(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】電力変換装置、昇降装置及び電力変換方法
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240416BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H02M7/48 F
(21)【出願番号】P 2022546256
(86)(22)【出願日】2021-08-24
(86)【国際出願番号】 JP2021031002
(87)【国際公開番号】W WO2022050131
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-03-15
(31)【優先権主張番号】P 2020149335
(32)【優先日】2020-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】大屋 広明
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-55533(JP,A)
【文献】特開2000-134990(JP,A)
【文献】特開2015-70703(JP,A)
【文献】国際公開第2020/066184(WO,A1)
【文献】特開2019-198201(JP,A)
【文献】特開平6-105562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスイッチング素子のオン・オフをキャリア周波数で切り替えて一次側電力を二次側電力に変換する電力変換回路と、
前記電力変換回路の二次側電流値が所定の電流閾値を超えた後、前記二次側電流値と前記キャリア周波数とに基づいて前記複数のスイッチング素子の発熱レベルを評価する発熱評価部と、
前記発熱レベルの評価結果が所定レベルを超えた後、時間の経過に応じて前記キャリア周波数を漸減させる周波数変更部と、
前記発熱レベルの評価結果に基づいて前記キャリア周波数の漸減による発熱抑制効果を評価する抑制評価部と、
前記発熱レベルの評価結果が前記所定レベルまで下降する前に、前記発熱抑制効果の評価結果に基づいて前記周波数変更部による前記キャリア周波数の漸減を停止させる漸減停止部と、を備える電力変換装置。
【請求項2】
前記抑制評価部は、前記発熱抑制効果の評価結果として前記発熱レベルの評価結果の上昇率を算出し、
前記漸減停止部は、前記上昇率が所定の停止閾値を下回るのに応じて、前記周波数変更部による前記キャリア周波数の漸減を停止させる、請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記停止閾値はゼロ又は負の値である、請求項2記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記抑制評価部は、前記発熱抑制効果の評価結果として、前記発熱レベルの評価結果がピーク値に達した後の低下幅を算出し、
前記漸減停止部は、前記低下幅が所定の停止閾値を上回るのに応じて、前記周波数変更部による前記キャリア周波数の漸減を停止させる、請求項1記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記電力変換回路による前記二次側電力の出力を停止させるベースブロック部を更に備え、
前記周波数変更部は、前記ベースブロック部が前記電力変換回路による前記二次側電力の出力を停止させるのに応じて、前記キャリア周波数を漸減開始前の周波数に戻す、請求項1~4のいずれか一項記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記発熱レベルの評価結果が前記所定レベルよりも高い上限レベルに達したら前記電力変換回路をトリップさせる過負荷保護部を更に備える、請求項1~5のいずれか一項記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記キャリア周波数が大きくなるにつれて大きくなるレートによって前記二次側電流値をディレーティングするディレーティング部を更に備え、
前記発熱評価部は、前記ディレーティング部によりディレーティングされた前記二次側電流値と、前記電流閾値との差分の積算値に基づいて前記発熱レベルを評価する、請求項1~6のいずれか一項記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記キャリア周波数が大きくなるにつれて小さくなるレートによって前記電流閾値をディレーティングするディレーティング部を更に備え、
前記発熱評価部は、前記二次側電流値と、前記ディレーティング部によりディレーティングされた前記電流閾値との差分の積算値に基づいて前記発熱レベルを評価する、請求項1~6のいずれか一項記載の電力変換装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項記載の電力変換装置と、
前記二次側電力の供給により昇降対象物を昇降させる電動機と、を備える昇降装置。
【請求項10】
複数のスイッチング素子のオン・オフをキャリア周波数で切り替えて一次側電力を二次側電力に変換するように電力変換回路を制御することと、
前記電力変換回路の二次側電流値が所定の電流閾値を超えた後、前記二次側電流値と前記キャリア周波数とに基づいて前記複数のスイッチング素子の発熱レベルを評価することと、
