(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
A01D 41/12 20060101AFI20240416BHJP
A01F 12/46 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
A01D41/12 N
A01F12/46
(21)【出願番号】P 2022081988
(22)【出願日】2022-05-19
(62)【分割の表示】P 2020192381の分割
【原出願日】2016-08-02
【審査請求日】2022-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(72)【発明者】
【氏名】猶原 康裕
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-049092(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0014476(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 41/12
A01F 12/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀部と、
穀物タンクと、
燃料タンクと、
前記燃料タンクを下方から支持する支持フレームと、
前記穀物タンクから穀物を排出する穀物排出装置と、
左右方向に延設され、前記穀物排出装置の縦送りオーガを下方から支持する後部左右フレームと、を備え、
前記支持フレームは、平面視において前記燃料タンクの前端から後端にわたって前記燃料タンクと重なる位置に配置されており、
前記
後部左右フレームは、前記支持フレームに連結される左右方向に延設されるフレームのうち最後尾に位置する、
コンバイン。
【請求項2】
前記支持フレームの下端は、前記後部左右フレームの下端よりも下方に位置する、
請求項1に記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、コンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジン及び燃料タンクを搭載した走行機体の前方に刈取部が連結され、扱胴を備えた脱穀部と穀物を貯留する穀物タンクが走行機体上に左右に並設されているコンバインはよく知られている(特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-24481号公報
【文献】特許第4622870号公報
【文献】特許第4861108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1~3に示された従来技術では、燃料タンクが走行機体後部に配置されており、機体の後方から衝撃が加わった際に、燃料タンクが破損するおそれがあった。
【0005】
本願発明は、燃料タンクが破損することを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様に係るコンバインは、脱穀部と、穀物タンクと、燃料タンクと、支持フレームと、を備える。前記穀物タンクは、前記脱穀部と横並びの状態で配置されている。前記燃料タンクは、前記脱穀部と前記穀物タンクとの間に配置される。前記支持フレームは、前記燃料タンクを下方から支持する。前記支持フレームは、平面視において前記燃料タンクの前端から後端にわたって前記燃料タンクと重なる位置に配置されている。
【発明の効果】
【0007】
燃料タンクが破損することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態を示すコンバインの左側面図である。
【
図5】斜め前方から見たコンバインの斜視図である。
【
図8】エンジンルーム及び脱穀部の構成を示す正面図である。
【
図9】作業系油圧回路の構成を示す油圧回路図である。
【
図10】作業系油圧回路の構成を示す斜視図である。
【
図13】エンジンルーム及び脱穀部の構成を示す平面断面図である。
【
図14】油圧回路部品の配置構成を示す正面図である。
【
図15】走行系油圧回路の構成を示す油圧回路図である。
【
図18】コンバイン後部を一部断面で示す平面図である。
【
図19】斜め後方から見たコンバイン後部の斜視図である。
【
図20】下方側から見た燃料タンクの斜視図である。
【
図22】走行機体を一部切り欠いて示す燃料タンク周辺の斜視図である。
【
図24】第1燃料タンクを一部切り欠いて示す斜視図である。
【
図25】第2燃料タンクを断面で示す背面図である。
【
図26】第2燃料タンクを断面で示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本願発明を具体化した実施形態を、普通型コンバインに適用した図面(
図1~
図10)に基づいて説明する。
図1はコンバインの左側面図、
図2は同右側面図、
図3は同平面図である。まず、
図1~
図3を参照しながら、コンバインの概略構造について説明する。なお、以下の説明では、走行機体1の前進方向に向かって左側を単に左側と称し、同じく前進方向に向かって右側を単に右側と称する。
【0010】
図1~
図3に示す如く、実施形態における普通型コンバインは、走行部としてのゴムクローラ製の左右一対の履帯2にて支持された走行機体1を備える。走行機体1の前部には、稲(又は麦又は大豆又はトーモロコシ)等の未刈り穀稈を刈取りながら取込む刈取部3が単動式の昇降用油圧シリンダ4にて昇降調節可能に装着されている。
【0011】
走行機体1の左側には、刈取部3から供給された刈取穀稈を脱穀処理するための脱穀部9を搭載する。脱穀部9の下部には、揺動選別及び風選別を行うための穀粒選別機構10を配置する。走行機体1の前部右側には、オペレータが搭乗する運転台5を搭載する。動力源としてのエンジン7を、運転台5(運転座席42の下方)に配置する。運転台5の後方(走行機体1の右側)には、脱穀部9から穀粒を取出すグレンタンク6と、トラック荷台(またはコンテナなど)に向けてグレンタンク6内の穀粒を排出する穀粒排出コンベヤ8を配置する。穀粒排出コンベヤ8を機外側方に傾倒させて、グレンタンク6内の穀粒を穀粒排出コンベヤ8にて搬出するように構成している。
【0012】
刈取部3は、脱穀部9前部の扱口9aに連通したフィーダハウス11と、フィーダハウス11の前端に連設された横長バケット状の穀物ヘッダー12とを備える。穀物ヘッダー12内に掻込みオーガ13(プラットホームオーガ)を回転可能に軸支する。掻込みオーガ13の前部上方にタインバー付き掻込みリール14を配置する。穀物ヘッダー12の前部にバリカン状の刈刃15を配置する。穀物ヘッダー12前部の左右両側に左右の分草体16を突設する。また、フィーダハウス11に供給コンベヤ17を内設する。供給コンベヤ17の送り終端側(扱口9a)に刈取り穀稈投入用ビータ18(フロントロータ)を設ける。なお、フィーダハウス11の下面部と走行機体1の前端部とが昇降用油圧シリンダ4を介して連結され、後述する刈取入力軸89(フィーダハウスコンベヤ軸)を昇降支点として、刈取部3が昇降用油圧シリンダ4にて昇降動する。
【0013】
上記の構成により、左右の分草体16間の未刈り穀稈の穂先側が掻込みリール14にて掻込まれ、未刈り穀稈の稈元側が刈刃15にて刈取られ、掻込みオーガ13の回転駆動によって、穀物ヘッダー12の左右幅の中央部寄りのフィーダハウス11入口付近に刈取穀稈が集められる。穀物ヘッダー12の刈取穀稈の全量は、供給コンベヤ17によって搬送され、ビータ18によって脱穀部9の扱口9aに投入されるように構成している。なお、穀物ヘッダー12を水平制御支点軸回りに回動させる水平制御用油圧シリンダ(図示省略)を備え、穀物ヘッダー12の左右方向の傾斜を前記水平制御用油圧シリンダにて調節して、穀物ヘッダー12、及び刈刃15、及び掻込みリール14を圃場面に対して水平に支持することも可能である。
【0014】
また、
図1、
図3に示す如く、脱穀部9の扱室内に扱胴21を回転可能に設ける。走行機体1の前後方向に延長させた扱胴軸20(
図4参照)に扱胴21を軸支する。扱胴21の下方側には、穀粒を漏下させる受網24を張設する。なお、扱胴21前部の外周面には、螺旋状のスクリュー羽根状の取込み羽根25が半径方向外向きに突設されている。
【0015】
上記の構成により、ビータ18によって扱口9aから投入された刈取穀稈は、扱胴21の回転によって走行機体1の後方に向けて搬送されながら、扱胴21と受網24との間などにて混練されて脱穀される。受網24の網目よりも小さい穀粒等の脱穀物は受網24から漏下する。受網24から漏下しない藁屑等は、扱胴21の搬送作用によって、脱穀部9後部の排塵口23から圃場に排出される。
【0016】
なお、扱胴21の上方側には、扱室内の脱穀物の搬送速度を調節する複数の送塵弁(図示省略)を回動可能に枢着する。前記送塵弁の角度調整によって、扱室内の脱穀物の搬送速度(滞留時間)を、刈取穀稈の品種や性状に応じて調節できる。一方、脱穀部9の下方に配置された穀粒選別機構10として、グレンパン、チャフシーブ、グレンシーブ及びストローラック等を有する比重選別用の揺動選別盤26を備える。
【0017】
