(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】多層セラミックコンデンサにおける電極材料としての使用のための金属粉末並びにその製造方法及び使用方法
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20240416BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20240416BHJP
B22F 9/12 20060101ALI20240416BHJP
C22C 19/03 20060101ALI20240416BHJP
H01B 1/00 20060101ALI20240416BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
H01G4/30 516
H01G4/30 201D
H01G4/30 311D
H01G4/30 201C
H01G4/30 513
B22F1/00 M
B22F9/12 Z
C22C19/03 M
H01B1/00 D
H01B1/22 Z
(21)【出願番号】P 2020541565
(86)(22)【出願日】2019-01-30
(86)【国際出願番号】 CA2019050115
(87)【国際公開番号】W WO2019148277
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2022-01-26
(32)【優先日】2018-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503389611
【氏名又は名称】テクナ・プラズマ・システムズ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジアイン・グオ
(72)【発明者】
【氏名】エリック・ブシャール
(72)【発明者】
【氏名】リシャール・ドルベック
【審査官】清水 稔
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-024239(JP,A)
【文献】特開2017-210641(JP,A)
【文献】特開2011-214144(JP,A)
【文献】国際公開第2017/056741(WO,A1)
【文献】特開2011-195888(JP,A)
【文献】特開2017-025400(JP,A)
【文献】特開2013-224458(JP,A)
【文献】特開平05-266991(JP,A)
【文献】国際公開第2008/099618(WO,A1)
【文献】Iryna Dulina, Tetyana Lobunets, Leonid Klochkov & Andrey Ragulya,Obtaining of Ni/NiO nanopowder from aqua solutions of Ni(CH3COO)2 ammonia complexes,Nanoscale Research Letters,米国,2015年03月29日,volume 10, Article number: 156,p.1-17
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
B22F 1/00
B22F 1/16
B22F 9/12
C22C 19/03
H01B 1/00
H01B 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層セラミックコンデンサ(MLCC)の電極層における使用のための組成物であって、1000ppm未満の炭素含有量を有し、80nm以下のメジアン径(D50)と150nm以下のD90とを有する金属ベースの球状粒子を含
み、
前記粒子は20nm未満のサイズを有する粒子を含まない、組成物。
【請求項2】
前記粒子が250nm以下のD99を有する、請求項1に記載のMLCCの電極層における使用のための組成物。
【請求項3】
前記粒子が230nm以下のD99を有する、請求項1又は2に記載のMLCCの電極層における使用のための組成物。
【請求項4】
前記メジアン径(D50)は50nm以下である、請求項1~
3のいずれか一項に記載のMLCCの電極層における使用のための組成物。
【請求項5】
0.1wt.%~5wt.%の酸素含有量を更に含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載のMLCCの電極層における使用のための組成物。
【請求項6】
前記金属ベースの粒子中の金属が、銀、銅、鉛、パラジウム、白金、金、コバルト、鉄、カドミウム、ジルコニウム、モリブデン、ロジウム、ルテニウム、タンタル、チタン、タングステン、ジルコニウム、ニッケル、ニオブ、及びそれらの合金から選択される、請求項1~
5のいずれか一項に記載のMLCCの電極層における使用のための組成物。
【請求項7】
前記金属ベースの粒子中の金属がニッケルである、請求項1~
5のいずれか一項に記載のMLCCの電極層における使用のための組成物。
【請求項8】
組成物の焼結温度を上昇させるよう作用するドープ剤で前記金属ベースの球状粒子がドープされており、前記ドープ剤が前記粒子内に分布している、請求項1~
7のいずれか一項に記載のMLCCの電極層における使用のための組成物。
【請求項9】
前記ドープ剤が硫黄である、請求項1~
8のいずれか一項に記載のMLCCの電極層における使用のための組成物。
【請求項10】
0.01wt.%~
0.5wt.%の前記ドープ剤で前記粒子がドープされている、請求項
8又は
9に記載のMLCCの電極層における使用のための組成物。
【請求項11】
誘電体層及び電極層が交互に並ぶスタックを形成するように配置された複数の誘電体層及び電極層を含む多層セラミックコンデンサ(MLCC)であって、1つ又は複数の電極層が80nm以下のメジアン径(D50)と150nm以下のD90とを有する金属ベースの粒子を含む組成物を含み、MLCCの取付け面に対して垂直方向の前記スタックの横断面で、電極層によって分離された2つの隣接する誘電体層が500nm未満の平均距離dを有
し、
前記粒子は20nm未満のサイズを有する粒子を含まない、MLCC。
【請求項12】
前記1つ又は複数の電極層が、前記スタックに対して垂直方向に積み重ねられた3~5個の粒子を有する、請求項
11に記載のMLCC。
【請求項13】
前記金属ベースの粒子が250nm以下のD99を有する、請求項
11又は
12に記載のMLCC。
【請求項14】
前記金属ベースの粒子が230nm以下のD99を有する、請求項
11又は
12に記載のMLCC。
【請求項15】
前記金属ベースの粒子中の金属が、銀、銅、鉛、パラジウム、白金、金、コバルト、鉄、カドミウム、ジルコニウム、モリブデン、ロジウム、ルテニウム、タンタル、チタン、タングステン、ジルコニウム、ニオブ、ニッケル、及びそれらの合金から選択される、請求項
11~
14のいずれか一項に記載のMLCC。
【請求項16】
前記金属ベースの粒子中の金属がニッケルである、請求項
11~
14のいずれか一項に記載のMLCC。
【請求項17】
組成物の焼結温度を上昇させるよう作用するドープ剤で前記金属ベースの球状粒子がドープされており、前記ドープ剤が前記粒子内に分布している、請求項
11~
16のいずれか一項に記載のMLCC。
【請求項18】
前記ドープ剤が硫黄である、請求項
17に記載のMLCC。
【請求項19】
多層セラミックコンデンサ(MLCC
)における使用のための組成物を製造するための方法であって、
(a)マイクロメートルサイズを含む粒径分布(PSD)を有する金属ベースの前駆体粒子を提供する工程と、
(b)プラズマトーチで前記金属ベースの前駆体粒子を気化して金属ベースの蒸気を生成する工程と、
(c)前記金属ベースの蒸気を冷却する工程であって、冷却によって前記金属ベースの蒸気が凝集して、金属ベースの粒子が生成される工程と、
(d)前記金属ベースの粒子を分級して前記組成物を得る工程であって、前記組成物が80nm以下のメジアン径(D50)と150nm以下のD90とを有する金属ベースの球状ナノ粒子を含む工程と、を含
み、
前記組成物は、1000ppm未満の炭素含有量を有し、80nm以下のメジアン径(D50)と150nm以下のD90とを有する金属ベースの球状粒子を含む、方法。
【請求項20】
金属ベースの前駆体マイクロ粒子が1μmから200μmのPSDを有する、請求項
19に記載の方法。
【請求項21】
金属ベースの前駆体マイクロ粒子が1μmから25μmの範囲の平均メジアン径(D50)を有する、請求項
19に記載の方法。
【請求項22】
