(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】PAR4阻害剤の結晶体
(51)【国際特許分類】
C07D 513/04 20060101AFI20240416BHJP
A61K 31/433 20060101ALI20240416BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20240416BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
C07D513/04 301
A61K31/433
A61P7/02
A61P43/00 111
C07D513/04 CSP
(21)【出願番号】P 2021535787
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(86)【国際出願番号】 US2019067717
(87)【国際公開番号】W WO2020132381
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-10-25
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391015708
【氏名又は名称】ブリストル-マイヤーズ スクイブ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL-MYERS SQUIBB COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162695
【氏名又は名称】釜平 双美
(74)【代理人】
【識別番号】100156155
【氏名又は名称】水原 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【氏名又は名称】呉 英燦
(72)【発明者】
【氏名】シュラム,ロクサーナ エフ
(72)【発明者】
【氏名】キュニエール,ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】ムバチュ,ビクトリア エイ
(72)【発明者】
【氏名】シ,ジョンピン
(72)【発明者】
【氏名】ブラホバ,ペティンカ アイ
【審査官】藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-514808(JP,A)
【文献】高田則幸,Cocrystalのスクリーニングと原薬物性改善への応用,Pharm Tech Japan,2009年,Vol. 25, No.12,p.155-166
【文献】TILBORG, A. et al.,European Journal of Medicinal Chemistry,2014年,Vol. 74,pp. 411-426
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 513/04
A61K 31/433
A61P 7/02
A61P 43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
の化合物およびコフォーマーから成る共結晶であって、コフォーマーはコハク酸またはクエン酸である共結晶。
【請求項2】
コフォーマーがコハク酸である、請求項1の共結晶。
【請求項3】
請求項2の共結晶であって、下記の特徴が1つ以上ある共結晶:
a)単結晶構造の測定を室温で行った場合に
、下記と同じ単位格子パラメーター
【表1】
を有する単結晶構造である;
b)図1:
で示されるPXRDパターンが観測される;
c)4.5±0.2、9.5±0.2、14.6±0.2、16.3±0.2、17.6±0.2、21.4±0.2、22.4±0.2、および25.9±0.2から選択される2θの値を4つ以上含むPXRDパターン(室温で測定、CuKα λ=1.5418Å)である;
d)図5:
で示される赤外線スペクトルである;および/または
e)図6:
で示されるFT-ラマンスペクトルである。
【請求項4】
式(I)の化合物とコハク酸の比率が1:0.5である、請求項1~3のいずれかの共結晶。
【請求項5】
コフォーマーがクエン酸である、請求項1の共結晶。
【請求項6】
請求項5の共結晶であって、N-1型であり、下記の特徴が1つ以上ある共結晶:
a)下記と同じ単位格子パラメーター
【表2】
を有する単結晶構造である;
b)図6:
で示されるPXRDパターンである;および/または
c)6.4±0.2、12.7±0.2、14.4±0.2、17.1±0.2、23.9±0.2、25.0±0.2、および26.6±0.2から選択される2θの値を4つ以上含むPXRDパターン(室温、CuKα λ=1.5418Å)である。
【請求項7】
式(I)の化合物とクエン酸の比率が1:1である、請求項5~6のいずれかの共結晶。
【請求項8】
N-1型で構成されている請求項5~7のいずれかの共結晶。
【請求項9】
請求項5の共結晶であって、N-2型であり、下記の特徴が1つ以上ある共結晶:
a)単結晶構造の測定を室温で行った場合に
、下記と同じ単位格子パラメーター
【表3】
を有する単結晶構造である;
b)図12:
で示されるPXRDパターンである;および/または
c)4.6±0.2、5.5±0.2、8.4±0.2、11.3±0.2、14.6±0.2、16.4±0.2、21.1±0.2、24.2±0.2、および25.2±0.2から選択される2θの値を4つ以上含むPXRDパターン(室温、CuKα λ=1.5418Å)である。
【請求項10】
式(I)の化合物とクエン酸の比率が1:1である、請求項9の共結晶。
【請求項11】
N-2型で構成されている請求項9の共結晶。
【請求項12】
純粋な形態である請求項1~11のいずれかの共結晶。
【請求項13】
医薬的に許容される担体、および請求項1~12のいずれかで定義される共結晶を単体、または別の治療剤と組み合わせて含有する医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2018年12月21日出願の米国仮出願番号第62/783,223号に対する優先権を米国特許法第119条(e)の下に主張するものであって、その全てが参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本発明は、プロテアーゼ活性化受容体-4(PAR4)のアンタゴニストである、4-(4-(((6-メトキシ-2-(2-メトキシイミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾール-6-イル)ベンゾフラン-4-イル)オキシ)メチル)チアゾール-2-イル)-N,N-ジメチルベンズアミドの共結晶に関する。また、本発明は、その製造方法、医薬組成物、および本発明の共結晶の使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
先進国において、血栓塞栓性疾患は、抗凝血剤(例えばワルファリン(COUMADIN(登録商標))、ヘパリン、低分子ヘパリン(LMWH)、合成五糖類)、および抗血小板薬(例えばアスピリンおよびクロピドグレル(PLAVIX(登録商標)))が開発されているものの、主要な死因のままである。
【0004】
現在の抗血小板治療には、出血リスクの増加ならびに限定的な有効性(相対的な心血管疾患リスクの低下は20~30%程度)などの限界がある。それ故、幅広い血栓塞栓性障害の予防および治療のための安全で効果的な経口または非経口抗血栓薬の探索および開発は、重要な課題のままである。
【0005】
α-トロンビンは、血小板凝集および脱顆粒の最も強力な活性化剤として知られる。血小板の活性化はアンテローム血栓性血管閉塞症の原因となっている。トロンビンにより、プロテアーゼ活性化受容体(PAR)と呼ばれるG-タンパク質共役受容体が切断され、血小板が活性化する。PARは、タンパク質切断によって露出するN末端細胞外ドメインに存在する自身の潜在的リガンドを提供し、分子内で受容体と結合し、シグナル伝達を誘発する(テザーリガンド機構; Coughlin, S.R., Nature, 407:258-264 (2000))。タンパク質分解活性により新たに形成されたN-末端配列を模倣した合成ペプチドは、受容体の切断とは独立してシグナル伝達を誘発し得る。血小板は、アンテローム血栓性症状における重要な要因である。ヒト血小板は少なくとも2つのトロンビン受容体を発現し、一般にPAR1およびPAR4と呼ばれている。PAR1の阻害剤は広く研究されており、ボラパクサールおよびアトパキサールなどの複数の化合物が後期臨床試験に進んでいる。近年、ACS患者のTRACER第III相試験において、ボラパクサールが心血管の症状を有意に軽減させないのにもかかわらず、重大な出血のリスクを著しく増大させた(Tricoci, P. et al., N. Eng. J. Med., 366(1):20-33 (2012))。それ故、有効性が高く、出血の副作用を減少させる新たな抗血小板薬を開拓する必要がある。
