(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】制御対象物を制御する設定パラメータを所定のタイミングで変更する機能を有する数値制御装置及びその設定パラメータ変更方法
(51)【国際特許分類】
G05B 19/409 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
G05B19/409 C
(21)【出願番号】P 2022539486
(86)(22)【出願日】2021-07-27
(86)【国際出願番号】 JP2021027715
(87)【国際公開番号】W WO2022025049
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2020128047
(32)【優先日】2020-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】崔 航
【審査官】樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-263118(JP,A)
【文献】特開平07-129218(JP,A)
【文献】特開2020-052859(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/409
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象物を制御する設定パラメータを所定のタイミングで変更する機能を有する数値制御装置であって、
前記制御対象物への各種指令を出力する主制御部と、
前記設定パラメータを含む各種データを保存するメモリと、
前記メモリに保存された前記設定パラメータを上書きして変更される変更後設定パラメータを入力するパラメータ入力部と、
前記設定パラメータを前記変更後設定パラメータに変更する更新指令を出力するパラメータ変更指令部と、
を備え、
前記パラメータ変更指令部は、
前記設定パラメータに応じて前記所定のタイミングを判別するための判別データを選定する判別データ選定部と、
前記判別データの検出値をリアルタイムで取得するデータ取得部と、
前記データ取得部で取得された前記検出値
が所定条件となった場合に、前記所定のタイミングになったと判別して前記更新指令を生成する判別部と、
を含む数値制御装置。
【請求項2】
前記判別データは、前記変更後設定パラメータとともに前記パラメータ入力部からの入力により選定される
請求項1に記載の数値制御装置。
【請求項3】
前記主制御部は、前記各種指令を出力中に前記更新指令が出力された場合、当該各種指令の出力を一時停止し、前記変更後設定パラメータの変更後に前記各種指令の出力を再開する
請求項1又は2に記載の数値制御装置。
【請求項4】
前記パラメータ変更指令部は、機能オンオフ選択部をさらに含み、
前記機能オンオフ選択部がオン状態のときに、前記パラメータ変更指令部は前記更新指令を出力する
請求項1~3のいずれか1項に記載の数値制御装置。
【請求項5】
制御対象物を制御する設定パラメータを所定のタイミングで変更する数値制御装置の設定パラメータ変更方法であって、
前記制御対象物への各種指令を出力する際に、
前記設定パラメータを含む各種データを保存するメモリに保存された前記設定パラメータを上書きして変更される変更後設定パラメータを入力するステップと、
前記設定パラメータを前記変更後設定パラメータに変更する更新指令を出力するステップと、
を実行し、
前記更新指令を出力するステップは、
前記設定パラメータに応じて前記所定のタイミングを判別するための判別データを選定するステップと、
前記判別データの検出値をリアルタイムで取得するステップと、
取得された前記検出値
が所定条件となった場合に、前記所定のタイミングになったと判別して前記更新指令を生成するステップと、
をさらに含む数値制御装置の設定パラメータ変更方法。
【請求項6】
前記判別データは、前記変更後設定パラメータとともに入力されることにより選定される
請求項5に記載の数値制御装置の設定パラメータ変更方法。
【請求項7】
前記各種指令を出力中に前記更新指令が出力された場合、当該各種指令の出力を一時停止し、前記変更後設定パラメータの変更後に前記各種指令の出力を再開する
請求項5又は6に記載の数値制御装置の設定パラメータ変更方法。
【請求項8】
前記数値制御装置は、前記更新指令を出力するステップのオンオフを選択できるように構成されている
