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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】送達デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20240416BHJP
   A61F 2/966 20130101ALI20240416BHJP
【FI】
A61F2/24
A61F2/966
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021505267
(86)(22)【出願日】2019-08-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 CN2019103838
(87)【国際公開番号】W WO2020043204
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-02-16
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-01
(31)【優先権主張番号】201811014867.7
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516127259
【氏名又は名称】シャンハイ マイクロポート カーディオフロー メドテック シーオー., エルティーディー.
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI MICROPORT CARDIOFLOW MEDTECH CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】501 Newton Road, Z.J. Hi-Tech Park, Shanghai 201203,China
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウー,シューウェン
(72)【発明者】
【氏名】グイ,バオジュー
(72)【発明者】
【氏名】メイ,ジエ
(72)【発明者】
【氏名】チェン,グオミン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ユー
【合議体】
【審判長】内藤 真徳
【審判官】佐々木 一浩
【審判官】村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-195712(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0165064(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0049873(US,A1)
【文献】特表2009-511229(JP,A)
【文献】特表2013-540495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移植片を装填、送達、及び配備するための送達デバイスであって、
ハンドルと、
内部管状コアと、
シースチューブと、
ガイド先端部と、
内部チューブと、
アンカと、
移行部材と、
曲げ制御可能チューブと、を備え、
前記内部管状コアが、近位端において、前記ハンドル内に配置された内部管状コア作動部材に結合され、前記内部管状コアが、遠位端において、前記ガイド先端部に結合され、
前記ガイド先端部が、前記内部管状コアの遠位端に配設されると共に、前記シースチューブの遠位端に固定接続され、
前記ハンドルが、前記ガイド先端部及び前記シースチューブを遠位端側へ動かすよう操作されるように構成され
前記シースチューブが、前記移植片を押圧して保持するように構成され、前記内部管状コア上にスリーブ付けされ、
前記内部チューブは、前記内部管状コアと前記シースチューブとの間に配設され、前記内部チューブは、前記ハンドル内に配置された内部チューブファスナに、近位端において固定され、
前記アンカは、前記内部チューブの遠位端に固定接続し、前記移植片を保持するように構成され、
前記移行部材が、前記内部チューブ上にスリーブ付けされた管状構造として構成され、前記移行部材が、前記シースチューブ内に配設され、前記移行部材と前記シースチューブとが互いに部分的に嵌合し、
前記移行部材が移行部及び前記移行部と連通するカテーテル部を備え、前記移行部が、中空突起として構成され、前記移行部が、遠位端において、前記シースチューブの前記近位端に平滑に着脱可能に結合され、前記移行部が、前記カテーテル部の遠位端に平滑に固定接続する近位端を有し、
