yバー8を副走査方向に移動させるYバー駆動機構とを備えている。キャリッジ7は、テーブル6の上方に配置されている。本形態のインクジェットヘッドは、紫外線硬化型のインクを吐出する。また、プリンタ4は、インクジェットヘッドから吐出されたインクに紫外線を照射してインクを硬化させる紫外線照射器を備えている。紫外線照射器は、キャリッジ7に搭載されている。
【0030】
プリンタ4は、インクジェットヘッドから吐出されるとともに紫外線照射器から照射される紫外線で硬化したインクによって形成されるインク層を印刷媒体2の上面に順次積層して、印刷媒体2に凹凸部3を印刷する。凹凸部3の中の、凹凸部3に厚さを持たせる部分を厚盛部3aとすると(図8(B)等参照)、厚盛部3aは、硬化したクリアインクによって形成されている。具体的には、厚盛部3aは、硬化したクリアインクからなるインク層が積層されることで形成されている。すなわち、厚盛部3aは、積層されたクリアインクのインク層によって構成されている。
【0031】
本形態では、厚盛部3aの中の最も厚い部分のインク層の積層数は10となっている。すなわち、厚盛部3aの中の最も厚い部分は、積層された10層のインク層によって構成されている。また、本形態の凹凸部3は、硬化したカラーインクからなるカラーインク層3b(図8(B)等参照)と厚盛部3aとから構成されている。カラーインク層3bは、1層のインク層によって構成されている。カラーインク層3bは、厚盛部3aと印刷媒体2との間に形成されている。すなわち、カラーインク層3bの上に厚盛部3aが形成されている。
【0032】
PC5は、ROM、RAMおよびハードディスクドライブ等の記憶手段やCPU等の演算手段等の各種のハードウエアを備えている。また、PC5は、液晶ディスプレイ装置等の表示部9を備えている。PC5には、印刷用の画像データを作成編集するためのソフトウエア(画像編集ソフトウエア)と、プリンタ4を制御するためのソフトウエア(ソフトウエアRIP)とがインストールされている。PC5は、印刷用のデータを作成してプリンタ4に送信する。以下、本形態の印刷方法を説明する。
【0033】
(印刷方法)
図3は、本発明の実施の形態にかかる印刷方法を説明するための工程図である。図4図5は、図3に示す画像データ作成工程ST1で作成されるグレースケール画像データの例を示す図である。図6は、図4に示すグレースケール画像データの輝度値のヒストグラムである。図7は、図5に示すグレースケール画像データの輝度値のヒストグラムである。図8(A)は、図6に示す輝度値範囲に基づいて印刷される厚盛部3aの所定の縦断面における、1回目のインク層の印刷から10回目のインク層の印刷までの各回の印刷データを説明するための図であり、図8(B)は、図8(A)に示す印刷データによって厚盛部3aが印刷された場合の凹凸部3の表面の凹凸状態を説明するための図である。図9(A)は、図7に示す輝度値範囲に基づいて印刷される厚盛部3aの所定の縦断面における、1回目のインク層の印刷から10回目のインク層の印刷までの各回の印刷データを説明するための図であり、図9(B)は、図9(A)に示す印刷データによって厚盛部3aが印刷された場合の凹凸部3の表面の凹凸状態を説明するための図である。図10図11は、図4に示すグレースケール画像データの場合に画像表示工程ST7で表示部9に表示される画像を示す図である。図12図13は、図5に示すグレースケール画像データの場合に画像表示工程ST7で表示部9に表示される画像を示す図である。
【0034】
本形態の印刷方法では、木目調の凹凸部3を印刷媒体2の全体に印刷する(図4参照)。また、本形態の印刷方法では、トラの絵からなる凹凸部3を印刷媒体2の一部に印刷する(図5参照)。印刷媒体2への印刷を行うときには、まず、印刷媒体2に印刷される凹凸部3を含む画像データであって、厚盛部3aの厚さ(高さ)を所定階調のグレースケールで表した画像データであるグレースケール画像データを作成する(画像データ生成工程ST1)。具体的には、図4に示すグレースケール画像データや図5に示すグレースケール画像データを作成する。本形態では、厚盛部3aの厚さを256階調(8ビット)のグレースケールで表したグレースケール画像データを作成する。
【0035】
