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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】コンパクト容器
(51)【国際特許分類】
   A45D 33/00 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
A45D33/00 610B
A45D33/00 610K
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021011411
(22)【出願日】2021-01-27
(65)【公開番号】P2022114926
(43)【公開日】2022-08-08
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】前田 信也
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-101411(JP,U)
【文献】実開平06-076108(JP,U)
【文献】実開昭63-186308(JP,U)
【文献】実開昭63-088214(JP,U)
【文献】実開昭59-139203(JP,U)
【文献】特開2020-055537(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0078419(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、該容器に対して第一位置と第二位置との間でスライド可能に支持される移動体と、該容器に収容される中皿と、ヒンジ部を介して該容器に開閉可能に連結する蓋体とを備え、
前記中皿は、前記移動体に対向する中皿磁石を有し、
前記蓋体は、閉姿勢において前記移動体に対向する蓋体磁石を有し、
前記移動体は、前記第一位置と前記第二位置の間に位置する中間位置において前記中皿磁石と前記蓋体磁石とを吸引し、該第一位置において該中皿磁石を吸引する一方該蓋体磁石に対して反発し、且つ該第二位置において該中皿磁石に対して反発する移動体磁石を有する、コンパクト容器。
【請求項2】
前記移動体磁石は、前記移動体がスライドする向きに延在する形状であって、両端部は前記中皿磁石と前記蓋体磁石に対して反発し、中間部は前記中皿磁石と前記蓋体磁石を吸引するように構成される、請求項1に記載のコンパクト容器。
【請求項3】
前記容器は、該容器の周壁において、前記移動体を露出させる周壁開口を有し、
前記移動体は、前記周壁開口から露出する移動体側壁を有し、
前記移動体側壁は、前記第二位置寄りに、前記移動体を前記第一位置にスライドさせる際に指掛かりとなる側壁凹部を有する請求項1又は2に記載のコンパクト容器。
【請求項4】
前記周壁は、前記側壁凹部につながる周壁凹部を有する請求項3に記載のコンパクト容器。
【請求項5】
前記容器は、該容器の底壁において、前記移動体を露出させる底壁開口を有し、
前記移動体は、前記底壁開口から露出する移動体下壁を有し、
前記移動体下壁は、前記第一位置寄りに、前記移動体を前記第二位置にスライドさせる際に指掛かりとなる下壁凹部を有する請求項1~4の何れか一項に記載のコンパクト容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンパクト容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば粉体の化粧料を固形化したプレストパウダーの如き固形内容物を携帯する際に使用される容器として、固形内容物を収めた中皿が収容される容器と、ヒンジ部を介して容器に開閉可能に連結する蓋体とを備えるコンパクト容器が既知である。
【0003】
このようなコンパクト容器は、容器の前側(ヒンジ部の逆側)に、蓋体を閉じた状態で維持するためのフック構造を備えている(例えば特許文献1参照)。フック構造は一般に、蓋体に爪状の係止部を設けるとともにこの係止部に係合するフックピースを容器に設け、フックピースを押し込むことで2つの係止部の係合が解除されて蓋体を開くことができるように構成されている。
【0004】