工程dで得られた前記金属ベースの球状ナノ粒子が20nmから350nmのPSDを有する、請求項
19に記載の方法。
【請求項23】
工程dで得られた前記金属ベースの球状ナノ粒子が250nm以下のD99を有する、請求項
19に記載の方法。
【請求項24】
工程dで得られた前記金属ベースの球状ナノ粒子が230nm以下のD99を有する、請求項
19に記載の方法。
【請求項25】
工程dが、20nm未満のサイズを有する粒子を廃棄する工程を更に含む、請求項
19に記載の方法。
【請求項26】
前記金属ベースの球状ナノ粒子が、50nm以下のメジアン径(D50)を有する、請求項
19~
25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記金属ベースの球状ナノ粒子が、80nm以下のメジアン径(D50)を有する、請求項
19~
25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記金属ベースの球状ナノ粒子が、1000ppm未満の炭素含有量を有する、請求項
19~
27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記金属ベースの前駆体粒子中の金属が、銀、銅、鉛、パラジウム、白金、ニッケル、金、コバルト、鉄、カドミウム、ジルコニウム、モリブデン、ロジウム、ルテニウム、タンタル、チタン、タングステン、ジルコニウム、ニオブ、ニッケル、及びそれらの合金から選択される、請求項
19~
28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記金属ベースの前駆体粒子中の金属がニッケルである、請求項
19~
28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記プラズマトーチが、誘導結合型プラズマトーチ又は直流(DC)プラズマトーチである、請求項
19~
30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記金属ベースの球状ナノ粒子中の0.1wt.%~5wt.%の酸素含有量を得るために、プラズマトーチに酸素ガスを組み込む工程を更に含む、請求項
19~
31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記金属ベースの前駆体粒子の供給速度を制御して、前記プラズマトーチのプラズマ反応区域内への前記金属ベースの前駆体粒子の滞留時間を最適化する工程を更に含む、請求項
19~
32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記供給速度が10~35g/分である、請求項
33に記載の方法。
【請求項35】
前記金属ベースの前駆体粒子が、粒子内に分布したドープ剤でドープされている、請求項
19~
34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記ドープ剤が硫黄である、請求項
35に記載の方法。
【請求項37】
前記金属ベースの前駆体粒子が、
(i)ドープ剤源を金属源と接触させ、加熱して溶融混合物を得る工程と、
(ii)前記溶融混合物を霧化する工程と、
(iii)霧化された混合物を冷却して金属ベースの前駆体粒子を得る工程であって、前記金属ベースの前駆体粒子は、マイクロメートルサイズを含む粒径分布(PSD)を有し、かつ粒子内に分布したドープ剤を有する工程と、を含む方法によって得られる、請求項
35又は
36に記載の方法。
【請求項38】
前記霧化する工程が、ガス霧化で実行される、請求項
37に記載の方法。
【請求項39】
1μmから25μmの範囲の平均メジアン径(D50)を有する金属ベースの前駆体マイクロ粒子を得るために、前記金属ベースの前駆体マイクロ粒子を分級又はふるい分けする工程を更に含む、請求項
37又は
38に記載の方法。
【請求項40】
0.01wt.%~
0.5wt.%の前記ドープ剤で前記金属ベースの前駆体粒子がドープされている、請求項
37~
39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
多層セラミックコンデンサ(MLCC
)における使用のための組成物を製造するためのシステムであって、
(a)金属ベースの蒸気を生成するために金属ベースの前駆体粒子を受け取って気化するためのプラズマトーチユニットであって、前記金属ベースの前駆体粒子は、マイクロメートルサイズを含む粒径分布(PSD)を有する、プラズマトーチユニットと、
(b)前記金属ベースの蒸気を受け取って冷却するように構成された、前記プラズマトーチユニットと流体連通した冷却ユニットであって、冷却によって前記金属ベースの蒸気が凝集して、金属ベースの粒子が生成される、冷却ユニットと、
(c)前記組成物を得るために前記金属ベースの粒子を分級するための分級ユニットであって、80nm以下のメジアン径(D50)と150nm以下のD90とを有する金属ベースの球状ナノ粒子を得るために前記金属ベースの粒子を分級するように構成された、分級ユニットと、を含
み、
前記組成物は、1000ppm未満の炭素含有量を有し、80nm以下のメジアン径(D50)と150nm以下のD90とを有する金属ベースの球状粒子を含む、システム。
【請求項42】
前記分級ユニットは、250nm以下のD99を有する金属ベースの球状ナノ粒子を得るために前記金属ベースの粒子を分級するように構成されている、請求項
41に記載のシステム。
【請求項43】
前記分級ユニットは、230nm以下のD99を有する金属ベースの球状ナノ粒子を得るために前記金属ベースの粒子を分級するように構成されている、請求項
41に記載のシステム。
【請求項44】
前記メジアン径(D50)が50nm以下である、請求項
41に記載のシステム。
【請求項45】
前記分級ユニットは、20nm未満のサイズを有する粒子を廃棄するように構成されている、請求項
41に記載のシステム。
【請求項46】
前記プラズマトーチが、誘導結合型プラズマトーチ又は直流(DC)プラズマトーチである、請求項
41~
45のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項47】
前記システムが前記プラズマトーチユニットにグラファイト含有要素を含まない、請求項
41~
46のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年1月30日に出願された米国仮特許出願第62/623,708号の利益を主張する。上述の文献の内容は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、全般に、多層セラミックコンデンサにおける電極材料としての使用のための金属粉末、それを含む多層セラミックコンデンサ並びにそのような粉末及びコンデンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、携帯電話及びパーソナルコンピュータ等の携帯電子機器では、小型化、高性能化、及び低消費電力化に向かう傾向がますます顕著になってきている。これらの複数の機器に使用されるコンデンサ、インダクタ及び抵抗器等の受動部品のチップへの集積及び小型化もまた促進されている。従来、ディスク型及び円筒型のコンデンサ等の単層セラミックコンデンサが主に使用されてきた。しかしながら、小型、高い信頼性、及び優れた高周波特性を伴う高静電容量というその性質のために、多層セラミックコンデンサ(MLCC)の使用が今日では普及している。MLCCの出荷量は、携帯電話及びコンピュータの生産の急速な増加に起因して毎年増大しており、将来、需要は更に増加するであろう。
【0004】
従来のMLCCは、銅をその外部電極用に、銀又はパラジウム等の貴金属をその内部電極用に、及び誘電体として作用するセラミックを使用する。過去数年間にわたり、ニッケル電極がパラジウム保有電極に取って代わった。これにより、比較的に高価であるパラジウムへの依存が制限され、MLCC製造業者が、かなり高い静電容量範囲のMLCCを費用効率良く生産し、タンタルコンデンサ及び他の電解コンデンサの製造業者と競い合うことが可能となった。
【0005】
電極の製造に使用される卑金属は、典型的にはペースト又は粉末で提供される。卑金属は、一般に焼結されてMLCCの内部電極を形成することが必要である。しかしながら、比較的に小型のMLCCを生産するため、MLCCの静電容量を比較的に正確な手法で制御するため、及びMLCCの製造を容易にするために、卑金属は、比較的に低濃度の不純物を有する、比較的に小サイズの粒子で提供される必要があり、卑金属のサイズは比較的に厳密に制御される必要がある。