画像データ生成工程ST1では、オペレータがPC5を使用してグレースケール画像データを作成する。具体的には、オペレータが、表示部9に表示される画像を確認しながらPC5を使用してグレースケール画像データを作成する。図4図5に示すグレースケール画像データでは、厚盛部3aの厚さが厚くなるにしたがって、画像の濃度が濃くなっている。すなわち、図4図5に示すグレースケール画像データでは、厚盛部3aの厚さが厚くなるにしたがって、画像が暗くなっている。図4図5に示すグレースケール画像データの画素数は、たとえば、36万画素である。また、画像データ生成工程ST1では、カラーインク層3bを印刷するためのカラー画像データもオペレータが作成する。なお、画像データ生成工程ST1において、たとえば、3Dスキャナを利用してPC5に取り込まれたデータに基づいて、PC5が自動でグレースケール画像データを作成しても良い。
【0036】
その後、画像データ生成工程ST1で作成されたグレースケール画像データの輝度値のヒストグラムを作成する(ヒストグラム作成工程ST2)。すなわち、ヒストグラム作成工程ST2では、256階調の輝度値(0~255)を横軸とし、画素数(ピクセル数)を縦軸とするグレースケール画像データの輝度値のヒストグラムを作成する。ヒストグラム作成工程ST2では、グレースケール画像データの輝度値のヒストグラムをPC5が自動で作成する。
【0037】
図6に示すヒストグラムは、図4に示すグレースケール画像データの輝度値のヒストグラムであり、図7に示すヒストグラムは、図5に示すグレースケール画像データの輝度値のヒストグラムである。図6図7に示すヒストグラムでは、図4図5の画像が暗くなるにしたがって(すなわち、画像の濃度が濃くなるにしたがって)輝度値が高くなっている。すなわち、本形態では、図4図5に示すグレースケール画像データの中の最も暗い部分の輝度値が最大となり、グレースケール画像データの中の最も明るい部分の輝度値が最小となっている。具体的には、本形態では、グレースケール画像データの中の最も暗い部分の輝度値は255となっており、グレースケール画像データの中の最も明るい部分の輝度値は0となっている。
【0038】
その後、ヒストグラム作成工程ST2で作成されたヒストグラムの256階調の輝度値を10分割して、10個の輝度値の範囲(輝度値範囲)を設定する(輝度値範囲設定工程ST3~ST10)。すなわち、ヒストグラムの256階調の輝度値を、厚盛部3aの中の最も厚い部分のインク層の積層数と同じ数である10個に分割して、10個の輝度値範囲を設定する。
【0039】
具体的には、まず、オペレータが、表示部9に表示されるヒストグラムを確認しながら、ヒストグラムの256階調の輝度値を均等に10分割するのか否かを判断する(工程ST3)。図6に示すヒストグラムのように、256階調の輝度値の全域に亘って度数の分布に偏りがない場合(すなわち、ヒストグラムの偏りがない場合)には、オペレータは、256階調の輝度値を均等に10分割して(工程ST4)、10個の輝度値範囲を仮設定する(工程ST5)。
【0040】
すなわち、256階調の輝度値を均等に10分割して、輝度値が255以下229.5以上となる第1輝度値範囲R1と、輝度値が229.5未満204以上となる第2輝度値範囲R2と、輝度値が204未満178.5以上となる第3輝度値範囲R3と、輝度値が178.5未満153以上となる第4輝度値範囲R4と、輝度値が153未満127.5以上となる第5輝度値範囲R5と、輝度値が127.5未満102以上となる第6輝度値範囲R6と、輝度値が102未満76.5以上となる第7輝度値範囲R7と、輝度値が76.5未満51以上となる第8輝度値範囲R8と、輝度値が51未満25.5以上となる第9輝度値範囲R9と、輝度値が25.5未満でかつ0を超える値となる第10輝度値範囲R10との10個の輝度値範囲を仮設定する(図6参照)。本形態では、オペレータがPC5で所定の操作を行うと、自動的に、256階調の輝度値が均等に10分割されて10個の輝度値範囲が仮設定される。
【0041】
一方、図7に示すヒストグラムのように、輝度値が255から150までの範囲の度数と輝度値が0のときの度数とが多くなっており、度数の分布に偏りがある場合(すなわち、ヒストグラムの偏りがある場合)には、256階調の輝度値を推奨位置で10分割して(工程ST6)、10個の輝度値範囲を仮設定する(工程ST5)。本形態では、オペレータがPC5で所定の操作を行うと、自動的に、256階調の輝度値が推奨位置で10分割されて10個の輝度値範囲が仮設定される。
【0042】
