(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】ワークフローおよび性能を改善するマルチパスコンピュータ断層撮影スキャン
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20240416BHJP
A61N 5/00 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
A61B6/03 577
A61B6/03 530Z
A61N5/00
(21)【出願番号】P 2021521757
(86)(22)【出願日】2019-11-25
(86)【国際出願番号】 US2019063086
(87)【国際公開番号】W WO2020112684
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-11-22
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505172824
【氏名又は名称】アキュレイ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギャニオン ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】パイ チョアンヨン
(72)【発明者】
【氏名】ユイ チーツォン
【審査官】下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-087457(JP,A)
【文献】特開2011-235088(JP,A)
【文献】特開2009-022450(JP,A)
【文献】特表2012-515592(JP,A)
【文献】特開平09-218939(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0251029(US,A1)
【文献】特開2006-141906(JP,A)
【文献】特開2018-033781(JP,A)
【文献】特開2007-175399(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0101082(US,A1)
【文献】国際公開第2015/022888(WO,A1)
【文献】特開2000-201920(JP,A)
【文献】特開2017-202031(JP,A)
【文献】国際公開第2015/107963(WO,A1)
【文献】特開2004-166975(JP,A)
【文献】国際公開第2018/183748(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/58
A61N 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチパススキャンのためのX線撮像装置であって、
撮像用の第1の放射線源及び前記第1の放射線源から放射された放射線を検出する放射線検出器が設けられた回転可能なガントリーシステムと、
前記ガントリーシステムに対して移動可能な患者支持台と、
最初のパスで検出される第1の投影データを取得し、前記第1の投影データに基づいて第1の患者画像を再構成して過去に撮影した計画画像とレジストレーションするとともに、前記第1の投影データと2回目のパスで検出される第2の投影データに基づいて第2の患者画像を再構成する、データ処理システムと、
を備えている、X線撮像装置。
【請求項2】
前記第1の患者画像が、前記2回目のパスの間に再構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記2回目のパスのスキャンパラメータが、前記第1の投影データに基づいて決定される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記レジストレーションの結果が前記スキャンパラメータの決定に使用される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記スキャンパラメータが、ピッチ、エネルギレベル、管電位、管電流、パルス幅、ビームフィルタ、または速度、の少なくとも1つを含む、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記最初のパスが、前記第1の放射線源の第1の管エネルギ
で行われ、前記2回目のパスが、前記第1の放射線源の第2の管エネルギ
で行われ、前記第2の患者画像が、スペクトル患者画像を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記第1の放射線源および前記放射線検出器の軸方向位置が、前記2回目のパスの間、前記最初のパスに対してシフトされ、前記第1の投影データおよび前記第2の投影データが、前記第2の患者画像の再構成時に一緒に使用される、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
治療準備が前記第1の患者画像に基づい
て行われ、治療計画が前記第2の患者画像に基づい
て行われる、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記治療準備が、前記第1の患者画像を計画画像とレジストレーションするステップを含む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記患者支持台が、前記最初のパスの間、第1の縦方向に移動し、前記2回目のパスの間、第2の縦方向に移動し、前記第2の
縦方向が前記第1の
縦方向の反対である、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記患者支持台が、前記最初のパスの間、第1の速度で移動し、前記2回目のパスの間、第2の速度で移動し、前記第1の速度が前記第2の速度よりも速い、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記最初のパスおよび前記2回目のパスがヘリカルスキャンを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記最初のパスが第1の時間で完了し、前記2回目のパスが第2の時間で完了し、前記第2の時間が前記第1の時間よりも長い、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記2回目のパスが、前記最初のパスよりも多くのビューを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記放射線検出器が、前記最初のパスの間、一方の軸横断方向にオフセットされており、前記2回目のパスの間、反対の軸横断方向にオフセットされている、請求項1に記載の
装置。
【請求項16】
前記回転可能なガントリーシステムに結合されている
治療用の第2の放射線源をさらに備えており、前記第2の放射線源が、前記第2の患者画像に基づいて計算される線量の放射線を送達する、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
患者支持台の周囲に配置されている回転可能なガントリーシステムに放射線源及び放射線検出器が結合されている装置を用いて、マルチパススキャン時に撮像データを収集する方法であって、
撮像スキャンの最初のパスの間に、
前記ガントリーシステムに対して患者支持台を移動させるステップ
と、
前記最初のパスの間に前記放射線検出器によって測定される第1の投影データに基づいて
第1の患者画像を再構成するステップと
治療準備のために、前記第1の患者画像と計画画像をレジストレーションするステップと、
前記撮像スキャンの2回目のパスの間に、
前記ガントリーシステムに対して前記患者支持台を移動させるステップと、
前記2回目のパスの間に、前記放射線検出器によって測定される第2の投影データを受信するステップと、
前記第1の投影データおよび前記第2の投影データに基づいて第2の患者画像を再構成するステップと、
を含む、方法。
【請求項18】
前記第2の患者画像に基づいて治療用放射線量を計算するステップと、
をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記患者支持台が、前記最初のパスの間、第1の縦方向に移動し、前記2回目のパスの間、第2の縦方向に移動し、前記第2の縦方向が前記第1の縦方向の反対である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
放射線治療送達装置であって、
撮像用の第1の放射線源、治療用の第2の放射線源及び前記第1の放射線源からの放射線を検出する放射線検出器が設けられた回転可能なガントリーシステムと、
前記ガントリーシステムに対して移動可能な患者支持台と、
最初のパスで検出される第1の投影データに基づいて第1の患者画像を再構成し、前記第1の患者画像と計画画像をレジストレーションし、2回目のパスで検出される第2の投影データ及び前記第1の投影データに基づいて第2の患者画像を再構成する、データ処理システムと、
を備えており、
治療準備が前記第1の患者画像に基づ
いて行われ、前記第2の放射線源が、適応IGRT中に、前記第2の患者画像に基づいて計算される線量の放射線を送達する、
放射線治療送達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本出願は、11個の米国仮特許出願、すなわち、第62/773,712号(出願日2018年11月30日)(代理人整理番号:38935/04001)、第62/773,700号(出願日2018年11月30日)(代理人整理番号:38935/04002)、第62/796,831号(出願日2019年1月25日)(代理人整理番号:38935/04004)、第62/800,287号(出願日2019年2月1日)(代理人整理番号:38935/04003)、第62/801,260号(出願日2019年2月5日)(代理人整理番号:38935/04006)、第62/813,335号(出願日2019年3月4日)(代理人整理番号:38935/04007)、第62/821,116号(出願日2019年3月20日)(代理人整理番号:38935/04009)、第62/836,357号(出願日2019年4月19日)(代理人整理番号:38935/04016)、第62/836,352号(出願日2019年4月19日)(代理人整理番号:38935/04017)、第62/843,796号(出願日2019年5月6日)(代理人整理番号:38935/04005)、第62/878,364号(出願日2019年7月25日)(代理人整理番号:38935/04008)、の利益を主張する。さらに本出願は、同じ日に出願された10個の米国非仮特許出願、すなわち、代理人整理番号38935/04019、タイトル「MULTIMODAL RADIATION APPARATUS AND METHODS」、代理人整理番号38935/04020、タイトル「APPARATUS AND METHODS FOR SCALABLE FIELD OF VIEW IMAGING USING A MULTI-SOURCE SYSTEM」、代理人整理番号38935/04011、タイトル「INTEGRATED HELICAL FAN-BEAM COMPUTED TOMOGRAPHY IN IMAGE-GUIDED RADIATION TREATMENT DEVICE」、代理人整理番号38935/04010、タイトル「COMPUTED TOMOGRAPHY SYSTEM AND METHOD FOR IMAGE IMPROVEMENT USING PRIOR IMAGE」、代理人整理番号38935/04013、タイトル「OPTIMIZED SCANNING METHODS AND TOMOGRAPHY SYSTEM USING REGION OF INTEREST DATA」、代理人整理番号38935/04015、タイトル「HELICAL CONE-BEAM COMPUTED TOMOGRAPHY IMAGING WITH AN OFF-CENTERED DETECTOR」、代理人整理番号38935/04012、タイトル「METHOD AND APPARATUS FOR SCATTER ESTIMATION IN CONE-BEAM COMPUTED TOMOGRAPHY」、代理人整理番号38935/04014、タイトル「ASYMMETRIC SCATTER FITTING FOR OPTIMAL PANEL READOUT IN CONE-BEAM COMPUTED TOMOGRAPHY」、代理人整理番号38935/04018、タイトル「METHOD AND APPARATUS FOR IMPROVING SCATTER ESTIMATION AND CORRECTION IN IMAGING」、代理人整理番号38935/04022、タイトル「METHOD AND APPARATUS FOR IMAGE RECONSTRUCTION AND CORRECTION USING INTER-FRACTIONAL INFORMATION」、にも関連する。上に記載した特許出願および特許の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
開示する技術の態様は、コンピュータ断層撮影撮像に関し、より詳細には、コーンビームコンピュータ断層撮影ヘリカルスキャン時に偏心(オフセット)検出器を利用するときを含めて、撮像、データ再構成、およびワークフローに関連付けられるマルチパススキャンのための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
コンピュータ断層撮影(CT)撮像(コーンビームコンピュータ断層撮影(CBCT)を含む)は、放射線治療における有用なツールである。CT撮像は、患者の位置決めおよび線量の計算のために使用することができる。さらに、医師が適応放射線治療(画像誘導放射線治療(IGRT)の場合を含む)を実行できるようにする可能性もある。IGRTでは、治療前、治療中、および/または治療後に、医用撮像技術(CTなど)を利用して患者の画像を収集することができる。
【0004】
