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特許7473633微小液滴を調製するためのサンプル添加針及び微小液滴の調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】微小液滴を調製するためのサンプル添加針及び微小液滴の調製方法
(51)【国際特許分類】
   B01L 3/02 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
B01L3/02 D
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2022514015
(86)(22)【出願日】2020-08-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(86)【国際出願番号】 CN2020112172
(87)【国際公開番号】W WO2021037218
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】201910816533.X
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】523104890
【氏名又は名称】マキュラ バイオテクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(72)【発明者】
【氏名】翁 蓉蓉
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0164194(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0183433(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0253914(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01L 1/00-99/00
C12M 1/26
C12M 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一体的に成形されて互いに貫通する液体貯蔵部及び液体吐出部を含み、前記液体貯蔵部は、半径方向寸法が前記液体吐出部に向かう方向に徐々に減少する中空円錐台であり、前記液体吐出部は、半径方向寸法が前記液体貯蔵部から離れる方向に徐々に減少する中空円錐台であり、前記液体貯蔵部のテーパーはC1であり、前記液体吐出部のテーパーはC2であり、C1≦C2であり、前記液体貯蔵部の肉厚はD1であり、前記液体吐出部の肉厚はD2であり、D1>D2であり、
前記液体貯蔵部から離れた前記液体吐出部の一端は液体吐出開口であり、
前記液体吐出部の高さがmmであり、テーパーが10~20°であり、肉厚が0.05~0.3mmであり、前記液体吐出開口の外径が350450μmであり、前記液体吐出開口の内径が25~200μmである、
ことを特徴とする、1ナノリットルと小さい体積の均一な微小液滴を調製するためのサンプル添加針。
【請求項2】
前記液体貯蔵部の高さが3~50mmであり、テーパーが2~30°であり、肉厚が0.3~2.0mmであることを特徴とする、請求項1に記載の微小液滴を調製するためのサンプル添加針。
【請求項3】
前記液体貯蔵部の高さが5~30mmであることを特徴とする、請求項1に記載の微小液滴を調製するためのサンプル添加針。
【請求項4】
前記液体貯蔵部のテーパーが2~20°であることを特徴とする、請求項1に記載の微小液滴を調製するためのサンプル添加針。
【請求項5】
前記液体貯蔵部の肉厚が0.4~0.5mmであることを特徴とする、請求項1に記載の微小液滴を調製するためのサンプル添加針。
【請求項6】
前記液体吐出部の肉厚が0.1~0.2mmであることを特徴とする、請求項1に記載の微小液滴を調製するためのサンプル添加針。
【請求項7】
前記液体吐出部から離れた前記液体貯蔵部の一端には、前記液体貯蔵部と一体的に成形された適合部が付けられ、前記適合部は、半径方向寸法が前記液体吐出部に向かう方向に徐々に減少する円錐台であることを特徴とする、請求項1に記載の微小液滴を調製するためのサンプル添加針。
【請求項8】
前記液体吐出部から離れた前記適合部の一端に、前記適合部を取り囲む段差部が設けられ、前記液体吐出部に向かう前記段差部の一端に、少なくとも1つの補強リブが設けられ、前記段差部が前記適合部と一体的に形成されていることを特徴とする、請求項に記載の微小液滴を調製するためのサンプル添加針。
【請求項9】
前記適合部の高さが3~8mmであり、テーパーが2~6°であることを特徴とする、請求項に記載の微小液滴を調製するためのサンプル添加針。
【請求項10】
前記適合部の高さが3~5mmであることを特徴とする、請求項に記載の微小液滴を調製するためのサンプル添加針。
【請求項11】
前記適合部のテーパーが3~4.5°であることを特徴とする、請求項に記載の微小液滴を調製するためのサンプル添加針。
【請求項12】
前記液体吐出部から離れた前記適合部の一端は液体供給開口であることを特徴とする、請求項に記載の微小液滴を調製するためのサンプル添加針。
【請求項13】
前記液体吐出開口の内径は50~200μmであることを特徴とする、請求項に記載の微小液滴を調製するためのサンプル添加針。
【請求項14】
前記液体吐出開口の内径は100~180μmであることを特徴とする、請求項に記載の微小液滴を調製するためのサンプル添加針。
【請求項15】
前記サンプル添加針は、純水溶液との接触角が80度以上の材料から形成され、前記材料は、フッ化エチレンプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニル、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ナイロン、ポリオキシメチレン、ポリ塩化ビニル、またはポリプロピレンの1つであることを特徴とする、請求項1~14のいずれか1項に記載の微小液滴を調製するためのサンプル添加針。
【請求項16】
前記材料は、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはシクロオレフィンポリマーであることを特徴とする、請求項15に記載の微小液滴を調製するためのサンプル添加針。
【請求項17】
サンプル添加針を提供することと;
前記サンプル添加針にキャリアオイルを、前記サンプル添加針内の前記キャリアオイルに気泡がないように充填することと;
サンプル溶液を収容している第1の開口容器を提供し、液体吐出部の液体吐出開口が前記第1の開口容器の液面の上方に位置するように前記サンプル添加針を移動させることと;
