(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】ロードロック装置の使用方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
H01L21/68 A
(21)【出願番号】P 2021023675
(22)【出願日】2021-02-17
(62)【分割の表示】P 2020154842の分割
【原出願日】2020-09-01
【審査請求日】2023-06-28
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2019/035248
(32)【優先日】2019-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】WO
(73)【特許権者】
【識別番号】000227294
【氏名又は名称】キヤノンアネルバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 順
(72)【発明者】
【氏名】福田 直哉
(72)【発明者】
【氏名】高城 信二
(72)【発明者】
【氏名】下川 英利
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-126581(JP,A)
【文献】特開2017-041523(JP,A)
【文献】特開2006-093543(JP,A)
【文献】特開平05-144740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロードロック室と、前記ロードロック室の中で基板を保持する基板保持構造とを備えるロードロック装置の使用方法であって、
前記基板保持構造は、前記基板に対向する対向面を有し、前記基板と前記対向面との間の空間をガスが流れることができるように構成され、
前記基板保持構造によって前記基板が保持された状態において、前記対向面の外縁よりも内側に位置する部分と前記基板との距離は、前記対向面の前記外縁と前記基板との距離より大きく、
前記基板保持構造は、前記基板の側面の少なくとも一部が前記ロードロック室の内面に対向するように前記基板を保持し、
前記使用方法は、
前記基板保持構造によって前記基板が保持された状態において、前記ロードロック室の内部空間にガスが導入され、前記ガスが前記基板と前記対向面との間の空間を流れる工程を含む、
ことを特徴とするロードロック装置の使用方法。
【請求項2】
ロードロック室と、前記ロードロック室の中で基板を保持する基板保持構造とを備えるロードロック装置の使用方法であって、
前記基板保持構造は、前記基板に対向する対向面を有し、前記基板と前記対向面との間の空間をガスが流れることができるように構成され、
前記基板保持構造によって前記基板が保持された状態において、前記対向面の外縁よりも内側に位置する部分と前記基板との距離は、前記対向面の前記外縁と前記基板との距離より大きく、
前記ロードロック装置は、前記ロードロック室の内部空間にガスを分散させるガス分散部を更に備え、
前記基板保持構造は、前記基板の側面の少なくとも一部が前記ロードロック室の内面に対向するように前記基板を保持し、
前記使用方法は、
前記基板保持構造によって前記基板が保持された状態において、前記ロードロック室の内部空間にガスが導入され、前記ガスが前記基板と前記対向面との間の空間を流れる工程を含む、
ことを特徴とするロードロック装置の使用方法。
【請求項3】
ロードロック室と、前記ロードロック室の中で基板を保持する基板保持構造とを備えるロードロック装置の使用方法であって、
前記基板保持構造は、前記基板に対向する対向面を有し、前記基板と前記対向面との間の空間をガスが流れることができるように構成され、
前記基板保持構造によって前記基板が保持された状態において、前記対向面の外縁よりも内側に位置する部分と前記基板との距離は、前記対向面の前記外縁と前記基板との距離より大きく、
前記使用方法は、
前記基板保持構造によって前記基板が保持された状態において、前記ロードロック室の内部空間にガスが導入され、前記ガスが前記基板と前記対向面との間の空間を流れる工程を含む、
ことを特徴とするロードロック装置の使用方法。
【請求項4】
ロードロック室と、前記ロードロック室の中で基板を保持する基板保持構造とを備えるロードロック装置の使用方法であって、
前記基板保持構造は、前記基板に対向する対向面を有し、前記基板と前記対向面との間の空間をガスが流れることができるように構成され、
前記基板保持構造によって前記基板が保持された状態において、前記対向面の外縁よりも内側に位置する部分と前記基板との距離は、前記対向面の前記外縁と前記基板との距離より大きく、
前記部分は、水平面内の所定方向に関して前記対向面の前記外縁よりも内側に位置し、
前記使用方法は、