1つの一般的なデータ取得形態は、円形スキャンであり、小さいオブジェクト(例:頭部)の場合には中央検出器(centered detector)を使用し、大きなオブジェクト(例:腹部)をスキャンする場合にはチャネル方向に偏心した(オフセットまたはシフトされた)検出器を使用する。ほとんどの放射線治療システムでは、円形スキャンが唯一の実用的な選択肢である可能性が高く、なぜならガントリーは限られた角度範囲内で一方向にしか回転できないため、これらの機器がヘリカル線源軌道を使用できないためである。ヘリカルスキャンは、円形スキャンと比較して、少ないアーチファクト、少ない散乱、高速なスキャン速度で高品質の画像を提供できるが、ビューの完成がはるかに複雑である。
【0005】
IGRTシステムで取得されるCT画像には、2つの主な用途があり、すなわち(a)患者の治療準備のための計画CT画像とのレジストレーション、および(b)適応計画および線量計算、である。これら2つの用途におけるCT画像の要件は、異なりうる。レジストレーションおよび治療準備の場合、CT定量(CT数など)の絶対精度は、適応計画および線量計算の場合ほど重要ではないが、レジストレーションおよび準備の精度には比較的大きな軸方向視野(FOV)が許可される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態においては、マルチパススキャン時に撮像データを収集する方法は、撮像スキャンの最初のパスの間に、回転可能なガントリーシステムに対して患者支持台を移動させるステップであって、少なくとも部分的に患者支持台の周囲に配置されている回転可能なガントリーシステムに、第1の放射線源および放射線検出器が結合されている、ステップと、最初のパスの間に、放射線検出器によって測定される第1の投影データを受信するステップと、撮像スキャンの2回目のパスの間に、回転可能なガントリーシステムに対して患者支持台を移動させるステップと、2回目のパスの間に、放射線検出器によって測定される第2の投影データを受信するステップと、第1の投影データおよび第2の投影データに基づいて患者画像を再構成するステップと、を含む。
【0007】
一実施形態に関連して説明および/または図示した特徴は、1つまたは複数の別の実施形態において同じ方法で、または類似する方法で、および/または、別の実施形態の特徴と組み合わせて、または別の実施形態の特徴の代わりに、使用することができる。
【0008】
本発明の説明は、請求項で使用されている単語、または請求項もしくは本発明の範囲を、限定するものではない。請求項で使用されている単語は、すべての通常の意味を持つ。
【図面の簡単な説明】
【0009】
添付の図面(本明細書に組み込まれており本明細書の一部を構成している)には、本発明の実施形態が図解されており、上に記載した本発明の一般的な説明および以下に記載する詳細な説明と合わせて、本発明の実施形態を例示する役割を果たす。なお図に示した要素の境界(例:長方形、長方形のグループ、またはその他の形状)は、境界の一実施形態を表すことが理解されよう。いくつかの実施形態においては、1つの要素を複数の要素として設計することができる、または複数の要素を1つの要素として設計することができる。いくつかの実施形態においては、別の要素の内部の構成要素として示されている要素は、外部の構成要素として実施することができ、逆も同様である。さらに、要素は正しい縮尺で描かれていないことがある。
【
図1】開示する技術の一態様による例示的なX線撮像装置の斜視図である。
【
図2】開示する技術の一態様による、例示的な放射線治療装置に統合されたX線撮像装置の概略図である。
【
図3】定義されたワールド座標系を一緒に示した例示的なX線撮像装置の図である。
【
図4】1回のスキャンパスの間にガントリーの中に移動する患者支持台を一緒に示した例示的なX線撮像装置の図である。
【
図5】別のスキャンパスの間にガントリーの外に移動する患者支持台を一緒に示した例示的なX線撮像装置の図である。
【
図6】高速スキャンのための大きなピッチを有するデュアルパスヘリカルスキャンプロトコル時における2回のインターリーブスキャン(interleaved scans)に関連付けられる例示的な軌道の図である。
【
図7】例示的なデータ取得システムの3D幾何学の図である。
【
図8】例示的な(x,z)平面におけるデータ取得システムの幾何学の図である。
【
図9A】左巻き螺旋時の例示的なスキャン軌道およびオフセット検出器の位置の図である。
【
図9B】右巻き螺旋時の例示的なスキャン軌道およびオフセット検出器の位置の図である。
【
図10】例示的な横断面における、
図9Aおよび
図9Bに示したスキャン時に利用可能なデータの図である。
【
図11】
図9Aおよび
図9Bに示したスキャンを使用しての、胸部ファントムの例示的な再構成を示している。
【
図12】例示的なマルチパス撮像プロセスの流れ図である。
【
図13】別の例示的なマルチパス撮像プロセスの流れ図である。
【
図14】別の例示的なマルチパス撮像プロセスの流れ図である。
【
図15】別の例示的なマルチパス撮像プロセスの流れ図である。
【
図16】放射線治療装置を使用するIGRTの例示的な方法を描いた流れ図である。
【
図17】例示的な、画像に基づく送達前ステップを描いたブロック図である。
【
図18】撮像時、または画像に基づく送達前ステップ時に利用することのできる例示的なデータ源を描いたブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、本開示全体を通じて使用される例示的な用語を定義しておく。すべての用語の単数形および複数形は、いずれも各用語の意味を持つ。
【0011】
本明細書で使用される「構成要素」は、ハードウェアの一部、ソフトウェアの一部、またはこれらの組合せとして定義することができる。ハードウェアの一部は、少なくともプロセッサおよびメモリの一部を含むことができ、メモリは、実行するための命令を含む。構成要素は装置に関連付けられることがある。
【0012】
本明細書で使用される「ロジック」(「回路」と同義)は、(1つまたは複数の)機能または(1つまたは複数の)動作を実行するためのハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、および/またはそれぞれの組合せを含み、ただしこれらに限定されない。例えばロジックは、所望の用途またはニーズに基づいて、ソフトウェアによって制御されるマイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)などのディスクリートロジック、または他のプログラマブルロジックデバイスおよび/またはコントローラを含むことができる。ロジックは、完全にソフトウェアとして実施することもできる。
【0013】
本明細書で使用される「プロセッサ」は、実質的に任意の数のプロセッサシステムまたはスタンドアロンプロセッサ(マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、中央処理装置(CPU)、およびデジタルシグナルプロセッサ(DSP)など)の1つまたは複数を任意の組合せで含み、ただしこれらに限定されない。プロセッサは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、プログラマブル読み取り専用メモリ(PROM)、消去可能なプログラマブル読み取り専用メモリ(EPROM)、クロック、デコーダ、メモリコントローラ、または割り込みコントローラなど、プロセッサの動作をサポートする様々な別の回路に関連付けることができる。これらのサポート回路は、プロセッサまたはそれに関連する電子パッケージの内部または外部であってよい。サポート回路は、プロセッサと動作可能に通信する。ブロック図または他の図面において、サポート回路は必ずしもプロセッサとは別に示されていない。
【0014】
本明細書で使用される「信号」は、1つまたは複数の電気信号(アナログ信号またはデジタル信号を含む)、1つまたは複数のコンピュータ命令、ビットまたはビットストリームなどを含み、ただしこれらに限定されない。
【0015】
本明細書で使用される「ソフトウェア」は、コンピュータ、プロセッサ、ロジック、および/または他の電子デバイスに、機能、動作を実行させる、および/または所望の方法で挙動させる、1つまたは複数のコンピュータ可読および/またはコンピュータ実行可能の命令を含み、ただしこれらに限定されない。命令は、ルーチン、アルゴリズム、モジュール、または動的にリンクされるソースまたはライブラリからの個別のアプリケーションまたはコードを含むプログラムなど、さまざまな形式で実施することができる。
【0016】
上の例示的な定義を示したが、本出願人は、これらの用語および別の用語には、本明細書に矛盾しない最も広義の妥当な解釈が使用されることを意図している。
【0017】
後からさらに詳しく説明するように、開示する技術の実施形態は、ワークフローおよび/または性能を改善するためのマルチパススキャンに関する。いくつかの実施形態においては、放射線治療送達装置および方法は、IGRTと組み合わせて、またはIGRTの一部として使用するための、CT用の統合された低エネルギ放射線源を利用することができる。特に、例えば、放射線治療送達装置および方法は、治療処置用の高エネルギ放射線源とともに、回転画像取得法を使用してガントリー内で撮像するための低エネルギのコリメート放射線源を組み合わせることができる。様々な実施形態においては、低エネルギ放射線源(例:kV)は、撮像の目的には、高エネルギ放射線源(例:MV)を使用するよりも高い画質を生成することができる。kVエネルギによって生成された画像は、MVエネルギによる画像よりも組織のコントラストが良好でありうる。ターゲットおよびリスク臓器(OARS)の可視化、適応治療モニタリング、および治療計画/再計画のためには、高い品質のボリューム撮像が必要となることがある。いくつかの実施形態においては、kV撮像システムは、位置決め、動き追跡、および/または、特性解析または補正機能のために使用することもできる。
【0018】
画像取得方法は、複数回転スキャン(multiple rotation scan)を含む、または利用することができ、複数回転スキャンは、例えば、連続スキャン(例:患者支持台をガントリーボアの中を縦方向に動かしながら中心軸の周りのヘリカル線源軌道を使用する)や、患者支持台を縦方向に段階的に動かしながらの不連続の円形のストップアンドリバーススキャン(non-continuous circular stop-and-reverse scan)とすることができる。
【0019】
様々な実施形態によれば、X線撮像装置は、例えばビームフォーマを使用して放射線源をコリメートする(例えばコーンビームまたはファンビームにコリメートすることを含む)。一実施形態においては、コリメートされるビームを、患者が移動する間に連続的に回転するガントリーと組み合わせることができ、結果としてヘリカル画像が得られる。
【0020】
いくつかの実施形態においては、高い品質のボリューム画像を完成させるためにスキャン回転が増えることに付随する時間は、放射線治療送達プラットフォームにおいてkV CT撮像を提供するために、高いガントリーレート/速度(例:高速スリップリング回転を使用し、例えば最大10回転/分(rpm)、最大20rpm、最大60rpm、またはそれ以上のrpmを含む)、高いkVフレームレート、および/またはスパースデータ再構成手法(sparse data reconstruction techniques)によって、軽減することができる。検出器(様々な列/スライスサイズ、構造、ダイナミックレンジなどを有する)、スキャンピッチ、および/または動的なコリメーションは、様々な実施形態における追加の特徴である(検出器の一部を選択的に照射するためと、アクティブな読み出し領域を選択的に定義するためを含む)。
【0021】
ヘリカルスキャン軌道は、円形スキャンと比較して、いくつかの利点を有し得る。例えばコーンビームアーチファクトが減少し、なぜならヘリカルスキャンでは、画像再構成のためのより完全な投影データが得られるためである。また、ヘリカルスキャンでは、狭い軸方向開口を使用して、縦方向の大きなカバー範囲にわたり投影データを取得することができ、これにより投影データにおける散乱汚染(scatter contamination)が相当に減少しうる。再構成された画像は、アーチファクトの頻度が低い点で著しく改善された画質を有することができ、結果として軟組織のコントラストが大きく向上する。さらに、ヘリカルスキャンでは、大きなピッチを使用してスキャン速度を改善することができる。
【0022】
図1および
図2を参照し、これらの図はX線撮像装置10を示している。X線撮像装置10は(
図2に示したように)、様々な用途(IGRTを含む、ただしこれに限定されない)に使用できる放射線治療装置に関連付ける、および/または、放射線治療装置に統合できることが理解されよう。X線撮像装置10は、支持ユニットまたはハウジング14によって支持されている、またはハウジング14に収容されている回転可能なガントリーシステム(ガントリー12と称する)を含む。本明細書におけるガントリーとは、ターゲットの周りを回転するときに1つまたは複数の放射線源および/または関連する検出器を支持することのできる1つまたは複数のガントリー(例:リングまたはCアーム)を備えたガントリーシステムを指す。例えば、一実施形態においては、第1の放射線源および関連する検出器を、ガントリーシステムの第1のガントリーに取り付けることができ、第2の放射線源および関連する検出器を、ガントリーシステムの第2のガントリーに取り付けることができる。別の実施形態においては、2つ以上の放射線源および関連する(1つまたは複数の)検出器を、ガントリーシステムの同じガントリーに取り付けることができる(例えばガントリーシステムが1つのガントリーのみから構成される場合を含む)。ガントリー、放射線源、および放射線検出器の様々な組合せを、様々なガントリーシステム構成に組み合わせて、同じ装置内で同じボリュームを撮像および/または治療することができる。例えば、kV放射線源およびMV放射線源を、ガントリーシステムの同じガントリーまたは異なるガントリーに取り付けて、IGRTシステムの一部としての撮像および/または治療に、選択的に使用することができる。異なるガントリーに取り付けられる場合、これらの放射線源は独立して回転することができるが、依然として同じ(またはほぼ同じ)ボリュームを同時に撮像することができる。回転可能なリングガントリー12は、上に述べたように、10rpm以上の能力とすることができる。回転可能なガントリー12には、ガントリーボア16が画成されており、撮像および/または治療のために患者をこのボアの中に入れて位置決めすることができる。一実施形態によれば、回転可能なガントリー12は、スリップリングガントリーとして構成されており、撮像用放射線源(例:X線)および関連する放射線検出器の連続的な回転を提供する一方で、検出器によって受信される高品質の撮像データのための十分な帯域幅を提供する。スリップリングガントリーでは、装置に関連付けられる電力および信号を伝えるケーブルが巻き付く、および巻き付きが解除されるように、ガントリーの回転方向を交互にする必要がない。このような構成によって、たとえIGRTシステムに統合されているときでも、連続的なヘリカル(例:ファンビーム、コーンビームなど)コンピュータ断層撮影が可能になる。