前記発熱レベルの評価結果が所定レベルを超えた後、時間の経過に応じて前記キャリア周波数を漸減させることと、
前記発熱レベルの評価結果に基づいて前記キャリア周波数の漸減による発熱抑制効果を評価することと、
前記発熱レベルの評価結果が前記所定レベルまで下降する前に、前記発熱抑制効果の評価結果に基づいて前記キャリア周波数の漸減を停止させることと、を含む電力変換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置、昇降装置及び電力変換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インバータ装置の出力電流と、キャリア周波数に基づくディレーティング量とに基づいて過電流の積分値を算出し、過電流の積分値がトリップ基準値を上回った場合に過負荷故障出力を発生するようにしたインバータ装置の過負荷保護装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、発熱抑制と、騒音抑制との両立に有効な電力変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る電力変換装置は、複数のスイッチング素子のオン・オフをキャリア周波数で切り替えて一次側電力を二次側電力に変換する電力変換回路と、電力変換回路の二次側電流値が所定の電流閾値を超えた後、二次側電流値とキャリア周波数とに基づいて複数のスイッチング素子の発熱レベルを評価する発熱評価部と、発熱レベルの評価結果が所定レベルを超えた後、時間の経過に応じてキャリア周波数を漸減させる周波数変更部と、発熱レベルの評価結果に基づいてキャリア周波数の漸減による発熱抑制効果を評価する抑制評価部と、発熱レベルの評価結果が所定レベルまで下降する前に、発熱抑制効果の評価結果に基づいて周波数変更部によるキャリア周波数の漸減を停止させる漸減停止部と、を備える。
【0006】
本開示の他の側面に係る昇降装置は、上記の電力変換装置と、二次側電力の供給により昇降対象物を昇降させる電動機と、を備える。
【0007】
本開示の更に他の側面に係る電力変換方法は、複数のスイッチング素子のオン・オフをキャリア周波数で切り替えて一次側電力を二次側電力に変換するように電力変換回路を制御することと、電力変換回路の二次側電流値が所定の電流閾値を超えた後、二次側電流値とキャリア周波数とに基づいて複数のスイッチング素子の発熱レベルを評価することと、発熱レベルの評価結果が所定レベルを超えた後、時間の経過に応じてキャリア周波数を漸減させることと、発熱レベルの評価結果に基づいてキャリア周波数の漸減による発熱抑制効果を評価することと、発熱レベルの評価結果が所定レベルまで下降する前に、発熱抑制効果の評価結果に基づいてキャリア周波数の漸減を停止させることと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、発熱抑制と、騒音抑制との両立に有効な電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】昇降システムの構成を例示する模式図である。
【
図2】制御回路のハードウェア構成を例示するブロック図である。
【
図3】昇降制御手順を例示するフローチャートである。
【
図4】キャリア周波数の調節手順を例示するフローチャートである。
【
図5】キャリア周波数の調節手順を例示するフローチャートである。
【
図6】ディレーティング済電流値の推移と、発熱レベルの評価結果の推移と、キャリア周波数の推移とを例示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0011】
〔装置〕
本実施形態に係る昇降システム1は、電力により昇降対象物を昇降させるシステムである。昇降システム1の具体例としては、エレベータ又はクレーン等が挙げられる。
図1に示すように、昇降システム1は、昇降装置2と、電力変換装置3とを備える。
【0012】
昇降装置2は、電力の供給により昇降対象物を昇降させる。例えば昇降装置2はエレベータであり、人が搭乗する乗りかご21と、カウンターウェイト22と、巻き上げ機23とを有する。巻き上げ機23は、モータ24(電動機)を有する。モータ24は、電力(後述の二次側電力)の供給により駆動力を発生する。巻き上げ機23は、モータ24が発生する駆動力によりロープを巻き上げることで、カウンターウェイト22を下降させつつ乗りかご21を上昇させ、又はカウンターウェイト22を上昇させつつ乗りかご21を下降させる。
【0013】
モータ24は、同期電動機であってもよく、誘導電動機であってもよい。同期電動機の具体例としては、永久磁石型の同期電動機、又はシンクロナスリラクタンスモータ等が挙げられる。永久磁石型の同期電動機の具体例としては、SPM(Surface Permanent Magnet)モータ、IPM(Interior Permanent Magnet)モータ等が挙げられる。
【0014】
電力変換装置3は、電源90から供給される電力(一次側電力)を駆動電力(二次側電力)に変換してモータ24に供給する。一次側電力は、交流電力であってもよく、直流電力であってもよい。二次側電力は交流電力である。一例として、一次側電力及び二次側電力は、いずれも三相交流電力である。例えば電力変換装置3は、電力変換回路30と、制御回路100とを有する。
【0015】
