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特許7473474抗体-薬物コンジュゲート投与による転移性脳腫瘍の治療
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】抗体-薬物コンジュゲート投与による転移性脳腫瘍の治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/68 20170101AFI20240416BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240416BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240416BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240416BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20240416BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240416BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240416BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240416BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20240416BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20240416BHJP
【FI】
A61K47/68
A61P25/00
A61P35/04
A61P35/00
A61P15/00
A61P11/00
A61P17/00
A61K39/395 N
A61K31/4745
C07K16/28 ZNA
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020534654
(86)(22)【出願日】2019-07-30
(86)【国際出願番号】 JP2019029765
(87)【国際公開番号】W WO2020027100
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-07-29
(31)【優先権主張番号】P 2018143372
(32)【優先日】2018-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】307010166
【氏名又は名称】第一三共株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】杉原 潔
(72)【発明者】
【氏名】石井 千晶
【審査官】松浦 安紀子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/115091(WO,A1)
【文献】特開2017-222638(JP,A)
【文献】特開2017-197523(JP,A)
【文献】特開2018-008982(JP,A)
【文献】国際公開第2018/135501(WO,A1)
【文献】Clinical & Experimental Metastasis,2015年,Vol. 32, Issue 7,pp. 729-737
【文献】The Breast Journal,2018年,Vol. 24, Issue 3,pp. 253-259
【文献】Cancer Research,2016年,Vol. 76, Issue 4 Supplement,Abstract P6-17-02
【文献】Clinical Cancer Research,2016年,Vol. 22, Issue 20,pp. 5097-5108
【文献】THE JOURNAL OF NUCLEAR MEDICINE,2013年,Vol. 54、No. 11,pp.1869-1875
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/68
A61P 25/00
A61P 35/04
A61P 35/00
A61P 15/00
A61P 11/00
A61P 17/00
A61K 39/395
A61K 31/4745
C07K 16/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗体-薬物コンジュゲートを有効成分として含有
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗HER2抗体であり、
抗HER2抗体が、
配列番号1においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体であるか、
配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、
転移性脳腫瘍の治療剤。
【請求項2】
転移性脳腫瘍の原発がんが、乳がん、肺がん、メラノーマ、腎細胞がん、腎臓がん、大腸がん、胃がん、頭頸部がん、肝細胞がん、肝臓がん、卵巣がん、前立腺がん、膀胱がん、膵臓がん、子宮内膜がん、甲状腺がん、悪性リンパ腫、及び肉腫からなる群より選択される少なくとも一つである、請求項1に記載の治療剤。
【請求項3】
転移性脳腫瘍の原発がんが、乳がん、肺がん、及びメラノーマからなる群より選択される少なくとも一つである、請求項1に記載の治療剤。
【請求項4】
転移性脳腫瘍の原発がんが、乳がんである、請求項1に記載の治療剤。
【請求項5】
転移性脳腫瘍の原発がんが、肺がんである、請求項1に記載の治療剤。
【請求項6】
転移性脳腫瘍の原発がんが、メラノーマである、請求項1に記載の治療剤。
【請求項7】
転移性脳腫瘍の原発がんが、胃がんである、請求項1に記載の治療剤。
【請求項8】
転移性脳腫瘍の原発がんが、大腸がんである、請求項1に記載の治療剤。
【請求項9】
転移性脳腫瘍の原発がんが、膀胱がんである、請求項1に記載の治療剤。
【請求項10】
転移性脳腫瘍の原発がんが、肉腫である、請求項1に記載の治療剤。
【請求項11】
抗HER2抗体が、配列番号1においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、請求項1~10のいずれか1項に記載の治療剤。
【請求項12】
抗HER2抗体が、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、請求項1~10のいずれか1項に記載の治療剤。
【請求項13】
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲である、請求項12のいずれか1項に記載の治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の抗体-薬物コンジュゲートを含有する転移性脳腫瘍の治療剤、及び/又は、特定の抗体-薬物コンジュゲートを個体に投与することを特徴とする転移性脳腫瘍の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
転移性脳腫瘍は、原発がんが脳へ転移することにより発症する疾患であり、がん患者の20~40%で見られることが知られている。脳へのがん転移は予後に大きな影響を及ぼすのみならず、QOLの著しい低下に繋がるため、転移性脳腫瘍に対する有効な治療法の開発が求められている(非特許文献1、2)。
【0003】
転移性脳腫瘍の原発がんとして、肺がん、乳がん、メラノーマ、腎細胞がん、腎臓がん、大腸がん、胃がん、頭頸部がん、肝細胞がん、肝臓がん、卵巣がん、前立腺がん、膀胱がん、膵臓がん、子宮内膜がん、甲状腺がん、悪性リンパ腫、及び肉腫等を挙げることができる。このうち、特に、肺がん、乳がん、及びメラノーマを原発がんとする転移性脳腫瘍が高い割合で存在することが知られている(非特許文献1、2)。
【0004】
肺がんを原発がんとする転移性脳腫瘍の治療としては、上皮成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害薬であるゲフィチニブ(Gefitinib)(非特許文献3)、エルロチニブ(Erlotinib)(非特許文献4)、アファチニブ(Afatinib)(非特許文献5)、及びオシメルチニブ(Osimertinib)(非特許文献6)や、ALK阻害薬であるクリゾチニブ(Crizotinib)(非特許文献7)等を用いた臨床研究が知られている。
【0005】
乳がんを原発がんとする転移性脳腫瘍の治療としては、抗HER2抗体であるトラスツズマブ(Trastuzumab)(非特許文献8)や、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)チロシンキナーゼ阻害薬であるラパチニブ(Lapatinib)(非特許文献9)等を用いた臨床研究が知られている。
【0006】
メラノーマを原発がんとする転移性脳腫瘍の治療としては、BRAF阻害薬であるベムラフェニブ(Vemurafenib)(非特許文献10)等を用いた臨床研究が知られている。
【0007】
しかし、このような薬物療法は標準治療としては確立しておらず、放射線療法や外科療法が第一選択と考えられている。
【0008】
がん細胞表面に発現する抗原に結合し、かつ細胞に内在化できる抗体に、細胞毒性を有する薬物を結合させた抗体-薬物コンジュゲート(Antibody-Drug Conjugate; ADC)は、がん細胞に選択的に薬物を送達できることによって、がん細胞内に薬物を蓄積させ、がん細胞を死滅させることが期待できる(非特許文献11~15)。
【0009】
抗体-薬物コンジュゲートの一つの例として、抗体とトポイソメラーゼI阻害剤であるエキサテカンの誘導体を構成要素とする抗体-薬物コンジュゲートが知られている(特許文献1~5、非特許文献16~19)。これらの抗体-薬物コンジュゲートは、優れた抗腫瘍効果と安全性を有することから、現在、臨床試験が進行中である。
【0010】
抗体-薬物コンジュゲートを用いた転移性脳腫瘍の治療としては、チューブリン阻害剤であるDM1を構成要素とする抗HER2抗体-薬物コンジュゲートであるトラスツズマブエムタンシン(Trastuzumab emtansine)を用いた、乳がんを原発がんとする転移性脳腫瘍の治療に関する非臨床および臨床研究が知られている(非特許文献20~23)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開第2014/057687号
【文献】国際公開第2015/098099号
【文献】国際公開第2015/115091号
【文献】国際公開第2015/155998号
【文献】国際公開第2018/066626号
【非特許文献】
【0012】
【文献】Lorenzo R., et al., Ther Adv Med Oncol. 2017 Dec; 9(12): 781-796.
【文献】Rahmathulla G., et al., Journal of Oncology 2012, Article ID 723541.
【文献】Kim J-E., et al., Lung Cancer 2009; 65: 351-354.
【文献】Iuchi T., et al., Cancer 2013; 82: 282-287.
【文献】Hoffknecht P., et al., J. Thorac. Oncol. 2015; 10: 156-163.
【文献】Ahn MJ., et al., Eur. J. Cancer 2015; 51: S625-S626.
【文献】Costa DB., et al., J. Clin. Oncol. 2015; 33: 1881-1888.
【文献】Bartsch R., et al., J. Neurooncol. 2007; 85: 311-317.
【文献】Lin NU., et al., Clin. Cancer Res. 2009; 15: 1452-1459.
【文献】Dummer R., et al., Eur. J. Cancer 2014; 50: 611-621.
【文献】Ducry L., et al., Bioconjugate Chem. (2010) 21, 5-13.
【文献】Alley S. C., et al., Current Opinion in Chemical Biology (2010) 14, 529-537.
【文献】Damle N. K., Expert Opin. Biol. Ther. (2004) 4, 1445-1452.
【文献】Senter P. D., et al., Nature Biotechnology (2012) 30, 631-637.
【文献】Howard A., et al., J Clin Oncol 29: 398-405.
【文献】Ogitani Y., et al., Clinical Cancer Research (2016) 22(20), 5097-5108.
【文献】Ogitani Y., et al., Cancer Science (2016) 107, 1039-1046.
【文献】Doi T., et al., Lancet Oncol 2017; 18: 1512-22.
【文献】Takegawa N., et al., Int. J. Cancer: 141, 1682-1689 (2017)
【文献】Bartsch R., et al., Clin. Exp. Metastasis (2015) 32:729-737.
【文献】Askoxylakis V., et al., J. Natl. Cancer Inst. (2016) 108(2): djv313.
【文献】Ricciardi GRR., et al., BMC Cancer (2018) 18:97.
