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特許7473626クロマトグラフィーオートサンプラにおけるサンプルセルの識別
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】クロマトグラフィーオートサンプラにおけるサンプルセルの識別
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/02 20060101AFI20240416BHJP
   G01N 35/04 20060101ALI20240416BHJP
   G01N 30/24 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
G01N35/02 C
G01N35/04 G
G01N30/24 Z
【請求項の数】 5
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022211527
(22)【出願日】2022-12-28
(65)【公開番号】P2023098713
(43)【公開日】2023-07-10
【審査請求日】2023-01-24
(31)【優先権主張番号】17/563,151
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/680,089
(32)【優先日】2022-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591025358
【氏名又は名称】ダイオネックス コーポレイション
(73)【特許権者】
【識別番号】523001533
【氏名又は名称】ダイオネックス ソフトロン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100162824
【弁理士】
【氏名又は名称】石崎 亮
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ホフマイヤー
(72)【発明者】
【氏名】トビアス メッツ
(72)【発明者】
【氏名】ティル リチャードセン
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ホルナゲル
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2021/0270864(US,A1)
【文献】特表2014-534447(JP,A)
【文献】特表2019-506619(JP,A)
【文献】特開2017-072608(JP,A)
【文献】特開2015-001484(JP,A)
【文献】特表2018-506351(JP,A)
【文献】特表2021-508303(JP,A)
【文献】国際公開第2014/162921(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J20/281-20/292
G01N30/00 -30/96
35/00 -37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロマトグラフィーオートサンプラに設置されたサンプルトレイのサンプルセルを識別するためのシステムであって、各サンプルセルは、(i)側壁を有する容器と、(ii)前記サンプルトレイから見える端面を有するキャップと、を有し、前記システムは、
前記オートサンプラ内のマシンビジョン(MV)モジュールであって、前記MVモジュールは、前記オートサンプラ内の前記サンプルセルの前記側壁及び/又は前記端面をスキャンするように構成された、カメラアセンブリを含む、MVモジュールと、
前記MVモジュールを制御するコンピューティングデバイスであって、前記コンピューティングデバイスは、各サンプルセルのスキャンされた前記側壁及び/又は端面に基づいて、前記サンプルセル内のサンプルの同一性を判定するように構成された、コンピューティングデバイスと、を備え、
前記カメラアセンブリが、各サンプルセルの前記側壁をスキャンするように構成された水平方向カメラと、前記サンプルトレイの全ての前記サンプルセルの前記端面をスキャンするように構成された垂直方向カメラと、を更に備える、システム。
【請求項2】
前記サンプルトレイの各サンプルセルが、それぞれの端面に取り付けられた環状部及び/又はそれぞれの側壁に取り付けられた側面部を有するラベルを提供され、前記環状部が、(i)機械可読文字を含む機械可読端部識別子と、(ii)各キャップ内の隔壁への妨げられていないアクセスのために構成された、開放中心と、を含み、側面部が、バーコードを有する機械可読側面識別子を含む、請求項に記載のシステム。
【請求項3】
前記システムが、前記サンプルトレイに対してそれぞれのサンプルセルを選択的に把持し、持ち上げ、及び回転させるように構成された、セルグリッパアセンブリを更に備え、前記コンピューティングデバイスが、セルグリッパも制御し、前記コンピューティングデバイスが、(i)前記サンプルトレイの隣接するサンプルセル上方のサンプルセルのうちの1つを把持し、持ち上げ、及び回転させるために、前記セルグリッパを制御し、かつ、(ii)前記セルグリッパにより回転させられている間に前記1つのサンプルセルの側壁をスキャンするために、前記水平方向カメラを制御するように構成される、請求項に記載のシステム。
【請求項4】
前記セルグリッパが、
前記サンプルセルのうちの前記1つを選択的に把持し、持ち上げ、及び回転させるように構成されたジョーアセンブリであって、前記ジョーアセンブリがグリッパジョーを含み、前記グリッパジョーが、前記ジョーアセンブリが前記サンプルセルのうちの前記1つの周りに位置決めされ得る開位置と、前記グリッパジョーが前記1つのサンプルセルを把持するために前記1つのサンプルセルに対して付勢されている閉位置と、の間で移動可能である、ジョーアセンブリと、
モータ軸を中心に前記ジョーアセンブリを回転させるように構成されたモータアセンブリであって、モータ本体と、前記モータ本体に対して前記ジョーアセンブリを回転可能に支持する中空モータシャフトと、を含む、モータアセンブリと、
前記開位置と前記閉位置との間で前記グリッパジョーを移動させるように構成されたソレノイドアセンブリであって、前記中空モータシャフトを通して延在し、前記グリッパジョーを移動させるために前記ジョーアセンブリに動作可能に接続されたプランジャを含む、ソレノイドアセンブリと、を更に備える、請求項に記載のシステム。
【請求項5】
前記システムが、前記サンプルセルの各々からサンプルを吸引するためのサンプリング針アセンブリと、前記サンプルの分析物を分離するためのクロマトグラフィーカラムと、前記サンプルの前記分析物を検出するためのクロマトグラフィー検出器と、を更に備える、請求項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年12月28日に出願された米国出願第17/563,151号の継続であり、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、一般に、オートサンプラ内のサンプルセルを識別するためのシステム、並びに、そのような識別を容易にする構成要素、及びそれらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
