(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】錠剤印刷装置および錠剤印刷方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20240416BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240416BHJP
A61J 3/06 20060101ALN20240416BHJP
【FI】
B41J2/165 501
B41J2/01 451
B41J2/01 109
A61J3/06 Q
(21)【出願番号】P 2021210387
(22)【出願日】2021-12-24
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】生田 亮
(72)【発明者】
【氏名】岡部 由孝
(72)【発明者】
【氏名】山崎 貴弘
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-211947(JP,A)
【文献】特開2017-164488(JP,A)
【文献】特開2007-331164(JP,A)
【文献】特開2004-237628(JP,A)
【文献】米国特許第8102520(US,B2)
【文献】特開2021-160196(JP,A)
【文献】特開2011-201157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
A61J 1/00-19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠剤を搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送される前記錠剤に印刷を行う、複数のノズルを有するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドのメンテナンス部と、
前記インクジェットヘッドを前記搬送部による前記錠剤の搬送方向に直交する方向に移動させる移動部と、
前記インクジェットヘッドによる印刷がなされた前記錠剤を撮像する撮像部と、
前記撮像部により撮像された画像を処理する画像処理部と、
前記画像処理部により処理された前記画像に基づき、前記錠剤の良品率を算出する算出部と、
前記メンテナンス部による前記インクジェットヘッドのメンテナンス回数をカウントするカウンタと、
前記カウンタにカウントされた前記メンテナンス回数が所定時間内において所定回数を上回ったか否かを判断する判断部と、
を有し、
前記算出部により算出された良品率が所定の値を下回ったときに、前記メンテナンス部による前記インクジェットヘッドのメンテナンスを実施し、
前記判断部により、前記メンテナンスの回数が、前記所定時間内において前記所定回数を上回っていないと判断されたときに、前記メンテナンス部による前記インクジェットヘッドのメンテナンスの前後において、前記インクジェットヘッドの前記複数のノズルのうち、同じ範囲の前記ノズルが前記錠剤への印刷に使用され、
前記判断部により、前記メンテナンス
の回数が、
前記所定時間内において
前記所定回数を上回った
と判断されたときに、前記移動部により前記インクジェットヘッドを移動させて、前記複数のノズルのうち、前記インクジェットヘッドの移動前に前記錠剤への印刷に使用されていた前記ノズルが、前記インクジェットヘッドの移動後に前記錠剤への印刷に使用されなくなるように前記インクジェットヘッドの前記錠剤への印刷に使用される前記ノズルを変更することを特徴とする錠剤印刷装置。
【請求項2】
前記搬送部を清掃する清掃部をさらに有し、
前記メンテナンス部による前記インクジェットヘッドのメンテナンスを実施するタイミングで、前記清掃部による前記搬送部の清掃を実施することを特徴とする請求項1に記載の錠剤印刷装置。
【請求項3】
前記算出部は、前記画像に基づいて前記錠剤の外観不良を含む良品率を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の錠剤印刷装置。
【請求項4】
搬送される錠剤に複数のノズルを有するインクジェットヘッドで印刷する印刷工程と、
前記印刷工程で印刷された錠剤を撮像する撮像工程と、
前記撮像工程において撮像された画像に基づき前記錠剤の良品率を算出する算出工程と、
前記良品率が所定の値を下回ったときに、前記インクジェットヘッドをメンテナンスするメンテナンス工程と、
前記メンテナンス部による前記インクジェットヘッドのメンテナンス回数をカウントするカウント工程と、
前記カウント工程にてカウントされた前記メンテナンス回数が所定時間内において所定回数を上回ったか否かを判断する判断工程と、を有し、
前記判断工程において、前記インクジェットヘッドのメンテナンスの回数が前記所定時間内において前記所定回数を上回っていないと判断されたときに、前記メンテナンス工程による前記インクジェットヘッドのメンテナンスの前後において、前記インクジェットヘッドの前記複数のノズルのうち、同じ範囲の前記ノズルが前記錠剤への印刷に使用され、
前記判断工程において、前記インクジェットヘッドのメンテナンスの回数が所定時間内において所定回数を上回った
と判断されたときに前記インクジェットヘッドを前記錠剤の搬送方向と直交する方向に移動させ、前記複数のノズルのうち、前記インクジェットヘッドの移動前に前記錠剤への印刷に使用されていた前記ノズルが、前記インクジェットヘッドの移動後に前記錠剤への印刷に使用されなくなるように、前記インクジェットヘッドの前記錠剤への印刷に使用される前記ノズルを変更する移動工程と、
