(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】調理器及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
A47J 37/06 20060101AFI20240416BHJP
F24C 7/08 20060101ALI20240416BHJP
F24C 7/06 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
A47J37/06 371
F24C7/08 320Z
F24C7/06 A
(21)【出願番号】P 2021004774
(22)【出願日】2021-01-15
【審査請求日】2023-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】網野 梓
(72)【発明者】
【氏名】林 正二
(72)【発明者】
【氏名】伊奈 深雪
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 功一
(72)【発明者】
【氏名】孫 永一
【審査官】西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】特許第6084752(JP,B2)
【文献】特開2002-085261(JP,A)
【文献】特開2007-110928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/00-37/07
F24C 7/08
F24C 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食材を調理する調理器であって、
蓋と下カバーが回転可能に接続されて箱状に形成された外箱の内部に収納される容器と、前記容器内に収納され食材を乗せるトレイと、前記トレイを上下に昇降させる昇降手段と、前記蓋または下カバーのいずれか又は双方に取り付けられたヒータを備える
とともに、
前記昇降手段は、前記下カバー側に固定されて回転する第1の昇降部と前記容器の内側に篏合される第2の昇降部を備え、前記第1の昇降部と前記第2の昇降部との間では磁力により前記第1の昇降部の回転が前記第2の昇降部に伝達され、前記第2の昇降部に取り付けられたタブが前記トレイに設けられた係止部と係止することで、前記第2の昇降部における回転に伴い、前記トレイを上下動させることを特徴とする調理器。
【請求項2】
請求項1に記載の調理器であって、
前記トレイは、中央部が盛り上がった凸部と、中央部がくぼんだ凹部が交互に配置されていることを特徴とする調理器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の調理器であって、
前記トレイは、中央部が盛り上がった凸部と、中央部がくぼんだ凹部が交互に配置されており、その両端部にトレイの前記係止部が備えられることで、前記第2の昇降部における回転に伴い、前記トレイを上下動させることを特徴とする調理器。
【請求項4】
請求項1から
請求項3のいずれか1項に記載の調理器であって、
前記蓋により形成される空間内に真空ポンプを備えることを特徴とする調理器。
【請求項5】
請求項1から
請求項4のいずれか1項に記載の調理器を用いた、調理器の制御方法であって、
前記調理器は、前記蓋と下カバーの双方にヒータを備え、
前記トレイを下に位置付けして食材に調味液を含侵させ、前記トレイを上に位置付けして食材に熱を加えて調理することを特徴とする調理器の制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の調理器の制御方法であって、
前記調味液は酵素を含んでおり、前記トレイを下に位置付けして食材に調味液を含侵させている状態では前記下カバー側の下ヒータにより温度を低温に保持し、前記トレイを上に位置付けして食材に熱を加えて調理する状態では前記蓋側の上ヒータにより加熱調理することを特徴とする調理器の制御方法。
【請求項7】
請求項6に記載の調理器の制御方法であって、
前記下カバー側の下ヒータにより温度を低温に保持するときの保持時間は、前記酵素の種別により可変とされることを特徴とする調理器の制御方法。
【請求項8】
請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の調理器の制御方法であって、