オートサンプラを扱う作業をする場合、ユーザは、通常、(例えば、バイアル内のサンプルを識別するための)様々なプロトコルに従って、手動でラベルをバイアルに貼付し、その後、サンプルトレイの所定の場所にバイアルを手動で設置する必要がある。また、サンプルトレイが、50個以上のバイアル分の容量を有することを考慮すると、バイアルを誤って別の不適切な場所に装填することによる、エラーの余地がかなりある。一般に、いったんバイアルがオートサンプラに設置されると、適切なバイアルがサンプルトレイの適切な位置にあることを、機器から確認できないため、過程管理保証がほとんど又は全くない。
【0004】
今日のユーザは、一般に、各バイアルがサンプルトレイのどこにあるのか、及び、サンプルトレイがどこに行くのかを、手動で追跡する必要がある。例えば、ユーザは、Chromeleon(商標)クロマトグラフィーデータシステム(CDS)又は他のソフトウェアプラットフォームに、そのような情報を手動で入力する場合がある。後で入力するために、ユーザがそのような情報を紙に書き留める場合もある。残念ながら、ユーザエラーはよくあることであり、重大なエラー率が20%~30%となる可能性がある。
【0005】
場合によっては、ユーザは、サンプル識別を担う、バイアル側面のラベルをスキャンすることができるが、ユーザは、サンプルトレイの適切な位置にバイアルを設置する必要が依然としてある。この設置は依然として手動のプロセスであるため、ユーザエラーの余地が依然としてかなりある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記に照らして、既知のオートサンプラを用いるサンプル識別の上記及び他の欠点を克服するシステム及び方法を有することが有益であろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、クロマトグラフィーオートサンプラに設置されたサンプルトレイのサンプルセルを識別するための方法に関し、各サンプルセルは、(i)側壁を有する容器と、(ii)サンプルトレイから見える端面を有するキャップと、を有する。本方法は、オートサンプラのマシンビジョン(MV)モジュールのカメラアセンブリを用いて、全てのサンプルセルの端面を上部スキャンすることと、コンピューティングデバイスを用いて、上部スキャンに基づき、サンプルトレイ内のサンプルセルの各々の同一性を判定することと、を含み、コンピューティングデバイスはMVモジュールを制御する。
【0008】
本発明の別の態様は、クロマトグラフィーオートサンプラに設置されたサンプルトレイのサンプルセルを識別するための方法に関し、各サンプルセルは、(i)側壁を有する容器と、(ii)サンプルトレイから見える端面を有するキャップと、を有する。本方法は、オートサンプラのセルグリッパを用いて、サンプルセルの各々が、サンプルトレイ内にある間に把持され、サンプルトレイの中から持ち上げられ、サンプルトレイの隣接するサンプルセル上方で回転されるように、サンプルセルの各々を把持し、持ち上げ、及び回転させることと、オートサンプラのマシンビジョン(MV)モジュールのカメラアセンブリを用いて、サンプルセルの各々の側壁を側面スキャンすることと、セルグリッパを用いて、サンプルセルの各々をサンプルトレイに戻すことと、を含み得る。
【0009】
本発明の更なる態様は、クロマトグラフィーオートサンプラに設置されたサンプルトレイのサンプルセルを識別するためのシステムに関し、各サンプルセルは、(i)側壁を有する容器と、(ii)サンプルトレイから見える端面を有するキャップと、を有する。本システムは、オートサンプラ内のマシンビジョン(MV)モジュールであって、MVモジュールは、オートサンプラ内のサンプルセルの側壁及び/又は端面をスキャンするように構成された、カメラアセンブリを含む、MVモジュールと、MVモジュールを制御するコンピューティングデバイスであって、コンピューティングデバイスは、各サンプルセルのスキャンされた側壁及び/又は端面に基づいて、サンプルセル内のサンプルの同一性を判定するように構成され得る、コンピューティングデバイスと、を含み得る。
【0010】
本発明の別の態様は、オートサンプラに設置されたサンプルトレイのサンプルセルを把持し、持ち上げ、及び回転させるように構成された、クロマトグラフィーオートサンプラ用のセルグリッパアセンブリに関する。セルグリッパは、個々のサンプルセルを選択的に把持し、持ち上げ、及び回転させるように構成されたジョーアセンブリであって、ジョーアセンブリがサンプルセルのうちの1つの周りに位置決めされ得る、開位置と、グリッパジョーが1つのサンプルセルを把持するために1つのサンプルセルに対して付勢されている、閉位置との間で移動可能なグリッパジョーを含む、ジョーアセンブリと、モータ軸を中心にジョーアセンブリを回転させるように構成されたモータアセンブリであって、モータ本体と、モータ本体に対してジョーアセンブリを回転可能に支持する中空モータシャフトと、を含む、モータアセンブリと、開位置と閉位置との間でグリッパジョーを移動させるように構成されたソレノイドアセンブリであって、中空モータシャフトを通して延在し、グリッパジョーを移動させるためにジョーアセンブリに動作可能に接続されたプランジャを含む、ソレノイドアセンブリと、を含み得る。
【0011】
また、本発明の更に別の態様は、クロマトグラフィーオートサンプラにおけるサンプル識別用のラベルに関し、サンプルセルはサンプルを収容し、容器と、容器に密封係合するキャップと、サンプル針がキャップを密封通過して、サンプルにアクセスすることを可能にする、隔壁と、を含み得る。本ラベルは、キャップの円形端面に取り付けるために構成された環状部であって、環状部は、隔壁への妨げられていないアクセスのために、及び、隔壁を貫通する針の、ラベルによる汚染を防止するために構成された、開放中心を含む、環状部と、環状部上に位置する機械可読端部識別子であって、端部識別子は、機械可読文字を含む、機械可読端部識別子と、を含み得、サンプルセルがオープントップ型サンプルトレイ内に位置する場合、端部識別子は容易に可視的である。
【0012】
本発明の実施形態は、下記の特徴のうちの1つ以上を含むことができる。
【0013】
サンプルトレイは機械可読トレイ識別子を含むことができ、上部スキャンは、トレイ識別子をスキャンすることを含むことができる。
【0014】
本方法は、各サンプルセルのそれぞれの端面に貼付された固有のラベルに基づいて、サンプルトレイ内のサンプルセルの各々の位置を判定することを、更に含むことができる。
【0015】
クロマトグラフィーオートサンプラは、コンピューティングデバイスを含み得る。
【0016】
