(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】情報処理装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 43/08 20220101AFI20240416BHJP
【FI】
H04L43/08
(21)【出願番号】P 2021137352
(22)【出願日】2021-08-25
【審査請求日】2023-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植田 一暁
(72)【発明者】
【氏名】田上 敦士
【審査官】宮島 郁美
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-517149(JP,A)
【文献】特開2005-311458(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0232230(US,A1)
【文献】特開2011-176387(JP,A)
【文献】特開2016-174269(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L12/00-12/66,13/00,41/00-49/9057,61/00-65/80,69/00-69/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の自律システム(AS)で構成されるネットワークにおいて、前記複数のASの内の第1ASを運用するオペレータが、新たなレイヤ3プロトコルを協調して導入するASを判定するための情報処理装置であって、
前記複数のASの内の前記第1ASとは異なる第2ASそれぞれについて、前記第1ASとの間の第1トラフィック量を示すトラフィック情報を生成する生成手段と、
前記トラフィック情報に基づき、前記第2ASの内の前記新たなレイヤ3プロトコルを導入していない前記第2ASから前記第1トラフィック量の上位n(nは2以上の整数)個の前記第2ASを第3ASとして選択する選択手段と、
前記n個の前記第3ASからk(kはnより小さい整数)個の前記第3ASを選択した組み合わせであるセットそれぞれについて、前記第1ASと前記セットに含まれる前記k個の前記第3ASとに前記新たなレイヤ3プロトコルを協調して導入した場合に、前記新たなレイヤ3プロトコルがエンドトゥエンドで使用されることになる前記第1ASとの間の第2トラフィック量を判定する判定手段と、
を備えていることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記第2トラフィック量を、前記トラフィック情報と、前記複数のASの接続関係を示す接続情報と、前記新たなレイヤ3プロトコルを既に導入している前記第2ASを示す情報と、に基づき判定することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記セットそれぞれについて求めた前記第2トラフィック量の順位を前記セットの順位として求めることを特徴とする請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記セットの順位を提示することを特徴とする請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記kの値の入力を受け付けて設定する設定手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記複数のASは、トラフィックの中継を行う第1タイプのASと、コンテンツを配信する第2タイプのASとに分類され、
前記第1ASは、前記第1タイプのASであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記生成手段は、前記第1ASを構成する装置のログに基づき、前記第2タイプの前記第2ASとの間の前記第1トラフィック量を求め、前記複数のASの接続関係を示す接続情報と、前記第2タイプの前記第2ASとの間の前記第1トラフィック量と、に基づき前記第1タイプの前記第2ASとの間の前記第1トラフィック量を求めることで、前記トラフィック情報を生成することを特徴とする請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記生成手段は、前記第1ASを構成する装置が前記第2ASを構成する装置との間で使用する経路制御プロトコルで得られた経路情報に基づき前記接続情報を生成することを特徴とする請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の情報処理装置としてコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、新たなレイヤ3プロトコルの導入計画を策定するための情報処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、コンテンツの配信等に利用されるインターネットは、レイヤ3プロトコルとしてインターネットプロトコル(IP)を使用している。IPを使用するネットワーク(IPネットワーク)において、パケットは、宛先コンピュータ(正確には宛先コンピュータのインタフェース)に割り当てられたIPアドレスを宛先アドレスとして格納している。IPネットワークを構成するルータ等の転送装置は、パケットに格納されている宛先のIPアドレスに基づき当該パケットの転送を行う。この様に、現在のレイヤ3プロトコルにおいて、パケットは、宛先コンピュータ(ホスト)を示すアドレスを有し、当該プロトコルは、ホスト指向のプロトコルとして参照される。