本形態では、たとえば、工程ST6において、図7に示すように、256階調の輝度値を10分割し、工程ST5において、輝度値が255以下243以上となる第1輝度値範囲R1と、輝度値が243未満231以上となる第2輝度値範囲R2と、輝度値が231未満219以上となる第3輝度値範囲R3と、輝度値が219未満207以上となる第4輝度値範囲R4と、輝度値が207未満195以上となる第5輝度値範囲R5と、輝度値が195未満183以上となる第6輝度値範囲R6と、輝度値が183未満171以上となる第7輝度値範囲R7と、輝度値が171未満159以上となる第8輝度値範囲R8と、輝度値が159未満147以上となる第9輝度値範囲R9と、輝度値が147未満でかつ0を超える値となる第10輝度値範囲R10との10個の輝度値範囲を仮設定する(図7参照)。
【0043】
このように、工程ST6では、ヒストグラムの特定の範囲の度数が多くなる場合、この特定の範囲における256階調の輝度値の分割数を増やしている。具体的には、本形態では、輝度値が255から150までの範囲の度数が多くなるため、この範囲における256階調の輝度値の分割数を増やしている。
【0044】
本形態の第1輝度値範囲R1は、256諧調の輝度値の中の最大値である最大輝度値(すなわち、輝度値255)を含む輝度値範囲である最大輝度値範囲となっている。また、本形態の第10輝度値範囲R10は、輝度値0は含まないが輝度値1を含む輝度値範囲である最小輝度値範囲となっている。なお、本形態では、図4図5に示すグレースケール画像データの中の最も暗い部分の輝度値(具体的には、輝度値255)は、最大輝度値範囲である第1輝度値範囲R1に含まれており、図4図5に示すグレースケール画像データの中の最も暗い部分の輝度値が第1輝度値範囲R1に含まれるように、第1輝度値範囲R1が設定されている。
【0045】
ここで、工程ST5で仮設定された10個の輝度値範囲が後述の工程ST9で正式に輝度値範囲として設定されると、後述の印刷工程ST11で印刷媒体2に印刷を行う。カラーインク層3bは、1層のインク層によって構成されているため、印刷工程ST11でカラーインク層3bを形成する際には、インク層の印刷を1回行う。また、本形態では、厚盛部3aの中の最も厚い部分は10層のインク層によって構成されているため、印刷工程ST11で厚盛部3aを形成する際には、インク層の印刷を10回行う。
【0046】
また、印刷工程ST11で厚盛部3aを形成する際には、グレースケール画像データの、第1輝度値範囲R1に輝度値が含まれる部分では、1回目のインク層の印刷から10回目のインク層の印刷まで10層のインク層が印刷され、グレースケール画像データの、第2輝度値範囲R2に輝度値が含まれる部分では、2回目のインク層の印刷から10回目のインク層の印刷まで9層のインク層が印刷され、グレースケール画像データの、第3輝度値範囲R3に輝度値が含まれる部分では、3回目のインク層の印刷から10回目のインク層の印刷まで8層のインク層が印刷され、グレースケール画像データの、第4輝度値範囲R4に輝度値が含まれる部分では、4回目のインク層の印刷から10回目のインク層の印刷まで7層のインク層が印刷され、グレースケール画像データの、第5輝度値範囲R5に輝度値が含まれる部分では、5回目のインク層の印刷から10回目のインク層の印刷まで6層のインク層が印刷され、グレースケール画像データの、第6輝度値範囲R6に輝度値が含まれる部分では、6回目のインク層の印刷から10回目のインク層の印刷まで5層のインク層が印刷され、グレースケール画像データの、第7輝度値範囲R7に輝度値が含まれる部分では、7回目のインク層の印刷から10回目のインク層の印刷まで4層のインク層が印刷され、グレースケール画像データの、第8輝度値範囲R8に輝度値が含まれる部分では、8回目のインク層の印刷から10回目のインク層の印刷まで3層のインク層が印刷され、グレースケール画像データの、第9輝度値範囲R9に輝度値が含まれる部分では、9回目のインク層の印刷と10回目のインク層の印刷とで2層のインク層が印刷され、グレースケール画像データの、第10輝度値範囲R10に輝度値が含まれる部分では、10回目のインク層の印刷で1層のインク層が印刷され、グレースケール画像データの、輝度値が0となる部分では、インク層が印刷されない(図8(A)、図9(A)のハッチング部参照)。
【0047】
工程ST5で10個の輝度値範囲が仮設定されると、厚盛部3aの、1回目に印刷が行われるインク層に対応する画像と、厚盛部3aの、2回目に印刷が行われるインク層に対応する画像と、厚盛部3aの、3回目に印刷が行われるインク層に対応する画像と、厚盛部3aの、4回目に印刷が行われるインク層に対応する画像と、厚盛部3aの、5回目に印刷が行われるインク層に対応する画像と、厚盛部3aの、6回目に印刷が行われるインク層に対応する画像と、厚盛部3aの、7回目に印刷が行われるインク層に対応する画像と、厚盛部3aの、8回目に印刷が行われるインク層に対応する画像と、厚盛部3aの、9回目に印刷が行われるインク層に対応する画像と、厚盛部3aの、10回目に印刷が行われるインク層に対応する画像とを表示部9に表示可能となる。