本方法は、オートサンプラのセルグリッパを用いて、サンプルセルの各々が、サンプルトレイ内にある間に把持され、サンプルトレイの中から持ち上げられ、サンプルトレイの隣接するサンプルセル上方で回転されるように、サンプルセルの各々を把持し、持ち上げ、及び回転させることと、MVを用いて、カメラアセンブリを用いて、サンプルセルの各々の側壁を側面スキャンすることと、セルグリッパを用いて、サンプルセルの各々をサンプルトレイに戻すことと、を更に含み得る。
【0017】
回転させることは、サンプルセルの各々を約540°回転させることを含み得る。
【0018】
側面スキャンは、サンプルセルの各々の側壁に設けられたバーコードラベルをスキャンすることを含み得る。
【0019】
各サンプルセルの側壁は半透明又は透明であり得、側面スキャンは、(i)各サンプルセル内の最高液位、及び、(ii)各サンプルセルの内部容積の最下部における最低液位を判定することを含み得る。
【0020】
本方法は、(i)それぞれのサンプルセル内の最高液位に基づいて、各サンプルセル内のサンプル量を判定すること、(ii)それぞれのサンプルセル内の最高液位及び最低液位に基づいて、針の位置を調整すること、及び/又は、(iii)それぞれのサンプルセルの最低液位の位置に基づいて、サンプル針の挿入深さを制限することを更に含むことができる。
【0021】
各サンプルセルの容器及び/又はキャップは、識別色を含むことができ、上部スキャン及び側面スキャンのうちの少なくとも1つは、識別色をスキャンすることを含むことができる。
【0022】
本方法は、コンピューティングデバイスを用いて、上部スキャン及び側面スキャンを比較して、把持されたサンプルセルが、更なる処理のための適切なサンプルセルであるか否かを判定することを更に含み得る。本方法は、サンプリング針アセンブリを用いて、サンプルセルの各々からサンプルを吸引することと、クロマトグラフィーカラムを用いて、サンプルの分析物を分離することと、クロマトグラフィー検出器を用いて、サンプルの該分析物を検出することと、を更に含み得る。
【0023】
本方法は、MVモジュールのカメラアセンブリを用いて、全てのサンプルセルの端面を上部スキャンすることを含み得る。本方法は、コンピューティングデバイスを用いて、上部スキャン及び/又は側面スキャンに基づいて、サンプルトレイ内のサンプルセルの各々の同一性を判定することを更に含み得、コンピューティングデバイスはまた、MVモジュール及びセルグリッパも制御する。
【0024】
サンプルトレイは機械可読トレイ識別子を含むことができ、上部スキャンは、トレイ識別子をスキャンすることを含むことができる。
【0025】
本方法は、(i)それぞれのサンプルセル内の最高液位に基づいて、各サンプルセル内のサンプル量を判定すること、(ii)それぞれのサンプルセル内の最高液位及び最低液位に基づいて、針の位置を調整すること、及び/又は、(iii)それぞれのサンプルセルの最低液位の位置に基づいて、サンプル針の挿入深さを制限することを更に含むことができる。
【0026】
各サンプルセルの容器及び/又はキャップは、識別色を含むことができ、上部スキャン及び側面スキャンのうちの少なくとも1つは、識別色をスキャンすることを含むことができる。
【0027】
本方法は、コンピューティングデバイスを用いて、上部スキャン及び側面スキャンを比較して、把持されたサンプルセルが、更なる処理のための適切なサンプルセルであるか否かを判定することを更に含み得る。本方法は、各サンプルセルの固有のラベルに基づいて、サンプルトレイ内のサンプルセルの各々の位置を判定することを更に含み得る。本方法は、サンプリング針アセンブリを用いて、サンプルセルの各々からサンプルを吸引することと、クロマトグラフィーカラムを用いて、サンプルの分析物を分離することと、クロマトグラフィー検出器を用いて、サンプルの該分析物を検出することと、を更に含み得る。
【0028】
カメラアセンブリは、各サンプルセルの側壁をスキャンするように構成された、水平方向カメラを更に含み得る。カメラアセンブリは、サンプルトレイの全てのサンプルセルの端面をスキャンするように構成された、垂直方向カメラを更に含み得る。カメラアセンブリは、各サンプルセルの側壁をスキャンするように構成された、水平方向カメラと、サンプルトレイの全てのサンプルセルの端面をスキャンするように構成された、垂直方向カメラと、を更に含み得る。
【0029】
サンプルトレイの各サンプルセルは、それぞれの端面に取り付けられた環状部及び/又はそれぞれの側壁に取り付けられた側面部を有するラベルを提供され得、環状部は、(i)機械可読文字を含む機械可読端部識別子と、(ii)各キャップ内の隔壁への妨げられていないアクセスのために構成された、開放中心と、を含み、側面部は、バーコードを有する機械可読側面識別子を含む。
【0030】
本システムは、サンプルトレイに対してそれぞれのサンプルセルを選択的に把持し、持ち上げ、及び回転させるように構成された、セルグリッパアセンブリを更に含み得、コンピューティングデバイスはセルグリッパも制御し、コンピューティングデバイスは、(i)サンプルトレイの隣接するサンプルセル上方のサンプルセルのうちの1つを把持し、持ち上げ、及び回転させるために、セルグリッパを制御し、かつ、(ii)セルグリッパにより回転させられている間に1つのサンプルセルの側壁をスキャンするために、水平方向カメラを制御するように構成され得る。
【0031】
セルグリッパは、サンプルセルのうちの1つを選択的に把持し、持ち上げ、及び回転させるように構成された、ジョーアセンブリであって、ジョーアセンブリがサンプルセルのうちの前記1つの周りに位置決めされ得る、開位置と、グリッパジョーが1つのサンプルセルを把持するために1つのサンプルセルに対して付勢されている、閉位置との間で移動可能なグリッパジョーを含む、ジョーアセンブリと、モータ軸を中心にジョーアセンブリを回転させるように構成されたモータアセンブリであって、モータ本体と、モータ本体に対してジョーアセンブリを回転可能に支持する中空モータシャフトと、を含む、モータアセンブリと、開位置と閉位置との間でグリッパジョーを移動させるように構成されたソレノイドアセンブリであって、中空モータシャフトを通して延在し、グリッパジョーを移動させるためにジョーアセンブリに動作可能に接続されたプランジャを含む、ソレノイドアセンブリと、を更に含み得る。
【0032】
本システムは、サンプルセルの各々からサンプルを吸引するためのサンプリング針アセンブリと、サンプルの分析物を分離するためのクロマトグラフィーカラムと、サンプルの該分析物を検出するためのクロマトグラフィー検出器と、を更に含み得る。
【0033】
グリッパジョーはカム面を含み得、プランジャは相補的なカム面を有し、一方向のプランジャの移動は、グリッパジョーのそれぞれの開位置への外向きの移動を引き起こす。グリッパジョーは、それぞれの閉位置に向かって付勢され、反対方向のプランジャの移動が、グリッパジョーのそれぞれの閉位置への内向きの移動を可能にする。
【0034】
セルグリッパは、サンプルトレイから個々のサンプルセルを持ち上げるために、ジョーアセンブリを移動可能に支持する、リフトアセンブリを更に含み得る。セルグリッパは、リフトアセンブリ、モータアセンブリ、及びソレノイドアセンブリを制御する、コンピューティングデバイスを更に含み得る。
