IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 矢崎総業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-コネクタ 図1
  • 特許-コネクタ 図2
  • 特許-コネクタ 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20240416BHJP
   H01R 13/516 20060101ALI20240416BHJP
   H01R 13/648 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
H01R13/52 B
H01R13/52 301J
H01R13/516
H01R13/648
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021171080
(22)【出願日】2021-10-19
(65)【公開番号】P2023061222
(43)【公開日】2023-05-01
【審査請求日】2023-02-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】中井 慧
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-060844(JP,A)
【文献】特開2011-044354(JP,A)
【文献】特開2015-076381(JP,A)
【文献】特開2014-138470(JP,A)
【文献】特開2007-087874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R13/40-13/533
H01R13/56-13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子金具と、前記端子金具に繋がる電線と、前記端子金具を収容するハウジングと、前記ハウジングの外周を取り囲むように配置されるシールドシェルと、前記シールドシェルの外周を取り囲んで密着するように設けられる筒状の弾性材料から構成された防水用カバーと、を備えるコネクタであって、
前記防水用カバーは、
当該防水用カバーの筒内面から突出し且つ周方向に延びる突条部を、前記シールドシェルとの密着部分に有し、
筒状の前記シールドシェルの外周面には、径方向内側に窪んだ環状溝である収容凹部が形成され、
筒状の前記防水用カバーは、外周側に径方向内側に窪んだ環状溝である外周凹部が形成され且つ内周側に径方向内側に突出する環状の内周凸部が形成された環状の部分を、前記密着部分として有し、前記内周凸部には、前記内周凸部の頂面から突出し且つ周方向に延びる複数の前記突条部が、前記防水用カバーの軸線方向に等しい間隔を空けて並ぶように、且つ、最も前記軸線方向の一側に位置する前記突条部が前記外周凹部の前記一側の端より前記軸線方向の他側に位置するように、且つ、最も前記他側に位置する前記突条部が前記外周凹部の前記他側の端より前記一側に位置するように、設けられており、
前記密着部分の前記内周凸部が前記収容凹部に収容されて、複数の前記突条部が前記収容凹部の底面に密着しており
前記密着部分の前記外周凹部を取り囲んで前記密着部分を径方向内側に引き締めるように前記防水用カバーに取り付けられる帯状のタイバンドを、更に有し、
前記タイバンドの前記軸線方向の長さは、前記外周凹部の前記軸線方向の長さより小さく、且つ、前記軸線方向に隣接する前記突条部同士の前記軸線方向の間隔より大きく、且つ、前記外周凹部の前記一側の端と最も前記一側に位置する前記突条部との前記軸線方向の間隔より大きく、且つ、前記外周凹部の前記他側の端と最も前記他側に位置する前記突条部との前記軸線方向の間隔より大きく、
前記密着部分の前記外周凹部には、前記外周凹部の底面から突出し且つ周方向に延びる突条部が設けられていない、
コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電線と端子との接続箇所を周辺から隔離して防水するための防水用カバー(例えば、ブーツやグロメット等)を備えたコネクタが提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-173895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような防水用カバー(グロメット等)は、一般に、ゴム等の弾性材料から構成され、コネクタのハウジング等を取り囲むように配置されて防水用カバー自身が弾性的に収縮することでハウジング等に密着するようになっている。しかしながら、例えば、コネクタの小型化等の観点から肉厚が薄い防水用カバーが用いられる場合、コネクタから延びる電線が配索時に引っ張られる等の理由で防水用カバーに外力が及ぶと、防水用カバーがハウジング等に適正に密着した状態が維持されず、ハウジングと防水用カバーとの間に隙間が生じる場合がある。このような隙間は、防水用カバーによる防水性能を損なう原因となり得るため、好ましくない。