を有することを特徴とする錠剤印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、錠剤印刷装置および錠剤印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
錠剤に文字やマークなどの識別情報(情報の一例)を印刷するため、インクジェットヘッドを用いて印刷を行う技術が知られている。この技術を用いる錠剤印刷装置は、コンベアなどの搬送装置により錠剤を搬送し、搬送装置の上方に配置されたインクジェットヘッドの各ノズルから、インクジェットヘッド下方を通過する錠剤に向けてインクを吐出し、錠剤に識別情報を印刷する。
【0003】
ところで、このような錠剤印刷装置は、インクジェットヘッドから正常にインクが吐出されないなどの不具合が生じることがあり、これによって印刷不良品錠剤が生じてしまうことがある。
【0004】
このような不良品錠剤が生じたときには、錠剤印刷装置全体の運転を停止し、原因を特定するとともに、その原因を取り除く処理が必要になる。このため、印刷効率が低下してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、印刷効率の低下を防止しつつ、効率的に錠剤印刷装置の不良解消を行うことができる錠剤印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る錠剤印刷装置は、錠剤を搬送する搬送部と、前記搬送部により搬送される前記錠剤に印刷を行う、複数のノズルを有するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドのメンテナンス部と、前記インクジェットヘッドを前記搬送部による前記錠剤の搬送方向に直交する方向に移動させる移動部と、前記インクジェットヘッドによる印刷がなされた前記錠剤を撮像する撮像部と、前記撮像部により撮像された画像を処理する画像処理部と、前記画像処理部により処理された前記画像に基づき、前記錠剤の良品率を算出する算出部と、前記メンテナンス部による前記インクジェットヘッドのメンテナンス回数をカウントするカウンタと、前記カウンタにカウントされた前記メンテナンス回数が所定時間内において所定回数を上回ったか否かを判断する判断部と、を有し、前記算出部により算出された良品率が所定の値を下回ったときに、前記メンテナンス部による前記インクジェットヘッドのメンテナンスを実施し、前記判断部により、前記メンテナンスの回数が、前記所定時間内において前記所定回数を上回っていないと判断されたときに、前記メンテナンス部による前記インクジェットヘッドのメンテナンスの前後において、前記インクジェットヘッドの前記複数のノズルのうち、同じ範囲の前記ノズルが前記錠剤への印刷に使用され、前記判断部により、前記メンテナンスの回数が、前記所定時間内において前記所定回数を上回ったと判断されたときに、前記移動部により前記インクジェットヘッドを移動させて、前記複数のノズルのうち、前記インクジェットヘッドの移動前に前記錠剤への印刷に使用されていた前記ノズルが、前記インクジェットヘッドの移動後に前記錠剤への印刷に使用されなくなるように前記インクジェットヘッドの前記錠剤への印刷に使用される前記ノズルを変更することを特徴とする。
【0008】
実施形態に係る錠剤印刷方法は、搬送される錠剤に複数のノズルを有するインクジェットヘッドで印刷する印刷工程と、前記印刷工程で印刷された錠剤を撮像する撮像工程と、前記撮像工程において撮像された画像に基づき前記錠剤の良品率を算出する算出工程と、前記良品率が所定の値を下回ったときに、前記インクジェットヘッドをメンテナンスするメンテナンス工程と、前記メンテナンス部による前記インクジェットヘッドのメンテナンス回数をカウントするカウント工程と、前記カウント工程にてカウントされた前記メンテナンス回数が所定時間内において所定回数を上回ったか否かを判断する判断工程と、を有し、前記判断工程において、前記インクジェットヘッドのメンテナンスの回数が前記所定時間内において前記所定回数を上回っていないと判断されたときに、前記メンテナンス工程による前記インクジェットヘッドのメンテナンスの前後において、前記インクジェットヘッドの前記複数のノズルのうち、同じ範囲の前記ノズルが前記錠剤への印刷に使用され、前記判断工程において、前記インクジェットヘッドのメンテナンスの回数が所定時間内において所定回数を上回ったと判断されたときに前記インクジェットヘッドを前記錠剤の搬送方向と直交する方向に移動させ、前記複数のノズルのうち、前記インクジェットヘッドの移動前に前記錠剤への印刷に使用されていた前記ノズルが、前記インクジェットヘッドの移動後に前記錠剤への印刷に使用されなくなるように、前記インクジェットヘッドの前記錠剤への印刷に使用される前記ノズルを変更する移動工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、印刷効率の低下を防止しつつ、効率的に錠剤印刷装置の不良解消を行うことができる錠剤印刷装置および錠剤印刷方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第一の実施形態に係る錠剤印刷装置の全体側面図。
【
図2】本発明の第一の実施形態に係る搬送部の平面図。
【
図3】本発明の第一の実施形態に係る制御部のブロック図。
【
図4】本発明の第一の実施形態に係る印刷工程のフローチャート
。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1の実施形態>
第1の実施形態について
図1から
図4を参照して説明する。
【0012】
(錠剤印刷装置の構成例)
図1及び
図2に示すように、第1の実施形態に係る錠剤印刷装置1は、供給部10と、搬送部20と、検出部30と、第1の撮像部40と、印刷部50と、第2の撮像部60と、回収部70と、制御装置80、メンテナンス部90、清掃部100とを備える。