【0023】
患者支持台18またはテーブル/寝台は、回転可能なガントリー12に隣接して配置されており、回転可能なガントリー12の中に移動させる、およびガントリー12の中で縦方向に移動させることができるように、一般には水平姿勢で患者を支持するように構成されている。患者支持台18は、例えばガントリー12の回転面に垂直な方向に(ガントリー12の回転軸に沿って、または回転軸に平行に)患者を動かすことができる。患者支持台18は、患者および患者支持台18の動きを制御する患者支持台コントローラに動作可能に結合することができる。命令された撮像計画および/または治療計画に従って患者の長手方向軸を中心に回転するように、患者支持台コントローラを、回転可能なガントリー12と、回転するガントリーに取り付けられている放射線源とに同期させることができる。いくつかの実施形態においては、患者支持台がボア16の中に入った時点で、最適な治療のために患者の位置を調整する目的で、患者支持台を限られた範囲内で上下左右に動かすこともできる。
【0024】
図2に示したように、X線撮像装置10は、回転可能なガントリー12に結合されている、またはガントリー12によって支持されている撮像用放射線源30を含む。撮像用放射線源30は、高品質の画像を生成するための放射線ビーム(全体を32として示してある)を放出する。この実施形態においては、撮像用放射線源は、キロボルト(kV)線源(例:約20kV~約150kVの範囲内のエネルギレベルを有する臨床用X線源)として構成されているX線源30である。一実施形態においては、kV放射線源は、最大150keVのキロ電子ボルトピーク光子エネルギ(keV)を備えている。撮像用放射線源は、撮像に適切な任意のタイプの透過スキャン用線源(transmission source)とすることができる。例えば、撮像用放射線源は、X線生成源(CT用を含む)、または十分なエネルギおよびフラックスを有する光子を生成する任意の別の方法(例えばガンマ線源(例:コバルト57、エネルギピーク122keV)、蛍光X線源(Pb k線を通じた蛍光源など、2つのピーク約70keVおよび約82keV)など)とすることができる。本明細書におけるX線、X線撮像、撮像用X線源などの言及は、特定の実施形態において例示的である。さまざまな別の実施形態においては、これらに代えて別の撮像用透過スキャン用線源を使用することができる。X線検出器34(例:2次元のフラットな検出器または湾曲した検出器)は、回転可能なガントリー12に結合する、またはガントリー12によって支持することができる。X線検出器34は、X線源30からの放射線を受信するように配置されており、X線源30と一緒に回転することができる。検出器34は、減衰されていない放射線量を検出する、または測定することができ、したがって患者または関連する患者のROIによって実際に減衰されたものを(最初に生成されたものと比較して)推測することができる。検出器34は、X線源30が患者の周囲を回転して患者の方に放射線を放出するときに、様々な角度からの減衰データを検出する、または収集することができる。
【0025】
X線検出器34は、開示する技術の範囲から逸脱することなく、複数の構造をとり得ることが理解されよう。
図2に示したように、X線検出器34を、フラットパネル検出器(例:複数列フラットパネル検出器)として構成することができる。別の例示的な実施形態によれば、X線検出器34を、湾曲した検出器として構成することができる。検出器34は、チャネル方向および/または軸方向にオフセットした(すなわちシフトした)位置に調整することができる。
【0026】
図1および
図2は、リングガントリー12に取り付けられた放射線源30を有するX線撮像装置10を描いているが、別の実施形態は、別のタイプの回転可能な撮像装置(例えば、Cアームガントリーおよびロボットアームベースのシステムを含む)を含むことができる。ガントリーベースのシステムでは、ガントリーが、アイソセンターを通る軸を中心に撮像用放射線源30を回転させる。ガントリーベースのシステムとしてはCアームガントリーが挙げられ、Cアームガントリーでは、撮像用放射線源30が、片持ち梁に似た方法で取り付けられており、アイソセンターを通る軸を中心に回転する。さらにガントリーベースのシステムとしては、ほぼトロイダル形状を有するリングガントリー(例えば回転可能なガントリー12)が挙げられ、リングガントリーでは、患者の身体がリング/トロイドのボアの中に延び、撮像用放射線源30がリングの周囲に取り付けられており、アイソセンターを通る軸を中心に回転する。いくつかの実施形態においては、ガントリー12は連続的に回転する。別の実施形態においては、ガントリー12は、順方向と逆方向とに反復的に回転するケーブルベースのシステムを利用する。
【0027】
コリメータまたはビームフォーマアセンブリ(全体を36として示してある)は、X線検出器34のアクティブ領域の一部分または領域を選択的に照射するために、X線源30によって放出される放射線ビーム32の形状を選択的に制御および調整する目的で、X線源30に対して配置されている。ビームフォーマは、X線検出器34における放射線ビーム32の配置状態も制御することができる。一実施形態においては、ビームフォーマ36は、(例えばより薄い、またはより厚いスリットを形成するために)1つの角度/寸法を動かすことができる。別の実施形態においては、ビームフォーマ36は、(例えば様々なサイズの長方形を形成するために)2つの角度/寸法を動かすことができる。別の実施形態においては、ビームフォーマ36は、様々な別の動的に制御される形状(例えば平行四辺形を含む)に対応することができる。これらのすべての形状は、スキャン中に動的に調整することができる。いくつかの実施形態においては、ビームフォーマの遮断部分を回転させる、および/または平行移動させることができる。
【0028】
ビームフォーマ36は、X線源30によって放出される放射線ビーム32の形状を、複数の幾何学形状に動的に調整するように制御することができ、複数の幾何学形状は、ファンビーム、または1つの検出器列の幅と同程度に小さいビーム厚さ(幅)を有するコーンビーム、または複数の検出器列(これは検出器のアクティブ領域の一部分のみである)を含むビーム厚さ(幅)を有するコーンビームを含み、ただしこれらに限定されない。様々な実施形態においては、ビームの厚さは、より大きな検出器のアクティブ領域の数センチメールを照射することができる。例えば、5~6センチメートルの検出器のうち(検出器平面において縦方向に測定される)3~4センチメートルを、撮像用放射線32によって選択的に照射することができる。この実施形態においては、投影画像データの3~4センチメートルを各読み出し部によってキャプチャすることができ、このとき検出器領域の片側または両側の約1~2センチメートルが照射されず、後から説明するように、この部分を使用して散乱データをキャプチャすることができる。
【0029】
別の実施形態においては、アクティブな検出器の、より多くの部分またはより少ない部分を撮像用放射線に選択的に照射させることができる。例えば、いくつかの実施形態においては、ビーム厚さを、約2センチメートル、1センチメートル、1センチメートル未満、または同程度のサイズの範囲まで低減することができる(より小型の検出器の場合を含む)。別の実施形態においては、ビーム厚さを、約4センチメートル、5センチメートル、5センチメートル超、または同程度のサイズの範囲に増大させることができる(より大きい検出器の場合を含む)。様々な実施形態においては、検出器のアクティブ領域に対する照射される領域の比率を、30~90%または50~75%とすることができる。別の実施形態においては、検出器のアクティブ領域に対する照射される領域の比率を、60~70%とすることができる。しかしながら、別の実施形態においては、照射される領域およびアクティブ領域の様々な別のサイズ、または検出器のアクティブ領域に対する照射される領域の様々な別の比率が適切であることもある。半影領域を超える散乱データをキャプチャするのに、検出器の影領域(アクティブであるが放射線によって直接照射されない領域)が十分であるように、ビームおよび検出器を構成することができる。
【0030】
様々な実施形態は、測定されるデータが、主(照射)領域および影領域に関して十分であるのみならず、速度および線量の制御に関しても最適化されるように、検出器34の選択的な照射を制御する形状・寸法(例:ビームサイズ、ビーム/開口中心、コリメーション、ピッチ、検出器読み出し範囲、検出器読み出し中心など)を最適化するステップを含むことができる。X線源30からの放射線ビーム32が、実行されている特定の撮像タスクに基づいてX線検出器34の大きな部分または小さな部分をカバーするように、ビームフォーマ36の形状/位置および検出器34の読み出し範囲を制御することができる。ビーム32は、様々な形状(例えば平行四辺形を含む)に成形することができる。ビームフォーマ36は、ビームフォーマ36のX線減衰材料の回転および/または並進によって放射線ビーム32の形状を調整するように構成することができる。
【0031】
コリメータ/ビームフォーマ36は、X線源30によって放出される放射線ビーム32の形状を調整することを可能にする様々な方法で構成することができる。例えば、X線源30からの放射線ビームが通過できる開口部のサイズを定義および選択的に調整する一連の顎部または他の適切な部材を含むように、コリメータ36を構成することができる。1つの例示的な構成によれば、X線源30からの放射線ビームが通過する開口部のサイズを調整する目的と、撮像を最適化しかつ患者の線量を最小にするために、撮像されるべき患者の部分のみが照射されるように患者に対してビームの位置を調整する目的で、コリメータ36は上側顎部および下側顎部を含むことができ、上側顎部および下側顎部は異なる方向(例:平行な方向)に可動である。
【0032】
一実施形態によれば、X線源30からの放射線ビーム32の形状を、画像の取得中に変化させることができる。言い換えれば、例示的な一実装形態によれば、ビームフォーマ36のリーフ位置および/または開口部の幅を、スキャンの前またはスキャン中に調整することができる。例えば、一実施形態によれば、放射線ビーム32が、十分な主領域/影領域を持つ形状を有し、撮像中に関心オブジェクト(例:前立腺)のみを含むように調整されるように、X線源30の回転中にビームフォーマ36を選択的に制御し、動的に調整することができる。X線源30によって放出される放射線ビーム32の形状は、所望の画像取得に応じて、スキャン中またはスキャン後に変更することができ、所望の画像取得は、後からさらに詳しく説明するように、撮像および/または治療のフィードバックに基づくことができる。
【0033】
図2に示したように、X線撮像装置10は、回転可能なガントリー12に結合されている、または回転可能なガントリー12によって支持されている治療用放射線源20を含む放射線治療装置に統合することができる。一実施形態によれば、治療用放射線源20は、治療用放射線の線源(患者の中の関心領域内の腫瘍の治療に使用される高エネルギ放射線源など)として構成されている。治療用放射線源は、高エネルギX線ビーム(例:メガボルト(MV)X線ビーム)、および/または高エネルギ粒子ビーム(例:電子のビーム、光子のビーム、またはより重いイオン(炭素など)のビーム)、または別の適切な形態の高エネルギ放射線とすることができることが理解されよう。一実施形態においては、第1の放射線源20は、1MeV以上のメガ電子ボルトピーク光子エネルギ(MeV)を備えている。一実施形態においては、高エネルギX線ビームは、0.8MeVより高い平均エネルギを有する。別の実施形態においては、高エネルギX線ビームは、0.2MeVより高い平均エネルギを有する。別の実施形態においては、高エネルギX線ビームは、150keVより高い平均エネルギを有する。一般的に、第1の放射線源20は、第2の放射線源30より高いエネルギレベル(ピークおよび/または平均など)を有する。
【0034】
一実施形態においては、治療用放射線源20は、治療用放射線を生成する直線加速器(LINAC)であり(例:MV線源)、撮像システムは、比較的低い強度かつ低エネルギの撮像用放射線を生成する独立したX線撮像用放射線源(例:kV線源)を備えている。別の実施形態においては、治療用放射線源20は、放射性同位元素(例えばCo-60など)とすることができ、一般に1MeVを超えるエネルギを有することができる。治療用放射線源20は、患者支持台18上に支持されている患者内の関心領域(ROI)の方に、治療計画に従って1本または複数の放射線ビーム(全体を22によって示してある)を放出することができる。いくつかの実施形態においては、治療用放射線源20を撮像用に使用することができる。
【0035】
検出器24は、回転可能なガントリー12に結合する、またはガントリー12によって支持することができ、治療用放射線源20からの放射線22を受信するように配置されている。検出器24は、減衰されていない放射線量を検出する、または測定することができ、したがって患者または関連する患者のROIによって実際に減衰されたものを(最初に生成されたものと比較して)推測することができる。検出器24は、治療用放射線源20が患者の周囲を回転して患者の方に放射線を放出するときに、様々な角度からの減衰データを検出する、または収集することができる。
【0036】