【0005】
本発明の目的の一つは、防水性能を適正に維持可能なコネクタの提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係るコネクタは、以下を特徴としている。
【0007】
端子金具と、前記端子金具に繋がる電線と、前記端子金具を収容するハウジングと、前記ハウジングの外周を取り囲むように配置されるシールドシェルと、前記シールドシェルの外周を取り囲んで密着するように設けられる筒状の弾性材料から構成された防水用カバーと、を備えるコネクタであって、
前記防水用カバーは、
当該防水用カバーの筒内面から突出し且つ周方向に延びる突条部を、前記シールドシェルとの密着部分に有し、
筒状の前記シールドシェルの外周面には、径方向内側に窪んだ環状溝である収容凹部が形成され、
筒状の前記防水用カバーは、外周側に径方向内側に窪んだ環状溝である外周凹部が形成され且つ内周側に径方向内側に突出する環状の内周凸部が形成された環状の部分を、前記密着部分として有し、前記内周凸部には、前記内周凸部の頂面から突出し且つ周方向に延びる複数の前記突条部が、前記防水用カバーの軸線方向に等しい間隔を空けて並ぶように、且つ、最も前記軸線方向の一側に位置する前記突条部が前記外周凹部の前記一側の端より前記軸線方向の他側に位置するように、且つ、最も前記他側に位置する前記突条部が前記外周凹部の前記他側の端より前記一側に位置するように、設けられており、
前記密着部分の前記内周凸部が前記収容凹部に収容されて、複数の前記突条部が前記収容凹部の底面に密着しており
前記密着部分の前記外周凹部を取り囲んで前記密着部分を径方向内側に引き締めるように前記防水用カバーに取り付けられる帯状のタイバンドを、更に有し、
前記タイバンドの前記軸線方向の長さは、前記外周凹部の前記軸線方向の長さより小さく、且つ、前記軸線方向に隣接する前記突条部同士の前記軸線方向の間隔より大きく、且つ、前記外周凹部の前記一側の端と最も前記一側に位置する前記突条部との前記軸線方向の間隔より大きく、且つ、前記外周凹部の前記他側の端と最も前記他側に位置する前記突条部との前記軸線方向の間隔より大きく、
前記密着部分の前記外周凹部には、前記外周凹部の底面から突出し且つ周方向に延びる突条部が設けられていない、
コネクタであること。
【発明の効果】
【0008】
本発明のコネクタによれば、防水用カバー(例えば、グロメット等)の筒内面から突出し且つ周方向に延びる突条部が、防水用カバーに設けられる。この突条部により、防水用カバー自身の剛性が高まって変形し難くなるため、シールドシェルに取り付けられたときの密着性が向上する。更に、シールドシェルに取り付けられた防水用カバーが弾性的に収縮するときの弾性力が突条部に集中することで、防水性能も向上する。そのため、シールドシェルのように一般に金属材料で構成されて外力に対する変形の度合いが小さい(換言すると、防水用カバーの変形量との差が大きい)部材に防水用カバーが取り付けられていても、防水用カバーがシールドシェルに密着した状態が維持され、防水用カバーとシールドシェルとの間に隙間等が生じ難くなる。したがって、本構成のコネクタは、防水用カバーに外力が及んでも、防水性能を適正に維持可能である。
【0009】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施形態に係るコネクタを示す斜視図である。
図2図2は、図1のA-A断面の主要部を示した図である。
図3図3は、図2のB部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るコネクタ1について説明する。図1に示すコネクタ1は、コネクタ1が有する一対の電線20と、コネクタ1に嵌合される相手側コネクタ(図示省略)と、を電気的に接続する中継コネクタとして機能する。
【0012】
以下、説明の便宜上、図1図3に示すように、「前後方向」、「上下方向」及び「幅方向」を定義する。「前後方向」、「上下方向」及び「幅方向」は、互いに直交している。前後方向は、コネクタ1と相手側コネクタとの嵌合方向と一致しており、「前」及び「後」はそれぞれ、コネクタ1における相手側コネクタとの嵌合の進行側及び退行側に対応している。
【0013】
図1及び図2に示すように、コネクタ1は、一対の端子金具10と、一対の端子金具10に繋がる一対の電線20と、一対の端子金具10を収容するハウジング30と、ハウジング30に後側から装着されるシールドシェル40と、ハウジング30及びシールドシェルの間に挟まれるシール部材50と、シールドシェル40及び一対の電線20を覆うグロメット60と、グロメット60に取り付けられるタイバンド70と、ハウジング30に前側から装着されるパッキン80と、を備える。以下、コネクタ1を構成する各部材について順に説明する。
【0014】