【0006】
JP2004-292950は、平均粒子径が0.05μm~0.3μmの範囲であるニッケルベースの微粉末を提示している。しかしながら、JP2004-292950に記載されている製造方法は、塩化ニッケル蒸気の気相還元を利用しており、これにより塩素汚染された金属粉末がもたらされる。塩素を除去するために、水ですすぐことが必要であり、これにより粒子凝集が増大され、より大きい粒子メジアン径に偏った粒径分布がもたらされる。これが、JP2004-292950で得られた、平均粒子径の0.6倍以下の粒子径を有する粒子の数が10%以下であり、1μm以上のサイズを有する粒子が721ppmもの高さでありうる理由である。
【0007】
JP2001-073007は、0.1μm~1.0μmの範囲の平均粒子径を有し、且つ2μm以上の粒子径を有する700ppmの粗大粒子を有するニッケルベースの微粉末を提示している。JP2004-292950における状況と同様に、この文献は、塩化ニッケル蒸気の気相還元を利用しており、これにより塩素汚染された金属粉末がもたらされる。塩素を除去するために、水ですすぐことが必要であり、これにより粒子凝集が増大され、また、より大きい粒子メジアン径に偏った粒径分布がもたらされる。
【0008】
これらの文献で提示されている金属粉末及びその製造方法は、したがって、MLCCの製造時に欠陥製品発生の可能性を増大させる、より大きい粒径が存在するため、満足できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】JP2004-292950
【文献】JP2001-073007
【文献】米国特許第9,718,131号
【文献】米国特許第5,707,419号
【文献】国際公開第2011/054113号パンフレット
【文献】国際公開第2017/011900号パンフレット
【文献】国際公開第2017/070779号パンフレット
【文献】国際公開第2017/177315号パンフレット
【文献】国際公開第2016/191854号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、より良好に制御されたより小さい粒径分布を有し、産業規模で効率的に且つ費用効率良く生産することができる多層セラミックコンデンサにおける使用のための金属粉末への当分野における要求が、依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本概要は、以下の詳細な説明に更に記載される、簡略化形式における概念の選択を導入するために提供される。本概要は、特許請求される主題の主要な態様又は本質的な態様を特定することを意図するものではない。
【0012】
本明細書において具体化され及び広範に記載されるように、本開示は、多層セラミックコンデンサ(MLCC)の電極層における使用のための微粒子形態の組成物であって、組成物の焼結温度を上昇させるよう作用するドープ剤がドープされた金属ベースの球状粒子を含み、且つ1000ppm未満の炭素含有量を含み、粒子が120nm以下のメジアン径(D50)を有する、組成物に関する。
【0013】
本明細書において具体化され及び広範に記載されるように、本開示は、多層セラミックコンデンサ(MLCC)の電極層における使用のための微粒子形態の組成物であって、組成物の焼結温度を上昇させるよう作用するドープ剤がドープされた金属ベースの球状粒子を含み、且つ1000ppm未満の炭素含有量を含み、粒子が、20nm~350nmの粒径分布(PSD)を有する、組成物に関する。
【0014】
本明細書において具体化され及び広範に記載されるように、本開示は、多層セラミックコンデンサ(MLCC)の電極層における使用のための微粒子形態の組成物であって、組成物の焼結温度を上昇させるよう作用するドープ剤がドープされた金属ベースの球状粒子を含み、且つ1000ppm未満の炭素含有量を含み、粒子が、20nm~300nmの粒径分布(PSD)を有し、350nmより大きいサイズを有する粒子は1ppm未満に相当する、組成物に関する。
【0015】
本明細書において具体化され及び広範に記載されるように、本開示は、多層セラミックコンデンサ(MLCC)の電極層における使用のための微粒子形態の組成物であって、組成物の焼結温度を上昇させるよう作用するドープ剤がドープされた金属ベースの球状粒子を含み、且つ1000ppm未満の炭素含有量を含み、粒子が250nm以下のD99を有する、組成物に関する。
【0016】
本明細書において具体化され及び広範に記載されるように、本開示は、誘電体層及び電極層が交互に並ぶスタックを形成するように配置された複数の誘電体層及び電極層を含む多層セラミックコンデンサ(MLCC)であって、1つ又は複数の電極層が、本明細書に記載される組成物を含む前駆体層から形成されている、MLCCに関する。
【0017】
本明細書において具体化され及び広範に記載されるように、本開示は、多層セラミックコンデンサ(MLCC)の電極層における使用のための微粒子形態の組成物を得る方法であって、組成物の焼結温度を上昇させるよう作用するドープ剤がドープされた金属ベースの粒子を提供する工程と、金属ベースの粒子を気化させて蒸気形態の金属及びドープ剤を得る工程と、MLCCにおける使用のための微粒子形態の組成物を得るために蒸気形態の金属及びドープ剤を冷却する工程であり、組成物が1000ppm未満の炭素含有量を含み、粒子が120nm以下のメジアン径(D50)を有する、工程とを含む、方法に関する。
【0018】
本明細書において具体化され及び広範に記載されるように、本開示は、多層セラミックコンデンサ(MLCC)の電極層における使用のための微粒子形態の組成物を得る方法であって、組成物の焼結温度を上昇させるよう作用するドープ剤がドープされた金属ベースの粒子を提供する工程と、金属ベースの粒子を気化させて蒸気形態の金属及びドープ剤を得る工程と、MLCCにおける使用のための微粒子形態の組成物を得るために蒸気形態の金属及びドープ剤を冷却する工程であり、組成物が1000ppm未満の炭素含有量を含み、粒子が20nm~350nmの粒径分布(PSD)及び200nm以下のD90を有する、工程とを含む、方法に関する。
【0019】
本明細書において具体化され及び広範に記載されるように、本開示は、多層セラミックコンデンサ(MLCC)の電極層における使用のための微粒子形態の組成物を得る方法であって、組成物の焼結温度を上昇させるよう作用するドープ剤がドープされた金属ベースの粒子を提供する工程と、金属ベースの粒子を気化させて蒸気形態の金属及びドープ剤を得る工程と、MLCCにおける使用のための微粒子形態の組成物を得るために蒸気形態の金属及びドープ剤を冷却する工程であり、組成物が20nm~300nmの粒径分布(PSD)を有する粒子を含み、350nmより大きいサイズを有する粒子が1ppm未満に相当する、工程とを含む、方法に関する。
【0020】
本明細書において具体化され及び広範に記載されるように、本開示は、多層セラミックコンデンサ(MLCC)の電極層における使用のための微粒子形態の組成物を得る方法であって、組成物の焼結温度を上昇させるよう作用するドープ剤がドープされた金属ベースの前駆体粒子を提供する工程と、金属ベースの前駆体粒子を気化させて蒸気形態の金属及びドープ剤を得る工程と、MLCCにおける使用のための微粒子形態の組成物を得るために蒸気形態の金属及びドープ剤を冷却する工程であり、組成物が1000ppm未満の炭素含有量、及び250nm以下のD99を有する粒子を含む、工程とを含む、方法に関する。
【0021】
本明細書において具体化され及び広範に記載されるように、本開示は、本明細書に記載されるドープ剤がドープされた金属ベースの前駆体粒子を提供する方法であって、ドープ剤を溶融金属と混合して溶融金属-ドープ剤混合物を得る工程と、混合物を霧化して、ドープ剤がドープされた金属ベースの前駆体粒子を得る工程とを含む、方法に関する。
【0022】
本開示に記載され及び相互排他的でない例示的な実施形態の全ての特徴は、互いに組み合わせることができる。一実施形態の要素は、更に言及することなく他の実施形態で利用することができる。本技術の他の態様及び特徴は、添付の図面と関連して特定の実施形態の以下の記載を概観する際に、当業者には明白となるであろう。
【0023】
特定の実施形態の詳細な説明を、添付の図面を参照して本明細書において以下に示す。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本開示の一実施形態に従う、多層セラミックコンデンサ(MLCC)における使用のための組成物を製造する方法を例示するフローチャートである。