請求項5~7のいずれか1項に記載の数値制御装置の設定パラメータ変更方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設定パラメータ変更機能を有する制御装置及び制御装置の設定パラメータ変更方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業機械等の制御対象物に対して、位置や加工条件等の各種設定パラメータによる制御指令を発信して制御対象物を制御する制御装置は、例えば、使用される環境が変化したり加工されるワークや加工の種類が変更された場合に、上記した設定パラメータを変更する必要がある。このような制御装置において、通常の制御動作中に設定パラメータが急に変更されると、例えばモータ等の駆動機構や搬送機構の動きも変更されるため、制御対象物の構造に大きな負荷が生じたり、あるいは加工されたワークに不良が発生したりする等の問題が生じる。
【0003】
こうした制御装置の一例として、特許文献1には、コンピュータ数値制御によってパラメータを反映させることにより自動化された工作機械の制御システムであって、前記パラメータを変更した際に、変更したパラメータである変更パラメータを記憶する記憶手段と、前記変更パラメータを反映させる条件を設定する変更パラメータ反映条件設定手段と、前記条件が検出された際に、未反映の前記変更パラメータを反映させる変更パラメータ反映手段とを備えるものが開示されている。これにより、作業者の意思によって任意のタイミングで、変更パラメータを機械側に反映させることができ、作業者の意思によらずに変更パラメータが機械側に影響することを防止できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、制御対象物の設定パラメータの変更は、意図しない制御が実行されることを防ぐために、通常は制御動作中ではなく、一連の制御動作が終了した後か制御動作の待機中等に実行される。例えば、特許文献1に開示された工作機械の制御システムにおいても、変更パラメータを機械側に反映させる条件として、作業者の意思による通常の工作機械の電源装置の再投入、作業者によるパラメータをリセットさせるリセット操作の実行、作業者による変更パラメータ毎の特定ボタンの押下操作の実行、等が列挙されている。
【0006】
こうした従来の設定パラメータの変更動作では、設定パラメータの変更タイミングは実際に制御対象物(工作機械等)が動作・駆動していないときに限られるため、例えば、制御動作中にそのまま制御を継続すると、装置あるいはワークに破損が生じてしまうような危険な状況にあったとしても、一連の制御動作を実行後にしか設定パラメータを変更することができなかった。
【0007】
このような経緯から、制御動作を実行中であっても、所定のタイミングで設定パラメータを変更可能とする数値制御装置、及びその設定パラメータ変更方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様による、制御対象物を制御する設定パラメータを所定のタイミングで変更する機能を有する数値制御装置は、制御対象物への各種指令を出力する主制御部と、設定パラメータを含む各種データを保存するメモリと、当該メモリに保存された上記設定パラメータを上書きして変更される変更後設定パラメータを入力するパラメータ入力部と、設定パラメータを変更後設定パラメータに変更する更新指令を出力するパラメータ変更指令部と、を備え、パラメータ変更指令部は、設定パラメータに応じて上記所定のタイミングを判別するための判別データを選定する判別データ選定部と、選定した判別データの検出値をリアルタイムで取得するデータ取得部と、当該データ取得部で取得された検出値に基づいて更新指令を生成する判別部と、を含む。
【0009】
また、本発明の一態様による、制御対象物を制御する設定パラメータを所定のタイミングで変更する数値制御装置の設定パラメータ変更方法は、制御対象物への各種指令を出力する際に、設定パラメータを含む各種データを保存するメモリに保存された上記設定パラメータを上書きして変更される変更後設定パラメータを入力するステップと、設定パラメータを変更後設定パラメータに変更する更新指令を出力するステップと、を実行し、更新指令を出力するステップは、設定パラメータに応じて上記所定のタイミングを判別するための判別データを選定するステップと、選定した判別データの検出値をリアルタイムで取得するステップと、取得された検出値に基づいて更新指令を生成するステップと、をさらに含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、設定パラメータを変更後設定パラメータに変更する更新指令を出力する際に、設定パラメータに応じて変更するタイミングを判別するための判別データを選定し、選定した判別データの検出値をリアルタイムで取得し、取得された検出値に基づいて更新指令を生成することにより、制御動作を実行中であっても、所定のタイミングで設定パラメータが変更可能となる。その結果として、設定パラメータを変更するまでの時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態による制御対象物を制御する設定パラメータを所定のタイミングで変更する機能を有する数値制御装置とその周辺装置との関連を示すブロック図である。