【0035】
コンピューティングデバイスは、(i)1つのサンプルセルの周りにグリッパジョーが位置決めされるように、ジョーアセンブリが下げられ、(ii)ソレノイドアセンブリが、グリッパジョーの閉位置への移動に影響を及ぼし、(iii)1つのサンプルセルが、サンプルトレイ内の隣接するサンプルセルの上方にあるように、リフトアセンブリを上昇させて、1つのサンプルセルをサンプルトレイの中から持ち上げ、(iv)モータアセンブリが、モータ軸を中心に、ジョーアセンブリ及び把持された1つのサンプルセルを回転させられる、サンプルセルスキャンシーケンスを用いて構成され得る。
【0036】
リフトアセンブリは、X軸、Y軸及びZ軸に沿って移動するために、ジョーアセンブリを移動可能に支持するガントリアセンブリであってもよく、コンピューティングデバイスはガントリアセンブリを制御する。
【0037】
コンピューティングデバイスは、(i)1つのサンプルセルの上方にガントリアセンブリを位置決めすることと、(ii)グリッパジョーを開位置に移動させることと、(iii)1つのサンプルセルの周りにグリッパジョーが位置決めされるように、ガントリアセンブリを下げることと、(iv)グリッパジョーを閉位置に移動させることと、(v)1つのサンプルセルが、サンプルトレイ内の隣接するサンプルセルの上方にあるように、ガントリアセンブリを上昇させて、1つのサンプルセルをサンプルトレイの中から持ち上げることと、(vi)1つのサンプルセルの側面スキャンを可能にするために、モータ軸を中心に、ジョーアセンブリ及び把持された1つのサンプルセルを回転させることと、を含む、サンプルセルスキャンシーケンスを用いて構成され得る。
【0038】
ラベルは、容器の外面の一部分に取り付けるために構成された側面部を更に含むことができ、側面部は、機械可読側面識別子を含み、側面識別子は、バーコードを含む。ラベルは、環状部及び側面部を相互接続するテザーを更に含むことができ、テザーが、キャップに取り付けられた環状部及び容器に取り付けられた側面部をテザーが相互接続する限り、テザーは、キャップ及び容器が一体のままであるという不正開封防止表示を提供する。
【0039】
容器はバイアルであってもよく、キャップはスナップキャップであってもよく、側面部及び環状部は、それぞれバイアル及びスナップキャップに取り付けるために構成されている。
【0040】
テザーは、側面部から環状部を引き剥がすことなく、スナップキャップがバイアルから取り外されることを可能にするように構成された長さを有する。
【0041】
シートは、複数の上記ラベルを含んでいてもよい。該複数のラベルの各々は、シートに取り付けられた、接着剤層と、取り外し可能な剥離ライナと、を含み得、該複数のラベルの各々は、固有の端部識別子を有し、該複数のラベルの各々は、シートから個別に取り外し、かつキャップの円形端面に取り付けるために構成される構成され得る。
【0042】
本発明のシステム及び方法は、本明細書に組み込まれる添付の図面、及び、本発明の特定の原理を解説するのにともに役立つ以下の詳細な説明から明らかとなるか、又はより詳細に記載される他の特徴及び利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明の様々な態様による、クロマトグラフィーオートサンプラ内のサンプルセルを識別するための例示的なシステムの斜視図である。
図2A図1のシステムによって利用される、一連の例示的なステップ中の、サンプルトレイ、セルグリッパ、及びカメラの配向を示す一連の立面図である。
図2B図1のシステムによって利用される、一連の例示的なステップ中の、サンプルトレイ、セルグリッパ、及びカメラの配向を示す一連の立面図である。
図2C図1のシステムによって利用される、一連の例示的なステップ中の、サンプルトレイ、セルグリッパ、及びカメラの配向を示す一連の立面図である。
図2D図1のシステムによって利用される、一連の例示的なステップ中の、サンプルトレイ、セルグリッパ、及びカメラの配向を示す一連の立面図である。
図2E図1のシステムによって利用される、一連の例示的なステップ中の、サンプルトレイ、セルグリッパ、及びカメラの配向を示す一連の立面図である。
図2F図1のシステムによって利用される、一連の例示的なステップ中の、サンプルトレイ、セルグリッパ、及びカメラの配向を示す一連の立面図である。
図3A図1のシステムのセルグリッパの断面立面図であり、開いた解放位置にあるセルグリッパを示す。
図3B図1のシステムのセルグリッパの断面立面図であり、閉じた把持位置にあるセルグリッパを示す。
図4図1のシステムで使用可能な別のセルグリッパの断面立面図であり、セルグリッパは開いた解放位置にある。
図5A図1のシステムで利用できるラベルの立面図であり、未貼付状態のラベルシートを示す。
図5B図1のシステムで利用できるラベルの立面図であり、サンプルセルに貼付されたラベルを示す。
図6A図5Bのラベル及びサンプルセルの側面図であり、サンプルセル内のサンプルの凹状メニスカスをスキャンすることによる液面検出を図示する。
図6B図5Bのラベル及びサンプルセルの側面図であり、サンプルセル内のサンプルの凸状メニスカスをスキャンすることによる液面検出を図示する。
図7】本発明の様々な態様による、クロマトグラフィーオートサンプラにおけるサンプルセルの識別のための例示的な方法のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
ここで、本発明の様々な実施形態に詳細に言及し、その実施例を添付の図面に図示し、以下に説明する。本発明は、例示的な実施形態とともに説明されるが、本説明は、それらの例示的な実施形態に本発明を限定することを意図していないことを理解されたい。それどころか、本発明は、例示的な実施形態だけでなく、記載された本発明の趣旨及び範囲内に含まれ得る、様々な代替物、修正物、等価物、及び他の実施形態も包含することが意図される。
【0045】
オートサンプラは、システムによる分析を受ける複数のサンプルを保持及び管理するため、クロマトグラフィーシステムで重要な役割を果たす。電荷結合素子(CCD)の普及及び機能の増加により、撮像ベースの自動検査及び分析を提供する際に、マシンビジョン(MV)を利用する多くの用途を可能にした。自動サンプル処理デバイス内でマシンビジョンを利用すると、サンプルセル(及び、セル内のサンプル)の識別を自動化し得、自動サンプル処理プロセス中に他の品質保証を提供し得る、様々な利点及び独自の解決策が提示される。
【0046】
例えば、マシンビジョンを使用して、様々なバーコード、文字、色、目印、形状、及び/又は、サンプルセル内のサンプルを識別するために使用される、他の固有の識別子を認識することができ、所定のクロマトグラフィー法又はプロトコルに特定のサンプルを関連付けるために、ユーザによって従来行われた手動ステップを撤廃し得る。このステップをマシンビジョンで自動化すると、特に大量のサンプルを扱うユーザにとって、使いやすさが向上する可能性がある。マシンビジョンはまた、サンプルトレイを識別する手段を提供することもでき、バイアルの種類(例えば、サンプル保持用対標準物保持用)、バイアルの容量、トレイに装填し得るバイアルの総数、及び/又はトレイの場所などのデータを提供するように構成することができる。
