(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】破砕状態判定装置および破砕状態判定方法
(51)【国際特許分類】
B02C 2/02 20060101AFI20240416BHJP
B02C 2/06 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
B02C2/02
B02C2/06
(21)【出願番号】P 2022529758
(86)(22)【出願日】2021-06-14
(86)【国際出願番号】 JP2021022578
(87)【国際公開番号】W WO2021251506
(87)【国際公開日】2021-12-16
【審査請求日】2022-11-14
(31)【優先権主張番号】P 2020102437
(32)【優先日】2020-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503245465
【氏名又は名称】株式会社アーステクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木島 崇
(72)【発明者】
【氏名】小林 純
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 寿恭
(72)【発明者】
【氏名】増田 貴行
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0117127(US,A1)
【文献】国際公開第2019/045042(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0076259(US,A1)
【文献】特開2019-202245(JP,A)
【文献】特開平04-322750(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0310959(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0008486(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0103135(US,A1)
【文献】特開2021-104483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 2/02
B02C 2/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋動式破砕機の破砕室内における被破砕物の状態を判定するための破砕状態判定装置であって、
前記旋動式破砕機は、
主軸と、
前記主軸に固定されたマントルと、
フレームと、
前記マントルと対峙するように配置されるように前記フレームに固定され、前記マントルとの間に破砕室を形成するコーンケーブと、を備え、
前記主軸の中心軸線が前記コーンケーブの中心軸線に対して傾斜した状態で前記主軸が回転する偏心旋回運動によって前記コーンケーブとマントルとの間に形成される前記破砕室内に導入された被破砕物を破砕するように構成され、
前記破砕状態判定装置は、
前記主軸および前記主軸に対向する位置に位置するように前記フレームに支持されたフレーム側部材のうちの少なくとも何れか一方に取り付けられ、前記主軸の前記コーンケーブの中心軸線に対する公転軌道に関する所定の値を検出する検出器と、
前記破砕室内における被破砕物の状態を判定する判定器
と、を備え、
前記検出器は、前記主軸と前記フレーム側部材との間の距離を周方向に異なる2箇所以上で検出するよう構成され、
前記判定器は、
前記2箇所以上の箇所における前記主軸と前記フレーム側部材との間の距離を、前記主軸の前記コーンケーブの中心軸線に対する公転軌道に関する所定の値
として取得し、
前記2箇所以上の箇所における前記主軸と前記フレーム側部材との間の距離から前記主軸の中心位置の座標を算出し、前記主軸の中心位置の座標を所定の期間蓄積することにより前記主軸の中心位置の軌道を前記公転軌道として求め、得られた前記公転軌道において最も離れた2点間の距離を軌道径として算出し、算出された軌道径を基準値と比較することにより、前記破砕室内における被破砕物の状態を判定する、破砕状態判定装置。
【請求項2】
旋動式破砕機の破砕室内における被破砕物の状態を判定するための破砕状態判定装置であって、
前記旋動式破砕機は、
主軸と、
前記主軸に固定されたマントルと、
フレームと、
前記マントルと対峙するように配置されるように前記フレームに固定され、前記マントルとの間に破砕室を形成するコーンケーブと、を備え、
前記主軸の中心軸線が前記コーンケーブの中心軸線に対して傾斜した状態で前記主軸が回転する偏心旋回運動によって前記コーンケーブとマントルとの間に形成される前記破砕室内に導入された被破砕物を破砕するように構成され、
前記破砕状態判定装置は、前記破砕室内における被破砕物の状態を判定する判定器を備え、
前記判定器は、
前記主軸の前記コーンケーブの中心軸線に対する公転軌道に関する所定の値を取得し、
前記所定の値から推定される前記公転軌道の所定時間における軌道径の変化幅を基準値と比較し、前記軌道径の変化幅が前記基準値より大きい場合に、前記破砕室における被破砕物の充填率が低いと判定する
、破砕状態判定装置。
【請求項3】
旋動式破砕機の破砕室内における被破砕物の状態を判定するための破砕状態判定装置であって、
前記旋動式破砕機は、
主軸と、
前記主軸に固定されたマントルと、
フレームと、
前記マントルと対峙するように配置されるように前記フレームに固定され、前記マントルとの間に破砕室を形成するコーンケーブと、を備え、
前記主軸の中心軸線が前記コーンケーブの中心軸線に対して傾斜した状態で前記主軸が回転する偏心旋回運動によって前記コーンケーブとマントルとの間に形成される前記破砕室内に導入された被破砕物を破砕するように構成され、
前記破砕状態判定装置は、前記破砕室内における被破砕物の状態を判定する判定器を備え、
前記判定器は、
前記主軸の前記コーンケーブの中心軸線に対する公転軌道に関する所定の値を取得し、
前記所定の値から推定される前記公転軌道の所定時間における軌道径の変化幅を、前記公転軌道の複数個所において算出し、複数の変化幅同士の差から前記破砕室における被破砕物の偏在状況を判定する
、破砕状態判定装置。
【請求項4】
前記公転軌道に関する所定の値を所定時間ごとに時系列に記憶する記憶器を備え、
前記判定器は、前記時系列に記憶された複数の前記所定の値から破砕状態変化の経過を出力する、請求項1
から3の何れかに記載の破砕状態判定装置。
【請求項5】
前記主軸および前記主軸に対向する位置に位置するように前記フレームに支持されたフレーム側部材のうちの少なくとも何れか一方に取り付けられ、前記主軸の前記コーンケーブの中心軸線に対する公転軌道に関する所定の値を検出する検出器を備えた、請求項
2または3に記載の破砕状態判定装置。
【請求項6】
前記フレーム側部材は、前記主軸の上端部を回転自在に支持する上部軸受を含む上部軸受構造体である、請求項
1または5に記載の破砕状態判定装置。
【請求項7】
前記検出器は、前記主軸と前記フレーム側部材との間の距離を周方向に異なる2箇所以上で検出するよう構成されている、請求項
5または6に記載の破砕状態判定装置。
【請求項8】
前記検出器は、前記フレーム側部材の第1位置に、前記主軸に対向するように配置される第1センサと、前記フレーム側部材の前記第1位置とは異なる第2位置に、前記主軸に対向するように配置される第2センサと、を備え、
前記第1センサは、前記第1位置と前記主軸との間の第1距離を検出し、
前記第2センサは、前記第2位置と前記主軸との間の第2距離を検出する、請求項
7に記載の破砕状態判定装置。
【請求項9】
前記検出器は、前記主軸における第1位置に、前記フレーム側部材に対向するような第1方向に向けて配置される第1センサと、前記主軸における第2位置に、前記第1方向に交差し、前記フレーム側部材に対向するような第2方向に向けて配置される第2センサと、を備え、
前記第1センサは、前記第1位置と前記フレーム側部材との間の第1距離を検出し、
前記第2センサは、前記第2位置と前記フレーム側部材との間の第2距離を検出する、請求項
7に記載の破砕状態判定装置。
【請求項10】
前記検出器は、前記主軸の自転による位相を検出する第3センサを備えている、請求項
9に記載の破砕状態判定装置。
【請求項11】
前記検出器は、
前記主軸に取り付けられた第4センサと、
前記主軸の自転による位相を検出する第5センサと、を備え、
前記第4センサは、前記主軸の径方向に伸びる、互いに異なる2つの方向の加速度を検出する、請求項
6または7に記載の破砕状態判定装置。
【請求項12】
旋動式破砕機の破砕室内における被破砕物の状態を判定するための破砕状態判定方法であって、
前記旋動式破砕機は、
主軸と、
前記主軸に固定されたマントルと、
フレームと、
前記マントルと対峙するように配置されるように前記フレームに固定され、前記マントルとの間に破砕室を形成するコーンケーブと、を備え、
前記主軸の中心軸線が前記コーンケーブの中心軸線に対して傾斜した状態で前記主軸が回転する偏心旋回運動によって前記コーンケーブとマントルとの間に形成される前記破砕室内に導入された被破砕物を破砕するように構成され、
