(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】リチウムイオン2次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/131 20210101AFI20240416BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20240416BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240416BHJP
H01M 50/178 20210101ALI20240416BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20240416BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20240416BHJP
H01M 50/129 20210101ALI20240416BHJP
H01M 50/55 20210101ALI20240416BHJP
【FI】
H01M50/131
H01M50/105
H01M10/052
H01M50/178
H01M10/0585
H01M10/0566
H01M50/129
H01M50/55 301
(21)【出願番号】P 2022501621
(86)(22)【出願日】2020-10-19
(86)【国際出願番号】 JP2020039247
(87)【国際公開番号】W WO2021166322
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2020027016
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【氏名又は名称】田中 勝也
(74)【代理人】
【識別番号】100158861
【氏名又は名称】南部 史
(74)【代理人】
【識別番号】100194674
【氏名又は名称】青木 覚史
(72)【発明者】
【氏名】大塚 春男
【審査官】多田 達也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/101353(WO,A1)
【文献】特開2000-138039(JP,A)
【文献】特開2003-323869(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0031581(KR,A)
【文献】特開2001-052660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10 - 50/198
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された状態で外縁同士が接合され、内部空間を形成する一対の外装フィルムと、
前記内部空間に収容される電池本体と、
前記一対の外装フィルムの間において前記電池本体に接続され、外部にまで延びる正極タブ端子と、
前記一対の外装フィルムの間において前記電池本体に接続され、外部にまで延びる負極タブ端子と、を備え、
前記電池本体は、
セパレータフィルムと、
前記セパレータフィルムの第1の主面上に積層され、リチウムを含む正極層と、
前記セパレータフィルムの前記第1の主面とは厚み方向において反対側に位置する第2の主面上に積層される負極層と、
前記正極層の前記セパレータフィルムとは反対側に積層される正極集電箔と、
前記負極層の前記セパレータフィルムとは反対側に積層される負極集電箔と、
前記セパレータフィルム、前記正極層および前記負極層に含浸される電解液と、を含み、
前記一対の外装フィルムのそれぞれは、互いに対向する面である内表面を構成する第1樹脂層を含み、
前記一対の外装フィルムの少なくとも一方の前記内表面には、複数の凸部が互いに離れて配置され、
前記内表面に垂直な方向に見た前記凸部の平面形状の大きさは40μm以上500μm以下であり、
前記凸部は、前記第1樹脂層において他の部分に比べて厚みが大きい部分であり、
隣り合う前記凸部の間には平坦部が形成されて
おり、
前記凸部の各々は、前記凸部よりも幅が大きい前記平坦部に取り囲まれるようにドット状に配置されている、リチウムイオン2次電池。
【請求項2】
前記複数の凸部は、前記正極タブ端子に隣接する領域および前記負極タブ端子に隣接する領域に配置される、請求項1に記載のリチウムイオン2次電池。