電力変換回路30は、複数のスイッチング素子のオン・オフをキャリア周波数で切り替えて一次側電力を二次側電力に変換し、二次側電力をモータ24に供給する。電力変換回路30は、例えば電圧形インバータであり、電圧指令に対応する二次側電圧をモータ24に印加する。
【0016】
例えば電力変換回路30は、コンバータ回路31と、平滑コンデンサ32と、インバータ回路33と、電流センサ34とを有する。コンバータ回路31は、例えばダイオードブリッジ回路又はPWMコンバータ回路であり、上記電源電力を直流電力に変換する。平滑コンデンサ32は、上記直流電力を平滑化する。
【0017】
インバータ回路33は、上記直流電力と上記駆動電力との間の電力変換を行う。例えばインバータ回路33は、複数のスイッチング素子35を有し、複数のスイッチング素子35のオン・オフを切り替えることによって上記電力変換を行う。スイッチング素子35は、例えばパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)又はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等であり、ゲート駆動信号に応じてオン・オフを切り替える。
【0018】
電流センサ34は、インバータ回路33とモータ24との間に流れる電流を検出する。以下、インバータ回路33とモータ24との間に流れる電流を「二次側電流」という。例えば電流センサ34は、三相交流の全相(U相、V相及びW相)の電流を検出するように構成されていてもよいし、三相交流のいずれか2相の電流を検出するように構成されていてもよい。零相電流が生じない限り、U相、V相、及びW相の電流の合計はゼロなので、2相の電流を検出する場合にも全相の電流の情報が得られる。
【0019】
以上に示した電力変換回路30の構成はあくまで一例であり、モータ24に駆動電力を供給し得る限りにおいていかようにも変更可能である。例えば電力変換回路30は、電流形インバータであってもよい。電流形インバータは、電流指令に従った駆動電流をモータ24に出力する。電源電力が直流電力である場合に、電力変換回路30はコンバータ回路31を有していなくてもよい。電力変換回路30は、直流化を経ることなく電源電力と駆動電力との双方向の電力変換を行うマトリクスコンバータ回路であってもよい。
【0020】
制御回路100は、モータ24に駆動電力を供給するように電力変換回路30を制御する。例えば電力変換回路30が電圧形インバータである場合、制御回路100は、電圧指令に対応する駆動電圧をモータ24に印加するように電力変換回路30を制御する。電力変換回路30が電流形インバータである場合、制御回路100は、電流指令に対応する駆動電流をモータ24に供給するように電力変換回路30を制御する。
【0021】
複数のスイッチング素子のオン・オフをキャリア周波数で切り替えて生成された二次側電力により動作する装置においては、キャリア周波数を高くするほど騒音が生じ難くなる。しかし、キャリア周波数が高くなるほど、所謂スイッチングロスに起因する複数のスイッチング素子の発熱が大きくなる。このため、上記装置における負荷増大時に二次側電流が大きくなると、定常電流に起因する発熱(以下、「定常発熱」という。)と、スイッチングロスに起因する発熱(以下、「スイッチング発熱」という。)とを合わせた総発熱が過大になり易い。
【0022】
これに対し、制御回路100は、複数のスイッチング素子35のオン・オフをキャリア周波数で切り替えて一次側電力を二次側電力に変換するように電力変換回路30を制御することと、電力変換回路30の二次側電流値が所定の電流閾値を超えた後、二次側電流値とキャリア周波数とに基づいて複数のスイッチング素子35の発熱レベルを評価することと、発熱レベルの評価結果が所定レベルを超えた後、時間の経過に応じてキャリア周波数を漸減させることと、発熱レベルの評価結果に基づいてキャリア周波数の漸減による発熱抑制効果を評価することと、発熱レベルの評価結果が上記所定レベルまで下降する前に、発熱抑制効果の評価結果に基づいてキャリア周波数の漸減を停止させることと、を実行するように構成されている。これにより、負荷の大きさごとに、キャリア周波数を、騒音抑制と発熱抑制との両立に適切な値に調節することができる。
【0023】
以下、制御回路100の構成をより具体的に例示する。
図1に示すように、制御回路100は、機能上の構成(以下、「機能ブロック」という。)として、PWM制御部111と、駆動制御部112と、ベースブロック部113と、ディレーティング部114と、発熱評価部115と、周波数変更部116と、抑制評価部117と、漸減停止部118と、過負荷保護部119とを有する。
【0024】
PWM制御部111は、電圧指令に対応した二次側電圧をモータ24に印加するように電力変換回路30を制御する。例えばPWM制御部111は、キャリア周波数の制御サイクルで複数のスイッチング素子35のそれぞれのオン・オフを切り替え、1サイクルにおける各スイッチング素子35のオン期間・オフ期間の比率によって電圧指令に対応した二次側電圧を出力させる。各スイッチング素子35のオン期間・オフ期間の算出方式に特に制限はなく、公知の三角波比較方式であってもよく、空間ベクトル変調方式であってもよい。例えばPWM制御部111は、上記ゲート駆動信号の出力により、各スイッチング素子35のオン・オフを切り替える。
【0025】