また中皿が容器から不用意に外れることを防止するため、多くの場合、容器には中皿を係合保持するための爪状の係止部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-136848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで上述したフック構造は、蓋体を開いた際に凹みや隙間として視認されるため、見栄えが損なわれる点で問題がある。更に2つの係止部が係合する際に衝撃音(係合時に“パチン”と発せられる音)が生じることから高級感が損なわれると感じることもある。
【0007】
また蓋体を開いた際には、中皿を係合するための爪部等も見えることがあり、この点でも見栄えが損なわれている。なお、特許文献1のコンパクト容器においては、中皿の側壁に凹部を設け、この凹部を爪部で係合することによって爪部が見えにくくなるようにしているが、中皿が専用品になってしまうために汎用性の点で難がある。また、このように構成する場合は、中皿を取り外すための貫通孔を容器の底部に設けなければならないため、底部の外観が損なわれることになる。なお、特許文献1の貫通孔は、指を挿入できる程度に比較的大きく開口しているため、外径を小さくすることによって見栄えを改善することは可能である。しかしこの場合は、細い棒などを小さな貫通孔に挿入して中皿を取り外さなければならないため、作業性の点で難がある。
【0008】
本発明はこのような問題点を解決することを課題とするものであって、見栄えを向上させ、蓋体を閉める際の衝撃音の発生を防止することができ、中皿の取り出しも行い易いコンパクト容器を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、容器と、該容器に対して第一位置と第二位置との間でスライド可能に支持される移動体と、該容器に収容される中皿と、ヒンジ部を介して該容器に開閉可能に連結する蓋体とを備え、
前記中皿は、前記移動体に対向する中皿磁石を有し、
前記蓋体は、閉姿勢において前記移動体に対向する蓋体磁石を有し、
前記移動体は、前記第一位置と前記第二位置の間に位置する中間位置において前記中皿磁石と前記蓋体磁石とを吸引し、該第一位置において該中皿磁石を吸引する一方該蓋体磁石に対して反発し、且つ該第二位置において該中皿磁石に対して反発する移動体磁石を有する、コンパクト容器である。
【0010】
前記移動体磁石は、前記移動体がスライドする向きに延在する形状であって、両端部は前記中皿磁石と前記蓋体磁石に対して反発し、中間部は前記中皿磁石と前記蓋体磁石を吸引するように構成されることが好ましい。
【0011】
前記容器は、該容器の周壁において、前記移動体を露出させる周壁開口を有し、
前記移動体は、前記周壁開口から露出する移動体側壁を有し、
前記移動体側壁は、前記第二位置寄りに、前記移動体を前記第一位置にスライドさせる際に指掛かりとなる側壁凹部を有することが好ましい。
【0012】
前記周壁は、前記側壁凹部につながる周壁凹部を有することが好ましい。
【0013】
前記容器は、該容器の底壁において、前記移動体を露出させる底壁開口を有し、
前記移動体は、前記底壁開口から露出する移動体下壁を有し、
前記移動体下壁は、前記第一位置寄りに、前記移動体を前記第二位置にスライドさせる際に指掛かりとなる下壁凹部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のコンパクト容器によれば、移動体を中間位置に移動させた状態においては、移動体磁石が中皿磁石と蓋体磁石とを吸引するため、中皿を容器に保持することができるとともに蓋体を閉じた状態(閉姿勢)で維持することができる。また移動体を第一位置に移動させた状態において、移動体磁石は中皿磁石を吸引する一方、蓋体磁石に対して反発するため、蓋体が容器から持ち上がってこれを簡単に開くことができ、またその際にも中皿を容器に保持することができる。また本発明のコンパクト容器は、従来のコンパクト容器のように爪状の係止部を利用していないため、蓋体を閉める際に衝撃音が生じることはなく、見栄えを損なうこともない。そして移動体を第二位置に移動させた状態において、移動体磁石は中皿磁石に対して反発し、容器に対して中皿が持ち上がるため、中皿を容易に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係るコンパクト容器の一実施形態を示す、(a)は蓋体を開いた状態での平面図であり、(b)は蓋体を閉じた状態での正面図である。