【請求項3】
前記第1樹脂層は、
第1の融点を有する第1の層と、
前記第1の融点よりも低い第2の融点を有し、前記内表面を構成する第2の層と、を含む、請求項1または請求項2に記載のリチウムイオン2次電池。
【請求項4】
前記一対の外装フィルムのそれぞれは、
前記第1樹脂層の前記内表面とは反対側の主面上に積層される金属層と、
前記金属層の前記第1樹脂層とは反対側の主面上に積層される第2樹脂層と、をさらに含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のリチウムイオン2次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リチウムイオン2次電池に関するものである。
【0002】
本出願は、2020年2月20日出願の日本出願第2020-027016号に基づく優先権を主張し、当該日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0003】
積層された状態で外縁同士が接合され、内部空間を形成する一対の外装フィルムと、この内部空間に収容される電池本体とを含むリチウムイオン2次電池が知られている(たとえば、特開2006-164868号公報(特許文献1)参照)。特許文献1では、上記内部空間から外部へと延びる端子が、加熱溶着により一対の外装フィルムが互いに接合される際に、外装フィルムを構成する金属箔と短絡することを防止すること等を目的として、熱融着に用いられるヒータヘッドを外装フィルムの端部を避けて押し付けること等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記構造のリチウムイオン2次電池においては、上記一対の外装フィルム同士の確実な接合が、電池の信頼性の観点から重要である。しかし、一対の外装フィルムの互いに接合されるべき領域の間に気泡が残存する場合がある。そうすると、電池の信頼性が低下するという問題が生じ得る。
【0006】
そこで、外装フィルムにおける気泡の残存を抑制することにより信頼性が向上したリチウムイオン2次電池を提供することを、本開示に係る発明の目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の従ったリチウムイオン2次電池は、積層された状態で外縁同士が接合され、内部空間を形成する一対の外装フィルムと、内部空間に収容される電池本体と、一対の外装フィルムの間において電池本体に接続され、外部にまで延びる正極タブ端子と、一対の外装フィルムの間において電池本体に接続され、外部にまで延びる負極タブ端子と、を備える。電池本体は、セパレータフィルムと、セパレータフィルムの第1の主面上に積層され、リチウム(Li)を含む正極層と、セパレータフィルムの第1の主面とは厚み方向において反対側に位置する第2の主面上に積層される負極層と、正極層のセパレータフィルムとは反対側に積層される正極集電箔と、負極層のセパレータフィルムとは反対側に積層される負極集電箔と、セパレータフィルム、正極層および負極層に含浸される電解液と、を含む。一対の外装フィルムのそれぞれは、互いに対向する面である内表面を構成する第1樹脂層を含む。一対の外装フィルムの少なくとも一方の内表面には、複数の凸部が互いに離れて配置される。
【発明の効果】
【0008】
上記リチウムイオン2次電池によれば、外装フィルムにおける気泡の残存を抑制することにより信頼性が向上したリチウムイオン2次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、リチウムイオン2次電池の外観を示す概略斜視図である。
【
図2】
図2は、リチウムイオン2次電池の構造を示す概略断面図である。
【
図3】
図3は、リチウムイオン2次電池の構造を示す概略断面図である。
【
図4】
図4は、実施の形態1における外装フィルムの構造を示す概略断面図である。
【
図5】
図5は、実施の形態2における外装フィルムの構造を示す概略断面図である。
【
図6】
図6は、実施の形態3における外装フィルムの構造を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施形態の概要]
【0011】