前記曲げ制御可能チューブが、前記カテーテル部上にスリーブ付けされ、前記曲げ制御可能チューブが、遠位端において、前記移行部の近位端に当接し、前記曲げ制御可能チューブが、近位端において、前記ハンドル内に配置された曲げ制御可能チューブ作動部材に結合され、前記曲げ制御可能チューブが、前記曲げ制御可能チューブの軸方向からの偏向の角度を調節するように適合された曲げ制御機構を備える、送達デバイス。
【請求項2】
前記ガイド先端部が円錐形状を有し、
前記シースチューブの前記遠位端が、前記ガイド先端部の近位端に平滑に固定接続する、請求項1に記載の送達デバイス。
【請求項3】
前記シースチューブが、近位端において、静摩擦により、前記移行部材に平滑に着脱可能に結合されている、請求項2に記載の送達デバイス。
【請求項4】
前記曲げ制御可能チューブが、前記内部チューブ上にスリーブ付けされている、請求項1に記載の送達デバイス。
【請求項5】
前記突起が、半円錐構造、半球構造、又は円錐台形構造を含む、請求項1に記載の送達デバイス。
【請求項6】
前記移行部の少なくとも一部が、前記移行部の前記遠位端から前記近位端へ向かう方向で、徐々に減少する外径を有する、請求項1に記載の送達デバイス。
【請求項7】
前記アンカが、複数の溝を備える、請求項1に記載の送達デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機器の技術分野に関し、特に、送達デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ステント付き人工僧帽弁の正確且つ確実な位置決めが、経カテーテル僧帽弁修復(TMVR)手術の成功のために極めて重要である。僧帽弁は、非常に不規則な弁輪の形状、人工弁の移植及び位置決めを著しく妨げるおそれのある心室内の複数の腱索、並びに心室収縮により生じる非常に高い心腔内圧に起因して、大動脈弁よりも構造的に複雑である。したがって、位置決めデバイスの不適切な設計は、一連の致死的合併症の直接の原因となり得る。
【0003】
ステント付き人工僧帽弁を送達するためのデバイスは、通常、シースチューブを備えており、このシースチューブは、ステントから半径方向の大きい力を受けることになるため、ステントによる損傷を避けるために堅い材料から作製されなければならない。そのような堅いシースチューブは、通常、長く(50~70mm)、解剖学的幾何形状の空間形状よりもはるかに大きい、非常に大きい曲率半径でしか、(ガイドワイヤを通す間に、又は配備の過程で)曲げることができない。さらに、ステント付き人工僧帽弁の移植中、システムが送達カテーテルによる曲げ制御によって適所に配備されると、配備された弁の位置精度に何らかの悪影響を与えることを避けるために、配備プロセス全体を通じて送達経路を変更することができない。要約すると、送達デバイスのシースチューブは堅く長いため、且つ曲げ制御を提供する送達カテーテルが一定の幾何学的構成を維持することができなければならないため、曲げ制御を実現している送達カテーテルも、高い剛性を示さなければならない。その結果、堅いシースチューブ(まっすぐなチューブ)を、(目標部位の解剖学的幾何形状の半径に一致する)湾曲した経路を通して後退させることは困難となり、強制的な後退は、送達カテーテルの曲げ制御に影響を与えるおそれがあり、人工弁の安定した配備には好ましくない。さらに、配備プロセスにおいて、カテーテルが前後に動くことによって、部分的に配備されている人工僧帽弁を変位させる可能性が非常に高い。これは、人工弁の配備の質を低下させる原因となり得る。
【0004】
加えて、僧帽弁輪の形状に適応させ、その解剖学的構造により十分に一致させるために、ステントは、通常、流入部と、流入部の半径よりも大きい半径を有する流出部とを含んで設計される。流入部は、自己弁輪の上(すなわち、心房内端)に固定されるように構成され、流出部は、自己弁輪の下(すなわち、心室内端)に固定されるように構成される。そのような設計は、弁ステントの固定を容易にすることができる。従来、人工弁の送達は、シースチューブの回収及び自己拡張を伴い、ステントの流出部が、流入部の解放より前に解放される。しかしながら、実際には、弁輪に対する流入部の正確な位置決めは困難であり、位置ずれが生じることが多く、この位置ずれは、識別されても調節によって解消することができない。
【0005】
したがって、ステントの配備中に、立体的に湾曲した経路をシースチューブが通ることを避けることができ、且つ弁ステントが弁輪との高い同軸性を有し、配備中に安定していることを確実にする、すなわち、高い弁修復の質を確保する送達デバイスが、緊急に必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高い同軸性を有する移植片の安定した配備を確実にし、且つシースチューブを、配備のために、立体的に湾曲した経路を通して導入することを避けることができる、送達デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的で、提供される送達デバイスは、移植片を装填、送達、及び配備するように構成され、ハンドルと、内部管状コアと、シースチューブと、ガイド先端部とを備える。内部管状コアは、近位端において、ハンドル内に配置された内部管状コア作動部材に結合される。ガイド先端部は、内部管状コアの遠位端に配設され、シースチューブの遠位端に固定接続され、シースチューブは、内部管状コア上にスリーブ付けされる。