治療用放射線源20は、コリメータを含む、またはコリメータに関連付けることができることをさらに理解されたい。治療用放射線源20に関連付けられるコリメータは、撮像用線源30に関連付けられるコリメータ/ビームフォーマ36と同様に、複数の方法で構成することができる。例えば、コリメータ/ビームフォーマは、マルチリーフコリメータ(MLC:multi-leaf collimator)として構成することができ、マルチリーフコリメータは、最小限に開いた位置または閉じた位置と、最大限に開いた位置との間の1つまたは複数の位置に動くように動作可能な複数のインターレースリーフ(interlaced leaves)を含むことができる。放射線源によって放出される放射線ビームの望ましい形状が達成されるように、リーフを所望の位置に動かすことができることが理解されよう。一実施形態においては、マルチリーフコリメータ(MLC)は、ミリメートル以下のターゲティング精度が可能である。
【0037】
治療用放射線源20は、撮像用線源30と同じ平面または異なる平面(オフセット)に取り付ける、構成する、および/または動かすことができる。いくつかの実施形態においては、放射線源20,30を同時に作動させることに起因する散乱は、放射線の平面をずらすことによって低減することができる。
【0038】
放射線治療装置に統合されたとき、X線撮像装置10は、放射線送達手順(治療)を準備する(例:位置合わせおよび/またはレジストレーション)、計画する、および/または誘導するために使用される画像を提供することができる。一般的な準備は、現在の(治療中)画像を、治療前画像情報と比較することによって達成される。治療前画像情報は、例えば、コンピュータ断層撮影(CT)データ、コーンビームCTデータ、磁気共鳴画像法(MRI:magnetic resonance imaging)データ、ポジトロン放出断層撮影法(PET:positron emission tomography)データ、または3D回転血管造影法(3DRA:3D rotational angiography)データ、および/または、これらまたは別の画像診断法から得られた任意の情報、を含むことができる。いくつかの実施形態においては、X線撮像装置10は、治療中の患者、ターゲット、またはROIの動きを追跡することができる。
【0039】
再構成プロセッサ40は、検出器24および/またはX線検出器34に、動作可能に結合することができる。一実施形態においては、再構成プロセッサ40は、X線源30からX線検出器34によって受信される放射線に基づいて患者画像を生成するように構成されている。再構成プロセッサ40は、後からさらに詳しく説明する本方法を実行するために使用されるように構成できることが理解されよう。装置10は、情報(処理および再構成のアルゴリズムおよびソフトウェア、撮像パラメータ、以前の画像または以前に取得された画像(例:計画画像)からの画像データ、治療計画などを含む、ただしこれらに限定されない)を格納するのに適するメモリ44をさらに含むことができる。
【0040】
X線撮像装置10は、オペレータ/ユーザインタフェース48を含むことができ、X線撮像装置10のオペレータは、X線撮像装置10と対話する、または制御して、スキャンパラメータまたは撮像パラメータなどに関連する入力を行うことができる。オペレータインタフェース48は、任意の適切な入力デバイス(キーボード、マウス、音声作動式コントローラなど)を含むことができる。X線撮像装置10は、X線撮像装置10のオペレータに出力を提供するためのディスプレイ52、または人が読むことのできる他の要素も含むことができる。例えば、ディスプレイ52は、再構成された患者画像や、X線撮像装置10の動作に関連する他の情報(撮像パラメータまたはスキャンパラメータなど)をオペレータが確認できるようにすることができる。
【0041】
図2に示したように、X線撮像装置10は、装置10の1つまたは複数の構成要素に動作可能に結合されているコントローラ(全体を60として示してある)を含む。コントローラ60は、装置10の全体的な機能および動作を制御する(X線源30および/または治療用放射線源20と、回転可能なガントリー12の回転速度および位置を制御するガントリーモータコントローラとに、電力およびタイミング信号を提供することを含む)。コントローラ60は、以下、すなわち、患者支持台コントローラ、ガントリーコントローラ、治療用放射線源20および/またはX線源30に結合されているコントローラ、ビームフォーマ36のコントローラ、検出器24および/またはX線検出器34に結合されているコントローラ、その他、の1つまたは複数を包含し得ることが理解されよう。一実施形態においては、コントローラ60は、他の構成要素、装置、および/またはコントローラを制御することのできるシステムコントローラである。
【0042】
様々な実施形態においては、再構成プロセッサ40、オペレータインタフェース48、ディスプレイ52、コントローラ60、および/または他の構成要素を組み合わせて、1つまたは複数の構成要素または装置にすることができる。
【0043】
装置10は、様々な構成要素、ロジック、およびソフトウェアを含むことができる。一実施形態においては、コントローラ60は、プロセッサ、メモリ、およびソフトウェアを備えている。本発明を制限することのない一例として、X線撮像装置および/または放射線治療システムは、特定の用途における撮像および/またはIGRTに関連する1つまたは複数のルーチンまたはステップを実施できる様々な他の装置および構成要素(例:特に、ガントリー、放射線源、コリメータ、検出器、コントローラ、電源、患者支持台)を含むことができ、ルーチンは、撮像、画像に基づく送達前ステップ、および/または治療送達を含むことができる(メモリに格納することのできるそれぞれの装置の設定、構成、および/または位置(例:経路/軌道)を含む)。さらに、(1つまたは複数の)コントローラは、メモリに格納されている1つまたは複数のルーチンまたはプロセスに従って、1つまたは複数の装置および/または構成要素を直接的または間接的に制御することができる。直接的な制御の例は、撮像または治療に関連付けられる様々な放射線源またはコリメータのパラメータ(出力、速度、位置、タイミング、変調など)の設定である。間接的な制御の例は、患者支持台コントローラまたは別の周辺装置に、位置、経路、速度などを伝えることである。X線撮像装置に関連付けることのできる様々なコントローラの階層は、適切な命令および/または情報が所望の装置および構成要素に伝えられるように、任意の適切な方法で編成することができる。
【0044】
さらに、本システムおよび本方法を別のコンピュータシステム構成を使用して実施できることが、当業者には理解されるであろう。本発明の図示した態様は、分散コンピューティング環境において実施することができ、分散コンピューティング環境では、特定のタスクが、通信ネットワークを通じてリンクされているローカルまたはリモートの処理装置によって実行される。例えば、一実施形態においては、再構成プロセッサ40を個別のシステムに関連付けることができる。分散コンピューティング環境では、プログラムモジュールを、ローカルのメモリ記憶装置およびリモートのメモリ記憶装置の両方に配置することができる。例えば、X線撮像装置10とともに、リモートデータベース、ローカルデータベース、クラウドコンピューティングプラットフォーム、クラウドデータベース、またはこれらの組合せを利用することができる。
【0045】
X線撮像装置10は、本発明の様々な態様を実施するために、コンピュータを含む例示的な環境を利用することができ、コンピュータは、コントローラ60(例:プロセッサおよびメモリ(メモリ44とすることができる)を含む)およびシステムバスを含む。システムバスは、システムの構成要素(メモリを含む、ただしこれに限定されない)をプロセッサに結合することができ、他のシステム、コントローラ、構成要素、装置、およびプロセッサと通信することができる。メモリは、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ハードディスクドライブ、フラッシュドライブ、および任意の他の形式のコンピュータ可読媒体を含むことができる。メモリは、ルーチンおよびパラメータを含む様々なソフトウェアおよびデータ(例えば治療計画を含みうる)を格納することができる。
【0046】
治療用放射線源20および/またはX線源30は、治療用放射線源20およびX線源30の相対的な動作を制御するように構成されているコントローラ60に動作可能に結合することができる。例えば、X線源30を、治療用放射線源20と同時に制御および動作させることができる。これに加えて、またはこれに代えて、実施されている特定の治療計画および/または撮像計画に応じて、X線源30を治療用放射線源20と順次に制御および動作させることができる。
【0047】
X線源30およびX線検出器34を、撮像スキャン時に患者の周囲を回転するように複数の方法で構成できることが理解されよう。一実施形態においては、X線源30の動きおよび照射を、患者支持体18の縦方向の動きに同期させることによって、手順中に患者画像の連続ヘリカル取得(a continuous helical acquisition)をもたらすことができる。放射線源20,30および検出器24,34の連続的な回転(例:患者を一定速度で移動させながらガントリーを連続的かつ一定に回転させる)に加えて、開示する技術の範囲から逸脱することなく、別のバリエーションを採用できることが理解されよう。例えば、回転可能なガントリー12に対して(一定速度または可変速度で)移動するように支持台が制御されるとき、患者支持台の上に支持されている患者の周りを、(上に説明したような連続的な回転ではなく)ガントリー12が「交互方向に」(例:時計回りの回転および反時計回りの回転の交互に)回転するように、回転可能なガントリー12および患者支持台を制御することができる。別の実施形態においては、連続的なステップアンドシュート円形スキャン(step-and-shoot circular scans)の場合、所望のボリュームがキャプチャされるまで、縦方向における患者支持台18の移動(ステップ)と、回転可能なガントリー12によるスキャン回転とを交互に行う。
【0048】
放射線源および/または患者支持台の様々な別のタイプの動きを利用して、投影データを生成するための、放射線源と患者の相対運動を達成することができる。放射線源および/または患者支持台の不連続な運動、連続的であるが可変/非一定の(線形および非線形を含む)運動、速度、および/または軌道など、およびこれらの組合せを使用することができる(上に説明した放射線治療装置10の様々な実施形態との組合せを含む)。
【0049】
一実施形態においては、ガントリー12の回転速度、患者支持台18の速度、ビームフォーマ36の形状、および/または検出器34読み出しは、画像取得の1回または複数のパスの間、すべて一定とすることができる。別の実施形態においては、これらの変数の1つまたは複数が、画像取得のパス中に、またはパス間で、動的に変化することができる。ガントリー12の回転速度、患者支持台18の速度、ビームフォーマ36の形状、および/または検出器34読み出しを、様々な要因(例えば画質および画像取得時間を含む)のバランスをとるために変化させることができる。
【0050】
別の実施形態においては、これらの特徴を、画像に基づく1つまたは複数の別の作業、または手順(例えば患者の準備、適応治療モニタリング、治療計画などを含む)と組み合わせることができる。
【0051】
一般には、放射線治療時の様々な段階において画像が必要とされる。例えば、1つの治療フラクションにおいて、初期段階における患者の位置決めのために、および後の段階における線量計算のために、画像が使用される。患者を位置決めするための画質の要件は、線量計算に求められるものより低い。上述したように、IGRTシステムで取得される画像は、2つの主たる用途を有し、すなわち、治療準備(例:患者を準備するための計画CT画像とのレジストレーション)と、治療計画(例:適応計画および/または線量計算)である。これら2つの用途における画像の要件は、異なりうる。治療準備の場合、画像定量(CT数など)の精度は、治療計画の場合ほど重要ではない。例えば、比較的大きな軸方向視野(FOV)での撮像は、治療準備には十分でありうるが、治療計画には十分でないことがある。
【0052】
一般的な治療の場合、各送達フラクションの合計治療時間は、CTスキャンの時間、CT再構成の時間、CT画像と計画CT画像をレジストレーションする時間、および治療計画準備時間を含みうる。従来のIGRTシステムでは、一般に、治療準備および治療計画の両方のための1セットのCT画像を取得する。このような方法では、患者の治療のワークフローが最適ではないことがあり、なぜなら治療準備用の画像の要件が低くてよいためである。
【0053】
CTスキャン機能を有するほとんどのIGRTシステムは、円形スキャンによるCBCTスキャンを使用する。比較的大きな軸方向範囲をスキャンする必要があるときには、隣り合うスキャンの間で特定の重なりが生じるようにして複数回の円形スキャンを実行することができる。画像が線量計算にも使用される場合、線量計算用に画像を正確なものにするため、各円形スキャンにおいて十分なスキャン時間が必要である。ワークフローには、すべての円形スキャンが終了するまで待機するステップと、結果の画像を再構成した後、それらの画像を使用して計画CT画像とのレジストレーションおよび治療準備を行うステップが含まれる。全体的な治療ワークフローを改善する(合計治療時間を最小にする)ため、1つの方法としては、CTスキャン範囲、スキャン時間、画質、および合計レジストレーション/準備時間の間で満足のいく妥協が達成されるように、円形スキャンの回数を減らす、または各円形スキャンのスキャン時間を短くすることが挙げられる。
【0054】
ヘリカルCTスキャン機能を有するIGRTシステムは、軸方向に連続スキャンを行うことができる。しかしながら、全体的なワークフローを最適化するためには、CTスキャン範囲、ピッチ、合計スキャン時間、画質、および合計レジストレーション/準備時間の間での妥協が必要となりうる。
【0055】