図2図1に示した容器本体に関し、(a)は平面図であり、(b)は図1に示したA-Aでの断面図である。
図3図1に示した移動体に関し、(a)は平面図であり、(b)は図1に示したA-Aでの断面図である。
図4図1に示した中皿に関し、(a)は平面図であり、(b)は図1に示したA-Aでの断面図である。
図5】移動体が中間位置に移動した状態に関し、(a)は正面図であり、(b)は図1に示したA-Aでの断面図である。
図6】移動体が第一位置に移動した状態に関し、(a)は正面図であり、(b)は図1に示したA-Aでの断面図である。
図7】移動体が第二位置に移動した状態に関し、(a)は底面図であり、(b)は正面図であり、(c)は図1に示したA-Aでの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明に係るコンパクト容器の一実施形態について説明する。なお、本明細書等における「上」、「下」とは、基本的には容器1が水平面に載置される状態での向き(図1(b)に示す向き)である。また「前」は、移動体4を設けた側であり、「後」とは、その逆側である。また「左」、「右」とは、前方から後方に向かって見る際の左右方向である。
【0017】
図1は、本発明に係るコンパクト容器の一実施形態を示している。本実施形態のコンパクト容器100は、粉体の化粧料を固形化したプレストパウダーの如き固形内容物を携帯する際に使用される。コンパクト容器100は、容器1(容器本体2と枠体3で構成される)と、移動体4(移動体本体5と移動体磁石6で構成される)と、中皿7(中皿本体8と中皿磁石9で構成される)と、蓋体10(蓋体本体11と、鏡12と、蓋体磁石13で構成される)と、ヒンジ部14(軸体15と、後述する容器側軸穴2d、及び蓋体側軸穴11bで構成される)を備えている。コンパクト容器100を構成する各部材は、蓋体磁石13等の磁石を除いて基本的に合成樹脂で形成されるが、他の素材(例えば軸体15は金属で形成し、鏡12はガラスで形成する等)で形成してもよい。
【0018】
容器本体2は、図1図2に示すように平面視で矩形状をなしていて全体的に有底筒状になるものであって、底壁2aと、底壁2aの外縁部に設けられる周壁2bとを備えている。容器本体2における後端部の中央には、切欠き部2cが設けられている。切欠き部2cの左右両側には、円柱状になる軸体15が挿通される円形の容器側軸穴2dが設けられている。
【0019】
図2(a)に示すように周壁2bは、容器本体2の前端部において、後方に向けて折れ曲がりながら延在する部分を備えている。具体的には、容器本体2の前端部左側に位置する部位から後方に向けて延在する部分(以下、この部位を内側左部分2eと称する)と、内側左部分2eの後側端部から右に向かって直線状に延在する部分(以下、この部位を内側後部分2fと称する)と、内側後部分2fの右側端部から前方に向けて延在する部分(以下、この部位を内側右部分2gと称する)と、内側右部分2gの前側端部から右側に向かって後方に向けて湾曲するように延在する部分(以下、この部位を湾曲部分2hと称する)とを備えている。また周壁2bは、内側左部分2eの前側端部から右側に向けて直線状に延在する前部分2jを備えている。なお前部分2jが右側に延在する長さは、内側右部分2gが位置する部位までの長さよりも短くなっていて、前部分2jの右側端部と内側右部分2gの間には隙間(開口)が形成される。以下、この隙間(開口)を周壁開口2kと称する。また湾曲部分2hの外側には、容器本体2の内側に向かって湾曲状に凹む凹部が形成される。以下、この凹部を周壁凹部2mと称する。そして内側後部分2fと前部分2jとの間には、底壁2aを貫通する底壁開口2nが設けられている。
【0020】
枠体3は、図1(b)、図5(b)に示すように、周壁2bの上方に位置する板状の天壁3aと、天壁3aの下面から底壁2aの上面に向けて延在して天壁3aを支持する支持壁3bとを備えている。図1(a)に示すように、天壁3aは平面視において周壁2bや内側左部分2e等を覆い隠すものであり、これにより周壁2bや内側左部分2e等は、平面視において視認できないようになっている。また天壁3aには、左側開口3cと右側開口3dが設けられている。図示したように左側開口3cには、中皿7が収容される。また右側開口3dには、パフ等の塗布具(不図示)が収容される。