【
図2】本開示の一実施形態に従う、
図1の方法における使用のための金属ベースの前駆体粒子を得る方法を例示するフローチャートである。
【
図3】本開示の一実施形態に従う、硫黄がドープされたニッケルベースの粒子を得るための、
図1及び
図2の方法を実行する方法を例示するフローチャートである。
【
図4】
図1の方法で得られたニッケルベースの粒子を含む組成物の走査電子顕微鏡画像である。
【
図5A】分級前の、
図1の方法で得られたニッケルベースの粒子を含む組成物の走査電子顕微鏡(SEM)画像である。
【
図5B】分級前の、
図1の方法で得られたニッケルベースの粒子を含む組成物の走査電子顕微鏡(SEM)画像である。
【
図5C】分級前の、
図1の方法で得られたニッケルベースの粒子を含む組成物の走査電子顕微鏡(SEM)画像である。
【
図6】本開示の一実施形態に従う、MLCCの模式図である。
【
図7】本開示の一実施形態に従う、
図6のMLCCの横断面図である。
【
図8】本開示の一実施形態に従う、焼結プロセス前の、内部電極層及び誘電体層を含む、
図6のMLCCの横断面の模式図である。
【
図9A】本開示の一実施形態に従う、焼結プロセス後の、
図8のMLCCの横断面の模式図である。
【
図9B】本開示の一実施形態に従う、
図9AのMLCCの横断面から得ることができる典型的な走査電子顕微鏡(SEM)画像の模式図である。
【
図10】本開示の一実施形態に従う、電極層が微細な不純物粒子を含む、
図8のMLCCの横断面の模式図である。
【
図11】本開示の一実施形態に従う、焼結プロセス後の、
図10のMLCCの横断面の模式図である。
【
図12】本開示の一実施形態に従う、焼結プロセス後の、望ましくない化合物を含む、
図10のMLCCの横断面の模式図である。
【
図13A】本開示の一実施形態に従う、焼結プロセス後の、亀裂の入ったMLCCを含む、
図8のMLCCの横断面の第1の模式図である。
【
図13B】本開示の一実施形態に従う、焼結プロセス後の、亀裂の入ったMLCCを含む、
図8のMLCCの横断面の第2の模式図である。
【
図14】本開示の一実施形態に従う、その表面に酸化層を示す金属ベースの粒子の典型的な走査電子顕微鏡(SEM)画像の模式図である。
【
図15】本開示の一実施形態に従う、ドープ剤を用いないニッケルベースの粒子と比較した、硫黄がドープされたニッケルベースの粒子の焼結挙動を例示するグラフである。
【
図16A】本開示の一実施形態に従う、微細サイズを保持するように分級された、硫黄がドープされたニッケルベースの前駆体粒子を含む組成物の走査電子顕微鏡(SEM)画像である。
【
図16B】本開示の一実施形態に従う、粗大サイズを保持するように分級された、硫黄がドープされたニッケルベースの前駆体粒子を含む組成物の走査電子顕微鏡(SEM)画像である。
【
図17】本開示の一実施形態に従う、硫黄がドープされ且つ80nmのD50を得るように分級された、ニッケルベースの粒子の粒径分布を例示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図面において、例示的な実施形態は、一例として示されている。記載及び図面は、特定の実施形態を例示することのみを目的としており、理解の一助となることが明らかに理解されるであろう。それらは、本発明の限定の定義であることを意図するものではない。
【0026】
本技術を、より詳細に以下で説明する。本記載は、本技術が実行されうる全ての異なる手段、又は本技術に加えられうる全ての特徴の詳細な一覧であることを意図するものではない。例えば、一実施形態に関して例示された特徴は、他の実施形態に組み込まれてよく、特定の実施形態に関して例示された特徴は、その実施形態から削除されてよい。加えて、本明細書に提示される様々な実施形態に対する多数の変形形態及び追加形態は、本開示を考慮すると当業者には明白であり、それらの変形形態及び追加形態は、本技術から逸脱するものではない。したがって、以下の記載は、本技術のいくつかの特定の実施形態を例示することを意図し、それらの置換形態、組み合わせ形態及び変形形態全てを包括的に明記することを意図するものではない。
【0027】
本発明者らは、広範囲にわたる研究開発作業を通して、多層セラミックコンデンサ(MLCC)における電極材料としての使用のための微粒子形態の組成物であって、産業の増大する需要により好適なナノメートルサイズを有する粒子を含む、組成物、及びその製造方法を開発及び設計した。実際、MLCCの静電容量は、積層された層の数及び誘電体層の厚さに依存するため、確実にMLCCを可能な限り薄くすることが有利である。これが、誘電体層間に配置された電極層の製造において、本明細書に記載される微粒子形態の組成物を使用することが、これらの組成物がこれまで当技術分野で公知であったものより粗大粒子含有量の低減した、より小サイズの粒子を有するという点で、有利でありうるところである。
【0028】
本明細書に記載される組成物はまた、炭素等の不純物の含有量を低減させ、これは、結果としてMLCCのより良好な電気化学的性能をもたらすことができ、及び/又はMLCCの製造中の層間剥離又は亀裂を少なくすることができる。実際、典型的には、MLCCの製造中に、金属ベースの粒子の表面上の炭素は、「ベイクアウト」工程中に200℃を超える温度で除去されえて、過剰量の炭素がMLCC中に層間剥離及び亀裂を起こしうる。そのような層間剥離及び亀裂は望ましくなく、それらの存在は、典型的にはMLCCの不良を引き起こし、したがって製造生産性を低下させる。付加的に又は代替的に、炭素が金属ベースの粒子の内部に存在する時、炭素は、上述の「ベイクアウト」工程を通してでさえ、容易に除去されえず、したがってMLCC中に残る。いかなる理論にも束縛されないが、この残留炭素がまた、例えば、静電容量、DCバイアス、信頼性等に関連するような長期信頼性に関する欠陥もMLCC中に引き起こしうると考えられる。
【0029】
組成物の特徴
広範な非限定的な態様では、本開示のMLCCにおける使用のための微粒子形態の組成物は金属ベースの粒子を有し、該金属は、銀、銅、鉛、パラジウム、白金、ニッケル、金、コバルト、鉄、カドミウム、ジルコニウム、モリブデン、ロジウム、ルテニウム、タンタル、チタン、タングステン、ジルコニウム、ニオブ等、並びにその合金から選択することができる。MLCCの製造中に、これらの組成物は、粉末として(すなわち、微粒子形態)又はスラリー/ペーストとして使用することができる。そのようなスラリー/ペーストは、MLCC中に電極を作製する目的に好適な結合剤を含み、これは当技術分野で公知であり、簡潔にするために、本明細書において更には記載されない。
【0030】
一部の特定の実施形態では、本開示の金属ベースの粒子はまた、MLCCの製造中に、金属ベースの粒子の焼結温度を上昇させるよう作用するドープ剤をドープすることができる。MLCCの製造中には、典型的には焼結工程があり、電極材料及び誘電性セラミック材料が、電極材料及び誘電性セラミック材料の高密度化をもたらし且つ望ましい導電性を達成するのに十分な期間、約1500℃まで到達しうる温度まで加熱される。これらの材料が粒子を含む時、焼結工程では、隣接する粒子間の接触点において融合を起こす。典型的には、電極材料に使用される金属は、セラミック材料の焼結温度より著しく低い焼結温度を有し、その結果、少なくとも、金属ベースの粒子の焼結温度を上昇させるよう作用するトーピングの存在なしでは、それぞれの焼結開始温度に関して大きな差異があり、それは、MLCCに悪影響を及ぼし、及び/又は製造不良を増加させうる微細構造及び/又は副生成物をもたらしうる。例えば、電極材料としてニッケルベースの粒子を、及びセラミック材料としてBaTiO3を使用し、純粋なニッケルに対する焼結開始温度が約150℃であり、MLCCにおける使用のために必要とされる望ましい誘電性を得るためのBaTiO3に対する焼結開始温度が典型的には1000℃を超えている時、回避しなければならない著しい焼結開始温度の差がある。これは、MLCCの製造中に金属ベースの粒子の焼結温度を上昇させるよう作用するドープ剤の存在が有利であるという一例である。
【0031】
ドープ剤は、単一の材料又は異なる材料のブレンドであってよい。例えば、ドープ剤は、開始温度(焼結の始まり)を上昇させ、及び/又は焼結オフセット温度(焼結の終わり)を上昇させるよう作用することができる。実施形態の特定の例では、ドープ剤の量及び/又はドープ剤の性質は、金属ベースの粒子の開始温度(焼結の始まり)及び/又は焼結オフセット温度(焼結の終わり)が、セラミック材料の焼結温度範囲と十分に重なり合うように選択される。
【0032】