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。本開示のリチウムイオン2次電池は、積層された状態で外縁同士が接合され、内部空間を形成する一対の外装フィルムと、内部空間に収容される電池本体と、一対の外装フィルムの間において電池本体に接続され、外部にまで延びる正極タブ端子と、一対の外装フィルムの間において電池本体に接続され、外部にまで延びる負極タブ端子と、を備える。電池本体は、セパレータフィルムと、セパレータフィルムの第1の主面上に積層され、リチウム(Li)を含む正極層と、セパレータフィルムの第1の主面とは厚み方向において反対側に位置する第2の主面上に積層される負極層と、正極層のセパレータフィルムとは反対側に積層される正極集電箔と、負極層のセパレータフィルムとは反対側に積層される負極集電箔と、セパレータフィルム、正極層および負極層に含浸される電解液と、を含む。一対の外装フィルムのそれぞれは、互いに対向する面である内表面を構成する第1樹脂層を含む。一対の外装フィルムの少なくとも一方の内表面には、複数の凸部が互いに離れて配置される。
【0012】
本開示のリチウムイオン2次電池を構成する一対の外装フィルムの少なくとも一方の内表面には、複数の凸部が互いに離れて配置される。この複数の凸部により、一対の外装フィルム同士を接合する際に、空気が通る経路が確保される。そのため、一対の外装フィルムの互いに接合されるべき領域の間に気泡が残存することを抑制することができる。その結果、信頼性が向上したリチウムイオン2次電池が得られる。このように、本開示のリチウムイオン2次電池によれば、外装フィルムにおける気泡の残存を抑制することにより信頼性を向上させることができる。
【0013】
上記リチウムイオン2次電池において、上記複数の凸部は、正極タブ端子に隣接する領域および負極タブ端子に隣接する領域に配置されていてもよい。
【0014】
正極タブ端子および負極タブ端子は、一対の外装フィルムの間から外部にまで延びている。そのため、一対の外装フィルムの互いに接合される領域のうち、正極タブ端子および負極タブ端子に隣接する領域では、正極タブ端子および負極タブ端子の形状に追従しつつ外装フィルム同士が接合される必要がある。その結果、正極タブ端子に隣接する領域および負極タブ端子に隣接する領域では、外装フィルム同士の接合の気密性が低くなるおそれがある。これに対応するため、たとえば一対の外装フィルムの互いに接合される領域の幅(正極タブ端子および負極タブ端子の長手方向における外装フィルムの互いに接合される領域の長さ)を他の領域に比べて大きくする場合がある。このような場合、上記気泡が残存するリスクが大きくなる。これに対し、上記複数の凸部を正極タブ端子に隣接する領域および負極タブ端子に隣接する領域に配置することで、このような場合でも気泡が残存することを抑制することができる。
【0015】
上記リチウムイオン2次電池において、第1樹脂層は、第1の融点を有する第1の層と、第1の融点よりも低い第2の融点を有し、上記内表面を構成する第2の層と、を含んでいてもよい。
【0016】
内表面を融点の低い第2の層の表面とすることにより、一対の外装フィルム同士の接合を加熱融着により達成する場合に、高い気密性を確保することが容易となる。
【0017】
上記リチウムイオン2次電池において、上記一対の外装フィルムのそれぞれは、第1樹脂層の内表面とは反対側の主面上に積層される金属層と、金属層の第1樹脂層とは反対側の主面上に積層される第2樹脂層と、をさらに含んでいてもよい。
【0018】
金属層が一対の樹脂層で挟まれた構造の上記外装フィルムは、本開示のリチウムイオン2次電池を構成する外装フィルムとして好適である。
[実施形態の具体例]
【0019】
次に、本開示のリチウムイオン2次電池の具体的な実施形態を、図面を参照しつつ説明する。以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付しその説明は繰り返さない。
(実施の形態1)
【0020】
図1は、本実施の形態におけるリチウムイオン2次電池の外観を示す概略斜視図である。
図2は、
図1の線分II-IIに沿う断面を示す概略断面図である。
図3は、
図1の線分III-IIIに沿う断面を示す概略断面図である。
【0021】
図1~
図3を参照して、本実施の形態におけるリチウムイオン2次電池1は、一対の外装フィルム10と、電池本体20と、正極タブ端子31と、負極タブ端子32と、を備える。各外装フィルム10は、厚み方向に見て、長方形状の同一形状を有する。一対の外装フィルム10において、長方形の第1の短辺に対応する第1の外縁11同士、第1の長辺に対応する第2の外縁12同士、第2の短辺に対応する第3の外縁13同士および第2の長辺に対応する第4の外縁14同士は、互いに接合されている。より詳細に説明すると、第1の外縁11同士は、正極タブ端子31および負極タブ端子32を挟んで対向する部分を除いて全域にわたって互いに接合されている(
