(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】アルコールの検出のための分析物センサ
(51)【国際特許分類】
A61B 5/1486 20060101AFI20240416BHJP
G01N 27/30 20060101ALI20240416BHJP
G01N 27/327 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
A61B5/1486
G01N27/30 A
G01N27/327 353U
(21)【出願番号】P 2022512867
(86)(22)【出願日】2020-08-28
(86)【国際出願番号】 US2020048497
(87)【国際公開番号】W WO2021041875
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-03-30
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500211047
【氏名又は名称】アボット ダイアベティス ケア インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT DIABETES CARE INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】フェルドマン、ベンジャミン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】オーヤン、ティエンメイ
(72)【発明者】
【氏名】ワリ、アフメド ヒシャーム
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0024130(US,A1)
【文献】国際公開第2019/006413(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/1468-5/1486
G01N 27/30-27/327
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織に植え込まれるように構成されているとともに少なくとも作用電極を含むセンサテール;及び
作用電極の表面に配置された少なくとも1つのアルコール応答性活性領域
を含む分析物センサであって、前記少なくとも1つのアルコール応答性活性領域は、少なくとも、(i)ケトレダクターゼ、(ii)ジアホラーゼ、及び(iii)酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD
+)又は酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NAD(P)
+)のいずれかである補因子を含み、
前記補因子によって媒介されるケトレダクターゼとジアホラーゼとの間の反応が、アルコールの濃度に比例する信号を生成する、分析物センサ。
【請求項2】
ケトレダクターゼはアルドケトレダクターゼである、請求項1に記載の分析物センサ。
【請求項3】
ケトレダクターゼは、KRED-P1-A04、KRED-P2-C11、KRED-P2-G03、又はKRED-P2-H07である、請求項1に記載の分析物センサ。
【請求項4】
前記少なくとも1つのアルコール応答性活性領域上に膜が配置されている、請求項1に記載の分析物センサ。
【請求項5】
膜は、ポリビニルピリジン、ポリビニルイミダゾン、又はそれらの任意のコポリマーのうちの1つである、請求項4に記載の分析物センサ。
【請求項6】
前記少なくとも1つのアルコール応答性活性領域はポリマーを含む、請求項1に記載の分析物センサ。
【請求項7】
ケトレダクターゼ及びジアホラーゼは前記ポリマーに化学的に結合している、請求項6に記載の分析物センサ。
【請求項8】
前記少なくとも1つのアルコール応答性活性領域は、電子移動剤を含む、請求項1に記載の分析物センサ。
【請求項9】
前記少なくとも1つのアルコール応答性活性領域は、安定剤を含む、請求項1に記載の分析物センサ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
個体内の様々な分析物の検出は、健康やウェルビーイングの状態をモニタリングするために時として不可欠な場合がある。通常の分析物レベルからの逸脱は、代謝状態や病気などの根本的な生理学的状態、又は特定の環境要因や刺激への曝露を示していることがよくある。
【0002】
個体の分析物モニタリングは、定期的に又は一定期間にわたって継続的に行われる場合がある。定期的な分析物モニタリングは、1つ以上の時間間隔で血液などの体液のサンプルを採取し、生体外で分析することによって行われ得る。継続的な分析物モニタリングは、分析が生体内で実施され得るように、皮膚内、皮下又は静脈内などの、個体の組織内に少なくとも部分的に埋め込まれたままである1つ以上のセンサを使用して行われ得る。埋め込まれたセンサは、例えば、個体の特定の健康上のニーズ及び/又は以前に測定された分析物レベルに応じて、任意の指示された速度で分析物データを収集することができる。
【0003】
分析物を検知するための適切な化学的性質を特定することができれば、任意の分析物が生体内での分析に適したものであり得る。実際、グルコースを分析するために構成された生体内アンペロメトリーセンサが近年開発され、改良されてきた。同様にモニタリングすることが望ましいと思われる生理学的調節不全に一般的にさらされる他の分析物には、乳酸、酸素、pH、A1c、ケトン、薬物等のレベルが含まれるが、これらに限定されない。
【0004】
個人の健康に特に重要である可能性のある別の分析物は、アルコールレベルである。実際、個人の生体内アルコールレベルに関連する情報は、関心のある別の分析物のレベルを予測又はモニタリングするために使用することができる。例えば、アルコールは、血糖値が自然に調節不全になっている、又は介入なしに恒常性を欠いている個人の血糖コントロールを変える可能性があり、これは個人に有害である可能性がある。アルコールによって調節不全になる可能性のある他の分析物には、とりわけ、トリグリセリド(例えば、心臓病、脳卒中、血圧、肥満に関連する)、γ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)(例えば、がん、肝炎、骨疾患に関連する)、及びコルチゾール(例えば、ストレス、炎症に関連する)がある。したがって、個人のアルコールレベルをモニタリングすることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0005】
添付の図面は、本開示の特定の態様を説明するために含まれており、排他的な実施形態として見なされるべきではない。開示された主題は、本開示の範囲から逸脱することなく、形態及び機能においてかなりの修正、変更、組み合わせ、及び同等物が可能である。
【
図1】本開示の分析物センサを組み込むことができる例示的な検知システムの図を示す。
【
図2A】本明細書に開示のいくつかの実施形態での使用に適合する、単一の作用電極を有する例示的な2電極分析物センサ構成の図を示す。
【
図2B】本明細書に開示のいくつかの実施形態での使用に適合する、単一の作用電極を有する例示的な3電極分析物センサ構成の図を示す。
【
図3】本明細書に開示のいくつかの実施形態での使用に適合する、2つの作用電極、参照電極及びカウンター電極を有する例示的な分析物センサ構成の図を示す。
【
図4A】本開示の様々な実施形態による、作用電極上に配置されたケトレダクターゼ、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、及びジアホラーゼを使用するアルコール検出に関連する協調酵素系を示す。
【
図4B】本開示の様々な実施形態による、作用電極上に配置されたケトレダクターゼ、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスファート、及びジアホラーゼを使用するアルコール検出に関連する協調酵素系を示す。
【
図5A】様々なエタノール濃度に対する、様々なKRT含有センサの応答のグラフ表示を示す。
【
図5B】様々なエタノール濃度に対する、様々なKRT含有センサの応答のグラフ表示を示す。
【
図5C】様々なエタノール濃度に対する、様々なKRT含有センサの応答のグラフ表示を示す。
【
図5D】様々なエタノール濃度に対する、様々なKRT含有センサの応答のグラフ表示を示す。
【
図5E】4mMエタノールでの
図5A~5CからのKRT含有センサのうちの4つのセンサの応答のグラフ表示を示す。ベースライン(EtOH曝露なし)から4mMエタノールまでの電流応答の変化(Δ)を示している。
【
図6A】様々なエタノール濃度に対する、様々なKRT含有センサの応答のグラフ表示を示す。
【
図6B】
図6Aで測定されたエタノール濃度の線形感度応答を示す。
【
図6C】
図6Aの様々なKRT含有センサの安定性応答のグラフ表示を示す。
【
図7】アルデヒド曝露に対する、様々なKRT含有センサ及びADH対照センサの安定性応答のグラフ表示を示す。
【
図8】ADH対照と比較した様々なKRTのカイネティクスアッセイの結果のグラフ表示を示す。
【
図9A】
図9A及び9Bは、異なるアルコールタイプにおける2つのKRTのカイネティクスアッセイの結果のグラフ表示を示す。
【
図10A】
図10A及び10Bは、IPAに対する様々な組成の2つのKRT含有センサの応答のグラフ表示を示す。
【
図11A】
図11A及び11Bは、異なる追加のポリマー及び架橋剤組成物を有する様々なKRT含有センサの安定性応答のグラフ表示を示す。
【
図12A】様々なエタノール濃度を含むことに対する特定のポリマー組成物を含む特定のKRT含有センサの応答のグラフ表示を示す。
【
図12B】
図12Aで測定されたエタノール濃度の線形感度応答を示す。ADH対照とは、信号からのアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)を意味する。
図12A~12Bは、ADHとKRT A15の直線性を比較している。
【
図13】特定のポリマー組成物を含む特定のKRT含有センサの安定性応答のグラフ表示を示す。
図13は、ADHとKRT A15のビーカー安定性を比較している。
【
図14】2つの異なる溶媒に浸漬された膜を有する特定のKRT含有センサの安定性応答のグラフ表示を示す。
【
図15】異なる膜組成を有する様々なKRT含有センサの安定性応答のグラフ表示を示す。
【
図16】異なる膜及び架橋剤組成を有する様々なKRT含有センサの安定性応答のグラフ表示を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
詳細な説明
本開示は、概して、生体内アルコールレベルの検出のための酵素を使用する分析物センサ及び方法を説明する。