【0047】
ユーザ又は実験プロトコルと、機器内のサンプル保有量との間の不整合を防ぐために、マシンビジョンを利用して、適切なサンプルが処理及び/又は吸引されていることを確認できる。また、マシンビジョンを利用して、セルがサンプルトレイ内に位置している間に、サンプルトレイから見えるサンプルセルの端面に設けられた固有の識別子をスキャンすることができ、その識別子は、その後、コンピューティングデバイスによって処理することができる。信頼性及び性能を改善するために、本発明の様々な態様によるマシンビジョンを利用して、サンプルセル内の液位及び容量追跡を判定することもできる。
【0048】
ここで図面を参照すると、様々な図を通して同様の構成要素が同様の参照番号で示されており、本発明の様々な態様によるクロマトグラフィーオートサンプラ33に装填されたサンプルセル32の識別用の例示的なシステム30を示す、図1に注意が向けられている。複数のサンプルセルがサンプルトレイ35に装填され、次に、トレイがオートサンプラに載せられる。オートサンプラは、一般に、カルーセル36又は他のトレイサポートと、サンプルセルを個別に取り扱うためのセルグリッパアセンブリ38と、セルグリッパアセンブリを操作するためのガントリ39と、サンプルセルの端面及び/又は側面をスキャンするためのマシンビジョン(MV)モジュール41と、カルーセル、セルグリッパ、ガントリ、及びMVモジュールを制御するためのコンピューティングデバイス42と、を含む。ハウジング44は、他の従来の方法で、上記の構成要素を密閉するために提供され得る。ハウジングの一部のみが示されているが、カルーセル上にサンプルトレイを載せるための、好適なポータルを有するオートサンプラの構成要素を、完全に密閉することができることを理解されたい。
【0049】
図1に示すように、オートサンプラ33はカルーセル36を含み、その上に複数のサンプルトレイ35を載せることができる。右下のサンプルトレイは、サンプルセルが完全に装填された状態で示されているが、左下のサンプルトレイ35は、簡略化して説明するために、いくつかの空き位置があり、上のサンプルトレイは簡略化して説明するために、空の状態で示されている。オートサンプラの処理量を最大化するために、全てのサンプルトレイにサンプルセルを完全に装填できることを理解されたい。
【0050】
サンプルトレイが様々な寸法及び構成を有し得ることも理解されよう。例えば、図示のサンプルトレイは、2mL容器の5x8配列を保持するように寸法設定及び構成されている。サンプルトレイは、より少ないサンプルセル又はより多くのサンプルセル(例えば、21個、54個、64個、96個、100個、又はそれ以上)を保持するように構成されてもよく、より小さいサンプルセル又はより大きなサンプルセル(例えば、0.5mL、0.7mL、10mL、20mL、又はそれ以上)を保持するように構成されてもよいことが理解されるであろう。
【0051】
図5Bを参照すると、各サンプルセル32は、一般に、側壁45を有する容器と、容器に密封係合する、環状端面46を有するキャップと、針がキャップを密封通過して、容器内のサンプルにアクセスできるようにする、貫通可能な隔壁48(隠線で示される)と、を含む。例えば、容器はバイアルであり得、キャップはスナップキャップであり得、又は、それらは他の好適なサンプル容器であり得る。
【0052】
図5Aを参照すると、各サンプルセルには、キャップのそれぞれの端面に取り付けられた環状部51と、それぞれの側壁の外面に取り付けられた側面部52と、を有する、ラベル49が設けられ得る。環状部は、隔壁への妨げられていないアクセスのために、その結果として、サンプル針とラベルとの間の不注意による接触に伴う化学的干渉の可能性を低減するために構成された、開放中心54を含む。
【0053】
環状部は、機械可読文字を有する機械可読端部識別子55を含み得る。例えば、端部は、デジタル的に取り込み、変換し、及び/又は他の方法で処理することができる、英数字又は他の好適な図形を含むことができる。側面部は、機械可読印又は機械可読文字を有する、機械可読側面識別子57を含むことができる。例えば、側面識別子は、デジタル的に取り込み、変換し、及び/又は他の方法で処理することができる、英数字、バーコード、及び/又は他の好適な図形を含むことができる。例えば、英数字は、光学文字認識(OCR)によって処理することができる。
【0054】
テザー58は、ラベルの環状部51と側面部52とを相互接続するために設けられてもよい。このようなテザーは、テザーが引き裂かれないままで、キャップに取り付けられた環状部51と、容器に取り付けられた側面部52とを相互接続する限り、それぞれのキャップ及び容器が一体のままであることの不正開封防止表示を提供する。様々な実施形態において、テザーは、側面部から環状部を引き剥がすことなく、バイアルからスナップキャップを取り外すことができるように、寸法設定及び構成された長さを有することができる。このような構成は、スナップキャップ及びバイアルが対のままであり、不注意で他のキャップ及びバイアルと一緒に使用されない、その結果、相互汚染の可能性を低減し得ることを保証する。
【0055】
好都合なことに、サンプルセルがオープントップ型サンプルトレイに位置する場合、端部識別子55は容易に可視的であるため、端部識別子を、単独で又はサンプルトレイに位置する他のサンプルセルとともに、上から容易にスキャンすることができる。
【0056】
図5Aに示すように、複数のラベルを含むシート59を提供し得ることが理解されるであろう。例示的なシートは4個のラベルのみを含むが、シートは1個、2個、3個、又はそれ以上のラベルを含み得ることを理解されたい。ラベルは、他の従来の方法でシートに取り付けられた、接着剤層と、取り外し可能な剥離ライナと、を有することができる。各ラベルは、固有の事前印刷端部識別子及び/又は側面識別子を含み得る。しかしながら、識別子は、クロマトグラフィーデータシステム(CDS)、又は他のソフトウェアプラットフォームを使用して提供又は作成され得、その後、識別子は、専用プリンタ又はネットワーク接続プリンタを使用して、白紙のラベルシートに印刷され得ることを理解されたい。
【0057】
カルーセル36は、サンプルトレイ35を、セルグリッパ38に隣接する装填位置へ及びその位置から、例えば、図1に示された左下のトレイ位置へ及びその位置から回転させ得る。セルグリッパは、側面ラベル49を容易にスキャンできるように、サンプルトレイに対して、垂直軸A(図2Fに示す)の周りで、それぞれのサンプルセル32を選択的に把持し、持ち上げ、及び回転させるように構成され得る。
【0058】
様々な実施形態において、図3A及び図3Bを参照すると、セルグリッパは、サンプルセルのうちの1つを選択的に把持し、持ち上げ、及び回転させるように構成された、ジョーアセンブリ61を含む。ジョーアセンブリは、ジョーアセンブリがサンプルセルのうちの1つの周りに位置決めされ得る、開位置(図2C及び図3Aを参照)と、グリッパジョーが1つのサンプルセルを把持するために1つのサンプルセルに対して付勢されている、閉位置(図2D及び図3Bを参照)との間で移動可能なグリッパジョー62を含む。