図3参照)。第2の外縁12同士、第3の外縁13同士および第4の外縁14同士は、周方向の全域にわたって接合されている。本実施の形態においては、外縁11~14は、融着することにより接合されている。接合は、加熱融着により達成することができる。すなわち、一対の外装フィルム10においては、積層された状態で外縁11~14同士が接合(融着)されている。
図2を参照して、一対の外装フィルム10は、それぞれ互いに対向する面である内表面10Aと、内表面10Aとは反対側の主面である外表面10Bとを含む。一対の外装フィルム10の対向する内表面10Aの間に内部空間10Cが形成されている。
【0022】
図2を参照して、内部空間10C内には、電池本体20が収容されている。電池本体20は、セパレータフィルム21と、正極層22と、負極層23と、正極集電箔24と、負極集電箔25と、電解液26と、を含む。
【0023】
セパレータフィルム21は、樹脂製のフィルムである。セパレータフィルム21を構成する樹脂としては、たとえばポリオレフィン、ポリイミド、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート(PET))、セルロースなどを採用することができる。
【0024】
正極層22は、セパレータフィルム21の一方の主面である第1の主面21A上に積層されている。本実施の形態の正極層22は、板状のリチウム複合酸化物の焼結体である。正極層22は、バインダーを含んでいない。リチウム複合酸化物とは、LixMO2(0.05<x<1.10であり、Mは少なくとも1種類の遷移金属であり、Mは典型的にはCo(コバルト)、Ni(ニッケル)及びMn(マンガン)の1種以上を含む)で表される酸化物を意味する。
【0025】
負極層23は、セパレータフィルム21の第1の主面21Aとは厚み方向において反対側に位置する第2の主面21B上に積層されている。負極層23は、負極活物質としての黒鉛などのカーボンと、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのバインダーとを含む。
【0026】
正極集電箔24は、正極層22のセパレータフィルム21とは反対側に積層されている。正極集電箔24は、導電体である金属製の箔である。正極集電箔24を構成する金属としては、たとえばAl(アルミニウム)を採用することができる。正極集電箔24は、正極層22と外装フィルム10の内表面10Aとの間に配置されている。正極集電箔24は、外装フィルム10の内表面10Aに沿って配置されている。
【0027】
負極集電箔25は、負極層23のセパレータフィルム21とは反対側に積層されている。負極集電箔25は、導電体である金属製の箔である。負極集電箔25を構成する金属としては、たとえばCu(銅)、Alなど採用することができる。負極集電箔25は、負極層23と外装フィルム10の内表面10Aとの間に配置されている。負極集電箔25は、外装フィルム10の内表面10Aに沿って配置されている。
【0028】
電解液26は、セパレータフィルム21、正極層22および負極層23に含浸されている。電解液26としては、有機溶媒(たとえばエチレンカーボネート(EC)及びメチルエチルカーボネート(MEC)の混合溶媒、エチレンカーボネート(EC)及びジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒、またはエチレンカーボネート(EC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)の混合溶媒)にリチウム塩(例えばLiPF6)塩を溶解させた液などを採用することができる。
【0029】
正極タブ端子31は、一対の外装フィルム10の間において電池本体20に接続され、外部にまで延びている。負極タブ端子32は、一対の外装フィルム10の間において電池本体20に接続され、外部にまで延びている。正極タブ端子31は、正極集電箔24と接続されている。負極タブ端子32は、負極集電箔25と接続されている。正極タブ端子31および負極タブ端子32は、帯状の形状を有している。