前記液体吐出開口が前記サンプル溶液に接触して浸されて前記サンプル溶液が前記サンプル添加針内に吸い込まれるように前記サンプル添加針を下に移動させることと;
油性液体を収容している第2の開口容器を提供し、前記サンプル溶液が吸い込まれた前記サンプル添加針を前記第2の開口容器の液面の上方に移動させることと;
前記液体吐出開口が前記油性液体に接触して浸されるように前記サンプル添加針を下に移動させ、前記サンプル添加針を前記油性液体中で周期的な往復運動をさせて液体を排出することで、前記液体吐出開口内の前記サンプル溶液が前記油性液体に入って均一なサイズを有する微小液滴を形成することと
を含むことを特徴とする、請求項1~16のいずれか1項に記載のサンプル添加針を用いて微小液滴を調製するための方法。
【請求項18】
前記周期的な往復運動は、速度または加速度が変化する周期的な往復運動であることを特徴とする、請求項17に記載の微小液滴を調製するための方法。
【請求項19】
前記周期的な往復運動の位置波形は、正弦波、方形波、三角波、台形波、鋸歯状波、または前記の波形の重ね合わせもしくは組み合わせであることを特徴とする、請求項17に記載の微小液滴を調製するための方法。
【請求項20】
前記キャリアオイルと前記サンプル溶液とは互いに相溶しなく、前記油性液体と前記サンプル溶液とは互いに相溶しないことを特徴とする、請求項17に記載の微小液滴を調製するための方法。
【請求項21】
前記サンプル添加針にキャリアオイルを充填する過程及び前記サンプル添加針が液体を吐き出して液滴を形成する過程において、液滴の体積の均一性への気泡の影響を排除するように、前記サンプル添加針に気泡があるかどうかを気泡検出法を使用して検出するまたは人工的に観察して判断することを特徴とする、請求項17に記載の微小液滴を調製するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ流体技術、マイクロスケール材料調製、マイクロリアクター、及びマイクロ分析技術分野に関する。具体的には、微小液滴を調製するためのサンプル添加針及び微小液滴を調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微小液滴は様々な分野で広く使用されており、微小液滴に基づくマイクロ流体技術は、単一細胞分析、単一細胞配列決定、デジタルPCR、タンパク質結晶化、ハイスループット反応スクリーニング、及び単一細胞機能選別などの分野で急速に開発され、適用されてきた。
【0003】
微小液滴の生成は、互いに相溶しない2つの相を使用して乳化微小液滴を生成することである。微小液滴相は分散相と呼ばれ、微小液滴を包む相は連続相と呼ばれる。微小液滴が生成された後、それらを分割、融合、混合、希釈、収集、及び選別することなどができる。したがって、微小液滴の形状、サイズ、及び単分散性を制御することが非常に重要である。
【0004】
従来技術では、微小液滴生成技術は主に以下のものを含む。1つは、マイクロ流体チップを使用して微小液滴を生成することである。その原理は、分散相と連続相がマイクロチャネル内で出会うときの界面の不安定性に基づいている。駆動力(重力、遠心力、推進力など)によって、装置の複雑さや操作の複雑さが異なるため、製造及び操作には熟練したオペレーターが必要である。2つ目は、特殊な装置を使用して微量の液体を噴射し、例えば、圧電セラミック、熱衝撃膨張、高電圧エレクトロスプレーなどの特殊な噴射または微小液滴励起法などによって微小液滴を形成することであるが、この方法では、微小液滴の体積への正確な調整制御は困難であり、生物学的サンプルがある程度損傷する可能性がある。
【発明の概要】
【0005】
本出願の主な目的の1つは、上記従来技術の欠陥の少なくとも1つを克服し、均一なサイズ及び制御可能な体積を有する微小液滴を調製するためのサンプル添加針を提供することである。
【0006】
本出願の主な目的の1つは、上記従来技術の欠陥の少なくとも1つを克服し、交換及びバッチでの使用が容易な、微小液滴を調製するためのサンプル添加針を提供することである。
【0007】
本出願のもう1つの主な目的は、前記サンプル添加針を使用することによって微小液滴を調製するための方法を提供することである。本出願の出願人は、出願番号が201410655191.5、発明名称がマイクロチャンネルの液滴の生成方法である中国特許、出願番号が201410655309.4、発明名称が微小液滴に基づく核酸増幅のデジタル定量分析のための方法及びシステムである中国特許、及び出願番号が201821013244.3、発明名称が微小液滴生成用の吸引ヘッド装置である中国特許に基づいて本出願の研究を続けてきた。上記特許に開示された方法及び装置によって生成された微小液滴は、制御可能なサイズ及び良好な均一性を有する。キャピラリー、及び金属キャピラリーを備えた吸引ヘッド装置を使用して、液体貯蔵チャンバーをキャピラリーの上端に統合し、簡単に交換でき、キャピラリーを使用すると、サンプルを直接吸い取り、油相液面下での往復振動によって微小液滴を生成できる。しかしながら、このサンプル添加針には次のような問題がある。ナノリットルの微小液滴を生成するために、金属キャピラリーの内径は100ミクロンと小さく、これは加工と組み立てに大きな困難をもたらし、サンプル添加針のコストが高すぎる;サンプル液を吸い取る場合、キャピラリー抵抗が大きいため、真空や気泡が発生しやすく、液のサンプリング速度が制限され、液滴生成の均一性に影響する;金属キャピラリー自体は疎水性が不十分であり、液滴が生成される場合、表面がサンプル液中の生体分子を容易に吸着して親水性になり、液滴を連続的に生成できなくなる;非金属キャピラリーは、加工コストが高く、剛性が弱いため、液滴生成の均一性を確保できない。そのため、出願人は、上記の方法及び装置の欠陥に基づいて、本出願をさらに研究した。本出願は、外部キャピラリー液体吐出口のない、一体的に射出成形できる新しい微小液滴調製用サンプル添加針を提供し、サンプル添加針の液体吐出部にテーパー状の吐出口を開口することで、ストレートパイプの加工の難しさを解決し、大量かつ低コストの加工が可能である。この設計により、振動時の液体吐出部の剛性及び振動制御の精度が確保され、低コストで均一なナノリットル液滴の調製が実現できる。
【0008】
上記の課題を解決するために、本出願は以下の技術構成を採用する。
1、一体的に成形されて互いに貫通する液体貯蔵部及び液体吐出部を含む、微小液滴を調製するためのサンプル添加針であって、前記液体貯蔵部は、半径方向寸法が前記液体吐出部に向かう方向に徐々に減少する中空円錐台であり、前記液体吐出部は、半径方向寸法が前記液体貯蔵部から離れる方向に徐々に減少する中空円錐台であり、前記液体貯蔵部のテーパーはC1であり、前記液体吐出部のテーパーはC2であり、C1≦C2であり、前記液体貯蔵部の肉厚はD1であり、前記液体吐出部の肉厚はD2であり、D1>D2であることを特徴とする、微小液滴を調製するためのサンプル添加針。
