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特許7473482テクスチャードトラックピンボアを備えるアンダーキャリッジクランプマスタトラックリンク
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】テクスチャードトラックピンボアを備えるアンダーキャリッジクランプマスタトラックリンク
(51)【国際特許分類】
   B62D 55/205 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
B62D55/205 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020562773
(86)(22)【出願日】2019-04-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-02
(86)【国際出願番号】 US2019029770
(87)【国際公開番号】W WO2019217136
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2022-04-27
(31)【優先権主張番号】15/976,067
(32)【優先日】2018-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391020193
【氏名又は名称】キャタピラー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CATERPILLAR INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マグナー、スコット エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】トローン、マシュー ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】ウェイグル、マーク アール
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-512079(JP,A)
【文献】国際公開第2011/136135(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0339974(US,A1)
【文献】特開2004-075059(JP,A)
【文献】特開2017-165132(JP,A)
【文献】米国特許第03717389(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0000995(US,A1)
【文献】特公昭39-016507(JP,B1)
【文献】実開昭47-030335(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 55/20 -55/253
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランプマスタトラックリンク(202)であって、
上面(206)と、底面(208)と、それらの両者間の厚みを画定する第1側面(210)及び第2側面(212)と、近位端(214)及び遠位端(216)とを画定する本体(204)を含み、
前記本体(204)は、前記遠位端(216)に隣接した第1ボア(218)及び前記近位端(214)に隣接した第2ボア(220)を画定し、
前記本体(204)は、前記第1ボア(218)と前記第2ボア(220)との間に配置された第1開口(222)を画定し、前記第1開口(222)は、前記第2ボア(220)よりも前記第1ボア(218)に近接して配置され、
前記本体(204)は、前記第1開口(222)と前記第2ボア(220)との間に配置された第2開口(224)を画定し、
前記本体(204)は、前記第1開口(222)と前記第2開口(224)との間に配置された第1ストラット(226)を含み、前記本体(204)は、前記第1ストラット(226)を第1上部(230)と第1下部(232)とに分割する第1隙間(228)を画定し、
前記本体(204)は、前記第1開口(222)と前記第1ボア(218)との間に配置された第2ストラット(234)を含み、前記本体(204)は、前記第2ストラット(234)を第2上部(238)と第2下部(240)とに分割する第2隙間(236)を画定し、
前記本体(204)は、前記第2開口(224)と前記第2ボア(220)との間に配置されたブリッジ(246)を含み、
前記第1ボア(218、218’、218”)は、前記本体(204、204’、204”)の残りの部分とは異なり、少なくとも部分的にテクスチャー加工される円筒状ボア面(400、400’、400”)を画定し、
前記第1ボア(218)は第1長手方向軸(L218)を画定し、前記第2ボア(220)は第2長手方向軸(L220)を画定し、
前記本体(204)は前記上面(206)から前記第1開口(222)まで前記第1ボア(218)の前記第1長手方向軸(L218)に垂直な方向に延びる第1交差穴(248)及び前記上面(206)から前記第2開口(224)まで前記第2ボア(220)の前記第2長手方向軸(L220)に垂直な方向に延びる第2交差穴(250)をさらに画定し、前記第1交差穴(248)は、第1直径(D248)を画定し、前記第2交差穴(250)は、第2直径(D250)を画定し、前記第1直径(D248)は、前記第2直径(D250)よりも大きい、クランプマスタトラックリンク(202)。
【請求項2】
前記本体(204)はジョグ(jog)して、前記第1ボア(218)及び前記第2ボア(220)が前記第1又は前記第2長手方向軸(L218、L220)に沿って互いからオフセットされるようにオフセットマスタトラックリンク(202)を形成する、請求項1に記載のクランプマスタトラックリンク(202)。
【請求項3】