一部の実施形態では、ドープ剤は、金属ベースの粒子中及び/又は粒子の表面に均質に分布することができる。他の実施形態では、ドープ剤は、金属ベースの粒子中及び/又は粒子の表面に不均質に分布することができる。更に他の実施形態では、ドープ剤は、金属ベースの粒子中に均質に分布し且つ粒子の表面に不均質に分布することができる。更に他の実施形態では、ドープ剤は、金属ベースの粒子中に不均質に分布し且つ粒子の表面に均質に分布することができる。
【0033】
一部の特定の実施形態では、ドープ剤は、高融点金属である。高融点金属の例には、クロム、バナジウム、チタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、白金、ホウ素、ルテニウム、モリブデン、タングステン、ロジウム、イリジウム、オスミウム、レニウム、及びこれらの合金又はその混合物が含まれるが、これらに限定されない。一部の他の実施形態では、ドープ剤は、ニッケルの融点より高い融点を有する金属である。一部の実施形態では、高融点金属は酸化物又は塩である。
【0034】
一部の特定の実施形態では、ドープ剤は、硫黄である。
【0035】
一部の特定の実施形態では、金属ベースの粒子中のドープ剤は、0.01~0.5wt.%の硫黄含有量を含む。
【0036】
一部の特定の実施形態では、本開示の組成物は、硫黄がドープされたニッケルベースの粒子を含む。
【0037】
一部の特定の実施形態では、本開示の組成物は、炭素含有量を制御する方法に従って、組成物が1200ppm未満を含むように調製される。例えば、本開示の組成物は、1000ppm未満、900ppm未満、800ppm未満、700ppm未満、600ppm未満、500ppm未満、400ppm未満、300ppm未満、200ppm未満、又は100ppm未満の炭素含有量を含むことができる。
【0038】
一部の特定の実施形態では、本開示の組成物は、MLCCの満足できる電気化学的性能を得るために、粒子中の酸素含有量を制御する方法に従って調製される。
【0039】
本明細書に記載される金属ベースの粒子の表面上の酸化層の存在はまた、微粒子形態の組成物の分散性及び/又は流動性を良い方に変更することができる。
【0040】
一部の特定の実施形態では、本開示の組成物は、粒子中の酸素含有量を5wt.%以下に制御する方法に従って調製される。例えば、0.1wt.%~5wt.%、0.1wt.%~3.5wt.%、0.1wt.%~2.0wt.%、0.1wt.%~1.5wt.%、0.1wt.%~0.6wt.%、0.2wt.%~5wt.%、0.2wt.%~3.5wt.%、0.2wt.%~2.0wt.%、0.2wt.%~1.5wt.%、0.2wt.%~0.6wt.%の酸素含有量である。
【0041】
いかなる理論にも束縛されないが、本発明者らは、酸素含有量に対する制御が、いくつかの理由から有益でありうると考えている。例えば、金属ベースの粒子がニッケルベースの粒子である時、ニッケル電極が閾値を超えて酸化される場合、このために、MLCC製造プロセス中の体積膨張による構造欠陥の存在が引き起こされる。すなわち、NiがNiOに変化する時、単セル体積は169%増加する。しかしながら、酸素含有量が、金属ベースの粒子上に配置された表面層に主に含まれる時、それにより金属の安定性及び熱的挙動における改善がもたらされる。
【0042】
一部の特定の実施形態では、本開示の組成物は、粒子表面の少なくとも一部に酸化層を含む金属ベースの粒子を含む。一部の実施形態では、酸化層は、粒子表面を完全に覆っている。例えば、これまでに論じた主要部分又は全ての酸素含有量は、酸化層に含まれうる。一部の実施形態では、酸化層は、15nm未満の厚さを有する。例えば、酸化層は、2nm~10nm、又は2nm~5nm、例えば3nm若しくは4nm等の酸化層の厚さを有しうる。当業者は、酸化層の厚さが、金属ベース粒子の表面に沿って厚さが変化しうるという点で、平均厚さでありうることを容易に理解するであろう。したがって、厚さは、電子顕微鏡技術により測定された平均厚さ値でありうる。
【0043】
一部の実施形態では、金属ベースの粒子が硫黄がドープされたニッケルベースの粒子である時、酸化層は酸化ニッケル及び硫化ニッケルを含みうる。
【0044】
一部の特定の実施形態では、本開示の組成物は、ナノメートルサイズを有する金属ベースの粒子を含む。例えば、該組成物は、15nm~350nm(分級前)の粒径分布(PSD)又は20nm~350nm(分級後)のPSDを有する粒子を含みうる。そのようなPSDは、当技術分野で公知の方法で得られたものとは反対に、例えば、粒子はより粗大なサイズに偏ったサイズを有するのではなく、より小さいサイズに偏ったサイズを有するように厳密に制御される。そのようなサイズを得ることには、経済的利益と同様に、明らかな技術的利益があり(本明細書中でこれまでに論じてきた):製造方法から得られる微粒子形態の組成物において粗大なサイズが少ない時、廃棄材料(カットオフ(cut-off)分級値にならない材料)が少なく、したがって、収率が増加する。
【0045】
例えば、組成物は、1つ又は複数の以下の粒径の特徴を含みうる:
・ 20nm~350nm、又は20nm~300nm、又は20nm~200nmのPSD;
・ D90≦200nm、又はD90≦150nm、D90≦130nm;
・ 120nm以下のメジアン径(D50)、又は100nm以下のメジアン径(D50)、又は80nm以下のメジアン径(D50)、又は50nm以下のメジアン径(D50);
・ 350nmより大きいサイズを有する粒子は1ppm未満に相当する;
・ D99≦250nm、又はD99≦230nm;
・ 組成物の5000×の走査電子顕微鏡(SEM)画像から決定された、1μmより大きいサイズを有する3個未満の粒子、又は組成物の5000×の走査電子顕微鏡(SEM)画像から決定された、1μmより大きいサイズを有する2個未満の粒子、又は組成物の5000×の走査電子顕微鏡(SEM)画像から決定された、1μmより大きいサイズを有する1個の粒子若しくは粒子がない;
・ 組成物の5000×の走査電子顕微鏡画像において、650nmより大きいサイズを有する3個未満の粒子、又は組成物の5000×の走査電子顕微鏡(SEM)画像から決定された、1μmより大きいサイズを有する2個未満の粒子、又は組成物の5000×の走査電子顕微鏡(SEM)画像から決定された、1μmより大きいサイズを有する1個の粒子若しくは粒子がない;
・ 組成物の5000×の走査電子顕微鏡画像において、350nmより大きいサイズを有する3個未満の粒子、又は組成物の5000×の走査電子顕微鏡(SEM)画像から決定された、1μmより大きいサイズを有する2個未満の粒子、又は組成物の5000×の走査電子顕微鏡(SEM)画像から決定された、1μmより大きいサイズを有する1個の粒子若しくは粒子がない。
【0046】
SEM画像は、分析される組成物の所定の領域の画像であり、正確さ及び/又は統計学的有意性を確保するために、組成物の少なくともD50に応じて変わることが当業者には理解されるであろう。例えば、120nmのD50は、組成物の5μm当たり5μmの領域を必要としえて、一方、80nmのD50は、3μm当たり3μmの領域を必要としえて、50nmのD50は、2μm当たり2μmの領域を必要としうる。
【0047】
微粒子形態の組成物の粒径の特徴は、レーザー回折分光法、透過型電子顕微鏡、走査電子顕微鏡(SEM)等の当技術分野で周知の技術を使用して決定することができるが、これらに限定されない。そのような技術は周知であり、簡潔さのために本明細書において更には記載されない。
【0048】
多層セラミックコンデンサ(MLCC)
広範な非限定的な態様では、本明細書に記載される微粒子形態の組成物により、有利な性質を有するMLCCを製造することが可能となる。MLCCは、典型的には、誘電体層を含むセラミック本体を備える。MLCCはまた、厚さ方向に沿って積み重ねられた、少なくとも1つの誘電体層をその間に挟み、取付け面等の外部表面に対して平行である、セラミック本体内に配置された複数の内部電極層も備える。
【0049】
図6及び
図7は、本開示の実施形態に従う、複数の誘電体層274を備えるMLCC270を例示している。誘電体層274は、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO
3)ベースの粒子又はチタン酸ストロンチウム(SrTiO
3)ベースの粒子を含む組成物のような高誘電率を有するセラミック材料を含みうる。MLCC270は、複数の内部電極276を備え、各内部電極276は、セラミック材料284(
図8に示す)を含む2つの誘電体層274の間に配置されている。内部電極276は、金属ベースの粒子240を含む組成物230を使用して作製される。