本明細書で説明するように、ワークフローを最適化する(例えば送達前ステップに必要な時間を短縮することを含む)目的で,マルチパス撮像スキャンを使用することができる。最適化は、円形スキャンおよび/またはヘリカルCTスキャン機能を有するIGRTシステムを使用することによって適用することができる。一般的には、撮像スキャンを複数のパスに分割またはセグメント化し、各パスが、ワークフローの異なるステップにおいて使用することのできる、異なるおよび/または相補的なデータを取得/生成することによって、送達前(および全体的な治療の)ワークフローを改善することができる。データは、個別に、または以前のデータと組み合わせて、(例えば再構成のために)使用することができる。少なくとも1つのパスは、撮像スキャン全体を完了するために要するより短い時間で完了して利用される。最初のパスを、ワークフローの初期ステップに必要なデータを生成するように最適化することができ、ワークフローの初期ステップは、治療準備(例:レジストレーション)および/または任意の別の治療事前計画作業を含むことができる。最初のパスが完了したら、撮像スキャンの2回目のパスを実行すると同時に、ワークフローの初期ステップを、最初のパスのデータに基づいて開始することができる。2回目のパス(および任意の別の以降のパス)では、残りのワークフローステップに必要な残りのデータを生成することができる。ある意味では、2回目のパスは空き時間とみなすことができ、なぜならいずれにせよ患者支持台をガントリーから外に移動させなければならないためであり、スキャンの一部を延期してこの移動の間に行うことは、時間の効率的な利用であり得る。
【0056】
このようにして、ワークフローの初期ステップを、ワークフローの早期に(すなわち完全なスキャンを待機することなく)開始して完了することができる。さらに、様々な実施形態においては、最適化によって、合計線量を維持する、または場合によっては低減することができる。最初のパスのデータを使用して、以降のパスのスキャンパラメータを決定することができ、時間、画質、線量などをさらに最適化する。いくつかの実施形態においては、3回以上のパスを、異なる改善を伴う様々な組合せおよび様々なワークフローにおいて利用することができる。
【0057】
マルチパス手法の複数の異なるスキャンは、異なるスキャン設計(例:異なるパラメータ)を有することができる。例えば、線量、スペクトル(デュアルエネルギ)、ビューサンプリング、検出器位置、検出器解像度、コリメーション(例:1回目:ナロー、2回目:ワイド)、エネルギ、スキャン速度(例えばピッチを含む)、および/またはタイプ(例:ヘリカル、ステップアンドシュート)などを、スキャン間で変化させることができる。これらのパラメータの様々な組合せは、様々な実施形態において異なる。
【0058】
撮像スキャンを実施するシステムは、上述したように、kVまたはMVとすることのできる放射線源を含むことができる(対応するkV検出器またはMV検出器を有することを含む)。放射線源は異なるスペクトルを含むこともでき、スペクトルは、例えば、高度なコリメータ設計を使用するセットアップのような分割ビームまたはツインビームとすることができる。いくつかの例示的な実施形態においては、システムは、撮像において最大10rpmで、治療において最大6rpmで動作することができる。従来のCTは、これらの手法を実施するには高速すぎる(例:約200rpm)。様々なビーム形状(ファンビームおよびコーンビームを含む)を使用することができる。
【0059】
いくつかの実施形態においては、最初のパスは、比較的短いスキャン時間で、ただしレジストレーション/治療準備に十分な画質で、実行する。2回目のパスは、ワークフロー時間を短縮するため、最初のパスの後、治療準備のために最初のパスのデータが処理されている(例:再構成されてレジストレーションされている)間に、実行することができる。最初のパスのデータは、再構成時間を最小にするために高速再構成アルゴリズムおよび再構成パラメータ(画像サイズなど)を使用して、再構成することができる。治療計画(例:線量計算および適応計画)のための最終的な画像は、すべてのスキャンパスのデータを使用して、高度な再構成アルゴリズムを用いて再構成することができる。
【0060】
例えば、一実施形態においては、最初のパスでは、従来のシングルスキャンよりも少ないデータのビューを取得するスパーススキャンプロトコル(sparse scan protocol)を使用するが、2回目のパスでは、最初のパスからのビューとインターリーブされる別のビューセットのデータを取得する。2回のパスからの結合データには、従来のスキャンと同等またはそれ以上とすることのできる合成された(例:完全な)ビューが含まれる。別の実施形態においては、2回目のパスでは、最初のパスとは異なるエネルギを使用することができ、2回のパスの結合データは、十分な角分解能を提供するのみならず、スペクトルデータも提供する。別の実施形態においては、結合データが、角度的に均一に分布したビューを有する、または特定の角度領域において他の領域よりも高密度のビューを有するように、最初のパスと2回目のパスにおいて異なる数のビューを取得する。
【0061】
いくつかの実施形態においては、最初のパスの画像および計画画像は、レジストレーションおよび解析されたとき、2回目のパススキャン用の最適化されたスキャンパラメータを提供することができる。例えば、患者支持台の移動速度、ピッチ、コリメーション、撮像用放射線のパルスレート、エネルギレベル(例:「カラー」)、mA(例:X線の数)、および/またはガントリーの回転速度に関して、スキャンパラメータを最適化することができる。異なる軸方向領域において、これらのパラメータを同じパス中に変化させることもできる。
【0062】
様々な実施形態においては、複数回のスキャンパスを利用する様々な撮像スキャン設計を達成する目的で、ガントリー12を介しての撮像用放射線源30および放射線検出器34の動きを、患者支持台の動きに合わせて調整することができる。これらの動きは、治療準備、治療計画、および/または治療送達のために、IGRTシステム内で治療ワークフローの様々なステップ(例えば、画像の再構成、レジストレーション、関連するデータ処理、格納、伝達などを含む)を実行するために処理される様々なスキャンプロトコルおよび生成された投影データに従って制御することができる(例えばコントローラ60およびプロセッサ40を介して制御することを含む)。例えば、一実施形態においては、ステップアンドシュート円形スキャンを使用することができる。別の実施形態においては、ヘリカルスキャンを実行する目的で、患者支持台18およびガントリー12の動きを一定の速度で調整することができる。別の実施形態においては、患者支持台18および/またはガントリー12が、互いに対して可変速度で動く。最初のパスを完了するのに必要な時間が、2回目のパスを完了するのに必要な時間より短いように、患者支持台18およびガントリー12の速度を変化させることができる(ヘリカルスキャンの様々なピッチまたは円形スキャンの様々なステップ距離を設定することを含む)。
【0063】
例えば、一実施形態においては、撮像スキャンの最初のパスが高速ヘリカルCTスキャンであり、結果としての画像が、治療準備(例:レジストレーション)に十分な画質で再構成される。治療準備のために画像がワークステーションに送られて治療準備が行われる間、撮像スキャンの2回目のパスは、患者支持台の移動方向を逆にすることによって実行される別のヘリカルCTスキャンである。この実施形態においては、レジストレーション/治療準備と、撮像スキャンの2回目のパスを同時に行うことができ、(各治療フラクションにおいて)治療準備および治療計画のための1セットの高品質CT画像を取得する従来の方法と比較して、合計ワークフロー時間が短縮される。
【0064】
この実施形態においては、2回目のパスは、最初のパスと同じスキャン範囲を有することができ、合計患者線量を、1回のパス中に1セットのCT画像を取得する従来の方法と同じかまたはそれより低くすることができる。
【0065】
いくつかの実施形態においては、最初のパスのデータを使用してのレジストレーションおよび/または準備の結果から、2回目のパスのスキャンパラメータを調整することができる(例えば軸方向の関心範囲(1つのセグメントまたは複数のセグメントとすることができる)のみをスキャンするように制限することを含む)。
【0066】
別の実施形態においては、2回目のパス時の複数の異なる軸方向領域における撮像線量を調整し、合計患者線量が同じままで、減衰が大きい領域において最適な画質が得られるようにスキャン範囲内の線量分布を最適化する目的に、最初のパスを使用することもできる。
【0067】
いくつかの実施形態においては、特定の軸方向範囲において高い解像度が望ましいときに、最初のパスのデータを使用しての計画CTとのレジストレーションの結果、および/または治療事前計画の結果から、2回目のパスでは、異なるスキャンパラメータ(例えば2回目のパスの異なる軸方向範囲における異なるかまたは変化するピッチサイズを含む)を使用することができる。
【0068】
別の実施形態においては、撮像スキャンが完了するまで治療準備が開始されない場合でも、マルチパス撮像スキャンを使用して高品質の画像を迅速に生成することができる(例えば2回目のパス中に最初のパスのデータの再構成を開始することを含む)。
【0069】
本手法は、例えば、スペクトル画像を生成する目的に利用することができる。異なる管エネルギの2回以上のヘリカルスキャンパスによって、複数のCTパスからデータ/画像を生成することができ、これらのデータ/画像を使用してスペクトル画像(電子密度画像、物質分解画像(material decomposed image)などを含む)を生成することができる。一実施形態においては、2回のスキャンによってスペクトルCT再構成を行うことができるように、2回目のパスでは最初のパスとは異なるkVエネルギを使用することができる。結果としてのスペクトルCTを使用して、線量計算および適応計画を改善することができる。
【0070】
図3を参照し、X線撮像装置10の
図300を、定義されたワールド座標系310と一緒に示してある。原点(Oと表す)はガントリー12のアイソセンターであり、x軸、y軸、およびz軸に関連付けられる単位ベクトルを、それぞれ
e
x、
e
y、および
e
zとして示してある。ガントリー12の正面から見たとき、x軸の
e
xは水平であり右を差しており、y軸の
e
yはガントリー平面の奥を指しており、z軸の
e
zは垂直であり上を指している。x軸、y軸、およびz軸は、右手の法則に従う。
【0071】
例示的な一実施形態においては、X線源30は、ガントリー12の正面から見たとき時計回りに回転する。
図4および
図5は、撮像スキャンの例示的なパス中のガントリー12および患者支持台18の動きを示している。特に、デュアルヘリカルスキャンの最初のパス時、ガントリーが、ガントリー12の正面から見たとき(y軸の
e
yを中心に)例示的な時計回り方向に回転している間、患者支持台18が(y軸の
e
yに沿って)ガントリー12の中に移動する。デュアルヘリカルスキャンの2回目のパス時には、ガントリーが同じ例示的な時計回り方向に回転している間、患者支持台18がガントリー12の外に移動する。後からさらに詳しく説明するように、撮像スキャン中に、軸方向におけるデータ取得をオフセットさせることができる。別の実施形態においては、任意の回数のパスを使用して撮像スキャンを完了することができる。
【0072】
一実施形態においては、ワークフローを改善する目的で、ヘリカルスキャン機能を有するIGRTシステムにおいてデュアルパスヘリカルスキャンプロトコルを利用することができる。特に、患者を患者支持台18上に位置決めした後、(例えば
図4に示したように)患者支持台18がガントリー12の中に移動している間に最初のパスのヘリカルスキャンを実行し、最初のパスの投影データを生成する。最初のパスの投影データから第1の患者画像への再構成は、最初のパスと同時に行うことができる。最初のパスの後、患者支持台18の移動方向以外のスキャンパラメータを同じに維持したままで、(例えば
図5に示したように)患者支持台18がガントリー12の外に移動するように患者支持台18の移動方向を逆にすることによって、2回目のパスのヘリカルスキャンを実行し、2回目のパスの投影データを生成する。2回目のパスのヘリカルスキャンが実行されている間に、最初のパスのヘリカルスキャンからの第1の患者画像を使用して、計画画像とのレジストレーションおよび治療準備を行うことができ、撮像スキャンおよび治療準備の合計時間が短縮され、これにより全体的な治療のワークフローが改善される。
【0073】
別の実施形態においては、差動軸方向スキャン(differential axial scanning)を最適化するために、ヘリカルスキャン機能を有するIGRTシステムにおいて、デュアルパスヘリカルスキャンプロトコルを利用することができる。特に、(例えば
図4に示したように)患者支持台18がガントリー12の中に移動している間に、最初のパスのヘリカルスキャンを実行し、最初のパスの投影データを生成する。最初のパスの投影データから第1の患者画像への再構成は、最初のパスと同時に行うことができる。最初のスキャンの後、第1の患者画像を計画CT画像とレジストレーションし、良好な解像度または改善された統計情報のために軸方向領域が識別される。この情報は、(例えば
図5に示したように)患者支持台18がガントリー12の外に移動している間の2回目のパスのヘリカルスキャンのスキャンパラメータを設定または調整する目的に、使用することができる。識別された領域は、治療計画(例えば線量計算および適応計画を含む)の精度を改善するための所望の解像度および統計情報を有することができる。
【0074】
別の実施形態においては、スペクトルCT撮像を目的として、ヘリカルスキャン機能を有するIGRTシステムにおいて、マルチパスヘリカルスキャンプロトコルを利用することができる。特に、(例えば
図4に示したように)患者支持台18がガントリー12の中に移動している間に、1つの管エネルギを使用して最初のパスのヘリカルCTスキャンを実行し、(例えば
図5に示したように)患者支持台18がガントリー12の外に移動している間のヘリカルCTスキャンの別のパスでは、異なる管エネルギを使用する。複数のパスによって、スペクトルCT画像を再構成するためのデータが提供される。結果としてのスペクトルCT画像を治療計画(例えば正確な線量計算および適応計画)に使用することができる。
【0075】
別の実施形態においては、
図6をさらに参照し、高速スキャンのために、デュアルパスヘリカルスキャンプロトコルを大きなピッチで利用することができる。この実施形態においては、ビームフォーマの開口部および検出器のアクティブ領域を、極めて大きなピッチで片側とすることができ、したがって2回目のパス時には、ビームフォーマの開口部および検出器のアクティブ領域は、同じピッチで、最初のパスに対して反対側である。例示的な撮像スキャン設計600は、撮像スキャンの2回のパス時における放射線源30および放射線検出器34の相対的な位置を示している。特に、(例えば
