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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】固体燃料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10L 5/44 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
C10L5/44 ZAB
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021505153
(86)(22)【出願日】2020-03-13
(86)【国際出願番号】 JP2020011001
(87)【国際公開番号】W WO2020184698
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2019046171
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 充利
(74)【代理人】
【識別番号】100141265
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 有紀
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】小野 裕司
(72)【発明者】
【氏名】和才 昌史
(72)【発明者】
【氏名】小柳 知章
(72)【発明者】
【氏名】落合 孝勇
(72)【発明者】
【氏名】田部井 容輔
(72)【発明者】
【氏名】高橋 幹夫
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-193958(JP,A)
【文献】特開2014-065807(JP,A)
【文献】国際公開第2017/175737(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 5/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイズが5mm以上50mm以下の木質系バイオマスを、酸素濃度10%以下で、かつ物質温度250~350℃の条件下で焙焼すること、
得られた焙焼物に水を噴霧し、焙焼物の温度を90℃以下かつ水分を5%以上とする状態を2時間以上保持すること、次いで、
必要に応じて、焙焼物から成形物を得ること、
を含む、固体燃料の製造方法。
【請求項2】
焙焼物の温度を85℃以下かつ水分を5%以上30%以下とする状態を2時間以上保持することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記木質系バイオマスがユーカリ属である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記木質系バイオマスがパラゴムノキ(Hevea brasiliensis)である、請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
前記固体燃料が石炭と混合して粉砕処理して石炭と混焼する、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
嵩密度が10kg/m ~30kg/m の焙焼物から嵩密度が600kg/m 以上である成形物を得ることを含む、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
焙焼物の水分を5%以上11%以下とする状態を2時間以上保持する、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
サイズが5mm以上50mm以下の木質系バイオマスを、酸素濃度10%以下で、かつ物質温度250~350℃の条件下で焙焼すること、
得られた焙焼物に水を噴霧し、焙焼物の温度を90℃以下かつ水分を5%以上とする状態を2時間以上保持すること、次いで、
必要に応じて、焙焼物から成形物を得ること、
を含む、木質系バイオマス焙焼物を含む固体燃料の発火を防止する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質系バイオマスを原料として焙焼(torrefaction)することによって得られる固体燃料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料の枯渇化及びCO排出による地球温暖化への対策として、バイオマスを原料とする燃料の利用が検討されている。一般にバイオマスとは、エネルギー源又は工業原料として利用することのできる生物体で、代表的なものは木材、建築廃材、農産廃棄物等である。従来より、バイオマスを有効利用する方法が各種提案されている。その中でも、バイオマスを低コストで以って高付加価値物に転換できる有用な方法として、バイオマスを炭化して固体燃料を製造する方法がある。これは、バイオマスを炭化炉に投入して酸素欠乏雰囲気下で所定時間加熱して炭化処理し、固体燃料を製造するものである。