【0021】
移動体本体5は、図3(a)、(b)に示すように、平面視及び正面視において全体的に矩形状をなすように形作られている。ここで、移動体本体5の前方に位置する壁を移動体側壁5aと称し、移動体本体5の下方に位置する壁を移動体下壁5bと称する。移動体側壁5aには、前方に向かって突出する前側突起部5cと、前側突起部5cの右側に位置し、後方に向けて湾曲するように凹む側壁凹部5dが設けられている。そして移動体下壁5bには、下方に向かって突出する下側突起部5eと、下側突起部5eの左側に位置し、上方に向けて湾曲するように凹む下壁凹部5fが設けられている。
【0022】
更に移動体本体5は、前後方向中央部において、移動体本体5の上面を下方に向けて凹ませるとともに左右方向に延在する収容凹部5gを備えている。本実施形態の収容凹部5gは、移動体本体5の上面を下方に向けて深く凹ませ、更に凹ませた底部から上方に向けて凹みの深さよりも高さの低いリブを起立させることによって、リブの上面と移動体本体5の上面との間に区画したものである。
【0023】
移動体磁石6は、図5(b)に示すように長尺状をなしていて、収容凹部5gの内側に取り付けられる。移動体磁石6は、収容凹部5gに取り付けた状態で上方に向けて作用する磁極が、左右の端部6aと、これらの端部6aの内側に位置する中間部6bとで異なるように構成されている。例えば本実施形態においては、両端部6aにおける上方に向けて作用する磁極はN極であり、中間部6bにおける上方に向けて作用する磁極はS極である。
【0024】
移動体磁石6を取り付けた移動体本体5は、枠体3を取り付ける前の容器本体2に対し、図1(a)に示すように内側後部分2fと前部分2jとの間に配置され、図5(b)に示すように下側突起部5eと下壁凹部5fが、底壁開口2nから露出する状態で取り付けらる。すなわち移動体本体5は、内側後部分2fと前部分2jによって前後方向に位置決めされた状態で、左右方向にスライド可能に支持される。なおこの状態において、移動体本体5の前側突起部5cと側壁凹部5dは、図1図5(a)に示すように周壁開口2kから露出する。そして容器本体2に枠体3を取り付けることによって、移動体本体5は上下方向にも位置決めされる。ここで移動体本体5は、これを左側に向けて移動させると、左側端部が容器本体2の内側左部分2eに当接する位置(本明細書等の「第一位置」に相当)まで移動する(図6参照)。また移動体本体5を右側に向けて移動させると、その右側端部が内側右部分2gに当接する位置(本明細書等の「第二位置」に相当)まで移動する(図7参照)。
【0025】
中皿本体8は、図4に示すように平面視で矩形状をなしていて全体的に有底筒状になるものである。図示は省略するが、中皿本体8の内側には、プレストパウダーの如き固形内容物が収容される。そして中皿本体8の前方上部には、前方に向けて水平に延在する中皿フランジ8aが設けられている。
【0026】
中皿磁石9は、図4に示すように平面視で矩形状をなしていて全体的に板状になるものである。本実施形態の中皿磁石9は、インサート成形によって中皿フランジ8aに取り付けられている。なお、中皿本体8に中皿磁石9を取り付ける手段はこれに限られず、例えば中皿フランジ8aに凹部を設けてこの凹部に中皿磁石9を嵌め込んでもよいし、接着剤等で中皿フランジ8aに固着させてもよい。図5(b)に示すように本実施形態の中皿磁石9は、下方に向けて作用する磁極がN極になるように中皿フランジ8aに取り付けられている。
【0027】
蓋体本体11は、これを閉めた際に容器本体2の上面を覆うように形作られている。蓋体本体11は、図1(a)に示すように、切欠き部2cに収まる支持部11aを備えている。支持部11aの左右方向端部には、軸体15が挿通される円形の蓋体側軸穴11bが設けられている。なお、上述した容器側軸穴2dと蓋体側軸穴11bの何れか一方は、軸体15を保持するものであり、何れか他方は、軸体15に対して摺動するものであって、これにより蓋体本体11は、容器本体2に対して揺動可能に支持されている。
【0028】