調理器内を真空状態とすることを特徴とする調理器の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は調理器及びその制御方法に係り、特に食材に調味液を含侵させ低圧状態で焼成するに好適な調理器及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食材を焼成する調理器として、従来から種々のものが知られている。例えば特許文献1では、動作時の汚れを軽減できるとともに、掃除・点検を行いやすく、そしてエネルギー効率の良い加熱焼成装置を提供することを目的として、「過熱蒸気を用いて被加熱物を加熱する加熱焼成装置であって、過熱蒸気を生成する過熱蒸気生成装置と、前記過熱蒸気によって被加熱物が焼成される焼成室とを備え、前記焼成室の内部には、前記被加熱物を移動させる搬送装置が設けられており、前記焼成室の内部における前記搬送装置の上方には、上部電熱ヒータが設けられており、前記搬送装置の下方には、前記過熱蒸気生成装置が配置されており、前記搬送装置の側部の下方には、ドリップ受け部が配置されており、前記焼成室の少なくとも一部は、前記焼成室の内部を開放可能な構造を有している、加熱焼成装置」のように構成している。
【0003】
また特許文献2では、調理室での発煙を抑制し、また調理室内の高さを確保しつつ効率よく加熱することのできる加熱調理器を得ることを目的として、「吸込口及び前記吸込口よりも下側に設けられた吹出口が形成され、前面側を開口した調理室と、前記調理室の前面側の開口を開閉自在に覆う調理室扉と、前記調理室の対向する一対の側壁のそれぞれに設けられ、前記調理室扉をスライドさせる一対の扉開閉手段と、前記調理室内を上方から加熱する上方加熱手段と、前記調理室内に設けられ、被加熱物が載置される調理皿と、前記調理室内の空気を前記吸込口から吸込み、吸い込んだ空気を前記吹出口から前記調理室内に送る送風手段と、前記送風手段が前記吸込口から吸い込んだ空気を加熱する循環風加熱手段と、前記上方加熱手段、前記送風手段、及び前記循環風加熱手段の動作を制御する制御手段とを備え、前記調理皿の幅寸法は、前記調理室の対向する前記一対の側壁の間の寸法よりも小さく、かつ、前記一対の扉開閉手段の間の寸法よりも大きいことを特徴とする加熱調理器」のように構成している。
【0004】
さらに特許文献3では、食材加工のための酵素を自動的に調製することのできる調理機器を提供することを目的として、「筺体を備える調理機器であって、食材を収容する収容室と、収容室内の圧力を制御する圧力制御手段と、前記収容室内の温度を制御する温度制御手段と、食材を加工するための酵素を収容する酵素収容手段と、前記酵素収容手段から送出された酵素を受けて、当該酵素を含んだ酵素水溶液を調製する調製手段と、調製された前記酵素水溶液を前記収容室内に導入するための酵素導入手段と、前記筺体の内部に設けられて、且つ前記収容室内の前記酵素水溶液を食材から分離するための分離手段と、を備える、調理機器」のように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-192237号公報
【文献】特許06214739号
【文献】特許06084752号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した特許文献によれば、それぞれの課題とした事項を満足する調理器とすることができる。然しながら、特許文献1はコンベア上の食品を加熱水蒸気によって調理するものであって、装置が大型化するとともに、低圧調理(真空調理)を行うものではない。特許文献2はIHクッキングヒータの魚焼きグリルのコンベクションオーブンであって、装置は小型化できるものの低圧調理(真空調理)を行うものではない。特許文献3は、酵素を用いて低圧調理を行うものであるが、装置が大型化するとともに、酵素切り替えのためにチューブ、電磁弁、廃液容器を備えており、洗い物が多くなり、かつ清潔性の課題が生じる場合がある。さらに、焼き目をつけることはできない。
【0007】
これに対し、本発明においては食材に調味液を含侵させ焼成する処理を小型の調理器内部で完結するとともに取り外しが容易なことから清潔性を確保可能な調理器及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上のことから本発明においては、「食材を調理する調理器であって、蓋と下カバーが回転可能に接続されて箱状に形成された外箱の内部に収納される容器と、容器内に収納され食材を乗せるトレイと、トレイを上下に昇降させる昇降手段と、蓋または下カバーのいずれか又は双方に取り付けられたヒータを備えることを特徴とする調理器」のように構成する。
【0009】
また本発明においては「蓋と下カバーの双方にヒータを備え、トレイを下に位置付けして食材に調味液を含侵させ、トレイを上に位置付けして食材に熱を加えて調理することを特徴とする調理器の制御方法」のように構成する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の調理器及びその制御方法によれば、食材に調味液を含侵させ焼成する処理を小型の調理器内部で完結するとともに取り外しが容易なことから清潔性を確保可能な調理器及びその制御方法を提供することができる。さらに、食材に調味液を含侵させ低圧状態で焼成する処理を行う際も本発明の小型の調理器内部で完結できる。