【0003】
このようにして製造された固体燃料は、発電設備や焼却設備等の燃焼設備の燃料に用いられるが、この場合、燃焼効率を向上させるために固体燃料を細かく粉砕して微粉燃料として用いることがある。固体燃料は単独であるいは石炭と混合して粉砕されるが、バイオマスのうち木質系バイオマスは大部分が繊維質であるため、粉砕性が悪く、燃焼効率の低下、粉砕機の運転性低下等の問題があった。
【0004】
特許文献1には、材廃材、間伐材、庭木、建築廃材等の木質系バイオマスを240℃以上300℃以下の温度で、15分以上90分以下の時間で熱分解した後に粉砕する方法が開示されている。加熱温度が240℃より低い温度であると破砕性、粉砕性が向上せず、300℃よりも高い温度であると破砕、粉砕時にサブミクロンオーダーの微粉量が増大して粉体トラブルを生じ易くなるため好ましくないとしている。
【0005】
特許文献2には穀類、実、種子を含むバイオマスを酸素濃度1~5%、処理温度350~400℃で30~90分加熱して炭化処理することで、石炭と同等の粉砕性を有する固体燃料を製造する方法が開示されている。
【0006】
特許文献3には木質系バイオマスを酸素濃度10%以下、温度170~350℃で焙焼処理することで、物質収率が高く石炭と同等の粉砕性を有する固体燃料を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2006-26474号公報
【文献】特開2009-191085号公報
【文献】特開2013-209602号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1、2に記載の方法で製造された炭化物は、物質収率及び熱量収率が低く、石炭に比較すると粉砕性が不十分であり、石炭と混合して粉砕処理して微粉炭ボイラーの燃料として使用することが困難である。また、特許文献3には、木質バイオマスを酸素濃度10%以下、170~350℃で焙焼することにより固体燃料を製造する方法が開示されているが、低酸素に保持された焙焼装置から高温の焙焼物を空気中に排出すると自然発熱により発火することがあった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、木質系バイオマスを温度250~350℃で焙焼処理を行い、得られた焙焼物の温度を90℃以下に冷却し、さらに水を付与して水分を5%以上にすることにより、固体燃料の自然発熱を抑制し発火を防止できることを見出した。
【0010】
本発明は、以下の態様を包含する。
(1) サイズが5mm以上50mm以下の木質系バイオマスを、酸素濃度10%以下で、かつ物質温度250~350℃の条件下で焙焼すること、得られた焙焼物の温度を90℃以下とし、かつ水分を5%以上とすることを含む、固体燃料の製造方法。
(2) 焙焼物の温度を90℃以下、かつ水分を5%以上とする状態を2時間以上保持することを含む、(1)に記載の固体燃料の製造方法。
(3) 前記木質系バイオマスがユーカリ属である(1)または(2)に記載の固体燃料の製造方法。
(4) 前記木質系バイオマスがパラゴムノキ(Hevea brasiliensis)である(1)または(2)に記載の固体燃料の製造方法。
(5) 前記固体燃料が石炭と混合して粉砕処理して石炭と混焼する(1)~(4)のいずれかに記載の固体燃料の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法にて得られる固体燃料は、自然発熱による発火を防止できる。また、物質収率、熱量収率が高く、さらに石炭と同等の粉砕性を有し、高密度であるため、石炭と混合して粉砕処理して微粉炭ボイラーの燃料として高い比率で混炭して使用することできる。また、成型性、機械的耐久性にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、木質系バイオマス粉砕物を物質温度250~350℃の条件下で焙焼し、得られた焙焼物の温度を90℃以下とし、かつ水分5%以上とする固体燃料の製造方法である。
【0013】