前記基板保持構造によって前記基板が保持された状態において、前記ロードロック室の内部空間にガスが導入され、前記ガスが前記基板と前記対向面との間の空間を流れる工程を含む、
ことを特徴とするロードロック装置の使用方法。
【請求項5】
ロードロック室と、前記ロードロック室の中で基板を保持する基板保持構造とを備えるロードロック装置の使用方法であって、
前記基板保持構造は、前記基板に対向する対向面を有し、前記基板と前記対向面との間の空間をガスが流れることができるように構成され、
前記基板保持構造によって前記基板が保持された状態において、前記対向面の外縁よりも内側に位置する部分と前記基板との距離は、前記対向面の前記外縁と前記基板との距離より大きく、
前記ロードロック室は、減圧処理装置に接続されるトランスファー室と接続する第1搬送口と、ローダー室と接続する第2搬送口とを有し、
前記ロードロック装置は、
前記第1搬送口を通して前記基板が前記トランスファー室に搬送される状態における前記基板保持構造と前記トランスファー室との間の経路の上方に配置されたガス導入部と、
前記基板保持構造の下方の空間を通してガスを排出するように配置されたガス排出部と、を更に備え、
前記ガス導入部は、ガスを分散させるガス分散部を含み、
前記ガス分散部は、前記第2搬送口に対向する位置に配置され、
前記ガス分散部は、柱形状部を有し、前記ロードロック室の内側面は、前記柱形状部から離隔し、かつ前記柱形状部に沿った湾曲面を含み、
前記使用方法は、
前記基板保持構造によって前記基板が保持された状態において、前記ロードロック室の内部空間にガスが導入され、前記ガスが前記基板と前記対向面との間の空間を流れる工程を含む、
ことを特徴とするロードロック装置の使用方法。
【請求項6】
前記柱形状部は、円柱形状を有し、前記湾曲面は、円筒面の一部を構成する、
ことを特徴とする請求項5に記載のロードロック装置の使用方法。
【請求項7】
ロードロック室と、前記ロードロック室の中で基板を保持する基板保持構造とを備えるロードロック装置の使用方法であって、
前記基板保持構造は、前記基板に対向する対向面を有し、前記基板と前記対向面との間の空間をガスが流れることができるように構成され、
前記基板保持構造によって前記基板が保持された状態において、前記対向面の外縁よりも内側に位置する部分と前記基板との距離は、前記対向面の前記外縁と前記基板との距離より大きく、
前記ロードロック室は、減圧処理装置に接続されるトランスファー室と接続する第1搬送口と、ローダー室と接続する第2搬送口とを有し、
前記ロードロック装置は、
前記第1搬送口を通して前記基板が前記トランスファー室に搬送される状態における前記基板保持構造と前記トランスファー室との間の経路の上方に配置されたガス導入部と、
前記基板保持構造の下方の空間を通してガスを排出するように配置されたガス排出部と、を更に備え、
前記ガス導入部は、ガスを分散させるガス分散部を含み、
前記ガス分散部は、前記第2搬送口に対向する位置に配置され、
前記使用方法は、
前記基板保持構造によって前記基板が保持された状態において、前記ロードロック室の内部空間にガスが導入され、前記ガスが前記基板と前記対向面との間の空間を流れる工程を含む、
ことを特徴とするロードロック装置の使用方法。
【請求項8】
前記基板保持構造は、前記対向面を有する第1部材と、前記第1部材の下面に対向する上面を有する第2部材とを含む、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のロードロック装置の使用方法。
【請求項9】
前記基板保持構造は、前記基板を支持するように前記基板と接触する複数の接触部を更に含み、前記第2部材は、前記第1部材および前記複数の接触部を支持する、
ことを特徴とする請求項8に記載のロードロック装置の使用方法。
【請求項10】
前記第2部材の前記上面は、前記第1部材の前記下面に沿った形状を有する、
ことを特徴とする請求項9に記載のロードロック装置の使用方法。
【請求項11】
前記第1部材は、コルゲート翼形状を有する、
ことを特徴とする請求項9に記載のロードロック装置の使用方法。
【請求項12】
前記部分は、所定方向に関して前記対向面の前記外縁よりも内側に位置し、
前記第1部材は、前記所定方向に直交する方向に関して複数の部分に分割されている、
ことを特徴とする請求項9に記載のロードロック装置の使用方法。
【請求項13】
前記ロードロック室は、減圧処理装置に接続されるトランスファー室と接続する第1搬送口と、ローダー室と接続する第2搬送口とを有し、
前記ロードロック装置は、
前記第1搬送口を通して前記基板が前記トランスファー室に搬送される状態における前記基板保持構造と前記トランスファー室との間の経路の上方に配置されたガス導入部と、