蓋体本体11の裏面(蓋体本体11を閉じたときの下面)には、図5(a)に示すように、鏡12が収まる凹状の鏡収容部11cが設けられている。蓋体本体11の前端部には、蓋体磁石13が収まる凹状の蓋体磁石収容部11dが設けられている。
【0029】
蓋体磁石13は、図1(a)に示すように平面視で矩形状をなしていて全体的に板状になるものである。蓋体磁石13は、蓋体磁石収容部11dに収めた後、例えば接着剤等によって鏡12を鏡収容部11cに固着することによって、蓋体本体11に保持される。なお蓋体磁石13を蓋体本体11に取り付けるにあたっては、他の手段(例えばインサート成形)を採用してもよい。本実施形態の蓋体磁石13は、下方に向けて作用する磁極がN極になるように蓋体本体11に取り付けられている。
【0030】
このような構成になるコンパクト容器100においては、図1(a)、図5(b)に示すように移動体本体5が、上述した第一位置(移動体本体5の左側端部が内側左部分2eに当接する位置)と第二位置(移動体本体5の右側端部が内側右部分2gに当接する位置)の間に位置する中間位置にある状態においては、移動体磁石6の中間部6bに対し、中皿磁石9と蓋体磁石13はその直上に位置する。すなわち、本実施形態における移動体磁石6の中間部6bは、上方に向けて作用する磁極がS極であり、中皿磁石9と蓋体磁石13は、下方に向けて作用する磁極がN極であって、移動体磁石6と中皿磁石9は吸引しあい、移動体磁石6と蓋体磁石13も吸引しあうため、中皿7を容器1に保持させ、蓋体10を閉じた状態で維持することができる。
【0031】
蓋体10を開くにあたっては、移動体本体5を左側に移動させる。なお、移動体本体5を左側に移動させる前の状態(移動体本体5が中間位置にある状態)においては、図1(a)に示すように移動体本体5の前方右側では、容器本体2の周壁凹部2mと移動体本体5の側壁凹部5dがつながって広い空間が区画されている。すなわち、移動体本体5を移動させるにあたってこの空間に指を容易に挿入することができる。また側壁凹部5dは、図示したように比較的大径の円弧状であるため、移動体本体5を移動させる際の指当たりがよくなって感触よく操作することができる。なお、上述したように移動体本体5は前後方向に位置決めされているため、従来のコンパクト容器におけるフックピースのように移動体本体5を後方に向けて押したとしても、移動体本体5は後方には移動しない。また容器本体2の前部分2jと移動体本体5の前側突起部5cとの間に区画される空間は、周壁凹部2mと側壁凹部5dの間に区画される空間よりも狭くなるため、使用者は、周壁凹部2mと側壁凹部5dの間の空間に自然と指を挿入する。すなわち、本実施形態のコンパクト容器100によれば、蓋体10の開け方を十分に理解していない使用者に対しても、周壁凹部2mと側壁凹部5dの間の空間に指を挿入して移動体本体5を左側に動かすことを促すことができる。
【0032】
移動体本体5を左側に移動させ、図6(b)に示すように移動体本体5の左側端部が内側左部分2eに当接する状態においては、移動体本体5とともに移動体磁石6も左側に移動していて、蓋体磁石13は、移動体磁石6における右側の端部6aの直上に位置する。本実施形態における移動体磁石6の端部6aは、上方に向けて作用する磁極がN極であり、蓋体磁石13は下方に向けて作用する磁極がN極であって、移動体磁石6と蓋体磁石13は反発しあうため、蓋体10は持ち上げられる。従って、持ち上がった蓋体10と容器1との隙間に指をかけることができるため、蓋体10を簡単に開くことができる。
【0033】
一方、移動体本体5を左側に移動させた状態においても、図6(b)に示すように中皿磁石9は、移動体磁石6の中間部6bの直上に位置する。すなわち、移動体本体5を左側に移動させても、移動体磁石6と中皿磁石9は吸引しあったままであるため、中皿7を容器1に保持し続けることができる。
【0034】
ところで、中皿7に収容した固形内容物を塗布した後、開いた蓋体10を閉じると、反発しあう蓋体磁石13と移動体磁石6の右側の端部6aが近接することになる。しかし移動体本体5はスライド可能であるため、移動体本体5は、蓋体磁石13と移動体磁石6との反発力によって図5(b)に示す中間位置に移動する。すなわち、中間位置において蓋体磁石13は、移動体磁石6の中間部6bの直上に位置し、移動体磁石6と蓋体磁石13は吸引しあうため、蓋体10を閉じた状態で維持することができる。なお蓋体と容器とを爪状の係合部で係合する従来のコンパクト容器では、蓋体を閉じる際に衝撃音が発生していたが、本実施形態のコンパクト容器100ではこのような爪状の係合部を利用していないため、衝撃音が生じることはない。