【0003】
一方、インターネットを介してコンテンツを取得するユーザ(及び当該ユーザが使用するクライアント装置)にとっては、要求するコンテンツを取得できれば良く、当該コンテンツが、どのコンピュータに格納されているかは重要ではない。このため、非特許文献1は、新たなレイヤ3プロトコルを開示している。非特許文献1に記載のプロトコルを、以下では、コンテンツ・セントリック・ネットワーキング(CCN:Content Centric Networking)プロトコルとして参照する。
【0004】
CCNプロトコルにおいて、コンテンツを取得するクライアント装置は、取得するコンテンツを示す情報、例えば、取得するコンテンツの名前を示す情報を含む要求パケットを送信する。CCNプロトコルを使用するネットワークの各転送装置は、要求パケットに含まれるコンテンツの名前に基づき要求パケットを転送し、要求パケットが要求するコンテンツを保持しているサーバ装置は、当該要求パケットを受信すると、保持しているコンテンツをクライアント装置に向けて送信する。なお、要求パケットを転送した各転送装置は、要求パケットが要求するコンテンツの名前と、当該要求パケットを受信したインタフェースとを示す情報を保持しており、サーバ装置が送信したコンテンツは、当該情報に基づき要求パケットと同じ経路を逆向きに転送されてクライアント装置に到達する。また、コンテンツを中継した転送装置は、必要に応じて当該コンテンツをキャッシュすることができる。転送装置は、自装置がキャッシュしているコンテンツを要求する要求パケットを受信した場合、自装置がキャッシュしているコンテンツを、当該要求パケットを送信したクライアント装置に向けて送信することができる。
【0005】
IPプロトコルにおいて、転送装置は、IPアドレスに基づきパケットを転送するのみであり、当該パケットが搬送する情報(コンテンツ)を認識しない。一方、CCNプロトコルにおいては、コンテンツの名前に基づき要求パケットや、コンテンツを含むパケットが転送されるため、転送装置は、コンテンツを識別でき、よって、当該コンテンツを、当該コンテンツの名前に関連付けてキャッシュできる。したがって、コンテンツがネットワークの各転送装置において分散的にキャッシュされ、コンテンツの転送効率が改善される。CCNプロトコルの様に、コンテンツの名前に基づきパケットの転送を行うプロトコルは、コンテンツ指向のプロトコルとして参照される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】V.Jacobson,et al.,"Networking Named Content",in Proceedings of ACM CoNEXT 2009,2009年12月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在のインターネットは、複数の自律システム(AS)が相互接続することにより構成されている。ASは、統一された運用ポリシにより管理されるネットワークである。なお、ASは、おおまかには、ISP(インターネットサービスプロバイダ)によって運用されるAS(以下、第1タイプのAS)と、CP(コンテンツプロバイダ)によって運用されるAS(以下、第2タイプのAS)とに分類することができる。
【0008】
ISPは、ユーザへのインターネットアクセスの提供と、パケットの中継を主に行うオペレータである。つまり、第1タイプのASは、クライアント装置を収容し、パケットの中継を主に行うネットワークである。一方、CPは、コンテンツを配信するためのサーバ装置群を運用するオペレータである。つまり、第2タイプのASは、コンテンツのソースとなり、コンテンツ配信の起点となるネットワークである。
【0009】
したがって、現在のインターネットにおいて、クライアント装置がコンテンツを要求する場合、当該要求パケットは、クライアント装置が接続している第1タイプのASから当該コンテンツを配信している第2タイプのASまで転送され、当該コンテンツは、当該コンテンツを配信している第2タイプのASから当該クライアント装置が接続している第1タイプのASを介して当該クライアント装置に配信されることになる。なお、クライアント装置が接続している第1タイプのASとコンテンツを配信している第2タイプのASとの間には、1つ以上の他の第1タイプのASが存在することもある。
【0010】
