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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】多孔質フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/28 20060101AFI20240416BHJP
   B32B 5/32 20060101ALI20240416BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240416BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20240416BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
C08J9/28 101
C08J9/28 CEP
C08J9/28 CER
C08J9/28 CEZ
B32B5/32
H01M4/13
H01M4/139
H01M4/62 Z
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2022526012
(86)(22)【出願日】2019-11-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(86)【国際出願番号】 AT2019060374
(87)【国際公開番号】W WO2021087535
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】522175886
【氏名又は名称】クレオニア・セルズ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ウンゲランク・マルクス
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-255849(JP,A)
【文献】特開2016-026369(JP,A)
【文献】特開昭63-126505(JP,A)
【文献】国際公開第2016/148302(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/094486(WO,A1)
【文献】特開2014-012857(JP,A)
【文献】特開2010-254731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00-9/42
B32B
H01M 4/00-4/62
B29C 67/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単層または多層の多孔質フィルムを製造するための方法であって、以下のステップ:
a.前記フィルムの第1のフィルム層用の流動性の第1のベース混合物を供するステップであって、前記第1のベース混合物が、溶剤、該溶剤中に不溶性の添加物および該溶剤中に溶解するポリマー系バインダーを含むステップ、
b.フィルム前駆体薄膜を形成するステップであって、前記フィルム前駆体薄膜が、前記第1のベース混合物からの少なくとも1つの副層を含むステップ、
c.前記フィルム前駆体薄膜を沈殿剤と接触させるステップであって、前記第1のベース混合物の前記溶剤が、該沈殿剤中に可溶性であり、前記バインダーが、該沈殿剤中に少なくとも部分的に不溶性であり、前記バインダーが析出することで多孔質フィルムが形成されるステップ、
を含み、前記フィルム前駆体薄膜を形成するステップが、前記ベース混合物(複数を含む)の支持体なしでの押出を含み、その結果、支持媒体を必要としない自立フィルムが形成されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
- 前記方法が、流動性の第1のベース混合物を供するステップに加えて、以下:
・第2のフィルム層の形成用の流動性の第2のベース混合物を供すること、ただし、前記第2のベース混合物は、溶剤、該溶剤中に不溶性の添加物および該溶剤中に溶解するポリマー系バインダーを含む、および
・分離層の形成用の流動性の第3のベース混合物を供すること、ただし、セパレーター混合物は、溶剤および該溶剤中に溶解するポリマー系バインダーを含む、
を含み、
- 前記フィルム前駆体薄膜が、前記第2のベース混合物からの第2の副層と、前記第3のベース混合物からの第3の副層とを含み、これらの副層が、前記フィルム前駆体薄膜の主延伸方向に互いに平行に延びており、
- 前記ベース混合物の前記バインダーが、前記沈殿剤中に少なくとも部分的に不溶性であり、前記バインダーが析出することで多孔質フィルムが形成される
ことを特徴とする、前記方法。
【請求項3】
前記第3のベース混合物が、実質的に導電性成分を含まないか、または非導電性であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記フィルム前駆体薄膜を形成するために、前記第3のベース混合物を、前記第1のベース混合物と前記第2のベース混合物との間に配置することを特徴とする、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記ベース混合物(複数を含む)の前記ポリマー系バインダーが、ポリスルホン類、ポリイミド類、ポリスチレン、カルボキシメチルセルロース、ポリエーテルケトン類、ポリエーテル、高分子電解質、フッ素化ポリマーまたはそれらの少なくとも2つの混合物を含むか、またはこれらからなることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
前記ベース混合物(複数を含む)の前記溶剤が、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノール、イソプロパノール、水、またはそれらの少なくとも2つの混合物を含むか、またはこれらからなることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
前記添加物が、電気活性剤であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、
- 前記電気活性剤が、リチウム酸化物および/またはリチウム硫化物および/またはリチウムフッ化物および/またはリチウムリン酸塩またはそれらの任意の混合物を含むか、またはこれらからなること、および/または、
- 前記電気活性剤が、グラファイト、グラフェン、ケイ素ナノ粒子、リチウムチタン酸塩、スズ、またはそれらの混合物を含むか、またはこれらからなること、
を特徴とする、前記方法。
【請求項9】
ベース懸濁液が、導電剤を更に含み、前記導電剤が、導電性炭素含むか、またはこれらからなることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
前記沈殿剤が、水、少なくとも1種のアルコールまたはそれらの混合物を含むか、またはこれらから形成されることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
前記ベース混合物(複数を含む)の支持体なしでの押出が、前記第1のベース混合物、前記第2のベース混合物および前記第3のベース混合物の支持体なしでの共押出を含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