【0006】
式(I)の化合物、4-(4-(((6-メトキシ-2-(2-メトキシイミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾール-6-イル)ベンゾフラン-4-イル)オキシ)メチル)チアゾール-2-イル)-N,N-ジメチルベンズアミド(化合物(I))は、PAR4阻害剤であり、遊離形態の固形物質としてのその合成、および製造、ならびに使用がWO2013/163279に記載されている。
【化1】
【発明の概要】
【0007】
本発明は、式(I)の化合物
【化2】
およびコハク酸またはクエン酸を含む共結晶、それを含む医薬組成物、およびそれを必要とする患者または哺乳動物に有効量の共結晶を投与することによる血栓塞栓性障害の治療または予防に関する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、式(I)の化合物のコハク酸共結晶の、シミュレーション(下、室温に設定した原子座標から計算したもの)および実測値(上)のPXRDパターンを示す。
【
図2】
図2は、式(I)の化合物のコハク酸共結晶のDSCを示す。
【
図3】
図3は、式(I)の化合物のコハク酸共結晶のTGAを示す。
【
図4】
図4は、式(I)の化合物のコハク酸共結晶のFT-ラマンスペクトルを示す。
【
図5】
図5は、式(I)の化合物のコハク酸共結晶のFT-IRスペクトルを示す。
【
図6】
図6は、N-1型の式(I)の化合物のクエン酸共結晶のシミュレーション(下、室温に設定した原子座標から計算したもの)および実測値(上)のPXRDパターンを示す。
【
図7】
図7は、N-1型の式(I)の化合物のクエン酸共結晶のDSCを示す。
【
図8】
図8は、N-1型の式(I)の化合物のクエン酸共結晶のTGAを示す。
【
図9】
図9は、N-1型の式(I)の化合物のクエン酸共結晶のFT-ラマンを示す。
【
図10】
図10は、N-1型の式(I)の化合物のクエン酸共結晶のC-13 CPMAS SSNMRを示す。
【
図11】
図11は、N-1型の式(I)の化合物のクエン酸共結晶のFT-IRを示す。
【
図12】
図12は、N-2型の式(I)の化合物のクエン酸共結晶のシミュレーション(下、室温に設定した原子座標から計算したもの)および実測値(上)のPXRDパターンを示す。
【
図13】
図13は、N-2型の式(I)の化合物のクエン酸共結晶のDSCを示す。
【
図14】
図14は、N-2型の式(I)の化合物のクエン酸共結晶のTGAを示す。
【
図15】
図15は、式(I)の化合物のクエン酸共結晶およびコハク酸共結晶の溶解濃度、ならびに式(I)の化合物の遊離形態の溶解濃度を示す。
【
図16】
図16は、イヌにおける、式(I)の化合物のクエン酸共結晶およびコハク酸共結晶の薬物動態プロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ある実施態様において、本発明は、式(I)の化合物およびコフォーマーの共結晶であり、ここでコフォーマーとは、クエン酸またはコハク酸である。
【化3】
【0010】
本発明の別の実施態様において、コフォーマーはコハク酸である。
【0011】
別の実施態様において、式(I)の化合物およびコハク酸の共結晶は、下記の特徴が1つ以上ある:
a)単結晶構造の測定を室温で行った場合に、実質的に下記と同じ単位格子パラメーター
【表1】
を有する単結晶構造である;
b)実質的に
図1で示されるPXRDパターンが観測される;
c)4.5±0.2、9.5±0.2、14.6±0.2、16.3±0.2、17.6±0.2、21.4±0.2、22.4±0.2、および25.9±0.2から選択される2θの値を4つ以上含むPXRDパターン(室温で測定(CuKα λ=1.5418Å))である;
d)実質的に
図5で示される赤外線スペクトルである;および/または
e)実質的に
図6で示されるFT-ラマンスペクトルである。
【0012】
別の実施態様において、式(I)の化合物およびコハク酸の共結晶は、式(I)の化合物とコハク酸の比率が1:0.5である。
【0013】
本発明の別の実施態様において、コフォーマーはクエン酸である。
【0014】
別の実施態様において、式(I)の化合物およびクエン酸の共結晶は、N-1型であって、下記の特徴が1つ以上ある:
a)実質的に下記と同じ単位格子パラメーター
【表2】
を有する単結晶構造である;
b)実質的に
図6で示されるPXRDパターンである;および/または
c)6.4±0.2、12.7±0.2、14.4±0.2、17.1±0.2、23.9±0.2、25.0±0.2、および26.6±0.2から選択される2θの値(室温、CuKα λ=1.5418Å)を4つ以上含む粉末X線回折パターンである。
【0015】
本発明の別の実施態様において、式(I)の化合物およびクエン酸の共結晶は、1:1の比率である。
【0016】
本発明の別の実施態様において、式(I)の化合物およびクエン酸の共結晶は、基本的にN-1型で構成されている。
【0017】
本発明の別の実施態様において式(I)の化合物およびクエン酸の共結晶は、N-1型を含む。
【0018】
別の実施態様において、式(I)の化合物およびクエン酸の共結晶はN-2型であって、下記の特徴が1つ以上ある:
a)実質的に下記と同じ単位格子パラメーター
【表3】
を有する単結晶構造である;
b)実質的に
図12で示されるPXRDパターンである;および/または
c)4.6±0.2、5.5±0.2、8.4±0.2、11.3±0.2、14.6±0.2、16.4±0.2、21.0±0.2、24.2±0.2、および25.2±0.2から選択される2θの値(室温、CuKα λ=1.5418Å)を4つ以上含む粉末X線回折パターンである。
【0019】
本発明の別の実施態様において、N-1型の式(I)の化合物およびクエン酸の共結晶は、1:1の比率である。
【0020】
本発明の別の実施態様において、N-2型の式(I)の化合物およびクエン酸の共結晶は、1:1の比率である。
【0021】
本発明の別の実施態様において、式(I)の化合物およびクエン酸の共結晶は、基本的にN-2型で構成されている。
【0022】
本発明の別の実施態様において、式(I)の化合物およびクエン酸の共結晶は、N-2型を含む。
【0023】
本発明の別の実施態様において、本発明は、実質的に純粋な形態の共結晶のいずれか1つに関する。
【0024】
本発明の別の実施態様において、上記コハク酸共結晶のPXRDが、4.5±0.2、9.5±0.2、14.6±0.2、16.3±0.2、17.6±0.2、21.4±0.2、22.4±0.2、および25.9±0.2(室温、CuKα λ=1.5418Å)から選択される2θの値を4つ以上、5つ以上、または6つ以上有する特徴がある。
【0025】
本発明の別の実施態様において、上記コハク酸共結晶のPXRDが、4.5±0.2、9.5±0.2、14.6±0.2、16.3±0.2、17.6±0.2、21.4±0.2、22.4±0.2、および25.9±0.2(室温、CuKα λ=1.5418)から選択される2θの値を少なくとも1つ以上有する特徴がある。
【0026】
本発明の別の実施態様において、上記コハク酸共結晶のPXRDが、4.5±0.2、9.5±0.2、14.6±0.2、16.3±0.2、17.6±0.2、および25.9±0.2(室温、CuKα λ=1.5418Å)から選択される2θの値を4つ以上、または5つ以上有する特徴がある。
【0027】
本発明の別の実施態様において、上記コハク酸共結晶のPXRDが、4.5±0.2、9.5±0.2、14.6±0.2、16.3±0.2、17.6±0.2、および25.9±0.2(室温、CuKα λ=1.5418Å)から選択される2θの値を4つ以上、または5つ以上、または6つ以上有する特徴がある。
【0028】
本発明の別の実施態様において、上記コハク酸共結晶は、実質的に下記と同じ単位格子パラメーター
【表4】
を有する単結晶構造である。
【0029】
別の実施態様において、上記コハク酸共結晶のFT-IRが、実質的に
図5と一致する特徴がある。別の実施態様において、上記コハク酸共結晶は、FT-IRスペクトルが、1627.9、1704.4、および3102.1cm
-1(±0.4cm
-1)のピークを有する特徴がある。
【0030】
別の実施態様において、上記コハク酸共結晶のFT-ラマンが、実質的に
図4と一致する特徴がある。別の実施態様において、上記コハク酸共結晶は、FT-ラマンスペクトルが、975.3、1185.0、1242.9、1455.6、および3104.4cm
-1(±0.3cm
-1)のピークを有する特徴がある。
【0031】
別の実施態様において、N-1型のクエン酸共結晶のPXRDが、実質的に