前記破砕状態判定方法は、
前記主軸と前記フレーム側部材との間の距離を周方向に異なる2箇所以上で検出し、
前記2箇所以上の箇所における前記主軸と前記フレーム側部材との間の距離を、前記主軸の前記コーンケーブの中心軸線に対する公転軌道に関する所定の値
として取得し、
前記2箇所以上の箇所における前記主軸と前記フレーム側部材との間の距離から前記主軸の中心位置の座標を算出し、前記主軸の中心位置の座標を所定の期間蓄積することにより前記主軸の中心位置の軌道を前記公転軌道として求め、得られた前記公転軌道において最も離れた2点間の距離を軌道径として算出し、算出された軌道径を基準値と比較することにより、前記破砕室内における被破砕物の状態を判定する、破砕状態判定方法。
【請求項13】
旋動式破砕機の破砕室内における被破砕物の状態を判定するための破砕状態判定方法であって、
前記旋動式破砕機は、
主軸と、
前記主軸に固定されたマントルと、
フレームと、
前記マントルと対峙するように配置されるように前記フレームに固定され、前記マントルとの間に破砕室を形成するコーンケーブと、を備え、
前記主軸の中心軸線が前記コーンケーブの中心軸線に対して傾斜した状態で前記主軸が回転する偏心旋回運動によって前記コーンケーブとマントルとの間に形成される前記破砕室内に導入された被破砕物を破砕するように構成され、
前記破砕状態判定方法は、
前記主軸の前記コーンケーブの中心軸線に対する公転軌道に関する所定の値を取得し、
前記所定の値から推定される前記公転軌道の所定時間における軌道径の変化幅を基準値と比較し、前記軌道径の変化幅が前記基準値より大きい場合に、前記破砕室における被破砕物の充填率が低いと判定する、破砕状態判定方法。
【請求項14】
旋動式破砕機の破砕室内における被破砕物の状態を判定するための破砕状態判定方法であって、
前記旋動式破砕機は、
主軸と、
前記主軸に固定されたマントルと、
フレームと、
前記マントルと対峙するように配置されるように前記フレームに固定され、前記マントルとの間に破砕室を形成するコーンケーブと、を備え、
前記主軸の中心軸線が前記コーンケーブの中心軸線に対して傾斜した状態で前記主軸が回転する偏心旋回運動によって前記コーンケーブとマントルとの間に形成される前記破砕室内に導入された被破砕物を破砕するように構成され、
前記破砕状態判定方法は、
前記主軸の前記コーンケーブの中心軸線に対する公転軌道に関する所定の値を取得し、
前記所定の値から推定される前記公転軌道の所定時間における軌道径の変化幅を、前記公転軌道の複数個所において算出し、複数の変化幅同士の差から前記破砕室における被破砕物の偏在状況を判定する、破砕状態判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、旋動式破砕機の破砕状態判定装置および破砕状態判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、円錐筒状のコーンケーブの内側に配置された円錐台状のマントルを偏心旋回運動させて、被破砕物をコーンケーブとマントルとの間に噛み込んで圧砕する旋動式破砕機が知られている。コーンケーブの破砕面と対向するマントルの破砕面との間隙は、周期的に変化する。このような旋動式破砕機を安定的に制御するための方法が種々提案されている(例えば特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、マントルが取り付けられた主軸の回転駆動するためのメインモータの負荷電流を検出し、負荷電流が予め設定された設定電流値の範囲外になった場合に、主軸(マントル)を昇降させて負荷率を一定に制御する構成が開示されている。
【0005】
このように、従来の旋動式破砕機においても、旋動式破砕機の各部における油圧力、電流値、動力値等の状態値から旋動式破砕機の負荷を検知することはある程度は可能である。しかし、これらの状態値を検知して制御を行っても、高効率な破砕状態を実現するには十分とは言えない。高効率な破砕状態とは、破砕室内に投入された原料粒子が単粒子で破砕される状態ではなく、粒子の集合で形成される層全体を圧縮破砕する形態が継続される状態である。破砕室内をこのような状態で継続させる制御を行うことで、産物粒度や処理量の改善が見込まれる。
【0006】
高効率な破砕状態を実現するためには、破砕室内の状態(被破砕物の充填状況)を監視して総合的に判断する必要がある。しかし、破砕室内の状態は、目視により直接監視することができない。そのため、従来の旋動式破砕機においては、熟練したオペレータの経験に基づき、投入物や産物の状況を総合的に判断し、旋動式破砕機の機器調整(例えばセットまたは投入量の調整等)が行われていた。
【0007】
また、上記のように、破砕室内の状態は、目視により直接監視することができないため、破砕室における被破砕物の偏在の有無を直接判断することができない。
【0008】
本開示は、上記課題を解決するものであり、目視によらず破砕室内の状態を判定することができる旋動式破砕機の破砕状態判定装置および破砕状態判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係る破砕状態判定装置は、旋動式破砕機の破砕室内における被破砕物の状態を判定するための破砕状態判定装置であって、前記旋動式破砕機は、主軸と、前記主軸に固定されたマントルと、フレームと、前記マントルと対峙するように配置されるように前記フレームに固定され、前記マントルとの間に破砕室を形成するコーンケーブと、を備え、前記主軸の中心軸線が前記コーンケーブの中心軸線に対して傾斜した状態で前記主軸が回転する偏心旋回運動によって前記コーンケーブとマントルとの間に形成される破砕室内に導入された被破砕物を破砕するように構成され、前記破砕状態判定装置は、前記破砕室内における被破砕物の状態を判定する判定器を備え、前記判定器は、前記主軸の前記コーンケーブの中心軸線に対する公転軌道に関する所定の値を取得し、前記所定の値から推定される前記公転軌道から得られる所定のパラメータを基準値と比較することにより前記破砕室内における被破砕物の状態を判定する。
【0010】
本開示の他の態様に係る破砕状態判定方法は、旋動式破砕機の破砕室内における被破砕物の状態を判定するための破砕状態判定方法であって、前記旋動式破砕機は、主軸と、前記主軸に固定されたマントルと、フレームと、前記マントルと対峙するように配置されるように前記フレームに固定され、前記マントルとの間に破砕室を形成するコーンケーブと、を備え、前記主軸の中心軸線が前記コーンケーブの中心軸線に対して傾斜した状態で前記主軸が回転する偏心旋回運動によって前記コーンケーブとマントルとの間に形成される前記破砕室内に導入された被破砕物を破砕するように構成され、前記破砕状態判定方法は、前記主軸の前記コーンケーブの中心軸線に対する公転軌道に関する所定の値を取得し、前記所定の値から推定される前記公転軌道から得られる所定のパラメータを基準値と比較することにより前記破砕室内における被破砕物の状態を判定する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、旋動式破砕機において、目視によらず破砕室内の状態を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本開示の一実施の形態における破砕状態判定装置が適用された旋動式破砕機の一例の全体構成を示す縦断面図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施の形態1に係る破砕状態判定装置が適用されたジャーナル軸受機構を示す概略構成図である。
【
図3】
図3は、
図2に示すジャーナル軸受機構のIII-III断面図である。
【
図4】
図4は、本実施の形態における第1距離および第2距離の時間的変化を示すグラフである。
【
図6】
図6は、実施の形態1の変形例1に係る破砕状態判定装置が適用されたジャーナル軸受機構を示す概略構成図である。
【
図7】
図7は、実施の形態1の変形例2に係る破砕状態判定装置が適用されたジャーナル軸受機構を示す断面図である。
【
図8】
図8は、本開示の実施の形態2に係る破砕状態判定装置が適用されたジャーナル軸受機構を示す概略構成図である。
【
図9】
図9は、
図8に示すジャーナル軸受機構のIX-IX断面図である。
【
図10】
図10は、実施の形態2の変形例に係る破砕状態判定装置が適用されたジャーナル軸受機構を示す概略構成図である。
【
図11】
図11は、本開示の実施の形態3に係る破砕状態判定装置が適用されたジャーナル軸受機構を示す概略構成図である。
【
図12】
図12は、本開示の一実施の形態における破砕状態判定装置が適用された旋動式破砕機の他の例の全体構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示を実施するための形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一または相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0014】
[旋動式破砕機の例]
以下、本開示の実施の形態における破砕状態判定装置が適用される旋動式破砕機について例示する。