前記第1ボア(218)は、第1直径(D218)を画定し、前記第2ボア(220)は第2直径(D220)を画定し、前記第1直径(D218)は前記第2直径(D220)よりも小さく、前記第1ボア(218)は段付き孔であり、前記第2ボア(220)はスルーボアであり、前記円筒状ボア面(400)は、0.175mm~0.275mm範囲の表面粗さの最大高低差を有するパターンでローレット加工されるテクスチャー(402)を有し、前記円筒状ボア面(400)は、少なくともテクスチャーを有する領域で45~55ロックウェルCスケールの範囲で焼入れ硬化される、請求項1に記載のクランプマスタトラックリンク(202)。
【請求項4】
前記第1隙間(228)は、第1最小距離(d228)を画定し、前記第2隙間(236)は第2最小距離(d236)を画定し、前記第1最小距離(d228)に対する前記第2最小距離(d236)の比率は、3~10の範囲である、請求項1に記載のクランプマスタトラックリンク(202)。
【請求項5】
前記第1最小距離(d228)に対する前記第2最小距離(d236)の比率は、6~7の範囲である、請求項4に記載のクランプマスタトラックリンク(202)。
【請求項6】
前記本体(204)は、前記上面(206)から前記底面(208)までの高さ(H)を画定し、前記第1最小距離(d228)に対する前記高さ(H)の比率は、100~150の範囲である、請求項4に記載のクランプマスタトラックリンク(202)。
【請求項7】
前記第1最小距離(d228)に対する前記高さ(H)の比率は、130~140の範囲である、請求項6に記載のクランプマスタトラックリンク(202)。
【請求項8】
クランプマスタトラックリンク(202)であって、
上面(206)と、底面(208)と、それらの両者間の厚みを画定する第1側面(210)及び第2側面(212)と、近位端(214)及び遠位端(216)とを画定する本体(204)を含み、
前記本体(204)は、前記遠位端(216)に隣接した第1ボア(218)及び前記近位端(214)に隣接した第2ボア(220)を画定し、
前記本体(204)は、前記第1ボア(218)と前記第2ボア(220)との間に配置された第1開口(222)を画定し、前記第1開口(222)は、前記第2ボア(220)よりも前記第1ボア(218)に近接して配置され、
前記本体(204)は、前記第1開口(222)と前記第2ボア(220)との間に配置された第2開口(224)を画定し、
前記本体(204)は、前記第1開口(222)と前記第2開口(224)との間に配置された第1ストラット(226)を含み、前記本体(204)は、前記第1ストラット(226)を第1上部(230)と第1下部(232)とに分割する第1隙間(228)を画定し、
前記本体(204)は、前記第1開口(222)と前記第1ボア(218)との間に配置された第2ストラット(234)を含み、前記本体(204)は、前記第2ストラット(234)を第2上部(238)と第2下部(240)とに分割する第2隙間(236)を画定し、
前記第1隙間(228)は、第1最小距離(d228)を画定し、前記第2隙間(236)は第2最小距離(d236)を画定し、前記第1最小距離(d228)に対する前記第2最小距離(d236)の比率は、3~10の範囲であり、
前記第1ボア(218’、218”)は、0.1mm~0.4mm範囲の表面粗さの最大高低差で少なくとも大部分がテクスチャー加工される円筒状ボア面(400’、400”)を画定し、
前記第1ボア(218)は第1長手方向軸(L218)を画定し、前記第2ボア(220)は第2長手方向軸(L220)を画定し、
前記本体(204)は前記上面(206)から前記第1開口(222)まで前記第1ボア(218)の前記第1長手方向軸(L218)に垂直な方向に延びる第1交差穴(248)及び前記上面(206)から前記第2開口(224)まで前記第2ボア(220)の前記第2長手方向軸(L220)に垂直な方向に延びる第2交差穴(250)をさらに画定し、前記第1交差穴(248)は、第1直径(D248)を画定し、前記第2交差穴(250)は、第2直径(D250)を画定し、前記第1直径(D248)は、前記第2直径(D250)よりも大きい、クランプマスタトラックリンク(202)。
【請求項9】
前記第1最小距離(d228)に対する前記第2最小距離(d236)の比率は、6~7の範囲である、請求項8に記載のクランプマスタトラックリンク(202)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、土工、建設、採鉱装備等で用いられる無端アンダーキャリッジドライブ(endless undercarriage drive)のトラックチェーンアセンブリの完成に使用されるマスタトラックリンクを機械加工するための方法及び装置に関する。特に、本開示は、ピンワーキング(pin walking)を防ぐためにピンボア内に粗面又はローレット(knurling)を有するクランプマスタトラックリンクに関する。
【背景技術】
【0002】
土工、建設、及び採鉱装備などは、時々荒地、オフロード地形で使用される。これらの機械は、障害物や不整地などでそのような環境でよく推進させることができるトラックシュー(track shoe)を備える無端ドライブを使用することが多い。シュー付きトラックチェーンは、機械の駆動スプロケット、アイドラー、及び支持ローラに支持される一連の相互連結されたトラックリンク、ピン、及びブッシングによって一緒に維持される。想像できるように、チェーンの自由端が一緒に結合される前に、トラックチェーンを駆動スプロケット、アイドラー、及び支持ローラの周囲にルーティングさせるデバイスが一般的に提供される。このデバイスは、「マスタリンク」と呼ばれる。
【0003】
また、機械の重量、チェーンの寸法、機械の動作環境、及びその他要因によって、チェーン及び/またはトラックシューは摩耗又は損傷される恐れがあり、これにより定期的な検査、アフターサービス、修理、及び/又は交換が必要となることがあり得る。したがって、マスタリンクはチェーンの分解(すなわち、チェーンの両端の分離)を可能にするためにチェーンに提供されることもある。
【0004】