【0011】
特に本発明によれば、調理器の器1つの中で完結するため、洗い物が少なく、また容器の数が少ないため、装置の体積を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例に係る調理器の全体構成例を示す図。
【
図2】外箱内に収納される機器の組み立て構成例を示す図。
【
図6】本発明の実施例に係る調理器の構成機器を示す図。
【
図9】実施例1で説明した調理器1を利用する調理器の制御方法における一連の処理の流れを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下,本発明の実施例について、図面を用いて説明する。
【0014】
以下の実施例においては、調味料や酵素のような添加剤を含む調味液を、食材が入っている容器ごと低圧とすることにより、食材に含侵させ、酵素を反応させるための適した温度に保つことができ、食材が載せられているトレイを上昇させることにより調味液切を行い、上面のヒータにより焼成を行うことができる本発明の調理器及びその制御方法について具体的に説明する。具体的には、実施例1において調理器の構成を説明し、実施例2において調理器の制御方法を説明する。
【実施例1】
【0015】
実施例1では、本発明に係る調理器の構成について説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施例に係る調理器の全体構成例を示している。この図に示すように、調理器1は、蓋2aと下カバー2bが回転結合部2cで回転可能に接続された外箱2と、箱状に形成された外箱2の内部に収納される容器4(真空容器)と、容器4内に収納されるトレイ6と、トレイ6を上下に昇降させる昇降手段5と、例えば蓋2aに取り付けられたヒータ3を、主な構成要素として構成されている。
【0017】
なおヒータ3に関して、図示の例ではヒータ3は蓋2aにだけ設置されているが、バリエーションとしては下カバー2b側に下ヒータを追加するものであってもよい。また蓋2a側の上面ヒータ3は蓋2aの内側に備えられることが望ましいが、蓋2aの外側に備えられ伝熱させる構造にしても良い。
【0018】
また調理器1を構成する空間内には、外箱2の内部に真空部を形成し、また本発明の制御方法の手順を実行させる制御器などの機能を収納している。このため、
図2には示されていないが、調理器1の全体の機能としては
図6の構成部品を備えることになる。
図1に示す機器以外では、真空ポンプ11、制御器13、温度センサ14、インターフェイス機体側15を有しているが、これらの多くは蓋2aにより形成される空間内に収納される。
【0019】
なお、調理器1のインターフェイス機体側15は、スマホ本体やwifiルータなどの無線LANなどのインターフェイス16と無線接続されて、スマホなどの外部からスタートを制御し、あるいはスマホ本体への設定温度の表示確認、残り時間及び調理終了の情報提示などを通じて外部における監視可能とすることができる。なお、図示の例でのインターフェイス16の制御監視の機能は、調理器1の本体で行われるものであってもよい。
【0020】
図2は、外箱内に収納される機器の組み立て構成例を示す図である。外箱2内には、主要な構成部品である容器4(真空容器)と、トレイ6と、昇降手段5が収納されている。ここでは容器4の対向する両側壁にそれぞれ昇降手段5が配置され、容器4の内部にトレイ6を収納するとともに容器4内のトレイ6を昇降させる。
【0021】
このうち両側壁側の2組の昇降手段5のそれぞれは、昇降用モータ5aと、昇降用ギヤ5bと、昇降ディスク5cにより構成されている。このうち昇降用モータ5aと、昇降用ギヤ5bは容器4の対向する両側壁の外側に外箱2に固定する形で位置付けられ、機械的な結合により昇降用モータ5aの駆動力によって昇降用ギヤ5bが回転する。これに対し、昇降ディスク5cは容器4の対向する両側壁の内側に位置付けられ、昇降用ギヤ5bとの間で磁気結合による吸着力Fにより結合する。このため、昇降ディスク5cには磁石m2が、昇降用ギヤ5bには磁石m1が、同数の複数個ずつ備えられており、容器4の対向する側壁を挟んで磁気結合され、昇降用ギヤ5bの回転に応じて昇降ディスク5cも非接触で回転する。なお両側壁の内外の昇降ディスク5cと昇降用ギヤ5bは2個ずつ配置されている。
【0022】