図1は、本開示の一実施の形態における破砕状態判定装置が適用された旋動式破砕機の一例の全体構成を示す縦断面図である。
【0015】
旋動式破砕機は、原石(岩石)を粉砕するための破砕機であり、ジャイレトリクラッシャまたはコーンクラッシャ等が含まれる。以下では、マントルが設けられた主軸を上部軸受と下部軸受とで回転自在に支持し、主軸を油圧により上下動させる油圧式の旋動式破砕機である油圧式コーンクラッシャを例示する。ただし、主軸が偏心旋回運動する旋動式破砕機であれば、本開示は適用可能である。
【0016】
図1に示す旋動式破砕機(以下、単に破砕機と略記する)100は、截頭錐体形状を有する管状の上部フレーム101とそれに連結された下部フレーム102とで形成された内部空間の中央部に、主軸105が設けられている。主軸105の中心軸線O2は、上部フレーム101の中心軸線O3に対して傾斜して配置されている。なお、上部フレーム101と下部フレーム102とを合わせてフレーム131という。
【0017】
主軸105は、下部が円柱形状を有し、下部軸受115に回転自在に支持されている。下部軸受115は、主軸105を受け入れる偏心スリーブ104と、偏心スリーブ104を受け入れる外筒107と、を含む。
【0018】
偏心スリーブ104は、主軸105の下端部が回転自在に嵌挿される主軸嵌挿穴103を有している。偏心スリーブ104は、偏心スリーブ104の下方において偏心スリーブ104を相対回転自在に支持する偏心スリーブ支持体132を備えている。偏心スリーブ支持体132は、下部フレーム102に固定されている。また、偏心スリーブ104は、その外周面が下部フレーム102に配設された外筒107に形成された偏心スリーブ嵌挿穴127に回転自在に嵌挿されている。また、主軸105の上端部は上部軸受117により回転自在に支持されている。上部軸受117と一体的に構成される上部軸受構造体133は、上部フレーム101に連結されたスパイダ118により支持されている。すなわち、上部軸受構造体133は、主軸105に対向する位置に位置するように上部フレーム101にスパイダ118を介して支持されたフレーム側部材である。なお、スパイダ118は、上部フレーム101の中心部を通過して上部フレーム101の上端部を連絡する梁体を形成している。
【0019】
下部軸受115の下方には、主軸105を油圧により上下動させる油圧シリンダ130が設けられている。下部軸受115の上方に設けられた円筒形状の仕切板124の内周側には、油圧室128が形成されている。主軸105の下端部と主軸嵌挿穴103の内周面との間、および偏心スリーブ104の外周面と偏心スリーブ嵌挿穴127の内周面との間には、円滑な摺動の確保、摺動面の摩耗防止等のための油膜を形成すべく、潤滑油が供給される。これにより、下部軸受115の偏心スリーブ104および外筒107は、ジャーナル軸受として機能する。なお、油圧室128へのダストの侵入防止のために、ダストシール125が、マントルコア112の底面にダストシールカバー126を使用して取り付けられている。
【0020】
主軸105の上部の外面(上部軸受117の下方)には、截頭円錐状の外周面を形成するマントルコア112が焼き嵌めにより強固に取り付けられている。マントルコア112の外周面には、耐摩耗性材料(例えば、高マンガン鋳鋼)で製造され、截頭円錐状の外周面を形成するマントル113が取り付けられている。
【0021】
また、上部フレーム101の内面には、耐摩耗性材料(例えば、高マンガン鋳鋼)で製造されたコーンケーブ114が備えられている。コーンケーブ114はマントル113と対峙するように配置される。コーンケーブ114とマントル113とにより形成され、鉛直断面において下部が狭くなるほぼ楔状をなす空間により破砕室116が形成される。
【0022】
主軸105の中心軸線O2と上部フレーム101の中心軸線(コーンケーブ114の中心軸線)O3とは、破砕機100の上部空間における交点P(上部軸受117の中心)において交差している。主軸105は、主軸105の中心軸線O2と上部フレーム101の中心軸線O3とを含む平面において、上部フレーム101に対して傾斜している。また、偏心スリーブ104は、上部フレーム101の中心軸線O3とほぼ同一の中心軸線を有し、当該中心軸線の回りに回転できるように配置されている。偏心スリーブ104に形成される主軸嵌挿穴103は、主軸105の中心軸線O2とほぼ同一の中心軸線を有している。さらに、偏心スリーブ104が嵌装される偏心スリーブ嵌装穴127は、上部フレーム101の中心軸線O3とほぼ同一の中心軸線を有している。
【0023】
この構成により、フレーム131の外部に設けられた電動機(図示省略)によりプーリ122、横軸、ベベルギア119(駆動側ベベルギア120および従動側ベベルギア121)等の動力伝達機構を介して、従動側のベベルギア121と連結された偏心スリーブ104が、上部フレーム101の中心軸線O3を回転中心として回転する。これにより、主軸105が、交点Pを空間上の固定点として破砕室116内において偏心旋回運動、いわゆる歳差運動を行う。偏心旋回運動において、主軸105の中心軸線O2は、上部フレーム101の中心軸線(コーンケーブ114の中心軸線)O3に対して傾斜した状態となる。なお、このような主軸105の挙動は、理想的な幾何学上のものである。現実の装置においては、運転時等において、上部軸受117における軸受隙間やケーシングの変形等により交点Pは微小変動する。それに伴い、主軸105の上部軸受117における挙動も幾何学的な挙動から微小変動することがある。
【0024】
このような偏心旋回運動により、破砕室116におけるコーンケーブ114の内面上の任意の位置と当該位置に対向するマントル113の外周面との距離が、主軸105の回転と同一周期で変化する。すなわち、偏心スリーブ104を回転させて主軸105を破砕室116内で旋回させると、例えば破砕室116の鉛直最下端におけるマントル113外表面とコーンケーブ114内表面との最短距離の位置は、主軸105の旋回に伴い変化する。
【0025】
破砕対象となる岩石(以下、「被破砕物」という。)109は、破砕機100の上方から投入され、破砕室116内に落下する。破砕室116は、コーンケーブ114とマントル113との間隔が下方に向かうほど狭くなり、かつ当該間隔の広狭が主軸105の旋回に伴い周期的に変化する。これにより、被破砕物109は、落下と圧縮とを繰り返しながら、破砕が進行する。コーンケーブ114の下部において、コーンケーブ114とマントル113との間隔が最も狭い部分より小さく破砕された被破砕物109が、破砕品として下方より排出され、回収される。
【0026】
以上のように、主軸105全体の偏心旋回運動により、破砕機100の上部軸受117における主軸105の挙動は、主軸105が上部軸受117の内周面に沿って公転するものとなる。本実施の形態における破砕状態判定装置1は、主軸105の上部軸受構造体133に対する公転軌道の変化を、主軸105の上部フレーム101の中心軸線O3に対する公転軌道の変化として検知することにより、破砕室116内の被破砕物の状態を検知するものである。以下、主軸105および上部軸受構造体133を含むジャーナル軸受機構を抽出して、破砕状態判定装置1がジャーナル軸受機構の公転軌道を検知する態様を例示する。なお、以下では、主軸105を軸2と称し、上部軸受117を軸受3と称し、上部軸受構造体133を軸受構造体4と称する。
【0027】
[実施の形態1]
図2は、本開示の実施の形態1に係る破砕状態判定装置が適用されたジャーナル軸受機構を示す概略構成図である。
図3は、
図2に示すジャーナル軸受機構のIII-III断面図である。本実施の形態において、破砕状態判定装置1はジャーナル軸受機構5における軸2の公転軌道から破砕室116内の被破砕物の状態(破砕状態)を検知するように構成されている。ジャーナル軸受機構5は、軸2と、当該軸2の径方向の荷重を支えるすべり軸受(以下、単に軸受と称する)3を含む軸受構造体4とを備えている。なお、本明細書および特許請求の範囲において、軸受構造体4は、軸受3と、軸受3と一体的に構成される(軸受3に対して軸線回り相対回転不能に構成される)構造体6とを含んだ概念として定義される。
【0028】
本破砕状態判定装置1が適用されるジャーナル軸受機構5は、軸2が軸受3の内周面S1に沿って公転する。この際、軸2と軸受3との間が公転中もほぼ接触状態となる。本破砕状態判定装置1において破砕状態の検知が可能なジャーナル軸受機構5は、軸2が軸受3の内周面S1に沿って公転するとき公転軌道の外縁部の全周でほぼ接触状態となる場合だけでなく、軸2が軸受3の内周面S1に、公転軌道の外縁部において周方向の2か所以上でほぼ接触状態となればよい。
【0029】
ほぼ接触状態は、(i)流体潤滑膜の厚さが数μmから10μm以下で、通常は流体潤滑だが瞬間的に流体潤滑膜を介さない接触状態があり得る、弱い流体潤滑状態、(ii)流体潤滑状態と境界潤滑状態(軸2と軸受3とが部分的に流体潤滑膜を介さずに接触する状態)とが混在する混合潤滑状態、(iii)境界潤滑状態、(iv)固体潤滑剤を介した接触状態、および(v)軸2および軸受3同士が直接接触する固体接触状態を含む。
【0030】