【0048】
すなわち、Mを10以下の自然数とすると、工程ST5で10個の輝度値範囲が仮設定されると、厚盛部3aの、M回目に印刷が行われるインク層に対応する画像が表示部9に表示可能となる。本形態では、厚盛部3aの、M回目に印刷が行われるインク層に対応する白黒画像(図10図13参照)が表示可能になり、白黒画像の黒色部分にクリアインクが印刷される。オペレータは、厚盛部3aの、1回目に印刷が行われるインク層に対応する画像から、厚盛部3aの、10回目に印刷が行われるインク層に対応する画像までの10回分の一部の回のインク層に対応する画像または10回分の全部の回のインク層に対応する画像を表示部9に表示して、各インク層に対応する画像を確認する(画像表示工程ST7)。
【0049】
画像表示工程ST7では、たとえば、オペレータがPC5で所定の操作を行うと、自動的に、10回分の全部の回のインク層に対応する画像が表示部9に一括で表示される。具体的には、図10図11に示す10個のインク層に対応する画像、または、図12図13に示す10個のインク層に対応する画像が表示部9に一括で表示される。
【0050】
なお、図10図11は、画像データ生成工程ST1で図4に示すグレースケール画像データが作成される場合に、画像表示工程ST7で表示可能となる画像であり、具体的には、図10(A)に示す画像は、1回目に印刷が行われるインク層に対応する画像であり、図10(B)に示す画像は、2回目に印刷が行われるインク層に対応する画像であり、図10(C)に示す画像は、3回目に印刷が行われるインク層に対応する画像であり、図10(D)に示す画像は、4回目に印刷が行われるインク層に対応する画像であり、図10(E)に示す画像は、5回目に印刷が行われるインク層に対応する画像であり、図10(F)に示す画像は、6回目に印刷が行われるインク層に対応する画像であり、図11(A)に示す画像は、7回目に印刷が行われるインク層に対応する画像であり、図11(B)に示す画像は、8回目に印刷が行われるインク層に対応する画像であり、図11(C)に示す画像は、9回目に印刷が行われるインク層に対応する画像であり、図11(D)に示す画像は、10回目に印刷が行われるインク層に対応する画像である。
【0051】
また、図12図13は、画像データ生成工程ST1で図5に示すグレースケール画像データが作成される場合に、画像表示工程ST7で表示可能となる画像であり、具体的には、図12(A)に示す画像は、1回目に印刷が行われるインク層に対応する画像であり、図12(B)に示す画像は、2回目に印刷が行われるインク層に対応する画像であり、図12(C)に示す画像は、3回目に印刷が行われるインク層に対応する画像であり、図12(D)に示す画像は、4回目に印刷が行われるインク層に対応する画像であり、図12(E)に示す画像は、5回目に印刷が行われるインク層に対応する画像であり、図12(F)に示す画像は、6回目に印刷が行われるインク層に対応する画像であり、図13(A)に示す画像は、7回目に印刷が行われるインク層に対応する画像であり、図13(B)に示す画像は、8回目に印刷が行われるインク層に対応する画像であり、図13(C)に示す画像は、9回目に印刷が行われるインク層に対応する画像であり、図13(D)に示す画像は、10回目に印刷が行われるインク層に対応する画像である。
【0052】
あるいは、画像表示工程ST7では、オペレータが表示部9で、たとえば、第1輝度値範囲R1から第10輝度値範囲R10までのいずれかの輝度値範囲を選択すると、選択された輝度値範囲に対応するインク層の画像が表示部9に個別に表示される。
【0053】
たとえば、画像データ生成工程ST1で図4に示すグレースケール画像データが作成される場合、オペレータが表示部9で第1輝度値範囲R1を選択すると、図10(A)に示す画像が表示部9に表示され、オペレータが表示部9で第2輝度値範囲R2を選択すると、図10(B)に示す画像が表示部9に表示され、オペレータが表示部9で第3輝度値範囲R3を選択すると、図10(C)に示す画像が表示部9に表示される。同様に、第4輝度値範囲R4が選択されると、図10(D)に示す画像が表示部9に表示され、第5輝度値範囲R5が選択されると、図10(E)に示す画像が表示部9に表示され、第6輝度値範囲R6が選択されると、図10(F)に示す画像が表示部9に表示され、第7輝度値範囲R7が選択されると、図11(A)に示す画像が表示部9に表示され、第8輝度値範囲R8が選択されると、図11(B)に示す画像が表示部9に表示され、第9輝度値範囲R9が選択されると、図11(C)に示す画像が表示部9に表示され、第10輝度値範囲R10が選択されると、図11(D)に示す画像が表示部9に表示される。