【0007】
分析物センサは、様々な分析物を検出するために一般的に使用され、通常、特定の基質に対して特定の特異性を有する酵素を使用する。例えば、グルコース応答性分析物センサは、糖尿病患者が健康をよりよく管理するのを支援するために、十分に研究され、かつまだ進展している分野を代表する。しかしながら、他の生体内分析物も重要であり、個人の健康を決定及び/又はモニタリングするのに非常に価値があるかもしれない。これには、他の分析物の調節不全に対する目的の分析物の影響を決定及び/又はモニタリングすることが含まれる。
【0008】
個人の生体内アルコール濃度は、アルコール消費量、中毒、及び/又は様々な生理学的要因に基づいて劇的に変化する可能性がある。例えば、アルコールを代謝する能力は個人によって異なり、したがって、体重あたり同じ用量のアルコールを消費しても、アルコールレベルは個人間で異なる。実際、組織内のアルコールの平衡濃度は、少なくとも水分含有量、血流速度、及び組織の質量に依存する。アルコールは生体膜を通過することができるため、アルコールは血流からすべての組織及び体液に容易に流れることができ、この流れは組織及び体液の水分含有量に比例する。さらに、まれに、個人は、アルコールを消費しなくても、消化器系内の内因性発酵によって大量のアルコールを生産する場合がある。上記のように、特定の濃度のアルコールの存在は、個人の1つ以上の他の分析物の機能にさらに影響を及ぼす可能性があり、個人の健康にさらに影響を及ぼし得る。
【0009】
現在のアルコール測定は、物理的な血液サンプル、尿サンプル、唾液サンプルを採取するか、呼気検査を使用して行われる。ただし、このような測定値は時間的に静的であり、場合によっては、偽陽性又は偽陰性の結果に悩まされる可能性があり、したがって少なくとも時折不正確になる可能性がある。これとは異なり、本開示は、健康管理を促進するために経時的にアルコールに応答する分析物センサを提供する。本明細書で使用される場合、「アルコール」という用語、及びその文法的変形は、任意の第一級、第二級、又は第三級アルコールを指す。例えば、本開示のアルコールセンサは、エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロピルアルコールなど、及びそれらの任意の組み合わせを検出することができる。
【0010】
本明細書に記載のアルコールセンサは、生体内アルコールレベルに応答し、前記アルコールレベルの「連続的な」測定を提供することができる。すなわち、本明細書に記載のアルコールセンサは、数秒、数分、又は数時間から数日、数週間、又は数ヶ月などの延長された(連続的な)期間にわたって複数のアルコール濃度測定を提供するように動作可能であり得る。
【0011】
アルコールセンサは、結果として生じる生理学的状態、及び、関心のある他の分析物への影響に関連するアルコールの動的レベルをモニタリングするための多くの利点を提供し得る。例えば、本開示のセンサは、1つ以上のケトレダクターゼ(本明細書では「KRT」と称する)を含む特殊な酵素反応を利用する。本明細書に記載のKRTを含む検知化学は、個人のアルコールレベルの典型的な検出に関連する様々なハードルを有利に克服する。これらには、以下により詳細に論じられるように、検知化学の酵素反応の1つ以上の生成物による酵素阻害を克服することが含まれる。酵素阻害を克服することにより、本開示のアルコールセンサは、とりわけ、単一の質量制限膜の使用、及び、求められる検知領域構成の複雑さを抑えつつ、かつ効果を損なうことなく、より費用効果の高いセンサの製造を可能にし得る。KRTを含む化学的性質は、さらに有利なことに、一級アルコール及び二級アルコールの両方を感知でき、二級アルコールの検出に対する親和性は特に予想外である。
【0012】
本明細書に記載の連続的アルコールセンサを装着している個人は、リアルタイムのアルコールレベル情報にアクセスして、それに基づき、例えば運転が安全かどうか、グルコースや他の分析物レベルがアルコールレベルに基づいて調節不全になりそうかどうか、したがってアクションが必要かなど、及びそれらの任意の組み合わせの様々な決定を下すことができる。さらに、本開示のアルコールセンサは、アルコールの誤用、乱用、又は依存症に苦しむ個人のアルコールレベルをモニタリング、テスト、及び/又は評価するために使用することができる。そうすることで、そのような個人の健康は、個人自身によって、又は医療従事者又は法執行の専門家によってモニタリングされ得る。ディスプレイユニットやそのデバイスを含む、本明細書に記載のセンサ及び検知システムの動作に関連するセンサ電子機器及び処理アルゴリズムも、アルコール濃度及びそれに基づく提案された行動に関する指示、ガイダンス、推奨、及び/又は出力を提供し得る。適切な処理アルゴリズム、プロセッサ、メモリ、電子部品などは、信頼性のあるコンピュータシステム、リモート端末、クラウドサーバ、リーダデバイス、及び/又はセンサ自体のハウジングのいずれにも存在し得る。ガイダンス、推奨、出力などは、これらのコンポーネントの1つ以上と電子通信している適切なディスプレイユニット又はデバイスに表示され得る。ディスプレイユニット又はデバイスは、専用のリーダデバイス又は携帯電話などの個人用通信デバイス(例えば、iPhone(登録商標)又はANDROID(登録商標)デバイス)であり得る。あるいは、ディスプレイユニット又はデバイスは、サードパーティサーバ、クラウドサーバ、又はパーソナルヘルスモニタなどの様々なソフトウェア及びヘルスケア関連のアプリケーションと通信するリモート端末であり得る。適切なリモート端末、クラウドサーバなどは、スマートホームデバイス、ウェアラブル技術、パーソナルヘルスモニタなど、又はそれらの組み合わせなどの関連する二次デバイスに出力をさらに中継することができる。
【0013】
本開示はさらに、1つ以上のアルコールセンサを組み込んだ検知システムについて説明する。システムは、アルコールセンサから受信したセンサデータを処理し、そこから1つ以上のアルコール濃度を決定するように適合された、プロセッサ及び/又はコーディング命令(アルゴリズム)などの様々な検知コンポーネントを含み得る。次に、プロセッサ及び/又はコーディング命令は、いくつかの実施形態において、アルコール濃度を分析して、特定のアルコール濃度に基づいて1つ以上の推奨事項を決定することができる。例えば、特定の評価時間におけるアルコール濃度又はアルコール濃度から導き出せる他の量を使用して、別の健康分析物が悪影響を受ける可能性があるかどうかを示唆することができる。そのような場合、プロセッサ及び/又はコーディング命令は、即時及び将来の行動の提案を含む、検出されたアルコール濃度に基づいて個人が反応することができる様々な方法を提案することができる。例えば、個人の特定のアルコール濃度に応じて、推奨は、自動車を運転するかどうか、影響を受ける別の分析物を補うための行動を行うかどうか(例えば、分析物がグルコースの場合、炭水化物を摂取又はインスリンを注射するかどうか)、医師の診察を受けるかどうかなど、及びそれらの任意の組み合わせであり得る。
【0014】
本開示のアルコールセンサをより詳細に説明する前に、本開示の実施形態がよりよく理解されるように、適切な生体内分析物センサ構成及び分析物センサを使用するセンサシステムの簡単な概要を最初に提供する。以下に記載されるセンサシステム及び分析物センサ構成のいずれも、本開示の様々な実施形態に従って、アルコールを検出するために、及び総じて生体内でアルコールを検出するために使用される1つ以上の酵素を特徴とし得ることが理解されるべきである。
【0015】
図1は、本開示のアルコールセンサを組み込むことができる例示的な検知システムの図を示す。示されるように、検知システム100は、有線又は無線、単方向又は双方向、及び暗号化又は非暗号化されているローカル通信パス又はリンクを介して互いに通信するように構成されたセンサ制御デバイス102及びリーダデバイス120を含む。リーダデバイス120は、いくつかの実施形態によれば、分析物濃度及び警告又はセンサ104又はそれに関連するプロセッサによって決定される通知を表示するための出力媒体を構成することができ、ならびに1つ以上のユーザ入力を可能にし得る。リーダデバイス120は、多目的スマートフォン又は専用の電子リーダ機器であり得る。1つのリーダデバイス120のみが示されているが、特定の場合には、複数のリーダデバイス120が存在し得る。リーダデバイス120はまた、こちらも有線又は無線、単方向又は双方向、及び暗号化又は非暗号化されている通信パス/リンク141及び/又は142を介して、リモート端末170及び/又は信頼性のあるコンピュータシステム180とそれぞれ通信し得る。それに加えて又はそれに代えて、リーダデバイス120は、通信パス/リンク151を介してネットワーク150(例えば、携帯電話ネットワーク、インターネット、又はクラウドサーバ)と通信し得る。ネットワーク150は、通信パス/リンク152を介してリモート端末170に、及び/又は通信パス/リンク153を介して信頼性のあるコンピュータシステム180にさらに通信可能に接続され得る。あるいは、又はこれに加えて、センサ104は、介在するリーダデバイス120を存在させずに、リモート端末170及び/又は信頼性のあるコンピュータシステム180と直接通信することができる。例えば、センサ104は、米国特許出願公開第2011/0213225号明細書に記載され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるように、いくつかの実施形態によれば、ネットワーク150への直接通信リンクを介してリモート端末170及び/又は信頼性のあるコンピュータシステム180と通信することができる。
【0016】
近距離通信(NFC)、無線周波数識別(RFID)、BLUETOOTH(登録商標)又はBLUETOOTH(登録商標)低エネルギープロトコル、WiFi(登録商標)などの任意の適切な電子通信プロトコルを、通信パス又はリンクのそれぞれに使用することができる。リモート端末170及び/又は信頼性のあるコンピュータシステム180は、いくつかの実施形態によれば、一次ユーザ以外の、ユーザのアルコールレベルに関心のある個人によってアクセス可能である。リーダデバイス120は、ディスプレイ122及びオプションの入力コンポーネント121を含み得る。ディスプレイ122は、例えば、センサ制御デバイスに関連する情報及びユーザによる入力情報を出力するためのタッチスクリーンインターフェースを含み得る。
【0017】
センサ制御デバイス102は、センサ104を操作するための回路及び電源を収容することができるセンサハウジング103を含む。任意選択で、電源及び/又はアクティブ回路を省略してもよい。プロセッサ(図示略)を、センサ104に通信可能に接続してもよく、プロセッサは、物理的にセンサハウジング103又はリーダデバイス120内に配置される。センサ104は、センサハウジング103の下側から突出し、接着層105を通って延在する。接着層105は、いくつかの実施形態によれば、センサハウジング103を皮膚などの組織表面に接着するように適合されている。