2、前記液体貯蔵部の高さが3~50mm、好ましくは5~30mmであり、テーパーが2~30°、好ましくは2~20°であり、肉厚が0.3~2.0mm、好ましくは0.4~0.5mmであることを特徴とする、項1に記載の微小液滴を調製するためのサンプル添加針。
3、前記液体吐出部の高さが1~10mm、好ましくは2~5mmであり、テーパーが10~60°、好ましくは10~20°であり、肉厚が0.05~0.3mm、好ましくは0.1~0.2mmであることを特徴とする、項1に記載の微小液滴を調製するためのサンプル添加針。
4、前記液体吐出部から離れた前記液体貯蔵部の一端には、前記液体貯蔵部と一体的に成形された適合部が付けられ、前記適合部は、半径方向寸法が前記液体吐出部に向かう方向に徐々に減少する円錐台であることを特徴とする、項1に記載の微小液滴を調製するためのサンプル添加針。
5、前記液体吐出部から離れた前記適合部の一端に、前記適合部を取り囲む段差部が設けられ、前記液体吐出部に向かう前記段差部の一端に、少なくとも1つの補強リブが設けられ、前記段差部が前記適合部と一体的に成形されていることを特徴とする、項4に記載の微小液滴を調製するためのサンプル添加針。
6、前記適合部の高さが3~8mm、好ましくは3~5mmであり、テーパーが2~6°、好ましくは3~4.5°であることを特徴とする、項4に記載の微小液滴を調製するためのサンプル添加針。
7、前記液体吐出部から離れた前記適合部の一端は液体供給開口であり、前記液体貯蔵部から離れた前記液体吐出部の一端は液体吐出開口であることを特徴とする、項4に記載の微小液滴を調製するためのサンプル添加針。
8、前記液体吐出開口の内径は25~200μm、好ましくは50~200μm、より好ましくは100~180μmであり、前記液体吐出開口の外径は200~800μm、好ましくは250~550μm、より好ましくは350~450μmであることを特徴とする、項7に記載の微小液滴を調製するためのサンプル添加針。
9、前記サンプル添加針は、純水溶液との接触角が80度以上の材料から形成され、前記材料は、フッ化エチレンプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニル、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ナイロン、ポリオキシメチレン、ポリ塩化ビニル、またはポリプロピレンの1つであり、好ましくはナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはシクロオレフィンポリマーであることを特徴とする、項1~8のいずれか1項に記載の微小液滴を調製するためのサンプル添加針。
10、 サンプル添加針を提供することと;
前記サンプル添加針にキャリアオイルを、前記サンプル添加針内の前記キャリアオイルに気泡がないように充填することと;
サンプル溶液を収容している第1の開口容器を提供し、液体吐出部の液体吐出開口が前記第1の開口容器の液面の上方に位置するように前記サンプル添加針を移動させることと;
前記液体吐出開口が前記サンプル溶液に接触して浸されて前記サンプル溶液が前記サンプル添加針内に吸い込まれるように前記サンプル添加針を下に移動させることと;
油性液体を収容している第2の開口容器を提供し、前記サンプル溶液が吸い込まれた前記サンプル添加針を前記第2の開口容器の液面の上方に移動させることと;
前記液体吐出開口が前記油性液体に接触して浸されるように前記サンプル添加針を下に移動させ、前記サンプル添加針を前記油性液体中で周期的な往復運動をさせて液体を排出することで、前記液体吐出開口内の前記サンプル溶液が前記油性液体に入って均一なサイズを有する微小液滴を形成することと
を含むことを特徴とする、微小液滴を調製するための方法。
11、前記サンプル添加針が、項1~9のいずれか1項に記載のサンプル添加針であることを特徴とする、項10に記載の方法。
12、前記周期的な往復運動は、速度または加速度が変化する周期的な往復運動であることを特徴とする、項10に記載の微小液滴を調製するための方法。
13、前記周期的な往復運動の位置波形は、正弦波、方形波、三角波、台形波、鋸歯状波、または前記の波形の重ね合わせもしくは組み合わせであることを特徴とする、項10に記載の微小液滴を調製するための方法。
14、前記キャリアオイルと前記サンプル溶液とは互いに相溶しなく、前記油性液体と前記サンプル溶液とは互いに相溶しないことを特徴とする、項10に記載の微小液滴を調製するための方法。
15、前記サンプル添加針にキャリアオイルを充填する過程及び前記サンプル添加針が液体を吐き出して液滴を形成する過程において、液滴の体積の均一性への気泡の影響を排除するように、前記サンプル添加針に気泡があるかどうかを気泡検出法を使用して検出するまたは人工的に観察して判断することを特徴とする、項10に記載の微小液滴を調製するための方法。
【0009】
本出願に記載される微小液滴を調製するためのサンプル添加針によれば、「上部には液体供給アダプターを接続するための適合部が設けられ、中部にはサンプルを貯蔵するための液体貯蔵部が設けられ、下部には微小液滴の生成に使用される液体吐出部が設けられ、前記適合部の上端の開口が液体供給開口であり、前記液体吐出部の下端の開口が液体吐出開口であり、前記液体供給開口から前記液体吐出開口へ直径が徐々に減少し、前記液体吐出開口の内径が25~200μmであり、外径が200~800μmであり、前記サンプル添加針と前記サンプル溶液及び前記油性液体と接触するときの接触角が80°以上である」設計を使用することによって、前記サンプル添加針を使用して微小液滴を調製する場合、前記サンプル添加針は、前記油性液体中で変化している速度で周期的な往復運動を行うことで、前記サンプル溶液が液体吐出開口で油性液体の周期的せん断力を受け、その結果、前記サンプル添加針内の前記サンプル溶液が前記油性液体に入り、均一なサイズ及び制御可能な体積を有する微小液滴の生成が実現できる。
【0010】
本出願に記載される微小液滴を調製するためのサンプル添加針において、前記液体貯蔵部のテーパーはC1であり、前記液体吐出部のテーパーはC2であり、C1≦C2であり、前記液体貯蔵部の肉厚はD1であり、前記液体吐出部の肉厚はD2であり、D1>D2である。液体吐出部のテーパー構造が大きいため、前端の小さい開口の加工性及び金型の寿命が確保でき、液体吐出部の剛性も確保できる。液体貯蔵部の肉厚を厚くすることでサンプル添加針の全体的な剛性が確保でき、液体吐出部を薄くすることでサンプル添加針の前端の寸法を小さくすることができ、往復運動中の管壁による流体のせん断力の減衰及び油相へのかき乱しを抑えることができ、微小液滴の確実な生成を促進できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