【0013】
供給部10は、ホッパ11、シュータ12、整列フィーダ13、受け渡しフィーダ14を有している。この供給部10は、搬送部20の一端側に位置付けられ、印刷対象物である錠剤Tを搬送部20に供給することが可能に構成されている。ホッパ11は、多数の錠剤Tを収容し、収容した錠剤Tをシュータ12に順次供給する。シュータ12は、搬送路に加振器が設けられた構造になっており、ホッパ11から供給された錠剤Tを振動によって搬送し、整列フィーダ13に供給する。整列フィーダ13は錠剤Tを一列に整列させて受け渡しフィーダ14に供給する。受け渡しフィーダ14は一列に整列された錠剤Tを順次搬送部20に供給する。供給部10は制御装置80に電気的に接続されており、その駆動が制御装置80により制御される。
【0014】
搬送部20は、搬送ベルト21、駆動プーリ22、複数の従動プーリ23、モータ24、位置検出器25及び吸引チャンバ26を有する。搬送ベルト21は、無端状のベルトであり、駆動プーリ22及び各従動プーリ23に架け渡されている。駆動プーリ22及び各従動プーリ23は装置本体(図示せず)に回転可能に設けられており、駆動プーリ22はモータ24に連結されている。モータ24は制御装置80に電気的に接続されており、その駆動が制御装置80により制御される。位置検出器25は、エンコーダなどの機器であり、モータ24に取り付けられている。この位置検出器25は電気的に制御装置80に接続されており、検出信号を制御装置80に送信する。搬送部20は、モータ24による駆動プーリ22の回転によって各従動プーリ23と共に搬送ベルト21を回転させ、搬送ベルト21上の錠剤Tを
図1中の矢印H1の回転方向、すなわち搬送方向H1に搬送する。
【0015】
搬送ベルト21には、円形状の吸引孔21a(
図2参照)が複数形成されている。これらの吸引孔21aは、それぞれ錠剤Tを吸着する貫通孔であり、一本の搬送路を形成するように搬送方向H1に沿って一列に並べられている。各吸引孔21aは、吸引チャンバ26(
図1参照)に形成された吸引路(図示せず)を介して吸引チャンバ26内に接続されており、吸引チャンバ26により吸引力を得ることが可能になっている。吸引チャンバ26には、ポンプが吸引管(いずれも図示せず)を介して接続されており、ポンプの作動により吸引チャンバ26内が減圧される。吸引管は、吸引チャンバ26の側面(搬送方向H1と平行な面)の略中央に接続されている。また、ポンプは制御装置80に電気的に接続されており、その駆動が制御装置80により制御される。吸引チャンバ26内が減圧されると、搬送ベルト21の各吸引孔21a上に置かれた錠剤Tは吸引孔21aにより吸引され、搬送ベルト21上に保持される。
【0016】
検出部30は、供給部10が設けられた位置よりも搬送方向H1の下流側に位置付けられ、搬送ベルト21の上方に設けられている。この検出部30は、レーザ光の投受光によって搬送ベルト21上の錠剤TのX方向(
図2参照)の位置を検出する。検出部30としては、例えば、変位センサや近接センサなどが用いられる。また、変位センサとしては、例えば、反射型レーザセンサなどの各種のレーザセンサが用いられる。検出部30は制御装置80に電気的に接続されており、制御装置80に検出信号を送信する。
【0017】
第1の撮像部40は、検出部30が設けられた位置よりも搬送方向H1の下流側に位置付けられ、搬送ベルト21の上方に設けられている。この第1の撮像部40は、検出部30により検出された錠剤TのX方向の位置情報に基づき、錠剤Tが第1の撮像部40の直下の撮像位置に到達した第1の撮像タイミングで撮像を行い、錠剤Tの上面を含む第1の画像を取得し、取得した第1の画像を制御装置80に送信する。第1の画像は、錠剤TのX方向、Y方向及びθ方向(
図2参照)の位置を検出するために用いられる。第1の撮像部40としては、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの撮像素子を有する各種のカメラが用いられる。第1の撮像部40は制御装置80に電気的に接続されており、その駆動が制御装置80により制御される。なお、必要に応じて撮像用の照明も設けられる。
【0018】
ここで、錠剤TのX方向及びY方向の位置は、例えば、第1の撮像部40の撮像領域の中心(基準位置)に対するXY座標系の位置である。また、θ方向の位置は、例えば、第1の撮像部40の撮像領域のY方向の中心線に対する錠剤Tの回転度合いを示す位置である。このθ方向の位置は、錠剤Tに割線が設けられている場合や錠剤Tが楕円形や長円形、四角形などに成型されている場合など、錠剤Tが方向性を有する形体である場合に検出される。
【0019】
印刷部50は、インクジェットヘッド51を有する。インクジェットヘッド51は、第1の撮像部40が設けられた位置よりも搬送方向H1の下流側に位置付けられ、搬送ベルト21の上方に設けられている。インクジェットヘッド51は、複数(例えば数百個から数千個)のノズル51a(
図2参照)を有し、ノズル51aが一列に並ぶ方向(ノズル列)が水平面内で搬送方向H1と直交(交差の一例)するように設けられている。インクジェットヘッド51は、移動部52により、ノズル51aが並ぶ方向(搬送方向H1と直交方向)に移動可能に設けられている。インクジェットヘッド51は、ノズル51aごとの駆動素子の動作によって各ノズル51aから個別にインクを吐出する。このインクジェットヘッド51としては、圧電素子、発熱素子又は磁歪素子などの駆動素子を有する各種のインクジェット方式の印刷ヘッドが用いられる。インクジェットヘッド51およびその移動部52は制御装置80に電気的に接続されており、その駆動が制御装置80により制御される。