【0035】
中皿7に収容した固形内容物が減って新たな中皿7に交換するにあたっては、蓋体10を開いた状態で移動体本体5を右側に移動させる。移動体本体5を右側に移動させるには、図7に示すように、下壁凹部5fを利用する。なお下壁凹部5fは、容器本体2の底壁2aに設けた底壁開口2nから露出するものであって、容器本体2を水平面に載置した通常の使用時においては、指等が直接触れることがないため、不用意に移動体本体5を右側へ動かしてしまうことはない。本実施形態の下壁凹部5fは、上方に向けて湾曲するように凹んでいて、且つ移動体本体5の左側に設けられているため、下壁凹部5fに対して指が掛かりやすくなっている。従って下壁凹部5fに指を当ててそのまま右側に移動させることによって、移動体本体5を右側に移動させることができる。
【0036】
移動体本体5を右側に移動させ、図7(c)に示すように移動体本体5の右側端部が内側右部分2gに当接する状態においては、移動体本体5とともに移動体磁石6も右側に移動し、中皿磁石9は、移動体磁石6における左側の端部6aの直上に位置する。本実施形態における移動体磁石6の端部6aは、上方に向けて作用する磁極がN極であり、中皿磁石9は下方に向けて作用する磁極がN極であって、移動体磁石6と中皿磁石9は反発しあうため、中皿7は持ち上げられる。従って、持ち上がった中皿7と容器1との隙間に指をかけることができるため、使用後の中皿7を簡単に取り外すことができる。
【0037】
なお、新たな中皿7を枠体3の左側開口3cに挿入して、中皿フランジ8aを下方に向けて押し下げると、反発しあう中皿磁石9と移動体磁石6の左側の端部6aが近接することになる。しかし移動体本体5はスライド可能であるため、移動体本体5は、中皿磁石9と移動体磁石6との反発力によって図5(b)に示す中間位置に移動する。すなわち、中間位置において中皿磁石9は、移動体磁石6の中間部6bの直上に位置し、移動体磁石6と中皿磁石9は吸引しあうため、中皿7を容器1に保持することができる。
【0038】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。また、上記の実施形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果下方に向けて作用する磁極がN極に限定されることを意味するものではない。
【0039】
例えば本実施形態では、説明の便宜上、移動体磁石6の両端部6aにおける上方に向けて作用する磁極をN極とし、中間部6bの磁極をS極とし、中皿磁石9と蓋体磁石13は下方に向けて作用する磁極をN極としたが、N極とS極を入れ替えて構成してもよい。
【0040】
また移動体磁石6は、本実施形態では長尺状をなす一つの磁石で構成していたが、例えば長さの短い2つの磁石で構成し、左側に位置する移動体磁石によって中皿磁石9を吸引又は反発させ、右側に位置する移動体磁石によって蓋体磁石13を吸引又は反発させてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1:容器
2:容器本体
2a:底壁
2b:周壁
2c:切欠き部
2d:容器側軸穴
2e:内側左部分
2f:内側後部分
2g:内側右部分
2h:湾曲部分
2j:前部分
2k:周壁開口
2m:周壁凹部
2n:底壁開口
3:枠体
3a:天壁
3b:支持壁
3c:左側開口
3d:右側開口
4:移動体
5:移動体本体
5a:移動体側壁
5b:移動体下壁
5c:前側突起部
5d:側壁凹部
5e:下側突起部
5f:下壁凹部
5g:収容凹部
6:移動体磁石
6a:端部
6b:中間部
7:中皿
8:中皿本体
8a:中皿フランジ
9:中皿磁石
10:蓋体
11:蓋体本体
11a:支持部
11b:蓋体側軸穴
11c:鏡収容部
11d:蓋体磁石収容部
12:鏡
13:蓋体磁石
14:ヒンジ部
15:軸体
100:コンパクト容器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7