【
図2】
図1で示した制御対象物と数値制御装置との接続状態の一例を示すブロック図である。
【
図3】第1の実施形態による数値制御装置の設定パラメータ変更方法の概要を示すフローチャートである。
【
図4】
図3で示したパラメータ変更サブルーチンの概要を示すフローチャートである。
【
図5】第1の実施形態における第1の変形例による制御対象物と数値制御装置との接続状態の一例を示すブロック図である。
【
図6】第1の実施形態における第2の変形例による数値制御装置の設定パラメータ変更方法の概要を示すフローチャートである。
【
図7】
図6で示したパラメータ変更サブルーチンの概要を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の第2の実施形態による制御対象物を制御する設定パラメータを所定のタイミングで変更する機能を有する数値制御装置とその周辺装置との関連を示すブロック図である。
【
図9】第2の実施形態による数値制御装置の設定パラメータ変更方法におけるパラメータ変更サブルーチンの概要を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の代表的な一例による、制御対象物を制御する設定パラメータを所定のタイミングで変更する機能を有する数値制御装置、及びその設定パラメータ変更方法の実施形態を図面と共に説明する。
【0013】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の代表的な一例である、第1の実施形態による制御対象物を制御する設定パラメータを所定のタイミングで変更する機能を有する数値制御装置とその周辺装置との関連を示すブロック図である。また、
図2は、
図1で示した制御対象物と数値制御装置との接続状態の一例を示すブロック図である。
【0014】
図1に示すように、第1の実施形態による数値制御装置100は、その一例として、制御対象物30(例えば、工作機械等の数値制御により動作の実行を制御される装置)への各種指令を出力する主制御部110と、例えば位置や加工条件等の設定パラメータを含む各種データを保存するメモリ120と、当該メモリ120に保存された設定パラメータを上書きして変更される変更後設定パラメータを入力するパラメータ入力部130と、上記した設定パラメータを変更後設定パラメータに変更する更新指令を出力するパラメータ変更指令部140と、を備える。
【0015】
数値制御装置100は、制御対象物30の制御部32あるいは外部記憶装置10と有線又は通信回線等を介して相互に通信可能に接続されている。数値制御装置100は、制御対象物30に各種の制御指令を発するとともに、当該制御対象物30に取り付けられた各種センサ34からの検出信号を受信する。
【0016】
ここで、本願明細書において、「設定パラメータ」とは、制御対象物30を制御する上で必要となる設定項目及びそのための数値等を含むものであって、例えば、制御対象物30が備える構成要素の座標系及びその位置データや、当該構成要素の補正項目及びその補正量、あるいは制御対象物30がワークに加工を行う工作機械等である場合に、その加工に際して設定される加工条件等が含まれ得る。そして、「設定パラメータ」は、メモリ120に常時記録あるいは上書保存されて、上記制御プログラムと組み合わせることにより制御対象物30への制御指令が生成される。
【0017】
外部記憶装置10は、その一例として、所定の記憶領域に予め加工プログラムを格納しており、数値制御装置100と制御プログラムを順次送受信する処理を行う。
図1では、外部記憶装置10は数値制御装置100と独立した構成物として例示されているが、数値制御装置100に組み込まれる態様を採用してもよい。
【0018】
入力装置20は、数値制御装置100の操作者が動作のオンオフの切り替えや各種データあるいは設定パラメータ等を手動で入力可能とするインターフェースであって、キーボードやペンダント、ジョイスティックあるいはタッチパネル式の入力ユニット等が例示できる。そして、入力装置20は、数値制御装置100のパラメータ入力部130と接続されており、入力された各種データや設定パラメータ等は、一時的にパラメータ入力部130に保存される。
【0019】
制御対象物30は、