また、穀粒選別機構10として、揺動選別盤26に選別風を供給する送風ファン状の唐箕29等を備える。扱胴21にて脱穀されて受網24から漏下した脱穀物は、揺動選別盤26の比重選別作用と送風ファン状の唐箕29の風選別作用とにより、穀粒(精粒等の一番物)、穀粒と藁の混合物(枝梗付き穀粒等の二番物)、及び藁屑等に選別されて取出されるように構成する。
【0018】
揺動選別盤26の下側方には、穀粒選別機構10として、一番コンベヤ機構30及び二番コンベヤ機構31を備える。揺動選別盤26及び送風ファン状の唐箕29の選別によって、揺動選別盤26から落下した穀粒(一番物)は、一番コンベヤ機構30及び揚穀コンベヤ32によってグレンタンク6に収集される。穀粒と藁の混合物(二番物)は、二番コンベヤ機構31及び二番還元コンベヤ33等を介して揺動選別盤26の選別始端側に戻され、揺動選別盤26によって再選別される。藁屑等は、走行機体1後部の排塵口23から圃場に排出されるように構成する。
【0019】
さらに、
図1~
図3に示す如く、運転台5には、操縦コラム41と、オペレータが座乗する運転座席42とを配置している。操縦コラム41には、エンジン7の回転数を調節するアクセルレバー40と、オペレータの回転操作にて走行機体1の進路を変更する丸形状の操縦ハンドル43と、走行機体1の移動速度を切換える主変速レバー44及び副変速レバー45と、刈取部3を駆動または停止操作する刈取クラッチレバー46と、脱穀部9を駆動または停止操作する脱穀クラッチレバー47が配置されている。また、グレンタンク6の前部上面側にサンバイザー支柱48を介して日除け用の屋根体49を取付け、日除け用の屋根体49にて運転台5の上方側を覆うように構成している。
【0020】
図1、
図2に示す如く、走行機体1の下面側に左右のトラックフレーム50を配置している。トラックフレーム50には、履帯2にエンジン7の動力を伝える駆動スプロケット51と、履帯2のテンションを維持するテンションローラ52と、履帯2の接地側を接地状態に保持する複数のトラックローラ53と、履帯2の非接地側を保持する中間ローラ54とを設けている。駆動スプロケット51によって履帯2の前側を支持させ、テンションローラ52によって履帯2の後側を支持させ、トラックローラ53によって履帯2の接地側を支持させ、中間ローラ54によって履帯2の非接地側を支持させるように構成する。
【0021】
次に、
図4~
図8を参照してコンバインの駆動構造を説明する。
図4及び
図7に示す如く、油圧直進ポンプ64a及び油圧直進モータ64bを有する走行変速用の直進油圧式無段変速機64をミッションケース63に設ける。走行機体1前部の右側上面にエンジン7を搭載し、エンジン7左側の走行機体1前部にミッションケース63を配置している。エンジン7から左側方に突出させた出力軸65と、ミッションケース63から左側方に突出させたミッション入力軸66を、エンジン出力ベルト67、エンジン出力プーリ68及びミッション入力プーリ69を介して連結している。
【0022】
また、油圧旋回ポンプ70a及び油圧旋回モータ70bを有する操舵用の旋回油圧式無段変速機70をミッションケース63に設け、ミッション入力軸66を介して直進油圧式無段変速機64と旋回油圧式無段変速機70にエンジン7の出力を伝達させる一方、操縦ハンドル43と主変速レバー44及び副変速レバー45にて、直進油圧式無段変速機64と旋回油圧式無段変速機70を出力制御し、直進油圧式無段変速機64と旋回油圧式無段変速機70を介して左右の履帯2を駆動し、圃場内などを走行移動するように構成している。
【0023】
さらに、
図4~
図6及び
図8に示す如く、扱胴軸20の前端側を軸支する扱胴駆動ケース71を備える。脱穀部9の前面側に扱胴駆動ケース71を配置する。前記刈取部3と扱胴21を駆動するための扱胴入力軸72を扱胴駆動ケース71に軸支する。また、脱穀部9の左右に貫通させる一定回転軸としての主カウンタ軸76を備える。主カウンタ軸76の右側端部に作業部入力プーリ83を設けている。エンジン7の出力軸65上のエンジン出力プーリ68に、テンションローラを兼用した脱穀クラッチ84と作業部駆動ベルト85を介して、主カウンタ軸76の右側端部を連結している。
【0024】
扱胴21の前方に、走行機体1左右向きに延設された扱胴入力軸72と、走行機体1左右向きに配置されたビータ18と、走行機体1左右向きに延設された刈取入力軸89を設けている。扱胴入力軸72に主カウンタ軸76の駆動力を伝達する扱胴入力機構90として、扱胴駆動プーリ86,87と扱胴駆動ベルト88を備え、エンジン7からの駆動力が伝達される主カウンタ軸76のエンジン7側一端部に扱胴入力機構90(扱胴駆動プーリ86,87と扱胴駆動ベルト88)を配置し、エンジン7の一定回転出力にて扱胴21を一定回転駆動するように構成している。
【0025】
主カウンタ軸76の駆動力をビータ軸82及び刈取入力軸89に伝達するビータ駆動機構及び刈取駆動機構が、主カウンタ軸76の他端部側に設けられている。また、ビータ軸82と主カウンタ軸76との間に副カウンタ軸104が配置されており、主カウンタ軸76及び副カウンタ軸104に設けた動力中継プーリ105,106に、動力中継ベルト113が巻回されて、刈取駆動機構へ動力を伝達する動力中継機構を構成している。
【0026】
副カウンタ軸104及びビータ軸82それぞれに設けた刈取り駆動プーリ107,108に刈取り駆動ベルト114が巻回されて、ビータ駆動機構を構成している。そして、刈取り駆動ベルト114が、テンションローラを兼用した刈取クラッチ109により張設されることで、主カウンタ軸76に伝達されたエンジン7からの回転動力が動力中継機構及びビータ駆動機構を介してビータ軸82に入力される。また、ビータ18が軸支されたビータ軸82から、刈取駆動チェン115とスプロケット116,117を介して刈取入力軸89にエンジン7からの刈取駆動力を伝達させるように、刈取駆動機構が構成されている。これにより、刈取部3が、ビータ18と共にエンジン7の一定回転出力にて一定回転駆動する。
【0027】
送風ファン状の唐箕29の回転軸である唐箕軸100が、中空の管形状を有しており、唐箕軸100の中空部分に主カウンタ軸76が内挿されている。すなわち、主カウンタ軸76と唐箕軸100とで二重軸構造を有しており、主カウンタ軸76と唐箕軸100とは互いに相対回転可能に軸支されている。また、副カウンタ軸104及び唐箕軸100それぞれに設けた唐箕駆動プーリ101,102に唐箕駆動ベルト103が巻回されて、唐箕駆動機構を構成している。従って、主カウンタ軸76に伝達されたエンジン7からの回転動力が動力中継機構及び唐箕駆動機構を介してビータ軸82に入力され、唐箕29がエンジン7の一定回転出力にて一定回転駆動する。
【0028】
さらに、脱穀部9の機筐体9bは、走行機体1上面側のうち、脱穀機筐支柱34前部の上面側に刈取り支持枠体36を設置している。刈取り支持枠体36の前面右側に刈取り軸受体37を取付け、刈取り支持枠体36の前面左側に後述する正逆転切換ケース121を取付けている。そして、刈取り軸受体37と正逆転切換ケース121を介して、刈取り支持枠体36の前面側に刈取入力軸89を走行機体1左右向きに回動可能に軸支すると共に、刈取り支持枠体36の内部にビータ軸受体38を介して左右向きのビータ軸82(ビータ18)を回動可能に軸支している。また、刈取り支持枠体36の上面側に扱胴駆動ケース71を取付け、扱胴駆動ケース71に扱胴入力軸72を軸支している。
【0029】
一方、フィーダハウス11内の供給コンベヤ17を駆動する左右向きの刈取入力軸89を備える。エンジン7から主カウンタ軸76におけるエンジン7側一端部に伝達された刈取駆動力を、エンジン7とは反対側となる主カウンタ軸76の他端部から、刈取正逆転切換ケース121の正逆転伝達軸122に伝達させる。刈取正逆転切換ケース121の正転用ベベルギヤ124または逆転用ベベルギヤ125を介して刈取入力軸89を駆動する。
【0030】
また、脱穀部9前側に左右向きの扱胴入力軸72が設けられ、エンジン7から主カウンタ軸76におけるエンジン7側一端部に伝達された駆動力が、扱胴入力軸72におけるエンジン7側一端部に伝達される。また、脱穀部9前側に設けた扱胴入力軸72が、走行機体1左右向きに配置される一方、走行機体1前後向きに配置する扱胴軸20に扱胴21が軸支されている。そして、扱胴入力軸72におけるエンジン7とは反対側となる左右他端部にベベルギヤ機構75を介して扱胴軸20前端側が連結されている。主カウンタ軸76におけるエンジン7とは反対側となる左右他端部から、脱穀後の穀粒を選別する穀粒選別機構10または刈取部3にエンジン7の駆動力を伝達させるよう構成している。
【0031】
即ち、エンジン7に近い側の主カウンタ軸76の右側端部に、扱胴駆動プーリ86,87と扱胴駆動ベルト88を介して、扱胴入力軸72の右側端部を連結する。左右方向に延設した扱胴入力軸72の左側端部に、ベベルギヤ機構75を介して扱胴軸20の前端側を連結する。主カウンタ軸76の右側端部から扱胴入力軸72を介して扱胴軸20の前端側にエンジン7の動力を伝達させ、扱胴21を一方向に回転駆動させるように構成している。一方、主カウンタ軸76の左側端部から、脱穀部9下方に配置した穀粒選別機構10に、エンジン7の駆動力を伝達させるよう構成している。
【0032】