ステップ(b)の後かつステップ(c)の前に、前記フィルム前駆体薄膜を、片面または両面で予備沈殿剤と接触させ前記ベース混合物(複数を含む)の前記バインダーが、前記予備沈殿剤中に不溶性であることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
前記方法が、以下のステップ:
d.前記薄膜を洗浄溶液中で洗浄するステップ
を更に含むことを特徴とする、請求項1~12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
前記方法が、以下のステップ:
e.前記フィルムを、乾燥装置において乾燥させるステップ、
を更に含むことを特徴とする、請求項1~13のいずれか一つに記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、以下のステップ:
f.前記フィルムをプレス装置、圧延装置もしくはカレンダー装置において圧密化するステップ、
を更に含むことを特徴とする、請求項1~14のいずれか一つに記載の方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一つに記載の方法により製造される多孔質フィルム。
【請求項17】
前記フィルムが、50μm~1000μmの間の実質的に一定の厚さを有することを特徴とする、請求項16に記載のフィルム。
【請求項18】
前記フィルムが、1つの第1のフィルム層、1つの第2のフィルム層および前記第1のフィルム層と前記第2のフィルム層との間に配置された1つの分離層を含み、前記第1のフィルム層および前記第2のフィルム層が、20μm~500μmの間の厚さを有し、前記分離層が、5μm~50μmの間の厚さを有することを特徴とする、請求項16または17に記載のフィルム。
【請求項19】
前記分離層が、電気絶縁体であることを特徴とする、請求項16~18のいずれか一つに記載のフィルム。
【請求項20】
前記第1のフィルム層および前記第2のフィルム層が、導電体であることを特徴とする、請求項16~19のいずれか一つに記載のフィルム。
【請求項21】
請求項16~20のいずれか一つに記載のフィルムと、電極材料の外側面に配置された集電層とを含む電極材料。
【請求項22】
請求項16~20のいずれか一つに記載のフィルムの少なくとも2つの層を含む、請求項21に記載の電極材料。
【請求項23】
請求項22に記載の電極材料と、電解質および2つの接点要素とを備えるエネルギー貯蔵媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項に記載の多孔質フィルムを製造する方法に関する。本発明は更に、本発明による方法を使用して製造されたフィルム、このフィルムを含む電極材料、およびこの電極材料を備えるエネルギー貯蔵媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム(Li)イオン蓄電池は、電気自動車および定置式蓄電装置の範囲を更に拡大する鍵であると見なされている。Liイオン技術の利点は、とりわけ、他のエネルギー貯蔵システムと比較してはるかに高いエネルギー密度および電力密度、ならびに低い自己放電にある。
【0003】
しかしながら、従来技術において公知のLiイオン蓄電池の製造は、とりわけ、例えば個々の電極の層厚に関する厳しい精度要件から生じる多大な製造技術上の課題を伴う。更に、公知のLiイオン蓄電池は通常、複雑な製造ステップを必要とする。市販されている多様なセル型により更に複雑さが高まっている。
【0004】
概算では、従来技術で通例の連続生産において、コストの3分の2は使用される材料に起因するものである。したがって、製造コストをより低くする手段は、より高いスループット、わずかな不良品、およびより安価なカソード材料につながり得る。
【0005】
主として制限をもたらす局面は、バッテリーセルまたはバッテリー用の個々のコンポーネントの製造である。従来技術では、Liイオンバッテリーセルの製造のために、カソード、アノード、およびカソードとアノードとの間に配置される電気絶縁性セパレーターが別々に製造され、その後、手間のかかる方法において種々の形状のセルへと加工される。
【0006】
アノードおよびカソードの厚さは、従来技術での製造プロセスが、例えばコンベヤベルト炉における溶剤の蒸発を伴うので、プロセス条件で制限されている。こうして製造されるフィルムの厚さが増すと、溶剤の均一な蒸発がもはや保証されなくなり、電極の構造が不均質となり得ることから、その品質が損なわれる。アノードおよび/またはカソードのコーティングが厚くなると、溶剤の蒸発時間がコーティングの厚さの2乗に比例して延びるので、乾燥区間が長くなることにより設備費用の増加につながる。しかしながら、Liイオン蓄電池の貯蔵容量を改善するには、電極材料用のより厚い電極またはフィルムが望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、これらの二律背反を解消し、より厚いフィルムの製造を一貫した品質で可能にする方法を生み出すことであり、これらのフィルムは、有利には、Liイオン蓄電池用の電極材料の製造に適している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、独立請求項の特徴を有する方法によって解決される。
【0009】
したがって、本発明は、単層または多層の多孔質フィルムを製造する方法に関する。
【0010】
任意選択的に、以下の方法ステップ:
- フィルムの第1のフィルム層用の流動性の第1のベース混合物を供するステップであって、第1のベース混合物が、溶剤、該溶剤中に不溶性の添加物(Zuschlagstoff)、および該溶剤中に溶解するポリマー系バインダーを含むステップ、
- フィルム前駆体薄膜を形成するステップであって、前記フィルム前駆体薄膜が、第1のベース混合物からの少なくとも1つの副層を含むステップ、
- 前記フィルム前駆体薄膜を沈殿剤と接触させるステップであって、第1のベース混合物の溶剤が、該沈殿剤中に可溶性であり、前記バインダーが、該沈殿剤中に少なくとも部分的に不溶性であり、および前記バインダーが析出することで多孔質フィルムが形成されるステップ、
を意図している。
【0011】
任意選択的に、上記方法は、流動性の第1のベース混合物を供するステップに加えて、以下:
- 第2のフィルム層の形成用の流動性の第2のベース混合物を供すること、ここで、第2のベース混合物は、溶剤、該溶剤中に不溶性の添加物、および該溶剤中に溶解するポリマー系バインダーを含む、および
- 分離層の形成用の流動性の第3のベース混合物を供すること、ここで、セパレーター混合物が、溶剤、および該溶剤中に溶解するポリマー系バインダーを含むこと、
を含むことを意図している。
【0012】
任意選択的に、フィルム前駆体薄膜は、第2のベース混合物からの第2の副層と、第3のベース混合物からの第3の副層とを含み、これらの副層が、フィルム前駆体薄膜の主延伸方向に互いに平行に延びていることを意図している。
【0013】
任意選択的に、ベース混合物のバインダーが、沈殿剤中に少なくとも部分的に不溶性であり、バインダーが析出することで多孔質フィルムが形成されることを意図している。
【0014】
任意選択的に、第3のベース混合物が、実質的に導電性成分を含まないか、または非導電性であることが意図される。
【0015】
任意選択的に、フィルム前駆体薄膜を形成するために、第3のベース混合物を、第1のベース混合物と第2のベース混合物との間に配置することを意図している。
【0016】