【0059】
図示の実施形態では、グリッパジョー62は、グリッパヘッド64内で水平にスライド可能であり、閉位置に向かって付勢されている(図3Bを参照)。グリッパジョーは、圧縮ばね又は他の好適な付勢手段によって、閉位置に向かって付勢され得ることを理解されたい。グリッパジョーは、プランジャ65が、相補的なカム面を有するカム67を対抗して駆動する、内側カム面を有する。プランジャがカム67を下方に駆動すると、カムの相補的なカム面がジョー62を外側に駆動し、グリッパアセンブリを開く(図3Aを参照)。プランジャ及びとカムの上方移動は、グリッパジョーが、閉じた位置に弾け戻れるようにする。つまり、反対方向のプランジャの上方移動は、それぞれの閉位置へのグリッパジョーの内側への移動をもたらす。
【0060】
モータアセンブリ68は、軸Aを中心にジョーアセンブリを回転させるように構成されている(図2Fを参照)。モータアセンブリは、モータ本体70と、モータ本体に対してジョーアセンブリを回転可能に支持する中空モータシャフト71と、を含む。モータアセンブリ68は、ステッピングモータ又は他の好適なモータであってもよいことを理解されたい。ただし、プランジャがモータを通して延在し、グリッパアセンブリの回転を可能にしながらグリッパアセンブリを制御できるようにする、中空モータシャフトで構成されている。
【0061】
ソレノイドアセンブリ73は、グリッパジョーをそれぞれの開位置と閉位置との間で移動させるように構成されている。ソレノイドアセンブリは、中空モータシャフト71を通って延在するプランジャ65を選択的に上下に移動させ、グリッパジョー62に対してカム67を移動させ、ジョーをそれぞれの開位置と閉位置との間で選択的に移動させることにより、ジョーアセンブリを操作する。Johnson Electric製のLedex Brandの薄型リニアソレノイドなど、様々なソレノイドアセンブリを利用できることが理解されよう。また、本アセンブリは、一方向線形アクチュエータ、双方向線形アクチュエータ、又は段階的線形アクチュエータであってもよいことが理解されよう。
【0062】
図1を参照すると、リフトアセンブリは、サンプルトレイから個々のサンプルセルを持ち上げるために、ジョーアセンブリを移動可能に支持する。様々な実施形態において、リフトアセンブリは、ジョーアセンブリをX軸、Y軸及びZ軸に沿って移動させるように構成された、ガントリアセンブリ39である。例えば、Z軸アクチュエータ74は、Z軸トラックに沿ってジョーアセンブリを上下に移動させ、Y軸アクチュエータ75は、対応するY軸トラックに沿った左右の移動をもたらし、X軸アクチュエータ77は、対応するX軸トラックに沿った前後の移動をもたらす。しかしながら、リフトアセンブリは、一次元アクチュエータ(例えば、上下)、二次元アクチュエータ(例えば、上下、及び別の運動軸)、及び/又は他の好適な移送機構を含み得ることが理解されよう。
【0063】
本発明の様々な態様に従って、様々なグリッパアセンブリを利用できることが理解されよう。例えば、グリッパアセンブリ38aは、バイアルのキャップ及び/又はネックを把持するように構成された、旋回グリッパフィンガ62aを含み得る(図4を参照)。このような旋回グリッパフィンガは、板ばね78により、それぞれの閉位置に向かって付勢され得、それにより、プランジャ65aを作動させて板ばねの付勢効果を克服し、グリッパフィンガをそれぞれの開位置に旋回させることができる(図4参照)。あるいは、ThermoFisher Scientific製のTriPlus(商標)500 Headspace Samplerで使用されるような、磁気グリッパアセンブリを利用することもできる。
【0064】
MVモジュールには、オートサンプラ内のサンプルセルの側壁及び/又は環状端面を、スキャン及びデジタル撮像するように構成された、カメラ及び/又は他のデジタル撮像デバイスが設けられる。例えば、MVモジュールは、サンプルセルの環状端面をスキャンするように構成された、垂直方向の上部カメラ80と、各サンプルセルの側壁をスキャンするように構成された、水平方向の側面カメラ81と、を含み得る。Cognex Corporation製のAdvantage 100シリーズOEMスマートカメラ及びAE2 Advantage画像エンジン、並びに他の好適なデジタル撮像デバイスを含むが、これらに限定されない、様々なカメラを利用できることが理解されよう。
【0065】
上部カメラは、サンプルトレイ35に位置する1つ以上のサンプルセル32の画像を取り込むことができるように、垂直に下方に向けることができる(図2Aを参照)。セルグリッパは、サンプルトレイに位置する全てのサンプルセルの、遮るもののない画像を取り込みやすくするため、サンプルトレイの片側に移動され得ることが理解されよう。上部カメラは、図示するようにセルグリッパの上方に位置し得るが、セルグリッパが各セルの上に位置合わせされている間に個々のサンプルセルをスキャンできるように、「上部」カメラ又はデバイスをセルグリッパに取り付け得ることを理解されたい。
【0066】
側面カメラは、サンプルセル32がセルグリッパ38によって支持され、及び軸Aを中心に回転されるときに、その画像を取り込めるように、オートサンプラの片側から水平に向けることができる(図2F参照)。様々な実施形態において、カメラは、サンプルセルが回転されているときに、(図5Bに示された)側壁45の全周の連続画像を取り込むことができる。側面カメラは、側面ラベルが、側面カメラ、又は側壁の円周部(例えば、約180°)に向かって位置合わせされたときに、サンプルセルの静止画像を取り込むように構成され得ることを理解されたい。しかしながら、側壁全体の連続スキャン画像は、以下で明らかになるように、一定の利点がある。
【0067】
オートサンプラ33は、サンプルセル内のサンプルの成分を分析するために、クロマトグラフィーシステムの他の構成要素に流体接続されている、サンプリング針アセンブリ83を含み得る。例えば、システム30は、サンプルを下流のHPLC又はイオンクロマトグラフィーカラム86に導入し、次に、導電性又は他の好適な検出器87に導入するために、サンプル注入バルブ84とともにオートサンプラを含む、クロマトグラフィーシステムであってもよい。その結果、カラム及び検出器は、各サンプルセル内に含まれる、サンプル内の目的の分析物を分離及び検出することができる。
【0068】