さらに、一番コンベヤ機構30の一番コンベヤ軸77の左側端部と、二番コンベヤ機構31の二番コンベヤ軸78の左側端部とに、コンベヤ駆動ベルト111を介して主カウンタ軸76の左側端部を連結している。揺動選別盤26後部を軸支したクランク状の揺動駆動軸79の左側端部に揺動選別ベルト112を介して二番コンベヤ軸78の左側端部を連結している。即ち、オペレータの脱穀クラッチレバー47操作によって、脱穀クラッチ84が入り切り制御される。脱穀クラッチ84の入り操作によって、穀粒選別機構10の各部と扱胴21が駆動されるように構成している。
【0033】
なお、一番コンベヤ軸77を介して揚穀コンベヤ32が駆動されて、一番コンベヤ機構30の一番選別穀粒がグレンタンク6に収集される。また、二番コンベヤ軸78を介して二番還元コンベヤ33が駆動されて、二番コンベヤ機構31の藁屑が混在した二番選別穀粒(二番物)が揺動選別盤26の上面側に戻される。また、排塵口23に藁屑飛散用のスプレッダ(図示省略)を設ける構造では、スプレッダ駆動プーリ(図示省略)とスプレッダ駆動ベルト(図示省略)を介して、前記スプレッダに主カウンタ軸76の左側端部を連結する。
【0034】
供給コンベヤ17の送り終端側を軸支するコンベヤ入力軸としての刈取入力軸89を備える。穀物ヘッダー12の右側部背面側にヘッダー駆動軸91を回転自在に軸支する。ビータ軸82の左側端部に刈取駆動チェン115及びスプロケット116,117を介して、正逆転伝達軸122の左側端部を連結し、刈取入力軸89が正逆転切換ケース121を介して正逆転伝達軸122と連結している。また、ヘッダー駆動チェン118及びスプロケット119,120を介して、左右方向に延設したヘッダー駆動軸91の左側端部に、刈取入力軸89の右側端部を連結する。掻込みオーガ13を軸支する掻込み軸93を備える。掻込み軸93の右側部分に、掻込み駆動チェン92を介してヘッダー駆動軸91の中間部を連結している。
【0035】
また、掻込みリール14を軸支するリール軸94を備える。リール軸94の右側端部に、中間軸95及びリール駆動チェン96,97を介して掻込み軸93の右側端部を連結している。ヘッダー駆動軸91の右側端部には、刈刃駆動クランク機構98を介して刈刃15が連結されている。刈取クラッチ109の入り切り操作によって、供給コンベヤ17と、掻込みオーガ13と、掻込みリール14と、刈刃15が駆動制御されて、圃場の未刈り穀稈の穂先側を連続的に刈取るように構成している。
【0036】
なお、正逆転伝達軸122に一体形成する正転用ベベルギヤ124と、刈取入力軸89に回転自在に軸支する逆転用ベベルギヤ125と、正転用ベベルギヤ124に逆転用ベベルギヤ125を連結させる中間ベベルギヤ126を、正逆転切換ケース121に内設する。正転用ベベルギヤ124と逆転用ベベルギヤ125に中間ベベルギヤ126を常に歯合させる。一方、刈取入力軸89にスライダ127をスライド自在にスプライン係合軸支する。爪クラッチ形状の正転クラッチ128を介して正転用ベベルギヤ124にスライダ127を係脱可能に係合可能に構成すると共に、爪クラッチ形状の逆転クラッチ129を介して逆転用ベベルギヤ125にスライダ127を係脱可能に係合可能に構成している。
【0037】
また、スライダ127を摺動操作する正逆転切換軸123を備え、正逆転切換軸123に正逆転切換アーム130を設け、正逆転切換レバー212(正逆転操作具)操作にて正逆転切換アーム130を揺動させて、正逆転切換軸123を回動し、正転用ベベルギヤ124または逆転用ベベルギヤ125にスライダ127を接離させ、正転クラッチ128または逆転クラッチ129を介して正転用ベベルギヤ124または逆転用ベベルギヤ125にスライダ127を択一的に係止し、正逆転伝達軸122に刈取入力軸89を正転連結または逆転連結させるように構成している。
【0038】
供給コンベヤ17を正転駆動または逆転駆動する正逆転切換機構としての正逆転切換ケース121を備える構造であって、ビータ軸82に正逆転切換ケース121を介して供給コンベヤ17を連結している。したがって、正逆転切換ケース121の逆転切換操作にてフィーダハウス11の供給コンベヤ17などを逆転させることができ、フィーダハウス11内などの詰り藁を速やかに除去できる。
【0039】
テンションプーリ状のオーガクラッチ156及びオーガ駆動ベルト157を介して、エンジン7の出力軸65にオーガ駆動軸158の右側端部を連結する。オーガ駆動軸158の左側端部にベベルギヤ機構159を介してグレンタンク6底部の横送りオーガ160前端側を連結する。横送りオーガ160の後端側にベベルギヤ機構161を介して穀粒排出コンベヤ8の縦送りオーガ162を連結し、縦送りオーガ162の上端側にベベルギヤ機構163を介して穀粒排出コンベヤ8の穀粒排出オーガ164を連結する。また、オーガクラッチ156を入り切り操作する穀粒排出レバー155を備える。運転座席42後方であってグレンタンク6前面に穀粒排出レバー155を取付け、運転座席42側からオペレータが穀粒排出レバー155を操作可能に構成している。
【0040】
次に、
図4及び
図7などを参照して、ミッションケース63等の動力伝達構造を説明する。
図4及び
図7などに示す如く、ミッションケース63に、1対の直進ポンプ64a及び直進モータ64bを有する直進(走行主変速)用の油圧式無段変速機64と、1対の旋回ポンプ70a及び旋回モータ70bを有する旋回用の油圧式無段変速機70とを設ける。直進ポンプ64a及び旋回ポンプ70aの各ポンプ軸258,259に、ミッションケース63のミッション入力軸66をそれぞれギヤ連結させて駆動するように構成している。ミッション入力軸66上のミッション入力プーリ69にエンジン出力ベルト67を掛け回している。ミッション入力プーリ69にエンジン出力ベルト67を介してエンジン7の出力を伝達し、直進ポンプ64a及び旋回ポンプ70aを駆動する。
【0041】
エンジン7の出力軸65から出力される駆動力は、エンジン出力ベルト67及びミッション入力軸66を介して、直進ポンプ64aのポンプ軸258及び旋回ポンプ70aのポンプ軸259にそれぞれ伝達される。直進油圧式無段変速機64では、ポンプ軸258に伝達された動力にて、直進ポンプ64aから直進モータ64bに向けて作動油が適宜送り込まれる。同様に、旋回油圧式無段変速機70では、ポンプ軸259に伝達された動力にて、旋回ポンプ70aから旋回モータ70bに向けて作動油が適宜送り込まれる。
【0042】
なお、ポンプ軸259には、各油圧ポンプ64a,70a及び各油圧モータ64b,70bに作動油を供給するための変速機チャージポンプ151が取付けられている。直進油圧式無段変速機64は、操縦コラム41に配置された主変速レバー44や操縦ハンドル43の操作量に応じて、直進ポンプ64aにおける回転斜板の傾斜角度を変更調節して、直進モータ64bへの作動油の吐出方向及び吐出量を変更することにより、直進モータ64bから突出した直進用モータ軸260の回転方向及び回転数を任意に調節するように構成されている。
【0043】
直進用モータ軸260の回転動力は、直進伝達ギヤ機構250から副変速ギヤ機構251に伝達される。副変速ギヤ機構251は、副変速シフタ252,253によって切換える副変速低速ギヤ254及び副変速中速ギヤ255及び副変速高速ギヤ256を有する。操縦コラム41に配置された副変速レバー45の操作にて、直進用モータ軸260の出力回転数を低速又は中速又は高速という3段階の変速段に択一的に切換えるように構成している。なお、副変速の低速と中速と高速との間には、中立位置(副変速の出力が零になる位置)を有している。
【0044】
副変速ギヤ機構251の出力側に設けられた駐車ブレーキ軸265(副変速出力軸)には、ドラム式の駐車ブレーキ266が設けられている。副変速ギヤ機構251からの回転動力は、駐車ブレーキ軸265に固着された副変速出力ギヤ267から左右の差動機構257に伝達される。左右の差動機構257には、遊星ギヤ機構268をそれぞれ備えている。また、駐車ブレーキ軸265上に直進用パルス発生回転輪体292を設け、図示しない直進車速センサによって、直進出力の回転数(直進車速=副変速出力ギヤ267の変速出力)を検出するように構成している。
【0045】
左右各遊星ギヤ機構268は、1つのサンギヤ271と、サンギヤ271に噛合う複数の遊星ギヤ272と、遊星ギヤ272に噛合うリングギヤ273と、複数の遊星ギヤ272を同一円周上に回転可能に配置するキャリヤ274とをそれぞれ備えている。左右の遊星ギヤ機構268のキャリヤ274は、同一軸線上において適宜間隔を設けて相対向させて配置されている。左右のサンギヤ271が設けられたサンギヤ軸275にセンタギヤ276を固着している。
【0046】
左右の各リングギヤ273は、その内周面の内歯を複数の遊星ギヤ272に噛合わせた状態で、サンギヤ軸275に同心状に配置されている。また、左右の各リングギヤ273外周面の外歯は、後述する左右旋回出力用の中間ギヤ287,288を介して、操向出力軸285に連結させている。各リングギヤ273は、キャリヤ274の外側面から左右外向きに突出した左右の強制デフ出力軸277に回転可能に軸支されている。左右の強制デフ出力軸277に、ファイナルギヤ278a,278bを介して左右の車軸278が連結されている。左右の車軸278には左右の駆動スプロケット51が取付けられている。従って、副変速ギヤ機構251から左右の遊星ギヤ機構268に伝達された回転動力は、左右の車軸278から各駆動スプロケット51に同方向の同一回転数にて伝達され、左右の履帯2を同方向の同一回転数にて駆動して、走行機体1を直進(前進、後退)移動させる。