容器4の対向する側壁の各内側には、2組の半円くぼみ40が形成されており、半円くぼみ40内に昇降ディスク5cがそれぞれ篏合されるようになっている。このため、半円くぼみ40内に昇降ディスク5cを当接すると、昇降用ギヤ5bに取り付けられた磁石m1と昇降ディスク5cに取り付けられた磁石m2との間の吸引力Fによりその位置に固定されて、回転可能となる。なお昇降ディスク5cにはタブtが設けられている。タブtは、円形の昇降ディスク5cの中心から離れた位置に形成されている。このためタブtの位置は、昇降ディスク5cの回転に伴い昇降ディスク5cの中心に対する円形軌道上に位置付けられることになる。
【0023】
なおここでは昇降用ギヤ5bと昇降ディスク5cの双方に磁石を配置する構成としているが、これはいずれか一方が磁石であり、他方は鉄などであってもよい、要は、磁力を利用して昇降用ギヤ5b側の回転を昇降ディスク5c側に非接触で伝達できるものであればよい。
【0024】
容器4内に収納されるトレイ6の拡大図が
図4に例示されている。トレイ6は、昇降手段5が配置される容器4の対向する両側壁に平行な、複数のかまぼこ部6aと複数の谷型部6bを交互に配置した構成を備えており、容器4の対向する両側壁に直交する方向であるA方向から見たときに、かまぼこ部6aと谷型部6bは、図示のような形状とされている。またトレイ6の端部には、タブひっかけ部6cが形成されており、タブひっかけ部6cとタブtが係止されており、タブtの位置は昇降ディスク5cの中心から離れた位置に設定されているので、昇降ディスク5cの回転によりタブ位置が円形軌道上を上下移動するのに応じて、トレイ6自体が上下動されることになる。
【0025】
係るトレイ6の構造とすることにより、トレイ6は複数の谷型部6bにより食材を落とさず、かまぼこ部6aにより液体は切れやすい構造であり、図示の左右端は昇降ディスク5cのタブtに引っ掛かる構造である。これにより、かまぼこ型により液体が左右に落ちやすく、谷型により食材が安定することを交互に組み合わせた形状で、ある程度の面も確保できるため、食材崩れの防止、グリルのような焼き目を実現できる。
【0026】
図3は、組み立て後の構成を示す図であり、
図2などから明らかなように、各部品のセットの順序として、まず容器4を外箱2の内部空間内にセットし、次に昇降ディスク5cを容器4の半円くぼみ40に当接し、トレイ6を容器4内にセットすることで
図3の形状への組み立てが完了する。
【0027】
この構造によれば、分解、組み立てを簡単に行えることが理解でき、このことはこれら部品の掃除、清掃が簡便に行い得、清潔度を向上させることができることを意味している。かつ小型化することができる。
【0028】
図5は、タブひっかけ部6cとタブtが係止され、かつ昇降ディスク5cの回転によりタブ位置が回転しながら上下するのに応じて、トレイ6自体が上下動されることを示す図である。最初の状態を上部に示すように、この図示の状態は昇降ディスク5cが半円くぼみ40にタブtを当接篏合された状態からトレイ6を容器4内に収納した
図3の組み立て状態である。この時タブtはタブひっかけ部6cの下側に配置されている。
【0029】
図5の中段は、回転途中段階を示しており、昇降用モータ5aの駆動力によって昇降用ギヤ5bが回転するとき、磁石m1、m2による磁気結合による吸引力Fが作用して昇降ディスク5cは、互いに反対方向に回転する。この時、昇降ディスク5cに取り付けられたタブtの位置も回転しながら上昇し、係止関係にあるタブひっかけ部6cを持ち上げ、結果としてトレイ6を持ち上げる。
図5の下段は、回転後のトレイ6の最上位位置における関係を示している。
【0030】
以上述べた実施例1の調理器1によれば、調味液を食材に含侵し低圧状態で焼成する処理を小型の調理器内部で完結するとともに、取り外しが容易なことから清潔性を確保可能な調理器とすることができる。
【0031】
なお上記の例では、2組の昇降手段5、従って4組の昇降ディスク5cを用いて、トレイ6の水平を保った状態で昇降させることを示しているが、これは左右の昇降量に差をつけてトレイを傾かせるようにすることもできる。あるいは照り焼きを行う場合などには、調味液への含侵と持ち上げた状態での焼成を複数回繰り返すようにすることもできる。
【実施例2】
【0032】
実施例2では、本発明の実施例1で説明した調理器1を利用する調理器の制御方法について説明する。
【0033】
図9は、実施例1で説明した調理器1を利用する調理器の制御方法における一連の流れを示す図であり、調理器1における固有の構造であるトレイ6の昇降手段5を用いた一連の処理の流れを例示している。なおトレイの昇降手段5を用いた調理は、「焼き」と「蒸し」に利用可能である。
図9では焼くことを例示している。
【0034】