想像できるように、マスタトラックリンクは、少なくとも3つの特性を有することが好ましい。第一、マスタトラックリンクは、信頼性または耐久性があるものが好ましい。つまり、マスタトラックリンクは、トラックチェーンが使用中であるとき、意図せずに分解される傾向がなければならない。このようなことが発生すると、トラックチェーンアセンブリは、機械のアンダーキャリッジから離れて、機械を再度稼働させるための不要なダウンタイムと機械のメンテナンスにつながる可能性がある。第二、マスタトラックリンクは、保守サービスが容易なものが好ましい。すなわち、前述のようなメンテナンスが行われるようにマスタトラックリンクの分離に多くの時間を要してはならない。第三、マスタトラックリンクを費用効率的に製造できるものが好ましい。
【0005】
現在、あるマスタトラックリンクの設計は、マスタトラックリンクに圧入(press fit)されるピンを使用するようにされているが、コッタピン(cotter pin)を用いて元の位置に滑合(slip fit)されて維持されるピンを使用するものもある。圧入は、信頼性又は耐久性の面で、安価でかつ堅固な設計を提供するが、保守サービスを受けにくい。これに対し、滑合ピンは高価ながらも保守性の面で堅固な設計を提供するものの、耐久性又は信頼性の面ではあまり好ましくない。コタピンが抜けると、マスタトラックリンクはピンから外れることもたびたびある。圧入ピンさえも、ピンの側方移動であるワーキングしがちである。結局、ピンは意図せずにピンがピンボアから外れる地点までワーキングすることができる。
【0006】
ピンワーキングのリスクを減少させるために、ピンまたはマスタトラックリンクにはグリースを塗らないことがあるが、これはグリースを添加すると、ピン圧入領域の効果を汚染又は変更させるか、それともピンがワーキングの可能性を増加させることができるためである。しかし、これはトラックブッシング、トラックピンとマスタトラックリンクとの間のロータリジョイントの摩耗につながる。これは、マスタトラックリンク、トラックピン、及び/またはトラックブッシングが所望よりも早く保守サービスを受けたり、交換しなければなかったりする、好ましくない結果をもたらすことができる。
【0007】
したがって、保守性、耐久性または信頼性並びにコストの面で一層よい組み合わせを提供することができるマスタトラックリンク、それに係わるトラックブッシング、及びそれに係わるトラックピンに関する方法及び装置に対する必要性が存在する。
【0008】
トラックピンワーキングを防止するための一つの従来の解決策が、Dumitruらの米国特許第9,227,679号に開示されている。該679特許は長さ寸法を有し、実質的に環状の外面と、第1及び第2対向端部とを含む細長い実質的に円筒状の本体を含むトラックリンクコネクタ(たとえば、トラックピン)を提供することを提案している。トラックリンクコネクタは、本体の端部のいずれかから本体の外面の円周の周りに360°未満で延びるテクスチャー領域(textured region)をさらに含む。しかし、これはすでに現場にある多くのトラックチェーンアセンブリの設計との互換性がない。なお、この設計は、トラックピンを製造するために研削またはワイヤ放電加工のような高価の機械を使用しなければならない、テクスチャー領域間に間隙のある焼入れトラックピンの機械加工が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、より安価であり、より耐久性または信頼性があり、特に使用中にトラックピンワーキングのリスクを低減でき、より実用的ですでに現場にあるトラックチェーンアセンブリに改装され得るマスタトラックリンクは依然として保証される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一実施形態によれば、第1及び第2ボアと、第1ボアと第2ボアとの間に配置された第1開口と、第1開口と第2ボアの間に配置された第2開口と、第1開口と第2開口との間に配置された第1間隙を有する第1ストラット(strut)と、第1開口と第1ボアとの間に配置された第2隙間を有する第2ストラットと、第2開口と第2ボアとの間に配置されたブリッジと、を画定する本体を含む、クランプマスタトラックリンクが提供される。第1ボアは、本体の残りの部分と異なり、少なくとも部分的にテクスチャ加工がされており、トラックピンワーキングを低減できるように構成される円筒状ボア面を画定することができる。
【0011】
本開示の一実施形態によれば、上面と、底面と、それらの両者間の厚みを画定する第1側面及び第2側面と、近位端及び遠位端とを画定する本体を含む、クランプマスタトラックリンクが提供される。また本体は、遠位端に隣接した第1ボア及び近位端に隣接した第2ボアを画定し、第1ボアと第2ボアとの間に配置され、第2ボアよりも第1ボアに近接して配置される第1開口と、第1開口と第2ボアとの間に配置された第2開口と、第1開口と第2開口との間に配置された第1ストラットと、第1開口と第1ボアとの間に配置された第2ストラットとを画定し、第1ストラットを第1上部と第1下部とに分割する第1隙間を画定し、第2ストラットを第2上部と第2下部とに分割する第2隙間を画定する。第1隙間は、第1最小距離を画定し、第2隙間は第2最小距離を画定し、第1最小距離に対する第2最小距離の比率は、3~10の範囲である。第1ボアは、少なくとも大部分0.1mm~0.4mm範囲の最大高低差の表面粗さでテクスチャ加工される円筒状ボア面を画定することができる。
【0012】