図2に示すように、例えば、ワークW1に対して加工工具T1が切削等の所定の加工を行う加工装置として構成される。そして、制御対象物30は、その一例として、数値制御装置100からの制御指令を受信して、制御対象物30の構成要素全体の制御を実行する制御部32と、加工工具T1を取り付けてワークW1に対して相対移動させる工具駆動部33と、当該工具駆動部33に取り付けられた各種センサ34と、ワークW1を取り付けて搬送する搬送機構35と、搬送機構35を支持する本体部36と、を備える。この具体例において、各種センサ34は、例えば、加工工具T1の位置を検出する位置センサや加工工具T1の回転速度を検出する回転センサ、あるいは加工工具T1への負荷を検出する負荷センサ等を含む。
【0020】
数値制御装置100の主制御部110は、
図1に示すように、制御対象物30に対して各種指令を発する手段として構成され、外部記憶装置10から制御プログラムの一部を逐次読み込む。主制御部110は、当該読み込んだ制御プログラムとメモリ120に記憶された設定パラメータとを組み合わせて制御指令を生成して制御部32に送信する機能や、制御対象物30に設けられた各種センサ34からの検出信号を受信してその検出値に応じて制御指令を修正する機能、さらには受信した検出値を後述するパラメータ変更指令部140に転送する機能を含む。また、主制御部110は、必要に応じて外部記憶装置10に保存された制御プログラムを追加あるいは修正変更する機能をさらに含んでもよい。
【0021】
パラメータ入力部130は、入力装置20から入力された各種データや設定パラメータを受信し、内蔵されたバッファ部(図示せず)に一時的に保存するように構成される。また、パラメータ入力部130は、後述するパラメータ変更指令部140から更新指令を受信したときに、一時的に保存していた変更後設定パラメータをメモリ120に送信して設定パラメータの上書き更新する機能を有する。
【0022】
パラメータ変更指令部140は、主制御部110を介して制御対象物30の各種センサから受信した検出値に基づいて、設定パラメータを変更後設定パラメータに変更するタイミングを判別し、パラメータ入力部130に更新指令を発する機能を有する。そして、パラメータ変更指令部140は、その一例として、対象となる設定パラメータに応じて当該設定パラメータの変更タイミングを判別するための判別データを選定する判別データ選定部142と、選定された判別データの検出値をリアルタイムで取得するデータ取得部144と、データ取得部144で取得された検出値に基づいて更新指令を生成する判別部146と、を含むように構成される。
【0023】
判別データ選定部142は、変更しようとする設定パラメータの種類等に応じて、その変更タイミングを判別するための判別データを選定する。例えば、変更しようとする設定パラメータが「加工工具T1の切込み移動量」である場合、判別データとしては、加工工具T1の移動を制御する工具駆動部33のモータの回転数を適用し得る。このとき、設定パラメータと判別データとの対応関係は、予め対応テーブルとして外部記憶装置10等に記憶しておいても良く、あるいは入力装置20から変更後設定パラメータとともに判別データの種類を入力するようにしてもよい。
【0024】
データ取得部144は、判別データ選定部142で選定された判別データをリアルタイムで取得する。具体的には、その一例として、データ取得部144は、主制御部110を介して制御対象物30の各種センサ34から判別データに該当する検出値をリアルタイムで取得し、時系列の波形データとして判別部146と共有する。
【0025】
判別部146は、データ取得部144で取得された判別データのリアルタイムの波形データを監視して、当該判別データが設定パラメータを変更し得る所定条件に達したか否か(あるいは所定条件の状態にあるかどうか)を判別する。この判別において、判別データが所定条件に達したと判断された場合、パラメータ変更指令部140がパラメータ入力部130に対して変更指令信号を出力する。
【0026】
判別部146が上記判別を行う際の指標となる所定条件としては、例えば、変更しようとする設定パラメータを「加工工具T1の切込み移動量」として、判別データを「工具駆動部33のモータの回転数」とした場合、当該回転数がゼロになった(すなわち、モータの駆動が停止した)とき、を採用できる。また、この所定条件は、上記した設定パラメータと判別データとの対応テーブルに付加して予め記憶しておいても良く、あるいは入力装置20から判別データの種類とともに入力するようにしてもよい。
【0027】
図3は、第1の実施形態による数値制御装置の設定パラメータ変更方法の概要を示すフローチャートである。また、
図4は、
図3で示したパラメータ変更サブルーチンの概要を示すフローチャートである。なお、
図3及び
図4で示したフローチャートを実行する際の前提として、主制御部110は制御プログラムによる制御対象物30に対する通常の制御指令による制御を実行しており、特に設定パラメータの変更の指示がない場合は、そのまま通常の制御指令による制御を継続するものとする。
【0028】
第1の実施形態による数値制御装置100の設定パラメータ変更方法では、