【0018】
センサ104は、皮膚の真皮層内又は皮下層内など、対象の組織に少なくとも部分的に挿入されるように適合されている。センサ104は、所与の組織の所望の深さまで挿入するのに十分な長さのセンサテールを含み得る。センサテールは、少なくとも1つの作用電極と、少なくとも1つの作用電極上に配置され、アルコール(又は場合によっては、1つ以上の追加の分析物)を検知するために活性である1つ以上の活性領域(検知領域/スポット又は検知層)とを含み得る。いくつかの実施形態では、活性領域は、1つ以上の個別のスポット(例えば、1~約10のスポット、又はそれ以上)の形態であり、サイズは約0.01mm2~約1mm2の範囲であり、それらの間の任意の値及びサブセットを包含するが、より大きい又はより小さい個々の活性領域スポットも本願では企図されている。
【0019】
本開示の1つ以上の実施形態によれば、1つ以上の活性領域は、少なくともアルコールの検出を容易にするために、1つ以上の酵素を含み得る。いくつかの実施形態によれば、活性領域は、1つ以上(又はすべて)の酵素が化学的に結合している(例えば、共有結合、イオン結合などしている)又は他の方法で固定化(例えば、マトリックス中で非結合)されているポリマー材料を含み得る。いくつかの実施形態では、各活性領域は、質量制限膜又は生体適合性膜で覆われてもよく、かつ/又は少なくともアルコールの検出を容易にするための電子移動剤をさらに含み得る。
【0020】
本開示の様々な実施形態において、少なくともアルコールレベルは、真皮液、間質液、血漿、血液、リンパ液、滑液、脳脊髄液、唾液、気管支肺胞洗浄液、羊水などの対象の任意の生物学的流体中でモニタリングされ得る。特定の実施形態では、本開示の分析物センサは、生体内でアルコールの濃度を決定するために真皮液又は間質液をアッセイするために適合させることができる。
【0021】
図1を引き続き参照すると、いくつかの実施形態において、センサ制御ユニット102は、センサ104で得られたデータをリーダデバイス120に自動的に転送することができる。例えば、アルコール濃度データは、データが取得されると、(例えば、数秒ごとに、毎分、5分ごとに、又は他の所定の期間で)送信されるまでメモリに格納され、特定の頻度で、又は特定の期間が経過した後など、自動的かつ定期的に通信され得る。他の実施形態では、センサ制御ユニット102は、設定されたスケジュールに従ってではなく、非自動的な方法でリーダデバイス120と通信することができる。例えば、データは、センサ電子機器がリーダデバイス120の通信範囲内に入ったときに、NFC又はRFID技術を使用してセンサ制御ユニット102から通信され得る。リーダデバイス120に通信されるまで、データは、センサ制御ユニット102のメモリに記憶されたままであってもよい。したがって、患者は、リーダデバイス120に常に近接している必要はなく、代わりに、都合のよい時間にデータをアップロードすることができる。さらに他の実施形態では、自動及び非自動データ転送の組み合わせを実装することができる。例えば、データ転送を、リーダデバイス120がセンサ制御ユニット102の通信範囲からいなくなるまで、自動的に継続することができる。センサ制御ユニット102からの自動及び非自動データ転送について、リーダデバイス120を参照して説明したが、そのような転送メカニズムは、本開示の範囲から逸脱することなく、リモート端末170及び/又は信頼性のあるコンピュータシステム180に等しく適用可能である。
【0022】
組織へのセンサ104の導入を促進するために、イントロデューサを一時的に存在させてもよい。例示的な実施形態では、イントロデューサは、針又は同様の鋭利物を含み得る。代替の実施形態では、シースやブレードなどの他のタイプのイントロデューサが存在し得ることが認識されるべきである。より具体的には、針又は他のイントロデューサは、組織挿入の前にセンサ104の近傍又は同時に一時的に存在し、その後、引き抜かれてもよい。存在している間、針又は他のイントロデューサは、センサ104がたどるアクセス経路を開くことによって、センサ104の組織への挿入を容易にし得る。例えば、1つ以上の実施形態によれば、針は、真皮へのアクセス経路として表皮の貫通を容易にして、センサ104の植込みが行われることを可能にし得る。アクセス経路を開いた後、針又は他のイントロデューサを引き抜いて、鋭利な危険を与えないようにすることができる。例示的な実施形態では、適切な針は、中実又は中空、斜角又は非斜角、及び/又は断面が円形又は非円形であり得る。より特定の実施形態では、適切な針は、断面直径及び/又は先端設計において、約150マイクロメートル~約300マイクロメートル(例えば、約250マイクロメートル)の断面直径を有し得る鍼治療針に匹敵し得る。しかしながら、特定の用途に必要な場合、適切な針は、より大きい又はより小さい断面直径を有し得ることが認識されるべきである。
【0023】
いくつかの実施形態では、針又はイントロデューサの先端(存在している間)は、針又はイントロデューサが最初に組織を貫通し、センサ104のためのアクセス経路を開くように、センサ104の末端上で角度を付けられ得る。他の例示的な実施形態では、センサ104は、針又はインサータの管腔又は溝内に存在してもよく、針は、同様に、センサ104のためのアクセス経路を開く。いずれの場合も、針はセンサの挿入を容易にしたら、その後引き抜かれる。
【0024】
本明細書に開示のアルコールセンサは、単一の作用電極上(例えば、単一の作用電極の片側又は両側)、又は2つ以上の別個の作用電極上(例えば、2つの作用電極の片側又は両側)に位置する活性領域を特徴とし得る。本開示の様々な実施形態によれば、及び本明細書でさらに説明されるように、単一作用電極センサ構成は、2電極又は3電極検出モチーフを使用することができる。単一の作用電極を特徴とするセンサ構成を、以下、
図2A~2Cを参照して説明する。これらのセンサ構成のそれぞれは、本開示の様々な実施形態による、1つ以上のアルコール応答性活性領域を適切に組み込むことができる。その後に、複数の作用電極を特徴とするセンサ構成を、
図3及び4を参照して説明する。複数の作用電極が存在する場合、1つ以上のアルコール応答活性領域、複数の作用電極のうちの1つ以上(又はすべて)、又は作用電極のうちの1つを使用して、アルコールレベルの検出と協調して関心のある別の分析物を検出することができる。
【0025】
本開示のアルコールセンサに単一の作用電極が存在する場合、3電極検出モチーフは、作用電極、カウンター電極、及び参照電極を含み得る。関連する2電極検出モチーフは、作用電極及び第2の電極を含み得、第2の電極は、カウンター電極又は参照電極のうちの一方として、あるいはカウンター電極及び参照電極の両方(すなわち、カウンター/参照電極)として機能する。2電極及び3電極検出モチーフの両方において、アルコールセンサの1つ以上の活性領域が作用電極と接触していてもよい。本開示の実施形態によれば、1つ以上の活性領域は、1つ以上の酵素を含み得る。いくつかの実施形態において、様々な電極は、互いに少なくとも部分的に積み重ねられる(層状にされる)ことができる。いくつかの又は他の実施形態において、様々な電極は、センサテール上で互いに横方向に離隔され得る。同様に、各電極上の関連する活性領域は、互いの上に垂直に積み重ねることができ、又は横方向に離隔させることができる。いずれの場合も、様々な電極は、誘電体又は同様の絶縁体によって互いに電気的に絶縁され得る。
【0026】
図2Aは、本開示の実施形態によるアルコールの検出に使用するのに適合性のある、単一の作用電極を有する例示的な2電極センサ構成の図を示す。示されるように、センサ200は、作用電極214とカウンター/参照電極216との間に配置された基板212を含む。あるいは、作用電極214及びカウンター/参照電極216は、間に誘電体材料が挿入された状態で、基板212の同じ側に配置され得る(構成は図示されていない)。活性領域218は、作用電極214の少なくとも一部の上に少なくとも1つの層として配置される。様々な実施形態において、活性領域218は、1つ以上の目的の分析物の検出のために構成された複数のスポット又は単一のスポットを含み得る。集合的に、1つ以上の酵素は、活性領域218に(すなわち、単一のスポット又は複数のスポットとして)存在し得る。
【0027】
引き続き
図2Aを参照すると、膜220は、少なくとも活性領域218を覆い、任意選択で、いくつかの実施形態によれば、作用電極210及び/又はカウンター/参照電極216の一部又は全部、又は分析物センサ200全体を覆うことができる。分析物センサ200の片面又は両面は、膜220で覆われ得る。膜220は、分析物の流れを活性領域218に制限する能力及び/又は生体適合性能力を有する1つ以上の高分子膜材料を含み得る。センサ200は、クーロメトリー、アンペロメトリー、ボルタンメトリー、ポテンショメトリーによる電気化学、又はイオントフォレーシス(逆イオントフォレーシスを含む)による検出技術のいずれかによって少なくともアルコールをアッセイするために動作可能であり得る。
【0028】
図2B及び2Cは、本開示の実施形態での使用に適合する、単一の作用電極を有する例示的な3電極分析物センサ構成の図を示す。単一の作用電極を利用する3電極分析物センサ構成は、センサ201及び202(
図2B及び2C)に、電極217として表される追加の電極を含めることを除いて、
図2Aのセンサ200について示したものと同様とすることができる。追加の電極217を用いると、カウンター/参照電極216は、カウンター電極又は参照電極のいずれかとして機能することができ、追加の電極217は他方の電極機能を果たす。作用電極214は、その本来の機能を引き続き果たす。追加の電極217は、作用電極210上又は電極216上のいずれかに、これらの間に誘電体の分離層を挟んで配置することができる。例えば、
図2Bに示されるように、誘電体層219a、219b、及び219cは、電極214、216、及び217を互いから分離することで電気的絶縁を提供する。あるいは、電極214、216、及び217のうちの少なくとも1つは、
図2Cに示されるように、基板212の反対側の面上に配置され得る。したがって、いくつかの実施形態では、電極214(作用電極)及び電極216(カウンター電極)は、基板212の反対側の面上に配置され得、電極217(参照電極)は、電極214又は216のうちの一方の上に配置され、誘電体材料でそれから離隔され得る。あるいは、いくつかの実施形態において、電極214(作用電極)及び電極216(参照電極)は、基板212の反対側の面上に配置され得、電極217(カウンター電極)は、電極214又は216のうちの1つの上に配置され得、誘電体材料でそれから離隔され得る。さらに他の実施形態において、参照電極及びカウンター電極は、基板212の一方の面に配置され得、作用電極は、反対の面に配置され得る。任意選択で、参照材料層230(例えば、Ag/AgCl)が電極217上に存在してもよく、参照材料層230の位置は、