まず、端子金具10及び電線20について説明する。端子金具10は、金属板に対してプレス加工及び曲げ加工等を施すことで形成されており、前後方向に延びる形状を有している。端子金具10は、前後方向に延びる細長い平板状の端子部11(図1参照)と、端子部11の後端部に位置する接続部(図示省略)と、を一体に有する。端子金具10の接続部には、電線20の端部が接続される。
【0015】
電線20は、金属製の導体芯線と、導体芯線を覆う絶縁被覆とで構成されている。電線20の端部では、絶縁被覆が除去されて導体芯線が露出しており、露出した導体芯線に端子金具10の接続部が加締め固定されている。これにより、端子金具10に繋がる電線20が、端子金具10の接続部から後方に延出している。
【0016】
次いで、ハウジング30について説明する。ハウジング30は、樹脂成形品である。ハウジング30は、図1及び図2に示すように、前後方向に延びる筒状の形状を有しており、前後方向からみて幅方向に長い扁平な形状を有している。ハウジング30の前後方向中央部の外周には、全周に亘って径方向外側に突出するフランジ部31が形成されている。ハウジング30におけるフランジ部31より前側の部分が、相手側コネクタの筒状の相手側嵌合部(図示省略)に内挿されて嵌合する嵌合部32を構成し、ハウジング30におけるフランジ部31より後側の部分が、シールドシェル40に内挿される挿入部33を構成している(図2参照)。挿入部33におけるフランジ部31との境界部分には、径方向内側に窪む環状溝部34が形成されている(図2参照)。
【0017】
ハウジング30の内部には、幅方向に間隔を空けて並ぶ一対の箇所の各々にて、前側から後側に向けて、端子挿通孔35(図1参照)及び端子収容室(図示省略)が、この順に、且つ、互いに前後方向に連通するように、形成されている。端子挿通孔35の前端は、ハウジング30の前端(嵌合部32の前端)に開口し、端子収容室の後端は、ハウジング30の後端(挿入部33の後端)に開口している。
【0018】
一対の電線20の端部が接続された一対の端子金具10は、ハウジング30に収容させる。このため、各端子金具10が、ハウジング30の内部に後側から挿入される。これにより、各端子部11が対応する端子挿通孔35に挿通され、且つ、各接続部が対応する端子収容室に収容される。端子金具10の挿入完了状態では、一対の端子部11の前方部分が、ハウジング30の前端(嵌合部32の前端)から前方へ突出し(図1参照)、且つ、一対の端子金具10から後方に延出する一対の電線20が、ハウジング30の後端(挿入部33の後端)から後方へ延出している(図1参照)。なお、必要に応じて、電線20の外周面と端子収容室の内周面との間に挟持されて両者間の環状隙間を封止するパッキンや、前記パッキンの後方への脱落を防止するホルダ等が設けられても良い。
【0019】
次いで、シールドシェル40及びシール部材50について説明する。金属製のシールドシェル40は、図1及び図2に示すように、ハウジング30の挿入部33に外挿可能な前後方向に延びる筒状の形状を有している。シールドシェル40の前端近傍の外周面には、図2に示すように、径方向に窪み且つ前後方向に延びる環状の収容凹部42が形成されている。収容凹部42には、グロメット60の後述する密着部分64(図2及び図3参照)が収容されることになる(図2参照)。シールドシェル40は、ハウジング30の挿入部33に後側から装着されて、ハウジング30内部に位置する一対の電線20への電磁ノイズの伝達を防止する機能を果たす。
【0020】
シール部材50は、ハウジング30の挿入部33と、挿入部33に外挿されるシールドシェル40との間の環状隙間を封止する機能を果たす部材である。ゴム製のシール部材50は、図2に示すように、前後方向に延びる筒状の本体部51と、本体部51の前端から径方向内側に突出する環状の突部52と、を備える。
【0021】
シール部材50は、ハウジング30の挿入部33とシールドシェル40との間に挟まれるように配置される(図2参照)。このため、まず、シール部材50を、後側から、突部52が環状溝部34に進入し且つ本体部51が挿入部33の外周を覆うように、挿入部33に装着する(図2参照)。この状態において、環状溝部34に進入しているシール部材50の突部52は、シール部材50の挿入部33からの後側への脱落を防止する機能を発揮している。次いで、シールドシェル40を、後側から、挿入部33に外挿されるように、挿入部33に装着する(図2参照)。シールドシェル40の装着完了状態では、図2に示すように、シールドシェル40に設けられた係止片41と挿入部33の外周に設けられた係止孔36とが係合することで、シールドシェル40のハウジング30からの後側への脱落が防止される。
【0022】
シールドシェル40が装着されることで、シール部材50の本体部51は、ハウジング30の挿入部33とシールドシェル40との間に押圧挟持される。この結果、本体部51は、挿入部33とシールドシェル40との間の環状隙間を封止する機能を発揮する。
【0023】