任意選択的に、ベース混合物(複数を含む)のポリマー系バインダーが、ポリスルホン類、ポリイミド類、ポリスチレン、カルボキシメチルセルロース、ポリエーテルケトン類、ポリエーテル、高分子電解質、フッ素化ポリマー、特にポリフッ化ビニリデン、またはそれらの少なくとも2つの混合物を含むか、またはそれらからなることを意図している。
【0017】
任意選択的に、ベース混合物(複数を含む)の溶剤が、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノール、イソプロパノール、水、またはそれらの少なくとも2つの混合物を含むか、またはそれらからなることを意図している。
【0018】
任意選択的に、前記添加物が、電気活性剤(elektroaktives Mittel)であることが意図される。
【0019】
任意選択的に、前記電気活性剤が、リチウム酸化物および/またはリチウム硫化物および/またはリチウムフッ化物および/またはリチウムリン酸塩、特にリチウム-マンガン二酸化物、リチウム-コバルト二酸化物、リチウム-ニッケル-マンガン-コバルト二酸化物、リチウム-ニッケル-コバルト-アルミニウム酸化物、リチウム-ニッケル-マンガン-スピネル、リチウム-ニッケル-マンガン二酸化物、リチウム-鉄リン酸塩、リチウム-マンガンリン酸塩、リチウム-コバルトリン酸塩、またはそれらの任意の混合物を含むか、またはそれらからなることを意図している。
【0020】
任意選択的に、電気活性剤が、グラファイト、グラフェン、ケイ素ナノ粒子、リチウムチタン酸塩、スズ、またはそれらの混合物を含むか、またはそれらからなることを意図している。
【0021】
任意選択的に、ベース懸濁液が、導電剤(Leitfaehigkeitsmittel)を更に含み、導電剤が、導電性炭素、特にカーボンブラック、グラフェン、またはグラファイトを含むか、またはそれらからなることを意図している。
【0022】
任意選択的に、沈殿剤が、水、少なくとも1種のアルコール、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ベース混合物の溶剤、またはそれらの混合物を含むか、またはそれらから形成されることを意図している。
【0023】
任意選択的に、フィルム前駆体薄膜の形成が、ベース混合物(複数を含む)の支持体なしでの押出、好ましくは、第1のベース混合物、第2のベース混合物および第3のベース混合物の支持体なしでの共押出を含むことを意図している。
【0024】
任意選択的に、ステップ(b)の後およびステップ(c)の前に、フィルム前駆体薄膜を、片面または両面を予備沈殿剤と接触させ、特に、予備沈殿剤で表面をコーティングし、ここで、ベース混合物(複数を含む)のバインダーは、予備沈殿剤中に不溶性であることが意図される。
【0025】
任意選択的に、上記方法が、前記薄膜を洗浄溶液中で洗浄するステップであって、洗浄溶液が、好ましくは、水または少なくとも1種のアルコール、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールまたはそれらの混合物を含むか、またはそれらから形成されるステップを更に含むことを意図している。
【0026】
任意選択的に、上記方法が、前記フィルムを乾燥装置、好ましくはベルト式乾燥機またはローラー式乾燥機において、循環空気または不活性ガスを用いて乾燥させるステップを更に含むことを意図している。
【0027】
任意選択的に、上記方法は、フィルムをプレス装置、圧延装置、もしくはカレンダー装置において、好ましくは50℃を超える温度の作用下で圧密化するステップ、またはフィルムを熱収縮によって圧密化するステップを更に含むことを意図している。
【0028】
本発明は更に、本発明による方法で製造された多孔質フィルムに関する。
【0029】
任意選択的に、前記フィルムが、50μm~1000μmの間、好ましくは200μm~500μmの間の、好ましくは実質的に一定の厚さを有することを意図している。
【0030】
任意選択的に、フィルムが、1つの第1のフィルム層、1つの第2のフィルム層、および第1のフィルム層と第2のフィルム層との間に配置された1つの分離層を含み、第1のフィルム層および第2のフィルム層が、20μm~500μmの間の厚さを有し、分離層が、5μm~50μmの間の厚さを有することを意図している。
【0031】
任意選択的に、分離層が、電気絶縁体であることが意図される。
【0032】
任意選択的に、第1のフィルム層および第2のフィルム層が、導電体であることが意図される。
【0033】
本発明は更に、本発明によるフィルムと、電極材料の外側面に配置された集電層(Stromableitungsschict)とを含む電極材料に関する。
【0034】
任意選択的に、電極材料は、本発明によるフィルムの少なくとも2つの層を含む。
【0035】
本発明は更に、本発明による電極材料と、電解質および2つの接点要素とを備えるエネルギー貯蔵媒体に関する。
【0036】
本発明の更なる特徴は、詳細な説明、特許請求の範囲、実施形態例、図面、および本発明の好ましい態様から明らかになる。
【0037】
本発明による方法においては、第1のフィルム層の形成用に調製される第1のベース混合物が供され得る。第1のベース混合物は、少なくとも1つの溶剤、該溶剤中に不溶性の添加物、および該溶剤中に溶解するポリマー系バインダーを含み得る。
【0038】
本発明による方法により製造されるフィルムが多層フィルムである場合が有利である。その際、セルを製造するための個々の電極の集成ステップは不要であり、考えられる過失の原因が排除される。更に、個々の層の製造と比較して、フィルムの機械的安定性が向上し、必要に応じて、個々の副層がより薄く形成されてよい。
【0039】
それに応じて、第1のベース混合物の他に、第2のベース混合物も供され得る。第2のベース混合物は、少なくとも1つの溶剤、該溶剤中に不溶性の添加物、および該溶剤中に溶解するポリマー系バインダーを含み得る。
【0040】
第1のベース混合物および第2のベース混合物の他に、第3のベース混合物も供され得る。第3のベース混合物は、少なくとも1つの溶剤、および該溶剤中に溶解するポリマー系バインダーを含み得る。第3のベース混合物は、不溶性の添加物を含まなくてもよい。あるいは、第3のベース混合物は、不溶性の添加物(好ましくは非導電性である)を含み得る。
【0041】
第1のベース混合物、第2のベース混合物、および第3のベース混合物の他に、最終的なフィルム製品の要件に応じて、更に別のベース混合物も供され得る。
【0042】
例えば、放電保護層の形成用に構成された第4のベース混合物および第5のベース混合物が供され得る。第4のベース混合物および第5のベース混合物は、フィルム前駆体薄膜を形成する際に、第1の副層と第3の副層との間に、または第2の副層と第3の副層との間に配置され得る。第4のベース混合物および第5のベース混合物は、バインダーとして、特に、低融点を有するポリマー材料を含み得る。特に、このバインダーの融点は100℃未満、好ましくは80℃未満である。
【0043】
好ましい実施形態においては、第1のベース混合物は、アノード材料の形成用に構成されており、第2のベース混合物は、カソード材料の形成用に構成されており、第3のベース混合物は、カソード材料とアノード材料との間に配置される分離層の形成用に構成されることを意図している。アノード材料およびカソード材料は、好ましくは導電性である。分離層は、好ましくは電気絶縁性である。
【0044】