図3に示すように、数値制御装置100の主制御部110が、当該制御プログラムの制御指令による制御を実行する(ステップS10)。続いて、数値制御装置100は、パラメータ入力部130に入力装置20から変更後設定パラメータへの変更予約が入力されたかどうかを判別する(ステップS11)。このステップS11の判別動作は、例えば主制御部110の制御クロックごとに実行される。
【0029】
ステップS11において、変更予約が入力されていないと判別された場合、主制御部110は、ステップS10で実行していた制御指令による制御を継続し(ステップS12)、続いて、主制御部110が、次の制御指令が加工終了指令であるかどうかを判別する(ステップS13)。一方、ステップS11において、変更予約とともに変更後設定パラメータが入力されたと判別された場合、パラメータ変更指令部140がパラメータ変更サブルーチンSS1を実行し、当該パラメータ変更サブルーチンSS1の終了後、ステップS13の判別に進む。
【0030】
続いて、ステップS13において、次の制御指令が加工終了指令であると判別された場合、主制御部110は、制御対象物30に加工終了指令を発して制御を終了させる。一方、ステップS13において、次の制御指令が加工終了指令ではないと判別された場合には、ステップS10に戻って、制御プログラムの制御指令による制御を実行する。
【0031】
図3に示したパラメータ変更サブルーチンSS1では、
図4に示すように、パラメータ変更指令部140の判別データ選定部142が、変更しようとする設定パラメータの種類等に応じて、その変更タイミングを判別するための判別データを選定する(SS10)。これを受けて、データ取得部144が、ステップSS10で選定された判別データのリアルタイムの検出値を取得する(SS11)。
【0032】
続いて、判別部146が、ステップSS11で取得した検出値が所定値に達したか(すなわち、検出値が所定条件となったか)どうかを判別する(ステップSS12)。このステップSS12において、判別データが所定値に達していないと判別された場合、そのままサブルーチンSS1を終了してメインルーチンに復帰する。これにより、設定パラメータの変更予約がされたものの、まだ変更可能なタイミングにないとして、通常の制御指令による制御が継続される。
【0033】
一方、ステップSS12において、判別データが所定値に達したと判別された場合、パラメータ変更指令部140がパラメータ入力部130に変更指令信号を出力し(ステップSS13)、その後サブルーチンSS1を終了してメインルーチンに復帰する。これにより、パラメータ入力部130に一時保存された変更後設定パラメータをメモリ120に保存されていた設定パラメータに上書き保存し、通常の制御指令による制御が継続される。
【0034】
次に、
図5~
図7を用いて、第1の実施形態による数値制御装置及びその設定パラメータ変更方法の変形例を説明する。
【0035】
図5は、第1の実施形態における第1の変形例による制御対象物と数値制御装置との接続状態の一例を示すブロック図である。
図2に示した具体例においては、制御対象物30として、ワークW1に対して加工工具T1が切削等の所定の加工を行う加工装置を例示したが、第1の変形例においては、制御対象物30として、例えば、搬送されるワークW2の上面に貼着工具T2がラベルを貼着するパッキング装置として構成される。
【0036】
図5において、制御対象物30は、その一例として、数値制御装置100からの制御指令を受信して、制御対象物30の構成要素全体の制御を実行する制御部32と、貼着工具T2を取り付けてワークW2に対して相対移動させる工具駆動部33と、ワークW2を取り付けて搬送する搬送機構35と、搬送機構35を支持する本体部36と、本体部36に配置された各種センサ34と、を備える。この具体例において、各種センサ34は、例えば、ワークW2の位置を検出する位置センサや搬送機構35の搬送速度を検出する速度センサ等を含む。
【0037】
そして、第1の変形例において、例えば、変更しようとする設定パラメータが「ワークW2の搬送ストローク」である場合、判別データとしては、ワークW2を搬送する搬送機構35の搬送速度が適用できる。このとき、パラメータ変更指令部140がパラメータの変更指令信号を発信するかどうかの判別を行う際の指標となる所定条件としては、例えば、上記の判別データを「搬送機構35の搬送速度」とした場合、当該搬送速度がゼロになった(すなわち、搬送用モータの駆動が停止した)とき、等を採用できる。このように、本発明による数値制御装置及びその設定パラメータ変更方法は、数値制御による自動制御を行う任意の制御対象物に適用可能である。
【0038】
図6は、第1の実施形態における第2の変形例による数値制御装置の設定パラメータ変更方法の概要を示すフローチャートである。また、