図6と一致する特徴がある。別の実施態様において、N-1型のクエン酸共結晶のPXRDは、6.4±0.2、12.7±0.2、14.4±0.2、17.1±0.2、23.9±0.2、25.0±0.2、および26.6±0.2(室温、CuKα λ=1.5418Å)から選択される2θの値を4つ以上、または5つ以上、または6つ以上有する特徴がある。別の実施態様において、N-1型のクエン酸共結晶のPXRDは、6.4±0.2、12.7±0.2、14.4±0.2、17.1±0.2、23.9±0.2、25.0±0.2、および26.6±0.2(室温、CuKα λ=1.5418Å)から選択される2θの値を少なくとも1つ以上有する特徴がある。別の実施態様において、N-1型のクエン酸共結晶のPXRDは、6.4±0.2、12.7±0.2、14.4±0.2、および26.6±0.2(室温、CuKα λ=1.5418Å)から選択される2θの値を含む特徴がある。
【0032】
別の実施態様において、N-1型のクエン酸共結晶は、実質的に下記と同じ単位格子パラメーター
【表5】
を有する単結晶構造である。
【0033】
別の実施態様において、N-1型のクエン酸共結晶のFT-IRが、実質的に
図11と一致する特徴がある。別の実施態様において、N-1型のクエン酸共結晶は、FT-IRスペクトルが、1585.7、1725.9、および3150.5cm
-1(±0.4cm
-1)のピークを有する特徴がある。
【0034】
別の実施態様において、N-1型のクエン酸共結晶のFT-ラマンが、実質的に
図9と一致する特徴がある。別の実施態様において、N-1型のクエン酸共結晶は、FT-ラマンスペクトルが、755.3、807.7、982.1、1191.2、1367.8、1450.6、および2978.9cm
-1(±0.3cm
-1)のピークを有する特徴がある。
【0035】
別の実施態様において、N-2型のクエン酸共結晶のPXRDが、実質的に
図12と一致する特徴がある。別の実施態様において、N-2型のクエン酸共結晶のPXRDは、4.6±0.2、5.5±0.2、8.4±0.2、11.3±0.2、14.6±0.2、16.4±0.2、21.0±0.2、24.2±0.2、および25.2±0.2から選択される2θの値を4つ以上、または5つ以上、または6つ以上有する特徴がある。別の実施態様において、N-2型のクエン酸共結晶のPXRDは、4.6±0.2、5.5±0.2、8.4±0.2、11.3±0.2、14.6±0.2、16.4±0.2、21.0±0.2、24.2±0.2、および25.2±0.2から選択される2θの値を少なくとも1つ以上有する特徴がある。別の実施態様において、N-1型のクエン酸共結晶のPXRDは、4.6±0.2、14.6±0.2、16.4±0.2、21.0±0.2、および25.2±0.2(室温、CuKα λ=1.5418Å)から選択される2θの値を4つ以上、または5つ以上含む特徴がある。
【0036】
別の実施態様において、N-2型のクエン酸共結晶は、実質的に下記と同じ単位格子パラメーター
【表6】
を有する単結晶構造である。
【0037】
別の実施態様において、本発明は、治療上有効量の少なくとも1つの式(I)の化合物の共結晶体および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物を記載する。
【0038】
別の実施態様において、本発明は、血栓塞栓性障害の治療が必要な患者に、治療上有効量の少なくとも1つの式(I)の化合物の共結晶体を投与することを含む、血栓塞栓性障害の治療方法を記載する。
【0039】
一部の実施態様において、本発明は、別の治療剤をさらに含む医薬組成物を提供する。好ましい実施態様において、本発明は、別の治療剤が、抗血小板薬またはその組み合わせである医薬組成物を提供する。好ましくは、抗血小板薬がP2Y12アンタゴニストおよび/またはアスピリンである。好ましくは、該P2Y12アンタゴニストが、クロピドグレル、チカグレロル、またはプラスグレルである。別の好ましい実施態様において、本発明は、別の治療剤が、抗凝血薬またはその組み合わせである医薬組成物を提供する。好ましくは、該抗凝血薬は、FXa阻害剤またはトロンビン阻害剤である。好ましくは、該FXa阻害剤が、アピキサバンまたはリバーロキサバンである。好ましくは、該トロンビン阻害剤が、ダビガトランである。
【0040】
一部の実施態様において、本発明は、血栓塞栓性障害の治療または予防が必要な患者(例えば、ヒト)に、治療上有効量の少なくとも1個の本開示の式(I)の化合物の共結晶体(例えば、上記コハク酸共結晶、クエン酸共結晶、N-1型クエン酸共結晶、またはN-2型クエン酸共結晶)を投与するステップを含む、血栓塞栓性障害の治療または予防法を提供する。
【0041】
一部の実施態様において、本発明は、血栓塞栓性障害の治療法または一次予防または二次予防法を提供するものであって、それが必要な患者(例えば、ヒト)に、治療上有効量の本開示の式(I)の化合物の共結晶体の1つ(例えば、上記コハク酸共結晶、クエン酸共結晶、N-1型クエン酸共結晶、またはN-2型クエン酸共結晶)を投与するステップを含むものである。ここで血栓塞栓性障害は、心血管動脈血栓塞栓性障害、心血管静脈血栓塞栓性障害、脳血管血栓塞栓性障害、および心室ならびに心房または末梢循環における血栓塞栓性障害からなる群から選択される。
【0042】
一部の実施態様において、本発明は、血栓塞栓性障害の治療法または一次予防または二次予防法を提供するものであって、それが必要な患者(例えば、ヒト)に、治療上有効量の本開示の式(I)の化合物の共結晶体の1つ(例えば、上記コハク酸共結晶、クエン酸共結晶、N-1型クエン酸共結晶、またはN-2型クエン酸共結晶)を投与するステップを含むものである。ここで血栓塞栓性障害は、急性冠症候群、不安定狭心症、安定狭心症、ST上昇型心筋梗塞、非ST上昇型心筋梗塞、心房細動、心筋梗塞、一過性脳虚血発作、脳卒中、アテローム性動脈硬化症、末梢動脈疾患、静脈血栓症、深部静脈血栓症、血栓性静脈炎、動脈塞栓症、冠動脈血栓症、脳動脈血栓症、脳塞栓症、腎臓塞栓症、肺塞栓症、がん関連血栓症、および人工物表面(医療用インプラント、デバイス、および医療処置)に血液が触れることに起因して促進される血栓症からなる群から選択される。
【0043】
一部の実施態様において、本発明は、血栓塞栓性障害の治療法または一次予防または二次予防法を提供するものであって、それが必要な患者(例えば、ヒト)に、治療上有効量の本開示の式(I)の化合物の共結晶体の1つ(例えば、上記コハク酸共結晶、クエン酸共結晶、N-1型クエン酸共結晶、またはN-2型クエン酸共結晶)を投与するステップを含むものである。ここで血栓塞栓性障害は、急性冠症候群、不安定狭心症、安定狭心症、ST上昇型心筋梗塞、および非ST上昇型心筋梗塞からなる群から選択される。
【0044】
一部の実施態様において、本発明は、血栓塞栓性障害の治療法または一次予防または二次予防法を提供するものであって、それが必要な患者(例えば、ヒト)に、治療上有効量の本開示の式(I)の化合物の共結晶体の1つ(例えば、上記コハク酸共結晶、クエン酸共結晶、N-1型クエン酸共結晶、またはN-2型クエン酸共結晶)を投与するステップを含むものである。ここで血栓塞栓性障害は、一過性脳虚血発作および脳卒中からなる群から選択される。
【0045】
一部の実施態様において、本発明は、血栓塞栓性障害の治療法または一次予防または二次予防法を提供するものであって、それが必要な患者(例えば、ヒト)に、治療上有効量の本開示の式(I)の化合物の共結晶体の1つ(例えば、上記コハク酸共結晶、クエン酸共結晶、N-1型クエン酸共結晶、またはN-2型クエン酸共結晶)、あるいはその溶媒和物を投与するステップを含むものである。ここで血栓塞栓性障害は、末梢動脈疾患である。
【0046】
一部の実施態様において、本発明は上記の方法を含むものであって、ここで血栓塞栓性障害は、不安定狭心症、急性冠症候群、心房細動、初発心筋梗塞、再発性心筋梗塞、虚血性突然死、一過性脳虚血発作、脳卒中、アテローム性動脈硬化症、末梢閉塞性動脈疾患、静脈血栓症、深部静脈血栓症、血栓性静脈炎、動脈塞栓症、冠動脈血栓症、脳動脈血栓症、脳塞栓症、腎臓塞栓症、肺塞栓症、および人工物表面(医療用インプラント、デバイス、および医療処置)に血液が触れることに起因して促進される血栓症から選択される。
【0047】
一部の実施態様において、本発明は血小板凝集を阻害または防止する方法を含むものであって、それが必要な患者(例えば、ヒト)に、治療上有効量の本開示の式(I)の化合物の共結晶体の1つ(例えば、上記コハク酸共結晶、クエン酸共結晶、N-1型クエン酸共結晶、またはN-2型クエン酸共結晶)を投与するステップを含むものである。
【0048】
さらに進んだ実施態様において、化合物(I)の個々の結晶体は実質的に純粋である。
【0049】
さらに別の実施態様において、化合物(I)の個々の結晶体は、化合物(I)の個々の結晶体の重量に対して、少なくとも約90wt%、好ましくは少なくとも約95wt%、およびより好ましくは少なくとも約99wt%の化合物(I)を含む。
【0050】
別の実施態様において、式(I)の化合物は、本明細書に記載の共結晶の混合物を含む。
【0051】
本発明は、治療のための式(I)の化合物の共結晶の使用を含む。
【0052】
本発明は、血栓塞栓性障害の治療薬または予防薬の製造のための式(I)の化合物の共結晶の使用に関する。