添付の図面は、本出願をよりよく理解できるように使用され、本出願に対する不適切な制限を構成するものではない。ここで、
図1】本出願に開示された微小液滴を調製するためのサンプル添加針の概略図である。
図2】本出願に開示された微小液滴を調製するためのサンプル添加針の底面図である。
図3図2の部分Aの拡大図であり、本出願で提供されるサンプル添加針の液体吐出開口の構造概略図を示している。
図4】本出願の液体貯蔵部及び液体吐出部の概略図である。
図5】本出願に開示された微小液滴を調製するための方法を使用して微小液滴を調製するための操作ステップの概略図である。
図6図6A、6B、及び6Cは、本出願の特定の実施形態において、振動機構によってサンプル添加針が駆動されて液面下または液面を横切って変化している速度で周期的な往復運動を行って微小液滴を生成する原理の概略図である。
図7】試験例1で微小液滴を生成する実験の結果を示す図である。
図8図8A~8Dは、本出願の液体吐出開口の管壁の形状の概略図である。
【0012】
符号の説明:
110-サンプル添加針;120-液体吐出部;130-液体貯蔵部;140-適合部;150-液体吐出開口;160-液体供給開口;170-液体供給アダプター;180-段差部;190-補強リブ;200-サンプル溶液;210-油性液体;220-微小液滴;230-キャリアオイル;240-振動機構。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付の図面を参照して、以下で本出願の例示的な実施形態を説明する。その中に含まれる本出願の実施形態の様々な詳細は、理解を容易にするためであり、単なる例示的なものと見なされるべきである。したがって、当業者は、本出願の範囲及び精神から逸脱することなく、本明細書に記載の実施形態について様々な変更及び修正を行うことができることを認識するであろう。また、明確及び簡潔にするために、以下の説明では、公知の機能及び構造についての説明を省略している。
【0014】
図1図4を参照すると、本出願は、一体的に成形されて互いに貫通する液体貯蔵部130及び液体吐出部120を含む、微小液滴を調製するためのサンプル添加針110を提供する。前記液体貯蔵部130は、半径方向寸法が前記液体吐出部120に向かう方向に徐々に減少する中空円錐台であり、前記液体吐出部120は、半径方向寸法が前記液体貯蔵部130から離れる方向に徐々に減少する円錐台であり、前記液体貯蔵部130のテーパーはC1であり、前記液体吐出部120のテーパーはC2であり、C1≦C2であり、前記液体貯蔵部の肉厚はD1であり、前記液体吐出部の肉厚はD2であり、D1>D2である。液体吐出部120のより大きいテーパー構造は、前端の小さい開口の加工性及び金型の寿命を確保し、液体吐出部120の剛性をも確保できる。液体貯蔵部分130のより厚い肉厚は、サンプル添加針の全体的な剛性を確保し、一方、より薄い液体吐出部120は、サンプル添加針の前端の寸法が小さいことを確保し、これは、微小液滴の生成に寄与する。
【0015】
テーパーとは、円錐の底面の直径と円錐台の高さとの比を指す。円錐台の場合、上下に底面の円の直径差と円錐台の高さの差との比を指す。
【0016】
図4に示すように、(a)は液体貯蔵部の概略図であり、(b)は液体吐出部の概略図である。
【0017】
【数1】
【0018】
【数2】
【0019】
図2図3に示すように、前記液体貯蔵部130及び前記液体吐出部120は、いずれも両端に開口部を有する中空円錐台構造である。前記液体貯蔵部130は、両端に開口部を有する中空円錐台構造であってもよく、前記液体吐出部120は、両端に開口部を有する中空円錐台構造であってもよく、前記液体貯蔵部130の下端部と前記液体吐出部120の上端部とは一体的に成形されている。液体貯蔵部130は、キャリアオイル230を貯蔵するために使用され、液体吐出部120は、サンプル溶液200を吸い取るために使用される。
【0020】
前記サンプル添加針110によって微小液滴220を調製するとき、前記サンプル添加針110にキャリアオイル230を、サンプル添加針110内のキャリアオイル230に気泡がないように充填する。次に、サンプル溶液200を収容している第1の開口容器の液面内にサンプル添加針110を入れて、前記サンプル添加針110の液体吐出部120から前記サンプル溶液200を吸い込む。そして、前記サンプル溶液200を吸い込んだサンプル添加針110を、油性液体210を収容している第2の開口容器の液面内に移動させて、前記液体吐出開口150を前記油性液体210に接触させて浸した後、前記サンプル添加針110を前記油性液体210中で変化している速度で周期的な往復運動させ、これによって液体吐出開口150での前記サンプル溶液200の吸着力が弱まり、前記サンプル添加針110内の前記サンプル溶液200が前記油性液体210に入って、均一なサイズ及び制御可能な体積を有する微小液滴220の形成が実現される。
【0021】
本出願の実施形態では、前記液体貯蔵部130の高さは、3~50mm、好ましくは5~30mmであり、テーパーは2~30°、好ましくは2~20°であり、肉厚は0.3~2.0mm、好ましくは0.4~0.5mmである。
【0022】
前記液体貯蔵部130の高さは、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、11mm、12mm、13mm、14mm、15mm、16mm、17mm、18mm、19mm、20mm、21mm、22mm、23mm、24mm、25mm、26mm、27mm、28mm、29mm、30mm、31mm、32mm、33mm、34mm、35mm、35mm、36mm、37mm、38mm、39mm、40mm、41mm、42mm、43mm、44mm、45mm、46mm、47mm、48mm、49mm、50mmのいずれかであり得る。
【0023】
前記液体貯蔵部130のテーパーは、2°、3°、4°、5°、6°、7°、8°、9°、10°、11°、12°、13°、14°、15°、16°、17°、18°、19°、20°、21°、22°、23°、24°、25°、26°、27°、28°、29°、30°のいずれかであり得る。
【0024】
前記液体貯蔵部130の肉厚は、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1mm、1.1mm、1.2mm、1.3mm、1.4mm、1.5mm、1.6mm、1.7mm、1.8mm、1.9mm、2.0mmであり得る。
【0025】