ここでコンピューティングデバイス42に目を向けると、コンピューティングデバイスは多数の構成要素を有することができる。いくつかの実施形態では、コンピューティングデバイスに含まれる構成要素の一部又は全部は、1つ以上のマザーボードに取り付けられ得、(例えば、プラスチック、金属、及び/又は他の材料を含む)ハウジングに収納され得る。いくつかの実施形態では、これらの構成要素の一部は、1つ以上の処理デバイス及び1つ以上のストレージデバイスを含み得る、単一のシステムオンチップ(SoC)上に製造され得る。更に、様々な実施形態では、コンピューティングデバイスは、任意の好適なインターフェース(例えば、ユニバーサルシリアルバス(USB)インターフェース、高精細マルチメディアインターフェース(HDMI)インターフェース、コントローラーエリアネットワーク(CAN)インターフェース、シリアルペリフェラルインターフェース(SPI)インターフェース、イーサネットインターフェース、ワイヤレスインターフェース、又は任意の他の適したインターフェース)を使用して、1つ以上の構成要素に結合するための、インターフェース回路を含み得る。例えば、コンピューティングデバイスは、表示デバイスが結合され得る表示デバイスインターフェース回路(例えば、コネクタ及びドライバ回路)を含み得る。
【0069】
コンピューティングデバイスは、1つ以上の処理デバイスを含むことができる。本明細書で使用される場合、「処理デバイス」という用語は、レジスタ及び/又はメモリからの電子データを処理して、その電子データをレジスタ及び/又はメモリに記憶され得る他の電子データに変換する、任意のデバイス又はデバイスの一部を指し得る。処理デバイスは、1つ以上のデジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、中央処理ユニット(CPU)、図形処理ユニット(GPU)、暗号プロセッサ(ハードウェア内で暗号アルゴリズムを実行する専用プロセッサ)、サーバプロセッサ、又は任意の他の好適な処理デバイスを含み得る。
【0070】
コンピューティングデバイスは、1つ以上のストレージデバイスを含み得る。ストレージデバイスは、ランダムアクセスメモリ(RAM)(例えば、スタティックRAM(SRAM)デバイス、磁気RAM(MRAM)デバイス、ダイナミックRAM(DRAM)デバイス、抵抗性RAM(RRAM)デバイス、又は導電性ブリッジRAM(CBRAM)デバイス)、ハードドライブベースのメモリデバイス、ソリッドステートメモリデバイス、ネットワークドライブ、クラウドドライブ、又はメモリデバイスの任意の組み合わせなどの、1つ以上のメモリデバイスを含み得る。いくつかの実施形態では、ストレージデバイスは、処理デバイスとダイを共有するメモリを含み得る。そのような実施形態では、メモリは、キャッシュメモリとして使用され得、例えば、組み込みダイナミックランダムアクセスメモリ(eDRAM)又はスピン転送トルク磁気ランダムアクセスメモリ(STT-MRAM)を含み得る。いくつかの実施形態では、ストレージデバイスは、1つ以上の処理デバイスによって実行されると、コンピューティングデバイスに、本明細書に開示される方法のうちの任意の適したもの又は部分を実行させる命令を有する、非一時的コンピュータ可読媒体を含み得る。
【0071】
コンピューティングデバイスが1つ以上のロジック要素を含み得ることも理解されよう。本明細書で使用される場合、「ロジック」という用語は、ロジックに関連付けられた動作のセットを実行する装置を含み得る。例えば、ロジック要素のいずれかは、コンピューティングデバイスの1つ以上の処理デバイスに、関連付けられた動作のセットを実行させる命令でプログラムされた、1つ以上のコンピューティングデバイスによって実装され得る。特定の実施形態では、ロジック要素は、1つ以上の非一時的コンピュータ可読媒体を含み得、該1つ以上の非一時的コンピュータ可読媒体は、1つ以上のコンピューティングデバイスの1つ以上の処理デバイスによって実行されたとき、1つ以上のコンピューティングデバイスに、関連付けられた動作のセットを実行させる命令を有する。本明細書で使用される場合、「モジュール」という用語は、一緒になってモジュールと関連する機能を実行する、1つ以上のロジック要素の集合を指し得る。モジュール内のロジック要素のうちの異なるものは、同じ形態を採り得るか、又は異なる形態を採り得る。例えば、モジュール内のいくつかのロジックは、プログラムされた汎用処理デバイスによって実装され得、モジュール内の他のロジックは、特定用途向け集積回路(ASIC)によって実装され得る。別の実施例では、モジュール内のロジック要素のうちの異なるものは、1つ以上の処理デバイスによって実行される、異なる命令のセットに関連付けられ得る。モジュールは、関連する図面に描写されるロジック要素の全てを含まない場合があり、例えば、モジュールは、そのモジュールが、そのモジュールを参照して本明細書で考察される動作のサブセットを実行するとき、関連する図面に描写されるロジック要素のサブセットを含み得る。
【0072】
コンピューティングデバイス42は、カルーセル、セルグリッパ、ガントリ、及びMVモジュールを含む、オートサンプラの様々な構成要素を制御するように構成され得る。コンピューティングデバイスは、オートサンプラ自体に統合され得るか、クロマトグラフィーシステムに統合され得るか、又は、オートサンプラ若しくはシステムとの通信及び制御を行うための信号を送信する、パソコン(PC)の一部であり得る。メモリ部は、様々な構成要素を制御する方法に関するソフトウェア命令又はファームウェア命令を含み得る。例えば、コンピューティングデバイスは、Chromeleon(商標)クロマトグラフィーデータシステム(CDS)又は他のソフトウェアプラットフォームを実行するように構成され得るか、又は、それらを行うPCと通信するように構成され得る。
【0073】
コンピューティングデバイスは、セルグリッパ38及びガントリ39を操作して、サンプルトレイ35内の隣接するサンプルセルの上方で、個々のサンプルセル32を把持し、持ち上げ、及び回転させることができる。コンピューティングデバイスは、MVモジュールを操作して、垂直方向の上部カメラを制御し、サンプルトレイに位置決めされた全てのサンプルセルの環状端面をスキャンすることができ、かつ、水平方向の側面カメラを制御し、セルグリッパ回転させられている間に個々のサンプルセルの側壁をスキャンすることができる。ラベルの(i)上部カメラによって取り込まれた環状部51、及び(ii)側面カメラによって取り込まれた側面部52の画像を処理することによって、コンピューティングデバイスは、各サンプルセルのスキャンされた環状端面及び/又は側壁に基づいて、サンプルセル内のサンプルの同一性、及びサンプルトレイ内の各サンプルの位置を判定し得る。
【0074】
本発明の様々な態様によれば、コンピューティングデバイスは、ジョーアセンブリをサンプルトレイの側面に移動することと(図2A)、その後、ジョーアセンブリをサンプルトレイの上方に位置決めすることと(図2B)、その後、グリッパジョーがサンプルセルの周りに位置決めされるように、ジョーアセンブリを下げることと(図2C)、その後、ソレノイドアセンブリがグリッパジョーを閉位置に移動させることと(図2D)、その後、リフトアセンブリを上昇させて、サンプルトレイ内の隣接するサンプルセルの上方にサンプルセルがあるように、サンプルセルをサンプルトレイの中から持ち上げることと(図2E)、その後、モータアセンブリが、モータ軸を中心に、ジョーアセンブリ及び把持された1つのサンプルセルを回転させ、側面カメラがサンプルセルの側壁の画像を取り込めるようにすることと(図2F)、を行う、サンプルセルスキャンシーケンスを用いて構成され得る。その後、このプロセスは、サンプルトレイ内の全てのサンプルセルが同様にスキャンされるまで繰り返され得、全てのサンプルトレイのサンプルセルが処理されるまで再び繰り返され得る。