【0008】
場合により、送達デバイスは、内部管状コアとシースチューブとの間に配設され、ハンドル内に配置された内部チューブファスナに、近位端において固定された内部チューブと、内部チューブに固定接続し、移植片を保持するように構成されたアンカとをさらに備えることができる。
【0009】
場合により、ガイド先端部は円錐形状を有することができ、シースチューブの遠位端は、ガイド先端部の近位端に平滑に固定接続する。
【0010】
場合により、送達デバイスは、移行部材をさらに備えることができ、移行部材は、内部チューブ上にスリーブ付けされた管状構造として構成され、移行部材はシースチューブ内に配設され、移行部材とシースチューブとが互いに部分的に嵌合する。
【0011】
場合により、シースチューブは、近位端において、静摩擦により、移行部材に平滑に着脱可能に結合されてよい。
【0012】
場合により、移行部材は、互いに連通する移行部とカテーテル部とを備えることができ、移行部は中空突起として構成され、移行部は、遠位端において、シースチューブの近位端に平滑に着脱可能に結合され、移行部は、カテーテル部の遠位端に平滑に固定接続する近位端を有し、カテーテル部は、近位端において、ハンドル内に配置されたカテーテル作動部材に結合される。
【0013】
場合により、送達デバイスは、カテーテル部上にスリーブ付けされた曲げ制御可能チューブをさらに備えることができ、曲げ制御可能チューブは、遠位端において、移行部に当接し、曲げ制御可能チューブは、近位端において、ハンドル内に配置された曲げ制御可能チューブ作動部材に結合され、曲げ制御可能チューブは、曲げ制御可能チューブの軸方向からの偏向の角度を調節するように適合された曲げ制御機構を備える。
【0014】
場合により、移行部材は移行部を備えることができ、移行部は中空突起として構成され、移行部は、遠位端において、シースチューブの近位端に平滑に着脱可能に結合される。
【0015】
場合により、送達デバイスは、内部チューブ上にスリーブ付けされた曲げ制御可能チューブをさらに備えることができ、曲げ制御可能チューブは、遠位端において、移行部の近位端に固定され、曲げ制御可能チューブは、近位端において、ハンドル内に配置された曲げ制御可能チューブ作動部材に結合され、曲げ制御可能チューブは、曲げ制御可能チューブの軸方向からの偏向の角度を調節するように適合された曲げ制御機構を備える。
【0016】
場合により、突起は、半円錐構造、半球構造、又は円錐台形構造を含んでよい。
【0017】
場合により、移行部の少なくとも一部が、移行部の遠位端から近位端へ向かう方向で、徐々に減少する外径を有してよい。
【0018】
場合により、アンカは複数の溝を備えることができる。
【0019】
提供される送達デバイスにおいて、シースチューブの遠位端はガイド先端部に固定され、移植片は、シースチューブの近位端によって送達デバイスに装填される。移植片の配備中、シースチューブは遠位端側へ動かされ、すなわち、シースチューブは、ハンドル側へ戻るのではなく、移植片の目標部位へ動き続ける。これにより、立体的に湾曲した経路を通してシースチューブを後退させることによって生じ得る、移植片の不安定な配備、又はさらには誤った配備などの問題を効果的に回避することができる。さらに、移植片が、流入部において流出部よりも大きい半径を有するものとして構成されることを考慮して、移植片の流入部が、移植片の流出部の解放より前に解放されるように設計される。移植片の流入部が解放されると、目標部位との照合を行うことができ、不正確な位置決めが行われていることを見つけ次第、移植片を適時に調節することができる。これにより、質の高い、より正確な移植片の配備が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施形態による、移植片送達デバイスの構造の概略図である。
図2】本発明の第1の実施形態による、移植片送達デバイスの装填及び配備動作の概略図である。
図3】本発明の第1の実施形態による、移植片送達デバイスの装填及び配備動作の概略図である。
図4】本発明の第1の実施形態による、移植片送達デバイスの装填及び配備動作の概略図である。