【文献】Okines A., et al., Breast J. 2018; 24:253-259.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
がん治療剤として、低分子化合物や抗体等が使用されているが、通常、これらは血液脳関門(Blood-Brain barrier;BBB)を通過することは困難である。特に抗体は分子量が非常に大きいため、血液脳関門を通過することは、ほとんど期待できない(Bendell JC., et al., Cancer 2003;97(12):2972-7)。その一方で、転移性脳腫瘍の治療を目的に静脈内投与された抗体が血液脳関門を通過したという報告もある(Tamura K., et al., J. Nucl. Med. 2013;54(11):1869-75)。その理由として、脳転移した腫瘍によって血液脳関門が破壊されたことにより、抗体の脳移行性が相対的に増したためと考えられている。
【0014】
しかし、低分子化合物や抗体の脳内濃度が相当程度の値を示す場合においても、期待されるような治療効果が得られなかったという報告もある。その理由として脳転移した腫瘍が薬剤耐性(例えば、下流シグナルに影響を与える遺伝子変異やP糖蛋白等の薬剤排泄機構等)を獲得したためと考えられている(Saunus JM., et al., J. Pathol. 2015;237:363-78、Brastianos PK., et al., Cancer Discov. 2015;5:1164-77)。
【0015】
また、脳転移した腫瘍と脳内の正常組織との間に血液腫瘍関門(Blood-Tumor barrier;BTB)が形成され、薬剤耐性が生じることも知られている(Quail DF. et al., Cancer Cell 2017;31:326-41)。
【0016】
本発明は、エキサテカンの誘導体を構成要素とする特定の抗体-薬物コンジュゲートが、血液脳関門を通過するか否か、また、薬剤耐性を獲得した転移性脳腫瘍に対し所望の抗腫瘍効果を示すか否かを検証することを課題とする。そして、該抗体-薬物コンジュゲートを含む転移性脳腫瘍の治療剤、及び/又は、該抗体-薬物コンジュゲートを個体に投与することを特徴とする転移性脳腫瘍の治療方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討したところ、エキサテカンの誘導体を構成要素とする特定の抗体-薬物コンジュゲートが、転移性脳腫瘍に対し、優れた抗腫瘍効果を示すことを見出し、本発明を完成した。
【0018】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[272]を提供する。
[1]
【0019】
【化1】
【0020】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗体-薬物コンジュゲートを有効成分として含有する、転移性脳腫瘍の治療剤。
[2]
転移性脳腫瘍の原発がんが、乳がん、肺がん、メラノーマ、腎細胞がん、腎臓がん、大腸がん、胃がん、頭頸部がん、肝細胞がん、肝臓がん、卵巣がん、前立腺がん、膀胱がん、膵臓がん、子宮内膜がん、甲状腺がん、悪性リンパ腫、及び肉腫からなる群より選択される少なくとも一つである、[1]に記載の治療剤。
[3]
転移性脳腫瘍の原発がんが、乳がん、肺がん、及びメラノーマからなる群より選択される少なくとも一つである、[1]に記載の治療剤。
[4]
転移性脳腫瘍の原発がんが、乳がんである、[1]に記載の治療剤。
[5]
転移性脳腫瘍の原発がんが、肺がんである、[1]に記載の治療剤。
[6]
転移性脳腫瘍の原発がんが、メラノーマである、[1]に記載の治療剤。
[7]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗HER2抗体、抗HER3抗体、抗TROP2抗体、抗B7-H3抗体、抗GPR20抗体、又は抗CDH6抗体である、[1]~[6]のいずれか1項に記載の治療剤。
[8]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗HER2抗体である、[7]に記載の治療剤。
[9]
抗HER2抗体が、配列番号1においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[8]に記載の治療剤。
[10]
抗HER2抗体が、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[8]に記載の治療剤。
【0021】
[11]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲である、[8]~[10]のいずれか1項に記載の治療剤。
[12]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗HER3抗体である、[7]に記載の治療剤。
[13]
抗HER3抗体が、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[12]に記載の治療剤。
[14]
抗HER3抗体の、重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[13]に記載の治療剤。
[15]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲である、[12]~[14]のいずれか1項に記載の治療剤。
[16]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗TROP2抗体である、[7]に記載の治療剤。
[17]
抗TROP2抗体が、配列番号5においてアミノ酸番号20乃至470に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号6においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[16]に記載の治療剤。
[18]
抗TROP2抗体の、重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[17]に記載の治療剤。
[19]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が3.5から4.5個の範囲である、[16]から[18]のいずれか1項に記載の治療剤。
[20]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗B7-H3抗体である、[7]に記載の治療剤。
【0022】
[21]
抗B7-H3抗体が、配列番号7においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号8においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[20]に記載の治療剤。
[22]
抗B7-H3抗体の、重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[21]に記載の治療剤。
[23]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が3.5から4.5個の範囲である、[20]から[22]のいずれか1項に記載の治療剤。
[24]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗GPR20抗体である、[7]に記載の治療剤。
[25]
抗GPR20抗体が、配列番号9においてアミノ酸番号20乃至472に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号10においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[24]に記載の治療剤。
[26]
抗GPR20抗体の、重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[25]に記載の治療剤。
[27]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲である、[24]から[26]のいずれか1項に記載の治療剤。
[28]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗CDH6抗体である、[7]に記載の治療剤。
[29]
抗CDH6抗体が、配列番号11においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号12においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[28]に記載の治療剤。
[30]
抗CDH6抗体の、重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[29]に記載の治療剤。
【0023】
[31]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲である、[28]から[30]のいずれか1項に記載の治療剤。
[32]
【0024】
【化2】
【0025】
(式中、薬物リンカーは抗体とチオエーテル結合によって結合しており、nは1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数を示す)
で示される抗体-薬物コンジュゲートを有効成分として含有する、転移性脳腫瘍の治療剤。
[33]
転移性脳腫瘍の原発がんが、乳がん、肺がん、メラノーマ、腎細胞がん、腎臓がん、大腸がん、胃がん、頭頸部がん、肝細胞がん、肝臓がん、卵巣がん、前立腺がん、膀胱がん、膵臓がん、子宮内膜がん、甲状腺がん、悪性リンパ腫、及び肉腫からなる群より選択される少なくとも一つである、[32]に記載の治療剤。
[34]
転移性脳腫瘍の原発がんが、乳がん、肺がん、及びメラノーマからなる群より選択される少なくとも一つである、[32]に記載の治療剤。
[35]
転移性脳腫瘍の原発がんが、乳がんである、[32]に記載の治療剤。
[36]
転移性脳腫瘍の原発がんが、肺がんである、[32]に記載の治療剤。
[37]
転移性脳腫瘍の原発がんが、メラノーマである、[32]に記載の治療剤。
[38]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗HER2抗体、抗HER3抗体、抗TROP2抗体、抗B7-H3抗体、抗GPR20抗体、又は抗CDH6抗体である、[32]~[37]のいずれか1項に記載の治療剤。
[39]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗HER2抗体である、[38]に記載の治療剤。
[40]
抗HER2抗体が、配列番号1においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[39]に記載の治療剤。
【0026】
[41]
抗HER2抗体が、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[39]に記載の治療剤。
[42]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲である、[39]~[41]のいずれか1項に記載の治療剤。
[43]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗HER3抗体である、[38]に記載の治療剤。
[44]
抗HER3抗体が、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[43]に記載の治療剤。
[45]
抗HER3抗体の、重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[44]に記載の治療剤。
[46]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲である、[43]~[45]のいずれか1項に記載の治療剤。
[47]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗TROP2抗体である、[38]に記載の治療剤。
[48]
抗TROP2抗体が、配列番号5においてアミノ酸番号20乃至470に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号6においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[47]に記載の治療剤。
[49]
抗TROP2抗体の、重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[48]に記載の治療剤。
[50]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が3.5から4.5個の範囲である、[47]から[49]のいずれか1項に記載の治療剤。
【0027】
[51]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗B7-H3抗体である、[38]に記載の治療剤。
[52]
抗B7-H3抗体が、配列番号7においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号8においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[51]に記載の治療剤。
[53]
抗B7-H3抗体の、重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[52]に記載の治療剤。
[54]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が3.5から4.5個の範囲である、[51]から[53]のいずれか1項に記載の治療剤。
[55]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗GPR20抗体である、[38]に記載の治療剤。
[56]
抗GPR20抗体が、配列番号9においてアミノ酸番号20乃至472に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号10においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[55]に記載の治療剤。
[57]
抗GPR20抗体の、重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[56]に記載の治療剤。
[58]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲である、[55]から[57]のいずれか1項に記載の治療剤。
[59]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗CDH6抗体である、[38]に記載の治療剤。
[60]
抗CDH6抗体が、配列番号11においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号12においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[59]に記載の治療剤。
【0028】
[61]
抗CDH6抗体の、重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[60]に記載の治療剤。
[62]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲である、[59]から[61]のいずれか1項に記載の治療剤。
[63]
【0029】
【化3】
【0030】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗体-薬物コンジュゲートを転移性脳腫瘍の治療を必要とする個体に投与することを特徴とする、転移性脳腫瘍の治療方法。
[64]
転移性脳腫瘍の原発がんが、乳がん、肺がん、メラノーマ、腎細胞がん、腎臓がん、大腸がん、胃がん、頭頸部がん、肝細胞がん、肝臓がん、卵巣がん、前立腺がん、膀胱がん、膵臓がん、子宮内膜がん、甲状腺がん、悪性リンパ腫、及び肉腫からなる群より選択される少なくとも一つである、[63]に記載の治療方法。
[65]
転移性脳腫瘍の原発がんが、乳がん、肺がん、及びメラノーマからなる群より選択される少なくとも一つである、[63]に記載の治療方法。
[66]
転移性脳腫瘍の原発がんが、乳がんである、[63]に記載の治療方法。
[67]
転移性脳腫瘍の原発がんが、肺がんである、[63]に記載の治療方法。
[68]
転移性脳腫瘍の原発がんが、メラノーマである、[63]に記載の治療方法。
[69]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗HER2抗体、抗HER3抗体、抗TROP2抗体、抗B7-H3抗体、抗GPR20抗体、又は抗CDH6抗体である、[63]~[68]のいずれか1項に記載の治療方法。
[70]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗HER2抗体である、[69]に記載の治療方法。
【0031】
[71]
抗HER2抗体が、配列番号1においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[70]に記載の治療方法。
[72]
抗HER2抗体が、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[70]に記載の治療方法。
[73]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲である、[70]~[72]のいずれか1項に記載の治療方法。