図4に示したように)患者支持台18がガントリー12の中に移動している間に、撮像スキャンの最初のパスのヘリカルCTスキャン610(スキャンI)が実行されて、第1の検出器位置612(検出器位置I)に示した検出器34が照射される。(例えば
図5に示したように)患者支持台18がガントリー12の外に移動している間に、撮像スキャンの2回目のパスのヘリカルCTスキャン620(スキャンII)が実行されて、第2の検出器位置622(検出器位置II)に示した検出器34が照射される。撮像スキャンの2回のパス610,620それぞれにおいて大きなピッチが使用されるが、2回目のパス620時には、検出器34および線源30が、最初のパス610に対して(y軸の
e
yに沿って)軸方向にシフトし、したがって2回のパスからのデータをインターリーブすることができる。デュアルパス610,620のデータが一緒に使用されるとき、2回のパス610,620の各々と比較して、完全な撮像スキャンのデータの十分性が改善され、高品質の画像再構成が可能になる。しかしながら、大きなピッチでの最初のパス610によって、より高速の(かつ、より早期の)スキャンおよび再構成が可能になり、これにより、例えば最初のパス610のデータが2回目のパス620の間に治療準備に使用されるとき、ワークフローを改善することができ、したがってワークフローおよび合計治療時間が短縮される。様々な実施形態においては、CTスキャンシステムを、フラットパネルCT検出器を有するコーンビームCTシステム、従来のマルチ検出器CTシステム、単一列CTシステムなどとすることができる。
【0076】
別の実施形態においては、撮像スキャンの2回のパスは、スキャン設計において、オフセット検出器を含むことができる。コーンビームCT(CBCT)は、IGRTのための一般的な撮像ツールである。一般的なCBCTシステムではフラットパネル検出器34が採用されており、この検出器34は、通常では患者の断面全体を包含するのに十分な大きさではない。大きなFOVの円形スキャンに、偏心検出器またはオフセット検出器を使用することができる。ヘリカルスキャン時に偏心検出器構成を使用すると、実質的により多くの横方向のデータ欠落が含まれる。このような横方向の重大なデータ欠落により、画質はヘリカルピッチに大きく依存する。横方向データ欠落のないヘリカルスキャンと比較して、横方向に欠落するヘリカルスキャンの実行可能な最大ピッチは大幅に低下し、したがってスキャン速度も低下する。
【0077】
この実施形態においては、データ取得のための2パス撮像スキャンは、2つの螺旋からなる。最初のパスでは、検出器34が横方向の一方の側にシフトした状態で、(例えば
図4に示したように)患者支持台18がガントリー12の中に移動する。2回目のパスでは、検出器34が反対側にシフトした状態で、(例えば
図5に示したように)患者支持台18がガントリー12の外に移動する。2つの螺旋間での検出器の横方向の移動は、画像再構成のためのデータの可用性を改善するように設計される。最初のパスから取得されるデータは、患者の位置決めのために再構成されうるのに対して、両方のパスからのデータは、線量計算に適する改善された画像再構成のために使用することができる。様々な実施形態においては、このタイプの2パスヘリカル撮像スキャン設計を、二重螺旋軌道と称することができる。しかしながら、この二重螺旋軌道では、専用の画像再構成アルゴリズムが必要である。
【0078】
この実施形態における例示的なデータ取得システムの幾何学を、
図7および
図8に示してある。
図3に示したように、ワールド座標系310は、(x,y,z)軸にまたがっている。
図7は、例示的なデータ取得システムの3D幾何学の
図700を示している。
図8は、例示的な(x,z)平面におけるデータ取得システムの幾何学の
図800を示している。例示的な一実施形態においては、X線源30は、ガントリー12の正面から見て時計回りに回転する。視野角λは、ガントリー12の正面から見たときの時計回りにおける、x軸の
e
xから、線源30と回転軸とを結ぶ仮想線702までの角距離として定義され、線源30のベクトル位置を
a(λ)と表す。回転軸は、ワールド座標のy軸の
e
yに沿っている。検出器34は次のように配置されている、すなわち、線源30および回転軸によって定義される平面に検出器34が直角であり、検出器34のチャネルが回転軸に平行であり、検出器34の列が回転軸に直角である。線源30とアイソセンターOとを結ぶ線702が検出器34を貫く点は、検出器座標系710の原点(O
dと表す)として定義される。
【0079】
図7に示したように、例示的なデータ取得システムには2つの座標系が関与する。特に、データ取得システムは、Oを原点とするワールド座標系310と、O
dを原点とする検出器座標系710とを参照する。上述したように、検出器座標系710は、検出器34平面における基底ベクトル
e
u(チャネル方向)、
e
v(列方向)、および
e
w(検出器34平面に垂直でありO
dから
aを指す)によって定義される。ここでO
dは、線源30(ベクトル位置
a(λ)を有する)とOとを結ぶ線702を
e
wに沿って検出器34に延ばしたときに検出器34を貫く点として定義される。一方、
α(λ,u,v)は、線源30のベクトル位置
a(λ)から、検出器座標系710における座標[u,v]に位置する検出器34のセルを指す単位ベクトル704である。
【0080】
図8は、例示的な(x,z)平面におけるデータ取得システムの幾何学800を示している。X線源30は、(x,z)平面内に位置しており、y軸を中心に時計回りに回転し、このとき線源からアイソセンターまでの距離(SID)をRで表す。視野角または回転角(λで表す)は、x軸からの時計回りの角距離として定義される。X線源30は、a(λ)で表される。検出器34は、回転軸に対してX線源から180゜離れて配置されており、線源から検出器までの距離(SDD)をDで表す。検出器34は、線源30とy軸を結ぶ平面に垂直であり、検出器34のチャネルがy軸に平行である。検出器平面は(u,v)座標系によって表され、uが検出器チャネルの位置、vが検出器列の位置を表す。
【0081】
このシステムでは、X線検出器34は例示的なフラットパネル検出器であり、2Dパネルは基底ベクトルe
uおよびe
vにまたがっており、e
uがチャネル方向、e
vが列方向である。v軸はy軸と同じ方向を指しており、u軸は回転角速度と同じ方向を指している。検出器座標系を3次元に拡張するため、(v,u,w)軸が右手の法則に従うようにw軸を参照することができる。
【0082】
上述したように、二重螺旋スキャン設計は、ヘリカル軌道を有する2つの相補的なパスを含む。
図9Aは、例示的な左巻き螺旋(LHH)910の軌道を示しており、
図9Bは、例示的な右巻き螺旋(RHH)920の軌道を示しており、いずれも検出器34がオフセットされた状態で示しある。左巻き螺旋(LHH)910は、検出器34が+u軸の方にシフトした状態で患者支持台(図示していない)をガントリーの中に移動させることによって形成され、一方で右巻き螺旋(RHH)920は、検出器34が-u軸の方にシフトした状態で患者支持台をガントリーの外に移動させることによって形成される。この実施形態に示したように、偏心検出器34は、(y軸を通る)中心X線が検出され、かつシフトされた方向の端への投影が欠落しないだけ十分に大きい。2つの螺旋910,920のピッチは、一般には異なっていることができるが、ここでは同じであるとして示してある。
【0083】
画像再構成に関して、螺旋の凸包の内側の点に対して1つのπ線(π-line)のみが存在し、π線のセグメント全体に沿って点が可視である場合、π線に沿った点の正確な画像再構成が可能であることを示すことができる。横方向のデータ欠落がない一般的なヘリカルスキャンの場合、検出器が軸方向にTam-Danielsson(TD)窓を含むのに十分な大きさである限り、この条件が満たされる。偏心検出器を使用するヘリカルスキャンのスキャン視野(SFOV)内の多くの点に対して、この条件は満たされない。
【0084】
図9Aおよび
図9Bに示した軌道910,920を有する例示的な二重螺旋スキャン設計を考えると、例示的な横断面におけるデータの可用性の
図1000を
図10に示してある。例示的な左巻き螺旋(LHH)910のパスおよび例示的な右巻き螺旋(RHH)920のパス時における検出器34の描写を、同じ横断(x,z)平面1010内に重ねて示してある。スキャン視野(SFOV)は、完全に照射される領域1020と、部分的に照射される領域1030とからなる。構造により、完全に照射される領域1020のみが、すべての方位角において全体が可視であるのに対して、部分的に照射される領域1030は、一部の方位角においてのみ可視である。偏心検出器を使用するシングルヘリカルスキャンの場合、部分的に照射される領域1030内の相当な数の点が、それらの固有のπ線セグメントに沿って完全に可視ではないことがあり、したがって正確かつ安定的に復元できないことを示すことができる。また、大きなピッチを有するこのような軌道の場合、一部の点には、逆投影のための(点自体に対して)180゜のデータさえも存在しないことを示すこともでき、これにより、制限される角度の問題によって、再構成タスクがさらに困難になりうる。
【0085】
二重螺旋軌道では、制限される角度の問題を回避することができ、したがってシングル螺旋の状況と比較してピッチ要件が緩和される。二重螺旋軌道の場合のピッチ選択の1つの基準は、関心領域(ROI)内の任意の点について、逆投影用の180゜のデータが利用可能であるような十分に大きい方位角範囲が常に存在することである。
【0086】
上の考察に基づいて、この実施形態においては、再構成アルゴリズムは、同じ方位角および共役方位角(conjugate azimuth angle)におけるすべての逆投影重み付けが1に正規化されるような重み付けメカニズムを使用して、利用可能なすべてのデータを逆投影するステップを含む。このような重み付けメカニズムは、LHHおよびRHHそれぞれについてwLおよびwRと表される一対の重み付け関数を介して達成することができる。再構成アルゴリズムは、一般的なフィルタ補正逆投影(FBP:filtered back-projection)フレームワークに基づく。いま、f^L(x)およびf^R(x)を、それぞれLHHおよびRHHからのデータを使用して再構成された画像であるとする。f^(x)を最終的な再構成結果とする。
【0087】
LHH再構成は、以下の等式1において記述される。
【数1】
式中、(u
*,v
*)は、検出器34においてxを通るX線の貫通点である。等式1における項
【数2】
は、以下のように等式2で定義される。
【数3】
h
H(u)はヒルベルト変換であり、また、等式3に従う。
【数4】
【0088】
ここで
α(λ,u,v)は、線源a(λ)から検出器の点(u,v)を指す単位ベクトルであり、g^
L(λ,u,v)は、横方向に欠落したデータが公知の方法によって隣接する回転を使用して推定される投影データであり、
【数5】
は、公知の方式を使用して実施することのできるビューに依存する微分である。
【0089】
RHHからの再構成は、上付き文字LをRに置き換えて、同じ等式(1,2,3)を使用して得ることができる。二重螺旋軌道の最終的な画像再構成f^(
x)は、等式4に従って、f^
L(
x)とf^
R(
x)の和として得ることができる。
【数6】
【0090】
図11は、コンピュータシミュレーションを使用した、上述した二重螺旋スキャン設計および再構成手法を用いる胸部ファントムの例示的な再構成1100を示している。特に、1110は左巻き螺旋(LHH)の再構成であり、1120は右巻き螺旋(RHH)の再構成であり、1130は二重螺旋の再構成である。1140はノイズのないデータであり、1150はノイズが含まれるデータである。ディスプレイウィンドウは1000HUである。この例示的な実施形態においては、FORBILD胸部ファントムの修正されたバージョンを使用してコンピュータシミュレーションを実行した。線源からアイソセンターまでの距離(SID)が1080mm、線源から検出器までの距離(SDD)が1620mmであった。検出器34は、480チャネルおよび120列から構成されており、画素サイズは[0.9mm,0.9mm]であった。検出器34は、u軸を中心に対称であり、
u軸に沿って偏心していた。チャネルのオフセットは、RHHが49.75、LHHが429.75に設定されていた。開始視野角は、LHHが0、RHHがπであった。両方の螺旋ともに3回転からなり、縦方向範囲は216mmであった。各検出器画素について、角を通る4本の光線の平均として線積分を計算した。LHHおよびRHHのいずれも、ピッチ1で回転あたり480ビューを使用した。投影データにポアソンノイズ(55k光子カウントを使用)および電子ノイズ(5カウントを使用)を加えた。画像再構成では、解像度パラメータεを0.05に設定した。画像ボクセルは等方性であり、エッジサイズが1mmであった。この再構成の結果は、再構成アルゴリズムが十分な画質でFORBILD胸部ファントムを復元できることを実証している。
【0091】
このようにして、撮像(IGRT時のCBCTを含む)用の二重螺旋軌道を再構成することができる。横方向に偏心させた検出器を使用するシングル螺旋と比較して、二重螺旋軌道では、データの可用性を改善し、スキャン速度を向上させ、画像のノイズを低減することができる。2つの螺旋間の設定の関係は、データの可用性に著しく影響しうるため、最適化する必要がある。
【0092】
含まれている流れ図およびブロック図は、本明細書に記載されているシステムによるマルチパス撮像スキャンに関連付けられる例示的な構造および方法を示している。例示的な方法は、ロジック、ソフトウェア、ハードウェア、またはこれらの組合せにおいて実行することができる。さらに、これらの手順および方法は、ある順序で提示されているが、ブロックを異なる順序(連続的および/または並行を含む)で実行することができる。さらには、追加のステップを使用する、またはより少ないステップを使用することができる。
【0093】