図8は、焼結前の複数の粒子240を示す。
図9Aは、
図8のMLCC270を例示しているが、焼結後、組成物230の粒子240は、粒子間の接触点において融合し、
図9Bに例示する図に最も良く示されるようにもはや完全な球状ではない点まで部分的に変形している。当業者は、組成物230が、誘電体層274の表面上に広がるスラリー/ペーストの形態を取りえて、そのスラリー/ペーストは、有機溶媒及び結合樹脂等のいくつかの付加的な原料を含みうることを容易に理解するであろう。
【0050】
典型的には、MLCCの静電容量は、積層された層の数及び誘電体層の厚さに依存し、したがって、確実にMLCCを可能な限り薄くすることが有利である。これが、誘電体層間に配置された電極層の製造において、本明細書に記載される微粒子形態の組成物を使用することが、この組成物がこれまで当技術分野で公知であったものより粗大粒子含有量が低減したより小サイズの粒子を有するという点で有利でありえて、したがって、MLCCの全般的な厚さを低減することが可能となるところである。
【0051】
例えば、本開示の組成物を使用する時、例えば
図6及び
図7に示されるように、取付け面に対して垂直方向のセラミック本体の横断面7Aでは、内部電極層276により分離される2つの隣接する誘電体層274は、取付け面に対して垂直な軸290と交差するそれぞれの点の間に、800nm未満の平均距離dを有しうるMLCCを製造することができる。この距離dは、例えば500nm未満、400nm未満、300nm未満、又は100nm超の距離でありうる。この距離dを、
図9Bに示す。
【0052】
標準化MLCCを製造するために、
図9A及び
図9Bに例示される各内部電極276は、内部電極276が比較的に均一な厚さを有するようにするために、ある特定の平均数の粒子240を必要として、これは可能な限り薄いことが有利である。内部電極276の粒子240の平均数は、いくつかの手段で評価されうる。例えば、
図6に示されるように、軸7Aに沿ってMLCCを切断し、
図7に示されるように、外部表面に対して垂直方向のセラミック本体の横断面を得ることができる。この横断面では、
図7に示されるように、複数の電極276に対して垂直である軸290と交差する所定の数(例えば、25、36、64等)の位置にわたり、いくつかの電極276における粒子240の数を決定し、得られた値を平均することができる。本開示の微粒子形態の組成物は、2つの隣接する誘電体層の間に挟まれた電極層が、焼結プロセス前に、軸290に対して平行方向に配置された2~8個の金属ベースの球状粒子、例えば3~5個の金属ベースの球状粒子等を含むような粒径分布を有する。
【0053】
所与の電極層276中の粒子240の平均数が、それぞれ軸290と交差している様々な位置のあらゆる部分で全体的に一貫していない場合、例えば、標準偏差が高過ぎる場合に、所与の内部電極276のある部分は他の部分より著しく厚く、これは、一貫性のない電気的性質及び/又は仕様から逸脱しているMLCCと解釈されうる。少なくともこの理由から、本発明において、粒径の特徴が明らかにより制御され、したがって、MLCCの電気的性質及び厚さに関して変動が少ない、既に論じたサイズの特徴を有する、本明細書に記載される微粒子形態の組成物は有利である。したがって、粒径の特徴のこの制御により、仕様から逸脱しているMLCCがもたらされることが少なくなりえて、したがって、製造バッチにおける欠陥割合が低減され、生産性が向上する。
【0054】
当業者は、粒子が、粒子間の接触点における材料融合及び圧縮に起因していくらか変形するため、金属ベースの粒子が焼結後に球形状を保持していない(
図9Bに示す)ことを容易に理解するであろう。それにもかかわらず、焼結後、粒子は、多少は分離している粒子として依然として認識でき、典型的には、横断面に対して平行方向に配置された粒子数を依然として評価できる。
【0055】
組成物の製造方法
広範な非限定的な態様では、前駆体材料を気化させて蒸気形態の前駆体を含有する気体を得る方法を使用して、本明細書に記載される微粒子形態の組成物を製造することができる。本発明者らは、固体の前駆体が製造方法後に残留しないことを確実にするために、前駆体材料の気化区域における滞留時間を制御して前駆体を十分に気化させることを可能にする方法を開発した。固体の前駆体の残留は、微粒子形態の組成物内に入り込み、その結果としてそのPSDをより粗大なサイズに偏らせるであろうマイクロメートルサイズの粒子を固体の前駆体が含む場合に特に、望ましくない可能性がある。
【0056】
本発明者らはまた、既に論じた所望の粒径の特徴を有する、本明細書に記載される微粒子形態の組成物を得るために、蒸気形態の前駆体を含有する気体の冷却速度を制御する手段も開発した。
【0057】
図1は、本開示の実施形態に従う、本明細書に記載される微粒子形態の組成物を製造する方法20を例示する。方法20は、前駆体材料(例えば、金属及びドープ剤)を気化させ、蒸気形態の前駆体材料を含有する気体を得る工程22を含む。例えば、工程22は、誘導結合型プラズマトーチ(ICPトーチ)(例えば、TEKNA社のPL-50、PN-50、PL-35、PN-35、PL-70、PN-70、PN-100)又は直流(DC)プラズマトーチ(例えば、Praxair社、Oerlikon-Metco社、Pyrogenesis社又はNorthwest Mettech社により市販されているもの)を使用して実行されうる。
【0058】
有利には、方法20は、トーチのプラズマ反応区域内での前駆体材料の滞留時間を最適化し、前駆体材料の十分な気化を起こし、蒸気形態の前駆体材料を含有する気体中で運ばれる固体の前駆体材料を確実になくすように設計されている。例えば、方法20がICPトーチ中で実行される時、蒸気形態の前駆体材料を含有する気体中で運ばれる固体の前駆体材料は、所望のPSDを妨害し、粗大な粒径を有する粒子をもたらしうる。
【0059】
一部の実施形態では、トーチのプラズマ反応区域での前駆体材料の滞留時間は、プラズマ反応区域内への前駆体材料供給速度を制御することにより制御及び最適化されうる。一部の実施形態では、前駆体材料供給速度は、回転分配式装置である場合のモータRPM、振動モータ装置である場合の振動パラメータ等の、供給装置に関する操作パラメータの制御を通して制御されうる。例えば、本発明者らは、時間的に一貫した(時間が1%より多く変動しない)、1/4インチの供給チューブによる粒子形態の前駆体材料の10~35g/分の範囲の供給速度が、ICPトーチを用いて最良の結果をもたらすことを発見した。
【0060】
本発明者らはまた、キャリアガスを使用して前駆体材料を供給口からプラズマ反応区域内へ多少高速で輸送することが、輸送回路内での沈降を防止し、したがってシステムの詰まりを防止するのに有用でありうるが、キャリアガス流速が高速過ぎると、粒子速度もまた高速になり過ぎて、したがって、前駆体材料のプラズマ反応区域内での滞留時間が低減されることも発見した。例えば、本発明者らは、1/4インチ内径の供給チューブにおいて、10L/分以下の一貫した(すなわち、時間が1%より多く変動しない)流速のキャリアガスの流速を発見した。キャリアガス流速は、手動で制御するか又はコンピュータ化システムを使用することができる。
【0061】
一部の実施形態では、添加ガス(例えば、酸素)を、金属ベースの粒子中の0.1wt.%~5wt.%の酸素含有量を得るために、制御された様式で方法に組み込むことができる。例えば、添加ガス(例えば、酸素)は、粒子の表面に、15nm未満、例えば10nm未満、5nm未満、例えば2~4nmの厚さを有する酸化物層を形成させることができる。添加ガス(例えば、酸素)は、そのような酸素含有量及び/又は酸化的層を得るために、一貫した(すなわち、時間が1%より多く変動しない)流速を有しうる。例えば、添加ガス流速は、0.5~1.5L/分の範囲でありうる。
【0062】
工程22で使用される前駆体材料を得るいくつかの手段がある。一実施形態を、
図2を参照してここで説明する。
【0063】
図2は、霧化プロセス10を概説しており、本開示の実施形態に従って、ドープ剤がドープされた金属ベースの前駆体粒子を得るために使用することができる。ガス霧化、DCプラズマ霧化、誘導結合型プラズマ霧化等の霧化プロセスが当技術分野で公知であり、したがって、霧化プロセス10を実行するために使用されるシステムの詳細は、本明細書で詳細には記載しない。
【0064】