それに応じて、第1のベース混合物および第2のベース混合物は、好ましくは、導電性成分、特に溶剤中に不溶性の導電性添加物を含む。特に好ましくは、添加物は、電気活性剤であってもよく、イオンを吸収または放出することができ、好ましくはリチウムイオンを吸収または放出することができる。第3のベース混合物は、好ましくは、導電性成分を含まない。しかしながら、第3のベース混合物は、溶剤中に不溶性であるが、好ましくは非導電性である添加物を含み得る。これらの添加物またはフィラーは、更なる加工ステップに際して分離層の安定性を向上させることができる。しかしながら、任意選択的に、第3のベース混合物はまた、不溶性の添加物を含まなくてもよい。
【0045】
ベース混合物の個々の成分は、同じであっても、部分的に同じであっても、または全く異なっていてもよい。例えば、第1のベース混合物は、ポリマー系バインダーとしてのポリイミドおよび溶剤としてのN-メチルピロリドンを含み得る一方で、第2のベース混合物は、ポリマー系バインダーとしてのポリスチレンおよび溶剤としてのジメチルホルムアミドを含み得る。
【0046】
ベース混合物からフィルム前駆体薄膜を形成することができる。好ましくは、ベース混合物は、ベース混合物の押出、ベース混合物のドクターブレード法、または従来技術において公知の別の薄層の形成法を使用することを可能にする粘度を有する。
【0047】
ベース混合物(複数を含む)は、互いに独立して、10mPa・sを超える、好ましくは10mPa・sを超える、更に好ましくは10mPa・sを超える粘度を有し得る。
【0048】
フィルム前駆体薄膜は、好ましくは、複数の副層を含む多層のフィルム前駆体薄膜である。副層は実質的に互いに平行に延びており、副層の本質的な混合には至らない。溶解度に応じて、界面に近い領域において、個々の副層の成分のある程度の混合は起こり得る。
【0049】
好ましくは、フィルム前駆体薄膜の形成は、ベース混合物の共押出によって行われる。
【0050】
フィルム前駆体薄膜の形成後に、これを沈殿剤と接触させ、好ましくは沈殿剤中に浸漬させる。ベース混合物の1種または複数のバインダーは、少なくとも部分的に沈殿剤中に不溶性であり、その結果1種または複数のバインダーは沈殿剤との接触に際して析出する。この転相反応により、多孔質フィルムの形成がなされ得る。フィルムの物理的特性は1種または複数のバインダーの沈殿剤中での不溶性の度合いに大きく左右される。
【0051】
これにより、好ましくは、いかなる支持媒体も必要としない、自立フィルムが形成される。前駆体薄膜が押出法によって製造される場合に、得られる多孔質フィルムを、エンドレスなウェブ材料として得ることができる。
【0052】
フィルムは、好ましくは、複数の副層、特に1つの第1のフィルム層、1つの第2のフィルム層、および第1のフィルム層と第2のフィルム層との間に配置された1つの分離層を有し得る。特に、第1のフィルム層の組成は、第1のベース混合物に由来し、第2のフィルム層の組成は第2のベース混合物に由来し、分離層の組成は第3のベース混合物に由来する。
【0053】
フィルムの好ましい実施形態においては、第1のフィルム層はアノード層であり、第2のフィルム層はカソード層であり、第3のフィルム層はセパレーター層である。カソード層は、電気活性剤として、特にリチウム金属酸化物またはリチウム金属リン酸塩を含み得る。
【0054】
カソード層と分離層との間、またはアノード層と分離層との間に放電保護層が設けられている場合に、放電保護層は、特定の温度でエネルギー貯蔵媒体の放電を防ぐことができる。セル温度が放電保護層のバインダーの融点を超えると、バインダーが分離層の細孔に浸透して細孔を閉じるため、カソード層とアノード層との間で電荷交換がもはや起こり得なくなる。
【0055】
本発明による製造方法を更に改善するために、追加の方法ステップが意図されていてもよい。
【0056】
沈殿剤と接触させる前に、フィルム前駆体薄膜を、片面または両面で予備沈殿剤と接触させることができる。予備沈殿剤は、沈殿剤とは異なる溶解特性を有し、それによって第1の析出ステップを開始することができる。予備沈殿剤との接触は、沈殿剤との接触の直前に、例えば、前駆体薄膜に予備沈殿剤をスプレーすることによって行われ得る。任意選択的に、前駆体薄膜の両面に異なる予備沈殿剤を施与することができる。ベース混合物に加えて、予備沈殿剤も押出され得る。
【0057】
予備沈殿剤は、任意選択的に、沈殿剤と同じ組成を有することができる。
【0058】
予備沈殿剤の施与によって、フィルム前駆体薄膜の外側層におけるバインダーの迅速な凝固を達成することができる。こうして、外皮様の表面を形成することができ、この表面は、押出時に得られるフィルムの厚さの変動および幅の漸減を抑えることができる。更に、予備沈殿剤の使用により、フィルムの多孔度および表面の濡れ性を意図通りに調整することが可能となる。
【0059】
バインダーの最終的な凝固および多孔質フィルムの形成は、好ましくは沈殿浴内に入った沈殿剤中で行われる。フィルムの細孔構造を、ベース混合物中のバインダー濃度、ベース混合物において使用される溶剤の種類、沈殿剤の組成、沈殿剤の温度などのようなパラメーターを調整することによって変えることができる。
【0060】
形成された多孔質フィルムを、任意選択的に、ロールまたはローラーの配列を経由して更に輸送することができる。任意選択的に、フィルムの形成後に、フィルムを洗浄溶液中に導入して、沈殿剤、溶剤および他の汚染物質を除去することができる。
【0061】
任意選択的に、洗浄後に、フィルムをなおも更なる洗浄浴に通して、第1の洗浄浴の洗浄剤または洗浄溶液を排除することができる。任意選択的に、洗浄浴の後にフィルムを乾燥機に通して、洗浄剤または洗浄溶液を蒸発させることができる。フィルムの高い多孔度および洗浄剤の低い沸点により、フィルムからの洗浄剤の蒸発が促進および加速される。
【0062】
任意選択的に、フィルムをプレス装置、例えば、圧延装置またはカレンダー装置において圧密化して、フィルムを緻密化することができる。圧密化はまた、熱の作用下で、例えば、プレス装置を用いてまたは用いずに、少なくとも1つのバインダーの軟化点を上回る温度で行うことができる。
【0063】
本発明による方法によって得られたフィルムは、高い多孔度を有し得る。第1のフィルム層および第2のフィルム層の多孔度は、互いに独立して、0.10超、0.20超、0.30超、0.40超、0.50超、0.60超、0.70超、0.80超、または0.90超であり得る。第1のフィルム層および第2のフィルム層の多孔度は、互いに独立して、0.99未満、0.95未満、または0.90未満であり得る。
【0064】
一実施形態においては、アノード層の多孔度は0.2~0.4の間である。一実施形態においては、カソードフィルムの多孔度は0.5~0.7の間である。
【0065】
分離層の多孔度は、特に、第1のフィルム層および第2のフィルム層の多孔度よりも大きくてもよい。分離層の高い多孔度は、低い抵抗をもたらすことから、低いセル抵抗に関して有利である。分離層の多孔度は、0.20超、0.30超、0.40超、0.50超、0.60超、0.70超、0.80超、または0.90超であり得る。分離層の多孔度は、0.99未満、0.95未満、または0.90未満であり得る。一実施形態においては、分離層の多孔度は0.2~0.4の間である。
【0066】
個々のフィルム層において細孔が均質に分布していてもよいが、例えば製造方法において予備沈殿剤が使用される場合に、段階的な細孔サイズ分布および/または多孔度分布を備えていてもよい。その際、フィルムの表面に近い部分は、更に内側にある部分とは異なる大きさの細孔を有する別の多孔度を有し得る。上述の多孔度の記述は、特にフィルム層の平均多孔度を指している。
【0067】