破砕状態判定装置1は、検出器7、判定器8、記憶器9、および出力器10を備えている。破砕状態判定装置1の各構成7から10は、バス11により相互にデータ伝達を行う。破砕状態判定装置1は、ジャーナル軸受機構5を備えた機器または設備(例えば後述する旋動式破砕機)の制御装置によって構成されてもよいし、当該機器または設備に、制御装置とは別に設けられた破砕状態判定用のコンピュータによって構成されてもよいし、当該機器または設備とは別に(遠隔に)設けられたコンピュータによって構成されてもよい。また、破砕状態判定装置1を構成する一部の機能を機器または設備の制御装置が発揮し、他の機能を遠隔のコンピュータが発揮し、これらのコンピュータ間において無線通信等の通信手段によってデータの相互通信が行われるように構成されてもよい。
【0031】
例えば、検出器7は、ジャーナル軸受機構5を備えた機器または設備に取り付けられ、判定器8および記憶器9は、クラウドサーバ等のサーバ装置に設けられてもよい。この場合、検出器7とサーバ装置とは、所定の通信ネットワークを介して通信接続される。さらに、出力器10は、サーバ装置と通信ネットワークを介して通信接続されるコンピュータ装置に設けられてもよい。これにより、ジャーナル軸受機構5を備えた機器または設備から離れた場所でその機器または設備の破砕状態を確認することができる。
【0032】
なお、本明細書で開示する判定器8の機能は、開示された機能を実行するよう構成またはプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、および/または、それらの組み合わせを含む回路または処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路または回路と見なされる。本明細書において、回路、ユニット、または手段(部)は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、または、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであってもよいし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラムまたは構成されているその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、ユニット、または手段はハードウェアとソフトウェアとの組み合わせであり、ソフトウェアはハードウェアおよび/またはプロセッサの構成に使用される。
【0033】
本実施の形態において、検出器7は、軸受構造体4に取り付けられ、軸2の軸受構造体4に対する公転軌道に関する所定の値を検出する。検出器7は、軸2と軸受構造体4との間の距離を周方向に異なる2箇所以上で検出するよう構成されている。より具体的には、検出器7は、軸受構造体4の第1位置41に、軸2(の側面S2)に対向するように配置される第1センサ71と、軸受構造体4の第1位置41とは異なる第2位置42に、軸2(の側面S2)に対向するように配置される第2センサ72と、を備えている。
【0034】
第1センサ71は、第1位置41と軸2の側面S2との間の第1距離δ1を検出する変位センサにより構成される。同様に、第2センサ72は、第2位置42と軸2の側面S2との間の第2距離δ2を検出する変位センサにより構成される。変位センサは、例えば、ギャップセンサ、レーザ変位計、接触式変位計等、対向する軸2の側面S2との距離が計測可能なセンサであれば特に限定されない。
【0035】
記憶器9は、フラッシュメモリまたはハードディスクドライブ等の不揮発性の記憶器を含み、検出器7からの検出値を記憶する。また、記憶器9には、破砕状態判定処理のための演算プログラムと、後述する判定処理に用いられる基準公転軌道に基づく所定の値(基準値および/またはしきい値)が記憶される。さらに、記憶器9には、判定器8の演算内容を一時的に記憶するRAM等の揮発性メモリが含まれる。
【0036】
判定器8は、記憶器9に記憶された演算プログラムおよび各種の情報に基づいて軸2および軸受3の破砕状態判定処理を実行する演算器(プロセッサ)により構成される。破砕状態判定処理の結果は、記憶器9に記憶されるとともに、出力器10から出力される。出力器10の態様は特に限定されない。例えば、出力器10は、機器または設備に設けられるモニタ、警告ランプ、警報スピーカ等、破砕状態判定の結果(例えば破砕状態が悪化していること等)を報知可能な構成であればよい。
【0037】
以下、本実施の形態における破砕状態判定処理について説明する。上述したように、検出器7は、軸2の軸受構造体4に対する公転軌道に関する所定の値として、第1距離δ1および第2距離δ2を検出する。検出器7は、ジャーナル軸受機構5の動作中(旋動式破砕機の運転中)において第1距離δ1および第2距離δ2を連続的または所定のタイミングごとに断続的に検出する。
【0038】
本実施の形態において、第1センサ71および軸受構造体4の中心位置(軸受3の中心位置)O3間を結ぶ仮想の第1線分L1と第2センサ72および軸受構造体4の中心位置O3間を結ぶ仮想の第2線分L2とが直交している。以下では、第1線分L1の方向をx方向とし、第2線分L2の方向をy方向とする。
【0039】
図2においては、分かり易い図面とするために、軸2の半径rに対する軸2の側面S2と軸受3の内周面S1との隙間の比率を大きくしている。しかし、実際には、この隙間は軸2の半径rに対して十分小さい。このため、2つのセンサ71,72が検出する第1距離δ1および第2距離δ2も軸2の半径rに対して十分小さい。この場合、軸受構造体4に固定された直交座標系における軸2の中心位置O2(以下、軸心O2と称する)の座標(x,y)は、(x,y)≒(r+δ1,r+δ2)で表される。
【0040】
なお、この直交座標系においては、第1センサ71の位置する第1位置41を通り、第1線分L1に直交する仮想線がy軸(x=0)となり、第2センサ72の位置する第2位置42を通り第2線分L2に直交する仮想線がx軸(y=0)となり、その交点が原点Oxyとなる。
【0041】
図4は、本実施の形態における第1距離δ1および第2距離δ2の時間的変化を示すグラフである。上述したように、本実施の形態における軸2が軸受3の内周面S1に沿って公転する。そのため、第1距離δ1および第2距離δ2は、破砕状態にかかわらず、それぞれ周期的に変化する。
【0042】
判定器8は、上記のように、検出器7で検出された第1距離δ1および第2距離δ2から軸心O2の座標(x,y)を算出し、軸心O2の座標(x,y)を所定の期間蓄積することにより軸心O2の軌道を公転軌道として求める。
【0043】
[判定態様1]
図5Aから
図5Cは、
図4に示すグラフから得られた公転軌道を示すグラフである。
図5Aから
図5Cのそれぞれの左側に示すグラフは、互いに交差する第1距離δ1および第2距離δ2の軌跡を合成して得られるリサージュ線図である。
図5Aから
図5Cのそれぞれの右側に示す図は、左側のグラフから判定される破砕室116の状態を模式的に示す図である。
図5おAよび
図5Bに示すように、本実施の形態において得られる公転軌道Tは、通常、円形状の軌道となる。
【0044】
判定器8は、公転軌道Tから得られる所定のパラメータを基準値と比較することにより破砕室116内における被破砕物の状態を判定する。
図5Aから
図5Cの例において、判定器8は、公転軌道Tの所定時間における軌道径の変化幅が基準値より大きくなったか否かを判定する。例えば、判定器8は、得られた公転軌道Tにおける所定位置での径方向幅を、公転軌道Tにおける軌道径の変化幅Wとして算出し、それを基準値Wthと比較する。
図5Aおよび
図5Bにおいて軌道径の変化幅Wは、y軸(例えば第2距離δ2の変化に関する軸)の原点位置かつx軸(例えば第1距離δ1の変化に関する軸)の正側の位置における変化幅(x軸方向の最小値と最大値との差)として与えられる。
【0045】
判定器8は、
図5Aに示すように、軌道径の変化幅Wが基準値Wth以下である場合、破砕室116における被破砕物の充填率が高いと判定する。一方、判定器8は、
図5Bに示すように、軌道径の変化幅Wが基準値Wthより大きい場合、破砕室116における被破砕物の充填率が低いと判定する。例えば、破砕効率の観点によれば充填率は高い方がよいので、判定器8は、軌道径の変化幅Wが基準値Wth以下である場合を適正と判定し、変化幅Wが基準値Wthより大きい場合を不適正と判定してもよい。
【0046】
これに代えて、基準値Wthとして、第1基準値Wth1およびこれより大きい第2基準値Wth2の2つの基準値を設け、判定器8は、軌道径の変化幅Wが第1基準値Wth1より大きく第2基準値Wth2以下である場合を被破砕物の充填率が適正であると判定してもよい。このとき、判定器8は、軌道径の変化幅Wが第1基準値Wth1以下である場合、被破砕物の充填率が高過ぎるため不適正であると判定し、軌道径の変化幅Wが第2基準値Wth2より大きい場合、被破砕物の充填率が低いため不適正であると判定してもよい。さらに、基準値Wthを3つ以上設定して、充填率の程度が段階的に判定されるようにしてもよい。
【0047】
また、
図5Cに示すように、判定器8は、軌道径の変化幅Wを複数個所において算出し、複数の変化幅W1からW4同士の差から破砕室116における被破砕物の偏在状況を判定してもよい。