図5】本発明の第2の実施形態による、移植片送達デバイスの構造の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下で、添付図面を参照しながら、本発明の特定の実施形態についてより詳細に説明する。以下の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲から、本発明の特徴及び利点がより容易に明らかになろう。図は、必ずしも縮尺通りではない非常に簡略化された形式で示されており、開示された実施形態を説明する際の便宜及び明確さに役立つことを意図したものに過ぎないことに留意されたい。
【0022】
本明細書で使用されるとき、「平滑な接続」(着脱可能又は着脱不可能)という用語は、外面が平滑に連続した二つの部品の接続を指し、これは、使用中に人間の組織に損傷を与えることなく、構造全体の(特に、カテーテルアセンブリの)高い信頼性をもたらす。
【0023】
背景技術の欄で述べたように、移植片の配備中、従来の送達デバイスで使用されるシースチューブ(まっすぐなチューブ)は堅いため、湾曲した経路を通して後退させることは困難であり、強制的な後退は、曲げ制御可能チューブによって提供される曲げ制御に影響を与えるおそれがあり、人工弁の安定した配備には好ましくない。さらに、配備プロセスにおいて、カテーテルが前後に動くことによって、部分的に配備されている人工僧帽弁を変位させる可能性が非常に高い。これは、人工弁の配備の質を低下させる原因となり得る。さらに、シースチューブの回収及び移植片の自己拡張を伴う配備方法を使用するとき、移植片の流出部が、移植片の流入部の解放より前に解放される。しかしながら、実際には、目標部位に対する流入部の正確な位置決めは困難であり、位置ずれが生じることが多く、この位置ずれは、識別されても調節によって解消することができない。
【0024】
以上のことを考慮して、図1又は図5に示すように、本発明は、移植片を装填、送達、及び配備するための送達デバイス1を提案する。送達デバイス1は、カテーテルアセンブリとハンドル18とから構成される。詳細には、カテーテルアセンブリは、内部管状コア11、ガイド先端部12、シースチューブ13、内部チューブ14、アンカ15、移行部材16、及び曲げ制御可能チューブ17を備える。
【0025】
加えて、説明の便宜上、図1に示すように、本明細書において、カテーテルアセンブリ側を向く端部が遠位端であり、ハンドル18側を向く端部が近位端であると定義される。言い換えると、ハンドル18から離れて位置する端部が遠位端と定義され、ハンドル18に近い端部が近位端と定義される。
【0026】
図1図2に示すように、内部管状コア11の近位端は、ハンドル18内に配置された内部管状コア作動部材に結合されて、ハンドル18が内部管状コア11の軸方向の動きを生じさせることができ、内部管状コア11が遠位端においてガイド先端部12に固定されるようになっている。シースチューブ13は、ガイド先端部12の近位端に平滑に固定接続する遠位端を有する。すなわち、シースチューブ13の遠位端がガイド先端部12の近位端に接続する接続部の外面は、連続し平滑である。シースチューブ13は、内部管状コア11上にスリーブ付けされる。
【0027】
アンカ15は内部チューブ14に固定され、内部チューブ14は、内部管状コア11とシースチューブ13との間に配設される。内部チューブ14は、近位端において、ハンドル18内の内部チューブファスナに固定される。このようにして、内部チューブ14は、ハンドル18によって、六自由度(すなわち、三つの直交座標軸X、Y、Zに沿った三つの並進自由度、及び三軸周りの三つの回転自由度)で制限される。
【0028】
移行部材16は、内部チューブ14上にスリーブ付けされた管状構造であり、二つの部品が部分的に嵌合することにより互いに密閉されるような方法で、シースチューブ13内に入れ子になった遠位端を有することが好ましい。一部の実施形態において、移行部材16の遠位端(すなわち、シースチューブ13内に入れ子になった移行部材16の部分)は、シースチューブ13の内径よりもわずかに小さい最大外径を有し、移行部材16がシースチューブ13内に確実に隙間なくぴったりと受け入れられるようになっている。これは、二つの部品が互いに嵌合して、移行部材16の遠位端の最大外径が定義される(すなわち、シースチューブ13内に受け入れられた移行部材16の部分が、シースチューブ13に嵌合する)ことを意味する。シースチューブ13の近位端は、移行部材16に平滑に着脱可能に結合される。すなわち、シースチューブ13の近位端が移行部材16に接続する接続部の外面が、平滑で連続している。他の実施形態において、移行部材16の遠位端における最大外径が、シースチューブ13の内径に等しくてもよい。このような場合、移行部材16がシースチューブ13内に入れ子になってもよく、移行部材16とシースチューブ13とが互いに嵌合して、移行部材16の遠位端の最大外径が定義されるようになっており、これにより、移行部材16とシースチューブ13との着脱可能な結合を実現する。