【0020】
第2の撮像部60は、印刷部50が設けられた位置よりも搬送方向H1の下流側に位置付けられ、搬送ベルト21の上方に設けられている。この第2の撮像部60は、検出部30により検出された錠剤TのX方向の位置情報に基づき、錠剤Tが第2の撮像部60の直下の撮像位置に到達した第2の撮像タイミングで撮像を行い、錠剤Tの上面を含む第2の画像を取得し、取得した第2の画像を制御装置80に送信する。第2の画像は、錠剤Tに印刷された印刷パターンを検査するために用いられる。第2の撮像部60としては、前述の第1の撮像部40と同様、例えば、CCDやCMOSなどの撮像素子を有する各種のカメラが用いられる。第2の撮像部60は制御装置80に電気的に接続されており、その駆動が制御装置80により制御される。必要に応じて撮像用の照明も設けられる。
【0021】
回収部70は、第2の撮像部60が設けられた位置よりも搬送方向H1の下流側に位置付けられ、搬送部20における搬送方向H1の下流側の端部に設けられている。搬送部20は、搬送ベルト21上の錠剤Tが所定の位置、例えば、搬送部20における搬送方向H1の下流側の端部に到達した場合に錠剤Tの保持を解除する。回収部70は、搬送部20による保持が解除されて落下する錠剤Tを不良品と良品とに分けて回収するように構成されている。例えば、落下途中の錠剤Tに気体を吹き付け、錠剤Tの落下方向を不良品と良品で変えることで、あるいは、板等の部材により落下経路を変えることで、落下する錠剤Tを不良品と良品とに分けて回収することが可能である。例えば、不良品は印刷不合格錠であり、良品は印刷合格錠である。回収部70は制御装置80に電気的に接続されており、その駆動が制御装置80により制御される。
【0022】
制御装置80は、各種情報及び各種プログラムに基づいて錠剤印刷装置1の各部、例えば、供給部10や搬送部20、検出部30、第1の撮像部40、印刷部50、第2の撮像部60、回収部70、メンテナンス部90、清掃部100などを制御する。また、制御装置80は、位置検出器25や検出部30から送信される検出情報(例えば検出信号)などを受信し、また、第1の撮像部40や第2の撮像部60から送信される画像情報などを受信する。制御装置80は、例えば、集積回路などの電子回路又はコンピュータなどにより実現される。
【0023】
メンテナンス部90は、インクジェットヘッド51のメンテナンスを行うためのものである。メンテナンス部90は、インクジェットヘッド51の下方であって、
図1における紙面手前側のノズル51aと干渉しない位置を待機位置とし、ノズル51aすべてを覆う位置をメンテナンス位置として設けられている。メンテナンス部90の長手方向は、インクジェットヘッド51のノズル51aが配列される長さ以上の長さである。メンテナンス部90によるインクジェットヘッド51のメンテナンスが実行される際には、図示しない移動装置により待機位置からメンテナンス位置まで移動させられる。メンテナンス部90は、図示しないドレンパン、ワイパなどを有する公知のインクジェットヘッド用のメンテナンス機構である。不図示のインクボトルから圧送したインクをノズル51aからドレンパンに向けて吐出し、ワイパで拭き取るなどしてインクジェットヘッド51のメンテナンスを行う。
【0024】
清掃部100は、搬送方向H1における回収部70より下流側の位置(吸引チャンバ26の下方)に設けられ、回転軸101を中心に回転可能なブラシ102を有している。回転軸101は図示しない移動機構により待機位置と清掃位置との間を移動可能に設けられている。待機位置は、搬送ベルト21にブラシ102が接触しない位置、清掃位置は搬送ベルト21にブラシ102が接触する位置である。ブラシ102の回転方向は、搬送ベルト21の回転方向(搬送方向H1)と同一である、時計回り方向である。吸引チャンバ26の下方側を移動する搬送ベルト21は、
図1における紙面右から左に向かってに移動する。したがって、ブラシ102の回転方向は搬送方向H1と同一方向に回転しているものの、ブラシ102と接触する位置における搬送ベルト21の移動方向と、ブラシ102の回転方向とは向かい合うようになる(
図1の清掃部100横の矢印参照)。なお、ブラシ102の下方に、搬送ベルト21の表面から除去された粉を収容可能なボックスを備えるようにしても良い。
【0025】
(制御装置の構成例)
次に、制御装置80の構成例について
図3を参照して説明する。
【0026】
図3に示すように、制御装置80は、画像処理部81と、記憶部82と、制御部83、カウンタ84とを有する。この制御装置80には、入力装置80aや出力装置80bが接続されている。入力装置80aは、例えば、スイッチやタッチパネル、キーボード、マウスなどにより実現される。また、出力装置80bは、例えば、ディスプレイやランプ、メータなどにより実現される。
【0027】
画像処理部81は、第1の撮像部40により撮像された第1の画像及び第2の撮像部60によって撮像された第2の画像を取り込み、公知の画像処理技術を用いて画像を処理する。例えば、画像処理部81は、第1の撮像部40から得られた第1の画像を処理し、錠剤TのX方向、Y方向及びθ方向の位置を取得する。また、画像処理部81は、第2の撮像部60から得られた第2の画像を処理し、錠剤Tに印刷された印刷パターン(例えば、文字やマーク)の印刷位置や形状、サイズを取得する。画像処理部81は、取得した各錠剤TのX方向、Y方向及びθ方向の位置情報、さらに、各錠剤T上の印刷パターンの印刷位置情報、形状情報及びサイズ情報を制御部83に送信する。
【0028】
記憶部82は、処理情報や各種プログラムなどを記憶する。例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。記憶部82には、印刷に関する印刷データ、搬送ベルト21の移動速度データなどが記憶される。印刷データは、文字やマークなどの印刷パターンの情報を含む。