図5Cにおいて、軌道径の変化幅W1は、x軸の原点位置かつy軸の正側の位置における変化幅として与えられる。軌道径の変化幅W2は、y軸の原点位置かつx軸の正側の位置における変化幅として与えられる。軌道径の変化幅W3は、x軸の原点位置かつy軸の負側の位置における変化幅として与えられる。軌道径の変化幅W4は、y軸の原点位置かつx軸の負側の位置における変化幅として与えられる。
【0048】
例えば、判定器8は、各変化幅W1からW4と基準値Wthとの偏差を算出する。これに代えて、判定器8は、複数の変化幅W1からW4のうちの1つを基準値としてその他の変化幅との偏差を算出してもよい。各偏差が互いに異なっている場合(所定の基準誤差以上である場合)、判定器8は、破砕室116における被破砕物の偏在が発生していると判定する。
【0049】
上記構成によれば、軸2(主軸105)の軸受構造体4(上部軸受構造体133)に対する公転軌道Tを特定する値から公転軌道Tの所定時間における変化幅Wが推定される。この際、径方向に関して2方向から得られる軸2と軸受構造体4との距離δ1,δ2に基づいて軸心O2の座標(x,y)が算出される。軸心O2の座標に基づいて求められる公転軌道Tの所定時間における変化幅Wが基準値Wthと比較され、それによって破砕室116内における被破砕物の状態(破砕室116における被破砕物の充填率または偏在の有無等)が判定される。したがって、上記構成の破砕状態判定装置1であれば、旋動式破砕機100の動作中に破砕室116内の被破砕物の状態を目視によらず判定することができる。
【0050】
さらに、記憶器9には、変化幅Wまたは変化幅Wと基準値Wthとの偏差が、所定時間ごとに時系列に記憶されてもよい。この場合、判定器8は、時系列に記憶された複数の変化幅Wまたは偏差から破砕室116内における被破砕物の状態変化の経過を出力することが可能である。例えば、判定器8は、変化幅Wまたは偏差の時間的変化のグラフを作成してもよい。これにより、判定結果と合わせて破砕室116内における被破砕物の状態の経過を把握することができる。
【0051】
[判定態様2]
上記例では、公転軌道Tの所定時間における軌道径の変化幅を公転軌道Tから得られるパラメータとして用い、これを基準値と比較することにより判定したが、これに代えて、公転軌道Tの軌道径自体をパラメータとして用い、これを基準値と比較してもよい。
【0052】
例えば、判定器8は、得られた公転軌道Tにおいて最も離れた2点間の距離(最大径)Lを軌道径の基準値Lthと比較してもよい。この場合、判定器8は、
図5Aに示すように、最大径Lが基準値Lth以上である場合、破砕室116における被破砕物の充填率が高いと判定する。一方、判定器8は、
図5Bに示すように、最大径Lが基準値Lthより小さい場合、破砕室116における被破砕物の充填率が低いと判定する。
【0053】
なお、旋動式破砕機100の構成(例えば、主軸105の長さ、公転軌道Tの検知位置等)または被破砕物の破砕前の状態(平均粒径等)によっては、主軸105の軸挙動が変化し、公転軌道Tの最大径Lが大きいほど充填率が低く、最大径Lが小さいほど充填率が高いことを示す場合もあり得る。したがって、判定器8には、旋動式破砕機100の軸挙動に応じた判定態様が予め設定され得る。
【0054】
このように、軸心O2の座標に基づいて求められる公転軌道Tにおいて最も離れた2点間の距離(最大径)Lを用いることにより、破砕室116内の被破砕物の状態を簡単に判定することができる。
【0055】
なお、公転軌道Tにおいては、軸2または軸受3の摩耗によってもその径が変化する。すなわち、摩耗が進むと、公転軌道Tは、その径が平均的に大きくなっていく。したがって、所定の期間以上公転軌道Tを計測し、公転軌道Tの径を基準値と比較することにより軸2または軸受3の摩耗の程度を判定することもできる。
【0056】
さらに、判定器8は、破砕室116の状態を判定するための基準値Lthを、そのときの摩耗の程度に応じて変化させてもよい。例えば、所定の期間における公転軌道Tの平均軌道径を基準値とし、判定器8は、公転軌道Tの瞬時値を基準値と比較することにより、破砕室116における被破砕物の状態を判定してもよい。また、無負荷時(破砕室に被破砕物が入っていない状態の運転)の公転軌道Tを用いて、都度基準値の摩耗補正を行ってもよい。
【0057】
判定器8による判定態様は、上記2つの例に限られない。例えば、判定器8は、
図5に示すようなリサージュ線図を描画し、基準範囲が示されるリサージュ線図とマッチングさせるような画像処理を行うことにより、破砕室116における被破砕物の状態を判定してもよい。
【0058】
出力器10は、判定器8による判定結果を表示する表示装置として構成されてもよい。この場合、表示装置である出力器10は、判定結果として、適正または不適正を報知する態様、不適正である場合に基準値からどの程度外れているかを数値またはレベル表示する態様、リサージュ線図を表示する態様等、種々の態様による表示を行い得る。リサージュ線図を表示する場合には、破砕室116における被破砕物の状態を視覚化することができるため、管理者の経験によらない旋動式破砕機100への被破砕物の投入調整を行うことができる。これに代えて、出力器10は、通信ネットワークを介して所定のコンピュータ装置にデータ送信するようにしてもよい。
【0059】
また、判定器8における判定結果として得られる破砕室116内の被破砕物の状態に応じて被破砕物の旋動式破砕機100への投入量が制御されてもよい。この場合、出力器10は、旋動式破砕機100の上流側における所定の装置に対する制御指令を送信してもよい。
【0060】
例えば、旋動式破砕機100の上流側には、被破砕物を搬送する搬送装置が設けられ得る。搬送装置は、破砕室116における被破砕物の状態に応じて搬送速度を変化させてもよい。すなわち、搬送装置は、破砕室116における被破砕物の充填率が高い場合には、搬送速度を遅くし、充填率が低い場合または破砕室116において被破砕物の偏在が生じている場合には、搬送速度を速くしてもよい。
【0061】
また、搬送装置が旋動式破砕機100への被破砕物の投入位置を調整可能に構成されている場合、搬送装置は、被破砕物の偏在状況に応じて被破砕物の投入位置を調整してもよい。
【0062】
また、判定器8における判定結果として得られる破砕室116内の被破砕物の状態に応じて旋動式破砕機100の動作が制御されてもよい。この場合、出力器10は、旋動式破砕機100の制御装置(図示せず)に対する制御指令を送信してもよい。
【0063】
例えば、制御装置は、破砕室116における被破砕物の状態に応じてコーンケーブ114とマントル113との間の間隙(破砕間隙)を変化させてもよい。破砕間隙は、例えば、主軸105の上下方向位置を変更する(油圧シリンダ130の油圧を変更する)ことにより調整可能である。すなわち、制御装置は、破砕室116における被破砕物の充填率が想定よりも高い場合には、主軸105を下降させて破砕間隙を広げ、充填率が低い場合には、破砕間隙を狭めてもよい。
【0064】
また、例えば、制御装置は、破砕室116における被破砕物の状態に応じて主軸105の回転数(回転速度)を変化させてもよい。
【0065】
また、上記のようにして得られた破砕室116における被破砕物の状態の判定結果は、旋動式破砕機100の運転中の上記各種制御だけでなく、旋動式破砕機100における性能の分析に用いられてもよい。この分析結果は、その旋動式破砕機100の仕様変更や、後継機の開発に利用され得る。例えば、判定結果のデータに基づいて破砕室116における被破砕物の投入位置、破砕室116(マントル113またはコーンケーブ114)の形状、主軸105の傾き(偏心スロー)等の適正化に利用され得る。
【0066】
[変形例1]
上記実施の形態では、第1センサ71と第2センサ72とが直交する向きに配置される態様について説明したが、これに限られない。
図6は、実施の形態1の変形例1に係る破砕状態判定装置が適用されたジャーナル軸受機構を示す概略構成図である。
図6においては破砕状態判定装置1のうち、検出器7(第1センサ71および第2センサ72)以外の構成については図示を省略している。その他の同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0067】
図6において
図2の例と異なる点は、第1センサ
71と第2センサ
72との位置関係が、第1線分L1と第2線分L2とのなす角θが90°以外の有意な角度(θ≠0°)を有していることである。本変形例において軸受構造体4に固定された直交座標系は、第1センサ71の位置する第1位置41を通り、第1線分L1に直交する仮想線L3と、第2センサ72の位置する第2位置42を通り第2線分L2に直交する仮想線(x軸)との交点が原点Oxyとなる。
【0068】
本変形例においても、2つのセンサ71,72が検出する第1距離δ1および第2距離δ2が軸2の半径rに対して十分小さいことを考慮すると、軸心O2の直交座標系における座標(x,y)は、角度β(β=180°-θ)を用いて、(x,y)≒((r+δ1)/sinβ+(r+δ2)/tanβ,r+δ2)で表される。第1線分L1と第2線分L2とのなす角θで表すと、軸心O2の直交座標系における座標(x,y)は、(x,y)≒((r+δ1)/sinθ-(r+δ2)/tanθ,r+δ2)で表される。