新たなコンテンツ指向のレイヤ3プロトコルを導入し、コンテンツ指向のレイヤ3プロトコルのメリットを享受するには、クライアント装置から第2タイプのASまでの間に存在する総ての第1タイプのASと、当該第2タイプのASとが、新たなレイヤ3プロトコルを導入している必要がある。つまり、第1タイプのASを運用しているオペレータは、自身が運用しているASのみにコンテンツ指向のレイヤ3プロトコルを導入しても、そのメリットを享受することができず、他のASを運用するオペレータと協調しながら、コンテンツ指向のレイヤ3プロトコルを導入する必要がある。しかしながら、現在、インターネットには10万以上のASが存在するため、コンテンツ指向のレイヤ3プロトコルを協調して導入することによって高い効果を得られるASを決定する必要がある。
【0011】
本発明は、新たなレイヤ3プロトコルを協調して導入するASを判定するための情報を提示する情報処理装置及びプログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によると、複数の自律システム(AS)で構成されるネットワークにおいて、前記複数のASの内の第1ASを運用するオペレータが、新たなレイヤ3プロトコルを協調して導入するASを判定するための情報処理装置は、前記複数のASの内の前記第1ASとは異なる第2ASそれぞれについて、前記第1ASとの間の第1トラフィック量を示すトラフィック情報を生成する生成手段と、前記トラフィック情報に基づき、前記第2ASの内の前記新たなレイヤ3プロトコルを導入していない前記第2ASから前記第1トラフィック量の上位n(nは2以上の整数)個の前記第2ASを第3ASとして選択する選択手段と、前記n個の前記第3ASからk(kはnより小さい整数)個の前記第3ASを選択した組み合わせであるセットそれぞれについて、前記第1ASと前記セットに含まれる前記k個の前記第3ASとに前記新たなレイヤ3プロトコルを協調して導入した場合に、前記新たなレイヤ3プロトコルがエンドトゥエンドで使用されることになる前記第1ASとの間の第2トラフィック量を判定する判定手段と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、新たなレイヤ3プロトコルを協調して導入するASを判定するための情報を提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態の説明に使用するネットワークの構成図。
【
図2】第2タイプのASとのトラフィック量の例を示す図。
【
図4】情報処理装置が実行する処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0016】
図1は、本実施形態の説明に使用するインターネットの構成図である。インターネットは、複数のASを含む。なお、各ASは、上述した様に、第1タイプのASと第2タイプのASに分類され得る。第1タイプのASは、ISPによって運用されるASであり、第2タイプのASは、CPによって運用されるASである。
図1によると、AS#1~AS#10の10個のASがあり、AS#1~AS#3は、第1タイプであり、AS#4~AS#10は、第2タイプである。
【0017】
以下、
図1に示すネットワークの構成において、AS#1のオペレータが、新たなレイヤ3プロトコルの導入を計画する際に、本実施形態の情報処理装置が実行する処理について説明する。なお、以下の説明では、本実施形態の情報処理装置を使用するAS#1のオペレータを、起点オペレータと表記し、AS#1を起点ASと表記する。さらに、以下の説明において、第1タイプのASとは、起点ASを除く残りの第1タイプのAS、つまり、AS#2及びAS#3を意味するものとする。
【0018】
まず、情報処理装置は、
図1に示すASの接続関係を示す接続情報を生成・取得する。接続情報は、起点ASを構成するルータが、他のASのルータとの間で使用するBGP(ボーダゲートウェイプロトコル)で得られた経路情報から生成することができる。BGPは、経路制御プロトコルである。なお、接続情報は、Tracerouteなどの経路探索ツールによる計測結果に基づき生成することもできる。
【0019】
さらに、情報処理装置は、
図2に示す、起点AS(AS#1)と第2タイプのASそれぞれとの間のトラフィック量を示す情報を生成する。例えば、
図2に示す情報は、起点ASを構成するルータの通信ログからパケットの宛先IPアドレスを判定し、当該IPアドレスから宛先ASを判定することで生成することができる。なお、
図2では、起点ASと7つの第2タイプのASとの間の総トラフィック量を100%とし、各第2タイプのASとの間のトラフィック量を総トラフィック量に対するパーセンテージで表示している。
【0020】
情報処理装置は、接続情報と、
図2に示す情報とに基づき、起点ASとその他のASそれぞれとのトラフィック量を示すトラフィック情報を生成する。
図3は、
図1に示す接続情報にトラフィック情報、つまり、起点ASとその他のASそれぞれとの間のトラフィック量を追加したものである。具体的には、トラフィック情報が示す第2タイプのASとの間のトラフィック量は、