前記基板保持構造の下方の空間を通してガスを排出するように配置されたガス排出部と、を更に備える、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のロードロック装置の使用方法。
【請求項14】
前記第1搬送口の高さは、前記第2搬送口の高さより低い、
ことを特徴とする請求項13に記載のロードロック装置の使用方法。
【請求項15】
前記ガス導入部は、ガスを分散させるガス分散部を含み、
前記ガス分散部は、前記第2搬送口に対向する位置に配置されている、
ことを特徴とする請求項13に記載のロードロック装置の使用方法。
【請求項16】
前記ガス分散部は、柱形状部を有し、前記ロードロック室の内側面は、前記柱形状部から離隔し、かつ前記柱形状部に沿った湾曲面を含む、
ことを特徴とする請求項15に記載のロードロック装置の使用方法。
【請求項17】
前記柱形状部は、円柱形状を有し、前記湾曲面は、円筒面の一部を構成する、
ことを特徴とする請求項16に記載のロードロック装置の使用方法。
【請求項18】
前記基板保持構造によって保持された前記基板が前記ガス分散部の中心軸より高い位置に配置された状態で前記ロードロック室の圧力を低下させる動作、および、前記基板保持構造によって保持された前記基板が前記ガス分散部の中心軸より低い位置に配置された状態で前記ロードロック室の圧力を低下させる動作を実行するように前記ガス導入部および前記ガス排出部が制御される、
ことを特徴とする請求項15に記載のロードロック装置の使用方法。
【請求項19】
前記第2搬送口の付近の空間からガスを排出するように配置されたガス排出ラインを更に備える、
ことを特徴とする請求項13に記載のロードロック装置の使用方法。
【請求項20】
前記基板保持構造は、前記基板の側面の少なくとも一部が前記ロードロック室の内面に対向するように前記基板を保持する、
ことを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載のロードロック装置の使用方法。
【請求項21】
前記基板保持構造は、前記基板の側面の少なくとも一部が前記ロードロック室の内面に対向するように前記基板を保持し、
前記基板保持構造が配置されうる位置は、前記基板保持構造によって保持された前記基板の側面の一部が前記ガス分散部に対向する位置を含む、
ことを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載のロードロック装置の使用方法。
【請求項22】
前記基板の表面に沿った表面方向における前記対向面の寸法は、前記表面方向における前記基板の寸法より小さい、
ことを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載のロードロック装置の使用方法。
【請求項23】
前記部分は、水平面内の所定方向に関して前記対向面の前記外縁よりも内側に位置し、
前記水平面に垂直で前記所定方向に平行な複数の平面のそれぞれで切断された前記対向面の断面が互いに同一形状を有する、
ことを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載のロードロック装置の使用方法。
【請求項24】
前記基板保持構造によって保持される前記基板は、矩形形状を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のロードロック装置の使用方法。
【請求項25】
前記基板保持構造によって保持される前記基板は、基準方位を示す切り欠き部を有する円形形状を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のロードロック装置の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロードロック装置の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ロードロック室と、ロードロック室の中に配置されたウエハステージと、ウエハステージを昇降させる機構とを有する真空処理装置が開示されている。ウエハステージは、凸形状を有する。
【0003】
特許文献1に記載されたウエハステージのような構造を有する基板保持構造では、ロードロック室にガスの流れを形成する際にウエハステージが定在渦を生じさせうる。このような定在渦は、例えば、基板の下方から基板の上方へのパーティクルの舞い上がりをもたらし、基板へのパーティクルを付着させうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本発明は、基板へのパーティクルの付着を防止するために有利な技術を提供する。
【0006】