図2B及び2Cに示されるものに限定されない。
【0029】
図2Aに示されるセンサ200と同様に、分析物センサ201及び202の活性領域218は、少なくともアルコールの検出のために構成された複数のスポット又は単一のスポットを含み得る。集合的に、1つ以上の酵素は、センサ201及び202の活性領域218に存在し得る。さらに、分析物センサ201及び202は、クーロメトリー、アンペロメトリー、ボルタンメトリー、ポテンショメトリーによる電気化学、又はイオントフォレーシスによる検出技術のいずれかによって少なくともアルコールをアッセイするために動作可能であり得る。
【0030】
引き続き
図2A及び2Bを参照して、分析物センサ200と同様に、膜220もまた、センサ201及び202において、活性領域218、ならびに他のセンサ構成要素を覆うことができる。いくつかの実施形態では、追加の電極217が、膜220で覆われ得る。
図2B及び2Cでは、電極214、216及び217のすべてが膜220で覆われているものとして描写されているが、いくつかの実施形態では、作用電極214のみが覆われてもよく、又はいくつかの実施形態では、作用電極214及び1つの他の電極のみが覆われてもよいことが理解されるべきである。さらに、電極214、216、及び/又は217のそれぞれにおける膜220の厚さは、同じであっても異なっていてもよく、膜220が覆う電極214、216、及び/又は217のそれぞれの表面積の量も、同じであっても異なっていてもよい。2電極分析物センサ構成(
図2A)の場合のように、分析物センサ201及び202の片面又は両面は、
図2B及び2Cのセンサ構成において膜220で覆われてもよく、又は分析物センサ201及び202の全体が覆われてもよい。したがって、
図2B及び2Cに示される3電極センサ構成は、本開示の範囲内にある代替の電極及び/又は層構成を備えた、本明細書に開示される実施形態の非限定的例として理解されるべきである。
【0031】
図3は、本開示に記載されるアルコールセンサでの使用に適合する、2つの作用電極、参照電極及びカウンター電極を有する例示的な分析物センサ構成の図を示す。
図3に示すように、センサ300は、基板302の対向面にそれぞれ配置された作用電極304及び306を含む。活性領域310は、作用電極304の表面に配置され、活性領域312は、作用電極306の表面に配置される。集合的に、1つ以上の酵素は、少なくともアルコールの検出のために構成された活性領域310及び312に存在し得る。例えば、活性領域310及び312は両方とも、アルコール濃度を検出するように構成され得る。あるいは、活性領域310又は312の一方は、アルコール濃度を検出するように構成され得、他方の活性領域は、関心のある別の分析物(例えば、グルコース、乳酸など)を検出するように構成され得る。カウンター電極320は、誘電体層322によって作用電極304から電気的に絶縁されており、参照電極321は、誘電体層323によって作用電極306から電気的に絶縁されている。外側誘電体層330及び332は、それぞれ、参照電極321及びカウンター電極320上に配置されている。膜340は、様々な実施形態によれば、少なくとも活性領域310及び312を覆うことができる。分析物センサ300の他の構成要素も、任意選択で膜340で覆われてもよく、そして上記のように、分析物センサ300の片面又は両面、又はその一部は、膜340で覆われ得る。分析物センサ200、201、及び202と同様に、センサ300は、クーロメトリー、アンペロメトリー、ボルタンメトリー、ポテンショメトリーによる電気化学、又はイオントフォレーシスによる検出技術のいずれかによって、少なくともアルコールをアッセイするために動作可能であり得る。
【0032】
複数の作用電極を有し、
図3に示されるものとは異なる代替のセンサ構成は、別個のカウンター電極及び参照電極320及び321の代わりに、カウンター/参照電極、及び/又は、明示的に示されたものとは異なる層及び/又は膜の配置を特徴とし得る。例えば、カウンター電極320及び参照電極321の配置は、
図3に示されているものとは逆にすることができる。さらに、作用電極304及び306は、必ずしも、
図3に示される態様で基板302の対向面上に存在する必要はない。
【0033】
図2及び
図3に関する上記の説明は、主に、2つの作用電極を有する分析物センサ構成に向けられているが、本明細書の開示の拡張を通じて、2つを超える作用電極が問題なく組み込まれ得ることが理解されるべきである。追加の作用電極は、追加の活性領域を許容し、対応する検知能力が、そのような特徴を有するそのようなセンサに与えられる。
【0034】
さらに、
図2及び3は、導電性構造(例えば、電極)及びその上に配置された活性領域を有する平面基板(例えば、比較的平坦)を示す。本発明の実施形態で使用するための分析物センサは、本開示の範囲から逸脱することなく、他の様々な構成を有し得ることが理解されるべきである。例えば、基板は、実質的に非平面(例えば、比較的湾曲した、半球形、又は球形)、円筒形、らせん状、その他の不規則な形状、及びそれらの任意の組み合わせであり得る。同様に、2つ以上の電極は、実質的に非平面(例えば、比較的湾曲した、半球形、又は球形)、円筒形、らせん状、その他の不規則な形状、及びそれらの任意の組み合わせであり得る。電極は、層状に同心円状に、又はその他の状態に配置され得、通常は1つ以上の絶縁領域によって分離される。少なくとも作用電極上に配置された検知領域は、単層として、又は正方形、円形、半円形、弧状、矩形、多角形、又はその他の不規則形などの様々な形状の離散領域として、作用電極の少なくとも一部(又はすべて)をさらに覆うことができる。
【0035】
本開示の様々な実施形態によれば、電子移動剤は、本明細書に開示されるアルコールセンサ又はアルコールセンサ構成のいずれかの活性領域の1つ以上に存在し得る。適切な電子移動剤は、アルコール分析物(酵素基質)が酸化還元反応を受けたときに、作用電極への電子の輸送を促進し得る。各活性領域内の電子移動剤の選択は、アルコール分析物で観察される酸化還元電位を決定し得る。
【0036】
適切な電子移動剤には、標準的なカロメル電極(SCE)の酸化還元電位よりも数百ミリボルト上又は下の酸化還元電位を有する電気還元性及び電気酸化性のイオン、錯体又は分子(例えば、キノン)が含まれ得る。いくつかの実施形態によれば、適切な電子移動剤には、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,134,461号及び第6,605,200号に記載されているものなどの低電位オスミウム錯体が含まれ得る。追加の例には、米国特許第6,736,957号、第7,501,053号及び第7,754,093号に記載されているものが含まれ、これらのそれぞれの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。他の適切な電子移動剤は、ルテニウム、オスミウム、鉄(例えば、ポリビニルフェロセン又はヘキサシアノフェラート)、コバルト、そのメタロセン化合物などの金属化合物又は錯体を含み得る。金属錯体に適した配位子には、例えば、ビピリジン、ビイミダゾール、フェナントロリン、又はピリジル(イミダゾール)などの二座又はより高い座数の配位子も含まれ得る。他の適切な二座配位子には、例えば、アミノ酸、シュウ酸、アセチルアセトン、ジアミノアルカン、又はo-ジアミノアレーンが含まれ得る。完全な配位圏を達成するために、単座、二座、三座、四座、又はより高い座数の配位子の任意の組み合わせが金属錯体に存在し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のアルコール応答性の活性領域で使用するために選択された電子移動剤は、オスミウム錯体である。
【0037】
本開示の様々な実施形態によれば、1つ以上のポリマーは、本明細書に開示されるアルコールセンサ又はアルコールセンサ構成のいずれかの1つ以上の活性領域のそれぞれに存在し得る。例えば、酵素はそれぞれ化学的に結合されているか、他の態様で単一のポリマーに固定化されていてもよい。複数の酵素が使用される場合などの他の実施形態において、1つ以上の酵素を第1のポリマーに重合させ、他の1つ以上の酵素を第2のポリマーに重合させ、ポリマーと酵素の両方がアルコールセンサの活性領域を形成するようにしてもよい。
【0038】
活性領域に含めるのに適したポリマーには、限定するものではないが、ポリビニルピリジン(例えば、ポリ(4-ビニルピリジン))、ポリビニルイミダゾール(例えば、ポリ(1-ビニルイミダゾール))、それらの任意のコポリマー、及びそれらの任意の組み合わせが含まれ得る。活性領域に含めるのに適し得る例示的なコポリマーには、例えば、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、又はアクリロニトリルなどのモノマー単位を含むものが含まれる。複数の活性領域が存在する場合、各活性領域内の1つ以上のポリマーは、同じであっても異なっていてもよい。本開示の範囲から逸脱することなく、前述のポリマーの任意の組み合わせも使用することができる。
【0039】
本開示の様々な実施形態によれば、電子移動剤は、1つ以上の活性領域において1つ以上のポリマーに共有結合され得る。共有結合の方法は特に制限されているとは考えられていない。1つ以上のポリマーへの電子移動剤の共有結合は、共有結合した電子移動剤を有するモノマー単位を重合することによって起こり得るか、又は1つ以上のポリマーが既に合成された後なら、電子移動剤をそれと別々に反応させることができる。いくつかの実施形態によれば、二官能性スペーサーは、活性領域内の1つ以上のポリマーに電子移動剤を共有結合し得、ここで、第1の官能基は1つ以上のポリマーと反応性であり(例えば、ピリジン窒素原子又はイミダゾール窒素原子を四級化することができる官能基)、第2の官能基は電子移動剤と反応性である(例えば、金属イオンを配位する配位子と反応する官能基)。
【0040】
例示的な実施形態において、本明細書に開示されるアルコールセンサの活性領域内の1つ以上のポリマーは、ポリ(4-ビニルピリジン)であってもよく、このうち、モノマー単位の一部はアルキルカルボキシラート側鎖で官能化され、モノマー単位の一部はアミドスペーサー基でオスミウム電子移動剤に付加され、モノマー単位の一部は官能化されていない。すなわち、ポリマーは、本明細書で「X7」と呼ばれる、オスミウムで装飾されたポリ(ビニルピリジン)ベースのポリマーのレドックスポリマーであり得る。
【0041】