本開示の一実施形態によれば、複数のトラックピン及びトラックピンの周囲に配置されたトラックブッシングと、トラックピン又はトラックブッシングによって互いに連結される複数のトラックリンクとを含み、少なくとも1つのトラックリンクはトラックピン又はブッシングを受容するための複数の開口を画定する、トラックチェーンアセンブリが提供される。また、チェインアセンブリは、複数のトラックファスナと、トラックファスナを介してトラックリンクに取り付けられた複数のトラックシューと、上面、底面、及びこれらの間の厚みを画定する第1側面及び第2側面並びに近位端及び遠位端を画定する本体を含む少なくとも1つのクランプマスタトラックリンクと、を含むことができる。本体は、遠位端に隣接した第1ボア及び近位端に隣接した第2ボアと、第1ホアと第2ボアとの間に配置さており、第2ボアよりも第1ボアに近接して配置される第1開口と、第1開口と第2ボアとの間に配置された第2開口と、第1開口と第2開口との間に配置された第1ストラットと、第1開口と第1開口との間に配置された第2ストラットとを画定することができ、本体は、第1ストラットを第1上部と第2下部とに分割する第1隙間を画定し、本体は第2ストラットを第2上部と第2下部とに分割する第2隙間を画定する。第1ボアは、第1長手方向軸を画定することができ、第2ボアは、第2長手方向の軸を画定することができ、本体はジョグして、第1ボア及び第2ボアが第1又は第2長手方向の軸に沿って互いからオフセットされるようにオフセットマスタトラックリンクを形成する。第1ボアは、第1直径を画定することができ、第2ボアは第2直径を画定することができ、第1直径は第2直径よりも小さく、第1ボアはブラインドボア(blind bore)であり、第2ボアはスルーボア(thru bore)であり、本体は第2開口と第2ボアとの間に配置されたブリッジを含む。第1ボアは、本体の残りの部分と異なり、少なくとも部分的にテクスチャ加工がされており、トラックピンワーキングを低減できるように構成される円筒状ボア面を画定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本明細書に含まれ、その一部を構成する添付の図面は、本開示の幾つかの実施形態を示し、本説明と一緒に本開示の原理を説明する役割をする。図面において、
図1】本開示の多様な実施形態によるクランプマスタトラックリンクを備える多様なトラックチェーンアセンブリを使用し得る機械の側面図である。
図2】該機械から除去された図1の機械のトラックチェーンアセンブリの側面図である。
図3図2のトラックチェーンアセンブリの平面図である。
図4図2のトラックチェーンアセンブリの例示的なクランプマスタトラックリンクサブアセンブリの前方斜視図である。
図5図4の例示的なクランプマスタトラックリンクサブアセンブリの後方斜視図である。
図6】シューをクランプマスタトラックリンクに取り付けることと、クランプマスタトラックリンクをトラックチェーンアセンブリに取り付けることに必要なクランプ動作を提供することに用いられる互いに異なる寸法を有するファスナを使用する例示的なクランプマスタトラックリンクサブアセンブリの前方斜視図である。
図7】シューをクランプマスタトラックリンクに取り付けることと、クランプマスタトラックリンクをトラックチェーンアセンブリに取り付けることに必要なクランプ動作を提供することに用いられる互いに異なる寸法を有するファスナを受容するために内部にナットを備えるポケットを使用する例示的なクランプマスタトラックリンクサブアセンブリの前方斜視図である。
図8】トラックチェーンアセンブリの組立を完了する間対向するクランプマスタトラックリンクの自由端に接近するときのチェーンの自由端を示す本開示の多様な実施形態によるトラックチェーンアセンブリの上方斜視図である。
図9】クランプマスタトラックリンクを最終ピンに突き当てることで、トラックチェーンアセンブリの組立を完了する、最終ピンがリンクのボアとブッシングのボア内に挿入される前、及びシューがクランプマスタトラックリンクに取り付けられる前における対向するクランプマスタトラックリンクの自由端の噛合を示す図8のトラックチェーンアセンブリの上方斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ここで本開示の実施形態に対して詳細に参照されるが、これらの例は、添付図に示されている。可能な限り、図面全体にかけて同一の参照番号が同一または類似部分を指すために使用されるであろう。幾つかの場合、参照番号が本明細書に表示され、図面は文字の後に付してある参照番号、たとえば、100a、100b又はプライムの後にある参照番号、たとえば100’、100”などを示すことができる。参照番号の後に次ぐ文字又はプライムの使用は、これらの特徴が類似した形状であり、たまに幾何学的構造が対称平面に対してミラーリンクされる場合のように類似する機能を有していることを理解されたい。本明細書では説明の便宜のために、文字及びプライムが本明細書に含まれない場合もたまにあるが、記述された本明細書内で説明される類似又は同一の機能又は幾何学的構造を有する特徴の重複を表示するために図面に示すこともできる。
【0015】
次に、クランプマスタトラックリンクに使用してトラックチェーンアセンブリを生成するための装置及び方法の多様な実施形態を説明する。幾つかの実施形態において、クランプマスタトラックリンクは、既に現場にあるトラックチェーンアセンブリと一緒に使用されることができるオフセットリンクである。
【0016】
図1は、作業を行うために協力する多数のシステム及び構成要素を有する例示的な機械100を示す。機械100は、鉱業、建設業、農業、輸送業、あるいは当業界によく知られた任意の他の産業のような産業と関連した一部類型の動作を行う可動機械を具現することができる。例えば、機械100は、掘削機、ドーザ、ローダ、バックホー、モータグレーダ、もしくは任意の他の土工機械のような土工機械であることができる。機械100は、動力源102と、及び動力源102によって駆動され、一つ以上の離間されたアイドラホイール106によって支持されることができるアンダーキャリッジアセンブリ104とを含むことができる。
【0017】
動力源102は、出力速度及びトルクの範囲内で機械100のアンダーキャリッジアセンブリ104を駆動することができる。動力源102は、例えばディーゼルエンジン、ガソリンエンジン、ガス燃料動力エンジン、または任意の他の適宜なエンジンのようなエンジンであることができる。また動力源102は、たとえば燃料電池、蓄電装置、または当業界に知られた任意の他の動力源のような非燃焼動力源であることができる。
【0018】