キャリア周波数は、ユーザ設定に応じて可変である。また、キャリア周波数は、後述の周波数変更部116によっても変更される。キャリア周波数が変更されると、PWM制御部111は、変更後のキャリア周波数にて複数のスイッチング素子35のオン・オフを切り替える。
【0026】
駆動制御部112は、上位コントローラ200からの指令に従って昇降装置2を動作させるように電圧指令を算出し、PWM制御部111に出力する。上位コントローラ200の具体例としては、プログラマブルロジックコントローラ等が挙げられる。上位コントローラ200からの指令の具体例としては、昇降開始指令、昇降停止指令等が挙げる。
【0027】
上位コントローラ200から昇降開始指令を取得した場合、駆動制御部112は、所定の速度パターンにモータ24の回転速度を追従させるように電圧指令を生成し、PWM制御部111に出力することを、所定周期の制御サイクルで繰り返す。上位コントローラ200から昇降停止指令を取得した場合、駆動制御部112は、所定の減速・停止パターンにモータ24の回転速度を追従させるように電圧指令を生成し、PWM制御部111に出力することを、上記制御サイクルで繰り返す。上位コントローラ200は、駆動制御部112がモータ24を停止させた後に、巻き上げ機23のブレーキを作動させ、ベースブロック指令を出力する。
【0028】
ベースブロック部113は、上位コントローラ200からのベースブロック指令に従って、電力変換回路30による二次側電力の出力を停止させる。例えばベースブロック部113は、PWM制御部111から各スイッチング素子35へのゲート駆動信号の出力をブロックすることで、二次側電力の出力を停止させる。
【0029】
ディレーティング部114は、電流センサ34により検出された二次側電流値を取得し、キャリア周波数が大きくなるにつれて大きくなる調整レートによって二次側電流値をディレーティングする。以下、ディレーティングされた二次側電流値を「ディレーティング済電流値」という。
【0030】
例えばディレーティング部114は、キャリア周波数とレートとの関係を表すように予め生成されたレートプロファイルと、現在のキャリア周波数とに基づいて、キャリア周波数に応じた調整レートを導出し、導出した調整レートを二次側電流値に乗算してディレーティング済電流値を算出する。ディレーティング部114は、上記制御サイクルにてディレーティングを繰り返す。
【0031】
レートプロファイルにおけるレートは、上記定常発熱に対する上記総発熱の比率(上記総発熱を上記定常発熱で除算した値)を近似するように定められていてもよい。以下、このレートプロファイルを「第1レートプロファイル」という。
【0032】
上述のようにキャリア周波数が高くなるにつれて、スイッチング発熱は大きくなるので、第1レートプロファイルにおけるレートはキャリア周波数が高くなるにつれて大きくなる。ディレーティング部114は、第1レートプロファイルにおいて現在のキャリア周波数に対応するレートを調整レートとして導出する。
【0033】
レートプロファイルにおけるレートは、上記総発熱に対する上記定常発熱の比率(上記定常発熱を上記総発熱で除算した値)を近似するように定められていてもよい。以下、このレートプロファイルを「第2レートプロファイル」という。
【0034】
上述のようにキャリア周波数が高くなるにつれて、スイッチング発熱は大きくなるので、第2レートプロファイルにおけるレートはキャリア周波数が高くなるにつれて小さくなる。ディレーティング部114は、第2レートプロファイルにおいて現在のキャリア周波数に対応するレートの逆数を調整レートとして導出する。
【0035】
発熱評価部115は、電力変換回路30の二次側電流値が所定の電流閾値(以下、「評価開始閾値」という。)を超えた後、二次側電流値とキャリア周波数とに基づいて複数のスイッチング素子35の発熱レベルを評価する。発熱レベルは、例えば上記総発熱の大きさを意味する。
【0036】
例えば発熱評価部115は、ディレーティング済電流値(二次側電流値の一例)が評価開始閾値を超えた後、ディレーティング済電流値と評価開始閾値との差分の積算値に基づいて発熱レベルを評価する。例えば発熱評価部115は、ディレーティング済電流値と評価開始閾値との差の時間積分値を、発熱レベルの評価結果として算出する。発熱評価部115は、上記制御サイクルにて、ディレーティング部114によるディレーティングが行われる度に発熱レベルを評価する。
【0037】
上述のように、ディレーティング済電流値は、電流センサ34により検出された二次側電流値と、現在のキャリア周波数とに基づいて導出されている。従って、ディレーティング済電流値に基づいて上述の方法で発熱レベルを評価することは、二次側電流値と評価開始閾値とに基づいて発熱レベルを評価することの一例に相当する。なお、発熱レベルの評価手法は、ディレーティング済電流値に基づく手法に限らない。
【0038】
発熱評価部115は、二次側電流値と、キャリア周波数と、総発熱との関係を表すように予め生成された発熱プロファイルに基づいて、現在の二次側電流値と現在のキャリア周波数とに対応する総発熱を導出し、これを発熱レベルの評価結果としてもよい。この場合の二次側電流値は、ディレーティング前の二次側電流値であってもよいし、ディレーティング済電流値であってもよい。
【0039】