次いで、グロメット60及びタイバンド70について説明する。ゴム製のグロメット60は、図1に示すように、前後方向に延びる筒状の形状を有し、シールドシェル40の外周を覆う大径部61と、シールドシェル40から後方に延出する一対の電線20の外周を覆う小径部62と、大径部61と小径部62とを連結する繋ぎ部63と、を一体に備える。グロメット60は、シールドシェル40から後方に延出する一対の電線20を保護し、且つ、端子金具10と電線20との接続箇所を周辺から隔離して防水する機能を果たす。
【0024】
大径部61の前端近傍には、図2に示すように、外周側が径方向内側に窪み且つ内周側が径方向内側に突出する環状の密着部分64が、前後方向に延びるように設けられている。即ち、密着部分64の外周側には、大径部61の他の部分と比べて径方向内側に窪んだ外周凹部64aが形成され、密着部分64の内周側には、大径部61の他の部分と比べて径方向内側に突出する内周凸部64bが形成されている(図3参照)。
【0025】
密着部分64の内周凸部64bの頂面(筒内面)には、径方向内側に突出し且つ周方向に延びる複数(本例では、3つ)の突条部65が、前後方向に等しい間隔を空けて並ぶように設けられている。
【0026】
タイバンド70は、グロメット60の密着部分64の外周凹部64aに取り付けられて、グロメット60の防水性を向上させる機能を果たす部材である(図1図3参照)。タイバンド70は、本例では、樹脂製又はゴム製であり、環状且つ帯状の形状を有している。
【0027】
グロメット60は、一対の電線20に挿通された状態から、一対の電線20に対して前方へ相対移動させて、密着部分64が収容凹部42に収容されるように大径部61をシールドシェル40の外周に装着することで、シールドシェル40及び一対の電線20に装着される。グロメット60の装着完了状態では、大径部61の密着部分64は、弾性的に僅かに拡径した状態で収容凹部42の底面に装着されている。この結果、密着部分64の径方向内側への弾性復元力によって、密着部分64の複数の突条部65が、収容凹部42の底面に押し付けられた状態で密着している。
【0028】
ここで、グロメット60の密着部分64には複数の突条部65が設けられているため、このような突条部65が設けられない場合と比べて、密着部分64自身が変形し難くなる(密着部分64全体としての弾性係数が増大する)。この結果、密着部分64全体としての弾性復元力が増大することで、密着部分64の収容凹部42への密着性が向上する。更に、密着部分64の径方向内側への弾性復元力が複数の突条部65に集中して作用することで、複数の突条部65と収容凹部42の底面との接触面圧が増大する。この結果、グロメット60の防水性が向上する。
【0029】
グロメット60の装着完了後、タイバンド70が、一対の電線20に挿通された状態から、一対の電線20及びグロメット60に対して前方へ相対移動されて、グロメット60の密着部分64を覆うように外周凹部64aの底面に取り付けられる。タイバンド70の外周凹部64aへの取付完了状態では、タイバンド70は、弾性的に僅かに拡径した状態で外周凹部64aの底面に取り付けられている。この結果、タイバンド70の径方向内側への弾性復元力(締め付け力)が密着部分64の突条部65に及び、突条部65と収容凹部42の底面との接触面圧が更に増大する。この結果、グロメット60の防水性が更に向上する。
【0030】
ここで、図3に示すように、タイバンド70の前後方向長さH1は、外周凹部64aの前後方向長さH2より小さく、且つ、前後方向に隣接する突条部65同士の前後方向の間隔H3より大きい。更に、タイバンドの前後方向長さH1は、外周凹部64aの前端(後端)と最も前側(後側)に位置する突条部65との前後方向の間隔H4よりも大きい。
【0031】
このため、タイバンド70が、タイバンド70の前端が外周凹部64aの前端に当接する前端位置と、タイバンド70の後端が外周凹部64aの後端に当接する後端位置と、の間のいかなる前後方向位置に取り付けられていても、複数の突条部65のうち少なくとも1つは、タイバンド70の環内に相当する位置に存在することになる。この結果、タイバンド70の径方向内側への弾性復元力(締め付け力)が少なくとも1つの突条部65に及ぶことが保証されるので、タイバンド70による上述したグロメット60の防水性の向上作用を確実に発揮させることができる。
【0032】
次いで、パッキン80について説明する。ゴム製のパッキン80は、図1に示すように、前後方向に延びる筒状の形状を有しており、前後方向からみて、ハウジング30の嵌合部32の外周形状に対応して、幅方向に長い扁平な形状を有している。パッキン80は、前側から、ハウジング30の嵌合部32の外周に装着される(図1参照)。コネクタ1と相手側コネクタとの嵌合により相手側コネクタの筒状の相手側嵌合部が嵌合部32に外挿された状態において、嵌合部32に装着されたパッキン80は、嵌合部32の外周面と相手側嵌合部の内周面との間で押圧挟持される。これにより、嵌合部32と相手側嵌合部との間の隙間を封止する機能を果たす。以上、コネクタ1を構成する各部材について説明した。
【0033】