物質温度250~350℃で焙焼された木質系バイオマスの焙焼物が焙焼装置よりで空気中に排出されると発火するために、排出する前に冷却する必要がある。しかしながら、温度85℃以下に冷却して空気中に排出しても、数時間後に自然発熱して温度が上昇し、発火することがある。本発明者等は鋭意検討した結果、温度90℃以下に冷却した焙焼物に水を付与して水分を5%以上にすることにより、発火を防止できることを見出した。付与する水分量は発火防止の観点からは特に上限はないが、固体燃料として燃焼させるためには水分は低い方が望ましく水分は30%以下にすることが好ましい。なお、焙焼物の温度を85℃以下、かつ水分を5%以上とする状態を2時間以上保持することが好ましい。
【0014】
本発明の木質系バイオマスの原料の木材としては、広葉樹、針葉樹、のいずれもが使用できる。具体的には、広葉樹としては、ユーカリ、パラゴムノキ、ブナ、シナ、シラカバ、ポプラ、アカシア、ナラ、イタヤカエデ、センノキ、ニレ、キリ、ホオノキ、ヤナギ、セン、ウバメガシ、コナラ、クヌギ、トチノキ、ケヤキ、ミズメ、ミズキ、アオダモ等が例示される。針葉樹としては、スギ、エゾマツ、カラマツ、クロマツ、トドマツ、ヒメコマツ、イチイ、ネズコ、ハリモミ、イラモミ、イヌマキ、モミ、サワラ、トガサワラ、アスナロ、ヒバ、ツガ、コメツガ、ヒノキ、イチイ、イヌガヤ、トウヒ、イエローシーダー(ベイヒバ)、ロウソンヒノキ(ベイヒ)、ダグラスファー(ベイマツ)、シトカスプルース(ベイトウヒ)、ラジアータマツ、イースタンスプルース、イースタンホワイトパイン、ウェスタンラーチ、ウェスタンファー、ウェスタンヘムロック、タマラック等が例示される。
【0015】
これらの中では、ユーカリ属、パラゴムノキ(Hevea brasiliensis)が好ましい。ユーカリ属としては、Eucalyptus(以下、E.と略す) calophylla、E. citriodora、E. diversicolor、E. globulus、E. grandis、E. urograndis、E. gummifera、E. marginata、E. nesophila、E. nitens、E. amygdalina、E. camaldulensis、E. delegatensis、E. gigantea、E. muelleriana、E. obliqua、E. regnans、E. sieberiana、E. viminalis、E. marginata、等が挙げられる。なお、形態としては、木材チップ、樹皮(バーク)、おが屑、鋸屑のいずれもが利用できる。
【0016】
本発明において、木質系バイオマスはサイズが5mm以上50mm以下のサイズに粉砕された粉砕物を使用することが必要である。なお、本発明において、木質系バイオマス粉砕物のサイズとは、篩い分け器の円形の穴の大きさによって篩い分けされたものである。木質系バイオマスを粉砕するための装置としては、ナイフ切削型バイオマス燃料用チッパーで粉砕処理することが好ましい。
【0017】
本発明における焙焼(torrefaction)とは、低酸素雰囲気下で、所謂炭化処理よりも低い温度で加熱する処理のことである。通常の木材の炭化処理の温度は400~700℃であるが、焙焼はより低い温度で行われる。焙焼することによって、その出発原料よりも高いエネルギー密度を有する固体燃料が得られる。
【0018】
本発明における焙焼の処理条件は、酸素濃度10%以下で、物質温度250~350℃である。ここで、物質温度とは焙焼処理中の木質系バイオマスの焙焼処理装置の出口付近の温度である。酸素濃度が10%を超えると物質収率、熱量収率が低下する。また、物質温度が250℃未満では後述する粉砕性が不十分であり、350℃を超えると物質収率、熱量収率が低下する。物質温度は250~330℃が好ましく、さらに260~320℃がさらに好ましい。ヘミセルロースは270℃付近で熱分解が顕著になるのに対して、セルロースは355℃付近、リグニンは365℃付近で熱分解が顕著になるので、焙焼の処理温度を250~350℃とすることで、ヘミセルロースを優先的に熱分解して、物質収率と粉砕性を両立し、優れた成形性を有する固体燃料を製造することが可能になると推察される。
【0019】
本発明において、焙焼処理を行うための装置は特に限定されないが、ロータリーキルン、竪型炉が好ましい。なお、酸素濃度を10%以下に調整するため装置内を窒素等の不活性ガスで置換することが好ましい。処理時間は1~180分が好ましい。
【0020】
本発明において、焙焼処理を行うための装置として、外熱式ロータリーキルンを使用してもよい。外熱式ロータリーキルンとは、キルン内筒の一部または全部をキルン外筒で覆う構造を有するもので、内筒内で木質系バイオマスの焙焼を行い、外筒内で燃料を燃焼させて内筒内部の木質系バイオマスを間接的に加熱する。キルン外筒内の温度は、400~800℃とすることが必要であり、450~750℃とすることが好ましい。キルン外筒内の温度が400℃未満であるとキルン内筒内の木質系バイオマスの熱分解が不十分となり、得られる固体燃料の粉砕性が低下する。一方、800℃を超えるとキルン内筒内の木質系バイオマスの温度が過度に上昇し、得られる固体燃料の物質収率、熱量収率が低下する。木質系バイオマスのキルン内筒内における滞留時間は1~30分が好ましく、2~15分がさらに好ましい。