霧化プロセス10は、溶融金属中にドープ剤を溶解させ、溶融金属/ドープ剤の混合物を得る工程12を含む。これまでに論じてきたように、ドープ剤は、単一のドープ剤又はドープ剤のブレンドであってよい。任意選択で、プロセス10は、溶融金属/ドープ剤の混合物中に存在するドープ剤の濃度を評価し、必要ならば、例えば、混合物を得るために使用される高融解温度により引き起こされる揮発による、ドープ剤の何らかの損失を補償するためにドープ剤の濃度を調節する工程(図示せず)を含んでよい。該混合物中のドープ剤濃度は、例えば、0.01~0.5wt.%のドープ剤がドープされた金属ベースの前駆体粒子を得るために制御される。
【0065】
溶融金属/ドープ剤の混合物は、次に工程14で霧化されて、ドープ剤がドープされた金属ベースの前駆体粒子を形成する。典型的には、工程14で得られた前駆体粒子は、マイクロメートルサイズを含むPSDを有する。典型的には、霧化プロセス10で得られた金属ベースの前駆体粒子は、実質的に球状である。言い換えれば、これらの粒子は、十分に小さくて、完全な球形を測定できるほど損なわない、完全な球形からの逸脱度を有する。許容できる逸脱の正確な程度は、場合によっては固有の状況に依存しうる。
【0066】
プロセス10は、次にふるい分け(例えば、ふるい膜、又はメッシュ若しくは布を使用)又はガス分級の工程16を含み、目的の粒径分布を保持しうる。場合によっては、不活性ガス分級システムを使用して、所望の粒径分布を得ることができる。一部の実施形態では、ドープ剤がドープされた金属ベースの前駆体粒子は、1μm~200μmの粒径分布(PSD)、又はそのような範囲内の任意のPSDを有する。一部の実施形態では、ドープ剤がドープされた金属ベースの前駆体粒子は、1μm~25μm、又は1μm~15μm、又は1μm~10μm、又は5μm~25μm、又は5μm~15μm、又は5μm~10μm等の範囲の平均メジアン(D50)径を有する。一部の実施形態では、ドープ剤がドープされた金属ベースの前駆体粒子は、50μm未満、又は45μm未満、又は40μm未満、又は35μm未満、又は30μm未満、又は25μm未満等のD90粒径分布を有する。一部の実施形態では、ドープ剤がドープされた金属ベースの前駆体粒子は、ブルナウアー-エメット-テラー吸着法(BET)により測定された、少なくとも0.15m2/g、又は少なくとも0.20m2/g、又は少なくとも0.25m2/g等である比表面積(SSA)を有する。ふるい分け(例えば、ふるい膜、又はメッシュ若しくは布を使用)又はガス分級の技術は当技術分野で周知であり、したがって、本明細書において更には記載されない。
【0067】
一部の特定の実施形態では、プロセス10は、金属ベースの前駆体粒子の高含有量の炭素での汚染を最小化するために、高熱区域でグラファイト含有要素を利用しないシステム中で実行される。例えば、霧化プロセス10で生成された金属ベースの前駆体粒子は、1200ppm未満、又は1000ppm未満、又は900ppm未満、又は800ppm未満、又は700ppm未満、又は600ppm未満、又は500ppm未満、又は400ppm未満、又は300ppm未満、又は200ppm未満の炭素含有量を含む。そのようなプロセスを実行する好適な霧化システムの例は、例えば、米国特許第9,718,131号;同第5,707,419号;国際公開第2011/054113号パンフレット、同第2017/011900号、同第2017/070779号;同第2017/177315号;及び同第2016/191854号のいずれかに記載されており、これらは全てあらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0068】
一部の実施形態では、霧化プロセス10で生成された金属ベースの前駆体粒子は、0.1wt.%~5wt.%、例えば3.5wt.%以下、2.0wt.% 以下、1.5wt.%以下、0.6wt.%以下等の酸素含有量を含む。
【0069】
一部の実施形態では、霧化プロセス10で生成された金属ベースの前駆体粒子は、実質的に純粋である。言い換えれば、金属ベースの前駆体粒子は、有意な望ましくない成分レベルをそれほど含まず、例えば、望ましくない成分は0.5wt.%未満、1wt.%未満、2wt.%未満、3wt.%未満、4wt.%未満、5wt.%未満、6wt.%未満、7wt.%未満、8wt.%未満、9wt.%未満又は10wt.%未満である。
【0070】
当業者が容易に理解するように、プロセス10は、有利には、ドープ剤用の担体として使用される金属ベースの粒子を生成する。
【0071】
図1に戻って、微粒子形態の組成物を製造する方法20は、金属及びドープ剤を再結合させて、微粒子形態の組成物を得るために、蒸気形態の前駆体材料を含有する気体を冷却する工程24を含む。例えば、いくつかの例では、例えば本開示の金属ベースの粒子を得るように冷却速度が制御されうる。場合によっては、冷却速度は、気体温度が約350℃未満まで低下するように制御されうる。場合によっては、気化された金属及びドープ剤は、所望の粒径分布を得るために、一貫した(すなわち、時間が1%より多く変動しない)流速を有するクエンチガスを使用して、制御された様式で冷却される。例えば、クエンチガスは、所望の粒径分布を得るために、1000~8000L/分の範囲の一貫した流速で方法に組み込むことができる。
【0072】
方法20はまた、
図10に例示される粒子248等の20nm未満のサイズを有する粒子を廃棄するための分級工程(図示せず)も含んでよい。いかなる理論にも束縛されないが、粒子248の存在は、MLCCを製造する時に典型的には電極材料のスラリー/ペーストに添加される、典型的にはこれも20nm未満のサイズを有するBaTiO
3等の添加剤が、粒子248の存在によって妨害されうるという点で問題となりうる。言い換えれば、MLCCを製造する時に、粒子240間の空隙を添加剤で充満させることが望ましく、したがって、これらの添加剤がこれらの空隙を占有することを妨害する、同様のサイズの他の粒子の含有量を可能な限り低減することが望ましい。代替的に又は付加的に、やはりいかなる理論にも束縛されないが、組成物230中の20nm未満のサイズを有する粒子248の存在は、
図12に示されるように、これらは他の要素と化学的に反応して、内部電極276内に望ましくない化合物290の存在を引き起こし、及び/又は
図11に示されるように、隣接する粒子240と融合し(例えば金属ベースの粒子240間の融合領域辺り)、焼結後に、それによって内部電極276の微細構造を変化させ、内部電極276の電気的性質を損ない、及び/又は内部電極276の質を低下させるという点で、焼結工程中に有害でありうる。
【0073】
したがって、方法20は、不良の可能性が低減されたMLCCの調製において明らかな利点をもたらす。これまで論じてきたように、方法20は、炭素等の不純物含有量を低減し(1000ppm未満等のレベルまで)、この不純物は組成物230中に十分に高いレベル(1400ppm超)で存在する時に、
図13Aに例示され及び
図13Bに示されるように、MLCCの不良を増加させる亀裂290の存在を誘起しうる。
【0074】
定義
別段に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が関連する技術分野の当業者により一般に理解される意味と同一の意味を有する。本明細書で使用される場合、別段に明記されないか又は文脈上他に要求されない限り、以下のそれぞれの用語は、以下に明示される定義を有するものとする。
【0075】
本明細書で使用される場合、用語「ドーパント」及び表現「ドープ剤」は互換的に使用され、物質内に挿入され(非常に低濃度で)、該物質の熱力学的性質及び/又は電気的性質及び/又は光学的性質を変更する微量不純物要素を指す。
【0076】
本明細書で使用される場合、用語「合金」は、金属の混合物又は金属及び別の要素の混合物を指す。合金は、金属結合特性により定義される。合金は、金属元素の固溶体(単一相)又は金属相の混合物(2つ以上の溶液)であってよい。金属間化合物は、定義された化学量論及び結晶構造を有する合金である。
【0077】
本明細書で使用される場合、用語「プラズマ」は、イオン化された気体状物質が、遠距離に達する電場及び磁場により物質の挙動が支配される点まで高度に導電性になる物質の状態を指す。プラズマは、典型的には、中性ガスを加熱することによるか又は中性ガスを強い電磁場にさらすことにより、人工的に生成される。
【0078】
表現「プラズマトーチ」、「プラズマアーク」、「プラズマガン」及び「プラズマカッター」は、本明細書で互換的に使用され、直流プラズマを生成する装置を指す。
【0079】
本明細書で使用される場合、略語「μm」はマイクロメートルを表し、略語「nm」はナノメートルを表す。
【0080】