同様に、本開示のいくつかの又は他の様々な実施形態によれば、1つ以上の活性領域内の1つ以上の酵素は、1つ以上のポリマーに共有結合され得る。複数の酵素が単一の活性領域に存在する場合、複数の酵素のすべてが単一のポリマー又は同じであっても異なっていてもよい2つ以上の別個のポリマーに共有結合し得る。例えば、2つ以上の酵素が別々の異なるポリマーに共有結合している場合、一方のポリマーを他方の上にコーティングして、活性領域を形成することができる。他の実施形態において、複数の酵素の一部のみが、1つ以上のポリマーに共有結合され得る。例えば、第1の酵素は、第1のポリマーに共有結合され得、第2の酵素は、第1のポリマー又は第2のポリマーに非共有結合され得る。
【0042】
ポリマーへの酵素の共有結合は、適切な架橋剤と共に導入された架橋剤を介して起こり得る。酵素中の遊離アミノ基との反応のための適切な架橋剤は、例えば、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(PEGDGE)又は他のポリエポキシド、塩化シアン、N-ヒドロキシスクシンイミド、イミドエステル、エピクロロヒドリン、又はそれらの誘導体化変異体などの架橋剤を含み得る。酵素中の遊離カルボン酸基との反応に適した架橋剤には、例えば、カルボジイミドが含まれ得る。架橋は一般に分子間であるが、いくつかの実施形態では分子内であり得る。
【0043】
上記のように、電子移動剤及び/又は1つ以上の酵素は、共有結合以外の手段によっても、活性領域内の1つ以上のポリマーと結合することができる。いくつかの実施形態では、電子移動剤及び/又は1つ以上の酵素は、イオン的に又は配位的に1つ以上のポリマーと結合し得る。例えば、帯電したポリマーは、反対に帯電した電子移動剤又は酵素とイオン結合し得る。さらに他の実施形態では、電子移動剤及び/又は1つ以上の酵素は、ポリマーに結合することなく、1つ以上のポリマー内に物理的に同伴され得る。
【0044】
いくつかの実施形態において、安定剤を本明細書に記載のアルコールセンサの活性領域に組み込むことで、センサの機能を改善するとともに、所望の感度及び安定性を達成することができる。そのような安定剤は、例えば、1つ以上の酵素を安定化するための抗酸化剤及び/又はコンパニオンタンパク質を含み得る。適切な安定剤の例には、限定するものではないが、血清アルブミン(例えば、ヒト又はウシ血清アルブミン又は他の適合するアルブミン)、グルタルアルデヒド架橋アルブミン、カタラーゼ、グルタルアルデヒド架橋カタラーゼ、他の酵素抗酸化剤など、及びそれらの任意の組み合わせが含まれる。安定剤は、コンジュゲート又は非コンジュゲートであり得、そして活性領域に化学的に結合されても結合されなくてもよい。安定剤の量は、選択された安定剤の種類に応じて変化し得るが、全活性領域(すなわち、活性領域の成分を合わせた重量)の約1重量%~約50重量%の量とすることができる。これには、それらの間の任意の値及びサブセット、例えば、全活性領域の約1重量%~約25重量%、又は約10重量%~約25重量%が含まれる。
【0045】
特定の実施形態において、質量制限膜又は生体適合性膜が、活性領域の少なくとも一部に配置され得る。適切な膜は、ポリビニルピリジン及び/又はポリビニルイミダゾールのポリマーなどの、複素環式窒素基を含む架橋ポリマーから構成され得る。実施形態はまた、ポリウレタン、ポリエーテルウレタン、又は化学的に関連する材料からなる膜、シリコーンからなる膜などを含む。
【0046】
いくつかの実施形態において、膜は、緩衝液(例えば、アルコール緩衝液又はHEPESなどの他の生物学的緩衝液)中で両性イオン部分、非ピリジンコポリマー成分、及び任意選択で別の部分であって、親水性又は疎水性のいずれかであり、及び/又は他の望ましい特性を有する部分で変性させた上述のものを含むポリマーを、in situで架橋することにより形成され得る。変性ポリマーは、複素環式窒素基を含む前駆体ポリマーから作製することができる。例えば、前駆体ポリマーは、ポリビニルピリジン及び/又はポリビニルイミダゾールであり得る。任意選択で、親水性又は疎水性の変性剤を使用して、得られる膜の透過性を、アルコールに対して、又は関心のある特定の種類のアルコールに対して「微調整」することができる。任意選択の親水性変性剤、例えば、ポリ(エチレングリコール)、ヒドロキシル又はポリヒドロキシル変性剤など、及びそれらの任意の組み合わせを使用して、得られる膜の生体適合性を高めることができる。
【0047】
膜は、アルコールセンサの少なくとも1つ以上の作動電極上に膜溶液の1つ以上の液滴を配置することによって、例えばセンサテールを膜溶液に浸すことによって、センサテール上に膜溶液を噴霧することによって、任意のサイズの層(離散的又はすべてを含むなど)の膜を熱プレスし又は溶融させることによって、膜溶液の蒸着、膜溶液の粉末コーティングなど、及びそれらの任意の組み合わせによって、活性領域上に適用され得る。
【0048】
総じて、膜の厚さは、膜溶液の濃度、適用される膜溶液の液滴の数、センサテールが膜溶液に浸される回数、センサテールに噴霧される膜溶液の量など、及びこれらの要因の任意の組み合わせによって制御される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の膜は、約0.1マイクロメートル(μm)~約1000μmの範囲の厚さを有し得、それらの間の任意の値及びサブセット、例えば、約1μm~約500μm、又は約10μm~約100μmなどを包含する。上記のように、膜は、1つ以上の活性領域を覆うことができ、いくつかの実施形態において、活性領域は、約0.1μm~約10μmの厚さを有し得、それらの間の任意の値及びサブセットを包含する。さらに、活性領域は、サイズが約0.001mm2~約1mm2の範囲であり得、それらの間の任意の値及びサブセットを包含する。しかしながら、より厚い又はより薄い膜、より厚い及びより薄い活性領域、及びより大きい又はより小さい活性領域も本願で企図されることが理解されるべきである。
【0049】
いくつかの実施形態において、膜は、ポリ(スチレン-co-マレイン酸無水物)、ドデシルアミン及びポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)(2-アミノプロピルエーテル)がポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)ビス(2-アミノプロピルエーテル)で架橋されたもの;ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド);ポリ(エチレンオキシド)とポリ(プロピレンオキシド)のコポリマー;ポリビニルピリジン;ポリビニルピリジンの誘導体;ポリビニルイミダゾール;ポリビニルイミダゾールの誘導体など;及びそれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない化合物を含み得る。いくつかの実施形態において、膜は、ピリジン窒素原子の一部が非架橋ポリ(エチレングリコール)テールで官能化され、ピリジン窒素原子の一部がアルキルスルホン酸基で官能化されたポリビニルピリジン-co-スチレンポリマーから構成されてもよい。他の膜化合物は、単独で、又は前述の膜化合物と組み合わせて、4-ビニルピリジンとスチレンの適切なコポリマー及びアミン非含有ポリエーテルアームを含み得る。本開示の範囲から逸脱することなく、前述の膜ポリマーの任意の組み合わせを使用することもできる。
【0050】
本明細書に記載の膜化合物は、酵素に関して上記に列挙されたものを含む、1つ以上の架橋剤でさらに架橋され得る。例えば、適切な架橋剤には、限定するものではないが、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(PEGDGE)、グリセロールトリグリシジルエーテル(Gly3)、ポリジメチルシロキサンジグリシジルエーテル(PDMS-DGE)、又は他のポリエポキシド、塩化シアン、N-ヒドロキシスクシンイミド、イミドエステル、エピクロロヒドリン、又はその誘導体化バリアント、及びそれらの任意の組み合わせが含まれる。同様の末端化学構造を有する分岐バージョンもまた、本開示に適している。例えば、いくつかの実施形態において、式1は、トリグリシジルグリセロールエーテル及び/又はPEDGE及び/又はポリジメチルシロキサンジグリシジルエーテル(PDMS-DGE)で架橋されてもよい。
【0051】
いくつかの実施形態において、本開示の物質移動制限層として使用するための膜組成物は、レベリング剤として使用するため(例えば、膜組成物又は検知要素組成物の接触角を低減するため)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリジメチルシロキサンジグリシジルエーテル(PDMS-DGE)、アミノプロピル末端ポリジメチルシロキサンなど、及びそれらの任意の組み合わせを含み得る。同様の末端化学構造を有する分岐バージョンもまた、本開示に適している。例えば、その開示が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第8,983,568号に見出されるものなど、特定のレベリング剤がさらに含まれ得る。
【0052】
場合によっては、膜は、活性領域の1つ以上の要素と1つ以上の結合を形成し得る。本明細書で使用される場合、「結合」という用語、及びその文法的変形は、原子間又は分子間の、化合物が互いに結び付きを形成することを可能にする任意の種類の相互作用を指し、例えば、限定するものではないが、共有結合、イオン結合、双極子-双極子相互作用、水素結合、ロンドン分散力など、及びそれらの任意の組み合わせである。例えば、膜のin situ重合は、膜の1つ以上のポリマーと活性領域内の1つ以上のポリマーとの間に架橋を形成することができる。いくつかの実施形態において、活性領域への膜の架橋は、センサからの膜の層間剥離の発生の減少を促進する。
【0053】
前述したように、本開示は、個人の体液中の少なくともアルコール(例えば、アルコール濃度又はレベル)を検出するための様々な方法、システム、及び装置を提供する。検出は、望ましいアルコールセンサの製造における1つ以上のハードルを克服するために、本明細書に記載の活性領域検知化学を利用したin vitro又はin vivoのものであり得る。
【0054】