さらに他の実施形態において、遠位端における移行部材16の最大外径が、シースチューブ13の内径よりもわずかに大きくてもよい。このような場合、二つの部品を締まり嵌めによって共に接続することもでき、これにより、移行部材16の遠位端の最大外径における嵌合を実現し、したがって、移行部材16とシースチューブ13との間の密閉を向上させることができる。シースチューブ13と移行部材16とが互いに密閉され、シースチューブ13の近位端が移行部材16に平滑に着脱可能に結合されることがより好ましい。曲げ制御可能チューブ17は、主として、軸方向からのカテーテルアセンブリの偏向の角度を調節するように適合される。移行部材16は少なくとも二つの構成を含むことができ、本発明は、移行部材16の異なる構成による二つの実施形態を示す。
【0029】
実施形態1
図1に示すように、本実施形態による送達デバイス1は、カテーテルアセンブリとハンドル18とから構成される。詳細には、カテーテルアセンブリは、内部管状コア11、ガイド先端部12、シースチューブ13、内部チューブ14、アンカ15、移行部材16、及び曲げ制御可能チューブ17を備える。
【0030】
内部管状コア11の近位端は、ハンドル18内に配置された内部管状コア作動部材に結合されて、ハンドル18が内部管状コア11の軸方向の動きを生じさせることができ、内部管状コア11が遠位端においてガイド先端部12に固定されるようになっている。シースチューブ13は、位置Aにおいて、ガイド先端部12の近位端に平滑に固定接続する遠位端を有する。シースチューブ13は、内部管状コア11上にスリーブ付けされる。このようにして、ガイド先端部12及びシースチューブ13の各々の軸方向の動きを生じさせるように、内部管状コア11を駆動することができる。
【0031】
場合により、ガイド先端部12は、設計が合理化され、ポリマーから作製されることが好ましい。シースチューブ13は、移植片2を押圧して保持するように構成される。内部管状コア11は、ガイド先端部12及びシース13の全体の前後の動きを生じさせることにより、移植片2の装填及び配備を実現する。シースチューブ13は、金属、ポリマー/金属複合材料などから形成されてよい。内部管状コア11は、ポリマー、ポリマー/金属複合材料、金属などから作製されてよい。
【0032】
場合により、図1に示すように、ガイド先端部12は円錐形状を含み、シースチューブ13の遠位端が、ガイド先端部12の近位端(より大きい直径を有する端部)に平滑に固定接続する。そのような構造設計により、近位端から遠位端へ向かう方向のシースチューブ13の動きに対する抵抗を減少させることができ、移植プロセスの安定性を向上させることができる。当然、ガイド先端部12は、円錐台形又は半球などの代替形状を含んでもよく、ガイド先端部12の近位端から遠位端に沿って外径が徐々に減少する少なくとも一つの部分を有する。
【0033】
本発明によれば、ハンドル18は、任意の特定のタイプに限定されるのではなく、手動ハンドル、電動ハンドル、又はハイブリッドの手動及び電動ハンドルのいずれか一つとして実装されてよい。
【0034】
図1に示すように、シースチューブ13は、位置Bにおいて、移行部材16に平滑に着脱可能に接続する近位端を有する。移行部材16は、内部チューブ14上にスリーブ付けされた管状構造である。本実施形態において、移行部材16は移行部161とカテーテル部162とを備え、移行部161とカテーテル部162とは互いに連通し、互いに別個に作製されていても、一体に作製されていてもよい。移行部材16は、ポリマー、ポリマー/金属複合材料、金属などから作製されてよい。
【0035】
移行部161は、位置Bにおいて、シースチューブ13の近位端に平滑に着脱可能に結合された(例えば、静摩擦により)遠位端と、カテーテル部162の遠位端に平滑に固定接続された近位端とを有する。移行部161は、移行部161の遠位端から近位端へ向かう方向に沿って外径が徐々に減少する少なくとも一つの部分を有する。例えば、移行部161は、半円錐、半球、円錐台形などの形状の中空突起であってよく、シースチューブ13の内径よりもわずかに小さい最大外径を有する。シースチューブ13は、移行部161の一部を受け入れて包み込むことができるため、後述するように、シースチューブ13の近位端において、曲げ制御可能チューブ17の接続部への平滑な移行をもたらす。カテーテル部162は、内部チューブ14上にスリーブ付けされた管状構造であり、ハンドル18内に配置されたカテーテル作動部材に結合された近位端を有して、ハンドル18がカテーテル部162の軸方向の動きを生じさせることができるようになっている。このようにして、動くカテーテル部162により、移行部161をカテーテル部162と共に軸方向に動くように駆動することができる。