【0053】
医薬組成物の製造において、活性成分の形体は、所望の特性(例えば、溶解速度、溶解度、バイオアベイラビリティ、および/または貯蔵安定性)のバランスが取れたものが求められる。例えば、活性成分の形体は、十分な溶解度、およびバイオアベイラビリティ、ならびに十分な溶解度およびバイオアベイラビリティを有する形体が貯蔵中に望ましくない溶解度および/またはバイオアベイラビリティのプロファイルを有する別の形体に変化することを防止するための、貯蔵安定性を有することが求められる。
【0054】
本発明は、少なくとも1つの、医薬組成物に求められる特性のバランスを期待以上に有する化合物(I)の共結晶体を提供する。本発明は、他の重要な態様にも関連する。
【0055】
本発明は、本明細書に記載の本発明の別の態様の全ての組み合わせもまた含む。本発明のありとあらゆる実施態様は、更なる本発明の実施態様を説明するために、いずれの他の実施態様と組み合わせてもよいことが理解される。さらに、いずれの実施態様の要素は、さらなる実施態様を説明するためのあらゆる実施態様のありとあらゆる他の要素と組み合わされることを意味する。
【0056】
(定義)
本発明の特徴および利点は、以下の詳細な記載を読むことで、当業者によってさらに容易に理解され得る。明瞭にするために、別の実施態様の文脈の前後に記載される本発明のある特徴を、組み合わせて1つの実施態様を形成してもよいと理解される。逆にまた、簡潔にするために単一の実施態様の文脈に記載される本発明の種々の特徴を、組み合わせてそのサブコンビネーションを形成してもよい。
【0057】
特定の形体を示すために本明細書で用いられる名称(例えば、「N-1」など)は、単に、本明細書に記載の特徴的な情報に基づいて解釈される識別名であって、類似または同一の物理的および化学的特性を有する、あらゆる他の物質を排除するために制限するものではない。
【0058】
本明細書に記載の定義は、引用により本願明細書に組み込まれたあらゆる特許、特許出願および/または特許出願公報に記載の定義に優先する。
【0059】
成分、重量百分率、温度などの、「約」という語が先に付く量を表す全ての数字は、単なる近似値として理解されるべきであり、記載された数字からわずかに上下した数値は、実質的に表記の数字と同じ結果が得られるため、用いられてもよい。従って、特に断りのない限り、「約」または「実質的に一致」という語が先に付く数値パラメーターは近似値であり、得ようと試みる所望の性質によって変化し得る。少なくとも、均等論の適用を請求項の範囲に限定する意図ではなく、各数値パラメーターは、少なくとも記載の有効数字の数を踏まえて、通常の数字の丸め方を適用することで理解されるべきである。
【0060】
あらゆる測定は実験誤差を含む可能性があり、それらは本発明の精神の範囲内である。
【0061】
本明細書で用いる「共結晶」は、同一結晶格子内で2つ以上の分子からなる、固体状態の結晶物質であり、中性状態であり、非イオン性相互作用を介して相互作用し、室温では個々の成分として固体であるものを意味する。
【0062】
本明細書で用いる「多形」は、同一の化学構造を有するが、結晶を形成する際に、分子および/またはイオンの空間配列が異なる結晶形体をいう。
【0063】
本明細書で用いる「溶媒和物」は、溶媒分子または結晶格子構造に組み込まれた溶媒をさらに包含する、分子、原子および/またはイオンの結晶形体をいう。その溶媒が水である場合、結晶形体は「水和物」と呼ばれる。溶媒和物中の溶媒分子は規則正しい配列および/または不規則な配列で存在し得る。溶媒和物は、溶媒分子の量が定比または不定比のいずれかで包含する。例えば、溶媒分子の量が不定比の溶媒和物は、溶媒和物から溶媒の一部が欠損したものを生じ得る。溶媒和物は、式(I)の化合物の1つ以上の分子または共結晶を結晶格子構造中に包含する、二量体またはオリゴマーとして生じてもよい。
【0064】
本明細書で用いる「非晶質」は、分子、原子、および/またはイオンの固体状態が結晶ではないものをいう。非晶質固体は、明確なX線回折パターンを示さない。
【0065】
本明細書で「実質的に純粋」を共結晶体に関して用いる場合、純度が90重量%以上である化合物を意味し、化合物の重量に基づいて、化合物(I)の共結晶の90、91、92、93、94、95、96、97、98、および99重量%以上の純度、および約100重量%に等しい純度も含む。残りの物質は、その化合物の他の形体および/または反応不純物および/またはその製造中に生じた処理不純物を含む。例えば、化合物(I)の共結晶体は、現時点の当技術分野で公知かつ一般的に受け入れられている方法で測定された純度が90重量%以上であれば、実質的に純粋であると見なされ得て、残りの10重量%未満の物質は、化合物(I)の他の形体および/または反応不純物および/または製造過程の不純物を含む。
【0066】
溶解すると、式(I)の化合物の共結晶体はその結晶構造を失うため、式(I)の化合物の溶液と呼ばれる。しかしながら、本発明のあらゆる形体は、薬剤を溶解または懸濁した液体製剤の製造に用いられ得る。さらに、式(I)の化合物の共結晶体は、固体製剤に組み込まれてもよい。
【0067】
本明細書で用いる、特定のピーク群から選択されるピークをいくつか「含む」または有するXRPD(X線粉末回折)またはPXRD(粉末X線回折)パターンは、特定のピーク群に含まれない別のピークを有するPXRDパターンを含むことを意図する。例えば、A、B、C、D、E、F、G、およびHから選択される2θの値を少なくとも1つ以上、4つ以上、5つ以上、または6つ以上含むPXRDパターンは、(a)A、B、C、D、E、F、G、およびHから選択される2θの値を少なくとも1つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上有し;および(b)A、B、C、D、E、F、G、およびHのピークのいずれでもないピークを0以上有するPXRDパターンを含むことを意図する。
【0068】
本明細書で用いる、用語「DSC」は、示差走査熱量測定をいう。用語「TGA」は、熱重量分析をいう。用語「IR」は、赤外線分光測定をいう。略語「FT」は、フーリエ変換を表す。
【0069】
用語「室温」は、一般に約22℃を意味するが、±7℃変化してもよい。
【0070】
用語「実質的に一致」が、XRPDまたはPXRDパターンについて用いられる場合、同一化合物として得られた結晶体のピーク位置の測定は、誤差の範囲で変化し得ると理解されるべきである。ピーク強度は、同一化合物の同一結晶体のPXRDであっても照射が異なれば変化し得ることも理解されたい。異なるピークの相対強度はPXRD照射の違いの比較に限定されるものではない。
【0071】
「治療上の有効量」とは、PAR4を阻害および/または抑制するため、および/または本明細書に列記される障害を予防または治療するために、単体または組み合わせて投与される際の本発明の化合物の有効量を含むことを意味する。組み合わせて投与する場合、順に、または同時に組み合わせて投与される場合でも、該用語は、予防効果または治療効果をもたらす活性成分を組み合わせた量をいう。
【0072】
本明細書で用いる用語「血栓症」は、血管に付随する組織の虚血または梗塞を引き起こし得る、血管内の血栓の形成または存在をいう。本明細書で用いる用語「塞栓症」は、血流によってある部位に運ばれてきた血栓や異物によって動脈が突然閉塞することをいう。本明細書で用いる用語「血栓塞栓症」は、発生部位から血流によって運ばれてきた血栓物質が別の血管を塞ぐことで血管が閉塞することをいう。用語「血栓塞栓性障害」は、上記で定義される「血栓性」および「塞栓性」の障害の両方を含む。
【0073】
本明細書で用いる用語「血栓塞栓性障害」には、心血管動脈血栓塞栓性障害、心血管静脈血栓塞栓性障害または脳血管血栓塞栓性障害、および心室ならびに心房または末梢循環における血栓塞栓性障害が挙げられる。また、本明細書で用いる用語「血栓塞栓性障害」には、以下に限らないが、不安定狭心症またはその他の急性冠症候群、心房細動、初発または再発性心筋梗塞、虚血性突然死、一過性脳虚血発作、脳卒中、アテローム性動脈硬化症、末梢閉塞性動脈疾患、静脈血栓症、深部静脈血栓症、血栓性静脈炎、動脈塞栓症、冠動脈血栓症、脳動脈血栓症、脳塞栓症、腎臓塞栓症、肺塞栓症、および人工物表面(医療用インプラント、デバイス、および医療処置)に血液が触れることに起因して促進される血栓症から選択される障害も挙げられる。上記医療用インプラントまたはデバイスには、以下に限らないが、人工弁、人工バルブ、留置カテーテル、ステント、血液酸素供給装置、シャント、血管アクセスポート、補助人工心臓および人工心臓または心室ならびに心房、および血管移植が挙げられる。手術法としては、以下に限らないが、心肺バイパス、経皮的冠動脈インターベンション、および血液透析が挙げられる。別の実施態様において、用語「血栓塞栓性障害」は、急性冠症候群、脳卒中、深部静脈血栓症、および肺塞栓症を含む。
【0074】