アンダーキャリッジアセンブリ104は、機械100の両側に一つずつある2つの個別的な連続トラック108を含むことができる(それらのうち一つだけを図1に示した)。各トラック108は、一つ以上の駆動スプロケット110を介して動力源102によって駆動されることができる。なお、各トラック108は、チェーン112及び表面、たとえば地面と選択的に係合されるようにそれぞれ構成された複数のトラックシュー114を含むことができる。各チェーン112は、複数のリンクサブアセンブリ116と、マスタリンクサブアセンブリ200とを含むことができる。さらに、支持ローラ152がチェーンを支持するためにトラックの底部に提供される。
【0019】
図2及び図3は、それぞれ例示的なチェーンアセンブリ112、特に複数の例示的なリンクサブアセンブリ116及びマスタリンクサブアセンブリ200の側面及び平面斜視図を示す。夫々のリンクサブアセンブリ116は、直動リンクが使用されるとき(図示せず)、各々の一対のオフセットリンク部材118又は各々の一対の内側及び外側リンクを含むことができる。各オフセットリンク部材118は、リンクサブアセンブリ116のうち与えられた一つのトラックシュー114を取り付けるためのファスナ150、例えばボルト又は六角穴付ボルトを受容するように構成されたファスナ穴120、例えばねじ穴を含むことができる。マスタトラックリンクアセンブリ200は、クランプマスタトラックリンク202を含むことができる。マスタトラックリンクサブアセンブリは、チェーンアセンブリ112を完成するに用いられ、これについては図8及び図9を参照して後述する。
【0020】
リンクサブアセンブリ116の中で隣接したものは、ピン又はブッシングの形態でロッドアセンブリ122によって互いに連結されることができる。より具体的に、各ロッドアセンブリ122は、実質的に円筒状のピン126の周りに配置された実質的に円筒状のブッシング124を含むことができる。ピン126に対して回転自在な一対の軸受(図示せず)、及び一対のシール(図示せず)も、ロッドアセンブリ又はロッドアセンブリに近接したリンク部材のいずれかに提供されて、潤滑損失を防止するとともに移動の自由を提供することができる。幾つかの実施形態において、軸受及びシールは、同一のアセンブリで機能的に組み合わせられることができる。ブッシング124は、オフセットリンク部材118の一端130の開口128内に押圧され、ピン126はオフセットリンク部材118の該端130を介して延び、隣接したオフセットリンク部材118’の他端134の開口132に受容されることができる。ピン126は、当該リンク部材118’内に押圧されることにより、隣接したオフセットリンク部材118’の他端134内に保持されるか、または滑合が使用される際にコッタピン又は別の類似したデバイスを用いてその内に保持されることができる。リンクサブアセンブリ116を組み合わせる他の構成及び方法が、トラックチェーンアセンブリ112を生成するために提供されることができる。もちろん、複数のオフセットリンク部材118はトラックチェーンアセンブリ112を形成するために前述したものと類似した方式で連結される。
【0021】
より具体的に、第1及び第2ロッドアセンブリは、連続して連結されたリンクサブアセンブリ116がトラックチェーンアセンブリ112を形成するために、相互に旋回可能に連結されるように隣接したオフセットリンク部材118、118’の開口128、132とインターフェースすることができる。たとえば、一つのオフセットリンク部材118’の外側端134は、ピン126と固定した方法で(たとえば、圧入が用いられるとき)噛み合い、シール及び/または軸受アセンブリをハウジングすることができ、隣接したオフセットリンク部材118の内側端130は固定した方法で(たとえば、圧入が用いられるとき)ブッシング124と噛み合うことができる。同時に、ピン126は、たとえばピンとブッシングのボアとの間に若干のクリアランスが与えられる場合、ブッシング124内で自由に回転できる。よって、一対の隣接したオフセットリンク部材118は、関節型トラックチェーンアセンブリ112を形成するために互いに対して旋回するように構成されることができる。同様に、マスタトラックリンクサブアセンブリ200は、ロッドアセンブリ122を介して2つの標準リンクサブアセンブリ116の間に相互連結されることができる。
【0022】
トラックシュー114は、各オフセットリンク部材118に連結されることができる。各トラックシュー114は、基部136、地面係合表面138、先端140、および後端142を含むことができる。各トラックシュー114はまた、前端140と後端142との間に配置された対向する側端144(図2にはそれらの一つのみを示した)を含むことができる。一つ以上のグラウザまたはリブ146が地面と係合するように提供されて、牽引力を改善することができる。その上、各トラックシュー114はまた、2対のねじ付シュー穴148を含むことができ、各対は側端144のうちそれぞれのものに沿って配置され、オフセットリンク部材118と関連した一対のファスナ穴120と整列するように構成される。幾つかの実施形態において、穴148はクリアランス穴であってもよく、ねじ込式ではなくてもよい。
【0023】
典型的に、それぞれのシュー穴148は、オフセットリンク部材118の夫々の底面に位置した関連ファスナ受け穴120に対応することができる。このように、各トラックシュー114は、図3に示したトラックチェーンアセンブリの一側面からトラックチェーンアセンブリの他側面まで一対の対向する一対のオフセットリンク部材118に連結されることができる。例えば、ボルト又は六角穴付ボルトのようなねじ込式ファスナ150は、トラックシュー114をそれぞれの対向する一対のオフセットリンク部材118に固定させるために、各々のシュー穴148及びファスナ受け穴120にそれぞれ配置されることができる。各オフセットリンク部材118に対するファスナ受け穴120の間隔は実質的に類似することができ、従って各トラックシューも類似又は同一に構成されることを想定すれば、各トラックシュー114がオフセットリンク部材のそれぞれに連結可能に構成されることができることが考慮される。
【0024】