本出願の実施形態では、前記液体吐出部120の高さは1~10mm、好ましくは2~5mmであり、テーパーは10~60°、好ましくは10~20°であり、肉厚は0.05~0.3、好ましくは0.1~0.2mmである。
【0026】
前記液体吐出部120の高さは、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mmのいずれか1つであり得る。
【0027】
前記テーパーは、10°、11°、12°、13°、14°、15°、16°、17°、18°、19°、20°、21°、22°、23°、24°、25°、26°、27°、28°、29°、30°、31°、32°、33°、34°、35°、36°、37°、38°、39°、40°、41°、42°、43°、44°、45°、46°、47°、48°、49°、50°、51°、52°、53°、54°、55°、56°、57°、58°、59°、60°のいずれか1つであり得る。
【0028】
前記液体吐出部120の肉厚は、0.05mm、0.06mm、0.07mm、0.08mm、0.09mm、0.1mm、0.11mm、0.12mm、0.13mm、0.14mm、0.15mm、0.16mm、0.17mm、0.18mm、0.19mm、0.2mm、0.21mm、0.22mm、0.23mm、0.24mm、0.25mm、0.26mm、0.27mm、0.28mm、0.29mm、0.3mmであり得る。
【0029】
前記液体吐出部120のテーパーを大きくすることにより、前記液体吐出開口150の内径及び外径が小さい場合に液体吐出部120の高さを小さくし、サンプル添加針110の液体吐出部120の機械的強度が増加し、微小液滴220の調製の安定性及び微小液滴220の均一性に寄与する。
【0030】
本出願の実施形態では、前記液体吐出部120から離れた前記液体貯蔵部130の一端には、液体貯蔵部と一体的に成形された適合部140が付けられ、前記適合部140は、半径方向寸法が前記液体吐出部120に向かう方向に徐々に減少する円錐台である。
【0031】
前記適合部140は、キャリアオイル230が液体供給アダプター170を介して前記液体貯蔵部130に入るように、前記液体供給アダプター170を接続するために使用することができる。
【0032】
前記適合部140は、両端に開口を備える中空の円錐台構造であり得る。
【0033】
前記液体貯蔵部130は、前記適合部140と緊密に接続されている。
【0034】
本出願の実施形態では、図8Aに示すように、前記液体吐出部120から離れた前記適応部140の一端は、液体供給開口160であり、前記液体貯蔵部130から離れた前記液体吐出部120の一端は、液体吐出開口150である。
【0035】
図8B~8Dに、前記液体吐出開口の3つの変形が示され、前記液体吐出開口の内径は等しく、外径は等しいか、または軸方向に沿って徐々に小さくなる。図8Bでは、前記液体吐出開口150は中空円筒形であり、前記液体吐出開口の内径及び外径はいずれも等しい。前記液体吐出開口150と前記液体吐出部120は一体的に形成され、前記液体吐出部120の端部の内径は、前記液体吐出開口150の内径に等しく、互いに貫通している。図8C及び8Dは、図8C及び8Dの前記液体吐出開口150の下部の外径が軸方向に徐々に減少する点において、図8Bと相違する。
【0036】
前記液体供給開口160には、液体供給アダプター170が挿入されて接続され、それによって、キャリアオイル230は、液体貯蔵部130にスムーズに入ることができる。
【0037】
図3に示すように、前記液体吐出開口150の内径R3は、25~200μm、好ましくは50~200μm、より好ましくは100~180μmであり、前記液体吐出開口150の外径R4は、200~800μm、好ましくは250~550μm、より好ましくは350~450μmである。
【0038】
前記液体吐出開口150のR3の内径は、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm、55μm、60μm、65μm、70μm、75μm、80μm、85μm、90μm、95μm、100μm、105μm、110μm、115μm、120μm、125μm、130μm、135μm、140μm、145μm、150μm、155μm、160μm、165μm、170μm、175μm、180μm、185μm、190μm、195μm、200μmのいずれかであり得る。
【0039】
前記液体吐出開口150の外径R4は、200μm、210μm、220μm、230μm、240μm、250μm、260μm、270μm、280μm、290μm、300μm、310μm、320μm、330μm、340μm、350μm、360μm、370μm、380μm、390μm、400μm、410μm、420μm、430μm、440μm、450μm、460μm、470μm、480μm、490μm、500μm、510μm、520μm、530μm、540μm、550μm、560μm、570μm、580μm、590μm、600μm、610μm、620μm、630μm、640μm、650μm、660μm、670μm、680μm、690μm、700μm、710μm、720μm、730μm、740μm、750μm、760μm、770μm、780μm、790μm、800μmのいずれかであり得る。
【0040】
本出願の実施形態では、前記液体吐出部120から離れた前記適合部140の一端に、前記適合部140を取り囲む段差部180が設けられ、前記液体吐出部120に向かう前記段差部180の一端に、少なくとも1つの補強リブ190が設けられる。すなわち、前記液体供給開口160の外面には、前記適合部140を取り囲む段差部180が設けられ、前記段差部180は環状であり、前記段差部は、前記適合部上に一体的に形成される。
【0041】
前記段差部180は、前記適合部140の液体供給開口160に套設され、前記段差部180は、前記適合部140と緊密に接続されている。前記段差部の直径は、サンプル添加針110箱内のサンプル添加針110配置孔の直径よりも大きく、一部の前記段差部は、サンプル添加針110箱内の受容面と接触して、前記サンプル添加針110をアレイに空中に浮くようにサンプル添加針110箱に配置するようになる。
【0042】
前記補強リブ190の数は、1、2、3、4、5及びそれ以上とすることができる。前記補強リブ190の数が複数である場合、複数の補強リブ190を等間隔に配置することができる。複数の前記補強リブ190は、液体供給アダプター170が前記適合部140に密接に挿着されたときに、サンプル添加針110の機械的強度を高めることができる。
【0043】
本出願の実施形態では、前記補強リブ190及び前記適合部140の両方が、前記液体吐出部120に向かって延伸する。すなわち、前記補強リブ190の延伸方向と前記適合部140の延伸方向は一致している。前記補強リブ190の底部は、前記適合部140に接続されている(ここで、補強リブ190の底部は、補強リブ190が適合部140に面している側である)。