ディレーティング部114は、二次側電流値のディレーティングに代えて、キャリア周波数が大きくなるにつれて小さくなる閾値調整レートによって評価開始閾値をディレーティングしてもよい。以下、ディレーティングされた評価開始閾値を「ディレーティング済閾値」という。例えばディレーティング部114は、キャリア周波数とレートとの関係を表すように予め生成されたレートプロファイルと、現在のキャリア周波数とに基づいて、キャリア周波数に応じた閾値調整レートを導出し、導出した閾値調整レートを評価開始閾値に乗算してディレーティング済閾値を算出する。
【0040】
ディレーティング部114は、第1レートプロファイルにおいて現在のキャリア周波数に対応するレートの逆数を閾値調整レートとして導出してもよい。ディレーティング部114は、第2レートプロファイルにおいて現在のキャリア周波数に対応するレートを閾値調整レートとして導出してもよい。この場合、発熱評価部115は、二次側電流値と、ディレーティング部114によりディレーティング済閾値との差分の積算値に基づいて発熱レベルを評価してもよい。例えば発熱評価部115は、二次側電流値がディレーティング済閾値(評価開始閾値の一例)を超えた後、二次側電流値とディレーティング済閾値との差分の積算値に基づいて発熱レベルを評価してもよい。例えば発熱評価部115は、二次側電流値とディレーティング済閾値との差の時間積分値を、発熱レベルの評価結果として算出してもよい。
【0041】
周波数変更部116は、発熱評価部115による発熱レベルの評価結果が所定レベル(以下、「漸減開始レベル」という。)を超えた後、時間の経過に応じてキャリア周波数を漸減させる。例えば周波数変更部116は、キャリア周波数を所定の漸減ステップで小さくすることを上記制御サイクルで繰り返す。キャリア周波数の漸減過程において、周波数変更部116は、上記漸減ステップを変更してもよい。例えば周波数変更部116は、発熱レベルの上昇率が小さくなるのに応じて、上記漸減ステップを小さくしてもよい。
【0042】
周波数変更部116は、ベースブロック部113が電力変換回路30による二次側電力の出力を停止させるのに応じてキャリア周波数を漸減開始前の周波数に戻してもよい。ここでの停止するのに応じてとは、必ずしも二次側電力の出力が停止するタイミングの直前又は直後のタイミングでの実行だけを意味するわけではなく、停止後次の運転開始までの間での実行も含む。
【0043】
抑制評価部117は、発熱評価部115による発熱レベルの評価結果に基づいて、周波数変更部116によるキャリア周波数の漸減による発熱抑制効果を評価する。例えば抑制評価部117は、抑制効果の評価結果として、発熱レベルの評価結果の上昇率を算出する。一例として、抑制評価部117は、発熱レベルの評価結果と、一つ前の発熱レベルの評価結果とに基づいて上記上昇率を算出する。一つ前の発熱レベルの評価結果とは、現制御サイクルの一つ前の制御サイクルにおける発熱レベルの評価結果である。より具体的に、抑制評価部117は、発熱レベルの評価結果と、一つ前の発熱レベルの評価結果との差を、一制御サイクルの時間で除算した値を上昇率として算出する。
【0044】
漸減停止部118は、発熱評価部115による発熱レベルの評価結果が漸減開始レベルまで下降する前に、抑制評価部117による発熱抑制効果の評価結果に基づいて周波数変更部によるキャリア周波数の漸減を停止させる。例えば漸減停止部118は、上昇率が所定の閾値(以下、「漸減停止閾値」という。)を下回るのに応じて、周波数変更部116によるキャリア周波数の漸減を停止させる。漸減停止閾値はゼロ又は負の値であってもよい。この場合、上昇率がゼロ以下となるまでキャリア周波数の漸減が継続されるので、発熱抑制の確実性が向上する。漸減停止閾値は正の値であってもよい。この場合、キャリア周波数の漸減がより早期に停止するので、騒音抑制の確実性が向上する。
【0045】
なお、発熱抑制効果の評価結果は、必ずしも上昇率に限らない。抑制評価部117は、発熱抑制効果を表し得る限りいかなる値を導出してもよい。例えば抑制評価部117は、発熱抑制効果の評価結果として、発熱レベルの評価結果がピーク値に達した後の低下幅を算出してもよい。この場合、漸減停止部118は、低下幅が所定の閾値を上回るのに応じて、周波数変更部116によるキャリア周波数の漸減を停止させてもよい。
【0046】
過負荷保護部119は、発熱レベルの評価結果が漸減開始レベルよりも高い上限レベルに達したら電力変換回路30をトリップさせる。例えば過負荷保護部119は、上位コントローラ200に昇降停止指令の出力を要求する。これに応じ、上位コントローラ200が昇降停止指令を出力し、これに応じ駆動制御部112がモータ24を停止させる。駆動制御部112がモータ24を停止させた後に、上位コントローラ200は巻き上げ機23のブレーキを作動させ、ベースブロック指令を出力する。ベースブロック部113は、上位コントローラ200からのベースブロック指令に従って、電力変換回路30による二次側電力の出力を停止させる。
【0047】
図2は、制御回路100のハードウェア構成を例示するブロック図である。
図2に示すように、制御回路100は、一つ又は複数のプロセッサ191と、メモリ192と、ストレージ193と、入出力ポート194と、スイッチング制御回路195とを含む。ストレージ193は、例えば不揮発性の半導体メモリ等、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を有する。ストレージ193は、複数のスイッチング素子35のオン・オフをキャリア周波数で切り替えて一次側電力を二次側電力に変換するように電力変換回路30を制御することと、電力変換回路30の二次側電流値が所定の電流閾値を超えた後、二次側電流値とキャリア周波数とに基づいて複数のスイッチング素子35の発熱レベルを評価することと、発熱レベルの評価結果が所定レベルを超えた後、時間の経過に応じてキャリア周波数を漸減させることと、発熱レベルの評価結果に基づいてキャリア周波数の漸減による発熱抑制効果を評価することと、発熱レベルの評価結果が所定レベルまで下降する前に、発熱抑制効果の評価結果に基づいてキャリア周波数の漸減を停止させることと、を制御回路100に実行させるためのプログラムを記憶している。例えばストレージ193は、上述した各機能ブロックを制御回路100に構成させるためのプログラムを記憶している。