【0021】
本発明で得られる固体燃料は原料に対して物質収率で60~90%、熱量収率で70~95%であることが好ましい。また、粉砕性の指標であるJIS M 8801:2004に規定のハードグローブ粉砕性指数(HGI)は30以上が好ましく、40以上がさらに好ましい。HGIが高くなるほど、粉砕され易いことを示している。HGIが30~70の範囲であれば、石炭と混合して粉砕処理することが可能となる。石炭のHGIは通常40~70であるので、本発明で得られた固体燃料は石炭と同等の粉砕性を有している。
【0022】
本発明において、成型物とする際に焙焼物100質量部に対して滑剤を0.5~10質量部を添加してもよい。この範囲で滑剤を添加することにより、後述する成型物とする際の消費電力使用量を低減できる。滑剤としては、流動パラフィン、パラフィンワックス等の炭化水素系滑剤、ステアリン酸、オレイン酸アンモニウム等の脂肪酸系滑剤、ステアリルアルコール、多価アルコール等の高級アルコール系滑剤、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド等の脂肪酸アマイド系滑剤、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸系滑剤、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ブチル、ソルビタンエステル、グリセリンエステル等のエステル系滑剤、カルボキシメチルセルロース及びその誘導体、等を挙げる事ができる。これらの中では、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等のステアリン酸塩が好ましく、ステアリン酸カルシウムが特に好ましい。
【0023】
本発明において、得られた焙焼物を嵩密度(JIS K 2151の6「かさ密度試験方法」に従って測定)が600kg/m以上の成型物としてもよい。すなわち、木質系バイオマスの粉砕物状の出発原料(焙焼物)をブリケットやペレット状に成型処理する。成型物とする前の焙焼物の嵩密度は10kg/m~30kg/m程度であり、成型物とした固体燃料の嵩密度は600kg/m以上である。成型物とすることにより、固体燃料として微粉炭ボイラーで燃焼させる際、石炭との混合比率を上昇させることができ、また、燃料の輸送コストを削減することができる。
【0024】
本発明において、焙焼物を成型物とするための装置は特に限定されていないが、ブリケッター(北川鉄工所)、リングダイ式ペレタイザー(CPM)、フラットダイ式ペレタイザー(ダルトン)等が望ましい。
【0025】
高密度化処理後の固体燃料の嵩密度(JIS K 2151の6「かさ密度試験方法」に従って測定)は、600kg/m以上とすることが必要で、好ましくは650kg/m以上にすることが好ましい。嵩密度が600kg/m未満であると固体燃料を燃料として微粉炭ボイラーで燃焼させる際、石炭との混合比率をあまり大きくすることが不可能なため、本発明の効果を最大限に得ることができない。
【0026】
本発明において、固体燃料を成型物とする際には、焙焼物の水分率を8~50%とすることが好ましく、さらに10~30%とすることが好ましい。水分が8%より少ないとブリケッターやペレタイザーの内部で閉塞が発生し、安定した成型物の製造ができない。水分率が50%を超えると成型することが困難で、粉体状またはペースト状で排出される。
【0027】
本発明の固体燃料の成型物は、機械的耐久性(木質ペレット品質規格 6.5機械的耐久性の試験方法に準拠)が95%以上であることが好ましく、この範囲の機械的耐久性であれば、輸送時に粉砕されて粉化しない十分な硬さを有している。機械的耐久性とはペレットの壊れにくさを示すもので、一定量の機械的衝撃を与えた際に壊れずに粉化しなかった質量割合である。より好ましい態様において本発明の固体燃料の成型物の機械的耐久性は97%以上である。
【0028】
本発明において、焙焼物100質量部に対してバインダーを0~50質量部添加してもよい。バインダーは特に限定されていないが、有機天然高分子(リグニン、澱粉など)、有機合成高分子(ポリアクリル酸アミドなど)、農業残渣(ふすま(小麦粉製造時に発生する残渣)など)等が望ましい。木質系バイオマスを効率よく有効利用することを目的としている観点から、バインダー添加部数は少ない方が望ましく、0~50質量部、より好ましくは0~20質量部が望ましい。ただし、50質量部以上添加しても高密度化が不可能であるというわけではない。