【0029】
制御部83は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMCU(Micro Controller Unit)等のコンピュータであり、各部を制御する。例えば、制御部83は、記憶部82に記憶された各種情報や各種プログラムに基づいて、供給部10や搬送部20、検出部30、第1の撮像部40、印刷部50、第2の撮像部60、回収部70、画像処理部81、記憶部82、メンテナンス部90、清掃部100などを制御する。また、制御部83は、検出部30や位置検出器25から送信される検出信号などを受信する。
【0030】
例えば、制御部83は、検出部30から送信された検出情報、すなわち搬送ベルト21上の錠剤Tが検出されたタイミングに基づき、搬送ベルト21において錠剤TのX方向の位置を取得し、この錠剤TのX方向の位置を示す位置情報に基づき、第1の撮像部40の第1の撮像タイミング、印刷部50のインクジェットヘッド51の印刷開始タイミング、第2の撮像部60の第2の撮像タイミングを設定し、それらのタイミングを示すタイミング情報を生成して記憶部82に保存する。印刷開始タイミングとは、インクジェットヘッド51の直下の印刷位置に到達した錠剤Tに対して印刷を開始するタイミングである。なお、制御部83は、位置検出器25から送信された検出情報に基づき、搬送ベルト21の移動量(回転量)や速度などの情報を取得することが可能である。
【0031】
また、制御部83は、画像処理部81から送信された錠剤TのX方向、Y方向及びθ方向の位置情報に基づいて、その位置情報を有する錠剤Tに対して印刷条件を設定する。例えば、制御部83は、錠剤TのY方向の位置情報や印刷データに基づいて、インクジェットヘッド51において対象の錠剤Tの印刷に使用するノズル51aの範囲、すなわち使用ノズル範囲を決定し、その使用ノズル範囲や印刷開始タイミングなどを含む印刷条件を設定する。なお、錠剤Tが方向性を有する形体である場合、制御部83は、錠剤Tのθ方向の位置情報に基づいて、錠剤Tのθ方向の位置に対応させて印刷条件を設定する。一例として、制御部83は、印刷パターンの向きを0度から179度の範囲で1度ずつ回転させた180通りの印刷パターンを記憶部82に登録しておき、それらの印刷パターンの中から、錠剤Tのθ方向の位置に適合する角度の印刷パターンを選択して印刷条件を設定する。
【0032】
また、制御部83は、画像処理部81から送信された、錠剤Tに印刷された印刷パターンの印刷位置情報、形状情報及びサイズ情報に基づいて、印刷パターンが所定形状及び所定サイズで錠剤Tの所定位置に印刷されたか否か、すなわち印刷パターンが錠剤Tに正常に印刷されたか否かを判断する(印刷状態検査)。例えば、制御部83は、印刷パターンの形状及びサイズ判断において、検査用の印刷パターンを記憶部82に登録しておき、その検査用の印刷パターンと実際の印刷後の錠剤T上の印刷パターン(錠剤Tに印刷された印刷パターン)とを比較する。比較の結果、錠剤Tの「不良」となったものを後述するカウンタ84がカウントし、制御部83は、印刷後の錠剤全数における良品の割合(「良品率」という。)を算出しつつ、良品率が所定の良品率(例えば99%)を下回っているか否かを判断する(制御部は算出部として機能する)。さらに、制御部83は、後述するメンテナンス部90によるインクジェットヘッド51のメンテナンスタイミングや、清掃部100による清掃のタイミング、インクジェットヘッド51の移動タイミングを制御する。
【0033】
なお、制御部83は、適宜各種情報(例えば、位置情報やタイミング情報、印刷条件、印刷良否情報など)を記憶部82に保存するが、対象の錠剤Tが回収部70により回収されると、例えば、搬送部20における搬送方向H1の下流側の端部から落下して所定時間(例えば数秒)が経過した時点で、記憶部82から各種情報を削除する。ただし、それらの情報が後工程などで必要となる場合には、錠剤Tごとの各種情報を消去せずに残しておくことも可能である。
【0034】
カウンタ84は、錠剤Tの総数(検出部30で検出した錠剤の数)のカウントや、前述した不良錠剤のカウントを行う。また、後述するメンテナンス部90によるメンテナンス回数のカウントも行う。
【0035】
(印刷工程)
次に、前述の錠剤印刷装置1が行う印刷工程について
図1乃至
図3を参照して説明する。この印刷工程は、検査工程も含む。なお、印刷に要するデータなどの各種情報は、記憶部82に予め記憶されている。
【0036】
錠剤印刷装置1が印刷処理を開始すると、モータ24は駆動し、搬送ベルト21はモータ24による駆動プーリ22及び従動プーリ23の回転に伴って搬送方向H1に回転する。搬送ベルト21が搬送方向H1に回転している状態で、錠剤Tがホッパ11からシュータ12に順次供給され、シュータ12から整列フィーダ13に供給される。錠剤Tは、整列フィーダ13により一列に並べられ、受け渡しフィーダ14を経由して搬送ベルト21上に一定間隔ではなくランダムに供給される。搬送ベルト21上に供給された錠剤Tは、搬送ベルト21上で一列に並んで所定の移動速度で搬送されていく。
【0037】
搬送ベルト21上の錠剤Tは、検出部30によって検出される。詳しくは、搬送ベルト21上の錠剤Tが、検出部30の直下の検出位置(例えばレーザ光の照射位置)に到達するタイミングで検出部30により検出され、その錠剤Tが検出されたタイミングに基づき、搬送ベルト21において錠剤TのX方向の位置が制御部83によって認識される。そして、その錠剤TのX方向の位置を示す位置情報が制御部83により生成され、記憶部82に保存される。
【0038】