【0048】
メモリ192は、ストレージ193の記憶媒体からロードしたプログラム及びプロセッサ191による演算結果を一時的に記憶する。プロセッサ191は、メモリ192と協働して上記プログラムを実行することで、制御回路100の各機能ブロックを構成する。入出力ポート194は、プロセッサ191からの指令に基づいて、電流センサ34との間で情報の入出力を行う。スイッチング制御回路195は、プロセッサ191からの指令に従って、インバータ回路33内の複数のスイッチング素子35のオン、オフを切り替えることにより、上記駆動電力をモータ24へ出力する。
【0049】
なお、制御回路100は、必ずしもプログラムにより各機能を構成するものに限らない。例えば制御回路100は、専用の論理回路又はこれを集積したASIC(Application Specific Integrated Circuit)により少なくとも一部の機能を構成してもよい。
【0050】
〔制御手順〕
続いて、電力変換方法の一例として、制御回路100が実行する制御手順を例示する。この制御手順は、複数のスイッチング素子35のオン・オフをキャリア周波数で切り替えて一次側電力を二次側電力に変換するように電力変換回路30を制御することと、電力変換回路30の二次側電流値が所定の電流閾値を超えた後、二次側電流値とキャリア周波数とに基づいて複数のスイッチング素子35の発熱レベルを評価することと、発熱レベルの評価結果が所定レベルを超えた後、時間の経過に応じてキャリア周波数を漸減させることと、発熱レベルの評価結果に基づいてキャリア周波数の漸減による発熱抑制効果を評価することと、発熱レベルの評価結果が所定レベルまで下降する前に、発熱抑制効果の評価結果に基づいてキャリア周波数の漸減を停止させることと、を含む。以下、昇降制御手順と、昇降制御中におけるキャリア周波数の調節手順とに分けて、制御手順を詳細に例示する。
【0051】
(昇降制御手順)
図3に示すように、制御回路100は、ステップS01,S02,S03,S04,S05,S06,S07,S08を順に実行する。ステップS01では、駆動制御部112が、上位コントローラ200からの昇降開始指令を待機する。ステップS02では、駆動制御部112が、ベースブロック部113によるベースブロックを解除する。ステップS03では、駆動制御部112が、上位コントローラ200による巻き上げ機23のブレーキ解除を待機する。
【0052】
ステップS04では、駆動制御部112が、所定の速度パターンにモータ24の回転速度を追従させる制御を開始する。以後、駆動制御部112は、所定の速度パターンにモータ24の回転速度を追従させるように電圧指令生成し、PWM制御部111に出力することを、所定周期の制御サイクルで繰り返す。
【0053】
ステップS05では、駆動制御部112が、上位コントローラ200からの昇降停止指令を待機する。ステップS06では、駆動制御部112が、所定の減速・停止パターンにてモータ24を停止させる。例えば駆動制御部112は、所定の減速・停止パターンにモータ24の回転速度を追従させるように電圧指令を生成し、PWM制御部111に出力することを、上記制御サイクルで繰り返し、モータ24を停止させる。ステップS07では、ベースブロック部113が、上位コントローラ200からのベースブロック指令を待機する。ステップS08では、ベースブロック部113が、電力変換回路30による二次側電力の出力を停止させる。以上で昇降制御手順が完了する。
【0054】
(キャリア周波数の調節手順)
図4に示すように制御回路100は、まずステップS11,S12,S13を実行する。ステップS11では、ディレーティング部114が、電流センサ34により検出された二次側電流値を取得する。ステップS12では、ディレーティング部114が、キャリア周波数が大きくなるにつれて大きくなる調整レートによって二次側電流値をディレーティングする。ステップS13では、ディレーティング済電流値が評価開始閾値を超えているか否かを発熱評価部115が確認する。
【0055】
ステップS13においてディレーティング済電流値が評価開始閾値を超えていないと判定した場合、制御回路100は処理をステップS11に戻す。以後、ディレーティング済電流値が評価開始閾値を超えるまで、制御回路100は二次側電流値の検出結果の取得とディレーティングとを上記制御サイクルで繰り返す。
【0056】
ステップS13においてディレーティング済電流値が評価開始閾値を超えていると判定した場合、制御回路100はディレーティング済電流値と評価開始閾値との差分の積算値に基づく発熱レベルの評価を開始する。例えば制御回路100は、まずステップS14,S15,S16を実行する。ステップS14では、発熱評価部115が、発熱レベルの評価結果に初期値をセットする。初期値は例えばゼロである。
【0057】