一部の実施態様において、PAR4化合物の治療上有効量は、好ましくは約100mg/kg、50mg/kg、10mg/kg、5mg/kg、1mg/kg未満、または1mg/kg未満である。別の実施態様において、PAR4化合物の治療上有効量は、5mg/kg未満である。別の実施態様において、PAR4化合物の治療上有効量は、1mg/kg未満である。別の実施態様において、投薬量は8mg~48mgである。当業者に認識されているように、効果的な投薬量は、投与経路および用いる賦形剤によって異なる。
【0075】
本共結晶体は、一般に、経口錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、シロップ剤などの適切に選択された意図的な投与形態に関して、従来の薬学的基準に準じた、(本明細書で薬剤担体と総称される)適切な薬剤希釈剤、賦形剤、または担体との混合物で投与される。
【0076】
例えば、錠剤またはカプセルの形態の経口投与用として、活性薬物成分は、経口的に毒性が無く、医薬的に許容される不活性担体(例えばラクトース、デンプン、スクロース、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム、硫酸カルシウム、マンニトール、ソルビトールなど)と組み合わせられ得る。液体の形態の経口投与用として、活性薬物成分は、経口的に毒性が無く、医薬的に許容される任意の不活性担体(例えばエタノール、グリセロール、水など)と組み合わせられ得る。さらに、必要に応じて適切な結合剤、滑沢剤、崩壊剤、および着色剤もまたこの混合物に組み込まれ得る。適切な結合剤には、デンプン、ゼラチン、天然糖(例えばグルコースまたはβ-ラクトース)、コーンシロップ、天然および合成ガム(例えばアカシア、トラガカント、またはアルギン酸ナトリウム)、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックスなどが挙げられる。上記の投与形態に用いられる滑沢剤には、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。崩壊剤には、以下に限らないが、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどが挙げられる。
【0077】
また、本発明の共結晶は、例えば小型単層ベシクル、大型単層ベシクル、および多重層ベシクルなどのリポソームデリバリーシステムの形態で投与されてもよい。リポソームは様々なリン脂質(例えばコレステロール、ステアリルアミン、またはホスファチジルコリンなど)から形成され得る。
【0078】
また、本発明の共結晶は、標的設定可能な薬剤担体である可溶性ポリマーと組み合わせられてもよい。そのようなポリマーには、ポリビニルピロリドン、ピラン共重合体、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド-フェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルトアミドフェノール、またはパルミトイル残渣で置換されたポリエチレンオキシド-ポリリシンが挙げられ得る。さらに、本発明の化合物は、薬物の放出制御に有効な生分解性ポリマーの類(例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸およびポリグリコール酸の共重合体、ポリ-ε-カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアシレート、およびヒドロゲルの架橋または両親媒性ブロック共重合体)と組み合わせられてもよい。
【0079】
適切な投与形態(医薬組成物)には、各製剤に約1mg~約100mgの活性成分が含まれてもよい。上記医薬組成物中に、活性成分は組成物の総重量に対して、通常約0.5~95%の量が存在する。
【0080】
ゼラチンカプセルには、活性成分および粉末状担体(例えば、ラクトース、デンプン、セルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸など)を含み得る。同様の希釈剤が圧縮錠剤を製造するために用いられ得る。薬物が数時間かけて持続放出するために、錠剤およびカプセルの両方が持続放出性生成物として製造され得る。圧縮錠剤は、あらゆる不快な味をマスキングし、空気から錠剤を守るために糖衣またはフィルムでコーティングされ得るか、または消化管内で選択的に崩壊させるための腸溶性コーティングがなされ得る。
【0081】
経口投与用の液体製剤は、患者に受け入れられやすいように、着色剤および風味剤を含み得る。
【0082】
非経口溶液に用いる適切な担体は、一般的に、水、適切な油、生理食塩水、デキストロース(グルコース)水溶液、および関連糖溶液およびグリコール(例えば、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール)である。非経口投与用の溶液には、活性成分の水溶性塩、適切な安定化剤、および必要に応じて緩衝物質を含んでもよい。適切な安定化剤とは、例えば亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、またはアスコルビン酸を単体または組み合わせた抗酸化剤である。また、クエン酸およびその塩、ならびにEDTAナトリウムも用いられる。さらに、非経口溶液は、防腐剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、メチルパラベンまたはプロピルパラベン、およびクロロブタノール)を含み得る。
【0083】
適切な薬剤担体は、当該分野における標準的な参考文献であるRemington's Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company)に記載されている。
【0084】
本発明の化合物を投与するための有用な薬剤形態の代表例は以下に示される。
【0085】
カプセル
多数のユニットカプセルは、標準的なツーピースのハードゼラチンカプセルに粉末状活性成分(100mg)、ラクトース(150mg)、セルロース(50mg)、およびステアリン酸マグネシウム(6mg)をそれぞれ充填させることで調製され得る。
【0086】
ソフトゼラチンカプセル
活性成分(100mg)を含むソフトゼラチンカプセルを形成するために、可消化油(例えば、ダイズ油、綿実油またはオリーブ油)に活性成分を混合することで調製され、容積式ポンプを用いてゼラチン中に注入され得る。上記カプセルは洗浄および乾燥されるべきである。
【0087】
錠剤
錠剤は従来の工程に従って製造されてもよく、その配合剤は、活性成分(100mg)、コロイド状二酸化ケイ素(0.2mg)、ステアリン酸マグネシウム(5mg)、微結晶セルロース(275mg)、デンプン(11mg)およびラクトース(98.8mg)である。嗜好性を高めたり、吸収を遅らせるために適当なコーティングが施されてもよい。
【0088】
分散液
噴霧乾燥分散液は、当業者に知られる方法により、経口投与用に調製され得る。
【0089】
注射
注射による投与に適した非経口組成物は、10容積%のプロピレングリコール水溶液中で、1.5重量%の活性成分を撹拌して調製され得る。この溶液は、塩化ナトリウムで等浸透圧にされ、滅菌されるべきである。
【0090】
懸濁液
微粉化活性成分(100mg)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(200mg)、安息香酸ナトリウム(5mg)、ソルビトール溶液(1.0g、U.S.P.)、およびバニリン(0.025mL)が含まれるように各5mLの経口投与用の水溶性懸濁液が調製されてもよい。
【0091】
前述の2つ以上の第2治療剤が式Iの化合物の共結晶と共に投与される場合、一般に典型的な一日当たりの投薬量および剤形中の各成分量は、組み合わせて投与される添加剤または治療剤の相乗効果の観点から、単体で投与される場合の薬剤の常用量と比較して減量され得る。
【0092】
特に単一剤形として提供される場合、組み合わせた活性成分間での化学的相互作用が生じ得る。この理由により、化合物(I)の共結晶体および第2治療剤が単一剤形として混合された場合、単一剤形にするために活性成分が混合されても、活性成分間での物理的接触は最小化される(縮小される)ように製剤化される。例えば、1つの活性成分は腸溶コーティングがなされてもよい。活性成分の1つを腸溶コーティングすることにより、組み合わせた活性成分間の接触を最小限にすることだけではなく、成分の1つが、消化管のうち、胃ではなく腸で放出されるように制御することも可能になる。また活性成分の1つは、消化管中で徐放効果をもたらす何らかの物質でコーティングされてもよく、組み合わせた活性成分間の物理的接触を最小限に抑える役割も果たす。さらに徐放性成分は、成分の放出が腸でのみ起こるように、別の腸溶コーティングも施され得る。さらに別の方法として、成分の1つを徐放性および/または腸溶放出性ポリマーでコーティングし、さらに活性成分を分離させるためにその他の成分もポリマー(例えば、低粘度グレードのヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)または当業者に公知の他の適当な物質)でコーティングした、組み合わせ生成物の製剤を含む。上記ポリマーコーティングは、他の成分との相互作用をより妨げるための役割を果たす。