【0047】
旋回油圧式無段変速機70は、操縦コラム41に配置された主変速レバー44や操縦ハンドル43の回動操作量に応じて、旋回ポンプ70aにおける回転斜板の傾斜角度を変更調節して、旋回モータ70bへの作動油の吐出方向及び吐出量を変更することにより、旋回モータ70bから突出した旋回用モータ軸261の回転方向及び回転数を任意に調節するように構成されている。また、後述する操向カウンタ軸280上に旋回用パルス発生回転輪体294を設け、図示しない旋回用回転センサ(旋回車速センサ)にて、旋回モータ70bの操向出力の回転数(旋回車速)を検出するように構成している。
【0048】
また、ミッションケース63内には、旋回用モータ軸261(操向入力軸)上に設ける湿式多板形の旋回ブレーキ279(操向ブレーキ)と、旋回用モータ軸261に減速ギヤ281を介して連結する操向カウンタ軸280と、操向カウンタ軸280に減速ギヤ286を介して連結する操向出力軸285と、左リングギヤ273に逆転ギヤ284を介して操向出力軸285を連結する左入力ギヤ機構282と、右リングギヤ273に操向出力軸285を連結する右入力ギヤ機構283とを設けている。旋回用モータ軸261の回転動力は、操向カウンタ軸280に伝達される。操向カウンタ軸280に伝達された回転動力は、左の入力ギヤ機構282における操向出力軸285上の左中間ギヤ287と逆転ギヤ284を介して逆転回転動力として、左のリングギヤ273に伝達される一方、右の入力ギヤ機構283における操向出力軸285上の右中間ギヤ288を介して正転回転動力として、右のリングギヤ273に伝達される。
【0049】
副変速ギヤ機構251を中立にした場合は、直進モータ64bから左右の遊星ギヤ機構268への動力伝達が阻止される。副変速ギヤ機構251から中立以外の副変速出力時に、副変速低速ギヤ254又は副変速中速ギヤ255又は副変速高速ギヤ256を介して直進モータ64bから左右の遊星ギヤ機構268へ動力伝達される。一方、旋回ポンプ70aの出力をニュートラル状態とし、且つ旋回ブレーキ279を入り状態とした場合は、旋回モータ70bから左右の遊星ギヤ機構268への動力伝達が阻止される。旋回ポンプ70aの出力をニュートラル以外の状態とし、且つ旋回ブレーキ279を切り状態とした場合は、旋回モータ70bの回転動力が、左入力ギヤ機構282及び逆転ギヤ284を介して左リングギヤ273に伝達される一方、右入力ギヤ機構283を介して右リングギヤ273に伝達される。
【0050】
その結果、旋回モータ70bの正回転(逆回転)時は、互いに逆方向の同一回転数で、左リングギヤ273が逆転(正転)し、右リングギヤ273が正転(逆転)する。即ち、各モータ軸260,261からの変速出力は、副変速ギヤ機構251又は差動機構257をそれぞれ経由して、左右の履帯2の駆動スプロケット51にそれぞれ伝達され、走行機体1の車速(走行速度)及び進行方向が決定される。
【0051】
すなわち、旋回モータ70bを停止させて左右リングギヤ273を静止固定させた状態で、直進モータ64bが駆動すると、直進用モータ軸260からの回転出力は左右サンギヤ271に左右同一回転数で伝達され、遊星ギヤ272及びキャリヤ274を介して、左右の履帯2が同方向の同一回転数にて駆動され、走行機体1が直進走行する。
【0052】
逆に、直進モータ64bを停止させて左右サンギヤ271を静止固定させた状態で、旋回モータ70bを駆動させると、旋回用モータ軸261からの回転動力にて、左のリングギヤ273が正回転(逆回転)し、右のリングギヤ273は逆回転(正回転)する。その結果、左右の履帯2の駆動スプロケット51のうち、一方が前進回転し、他方が後退回転し、走行機体1はその場で方向転換(信地旋回スピンターン)される。
【0053】
また、直進モータ64bによって左右サンギヤ271を駆動しながら、旋回モータ70bによって左右リングギヤ273を駆動することによって、左右の履帯2の速度に差が生じ、走行機体1は前進又は後退しながら信地旋回半径より大きい旋回半径で左又は右に旋回(Uターン)する。このときの旋回半径は左右の履帯2の速度差に応じて決定される。エンジン7の走行駆動力が左右の履帯2に常に伝達された状態で左又は右に旋回移動する。
【0054】
次いで、
図9~
図16を参照して、本実施形態の普通型コンバインにおける作業系油圧回路180及び走行系油圧回路200について説明する。
図9~
図14に示す如く、作業系油圧回路180は、油圧アクチュエータとして、刈取昇降用油圧シリンダ4と、掻込みリール14を昇降可能に支持する左右のリール昇降用油圧シリンダ27L,27Rと、穀粒排出オーガ164を昇降可能に支持するオーガ昇降用油圧シリンダ55と、走行機体1を昇降させる左右の機体昇降用油圧シリンダ56L,56Rと、作動油を貯留する作動油タンク57と、作動油タンク57とオイルフィルタ58を介して接続した油圧ポンプ59と、作動油の流れを切り換える油圧バルブ60A~60Eを備える。なお、油圧バルブ60A~60Eは、走行機体1上に搭載される油圧バルブユニット60に組み込まれている。
【0055】
刈取昇降用油圧バルブ60Aを介して、刈取昇降用油圧シリンダ4に油圧ポンプ59を油圧接続する。運転操作部(運転台)5における刈取姿勢レバー(図示省略)を前後方向に傾倒させる操作によって、刈取昇降用油圧シリンダ4を作動させ、オペレータが刈取部3を任意高さ(例えば刈取り作業高さまたは非作業高さ等)に昇降動させるように構成している。一方、リール昇降用油圧バルブ60Bを介して、リール昇降用油圧シリンダ27L,27Rに作業用油圧ポンプ59を油圧接続する。上記刈取姿勢レバー(図示省略)を左右方向に傾倒させる操作などによって、リール昇降用油圧シリンダ27L,27Rを作動させ、オペレータが掻込みリール14を任意高さに昇降動させ、圃場の未刈り穀稈を刈取るように構成している。
【0056】
オーガ昇降用油圧バルブ60Cを介して、オーガ昇降用油圧シリンダ55に作業用油圧ポンプ59を油圧接続する。運転操作部(運転台)5における穀粒排出レバー155を前後方向に傾倒させる操作によって、オーガ昇降用油圧シリンダ55を作動させ、オペレータが穀粒排出コンベヤ8における穀粒排出オーガ164の籾投げ口を任意高さに昇降動させる。なお、電動モータ165によって縦送りオーガ162及びベベルギヤ機構163と共に穀粒排出オーガ164を水平方向に回動させて、籾投げ口を横方向に移動させる。即ち、トラック荷台またはコンテナの上方に籾投げ口を位置させ、トラック荷台またはコンテナ内にグレンタンク6内の穀粒を排出するように構成している。
【0057】
左機体昇降用油圧バルブ60Dを介して、左機体昇降用油圧シリンダ56Lに作動油タンク57及び作業用油圧ポンプ59を油圧接続する。一方、右機体昇降用油圧バルブ60Eを介して、右機体昇降用油圧シリンダ56Rに作動油タンク57及び作業用油圧ポンプ59を油圧接続する。左右の機体昇降用油圧シリンダ56L,56Rは互いに独立的に作動させることにより、走行機体1の左右を独立的に昇降させる。
【0058】
従って、左右両側の機体昇降用油圧シリンダ56L,56Rを同時に作動して、左右のトラックフレーム50,50を走行機体1に対して同時に下げると、走行機体1は左右両側の履帯2,2接地部に対して上方に離れて(上昇し)、走行機体1の履帯2,2接地部に対する相対高さ(車高)は高くなる。逆に、左右のトラックフレーム50,50を走行機体1に対して同時に上げると、走行機体1は左右両側の履帯2,2接地部に対して近づいて(下降し)、走行機体1の履帯2,2接地部に対する相対高さ(車高)は低くなる。
【0059】
そして、左機体昇降用油圧シリンダ56Lを作動して左トラックフレーム50を走行機体1に対して下げる、または右機体昇降用油圧シリンダ56Rを作動して右トラックフレーム50を走行機体1に対して上げると(もしくはこの両方の動作を同時に実行しても)、走行機体1は右下がりに傾斜する。逆に、右機体昇降用油圧シリンダ56Rを作動して右トラックフレーム50を走行機体1に対して下げる、または左機体昇降用油圧シリンダ56Lを作動して右トラックフレーム50を走行機体1に対して上げると(もしくはこの両方の動作を同時に実行しても)、走行機体1は左下がりに傾斜する。
【0060】
作動油タンク57、油圧ポンプ59、及び油圧バルブユニット60はそれぞれ、走行機体1上に搭載されており、油圧配管181~183を介して互いに連結している。走行機体1上において、作動油タンク57が前方左側に設置される一方、前方右側に搭載されたエンジン7前面に油圧ポンプ59が固定され、作動油タンク57に内装されているオイルフィルタ58と油圧ポンプ59とが油圧配管181により連結している。また、走行機体1上において、エンジン7後方となる位置に油圧バルブユニット60が配置されており、油圧ポンプ59の吐出側が油圧配管182を介して油圧バルブユニット60に連結している。更に、油圧バルブユニット60は、作動油戻し管となる油圧配管183を介して作動油タンク57と連結している。
【0061】