図7は、
図6で示したパラメータ変更サブルーチンの概要を示すフローチャートである。ここで、
図6及び
図7で示したフローチャートを実行する際においても、その前提として、主制御部110が制御プログラムによる制御対象物30に対する通常の制御指令による制御を実行しており、特に設定パラメータの変更の指示がない場合は、そのまま通常の制御指令による制御を継続するものとする。
【0039】
第2の変形例による設定パラメータ変更方法では、
図3に示したものと同様に、まず数値制御装置100の主制御部110が、当該制御プログラムの制御指令による制御を実行する(ステップS10)。続いて、数値制御装置100は、パラメータ入力部130に入力装置20から変更後設定パラメータへの変更予約が入力されたかどうかを判別する(ステップS11)。
【0040】
ステップS11において、変更予約が入力されていないと判別された場合、主制御部110は、ステップS10で実行していた制御指令による制御を継続し(ステップS12)、続いて、主制御部110が、次の制御指令が加工終了指令であるかどうかを判別する(ステップS13)。一方、ステップS11において、変更予約とともに変更後設定パラメータが入力されたと判別された場合、数値制御装置100は、制御対象物30に対して制御指令を一時停止する停止指令を発信する(ステップS14)。このとき、停止指令には、加工工具T1がワークW1を損傷しないように退避する制御指令が含まれてもよい。
【0041】
次に、主制御部110は、停止指令を発信した時点まで実施していた制御指令の制御条件(動作パラメータ等)を一時的に記憶し(ステップS15)、パラメータ変更サブルーチンSS1bに移行する。このとき、一時停止時点の制御指令の制御条件を主制御部110ではなくメモリ120に一時記憶するようにしてもよい。
【0042】
パラメータ変更指令部140がパラメータ変更サブルーチンSS1bを実行した後、主制御部110は、ステップS15で一時記憶した制御条件を読み出し、当該制御条件による制御指令から制御を再開する(ステップS16)。これにより、制御対象物30の制御動作を一時停止した時点から設定パラメータを変更した状態で、制御が再開される。そして、主制御部110は、その後ステップS13の判別に進む。
【0043】
続いて、ステップS13において、次の制御指令が加工終了指令であると判別された場合、主制御部110は、制御対象物30に加工終了指令を発して制御を終了させる。一方、ステップS13において、次の制御指令が加工終了指令ではないと判別された場合には、ステップS10に戻って、制御プログラムの制御指令による制御を実行する。
【0044】
パラメータ変更サブルーチンSS1bは、
図3に示した場合と同様に、数値制御装置100のパラメータ変更指令部140が、
図7に示したフローチャートにしたがって実行する。当該パラメータ変更サブルーチンSS1bでは、
図4に示したフローチャートと同様に、まず判別データ選定部142が、変更しようとする設定パラメータの種類等に応じて、その変更タイミングを判別するための判別データを選定する(SS10)。これを受けて、データ取得部144が、ステップSS10で選定された判別データのリアルタイムの検出値を取得する(SS11)。
【0045】
続いて、判別部146が、ステップSS11で取得した検出値が所定値に達したか(すなわち、検出値が所定条件となったか)どうかを判別する(ステップSS12)。このステップSS12において、判別データが所定値に達していないと判別された場合、第2の変形例ではステップSS11に戻って、判別データの検出値の取得と判別を繰り返す。
【0046】
一方、ステップSS12において、判別データが所定値に達したと判別された場合、パラメータ変更指令部140がパラメータ入力部130に変更指令信号を出力し(ステップSS13)、その後サブルーチンSS1bを終了してメインルーチンに復帰する。これにより、パラメータ入力部130に一時保存された変更後設定パラメータをメモリ120に保存されていた設定パラメータに上書き保存し、通常の制御指令による制御が継続される。
【0047】
このサブルーチンSS1bによれば、設定パラメータの変更が実施された後にメインルーチンに復帰することになる。そして、
図6に示されたメインルーチンと組合せて実施されることにより、第2の変形例によれば、設定パラメータを変更する際に制御対象物30の制御指令をいったん停止し、設定パラメータの変更後に、停止した制御指令から再開することができる。
【0048】