フィルム層および分離層の平均細孔サイズは、互いに独立して、100nm~5μmの間、別の実施形態例においては500nm~2μmの間、別の実施形態例においては200nm~1μmの間であり得る。
【0068】
本発明によるフィルムは、エネルギー貯蔵媒体用の電極材料へと更に加工され得る。このために、金属製の集電層を、例えば積層または蒸着によってフィルムの外側面に施与することができる。集電層は、アルミニウム、銅、またはLiイオン蓄電池について公知の他の材料から形成されていてもよい。
【0069】
任意選択的に、本発明による方法により製造された多層フィルムを多層の複合フィルムに加工して、高められたセル電圧を有する多層バッテリーセルを形成することができる。したがって、本発明によるバッテリーセルは、任意選択的に、本発明による多孔質の多層フィルムの2層、3層、4層、5層、またはそれより多くの層を含み得る。
【0070】
それにより、特に高いエネルギー密度を有するエネルギー貯蔵媒体を製造することができ、集電に必要な金属の量を更に削減することができる。そのような多層の複合フィルムを含む電極材料には、特に、その最外層にのみ集電層を設け得る。内側にある多孔質フィルムの金属コーティングを省略することは、フィルムの表面がリチウムイオン透過性でない場合に可能であり、これは、例えば、特定の予備沈殿剤が使用される場合に該当する。
【0071】
引き続き、多層の電極材料をエネルギー貯蔵媒体に組み込むことができる。このために、2つの接点要素を電極材料に取り付け、この材料に電解質を負荷する。電解質はフィルムの細孔を満たし、Liイオンの伝導を可能にする。
【0072】
本発明に関連して、「溶解する」という用語は、成分または物質が剤、特に溶剤中に完全に可溶化されていること、すなわち、この成分またはこの物質が固体形態で存在しないことを意味し得る。
【0073】
本発明に関連して、「不溶性」という用語は、成分または物質が液体中に可溶性でないことを意味し得る。任意選択的に、ある成分またはある物質が不溶性と見なされるために、例えば約0.5%未満、好ましくは0.1%未満、更に好ましくは0.01%未満のような無視することができる成分が可溶性である場合がある。
【0074】
本発明に関連して、「導電性」という用語は、材料または物質が、10S/m超、好ましくは10S/m超、更に好ましくは10S/m超の導電率を有することを意味し得る。
【0075】
本発明に関連して、「電気絶縁性」または「非導電性」という用語は、材料または物質が10-6S/m未満、好ましくは10-7S/m未満、更に好ましくは10-8S/m未満の導電率を有することを意味し得る。
【0076】
本発明に関連して、「フィルム」、「薄膜」、「膜」などの用語は、同義語として使用され得る。
【0077】
本発明の更なる任意の態様を以下に示す。これらの態様は、本発明に関連して、個別にまたは任意の組合せで意図している場合がある。
【0078】
第1の任意の態様によれば、上記方法は連続法である。
【0079】
第2の任意の態様によれば、添加物は1つまたは複数のベース混合物中に懸濁されている。
【0080】
第3の任意の態様によれば、少なくとも1つの導電剤が1つまたは複数のベース混合物中に懸濁されている。
【0081】
第4の任意の態様によれば、添加物および/または導電剤は、ナノ粒子から形成されるか、またはナノ粒子を含む。
【0082】
本発明による第4の態様によれば、ナノ粒子は、好ましくは10nm~200nm、更に好ましくは50nm~100nmの平均サイズを有する、ケイ素ナノ粒子であり得る。
【0083】
第5の任意の態様によれば、ベース混合物は異なる組成を有する。
【0084】
第6の任意の態様によれば、少なくとも1つのバインダーは架橋可能なポリマーである。任意選択的に、架橋可能なポリマーは電解質の吸収に際して膨潤可能である。
【0085】
第7の任意の態様によれば、バインダーは、完全にまたは少なくとも部分的に、カルボン酸基および/またはスルホン酸基を有する高分子電解質である。
【0086】
第8の任意の態様によれば、フィルム前駆体材料からフィルムを形成する方法は、バインダーを凝固させる転相法である。
【0087】
第9の任意の態様によれば、ベース混合物(複数を含む)の押出は、1つまたは複数のスロットダイ(Breitschlitzduesen)、またはマルチチャネルスロットダイ(Mehrkanalbreitschlitzduese)を用いて行われる。好ましくは、ダイ(複数を含む)の幅は、5cm~200cmの間、特に好ましくは10cm~50cmの間である。
【0088】
第9の任意の態様の一実施形態によれば、予備沈殿剤は、更なるスロットダイ中、またはマルチチャネルスロットダイの更なるチャネル中に供され得る。
【0089】
第10の任意の態様によれば、沈殿剤の温度は、0℃~80℃の間、別の態様においては10℃~50℃の間、別の態様においては40℃~80℃の間、別の態様においては30℃~60℃の間であり得る。
【0090】
第11の任意の態様によれば、フィルム前駆体薄膜の押出速度は2m/分~50m/分の間であり得る。
【0091】
第12の任意の態様によれば、上記方法のステップ(b)における接触は、前駆体薄膜を沈殿剤中に導入または浸漬することを含み得る。
【0092】
第13の任意の態様によれば、上記方法のステップ(a)の前に、ベース混合物(複数を含む)の前処理を実施することができる。
【0093】
第13の態様によれば、前処理は、以下:
- ベース混合物(複数を含む)を、例えば歯付きディスク撹拌機(Zehnscheibenruehrers)を使用して、および/または超音波処理により、解凝集すること、
- ベース混合物(複数を含む)を、例えばエッジギャップフィルター(Kantenspaltfilter)、キャンドルフィルター、織布フィルターなどを使用して、濾過すること、
- ベース混合物を、直接的にまたは膜を介して真空により脱ガスすること、
のうちの1つまたは複数を含み得る。
【0094】
第14の任意の態様によれば、上記方法は、以下のステップ:
- 洗浄ステップ、任意選択的に、フィルム材料を偏向ロールまたはローラー上に案内するステップ、任意選択的に、フィルム材料の動きに対して向流で洗浄溶液を案内するステップ、
- 洗浄剤、溶剤、予備沈殿剤、沈殿剤、およびその他の揮発性成分を蒸発させるための乾燥ステップ、
- 温度処理および/または加圧によるフィルムの多孔度を調整するための緻密化ステップ、
- フィルムロールを、任意選択的に個々のフィルム層間にスペーサー材料を配置しつつ、形成するための巻取りステップ、
のうちの1つまたは複数を更に含み得る。
【0095】
第15の任意の態様によれば、第3のベース材料は、非導電性のまたは電気的に不活性な添加物、例えば、ケイ素酸化物および/またはアルミニウム酸化物を含み得る。
【0096】
第16の任意の態様によれば、本発明のフィルムは、ポリマー複合材料である。
【0097】
第17の任意の態様によれば、本発明のフィルムは、ウェブ材料である。
【0098】
第18の任意の態様によれば、本発明によるフィルムは、添加物の粒子間にフォーム状構造を有する自立フィルムである。
【0099】
第19の任意の態様によれば、電極材料は、任意選択的に20μm未満、好ましくは5μm未満、特に好ましくは1μm未満の厚さを有する、銅またはアルミニウムからの集電層を含む。
【0100】
第20の任意の態様によれば、少なくとも1つの集電層は、金属蒸着によって製造され、蒸着法は、任意選択的に連続的に実施される。
【0101】