図4図7には、本開示の多様な実施形態によるマスタトラックリンクサブアセンブリ200が示されている。マスタトラックリンクサブアセンブリ200は、上面206と、底面208と、それらの間の厚みを画定する第1側面210及び第2側面212と、近位端214及び遠位端216とを画定する本体204を含むクランプマスタトラックリンク202を含むことができる。さらに、本体204は、遠位端216に隣接した第1ボア218と、近位端214に隣接した第2ボア220とを画定することができる。これらのボア218、220は、一方もしくは両方の側面210、212から延びるか、それから少なくとも部分的に画定することができる。図示のごとく、ボアは円筒状であるが、別の適切な構成を有することができる。
【0025】
また、本体204は、第1ボア218と第2ボア220との間に配置された第1開口222をさらに画定することができ、第1開口222は第2ボア220よりも第1ボア218により近接して配置される。同様に、本体204は、第1開口222と第2ボア220との間に配置された第2開口224をさらに画定することができる。これらの開口は、第1側面210から本体204を介して第2側面まで完全に延びる。
【0026】
これらのボア218、220及び開口222、224の配置によって、本体204は、第1開口222と第2開口224との間に配置された第1ストラット226を含む。なお、本体204は、第1ストラット226を第1上部230と第2下部232とに分割する第1隙間228を画定する。同様に、本体204は、第1開口222と第1ボア218との間に配置された第2ストラット234を含み、本体204は、第2ストラット234を第2上部238と第2下部240とに分割する第2隙間236を画定する。両側の隙間228、236は、本体204を介して第1側面210から第2側面212まで完全に延び、本明細書で後述するように、クランプマスタトラックリンク202に必要な可撓性を提供する。本体204は、第2開口224と第2ボア220との間に配置されたブリッジ246を含む。単一又は未分割ストラットとも呼ばれることができるこのブリッジ246は、本明細書で後述するように、クランプマスタトラックリンク202の第2ボア近傍に必要な剛性を提供する。
【0027】
図4図7に示した実施形態におけるクランプマスタトラックリンク202は、図2及び図3を参照して前述した標準オフセットリンクに類似したオフセットリンクである。すなわち、近位端214は、図3に最もよく示されているように、トラックチェーンアセンブリ112のピン126及びブッシング124の長手方向軸L126に平行な方向に遠位端216からオフセットされる。図4及び図5に戻れば、クランプマスタトラックリンク202は、次にように説明されることができる。第1ボア218は第1長手方向軸L218を画定し、第2ボア220は第2長手方向軸L220を画定し、本体204はジョグ(jog)して、第1ボア218及び第2ボア220が第1又は第2長手方向軸L218、L220に沿って互いからオフセットされるか又は離間されるようにオフセットマスタトラックリンクを形成する。直動リンク構成などを含めてクランプマスタトラックリンクに対する他の構成が可能である。
【0028】
図4及び図5に示した実施形態において、第1ボア218は第1直径D218を画定し、第2ボア220は第2直径D220を画定する。ピン126と噛み合うように構成された第1直径D218は、ブッシング214と噛み合うように構成された第1直径D220よりも小さい。第1ボア220は、リンクの本体204を介して完全に延びるスルーボアであり、第1ボア218は、図5によく示されているように、底部環状面242を形成するブラインドボアである。第3ボア244は、底部環状面242からクランプマスタトラックリンク部材の本体204を介して完全に延びる。製造会社で通常行われるトラックチェーンアセンブリ112の組立中に、スタンドオフセットリンク部材118は、図2及び図3に係わって前述したように組み立てられる。
【0029】
チェーンアセンブリの所望の長さが達成された際に、一対の対向するマスタトラックリンク部材の遠位端216は、ブッシング124が第2ボア220内へ押圧されるチェーンの一対の対向する自由端に取り付けられる。ブリッジ246は、押圧動作が適正量の保持力を生成するに必要な剛性を提供し、マスタトラックリンク202がチェーンアセンブリ112から離れないように助ける。その後、チェーンアセンブリ112がアンダーキャリッジ104の駆動スプロケット110、アイドラホイール106、ローラなどに対してルーティングされると、すぐにより詳述するように、ピン126を第1ボア218内に挿入し、ファスナを用いてマスタトラックリンク202の近位端214のピン214及びブッシング124上にしっかりと保持させるクランプ動作を生成することでチェーンが完成される。
【0030】
このために、隙間の寸法は、このようなクランプ動作を好適に発生させるに重要な役割を果たす。したがって、第1隙間228は、第1最小距離d228を画定し、第2隙間236は第2最小距離d236を画定し、第1最初距離d228に対する第2最小距離d236の比率は、3~10の範囲であることができる。時には、この比率は6~7の範囲であることができる。第1最小距離d228対第2最小距離d236の例示的な値は、それぞれ0.75mm~5mmである。この比率の値又は距離は、他の実施形態で必要や所望に応じて変更され得る。
【0031】
また、必要な可撓性は、第1最小距離d228に対する、上面206から底面208までの最小距離である本体204の高さHの比率で表現されることができる。この比率は、100~150の範囲であることができる。特定の実施形態で、この比率は130~140の範囲であることができる。高さHの例示的な値は、90~130mmの範囲であることができる。
【0032】
図4図7の実施形態において、本体204は上面206から第1開口222まで第1ボア218の第1長手方向軸L218に垂直な方向に延びる第1交差穴248及び上面206から第2開口224まで第2ボア220の第2長手方向軸L220に垂直な方向に延びる第2交差穴250をさらに画定することができる。第1交差穴248は、第1直径D248を画定することができ、第2交差穴250は、第2直径D250を画定することができる。幾つかの実施形態において、第1直径D248は、第1直径D250よりも大きく、第2ボア220の近傍で使用されるファスナよりも大きいファスナが第1ボア218の近傍で使用されるようにする。これは、第1ボア218の近くで発生した力がピン126に突き当たるのにクランプ力が最も必要なところでより大きくなるようにすることができる。