【0093】
単一剤形で投与するか別々の製剤を同時に同じ方法で投与するかに関わらず、本発明の組み合わせ生成物の成分間の接触を最小限に抑える上記の方法ならびに他の方法は、本開示を見れば当業者に容易に明らかであろう。
【0094】
上記に記載のように、式Iの化合物の共結晶体を含む本発明の化合物は、経口投与、静脈内投与、または両方で投与され得る。
【実施例】
【0095】
共結晶体は、例えば、適切な溶媒からの結晶化または再結晶、昇華、融液からの結晶成長、別の相からの固相変態、超臨界流体からの結晶化、およびジェット噴霧など、様々な方法で調製されてもよい。溶媒混合物からの共結晶体の結晶化または再結晶技術には、例えば、溶媒の蒸発、溶媒混合物の温度冷却、分子および/または塩の過飽和溶媒混合物への結晶播種、溶媒混合物の凍結乾燥、および溶媒混合物への貧溶媒(カウンター溶媒)の添加が挙げられる。
【0096】
溶媒選択を行う結晶化技術において、溶媒または混合溶媒の選択は一般に、1つ以上の因子(例えば、化合物の溶解度、結晶化方法、および溶媒の蒸気圧)に影響を受ける。混合溶媒は、例えば、化合物を第1溶媒に溶解して溶液を得て、続いて貧溶媒を加えて溶液中の化合物の溶解度を下げて結晶が形成され得るように用いられる。貧溶媒とは、化合物の溶解度が低い溶媒である。
【0097】
結晶を形成する方法の1つに、化合物を適切な溶媒中で懸濁および/または撹拌し、スラリーとする方法がある。これは、溶解を促進させるために加熱してもよい。本明細書で用いる用語「スラリー」は、化合物の飽和溶液を意味し、この溶液はまた、所定の温度で化合物および溶媒の不均一な混合物を得るために、さらに化合物を含み得る。
【0098】
結晶化を促進させるために、結晶化させる任意の混合物に種晶を加えてもよい。種晶の播種は、特定の多形体の成長または結晶性生成物の粒子径分布を制御するために用いられ得る。従って、算出される必要な種晶の量は、例えば、"Programmed Cooling of Batch Crystallizers," J.W. Mullin and J. Nyvlt, Chemical Engineering Science, 1971,26, 369-377に記載のように、用いる種晶の大きさおよび生成物粒子の所望の平均径により異なる。一般に、小さい径の種晶は混合物中の結晶の成長を効果的に制御する必要がある。小さい径の種晶は、大きな結晶のふるい分け、粉砕、または微小化、または溶液の微小結晶化により生成され得る。結晶の粉砕または微小化結晶化によって所望の結晶形が変化(すなわち、非晶質または別の多形体への変化)しないように注意する必要がある。
【0099】
冷却した結晶化混合物を真空濾過し、単離した固体を適切な溶媒(例えば、冷却再結晶溶媒)で洗浄し、窒素パージ下で乾燥し、所望の結晶形が得られてもよい。単離した固体は、適切なスペクトルまたは分析方法(例えば、固体核磁気共鳴、示差走査熱量測定、粉末X線回折など)で分析し、生成物の好ましい結晶体の形成が確認され得る。得られた結晶体は一般に、結晶化工程で用いられる元々の化合物に重量に対して約70重量%以上の単離収量、好ましくは90重量%以上の単離収量で精製される。得られた生成物は、必要に応じて生成物を解砕するために、共粉砕するかまたは篩にかけられてもよい。
【0100】
試料中に1つ以上の多形体が存在することは、様々な技法(例えば、粉末X線回折(PXRD)、またはラマンまたはIR分光測定、固体核磁気共鳴)により決定され得る。例えば、実験的に測定したPXRDパターンとシミュレーションのPXRDパターンとの比較における、余分なピークの存在は、試料中の1つ以上の多形体を示し得る。シミュレーションのPXRDは単結晶X線データから算出され得る。Smith, D.K., "A FORTRAN Program for Calculating X-Ray Powder Diffraction Patterns," Lawrence Radiation Laboratory, Livermore, California, UCRL-7196 (April 1963)を参照のこと。
【0101】
本発明に記載の式(I)の化合物の共結晶体は、操作が当業者に周知である様々な技法を用いて特徴付けられてもよい。その結晶形体は、固定した分析温度における形態の単結晶の単位格子測定に基づいた単結晶X線回折を用いて特徴付けられ、識別され得る。単位格子に関する詳細な説明は、Stout & Jensen, X-Ray Structure Determination: A Practical Guide, Macmillan Co., New York (1968), Chapter 3に記載されており、本文献は引用により本明細書に組み込まれる。別法として、結晶格子中の原子の特徴的な空間配置は、観測した分数の原子座標に従って特徴付けられ得る。結晶構造を特徴付ける別の手法には粉末X線回折分析がある。この分析では、同一の分析温度で測定した回折プロファイルを純粋な粉末物質を表すシミュレーションプロファイルと比較し、対象となる携帯の測定値を一連の2θの値(通常4つ以上)で特徴付ける。
【0102】
形体を特徴付ける他の方法として、例えば、固体核磁気共鳴(SSNMR)、示差走査熱量測定、熱重量分析およびFT-ラマンおよびFT-IRが用いられてもよい。また、これらの技法は対象の形体を特徴付けるために組み合わせて用いられてもよい。本明細書に記載の具体的な技法に加えて、その他の適切な分析方法により特定の結晶形の存在が決定されてもよい。
【実施例1】
【0103】
4-(4-(((6-メトキシ-2-(2-メトキシイミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾール-6-イル)ベンゾフラン-4-イル)オキシ)メチル)チアゾール-2-イル)-N,N-ジメチルベンズアミド:コハク酸共結晶(1:0.5)
ガラス容器(250mL)に、遊離形態の式(I)の化合物(2g、3.561mmol)、ジクロロメタン(100mL)およびメタノール(20mL)を加えた。この反応液を全て溶解するまで39℃に加熱した。コハク酸(0.45g、3.8mmol)を次いで1度に加えた。3日後、この溶液(50mL)をスラリーが形成されるまで蒸留した。酢酸エチル(70mL)を加えた。乾燥するまで揮発性溶媒を除去し、この反応混合物に酢酸エチル(100mL)をチャージし、反応液を12時間撹拌した。得られたスラリーを次いで濾過し、得られた固体を酢酸エチル(10mL)で洗浄した。この固体ををバキュームオーブン(30mmHg、50℃)で24時間乾燥し、式(I)の化合物コハク酸共結晶を得た。生成物を白色固体として得た(1.8g、収率41%、HPLCによる純度99.4%)。1H NMR(400MHz、DMSO-d6) δ 8.37 (s, 2H), 8.03 (s, 2H), 8.01 (s, 2H), 7.94 (s, 2H), 7.54 (d, J=7.8 Hz, 4H), 7.03 (s, 2H), 6.85 (dd, J=1.8, 0.8 Hz, 2H), 6.65 (d, J=1.8 Hz, 2H), 5.39 (s, 4H), 4.20 (s, 6H), 3.90 - 3.77 (m, 6H), 3.31 (s, 5H), 3.00 (br s, 6H), 2.94 (br s, 6H), 2.43 - 2.41 (m, 4H)
【0104】
コハク酸共結晶は、化学量論で式(I)の化合物1分子に対し、コハク酸を0.5分子有するか、または式(I)の化合物のヘミコハク酸塩を有する。
【0105】
式(I)の化合物のコハク酸共結晶のPXRDパターンは
図1に、示差走査熱量分析(DSC)は
図2に、および熱重量分析(TGA)は
図3に示される。
【0106】
式(I)の化合物のコハク酸共結晶のPXRDには、4.5、9.5、14.6、16.3、17.6、21.4、22.4および25.9から選択される2θのピークを含む(全てのピークは2θ±0.2°)。PXRDは、回転キャピラリーを備え、NISTまたは他の適切な標準試料でキャリブレーションした2θの回折計(CuKα)で回収したハイクオリティなパターンを基にした回折ピーク位置(2θ±0.2°)を室温で得た。
【0107】
また、上記コハク酸共結晶のPXRDは、4.5±0.2、9.5±0.2、14.6±0.2、16.3±0.2、17.6±0.2、21.4±0.2、22.4±0.2、および25.9±0.2から選択される2θの値を1つ以上、または4つ以上有する特徴がある。
【0108】
また、上記コハク酸共結晶のPXRDは、4.5±0.2、9.5±0.2、14.6±0.2、16.3±0.2、17.6±0.2、および25.9±0.2から選択される2θの値を4つ以上有する特徴がある。
【0109】
式(I)の化合物のコハク酸共結晶の単結晶X線から以下の結果を得た。
【表7】
【0110】