【0036】
送達デバイスは、曲げ制御可能チューブ17をさらに備える。曲げ制御可能チューブ17は、カテーテル部162上にスリーブ付けされ、カテーテル部162の外径よりも大きい内径を有する。このようにして、カテーテル部162は、曲げ制御可能チューブ17内で軸方向に可動である。曲げ制御可能チューブ17は、遠位端において、移行部161に当接する。すなわち、図1に示すように、移行部材16の近位端は、位置Cにおいて、曲げ制御可能チューブ17に接触するが、固定接続されない。曲げ制御可能チューブ17は、近位端において、ハンドル18内に配置された曲げ制御可能チューブ作動部材に結合されて、ハンドル18が曲げ制御可能チューブ17の軸方向の動きを生じさせることができるようになっている。
【0037】
曲げ制御可能チューブ17は、曲げ制御可能チューブ17の軸方向からの偏向、したがって、カテーテルアセンブリ全体の軸方向からの偏向の角度を調節するための曲げ制御機構を備える。
【0038】
曲げ制御可能チューブ17は、曲げ制御能力を有する、強化ポリマーチューブ、強化金属チューブ、又はモジュール金属部分から構成されたチューブなどであってよい。詳細には、強化ポリマーチューブは、一つ、二つ、又はそれ以上の金属線が埋め込まれたポリマーチューブであってよい。金属線を引くことによって、曲げ制御を実現することができ、さらに異なる金属線を引くことによって、異なる方向の曲げ制御を実現することができる。強化金属チューブは、編組又は切削によって作製された金属チューブであってよい。編組は、螺旋編組又は十字編組であってよく、切削は、切欠きを形成するようにレーザにより行うことができる。編組又は切削によって作製された金属チューブに、一つ、二つ、又はそれ以上の金属線が埋め込まれてよい。金属線を引くことによって、曲げ制御を実現することができ、さらに異なる金属線を引くことによって、異なる方向の曲げ制御を実現することができる。さらに、モジュール金属部分を含むチューブは、共に直列に接続された複数の中実又は中空モジュール部分から構成されたチューブである。そのようなアクティブな曲げ制御設計によって、目標部位に到達するために、より複雑な曲げ輪郭を通ることが容易になり得る。
【0039】
図1に示すように、アンカ15は内部チューブ14に固定され、移植片2を取り付けるように構成される。内部チューブ14は、内部管状コア11とシースチューブ13との間に配設され、ハンドル18内に配置された内部チューブファスナに固定接続する近位端を有する。このようにして、内部チューブ14は、移植片2をより十分に支持するために、ハンドル18によって、六自由度(すなわち、軸X、Y、Zに沿った三つの並進自由度、及び軸X、Y、Z周りの三つの回転自由度)で制限される。内部チューブ14は、ポリマー、ポリマー/金属複合材料、金属などから形成されてよい。
【0040】
場合により、アンカ15は、移植片2を取り付けるための複数の溝(図示せず)を備えることができる。アンカ15は、金属又はポリマーから形成されてよい。図3図5に示すように、アンカ15は、近位端において、金属又はポリマーから作製された小径部材151に接続され、この部材151も内部チューブ14に取り付けられて、移植片2の装填及び回収中のねじれを防ぐことにより、移植片2をより十分に支持することが好ましい。
【0041】
図1に示すように、内部管状コア11、内部チューブ14、カテーテル部162、曲げ制御可能チューブ17、及びシースチューブ13の内径は、順に増加する。内部管状コア11、内部チューブ14、カテーテル部162、曲げ制御可能チューブ17、及びシースチューブ13が同軸に配置されることが好ましい。
【0042】
図2図4を参照すると、本発明の実施形態による前述した送達デバイス1を使用して移植片を移植する方法は、以下のステップ、すなわち、S1:移植片送達デバイス1と装填すべき移植片2とを設けるステップと、S2:ハンドル18を操作することにより内部管状コア11を駆動することによって、アンカ15を露出させるまでシースチューブ13を遠位端側へ動かし、移植片2の一端部をアンカ15に装着し、ハンドル18を操作することにより内部管状コア11を駆動することによって、シースチューブ13を近位端側へ動かして、移植片2が圧着され、その後シースチューブ13に装填されるようにするステップと、S3:カテーテルアセンブリ全体を外力により駆動することによって、シースチューブ13とアンカ15とを遠位端に同期して遠位端側へ動かすステップと、S4:移植片2が目標部位に送達されると、ハンドル18を操作することにより内部管状コア11を駆動することによって、シースチューブ13を遠位端側へ動かすことにより、移植片2を配備するステップと、を含むことができる。
【0043】