[74]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗HER3抗体である、[69]に記載の治療方法。
[75]
抗HER3抗体が、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[74]に記載の治療方法。
[76]
抗HER3抗体の、重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[75]に記載の治療方法。
[77]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲である、[74]~[76]のいずれか1項に記載の治療方法。
[78]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗TROP2抗体である、[69]に記載の治療方法。
[79]
抗TROP2抗体が、配列番号5においてアミノ酸番号20乃至470に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号6においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[78]に記載の治療方法。
[80]
抗TROP2抗体の、重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[79]に記載の治療方法。
【0032】
[81]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が3.5から4.5個の範囲である、[78]から[80]のいずれか1項に記載の治療方法。
[82]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗B7-H3抗体である、[69]に記載の治療方法。
[83]
抗B7-H3抗体が、配列番号7においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号8においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[82]に記載の治療方法。
[84]
抗B7-H3抗体の、重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[83]に記載の治療方法。
[85]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が3.5から4.5個の範囲である、[82]から[84]のいずれか1項に記載の治療方法。
[86]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗GPR20抗体である、[69]に記載の治療方法。
[87]
抗GPR20抗体が、配列番号9においてアミノ酸番号20乃至472に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号10においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[86]に記載の治療方法。
[88]
抗GPR20抗体の、重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[87]に記載の治療方法。
[89]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲である、[86]から[88]のいずれか1項に記載の治療方法。
[90]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗CDH6抗体である、[69]に記載の治療方法。
【0033】
[91]
抗CDH6抗体が、配列番号11においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号12においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[90]に記載の治療方法。
[92]
抗CDH6抗体の、重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[91]に記載の治療方法。
[93]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲である、[90]から[92]のいずれか1項に記載の治療方法。
[94]
【0034】
【化4】
【0035】
(式中、薬物リンカーは抗体とチオエーテル結合によって結合しており、nは1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数を示す)
で示される抗体-薬物コンジュゲートを転移性脳腫瘍の治療を必要とする個体に投与することを特徴とする、転移性脳腫瘍の治療方法。
[95]
転移性脳腫瘍の原発がんが、乳がん、肺がん、メラノーマ、腎細胞がん、腎臓がん、大腸がん、胃がん、頭頸部がん、肝細胞がん、肝臓がん、卵巣がん、前立腺がん、膀胱がん、膵臓がん、子宮内膜がん、甲状腺がん、悪性リンパ腫、及び肉腫からなる群より選択される少なくとも一つである、[94]に記載の治療方法。
[96]
転移性脳腫瘍の原発がんが、乳がん、肺がん、及びメラノーマからなる群より選択される少なくとも一つである、[94]に記載の治療方法。
[97]
転移性脳腫瘍の原発がんが、乳がんである、[94]に記載の治療方法。
[98]
転移性脳腫瘍の原発がんが、肺がんである、[94]に記載の治療方法。
[99]
転移性脳腫瘍の原発がんが、メラノーマである、[94]に記載の治療方法。
[100]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗HER2抗体、抗HER3抗体、抗TROP2抗体、抗B7-H3抗体、抗GPR20抗体、又は抗CDH6抗体である、[94]~[99]のいずれか1項に記載の治療方法。
【0036】
[101]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗HER2抗体である、[100]に記載の治療方法。
[102]
抗HER2抗体が、配列番号1においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[101]に記載の治療方法。
[103]
抗HER2抗体が、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[101]に記載の治療方法。
[104]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲である、[101]~[103]のいずれか1項に記載の治療方法。
[105]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗HER3抗体である、[100]に記載の治療方法。
[106]
抗HER3抗体が、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[105]に記載の治療方法。
[107]
抗HER3抗体の、重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[106]に記載の治療方法。
[108]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲である、[105]~[107]のいずれか1項に記載の治療方法。
[109]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗TROP2抗体である、[100]に記載の治療方法。
[110]
抗TROP2抗体が、配列番号5においてアミノ酸番号20乃至470に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号6においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[109]に記載の治療方法。
【0037】
[111]
抗TROP2抗体の、重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[110]に記載の治療方法。
[112]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が3.5から4.5個の範囲である、[109]から[111]のいずれか1項に記載の治療方法。
[113]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗B7-H3抗体である、[100]に記載の治療方法。
[114]
抗B7-H3抗体が、配列番号7においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号8においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[113]に記載の治療方法。
[115]
抗B7-H3抗体の、重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[114]に記載の治療方法。
[116]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が3.5から4.5個の範囲である、[113]から[115]のいずれか1項に記載の治療方法。
[117]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗GPR20抗体である、[100]に記載の治療方法。
[118]
抗GPR20抗体が、配列番号9においてアミノ酸番号20乃至472に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号10においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[117]に記載の治療方法。
[119]
抗GPR20抗体の、重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[118]に記載の治療方法。
[120]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲である、[117]から[119]のいずれか1項に記載の治療方法。
【0038】
[121]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗CDH6抗体である、[100]に記載の治療方法。
[122]
抗CDH6抗体が、配列番号11においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号12においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[121]に記載の治療方法。
[123]
抗CDH6抗体の、重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[122]に記載の治療方法。
[124]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲である、[121]から[123]のいずれか1項に記載の治療方法。
[125]
転移性脳腫瘍の治療のための、
【0039】
【化5】
【0040】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗体-薬物コンジュゲート。
[126]
転移性脳腫瘍の原発がんが、乳がん、肺がん、メラノーマ、腎細胞がん、腎臓がん、大腸がん、胃がん、頭頸部がん、肝細胞がん、肝臓がん、卵巣がん、前立腺がん、膀胱がん、膵臓がん、子宮内膜がん、甲状腺がん、悪性リンパ腫、及び肉腫からなる群より選択される少なくとも一つである、[125]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[127]
転移性脳腫瘍の原発がんが、乳がん、肺がん、及びメラノーマからなる群より選択される少なくとも一つである、[125]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[128]
転移性脳腫瘍の原発がんが、乳がんである、[125]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[129]
転移性脳腫瘍の原発がんが、肺がんである、[125]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[130]
転移性脳腫瘍の原発がんが、メラノーマである、[125]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【0041】
[131]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗HER2抗体、抗HER3抗体、抗TROP2抗体、抗B7-H3抗体、抗GPR20抗体、又は抗CDH6抗体である、[125]~[130]のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[132]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗HER2抗体である、[131]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[133]
抗HER2抗体が、配列番号1においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[132]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[134]
抗HER2抗体が、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[132]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[135]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲である、[132]~[134]のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[136]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗HER3抗体である、[131]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[137]
抗HER3抗体が、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[136]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[138]
抗HER3抗体の、重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[137]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[139]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲である、[136]~[138]のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[140]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗TROP2抗体である、[131]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【0042】
[141]
抗TROP2抗体が、配列番号5においてアミノ酸番号20乃至470に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号6においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[140]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[142]
抗TROP2抗体の、重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[141]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[143]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が3.5から4.5個の範囲である、[140]から[142]のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[144]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗B7-H3抗体である、[131]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[145]
抗B7-H3抗体が、配列番号7においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号8においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[144]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[146]