【0069】
したがって、第1線分L1と第2線分L2とのなす角θが90°以外の場合でも、軸受構造体4に固定された直交座標系において軸心O2の座標を表すことができる。このため、上記実施の形態と同様に、軸心O2の軌道を公転軌道Tとして求めることができる。
【0070】
旋動式破砕機の主軸105と上部軸受構造体133との位置関係によっては、必ずしも2つのセンサ71,72を
図2に示すように直交配置できない場合がある。このようなセンサ71,72の設置について制約がある場合でも、上記のように、三角関数を用いて軸受構造体4に固定された直交座標系に換算することができるため、本実施の形態を好適に適用することができる。
【0071】
ただし、2つのセンサ71,72を直交配置できる場合には、直交配置することにより、2つのセンサ71,72のそれぞれで検出される第1距離δ1および第2距離δ2から軸心O2の座標(x,y)を算出する精度を向上しつつ、演算量を少なくすることができ、判定器8の処理負荷を軽減することができる。
【0072】
[変形例2]
図7は、実施の形態1の変形例2に係る破砕状態判定装置が適用されたジャーナル軸受機構を示す断面図である。
図7においては破砕状態判定装置1のうち、第1センサ71以外の構成については図示を省略している。
【0073】
上記実施の形態では、2つのセンサ71,72がそれぞれ軸2の側面S2に対向するように配置されている態様について説明したが、2つのセンサ71,72の取付位置または軸2および軸受3の構造によっては、2つのセンサ71,72が軸2の側面S2に直接対向するように配置できない場合も想定される。
【0074】
そのような場合には、
図7に示すように、軸2の端部に軸2と同軸で半径r12がδ1、δ2に対して十分大きい円柱状の延長部材(第1延長部材)12を取り付ける。
【0075】
したがって、軸2の端部が軸受3から突出していない、または、出ている部分が短い場合であっても、第1延長部材12を取り付けることにより、軸受構造体4にセンサ71,72を取り付けた場合に、これらのセンサ71,72を軸2と一体的に動く第1延長部材12に対向するように配置することができる。これにより、軸2の形状によらず軸2の公転軌道Tを容易に得ることができる。
【0076】
なお、軸2の端部が軸受3から突出していない場合には、上記変形例の構成に代えて、既存の軸を、軸2の端部が軸受3から突出するような軸長を有する軸に取り替えてもよい。
【0077】
[実施の形態2]
次に、本開示の実施の形態2について説明する。
図8は、本開示の実施の形態2に係る破砕状態判定装置が適用されたジャーナル軸受機構を示す概略構成図である。
図9は、
図8に示すジャーナル軸受機構のIX-IX断面図である。
図8および
図9において実施の形態1と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0078】
本実施の形態における破砕状態判定装置1Bが実施の形態1と異なる点は、検出器7Bを構成する第1センサ71Bおよび第2センサ72Bが軸2側に設けられ、さらに、検出器7Bを構成するセンサとして、位相を検出する第3センサ74が設けられていることである。より具体的には、検出器7Bは、軸2において中心位置O2から径方向に偏位した第1位置21に、軸受構造体4に対向するような第1方向D1に向けて配置される第1センサ71Bと、軸2の端部における第2位置22に、第1方向D1に交差し、軸受構造体4に対向するような第2方向D2に向けて配置される第2センサ72Bと、軸2の自転による位相を検出する第3センサ74と、を備えている。
【0079】
第3センサ74は、例えば軸2の回転変位量を検出するセンサとして構成される。例えば、第3センサ74は、
図1に示す旋動式破砕機100における主軸105の回転変位量を検出するロータリエンコーダ等により構成される。例えば、ロータリエンコーダ本体を軸受3側に取り付け、ロータリエンコーダ本体と、軸2とがフレキシブルシャフトを備えたカップリングを介して接続される。第3センサ74により検出された値は、バス11を介して判定器8に入力される。本実施の形態において、軸受構造体4は、軸受3から軸方向に延出された円筒状の延長部材(第2延長部材)13を備えている。
【0080】
第2延長部材13は、軸受構造体4の中心位置O3と同軸に配置されている。第2延長部材13の軸方向長さは、第2延長部材13の内周面S4に、2つのセンサ71B,72Bが対向可能な長さに定められる。第1センサ71Bは、第1位置21と第2延長部材13の内周面S4との間の第1距離δ1を検出し、第2センサ72Bは、第2位置22と第2延長部材13の内周面S4との間の第2距離δ2を検出する。第3センサ74は、軸2の自転による位相を検出する。例えば、第3センサ74は、第1センサ71Bが-x方向を向くときを基準(0°)とする軸2の回転角度ρを検出する。本例において回転角度ρは、第1センサ71Bが第2センサ72Bに対して位相が進んでいる方向(
図8において時計回りの方向)を正としている。
【0081】
なお、本実施の形態においても、軸2の半径rは、2つのセンサ71B,72Bが検出する第1距離δ1および第2距離δ2に対して十分大きくなるように構成される。
【0082】
本実施の形態では、第1方向D1の距離δ1と、第2方向D2の距離δ2と、回転角度ρとから、軸受構造体4に固定された直交座標系における軸2の軸心O2の座標O2(x,y)を算出する。
【0083】
回転角度ρを計測することで、軸2の座標系で計測した値を、軸受構造体4の座標系に変換することが可能となる。
図8に示すように、第2延長部材13の内周面S4の半径をRとすると、軸受構造体4に固定された直交座標系における軸受構造体4の中心位置O3に対する軸2の軸心O2の座標O2(x,y)は、O2(x,y)≒(r+δ1-R)cosρ+(r+δ2-R)sinρ,-(r+δ1-R)sinρ+(r+δ2-R)cosρ)と表される。
【0084】
これにより、第1距離δ1および第2距離δ2を検出することにより求められる軸2の公転軌道Tにおいて、軸2の自転による影響を予めキャンセルすることができる。したがって、軸2の自転による影響をキャンセルするために第1距離δ1および第2距離δ2の検出時間を長くとる必要がなくなり、公転軌道Tを求める時間を短くすることができる。
【0085】
なお、2つのセンサ71B,72Bが直交配置でない場合(上記変形例1の場合)についても同様に軸心O2の座標を定めることができる。したがって、検出器7Bとして軸2側に第1および第2センサ71B,72Bを取り付け、軸2の自転の位相を検出する第3センサを取り付ける場合であっても、軸2の公転軌道Tを容易に得ることができる。
【0086】
このように、検出器7Bとして軸2側に第1および第2センサ71B,72Bを取り付け、軸2の自転による位相を検出する第3センサ74を取り付けることによっても、旋動式破砕機100の動作中に破砕室116内の被破砕物の状態を目視によらず判定することができる。
【0087】
なお、本実施の形態においては軸受3から軸方向に延出される第2延長部材13が設けられる構成を例示したが、軸受構造体4(例えば構造体6)が軸線方向に長い場合には、第2延長部材13はなくてもよい。この場合、第1センサ71Bは、第1位置21とそれに対向する軸受構造体4(構造体6)の内周面との間の第1距離δ1を検出し、第2センサ72Bは、第2位置22とそれに対向する軸受構造体4の内周面との間の第2距離δ2を検出する。
【0088】
[変形例]
上記実施の形態では、第1センサ71B、第2センサ72Bおよび第3センサ74を備えた構成について説明したが、第3センサ74を備えていなくてもよい。
図10は、本開示の実施の形態2の変形例に係る破砕状態判定装置が適用されたジャーナル軸受機構を示す概略構成図である。
【0089】
本変形例においては、軸2の軸心O2に固定された直交座標系(x’,y’)を用いて、軸2の座標系における軸受構造体4の中心位置を算出することができる。その中心位置データを蓄積することにより、軸2の座標系における軸受構造体4の中心位置変化の履歴(軸2から見た軸受構造体4の相対的な公転軌道T’)が求められる。このような軸2の座標系における軸受構造体4の中心位置変化の履歴から公転軌道Tの径を推定することができる。第2延長部材13の内周面S4の半径をRとすると、軸受構造体4の中心位置O3の座標O3(x’,y’)は、O3(x’,y’)=(r+δ1-R,r+δ2-R)で表される。
【0090】
2つのセンサ71B,72Bが直交配置でない場合(上記変形例1の場合)についても同様に軸心O2の座標を定めることができる。したがって、軸2の軸受構造体4に対する位相を検出する第3センサ74を備えていない場合であっても、第1センサ71Bおよび第2センサ72Bを軸2に取り付けて計測することにより、軸2から見た軸受構造体4の相対的な公転軌道T’から公転軌道Tの径を容易に得ることができる。
【0091】
[実施の形態3]
次に、本開示の実施の形態3について説明する。
図11は、本開示の実施の形態3に係る破砕状態判定装置が適用されたジャーナル軸受機構を示す概略構成図である。
図11において実施の形態2(
図8)と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0092】