【0054】
また、たとえば、画像データ生成工程ST1で図5に示すグレースケール画像データが作成される場合、オペレータが表示部9で第1輝度値範囲R1を選択すると、図12(A)に示す画像が表示部9に表示され、オペレータが表示部9で第2輝度値範囲R2を選択すると、図12(B)に示す画像が表示部9に表示され、オペレータが表示部9で第3輝度値範囲R3を選択すると、図12(C)に示す画像が表示部9に表示される。同様に、第4輝度値範囲R4が選択されると、図12(D)に示す画像が表示部9に表示され、第5輝度値範囲R5が選択されると、図12(E)に示す画像が表示部9に表示され、第6輝度値範囲R6が選択されると、図12(F)に示す画像が表示部9に表示され、第7輝度値範囲R7が選択されると、図13(A)に示す画像が表示部9に表示され、第8輝度値範囲R8が選択されると、図13(B)に示す画像が表示部9に表示され、第9輝度値範囲R9が選択されると、図13(C)に示す画像が表示部9に表示され、第10輝度値範囲R10が選択されると、図13(D)に示す画像が表示部9に表示される。
【0055】
その後、オペレータは、表示部9に表示された各インク層に対応する画像を確認しながら、ヒストグラムの256階調の輝度値の分割位置を再調整する必要があるのか否かを判断する(工程ST8)。256階調の輝度値の分割位置の再調整が不要である場合には、工程ST5で仮設定された10個の輝度値範囲が、10個の輝度値範囲として正式に設定される(工程ST9)。工程ST9では、オペレータがPC5で所定の操作を行うと、自動的に、10個の輝度値範囲が正式に設定される。
【0056】
一方、256階調の輝度値の分割位置の再調整が必要である場合には、オペレータは、表示部9にヒストグラムを表示して、256階調の輝度値の分割位置を再調整する(工程ST10)。本形態では、256階調の輝度値の分割位置を任意の位置に設定することが可能になっているため、オペレータは、PC5で所定の操作を行って256階調の輝度値の分割位置を任意の位置に再調整する。工程ST10で分割位置が再調整されると、工程ST5に戻って、10個の輝度値範囲を仮設定する。
【0057】
このように、本形態では、輝度値範囲設定工程ST3~ST10において、表示部9に表示されるヒストグラムを確認しながら、256階調の輝度値の分割位置を調整する。具体的には、表示部9に表示されるヒストグラムを確認して、図6に示すヒストグラムのようにヒストグラムの偏りがない場合には、256階調の輝度値を均等に10分割し(工程ST4)、図7に示すヒストグラムのようにヒストグラムの偏りがある場合には、256階調の輝度値を推奨位置で10分割する(工程ST6)。また、必要に応じて256階調の輝度値の分割位置を再調整する(工程ST10)。
【0058】
工程ST9で10個の輝度値範囲が設定されると、PC5が印刷用のデータを作成してプリンタ4に送信し、プリンタ4が印刷媒体2に印刷を行う(印刷工程ST11)。印刷工程ST11は、プリンタ4が自動で印刷媒体2に印刷を行う。印刷工程ST11では、まず、画像データ生成工程ST1で作成されたカラー画像データに基づいてカラーインク層3bを印刷する。また、印刷工程ST11では、工程ST9で設定された10個の輝度値範囲に基づいてカラーインク層3bの上に厚盛部3aを形成する。すなわち、印刷工程ST11では、輝度値範囲設定工程ST3~ST10で設定された10個の輝度値範囲に基づいて印刷媒体2に印刷を行う。
【0059】
印刷工程ST11で厚盛部3aを形成する際には、上述のように印刷が行われる。すなわち、上述のようにMを10以下の自然数とすると、印刷工程ST11で厚盛部3aを形成する際には、グレースケール画像データの、第1輝度値範囲R1から第10輝度値範囲R10に向かってM番目の輝度値範囲に輝度値が含まれる部分では、M回目のインク層の印刷から10回目のインク層の印刷まで(11-M)層のインク層の印刷が行われ、かつ、グレースケール画像データの、輝度値が0となる部分では、インク層の印刷が行われない。
【0060】
たとえば、グレースケール画像データの、第1輝度値範囲R1から第10輝度値範囲R10に向かって1番目の輝度値範囲である第1輝度値範囲R1に輝度値が含まれる部分では、1回目のインク層の印刷から10回目のインク層の印刷まで10層のインク層が印刷される。また、たとえば、グレースケール画像データの、第1輝度値範囲R1から第10輝度値範囲R10に向かって3番目の輝度値範囲である第3輝度値範囲R3に輝度値が含まれる部分では、3回目のインク層の印刷から10回目のインク層の印刷まで8層のインク層が印刷される。