コハク酸共結晶の単結晶X線の原子座標を表1に示す。
【表8】
【0111】
コハク酸共結晶のDSCは約182℃で吸熱変化を示した。これは分解を伴う融解を表している。コハク酸共結晶のTGAは、150℃までの重量減少は無視できるほど小さいことを示した。
【0112】
FT-IRおよびFT-ラマンをそれぞれ
図4および5に示す。これらのスペクトルは、1700~3500cm
-1の範囲に特徴的なピークを示した。
【0113】
コハク酸共結晶のFT-ラマンスペクトルは、975.3、1185.0、1242.9、1455.6、および3104.4cm-1(±0.3cm-1)に特徴的なピークを有する。
【0114】
コハク酸共結晶のFT-IRスペクトルは、1627.9、1704.4、および3102.1cm-1(±0.4cm-1)に特徴的なピークを有する。
【実施例2】
【0115】
4-(4-(((6-メトキシ-2-(2-メトキシイミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾール-6-イル)ベンゾフラン-4-イル)オキシ)メチル)チアゾール-2-イル)-N,N-ジメチルベンズアミド:クエン酸共結晶(1:1)、N-1型
4-(4-(((6-メトキシ-2-(2-メトキシイミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾール-6-イル)ベンゾフラン-4-イル)オキシ)メチル)チアゾール-2-イル)-N,N-ジメチルベンズアミド(6.1g、11mmol、1.0当量)およびクエン酸(3.3g、18mmol、1.6当量)/酢酸エチル(210mL)の混合物を76℃で10時間加熱し、次いで室温にゆっくりと冷却し、16時間撹拌した。このスラリーを濾過し、EtOAc(80mL)で洗浄し、続いてケーキをオーブン中(55℃)で1日間真空乾燥し、N-1型のクエン酸共結晶を白色固体として得た(8.0g、収率98%)。
【0116】
別法
クエン酸(222.5g、1.16mol、1.3当量)にEtOAc(17L)を加え、55℃で2時間加熱し、無色溶液を得た。4-(4-(((6-メトキシ-2-(2-メトキシイミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾール-6-イル)ベンゾフラン-4-イル)オキシ)メチル)チアゾール-2-イル)-N,N-ジメチルベンズアミド(500.00g、0.89mol、1.0当量)、続いてEtOAc(1L)を加えた。この混合物を76℃で1時間かけて加熱した。4-(4-(((6-メトキシ-2-(2-メトキシイミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾール-6-イル)ベンゾフラン-4-イル)オキシ)メチル)チアゾール-2-イル)-N,N-ジメチルベンズアミドのクエン酸共結晶(1.0g、0.2wt%)/EtOAc(15mL)を種晶として加えた。この混合物をさらに30分間加熱し、次いでゆっくり2時間室温に冷却し、5時間撹拌した。スラリーを濾過し、EtOAc(3L)で2回洗浄し、続いてケーキをオーブン中(50℃)で3日間真空乾燥し、N-1型のクエン酸共結晶を白色固体として得た(663.7g、収率99%、純度99.8%)。
【0117】
N-1型の式(I)の化合物のクエン酸共結晶は、全てのクエン酸分子に対して式(I)の化合物を1分子有する(化学量論比1:1)。
【0118】
N-1型の式(I)の化合物のクエン酸共結晶のPXRDパターンは
図6に、DSCは
図7に、およびTGAは
図8に示される。
【0119】
N-1型の式(I)の化合物のクエン酸共結晶のPXRDには、6.4、12.7、14.4、17.1、23.9、25.0、および26.6から選択される2θのピークを含む(全てのピークは2θ±0.2°)。PXRDは、回転キャピラリーを備え、NISTまたは他の適切な標準試料でキャリブレーションした2θの回折計(CuKα)で回収したハイクオリティなパターンを基にした回折ピーク位置(2θ±0.2°)を室温で得た。
【0120】
N-1型の式(I)の化合物のクエン酸共結晶のPXRDには、6.4、12.7、14.4、および26.6から選択される2θのピークを含む(全てのピークは2θ±0.2°)。PXRDは、回転キャピラリーを備え、NISTまたは他の適切な標準試料でキャリブレーションした2θの回折計(CuKα)で回収したハイクオリティなパターンを基にした回折ピーク位置(2θ±0.2°)を室温で得た。
【0121】
また、N-1型のクエン酸共結晶のPXRDは、6.4±0.2、12.7±0.2、14.4±0.2、17.1±0.2、23.9±0.2、25.0±0.2、および26.6±0.2から選択される2θの値を1つ以上、または4つ以上有する特徴がある。
【0122】
また、N-1型のクエン酸共結晶のPXRDは、6.4±0.2、12.7±0.2、14.4±0.2、および26.6±0.2から選択される2θの値を4つ以上有する特徴がある。
【0123】
N-1型の式(I)の化合物のクエン酸共結晶の単結晶X線から以下の結果を得た。
【表9】
【0124】
N-1型のクエン酸共結晶の単結晶X線の原子座標を表3に示す。
【表10】
【表11】
【0125】
N-1型のクエン酸共結晶のDSCは約185~190℃で吸熱変化を示した。これは分解を伴う融解を表している。N-1型クエン酸共結晶のTGAでは、150℃までの重量減少は無視できるほど小さいことを示した。
【0126】
クエン酸共結晶のC-13固体NMR(C-13 SSNMR)で得られたピークを表4に示す。C-13 SSNMRは、Z'=2である。
【表12】
【0127】
N-1型のクエン酸共結晶のIRおよびラマン分光測定で得られたピークを
図9および
図11に示す。これらのスペクトルは、1700~3500cm
-1の範囲に特徴的なピークを示した。
【0128】
N-1型のクエン酸共結晶のFT-ラマンスペクトルは、755.3、807.7、982.1、1191.2、1367.8、1450.6、および2978.9cm-1(±0.3cm-1)の特徴的なピークを有する。
【0129】
N-1型のクエン酸共結晶のFT-IRスペクトルは、1585.7、1725.9、および3150.5cm-1(±0.4cm-1)の特徴的なピークを有する。
【実施例3】
【0130】
4-(4-(((6-メトキシ-2-(2-メトキシイミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾール-6-イル)ベンゾフラン-4-イル)オキシ)メチル)チアゾール-2-イル)-N,N-ジメチルベンズアミド:クエン酸共結晶(1:1)、N-2型
4-(4-(((6-メトキシ-2-(2-メトキシイミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾール-6-イル)ベンゾフラン-4-イル)オキシ)メチル)チアゾール-2-イル)-N,N-ジメチルベンズアミド(5.00g、8.9mmol、1当量)およびクエン酸(2.50g、13.4mmol、1.5当量)/EtOAc(200mL)の混合物を74℃で18時間加熱した。この混合物をゆっくりと室温に冷却し、3時間撹拌した。得られたスラリーを濾過し、EtOAc(20mL)で2回洗浄し、続いてバキュームオーブン中(55℃)でケーキを1日間乾燥させ、N-2型のクエン酸共結晶を針状白色固体として得た(6.5g、収率97%)。
【0131】
N-2型の式(I)の化合物のクエン酸共結晶は、全てのクエン酸分子に対して式(I)の化合物を1分子有する(1:1)。
【0132】
N-2型の式(I)の化合物のクエン酸共結晶のPXRDパターンは
図12に、DSCは
図13に、およびTGAは
図14に示される。
【0133】
N-2型の式(I)の化合物のクエン酸共結晶のPXRDは、4.6、14.6、16.4、21.0、および25.2から選択される2θのピークを含む(全てのピークは2θ±0.2°)。PXRDは、回転キャピラリーを備え、適切なNISTの標準試料でキャリブレーションした2θの回折計(CuKα)で回収したハイクオリティなパターンを基にした回折ピーク位置(2θ±0.2°)を室温で得た。
【0134】
N-2型の式(I)の化合物のクエン酸共結晶のPXRDには、4.6、5.5、8.4、11.3、14.6、16.4、21.0、24.2および25.2から選択される2θのピークを含む(全てのピークは2θ±0.2°)。PXRDは、回転キャピラリーを備え、適切なNISTの標準試料でキャリブレーションした2θの回折計(CuKα)で回収したハイクオリティなパターンを基にした回折ピーク位置(2θ±0.2°)を室温で得た。
【0135】
また、N-2型のクエン酸共結晶のPXRDは、4.6±0.2、5.5±0.2、8.4±0.2、11.3±0.2、14.6±0.2、16.4±0.2、21.0±0.2、24.2±0.2、および25.2±0.2から選択される2θの値を1つ以上、または4つ以上有する特徴がある。
【0136】