作動油タンク57は、走行機体1上であってフィーダハウス11及びビータ18で囲まれた空間位置に設置され、エンジン7と作動油タンク57とが走行機体1前方で左右に並んで配置されている。すなわち、フィーダハウス11と脱穀部9の機筐体とで囲まれた空間に作動油タンク57が配置されることとなり、刈取部3からの塵埃が作動油タンク57に堆積することを抑制でき、給油口184などからの塵埃の侵入による作動油の汚染も防止できる。また、エンジン7からの冷却風が作動油タンク57の設置空間に流れることにより、作業系油圧回路180上にオイルクーラを設けずとも作動油温度の上昇を抑制することができ、各油圧部材を適正に駆動できる。
【0062】
作動油タンク57は、左側方(機外側方)に向かって突設した給油口184を左側面(機外側側面)に有するとともに、左側方より挿抜可能なオイルフィルタ58を内装している。したがって、脱穀部9の左側方(機外側方)に設けた脱穀カバー185を取り外すことで、容易に給油口184及びオイルフィルタ58へアクセスできる。そのため、作動油タンク57の給油作業及びオイルフィルタ58の交換作業が容易なものとなるとともに、作業系油圧回路180におけるメンテナンス性の向上を図れる。
【0063】
また、作動油タンク57と連結する油圧配管181,183は、作動油タンク57及びエンジン7の前方を左右に延設されて配管され、油圧配管182がエンジン7前方に配置した油圧ポンプ59とオイルフィルタ58とを連通している。即ち、油圧配管181,183がエンジン7前方を迂回して作動油タンク57に向かって、エンジン7の出力軸65に沿って延設されている。また、油圧配管182,183は、エンジン7右側に設けた冷却ファンの下方を通って後方に延設されて、油圧バルブユニット60と連結している。従って、油圧配管181~183が、エンジン7からの放射熱による影響を受けにくい位置で管路長が短くなるように配置されることとなり、油圧配管を流れる作動油の温度が高くなることを抑制できる。
【0064】
図14~
図16に示す如く、走行系油圧回路200は、直進ポンプ64a、直進モータ64b、旋回ポンプ70a、旋回モータ70b、変速機チャージポンプ151、オイルフィルタ152、及びオイルクーラ153を備えている。直進油圧式無段変速機64における直進ポンプ64aと直進モータ64bとが、直進閉油路201によって閉ループ状に接続している。一方、旋回油圧式無段変速機70における旋回ポンプ70aと旋回モータ70bとが、旋回閉油路202によって閉ループ状に接続している。エンジン7の回転動力で直進ポンプ64a及び旋回ポンプ70aを駆動させ、直進ポンプ64aや旋回ポンプ70aの斜板角を制御することによって、直進モータ64bや旋回モータ70bへの作動油の吐出方向及び吐出量が変更され、直進モータ64bや旋回モータ70bが正逆転作動する。
【0065】
走行系油圧回路200は、主変速レバー44の手動操作に対応して切り換え作動する直進バルブ203と、直進バルブ203を介して変速機チャージポンプ151に接続した直進シリンダ204が設けられている。直進バルブ203を切り換え作動させると、直進シリンダ204が作動して直進ポンプ64aの斜板角を変更させ、直進モータ64bの直進用モータ軸260の回転数を無段階に変化させたり逆転させたりする直進変速動作が実行される。
【0066】
走行系油圧回路200は、操縦ハンドル43の手動操作に対応して切り換え作動する旋回バルブ206と、旋回バルブ206を介して変速機チャージポンプ151に接続した旋回シリンダ207とを備えている。旋回バルブ206を切り換え作動させると、旋回シリンダ207が作動して旋回ポンプ70aの斜板角を変更させ、旋回モータ70bの旋回用モータ軸261の回転数を無段階に変化させたり逆転させたりする左右旋回動作が実行され、走行機体1が走行方向を左右に変更して圃場枕地で方向転換したり進路を修正したりする。
【0067】
変速機チャージポンプ151の吸入側は、ミッションケース63内にあるストレーナ217に油圧配管208を介して接続している。変速機チャージポンプ151の吐出側には油圧配管209を介してチャージ導入油路218を接続し、油圧配管209の配管途上にオイルフィルタ152が設置されている。チャージ導入油路218の下流側に、両閉油路201,202と接続したチャージ分岐油路219が接続される。従って、エンジン7駆動中は、変速機チャージポンプ151からの作動油が両方の閉油路201,202に常時補充される。
【0068】
また、チャージ分岐油路219は、直進バルブ203を介して直進シリンダ204に接続していると共に、旋回バルブ206を介して旋回シリンダ207に接続している。更に、チャージ分岐油路219は、余剰リリーフ弁220及び油圧配管210を介して、ミッションケース63に接続し、油圧配管210の配管途上にオイルクーラ153が設置されている。従って、変速機チャージポンプ151からの作動油の余剰分が、余剰リリーフ弁220を介して、ミッションケース63内に戻される際に、オイルクーラ153にて冷却される。
【0069】
次いで、エンジン7が設置されるエンジンルーム146について、
図8、
図13及び
図14などを参照して説明する。
図8、
図13及び
図14などに示す如く、走行機体1上面における運転台5後側に、左右一対のエンジンルーム支柱147を立設させ、左右のエンジンルーム支柱147間に背面板体148を張設して、運転座席42下方のエンジンルーム146後方を覆っている。また、走行機体1における運転台5の右側端部に設けた右エンジンルーム支柱147に、開閉支点軸171を介して箱状の風洞ケース170を立設させている。風洞ケース170右側面の機外側開口には除塵網を張設しており、除塵網の存在によって、風洞ケース170内部ひいてはエンジンルーム146内部への藁屑等の侵入を防止している。
【0070】
走行機体1上面側における風洞ケース170機内側に水冷用ラジエータ154を立設させ、エンジン7の冷却ファン149にラジエータ154を対峙させている。そして、ラジエータ154の通気範囲部の全体を覆う態様のシュラウド150が設置されており、このシュラウド150に形成した開口に、冷却ファン149を配置させる。また、風洞ケース170内には、オイルクーラ153が設置されている。冷却ファン149の回転によって、風洞ケース170右側面の機外側開口から風洞ケース170内に外気(冷却風)を取り入れ、風洞ケース170左側面の機内側開口から除塵済の冷却風をエンジンルーム146内に送り込む。これにより、エンジンルーム146内に流れ込む冷却風によって、オイルクーラ153、ラジエータ154、及びエンジン7等が冷却される。
【0071】
次いで、脱穀部9の機筐体9bの一部となる刈取り支持枠体36周辺の構成について、
図5、
図6、
図8、及び
図11~
図14などを参照して説明する。
図5、
図6、
図8、及び
図11~
図14などに示す如く、刈取り支持枠体36は、左右の脱穀機筐支柱(後支柱フレーム)34それぞれの前方位置で走行機体1上面より立設した左右の刈取り支持用支柱(前支柱フレーム)36aと、左右の脱穀機筐支柱34と左右の刈取り支持用支柱36aとを前後で連結する上下の刈取り支持枠用梁フレーム36b,36cとを有する。刈取り支持枠用梁フレーム36b,36cは、前後に配置された刈取り支持用支柱36a及び脱穀機筐支柱34の上端及び中途部それぞれに架設されている。
【0072】
左右に設けた上下刈取り支持枠用梁フレーム36b,36cの中途部に左右のビータ軸受体38の両端を連結し、ビータ18が、左右のビータ軸受体38により刈取り支持枠体36内に軸支される。刈取り支持枠体36には、ビータ18左右側方を覆う側板186、ビータ18上方を覆う天板187、ビータ18前面を覆う前板188、ビータ18下方を覆う底板189が設けられている。すなわち、刈取り支持枠体36は、下側の梁フレーム36cよりも上方に、フィーダハウス11後端と扱口9aとを連通させる閉鎖空間が構成される。そして、当該閉鎖空間に供給コンベヤ17からの穀桿を円滑に扱口9aまで誘導するビータ18が設置される。
【0073】
側板186は、支柱34,36a及び梁フレーム36b,36cで囲われた領域を密閉するように設置されるとともに、側板186よりも外側に配置されたビータ軸受体38で軸支されたビータ軸82を貫通させる穴を有する。天板187は、左右の梁フレーム36bに架設されており、その上面に扱胴駆動ケース71が設置されている。前板188は、天板187前縁と上縁が連結してフィーダハウス11上方に向けて下方に延設されている。底板189の前縁が、フィーダハウス11の底板190の後縁と連結するとともに、底板189の後縁が、扱胴21前方の扱口9a底面前縁と連結し、底板189は、フィーダハウス11から扱口9aへの穀桿の案内板として作用する。
【0074】
刈取り支持枠体36のビータ18設置空間下方となる空間に、作動油タンク57が設置され、作動油タンク57の上方が底板189に覆われる。また、作動油タンク57の前方は、底板189と連結した前カバー板191により覆われている。作動油タンク57の後方には、送風ファン状の唐箕29が設けられており、唐箕29の外周が唐箕カバー板192で覆われている。従って、刈取り支持枠体36内において、作動油タンク57が、底板189、前カバー板191、及び唐箕カバー板192によって囲まれた空間に設置されている。
【0075】