【0044】
本出願の実施形態では、前記適合部140の高さが3~8mm、好ましくは3~5mmであり、テーパーが2~6°、好ましくは3~45°である。
【0045】
前記適合部140の高さは、3mm、3.5mm、4mm、4.5mm、5mm、5.5mm、6mm、6.5mm、7mm、7.5mm、及び8mmのいずれかであり得る。
【0046】
前記適合部140のテーパーは、2°、2.5°、3°、3.5°、4°、4.5°、5°、5.5°、及び6°のいずれかであり得る。
【0047】
液体供給アダプター170と前記適合部140が密接に挿着される部分のテーパーは2~6°であり、これは、液体供給アダプター170と前記サンプル添加針110との間の接続の気密性を確保する。
【0048】
本出願の実施形態では、前記液体貯蔵部130の液体貯蔵容量は、5~500μL、好ましくは20~60μLである。
【0049】
前記液体貯蔵部130の液体貯蔵容量は5μL、10μL、20μL、30μL、40μL、50μL、60μL、70μL、80μL、90μL、100μL、150μL、200μL、250μL、300μL、350μL、400μL、450μL、及び500μLのいずれかである。
【0050】
本出願で提供されるサンプル添加針110及び微小液滴の調製方法を使用して微小液滴を調製する場合、前記サンプル添加針110によって吸い取られるサンプル溶液200の体積は、前記サンプル添加針110の液体貯蔵容量範囲よりも小さく、これは、過剰なサンプル溶液200が液体供給アダプター170に入って相互汚染を引き起こすことを防止できる。
【0051】
本出願では、前記サンプル添加針110は、純水溶液との接触角が80度以上の材料でできており、前記材料は、フッ化工チレンプロピレンコポリマー(FEP)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリエーテルスルホン樹脂(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン(PE)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー(ABS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ナイロン、ポリオキシメチレン、ポリ塩化ビニル、またはポリプロピレンの1つを含むが、これらに限定されず、好ましくはナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びシクロオレフィンポリマーのうちの1つである。
【0052】
フッ化工チレンプロピレンコポリマー(FEP、接触角98度)は、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとが共重合してなり、優れた耐熱性、絶縁性、耐食性、耐候性、低い摩擦係数などの特性がある。ポリフッ化ビニル(PVF、接触角98度)は、耐熱性、絶縁性、耐食性、耐放射線性、耐衝撃性などに優れたフッ化ビニルホモポリマーである。ポリエーテルスルホン樹脂(PES、接触角90度)は、優れた総合特性を備えた熱可塑性高分子材料であり、耐熱性、物理的・機械的特性、絶縁性、加工性などに優れ、特に高温で連続して使用でき、急激な温度変化のある環境でも安定したパフォーマンスを維持できるという突出した特徴を有する。ポリフェニレンサルファイド(PPS、接触角87度)は、優れた総合特性を備えた特殊エンジニアリングプラスチックであり、優れた耐高温性、耐食性、耐放射線性、難燃性、物理的及び機械的特性、寸法安定性、及び電気特性などを備える。ポリブチレンテレフタレート(PBT、接触角88度)は、優れた総合特性を備えた特殊エンジニアリングプラスチックであり、優れた耐熱性、靭性、耐疲労性、有機溶剤耐性、自己潤滑性、低い摩擦係数などの特性がある。ポリエチレン(PE、接触角88度)は、耐低温性、化学的安定性、耐食性、電気絶縁性などに優れた熱可塑性樹脂である。アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS、接触角82度)は、高強度、靭性、加工性に優れた熱可塑性高分子材料であり、耐食性、耐衝撃性、高難燃性、高耐熱性、高透明性などの特性を有する。ポリメチルメタクリレート(PMMA、接触角82度)は、優れた透明度、加工性、機械的強度、絶縁性、耐候性、耐熱性などの特性を備える。ポリプロピレン(PP、接触角88度)は、耐薬品性、耐熱性、電気絶縁性、高強度の機械的特性、及びよい耐摩耗加工性を備えた優れた特性を備えた熱可塑性合成樹脂である。
【0053】
本出願では、前記適合部140が配置されている端部が上側/上部であり、前記液体吐出部120が配置されている端部が下側/下部である。
【0054】
特定の実施形態では、前記サンプル添加針は射出成形プロセスによって調製される。調製された金属射出成形キャビティを使用し、溶融済みの事前に添加された疎水性補助材料ポリプロピレンなどの原材料を、加圧、射出、圧力維持、冷却、及び離型などの操作を通じて所望の形状のサンプル添加針を製造する。上記の射出成形製造プロセスにより、上記のサンプル添加針を大量かつ低コストで製造することができる。
【0055】
図5図6A、6B及び6Cに示すように、本出願は、次のステップ:
A:前記サンプル添加針110、サンプル添加針アダプター170、及び導管を介してサンプル添加針アダプター170に接続された精密シリンジポンプを提供すること;
B:サンプル添加針110をサンプル添加針アダプター170に密接に取り付け、サンプル添加針アダプター170を介してにキャリアオイル230を、前記サンプル添加針110内のキャリアオイル230に気泡がないように前記サンプル添加針110に充填すること;
C:サンプル溶液200を収容している第1の開口容器を提供し、液体吐出部120の液体吐出開口150が前記第1の開口容器の液面の上方に位置するようにサンプル添加針110を移動させること;
D:前記液体吐出開口150が前記サンプル溶液200に接触して浸されて前記サンプル溶液200が前記サンプル添加針110内に吸い込まれるように前記サンプル添加針110を下に移動させること;
E:油性液体210を収容している第2の開口容器を提供し、前記サンプル溶液200が吸い込まれたサンプル添加針110を前記第2の開口容器の液面の上方に移動させること;
F:前記液体吐出開口150が前記油性液体210に接触して浸されるように前記サンプル添加針110を下に移動させ、前記サンプル添加針110を前記油性液体210中で周期的な往復運動させることで、前記液体吐出開口150内の前記サンプル溶液200が前記油性液体210に入って均一なサイズを有する微小液滴220を形成すること、を含む微小液滴を調製するための方法をさらに提供する。