次に、搬送ベルト21上の錠剤Tが第1の撮像部40によって撮像される。詳しくは、搬送ベルト21上の錠剤Tが、第1の撮像部40の直下の撮像位置に到達した第1の撮像タイミングで第1の撮像部40によって撮像され、その第1の撮像部40による撮像により得られた第1の画像が制御装置80に送信される。この第1の画像に基づいて、錠剤TのX方向、Y方向及びθ方向の位置情報が画像処理部81により生成され、記憶部82に保存される。この錠剤TのX方向、Y方向及びθ方向の位置情報や印刷パターンなどの情報に基づき、使用ノズル範囲や印刷開始タイミングなどを含む印刷条件が記憶部82に設定される。なお、前述の印刷開始タイミング(錠剤Tに対して印刷を開始するタイミング)に基づいて、錠剤Tに対する吐出タイミング(錠剤Tに対してインクを吐出するタイミング)が決定される。
【0039】
この印刷条件に基づいて印刷が印刷部50により実行される。つまり、印刷部50のインクジェットヘッド51が、搬送ベルト21上の錠剤Tに所定の印刷パターンを印刷するように制御部83により制御される。詳しくは、第1の撮像部40の下方を通過した搬送ベルト21上の錠剤Tは、インクジェットヘッド51の直下の印刷位置に到達した印刷開始タイミングで、前述の印刷条件に基づいてインクジェットヘッド51によって印刷される。インクジェットヘッド51では、各ノズル51aからインクが適宜吐出され、錠剤Tの上面である被印刷面に印刷パターン(例えば、番号、アルファベット、片仮名、記号、図形)が印刷される。この錠剤Tに塗布されたインクは搬送中に自然乾燥する。なお、気体あるいは熱による乾燥を行う乾燥部(図示せず)を設け、その乾燥部によりインクの乾燥を補うようにしても良い。
【0040】
その後、搬送ベルト21上の印刷済の錠剤Tが第2の撮像部60によって撮像される。詳しくは、搬送ベルト21上の印刷済の錠剤Tは、第2の撮像部60の直下の撮像位置に到達した第2の撮像タイミングで第2の撮像部60によって撮像され、その第2の撮像部60による撮像により得られた第2の画像が制御装置80に送信される。
【0041】
この第2の画像は、制御装置80の画像処理部81によって処理される。詳しくは、錠剤Tに印刷された印刷済の印刷パターンに関する情報、すなわち印刷済の印刷パターンの印刷位置や形状、サイズが画像処理部81により取得される。第2の撮像部60から送信された第2の画像が画像処理部81により処理され、錠剤Tにおいて印刷済の印刷パターンの印刷位置や形状、サイズを示す検査情報が生成され、記憶部82に保存される。
【0042】
この検査情報に基づいて印刷状態検査が制御部83により実行される。詳しくは、記憶部82に保存された前述の印刷位置や形状、サイズに係る検査情報に基づき、印刷パターンが錠剤Tに正常に印刷されたか否かが制御部83により判断され、錠剤Tの印刷良否を示す印刷良否情報が生成されて記憶部82に保存される。例えば、印刷状態検査では、印刷に使用した印刷パターンが検査用の印刷パターンとして記憶部82に保存され、検査用の印刷パターンの所定の印刷位置や形状、サイズに関する良品情報と、記憶部82に保存された実際の印刷済の印刷パターンの印刷位置や形状、サイズに関する検査情報とが比較され、印刷パターンが錠剤Tに正常に印刷されたか否か(合格又は不合格)が判断される。
【0043】
最後に、搬送ベルト21上の錠剤Tが回収部70により回収される。詳しくは、検査後の錠剤Tが搬送ベルト21の移動に伴って搬送ベルト21の下流側の端部に位置すると、搬送ベルト21に保持された状態から解放され、搬送ベルト21から落下して回収部70により回収される。このとき、合格である良品の錠剤Tは、そのまま落下して回収部70により回収されるが、不合格である不良品の錠剤Tは、搬送ベルト21から落下する途中でエアの吹き付けにより良品と分けて回収部70により回収される。
【0044】
(メンテナンス工程とインクジェットヘッド移動工程)
次に、
図4を用いてインクジェットヘッド51および搬送部20(搬送ベルト21)のメンテナンス工程、インクジェットヘッド51の移動工程について説明する。なお、メンテナンス工程とインクジェットヘッド移動工程の理解のために、前述の印刷工程と一部分を重複して説明する。
【0045】
前述したとおり、印刷工程を開始すると、搬送ベルト21上に供給された錠剤に対して、インクジェットヘッド51により印刷を行う(S1)。印刷された錠剤Tを第2の撮像部60により撮像する(S2)。第2の撮像部60により撮像された画像に基づいて、制御部83により錠剤Tになされた印刷が良品か不良品かの判断がなされるとともに(S3)、良品率が算出され、不良品であった場合にはこれが良品率に反映される(S4)。制御部83により、この良品率が所定値(例えば99%)を下回ったかが判断され(S5)、良品率が99%を下回ったときには(S5のY)、メンテナンス部90によるインクジェットヘッド51のメンテナンスが実施される(S6)。これと同時に、清掃部100による搬送部20(搬送ベルト21)の清掃も実施される(S6)。このとき、シュータ12の加振器(不図示)はオフされ、振動を停止させるとともに、整列フィーダ13の回転方向を所定時間(例えば10秒)、A1から反対方向(A2)に切り替える。これによって整列フィーダ13に供給される錠剤Tは受け渡しフィーダ14へ供給されることなく逆流していくことになり、逆流した錠剤Tは、ボックス130に一時的に回収される。その後整列フィーダ13の回転を停止させる。このようにして、新たに錠剤Tが搬送ベルト21に供給されないようにする。この時点で搬送ベルト21上に載っている錠剤Tについては、印刷を行うことなく回収部70まで搬送し、回収する。