【0033】
より一般的な意味で、図6及び図7を参照すれば最も分かりやすいように、本開示の多様な実施形態は、クリアランス穴である第1交差穴248に配置された第1マスタトラックリンクファスナ252及びクリアランス穴でもある第2交差穴250に配置された第2マスタトラックリンクファスナ254を含む。ある場合は、第1マスタトラックリンクファスナ252及び第2マスタトラックリンクファスナ254は、互いに異なる寸法を画定することができる。言い換えれば、第1及び第2マスタトラックリンクファスナは、互いに異なるように構成されることができる。
【0034】
たとえば、第1マスタトラックリンクファスナ252は、第1長さL252を画定することができ、第2マスタトラックリンクファスナ254は第1長さL252よりも小さい第2長さL254を画定することができる。第1ボア218最寄りの第1マスタトラックリンクファスナ252は、ピン126に必要なクランプ力の大部分又は全部を提供するために第2マスタトラックリンクファスナ254よりも長いことができる。代案的に、前記で示唆したように、第1マスタトラックリンクファスナ252は、第1直径D252を画定することができ、第2マスタトラックリンクファスナ254は第1直径D252より小さい第2直径D254を画定することができる。これも同様に、第1マスタトラックリンクファスナが第2マスタトラックリンクファスナよりも多くのクランプ力を提供し得るようにする。他の寸法バラツキまたは寸法バラツキの組み合わせが可能である。
【0035】
図7に最もよく示されているように、第1交差穴248は上面206から底面208まで延び、底面208は第1交差穴248と連通し、第1マスタトラックリンクファスナ252に近接したノッチ又はポケット256を画定する。ファスナが簡単に回転され締め付けられるように、ナット258がポケット256に配置されてもよい。必要であるか、希望する場合、類似した構造が第2マスタトラックリンクファスナに提供されることができる。多くの場合、ナットが支持面としての底面の機能を妨害しないように、ナットが底面に比して凹むようにフラッシングされることが好ましい。
【0036】
一方、図4及び図5に最もよく示されているように、マスタトラックリンク202の本体204は、第1開口222と連通し、第1交差穴248と整列される第1ねじ穴260を画定することができる。また、第1ねじ穴260は第1開口222と底面208との間に配置されることができ、つまり、ブラインド穴であってもよい。第2ねじ穴262も提供されることができ、第2マスタトラックリンクファスナ254のねじ山がそれらと係合されることができる。再度、ねじ穴260、262の提供は、ナットの固定を保持する必要なく、ファスナ252、254を簡単に回転させることで、必要なクランプ動作を提供するようにする。これは組み立てを容易にする。ねじ穴は、他の実施形態で貫通穴であっても良いことが考えられる。なお、これらのねじ穴のうちあるものは、リンクのレール部分を形成する焼入れ物によって少なくとも部分的に画定され、機械の重量とその有料荷重に対する適宜な支持を提供することができる。
【産業上の利用分野】
【0037】
実際に、マスタトラックリンク、一対のマスタトラックリンク、マスタトラックリンク又は一対のトラックリンクを使用するチェーン、若しくは本明細書で説明された任意の実施形態に係る一対のアスタトラックリンクサブアセンブリは、OEMまたはアフターマーケットのコンテクストのもとで、販売、購買、製造、あるいは取得されることができる。
【0038】
マスタトラックリンク202またはマスタトラックリンクサブアセンブリ200は工場でチェーンアセンブリ112の自由端に取り付けられて取り替え部品として販売されることができ、または図1と関連して既に示し説明したような機械にあらかじめ設置されることができる。チェーンアセンブリ112の完成は、ユーザが単にクランプマスタトラックリンク202の自由端を、圧入によってまたは一部の他の適切な方法を用いることで設置されたブッシング124をあらかじめ有している隣接した標準トラックリンク118の自由端に整列すればよい(図8のステップ300参照)。その後、ピン126はブッシング124を介して挿入され、対向するマスタトラックリンク202の第1ボア218と整列される(図9のステップ302参照)。シュー114を取り付ける間、一つ以上のマスタトラックリンクファスナ252、254を締め付けることは、リンク202をピン126に突き当てることで、その上にしっかり保持させ、これによりチェーンアセンブリ112を完成する(図4のステップ304及び306参照)。
【0039】
チェーンアセンブリ112は全体として図1図9を参照して次のように説明されることができる。トラックチェーンアセンブリ112は、複数のトラックピン126及びトラックピン126の周りに配置されたトラックブッシング124、及びトラックピン126又はトラックブッシング124によって互いに連結される複数のトラックリンク118を含むことができ、ここで少なくとも一つのトラックリンク118はトラックピン126又はブッシング123を受容するための複数の開口128、132を画定する。チェーンアセンブリ112は、通常、複数のトラックファスナ150及びトラックファスナ150を介してトラックリンク118に取り付けられた複数のトラックシュー114をさらに含む。最後に、少なくとも1つ、通常2つの対向するクランプマスタトラックリンク202がトラックチェーンアセンブリ112の一つの自由端に取り付けられる。
【0040】
マスタトラックリンク202は、上面206と、底面208と、それらの間の厚みを画定する第1側面210及び第2側面212と、近位端214及び遠位端216とを画定する本体204を含むことができる。さらに、本体204は、遠位端216に隣接した第1ボア218と、近位端214に隣接した第2ボア220とを画定することができる。第1開口222は、第1ボア218と第2ボア220との間に配置されることができ、第1開口222は、第2ボア220よりも第1ボア218により近接して配置される。第2開口224は、第1開口222と第2ボア220との間に配置される。