抗B7-H3抗体の、重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[145]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[147]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が3.5から4.5個の範囲である、[144]から[146]のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[148]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗GPR20抗体である、[131]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[149]
抗GPR20抗体が、配列番号9においてアミノ酸番号20乃至472に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号10においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[148]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[150]
抗GPR20抗体の、重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[149]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【0043】
[151]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲である、[148]から[150]のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[152]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗CDH6抗体である、[131]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[153]
抗CDH6抗体が、配列番号11においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号12においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[152]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[154]
抗CDH6抗体の、重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[153]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[155]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲である、[152]から[154]のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[156]
転移性脳腫瘍の治療のための、
【0044】
【化6】
【0045】
(式中、薬物リンカーは抗体とチオエーテル結合によって結合しており、nは1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数を示す)
で示される抗体-薬物コンジュゲート。
[157]
転移性脳腫瘍の原発がんが、乳がん、肺がん、メラノーマ、腎細胞がん、腎臓がん、大腸がん、胃がん、頭頸部がん、肝細胞がん、肝臓がん、卵巣がん、前立腺がん、膀胱がん、膵臓がん、子宮内膜がん、甲状腺がん、悪性リンパ腫、及び肉腫からなる群より選択される少なくとも一つである、[156]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[158]
転移性脳腫瘍の原発がんが、乳がん、肺がん、及びメラノーマからなる群より選択される少なくとも一つである、[156]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[159]
転移性脳腫瘍の原発がんが、乳がんである、[156]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[160]
転移性脳腫瘍の原発がんが、肺がんである、[156]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【0046】
[161]
転移性脳腫瘍の原発がんが、メラノーマである、[156]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[162]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗HER2抗体、抗HER3抗体、抗TROP2抗体、抗B7-H3抗体、抗GPR20抗体、又は抗CDH6抗体である、[156]~[161]のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[163]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗HER2抗体である、[162]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[164]
抗HER2抗体が、配列番号1においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[163]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[165]
抗HER2抗体が、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[163]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[166]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲である、[163]~[165]のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[167]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗HER3抗体である、[162]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[168]
抗HER3抗体が、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[167]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[169]
抗HER3抗体の、重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[168]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[170]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲である、[167]~[169]のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【0047】
[171]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗TROP2抗体である、[162]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[172]
抗TROP2抗体が、配列番号5においてアミノ酸番号20乃至470に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号6においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[171]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[173]
抗TROP2抗体の、重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[172]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[174]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が3.5から4.5個の範囲である、[171]から[173]のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[175]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗B7-H3抗体である、[162]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[176]
抗B7-H3抗体が、配列番号7においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号8においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[175]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[177]
抗B7-H3抗体の、重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[176]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[178]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が3.5から4.5個の範囲である、[175]から[177]のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[179]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗GPR20抗体である、[162]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[180]
抗GPR20抗体が、配列番号9においてアミノ酸番号20乃至472に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号10においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[179]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【0048】
[181]
抗GPR20抗体の、重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[180]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[182]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲である、[179]から[181]のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[183]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗CDH6抗体である、[162]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[184]
抗CDH6抗体が、配列番号11においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号12においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[183]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[185]
抗CDH6抗体の、重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[184]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[186]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲である、[183]から[185]のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[187]
転移性脳腫瘍の治療用の医薬を製造するための、
【0049】
【化7】
【0050】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗体-薬物コンジュゲートの使用。
[188]
転移性脳腫瘍の原発がんが、乳がん、肺がん、メラノーマ、腎細胞がん、腎臓がん、大腸がん、胃がん、頭頸部がん、肝細胞がん、肝臓がん、卵巣がん、前立腺がん、膀胱がん、膵臓がん、子宮内膜がん、甲状腺がん、悪性リンパ腫、及び肉腫からなる群より選択される少なくとも一つである、[187]に記載の使用。
[189]
転移性脳腫瘍の原発がんが、乳がん、肺がん、及びメラノーマからなる群より選択される少なくとも一つである、[187]に記載の使用。
[190]
転移性脳腫瘍の原発がんが、乳がんである、[187]に記載の使用。
【0051】
[191]
転移性脳腫瘍の原発がんが、肺がんである、[187]に記載の使用。
[192]
転移性脳腫瘍の原発がんが、メラノーマである、[187]に記載の使用。
[193]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗HER2抗体、抗HER3抗体、抗TROP2抗体、抗B7-H3抗体、抗GPR20抗体、又は抗CDH6抗体である、[187]~[192]のいずれか1項に記載の使用。
[194]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗HER2抗体である、[193]に記載の使用。
[195]
抗HER2抗体が、配列番号1においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[194]に記載の使用。
[196]
抗HER2抗体が、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[194]に記載の使用。
[197]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲である、[194]~[196]のいずれか1項に記載の使用。
[198]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗HER3抗体である、[193]に記載の使用。
[199]
抗HER3抗体が、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[198]に記載の使用。
[200]
抗HER3抗体の、重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[199]に記載の使用。
【0052】
[201]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲である、[198]~[200]のいずれか1項に記載の使用。
[202]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗TROP2抗体である、[193]に記載の使用。
[203]
抗TROP2抗体が、配列番号5においてアミノ酸番号20乃至470に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号6においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[202]に記載の使用。
[204]
抗TROP2抗体の、重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[203]に記載の使用。
[205]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が3.5から4.5個の範囲である、[202]から[204]のいずれか1項に記載の使用。
[206]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗B7-H3抗体である、[193]に記載の使用。
[207]
抗B7-H3抗体が、配列番号7においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号8においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[206]に記載の使用。
[208]
抗B7-H3抗体の、重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[207]に記載の使用。
[209]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が3.5から4.5個の範囲である、[206]から[208]のいずれか1項に記載の使用。
[210]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗GPR20抗体である、[193]に記載の使用。
【0053】
[211]
抗GPR20抗体が、配列番号9においてアミノ酸番号20乃至472に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号10においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[210]に記載の使用。