アルコールは、アルコールオキシダーゼなどの1つ以上の酵素を使用して検出され得る。代表的な例として、アルコールオキシダーゼはアルコール、大抵は第一級アルコールと相互作用して、アセトアルデヒド(C2H4O)と過酸化水素(H2O2)を形成する。他の第一級及び第二級アルコールは反応して、対応するより高い又はより低い炭素含有量のアルデヒドを形成する。アルコールオキシダーゼは、アルコールのアセトアルデヒドへの順方向変換のみを触媒し、強く結合したフラビン補因子を含む。したがって、理論的には、アルコールオキシダーゼは、酵素反応で生成されたアセトアルデヒド又は過酸化水素生成物のいずれかを分析することによってアルコールを検出するための分析物センサで使用することができる。しかし、このアプローチには2つの問題がある。第一に、アセトアルデヒド及び過酸化水素はどちらもアルコールオキシダーゼに対して抑制性である。したがって、これらの化合物がセンサ環境から除去されない場合、アルコールオキシダーゼはアルコール酸化の促進に関して不活性になり、それによってセンサはアルコールの分析に関して機能しなくなる。さらに、アセトアルデヒド及び過酸化水素が隔離されたり、他の薬剤(活性領域の感知組成物がさらに複雑になる)でクエンチされたりすると、電気化学的検出に利用できる種又は十分な種がなくなる。第二に、アルコールオキシダーゼは、分子状酸素以外の酸化還元メディエーターと電子を自由に交換しない。そのため、オスミウムや、本明細書で述べる他の遷移金属錯体などの、センサの活性領域内のポリマーに結合した電子移動剤は、アルコールオキシダーゼを不活性な還元状態からアルコールと反応する酸化状態に循環させるのに効果がない。
【0055】
アルコールデヒドロゲナーゼは、アルコール(大抵は第一級アルコール)のアルデヒド又はケトンへの変換を促進する別のグループの酵素である。代表的な例として、アルコールデヒドロゲナーゼは酸化ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD
+)の存在下でエタノールと相互作用して、アセトアルデヒド(C
2H
4O)と還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)を形成する。他の第一級及び第二級アルコールは反応して、対応するより高い又はより低い炭素含有量のアルデヒドを形成する。アルコールオキシダーゼとは異なり、アルコールデヒドロゲナーゼは、アルコールのアルデヒドへの順方向変換を触媒するだけでなく(本明細書では総じてアセトアルデヒドと称するが、炭素含有量が高い又は低い他のアルデヒドが生成される場合もある)、逆方向の反応も行う。アルコールオキシダーゼとはさらに異なり、アルコールデヒドロゲナーゼは結合した補因子を含まないため、アルコール酸化の促進に関して酵素を活性化するために外因性補因子を必要とする。さらに、アルコールデヒドロゲナーゼの活性は、少なくとも部分的に、NADH及びアセトアルデヒドによる生成物阻害に基づいて制御される(
図4を参照)。これらの特性により、通常、アルコールデヒドロゲナーゼは、アルコールセンサの検知化学の設計に使用するには不利になる。
【0056】
本開示の実施形態は、本開示の1つ以上の分析物センサの実施形態を使用して、アルコールレベルを検出するためのオキシドレダクターゼスキームを利用する。より具体的には、本開示に記載される検知化学は、作用電極上の少なくとも1つの活性領域において互いに協調して相互作用する2つの酵素を利用し、ここで、酵素の1つはKRTである。本明細書で使用される場合、「協調酵素」又は「協調酵素系」という用語、及びそれらの文法的変形は、互いに協調して(共同で)相互作用することができる少なくとも2つの酵素を指す。KRTは、NADH依存性又はNAD(P)(H)依存性の触媒活性を持ち、主にアルデヒドとケトンを還元できることが知られている酸化還元酵素の一種である。通常、KRTは、アルコールデヒドロゲナーゼによってアルコール基を保持及び配置するために使用される金属補因子を欠いているため、アルコールデヒドロゲナーゼとしては比較的効率が悪い。さらに、KRTは通常、NADHよりもNAD(P)Hを好む。したがって、個人のアルコールレベルの検出におけるそれらの効果的な使用は、有益であるとは見なされていなかった。
【0057】
本開示の実施形態は、アルコールの検出に使用するのに適した協調酵素系を提供し、協調酵素系はKRTを利用する。アルコールを検出するための本開示の検知化学で使用するために記載されたKRTには、野生型(天然に存在する)、及び、KRT機能性を示す非天然の操作されたペプチド鎖が含まれる。例えば、アルドKRTファミリーは、本開示の実施形態での使用に適している可能性がある。理論に拘束されるものではないが、KRTの活性部位の1つ以上の残基の変化は、その反応メカニズムを変化させ、したがってアルコールの検出への親和性を変化させる可能性があるとさらに考えられている。つまり、ある種のKRTは、化学的構成によっては、他のKRTと比較してアルコール検出により効果的であり得る。
【0058】
より具体的には、本明細書に記載の協調酵素系は、KRT及びジホラーゼを利用する。本開示のセンサ構成において、KRTは、アルコール及び酸化型NAD+又は酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NAD(P)+)を、それぞれアルデヒド(例えば、アセトアルデヒド)及び還元型NADH又は還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NAD(P)H)に変換し得る。アルデヒドは、アルコールの存在を示す代表的な分子として機能する。NADH又はNAD(P)Hは、ジアホラーゼ媒介下で還元を受ける可能性があり、このプロセス中に伝達される電子が、1つ以上の作用電極でのアルコール検出の基礎を提供する。
【0059】
アルコールの検出のための、NAD
+補因子によって媒介されるKRTとジアホラーゼの間の協調反応を
図4Aに示す。アルコールの検出のための、NAD(P)
+補因子によって媒介されるKRTとジアホラーゼの間の協調反応を
図4Bに示す。
図4A及び4Bにおいて、ジアホラーゼは、作用電極上に(例えば、アルコールセンサの活性領域に)配置されたポリマーに(例えば、共有結合により)化学的に結合し、KRTは、同じ(例えば、架橋剤を介して)又は別のポリマーに(例えば、共有結合により)化学的に結合する。例えば、一実施形態において、ジアホラーゼは、作用電極上に配置された第1のポリマーに化学的に結合されてもよく、KRTは、第1のポリマー上に配置された第2のポリマーに化学的に結合されてもよい。膜は活性領域全体を覆って配置され、特定の補因子(例えば、NAD
+又はNAD(P)
+のいずれか)は、活性領域のポリマーと非共有結合し得るが、膜は別様に制限され得る。ジアホラーゼ及び/又はKRTに加えて、酵素と電子を交換することができるオスミウム錯体又は他の遷移金属錯体もまた、作用電極上に配置されたポリマーに化学的に(例えば、共有結合により)結合される。例えば、X7は、上記のように、共有結合したポリマー及び電子移動剤の両方を含む。いくつかの実施形態において、活性領域はX7ポリマーを含み、ここにジアホラーゼ及びKRTが化学的に結合され、これらは膜で覆われる。
【0060】
KRT及びジアホラーゼの各々は、全活性領域の約1重量%~約50重量%(すなわち、活性領域の成分を合わせた重量)の範囲の量で存在し得、これには、それらの間の任意の値及びサブセット、例えば、全活性領域の約1重量%~約40重量%、又は約10重量%~約40重量%が含まれる。
【0061】
図4A及び
図4Bから理解できるように、酵素により形成されるアルデヒド(例えば、アセトアルデヒド)の量は、アルコールの量に比例する。したがって、アルコールのKRT酸化中に作用電極で生成される電流は、存在するアセトアルデヒドの量、つまりは、存在するアルコールの量(すなわち、アルコール濃度又はレベル)に比例し得る。作用電極電流とアルコール濃度との相関は、既知のアルコール濃度での電流のルックアップテーブルを参照するか、検量線を利用することによって行うことができる。
【0062】
したがって、いくつかの実施形態において、本開示は、ケトレダクターゼ及びジアホラーゼの協調酵素系に基づくアルコール応答性活性領域を提供する。より具体的には、本開示は、少なくとも作用電極、及び作用電極の表面に配置された少なくとも1つのアルコール応答性活性領域を含むセンサテールを含む分析物センサ及びシステムを提供し、アルコール応答性活性領域は、酵素系であって、アルコールの検出を容易にするために協調して作用することができる少なくとも2つの酵素を含み、少なくとも2つの酵素のうちの一方はケトレダクターゼである酵素系を含む。上記少なくとも1つのアルコール応答性活性領域を、さらに膜が覆ってもよい。さらに、分析物センサの少なくともセンサテールは、分析が生体内で実施され得るように、経皮、皮下、又は静脈内など、組織への少なくとも部分的な挿入のために構成され得る。他の実施形態において、分析物センサ(センサテールを含む)は、組織内に完全に埋め込まれ得る。したがって、本開示は、上記の分析物センサを使用してアルコールを検知する方法を提供する。特に、少なくとも1つのアルコール応答性活性領域は、体液にさらされ、使用者が分析物センサを装着している間(例えば、1日以上、例えば、最大約1ヶ月又はそれ以上)、活性領域は継続的にアルコールを分析することができる。信号は、アルコールの濃度に比例する分析物センサのアルコール応答性活性領域から(例えば、電気化学的検出によって)検出され得る。
【0063】
本明細書に開示される実施形態には、以下が含まれる。
実施形態A:少なくとも作用電極を含むセンサテール;及び作用電極の表面に配置された少なくとも1つのアルコール応答性活性領域を含む分析物センサであって、少なくとも1つのアルコール応答性活性領域は、アルコールの検出を容易にするために協調して作用することができる少なくとも第1の酵素及び第2の酵素を含む酵素系を含み、第1の酵素はケトレダクターゼである、分析物センサ。
【0064】
実施形態B:分析物センサを使用してアルコールの濃度に比例する信号を検出することを含む方法であって、分析物センサは、少なくとも作用電極を含むセンサテールであって、組織に植え込まれるように構成されたセンサテール;及び作用電極の表面に配置された少なくとも1つのアルコール応答性活性領域を含み、前記少なくとも1つのアルコール応答性活性領域は、アルコールの検出を容易にするために協調して作用することができる少なくとも第1の酵素及び第2の酵素を含む酵素系を含み、第1の酵素はケトレダクターゼである、方法。
【0065】
実施形態C:少なくとも1つの作用電極;及び前記少なくとも1つの作用電極の表面に配置された少なくとも1つのアルコール応答性活性領域を含む電極アセンブリであって、アルコール応答性活性領域は、アルコールの検出を容易にするために協調して作用することができる少なくとも第1の酵素及び第2の酵素を含む酵素系を含み、第1の酵素はケトレダクターゼである、電極アセンブリ。
【0066】
実施形態D:アルコールの検出を容易にするために協調して作用することができる少なくとも第1の酵素及び第2の酵素を含む酵素系を含む少なくとも1つのアルコール応答性活性領域を含むアルコール感知組成物であって、第1の酵素はケトレダクターゼである、アルコール感知組成物。
【0067】