メンテナンス部90によるインクジェットヘッド51のメンテナンスおよび清掃部100による搬送ベルト21の清掃が終了すると、当該メンテナンスおよび清掃が所定回数(例えば3回)を上回った回数かどうかを制御部83により判断し(S7)、当該メンテナンスおよび清掃が例えば1回目であったときには(S7のN)、シュータ12の加振器をオンにするとともに、整列フィーダ13の回転を再開し、搬送ベルト21へ錠剤Tを供給し、印刷処理を再開する。メンテナンス部90によるメンテナンス回数が例えば4回目であったときには(S7のY)、メンテナンス部90による4回目のメンテナンスが完了したあとに、インクジェットヘッド51を所定方向に所定距離移動させることにより使用ノズル範囲を変更する(S8)。インクジェットヘッド51の移動が完了したら、錠剤Tの供給を再開するとともに錠剤Tへの印刷を再開する(S9)。このようにしてメンテナンス工程、インクジェットヘッド移動工程が完了し、予定数の錠剤Tへの印刷が完了したら(S10のY)、印刷工程を終了する。なお、ボックス130内に一時的に収容された錠剤Tは、その後再度ホッパ11に投入されるようにしても良い。
【0046】
ここで、清掃部100による搬送部20(搬送ベルト21)の清掃は、先に述べたように、ブラシ102を搬送ベルト21に接触する清掃位置にまで移動させて行う。清掃部100のブラシ102は、自身を搬送ベルト21にこすりつけることで、搬送ベルト21に付着した錠剤粉を払い落とす。搬送ベルト21に付着した錠剤粉は、ある程度重力に従って落下するが、搬送ベルト21の帯電などによって錠剤粉が付着したまま堆積していき、その上に載置される錠剤が揺れ動くなどして安定して吸引保持されないことがある。このように、錠剤が安定して吸引保持されていない状態でインクジェットヘッド51による印刷を行うと、インクジェットヘッド51になんの問題もないにもかかわらず、錠剤に印刷される文字の位置がずれたり、滲んだりすることがある。
【0047】
また、メンテナンス部90によるインクジェットヘッド51のメンテナンスは、先に述べたように、メンテナンス部90をインクジェットヘッド51のノズル51aの真下の位置(メンテナンス位置)に移動させて行う。インクジェットヘッドのノズルは、ノズル付近に存在するインクが乾燥することによりノズルの一部や全部を塞ぎ、ノズルからのインクの吐出がなされなかったり、吐出方向が曲がったり、吐出されるインクの量が減ったり、といった吐出不良が生じることが知られている。このような吐出不良はメンテナンス部90によるメンテナンス(先に述べたインクの圧送や、ワイパでの拭き取り)によって解消されることが多い。しかしながら、特定のノズル51aの使用回数が多いことにより既に寿命を迎えていたり、メンテナンスでは解消できないほどにノズル51aにインクが詰まっていたりすると、メンテナンスを行っても吐出不良が解消されないことが稀にある。また、インクジェットヘッド51は位置決めにおいて高い精度が求められる。インクジェットヘッド51の位置が所定の位置からずれると、錠剤Tへの印刷位置ずれが起こることになる。したがって、インクジェットヘッドの移動は最小限の回数に抑えることが望ましい。
【0048】
そこで、本実施形態のように、まずはメンテナンス部90によるインクジェットヘッド51のメンテナンスと、清掃部100による搬送ベルト21の清掃を所定回数実施することで、印刷不良が生じた場合の主な原因であり得るインクジェットヘッド51のノズル51aの詰まりを解消するためのメンテナンスと、搬送ベルト21の清掃とを実施する。これによってほとんどの場合の印刷不良の原因を取り除くことができる。メンテナンス部90によるメンテナンスと、清掃部100による清掃を所定回数である3回を上回る回数連続して行ったにもかかわらず、良品率が所定値である99%を下回るときには、インクジェットヘッド51のノズル51aが寿命を迎えている可能性などを鑑み、印刷に使用するノズル51aを変更すべく移動部52によりインクジェットヘッド51を移動させることになる。
【0049】
ここで、インクジェットヘッド51の移動距離は、例えば、移動前の使用ノズル範囲と移動後の使用ノズル範囲とが重複しない位置(錠剤Tに移動前に使用していたノズル51aが対向しない位
置)となるように決定する。あるいは、インクジェットヘッド51のどの領域のノズル51aが吐出不良を起こしているかが判明している場合には、この領域の使用を避けるようにインクジェットヘッド51の移動距離を決定するようにしてもよい。また、移動させる方向は
図1の紙面奥行方向でも手前方向でも良い。
【0050】
なお、メンテナンス部90によるメンテナンスの回数をカウントするには、時間制限を設けるようにしても良い。例えば、メンテナンスを行ってから次に良品率が所定値を下回るまでに要した時間が所定時間(例えば60分)を上回った場合には、前回、良品率が所定値を下回ったときに生じた不良の原因と、その次に良品率が所定値を下回ったときに生じた不良の原因とが異なることが考えられるため、一度メンテナンスを実施してから所定時間である60分が経過した場合にはカウンタ84のカウントをゼロに戻す。
【0051】
また、装置に錠剤Tを投入し印刷を開始したとき、あるいはメンテナンス部90によるメンテナンスおよび清掃部100による清掃を終えた後に印刷を再開したときには、良品率を算出するまでに例えば3分程度の時間を設定し、この間良品率は算出しないようにする。これは、良品率を算出する母数となる印刷後錠剤の量が十分に増えるまで待ち、正確に良品率を算出するためである。あるいはこの間良品率が所定値を下回っても、メンテナンス動作を行わないようにするようにしても良い。
【0052】
以上説明したように、第1の実施形態によれば、インクジェットヘッドを移動させる回数を必要最小限にでき、さらに装置全体を停止させることなく、印刷効率の低下を防止しつつ、効率的に錠剤印刷装置の不良解消を行うことができる。
【0053】
<その他の実施形態>