本発明の1つの側面は、ロードロック室と、前記ロードロック室の中で基板を保持する基板保持構造とを備えるロードロック装置の使用方法に係り、前記基板保持構造は、前記基板に対向する対向面を有し、前記基板と前記対向面との間の空間をガスが流れることができるように構成され、前記基板保持構造によって前記基板が保持された状態において、前記対向面の外縁よりも内側に位置する部分と前記基板との距離は、前記対向面の前記外縁と前記基板との距離より大きく、前記基板保持構造は、前記基板の側面の少なくとも一部が前記ロードロック室の内面に対向するように前記基板を保持し、前記使用方法は、前記基板保持構造によって前記基板が保持された状態において、前記ロードロック室の内部空間にガスが導入され、前記ガスが前記基板と前記対向面との間の空間を流れる工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の第1実施形態のロードロック装置を含む処理装置の構成を模式的に示す図。
【
図2】本発明の第1実施形態のロードロック装置を含む処理装置の動作を例示する図。
【
図3】本発明の第1実施形態のロードロック装置を含む処理装置の動作を例示する図。
【
図4】本発明の第1実施形態のロードロック装置を含む処理装置の動作を例示する図。
【
図5】本発明の第1実施形態のロードロック装置を含む処理装置の動作を例示する図。
【
図6】本発明の第2実施形態のロードロック装置を含む処理装置の動作を例示する図。
【
図7】本発明の第3実施形態のロードロック装置を含む処理装置の動作を例示する図。
【
図8】本発明の第4実施形態のロードロック装置を含む処理装置の動作を例示する図。
【
図9】本発明の第5実施形態のロードロック装置における第1部材の模式的な平面図。
【
図10】本発明の第1、第5実施形態のロードロック装置における基板保持構造の拡大された模式的な側面図。
【
図15】ロードロック室、延長室およびガス分散部の配置を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0009】
図1には、本発明の第1実施形態のロードロック装置100を含む処理装置の構成が模式的に示されている。ロードロック装置100は、ローダー室30とトランスファー室20との間に配置されたロードロック室110を有しうる。ローダー室30は、大気環境に維持されうる。ローダー室30では、例えば、キャリアから基板Sが提供されうる。あるいは、ローダー室30には、前処理装置から基板Sが提供されうる。ローダー室30は、その天井にフィルタ32を備えることができ、フィルタ32を通してローダー室30の内部空間にダウンフローが供給されうる。ローダー室30には、搬送ロボット34が配置され、基板Sは、搬送ロボット34によって搬送されうる。搬送ロボット34は、バルブ50を通して基板Sをローダー室30からロードロック室110に搬送しうる。基板Sが搬送されてきたロードロック室110は、十分に減圧される。その後、トランスファー室20に配置された搬送ロボット22は、バルブ40を通して基板Sをロードロック室110からトランスファー室20に搬送しうる。その後、搬送ロボット22は、バルブ60を通してトランスファー室20から減圧処理装置10に基板Sを搬送しうる。減圧処理装置10は、例えば、CVD装置、PVD装置、エッチング装置、プラズマ処理装置および電子線描画装置のいずれかでありうる。
【0010】
ロードロック室110は、減圧処理装置10と接続されるトランスファー室20と接続される第1搬送口111と、ローダー室30と接続される第2搬送口112とを有しうる。一例において、第1搬送口111の高さ(例えば、第1搬送口111の下端の高さ)は、第2搬送口112の高さ(例えば、第2搬送口112の下端の高さ)より低い。第1搬送口111は、バルブ40を通してトランスファー室20の内部空間と連通可能に配置されうる。第2搬送口112は、バルブ50を通してローダー室30の内部空間と連通可能に配置されうる。
【0011】
ロードロック装置100は、ロードロック室110にガス(例えば、クリーンドライエアまたは窒素ガス)を導入するガス導入部160を備えうる。ガス導入部160は、例えば、第1搬送口111を通して基板Sがトランスファー室20に搬送される状態における基板保持構造120とトランスファー室20との間の経路の上方に配置されうる。一例において、ガス導入部160は、第1搬送口111の上方に配置されうる。ガス導入部160は、ロードロック室110の内部空間にガスを分散させるガス分散部162を含みうる。ガス分散部162の少なくとも一部は、ロードロック室110の内部に配置されうる。ガス分散部162は、第2搬送口112に対向する位置に配置されうる。ガス導入部160は、ガスの導入を調整する流量調整バルブ164を含みうる。ガス分散部162は、柱形状部を有することができ、ロードロック室110の内側面は、該柱形状部から離隔し、かつ該柱形状部に沿った湾曲面を含むことができる。該柱形状部は、円柱形状を有することができ、該湾曲面は、円筒面の一部を構成することができる。