【0075】
本発明の様々な態様による、サンプルセルを識別する1つの例示的な方法をここで説明することができる。ユーザは、サンプルを含む個々のサンプルセルにラベルを貼り、サンプルセルをサンプルトレイに装填し、サンプルセルをオートサンプラに装填する。様々な実施形態では、スキャンプロセスが始まる前に、上部カメラがサンプルトレイ上の識別子を確認することができる。上部カメラが、サンプルトレイの上方から見える全てのサンプルセルの端面を個別に又は同時にスキャンし、コンピューティングデバイスが、特定のサンプルトレイ内の各サンプルセルの位置を登録する。グリッパが個々のサンプルセルを持ち上げ、側面ラベルを側面カメラに提示する。グリッパがサンプルセルを回転させ、サンプルセルのラベル全体(及び/又は側壁全体)を側面カメラに提示する。そして、グリッパがサンプルセルをサンプルトレイの場所に戻す。サンプルセル(及びその中のサンプル)は、サンプルトレイ内の位置に物理的に登録されているため、コンピューティングデバイスによって追跡することができる。
【0076】
様々な実施形態では、グリッパは、サンプルセルの周囲をスキャンし、そこに貼り付けられた任意のラベルの画像を完全に取り込むために、サンプルセルを約360°回転させるように構成される。また、様々な実施形態では、グリッパはサンプルセルを、リーダの待ち時間を考慮して、約540°、720°、又はそれ以上回転させるように構成されている。
【0077】
サンプルセルの側壁全体をスキャンすると、識別及び追跡が可能になるだけでなく、そのようなスキャンにより、様々なパラメータ(例えば、バイアルの種類、液体の種類、バイアルのサイズ/容量、バイアル内の液面の高さなど)に基づいた、特定のバイアルサイズの識別、サンプルセル内のサンプル針の位置の判定、サンプルセル内の液位の判定(例えば、図6A及び図6Bを参照)、液体量レベルの計算が可能になる。サンプルセルの側壁全体のスキャンは、凹状メニスカスと凸状メニスカスとを区別することと、対応する液位を判定することと、を可能にするために行われ得る(例えば、図6A及び図6Bを参照)。
【0078】
図7を参照して、本発明によるサンプルセル(及びセル内のサンプル)を識別するための別の例示的な方法をここで説明することができる。固有の識別子で個別にラベル付けされた、サンプルを含むサンプルセルのセットが、サンプルトレイに装填され、その後、オートサンプラに装填されると、サンプルセルが、オートサンプラのマシンビジョン(MV)モジュールでスキャンされる。全てのサンプルセルの環状端面が上部カメラによってスキャンされ、その間に、サンプルトレイのトレイ識別子も上部カメラによってスキャンされ得る。
【0079】
サンプルトレイの個々のサンプルセルは、オートサンプラのセルグリッパで把持され、持ち上げられ、回転させられる。具体的には、サンプルセルの各々は、サンプルトレイ内にある間に把持され、サンプルトレイの中から持ち上げられ、サンプルトレイの隣接するサンプルセルの上方で回転させられる。
【0080】
個々のサンプルセルは、MVモジュールの側面カメラでスキャンされ、各サンプルセルの側壁が、側面カメラによってスキャンされる。スキャンは、サンプルセルの各々の側壁に設けられた英数字及び/又はバーコードのスキャンを含んでもよい。側壁の全周が確実にスキャンされるように、各サンプルセルを約360°回転させることが好ましい。
【0081】
個々のサンプルセルは、その後、セルグリッパによってサンプルトレイに戻され、全てのサンプルセルが同様にスキャンされるまで、プロセスが繰り返される。その後、コンピューティングデバイスは、上部スキャン及び/又は側面スキャンに基づいて、各サンプルセル内のサンプルの識別、及びサンプルトレイ内のサンプルセルの位置の識別を行う。
【0082】
様々な実施形態では、各サンプルセルの側壁は、サンプルセル内の液体、及びその液位のデジタル撮像を可能にするために、半透明又は透明である。側面スキャンは、サンプルセルの側壁面全体をスキャンすることと、コンピューティングデバイスが、スキャンされた画像を処理できるようにすることと、各サンプルセル内の最高液位、及び各サンプルセルの内部容積の最下部における最低液位を判定することと、を含み得る。また、様々な実施形態では、コンピューティングデバイスは、スキャンされた画像を処理し、それぞれのサンプルセル内の最高液位に基づいて、各サンプルセル内のサンプルの量を判定する。コンピューティングデバイスはまた、それぞれのサンプルセル内の最高液位及び最低液位に基づいて、サンプル吸引中にサンプル針の位置を調整することもできる。また、コンピューティングデバイスは、それぞれのサンプルセルの最低液位の位置に基づいて、サンプル吸引中のサンプル針の挿入深さを制限することができ、最低液位は、サンプルセルの内部底面、又は、サンプル針を損傷する可能性のある、サンプルセル内の潜在的な異物を示すと考えられる。
【0083】
様々な実施形態では、各サンプルセルの容器及び/又はキャップは識別色を含み得る。そのような場合、上部スキャン及び/又は側面スキャンは、カラー画像を取り込むことができ、コンピューティングデバイスが、そのような識別色に基づいて、サンプルセル及び/又はその中のサンプルの様々なパラメータを識別できるようにすることができる。例えば、1つの色を利用して、サンプルではなく標準物を含むサンプルセルを識別することができる。
【0084】
好都合なことに、本発明の様々な態様によるサンプルセルの側面スキャン及び上部スキャンは、対応するサンプルトレイ内の様々なサンプルセルを、ユーザが手動で配置することを不要なものにするサンプルセルに設けられたラベルは固有の識別子を含むため、ユーザがサンプルをサンプルトレイのどこに設置したかに関係なく、サンプルの識別を知り得る。
【0085】
添付の特許請求の範囲における説明の便宜及び正確な定義のために、「上に」又は「上の」、「下へ」又は「下の」、「左」及び「右」という用語は、図に示されているような特徴の位置を参照して、例示的な実施形態の特徴を説明するために使用される。
【0086】
多くの点で、様々な図の様々な変更された特徴は、前述の特徴のものに類似しており、同じ参照番号の後に下付き文字「a」が続くものは、対応する部分を示す。
【0087】
本発明の特定の例示的な実施形態の前述の説明は、例示及び説明の目的で提示されたものである。網羅的であること、又は本発明を開示された正確な形態に限定することを意図するものではなく、上記の教示に照らして、多くの修正物及び変形物が可能である。例示的な実施形態は、本発明の特定の原理及びそれらの実際の用途を説明するために選択され、説明され、それにより、当業者が、本発明の様々な例示的な実施形態、並びにその様々な代替物及び修正物を、作成及び利用できるようにする。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7