上記説明した実施形態においては、錠剤Tの良品率の算出は印刷不良の有無に基づいて行うことを例示したが、これに限られず、外観不良(錠剤の割れや欠け、汚れなど)を含めて良品率を算出するようにしても良い。
【0054】
上記説明した実施形態においては、良品率が所定の値を下回ったときに、メンテナンス部90によるインクジェットヘッド51のメンテナンスと、清掃部100による搬送部20の清掃を行うことを例示したが、これに限られず、最も不良解消につながる確率の高いメンテナンス部90によるメンテナンスのみを行うようにしても良い。
【0055】
上記説明した実施形態においては、良品率が所定値を下回ったときに、シュータ12の振動を停止させるとともに整列フィーダ13の回転方向を所定時間逆方向にした後に停止させることにより、新たな錠剤Tが搬送ベルト21上に供給されないようにすることを例示したが、これに限られない。例えば、シュータ12の出口にシャッタを設け、良品率が所定値を下回ったときにシャッタを閉めて錠剤Tの供給を止めるようにしても良い。あるいは、整列フィーダ13の回転方向を変更せず、受け渡しフィーダ14の、整列フィーダ13から錠剤Tを受け取る位置の吸着をオフすることによって、搬送ベルト21への錠剤Tの供給を停止するようにしても良い。このとき整列フィーダ13上の錠剤は、ボックス130を整列フィーダ13の下流側(
図1における整列フィーダ13の右側)下方に設けるようにして回収しても良い。
【0056】
上記説明した実施形態においては、清掃部100は、吸引チャンバ26の下方に設けられることを例示したが、これに限られない。例えば、複数の従動プーリ23の間に設けるようにしても良い。搬送ベルト21の清掃が可能な場所であればどこに設けても良いが、錠剤Tが載ることのない箇所(錠剤Tが受け渡しフィーダ14から搬送ベルト21に供給される位置から回収部70に排出される位置までの錠剤Tの搬送経路から外れた箇所)に設けることによって、錠剤Tの搬送を妨げることを防げる。また、清掃部100は回転可能なブラシ102を有していることを例示したが、これに限られない。例えば、搬送ベルト21上に存在する錠剤の粉などの異物を吸引するノズルであっても良いし、気体を吹き付けることにより搬送ベルト21上の異物を吹き飛ばすノズルであっても良い。あるいは搬送ベルト21上の異物を掃き出すための弾性を有するワイパであっても良い。さらには、揮発性の液体を染み込ませるなどして湿潤させたワイピングクロスや不織布であっても良い。また、これらのものを複数組み合わせて設けていても良い。
【0057】
上記説明した実施形態においては、搬送ベルト21の形状において特定しなかったが、文目模様を表面に立体的に形成した搬送ベルトを用いるようにしても良い。錠剤印刷装置1には、錠剤Tの外観を検査するための3D検査ユニットを備えることがあるが(不図示)、搬送ベルト21が表面に文目形状を有するものであった場合には、この3D検査ユニットによって搬送ベルトの損傷をチェックするようにしても良い。
【0058】
また、前述の説明においては、錠剤Tを一列で搬送することを例示したが、これに限るものではなく、その列数は二列以上の複数列であってもよく、特に限定されるものではなく、搬送ベルト21の本数も二本以上であってもよく、特に限定されるものではない。また、インクジェットヘッド51の個数も二個以上であってもよく、特に限定されるものではない。
【0059】
また、前述の説明においては、インクジェットヘッド51として、ノズル51aが一列に並ぶ印刷ヘッドを例示したが、これに限るものではなく、例えば、ノズル51aが複数列に並ぶ印刷ヘッドを用いるようにしてもよい。また、水平面内において搬送方向H1と直交する方向にインクジェットヘッド51を複数並べて用いるようにしてもよい。
【0060】
また、前述の説明においては、錠剤Tが搬送ベルト21上に一定間隔ではなくランダムに供給されるとしたが、これに限るものではなく、一定間隔で供給されてもよい。また、前述の説明においては、搬送ベルト21上に形成された吸引孔によって錠剤Tが吸引保持されるとしたが、これに限るものではなく、ポケットなどに収容保持され搬送されるようにしてもよく、あるいは、搬送ベルト21上に自重により保持され搬送されるようにしてもよい。
【0061】
また、前述の説明においては、錠剤Tの片面を印刷することを例示したが、これに限るものではなく、例えば、搬送部20、検出部30、第1の撮像部40、印刷部50及び第2の撮像部60を一つのユニットし、そのユニットを上下に重ねて配置して、上側の搬送部20で印刷した錠剤Tを反転して下側の搬送部20に受け渡し、錠剤Tの両面を印刷するようにしてもよい。
【0062】
ここで、前述の錠剤Tとしては、医薬用、飲食用、洗浄用、工業用あるいは芳香用として使用される錠剤を含めることができる。また、錠剤Tとしては、裸錠(素錠)や糖衣錠、フィルムコーティング錠、腸溶錠、ゼラチン被包錠、多層錠、有核錠などがあり、硬カプセルや軟カプセルなど各種のカプセル錠も錠剤Tに含めることができる。さらに、錠剤Tの形状としては、円盤形やレンズ形、三角形、楕円形など各種の形状がある。また、印刷対象の錠剤Tが医薬用や飲食用である場合には、使用するインクとして可食性インクが好適である。この可食性インクとしては、合成色素インク、天然色素インク、染料インク、顔料インクのいずれを使用しても良い。
【0063】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1 錠剤印刷装置
20 搬送部
30 検出部
40 第1の撮像部
50 印刷部
51 インクジェットヘッド
51a ノズル
52 移動部
60 第2の撮像部
80 制御装置
81 画像処理部
83 制御部(算出部)
90 メンテナンス部
100 清掃部