本実施の形態における破砕状態判定装置1Cが実施の形態2と異なる点は、検出器7Cとして軸2に設けられる第4センサ73が、軸2の径方向に伸びる、互いに異なる2つの方向の加速度を検出し、第5センサ75が軸2の自転による位相(回転角度)ρを検出するように構成されていることである。
【0093】
すなわち、第4センサ73は、軸2の軸線方向に直交する第1方向D1および第2方向D2の加速度センサを含み、第5センサ75は、軸2の自転による位相を検出する位相センサを含む。第5センサ75は、例えば軸2の回転変位量を検出するセンサとして構成される。例えば、第5センサ75は、
図1に示す旋動式破砕機100における主軸105の回転変位量を検出するロータリエンコーダ等により構成される。第5センサ75により検出された値は、バス11を介して判定器8に入力される。
【0094】
上記構成によれば、第4センサ73により、第1方向D1の加速度a1、第2方向D2の加速度a2が検出され、第5センサ75により、軸2の所定位置(例えば軸受構造体4に固定された直交座標系におけるx軸)からの回転角度ρが検出される。すなわち、検出器7Cは、軸2の軸受構造体4に対する公転軌道に関する所定の値として、軸2の加速度および位相を検出する。
【0095】
判定器8は、第1方向D1の加速度a1と回転角度ρとから加速度a1の軸受構造体4に固定された直交座標系におけるx軸成分およびy軸成分を算出する。同様に、判定器8は、第2方向D2の加速度a2と回転角度ρとから加速度a2のx軸成分およびy軸成分を算出する。
【0096】
判定器8は、第1方向D1の加速度a1のx軸成分と第2方向D2の加速度a2のx軸成分とを加算して軸2のx軸成分の加速度を算出する。同様に、第1方向D1の加速度a1のy軸成分と第2方向D2の加速度a2のy軸成分とを加算して軸2のy軸成分の加速度を算出する。
【0097】
なお、これに代えて、判定器8は、第1方向D1の加速度a1および第2方向D2の加速度a2から軸2に固定された直交座標系における加速度の大きさおよび方向を計算し、それを軸受構造体4に固定された直交座標系に変換してもよい。
【0098】
判定器8は、得られた軸2のx軸成分およびy軸成分をそれぞれ積分して軸2の位置変位を算出する。判定器8は、このようにして得られる位置変位を所定の期間蓄積することにより軸心O2の軌道を公転軌道Tとして求める。判定器8は、実施の形態1と同様に、公転軌道Tの所定時間における変化幅もしくは公転軌道Tの最大径を基準値と比較することにより破砕室116内における被破砕物の状態を判定する。
【0099】
このように、検出器7Cとして加速度センサを用いることによっても、旋動式破砕機100の動作中に破砕室116内の被破砕物の状態を目視によらず判定することができる。
【0100】
なお、本実施の形態においても、加速度の検出方向である第1方向D1および第2方向D2は互いに直交していることが好ましいが、上記変形例1と同様に、直交していなくてもよい。
【0101】
[その他の変形例]
以上、本開示の実施の形態1から3およびその変形例について説明したが、本開示は上記実施の形態およびその変形例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更、修正が可能である。例えば、上記実施の形態1から3および対応する各変形例のうちの少なくとも2つを適宜組み合わせてもよい。
【0102】
また、検出器7から得られる公転軌道Tを基準公転軌道と比較するために公転軌道Tを特定する値は、上記のような径だけに限られない。例えば、公転軌道Tを特定する値として、公転軌道Tの面積、曲率半径等を用いてもよい。また、公転軌道Tを求める際に、公転軌道Tを所定の形状または線分に近似してもよい。例えば、公転軌道Tを最小二乗法等の回帰分析を用いたカーブフィッティングにより近似してもよい。また、検出器7で検出される値を変数とする近似式を予め設定しておき、検出器7で検出された値をその近似式に代入することで公転軌道Tが近似されてもよい。
【0103】
また、上記実施の形態においては、検出器7として2つのセンサ71,72が設けられた構成について説明したが、周方向位置が互いに異なる3つ以上のセンサが設けられてもよい。3つ以上のセンサを設けることにより、センサで検出される所定の値に冗長性を持たせることができる。特に、上記変形例1のように、2つのセンサが直交配置できない場合に3つ以上のセンサを配置することにより、公転軌道Tを高精度に得ることができる。
【0104】
また、上記実施の形態2,3においては、軸2の端部にセンサ71B,72B,73が設けられる態様を例示したが、これに限られない。例えば、軸2の中間部において段差が形成されている場合には、当該段差部分にセンサ71B,72B,73を取り付けてもよい。また、センサ71B,72B,73を取り付けるために、軸2に段差部を形成してもよい。さらに、センサ71B,72B,73を軸2に埋め込んでもよい。
【0105】
[破砕状態判定装置への旋動式破砕機への適用]
以下、改めて
図1に示す旋動式破砕機100における破砕状態判定装置1への適用について説明する。上記各実施の形態および各変形例における軸2および軸受3が破砕機100の主軸
105および上部軸受117に相当する。このため、上記実施の形態および変形例における破砕状態判定装置1を破砕機100に好適に適用可能である。
【0106】
図1の例では、変形例2(
図7参照)と同様に、主軸105の上端部に円柱状の延長部材(第1延長部材)12が設けられている。第1延長部材12は、主軸105の中心軸線(軸心)O2と同軸に配置されている。検出器7は、第1延長部材12の側面S3に対向する2つのセンサ71,72が設けられる。なお、
図1においては、第1センサ71のみが示されている。第2センサ72は、第1センサ71の向きに直交する向きに配置される。2つのセンサ71,72は、各センサ71,72の位置から延長部材12の側面S3までの距離を第1距離δ1および第2距離δ2として検出する。
【0107】
本例においても、延長部材12の半径r12(
図7参照)は、2つのセンサ71,72が検出する第1距離δ1および第2距離δ2に対して十分大きくなるように構成される。したがって、上部軸受117を含む上部軸受構造体133における軸心O2の座標(x,y)は、(x,y)≒(r12+δ1,r12+δ2)で表される。
【0108】
上記のように、旋動式破砕機100における主軸105の上端部および上部軸受117は主軸105が上部軸受117に対して相対的に公転するジャーナル軸受機構であるといえる。したがって、軸2(主軸105)の軸受構造体4(上部軸受構造体133)に対する公転軌道Tを特定する値から公転軌道Tの所定時間における変化幅Wまたは最大径Lが基準値(WthまたはLth)と比較されることにより、破砕室116内における被破砕物の状態を目視によらず判定することができる。
【0109】
図1の例では、上記実施の形態1における変形例2(第1延長部材12を用いた例)を示したが、上記実施の形態1(
図3参照)で示したように、主軸105の上端部が上部軸受117より上方に位置する場合は、第1延長部材12はなくてもよい。また、2つのセンサ71,72が直交配置でない場合(上記実施の形態1における変形例1の場合)についても同様に軸心O2の座標を定めることができる。また、センサ71,72が軸側に設けられる場合(上記実施の形態2およびその変形例)または加速度センサを用いる場合(上記実施の形態3)についても同様に、上記旋動式破砕機100に適用可能である。
【0110】
また、
図1の例では、上部軸受3により主軸105を支持する旋動式破砕機100について例示したが、上部軸受3を有しないアームレスタイプの旋動式破砕機においても、破砕状態判定装置を適用可能である。
【0111】
図12は、本開示の一実施の形態における破砕状態判定装置が適用された旋動式破砕機の他の例の全体構成を示す縦断面図である。
図1と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
図12に示す旋動式破砕機200は、主軸105が上部軸受3を備えていないアームレスタイプの旋動式破砕機として構成されている。
【0112】
このような旋動式破砕機200においても、上記破砕状態判定装置の適用が可能である。例えば
図12の例では、上記実施の形態3に示す破砕状態判定装置1C(
図11)が適用されている。すなわち、主軸105の上端部に、主軸105の径方向に伸びる、互いに異なる2つの方向の加速度を検出する第4センサ73が設けられる。また、
図12には図示しないが、主軸105の自転による位相を検出する第5センサ75が設けられる(
図11参照)。第4センサ73および第5センサ75が検出器7Cとして機能する。
【0113】
さらに、
図12のようなアームレスタイプの旋動式破砕機200においても、上部フレーム101に固定されたフレーム側部材(図示せず)において、主軸105に対向する位置に第1センサ71および第2センサ72を設けてもよい(
図2,6参照)。また、主軸105側に第1センサ71および第2センサ72を設け、フレーム側部材との距離を検出するようにしてもよい(
図8,10参照)。このように、フレーム側部材は、