底板189、前カバー板191、及び唐箕カバー板192による作動油タンク57設置空間は、左右が開口された通路を構成しており、右側のエンジンルーム146と連通している。また、脱穀部9の機筐体9bは、左右の脱穀側板193を備えており、右脱穀側板193前縁は、エンジンルーム支柱147より前方に位置する右脱穀機筐支柱34に固定されている。従って、冷却ファン149より外気より取り込まれた冷却風の一部が、エンジンルーム146を通過して刈取り支持枠体36内の作動油タンク57設置空間に流れ込み、作動油タンク57を冷却する。
【0076】
また、エンジンルーム146を通過する冷却風の一部が、唐箕29の回転によって、作動油タンク57設置空間後方の唐箕カバー板192による風路に流れ込む。これにより、エンジンルーム146と脱穀部9との間の空間を前後方向に流れる空気流れが形成されるため、この前後方向の空気流れに誘導されて、走行機体1前方からも外気が流れ込む。この走行機体1前方から外気が作動油タンク57設置空間に流れ込み、エンジンルーム146からの冷却風の一部とともに作動油タンク57を冷却する。すなわち、唐箕29側にエンジン7からの排風が積極的に流れることで、エンジン7の冷却風の一部とともに外気が作動油タンク57設置空間に流れることとなり、作動油タンク57の冷却効果を高める。
【0077】
上述のように、エンジンルーム146からの冷却風が作動油タンク57を通過する構成とすることで、作動油タンク57を含む作業系油圧回路180を循環する作業油の温度が上昇することを抑制できる。従って、作業系油圧回路180にオイルクーラを設ける必要がないだけでなく、作業系油圧回路180と走行系油圧回路200とを別系統とすることで、走行系油圧回路200のみにオイルクーラ153を設ける構成とできる。結果、オイルクーラ153の容量を小さくでき、冷却風流れにおいてオイルクーラ153よりも下流側に位置するラジエータ154及びエンジン7の冷却効率を高めることができる。
【0078】
また、エンジン7からの駆動力を受ける副カウンタ軸104が脱穀機筐支柱(後支柱フレーム)34に軸支され、上下刈取り支持枠用梁フレーム36b,36cと連結したビータ軸受体38によりビータ18のビータ軸82が軸支される。刈取り支持用支柱(前支柱フレーム)36aより前方位置で軸支された刈取入力軸89がフィーダハウス11を貫通している。副カウンタ軸104の回転動力をビータ軸82に伝達する第1動力伝達機構(駆動プーリ107,108及び刈取り駆動ベルト114によるビータ駆動機構)と、ビータ軸82の回転動力を刈取入力軸89に伝達する第2動力伝達機構(刈取駆動チェン115及びスプロケット116,117による刈取駆動機構)とを備える。そして、前記第1及び第2動力伝達機構と前方の刈取り支持用支柱36aで囲まれた領域に、作動油タンク57の給油口184及びオイルフィルタ58が配置される。これにより、前記第1及び第2動力伝達機構における伝達材(チェン又はベルト)を取り外すことなく、作動油タンク57への給油作業及びオイルフィルタ58の交換作業ができるため、作業系油圧回路180におけるメンテナンス性の向上を図れる。
【0079】
更に、脱穀部9は、脱穀機筐支柱(後支柱フレーム)34後側に唐箕29を軸支しており、唐箕29の唐箕軸100に対して相対回転可能な主カウンタ軸76が唐箕軸100内を貫通している。そして、主カウンタ軸76がエンジン7からの動力を受けて副カウンタ軸104に動力を伝達するとともに、副カウンタ軸104の回転動力が唐箕軸100及びビータ軸82それぞれに分岐して伝達される。刈取部3、穀粒選別機構10、及び唐箕29を駆動させるための駆動系統が、脱穀部9の左側(機外側)に集中して設置されることで、脱穀部9の右側(機内側)前方を開口させることができる。従って、脱穀部9前方下側における作動油タンク57設置空間の右側を開放することができ、多くの冷却風を作動油タンク57設置空間に誘導できる。
【0080】
次に、
図17~
図24を参照して燃料タンク61及びその周辺の構造について説明する。燃料タンク61は、走行機体1上で左右方向に並設された第1燃料タンク301(燃料タンク)と第2燃料タンク302(別体燃料タンク)を備えている。第1及び第2燃料タンク301,302の両内部空間は互いに通じている。第1燃料タンク301は、走行機体1の後部においてグレンタンク6(穀物タンク)と脱穀部9の間に配置されている。第2燃料タンク302は脱穀部9の後部下方に配置されている。
【0081】
第1燃料タンク301はグレンタンク6と脱穀部9の間に配置されているので、グレンタンク6と脱穀部9の間の空間を有効利用でき、走行機体1のサイズを大きくすることなく第1燃料タンク301を走行機体1上に配置できる。また、第2燃料タンク302は脱穀部9の後部下方に配置されているので、脱穀部9下方の空間を有効利用でき、走行機体1のサイズを大きくすることなく第2燃料タンク302を走行機体1上に配置できる。また、燃料タンク61は第1燃料タンク301と第2燃料タンク302に分割されているので、走行機体1上の空き空間を有効利用しながら燃料タンク61の合計容量を大きくすることができる。
【0082】
第1燃料タンク301は前後横長の略直方体形状を有する。第1燃料タンク301の後端は脱穀部9の排塵口23よりも後方側に位置している。なお、排塵口23の後方は、前面、下面及び後側面下部が開口された排塵口カバー体23aで覆われている。この実施形態では、排塵口カバー体23aの開口は排塵口23を構成しない。また、
図18に示すように、平面視で、第1燃料タンク301は左側面301a(排塵口23側の側面)側の前後両角部が切り欠かれている。これにより、第1燃料タンク301の左側面301aの後端部側に後側傾斜左側面301b(傾斜面)が形成され、左側面301aの前端部側に前側傾斜左側面301cが形成されている。後側傾斜左側面301bは、平面視で前方から後方へ向かって排塵口23とは反対側へ傾斜している。また、前側傾斜左側面301cは、平面視で後方から前方へ向かって脱穀部9とは反対側へ傾斜している。
【0083】
第1燃料タンク301の後側傾斜左側面301bの一部は脱穀部9の排塵口23よりも後方側に配置されている。これにより、排塵口23から排出される排稈を含む藁屑等の拡散が第1燃料タンク301により阻害されるのを防止できる。また、排塵口23から排出される藁屑等の第1燃料タンク301への衝突を低減でき、藁屑等による第1燃料タンク301の損傷や、第1燃料タンク301への藁屑等の付着を低減できる。
【0084】
図18に示すように、第1燃料タンク301の前側傾斜左側面301cは脱穀部9の二番還元コンベヤ33の基端部の後方に配置されている。前側傾斜左側面301cが形成されていることにより、第1燃料タンク301を二番還元コンベヤ33に干渉させることなく、走行機体1とグレンタンク6と脱穀部9で囲まれた空間内に配置できる。また、前側傾斜左側面301cが形成されていることにより、脱穀部9と第1燃料タンク301の間に、後述する燃料供給管331を第2燃料タンク302の下方から走行機体1の上方へ導くための空間を確保できる。
【0085】
第1燃料タンク301の上面後寄り部位301dは前方から後方へ向かって下方へ傾斜している。上面後寄り部位301dに、先端側が後方へ傾斜している筒状の給油口303が後方へ傾斜して突設されている。第1燃料タンク301に燃料を補給するための給油口303が走行機体1の後端部に配置されていることに加え、給油口303は後ろ上方へ向いて傾斜しているので、走行機体1後方から行われる燃料給油作業の利便性が向上する。
【0086】
また、上面後寄り部位301dが前方から後方へ向かって下方へ傾斜していることにより、上面後寄り部位301dの面に直交する方向に突設された給油口303は先端側が後方へ傾斜した状態になる。これにより、上面後寄り部位301dの面に直交する方向に対して略円筒状の給油口303の中心軸を傾斜させなくても、上面後寄り部位301dの傾斜具合を所望の角度に調節することで、給油口303の傾き具合を所望の角度に調節できる。したがって、第1燃料タンク301は、所望の給油口角度を得るために給油口を湾曲させたり、給油口が接続される面に対して給油口を傾斜させて接続したりするに比べて、給油口303の形状や上面後寄り部位301dとの接続構造を簡易化でき、製造コスト低減や接続強度向上を実現できる。
【0087】
ところで、
図10~
図14等を参照して説明したように、作動油タンク57の給油口184は、走行機体1上であってフィーダハウス11及びビータ18で囲まれた空間位置、つまり走行機体1の前部左寄り領域に配置されている。また、
図1及び
図13に示すように、作動油タンク57の左方は機筐体を構成する着脱可能な脱穀カバー185で覆われている。一方、第1及び第2燃料タンク301,302を有する燃料タンク61の給油口303は走行機体1の後部に配置されている。このように、作動油タンク57の給油口184と燃料タンク61の給油口303は走行機体1上で互いに離れた位置に配置されているので、燃料給油作業者が燃料を誤って作動油タンク57に給油するのを防止できる。
【0088】
また、作動油タンク57は脱穀カバー185で覆われており、作動油タンク57に給油口184から作動油を給油する際には、通常、脱穀カバー185を取り外す作業が必要になる。一方、