【0012】
ロードロック装置100は、ロードロック室110の中で基板Sを保持する基板保持構造120を備えうる。基板保持構造120は、基板Sに対向する対向面OSを有することができ、基板Sと対向面OSとの間の空間をガスが流れることができるように構成されうる。基板保持構造120は、
図10に拡大して示されるように、基板保持構造120によって基板Sが保持された状態において、対向面OSの外縁EEよりも内側に位置する部分PPと基板Sとの距離が対向面OSの外縁EEと基板Sとの距離より大きい構造を有しうる。このような構造は、
図10に点線矢印で模式的に示されるように、ロードロック室110の内部空間においてガスの流れに定在渦が形成されることを抑制する効果が高いことが、シミュレーションによって確認された。ここで、ガスの流れは、ガス導入部160によってロードロック室110の内部空間にガスが導入されることによって、および/または、後述のようにポンプ150等によってガスが該内部空間から排出されることによって、形成されうる。したがって、大気圧から高真空までを含む広い範囲で圧力が変化するロードロック室110においては、ガスの流れが必然的に形成されうる。
【0013】
一方、
図11に点線矢印で模式的に示されるように、基板Sを保持する基板保持構造SHがガスの流れを妨げるような壁を有する場合には、ガスの流れに定在渦が形成されうる。このような定在渦は、パーティクルを舞い上げて、該パーティクルを基板Sに付着させうる。また、
図12に点線矢印で模式的に示されるように、基板Sを保持する基板保持構造SH’が基板Sの下面に平行な平面の対向面OS’を有する場合においても、ガスの流れに定在渦が形成されることがシミュレーションによって確認された。このような定在渦は、パーティクルを舞い上げて、該パーティクルを基板Sに付着させうる。
【0014】
図1に戻って説明を続ける。基板保持構造120は、対向面OSを有する第1部材125と、第1部材125の下面LSに対向する上面USを有する第2部材126とを含みうる。基板保持構造120は、基板Sを支持するように基板Sと接触する複数の接触部124を含みうる。第2部材126は、第1部材125および複数の接触部124を支持しうる。第2部材126の上面USは、第1部材125の下面LSに沿った形状を有しうる。このような構造は、ガスの円滑な流れを可能にする。ここで、互いに対向する第1部材125(下面LS)と第2部材126(上面US)とで規定される空間がガスの流路として存在しない構造、つまり該空間に固体が充填されたような構造では、ガスの流れが阻害され、定在渦が発生しる。一方、第1部材125(下面LS)と第2部材126(上面US)とが互いに対向した構造は、定在渦の発生を抑制するために有利である。
【0015】
ロードロック装置100は、駆動機構130を備えうる。駆動機構130は、基板保持構造120を昇降させるようにロードロック室110の下方に配置されうる。駆動機構130は、連結部材122を介して基板保持構造120に連結されうる。
【0016】
ロードロック室110は、ロードロック室110の下部から側方に延長された延長室140と、延長室140の下方に配置され延長室140を介してロードロック室110のガスを排出するポンプ150とを備えうる。延長室140は、基板保持構造120の鉛直下方からずれた位置に開口142を有する底面144を有しうる。ポンプ150は、開口142に接続されうる。図示されていないが、ポンプ150と開口142との間にはバルブが配置されうる。
【0017】
ポンプ150は、例えば、ロータリーポンプと、該ロータリーポンプと開口142との間に配置されたターボ分子ポンプとを含みうる。ターボ分子ポンプのタービンは、動作時に高速で回転する。ターボ分子ポンプによって吸引されたパーティクルがタービンに衝突すると、タービンから弾き飛ばされうる。また、ポンプ150がターボ分子ポンプであるかどうかに拘わらず、ポンプ150は、それ自体がパーティクルを発生しうる。したがって、ロードロック室110の下部から側方に延長された延長室140の底面144に設けられた開口142にポンプ150を接続することが好ましい。これによって、ポンプ150からのパーティクルが基板保持構造120の側面とロードロック室の内側面との間隙Gを通して基板Sの上方の空間に至り、基板Sに付着することを低減することができる。
【0018】
ロードロック室110の第2搬送口112とローダー室30との間に配置されたバルブ50には、ガス排出ライン52が接続されうる。ガス排出ライン52を通して第2搬送口112の付近の空間のガスがロードロック室110の外部空間に排出されうる。ガス排出ライン52には、不図示のポンプが接続されうる。
【0019】