[212]
抗GPR20抗体の、重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[211]に記載の使用。
[213]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲である、[210]から[212]のいずれか1項に記載の使用。
[214]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗CDH6抗体である、[193]に記載の使用。
[215]
抗CDH6抗体が、配列番号11においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号12においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[214]に記載の使用。
[216]
抗CDH6抗体の、重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[215]に記載の使用。
[217]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲である、[214]から[216]のいずれか1項に記載の使用。
[218]
転移性脳腫瘍の治療用の医薬を製造するための、
【0054】
【化8】
【0055】
(式中、薬物リンカーは抗体とチオエーテル結合によって結合しており、nは1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数を示す)
で示される抗体-薬物コンジュゲートの使用。
[219]
転移性脳腫瘍の原発がんが、乳がん、肺がん、メラノーマ、腎細胞がん、腎臓がん、大腸がん、胃がん、頭頸部がん、肝細胞がん、肝臓がん、卵巣がん、前立腺がん、膀胱がん、膵臓がん、子宮内膜がん、甲状腺がん、悪性リンパ腫、及び肉腫からなる群より選択される少なくとも一つである、[218]に記載の使用。
[220]
転移性脳腫瘍の原発がんが、乳がん、肺がん、及びメラノーマからなる群より選択される少なくとも一つである、[218]に記載の使用。
【0056】
[221]
転移性脳腫瘍の原発がんが、乳がんである、[218]に記載の使用。
[222]
転移性脳腫瘍の原発がんが、肺がんである、[218]に記載の使用。
[223]
転移性脳腫瘍の原発がんが、メラノーマである、[218]に記載の使用。
[224]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗HER2抗体、抗HER3抗体、抗TROP2抗体、抗B7-H3抗体、抗GPR20抗体、又は抗CDH6抗体である、[218]~[223]のいずれか1項に記載の使用。
[225]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗HER2抗体である、[224]に記載の使用。
[226]
抗HER2抗体が、配列番号1においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[225]に記載の使用。
[227]
抗HER2抗体が、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[225]に記載の使用。
[228]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲である、[225]~[227]のいずれか1項に記載の使用。
[229]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗HER3抗体である、[224]に記載の使用。
[230]
抗HER3抗体が、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[229]に記載の使用。
【0057】
[231]
抗HER3抗体の、重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[230]に記載の使用。
[232]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲である、[229]~[231]のいずれか1項に記載の使用。
[233]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗TROP2抗体である、[224]に記載の使用。
[234]
抗TROP2抗体が、配列番号5においてアミノ酸番号20乃至470に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号6においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[233]に記載の使用。
[235]
抗TROP2抗体の、重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[234]に記載の使用。
[236]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が3.5から4.5個の範囲である、[233]から[235]のいずれか1項に記載の使用。
[237]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗B7-H3抗体である、[224]に記載の使用。
[238]
抗B7-H3抗体が、配列番号7においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号8においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[237]に記載の使用。
[239]
抗B7-H3抗体の、重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[238]に記載の使用。
[240]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が3.5から4.5個の範囲である、[237]から[239]のいずれか1項に記載の使用。
【0058】
[241]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗GPR20抗体である、[224]に記載の使用。
[242]
抗GPR20抗体が、配列番号9においてアミノ酸番号20乃至472に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号10においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[241]に記載の使用。
[243]
抗GPR20抗体の、重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[242]に記載の使用。
[244]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲である、[241]から[243]のいずれか1項に記載の使用。
[245]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗CDH6抗体である、[244]に記載の使用。
[246]
抗CDH6抗体が、配列番号11においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号12においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[245]に記載の使用。
[247]
抗CDH6抗体の、重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[246]に記載の使用。
[248]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲である、[245]から[247]のいずれか1項に記載の使用。
[249]
【0059】
【化9】
【0060】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗体-薬物コンジュゲートを有効成分として含有する、転移性がんの治療剤。
[250]
転移性がんが、転移性脳腫瘍、転移性骨腫瘍、転移性肺腫瘍、及び転移性肝臓がんからなる群より選択される少なくとも一つである、[249]に記載の治療剤。
【0061】
[251]
転移性がんが、転移性骨腫瘍である、[250]に記載の治療剤。
[252]
【0062】
【化10】
【0063】
(式中、薬物リンカーは抗体とチオエーテル結合によって結合しており、nは1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数を示す)
で示される抗体-薬物コンジュゲートを有効成分として含有する、転移性がんの治療剤。
[253]
転移性がんが、転移性脳腫瘍、転移性骨腫瘍、転移性肺腫瘍、及び転移性肝臓がんからなる群より選択される少なくとも一つである、[252]に記載の治療剤。
[254]
転移性がんが、転移性骨腫瘍である、[253]に記載の治療剤。
[255]
【0064】
【化11】
【0065】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗体-薬物コンジュゲートを転移性がんの治療を必要とする個体に投与することを特徴とする、転移性がんの治療方法。
[256]
転移性がんが、転移性脳腫瘍、転移性骨腫瘍、転移性肺腫瘍、及び転移性肝臓がんからなる群より選択される少なくとも一つである、[255]に記載の治療方法。
[257]
転移性がんが、転移性骨腫瘍である、[256]に記載の治療方法。
[258]
【0066】
【化12】
【0067】
(式中、薬物リンカーは抗体とチオエーテル結合によって結合しており、nは1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数を示す)
で示される抗体-薬物コンジュゲートを転移性がんの治療を必要とする個体に投与することを特徴とする、転移性がんの治療方法。
[259]
転移性がんが、転移性脳腫瘍、転移性骨腫瘍、転移性肺腫瘍、及び転移性肝臓がんからなる群より選択される少なくとも一つである、[258]に記載の治療方法。
[260]
転移性がんが、転移性骨腫瘍である、[259]に記載の治療方法。
【0068】
[261]
転移性がんの治療のための、
【0069】
【化13】
【0070】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗体-薬物コンジュゲート。
[262]
転移性がんが、転移性脳腫瘍、転移性骨腫瘍、転移性肺腫瘍、及び転移性肝臓がんからなる群より選択される少なくとも一つである、[261]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[263]
転移性がんが、転移性骨腫瘍である、[262]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[264]
転移性がんの治療のための、
【0071】
【化14】
【0072】
(式中、薬物リンカーは抗体とチオエーテル結合によって結合しており、nは1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数を示す)
で示される抗体-薬物コンジュゲート。
[265]
転移性がんが、転移性脳腫瘍、転移性骨腫瘍、転移性肺腫瘍、及び転移性肝臓がんからなる群より選択される少なくとも一つである、[264]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[266]
転移性がんが、転移性骨腫瘍である、[265]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[267]
転移性がんの治療用の医薬を製造するための、
【0073】
【化15】
【0074】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗体-薬物コンジュゲートの使用。
[268]
転移性がんが、転移性脳腫瘍、転移性骨腫瘍、転移性肺腫瘍、及び転移性肝臓がんからなる群より選択される少なくとも一つである、[267]に記載の使用。
[269]
転移性がんが、転移性骨腫瘍である、[268]に記載の使用。
[270]
転移性がんの治療用の医薬を製造するための、
【0075】
【化16】
【0076】
(式中、薬物リンカーは抗体とチオエーテル結合によって結合しており、nは1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数を示す)
で示される抗体-薬物コンジュゲートの使用。
【0077】
[271]
転移性がんが、転移性脳腫瘍、転移性骨腫瘍、転移性肺腫瘍、及び転移性肝臓がんからなる群より選択される少なくとも一つである、[270]に記載の使用。
[272]
転移性がんが、転移性骨腫瘍である、[271]に記載の使用。
【発明の効果】
【0078】
本発明により、特定の抗体-薬物コンジュゲートを含有する転移性脳腫瘍の治療剤、及び/又は、特定の抗体-薬物コンジュゲートを個体に投与することを特徴とする転移性脳腫瘍の治療方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
図1】抗HER2抗体重鎖のアミノ酸配列(配列番号1)を示した図である。
図2】抗HER2抗体軽鎖のアミノ酸配列(配列番号2)を示した図である。
図3】抗HER3抗体重鎖のアミノ酸配列(配列番号3)を示した図である。
図4】抗HER3抗体軽鎖のアミノ酸配列(配列番号4)を示した図である。
図5】抗TROP2抗体重鎖のアミノ酸配列(配列番号5)を示した図である。
図6】抗TROP2抗体軽鎖のアミノ酸配列(配列番号6)を示した図である。
図7】抗B7-H3抗体重鎖のアミノ酸配列(配列番号7)を示した図である。
図8】抗B7-H3抗体軽鎖のアミノ酸配列(配列番号8)を示した図である。
図9】KPL-4-Lucを脳内移植されたマウスにおける、抗体-薬物コンジュゲート(1)の延命効果を示した図である。
図10】KPL-4-Lucを脳内移植されたマウスにおける、抗体-薬物コンジュゲート(1)の抗腫瘍効果を示した図である。腫瘍量はKPL-4-Lucの発光強度により確認している。
図11】溶媒投与群のマウス(No.1およびNo.2)のヘマトキシリン・エオジン染色による脳の病理像を示した図である。中央は全体の病理像を示し、左右は拡大した病理像を示している。点線で囲まれた部分あるいは矢印で示した部分に腫瘍塊が認められる。
図12】抗GPR20抗体重鎖のアミノ酸配列(配列番号9)を示した図である。
図13】抗GPR20抗体軽鎖のアミノ酸配列(配列番号10)を示した図である。
図14】抗CDH6抗体重鎖のアミノ酸配列(配列番号11)を示した図である。
図15】抗CDH6抗体軽鎖のアミノ酸配列(配列番号12)を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0080】
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これによって本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0081】
1.転移性脳腫瘍
本発明において、「転移性脳腫瘍」とは、脳以外の生体組織で発生したがん(原発がん)が脳に転移することにより発生した腫瘍を意味する。本発明における転移性脳腫瘍は、脳実質中に転移した腫瘍のみならず、軟膜やくも膜に浸潤した腫瘍(髄膜がん腫症)も含む。転移箇所は、単一の場合もあれば、複数の場合もある。また、転移性脳腫瘍は、原発がんの症状が見られた後に発見されることがほとんどであるが、原発がんの症状が見られる前に発見されることもある。
【0082】
転移性脳腫瘍の症状としては、例えば、頭痛、嘔吐、視力障害、意識障害、痙攣発作、麻痺、及び言語障害等を挙げることができる。これらの症状は、腫瘍による脳組織の直接損傷や、頭蓋内の圧力上昇などにより引き起こされると考えられる。
【0083】
転移性脳腫瘍の検査は、例えば、CT(Computed Tomography)、PET(Positron Emission Tomography)、及びMRI(Magnetic Resonance Imaging)等を用いて行うことができる。
【0084】
転移性脳腫瘍の原発がんとしては、例えば、肺がん、乳がん、メラノーマ、腎細胞がん、腎臓がん、大腸がん、胃がん、頭頸部がん、肝細胞がん、肝臓がん、卵巣がん、前立腺がん、膀胱がん、膵臓がん、子宮内膜がん、甲状腺がん、悪性リンパ腫、及び肉腫等を挙げることができる。このうち特に、肺がん、乳がん、及びメラノーマが、転移性脳腫瘍の原発がんとして高い割合で存在する。
【0085】
2.抗体-薬物コンジュゲート
本発明において使用される抗体-薬物コンジュゲートは、
【0086】
【化17】
【0087】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗体-薬物コンジュゲートである。
【0088】
本発明においては、抗体-薬物コンジュゲートのうち、リンカー及び薬物からなる部分構造を「薬物リンカー」と称する。この薬物リンカーは抗体の鎖間のジスルフィド結合部位(2箇所の重鎖-重鎖間、及び2箇所の重鎖-軽鎖間)において生じたチオール基(言い換えれば、システイン残基の硫黄原子)に結合している。
【0089】
本発明の薬物リンカーは、トポイソメラーゼI阻害剤であるエキサテカン(IUPAC名:(1S,9S)-1-アミノ-9-エチル-5-フルオロ-1,2,3,9,12,15-ヘキサヒドロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10H,13H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-10,13-ジオン、(化学名:(1S,9S)-1-アミノ-9-エチル-5-フルオロ-2,3-ジヒドロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-10,13(9H,15H)-ジオンとして表すこともできる))を構成要素としている。エキサテカンは、