第21の任意の態様によれば、少なくとも1つの集電層は、電解金属コーティング(galvanische Metalleschichtung)によって製造される。
【0102】
第22の任意の態様によれば、本発明によるエネルギー貯蔵媒体の側面は、バインダーを溶融することによって、または接着剤を施与することによって密封される。
【0103】
第23の任意の態様によれば、接点要素はニッケル条材および/またはアルミニウム条材から形成されており、これらは、導電性接着剤を用いて電極材料と接合されているか、または電極材料と溶接されている。
【0104】
本発明を、実施形態例に基づき以下で詳細に説明する。実施形態例に関連して、以下のことが示される。
【図面の簡単な説明】
【0105】
図1】本発明による方法の第2の実施形態例の概略的なプロセスフロー図である。
図2】第2の実施形態例の方法によって製造されたフィルムを備えるエネルギー貯蔵媒体の概略図である。
【0106】
以下に特段の明示がない限り、以下の要素が図面に示されている。溶解容器1、ホモジナイザー2、キャンドルフィルター3、貯蔵容器4、導管5、押出装置6、導管7、沈殿液容器8、沈殿浴9、循環ポンプ10、偏向ロール11、洗浄浴12、乾燥炉13、巻回装置14、電極材料15、接点要素16、セルハウジング17、アノード層18、カソード層19、分離層20、フィルム前駆体薄膜21、フィルム22、ロール23、金属層24、脱ガス装置25。
【実施例
【0107】
例1
第1の実施形態例によれば、単層の多孔質フィルムの製造方法を意図している。これらのフィルムのうちの2枚を使用して、エネルギー貯蔵媒体を製造する。
【0108】
両方のフィルムのベース混合物の組成を表1に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
グラファイトは約15μmの平均粒子径を有し、リチウム鉄リン酸塩は約2.0μmの平均粒子径を有し、カーボンブラックは約0.05μmの平均粒子径を有する。
【0111】
最初に粉末状のバインダーを不溶性の粒子状固体、すなわち電気活性剤および導電剤と乾式混合して、2つのベース混合物を製造する。次に、こうして製造された粉末混合物を溶剤に加える。混合物を均質化し、引き続き超音波ふるい機を通して濾過して、約50μmを上回るサイズを有する任意選択的に含まれる凝集物を分離する。懸濁液を真空中で脱ガスする。
【0112】
各ベース混合物を、ガラス板上にドクターブレードを用いて施与して、唯一の副層を有するフィルム前駆体薄膜を形成する。こうして作製された第1の副層の厚さは、アノードフィルムについては約250μmであり、カソードフィルムについては約350μmである。
【0113】
次に、単層のフィルム前駆体薄膜を備えたガラス板を、沈殿剤として脱イオン水を使用して、室温で沈殿剤が入った浴内に浸漬する。沈殿剤中で約10分間の滞留時間後に、ガラス板を沈殿浴から取り出す。約30×20cmの寸法を有するフィルムを、ガラス板から手動で取り外すことができる。脱イオン水が入った洗浄浴内での洗浄ステップの後に、フィルムを風乾させる。
【0114】
得られたフィルムを走査型電子顕微鏡法によって特性評価する。約1.5μmの平均細孔サイズが決定される。作製された薄膜の多孔度は、約0.65である。フィルムの厚さは、アノードフィルムについては約145μmであり、カソードフィルムについては約150μmである。70mm×70mmのサイズを有する単層のアノードフィルムおよびカソードフィルムの試料片を、レバープレスにおいて2枚の平行平面の鋼板の間で室温にて0.3to/cmの圧力で加圧する。加圧後のアノードフィルムの厚さは約70μmであり、約0.32の多孔度を有し、カソードフィルムの厚さは約100μmであり、約0.45の多孔度を有する。この場合に、これらのフィルムはその優れた機械的特性および柔軟性を失わない。
【0115】
この場合に、アノードフィルムの坪量(Flaechengewicht)は約100g/mであり、この場合に、カソードフィルムの坪量は約180g/mであり、これは従来の方法に従ってベルト式乾燥機内で溶剤を蒸発させることによって製造されたアノードコーティングまたはカソードコーティングの坪量の2倍~3倍の大きさである。
【0116】
市販のポリエチレン膜(例えば、Celgard社製)からの分離層をアノードフィルムとカソードフィルムとの間に配置することによって、フィルムから電極材料を形成する。集電層として、カソードフィルムの表面上にアルミニウム箔を配置し、アノードフィルムの表面上に銅箔を配置する。
【0117】
従来技術において公知の形態で、電極材料をエネルギー貯蔵媒体としてパウチセルへと加工する。得られたセルは典型的なセル電圧を有し、複数の充放電サイクルが可能である。
【0118】
例2
第2の実施形態例によれば、単層の多孔質フィルムの更なる製造方法を意図している。これらのフィルムのうちの2枚を使用して、エネルギー貯蔵媒体を製造する。
【0119】
両方のフィルムのベース混合物の組成を表2に示す。
【0120】
【表2】
【0121】
グラファイトは約1.5μmの平均粒子径を有し、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物は約4.0μmの平均粒子径を有し、カーボンブラックは約0.05μmの平均粒子径を有する。
【0122】
最初に粉末状のバインダーを不溶性の粒子状固体、すなわち電気活性剤および導電剤と乾式混合して、2つのベース混合物を製造する。次に、こうして製造された粉末混合物を溶剤に加える。混合物を均質化し、引き続き超音波ふるい機を通して濾過して、約50μmを上回るサイズを有する任意選択的に含まれる凝集物を分離する。懸濁液を真空中で脱ガスする。
【0123】
各ベース混合物を、ガラス板上にドクターブレードを用いて施与して、唯一の副層を有するフィルム前駆体薄膜を形成する。こうして作製された第1の副層の厚さは、アノードフィルムについては約140μmであり、カソードフィルムについては約210μmである。
【0124】
次に、単層のフィルム前駆体薄膜を備えたガラス板を、沈殿剤として脱イオン水を使用して、室温で沈殿剤が入った浴内に浸漬する。沈殿剤中で約10分間の滞留時間後に、ガラス板を沈殿浴から取り出す。約30×20cmの寸法を有するフィルムを、ガラス板から手動で取り外すことができる。脱イオン水が入った洗浄浴内での洗浄ステップの後に、フィルムを風乾させる。
【0125】
得られたフィルムを走査型電子顕微鏡法によって特性評価する。約1.5μmの平均細孔サイズが決定される。作製された薄膜の多孔度は、カソードフィルムについては約0.55であり、アノードフィルムについては約0.62である。フィルムの厚さは、アノードフィルムについては約100μmであり、カソードフィルムについては約100μmである。70mm×70mmのサイズを有する単層のアノードフィルムおよびカソードフィルムの試料片を、レバープレスにおいて2枚の平行平面の鋼板の間で室温にて0.1to/cmの圧力で加圧する。加圧後のアノードフィルムの厚さは約85μmであり、約0.56の多孔度を有し、カソードフィルムの厚さは約85μmであり、約0.47の多孔度を有する。この場合に、これらのフィルムはその優れた機械的特性および柔軟性を失わない。
【0126】
この場合に、アノードフィルムの坪量は約80g/mであり、この場合に、カソードフィルムの坪量は約139g/mであり、これは従来の方法に従ってベルト式乾燥機内で溶剤を蒸発させることによって製造されたアノードコーティングまたはカソードコーティングの坪量の約2倍の高さである。
【0127】