このプロセスは、装填、送達、及び配備を伴うことができる。ハンドル18を電動又は手動で操作することにより軸受を駆動することによって、内部管状コア作動部材が前後に動く(すなわち、内部管状コア作動部材の動作によって、内部管状コア11が動く)。さらに、シースチューブ13及びガイド先端部12は、内部管状コア11により駆動されて、内部チューブ14に対して軸方向に動くことにより、移植片2の装填及び配備等の動作を実現する。このプロセスのより詳細な説明を以下で述べる。
【0044】
最初に、移植片送達デバイス1と装填すべき移植片2とを設けるステップS1が実行される。本実施形態において、移植片2は、人工僧帽弁ステントとして実装されてよく、図4に示すように、二つの装着ラグ21、流出部22、及び流入部23を含み、これらはこの順に接続され、流入部23は流出部22の半径よりも大きい半径を有する。人工僧帽弁ステントは移植片2の例に過ぎず、移植片2に対する限定を示すものではないことを理解されたい。本実施形態において、一般的な人工僧帽弁ステントの幾何形状が例示されているが、本発明は、弁ステントの特定の幾何形状に限定されない。
【0045】
次に、図4に示すように、ハンドル18を操作することにより内部管状コア11を駆動して、アンカ15の溝を露出させるまで、ガイド先端部12及びシースチューブ13を全体として遠位端側へ動かすことにより、移植片2の装填を行うステップS2が実行される。その後、移植片2の装着ラグ21をそれぞれの溝にスナップ嵌めして、装填中にステントの安定性を助長する役割を果たすようにする。図3に示すように、ハンドル18を操作して、内部管状コア11が近位端側へ動くように駆動することにより、移植片2の流出部22を圧着するようにする。シースチューブ13を連続して動かすことにより、移植片2の流入部23も圧着される。このようにして、移植片2全体がシースチューブ13によって包み込まれ、移植片2の遠位端がガイド先端部12の端面に当接する。この時点で、図2に示すように、移植片2の装填が実現される。
【0046】
その後、外力を加えて、送達デバイス1内のカテーテルアセンブリを、ガイドワイヤを介して穿刺により患者の体内に導入することによって、移植片2の送達を行うステップS3が実行される。その後、カテーテルアセンブリを、全体として、大腿静脈を通して、且つ心房中隔にわたって前進させる。このようにして、シースチューブ13とアンカ15とは、遠位端に同期して目標部位(すなわち、病変部位)まで送達される。
【0047】
最後に、移植片2が目標部位に到達した後に、シースチューブ13の偏向の角度を調節して(調節は、曲げ制御可能チューブ17を曲げることにより、次いで曲げ制御可能チューブ17を適所に固定することにより実現される)、自己僧帽弁輪と同軸にすることによって、移植片2の配備を行うステップS4が実行される。その後、ハンドル18の「前」ボタンを押すことにより、ガイド先端部12とシースチューブ13とが遠位端側へ動き、移植片2の配備が開始される。これは、図2図4に示すように、移植片2が目標部位に完全に配備され、カテーテルアセンブリから取り外されるまで継続される。
【0048】
詳細には、シース13を遠位端側へ動かす間、移植片2の流入部23が最初に解放され、次に、シースチューブ13の近位端がアンカ15に到達してアンカ15の溝が露出されるまで、シースチューブ13のさらなる動きの影響によって、移植片2の流出部22が解放される。この時点で、移植片2の完全な配備が実現される。
【0049】
加えて、移植片2の移植が完了した後、移植片送達デバイス1内のカテーテルアセンブリを回収する必要がある。回収は、移行部材16のカテーテル部162と、したがって移行部161とを遠位端側へ動かして、図1に示すように、移行部材16の移行部161がシースチューブ13に相対する位置に到達して、そこで移行部161とシースチューブ13とが共に平滑に着脱可能に結合されるようにすることによって、行うことができる。その後、ハンドル18を操作して、カテーテルアセンブリを患者の体内から回収する。
【0050】
本発明の本実施形態による移植片送達デバイス1において、シースチューブ13はガイド先端部12に固定され、内部管状コア11が設けられる。装填プロセスにおいて、内部管状コア11は、アンカ15を露出させるまで、シースチューブ13とガイド先端部12との両方を遠位端側へ動くように駆動する。移植片2の装着ラグ21がアンカ15に装着された後、内部管状コア11を制御して、シースチューブ13とガイド先端部12とを近位端側へ動くように駆動し、移植片2の装填が行われるまで移植片2を圧着する。配備プロセスにおいて、内部管状コア11は、シースチューブ13とガイド先端部12とを遠位端側へ動かすことにより、移植片の流入部23、及びその後の流出部22の解放を可能にする。このようにして、移植片2の配備中にシースチューブ13を後退させる必要がなく、立体的に湾曲した経路を通して進める必要がない。