なお、実施例2ではヒータ3として、蓋2aに取り付けた上ヒータ3aの他に、下カバー2bに取り付けた下ヒータ3bを備え、かつ調味液には酵素を含んで食材を柔らかく調理する機能を実現する場合の一連の流れを示している。なお温度センサ14は、下カバー2bの内部に取り付けられており、容器収納時に容器に接触して容器温度を計測する。
【0035】
この処理の段階Aでは、容器4とトレイ6を下カバー2b内にセットする。段階Bでは、食材(例えば肉)30と、酵素や調味液を容器内に投入する。段階Cでは器内圧力を例えば真空(0.6気圧)とし、酵素を食材に含侵させる。酵素を用いた調理によれば、食材30の組織の分解を速やかに行うことで、食材30を柔らかくすることができる。たとえば、たんぱく質の分解酵素であるプロテアーゼを用いれば、肉魚などの食材30を柔らかくすることができる。また段階Dでは、下ヒータ3bに通電しこれを用いて、低温(例えば40度~60度)に維持し、酵素反応が進行しやすい環境とする。なお、この時の温度は下カバー2bの内側に取り付けた温度センサ14により、例えば容器4の温度を検知する。またこの時の温度は使用する酵素が反応しやすい温度であり、酵素の種類により適宜設定可能とされるのがよい。例えば、食材30として肉魚を用い、酵素としてプロテアーゼを使用する場合は、40度~60度が酵素の活性が最適となる条件であるため、下ヒータの制御によって容器4内が40度~60度に維持するように設定する。なお、酵素は高温になると失活して食材30の分解を促進できないため、容器4内が高温にならないよう一定の温度帯を維持するように制御する。
【0036】
段階Eでは、調理器1における固有の構造であるトレイの昇降手段5を用いてトレイ6の位置を容器4内で上昇させ、調味液切りを行い、焼く処理の場合には蓋2aに取り付けた上ヒータ3aに通電しこれを用いて焼成処理を行う。なお、段階Eで蒸す処理を行うときには、調理器1における固有の構造であるトレイの昇降手段5を用いてトレイ6の位置を容器4内で上昇させ、調味液切りを行うところまでは焼成処理と同じであるが、蒸す処理の場合には下カバー2bに取り付けた下ヒータ3bに通電して、調味液の蒸発温度、圧力を利用して蒸す処理とする。その後所定の処理時間経過をもって、段階Fでは調理完了とする。
【0037】
図7は、上記処理を
図6の制御器13において実行する場合の処理フローである。
図7の処理は計算機の演算部を用いて行われるが、ここでの最初の処理ステップSt1では容器4とトレイ6を外箱2内に収納した状態でトレイ6に食材をセットし、調味液をかける。
【0038】
処理ステップSt2では、蓋2aを閉じて調理スタートし、トレイ下降状態において真空ポンプ11を起動し、真空引きを開始する。処理ステップSt3では、容器4内が設定圧力になったことを確認し、達していない場合には処理ステップSt4で真空引きを継続し、達した時には処理ステップSt5の処理に移る。なお、真空度が設定圧力に達したことの確認は、圧力センサの出力で確認することができるが、より簡便には真空引きを行っている時間が設定時間に到達したことでもって、真空に達したと推定して進めることもできる。
【0039】
処理ステップSt5では、真空引き終了をもって容器4内を常圧に復帰し、下ヒータ3bを通電し、温度センサ14が検知する温度が設定温度に達したことをもって、この設定温度での保温を開始する。処理ステップSt6では、保温時間が設定時間になったことを確認し、達していない場合には処理ステップSt5に戻って保温を継続し、達した時には処理ステップSt7の処理に移る。なおこの場合の保温時間は、食材30の厚さ、食材の量、あるいは酵素の種別などに応じて可変に設定できることが望ましい。
【0040】
処理ステップSt8では、設定時間経過するまで焼成処理を実行し、時間経過をもって処理ステップSt9における調理の完成と判断する。
【0041】
図8は、上記処理の流れを示すタイムチャートであり、4段階の処理に分けて記述している。第1段階S0は、トレイに食材をセットし、上から調味液をかけて予熱する状態であり、トレイ位置を上にした状態で圧力低下作業、下ヒータ予熱などの準備段階を表している。第2段階では温度センサが検知する容器温度をT1に保持し、食材を調味液に含侵させる。第3段階では、トレイを持ち上げ、焼き上げのために容器内を加熱する状態であり、第4段階では焼き上げを行う。
【符号の説明】
【0042】
1:調理器
2:外箱
2a:蓋
2b:下カバー
2c:回転結合部
3:ヒータ
4:容器
40:半円くぼみ
5:昇降手段
5a:昇降用モータ
5b:昇降用ギヤ
5c:昇降ディスク
6:トレイ
6a:かまぼこ部
6b:谷型部
6c:タブひっかけ部
11:真空ポンプ
12:真空容器
13:制御器
14:温度センサ
15:インターフェイス機体側
16:インターフェイス
F:吸引力
m1、m2:磁石
t:タブ