【0041】
これによって、本体204は第1開口222と第2開口224との間に配置された第1ストラット226を含み、第1ストラット226を第1上部230と第1下部232とに分割する第1隙間228を画定する。本体204はまた、第1開口222と第1ボア218との間に配置された第2ストラット234を含み、第2ストラット234を第2上部238と第2下部240とに分割する第2隙間236を画定する。
【0042】
第1ボア218は、第1長手方向軸L218を画定し、第2ボア220は、第2長手方向軸L220を画定し、本体204はジョグして、第1ボア218及び第2ボア220が第1又は第2長手方向軸L218、L220に沿って互いからオフセットされるか又は離間されるようにオフセットマスタトラックリンク202を形成する。第1ボア218は第1直径D218を画定し、第2ボア220は第2直径D220を画定し、第1直径D218は第2直径よりも小さく、第1ボア218はスルーボアであり、第2ボア220はブラインドボアである。本体は第2開口224と第2ボア220との間に配置されたブリッジ246を含む。こような構造は、ブッシング124を第2ボア220内に圧入させるとともに、ピ126を第1ボア218内に摺動させることができる。それから、ファスナ252、254がシュー114をマスタトラックリンク202に取り付けるのに用いられることができ、リンク202をピン126に突き当ててピン126を保持させる。
【0043】
再度図4図7を参照されば、第1ボア218、218’、218”は、本体204、204’の残りの部分とは異なり、少なくとも部分的にテクスチャー加工されてトラックピンワーキングを減少させるように構成される円筒状ボア面400、400’、400”を画定することができる。幾つかの実施形態において、円筒状ボア面400は、0.1mm~0.4mm範囲の表面粗さの最大高低差を有するパターンでローレット加工(knurling)されるテクスチャー402(例えば、図4及び図5参照)を有し、円筒状ボア面400は、少なくともテクスチャーを有する領域で45~55ロックウェルCスケールの範囲で焼入れ硬化される。特定の実施形態において、表面粗さの最大高低差は、0.175mm~0.275mmの範囲であることができる。他の類型の表面テクスチャーが本開示の範囲内にあることが考えられる。
【0044】
他の実施形態(たとえば、図5及び図6参照)において、第1ボア218’、218”は、0.1mm~0.4mm範囲の表面粗さの最大高低差で少なくとも大部分がテクスチャー加工される402’、402”(例えば、大部分の表面積がテクスチャー加工される)円筒状ボア面400’、400”を画定する。少なくとも大部分がテクスチャー加工される円筒状ボア面400’は、少なくともテクスチャーを有する領域において45~55ロックウェルCスケールの範囲で焼入れ硬化される。幾つかの実施形態では、全ての円筒状ボア面400、400’、400”がテクスチャー加工される。特定の実施形態で、表面粗さの最大高低差は、0.175mm~0.275mmの範囲であることができる。
【0045】
幾つかの実施形態においては、高周波焼入れ(induction hardening)がテクスチャード領域402、402’、402”の焼入れに用いられることができる。他の実施形態では、全てのマスタトラックリンク200、200’、200”が焼入れ硬化されることができる。
【0046】
本体の残りの部分と異なり、少なくとも部分的にテクスチャー加工される円筒状ボア面を画定する第1ボアを提供することは、トラックピンを除去するときにテクスチャーを除去するか、損傷させるリスクがなく、ピンワーキングの減少に役立つ。より具体的に、クランプ動作が除去される際にテクスチャーとトラックピンとの間の隙間が自然に生成されるため、ピンを取り外してもテクスチャーのいずれも除去されないようにするはずなので、マスタトラックリンクのクランプ動作は円筒状ボア面がテクスチャード面によって全く被覆可能にする。したがって、トラックピンの除去時に摩擦が生じない。マスタトラックリンクがトラックピンをクランプするにあたり、ローレットのようなテクスチャーがトラックピンの外周に噛み合うようになり、トラックピンワーキングの可能性を減少させるのに役立つ。これは従来の技術では教示も提案もされていない結果をもたらす。
【0047】
特定の実施形態においては、ロレット(knurling tool)が前述したパターンを生成するのに用いられることができる。たとえば、ロレットは次のようなイギリス式単位仕様、すなわち略32TPI(teeth per inch)一般(対角線上)及び略22.5TPI横パターンを有することができる。
【0048】
本明細書に述べられる装置および組み立ての方法の実施形態に対して、本発明(単数または複数)の範囲または精神から逸脱することなく、様々な修正および変形を加えることは当業者には明らかであろう。本明細書および本願に開示した様々な実施を考慮することから、本開示の他の実施形態が当業者には明らかであろう。たとえば、装備の一部は本明細書で説明されたものと異なるように構成され機能することができ、任意の方法の特定のステップは省略されるか、具体的に言及されたものとは異なる手順で行われるか、ある場合は同時又は下位段階で行われることができる。なお、多様な実施形態の特定の態様又は特徴に対する変形や修正が、また他の実施形態を生成するために加えられることができ、多様な実施形態の特徴及び態様がさらなる実施形態を提供するために他の実施形態の他の特徴又は態様に追加又は代替されることができる。
【0049】
よって、本明細書および具体例は、単に例示的なものと見なされるべきであり、本発明(単数または複数)の真の範囲および精神が以下の特許請求の範囲およびそれらの均等物によって示されることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9