これにより、立体的に湾曲した経路を通してシースチューブ13を後退させることによって生じ得る、移植片2の不安定な配備又は誤った配備などの問題を効果的に避けることができる。実際には、移植片2は、流入部において流出部よりも大きい半径を有するように構成されるため、流出部22が解放されると、移植片2の小葉に干渉することになる。その結果、見つかった移植片の不十分な位置決めを調節によって改善することは異なる。それに対して、本発明によれば、シースチューブ13が遠位端配備設計を使用するため、移植片2の流入部23が流出部22の解放より前に解放される。このようにして、流入部23が解放されると、目標部位との照合が可能になり、不正確な位置決めが行われていることを見つけ次第、移植片を適時に調節することができる。したがって、本発明による送達デバイスによって、高い質を確保して、移植片2を病変部位に正確に配備することが可能になる。
【0051】
さらに、本発明の本実施形態による移植片送達デバイスに含まれる移行部材16は、移植片送達デバイスの回収中に、移植片2がシースチューブ13に部分的に著しく干渉して移植片2に損傷を与え得ることを防ぐことができる。
【0052】
実施形態2
実施形態1の移行部材16は、互いに連通する移行部161とカテーテル部162とを含むため、構造が複雑である。そのような構造的な複雑さにより、移植片2の移植も複雑になる。これを考慮して、図5に示すように、実施形態2による移植片送達デバイス1'は、修正された移行部材16を含む。
【0053】
図5に示すように、実施形態2によれば、移行部材16は、移行部161のみを含み、カテーテル部162を含まない。この場合、移行部161は、近位端において、曲げ制御可能チューブ17の遠位端に、平滑な固定接続によって直接結合され、移行部161の軸方向の動きが、曲げ制御可能チューブ17の軸方向の動きによって制御される。実施形態2による移植片送達デバイス1'のその他の構成要素は、実施形態1の構成要素と同じであり、さらなる説明は不要であると思われる。さらに、この移植片送達デバイス1'によって移植片を移植する方法は、実施形態1の方法と同じであり、さらなる説明は省略する。
【0054】
移植片2の移植が完了した後、移植片送達デバイス1'内のカテーテルアセンブリを回収する必要がある。最初に、曲げ制御可能チューブ17の曲げ制御機構をロック解除し、ハンドル18を操作して、移行部161を遠位端へ動かすように曲げ制御可能チューブ17を駆動する。その結果、図5に示すように、移行部161とシースチューブ13とは互いに相対する位置にあり、移行部161とシースチューブ13とは共に平滑に接続される。その後、ハンドル18を操作することによって、カテーテルアセンブリを患者の体内から回収する。
【0055】
要約すると、本発明の実施形態による移植片送達デバイスにおいて、シースチューブの遠位端はガイド先端部に固定され、移植片はシースチューブの近位端において装填される。移植片の配備中、シースチューブは遠位端へ動かされ、すなわち、シースチューブは、ハンドル側へ戻るのではなく、移植片の目標部位側へ動き続ける。これにより、立体的に湾曲した経路を通してシースチューブを後退させることによって生じ得る、移植片の不安定な配備、又はさらには誤った配備などの問題を効果的に避けることができる。さらに、移植片が、流入部において流出部よりも大きい半径を有するように構成されることを考慮して、移植片の流入部が、移植片の流出部の解放より前に解放されるように設計される。移植片の流入部が配備されると、目標部位との照合を行うことができ、不正確な位置決めが行われていることを見つけ次第、移植片を適時に調節することができる。これにより、質の高い、より正確な移植片の配備が可能になる。さらに、シースチューブの近位端に配置された移行部材は、送達デバイスの回収中に、移植片がシースチューブに部分的に著しく干渉して移植片に損傷を与え得ることを防ぐことができる。
【0056】
前述した説明は、本発明のいくつかの好ましい実施形態の説明に過ぎず、決して本発明の範囲を限定するものではない。本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に開示された主題及び教示に対して当業者によってなされる、等価な置換又は修正などの任意の形態のあらゆる変更は、本発明の範囲内に含まれるものと考えられる。
【符号の説明】
【0057】
1、1' 移植片送達デバイス
11 内部管状コア
12 ガイド先端部
13 シースチューブ
14 内部チューブ
15 アンカ
151 小径部材
16 移行部材
161 移行部
162 カテーテル部
17 曲げ制御可能チューブ
18 ハンドル
2 移植片
21 装着ラグ
22 流出部
23 流入部
図1
図2
図3
図4
図5