第2搬送口112の少なくとも一部は、延長室140の上(鉛直上方)が配置されうる。あるいは、延長室140の少なくとも一部は、第2搬送口112とポンプ150との間が配置されうる。このような構成は、ロードロック装置100のフットプリントの縮小に有利である。
【0020】
ローダー室30の少なくとも一部は、延長室140の上(鉛直上方)に配置されうる。あるいは、延長室140の少なくとも一部は、ローダー室30とポンプ150との間に配置されうる。このような構成も、ロードロック装置100のフットプリントの縮小に有利である。
【0021】
図15は、ロードロック室110、延長室140およびガス分散部162の配置を示す平面図である。この平面図は、ロードロック装置100が配置された床に対する正射影としても理解されうる。基板ホルダ120は、該平面図あるいは該正射影において、ガス分散部162と延長室140との間に位置しうる。あるいは、開口142は、該平面図あるいは該正射影において、ガス分散部162と延長室140との間に位置しうる。
【0022】
基板保持構造120の側面とロードロック室110の内側面との間隙Gの面積は、第2搬送口112の断面積より小さいことが好ましい。間隙Gの面積は、第2搬送口112の断面積の1/2、1/3または1/4より小さいことが更に好ましい。このような構成は、ローダー室30から第2搬送口112を通してロードロック室110の内部空間に基板Sが搬送される際に、ガス分散部162からロードロック室110の内部空間に導入されたガスが第2搬送口112およびガス排出ライン52を通して排出される量を、基板Sの上方の空間から間隙Gを通して基板保持構造120の下方の空間に排出される量より大きくするために有利である。これは、ローダー室30から第2搬送口112を通してロードロック室110の内部空間にパーティクルが侵入することを抑制するために効果的である。
【0023】
基板保持構造120の側面とロードロック室110の内側面との間隙Gの面積は、延長室140の底面144に設けられた開口142の断面積より小さいことが好ましい。このような構成は、ポンプ150からのパーティクルが間隙Gを通して基板Sの上方の空間に至り、基板Sに付着することを低減するために有利である。間隙Gの面積は、ロードロック室110と延長室140との間の接続部分146の断面積(鉛直面における断面積)より小さいことが好ましい。このような構成も、ポンプ150からのパーティクルが間隙Gを通して基板Sの上方の空間に至り、基板Sに付着することを低減するために有利である。
【0024】
図2、
図3、
図4および
図5には、
図1に示された処理装置の動作が例示的に示されている。まず、ガス導入部160からロードロック室110の内部空間にガスが導入(供給)されつつポンプ150によって該内部空間のガスがロードロック室110の外部空間に排出されうる。この際に、該内部空間の圧力が上昇するように、ガス導入部160から該内部空間へのガスの導入量がポンプ150によるガスの排出量より多くされうる。該内部空間の圧力が大気圧以上になったら、
図2に示されるように、バルブ50が開かれるとともにガス排出ライン52によるガスの排出が開始されうる。その後、搬送ロボット34によって、ローダー室30からロードロック室110の内部空間の基板保持構造120に基板Sが搬送されうる。
【0025】
その後、
図3に示されるように、バルブ50が閉じられ、基板保持構造120が駆動機構130によって上方に駆動されうる。また、ガス導入部160からロードロック室110の内部空間にガスが導入された状態で、ポンプ150による該内部空間からのガスの排出量が高められ、該内部空間が減圧される。その後、ガス導入部160による該内部空間へのガスの導入が停止され、ポンプ150による該内部空間からのガスの排出量が更に高められうる。
【0026】
ロードロック室110の内部空間の圧力が十分に減圧されたら、
図4に示されるように、基板Sをトランスファー室20に搬送するために高さまで、基板保持構造120が駆動機構130によって下方に駆動されうる。その後、
図5に示されるように、バルブ40が開かれて、搬送ロボット22によって、基板Sがロードロック室110の内部空間からトランスファー室20に搬送され、更に減圧処理装置10に搬送されうる。その後、バルブ40が閉じられるとともに、減圧処理装置10において基板Sが処理される。
【0027】
その後、バルブ40が開かれて、
図5に示されるように、減圧処理装置10の基板Sが搬送ロボット22によってロードロック室110の内部空間に搬送されうる。その後、バルブ40が閉じられうる。
【0028】
その後、ガス導入部160からロードロック室110の内部空間にガスが導入されつつポンプ150によって該内部空間のガスがロードロック室110の外部空間に排出されうる。この際に、該内部空間の圧力が上昇するように、ガス導入部160から該内部空間へのガスの導入量がポンプ150によるガスの排出量より多くされうる。該内部空間の圧力が大気圧以上になったら、