図2に示すトラフィック量と同じである。一方、第1タイプのASとの間のトラフィック量は、当該第1タイプのASがトラフィックを中継する第2タイプのASのトラフィック量を合計することで求める。例えば、
図2によると、起点ASとAS#7との間のトラフィック量は22%であり、AS#8との間のトラフィック量は3%である。
図3より、起点ASとAS#7及びAS#8との間のトラフィックはAS#2が中継するため、AS#2との間のトラフィック量は22+3=25%となる。AS#3についても同様である。
【0021】
続いて、情報処理装置は、
図4に示す処理を実行する。S10において、情報処理装置は、トラフィック情報が示す各ASとのトラフィック量から、上位n個のトラフィック量のASを選択する。上述した様に、現在、10万以上のASが存在するが、総てのASを対象として
図4に示す処理を実行することは現実的ではない。一方、起点ASとの間のトラフィック量が少ないASと協調して新たなレイヤ3プロトコルを導入してもその効果は低い。S10の処理は、
図4の処理の対象とするASを絞り込むものであり、"n"は予め決定した2以上の所定値である。なお、本例においては、n=6とする。したがって、
図3よりトラフィック量が下位3つのAS#6、AS#8、AS#8は、S10で除外され、AS#2~AS#5、AS#7及びAS#9がS10で選択される。
【0022】
情報処理装置は、S11において、n個のASから選択したk個(kはn未満の整数)のASの組み合わせ(セット)の総てを判定する。kは、新たなレイヤ3プロトコルを協調して導入するASの数を決めるパラメータであり変数である。以下では、k=3の場合を例にして説明を行う。k=3であるため、情報処理装置は、S11で、
6C
3=20個のセットを判定する。
図5の表の"セット"は、20個のセットを示している。
【0023】
情報処理装置は、S12において、各セットについて、カバレッジを判定する。"カバレッジ"とは、起点ASが、セットに含まれるk個(本例では3つ)のASと協調して新たなレイヤ3プロトコルを導入した場合、エンドトゥエンド(End to End)で新たなレイヤ3プロトコルが使用されることになるトラフィック量である。例えば、AS#2、AS#4、AS#7のセットの場合、起点ASとAS#4及びAS#7との間でのコンテンツの配信においては、エンドトゥエンドで新たなレイヤ3プロトコルが使用されるため、カバレッジは32+22=54%となる。一方、AS#4、AS#5、AS#7のセットの場合、起点ASとAS#4及びAS#5との間でのコンテンツの配信には、エンドトゥエンドで新たなレイヤ3プロトコルが使用されるが、AS#2が新たなレイヤ3プロトコルに対応していないため、起点ASとAS#7との間でのコンテンツの配信には、エンドトゥエンドで新たなレイヤ3プロトコルを使用することはできない。したがって、AS#4、AS#5、AS#7のセットのカバレッジは、32+20=52%となる。さらに、AS#2、AS#3、AS#4のセットの場合、コンテンツの配信にエンドトゥエンドで新たなレイヤ3プロトコルを使用できるのはAS#4のみであるため、カバレッジは32%となる。
図5の表の"カバレッジ"は、各セットのカバレッジを示している。
【0024】
情報処理装置は、S13において、各セットのカバレッジの降順に各カバレッジを順位付けする。
図5の表の"順位"は、各セットの順位を示している。
【0025】
図5の表より、3つのASと協調して新たなレイヤ3プロトコルを導入する場合、順位が1位のセットであるAS#2、AS#4、AS#7を選択することが最も効果的であると判定することができる。したがって、起点オペレータは、3つのASと協調して新たなレイヤ3プロトコルを導入する場合、まず、AS#2、AS#4、AS#7のオペレータと交渉することが効果的と判定することができる。また、順位が1位のセットのオペレータに新たなレイヤ3プロトコルの導入に消極的なオペレータがいる場合、
図5の順位に従い、次に新たなレイヤ3プロトコルを導入することが効果的なASのセットを判定することができる。例えば、AS#4が新たなレイヤ3プロトコルの導入に消極的である場合、AS#4を含まないとの条件で最も順位の高いセット(5位)のオペレータ、つまり、AS#2、AS#5、AS#7のオペレータと交渉することが効果的と判定することができる。
【0026】
また、kの値を変更することで、協調して新たなレイヤ3プロトコルを導入するASの数と、その最大のカバレッジを判定することができる。一般的に、kの数が大きくなると、カバレッジの最大値も増加するが、オペレータ間の交渉が煩雑になる。したがって、様々なkの値で最大のカバレッジを判定することで、実際に交渉するオペレータを判定するための材料とすることができる。
【0027】
なお、上記説明においては、既に新たなレイヤ3プロトコルを導入しているASが存在しないことを前提としていたが、本発明は、既に新たなレイヤ3プロトコルを導入しているASが存在する場合にも適用することができる。この場合、情報処理装置には、既に新たなレイヤ3プロトコルを導入しているASを示す導入済AS情報が設定される。そして、