図12は、例示的なマルチパス撮像プロセス1200の流れ図である。プロセス1200では、上述した撮像システムおよびスキャン設計を利用することができる。ワークフローの例示的な送達前ステップは、1202として示してある。この実施形態においては、撮像スキャンは少なくとも2回のパスからなり、各パスによって、完全な撮像スキャンに必要なデータの一部を取得する。各パスは、フルスキャンより高速に実行することができる。ステップ1210において、システムは、(例えば患者支持台をガントリーの中に移動させている間に)撮像スキャンの最初のパスを実行し、最初のパスのデータ1215を生成する。ステップ1220においては、システムは、(例えば患者支持台をガントリーの外に移動させている間に)撮像スキャンの2回目のパスを実行し、2回目のパスのデータ1225を生成する。
【0094】
この実施形態においては、システムは、最初のパス1210の間に生成/受信された最初のパスのデータ1215を、システムが2回目のパス1220を実行している間に処理する(例:再構成する)ことができる。次にステップ1230において、システムは、様々なデータ/画像処理および画像に基づく送達前ステップ(後の
図16~
図18を参照)(治療準備(例:再構成、レジストレーション、位置合わせなど)および治療計画(例:線量計算、適応計画など)を含む)に進むことができる。このようにして、マルチパス撮像スキャンでは、(シングルパススキャンと比較して)送達前ステップ1202をより早く完了することができ、なぜなら最初のパスのデータ1215の画像処理を2回目のパス1220の間に行うことができ、また、ガントリーの内側から患者支持台を戻すことに関連付けられる時間を、1220におけるスキャン時間として利用できるためである。治療準備/治療計画1230が完了した後、プロセスは引き続きステップ1240において治療の送達(IGRTの一部である場合を含む)を行うことができる。
【0095】
一実施形態においては、最初のパス1210は、撮像用放射線源の第1の管エネルギを備えることができ、2回目のパス1220は、撮像用放射線源の第2の管エネルギを備えることができる。最初のパスのデータ1215を、第1の患者画像に再構成することができ、2回目のパスのデータ1225を、第2の患者画像に再構成することができ、したがって、再構成された第1の患者画像および第2の患者画像を合成することによって、上述したような様々な治療準備および治療計画のタスクに有用なスペクトル患者画像が生成される。
【0096】
別の実施形態においては、撮像スキャンは、2回のパス1210,1220より多くのパスからなる。これらの実施形態における撮像スキャンが任意の回数のスキャンパスを含み得ることを表す目的で、
図12には、オプションの(1回または複数の)追加のパス1222および追加の関連するパスデータ1227を示してある。
【0097】
図13は、別の例示的なマルチパス撮像プロセス1300の流れ図である。プロセス1300では、上述した撮像システムおよびスキャン設計を利用することができる。ワークフローの例示的な送達前ステップは、1302として示してある。この実施形態においては、撮像スキャンは、少なくとも2回のパスからなり、各パスが、完全な撮像スキャンに必要なデータの一部を取得する。各パスは、フルスキャンより高速に実行することができる。ステップ1310において、システムは、(例えば患者支持台をガントリーの中に移動させている間に)撮像スキャンの最初のパスを実行し、最初のパスのデータ1315を生成する。この実施形態においては、システムは、最初のパス1310の間に生成/受信された最初のパスのデータ1315を、システムが2回目のパス1320を実行する前、または実行している間に利用することができる。
【0098】
様々な実施形態においては、生の、および/または処理された(例:再構成された)最初のパスのデータ1315を、システムが2回目のパス1320を実行する前、または実行している間に使用して、(上述したように)2回目のパス1320に関連付けられるスキャンパラメータを決定/調整することができ、また、様々なデータ/画像処理および画像に基づく送達前ステップ(後の
図16~
図18を参照)(治療準備1330(例:上述したように再構成、レジストレーション、位置合わせなど)および治療事前計画1335(例:開始できる、および/または最初のパスのデータ1315に基づく、任意の治療計画作業)を含む)を行うことができる。
【0099】
ステップ1320においては、システムは、(例えば患者支持台をガントリーの外に移動させている間に)撮像スキャンの2回目のパスを実行し、2回目のパスのデータ1325を生成する。この実施形態においては、システムは、最初のパス1310の間に生成/受信された最初のパスのデータ1315の処理を、システムが2回目のパス1320を実行している間に開始する、および/または引き続き行うことができる。
【0100】
次にステップ1340においては、システムは、(最初のパス1310の間に生成/受信された)最初のパスのデータ1315および/または(2回目のパス1320の間に生成/受信された)2回目のパスのデータ1325を利用して、様々なデータ/画像処理および画像に基づく送達前ステップ(後の
図16~
図18を参照)(治療計画(例:線量計算、適応計画など)を含む)に進むことができる。いくつかの実施形態においては、システムは、ステップ1330および/またはステップ1335に開始されたタスク(例えば最終的な治療計画1340のためには2回目のパスのデータ1325を必要とする治療事前計画1335を含む)を、ステップ1340において完了することができる。
【0101】
このようにして、マルチパス撮像スキャンでは、(シングルパススキャンと比較して)送達前ステップ1302をより早く完了することができ、なぜなら最初のパスのデータ1315の画像処理および利用を、2回目のパス1320の前、および/または1320の間に行うことができ、また、ガントリーの内側から患者支持台を戻すことに関連付けられる時間を、1320におけるスキャン時間として利用できるためである。治療計画1340が完了した後、プロセスは引き続きステップ1350において治療送達(IGRTの一部である場合を含む)を行うことができる。
【0102】
一実施形態においては、最初のパスのデータ1315は、治療準備1330に十分な品質であり、したがって(最初のパスのデータ1315に基づく)患者画像の再構成および以前のデータとのレジストレーションが、2回目のパス1320の間に進行する、および/または完了する。2回目のパス1320が完了した後、ワークフローは、最初のパスのデータ1315および2回目のパスのデータ1325に基づく治療計画1340に直接進むことができる。
【0103】
別の実施形態においては、撮像スキャンは、2回のパス1310,1320より多くのパスからなる。これらの実施形態における撮像スキャンが、ワークフローシーケンスのさまざまなタイミングにおける任意の回数のスキャンパスを含み得ることを表す目的で、
図13には、オプションの(1回または複数の)追加のパス1312,1322および追加の関連するパスデータ1317,1327を示してある。さらに、様々な実施形態においては、これらのパスの1つまたは複数からの生のデータおよび/または処理されたデータを、システムが以降のパスを実行する前、または実行している間に使用して、以降のパスに関連付けられるスキャンパラメータを決定/調整することができる、および/または、様々なデータ/画像処理および画像に基づく送達前ステップ(治療準備1330および/または治療事前計画1335を含む)を行うことができる。例えば、2回のパスを実行してパスのデータを生成することができ、これらのデータを使用して次のパスのスキャンパラメータを決定することができ、後者のパスによって生成されるパスデータを前のパスのデータと組み合わせて使用して治療準備を行うことができる。理解できるように、任意の回数のスキャンパスによって、ワークフローの任意のステップにおいて様々な組合せで利用できるパスデータを生成することができる。
【0104】
図14は、別の例示的なマルチパス撮像プロセス1400の流れ図である。プロセス1400では、上述した撮像システムおよびスキャン設計を利用することができる。この実施形態においては、撮像スキャンは、少なくとも2回のパスからなり、各パスが、完全な撮像スキャンに必要なデータの一部を取得する。各パスは、フルスキャンより高速に実行することができる。ステップ1410において、システムは、(例えば患者支持台をガントリーの中に移動させている間に)撮像スキャンの最初のパスを実行し、最初のパスのデータ1415を生成する。この実施形態においては、システムは、最初のパス1410の間に生成/受信された最初のパスのデータ1415を、システムが2回目のパス1420を実行する前または実行している間に利用することができる。
【0105】
この実施形態においては、生の、および/または処理された(例:再構成された)最初のパスのデータ1415を、システムが2回目のパス1420を実行する前、または実行している間に使用して、治療準備1430(例:(最初のパスのデータ1415に基づく)第1の患者画像を以前のデータ1405とレジストレーションする)を行う。オプションとして(
図14には点線で描いてある)、いくつかの実施形態においては、生の、および/または処理された最初のパスのデータ1415を、システムが2回目のパス1420を実行する前に使用して、(上述したように)2回目のパス1420に関連付けられるスキャンパラメータを決定/調整することもできる。
【0106】
ステップ1420においては、システムは、(例えば患者支持台をガントリーの外に移動させている間に)撮像スキャンの2回目のパスを実行し、2回目のパスのデータ1425を生成する。この実施形態においては、システムは、最初のパス1410の間に生成/受信された最初のパスのデータ1415を使用する治療準備1430を、システムが2回目のパス1420を実行している間に開始する、および/または継続することができる。
【0107】
次にステップ1440において、システムは、最初のパスのデータ1415および2回目のパスのデータ1425を利用して、治療計画(例:線量計算、適応計画など)を行う。いくつかの実施形態においては、以前のデータ1405も、治療計画1440のタスクに利用される。
【0108】
このようにして、マルチパス撮像スキャン(1410+1420)では、送達前のワークフローステップである治療準備1430および治療計画1440が、シングルパススキャンの場合より早く完了し、なぜなら最初のパスのデータ1415が、2回目のパス1420の前および/または1420の間に利用されて治療準備1430が行われるためであり、また、ガントリーの内側から患者支持台を戻すことに関連付けられる時間を、1420におけるスキャン時間として利用できるためである。治療計画1440が完了した後、プロセスは続いて治療送達(IGRTの一部である場合を含む)を行うことができる。
【0109】
図15は、別の例示的なマルチパス撮像プロセス1500の流れ図である。プロセス1500では、上述した撮像システムおよびスキャン設計を利用することができる。この実施形態においては、撮像スキャンは、少なくとも2回のパスからなり、各パスが、完全な撮像スキャンに必要なデータの一部を取得する。各パスは、フルスキャンより高速に実行することができる。ステップ1510において、システムは、(例えば患者支持台をガントリーの中に移動させている間に)撮像スキャンの最初のパスを実行し、最初のパスのデータ1515を生成する。この実施形態においては、システムは、最初のパス1510の間に生成/受信された最初のパスのデータ1515を、システムが2回目のパス1520を実行する前または実行している間に利用することができる。
【0110】
この実施形態においては、ステップ1520において、最初のパスのデータ1515を、この投影データ1515に適する再構成手法を使用して再構成し、患者画像1525を生成する。次にステップ1530において、システムが2回目のパス1540を実行する前または実行している間に、治療準備を目的として、患者画像1525と以前の画像データ1505とをレジストレーションする。オプションとして(
図15には点線で描いてある)、いくつかの実施形態においては、投影データ1515、患者画像1525、および/または、1530からのレジストレーションされた画像を、システムが2回目のパス1540を実行する前に使用して、(上述したように)2回目のパス1540に関連付けられるスキャンパラメータを決定/調整することもできる。
【0111】
ステップ1540において、システムは、(例えば患者支持台をガントリーの外に移動させている間に)撮像スキャンの2回目のパスを実行し、2回目のパスのデータ1545を生成する。この実施形態においては、システムは、最初のパス1510の間に生成/受信された最初のパスのデータ1515を使用する再構成1520および/またはレジストレーション1530を、システムが2回目のパス1540を実行している間に開始する、および/または継続することができる。
【0112】
次にステップ1550においては、システムは、最初のパスのデータ1515および2回目のパスのデータ1545を利用して、患者画像1555を再構成する。ステップ1560においては、患者画像1555を利用して治療線量を計算する。いくつかの実施形態においては、線量計算1560のために以前のデータ1505も利用される。
【0113】
このようにして、マルチパス撮像スキャン(1510+1540)では、送達前のワークフローステップ1520,1530,1550,1560がシングルパススキャンの場合より早く完了し、なぜなら最初のパスのデータ1515が、2回目のパス1540の前および/または1540の間に利用されて再構成ステップ1520およびレジストレーションステップ1530が行われるためであり、また、ガントリーの内側から患者支持台を戻すことに関連付けられる時間を、1540におけるスキャン時間として利用できるためである。線量計算1560が完了した後、プロセスは続いて治療送達(IGRTの一部である場合を含む)を行うことができる。
【0114】
これらの実施形態すべてにおいて、様々なスキャン設計(撮像スキャンを含むパスの様々な設計を含む)を使用することができる。例えば、上述したように、患者支持台18は、最初のパス時には第1の縦方向に(例:ガントリー12の中に)移動することができ、2回目のパス時には第2の縦方向に(例:ガントリー12の外に)移動することができる(第2の方向は第1の方向とは反対である)。しかしながら、別の実施形態においては、異なるパスが同じ方向であってもよい。パスは、患者支持台18の異なる速度および/またはガントリー12の異なる速度を有することができ、いずれも一定または可変とすることができる。また、パスは、同じ時間または異なる時間で完了することができる(例:最初のパスが2回目のパスより短時間で完了する)。また、パスは、他のパスより多くのビュー、またはより少ないビューを含むことができる。パスの軌道は、ヘリカルおよび/または円形とすることができる(例:一連のステップ/シュートが1回のパスを構成するステップアンドシュート)。パスには、撮像用放射線源がアクティブではない期間を含めることができる(患者の一部を効果的にスキップすることを含む)。