また、N-2型のクエン酸共結晶のPXRDは、4.6±0.2、14.6±0.2、16.4±0.2、21.0±0.2、および25.2±0.2から選択される2θの値を4つ以上有する特徴がある。
【0137】
N-2型の式(I)の化合物のクエン酸共結晶の単結晶X線から以下の結果を得た。
【表13】
【0138】
N-2型のクエン酸共結晶の単結晶X線の原子座標を表5に示す。
【表14】
【表15】
【表16】
【0139】
N-2型のクエン酸共結晶のDSCは約180℃で吸熱変化を示した。これは分解融解による変化を表していた。コハク酸共結晶のTGAは、150℃まで無視できるほどの重量減少を示した。
【0140】
本明細書に記載の共結晶の各分析データは、下記の方法を用いて得た。
【0141】
単結晶データ
本開示のクエン酸共結晶体は、MICROSTAR-H(単色CuKα線(λ=1.54178Å)のマイクロフォーカス回転アノードX線発生装置)を取り付けたX8 APEX II CCD回折計(Bruker)を室温で用いて回折データを収集した。コハク酸共結晶体は、単色CuKα線(λ=1.54178Å)のIμSマイクロフォーカスX線発生装置およびAPEX II検出器を取り付けたX8 Prospector Ultra回折計(Bruker)を室温で用いて回折データを収集した。測定した強度データのインデックス化および処理は、APEX2プログラムスイート(Bruker AXS, Inc., 5465 East Cheryl Parkway, Madison, WI 53711 USA)で行った。最終的な単位格子定数は、完全なデータセットを用いて決定した。構造を直接法で解析し、SHELXTLソフトウェアパッケージ(G. M. Sheldrick, SHELXTL v6.14, Bruker AXS, Madison, WI USA)を用いて完全行列最小二乗法による精密化を行った。構造の精密化には、Σw(|Fo|-|Fc|)2で定義される関数を最小化することが含まれる。ここでwは、観測した強度の誤差を基にした適当な重み因子であり、Foは、実測の散乱を基にした構造因子であり、およびFcは、理論値の散乱を基にした構造因子である。精密化結晶構造モデルおよび実験X線回折データ間の一致を、R因子=Σ||Fo|-|Fc||/Σ|Fo|およびwR=[Σw(|Fo|-|Fc|)2/Σw|Fo|]1/2を用いて評価する。精密化の全ての段階で差フーリエマップを行った。全ての非水素原子を、異方性熱変位パラメーターで精密化した。一般的な水素原子は理論上の幾何学を用いて算出し、等方的に精密化し、構造因子計算に固定パラメーターと共に組み込んだ。共結晶構造中のコハク酸の酸性の水素原子などの例外的な水素原子は差フーリエマップから特定し、等方的に精密化した。
【0142】
PXRD
PXRDデータは、Bruker C2 GADDS(一般領域検出回折システム)を用いて得た。放射線はCuKα(40KV、40mA)であった。試料から検出器の距離は15cmであった。試料を密封したガラスキャピラリー(直径≦1mm)中に入れた。該キャピラリーを、データ収集中に回転させた。少なくとも1000秒の試料露出時間で、約2≦2θ≦32度におけるデータを収集した。得られた二次元回折アークを統合し、0.05度ごとの2θの刻み幅で、およそ2~32度の2θの範囲の従来の一次元PXRDパターンを作成した。
【0143】
DSC
TA INSTRUMENTS(登録商標)のモデルQ2000、Q1000、または2920を用いてDSCデータを作成した。TA Instrumentsの標準気密パンを用いて測定した。約2~10mgの試料を10℃/分の加熱速度で、窒素雰囲気下、室温~300℃の間測定した。DSCプロットは吸熱ピークが下を向くように作成した。
【0144】
TGA
TA INSTRUMENTS(登録商標)のモデルQ5000、Q500、または2950を用いてTGAデータを作成した。TA Instrumentsの標準白金製パンを用いて測定した。約10~30mgの試料を10℃/分の加熱速度で、窒素雰囲気下、室温~300℃の間測定した。
【0145】
固体核磁気共鳴(SSNMR)
全ての固体C-13 NMRは、DSX-400(Bruker、400MHz NMRスペクトロメーター)で測定した。高分解能スペクトルは、高出力プロトンデカップリングおよびTPPMパルスシークエンスおよびランプ振幅交差分極(RAMP-CP)を用いて約12kHzでマジック角回転(MAS)させて得られた(A.E. Bennett et al, J. Chem. Phys.,1995, 103, 6951; G. Metz, X. Wu and S.O. Smith, J. Magn. Reson. A,. 1994, 110, 219-227)。各実験には、キャニスター形式のジルコニア製ローターに充填した約70mgの試料を用いた。化学シフト(δ)は、高周波アダマンタンピークを38.56ppmに設定して外部基準とした(W.L. Earl and D.L. VanderHart, J. Magn. Reson., 1982, 48, 35-54)。
【0146】
ラマン分光法
ラマンスペクトルをIS50 FT-ラマン分光光度計を用いて、分解能4cm-1、積算回数64回で得た。レーザー励起波長は1064nmであった。CaF2ビームスプリッターおよび高感度InGaS検出器を用いた。
【0147】
IR分光法
赤外線スペクトルを、KBrビームスプリッターおよびDTGS検出器を組み込んだIS50 FT-IR分光光度計を用いて、分解能4cm-1、積算回数64回で得た。試料調製は、一回反射型ダイアモンドATRサンプリングアクセサリーを用いて全反射測定法(ATR)で行った。ATRの補正には、光路長の補正が含まれた。
【0148】
溶解度データ
N-1型の式(I)の化合物のクエン酸共結晶およびコハク酸共結晶の溶解度について、式(I)の化合物の遊離形態と比較試験を行った。溶解特性、比率および限度、および最大溶解度を、FaSSIF(絶食時人工腸液)を用いて試験した。
【0149】
この測定は、生体関連溶媒中の実時間溶解プロファイルを測定するために、UVファイバー光学(UVFO)プローブが取り付けられた、APIを節約する低容量の溶解装置である、pION Microdissolution ProfilerTMを用いて行われた。以下の条件で実験を行った。
機器: pIon Microdissolution profiler
溶媒: FaSSIF(pH 6.5)
体積: 15mL(37℃)
撹拌: 小撹拌子で150rpm
用量: API粉末(0.2mg/mLまたは3mg/バイアル)
試験時間: 180分
測定間隔: 初めの溶解速度および(典型的な吸収時間である)180分間の溶解速度を把握するために複数回測定
【0150】
結果はUVFO分析(検量線範囲 0~3μg/mL; 光路長10mmのプローブウィンドウ;検出波長 315nm;スロープ ~17μg/mL/AU; R
2=0.99)を用いて分析した。結果を下記の
図15、および表6に示す。
【0151】
FaSSIF中での上記コハク酸およびクエン酸共結晶の溶解度は、いずれも遊離形態より良好であった。クエン酸共結晶は、コハク酸共結晶と比較して、3~4倍の溶解速度の速さ、AUC(溶解の程度)、および溶解度ピークであった。
【産業上の利用可能性】
【0152】
インビボでの性能
上記共結晶の吸収量を実証するために、薬物動態試験をイヌモデルで行った。共結晶は以下の製剤を用いて試験した。
1. コハク酸共結晶カプセル(用量5mg)-ペンタガストリンで予め処理、絶食時のイヌ
2. クエン酸共結晶カプセル(用量5mg)-ペンタガストリンで予め処理、絶食時のイヌ
試験計画は以下:
絶食時の4匹の雄イヌ(~10kg)に対してクロスオーバー法 ;用量 5mg/イヌ ;50mLの水で流し込む ;治療中2週間休薬 ;血液サンプル 8回/治療。
この結果を表7、および
図16に示す。
【0153】
上記クエン酸共結晶およびコハク酸共結晶は、イヌモデルにおいて適切な投薬量で測定可能な体内吸収を示した。バイオアベイラビリティは、吸収率の高い基準製剤と比較して32~55%の範囲であった。
【0154】
共結晶カプセルのPK変動性(CV%)は両方とも高かったが、これは主に1匹のイヌが非常に低い/検出不能な血中濃度を示したためである。
【0155】
上記の教示を踏まえると、本発明の多数の変更および変形が可能である。それ故本発明は、添付の請求項の範囲内で、具体的に本明細書に記載の方法以外で実施され得ると理解されるべきである。
【0156】
表6: 式(I)の化合物の共結晶および遊離体の溶解
【表17】
* 遊離体の値は全て検出限界値より低く、シグナル無し。
AUC - 時間曲線下面積(台形公式で計算)
SD - 標準偏差
CV - 変動係数
クエン酸共結晶 - N-1型
【0157】
表7: 薬物動態パラメーター
【表18】
Cmax - 経時プロファイルにおける最高血中濃度
AUC - 0~24時間の時間曲線下面積
BA - 吸収率の高い基準製剤と比較したバイオアベイラビリティ
CV - 変動係数
SD - 標準偏差
クエン酸共結晶 - N-1型