【0029】
本発明で得られる固体燃料は、ボイラー用燃料として用いられる。特に石炭と混合して粉砕処理を行って石炭と混焼することが可能であるので、石炭ボイラー用燃料として好適である。
【実施例
【0030】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の%は特に断らない限り質量%を示す。
【0031】
[実施例1]
水分40%であるユーカリ・ユーログランディスの皮付きチップをディスクチッパーにて粉砕処理した。粉砕後、5~50mmのサイズのものを原料として、コンベアドライヤー(Alvan Blanch製)で熱風温度80℃、180分間乾燥処理を行い、水分を5%に調製した。続いて外熱式のロータリーキルン型炭化炉を用い、酸素濃度1%以下、キルン外筒内の温度580℃、キルン内筒の出口の物質温度(焙焼温度)270℃、滞留時間12分で焙焼を行って固体燃料を得た。得られた固体燃料の温度を間接クーラーで64℃に低下させ、さらに水を噴霧して水分を5%に調整し、フレキシブルコンテナに保管した。
【0032】
[実施例2]
実施例1と同様にして固体燃料を製造し、得られた固体燃料の温度を間接クーラーで65℃に低下させ、さらに水を噴霧して水分を8%に調整した。
【0033】
[実施例3]
実施例1と同様にして固体燃料を製造し、得られた固体燃料の温度を間接クーラーで65℃に低下させ、さらに水を噴霧して水分を11%に調整した。
【0034】
[実施例4]
水分40%であるパラゴムノキの皮付きチップをディスクチッパーにて粉砕処理した。粉砕後、5~50mmのサイズのものを原料として、コンベアドライヤー(Alvan Blanch製)で熱風温度80℃、180分間乾燥処理を行い、水分を5%に調製した。続いて外熱式のロータリーキルン型炭化炉を用い、酸素濃度1%以下、キルン外筒内の温度580℃、キルン内筒の出口の物質温度(焙焼温度)270℃、滞留時間12分で焙焼を行って固体燃料を得た。得られた固体燃料の温度を間接クーラーで63℃に低下させ、さらに水を噴霧して水分を5%に調整した。
【0035】
[実施例5]
実施例4と同様にして固体燃料を製造し、得られた固体燃料の温度を間接クーラーで65℃に低下させ、さらに水を噴霧して水分を8%に調整した。
【0036】
[実施例6]
実施例4と同様にして固体燃料を製造し、得られた固体燃料の温度を間接クーラーで65℃に低下させ、さらに水を噴霧して水分を11%に調整した。
【0037】
[実施例7]
実施例1と同様にして固体燃料を製造し、得られた固体燃料の温度を間接クーラーで85℃に低下させ、さらに水を噴霧して水分を5%に調整した。
【0038】
[実施例8]
実施例1と同様にして固体燃料を製造し、得られた固体燃料の温度を間接クーラーで85℃に低下させ、さらに水を噴霧して水分を8%に調整した。
【0039】
[実施例9]
実施例1と同様にして固体燃料を製造し、得られた固体燃料の温度を間接クーラーで85℃に低下させ、さらに水を噴霧して水分を11%に調整した。
【0040】
[比較例1]
間接クーラーで冷却後、水を噴霧することを行わなかった以外は、実施例1と同様にして固体燃料を製造した。
【0041】
[比較例2]
実施例1と同様にして固体燃料を製造し、得られた固体燃料の温度を間接クーラーで65℃に低下させ、さらに水を噴霧して水分を2%に調整した。
【0042】
[比較例3]
間接クーラーで冷却後、水を噴霧することを行わなかった以外は、実施例4と同様にして固体燃料を製造した。
【0043】
[比較例4]
実施例4と同様にして固体燃料を製造し、得られた固体燃料の温度を間接クーラーで65℃に低下させ、さらに水を噴霧して水分を2%に調整した。
【0044】
[比較例5]
実施例1と同様にして固体燃料を製造し、得られた固体燃料の温度を間接クーラーで85℃に低下させた後、水を噴霧することを行わなかった以外は、実施例1と同様にして固体燃料を製造した。
【0045】
[比較例6]
実施例1と同様にして固体燃料を製造し、得られた固体燃料の温度を間接クーラーで85℃に低下させ、さらに水を噴霧して水分を2%に調整した。
【0046】
実施例1~9、比較例1~6で得られたフレキシブルコンテナに保管した固体燃料の温度を経時的に測定し、結果を表1に示した。
【0047】
【表1】
【0048】
表1に示されるように、焙焼後に70℃以下に冷却し、水分を5%以上とした実施例1~9の固体燃料は水分付与後に自然発熱による発火は発生しなかった。一方、水分を5%未満とした比較例1~6の固体燃料は自然発熱によって温度が上昇し発火が発生した。