組み付けが完了したコネクタ1は、相手側コネクタと嵌合される。コネクタ1と相手側コネクタとを嵌合させるためには、相手側コネクタの筒状の相手側嵌合部が、コネクタ1の嵌合部32に外挿される。これにより、コネクタ1は、一対の電線20と相手側コネクタとを電気的に接続する中継コネクタとして機能し得る状態となる。
【0034】
<作用・効果>
以上、本実施形態に係るコネクタ1によれば、グロメット60の筒内面から突出し且つ周方向に延びる突条部65が、グロメット60に設けられる。この突条部65により、グロメット60自身の剛性が高まって変形し難くなるため、シールドシェル40に取り付けられたときの密着性が向上する。更に、グロメット60が弾性的に収縮するときの弾性力が突条部65に集中することで、防水性能も向上する。そのため、シールドシェル40のように一般に金属材料で構成されて外力に対する変形の度合いが小さい(換言すると、グロメット60の変形量との差が大きい)部材にグロメット60が取り付けられていても、グロメット60がシールドシェル40に密着した状態が維持され、グロメット60とシールドシェル40との間に隙間等が生じ難くなる。したがって、本実施形態に係るコネクタ1は、防水性能を適正に維持可能である。
【0035】
更に、グロメット60にタイバンド70が巻き付けられるとき、複数の突条部65のうちの少なくとも1つが、タイバンド70の環内に相当する位置にある。これにより、タイバンド70による締め付け力が、少なくとも1つの突条部65に適正に及ぶことになる。よって、防水性能を更に適正に維持可能である。
【0036】
<他の形態>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0037】
上記実施形態では、グロメット60が複数の突条部65を有している。これに対し、グロメット60が単一の突条部65を有していてもよい。
【0038】
更に、上記実施形態では、グロメット60のシールドシェル40との密着部分64の外周にタイバンド70が取り付けられている。これに対し、このようなタイバンド70が省略されてもよい。
【0039】
ここで、上述した本発明に係るコネクタ1の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[2]に簡潔に纏めて列記する。
【0040】
[1]
端子金具(10)と、前記端子金具(10)に繋がる電線(20)と、前記端子金具(10)を収容するハウジング(30)と、前記ハウジング(30)の外周を取り囲むように配置されるシールドシェル(40)と、前記シールドシェル(40)の外周を取り囲んで密着するように設けられる筒状の防水用カバー(60)と、を備えるコネクタ(1)であって、
前記防水用カバー(60)は、
当該防水用カバー(60)の筒内面から突出し且つ周方向に延びる突条部(65)を、前記シールドシェル(40)との密着部分(64)に有する、
コネクタ(1)。
【0041】
上記[1]の構成のコネクタによれば、防水用カバー(例えば、グロメット等)の筒内面から突出し且つ周方向に延びる突条部が、防水用カバーに設けられる。この突条部により、防水用カバー自身の剛性が高まって変形し難くなるため、シールドシェルに取り付けられたときの密着性が向上する。更に、シールドシェルに取り付けられた防水用カバーが弾性的に収縮するときの弾性力が突条部に集中することで、防水性能も向上する。そのため、シールドシェルのように一般に金属材料で構成されて外力に対する変形の度合いが小さい(換言すると、防水用カバーの変形量との差が大きい)部材に防水用カバーが取り付けられていても、防水用カバーがシールドシェルに密着した状態が維持され、防水用カバーとシールドシェルとの間に隙間等が生じ難くなる。したがって、本構成のコネクタは、防水用カバーに外力が及んでも、防水性能を適正に維持可能である。
【0042】
[2]
上記[1]に記載のコネクタ(1)であって、
前記防水用カバー(60)と前記シールドシェル(40)との前記密着部分(64)を取り囲んで径方向内側に引き締めるように前記防水用カバー(60)に取り付けられる帯状のタイバンド(70)を、更に有し、
前記防水用カバー(60)は、
複数の前記突条部(65)を、前記シールドシェル(40)との前記密着部分(64)に有し、
前記複数の前記突条部(65)のうちの少なくとも1つは、前記タイバンド(70)の環内に相当する位置に存在する、
コネクタ(1)。
【0043】
上記[2]の構成のコネクタによれば、グロメットにタイバンドが巻き付けられるとき、複数の突条部のうちの少なくとも1つが、タイバンドの環内に相当する位置にある。これにより、タイバンドによる締め付け力が、少なくとも1つの突条部に適正に及ぶことになる。よって、防水性能を更に適正に維持可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 コネクタ
10 端子金具
20 電線
30 ハウジング
40 シールドシェル
60 グロメット(防水用カバー)
64 密着部分
65 突条部
70 タイバンド
図1
図2
図3