【0115】
いくつかの実施形態においては、撮像用放射線源30および検出器34の軸方向位置が、パス間でシフトされる(患者画像の再構成時に、異なるパスからのデータが相補的である場合を含む)。一実施形態においては、検出器34は、最初のパス時には一方の軸横断方向(transaxial direction)にオフセットされ、2回目のパス時には反対の軸横断方向にオフセットされる(大きな視野(FOV)に対応する場合を含む)。
【0116】
これらの手法は、IGRTのワークフローの改善および最適化と、線量計算および適応計画用のCT画像の品質および画像定量の改善を目的として、使用することができる。
【0117】
図16は、放射線治療装置(例えばX線撮像装置10を含む)を使用するIGRTの例示的な方法1600を描いた流れ図である。以前のデータ1605は、患者の画像(例:以前の画像、これは上述したように、以前に取得された計画画像(以前のCT画像を含む)とすることができる)、治療計画、ファントム情報、モデル、事前情報などを含むことができる。いくつかの実施形態においては、以前のデータ1605は、同じ放射線治療装置によって、ただしより早い時間に、生成される。ステップ1610においては、低エネルギ放射線源(例:X線源30からのkV放射線)を使用して、患者の撮像(マルチパス撮像を含む)を実行する。様々な実施形態においては、撮像は、ファンビーム形状またはコーンビーム形状によるヘリカルスキャンまたは円形スキャンを含む。ステップ1610は、上述した手法を使用して(1つまたは複数の)高品質(HQ)画像または撮像データ1615を生成することができる。いくつかの実施形態においては、画質/解像度と線量との間のバランスを最適化するために、画質を調整することができる。言い換えれば、すべての画像が最高品質である必要はない、または、画質/解像度と画像取得時間との間のバランスを最適化するかまたはトレードオフする目的で、画質を調整することができる。撮像ステップ1610は、(例えば上述した実施形態に従って)撮像/スキャンデータ1615に基づいて患者画像を生成するための画像処理1620をさらに含む。画像処理ステップ1620は、撮像ステップ1610の一部として示してあるが、いくつかの実施形態においては、画像処理ステップ1620は個別のステップである(画像処理が個別の装置によって実行される場合を含む)。
【0118】
次にステップ1630においては、1つまたは複数の、画像に基づく送達前ステップ(後から説明する)を、ステップ1610からの撮像データ1615に少なくとも部分的に基づいて実行する。後からさらに詳しく説明するように、ステップ1630は、治療処置および(次の)撮像計画に関連付けられる様々なパラメータを決定するステップを含むことができる。いくつかの実施形態においては、画像に基づく送達前ステップ(1630)では、治療送達(1640)前に、より多くの撮像(1610)を必要とすることがある。ステップ1630は、適応放射線治療ルーチン(adaptive radiotherapy routine)の一部として、高品質の撮像データ1615に基づいて治療計画を適応させるステップを含むことができる。いくつかの実施形態においては、画像に基づく送達前ステップ1630は、リアルタイムの治療計画を含むことができる。実施形態は、撮像用放射線源および治療用放射線源を同時に作動させる、一部が重なるように作動させる、および/または交互に作動させることを含むこともできる。リアルタイムの治療計画は、撮像用放射線および治療用放射線のこれらのタイプの作動手法(同時、重なり、および/または交互)のいずれかまたはすべてを含むことができる。
【0119】
次にステップ1640においては、高エネルギ放射線源(例:治療用放射線源20からのMV放射線)を使用して治療処置送達を実行する。ステップ1640では、治療計画に従って患者に治療線量1645を送達する。いくつかの実施形態においては、IGRT方法1600は、様々な間隔での追加の撮像のためにステップ1610に戻ることを含むことができ、その後に必要に応じて、画像に基づく送達前ステップ(1630)および/または治療送達(1640)を行うことができる。このようにして、適応治療が可能な1台の装置10を使用して、IGRT中に高品質の撮像データ1615を生成して利用することができる。上に述べたように、ステップ1610、ステップ1630、および/またはステップ1640は、同時に、一部が重なるように、および/または交互に、実行することができる。
【0120】
IGRTは、少なくとも2つの一般的な目標、すなわち(i)高いレベルで適合する線量分布をターゲットボリュームに送達すること、および(ii)すべての治療フラクションを通じて高い精度で治療用ビームを送達すること、を含むことができる。第3の目標は、上記2つの一般的な目標を、フラクションあたりできる限り短時間で達成すること、とすることができる。治療用ビームを正確に送達するには、高品質の画像を使用して、フラクションにおけるターゲットボリュームの位置を識別および/または追跡する能力が要求される。送達速度を高めるためには、撮像1610、画像に基づく送達前ステップ1630、および治療送達1640を、正確かつ高精度で迅速に実行する能力が要求される(治療計画に従って放射線源を動かすことを含む)。
【0121】
より迅速な送達前ワークフロー(マルチパス撮像スキャンステップ、治療準備ステップ、治療事前計画ステップ、治療計画ステップを含む)をサポートするための上述した撮像手法および処理手法は、本明細書に記載されている撮像1610および画像に基づく送達前ステップ1630に含まれる(IGRTワークフローの一部である場合を含む)。
【0122】
図17は、上のステップ1630に関連付けることのできる例示的な画像に基づく送達前ステップ/オプションを描いたブロック
図1700である。(例えば放射線治療装置の一部としての)上述したX線撮像装置10は、本発明の範囲から逸脱することなく、画像に基づく送達前ステップ(1630)を含めて様々に使用することのできるkV画像を生成できることが理解されよう。例えば、放射線治療装置によって生成される画像1615を使用して、治療の前に患者を位置合わせすることができる(1710)。患者の位置合わせは、現在の撮像データ1615を、より早い時点での治療前のスキャンおよび/または計画(治療計画を含む)に関連する撮像データに関連付ける、またはレジストレーションするステップを含むことができる。また、患者の位置合わせは、患者が送達システムの範囲内に物理的に位置しているかを確認する目的で、放射線源に対する患者の物理的位置に関するフィードバックを含むことができる。必要な場合、フィードバックに応じて患者を調整することができる。いくつかの実施形態においては、線量を最小限にし、ただし十分な位置合わせ情報が提供されるように、患者位置合わせ用の撮像を意図的に低い画質で行うことができる。
【0123】
X線撮像装置10によって生成される画像は、治療の計画または再計画(1720)にも使用することができる。様々な実施形態においては、ステップ1720は、治療計画を確認するステップ、治療計画を修正するステップ、新しい治療計画を生成するステップ、および/または、治療計画のセットから治療計画(場合によっては「本日の計画」とも称される)を選択するステップ、を含むことができる。例えば、ターゲットボリュームまたはROIが、治療計画が作成されたときと同じであることを撮像データ1615が示している場合、その治療計画を確認することができる。しかしながらターゲットボリュームまたはROIが同じではない場合、治療処置の再計画が必要でありうる。再計画の場合、(ステップ1610においてX線撮像装置10によって生成された)撮像データ1615の品質が高いため、この撮像データ1615を治療の計画または再計画に使用することができる(例:新しい治療計画または修正された治療計画を生成する)。このようにして、治療前に別の装置によってCT撮像を行う必要がない。いくつかの実施形態においては、確認および/または再計画は、様々な治療の前および/または後に行われる手順とすることができる。
【0124】
別の例示的な使用例によれば、X線撮像装置10によって生成される画像を使用して、撮像線量を計算する(1730)ことができ、この撮像線量は、患者への総線量の継続的な決定、および/またはその後の撮像計画において、使用することができる。例えば画質と線量のバランスをとる目的で、その後の撮像の品質を、治療計画の一部として決定することもできる。別の例示的な使用例によれば、X線撮像装置10によって生成される画像を使用して、治療線量を計算する(1740)ことができ、この治療線量は、患者への総線量の継続的な決定に使用することができる、および/または、治療の計画または再計画の一部として含めることができる。
【0125】
別の例示的な使用例によれば、X線撮像装置10によって生成される画像を、別の撮像(1750)の計画または調整に関連して、および/または、別の治療(1760)のパラメータまたは計画に関連して、使用することができる(例えば適応治療および/または治療計画の生成の一部として使用することを含む)。別の例示的な使用例によれば、X線撮像装置10によって生成される画像を、適応治療モニタリング(1770)に関連して使用することができ、適応治療モニタリング(1770)は、治療送達のモニタリングおよび必要に応じた適合化を含むことができる。
【0126】
画像に基づく送達前ステップ(1630)は、互いに排他的ではないことを理解されたい。例えば、様々な実施形態において、治療線量の計算(1740)を、それ自体を1ステップとすることができる、および/または、適応治療モニタリング(1770)もしくは治療計画(1720)またはその両方の一部とすることができる。様々な実施形態においては、画像に基づく送達前ステップ(1630)は、自動的に実行する、および/または人の関与を伴って手動で実行することができる。
【0127】
上述した装置および方法(オフセット検出器およびデータ処理手法を含む)は、従来の治療時撮像システムより高い品質の、kV線源によって生成される改善された画像を提供することができる。
【0128】
図18は、撮像(1610)時に、および/またはその後の画像に基づく送達前ステップ(1630)時に利用することのできる例示的なデータ源を描いたブロック
図1800である。検出器データ1810は、画像放射線検出器34によって受信されるすべてのデータを表す。投影データ1820は、コリメートされたビーム領域に入射した放射線によって生成されるデータである。半影データ1830は、半影領域に入射した放射線によって生成されるデータである。散乱データ1840は、半影領域の外側の周辺領域(影領域と称されることもある)に入射した放射線によって生成されるデータである。
【0129】
一実施形態においては、半影データ1830を使用して、投影データおよび/または散乱データを分離または識別することができる。いくつかの実施形態においては、散乱データ1840を使用して、投影データ1820における散乱放射線を推定することができる。別の実施形態においては、2つの線源20,30が同時に、またはインターリーブ式に動作するとき、散乱データ1840を使用して、治療用放射線源20(例:MV)からの散乱の残留効果を求めることができる。
【0130】
このようにして、半影データ1830および/または散乱データ1840を利用して、撮像ステップ1610によって生成される画像の品質を改善することができる。いくつかの実施形態においては、適用可能な撮像設定1850と、治療設定1860(例:撮像用放射線および治療用放射線が同時の場合)と、撮像検出器34におけるデータ収集の時点でX線撮像装置10に関連付けられる任意の他のデータ1870とを考慮して、半影データ1830および/または散乱データ1840を投影データ1820と組み合わせることができる、および/または、半影データ1830および/または散乱データ1840を分析することができる。別の実施形態においては、データを治療計画ステップ1630において使用することができる。
【0131】
開示する技術を、特定の態様、一実施形態、または複数の実施形態に関連して図示および説明してきたが、当業者には、本明細書を添付の図面と併せて読み進めて理解した時点で、同等の変更および修正が明らかであろう。特に、上述した要素(構成要素、アセンブリ、装置、部材、合成物など)によって実行される様々な機能に関して、そのような要素を説明するために使用されている用語(「手段」の言及を含む)は、特に明記されていない限り、説明されている要素の指定された機能を実行する(すなわち機能的に同等である)任意の要素に対応するように意図されており、このことは、たとえ開示する技術の本明細書に示した例示的な態様、一実施形態、または複数の実施形態においてこれらの機能を実行する開示されている構造に構造的に同等でない場合にも、あてはまる。さらに、開示する技術の特定の特徴が、いくつかの図示した態様または実施形態のうちの1つまたは複数のみに関連して上に説明されているが、このような特徴は、任意の所与の用途または特定の用途において望ましく有利であるとき、別の実施形態の1つまたは複数の別の特徴と組み合わせることができる。
【0132】
本明細書で説明した実施形態は、上述したシステムおよび方法に関連しているが、これらの実施形態は例示を目的としており、これらの実施形態の適用性を本明細書に記載されている説明のみに制限するようには意図していない。本発明はその実施形態の説明によって示されており、これらの実施形態はある程度詳細に説明されているが、本出願人は、添付されている請求項の範囲をそのような細部に制限する、またはいかようにも限定するようには意図していない。当業者には、さらなる利点および修正がただちに明らかであろう。したがって、より広い態様における本発明は、特定の細部、代表的な装置および方法、ならびに図示および説明されている例示的な例に制限されない。したがって、出願人の一般的な発明概念の趣旨または範囲から逸脱することなく、そのような細部の修正・変更を行うことができる。