【0090】
【化18】
【0091】
で示される、抗腫瘍効果を有するカンプトテシン誘導体である。
【0092】
本発明において使用される抗体-薬物コンジュゲートは、
【0093】
【化19】
【0094】
で表されることもできる。
【0095】
ここで、薬物リンカーは抗体とチオエーテル結合によって結合している。また、nはいわゆる平均薬物結合数(DAR; Drug-to-Antibody Ratio)と同義であり、1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数を示す。
【0096】
本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲートは、がん細胞内に移行した後に、
【0097】
【化20】
【0098】
で表される化合物を遊離することにより、抗腫瘍効果を発揮する。
【0099】
上記化合物は、本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲートの抗腫瘍活性の本体であると考えられ、トポイソメラーゼI阻害作用を有することが確認されている(Ogitani Y. et al., Clinical Cancer Research, 2016, Oct 15;22(20):5097-5108, Epub 2016 Mar 29)。
【0100】
本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲートは、バイスタンダー効果を有することも知られている(Ogitani Y. et al., Cancer Science (2016) 107, 1039-1046)。
このバイスタンダー効果は、本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲートが、標的発現がん細胞に内在化した後、上記化合物が遊離され、標的を発現していない近傍のがん細胞に対しても抗腫瘍効果を及ぼすことにより発揮される。
【0101】
3.抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体
本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体は、いずれの種に由来してもよいが、好適には、ヒト、ラット、マウス、及びウサギに由来する抗体である。抗体がヒト以外の種に由来する場合は、周知の技術を用いて、キメラ化又はヒト化することが好ましい。本発明の抗体は、ポリクローナル抗体であっても、モノクローナル抗体であってもよいが、モノクローナル抗体が好ましい。
【0102】
本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体は、好適にはがん細胞を標的にできる性質を有するものであり、がん細胞を認識できる特性、がん細胞に結合できる特性、がん細胞内に取り込まれて内在化する特性、及び/又はがん細胞に対する殺細胞活性等を備えているものが好ましい。
【0103】
抗体のがん細胞への結合性は、フローサイトメトリーを用いて確認できる。がん細胞内への抗体の取り込みは、(1)治療抗体に結合する二次抗体(蛍光標識)を用いて細胞内に取り込まれた抗体を蛍光顕微鏡で可視化するアッセイ(Cell Death and Differentiation (2008) 15, 751-761)、(2)治療抗体に結合する二次抗体(蛍光標識)を用いて細胞内に取り込まれた蛍光量を測定するアッセイ(Molecular Biology of the Cell Vol. 15, 5268-5282, December 2004)、又は(3)治療抗体に結合するイムノトキシンを用いて、細胞内に取り込まれると毒素が放出されて細胞増殖が抑制されるというMab-ZAPアッセイ(Bio Techniques 28:162-165, January 2000)を用いて確認できる。イムノトキシンとしては、ジフテテリア毒素の触媒領域とプロテインGとのリコンビナント複合蛋白質も使用可能である。
【0104】
抗体の抗腫瘍活性は、in vitroでは、細胞の増殖の抑制活性を測定することで確認できる。例えば、抗体の標的蛋白質を過剰発現しているがん細胞株を培養し、培養系に種々の濃度で抗体を添加し、フォーカス形成、コロニー形成及びスフェロイド増殖に対する抑制活性を測定することができる。in vivoでは、例えば、標的蛋白質を高発現しているがん細胞株を移植したヌードマウスに抗体を投与し、がん細胞の変化を測定することによって、抗腫瘍活性を確認できる。
【0105】
抗体自体が抗腫瘍効果を有することは、好ましいが、抗体-薬物コンジュゲートは抗腫瘍効果を発揮する化合物を結合させてあるので、抗体自体の抗腫瘍効果は必須ではない。抗腫瘍性化合物の細胞障害性をがん細胞において特異的・選択的に発揮させる目的からは、抗体が内在化してがん細胞内に移行する性質のあることが重要であり、好ましい。
【0106】
本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体は、公知の手段によって取得することができる。例えば、この分野で通常実施される方法を用いて、抗原となるポリペプチドを動物に免疫し、生体内に産生される抗体を採取、精製することによって得ることができる。抗原の由来はヒトに限定されず、マウス、ラット等のヒト以外の動物に由来する抗原を動物に免疫することもできる。この場合には、取得された異種抗原に結合する抗体とヒト抗原との交差性を試験することによって、ヒトの疾患に適用可能な抗体を選別できる。
【0107】
また、公知の方法(例えば、Kohler and Milstein, Nature (1975) 256, p.495-497;Kennet, R. ed., Monoclonal Antibodies, p.365-367, Plenum Press, N.Y.(1980))に従って、抗原に対する抗体を産生する抗体産生細胞とミエローマ細胞とを融合させることによってハイブリドーマを樹立し、モノクローナル抗体を得ることもできる。
【0108】
なお、抗原は抗原蛋白質をコードする遺伝子を遺伝子操作によって宿主細胞に産生させることによって得ることができる。具体的には、抗原遺伝子を発現可能なベクターを作製し、これを宿主細胞に導入して該遺伝子を発現させ、発現した抗原を精製すればよい。上記の遺伝子操作による抗原発現細胞、或は抗原を発現している細胞株、を動物に免疫する方法を用いることによっても抗体を取得できる。
【0109】
本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体は、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ(Chimeric)抗体、ヒト化(Humanized)抗体であることが好ましく、又はヒト由来の抗体の遺伝子配列のみを有する抗体、すなわちヒト抗体であることが好ましい。これらの抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。
【0110】
キメラ抗体としては、抗体の可変領域と定常領域が互いに異種である抗体、例えばマウス又はラット由来抗体の可変領域をヒト由来の定常領域に接合したキメラ抗体を挙げることができる(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 81, 6851-6855,(1984))。
【0111】
ヒト化抗体としては、異種抗体の相補性決定領域(CDR;complementarity determining region)のみをヒト由来の抗体に組み込んだ抗体(Nature(1986) 321, p.522-525)、CDR移植法によって、異種抗体のCDRの配列に加えて、異種抗体の一部のフレームワークのアミノ酸残基もヒト抗体に移植した抗体(国際公開第90/07861号)、遺伝子変換突然変異誘発(gene conversion mutagenesis)ストラテジーを用いてヒト化した抗体(米国特許第5821337号)を挙げることができる。
【0112】
ヒト抗体としては、ヒト抗体の重鎖と軽鎖の遺伝子を含むヒト染色体断片を有するヒト抗体産生マウスを用いて作成した抗体(Tomizuka, K. et al., Nature Genetics(1997) 16, p.133-143;Kuroiwa, Y. et. al., Nucl. Acids Res.(1998) 26, p.3447-3448;Yoshida, H. et. al., Animal Cell Technology:Basic and Applied Aspects vol.10, p.69-73(Kitagawa, Y., Matsuda, T. and Iijima, S. eds.), Kluwer Academic Publishers, 1999;Tomizuka, K. et. al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA(2000) 97, p.722-727等を参照。)を挙げることができる。或いは、ヒト抗体ライブラリーより選別したファージディスプレイにより取得した抗体(Wormstone, I. M. et. al, Investigative Ophthalmology & Visual Science. (2002)43 (7), p.2301-2308;Carmen, S. et. al., Briefings in Functional Genomics and Proteomics(2002), 1(2), p.189-203;Siriwardena, D. et. al., Ophthalmology(2002) 109(3), p.427-431等参照。)も挙げることができる。
【0113】
本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体には、抗体の修飾体も含まれる。当該修飾体とは、本発明に係る抗体に化学的又は生物学的な修飾が施されてなるものを意味する。化学的な修飾体には、アミノ酸骨格への化学部分の結合、N-結合又はO-結合炭水化物鎖への化学部分の結合を有する化学修飾体等が含まれる。生物学的な修飾体には、翻訳後修飾(例えば、N-結合又はO-結合型糖鎖の付加、N末端又はC末端のプロセッシング、脱アミド化、アスパラギン酸の異性化、メチオニンの酸化等)されたもの、原核生物宿主細胞を用いて発現させることによってN末にメチオニン残基が付加されたもの等が含まれる。また、本発明に係る抗体又は抗原の検出又は単離を可能にするために標識されたもの、例えば、酵素標識体、蛍光標識体、アフィニティ標識体もかかる修飾体の意味に含まれる。この様な本発明に係る抗体の修飾体は、抗体の安定性及び血中滞留性の改善、抗原性の低減、抗体又は抗原の検出又は単離等に有用である。
【0114】
また、本発明に係る抗体に結合している糖鎖修飾を調節すること(グリコシル化、脱フコース化等)によって、抗体依存性細胞傷害活性を増強することが可能である。抗体の糖鎖修飾の調節技術としては、国際公開第99/54342号、国際公開第00/61739号、国際公開第02/31140号、国際公開第2007/133855号、及び国際公開第2013/120066号等が知られているが、これらに限定されるものではない。本発明に係る抗体には当該糖鎖修飾が調節された抗体も含まれる。
【0115】
なお、哺乳類培養細胞で生産される抗体では、その重鎖のカルボキシル末端のリシン残基が欠失することが知られており(Journal of Chromatography A, 705: 129-134(1995))、また、同じく重鎖カルボキシル末端のグリシン、リシンの2アミノ酸残基が欠失し、新たにカルボキシル末端に位置するプロリン残基がアミド化されることが知られている(Analytical Biochemistry, 360: 75-83(2007))。しかし、これらの重鎖配列の欠失及び修飾は、抗体の抗原結合能及びエフェクター機能(補体の活性化や抗体依存性細胞障害作用等)には影響を及ぼさない。したがって、本発明に係る抗体には、当該修飾を受けた抗体及び当該抗体の機能性断片も含まれ、重鎖カルボキシル末端において1又は2のアミノ酸が欠失した欠失体、及びアミド化された当該欠失体(例えば、カルボキシル末端部位のプロリン残基がアミド化された重鎖)等も包含される。但し、抗原結合能及びエフェクター機能が保たれている限り、本発明に係る抗体の重鎖のカルボキシル末端の欠失体は上記の種類に限定されない。本発明に係る抗体を構成する2本の重鎖は、完全長及び上記の欠失体からなる群から選択される重鎖のいずれか一種であってもよいし、いずれか二種を組み合わせたものであってもよい。各欠失体の量比は本発明に係る抗体を産生する哺乳類培養細胞の種類及び培養条件に影響を受け得るが、本発明に係る抗体は、好ましくは2本の重鎖の双方でカルボキシル末端のひとつのアミノ酸残基が欠失しているものを挙げることができる。
【0116】
本発明に係る抗体のアイソタイプとしては、例えばIgG(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)等を挙げることができるが、好ましくはIgG1又はIgG2を挙げることができる。
【0117】
本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体は、特に制限はないが、例えば、抗HER2抗体、抗HER3抗体、抗TROP2抗体、抗B7-H3抗体、抗CD3抗体、抗CD30抗体、抗CD33抗体、抗CD37抗体、抗CD56抗体、抗CD98抗体、抗DR5抗体、抗EGFR抗体、抗EPHA2抗体、抗FGFR2抗体、抗FGFR4抗体、抗FOLR1抗体、抗VEGF抗体、抗CD20抗体、抗CD22抗体、抗CD70抗体、抗PSMA抗体、抗CEA抗体、抗Mesothelin抗体、抗A33抗体、抗CanAg抗体、抗Cripto抗体、抗G250抗体、抗MUC1抗体、抗GPNMB抗体、抗Integrin抗体、抗Tenascin-C抗体、抗SLC44A4抗体、抗GPR20抗体、及び抗CDH6抗体を挙げることができ、好適には、抗HER2抗体、抗HER3抗体、抗TROP2抗体、抗B7-H3抗体、抗GPR20抗体、及び抗CDH6抗体を挙げることができ、より好適には、抗HER2抗体を挙げることができる。
【0118】
本発明において、「抗HER2抗体」とは、HER2(Human Epidermal Growth Factor Receptor Type 2; ErbB-2)に特異的に結合し、好ましくは、HER2と結合することによってHER2発現細胞に内在化する活性を有する抗体を示す。
【0119】
抗HER2抗体としては、例えば、トラスツズマブ(Trastuzumab)(米国特許第5821337号)、ペルツズマブ(Pertuzumab)(国際公開第01/00245号)を挙げることができ、好適にはトラスツズマブを挙げることができる。
【0120】
本発明において、「抗HER3抗体」とは、HER3(Human Epidermal Growth Factor Receptor Type 3; ErbB-3)に特異的に結合し、好ましくは、HER3と結合することによってHER3発現細胞に内在化する活性を有する抗体を示す。
【0121】
抗HER3抗体としては、例えば、パトリツマブ(Patritumab; U3-1287)、U1-59(国際公開第2007/077028号)、MM-121(Seribantumab)、国際公開2008/100624号記載の抗ERBB3抗体、RG-7116(Lumretuzumab)、及びLJM-716(Elgemtumab)を挙げることができ、好適には、パトリツマブ、及びU1-59を挙げることができる。
【0122】
本発明において、「抗TROP2抗体」とは、TROP2(TACSTD2:Tumor-associated calcium signal transducer 2; EGP-1)に特異的に結合し、好ましくは、TROP2と結合することによってTROP2発現細胞に内在化する活性を有する抗体を示す。
【0123】
抗TROP2抗体としては、例えば、hTINA1-H1L1(国際公開第2015/098099号)を挙げることができる。
【0124】
本発明において、「抗B7-H3抗体」とは、B7-H3(B cell antigen #7 homolog 3; PD-L3; CD276)に特異的に結合し、好ましくは、B7-H3と結合することによってB7-H3発現細胞に内在化する活性を有する抗体を示す。
【0125】
抗B7-H3抗体としては、例えば、M30-H1-L4(国際公開第2014/057687号)を挙げることができる。
【0126】
本発明において、「抗GPR20抗体」とは、GPR20(G Protein-coupled receptor 20)に特異的に結合し、好ましくは、GPR20と結合することによってGPR20発現細胞に内在化する活性を有する抗体を示す。
【0127】
抗GPR20抗体としては、例えば、h046-H4e/L7(国際公開第2018/135501号)を挙げることができる。
【0128】
本発明において、「抗CDH6抗体」とは、CDH6(Cadherin-6)に特異的に結合し、好ましくは、CDH6と結合することによってCDH6発現細胞に内在化する活性を有する抗体を示す。
【0129】
抗CDH6抗体としては、例えば、H01L02(国際公開第2018/212136号)を挙げることができる。
【0130】
4.抗体-薬物コンジュゲートの製造
本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲートの製造に使用される薬物リンカー中間体は、次式で示される。