上記のような構成を備えることにより、第1の実施形態による数値制御装置及びその設定パラメータ変更方法は、設定パラメータを変更後設定パラメータに変更する更新指令を出力する際に、設定パラメータに応じて変更するタイミングを判別するための判別データを選定し、選定した判別データの検出値をリアルタイムで取得し、取得された検出値に基づいて更新指令を生成することにより、制御動作を実行中であっても、所定のタイミングで設定パラメータが変更可能となる。そして、その結果として設定パラメータを変更するまでの時間を短縮することができる。
【0049】
<第2の実施形態>
図8は、本発明の第2の実施形態による制御対象物を制御する設定パラメータを所定のタイミングで変更する機能を有する数値制御装置とその周辺装置との関連を示すブロック図である。なお、第2の実施形態においては、
図1~
図7に示したブロック図やフローチャート等において、第1の実施形態と同一あるいは共通の構成を採用し得るものについては、同一の符号を付してこれらの繰り返しの説明は省略する。
【0050】
図8に示すように、第2の実施形態による数値制御装置100は、主制御部110、メモリ120、パラメータ入力部130、及びパラメータ変更指令部240を備える。そして、第2の実施形態において、パラメータ変更指令部240は、その一例として、判別データ選定部142、データ取得部144及び判別部146に加えて、パラメータ変更指令部240の機能を使用するか否かを選択する機能オンオフ選択部248を含むように構成される。
【0051】
機能オンオフ選択部248は、パラメータ変更指令部240による設定パラメータの変更タイミングを自動的に判別する動作を実行するか否かを選択する手段であって、当該機能オンオフ選択部248がオン状態のときにのみ、パラメータ変更指令部240がパラメータ入力部130に更新指令を出力するように構成される。
【0052】
機能オンオフ選択部248のオンオフ状態は、本発明の数値制御装置100を使用するオペレータが任意に選択できる。このとき、オンオフ状態の選択は、数値制御装置100に別途のスイッチ(図示せず)を設けるか、あるいは入力装置20に上記オンオフの入力機能を含ませて入力装置20から直接入力できるように構成してもよい。
【0053】
図9は、第2の実施形態による数値制御装置の設定パラメータ変更方法におけるパラメータ変更サブルーチンの概要を示すフローチャートである。第2の実施形態におけるパラメータ変更サブルーチン(符号「SS2」で示す)では、
図9に示すように、まず機能オンオフ選択部248の状態がオン状態かどうかを判別する(SS01)。
【0054】
ステップSS01において、機能オンオフ選択部248がオン状態でない(すなわちオフ状態である)と判別された場合、パラメータ変更指令部240は、パラメータ変更サブルーチンSS2をそれ以上実行せずにメインルーチンに復帰する。一方、ステップSS01において、機能オンオフ選択部248がオン状態であると判別された場合、判別データ選定部142が、変更しようとする設定パラメータの種類等に応じて、その変更タイミングを判別するための判別データを選定するステップSS10に進む。
【0055】
そして、ステップSS10以降のステップについては、
図4で説明したものと同一であるため、以後の説明は省略する。なお、ステップSS10以降の構成については、変形例として
図7で説明したパラメータ変更サブルーチンSS1bと同一のものを用いてもよい。
【0056】
上記のような構成を備えることにより、第2の実施形態による数値制御装置及びその設定パラメータ変更方法は、第1実施形態で説明した効果に加えて、設定パラメータを自動的に変更する機能のオンオフを選択し得ることにより、判別データを常時モニタリングする負荷を低減できるため、結果として数値制御装置の演算及び処理負荷を低減することが可能となる。
【0057】
なお、上記した第2の実施形態において、機能オンオフ選択部248のオンオフ状態がオペレータの直接入力により決定し得る旨を説明したが、当該オンオフ状態を、主制御部110を介して制御対象物30の各種センサ34から得られる種々の検出値に基づいて決定するように構成してもよい。また、パラメータ変更サブルーチンSS2を実行するか否かの判別をパラメータ変更指令部240が当該サブルーチン内で実行する場合を説明したが、当該判別を主制御部110がメインルーチンにおいて実行するように変更してもよい。
【0058】
さらに、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。本発明はその発明の範囲内において、実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0059】
10 外部記憶装置
20 入力装置
30 制御対象物
32 制御部
34 各種センサ
100 数値制御装置
110 主制御部
120 メモリ
130 パラメータ入力部
140 パラメータ変更指令部
142 判別データ選定部
144 データ取得部
146 判別部
240 パラメータ変更指令部
248 機能オンオフ選択部