図3を参照して、正極タブ端子31は、導電体製の本体部31Aと、本体部31Aの表面を覆うように配置される樹脂製の保護層31Bとを含む。負極タブ端子32は、導電体製の本体部32Aと、本体部32Aの表面を覆うように配置される樹脂製の保護層32Bとを含む。本体部31A,32Aを構成する導電体としては、Al(アルミニウム)、Ni(ニッケル)などの金属を採用することができる。
【0030】
次に、本実施の形態の外装フィルム10の構造について説明する。
図4を参照して、外装フィルム10は、金属層が一対の樹脂層で挟まれた構造を有している。より具体的には、外装フィルム10は、内表面10Aを構成する第1樹脂層105と、第1樹脂層105の内表面10Aとは反対側の主面上に積層される金属層101と、金属層101の第1樹脂層105とは反対側の主面上に積層される第2樹脂層102とを含む。第2樹脂層102は、外表面10Bを構成する。第1樹脂層105は、第1の融点を有する第1の層103と、第1の融点よりも低い第2の融点を有し、内表面10Aを構成する第2の層104とを含む。
【0031】
第2樹脂層102を構成する樹脂は、たとえばポリエステル(たとえばPET)である。金属層101を構成する金属は、たとえばAlである。第1の層103を構成する樹脂は、たとえばポリプロピレン(PP)である。第2の層104を構成する樹脂は、第1の層103を構成する樹脂よりも融点の低い低融点熱可塑性樹脂である。具体的には、第2の層104を構成する樹脂としては、70℃以上130℃以下程度の融点を有する樹脂を採用することが好ましく、たとえばポリオレフィン系エラストマーなどを採用することができる。
【0032】
一対の外装フィルム10の少なくとも一方の内表面10Aには、複数の凸部109が互いに離れて配置されている。複数の凸部109は、一対の外装フィルム10のそれぞれの内表面10A(一対の外装フィルム10の両方の内表面10A)に形成されていてもよい。本実施の形態においては、ドット状の凸部109が内表面10Aに分散している。凸部109は、規則的に並べて配置されていてもよいし、ランダムに分散していてもよい。第2の層104は、たとえば第1の層103上に低融点熱可塑性樹脂を塗工することにより形成することができる。凸部109は、たとえば低融点熱可塑性樹脂に融点、分子量、組成等が異なる分散材を混入されることにより形成されてもよいし、低融点熱可塑性樹脂の内部に不均一性を生じさせることで形成してもよいし、第2の層104の形成時に型などを用いて形成してもよい。内表面10Aに垂直な方向に見た凸部109の平面形状の大きさ(凸部109を取り囲む最小の円の直径)は、たとえば走査電子顕微鏡やレーザー顕微鏡、三次元形状測定機等を用いて測定することができ、たとえば40μm以上500μm以下とすることができる。また、凸部109の高さは、たとえば走査電子顕微鏡やレーザー顕微鏡、三次元形状測定機等を用いて測定することができ、たとえば20μm以上180μm以下とすることができる。
【0033】
本実施の形態のリチウムイオン2次電池においては、複数の凸部109により、一対の外装フィルム10同士を接合する際に、空気が通る経路が確保される。そのため、一対の外装フィルム10の互いに接合されるべき領域の間に気泡が残存することを抑制することができる。その結果、本実施の形態のリチウムイオン2次電池は、外装フィルム10における気泡の残存を抑制することにより信頼性が向上したリチウムイオン2次電池となっている。
【0034】
また、本実施の形態のリチウムイオン2次電池においては、第1樹脂層105が低融点熱可塑性樹脂からなる第2の層104を含んでいる。そのため、一対の外装フィルム10同士を加熱融着により接合する際に、高い気密性を確保することが容易となっている。第2の層104は、外装フィルム10の内表面10Aの第4の外縁14に対応する領域を除く全域にわたって形成されていてもよい。このようにすることにより、電池本体20、正極タブ端子31および負極タブ端子32を挟んで外装フィルム10の第1の外縁11、第2の外縁12および第3の外縁13を加熱融着し、内部空間10Cに電解液26を入れた後、第4の外縁14を加熱融着するプロセスを採用する場合に、第1の外縁11、第2の外縁12および第3の外縁13を加熱融着する際に、意図せず第4の外縁14が融着されることを回避することが容易となる。
【0035】