【0061】
また、印刷工程ST11で厚盛部3aを形成する際には、グレースケール画像データの、第1輝度値範囲R1に輝度値が含まれる部分では、10層のインク層が順次積層され、グレースケール画像データの、第2輝度値範囲R2に輝度値が含まれる部分では、9層のインク層が順次積層され、グレースケール画像データの、第3輝度値範囲R3に輝度値が含まれる部分では、8層のインク層が順次積層され、グレースケール画像データの、第4輝度値範囲R4に輝度値が含まれる部分では、7層のインク層が順次積層され、グレースケール画像データの、第5輝度値範囲R5に輝度値が含まれる部分では、6層のインク層が順次積層され、グレースケール画像データの、第6輝度値範囲R6に輝度値が含まれる部分では、5層のインク層が順次積層され、グレースケール画像データの、第7輝度値範囲R7に輝度値が含まれる部分では、4層のインク層が順次積層され、グレースケール画像データの、第8輝度値範囲R8に輝度値が含まれる部分では、3層のインク層が順次積層され、グレースケール画像データの、第9輝度値範囲R9に輝度値が含まれる部分では、2層のインク層が積層され、グレースケール画像データの、第10輝度値範囲R10に輝度値が含まれる部分では、1層のインク層が印刷される(図8(B)、図9(B)のハッチング部参照)。
【0062】
また、画像データ生成工程ST1で図4に示すグレースケール画像データを作成する場合であって、かつ、図6に示す輝度値範囲に基づいて厚盛部3aを形成する場合には、印刷工程ST11で厚盛部3aを形成する際に、1回目のインク層の印刷で図10(A)に示す画像に対応するインク層を印刷し、2回目のインク層の印刷で図10(B)に示す画像に対応するインク層を印刷し、3回目のインク層の印刷で図10(C)に示す画像に対応するインク層を印刷し、4回目のインク層の印刷で図10(D)に示す画像に対応するインク層を印刷し、5回目のインク層の印刷で図10(E)に示す画像に対応するインク層を印刷し、6回目のインク層の印刷で図10(F)に示す画像に対応するインク層を印刷し、7回目のインク層の印刷で図11(A)に示す画像に対応するインク層を印刷し、8回目のインク層の印刷で図11(B)に示す画像に対応するインク層を印刷し、9回目のインク層の印刷で図11(C)に示す画像に対応するインク層を印刷し、10回目のインク層の印刷で図11(D)に示す画像に対応するインク層を印刷する。
【0063】
また、画像データ生成工程ST1で図5に示すグレースケール画像データを作成する場合であって、かつ、図7に示す輝度値範囲に基づいて厚盛部3aを形成する場合には、印刷工程ST11で厚盛部3aを形成する際に、1回目のインク層の印刷で図12(A)に示す画像に対応するインク層を印刷し、2回目のインク層の印刷で図12(B)に示す画像に対応するインク層を印刷し、3回目のインク層の印刷で図12(C)に示す画像に対応するインク層を印刷し、4回目のインク層の印刷で図12(D)に示す画像に対応するインク層を印刷し、5回目のインク層の印刷で図12(E)に示す画像に対応するインク層を印刷し、6回目のインク層の印刷で図12(F)に示す画像に対応するインク層を印刷し、7回目のインク層の印刷で図13(A)に示す画像に対応するインク層を印刷し、8回目のインク層の印刷で図13(B)に示す画像に対応するインク層を印刷し、9回目のインク層の印刷で図13(C)に示す画像に対応するインク層を印刷し、10回目のインク層の印刷で図13(D)に示す画像に対応するインク層を印刷する。
【0064】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、輝度値範囲設定工程ST3~ST10において、表示部9に表示されるヒストグラムを確認しながら、256階調の輝度値の分割位置を調整している。そのため、本形態では、図6に示すヒストグラムのようにヒストグラムの偏りがない場合、および、図7に示すヒストグラムのようにヒストグラムの偏りがある場合のいずれの場合であっても、凹凸部3の表面の凹凸をはっきりさせることができるように、10分割される256階調の輝度値の分割位置を設定することが可能になる。
【0065】