ステップS15では、発熱評価部115が、ディレーティング済電流値と評価開始閾値との差分に制御サイクルの1周期を乗算し、乗算結果を発熱レベルの評価結果に加算する。以下、加算する乗算結果を、「1サイクル分の評価結果」という。ステップS16では、発熱レベルの評価結果が上記漸減開始レベルを超えたか否かを周波数変更部116が確認する。
【0058】
ステップS16において発熱レベルの評価結果が漸減開始レベルを超えていないと判定した場合、制御回路100はステップS17,S18を実行する。ステップS17では、ディレーティング部114が、電流センサ34により検出された二次側電流値を取得する。ステップS18では、ディレーティング部114が、ステップS12と同様に二次側電流値をディレーティングする。その後、制御回路100は処理をステップS15に戻す。以後、発熱レベルの評価結果が漸減開始レベルを超えるまで、1サイクル分の評価結果を算出し、発熱レベルの評価結果に加算することを制御サイクルで繰り返す。
【0059】
ステップS16において発熱レベルの評価結果が漸減開始レベルを超えたと判定した場合、
図5に示すように、制御回路100はステップS21,S22,S23,S24,S25を実行する。ステップS21では、周波数変更部116が、キャリア周波数から上記漸減ステップを減算し、減算結果を新たなキャリア周波数としてPWM制御部111に出力する。ステップS22では、ディレーティング部114が、電流センサ34により検出された二次側電流値を取得する。
【0060】
ステップS23では、ディレーティング部114が、ステップS12と同様に二次側電流値をディレーティングする。ステップS24では、発熱評価部115が、ステップS15と同様に、1サイクル分の評価結果を算出し、発熱レベルの評価結果に加算する。ステップS25では、発熱レベルの評価結果が上記上限レベル以下であるか否かを過負荷保護部119が確認する。
【0061】
ステップS25において発熱レベルの評価結果が上限レベル以下であると判定した場合、制御回路100はステップS26,S27を実行する。ステップS26では、抑制評価部117が、発熱評価部115による発熱レベルの評価結果に基づいて、周波数変更部116によるキャリア周波数の漸減による発熱抑制効果を評価する。例えば抑制評価部117は、抑制効果の評価結果として、発熱レベルの評価結果の上昇率を算出する。ステップS27では、上昇率が漸減停止閾値を下回ったか否かを漸減停止部118が確認する。
【0062】
ステップS27において上昇率が漸減停止閾値を下回っていないと判定した場合、制御回路100は処理をステップS21に戻す。以後、制御回路100は、発熱レベルが上限レベルを超えるか、又は上昇率が漸減停止閾値を下回るまで、キャリア周波数の漸減と、発熱レベルの評価と、発熱抑制効果の評価とを制御サイクルで繰り返す。
【0063】
ステップS27において上昇率が漸減停止閾値を下回ったと判定した場合、制御回路100はステップS28,S29を実行する。ステップS28では、漸減停止部118が、周波数変更部116によるキャリア周波数の漸減を停止させる。ステップS29では、ベースブロック部113が電力変換回路30による二次側電力の出力を停止させるのを周波数変更部116が待機する。
【0064】
ステップS25において発熱レベルの評価結果が上限レベルを超えていると判定した場合、制御回路100はステップS31,S32,S33を実行する。ステップS31では、過負荷保護部119が、上位コントローラ200に昇降停止指令の出力を要求する。ステップS32では、ベースブロック部113が、上位コントローラ200からのベースブロック指令を待機する。ステップS33では、ベースブロック部113が、電力変換回路30による二次側電力の出力を停止させる。
【0065】
ステップS28,S33の後、制御回路100はステップS34を実行する。ステップS34では、周波数変更部116が、キャリア周波数を漸減開始前の周波数に戻し、それを新たなキャリア周波数としてPWM制御部111に出力する。以上でキャリア周波数の調節手順が完了する。
【0066】
〔波形の例示〕
図6を参照し、上述のキャリア周波数の調節手順におけるディレーティング後電流値の推移と、発熱レベル評価結果の推移と、キャリア周波数の推移とを例示する。
図6の(a)はディレーティング後電流値の推移を示す。
図6の(a)の横軸は経過時間を示し、縦軸は二次側電流値の大きさを示す。
図6の(b)は発熱レベルの評価結果の推移を示す。
図6の(b)の横軸は経過時間を示し、縦軸は発熱レベルの評価結果の大きさを示す。
図6の(c)はキャリア周波数の推移を示す。
図6の(c)の横軸は経過時間を示し、縦軸はキャリア周波数の大きさを示す。
【0067】
図6の例において、ディレーティング後電流値は、昇降開始後の加速に伴って加速レートで定まるレベルまで上昇している。ディレーティング後電流値は、時刻T1において、評価開始閾値A1を超えている。これに伴い、発熱レベルの評価結果の上昇が開始する。発熱レベルの評価結果は、時刻T2において、漸減開始レベルB1を超えている。これに伴い、キャリア周波数の漸減が開始する。キャリア周波数の漸減が開始されるのに伴い、ディレーティング後電流値は徐々に減少し、評価開始閾値A1を下回る。これにより、時刻T3においては、発熱レベルの評価結果の上昇率が負の値に転じ(減少し始め)、キャリア周波数の漸減が停止する。
【0068】