図2に示されるように、バルブ50が開かれるとともにガス排出ライン52によるガスの排出が開始されうる。その後、搬送ロボット34によって、ロードロック室110の内部空間の基板保持構造120からローダー室30に基板Sが搬送されうる。その後、バルブ50が閉じられ、ガス排出ライン52によるガスの排出が停止されうる。
【0029】
図1、
図3、
図4に例示されるように、基板保持構造120は、基板Sの側面(外周面)の少なくとも一部がロードロック室110の内面に対向するように基板Sを保持しうる。ここで、基板保持構造120によって保持された基板Sの側面(外周面)の該少なくとも一部は、基板Sの表面に平行な方向に関して、ロードロック室110の内面に対向するように基板Sを保持しうる。
【0030】
図1~
図5に例示されるように、基板保持構造120は、ロードロック室110の内部空間における複数の位置に配置されうる。該複数の位置は、
図1に例示されるように、基板保持構造120によって保持された基板Sの側面の一部がガス分散部162に対向する位置を含みうる。ここで、基板保持構造120によって保持された基板Sの側面(外周面)の該一部は、基板Sの表面に平行な方向に関して、ガス分散部162に対向しうる。
【0031】
図13Aに例示されるように、基板Sの表面に沿った表面方向(XY平面に平行な方向)における基板保持構造120の対向面OSの寸法DHは、該表面方向における基板Sの寸法DSより小さいように基板保持構造120が構成されてもよい。
図13A、
図13Bに例示されるように、基板保持機構120の部分PPは、水平面(XY平面)内の所定方向(Y方向)に関して対向面OSの外縁EEよりも内側に位置しうる。該水平面に(XY平面)に垂直で所定方向(Y方向)に平行な複数の平面(YZ平面に平行な複数の面)のそれぞれで切断された対向面OSの断面は、互いに同一の形状を有しうる。
【0032】
図14Aに例示されるように、基板保持構造120によって保持される基板Sは、矩形形状を有しうる。あるいは、
図14Bに例示されるように、基板保持構造120によって保持される基板Sは、基準方位を示す切り欠き部NTを有する円形形状を有しうる。ただし、基板保持構造120によって保持される基板Sは、他の形状を有してもよい。
【0033】
図6には、本発明の第2実施形態のロードロック装置100を含む処理装置の構成が模式的に示されている。第2実施形態として言及しない事項は、第1実施形態に従いうる。第2実施形態のロードロック装置100は、ロードロック室110の天井部が、基板Sの外縁の内側領域に対向する部分601と、基板Sの外縁に対向する部分602とを含み、部分601と基板Sとの距離が部分602と基板Sとの距離より大きい。
【0034】
図7には、本発明の第3実施形態のロードロック装置100を含む処理装置の構成が模式的に示されている。第3実施形態として言及しない事項は、第1実施形態に従いうる。第3実施形態のロードロック装置100は、ロードロック室110の天井部が、基板Sの外縁の内側領域に対向する部分601と、基板Sの外縁に対向する部分602とを含み、部分601と基板Sとの距離が部分602と基板Sとの距離より大きい。第3実施形態では、部分601が滑らかな曲面で構成されている。
【0035】
図8には、本発明の第4実施形態のロードロック装置100を含む処理装置の構成が模式的に示されている。第4実施形態として言及しない事項は、第1実施形態に従いうる。第4実施形態では、第1部材125は、コルゲート翼形状を有する。コルゲート翼形状は、例えば、対向面OSと基板Sとの間の空間にわたるような大きな渦を抑制するために有利である。
【0036】
図9には、本発明の第5実施形態のロードロック装置100における第1部材125の平面図が模式的に示されている。
図10には、本発明の第5実施形態のロードロック装置100における第1部材125の側面図が模式的に示されている。第5実施形態として言及しない事項は、第1実施形態に従いうる。第5実施形態では、基板保持構造120によって基板Sが保持された状態において、対向面OSの外縁EEよりも内側に位置する部分PPは、所定方向DIRに関して対向面OSの外縁EEよりも内側に位置し、第1部材125は、所定方向DIRに直交する方向に関して複数の部分125a、125bに分割されている。
【0037】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0038】
100:ロードロック装置、110:ロードロック室、111:第1搬送口、112:第2搬送口、120:基板保持構造、140:延長室、142:開口、144:底面、150:ポンプ、160:ガス導入部、162:ガス分散部、PP:部分、EE:外縁、OS:対向面