図17に示すように、燃料タンク61(第1燃料タンク301)の給油口303は走行機体1の後部に露出しており、燃料タンク61に燃料を給油する際に脱穀カバー185等のカバー体を取り外す必要はない。このように、作動油タンク57への給油作業工程と、燃料タンク61への給油作業工程を大きく異ならせることにより、給油作業者による作動油タンク57及び燃料タンク61への作動油又は燃料の誤給油を防止できる。
【0089】
図17に示すように、第1燃料タンク301の上面右寄り部位301eは左方から右方へ向かって下方へ傾斜している。上面右寄り部位301eは、グレンタンク6の左側面下部の傾斜面に沿って配置されている。これにより、第1燃料タンク301は、走行機体1とグレンタンク6と脱穀部9で囲まれた空間内に、グレンタンク6に干渉することなく収容されており、当該空間が有効活用されている。
【0090】
図17~
図19に示すように、第2燃料タンク302は左右横長の略直方体形状を有する。第2燃料タンク302の容量は第1燃料タンク301の容量よりも大きい。第2燃料タンク302は、走行機体1の後部左寄り領域で脱穀部9の揺動選別盤26の後部下方に配置されている。第2燃料タンク302の上面後寄り部位302aは、脱穀部9の排塵口23に設けられた排塵流下案内板23bに沿って、前方から後方へ向かって下方へ傾斜している。これにより、排塵流下案内板23b下方の脱穀部9内部の空間が有効活用されている。
【0091】
図18及び
図20に示すように、第1燃料タンク301の左側面下部に設けられた第1燃料タンク側接続口301fと、第2燃料タンク302の右側面下部に設けられた第2燃料タンク側接続口302bが連結管304により連結されている。連結管304は第1燃料タンク301と第2燃料タンク302の両内部空間を通じさせている。これにより、第1燃料タンク301と第2燃料タンク302の間で燃料が連結管304を介して流動可能になっている。
【0092】
図20~
図23に示すように、第1燃料タンク301はその下面に突出部301gを備えている。第1燃料タンク301の下面には、後側傾斜左側面301b、右側面301h、前側面301i及び後側面301jと突出部301gの間に下面段差部301kが形成されている。また、第2燃料タンク302はその下面に突出部302cを備えている。第2燃料タンク302の下面には、前側面302d及び後側面302eと突出部302cの間に下面段差部302fが形成されている。
【0093】
走行機体1後部において、前後方向に延設された前後機体フレーム305と、左右方向に延設された一対の第1及び第2左右機体フレーム306,307が設けられている。走行機体1には、走行機体1の右側から順に、右側フレーム308、中央右フレーム309、中央左フレーム310、左側フレーム311が配置されている。これらのフレーム308~311は、走行機体1の前部から後部にわたって延設され、互いに平行に配置されている。右側フレーム308及び中央右フレーム309の後端部は、中央左フレーム310及び左側フレーム311の後端部よりも後方に配置されている。
【0094】
第1及び第2左右機体フレーム306,307は、フレーム308~311に対して直交配置され、フレーム308~311上面に連結されている。第1左右機体フレーム306は、第2左右機体フレーム307よりも後方に配置され、右側フレーム308及び中央右フレーム309の後端部側の上面と、中央左フレーム310及び左フレーム311の両後端部上面に配置されている。
【0095】
第1左右機体フレーム306と第2左右機体フレーム307の間の位置で中央右フレーム309の上方に前後機体フレーム305が中央右フレーム309に沿って配置されている。前後機体フレーム305は断面が逆U字形であり、前後機体フレーム305の左右下端部の内壁が中央右フレーム309の左右側面上部に固着されている。前後機体フレーム305の上面は第1及び第2左右機体フレーム306,307の上面よりも少し低い高さ位置又は同じ高さ位置に配置される。
【0096】
右側フレーム308及び中央右フレーム309の後端部は、第1左右機体フレーム306よりも後方に配置され、第1左右機体フレーム306に平行に配置された後部左右フレーム312により連結されている。後部左右フレーム312は右側フレーム308及び中央右フレーム309の後端部上面に連結されている。後部左右フレーム312の中央部上面に、ベベルギヤ機構161のケース体下端部を回動可能に支持する縦送りオーガ支持部材162aが固着されている。後部左右フレーム312と中央右フレーム309の交差部に断面が略L字型の連結部材313が接続されている。連結部材313は中央右フレーム309の後端部及び左側面と後部左右フレーム312の左端面及び後側面に連結されている。
【0097】
図20~
図22に示すように、第1燃料タンク301は、機体フレーム305,306,307に上面側から突出部301gが嵌め合わされることで走行機体1に対して位置決めされている。第1燃料タンク301の下面段差部301kは、機体フレーム305,306,307ごとに設けられた3つの第1緩衝部材314を介して機体フレーム305,306,307の上面に配置される。第1燃料タンク301は機体フレーム305,306,307に突出部301gが嵌め合わされることで位置決めされるので、第1燃料タンク301を走行機体1に載置する際の位置合わせが容易になる。また、突出部301gは第1燃料タンク301の前後方向及び右方向への移動を規制するので、走行機体1に載置された第1燃料タンク301の位置ズレが防止される。
【0098】
図20及び
図23に示すように、第2燃料タンク302は、第1及び第2左右機体フレーム306,307に上面側から突出部302cが嵌め合わされることで走行機体1に対して位置決めされている。第2燃料タンク302の下面段差部302fは、第1及び第2左右機体フレーム306,307ごとに設けられた2つの第2緩衝部材315を介して第1及び第2左右機体フレーム306,307の上面に配置される。第2燃料タンク302は第1及び第2左右機体フレーム306,307に突出部302cが嵌め合わされることで位置決めされるので、第2燃料タンク302を走行機体1に載置する際の位置合わせが容易になる。また、突出部302cは第2燃料タンク302の前後方向の移動を規制するので、走行機体1に載置された第2燃料タンク302の位置ズレが防止される。なお、緩衝部材314,315は例えばゴム部材等の弾性を有する部材で構成される。
【0099】
また、
図17~
図19及び
図21~
図23に示すように、第1及び第2燃料タンク301,302は、前後方向に沿って取り付けられる締結バンド体316又は317により走行機体1に固定される。第1及び第2燃料タンク301,302の上面側に1本の第1締結バンド体316又は2本の第2締結バンド体317が半巻き状に装着される。第1及び第2締結バンド体316,317の前方側端部に第1フック体316a又は第2フック体317aが固着されている。第1及び第2フック体316a,317aは、第2左右機体フレーム307の前側面上部に固着された第1バンド掛止部材318又は第2バンド掛止部材321に掛止される。
【0100】
第1締結バンド体316の後方側端部は、連結部材313の左側面に固着された略L字形の固定用ブラケット体319に第1調節ボルト320aを介して固定される。第1調節ボルト320aは、固定用ブラケット体319の水平部位319aに設けられた穴に下面側から上面側へ向けて挿入されている。第2締結バンド体317の後方側端部は、第1左右機体フレーム306に第2調節ボルト322aを介して連結される。第2調節ボルト322aは、第1左右機体フレーム306の上面及び下面にそれぞれ設けられた穴に第1左右機体フレーム306を下面側から上面側へ貫通して挿入されている。
【0101】
第1及び第2締結バンド体316,317の後方側端部上面に第1ナット316b又は第2ナット317bが固着されている。第1及び第2ナット316b,317bは、第1調節ボルト320a又は第2調節ボルト322aの先端側に嵌め合わされ、第1固定用ナット320b又は第2固定用ナット322bにより固定される。
【0102】
図20~
図23に示すように、第1及び第2燃料タンク301,302の下面は3枚の燃料タンク下部カバー体323で覆われている。各燃料タンク下部カバー体323は取付金具を介して第1左右機体フレーム306の前側面及び第2左右機体フレーム307の後側面に連結される。燃料タンク下部カバー体323により、第1及び第2燃料タンク301,302及び連結管304への下方側からの異物の接触や付着などが防止される。また、第1燃料タンク301の後部右寄り部位の下方に中央右フレーム309の後端部が配置されているので、中央右フレーム309によって第1燃料タンク301後部下面への異物の接触や付着などが防止される。
【0103】
図10及び
図17~
図19等に示すように、第1及び第2燃料タンク301,302の上面に第1通気管324又は第2通気管325が接続される。第1通気管324の一端は第1燃料タンク301の上面左寄り部位に設けられた第1通気孔301mに接続されている。第2通気管325の一端は第2燃料タンク302の上面右寄り部位に設けられた第2通気孔302hに接続されている。第1及び第2通気管324,325の両他端側は、脱穀部9の右側面後部の下部から脱穀部9の右側面に沿って上方へ導かれ、脱穀部9の右側面中途部で、端部が下方を向くように湾曲されて脱穀部9の右側面に支持されている。
【0104】