実施形態E:システムであって、少なくとも作用電極を含むセンサテール;及び作用電極の表面に配置された少なくとも1つのアルコール応答性活性領域を含む分析物センサと、分析物センサからアルコールの濃度に比例する信号を受信するように構成された受信機とを備え、前記少なくとも1つのアルコール応答性活性領域は、アルコールの検出を容易にするために協調して作用することができる少なくとも第1の酵素及び第2の酵素を含む酵素系を含み、第1の酵素はケトレダクターゼである、システム。
【0068】
実施形態A、B、C、D、及びEの各々は、以下の追加の要素のうちの1つ以上を任意の組み合わせで有することができる。
要素1:第2の酵素はジアホラーゼである。
【0069】
要素2:ケトレダクターゼはアルドケトレダクターゼである。
要素3:ケトレダクターゼは、Codexisによって製造されたKRED-P1-A04、KRED-P2-C11、KRED-P2-G03、又はKRED-P2-H07である。
【0070】
要素4:前記少なくとも1つのアルコール応答性活性領域上に膜が配置されている。
要素5:膜は、前記少なくとも1つのアルコール応答性活性領域上に配置されており、膜は、ポリビニルピリジン、ポリビニルイミダゾン、又はそれらの任意のコポリマーのうちの1つである。
【0071】
要素6:前記少なくとも1つのアルコール応答性活性領域は、ポリマーを含む。
要素7:前記少なくとも1つのアルコール応答性活性領域はポリマーを含み、第1の酵素のケトレダクターゼ及び第2の酵素はポリマーに化学的に結合している。
【0072】
要素8:前記少なくとも1つのアルコール応答性活性領域は、電子移動剤を含む。
要素9:前記少なくとも1つのアルコール応答性活性領域は、安定剤を含む。
非限定的な例として、A、B、C、D、及びEに適用可能な例示的な組み合わせには、以下が含まれる。
【0073】
要素1及び2;1及び3;1及び4;1及び5;1及び6;1及び7;1及び8;2及び3;2及び4;2及び5;2及び6;2及び7;2及び8;3及び4;3及び5;3及び6;3及び7;3及び8;4及び5;4及び6;4及び7;4及び8;5及び6;5及び7;5及び8;6及び7;6及び8;7及び8;ならびに1、2、3、4、5、6、7、及び8のうちの1つ、複数、又はすべての非限定的な組み合わせ。
【0074】
上記のようなアルコールセンサの利点を含み、他のアルコール検出化学と比較して、本明細書に記載の実施形態のより良い理解を容易にするために、様々な代表的な実施形態の以下の実施例が与えられる。以下の実施例は、本発明の範囲を制限又は定義するものと解されるべきではない。
【0075】
実施例1:実施例1は、2層活性領域システムを使用して、KRTを含むアルコールセンサの機能を評価する。実施例1は、アルコールセンサで使用するための24種類のKRT候補をスクリーニングするために使用した。
【0076】
アルコールセンサの調製。様々な実験的KRT含有アルコール応答性活性領域を、2層活性領域システムを使用して調製した。活性領域を、炭素作用電極上にコーティングした(本開示の実施形態によれば、他の種類の電極表面を使用できることに留意されたい)。ここで、第1の層組成物(以下の表1)を最初に作用電極上に直接コーティングし、第2の層組成物(以下の表2)を第1の層組成物上にコーティングした。第1の層及び第2の層は活性領域を含む。第1の層組成物の堆積に続いて、第1の層組成物を、室温(RT)(約25℃)で一晩硬化させた。第1の層組成物を硬化させた後、第2の層組成物を堆積させ、RTで一晩硬化させた。その後、40:1のポリビニルピリジン-co-スチレン(15)(すなわち、15%スチレンを含む)及びPEGDGE400が配合されたコーティング溶液を使用して、PVP膜を作用電極に適用した。膜を活性領域上に堆積させ(3×5mm/秒の浸漬)、RTで一晩、その後、乾燥したバイアル内で56℃で48時間硬化させた。表1及び表2の成分は、本開示の範囲から逸脱することなく、表2の追加の架橋剤(PEGDGE400)の有無にかかわらず、単一の層(すなわち、すべての成分の混合物)で適用され得ることが理解されるべきである。この例で使用されている層状の活性領域は、多数のKRTセンササンプルの試験及び比較を容易にするためのものである。
【0077】
【0078】
【0079】
カリフォルニア州レッドウッドシティーに本社を置くCodexisから入手したKRTを使用して、上記の実施例1で提供したように様々なセンサを調製した。試験した24種類のKRTのそれぞれのCodexis(登録商標)酵素コード(「Codexis(登録商標)Ref.」)、及びそれぞれの補因子(NAD+又はNADP+)を表3に示し、以降、サンプルA1~A24(「ID」)と記載する。
【0080】
【0081】
A1~A24センサのビーカーキャリブレーション。実施例1に従って調製されたA1~A24KRTを含むセンサのアルコール検知分析を、33℃の100mM PBS緩衝液及び様々な濃度のエタノール(2、4、6、10、15、20、30、及び40mMエタノール)に電極を浸漬することによって実施した。
図5A~5Dは、A1~A24のそれぞれの応答を示している。示されているように、様々なKRTセンサは、エタノールに対して無反応、最小限の反応、又は一貫性のない反応であった。
図5Eは、4mMエタノールでのビーカーキャリブレーションの静的な図であり、ベースライン(EtOH曝露なし)から4mMエタノールへの電流応答の変化(Δ)を示している。示されているように、4mMのエタノールで、KRT ID A1、A11、A15、及びA16を使用して調製されたセンサ応答のΔは、エタノールに対して実質的な応答を示した。これらは、
図5A~5Cにおける他の様々なエタノール濃度にも反映されているため、アルコール検知で使用する候補となり得る。したがって、KRT ID A1、A11、A15、及びA16をさらに評価した。
【0082】
実施例2:実施例2は、対照アルコールデヒドロゲナーゼ活性領域システムと比較して、KRT ID A1、A11、A15、及びA16を含むアルコールセンサの機能を評価する。
【0083】
アルコールセンサの調製。実験的なA1、A11、A15、及びA16KRTアルコール応答活性領域を、単層活性領域システムを使用して調製し、対照ADH含有センサと比較した。ADHは、ミズーリ州セントルイスに本社を置くSigma-Aldrich Corp.から、製品番号A3263のものを入手した。ADC制御はNAD+補因子を利用する。活性領域を、単層組成物で炭素作用電極上にコーティングした(以下の表4)。活性領域の堆積に続いて、活性領域をRTで一晩硬化させた。その後、4mLの100mg/mLポリビニルピリジン及び100μlの100mg/mL PEGDGE400を含む膜コーティング溶液を使用して、PVP膜を作用電極に適用した。膜を活性領域に堆積させ(3×5mm/秒の浸漬)、RTで一晩、その後、乾燥したバイアル内で56℃で48時間硬化させた。
【0084】
【0085】
A1~A24センサのビーカーキャリブレーション。実施例2に従って調製されたA1、A11、A15、及びA16KRTを含むセンサのアルコール検知分析を、RTの100mM PBS緩衝液及び様々な濃度のエタノール(2、4、6、10、15、20、30、及び40mMエタノール)に電極を浸漬することによって実施した。
図6Aは、A1、A11、A15、及びA16のそれぞれの応答を示している。示されているように、各KRTは、エタノール濃度の増加に対して測定可能な応答を示す。
図6Bは、A1、A11、A25、及びA16KRTセンサのビーカーのキャリブレーションに基づく線形感度応答を示している。特にA1、A11、及びA15に関して正の駆動力を示す。
【0086】
ビーカー安定性。実施例2のA1、A11、A15、及びA16センサのビーカー安定性(長期安定性)を、100mM PBS中の30mM EtOH中、52℃で評価した。
図6Cに示す結果は、4日後、表5に示すように、各信号が異なる速度のセンサドロップ(アルコールを検出するための安定性の低下)を受けたことを示している。ただし、A15センサの信号低下は、試験した他のKRTセンサの信号低下よりも大幅に小さくなっている。
【0087】
【0088】
アルデヒド阻害。実施例2のA1、A11、A15、及びA16センサの性能に対するアルデヒド阻害(例えば、上記で述べたアセトアルデヒド阻害)を、実施例2のADH対照センサと比較した。センサを、33℃の100mM PBS中の30mM EtOH中で経時的にインキュベートし、その後1mMのアセトアルデヒドでスパイクした(約19.3時間)。正規化した信号の結果を
図7に示す。示されているように、アルデヒド阻害の影響は、A15及びA16センサでは約20時間までまったくないか、又は無視できる程度であった。A1及びA11センサは僅かに大きい阻害を示した。ADH対照センサは実質的な阻害を示した。試験したセンサのアルデヒド阻害による信号の低下率を表6に示す。
【0089】
【0090】
実施例3。RTで実施する標準的なカイネティクスアッセイを、KRT ID A15及びA16に対して行い、ADH対照(上記の実施例2に記載されたADH)と比較した。補因子NAD
+(又はNADP
+)を反応に使用し、還元型NADH(又はNADPH)の340nmでの吸光度(「OD」)を測定した。カイネティクスアッセイで使用したA15及びA16の濃度は0.167mg/mLであり、カイネティクスアッセイで使用したADH対照の濃度は0.0167μg/mL(A15及びA16よりも桁違いに小さい)であった(共にPBSバッファー中の濃度)。カイネティクスアッセイの結果は、
図8にグラフで示されている。数値結果を表7に示す。特に、A15及びA16KRT酵素と比較してADH対照酵素の量は実質的に少ないにもかかわらず、約260%高い反応速度論的活性をもたらしたが、A15及びA16はアルデヒド阻害に対してかなり高い耐性を示す(
図7を参照)。
【0091】
【0092】
実施例4。RTで実施する標準的な速度論的アッセイを、それぞれ様々な種類のアルコール中で、KRT ID A15及びA16に対して行い、ADH対照(上記の実施例2に記載されたADH)と比較した。補因子NAD(P)
+を反応に使用し、還元型NAD(P)Hの340nmでの吸光度(「OD」)を測定した。カイネティクスアッセイにおけるA15及びA16の試験を
図9A及び9Bに示す。試験は、エタノール(EtOH)、イソプロピルアルコール(IPA)、プロパノール(nPA)、ブタノール(1-BuA)、及びメタノール(MeOH)中で行った。「ブランク」はKRT酵素を除外したものである。KRTカイネティクスアッセイの結果は、
図9A及び9Bにグラフで示されている。
図9AはA15のものであり、9BはA16のものである。数値結果を表8に示す。これには、ADH対照で測定された結果も含まれる(グラフ形式では表されていない)。特に、KRTはADH対照と比較してIPAで実質的に大きな酵素活性を示し、本明細書に記載のKRTセンサを第一級アルコール以外のアルコールに使用できることをさらに示している。