微小液滴220の体積は50pL~50nLであり得る。前記液体吐出開口150の内径が45μmである場合、前記微小液滴220の最小体積は50pLに達することができる。前記液体吐出開口150の内径が78μmである場合、前記微小液滴220の最小体積は250pLに達することができる。前記液体吐出開口150の内径が200である場合、前記微小液滴220の最小体積は50nLに達することができる。
【0056】
図6Aに示すように、ステップFにおいて、振動機構が前記サンプル添加針110に接続され、前記振動機構240によって前記サンプル添加針110が駆動されて前記油性液体210内で変化している速度で周期的な往復運動をする。アダプターは振動時にサンプル添加針をつれて、振動装置によって駆動され、軸を中心に高速でスイングする。スイング周波数は100Hz~500Hzが好ましい。サンプル添加針の液体吐出開口間の距離は軸から4~6cmであり、液体吐出開口の往復運動の振動振幅は、好ましくは0.1~5mm、より好ましくは0.5~2mmである。
【0057】
図6Bに示すように、ステップFにおいて、振動機構が前記サンプル添加針110に接続され、前記水平振動機構240によって前記サンプル添加針110が駆動されて前記油性液体210内で変化している速度で周期的な往復運動をする。アダプターは振動時にサンプル添加針をつれて、振動機構によって駆動され、水平往復運動を行う。スイング周波数は100Hz~500Hzが好ましく、100Hz~150Hzがより好ましい。液体吐出開口の往復運動の振動距離は、好ましくは0.1~5mm、より好ましくは0.5~2mmである。
【0058】
前記サンプル添加針110の液体吐出開口150の速度曲線は、正弦波、方形波、三角波、台形波、鋸歯状波、または前記の波形の重ね合わせもしくは組み合わせであり得る。
【0059】
前記サンプル添加針110は、変化している速度で周期的な往復運動を行い、1つの往復運動サイクルで0.5個または1個の微小液滴220を生成し、好ましくは1個の微小液滴220を生成する。
【0060】
図6Cに示すように、ステップFにおいて、振動機構240は、サンプル添加針110を駆動して、変化している速度で周期的な運動をする。まず、サンプル添加針110は左から右に加速する。次に、サンプル添加針110は左から右に移動して1つの振動サイクルで最高速度に達することにより、サンプル添加針の液体吐出開口によって注入された液体に対する油相のせん断力が、開口の外側の液滴の切断を実現する。そして、サンプル添加針は右側の最も遠い位置まで減速する。最後に、サンプル添加針は低速で左側に戻り、1つの振動サイクルが完了する。以上の変速運動により、1つの振動サイクルで1つの液滴の切断が実現できる。前記サンプル添加針110の液体吐出開口の往復運動の位置-時間波形は、1つの振動サイクル内の非対称波形である。上記の振動形態は、左から右へ及び右から左への2つの半サイクルでそれぞれ1つの液滴、すなわち、1つの往復運動サイクルで2つの液滴を生成するのではなく、1つの振動サイクルで左から右へ運動するときのみ1つの液滴を生成する。この波形と液滴の生成メカニズムは、射出成形金型を型締したときの内孔と外孔の非軸(同軸ではないこと)に対する耐性が非常に高く、また、加工精度や吐出開口の小さな傷による左右同時に生成する液滴体積の不一致を効果的に回避できる。
【0061】
前記振動機構240は、前記サンプル添加針110を駆動して、液面下変化している速度で周期的な往復運動を行い、前記サンプル溶液200の流量は、生成される微小液滴220の直径と一定の正の相関関係を有する。前記サンプル添加針110中のサンプル溶液200の流量を大きくすると、生成される微小液滴220の直径が大きくなり、前記サンプル添加針110の振動周波数は、生成される微小液滴220の直径と一定の負の相関関係がある。サンプル添加針110の周波数が増加すると、生成される微小液滴220の直径が減少する。したがって、本出願に開示されたサンプル添加針110及び微小液滴の調製方法を使用して生成される微小液滴220の直径は、サンプル添加針110内のサンプル溶液200の流量及びサンプル添加針110の振動周波数によって制御することができ、微小液滴220の体積の制御及び調整は、比較的フレキシブルである。さらに、プラグインタイプのサンプル添加針110を迅速に交換することにより、異なるバッチのサンプルの相互汚染を回避することができるとともに、サンプル添加針110から流出する溶液の成分を交換し、異なる組成及び体積の複数の微小液滴220を開口容器内に順次形成できる。これは、微小液滴220のハイスループットスクリーニングを実現するために使用できるだけではなく、多段階の超微量生化学反応及び検出を実現するためにも使用でき、幅広い応用の見込みがある。
【0062】
本出願に記載のサンプル添加針及び微小液滴の生成方法を使用し、前記サンプル添加針にキャリアオイルを充填する過程及び前記サンプル添加針が液体を吐き出して液滴を形成する過程において、液滴の体積の均一性への気泡の影響を排除するように、前記サンプル添加針に気泡があるかどうかを気泡検出法を使用して検出するまたは人工的に観察して判断する。例えば、白色LEDを使用して側面からサンプル添加針と水平した位置でサンプル添加針を照らし、高解像度ビデオキャプチャCCDカメラを使用してサンプル添加針を正面及び照明LEDに垂直な方向から撮影し、収集した画像を深層学習アルゴリズムでリアルタイムで分析し、サンプル添加針に気泡があるかどうかを判断する。気泡が存在する場合、サンプル添加針を交換して再度実験を行うようにユーザーに提示するか、自動化機構により、サンプル添加針の自動交換を実現し、これによって、生成される液滴のサイズの均一性を確保し、また、気泡の存在による実験の失敗やサンプルの浪費を避ける。
【0063】
本出願に記載の第1の開口容器及び第2の開口容器の形状は限定されておらず、本出願の機能を実現できる限り、従来技術であり得る。
【0064】
本出願の実施形態では、前記キャリアオイル230と前記サンプル溶液200とは互いに相溶しなく、前記油性液体210と前記サンプル溶液200とは互いに相溶しない。
【0065】
本出願では、キャリアオイル230は、鉱油、シリコーン油、液体アルカン、または液体エステルのうちの1つまたは複数であり得る。油性液体210は、鉱油、シリコーン油、液体アルカン、または液体エステルのうちの1つまたは複数であり、Tweenシリーズ界面活性剤、Spanシリーズ界面活性剤、長鎖アルキル含有シリコーン鎖非イオン性界面活性剤などの適量のイオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤を含む。サンプル溶液200は、純水溶液、PEGまたはDMSOであり、また、PCR試薬、細胞培養液、生物学的サンプル、緩衝液などの混合物であり得る。