図10、
図18及び
図20に示すように、第1燃料タンク301の前方に油水分離機328が配置されている。油水分離機328は第2燃料タンク302内からエンジン7に供給される燃料に含まれる水分を除去する。油水分離機328は、第2左右機体フレーム307の前側面に固定されて上方へ向けて立設された支持ブラケット体329にボルト締結されている。また、
図10に示すように、エンジン7の上部左寄り部位の後方に燃料フィルタ330が配置されている。燃料フィルタ330はエンジン7に供給される燃料に含まれる異物を除去する。
【0105】
図20に示すように、第2燃料タンク302の突出部302cの下面に燃料出口302gが設けられている。
図18及び
図20に示すように、第1燃料タンク301の前側面301iの下部右寄り部位に燃料戻り口301lが設けられている。また、燃料用配管として、燃料供給管331、燃料送り管332、燃料戻り管333等が設けられている。燃料供給管331は燃料出口302gと油水分離機328を接続する。燃料送り管332は油水分離機328と燃料フィルタ330を接続する。燃料戻り管333は、燃料フィルタ330に設けられた燃料戻り継手と燃料戻り口301lを接続する。
【0106】
燃料供給管331は、第2燃料タンク302下面の燃料出口302gから第2燃料タンク302下方、及び脱穀部9と第1燃料タンク301の前側傾斜左側面301cの間を通って走行機体1上方へ導かれて油水分離機328に接続されている。燃料送り管332は、油水分離機328から中央右フレーム309へ向かって下方へ導かれ、中央右フレーム309近傍で前方側へ屈曲されている。さらに、燃料送り管332は、走行機体1のフレームに沿って燃料フィルタ330下方へ導かれ、上方へ屈曲されて燃料フィルタ330に接続されている。燃料戻り管333は、燃料フィルタ330の燃料戻り継手から燃料送り管332におおよそ沿って燃料戻り口301lまで導かれている。
【0107】
第2燃料タンク302内の燃料は、燃料出口302gから燃料供給管331、油水分離機328、燃料送り管332及び燃料フィルタ330を介して、エンジン7後部に設けられた燃料供給ポンプに供給される。また、エンジン7からの余剰燃料は、燃料フィルタ330の燃料戻り継手、燃料戻り管333及び燃料戻り口301lを介して第1燃料タンク301内に戻される。
【0108】
また、
図24に示すように、第1燃料タンク301の給油口303の先端にネジ式の給油キャップ334が着脱可能に嵌め合わされている。給油キャップ334の上面中央部にキャップ突起部材335が突設されている。給油キャップ334の上面及び側面を覆うキャップカバー部材336が給油キャップ334に着脱可能に取り付けられている。
【0109】
キャップカバー部材336は、頂部に貫通孔336aが形成された略半球形状を有する。貫通孔336aの穴径はキャップ突起部材335の径よりも大きい。キャップカバー部材336が給油キャップ334に装着された状態では、キャップ突起部材335に貫通孔336aが遊嵌されて、給油キャップ334にキャップカバー部材336が着脱可能に取り付けられる。キャップカバー部材336は給油キャップ334に対して回転自在に取り付けられる。
【0110】
キャップ突起部材335の突出先端側に、キャップ突起部材335の突出方向に略直交する貫通孔335aが設けられている。貫通孔335aに例えば南京錠からなる錠部材337の掛け金が挿入された状態で、錠部材337が施錠されている。錠部材337はキャップカバー部材336が給油キャップ334から取り外されるのを阻害する。また、キャップカバー部材336は給油キャップ334に対して回転自在に取り付けられている。したがって、キャップカバー部材336を掴んで回転させても給油キャップ334を回転させることができず、意図しない給油キャップ334の取外しを阻止して燃料盗難等を防止できる。
【0111】
図25及び
図26に示すように、第2燃料タンク302の内部底面の中央部で燃料出口302gの近傍に、突出部302c下面の一部分がタンク外側へ向けて膨出されてなる、タンク内側から見て凹状の燃料溜まり部302iが形成されている。燃料溜まり部302iの周囲に、突出部302c下面の一部分がタンク内側へ向けて凹設されてなり、且つタンク内側から見て凸条であって平面視で左方側を開放する略U字形の凸条部302jが形成されている。燃料出口302gは、燃料溜まり部302iの底面と凸条部302j上面の間で左低右高姿勢に傾斜した凹部右側面302kに配置されている。
【0112】
第2燃料タンク302の上面中央部に、第2燃料タンク302内の燃料液面を検出する液面検出センサ338が配置されている。第2燃料タンク302内で、液面検出センサ338にアーム339を介してフロート340が連結されている。アーム339はフロート340側を移動端として基端側が液面検出センサ338に回動可能に支持されている。フロート340は第2燃料タンク302内での燃料液面高さに応じて高さ位置が変位し、燃料液面高さが凸条部302j上面よりも低いときには凸条部302j上面に当接する。フロート340が凸条部302j上面に当接する位置に一定時間以上留まると、操縦コラム41(
図1~
図3参照)に設けられた燃料残量警告ランプ(図示省略)が点灯する。この燃料残量警告ランプの点灯後初期には、第2燃料タンク302内に燃料が残っている。
【0113】
この実施形態では、凹状の燃料溜まり部302iの周囲に平面視で左方側を開放する略U字形の凸条部302jが形成されているので、第2燃料タンク302内の燃料液面高さが凸条部302j上面よりも低くなっている状態で走行機体1及び第2燃料タンク302が左高右低姿勢に傾斜したときであっても、U字形の凸条部302jで囲われた燃料出口302gの配置位置に燃料を留めて燃料供給管331等を介してエンジン7に燃料を供給できる。
【0114】
また、第2燃料タンク302の内部底面には、突出部302c下面の一部分がタンク内側へ向けて凹設されてなり、且つタンク内側から見て凸条の燃料供給管配置部302l及び燃料流動抑制部302mが形成されている。燃料供給管配置部302lは凸条部302jから突出部302c右側面に向かって形成されており、凸条の燃料供給管配置部302lに応じて突出部302c外壁面に形成される凹条部に沿って燃料供給管331を収容可能になっている。燃料流動抑制部302mは、燃料溜まり部302iの左方近傍に凸条部302jとは間隔をもって前後方向に延伸されており、第2燃料タンク302内での左右方向の燃料の流動を抑制する。また、燃料流動抑制部302mは、燃料溜まり部302iの左方近傍に配置されることにより、第2燃料タンク302内の燃料が少ないときに燃料溜まり部302i内から溢れ出た燃料が左方側へ流動するのを抑制して燃料溜まり部302i内に燃料が溜まりやすくする。
【0115】
また、第1燃料タンク301内部底面の第1燃料タンク側接続口301f近傍に凹部301nが形成され、第2燃料タンク302内部底面の第2燃料タンク側接続口302b近傍に凹部302nが形成されている。突出部301g,302c下面の一部分がタンク下方側へ膨出されてなる凹部301n,302nにより、燃料タンク側接続口301f,302bを燃料タンク301,302下面に近い位置に配置でき、第1燃料タンク301内の燃料が少量になっても、燃料が第1燃料タンク301から第2燃料タンク302へ流動可能な構成になっている。
【0116】
なお、本願発明における各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【0117】
<発明の付記>
一実施形態に係るコンバインは、脱穀部と、脱穀部と横並びの状態で配置された穀物タンクと、穀物タンクから穀物を排出する穀物排出装置と、脱穀部と穀物タンクとの間に配置される燃料タンクと、を備え、穀物排出装置は、穀物タンクの後方に位置する縦送りオーガを有しており、縦送りオーガは、穀物タンクの後方に位置する機体フレームに下方から支持され、燃料タンクの後端は、機体フレームの後端よりも前方に位置する。
【0118】
この構成によれば、燃料タンクの後端を、縦送りオーガを下方から支持する強固な機体フレームの後端よりも、前方に位置させることで、機体の後方から衝撃が加わった際に、機体フレームによって衝撃を受けることができ、燃料タンクが破損することを抑制できる。
【0119】
上記コンバインにおいて、燃料タンクは、機体フレームの前方に位置する第1左右機体フレームの上面に配置されている。
【0120】
上記コンバインにおいて、燃料タンクの前端部は、第1左右機体フレームの前方に位置する第2左右機体フレームの上面に配置されている。
【0121】
上記コンバインにおいて、燃料タンクの上面には、後方へ向けて突設した給油口が設けられ、給油口の後端は、機体フレームの後端よりも前方に位置する。
【符号の説明】
【0122】
1 走行機体
3 刈取部
6 グレンタンク(穀物タンク)
7 エンジン
9 脱穀部
21 扱胴
23 排塵口
301 第1燃料タンク(燃料タンク)
301a 左側面(排塵口側の側面)
301b 後側傾斜左側面(傾斜面)
301d 上面後寄り部位
301g 突出部
302 第2燃料タンク(別体燃料タンク)
303 給油口
305 前後機体フレーム
306 第1左右機体フレーム
307 第2左右機体フレーム
309 中央右フレーム(支持フレーム)