図4のフローチャートのS10及びS11の処理においては、既に新たなレイヤ3プロトコルを導入しているASを除外する。例えば、AS#2が既に新たなレイヤ3プロトコルを導入済である場合、S10においては、AS#3~AS10の内から上位n個のASを選択する。
【0028】
一方、S12において、セットのカバレッジを算出する際には、既に新たなレイヤ3プロトコルを導入しているASを考慮する。例えば、AS#2が既に新たなレイヤ3プロトコルを導入済であるものとすると、AS#4、AS#5、AS#7のセットの場合、起点ASとAS#4、AS#5及びAS#7それぞれとの間でのコンテンツの配信には、エンドトゥエンドで新たなレイヤ3プロトコルを使用することができる。したがって、カバレッジは74%となる。
【0029】
図6は、本実施形態による情報処理装置のブロック図である。なお、情報処理装置は、1つ以上のプロセッサと、1つ以上のメモリと、を備えたコンピュータにより実現することができる。1つ以上のプロセッサが、1つ以上のメモリに格納されているプログラムを実行することで、
図6の機能ブロックが実現され得る。
【0030】
生成部10は、複数のASの内の起点AS(第1AS)とは異なる第2AS(AS#2~AS#10)それぞれについて、起点ASとの間の第1トラフィック量を示すトラフィック情報を生成する。
図3は、トラフィック情報の例を示している。
【0031】
なお、生成部10は、第2タイプの各第2AS(AS#4~AS#10)との間の第1トラフィック量については、起点ASを構成する装置(ルータ等)のログに基づき判定することができる。また、生成部10は、第1タイプの各第2AS(AS#2、AS#3)との間の第1トラフィック量については、第2タイプの各第2ASとの間の第1トラフィック量と、複数のASの接続関係を示す接続情報と、に基づき判定することができる。接続情報は、例えば、
図1に示すASの接続関係を示す情報である。生成部10は、接続情報を、例えば、第1ASを構成する装置が第2ASを構成する装置との間で使用するBGPの様な経路制御プロトコルで得られた経路情報に基づき生成することができる。
【0032】
選択部11は、トラフィック情報に基づき、第1トラフィック量の上位n(nは2以上の整数)個の第2ASを第3ASとして選択する。上記例では、AS#2~AS#5、AS#7及びAS#9が第3ASとして選択されている。なお、導入済AS情報が設定されている場合、選択部11は、新たなレイヤ3プロトコルを導入していない第2ASから第1トラフィック量の上位n個の第2ASを第3ASとして選択する。
【0033】
判定部12は、n個の第3ASからk(kは、nより小さい整数)個の第3ASを選択した組み合わせであるセットそれぞれについて、起点ASとセットに含まれるk個の第3ASとに新たなレイヤ3プロトコルを協調して導入した場合に、新たなレイヤ3プロトコルがエンドトゥエンドで使用されることになる第1ASとの間の第2トラフィック量を判定する。第2トラフィック量は、上記説明では"カバレッジ"として参照されている。なお、判定部12は、第2トラフィック量を、トラフィック情報と、接続情報と、に基づき判定することができる。なお、導入済AS情報が設定されている場合、判定部12は、第2トラフィック量の判定に導入済AS情報も使用する。さらに、判定部12は、セットそれぞれについて求めた第2トラフィック量の順位をセットの順位として求める。判定部12は、この様にして求めた
図5に示す情報をユーザに提示する。なお、ユーザには、上位所定数の順位のみを表示する構成とすることもできる。
【0034】
設定部13は、kの値を受け付けて設定する。なお、本実施形態においてnの値は、情報処理装置による
図4の処理の処理速度(処理にかかる時間)を考慮して予め決定される所定値である。しかしながら、nの値についてもユーザ入力により任意の値に設定できる構成とすることもできる。さらに、設定部13は、導入済AS情報の入力を受け付けて保持する。
【0035】
なお、上記実施形態では、起点ASが第1タイプのASであったが、起点ASは、第2タイプのASであっても良い。この場合、第2タイプの起点ASは、コンテンツの配信先のIPアドレスに基づき、宛先となる第1タイプのASとの値のトラフィック量を求め、接続情報に基づき、各第1タイプのASそれぞれとの間のトラフィック量を示すトラフィック情報を求める。
【0036】
以上の構成により、新たなレイヤ3プロトコルを協調して導入するASを判定するための情報を提示することができる。したがって、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0037】
なお、本発明による情報処理装置は、コンピュータを上記情報処理装置として動作させるプログラムにより実現することができる。これらコンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶されて、又は、ネットワーク経由で配布が可能なものである。
【0038】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0039】
10:生成部、11:選択部、12:判定部