時刻T4では、モータ24の加速制御がモータ24の定速制御に移行するのに応じてディレーティング後電流値が更に低下する。時刻T5において、電力変換回路30による二次側電力の出力が完了すると、キャリア周波数が漸減開始前の値に戻される。
【0069】
このように、上述のキャリア周波数の調節手順では、キャリア周波数の漸減により発熱レベルが抑制されるが、発熱レベルの上昇が所望のレベルまで抑えられたタイミングでキャリア周波数の漸減が停止する。このため、発熱レベルの上昇を所望のレベルに抑え得る範囲で、キャリア周波数の低下が最小限度に抑えられる。
【0070】
〔本実施形態の効果〕
以上に説明したように、電力変換装置3は、複数のスイッチング素子35のオン・オフをキャリア周波数で切り替えて一次側電力を二次側電力に変換する電力変換回路30と、電力変換回路30の二次側電流値が所定の電流閾値を超えた後、二次側電流値とキャリア周波数とに基づいて複数のスイッチング素子35の発熱レベルを評価する発熱評価部115と、発熱レベルの評価結果が所定レベルを超えた後、時間の経過に応じてキャリア周波数を漸減させる周波数変更部116と、発熱レベルの評価結果に基づいてキャリア周波数の漸減による発熱抑制効果を評価する抑制評価部117と、発熱レベルの評価結果が所定レベルまで下降する前に、発熱抑制効果の評価結果に基づいて周波数変更部116によるキャリア周波数の漸減を停止させる漸減停止部118と、を備える。
【0071】
複数のスイッチング素子のオン・オフをキャリア周波数で切り替えて生成された二次側電力により動作する装置においては、キャリア周波数を高くするほど騒音が生じ難くなる。しかし、キャリア周波数が高くなるほど、所謂スイッチングロスに起因する複数のスイッチング素子の発熱が大きくなる。このため、上記装置における負荷が大きくなり、二次側電流が大きくなると、二次側電流に起因する発熱と、スイッチングロスに起因する発熱とを合わせた総発熱が過大になり易い。
【0072】
これに対し、本電力変換装置3は、発熱レベルが所定レベルを超えた後にキャリア周波数を漸減させ、発熱抑制効果の評価結果に基づいてキャリア周波数の漸減を停止させる。これにより、負荷の大きさごとに、キャリア周波数を、騒音抑制と発熱抑制との両立に適切な値に調節することができる。従って、騒音抑制と発熱抑制との両立に有効である。
【0073】
抑制評価部117は、発熱抑制効果の評価結果として発熱レベルの評価結果の上昇率を算出し、漸減停止部118は、上昇率が所定の停止閾値を下回るのに応じて、周波数変更部116によるキャリア周波数の漸減を停止させてもよい。この場合、発熱レベルの評価結果の上昇率に基づくことで、発熱抑制効果をより適切に評価し、より適切なタイミングでキャリア周波数の漸減を停止させることができる。従って、発熱抑制と騒音抑制との両立に更に有効である。
【0074】
停止閾値はゼロ又は負の値であってもよい。この場合、発熱をより確実に抑制することができる。
【0075】
抑制評価部117は、発熱抑制効果の評価結果として、発熱レベルの評価結果がピーク値に達した後の低下幅を算出し、漸減停止部118は、低下幅が所定の停止閾値を上回るのに応じて、周波数変更部116によるキャリア周波数の漸減を停止させてもよい。この場合、発熱をより確実に抑制することができる。
【0076】
電力変換装置3は、電力変換回路30による二次側電力の出力を停止させるベースブロック部113を更に備え、周波数変更部116は、ベースブロック部113が電力変換回路30による二次側電力の出力を停止させるのに応じて、キャリア周波数を漸減開始前の周波数に戻してもよい。この場合、発熱抑制と騒音抑制との両立をより確実に図ることができる。
【0077】
電力変換装置3は、発熱レベルの評価結果が所定レベルよりも高い上限レベルに達したら電力変換回路30をトリップさせる過負荷保護部119を更に備えていてもよい。この場合、発熱レベルの評価結果を、キャリア周波数の漸減による発熱抑制と、電力変換回路30のトリップによる過負荷保護とに共有することで、電力変換装置3内における演算負荷を軽減することができる。
【0078】
電力変換装置3は、キャリア周波数が大きくなるにつれて大きくなるレートによって二次側電流値をディレーティングするディレーティング部114を更に備え、発熱評価部115は、ディレーティング部114によりディレーティングされた二次側電流値と、電流閾値との差分の積算値に基づいて発熱レベルを評価してもよい。この場合、ディレーティングされた二次側電流値に基づくことで、発熱レベルを容易に評価することができる。
【0079】
電力変換装置3は、キャリア周波数が大きくなるにつれて小さくなるレートによって電流閾値をディレーティングするディレーティング部114を更に備え、発熱評価部115は、二次側電流値と、ディレーティング部114によりディレーティングされた電流閾値との差分の積算値に基づいて発熱レベルを評価してもよい。この場合、ディレーティングされた二次側電流値に基づく発熱レベルの評価の信頼性を向上させることができる。
【0080】
以上、実施形態について説明したが、本開示は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0081】
2…昇降装置、3…電力変換装置、24…モータ(電動機)、30…電力変換回路、35…スイッチング素子、113…ベースブロック部、114…ディレーティング部、115…発熱評価部、116…周波数変更部、117…抑制評価部、118…漸減停止部、119…過負荷保護部。