したがって、本形態では、グレースケール画像データの輝度値のヒストグラムに偏りがあってもなくても、図8(B)、図9(B)に示すように、厚盛部3aを構成する部分のインク層の積層数をばらつかせることが可能になり、その結果、凹凸部3の表面の凹凸をはっきりさせて、凹凸部3の表面の凹凸感を表すことが可能になる。なお、図9(B)と図18(B)とを比較すれば明らかなように、図5に示す同じグレースケール画像データに基づいて凹凸部3を印刷媒体2に印刷しても、256階調の輝度値の分割位置を調整することで、凹凸部3の表面の凹凸をはっきりさせて、凹凸部3の表面の凹凸感を表すことが可能になる。
【0066】
本形態では、工程ST5で10個の輝度値範囲が仮設定されると、厚盛部3aの、1回目に印刷が行われるインク層に対応する画像から、厚盛部3aの、10回目に印刷が行われるインク層に対応する画像までの10回分の一部の回のインク層に対応する画像または10回分の全部の回のインク層に対応する画像を表示部9に表示することが可能になる。そのため、本形態では、各印刷回数のインク層に対応する画像を表示部9で確認して、256階調の輝度値の分割位置を再調整することが可能になる。したがって、本形態では、凹凸部3の表面の凹凸をよりはっきりさせることができるように、10分割される256階調の輝度値の分割位置を設定することが可能になる。
【0067】
本形態では、工程ST10において、256階調の輝度値の分割位置を任意の位置に設定することが可能になっている。そのため、本形態では、凹凸部3の表面の凹凸をよりはっきりさせることができるように、10分割される256階調の輝度値の分割位置を設定することが可能になる。
【0068】
(凹凸部の変形例)
図14図15は、本発明の他の実施の形態にかかる凹凸部3の構成を説明するための図である。
【0069】
上述した形態において、凹凸部3は、図14に示すように、硬化したクリアインクからなる厚盛部3aと、厚盛部3aの上に積層されるカラーインク層3bとから構成されていても良い。すなわち、上述した形態において、厚盛部3aの上にカラーインク層3bが形成されていても良い。なお、減法混色の原理を用いるため、印刷媒体2は白色であることが好ましい。印刷媒体2が白色である場合には、硬化したクリアインクからなる厚盛部3aの上面に印刷されるカラーインク層3bの色が本来の画像データの色として認識される。また、印刷媒体2が白色ではない場合には、ホワイトインクを用いて適宜にカラー画像データに合わせて印刷した後に厚盛部3aを印刷することも考えられる。また、上述した形態において、凹凸部3は、厚盛部3aのみによって構成されていても良い。
【0070】
また、図14に示す変形例において、厚盛部3aは、硬化した4色のカラーインク(CMYK)によって形成されていても良い。この場合には、図15に示すように、厚盛部3aとカラーインク層3bとの間に硬化したホワイトインクからなるホワイトインク層3cが形成されている。すなわち、凹凸部3は、厚盛部3aとカラーインク層3bとホワイトインク層3cとから構成されていても良い。ホワイトインク層3cは、1層のインク層によって構成されている。なお、図15に示す変形例では、厚盛部3aの中の1層のインク層を構成するインクの量を、上述した形態の4倍の量とすることが可能になるため、上述した形態と比較して、厚盛部3aの厚さを厚くすることが可能になる。
【0071】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0072】
上述した形態において、図7に示すヒストグラムのように、度数の多くなる範囲が、輝度値が255から150までの範囲の1箇所に集中している場合には、10個の輝度値範囲を設定する際に、表示部9の画面上で、度数の多くなる範囲(すなわち、輝度値が255から150までの範囲)を拡大して(引き伸ばして)表示しても良い。この場合には、256階調の輝度値の分割位置を表示部9の画面上で確認しやすくなる。
【0073】
上述した形態の図7に示すヒストグラムでは、度数の多くなる範囲は、輝度値が255から150までの範囲の1箇所あるが、画像データ生成工程ST1で作成されたグレースケール画像データの輝度値のヒストグラムにおいて、度数の多くなる範囲が2箇所以上あっても良い。たとえば、図16に示すように、グレースケール画像データの輝度値のヒストグラムにおいて、度数の多くなる範囲が2箇所あっても良い。この場合には、輝度値範囲設定工程ST3~ST10において、たとえば、図16に示すように、第1輝度値範囲R1から第10輝度値範囲R10までの各輝度値範囲が設定される。
【0074】