【0131】
【化21】
【0132】
上記の薬物リンカー中間体は、N-[6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)ヘキサノイル]グリシルグリシル-L-フェニルアラニル-N-[(2-{[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-2-オキソエトキシ)メチル]グリシンアミド、という化学名で表すことができ、国際公開第2014/057687号、国際公開第2015/098099号、国際公開第2015/115091号、国際公開第2015/155998号、及び国際公開第2019/044947号等の記載を参考に製造することができる。
【0133】
本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲートは、前述の薬物リンカー中間体と、チオール基(又はスルフヒドリル基とも言う)を有する抗体を反応させることによって製造することができる。
【0134】
スルフヒドリル基を有する抗体は、当業者周知の方法で得ることができる(Hermanson, G. T, Bioconjugate Techniques, pp.56-136, pp.456-493, Academic Press(1996))。例えば、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)等の還元剤を、抗体内鎖間ジスルフィド1個当たりに対して0.3乃至3モル当量用い、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等のキレート剤を含む緩衝液中で、抗体と反応させることで、抗体内鎖間ジスルフィドが部分的若しくは完全に還元されたスルフヒドリル基を有する抗体を得ることができる。
【0135】
さらに、スルフヒドリル基を有する抗体1個あたり、2乃至20モル当量の薬物リンカー中間体を使用して、抗体1個当たり2個乃至8個の薬物が結合した抗体-薬物コンジュゲートを製造することができる。
【0136】
製造した抗体-薬物コンジュゲートの抗体一分子あたりの平均薬物結合数の算出は、例えば、280nm及び370nmの二波長における抗HER2抗体-薬物コンジュゲートとそのコンジュゲーション前駆体のUV吸光度を測定することにより算出する方法(UV法)や、抗体-薬物コンジュゲートを還元剤で処理し得られた各フラグメントをHPLC測定により定量し算出する方法(HPLC法)により行うことができる。
【0137】
抗体と薬物リンカー中間体のコンジュゲーション、及び抗体-薬物コンジュゲートの抗体一分子あたりの平均薬物結合数の算出は、国際公開第2014/057687号、国際公開第2015/098099号、国際公開第2015/115091号、国際公開第2015/155998号、国際公開第2018/135501号、及び国際公開第2018/212136号等の記載を参考に実施することができる。
【0138】
本発明において、「抗HER2抗体-薬物コンジュゲート」とは、本発明に係る抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が抗HER2抗体である抗体-薬物コンジュゲートを示す。
【0139】
抗HER2抗体は、好適には、配列番号1においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である。
【0140】
抗HER2抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数は、好適には2から8であり、より好適には3から8であり、更により好適には7から8であり、更により好適には7.5から8であり、更により好適には約8である。
【0141】
抗HER2抗体-薬物コンジュゲートは、国際公開第2015/115091号等の記載を参考に製造することができる。
【0142】
本発明において、「抗HER3抗体-薬物コンジュゲート」とは、本発明に係る抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が抗HER3抗体である抗体-薬物コンジュゲートを示す。
【0143】
抗HER3抗体は、好適には、配列番号3においてアミノ酸番号26乃至35に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号3においてアミノ酸番号50乃至65に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号3においてアミノ酸番号98乃至106に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖、並びに、配列番号4においてアミノ酸番号24乃至39に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号4においてアミノ酸番号56乃至62に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2、及び配列番号4においてアミノ酸番号95乃至103に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖、を含む抗体であり、
より好適には、配列番号3においてアミノ酸番号1乃至117に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖、及び配列番号4においてアミノ酸番号1乃至113に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖、を含む抗体であり、
更により好適には、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している抗体である。
【0144】
抗HER3抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数は、好適には2から8であり、より好適には3から8であり、更により好適には7から8であり、更により好適には7.5から8であり、更により好適には約8である。
【0145】
抗HER3抗体-薬物コンジュゲートは、国際公開第2015/155998号等の記載を参考に製造することができる。
【0146】
本発明において、「抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート」とは、本発明に係る抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が抗TROP2抗体である抗体-薬物コンジュゲートを示す。
【0147】
抗TROP2抗体は、好適には、配列番号5においてアミノ酸番号50乃至54に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号5においてアミノ酸番号69乃至85に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号5においてアミノ酸番号118乃至129に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖、並びに、配列番号6においてアミノ酸番号44乃至54に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号6においてアミノ酸番号70乃至76に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2、及び配列番号6においてアミノ酸番号109乃至117に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖、を含む抗体であり、
より好適には、配列番号5においてアミノ酸番号20乃至140に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖、及び配列番号6においてアミノ酸番号21乃至129に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖、を含む抗体であり、
更により好適には、配列番号5においてアミノ酸番号20乃至470に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号6においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している抗体である。
【0148】
抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数は、好適には2から8であり、より好適には3から5であり、更により好適には3.5から4.5であり、更により好適には約4である。
【0149】
抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートは、国際公開第2015/098099号等の記載を参考に製造することができる。
【0150】
本発明において、「抗B7-H3抗体-薬物コンジュゲート」とは、本発明に係る抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が抗B7-H3抗体である抗体-薬物コンジュゲートを示す。
【0151】
抗B7-H3抗体は、好適には、配列番号7においてアミノ酸番号50乃至54に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号7においてアミノ酸番号69乃至85に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号7においてアミノ酸番号118乃至130に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖、並びに、配列番号8においてアミノ酸番号44乃至53に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号8においてアミノ酸番号69乃至75に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2、及び配列番号8においてアミノ酸番号108乃至116に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖、を含む抗体であり、
より好適には、配列番号7においてアミノ酸番号20乃至141に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖、及び配列番号8においてアミノ酸番号21乃至128に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖、を含む抗体であり、
更により好適には、配列番号7においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号8においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している抗体である。
【0152】
抗B7-H3抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数は、好適には2から8であり、より好適には3から5であり、更により好適には3.5から4.5であり、更により好適には約4である。
【0153】
本発明において使用される抗B7-H3抗体-薬物コンジュゲートは、国際公開第2014/057687号等の記載を参考に製造することができる。
【0154】
本発明において、「抗GPR20抗体-薬物コンジュゲート」とは、本発明に係る抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が抗GPR20抗体である抗体-薬物コンジュゲートを示す。
【0155】
抗GPR20抗体は、好適には、配列番号9においてアミノ酸番号45乃至54に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号9においてアミノ酸番号69乃至78に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号9においてアミノ酸番号118乃至131に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖、並びに、配列番号10においてアミノ酸番号44乃至54に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号10においてアミノ酸番号70乃至76に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2、及び配列番号10においてアミノ酸番号109乃至117に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖、を含む抗体であり、
より好適には、配列番号9においてアミノ酸番号20乃至142に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖、及び配列番号10においてアミノ酸番号21乃至129に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖、を含む抗体であり、
更により好適には、配列番号9においてアミノ酸番号20乃至472に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号10においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している抗体である。
【0156】
抗GPR20抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数は、好適には2から8であり、より好適には3から8であり、更により好適には7から8であり、更により好適には7.5から8であり、更により好適には約8である。
【0157】
抗GPR20抗体-薬物コンジュゲートは、国際公開第2018/135501号等の記載を参考に製造することができる。
【0158】
本発明において、「抗CDH6抗体-薬物コンジュゲート」とは、本発明に係る抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が抗CDH6抗体である抗体-薬物コンジュゲートを示す。
【0159】
抗CDH6抗体は、好適には、配列番号11においてアミノ酸番号45乃至54に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号11においてアミノ酸番号69乃至78に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号11においてアミノ酸番号118乃至130に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖、並びに、配列番号12においてアミノ酸番号44乃至54に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号12においてアミノ酸番号70乃至76に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2、及び配列番号12においてアミノ酸番号109乃至116に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖、を含む抗体であり、
より好適には、配列番号11においてアミノ酸番号20乃至141に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖、及び配列番号12においてアミノ酸番号21乃至128に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖、を含む抗体であり、
更により好適には、配列番号11においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号12においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している抗体である。
【0160】
抗CDH6抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数は、好適には2から8であり、より好適には3から8であり、更により好適には7から8であり、更により好適には7.5から8であり、更により好適には約8である。
【0161】
抗CDH6抗体-薬物コンジュゲートは、国際公開第2018/212136号等の記載を参考に製造することができる。
【0162】
5.治療剤及び/又は治療方法
本発明の治療剤は、本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲートを含有することを特徴とする。また、本発明の治療方法は、本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲートを投与することを特徴とする。これらの治療剤及び治療方法は、転移性脳腫瘍の治療のために使用することができる。
【0163】
本発明の治療剤及び/又は治療方法を使用することができる転移性脳腫瘍の原発がんとしては、脳へ転移する可能性のあるがんであれば特に限定はされないが、例えば、乳がん、肺がん(小細胞肺癌及び非小細胞肺癌を含む)、メラノーマ、腎細胞がん、腎臓がん、大腸がん(結腸直腸がんと呼ぶこともあり、結腸がん及び直腸がんを含む)、胃がん(胃腺がんと呼ぶこともある)、頭頸部がん、肝細胞がん、肝臓がん、卵巣がん、前立腺がん、膀胱がん、膵臓がん、子宮内膜がん、甲状腺がん、悪性リンパ腫、及び肉腫等を挙げることができ、好適には、乳がん、肺がん、及びメラノーマを挙げることができ、より好適には、乳がん、及び肺がんを挙げることができ、更により好適には、乳がんを挙げることができる。
【0164】