本明細書で使用される場合、表現「粒径分布」又は「PSD」は、サイズに応じて存在する粒子の相対量を定義する。本開示でPSDが決定される手段は、レーザー回折分光法及び/又は電界放出型走査電子顕微鏡(FEG-SEM)のいずれかを用いて、粉末は異なるサイズのふるいで分離される。例えば、D90=150nmは、90%の粒子が150nmより小さいサイズを有することを表す。
【実施例】
【0081】
以下の実施例は、本開示の様々な実施形態の実施を例示するために示す。これらは本開示の全範囲を制限するか又は画定することを意図するものではない。本開示は、本明細書に記載され及び例示された特定の実施形態に限定されず、添付の実施形態で定義された本開示の範囲内に入る全ての変更形態及び変形形態を含むことを理解されたい。
【0082】
(実施例1)
本実施例では、硫黄がドープされたニッケルベースの前駆体粒子を含む組成物を、本開示の実施形態に従って調製した。
【0083】
簡潔に言えば、ニッケル源及び硫黄源を窯炉内に置き、硫黄の融解温度(115~440℃)まで加熱した。液体硫黄とニッケルとを反応させてNiS又はNi3S2を形成するのに十分な時間、この温度を保持した。反応が完了したと考えられる時、すなわち、全ての硫黄がNiSの形態に変換された時、温度をニッケルの融解温度(1400~1500℃)まで上昇させて、融解混合物を得た。次に、この融解混合物をガス霧化し、0.01~0.5wt.%の硫黄含有量がドープされたニッケルベースの前駆体粒子を含む組成物を得た。このプロセスを3回繰り返し、結果をTable 1(表1)に再現し、プロセス番号3で得られた組成物をふるい分けして、微細及び粗大粒子の副画分とした。
【0084】
全ての組成物を、LECO分析により分析してO、C、N及びHの含有量を決定して、レーザー回折分光法により粒径分布の特徴を決定した。
【0085】
【0086】
(実施例2)
本実施例では、硫黄がドープされたニッケルベースの粒子を含む組成物を、本開示の実施形態に従って調製した。
【0087】
簡潔に言えば、0.01~0.5wt.%の硫黄がドープされたニッケルベースの前駆体粒子を含み、10μm~100μmの粒径分布を有する組成物を、ICPトーチ(PN50、Tekna Plasma Systems社)中で、60~80kWの範囲の電力で、還元プラズマ条件下(アルゴン/水素)で気化させた。0.01~0.5wt.%の硫黄がドープされた、得られたニッケルベースの粒子の試料から走査電子顕微鏡(SEM)画像を得て、
図4に示す。これらの粒子の物理的性質をTable 2(表2)に示す:
【0088】
【0089】
(実施例3)
本実施例では、実施例2のプロセスを、7.5L/分のアルゴンキャリアガス流速及び1.0L/分の添加ガス(酸素)流速及び8000L/分のクエンチガスを用いて繰り返した。SEM画像を
図5A~
図5Cに示す。分級前の組成物の粒径分布(PSD)をTable 3(表3)に再現し、分級後、80nmのD50を得た組成物のPSDをTable 4(表4)に再現する:
【0090】
【0091】
【0092】
(実施例4)
本実施例では、実施例2のプロセスを、7.5L/分のアルゴンキャリアガス流速及び0.6L/分の添加ガス(酸素)流速及び8000L/分のクエンチガスを用いて繰り返した。分級前の組成物の粒径分布(PSD)をTable 5(表5)に再現する:
【0093】
【0094】
(実施例5)
本実施例では、実施例2のプロセスを、5L/分のアルゴンキャリアガス流速及び1.0L/分の添加ガス(酸素)流速及び1200L/分のクエンチガスを用いて繰り返した。分級前の組成物の粒径分布(PSD)をTable 6(表6)に再現する:
【0095】
【0096】
(実施例6)
本実施例では、実施例2のプロセスを、5L/分のアルゴンキャリアガス流速及び1.0L/分の添加ガス(酸素)流速及び1200L/分のクエンチガスを用いて繰り返した。分級前の組成物の粒径分布(PSD)をTable 6(表7)に再現する:
【0097】
【0098】
(実施例7)
本実施例では、実施例2のプロセスを、5L/分のアルゴンキャリアガス流速及び1.0L/分の添加ガス(酸素)流速及び1200L/分のクエンチガスを用いて繰り返した。分級前の組成物の粒径分布(PSD)をTable 7(表8)に再現する:
【0099】
【0100】
(比較例1)
本実施例では、DC-プラズマにより生成され且つ硫黄がドープされた80nmのニッケルベースの粒子を含む組成物として市販されている市販の製品を分析し、粒径分布の特徴に加えて分子含有量を決定した(FEG SEM、7画像をグリッド付き画像分析により分析し、合計2775粒子を分析した)。結果をTable 5及びTable 6(表9及び表10)に報告する:
【0101】
【0102】
【0103】
(実施例8)
本実施例では、実施例3で得られた、硫黄がドープされたニッケルベースの粒子(試料2)の焼結挙動を、ドープ剤を用いないニッケルベースの粒子(試料1及び試料3)の焼結挙動と比較した。結果をTable 7(表11)並びに
図15に示す。
【0104】
【0105】
これらの結果は、焼結挙動が硫黄ドープ剤の存在で変化するため、組成物中で、分離した硫黄粒子及び分離したニッケル粒子を伴う組成を有するのではなく、硫黄がニッケルベースの粒子内に効果的に組み込まれていることを示している。
【0106】
本開示は、本明細書に記載され及び例示された特定の実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲で定義された主題の範囲内に入る全ての変更形態及び変形形態を含むことを理解されたい。
【0107】
本明細書に引用される全ての参考文献、及びそれらの参考文献は、付加的又は代替的な詳細、特徴、及び/又は技術的背景の教示に適切な場合、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0108】
本開示は、特定の実施形態に関連して特に示され及び記載されてきたが、上述したもの並びに他の特徴及び機能の変形、又はその代替が、望ましくは多くの他の異なるシステム又は適用内に組み合わせられてよいことが理解されよう。また、現在は予測されないか又は予期されない様々なそれらの代替、変更、変形又は改善は、後に当業者により行われてよく、それらはまた本明細書に記載される実施形態により包含されることが意図される。
【0109】
実施形態の他の例は、本記載の教示を考慮すると読者には明らかとなるため、本明細書において更には記載されない。
【0110】
標題又は副標題は、読者の便宜上、本開示全体で使用されうるが、これらは本発明の範囲を決して制限することはないことに留意されたい。その上、特定の理論が本明細書に提示され及び開示されうる;しかしながら、本発明が、いずれの特定の理論又は作用のスキームにかかわらず本開示に従って実行される限り、それらの理論は、正しくても又は誤っていても、本発明の範囲を決して制限することはない。
【0111】
本明細書全体を通して、ある用語の前に使用される用語「a」は、該用語が言及する1つ又は複数のものを含有する実施形態を包含することが当業者には理解されよう。本明細書全体を通して、用語「含んでいる(comprising)」は、「含んでいる(including)」、「含有する(containing)」、又は「特徴とする(characterized by)」と同義であり、包括的又は非制限的であり、追加的な、記載されていない要素又は方法工程を除外しないことが当業者には理解されよう。
【0112】
別段に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が関連する技術分野の当業者により一般に理解される意味と同一の意味を有する。矛盾がある場合は、定義も含めて、本明細書が優先されるものとする。
【0113】
本開示で使用される場合、用語「およそ(around)」、「約(about)」又は「ほぼ(approximately)」は、当技術分野で一般に認められる誤差範囲内であることを一般に意味するものとする。したがって、本明細書で示される数量は一般に、「およそ」、「約」、又は「ほぼ」という用語が明示的に記述されてないとしても推測できるような許容誤差を含む。
【0114】
本開示の様々な実施形態を記載及び例示したが、本記載を考慮して、多数の変更及び変形を行いうることが当業者には明らかであろう。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲においてより特定して定義される。
【符号の説明】
【0115】
230 組成物
240 金属ベースの粒子
248 粒子
270 MLCC
274 誘電体層
276 内部電極、内部電極層
284 セラミック材料
290 軸、亀裂