上述した形態では、図4図5に示すグレースケール画像データの中の最も暗い部分の輝度値は255となっているが、図4図5に示すグレースケール画像データの中の最も暗い部分の輝度値が254以下であっても良い。たとえば、図4図5に示すグレースケール画像データの中の最も暗い部分の輝度値が225であっても良い。この場合であっても、図4図5に示すグレースケール画像データの中の最も暗い部分の輝度値225が第1輝度値範囲R1に含まるように第1輝度値範囲R1が設定される。
【0075】
上述した形態において、工程ST6に代えて、オペレータが表示部9に表示されるヒストグラムを確認しながら、256階調の輝度値の分割位置を決める工程が実行されても良い。また、上述した形態において、画像データ生成工程ST1で作成されるグレースケール画像データの階調数は256以外であっても良い。また、上述した形態において、ヒストグラム作成工程ST2で作成されるヒストグラムが複数の極大値と極小値とを持つ曲線状となる場合には、たとえば、極大値となる位置および極小値となる位置で256階調の輝度値を分割して、複数の輝度値範囲を設定しても良い。
【0076】
上述した形態において、厚盛部3aの中の最も厚い部分のインク層の積層数は、9以下の複数であっても良いし、11以上であっても良い。この場合、厚盛部3aの中の最も厚い部分のインク層の積層数をNとし、MをN以下の自然数とすると、輝度値設定工程ST3~ST10において、256諧調の輝度値はN分割される。また、印刷工程ST11で厚盛部3aを形成する際には、グレースケール画像データの、輝度値255を含む輝度値範囲である最大輝度値範囲から輝度値0は含まないが輝度値1を含む輝度値範囲である最小輝度値範囲に向かってM番目の輝度値範囲に輝度値が含まれる部分では、M回目のインク層の印刷からN回目のインク層の印刷まで(N-M+1)層のインク層の印刷が行われ、かつ、グレースケール画像データの、輝度値が0となる部分では、インク層の印刷が行われない。
【0077】
上述した形態では、グレースケール画像データの中の最も暗い部分の輝度値が最大となっているが(具体的には、グレースケール画像データの中の最も暗い部分の輝度値が255となっているが)、グレースケール画像データの中の最も暗い部分の輝度値が最小になっていても良い。すなわち、グレースケール画像データの中の最も明るい部分の輝度値が最大となっていても良い。たとえば、グレースケール画像データの中の最も暗い部分の輝度値が0となっており、グレースケール画像データの中の最も明るい部分の輝度値が255となっていても良い。
【0078】
この場合には、第1輝度値範囲R1に輝度値254は含まれるが、輝度値255は第1輝度値範囲R1に含まれない。また、この場合には、輝度値0が第10輝度値範囲R10に含まれる。この場合には、第1輝度値範囲R1は、256階調の輝度値の中の最大値である最大輝度値(すなわち、輝度値255)は含まないが最大輝度値の次に大きい輝度値(すなわち、輝度値254)を含む輝度値範囲である最大輝度値範囲となっており、第10輝度値範囲R10は、輝度値0を含む輝度値である最小輝度値範囲となっている。
【0079】
また、この場合には、グレースケール画像データの中の最も暗い部分の輝度値は、第10輝度値範囲R10に含まれている。また、この場合には、Mを10以下の自然数とすると、印刷工程ST11で厚盛部3aを形成する際に、グレースケール画像データの、第10輝度値範囲R10から第1輝度値範囲R1に向かってM番目の輝度値範囲に輝度値が含まれる部分では、M回目のインク層の印刷から10回目のインク層の印刷まで(11-M)層のインク層の印刷が行われ、かつ、グレースケール画像データの、輝度値が255となる部分(すなわち、最大輝度値となる部分)では、インク層は印刷されない。
【符号の説明】
【0080】
2 印刷媒体
3 凹凸部
3a 厚盛部
4 プリンタ(インクジェットプリンタ)
9 表示部
R1 第1輝度値範囲(輝度値範囲、最大輝度値範囲)
R2 第2輝度値範囲(輝度値範囲)
R3 第3輝度値範囲(輝度値範囲)
R4 第4輝度値範囲(輝度値範囲)
R5 第5輝度値範囲(輝度値範囲)
R6 第6輝度値範囲(輝度値範囲)
R7 第7輝度値範囲(輝度値範囲)
R8 第8輝度値範囲(輝度値範囲)
R9 第9輝度値範囲(輝度値範囲)
R10 第10輝度値範囲(輝度値範囲、最小輝度値範囲)
ST1 画像データ作成工程
ST2 ヒストグラム作成工程
ST3~ST10 輝度値範囲設定工程
ST11 印刷工程
図1
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図5
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