本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲートのうち、特にどのような抗体を有する抗体-薬物コンジュゲートが好適であるかは、原発がんの性質や、腫瘍マーカーを検査することにより、決定することができる。例えば、原発がんが乳がん又は肺がんであり、HER2の発現が確認された場合は、抗HER2抗体-薬物コンジュゲートを好適に使用することができ、HER3の発現が確認された場合は、抗HER3抗体-薬物コンジュゲートを好適に使用することができ、TROP2の発現が確認された場合は、抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートを好適に使用することができ、B7-H3の発現が確認された場合は、抗B7-H3抗体-薬物コンジュゲートを好適に使用することができる。また、原発がんがメラノーマであり、HER3の発現が確認された場合は、抗HER3抗体-薬物コンジュゲートを好適に使用することができ、TROP2の発現が確認された場合は、抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートを好適に使用することができ、B7-H3の発現が確認された場合は、抗B7-H3抗体-薬物コンジュゲートを好適に使用することができる。さらに、原発がんが腎臓がんであり、CDH6の発現が確認された場合は、抗CDH6抗体-薬物コンジュゲートを好適に使用することができる。
【0165】
HER2、HER3、TROP2、B7-H3、GPR20、及びCDH6、並びにその他の腫瘍マーカーの有無は、例えば、がん患者から腫瘍組織を採取し、ホルマリン固定パラフィン包埋された検体(FFPE)を、免疫組織化学(IHC)法や、フローサイトメーター、western blot法等による遺伝子産物(蛋白質)レベルでの検査、又は、in situ ハイブリダイゼーション法(ISH)や定量的PCR法(q-PCR)、マイクロアレイ解析等による遺伝子の転写レベルでの検査により確認することができ、あるいは、がん患者から無細胞血中循環腫瘍DNA(ctDNA)を採取し、次世代シークエンス(NGS)等の方法を用いた検査により確認することもできる。
【0166】
本発明の治療剤及び治療方法は、哺乳動物に対して好適に使用することができるが、より好適にはヒトに対して使用することができる。
【0167】
本発明の治療剤及び治療方法の抗腫瘍効果は、例えば、原発がん由来のがん細胞に、マーカー遺伝子(例えばルシフェラーゼ遺伝子)を導入したものを被検動物の脳内に移植したモデルを作成し、本発明の治療剤又は治療方法を施すことによる延命効果や、マーカーの発光強度の推移を、任意のイメージング手法により測定することにより確認することができる。例えば、ルシフェラーゼ遺伝子を導入した細胞を移植した場合にルシフェリンを投与して発光強度を調べ、本発明の治療剤又は治療方法を施すことにより発光強度がコントロールに比べ減弱している場合、抗腫瘍効果があると認定することができる。
【0168】
また、本発明の治療剤及び治療方法の抗腫瘍効果は、転移性脳腫瘍の患者由来の生検を被検動物に移植したモデル(例えば、PDX脳移植モデル)を作成し、本発明の治療剤又は治療方法を施すことによっても確認することができ、さらに、転移性脳腫瘍の患者に本発明の治療剤を投与又は治療方法を施すことによっても確認することができる。抗腫瘍効果の測定は、例えば、CT、PET、及び/又はMRI等を用いて、本発明の治療剤又は治療方法を施す前後での腫瘍体積の変化を確認することによって行うことができる。
【0169】
また、本発明の治療剤及び治療方法の抗腫瘍効果は、臨床試験において、Response Evaluation Criteria in Solid Tumors(RECIST)評価法、WHO評価法、Macdonald評価法、体重測定、及びその他の手法により確認することができ、完全奏効(Complete response;CR)、部分奏効(Partial response;PR)、進行(Progressive disease;PD)、奏効率(Objective Response Rate;ORR)、奏効期間(Duration of response;DoR)、無憎悪生存期間(Progression-Free Survival;PFS)、全生存期間(Overall Survival;OS)等の指標により判定することができる。
【0170】
上述の方法により、本発明の治療剤及び治療方法の転移性脳腫瘍に対する抗腫瘍効果について、既存の抗がん剤に対する優位性を確認することができる。
【0171】
なお、本発明の治療剤及び治療方法は、転移性脳腫瘍に対する抗腫瘍効果のみならず、転移性脳腫瘍以外の転移性がんに対しても抗腫瘍効果を示すことができる。転移性脳腫瘍以外の転移性がんとしては、例えば、転移性骨腫瘍、転移性肺腫瘍、及び転移性肝臓がんを挙げることができ、好適には、転移性骨腫瘍を挙げることができる。転移性脳腫瘍以外の転移性がんは、転移性脳腫瘍と併発する場合もあれば、転移性脳腫瘍とは別個に発症する場合もあるが、いずれの場合においても本発明の治療剤及び治療方法は抗腫瘍効果を発揮することができる。
【0172】
本発明の治療剤及び治療方法は、がん細胞の成長を遅らせ、増殖を抑え、さらにはがん細胞を破壊することができる。これらの作用によって、がん患者において、がんによる症状からの解放や、QOLの改善を達成でき、がん患者の生命を保って治療効果が達成される。がん細胞の破壊には至らない場合であっても、がん細胞の増殖の抑制やコントロールによってがん患者においてより高いQOLを達成しつつより長期の生存を達成させることができる。
【0173】
本発明の治療剤は、患者に対しては全身療法として適用する他、がん組織に局所的に適用して治療効果を期待することができる。
【0174】
本発明の治療剤は、1種以上の薬学的に適合性の成分を含む医薬組成物として投与され得る。薬学的に適合性の成分は、本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲートの投与量や投与濃度等に応じて、この分野において通常使用される製剤添加物その他から適宜選択して適用することができる。例えば、本発明の治療剤は、ヒスチジン緩衝剤等の緩衝剤、スクロース又はトレハロース等の賦形剤、並びにポリソルベート80又は20等の界面活性剤を含む医薬組成物(以下、「本発明の医薬組成物」という。)として投与され得る。本発明の医薬組成物は、好適には、注射剤として使用することができ、より好適には、水性注射剤又は凍結乾燥注射剤として使用することができ、更により好適には、凍結乾燥注射剤として使用することができる。
【0175】
本発明の医薬組成物が水性注射剤である場合、好適には、適切な希釈液で希釈した後、静脈内に点滴投与することができる。希釈液としては、ブドウ糖溶液や、生理食塩液、等を挙げることができ、好適には、ブドウ糖溶液を挙げることができ、より好適には5%ブドウ糖溶液を挙げることができる。
【0176】
本発明の医薬組成物が凍結乾燥注射剤である場合、好適には、注射用水により溶解した後、必要量を適切な希釈液で希釈した後、静脈内に点滴投与することができる。希釈液としては、ブドウ糖溶液や、生理食塩液、等を挙げることができ、好適には、ブドウ糖溶液を挙げることができ、より好適には5%ブドウ糖溶液を挙げることができる。
【0177】
本発明の医薬組成物を投与するために使用され得る導入経路としては、例えば、静脈内、皮内、皮下、筋肉内、及び腹腔内の経路を挙げることができ、好適には、静脈内の経路を挙げることができる。また、本発明の医薬組成物は、脳実質、軟膜、又はくも膜への直接注入によって投与することもできる。
【0178】
本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲートは、ヒトに対して、1~180日間に1回の間隔で投与することができ、好適には、1週、2週、3週、又は4週に1回の間隔で投与することができ、さらにより好適には、3週に1回の間隔で投与することができる。また、本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲートは、1回あたり約0.001~100mg/kgの投与量で投与することができ、好適には、1回あたり0.8~12.4mg/kgの投与量で投与することができる。本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲートが抗ER2抗体-薬物コンジュゲートである場合、好適には、1回あたり、0.8mg/kg、1.6mg/kg、3.2mg/kg、5.4mg/kg、6.4mg/kg、7.4mg/kg、又は8mg/kgの投与量を3週に1回の間隔で投与することができ、より好適には、1回あたり5.4、6.4、又は7.4mg/kgの投与量を3週に1回の間隔で投与することができ、更により好適には、1回あたり5.4mg/kg又は6.4mg/kgの投与量を3週に1回の間隔で投与することができる。本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲートが抗HER3抗体-薬物コンジュゲートである場合、好適には、1回あたり、1.6mg/kg、3.2mg/kg、4.8mg/kg、5.6mg/kg、6.4mg/kg、8.0mg/kg、9.6mg/kg、又は12.8mg/kgの投与量を3週に1回の間隔で投与することができ、より好適には、1回あたり、4.8mg/kg、5.6mg/kg、又は6.4mg/kgの投与量を3週に1回の間隔で投与することができる。本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲートが抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートである場合、好適には、1回あたり、0.27mg/kg、0.5mg/kg、1.0mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg、6.0mg/kg、又は8.0mg/kgの投与量を3週に1回の間隔で投与することができ、より好適には、1回あたり、4.0mg/kg、6.0mg/kg、又は8.0mg/kgの投与量を3週に1回の間隔で投与することができる。
【0179】
本発明の治療剤は、本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲート以外のがん治療剤と併用して投与することもでき、これによって抗腫瘍効果を増強させることができる。この様な目的で使用される他のがん治療剤は、本発明の治療剤と同時に、別々に、或は連続して個体に投与されてもよいし、それぞれの投与間隔を変えて投与されてもよい。この様ながん治療剤としては、抗腫瘍活性を有する薬剤であれば限定されることはないが、例えば、イリノテカン(Irinotecan、CPT-11)、シスプラチン(Cisplatin)、カルボプラチン(Carboplatin)、オキサリプラチン(Oxaliplatin)、フルオロウラシル(Fluorouracil、5-FU)、ゲムシタビン(Gemcitabine)、カペシタビン(Capecitabine)、パクリタキセル(Paclitaxel)、ドセタキセル(Docetaxel)、ドキソルビシン(Doxorubicin)、エピルビシン(Epirubicin)、シクロフォスファミド(Cyclophosphamide)、マイトマイシンC(Mitomycin C)、テガフール(Tegafur)・ギメラシル(Gimeracil)・オテラシル(Oteracil)配合剤、セツキシマブ(Cetuximab)、パニツムマブ(Panitumumab)、ベバシズマブ(Bevacizumab)、ラムシルマブ(Ramucirumab)、レゴラフェニブ(Regorafenib)、トリフルリジン(Trifluridine)・チピラシル(Tipiracil)配合剤、ゲフィチニブ(Gefitinib)、エルロチニブ(Erlotinib)、アファチニブ(Afatinib)、メトトレキサート(Methotrexate)、ペメトレキセド(Pemetrexed)、タモキシフェン(Tamoxifen)、トレミフェン(Toremifene)、フルベストラント(Fulvestrant)、リュープロレリン(Leuprorelin)、ゴセレリン(Goserelin)、レトロゾール(Letrozole)、アナストロゾール(Anastrozole)、プロゲステロン製剤(Progesterone formulation)、トラスツズマブエムタンシン(Trastuzumab emtansine)、トラスツズマブ(Trastuzumab)、ペルツズマブ(Pertuzumab)、及びラパチニブ(Lapatinib)からなる群より選択される少なくとも一つを挙げることができる。
【0180】
本発明の治療剤は、放射線療法と組み合わせて使用することもできる。例えば、がん患者は、本発明の治療剤による治療を受ける前及び/又は後、あるいは同時に放射線療法を受ける。放射線療法の方法としては、例えば、全脳照射(Whole brain radiation therapy;WBRT)や、定位放射線照射(Stereotactic irradiation;STI)、定位手術的照射(Stereotactic radiosurgery;SRS)を挙げることができる。
【0181】
本発明の治療剤は、外科手術と組み合わせた補助化学療法として使用することもできる。外科手術は、例えば、脳腫瘍の全部又は一部を物理的に取り除くことにより行われる。本発明の治療剤は外科手術の前に脳腫瘍の大きさを減じさせる目的で投与されてもよい(術前補助化学療法、又はネオアジュバント療法という)し、外科手術後に、脳腫瘍の再発を防ぐ目的で投与されてもよい(術後補助化学療法、又はアジュバント療法という)。
【実施例
【0182】
以下に示す例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、これらはいかなる意味においても限定的に解釈されるものではない。
【0183】
実施例1:抗体-薬物コンジュゲートの製造
国際公開第2015/115091号に記載の製造方法に従って、ヒト化抗HER2抗体(配列番号1においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体)を用いて、
【0184】
【化22】
【0185】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗HER2抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗体-薬物コンジュゲート(以下、「抗体-薬物コンジュゲート(1)」と称する)を製造した。抗体-薬物コンジュゲート(1)のDARは7.8である。
【0186】
実施例2:延命試験
マウス:5-6週齢の雌BALB/c ヌードマウス(日本チャールス・リバー社)を実験に供した。
【0187】
抗体-薬物コンジュゲート(1)はABS buffer (10mM酢酸緩衝液 (pH5.5), 5%ソルビトール)で希釈し、10mL/kgの液量を尾静脈内投与した。
【0188】
川崎医科大学・紅林淳一先生(British Journal of Cancer, (1999) 79 (5/6). 707-717)より入手したヒト乳がん株であるKPL-4細胞にルシフェラーゼ遺伝子を導入したKPL-4-Lucを用いた。KPL-4-Lucは生理食塩水に懸濁し、1×10cellsを雌ヌードマウスに脳内移植し、移植7日後に無作為に群分けを実施した(Day0)。抗体-薬物コンジュゲート(1)はDay0と21に10mg/kgの用量で尾静脈内投与した。コントロール群には溶媒を投与した。各群のマウス匹数は5匹とし、Day28まで生存の有無を観測した。動物倫理の観点から30%以上の体重減少や異常行動(旋回運動、摂食・飲水障害など)が認められた場合は安楽殺した。また、KPL-4-Lucのルシフェラーゼ活性を指標に腫瘍の局在及び腫瘍量を確認するため、Day14、21、および28に、各マウスにルシフェリンを腹腔内投与し、In Vivo Imaging System(IVIS)によって頭部の発光を測定した。サテライトに溶媒投与群(2匹)も設定し、Day14にマウス頭部のホルマリン固定パラフィン包埋切片を作製し、ヘマトキシリン・エオジン染色を実施した。
【0189】
結果を図9~11に示す。コントロール群はDay14から死亡が認められ、Day26までに全例死亡した。それに対し、抗体-薬物コンジュゲート(1)投与群はDay28まで全例生存した(図9)。KPL-4-Lucによる発光において、抗体-薬物コンジュゲート(1)投与群のマウスはDay21まで腫瘍の増殖が認められたが、2回目投与1週間後のDay28では発光の減弱が認められ、脳内の腫瘍に対して抗体-薬物コンジュゲート(1)が有効性を示すことが示唆された(図10)。Day14の脳の病理像において、2/2例で嗅球周囲、鼻甲介、大脳実質、脳底部、脳室内、及び小脳周囲に腫瘍塊が認められた(図11)。
【0190】
以上の結果から、抗体-薬物コンジュゲート(1)は転移性脳腫瘍に対して有効性を示し、延命効果を示すことが示唆された。
【配列表フリーテキスト】
【0191】
配列番号1:抗HER2抗体重鎖のアミノ酸配列
配列番号2:抗HER2抗体軽鎖のアミノ酸配列
配列番号3:抗HER3抗体重鎖のアミノ酸配列
配列番号4:抗HER3抗体軽鎖のアミノ酸配列
配列番号5:抗TROP2抗体重鎖のアミノ酸配列
配列番号6:抗TROP2抗体軽鎖のアミノ酸配列
配列番号7:抗B7-H3抗体重鎖のアミノ酸配列
配列番号8:抗B7-H3抗体軽鎖のアミノ酸配列
配列番号9:抗GPR20抗体重鎖のアミノ酸配列
配列番号10:抗GPR20抗体軽鎖のアミノ酸配列
配列番号11:抗CDH6抗体重鎖のアミノ酸配列
配列番号12:抗CDH6抗体軽鎖のアミノ酸配列
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【配列表】
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