【0066】
実施例1
本出願に記載のサンプル針110の貯液容量は60マイクロリットルであり、サンプル添加針110を調製するための材料はポリプロピレン(PP、純水溶液の接触角は88度である)である。液体吐出部120の高さは5mmであり、テーパーは20°であり、肉厚は0.15mmである。液体貯蔵部130の高さは18.7mmであり、テーパーは4°であり、肉厚は0.5mmである。適合部の高さは6mmであり、テーパーは4°であり、液体吐出開口150の内径は100μmであり、外径は400μmである。上記の寸法に従って、精密金属射出成形金型のキャビティと内部コアを作成し、射出成形プロセスによって大量の自動サンプル添加針を加工した。歩留まりは99.98%であった(バッチテストの数は10,000である)。
【0067】
試験例1
実施例1に記載のサンプル添加針110を使用し、前記サンプル添加針110の適合部140の上端開口部に、液体供給アダプター170の一端を密接に挿着し、液体供給アダプター170のもう一端を、テフロン(Teflon)ホースを介して三方弁付きの精密シリンジポンプに接続した。シリンジポンプには、容量50マイクロリットルのマイクロインジェクターが備えられており、サンプル添加針110は振動機構に固定されて接続された。液体供給アダプター170とサンプル添加針110の適合部140の上端開口部とは、直接挿着及び適合させることができ、これにより、サンプル添加針110の取り外し及び交換が容易になる。微小液滴を調製する前に、テフロンホース、液体供給アダプター170、及びサンプル添加針110に鉱油を充填し、液路に漏れや気泡がないことを確認した。マイクロインジェクターの吸引を使用して、サンプル添加針110は、2.5μl/秒の速度で、サンプル溶液200を収容している第1の開口容器から25μlの1mg/mL BSA溶液(緩衝系は1XPBS、pH=7.5)を吸い取り、サンプル添加針110を、3%重量のABIL EM90を含む鉱油を収容している第2の開口容器の上に移動させた。波形発生器を、サンプル添加針110が鉱油の液面下または液面を横切って変化している速度で周期的な往復運動を行うための駆動信号発生器として使用し、これによって、液体吐出開口150から排出されたサンプル溶液200と油性液体210は相対運動を行った。振幅1.2mm、周波数100Hz、マイクロインジェクターの流量100ナノリットル/秒、及び注入量20マイクロリットルの条件下で調製された微小液滴220を図7に示す。シリンジポンプがマイクロインジェクターに圧力を加えると、サンプル溶液200は定速で油性液体210に入った。サンプル溶液200と油性液体210との相対運動による流体せん断力(液面下での周期的な往復運動)、界面張力及び界面力(液面を横切る周期的な往復運動)により、サンプル添加針110の液体吐出開口150から排出されたサンプル溶液200は、液体吐出開口150から離れ、ナノリットルの体積を有する微小液滴220を形成し、微小液滴220の半径のCVは、3%未満であった。約3.3分間で、1ナノリットルの体積の約20,000個の微小液滴220が第2の開口容器に形成された。
【0068】
上記の液体吸引と液滴生成の操作を50回繰り返し、毎回生成された各液滴の体積と均一性をそれぞれ検出した。その結果、サンプル添加針は長期間安定して繰り返して使用でき、生成した液滴はすべて1nLであり、CVは3%未満であることが分かった。サンプル添加針の表面の優れた疎水性と親油性により、サンプル添加針が長期間安定して作業する能力が確保される。
【0069】
比較例1
公開特許(出願番号201410655309.4の中国特許)を参考に、金属キャピラリー付サンプル添加針を加工した。それは、実施例1の適合部及び液体貯蔵部と同じ寸法を有し、その違いは、比較例1の液体吐出部はステンレス鋼製キャピラリーであり、ステンレス鋼製キャピラリーの長さが1cmであり、内径が100μmであり、外径が240μmであり、キャピラリーは、液体貯蔵部の下端の円錐形キャビティと連通している。射出成形法で加工した後、キャピラリーと射出部をディスペンスで接続した。キャピラリーの内径が非常に小さいため、ディスペンス接続が詰まりやすくなる。増えたキャピラリーの切断、キャピラリーの表面研磨、表面処理、及びディスペンスプロセスなどにより、改善されたプロセス条件下で、歩留まりは約33.6%(数量は10,000)であった。
【0070】
試験例1の操作手順とパラメーターを使用して、構造が完備している金属キャピラリー付サンプル添加針を選択し、前記サンプル添加針を使用して25μlの1mg/mL BSA溶液を2.5μl/秒の速度で吸い取った(緩衝系は1XPBS、pH=7.5)。キャピラリーの抵抗が大きすぎたため、液体貯蔵部に気泡が生成され、その後、大きくて不均一な液滴が生成され、平均体積が約2.6ナノリットルであり、CVは25%を超えた。
【0071】
試験例2
比較例1で説明した金属キャピラリー付サンプル添加針を使用し、試験例1の操作手順にしたがって、液体吸引速度を0.5μl/秒に下げ、25μlの1mg/mL BSA溶液(緩衝系は1XPBS、pH=7.5)を吸い取った。その結果、液体貯蔵部に気泡が発生しなかったが、かかった時間が10秒から50秒に増えたと分かった。微小液滴は、試験例1の操作手順を使用して振動によって生成された。顕微鏡観察によれば、最初の2000個の液滴が生成されたとき、キャピラリーの外壁は疎水性の状態のままであり、生成された液滴のサイズは1nLであり、サイズは均一であった。その後、キャピラリーの表面がBSAに吸着されて親水性になったため、キャピラリー出口の端面の外側で溶液の吸着が起こり、注入液とキャピラリーの接触面積が大きくなったことが観察された。同じ振動条件下で、生成された液滴の体積は3nLまたは4nLになり、CV値は30%を超え、均一な1nLの液滴を生成することはできなかった。
【0072】
【表1】
【0073】
上記の実施例及び比較例から分かるように、本出願に記載のサンプル添加針は、歩留まりが高く、加工コストが低く、1ナノリットルと小さい体積の均一な微小液滴を大量に連続的に生成することができる。
【0074】
本出願の実施形態を、添付の図面を参照して上で説明してきたが、本出願は、上記の特定の実施形態及び応用分野に限定されず、上記の特定の実施形態は、単に例示的、指導的であり、限定的ではない。本明細書の教示の下で、本出願の特許請求の範囲から逸脱することなく、当業者は多くの形態を成し得、これらはすべて本出願の保護範囲内である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図8C
図8D