市販のポリエチレン膜(例えば、Celgard社製)からの分離層をアノードフィルムとカソードフィルムとの間に配置することによって、フィルムから電極材料を形成する。集電層として、カソードフィルムの表面上にアルミニウム箔を配置し、アノードフィルムの表面上に銅箔を配置する。
【0128】
従来技術において公知の形態で、電極材料をエネルギー貯蔵媒体としてパウチセルへと加工する。得られたセルは典型的なセル電圧を有し、複数の充放電サイクルが可能である。
【0129】
例3
第2の実施形態例によれば、多層の多孔質フィルムの製造方法を意図している。このフィルムを使用して、エネルギー貯蔵媒体を製造する。
【0130】
本発明による方法のステップにおいて、3つの副層からなり、各副層が1つのベース混合物から形成されるフィルム前駆体薄膜を製造する。ベース混合物の組成を表3に示す。
【0131】
【表3】
【0132】
グラファイトは約15μmの平均粒子直径を有し、リチウム鉄リン酸塩は約2μmの平均粒子直径を有し、カーボンブラックは約0.05μmの平均粒子直径を有する。
【0133】
この第2の実施形態例による本発明による製造方法は、図1におけるプロセスフロー図に示されている。
【0134】
最初にバインダーを溶剤中に完全に溶解することによって、ベース混合物を製造する。バインダー溶液の製造を、溶解容器1a、1b、1cにおいて行う。引き続き、第1のベース混合物および第2のベース混合物の場合に、不溶性の粒子状固体、すなわち電気活性剤および導電剤を添加し、混合物をホモジナイザー2a、2bにおいて均質化する。引き続き、3つのベース混合物を全てキャンドルフィルター3a、3b、3cを通じて濾過して、30μmを上回る粒子サイズを有する任意選択的に含まれる凝集物またはその他の固形物を分離する。
【0135】
次に、製造されたベース混合物を、貯蔵容器4a、4b、4cに導入し、そこでは、これを更に加工するまで貯蔵することができる。貯蔵容器4a、4b、4cにはそれぞれ、ベース混合物の均質性を保証し、粒子状成分の沈降を防ぐために撹拌機が備え付けられている。これらのベース混合物を、別々の導管5a、5b、5cにおいて、それぞれ15cmの幅を有する5つのスロットダイを備えたマルチスロット押出機として構成された押出装置6へと送る。導管5a、5b、および5c内にはそれぞれ、脱ガス装置25a、25b、25c、この場合には脱ガス膜が存在する。
【0136】
ベース混合物を3つの中央ダイに導入し、第3のベース混合物は、第1のベース混合物と第2のベース混合物との間の中央に配置される。
【0137】
最外の2つのダイは、導管7a、7bを介して沈殿液容器8a、8bに接続されている。この実施形態例においては、沈殿液は脱イオン水であり、押出の間に押出装置6から出てくるフィルム前駆体薄膜21の表面と接触される。これにより、本来の沈殿浴9と接触する前にも、バインダーは予備析出することとなる。
【0138】
フィルム前駆体薄膜21は、沈殿液が入った沈殿浴9内に支持なしで導入される。この場合に、沈殿液は約2%の溶剤ジメチルアセトアミドを含む脱イオン水である。沈殿液は、循環ポンプ10により沈殿浴内を循環し、流動している。過剰な沈殿液は、オーバーフローを介して沈殿浴9を出て、ポンプで排出されて破棄される。沈殿浴の温度は、約40℃である。
【0139】
バインダーの凝固によって生成した多孔質の3層フィルム22を、偏向ロール11を介して沈殿浴から送り出し、更に別の偏向ロール11を介して洗浄浴12へと移送する。引き続き、フィルム22を乾燥炉13内で約80℃にて乾燥し、巻回装置14でロール23に巻回する。こうして得られたウェブ材料を、更なる使用に供給することができる。
【0140】
得られたフィルムを走査型電子顕微鏡法によって特性評価する。約1.5μmの平均細孔サイズが決定される。作製された多層薄膜の多孔度は、アノード層およびカソード層については約0.65であり、その間にある分離層については約0.85である。フィルムの総厚は、約350μmである。70mm×70mmのサイズを有する3層フィルムの試料片を、レバープレスにおいて2枚の平行平面の鋼板の間で室温にて0.3to/cmの圧力で加圧する。加圧後のフィルムの厚さは約180μmであり、ここで、アノード層は約70μmの厚さであり、カソードフィルムの厚さは約100μmであり、分離層は約10μmの厚さを有する。加圧時に、これらのフィルムはその優れた機械的特性および柔軟性を失わない。
【0141】
多層フィルムの坪量は約290g/mである。
【0142】
外側のフィルム層、すなわちカソード層およびアノード層は、それぞれ約0.45および0.32の多孔度を有する。平均細孔直径は約1.5μmである。内側のフィルム層、すなわち分離層は、約0.65の多孔度を有する。平均細孔直径は約2.5μmである。
【0143】
電極材料の形成のために、ウェブ材料の15×10cmの大きさの切片に、約1μmの厚さで両面に金属層を蒸着する。アノード層の表面には銅コーティングが施され、一方で、カソード層の表面にはアルミニウムコーティングが施される。
【0144】
こうして製造された電極材料をエネルギー貯蔵媒体へと更に加工することができる。例示的なエネルギー貯蔵媒体は図2に示されている。図2は、エネルギー貯蔵媒体の単なる概略図であり、ここでは、実際のサイズ比率は縮尺に忠実に描かれていない。
【0145】
電極材料15は、アノード側およびカソード側の金属層24上で接点要素16a、16bと接触し、これらは、アノード側ではニッケル電極として構成されており、一方で、カソード側ではアルミニウム接点要素が使用される。この集成物は気密にセルハウジング17内にパッケージングされる。アノード層18、カソード層19、および分離層20を備えた電極材料15には、電荷担体として遊離Liイオンを提供する電解質が負荷される。フィルム内の細孔の毛細管現象によって濡れが起こる。
【0146】
従来技術に従って製造されたエネルギー貯蔵媒体と比較して、本発明によるこのエネルギー貯蔵媒体の製造のための製造コストは、約20%~25%低い。対質量での貯蔵密度は、従来のエネルギー貯蔵媒体よりも50%超高く、対出力での所要面積は20%超低くなっている。
【0147】
本発明による方法およびそれから得られる製品によって、任意選択的に、先行技術に対して以下の更なる利点が得られる:
【0148】
- 層の多孔度は、使用される添加物の粒子サイズとは無関係である。したがって、添加物としてナノ粒子を使用して、高い充放電電流用のセルを製造し、細孔内でのリチウムイオンの高い拡散速度を可能にすることができる。
【0149】
- 沈殿剤中でのバインダーの析出プロセスによって、添加物の間にスポンジ状の弾性構造物が生成し、これらが副層に強度および靭性を与える。材料の製造時および作動中の亀裂が大幅に減少する。
【0150】
- 分離層は、副層として存在し、それ自体に機械的耐久性が必要ないので、特に薄く、高多孔質に形成されていてもよい。
【0151】
- 金属分の削減によりセルの重量減少がなされる。
【0152】
- 分離層の厚さが減少し、分離層の多孔度が増加すると、セルのオーム内部抵抗の減少、ひいてはバッテリーの充放電時のより低い電力損失につながる。
【0153】
- より低いセルの内部抵抗は、セルのより少ない加熱で、従来技術と比較してより急速な充電を可能にする。同時に、より急速な放電(高出力セル)も実現可能である。
【0154】