【0093】
【0094】
実施例5。この実施例では、実施例2の構成要素に加えて比較された追加のポリマー及び/又は架橋剤を有するKRT含有センサを評価した。
IPA応答。実施例4の結果を受けて、A15及びA16に対するIPAの効果をさらに例証した。A15及びA16センサを、実施例2に従って調製し、いくつかの例では、1つ以上の追加のポリマー又は架橋剤を活性領域組成物に添加した。追加のポリマーはポリ(1-ビニルイミダゾール)(「PVI」)であり、追加の架橋剤はグルタルアルデヒド(「Glut」)であった。センサの電流応答を、最初に33℃の100mM PBSバッファー中の30mM EtOH中で約3.5時間測定し、その後、IPAの濃度を上げながらスパイク(バッファーを交換してIPAを追加)した(1、2、及び3mM IPA)。結果を
図10A及び10Bに示す。
図10AはA15のものであり、10BはA16のものである。試験した各センサの追加のポリマー及び/又は架橋剤は、
図10A及び10Bの凡例の参照に基づいて表9に示されている。ここでは、全活性領域のmg/mLとして表され、「-」の記号は成分が追加されなかったことを示す。
【0095】
【0096】
図10A及び10Bに示されるように、1mM IPAに対する応答は、30mM EtOHに対する応答よりも約12倍大きい。さらに、
図10Aに示されるように、グルタルアルデヒド架橋剤を含むA15センサは、総じてIPAに対してより高い感度を示し、グルタルアルデヒドのみを含む(そしてPVIを含まない)A15センサが最も高い感度を示した。同様の結果が、A16センサに関する
図10Bに示されている。ただし、高濃度のグルタルアルデヒド(1mg/mL)と比較して低濃度のグルタルアルデヒド(0.5mg/mL)は、IPAに対してより高い感度を示した。
【0097】
ビーカー安定性。実施例5のA15及びA16センサのビーカー安定性(長期安定性)を、33℃の100mM PBS中の30mM EtOH中で評価した。結果を
図11A及び11Bに示す。
図11AはA15のものであり、11BはA16のものである。示されているように、A15センサの安定性はA16センサの安定性よりも優れている。さらに、追加のグルタルアルデヒド架橋剤を含むA15センサの安定性は、他のA15組成物の安定性よりも優れている。しかし、A15PVI4Glut05及びA15PVI4Glutlサンプルでは活性領域の沈殿が観察された。より具体的には、PVIとグルタルアルデヒドの両方が含まれている場合、活性領域は曇っているように見えた。表10は、5日間でA15センサが受けたセンサドロップアウトの数値を示す。
【0098】
【0099】
実施例6。この例では、追加のポリマーを有するKRT含有センサをADH対照センサと比較した。
ビーカーキャリブレーション。実施例2に従って調製され、さらに活性領域に8mg/mLのPVIを含むA15センサのアルコール検知分析を、33℃の100mM PBSバッファー中の様々な濃度のEtOH(1、2、3、5、7、10、15、20、25、及び30mM EtOH)に対するその応答を決定するために試験した。KRT A15センサを、実施例2に従って調製されたADH対照センサと比較した。
図12Aは、追加のPVIポリマー(A15+8PVIとラベル付けされている)を含む各A15センサ及びADH対照センサの正規化された信号応答を示している。示されているように、A15センサは、より高いエタノール感度を示す(すなわち、信号の損失は、EtOHのより高い各濃度の後のADH対照においてかなり大きい)。これは、試験した2つのセンサの線形感度応答を示す
図12Bにおいてさらに示されている。
【0100】
ビーカー安定性。実施例6のA15及びADH対照センサのビーカー安定性(長期安定性)を、33℃の100mM PBS中の30mM EtOH中で評価した。
図13に示される結果は、KRT A15センサの安定性がADH対照センサと比較して大幅に優れることを示している。
【0101】
実施例7。実施例2に従って調製されたA15センサのビーカー安定性(長期安定性)を、2つの異なる膜溶媒中で評価した。膜溶媒のうち一方はEtOHを含み、他方はEtOHとHEPES緩衝液を80:20の比で含んでいた。結果は
図14に示され、EtOH溶媒のみでのセンサの安定性が、希釈されたEtOH溶媒と比較してより高い安定性であることを示している。
【0102】
実施例8。1mg/mLのグルタルアルデヒドを添加して実施例2に従って調製された活性領域を含み、異なる膜組成物(実施例2のものとは異なる)を有する分析物センサのビーカー安定性(長期安定性)を、33℃の100mM PBSバッファー中の30mM EtOH中で評価した。3つの別個の膜組成物を調製し、PVP中1%、2%、又は4%のPEGDGE400のいずれかを含むA15活性領域(さらにグルタルアルデヒドを含む)上にコーティングした。信号安定性の結果が
図15に示されており、互いに非常に似た経過をたどった。試験した膜の短期間の安定性は、本組成物に基づく長期的な安定性よりも大きい。5日間及び10日間の数値的な信号低下を表11に示す。
【0103】
【0104】
実施例9。1mg/mLのグルタルアルデヒドを添加して実施例2に従って調製された活性領域を含み、異なる膜組成物(実施例2のものとは異なる)を有する分析物センサのビーカー安定性(長期安定性)を、33℃の100mM PBSバッファー中の30mM EtOH中で評価した。3つの別個の膜組成物を調製し、架橋剤を含まないPVP、架橋剤を含まないポリビニルピリジン-co-スチレン(30)(すなわち、30%スチレンを有する)(「PVPSty30」)、及び4%のPEGDGE400の架橋剤を含むPVPSty30のいずれかを含むA15活性領域(さらにグルタルアルデヒドを含む)上にコーティングした。信号安定性の結果を
図16に示す。架橋剤の添加は、KRTセンサの安定性に重大な影響を与えていないようである。
【0105】
総じて、本開示の実施形態は、KRT酵素を含む協調酵素系が、特に生体内で、個人のアルコールレベルの検出に関するアルコールセンサとして実施可能であり得ることを示す(しかし、生体内測定にも使用され得る)。本開示で試験されたKRTのうち、A15を含むKRTセンサは、最大の安定性(ビーカー安定性)を示し、A16は、最小の生成物阻害を示す。どちらもEtOHよりもIPAに対する比活性がはるかに高い(例えば、A15の場合は200倍、A16の場合は700倍)。
【0106】
特に明記しない限り、本明細書及び関連する特許請求の範囲において数量等を表すすべての数字は、すべての場合において「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、反対のことが示されない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、本発明の実施形態によって得られることが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、均等論の適用を特許請求の範囲に限定する試みとしてではなく、各数値パラメータは、少なくとも報告された有効桁数に照らして、通常の丸め手法を適用することによって解釈されるべきである。
【0107】
様々な特徴を組み込んだ1つ以上の例示的な実施形態が本明細書に提示されている。明確にするため、物理的実装のすべての特徴が本願で説明ないし示されているわけではない。本発明の実施形態を組み込んだ物理的実施形態の開発において、システム関連、ビジネス関連、政府関連及びその他の制約のコンプライアンスなどの開発者の目標を達成するために、多数の実装固有の決定を行わなければならないことが理解される。これらは、実装によって、また場合によって変化する。開発者の努力は時間がかかるかもしれないが、それでも、そのような努力は、当業者にとって日常的な作業であり、本開示の利益を有するであろう。
【0108】
様々なシステム、ツール、及び方法が、様々なコンポーネント又はステップを「含む」という観点から本明細書で説明されているが、システム、ツール、及び方法はまた、様々なコンポーネント及びステップ「から本質的になる」又は「からなる」ものとすることができる。
【0109】
本明細書で使用される場合、一連の項目の前にあり、項目のいずれかを区切る「及び」又は「又は」という用語を伴う「少なくとも1つ」という句は、リストの各メンバー(つまり、各項目)ではなく、リスト全体を修飾する。「~の少なくとも1つ」という句は、項目のいずれか1つのうちの少なくとも1つ、及び/又は項目の任意の組み合わせのうちの少なくとも1つ、及び/又は項目のそれぞれの少なくとも1つを含むという意味を許容する。例として、「A、B、及びCの少なくとも1つ」又は「A、B、又はCの少なくとも1つ」という句は、それぞれ、Aのみ、Bのみ、又はCのみ;A、B、及びCの任意の組み合わせ;及び/又はA、B、及びCのそれぞれの少なくとも1つを指す。
【0110】
したがって、開示されたシステム、ツール、及び方法は、言及された目的及び利点、ならびにそれに内在するものを達成するために十分に適合されている。本開示の教示は、本明細書の教示の利益を有する当業者には明らかな、相違する同等の態様で変更及び実施され得るので、上記で開示された特定の実施形態は例示にすぎない。さらに、添付の特許請求の範囲に記載されている場合を除き、本明細書に示されている構造又は設計の詳細に限定することは意図されていない。したがって、上に開示された特定の例示的な実施形態は、変更、組み合わせ、又は修正され得ることは明らかであり、そのようなすべてのバリエーションは、本開示の範囲内であると見なされる。本明細書に例示的に開示されるシステム、ツール、及び方法は、本明細書に具体的に開示されていない要素及び/又は本明細書に開示されている任意選択の要素がない状態で適切に実施され得る。システム、ツール、及び方法は、様々なコンポーネント又はステップを「含む」という観点から説明されているが、システム、ツール、及び方法は、様々なコンポーネント及びステップ「から本質的になる」又は「からなる」ことも可能である。上記に開示されたすべての数及び範囲は、いくらか変動する場合がある。下限及び上限を有する数値範囲が開示されるときはいつでも、その範囲内にある任意の数及び任意の含まれる範囲が具体的に開示される。特に、本明細書に開示されるすべての範囲の値(「約aから約b」、又は同等に「約aからb」、又は同等に「約a~b」の形式)は、より広い範囲の値に含まれるすべての数及び範囲を記載しているものとして理解されるべきである。また、特許権者によって明示的かつ明確に定義されていない限り、請求項の用語は、本来の通常の意味を有する。本明細書と、参照により本明細書に組み込まれ得る1つ以上の特許文献又はその他の文献との間で単語又は用語の使用法に矛盾がある場合は、本明細書に従う定義を採用するものとする。