図1の例に示す上部軸受構造体133に限られず、例えば、第1距離δ1および第2距離δ2を検出するために上部フレーム101に固定された計測サポート部材であってもよい。なお、フレーム側部材は、上部フレーム101を含むフレームに直接支持されてもよいし、
図1に示すスパイダ118のような連結部材を介して上部フレーム101を含むフレームに間接的に支持されてもよい。
【0114】
[本開示のまとめ]
本開示の一態様に係る破砕状態判定装置(1)は、旋動式破砕機(100,200)の破砕室(116)内における被破砕物の状態を判定するための破砕状態判定装置(1)であって、前記旋動式破砕機(100,200)は、主軸(105)と、前記主軸(105)に固定されたマントル(113)と、フレーム(101)と、前記マントル(113)と対峙するように配置されるように前記フレーム(101)に固定され、前記マントル(113)との間に破砕室(116)を形成するコーンケーブ(114)と、を備え、前記主軸(105)の中心軸線が前記コーンケーブ(114)の中心軸線に対して傾斜した状態で前記主軸(105)が回転する偏心旋回運動によって前記コーンケーブ(114)とマントル(113)との間に形成される破砕室(116)内に導入された被破砕物を破砕するように構成され、前記破砕状態判定装置(1)は、前記破砕室(116)内における被破砕物の状態を判定する判定器(8)を備え、前記判定器(8)は、前記主軸(105)の前記コーンケーブ(114)の中心軸線に対する公転軌道に関する所定の値を取得し、前記所定の値から推定される前記公転軌道から得られる所定のパラメータを基準値と比較することにより前記破砕室(116)内における被破砕物の状態を判定する。
【0115】
上記構成によれば、主軸(105)のコーンケーブ(114)の中心軸線に対する公転軌道を特定する値から公転軌道が推定される。推定された公転軌道から得られる所定のパラメータが基準値と比較されることによって破砕室(116)内における被破砕物の状態(破砕室(116)における被破砕物の充填率または偏在の有無等)が判定される。したがって、上記構成の破砕状態判定装置(1)であれば、目視によらず破砕室(116)内の状態を判定することができる。
【0116】
前記破砕状態判定装置(1)は、前記公転軌道に関する所定の値を所定時間ごとに時系列に記憶する記憶器(9)を備え、前記判定器(8)は、前記時系列に記憶された複数の前記所定の値から破砕状態変化の経過を出力してもよい。上記構成によれば、判定結果と合わせて破砕室(116)内における被破砕物の状態変化の経過を把握することができる。
【0117】
前記破砕状態判定装置(1)は、前記主軸(105)および前記主軸(105)に対向する位置に位置するように前記フレーム(101)に支持されたフレーム側部材(4)のうちの少なくとも何れか一方に取り付けられ、前記主軸(105)の前記コーンケーブ(114)の中心軸線に対する公転軌道に関する所定の値を検出する検出器(7,7B,7C)を備えてもよい。
【0118】
前記フレーム側部材(4)は、前記主軸(105)の上端部を回転自在に支持する上部軸受(3)を含む上部軸受構造体であってもよい。
【0119】
前記検出器(7,7B)は、前記主軸(105)と前記フレーム側部材(4)との間の距離を周方向に異なる2箇所以上で検出するよう構成されていてもよい。
【0120】
前記検出器(7)は、前記フレーム側部材(4)の第1位置に、前記主軸(105)に対向するように配置される第1センサ(71)と、前記フレーム側部材(4)の前記第1位置とは異なる第2位置に、前記主軸(105)に対向するように配置される第2センサ(72)と、を備え、前記第1センサ(71)は、前記第1位置と前記主軸(105)との間の第1距離を検出し、前記第2センサ(72)は、前記第2位置と前記主軸(105)との間の第2距離を検出してもよい。
【0121】
前記検出器(7B)は、前記主軸(105)における第1位置に、前記フレーム側部材(4)に対向するような第1方向に向けて配置される第1センサ(71B)と、前記主軸(105)における第2位置に、前記第1方向に交差し、前記フレーム側部材(4)に対向するような第2方向に向けて配置される第2センサ(72B)と、を備え、前記第1センサ(71B)は、前記第1位置と前記フレーム側部材(4)との間の第1距離を検出し、前記第2センサ(72B)は、前記第2位置と前記フレーム側部材(4)との間の第2距離を検出してもよい。
【0122】
上記構成によれば、径方向に関して2方向から主軸(105)とフレーム側部材(4)との距離が検出されるため、主軸(105)の中心から見たフレーム側部材(4)の中心位置を算出することができ、その中心位置データを蓄積することにより、公転軌道の径を推定することができる。
【0123】
さらに、前記検出器(7B)は、前記主軸の自転による位相を検出する第3センサ(74)を備えてもよい。
【0124】
上記構成によれば、第1距離および第2距離を検出する際に、主軸(105)の自転による位相も検出されるため、第1距離および第2距離を検出することにより求められる主軸(105)の公転軌道において、主軸(105)の自転による影響を予めキャンセルすることができる。したがって、主軸(105)の自転による影響をキャンセルするために第1距離および第2距離の検出時間を長くとる必要がなくなり、公転軌道を求める時間を短くすることができる。
【0125】
前記判定器(8)は、前記2箇所以上の箇所における前記主軸(105)と前記フレーム側部材(4)との間の距離から前記主軸(105)の中心位置の座標を算出し、前記主軸(105)の中心位置の座標を所定の期間蓄積することにより前記主軸(105)の中心位置の軌道を前記公転軌道として求め、得られた前記公転軌道において最も離れた2点間の距離を軌道径として算出し、算出された軌道径を基準値と比較することにより、前記破砕室(116)における被破砕物の状態を判定し得る。
【0126】
上記構成によれば、径方向に関して2方向から得られる主軸(105)とフレーム側部材(4)との距離に基づいて主軸(105)の中心位置の座標が算出される。主軸(105)の中心位置の座標に基づいて求められる公転軌道において最も離れた2点間の距離を用いて比較することにより、破砕室(116)内における被破砕物の状態を簡単に判定することができる。
【0127】
前記判定器(8)は、前記公転軌道の所定時間における軌道径の変化幅が基準値より大きい場合に、前記破砕室(116)における被破砕物の充填率が低いと判定してもよい。
【0128】
上記構成によれば、公転軌道の所定時間における軌道径の変化幅が基準値と比較されるため、所定時間において継続的に生じている破砕室(116)内の状態を判定することができる。
【0129】
前記判定器(8)は、前記公転軌道の所定時間における軌道径の変化幅を、前記公転軌道の複数個所において算出し、複数の変化幅同士の差から前記破砕室(116)における被破砕物の偏在状況を判定してもよい。
【0130】
上記構成によれば、公転軌道の複数箇所においてそれぞれ算出された公転軌道の所定時間における軌道径の変化幅が互いに比較されるため、破砕室(116)内の複数の箇所における被破砕物の偏在状況を判定することができる。
【0131】
前記検出器(7C)は、前記主軸(105)に取り付けられた第4センサ(73)と、前記主軸(105)の自転による位相を検出する第5センサ(75)と、を備え、前記第4センサ(73)は、前記主軸(105)の径方向に伸びる、互いに異なる2つの方向の加速度を検出してもよい。
【0132】
本開示の他の態様に係る破砕状態判定方法は、旋動式破砕機(100,200)の破砕室(116)内における被破砕物の状態を判定するための破砕状態判定方法であって、前記旋動式破砕機(100,200)は、主軸(105)と、前記主軸(105)に固定されたマントル(113)と、フレーム(101)と、前記マントル(113)と対峙するように配置されるように前記フレーム(101)に固定され、前記マントル(113)との間に破砕室(116)を形成するコーンケーブ(114)と、を備え、前記主軸(105)の中心軸線が前記コーンケーブ(114)の中心軸線に対して傾斜した状態で前記主軸(105)が回転する偏心旋回運動によって前記コーンケーブ(114)とマントル(113)との間に形成される破砕室(116)内に導入された被破砕物を破砕するように構成され、前記破砕状態判定方法は、前記主軸(105)の前記コーンケーブ(114)の中心軸線に対する公転軌道に関する所定の値を取得し、前記所定の値から推定される前記公転軌道から得られる所定のパラメータを基準値と比較することにより前記破砕室(116)内における被破砕物の状態を判定する。
【符号の説明】
【0133】
1 破砕状態判定装置
2 軸(主軸)
3 軸受(上部軸受)
4 軸受構造体(上部軸受構造体、フレーム側部材)
7,7B,7C 検出器
8 判定器
71,71B 第1センサ (変位センサ)
72,72B 第2センサ (変位センサ)
73 第4センサ (加速度・位相センサ)
74 第3センサ
75 第5センサ
100,200 旋動式破砕機
101 上部フレーム(フレーム)
105 主軸
113 マントル
114 コーンケーブ
115 下部軸受
116 破砕室
117 上部軸受
133 上部軸受構造体