- 上記方法により、例えば、芳香族ポリイミド類、ポリアミド類、ポリエーテルケトン類、またはポリエーテルスルホン類などの高い軟化点および耐熱性を有する材料をセパレーターおよび電極の製造に使用することが可能となる。これに付随して、メルトダウン温度の上昇による作動中の安全性の向上が得られる。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1.単層または多層の多孔質フィルムを製造するための方法であって、以下のステップ:
a.前記フィルムの第1のフィルム層用の流動性の第1のベース混合物を供するステップであって、前記第1のベース混合物が、溶剤、該溶剤中に不溶性の添加物および該溶剤中に溶解するポリマー系バインダーを含むステップ、
b.フィルム前駆体薄膜を形成するステップであって、前記フィルム前駆体薄膜が、前記第1のベース混合物からの少なくとも1つの副層を含むステップ、
c.前記フィルム前駆体薄膜を沈殿剤と接触させるステップであって、前記第1のベース混合物の前記溶剤が、該沈殿剤中に可溶性であり、前記バインダーが、該沈殿剤中に少なくとも部分的に不溶性であり、前記バインダーが析出することで多孔質フィルムが形成されるステップ、
を含む、方法。
2.上記1に記載の方法であって、
- 前記方法が、流動性の第1のベース混合物を供するステップに加えて、以下:
・第2のフィルム層の形成用の流動性の第2のベース混合物を供すること、ただし、前記第2のベース混合物は、溶剤、該溶剤中に不溶性の添加物および該溶剤中に溶解するポリマー系バインダーを含む、および
・分離層の形成用の流動性の第3のベース混合物を供すること、ただし、セパレーター混合物は、溶剤および該溶剤中に溶解するポリマー系バインダーを含む、
を含み、
- 前記フィルム前駆体薄膜が、前記第2のベース混合物からの第2の副層と、前記第3のベース混合物からの第3の副層とを含み、これらの副層が、前記フィルム前駆体薄膜の主延伸方向に互いに平行に延びており、
- 前記ベース混合物の前記バインダーが、前記沈殿剤中に少なくとも部分的に不溶性であり、前記バインダーが析出することで多孔質フィルムが形成される
ことを特徴とする、前記方法。
3.前記第3のベース混合物が、実質的に導電性成分を含まないか、または非導電性であることを特徴とする、上記2に記載の方法。
4.前記フィルム前駆体薄膜を形成するために、前記第3のベース混合物を、前記第1のベース混合物と前記第2のベース混合物との間に配置することを特徴とする、上記2または3に記載の方法。
5.前記ベース混合物(複数を含む)の前記ポリマー系バインダーが、ポリスルホン類、ポリイミド類、ポリスチレン、カルボキシメチルセルロース、ポリエーテルケトン類、ポリエーテル、高分子電解質、フッ素化ポリマー、特にポリフッ化ビニリデン、またはそれらの少なくとも2つの混合物を含むか、またはこれらからなることを特徴とする、上記1~4のいずれか一つに記載の方法。
6.前記ベース混合物(複数を含む)の前記溶剤が、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノール、イソプロパノール、水、またはそれらの少なくとも2つの混合物を含むか、またはこれらからなることを特徴とする、上記1~5のいずれか一つに記載の方法。
7.前記添加物が、電気活性剤であることを特徴とする、上記1~6のいずれか一つに記載の方法。
8.上記7に記載の方法であって、
- 前記電気活性剤が、リチウム酸化物および/またはリチウム硫化物および/またはリチウムフッ化物および/またはリチウムリン酸塩、特にリチウム-マンガン二酸化物、リチウム-コバルト二酸化物、リチウム-ニッケル-マンガン-コバルト二酸化物、リチウム-ニッケル-コバルト-アルミニウム酸化物、リチウム-ニッケル-マンガン-スピネル、リチウム-ニッケル-マンガン二酸化物、リチウム-鉄リン酸塩、リチウム-マンガンリン酸塩、リチウム-コバルトリン酸塩、またはそれらの任意の混合物を含むか、またはこれらからなること、および/または、
- 前記電気活性剤が、グラファイト、グラフェン、ケイ素ナノ粒子、リチウムチタン酸塩、スズ、またはそれらの混合物を含むか、またはこれらからなること、
を特徴とする、前記方法。
9.ベース懸濁液が、導電剤を更に含み、前記導電剤が、導電性炭素、特にカーボンブラック、グラフェンまたはグラファイトを含むか、またはこれらからなることを特徴とする、上記1~8のいずれか一つに記載の方法。
10.前記沈殿剤が、水、少なくとも1種のアルコール、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ベース混合物の前記溶剤、またはそれらの混合物を含むか、またはこれらから形成されることを特徴とする、上記1~9のいずれか一つに記載の方法。
11.前記フィルム前駆体薄膜を形成するステップが、前記ベース混合物(複数を含む)の支持体なしでの押出、好ましくは、前記第1のベース混合物、前記第2のベース混合物および前記第3のベース混合物の支持体なしでの共押出を含むことを特徴とする、上記1~10のいずれか一つに記載の方法。
12.ステップ(b)の後かつステップ(c)の前に、前記フィルム前駆体薄膜を、片面または両面で予備沈殿剤と接触させ、特に、予備沈殿物で表面にコーティングし、前記ベース混合物(複数を含む)の前記バインダーが、前記予備沈殿剤中に不溶性であることを特徴とする、上記1~11のいずれか一つに記載の方法。
13.前記方法が、以下のステップ:
d.前記薄膜を洗浄溶液中で洗浄するステップであって、前記洗浄溶液が、とりわけ、水または少なくとも1種のアルコール、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールまたはそれらの混合物を含むか、またはこれらから形成されるステップ、
を更に含むことを特徴とする、上記1~12のいずれか一つに記載の方法。
14.前記方法が、以下のステップ:
e.前記フィルムを、乾燥装置、とりわけベルト式乾燥機またはローラー式乾燥機において、循環空気または不活性ガスを用いて乾燥させるステップ、
を更に含むことを特徴とする、上記1~13のいずれか一つに記載の方法。
15.前記方法が、以下のステップ:
f.前記フィルムをプレス装置、圧延装置もしくはカレンダー装置において、とりわけ50℃を超える温度の作用下で、圧密化するステップ、または前記フィルムを熱収縮によって圧密化するステップ、
を更に含むことを特徴とする、上記1~14のいずれか一つに記載の方法。
16.上記1~15のいずれか一つに記載の方法により製造される多孔質フィルム。
17.前記フィルムが、50μm~1000μmの間の、好ましくは200μm~500μmの間の、好ましくは実質的に一定の厚さを有することを特徴とする、上記16に記載のフィルム。
18.前記フィルムが、1つの第1のフィルム層、1つの第2のフィルム層および前記第1のフィルム層と前記第2のフィルム層との間に配置された1つの分離層を含み、前記第1のフィルム層および前記第2のフィルム層が、20μm~500μmの間の厚さを有し、前記分離層が、5μm~50μmの間の厚さを有することを特徴とする、上記16または17に記載のフィルム。
19.前記分離層が、電気絶縁体であることを特徴とする、上記16~18のいずれか一つに記載のフィルム。
20.前記第1のフィルム層および前記第2のフィルム層が、導電体であることを特徴とする、上記16~19のいずれか一つに記載のフィルム。
21.上記16~20のいずれか一つに記載のフィルムと、電極材料の外側面に配置された集電層とを含む電極材料。
22.上記16~20のいずれか一つに記載のフィルムの少なくとも2つの層を含む、上記21に記載の電極材料。
23.上記22に記載の電極材料と、電解質および2つの接点要素とを備えるエネルギー貯蔵媒体。
図1
図2