また、本実施の形態のリチウムイオン2次電池において、複数の凸部109は、少なくとも正極タブ端子31に隣接する領域および負極タブ端子32に隣接する領域に配置されていることが好ましい。このようにすることにより、正極タブ端子31に隣接する領域および負極タブ端子32に隣接する領域において気密性が低下することを抑制するため、たとえば第1の外縁11において接合される領域の幅を第2の外縁12、第3の外縁13および第4の外縁14に比べて大きくした場合でも、第1の外縁11において気泡が残存することを抑制することができる。複数の凸部109は、第2の層104の全域にわたって形成されていてもよい。
(実施の形態2)
【0036】
次に、他の実施の形態である実施の形態2について説明する。
図5は、実施の形態2におけるリチウムイオン2次電池1の外装フィルム10の構造を示す概略断面図である。実施の形態2のリチウムイオン2次電池は、基本的には実施の形態1の場合と同様の構成を有し、同様の効果を奏する。しかし、
図5および
図4を参照して、実施の形態2のリチウムイオン2次電池を構成する外装フィルム10は、第1樹脂層105が第2の層104を含まない点において実施の形態1の場合とは異なっている。
【0037】
実施の形態1において説明した通り、外装フィルム10の接合を加熱圧着により達成する場合、第2の層104が存在することにより高い気密性を確保することが容易となる。しかし、第2の層104が存在しない場合であっても、一対の外装フィルム10の少なくとも一方の第1樹脂層105(第1の層103)の表面である内表面10Aに複数の凸部109が配置されることにより、気泡の残存を抑制することができる。
(実施の形態3)
【0038】
次に、さらに他の実施の形態である実施の形態3について説明する。
図6は、実施の形態3におけるリチウムイオン2次電池1の外装フィルム10の構造を示す概略断面図である。実施の形態3のリチウムイオン2次電池は、基本的には実施の形態1の場合と同様の構成を有し、同様の効果を奏する。しかし、
図6および
図4を参照して、実施の形態3のリチウムイオン2次電池を構成する外装フィルム10は、凸部109の形状等において実施の形態1の場合とは異なっている。
【0039】
具体的には、実施の形態3の凸部109は、ストライプ状に並べて配置された複数の第2の層104である。すなわち、実施の形態1においては、凸部109は第2の層104の表面に形成されていたのに対し、実施の形態3においては、第1の層103の表面に並べて配置された線状(帯状)の第2の層104自体が凸部109として機能する。このような構造を採用した場合でも、第1樹脂層105(第1の層103)の表面である内表面10Aに複数の凸部109(第2の層104)が配置されることにより、気泡の残存を抑制することができる。
【0040】
上記ストライプ状に並べて配置された複数の第2の層104は、たとえば第1の層103の表面に第2の層104を塗工する際に、ストライプ状の開口を有するマスクを使用することにより形成することができる。
【0041】
また、第2の層104(凸部109)の形態はストライプ状に限られず、たとえば平面形状(内表面10Aに垂直な方向から見た形状)が円形、楕円形、多角形等の第2の層104(凸部109)が、マトリックス状に並べて配置される形態を採用してもよい。
【0042】
上述した実施の形態では、正極層22として、バインダーを含まない板状のリチウム複合酸化物の焼結体が用いられる場合を説明したが、これに限定されない。たとえば、正極層22としては、正極活物質(材質:LiCoO2等)、バインダーおよび導電助剤で形成される塗工電極を用いることができる。また、セパレータフィルム21として、樹脂製のフィルムが用いられる場合を説明したが、これに限定されない。たとえば、セパレータフィルム21としては、MgO、Al2O3、ZrO2、SiC、Si3N4、AlN、およびコーディエライトから選択されるセラミック製のフィルムを用いることができる。さらに、負極層23として、負極活物質としてのカーボンとバインダーとを含むものが用いられる場合を説明したが、これに限定されない。たとえば、負極層23としては、チタン酸リチウムLi4Ti5O12(以下、LTO)またはニオブチタン複合酸化物Nb2TiO7を含むチタン含有焼結体を用いることができる。
【実施例】
【0043】
凸部の平面形状の大きさおよび凸部の高さを変化させた場合の気泡の残存状況および封止性への影響を調査する実験を行った。実験の手順は以下のとおりである。
【0044】
上記実施の形態1と同様の構造を有するリチウムイオン2次電池において、凸部の平面形状の大きさおよび凸部の高さを変化させたサンプルを作製した。具体的には、まず、外装フィルム10のうち金属層101、第2樹脂層102および第1の層103として、Alラミネートを準備した(
図4参照)。本実験では、Alラミネートとして昭和電工株式会社製SPALF(登録商標)を採用した。
【0045】
このAlラミネートの第1の層103に対応するポリプロピレン層上に、熱可塑性樹脂溶液を、乾燥後の厚みが20μm程度となるように塗工することにより第2の層104を形成した。本実験では、熱可塑性樹脂溶液として東洋紡株式会社製ハードレン(登録商標)を採用した。塗工方法としては、グラビアコートを採用した。この第2の層104の表面に、所望の大きさおよび高さのドット状の凸部109を形成して、外装フィルム10を得た。凸部109の平面形状は円形である。凸部109は、所望の大きさ(直径)および高さのドット状の凸部109を印刷可能なグラビアロールを使用して形成した。表面のドットの形状が異なる複数種類のグラビアロールを使用して、大きさおよび高さの異なる凸部109を有する複数種類の外装フィルム10を準備した。これらの外装フィルム10を用いて、実施の形態1と同様の構造を有するリチウムイオン2次電池1のサンプルを作製した(実施例)。比較のため、凸部109の形成を省略した外装フィルム10を用いて、実施の形態1と同様の構造を有するリチウムイオン2次電池1のサンプルを作製した(比較例)。
【0046】
そして、各サンプルについて、外縁11~14における気泡の残存状態および封止強度を確認する実験を行った。気泡の残存状態は、外縁11~14を目視によって観察することにより確認した。封止強度は、外縁11~14に対して、ピール試験を実施することにより確認した。ピール試験としては、外縁11~14に対してISO11339に従ったT字試験を採用した。ピール速度は300mm/分とした。各サンプルの凸部の大きさおよび高さ、ならびに実験結果を表1に示す。
【表1】
表1において、気泡の有無については、気泡が確認されなかったものをA、わずかに確認されたものをB、明確に気泡の残存が確認されたものをC、と評価した。封止強度については、外縁11~14の複数個所で強度を確認した結果、全ての部分で十分な強度が得られたものをA、一部で強度の低下が見られたものをB、より多くの部分で強度の低下が見られたものをCと評価した。
【0047】
表1を参照して、凸部109の高さが20μm未満であるサンプル1および2は、凸部109が存在しないサンプル9に比べて気泡の残存および封止強度の観点から優れているものの、気泡の残存が確認されなかったサンプル3~7に比べると、信頼性において劣るものと考えられる。一方、凸部109の高さが180μmを超えるサンプル8は、凸部109が存在しないサンプル9に比べて気泡の残存および封止強度の観点から優れているものの、サンプル3~7に比べると、封止強度において劣る。したがって、凸部109の高さは、20μm以上180μm以下が好ましいものといえる。
【0048】
凸部109の大きさ(直径)が40μm未満であるサンプル1および2は、凸部109が存在しないサンプル9に比べて気泡の残存および封止強度の観点から優れているものの、気泡の残存が確認されなかったサンプル3~7に比べると、信頼性において劣るものと考えられる。一方、凸部109の大きさが500μmを超えるサンプル8は、凸部109が存在しないサンプル9に比べて気泡の残存および封止強度の観点から優れているものの、サンプル3~7に比べると、封止強度において劣る。したがって、凸部109の大きさは、40μm以上500μm以下が好ましいものといえる。
【0049】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなく、請求の範囲によって規定され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0050】
1 リチウムイオン2次電池、10 外装フィルム、10A 内表面、10B 外表面、10C 内部空間、11 第1の外縁、12 第2の外縁、13 第3の外縁、14 第4の外縁、20 電池本体、21 セパレータフィルム、21A 第1の主面、21B 第2の主面、22 正極層、23 負極層、24 正極集電箔、25 負極集電箔、26 電解液、31 正極タブ端子、31A 本体部、31B 保護層、32 負極タブ端子、32A 本体部、32B 保護層、101 金属層、102 第2樹脂層、103 第1の層、104 第2の層、105 第1樹脂層、109 凸部。